(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】がん診断及び治療のための新規PSMA特異的結合タンパク質
(51)【国際特許分類】
C07K 14/47 20060101AFI20240606BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240606BHJP
C07K 14/765 20060101ALI20240606BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240606BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240606BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20240606BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240606BHJP
【FI】
C07K14/47
C12P21/02 C ZNA
C07K14/765
A61K38/17
A61P35/00
A61P13/08
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2021557014
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2020060043
(87)【国際公開番号】W WO2020208083
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-12-28
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513311653
【氏名又は名称】ナフィゴ プロテインズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Navigo Proteins GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ボース-ドーネッケ,エヴァ
(72)【発明者】
【氏名】グローサー-ブレーニヒ,マンジャ
(72)【発明者】
【氏名】セッテレ,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】フィドラー,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ハウプト,ウルリッヒ
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-513376(JP,A)
【文献】特表2014-523238(JP,A)
【文献】特表2018-505675(JP,A)
【文献】国際公開第2017/149002(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/028429(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/124670(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/013136(WO,A1)
【文献】SHEN, D. et al.,Evaluation of phage display discovered peptides as ligands for prostate-specific membrane antigen (PSMA),PLOS ONE,vol.8, no.7,2013年07月25日,e.68339
【文献】AGGARWAL, S. et al.,A dimeric peptide that binds selectively to prostate-specific membrane antigen and inhibits its enzymatic activity,CANCER RES,vol.66, no.18,2006年09月15日,pp.9171-9177
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12P 21/02
A61K 38/17
A61P 35/00
A61P 13/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺特異的膜抗原(PSMA)結合タンパク質であって、前記PSMA結合タンパク質は、配列番号1と少なくとも85%の配列同一性を有する1つ以上のユビキチン変異タンパク質を含み、配列番号1の62位、63位、64位、65位、66位に対応するアミノ酸残基において、アミノ酸結合モチーフGFAHR、GWAHR、SYAHR、SFAHR、GFAHL
、WWNPN、KHNTW、WTTTF、WTETI、GDGDV、又はWTPSIを含むことを特徴とするPSMA結合タンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載のPSMA結合タンパク質において、さらに、配列番号1のユビキチンの6位及び8位に対応するアミノ酸は置換されていることを特徴とするPSMA結合タンパク質。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のPSMA結合タンパク質において、さらに、配列番号1のユビキチンの42位、44位、68位、70位、及び72位に対応するアミノ酸は置換されていることを特徴とするPSMA結合タンパク質。
【請求項4】
請求項1に記載のPSMA結合タンパク質において、さらに、ユビキチン(配列番号1)の6位、8位、9位、10位、12位、及び46位に対応するアミノ酸は置換されているか、又はさらに、ユビキチン(配列番号1)の9位及び10位に対応するアミノ酸間に6以下のアミノ酸が挿入されていることを特徴とするPSMA結合タンパク質。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のPSMA結合タンパク質において、前記PSMA結合タンパク質は、請求項1~4のいずれか一項に記載の複数のPSMA結合タンパク質を含む多量体であることを特徴とするPSMA結合タンパク質。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のPSMA結合タンパク質において、前記PSMA結合タンパク質は、請求項1~4のいずれか一項に記載のPSMA結合タンパク質の二量体であることを特徴とするPSMA結合タンパク質。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のPSMA結合タンパク質において、前記PSMA結合タンパク質は、配列番号3~15、19~22、24~55の群から選択される、又はそれぞれ、これらと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含むか又はから成ることを特徴とするPSMA結合タンパク質。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のPSMA結合タンパク質において、前記PSMA結合タンパク質は、500nM以下のPSMAの細胞外ドメインと特異的結合親和性を有することを特徴とするPSMA結合タンパク質。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のPSMA結合タンパク質において、前記PSMA結合タンパク質は、化学部分との結合のための1つ以上の結合部位をさらに含み
、前記化学部分は、キレート剤、薬剤、トキシン、染料、及び小分子のいずれかから選択されることを特徴とするPSMA結合タンパク質。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のPSMA結合タンパク質において、前記PSMA結合タンパク質は、放射性核種、蛍光タンパク質、感光剤、染料、若しくは酵素、若しくは上記のいずれかの組合せから必要に応じて選択される少なくとも1つの診断的活性部分をさらに含むか、又はモノクローナル抗体若しくはそのフラグメント、結合タンパク質、放射性核種、細胞傷害性化合物、サイトカイン、ケモカイン、酵素、若しくはこれらの誘導体、若しくは上記いずれかの組合せから必要に応じて選択される少なくとも1つの治療的活性部分をさらに含むことを特徴とするPSMA結合タンパク質。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のPSMA結合タンパク質において、前記PSMA結合タンパク質は、ポリエチレングリコール、ヒト血清アルブミン、アルブミン結合タンパク質、免疫グロブリン結合タンパク質、又は免疫グロブリン若しくは免疫グロブリンフラグメント、多糖類、又はアミノ酸アラニン、グリシン、セリン、プロリンを含む
非構造化アミノ酸配列から必要に応じて選択される薬物動態を調節する少なくとも1つの部分をさらに含むことを特徴とするPSMA結合タンパク質。
【請求項12】
医療において使用するた
めの組成物であって、前記組成物は、請求項1~11のいずれか一項に記載のPSMA結合タンパク質を含むことを特徴とする組成物。
【請求項13】
PSMA関連腫瘍の診断又はPSMA関連腫瘍の治療において使用するための、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
腫瘍の画像診断及びPSMA関連腫瘍の放射線治療において使用するための、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載のPSMA結合タンパク質の製造方法であって、前記方法は、a)前記PSMA結合タンパク質を得るために適した条件下で宿主細胞を培養するステップ及びb)前記産生されたPSMA結合タンパク質を単離するステップを備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)に対して特異的な新規結合タンパク質に関する。本発明は、診断的又は治療的活性成分をさらに含むPSMA結合タンパク質にさらに関する。本発明のさらなる態様は、医療分野、例えば、PSMA発現に関連するがんの診断及び治療におけるこれらのPSMA結合タンパク質の使用を包含する。
【背景技術】
【0002】
前立腺特異的膜抗原(PSMA)は、腫瘍、特に前立腺がんにおいて発現される。PSMAの過剰発現は、他の固形腫瘍、例えば、乳がん、腎がん、肺がん、卵巣がん、結腸直腸がん、膀胱がん、胃がん又は脳がん(例えば、神経膠芽腫)、及び多発性骨髄腫の新生血管においても見られる。これは転移性疾患における特に高レベルを有するがんの進行と共に増加する。3ドメイン糖タンパク質(細胞外、膜貫通型、及び短い細胞内ドメイン)は、腫瘍栄養及び細胞増殖を媒介している。
【0003】
標的PSMA特異的モノクローナル抗体を、がん、特に前立腺がんの診断及び治療のために開発した。従来、新たに診断された前立腺がん患者及び再発性前立腺がん患者の画像診断及び診断染色のための唯一の承認薬は、放射線標識マウスモノクローナル抗体カプロマブペンデチドである。しかしながら、抗体は、PSMAの細胞内エピトープとの結合のせいで治療効果がない。PSMAの細胞外エピトープと結合する第二世代モノクローナル抗体、マウスモノクローナル抗体J591などを開発した。J591を、進行性固形腫瘍のインビボ画像診断又は転移性循環腫瘍細胞の捕獲に関して試験した。その治療的使用は、有害副作用及び短い血中半減期により限定される。
【0004】
診断的及び治療的アプローチ、例えば、PSMA放射免疫療法及びPSMA放射性画像診断のための薬剤としてPSMA特異的モノクローナル抗体は、さらなる主なデメリットを有する。ひとつは、複合体分子構造及び対応する複雑な製造方法である。他は、それらの大きいサイズであり、インビボでの組織透過性不良をもたらす。長い循環時間と合わせて、画像診断応用のための化合物をベースとする抗体は、高バックグラウンドシグナルのせいで低コントラストをもたらし得る。
【0005】
さらに、初期効果的治療に対する高頻度の耐性は、PSMAを過剰発現する前立腺がん及び他のがんのための付加的及び改良された治療薬の必要性を成す。
【0006】
PSMA関連がんの診断及び治療は、現在ある選択肢により充分に対処されず、結果として、多くの患者は、現在のストラテジーから充分に効果を得られない。言うまでもなく、PSMA関連腫瘍の診断及び治療のための新規ストラテジーに対する強い必要性がある。
【0007】
本発明の1つの目的は、PSMA陽性腫瘍の検出を含む標的診断及び治療選択肢を可能とするPSMAの特異的標的化のための分子の提供である。この腫瘍関連タンパク質の標的化は、新規診断及び治療経路のための満たされていない要求を有する患者に利益を提供し得る。PSMAの標的化は、正常組織中のPSMAの低分布及び限定分布のために潜在的無毒性診断及び治療アプローチを示唆する。したがって、PSMAに対する特異性を有する結合タンパク質は、がんに対する効果的医療の選択肢を可能とし得、患者の生活の質を最終的に改善する。
【0008】
本発明は、PSMA関連がんの診断及び治療における新規及び改良されたストラテジーのための新規PSMA結合分子を提供する。
【0009】
上記目的及び利点を、開示されるクレームの主題によって達成する。本発明は、例えば、PSMA結合タンパク質の提供により上記の必要性を満足する。上記概要は、必ずしも、本発明によって解決される全ての問題を説明していない。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、特にこれらに限定されないが、次の[1]~[15」を提供する。
[1]前立腺特異的膜抗原(PSMA)結合タンパク質であって、前記PSMA結合タンパク質は、GFAHR、GWAHR、SFAHR、SYAHR、GFAHL、WTTTF、WTPSI、WTETI、GHEYL、GDGDV、KHNTW、VAYRP、若しくはWWNPN、又はこれらと80%の同一性を有するモチーフから選択される少なくとも1つのアミノ酸結合モチーフを含む、PSMA結合タンパク質。
[2]配列番号1に記載のユビキチンをベースとする1つ以上のユビキチン変異タンパク質を含む、[1]に記載のPSMA結合タンパク質。
[3]結合モチーフのアミノ酸残基は、配列番号1に記載のユビキチンの62位、63位、64位、65位、66位に相当し、好ましくは、前記PSMA結合タンパク質は、配列番号1に記載のユビキチンをベースとする1つ以上のユビキチン変異タンパク質を含み、配列番号1に記載のユビキチンの62位、63位、64位、65位、66位に対応するアミノ酸残基においてアミノ酸結合モチーフGFAHR、又はこれと80%の同一性を有するモチーフを含む、[2]に記載のPSMA結合タンパク質。
[4]さらに、配列番号1のユビキチンの6位及び8位に対応するアミノ酸は置換されている、[3]に記載のPSMA結合タンパク質。
[5]さらに、配列番号1のユビキチンの42位、44位、68位、70位、及び72位に対応するアミノ酸は置換されている、[3]に記載のPSMA結合タンパク質。
[6]さらに、ユビキチン(配列番号1)の6位、8位、9位、10位、12位、及び46位に対応するアミノ酸は置換されているか、又はさらにユビキチン(配列番号1)の9位及び10位に対応するアミノ酸間に6以下のアミノ酸が挿入されているか、又はユビキチン(配列番号1)の11位、33位、51位、48位、及び74位に対応するアミノ酸は置換されている、[3]に記載のPSMA結合タンパク質。
[7]前記PSMA結合タンパク質は、[1]~[6]のいずれか1つに記載の複数のPSMA結合タンパク質を含む多量体、好ましくは、[1]~[6]のいずれか1つに記載のPSMA結合タンパク質の二量体である、[1]~[6]のいずれか1つに記載のPSMA結合タンパク質。
[8]配列番号3~55の群から選択される、又はそれぞれ、これらと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列を含むか又はから成る、[1]~[7]のいずれか1つに記載のPSMA結合タンパク質。
[9]前記PSMA結合タンパク質は、500nM以下のPSMAの細胞外ドメインと特異的結合親和性を有する、[1]~[8]のいずれか1つに記載のPSMA結合タンパク質。
[10]前記PSMA結合タンパク質は、化学部分との結合のための1つ以上の結合部位をさらに含み、好ましくは、前記化学部分は、キレート剤、薬剤、トキシン、染料、及び小分子のいずれかから選択される、[1]~[9]のいずれか1つに記載のPSMA結合タンパク質。
[11]放射性核種、蛍光タンパク質、感光剤、染料、若しくは酵素、若しくは上記のいずれかの組合せから必要に応じて選択される少なくとも1つの診断的活性部分をさらに含む、[1]~[10]のいずれか1つに記載のPSMA結合タンパク質。
[12]モノクローナル抗体若しくはそのフラグメント、結合タンパク質、放射性核種、細胞傷害性化合物、サイトカイン、ケモカイン、酵素、若しくはこれらの誘導体、又は上記いずれかの組合せから必要に応じて選択される少なくとも1つの治療的活性部分をさらに含む、[1]~[11]のいずれか1つに記載のPSMA結合タンパク質。
[13]ポリエチレングリコール、ヒト血清アルブミン、アルブミン結合タンパク質、免疫グロブリン結合タンパク質、又は免疫グロブリン若しくは免疫グロブリンフラグメント、多糖類、又はアミノ酸アラニン、グリシン、セリン、プロリンを含む非構造化アミノ酸配列から必要に応じて選択される薬物動態を調節する少なくとも1つの部分をさらに含む、[1]~[12]のいずれか1つに記載のPSMA結合タンパク質。
[14]PSMA関連腫瘍の診断又は治療において使用するため、好ましくは、腫瘍の画像診断のため、及びPSMA関連腫瘍の放射線治療のための、[1]~[13]のいずれか1つに記載のPSMA結合タンパク質。
[15]医療において使用するため、好ましくは、前記PSMA関連腫瘍の診断又は治療において使用するため、好ましくは、腫瘍の画像診断のため及びPSMA関連腫瘍の放射線治療のための、[1]~[14]のいずれか1つに記載のPSMA結合タンパク質を含む組成物。
[16][1]~[15]のいずれか1つに記載のPSMA結合タンパク質の製造方法であって、前記方法は、a)前記PSMA結合タンパク質を得るために適した条件下で宿主細胞を培養するステップ及びb)前記製造されたPSMA結合タンパク質を単離するステップを含む、方法。
【0011】
この纏めは、必ずしも、本発明の全ての特徴を記載しているとは限らない。他の実施形態は、続く詳細な説明の総説から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1~3は、配列番号1(ユビキチン)の62~66位に対応するアミノ酸における特徴的モチーフを有するPSMA結合タンパク質の例を示す。かかるユビキチン変異タンパク質の構造的特徴は、ユビキチンにおいて置換されている(上列の数字)又はユビキチンの9位及び10位間に挿入されている(上列の数字:
図2中の9a、9b、9c、9d、9e、9f)対応するアミノ酸により分かる。機能的特徴は、SPR(Biacore)により決定されるPSMAに対する親和性、DSFにより決定される熱安定性、及び実施例に記載されている細胞結合として分かる。
【
図1】
図1は62~66位における5-アミノ酸モチーフWWNPNを有するPSMA結合タンパク質を示す。ユビキチンの6位、8位、9位、10位、12位、42位、44位、46位、62~66位、68位、70位、72位に対応するアミノ酸は置換されている。いくつかの結合タンパク質では、さらなる置換の列に示されているさらなる置換が見られる。
【
図2】
図2は、62~66位に対応する5-アミノ酸モチーフKHNTWを有するPSMA結合タンパク質を示す。ユビキチンの42位、44位、62~66位、68位、70位、72位に対応するアミノ酸は置換されており、6アミノ酸はユビキチンの9位及び10位間に挿入されている。いくつかの結合タンパク質では、さらなる置換の列に示されているさらなる置換が見られる。
【
図3】
図3は、5-アミノ酸モチーフGFAHR又はGWAHR(又は類似のもの)及び/又は5-アミノ酸WTTTF、WTPSI、WTPTI、若しくはGDGDVを有するPSMA結合タンパク質を示す。ユビキチンの6位、8位、62~66位に対応するアミノ酸は置換されており;2つのユビキチン変異タンパク質は結合している。いくつかのPSMA結合タンパク質では、「さらなる置換」の列に示されているように、さらなる置換は、例えば、ユビキチンの11位、33位、48位、51位、74位で見られる。
【
図4】フローサイトメトリーにより決定されるPSMA結合タンパク質の機能的特徴。ヒストグラムは、PSMA過剰発現HEK293細胞又はPSMA発現LNCaP細胞(灰色ピーク)上の配列番号4の結合(191871と呼ぶ);コントロールセルラインHEK293-pEntry又はPC3上に結合がないことを確証させる。未修飾ユビキチン(bis-ubi;白色ピーク)は、細胞上の結合がないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者らは、新規PSMA結合タンパク質を提供することによってがんの診断及び治療のための医療選択肢を広げるための当技術分野における強力な継続している必要性を満足する解決方法を開発した。本明細書で定義されているPSMA特異的タンパク質は、PSMAに対する高特異的親和性を機能的特徴とする。特に、本発明は、ユビキチン変異タンパク質Affilin(登録商標)をベースとするPSMA結合タンパク質を提供する。本明細書に記載されているPSMA結合タンパク質は、好ましい物理化学的特性、細菌中の高レベル発現を有する分子フォーマットを提供し、容易な製造方法を可能とする。新規PSMA結合タンパク質は、PSMA関連がんの診断及び治療のための今までに対処されていない医療ストラテジーを広げ得る。詳細には、PSMA結合タンパク質は、診断又は画像診断目的のため、例えば、PSMAを発現する腫瘍細胞の存在、及びPSMAを発現する腫瘍の放射線治療のために使用され得る。
【0014】
本発明を以下により詳細に説明する前に、本発明は、これらが変わり得るとき本明細書に記載されている特定の方法、プロトコール及び試薬に限定されないことを理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の態様及び実施形態を説明するためだけのものであり、附属のクレームにより反映される本発明の範囲を限定する目的はないことも理解されるべきである。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者により共通に理解されるのと同じ意味を有する。これは、タンパク質工学及び精製の分野の当業者を含むが、技術的応用並びに治療及び診断において使用するための新規標的特異的結合分子開発の分野の当業者も含む。
【0015】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、バイオテクノロジー用語の多言語用語集:(IUPAC勧告)”,Leuenberger,H.G.W,Nagel,B.and Kolbl,H.eds.(1995),Helvetica Chimica Acta,CH-4010 Basel,Switzerland)に記載されている通りに定義される。
【0016】
続く本明細書及びクレーム全体を通して、文脈上他の意味を必要としない限り、用語「含む(comprise)」、及び「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変化形は、指定された整数若しくはステップ、又は整数若しくはステップの群を含むことを意味しているが、他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を排除することを意味しないと理解された。用語「含む(comprise(s))」又は「含む(comprising)」は、「成る(consists)」又は「から成る(consisting of)」の限界を包含し得、何らかの理由により一定の範囲でかかる限界は必要であるべきである。
【0017】
いくつかの文書(例えば:特許、特許出願、科学出版物、製造仕様書、説明書、GenBank受入番号配列寄託など)は、本明細書全体を通して引用され得る。本明細書において、本発明が先行発明によりこのような開示に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきでない。本明細書で引用されている文書のいくつかは、「参照により組み入れられる」と見做してよい。かかる組み入れられる参照文献の定義若しくは教示又は本明細書に記載されている定義若しくは教示間に矛盾がある場合、本明細書の本文が優先する。
【0018】
本明細書で表される全配列は、附属の配列リストに開示されており、その内容及び開示全体で本明細書の開示内容の一部を形成する。
【0019】
全般的定義
用語「PSMA」は、前立腺特異的膜抗原を表す。ヒトPSMAは、短い細胞内ドメイン(残基1~19)、膜貫通型ドメイン(残基20~43)、及び細胞外ドメイン(残基44~750)を含む約100kDの糖タンパク質である。PSMAは、UniProt ID Q04609(2017年3月15日のバージョン)により表され;ヒトPSMA mRNAは、NCBI参照配列NM_004476.1により表される。用語PSMAは、Q04609と少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、又は100%の配列同一性を示すポリペプチドを含む。
【0020】
用語「PSMA結合タンパク質」は、PSMAと高結合親和性を有するタンパク質を表す。
【0021】
用語「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、ペプチド結合により結合された2つ以上のアミノ酸のいずれもの鎖を表し、特定の長さの産生物を表さない。したがって、タンパク質、アミノ酸鎖、又は2つ以上のアミノ酸の鎖を表すために使用される他の用語は、「ポリペプチド」の定義に含まれ、用語ポリペプチドはこれらの用語のいずれかの代わり、又はこれと互換的に使用され得る。用語ポリペプチドは、当技術分野において周知であるポリペプチドの翻訳後修飾の産生物を表すことも意図される。
【0022】
用語「修飾」又は「アミノ酸修飾」は、親ポリペプチド配列中の特定位置における参照アミノ酸の別のアミノ酸による置換、欠失、又は挿入を表す。公知の遺伝子コード、並びに組換え及び合成DNA技術を考えると、当業者はアミノ酸多様体をコードするDNAを容易に構築することができる。
【0023】
本明細書で使用されるとき、用語「変異タンパク質」は、例えば、配列番号1に記載のユビキチン若しくは配列番号2に記載のビスユビキチン、又は変異タンパク質がPSMAに対する特異的結合親和性を有する条件において、アミノ酸交換、挿入、欠失又はこれらのいずれかの組合せにより前記アミノ酸配列と異なる同様なタンパク質の誘導体を表す。
【0024】
用語「Affilin(登録商標)」(Navigo Proteins GmbHの登録商標)は、非免疫グロブリン由来結合タンパク質を表す。
【0025】
用語「置換」は、アミノ酸を別のアミノ酸により交換することと理解される。用語「挿入」は、アミノ酸を元のアミノ酸配列に付加することを含む。
【0026】
用語ユビキチンは、配列番号1に記載のユビキチン又は配列番号2に記載のビスユビキチン及び少なくとも95%の同一性、例えば、標的(PSMA)との結合に影響を与えない45位、75位、76位における点変異を有するタンパク質を表す。
【0027】
用語結合「親和性」及び「結合親和性」は、本明細書で互換的に使用され得、別のタンパク質、ペプチド、又はそのフラグメント若しくはドメインと結合するポリペプチドの能力を表す。結合親和性は、通常、評価するために使用される平衡解離定数(KD)及び二分子相互作用の強度を順位序列によって測定・報告される。
【0028】
用語「融合タンパク質」は、少なくとも第二タンパク質と遺伝子的に結合された少なくとも第一タンパク質を含むタンパク質に関する。融合タンパク質は、別々のタンパク質を最初にコードした2つ以上の遺伝子の結合により作製される。融合タンパク質は、これらに限定されないが、例えば、多量体形成部分、ポリペプチドタグ、ポリペプチドリンカー又はPSMAと異なる標的と結合する部分など、標的の結合に関連しない付加的ドメインをさらに含み得る。
【0029】
用語「アミノ酸配列同一性」は、2つ以上のタンパク質のアミノ酸配列の同一性(又は相違性)の定量的比較を表す。参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、必要に応じて、配列同一性最大パーセントを達成するように配列アラインメント及びギャップ導入後に、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。配列同一性を決定するため、問い合わせタンパク質の配列を、参照タンパク質又はポリペプチドの配列にアラインメントする。配列アラインメントの方法は、当技術分野において周知である。例えば、アミノ酸配列同一性の程度を決定するため、当技術分野で公知のSIM局所相同性プログラムのアミノ酸配列と比較した任意のポリペプチドの同一性を使用するのが好ましい。マルチプルアラインメント解析のため、当技術分野の当業者に公知であるClustal Omegaが好ましく使用される。
【0030】
用語「多量体結合分子」は、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の結合タンパク質を含む結合タンパク質を表す。前記結合タンパク質は、標的抗原の同じ若しくは重複エピトープ、例えば、PSMAの重複エピトープと特異的に結合し得るか、又は標的抗原の異なるエピトープ、例えば、PSMAの異なるエピトープと結合し得る。
【0031】
本明細書で使用されるとき、用語「複合体(conjugate)」は、非タンパク質性(化学的)部分又は第二タンパク質などの他の物質と化学的に結合された少なくとも第一タンパク質、例えば、本発明のPSMA結合タンパク質を含むタンパク質に関する。
【0032】
用語「エピトープ」は、本明細書で定義されている結合タンパク質と結合することができるいずれもの分子決定因子を含み、結合タンパク質と結合している標的抗原(すなわち、PSMA)の領域であり、結合タンパク質と直接的に接触する特異的アミノ酸を含み得る。
【0033】
PSMA結合タンパク質の構造的特徴。本明細書で定義されている前立腺特異的膜抗原(PSMA)結合タンパク質は、GFAHR、GWAHR、SFAHR、SYAHR、GFAHL、WTTTF、WTPSI、WTETI、GDGDV、KHNTW、VAYRP、及びWWNPN(配列番号55~61及び72~77)、又は、それぞれ、これらと少なくとも80%同一性を有するアミノ酸モチーフから成る群から選択される少なくとも1つのアミノ酸結合モチーフを含む。様々な実施形態では、PSMA結合タンパク質は、ユビキチン(配列番号1)の変異タンパク質を含む。様々な実施形態では、PSMA結合タンパク質は、GFAHR、GWAHR、SFAHR、SYAHR、GFAHL、WTTTF、WTPSI、WTETI、GDGDV、KHNTW、VAYRP、及びWWNPN、又は類似モチーフの群から選択されるアミノ酸結合モチーフを含み、結合モチーフのアミノ酸残基は配列番号1に記載のユビキチンの62位、63位、64位、65位、66位に対応する。様々な実施形態では、PSMA結合タンパク質は、配列番号1に記載のユビキチンの変異タンパク質を含み、ユビキチン変異タンパク質は、ユビキチン(配列番号1)の62位、63位、64位、65位、66位に対応する位置において、GFAHR、GWAHR、SFAHR、SYAHR、GFAHL、WTTTF、WTPSI、WTETI、GDGDV、KHNTW、VAYRP、若しくはWWNPN、又は類似モチーフから選択される少なくとも1つのアミノ酸結合モチーフを含む。
【0034】
モチーフWWNPNを有するPSMA結合タンパク質
様々な実施形態では、PSMA結合タンパク質は、ユビキチン(配列番号1)の62位、63位、64位、65位、66位に特徴的なアミノ酸モチーフWWNPNを有する。様々な実施形態では、PSMA結合タンパク質は、配列番号1に記載のユビキチンの変異タンパク質を含み、ユビキチン変異タンパク質はユビキチン(配列番号1)の62位、63位、64位、65位、66位に対応する位置においてアミノ酸結合モチーフWWNPN、及び配列番号1の6位、8位、9位、10位、12位、42位、44位、46位、68位、70位、72位に対応する位置におけるあらなる置換を含む。いくつかの実施形態では、PSMA結合タンパク質は、Q62W、K63W、E64N、S65P、及びT66Nにさらに、K6Y又はK6W;L8R又はL8A又はL8K;T9A、T9V、T9E、又はT9Q;G10L又はG10F;T12Q;R42M又はR42K又はR42T;I44F又はI44K;A46K又はA46R;H68S;V70N又はV70D;R72D又はR72N又はR72Gの群から選択されるさらなる置換により修飾された少なくとも1つのユビキチン変異タンパク質を含むか又はから成る。いくつかの実施形態では、PSMA結合タンパク質は、例えば、これらに限定されないが、E16A、E18G、I23V、K29R、Q31R、K33R、I36T、K48R、L71R、及びL73R(例えば、配列番号38、39、40、41、47、48、49、50、51参照)の群から選択される付加的1、2、又は3置換を有するユビキチン変異タンパク質を含む。
【0035】
様々な実施形態では、PSMA結合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸6位、8位、9位、10位、12位、42位、44位、46位、62位、63位、64位、65位、66位、68位、70位、及び72位において置換を有するユビキチン変異タンパク質を含むか又はから成り、ユビキチン変異タンパク質は62位、63位、64位、65位、66位における特徴的な5つのアミノ酸モチーフWWNPNを有する。
図1は、配列番号1の6位、8位、9位、10位、12位、42位、44位、46位、62位、63位、64位、65位、66位、68位、70位、及び72位におけるアミノ酸置換を有するPSMA結合タンパク質の例を示す。
【0036】
1つの実施形態では、PSMA結合タンパク質は、配列番号35~51、例えば、これらに限定されないが、配列番号40(Affilin-187191)(PSMA結合をもたらす配列番号1との異なる部分に下線を引いている)から成る群から選択される1つ以上のアミノ酸を含む。
【0037】
MQIFVYTRALKQITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQMLFWKGRQLEDGRTLSDYNIWWNPNLSLNLDLRAA。
【0038】
モチーフKHNTW又はVAYRPを有するPSMA結合タンパク質
様々な実施形態では、PSMA結合タンパク質は、ユビキチン(配列番号1)の62位、63位、64位、65位、66位に特徴的なアミノ酸モチーフKHNTWを有する。様々な実施形態では、PSMA結合タンパク質は、ユビキチン(配列番号1)のR42H、I44Y、Q62K、K63H、E64N、S65T、T66W、H68E、V70M、及びR72Fから選択される置換により修飾されたユビキチン変異タンパク質を含むか又はから成る。
【0039】
様々な実施形態では、PSMA結合タンパク質は、ユビキチン(配列番号1)の62位、63位、64位、65位、66位に特徴的なアミノ酸モチーフVAYRPを有する。他の実施形態では、PSMA結合タンパク質は、ユビキチン(配列番号1)のR42I、I44W、Q62V、K63A、E64Y、S65R、T66P、H68Y、V70T、及びR72Aから選択される置換により修飾されたユビキチン変異タンパク質を含むか又はから成る。
【0040】
いくつかの実施形態では、PSMA結合タンパク質は、ユビキチン(配列番号1)のアミノ酸T9及びG10間の4~8アミノ酸の挿入により、好ましくは、6アミノ酸の挿入によりさらに修飾されたユビキチン変異タンパク質を含む。様々な実施形態では、PSMA結合タンパク質は、9位及び10位間の6アミノ酸モチーフの挿入を有し、6番目の位置のアミノ酸は好ましくは芳香族アミノ酸、又はMである。かかる挿入のアミノ酸モチーフは、これらに限定されないが、FEHXSF(Xはいずれかのアミノ酸、好ましくはP、H、K、又はNから選択される);PQPPEX(XはW、F、又はYから選択される);PPFAFW、PIPPDW、又はDMYRFMを含んでよい。
【0041】
様々な実施形態では、PSMA結合タンパク質は、配列番号1に記載のユビキチンの変異タンパク質を含むか又はから成り、ユビキチン変異タンパク質はユビキチン(配列番号1)の62位、63位、64位、65位、66位に対応する位置においてKHNTW又はVAYRPから選択される少なくとも1つのアミノ酸モチーフ、並びにユビキチン(配列番号1)の42位、44位、68位、70位、72位に対応する位置においてさらなる置換、並びにユビキチン(配列番号1)のアミノ酸T9及びG10間の4~8アミノ酸の挿入を含む。
【0042】
様々な実施形態では、PSMA結合タンパク質は、配列番号1の42位、44位、62位、63位、64位、65位、66位、68位、70位、及び72位に対応するアミノ酸における置換及び配列番号1の9位の6アミノ酸の挿入を有するユビキチン変異タンパク質を含むか又はから成り、ユビキチン変異タンパク質は62位、63位、64位、65位、66位に対応する特徴的5アミノ酸モチーフKHNTW又はVAYRPを有する。さらなる1つ、2つ、又は3つの位置は、例えば、これらに限定されないが、ユビキチンのA46Vに置換されていてよい(配列番号29参照)。
【0043】
図2は、配列番号1の42位、44位、62位、63位、64位、65位、66位における特定のアミノ酸及び配列番号1の9位及び10位間の6アミノ酸(
図2の9a、9b、9c、9d、9e、9fとして示されている)の挿入の例を示す。
【0044】
1つの実施形態では、PSMA結合は、配列番号25~34、例えば、配列番号25(Affilin-164667)から成る群から選択されるアミノ酸を含む。
【0045】
MQIFVKTLTFEHPSFGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQHLYWAGKQLEDGRTLSDYNIKHNTWLELMLFLRAA(PSMA結合をもたらす配列番号1との異なる部分に下線を引いている)。
【0046】
モチーフGWAHR/GFAHR若しくは類似及び/又はWTTTF若しくは類似を有するPSMA結合タンパク質
いくつかの実施形態では、PSMA結合タンパク質は、ユビキチンの62位、63位、64位、65位、66位に特徴的5アミノ酸モチーフGWAHR又はGFAHR又はSFAHR又はSYAHR又はGFAHL又はこれらの多様体を有するユビキチン変異タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、PSMA結合タンパク質は、配列番号1に記載のユビキチンをベースとする1つ以上のユビキチン変異タンパク質を含み、配列番号1に記載のユビキチンの62位、63位、64位、65位、66位に対応するアミノ酸残基においてアミノ酸結合モチーフGFAHR、又はこれと80%の同一性を有するモチーフを含む。いくつかの実施形態では、PSMA結合タンパク質は、配列番号1に記載のユビキチンの62位、63位、64位、65位、66位に対応するアミノ酸残基において、配列番号1に記載のユビキチンをベースとしアミノ酸結合モチーフX1X2AHX3を含む1つ以上のユビキチン変異タンパク質を含み、X1はG又はSから選択され、X2は芳香族アミノ酸、好ましくはW又はFから選択され、X3はR又はLから選択される。いくつかの実施形態では、PSMA結合タンパク質は、配列番号1に記載のユビキチンをベースとしアミノ酸結合モチーフG(X)AHRを含む1つ以上のユビキチン変異タンパク質を含み、Xは芳香族アミノ酸残基、好ましくは、XはF又はWから選択される。いくつかの実施形態では、PSMA結合タンパク質は、配列番号1に記載のユビキチンの62位、63位、64位、65位、66位に対応するアミノ酸残基において、配列番号1に記載のユビキチンをベースとしアミノ酸結合モチーフGFAHR、GWAHR、SFAHR、又はSYAHR又はGFAHLを含む1つ以上のユビキチン変異タンパク質を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、PSMA結合タンパク質は、ユビキチンの62位、63位、64位、65位、66位に特徴的5アミノ酸モチーフWTTTF(配列番号58)又はWTPSI(配列番号75)又はWTETI(配列番号76)又はGDGDV(配列番号77)又はこれらの多様体を有するユビキチン変異タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、PSMA結合タンパク質は、2つのユビキチン部分を含むか又はから成り、第一ユビキチン部分はモチーフGFAHR(配列番号56)若しくはGWAHR(配列番号57)若しくはSFAHR(配列番号72)若しくはSYAHR(配列番号73)若しくはGFAHL(配列番号74)若しくは類似モチーフを有するか又は第二ユビキチン部分はモチーフWTTTF若しくはWTPSI若しくはWTETI若しくはGDGDV若しくは類似モチーフを有する。様々な実施形態では、PSMA結合タンパク質は、2つのユビキチン部分を含むか又はから成り、第一ユビキチン部分はモチーフGFAHR又はGWAHR又はSFAHR又はSYAHR又はGFAHL又は類似モチーフを有し、第二ユビキチン部分はモチーフWTTTF又はWTPSI又はWTETI又はGDGDV又は類似モチーフを有する。
図3は、2つのユビキチン部分から成るPSMA結合タンパク質中の6位、8位、62位、63位、64位、65位、66位における特定のアミノ酸の例を示す。様々な実施形態では、PSMA結合タンパク質は、相互に融合された配列番号1の6位、8位、62位、63位、64位、65位、66位に対応するアミノ酸の置換を有する2つのユビキチン変異タンパク質を含むか又はから成り、N末端に位置するユビキチン変異タンパク質は62位、63位、64位、65位、66位に対応する特徴的5アミノ酸モチーフGFAHR又はGWAHR又はSFAHR又はSYAHR又はGFAHLを有し、C末端に位置するユビキチン変異タンパク質は
図3に示されているように62位、63位、64位、65位、66位に対応する特徴的5アミノ酸モチーフWTTTF又はWTPSI又はWTETI又はGDGDVを有する。
【0048】
いくつかの実施形態では、ユビキチン変異タンパク質は、K6R又はK6W;L8M、L8P、L8Q、L8W、L8D、L8G、L8H、又はL8I;Q62G、Q62S、又はQ62W;K63F、K63W、K63G、K63P、又はK63Y;E64A又はE64G;S65H又はS65D;及びT66R、T66Q、又はT66Lから選択される置換を有する。いくつかの実施形態では、ユビキチン変異タンパク質は、K6M、K6L、K6A,又はK6H;L8Q、L8R、L8F、L8N,又はL8H;Q62W又はQ62G;K63T、K63H,又はK63D;E64T、E64P、E64E,又はE64G;S65T、S65Y,又はS65D、及びT66F、T66I、T66L,又はT66Vから選択される置換を有する。
【0049】
いくつかの実施形態では、PSMA結合タンパク質は、例えば、これらに限定されないが、ユビキチンの10位、11位、33位、48位、48位、51位、74位の、特定の実施形態では、例えば、ユビキチンのG10Q、K11Q、K33T、K48T、E51A、R74C(例えば、配列番号11、12、17、19参照)の群から選択されるさらなる置換によりさらに修飾されたユビキチン変異タンパク質を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、PSMA結合タンパク質は、相互に結合された2つのユビキチン変異タンパク質を含む、すなわち、PSMA結合タンパク質は、ビスユビキチン(配列番号2)の変異タンパク質を含む。
【0051】
1つの実施形態では、PSMA結合タンパク質は、例えば、配列番号3~24から成る群から選択される1つ以上のアミノ酸を含む(PSMA結合もたらす配列番号1又は配列番号2との異なる部分に下線を引いている)。
【0052】
配列番号3(Affilin-162462)
MQIFVRTPTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIWAGKQLEDGRTLSDYNIGFAHRLHLVLRLRAAMQIFVMTQTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIWAGKQLEDGRTLSDYNIWTTTFLHLVLRLRAA;
配列番号4(Affilin-191871)MQIFVRTQTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIWAGKQLEDGRTLSDYNIGWAHRLHLVLRLRAAMQIFVHTNTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIWAGKQLEDGRTLSDYNIWTETILHLVLRLRAA。
【0053】
本発明のPSMA結合タンパク質は、配列番号3~55から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むか又はからなる。いくつかの実施形態では、PSMA結合タンパク質は、配列番号3~55のアミノ酸配列の1つ以上と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。例えば、これらに限定されないが、選択されたPSMA結合タンパク質のアミノ酸配列を、
図1、
図2、及び
図3に示す。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているPSMA結合タンパク質は、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも74%、75%、76%、77%、78%、又は79%の配列同一性を有する。様々な実施形態では、本明細書に開示されているPSMA結合タンパク質は、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。本明細書に開示されているPSMA結合タンパク質は、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも81%、82%、83%、84%、又は85%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているPSMA結合タンパク質は、ユビキチン(配列番号1)又はビスユビキチン(配列番号2)のアミノ酸配列と74%の同一性~90%の同一性のいずれかのアミノ酸同一性を有してよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているPSMA結合タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%のいずれかのアミノ酸同一性を有してよい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているPSMA結合タンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%のいずれかのアミノ酸同一性を有してよい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているPSMA結合タンパク質は、配列番号25のアミノ酸配列と少なくとも90%のいずれかのアミノ酸同一性を有してよい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているPSMA結合タンパク質は、配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも90%のいずれかのアミノ酸同一性を有してよい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているPSMA結合タンパク質は、配列番号40のアミノ酸配列と少なくとも90%のいずれかのアミノ酸同一性を有してよい。
【0056】
多量体。好ましい実施形態では、PSMA結合タンパク質は、本明細書で定義されている複数のPSMA結合タンパク質を含む多量体である。多量体は、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のPSMA結合タンパク質を含んでよい。1つの実施形態では、PSMA結合タンパク質は、相互に結合された2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のPSMA結合タンパク質を含み、すなわち、PSMA結合タンパク質は二量体、三量体、又は四量体などであり得る。いくつかの実施形態では、多量体は、上記定義されているようにPSMA結合タンパク質の二量体である。様々な実施形態では、PSMA結合タンパク質は、ホモ二量体である。本明細書で理解されるホモ二量体PSMA結合タンパク質は、同じアミノ酸配列を有する2つのPSMA結合タンパク質が相互に結合されているタンパク質である。ホモ二量体を、配列番号3~51又はこれらと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列のいずれかの群のいずれか1つの2つの同じタンパク質を融合することによって製造することができる。例えば、これらに限定されないが、ホモ二量体は、配列番号52(配列番号3の二量体)及び配列番号53(配列番号25の二量体)に例示されている。
【0057】
他の実施形態では、多量体は、ヘテロ二量体であり、例えば、PSMA結合タンパク質の2つのアミノ酸配列は異なる。例えば、ヘテロ二量体を、配列番号54(配列番号25及び配列番号3の二量体、N末端からC末端)及び配列番号55(配列番号3及び配列番号25の二量体、N末端からC末端)に示されているように製造した。
【0058】
いくつかの実施形態では、2つ以上のPSMA結合タンパク質は、直接的に結合している。いくつかの実施形態では、2つ以上のPSMA結合タンパク質は、ペプチドリンカーによって結合している。様々な実施形態では、2つ以上のPSMA結合タンパク質は、30アミノ酸以下のペプチドリンカーによって結合している。他の実施形態では、2つ以上のPSMA結合タンパク質は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20アミノ酸のペプチドリンカーによって結合している。1つの実施形態では、2つのPSMA結合タンパク質は、16アミノ酸によって結合している。
【0059】
1つの実施形態は、グリシン、セリン、アラニン、又はプロリンの群の少なくとも2つ又はそれ以上から選択されるアミノ酸からなるリンカーに関する。いくつかの実施形態では、2つ以上のPSMA結合タンパク質は、SAPAASPSPAAPAPSPASPAPASPASAPSAPASAPPAASA(配列番号62)又はPAAPAPSPASPAPASPASAPS(配列番号63)又はこれらと少なくとも90%の同一性を有するペプチドリンカーのいずれか1つによるアミノ酸配列のペプチドリンカーによって結合されている。タンパク質の融合のための他のリンカーは、当技術分野において公知であり、使用することができる。
【0060】
機能的特性化。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているPSMA結合タンパク質は、FACSにより決定される細胞において発現されたPSMAと結合し、及び/又は表面プラズモン共鳴アッセイにより決定される500nM以下のPSMAに対する結合親和性を有する。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているPSMA結合タンパク質は、PSMAに対する500nM未満の結合親和性(KD)を有する。PSMA結合タンパク質は、500nM未満、200nM未満、100nM未満、50nM未満、20nM未満、10nM未満、5nM未満、及び1nM未満の測定可能な結合親和性を有するPSMAと結合する。適切な方法は当業者に公知であり、又は文献に記載されている。結合親和性を決定するための方法はそれ自体公知であり、例えば、当技術分野において公知の次の方法から選択することができる:酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、表面プラズモン共鳴法(SPR)、反応速度排除分析(KinExAアッセイ)、バイオレイヤー干渉法(BLI)、フローサイトメトリー、蛍光分光法技術、等温滴定熱量測定(ITC)、分析超遠心、ラジオイムノアッセイ(RIA又はIRMA)、及び高感度ケミルミネッセンス法(ECL)。一部の方法は下記実施例に記載されている。通常、解離定数K
Dを、20℃~30℃の温度範囲、例えば、20℃、25℃、又は30℃で決定する。特に別段に指定されない限り、本明細書に記載されているK
D値はSPRにより25℃において決定される。K
D値が低いほど、その結合パートナーに対する生体分子の結合親和性はより大きい。K
D値が高いほど、結合パートナーは、より弱く相互と結合する。
図1、
図2,
図3及び実施例において実施例を提供する。本明細書に記載されているPSMA結合タンパク質の結合は、PSMAに対して極めて特異的である。ユビキチン(配列番号1)は、PSMAと結合しない。本明細書に記載されているPSMA結合タンパク質はPSMAと結合するが、表面プラズモン共鳴アッセイにより決定されるとき、免疫グロブリンIgG
1のヒトFcドメインと検出できるほど結合しない。500nM未満のK
Dを有するPSMAとの結合は、PSMA関連がんのための標的医療の応用にとって重要であり得る。さらに、500nM未満のK
Dを有するPSMA結合を有するタンパク質は、潜在的有害副作用を低減したかもしれない。いくつかの実施形態では、PSMA結合タンパク質は、(a)GFAHR、GWAHR、SFAHR、SYAHR、GFAHL、WTTTF、WTPSI、WTETI、GHEYL、GDGDV、KHNTW、VAYRP、及びWWNPN、又はこれらと80%の同一性を有するモチーフから選択されるユビキチン(配列番号1)の62位、63位、64位、65位、及び66位に対応する位置において5アミノ酸残基モチーフ;(b)配列番号1と80%~93%配列同一性;並びに(b)PSMAに対して500nM未満の結合親和性(K
D)を有するユビキチン変異タンパク質を含む。
【0062】
最大半量効果濃度EC50は、特定の露光時間後にベースライン及び最大値間の中間の応答を含むPSMA結合タンパク質の濃度を表し、したがって、その最大効果の50%が観察されるPSMA結合タンパク質濃度であり、この場合、細胞結合、フローサイトメトリー実験において最大半量蛍光強度シグナルである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているPSMA結合タンパク質は、PSMA発現細胞に対して100nM未満、50nM未満、20nM未満、10nM未満、5nM未満、及び1nM未満のEC50を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているPSMA結合タンパク質は、37℃で少なくとも24時間マウス血清の存在下でのインキュベーション後、1nM未満のPSMA発現細胞に対するEC50を有する。適切な方法は当業者に公知である。EC50値が低いほど、PSMAに対するPSMA結合タンパク質の結合はより大きい。血清存在下でさえ安定なPSMA結合タンパク質の例を表4に示す。
【0063】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているPSMA結合タンパク質は、85℃以下の高温において安定である。安定性分析のため、例えば、化学的又は物理的アンフォールディングに関連した分光学的又は蛍光ベース方法は、当業者に公知である。例えば、分子の安定性を、標準的方法を用いて、熱融点(T
m)、分子の半量がアンフォールディングする摂氏温度(℃)の測定によって決定することができる。通常、T
mが高いほど、分子はより安定である。温度安定性を、実施例及び
図1、
図2、
図3にさらに詳細に記載されている示差走査蛍光定量法(DSF)によって決定した。
【0064】
PSMA結合タンパク質を比較する競合結合実験は、異なるモチーフを有するPSMA結合タンパク質が同じでない又は重複していないエピトープと結合し得ることを示す(実施例参照)。例えば、モチーフKHNTWを有する配列番号25は、モチーフGFAHR及びWTTTFを有する配列番号15と異なるエピトープと結合する。したがって、特定のPSMA結合タンパク質は、PSMA結合を得るために競合せず、特定の診断又は治療応用に特に適している。
【0065】
PSMA過剰発現細胞との細胞PSMA結合分析によってさらなる機能的特性化を行った。免疫蛍光顕微鏡法及びフローサイトメトリー分析は、ヒト起源由来PSMAポジティブ腫瘍セルライン及び生細胞のPSMAとの、本明細書に記載されているPSMA結合タンパク質の特定の結合を確証させた(実施例参照)。
【0066】
結合部位。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているPSMA結合タンパク質は、化学部分の結合のための1つ以上の結合部位をさらに含む。結合部位は、PSMA結合タンパク質を化学部位と結合するための他の化学基と反応することができる。結合部位の定義数及び定義位置は、本明細書に記載されているPSMA結合タンパク質との、化学部分の部位特異的結合を可能とする。したがって、多数の化学部分は、必要に応じて、PSMA結合タンパク質と結合することができる。結合部位数を、それに応じて化学部分の量を調節するように当業者によって特定の応用のために最適数に調節することができる。選択された実施形態では、結合部位を、1つ以上のシステイン残基、1つ以上のリジン残基、1つ以上のチロシン残基、1つ以上のトリプトファン残基、又は1つ以上のヒスチジン残基など、特定の化学で標識化することができる1つ以上のアミノ酸の群から選択してよい。PSMA結合タンパク質は、1~6結合部位など、2結合部位、又は1結合部位など、1~20結合部位を含んでよい。
【0067】
結合ドメイン。1つの実施形態は、1つ以上の結合部位を含む1~80アミノ酸の少なくとも1つの結合ドメインを含むPSMA結合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、1~80アミノ酸の結合ドメインは、アラニン、プロリン、又はセリン、及び結合部位としてシステインを含んでよい。アミノ酸SACの結合ドメインを有するPSMA結合タンパク質の例を、配列番号5(C末端アミノ酸SACを有するAffilin-191871)に提供する。他の実施形態では、1~80アミノ酸残基の結合ドメインは、アラニン、プロリン、セリン、及び結合部位としてシステインから成ってよい。1つの実施形態では、結合ドメインは、20~60%のアラニン、20~40%のプロリン、10~60%のセリン、及び本明細書に記載されているPSMA結合タンパク質のC末端又はN末端における結合部位として1つ以上のシステイン残基から成る。いくつかの実施形態では、アミノ酸アラニン、プロリン、及びセリンを、最大以下の2、3、4、又は5同一アミノ酸残基、好ましくは、最大の3アミノ酸が隣接するように、結合ドメインアミノ酸配列全体にわたって無作為に分布させる。1~20結合ドメインの組成は、異なっていてもよく、同じでもよい。
【0068】
結合部位(システイン)との結合ドメインの選択された例のアミノ酸組成を表1に示す。
【0069】
【0070】
いくつかの実施形態では、化学部分は、キレート剤、薬剤、トキシン、染料、及び小分子のいずれかから選択される。いくつかの実施形態では、化学部分の少なくとも1つは、化合物を本明細書に記載されているPSMA結合タンパク質に標的化された化合物と、1つ以上のさらなる部分を結合するための錯生成剤として設計されたキレート剤である。1つの実施形態は、キレート剤が、実施例に記載されているように、1つ以上の放射性同位体又は他の検出可能な標識を結合するための錯生成剤である、PSMA結合タンパク質に関する。
【0071】
診断部分。様々な実施形態では、PSMA結合タンパク質は、診断部分をさらに含む。他の実施形態では、PSMA結合タンパク質は、1つより多い診断部分をさらに含む。いくつかの実施形態では、かかる診断部分は、放射性核種蛍光タンパク質、感光剤、染料、若しくは酵素、又は上記のいずれかの組合せから選択してよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの診断部分を含むPSMA結合タンパク質を、例えば、造影剤として、例えば、腫瘍細胞若しくは腫瘍転移、腫瘍分布、及び/又は腫瘍再発を評価するために使用することができる。がん細胞の検出又はモニター方法は、画像診断方法を含む。かかる方法は、例えば、放射性イメージング又は光ルミネセンス若しくは蛍光によってPSMA関連がん細胞の画像診断を含む。
【0072】
治療部分。様々な実施形態では、PSMA結合タンパク質は、治療活性部分をさらに含む。他の実施形態では、PSMA結合タンパク質は、1つより多い治療活性部分をさらに含む。いくつかの実施形態では、かかる治療活性部分を、モノクローナル抗体若しくはそのフラグメント、ユビキチン変異タンパク質(Affilin)、受容体の細胞外ドメイン若しくはそのフラグメント、放射性核種、細胞傷害性化合物、サイトカイン、ケモカイン、酵素、若しくはその誘導体、又は上記のいずれかの組合せから選択してよい。いくつかの実施形態では、治療活性成分を含むPSMA結合タンパク質を、PSMA発現腫瘍細胞への上記成分のいずれかの標的化遺伝子導入に使用してよく、その中に蓄積して、それにより、正常細胞に対する低レベルの有害性をもたらす。
【0073】
放射性核種。インビボ若しくはインビトロでの画像診断における応用又は放射線療法のために適切な放射性核種としては、例えば、γ線放射性同位体の群、ポジトロン放射体の群、β線放射体の群、及びα線放射体の群が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、適切な結合パートナーとしては、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)若しくはジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)などのキレート剤又はそれらの活性化誘導体、ナノ粒子及びリポソームが挙げられる。様々な実施形態では、DOTAは、さらなる詳細に実施例に記載されているように画像診断のための放射性同位体及び他の薬剤に錯生成剤として適し得る。
【0074】
薬物動態を調節する部分。いくつかの実施形態では、PSMA結合タンパク質は、ポリエチレングリコール、ヒト血清アルブミン、アルブミン結合タンパク質、免疫グロブリン結合タンパク質、又は免疫グロブリン若しくは免疫グロブリンフラグメント、多糖類(例えば、ヒドロキシエチルデンプン)、又はアミノ酸アラニン、グリシン、セリン、プロリンを含む多量体などの流体力学半径を増大する非構造化アミノ酸配列から必要に応じて選択される薬物動態を調節する少なくとも1つの部分をさらに含む。様々な実施形態では、前記部分は、少なくとも1.5倍PSMA結合タンパク質の半減期を増大する。延長された半減期を有するPSMA結合タンパク質の製造のためのいくつかの技術は当技術分野において公知であり、例えば、上記のPSMA結合タンパク質を用いた薬物動態を調節する部分の直接融合又は化学カップリング法がある。薬物動態を調節する部分を、例えば、ペプチドリンカー配列又は上記カップリング部位によりPSMA結合タンパク質の1つ又はいくつかの部位において結合することができる。
【0075】
PSMA結合タンパク質へのタンパク質性又は非タンパク質性部分の結合を、当技術分野において周知の化学的方法を適用して行ってよい。いくつかの実施形態では、システイン又はリジン残基の誘導体化に特異的な結合化学を適用でき得る。化学結合を、当業者に周知の化学によって行うことができ、置換、付加若しくは環化付加又は酸化化学(例えば、ジスルフィド生成)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
精製/検出のための分子。いくつかの実施形態では、追加のアミノ酸は、PSMA結合タンパク質のN末端若しくはC末端又は両方のいずれかにおいて延長することができる。追加の配列は、例えば、精製又は検出のために導入される配列を含み得る。1つの実施形態では、追加のアミノ酸配列は、特定のクロマトグラフィーカラム物質との親和性を付与する1つ以上のペプチド配列を含む。かかる配列の典型的な例としては、Strepタグ(例えば、配列番号71参照)、オリゴヒスチジンタグ、グルタチオンS-転移酵素、マルトース結合タンパク質、インテイン、インテインフラグメント、又はタンパク質Gのアルブミン結合ドメインが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
医薬用途。様々な実施形態は、医薬において使用するための本明細書に開示されているPSMA結合タンパク質に関する。1つの実施形態では、PSMA結合タンパク質を、PSMA発現に関連するがんを診断又は治療するための医薬において使用する。本明細書に開示されているPSMA結合タンパク質は、PSMA関連がん細胞又はがん組織の選択的診断及び治療を可能とする。PSMAは、腫瘍細胞において上方制御されることが分かっている。PSMAは、前立腺がん並びに、例えば、これらに限定されないが、肝がん、甲状腺がん、B細胞濾胞性リンパ腫、リンパ節、及び骨転移、並びに他の固形腫瘍から選択される、好ましくは、乳がん、腎(renal)/腎(kidney)がん、多発性骨髄腫、脳腫瘍、肺がん、卵巣がん、結腸直腸がん、膀胱がん及び胃がんから選択されるその転移において高度に発現される。
【0078】
1つの実施形態は、PSMA関連がんを有する対象の診断(モニタリングを含む)方法であり、前記診断(モニタリング)方法は、必要に応じて放射活性分子と結合された記載のPSMA結合タンパク質を対象に投与することを含む。様々な実施形態では、本明細書に開示されているPSMA結合タンパク質を、必要に応じて、PSMA結合タンパク質が放射活性分子と結合されているPSMA関連がんの診断のために使用してよい。いくつかの実施形態では、放射活性又は蛍光などの標識を有するPSMA結合タンパク質を使用する画像診断方法を、例えば、PSMA関連腫瘍細胞、PSMA関連腫瘍分布、PSMA関連腫瘍の再発を評価、及び/又は治療処置に対する患者の応答を評価するために、特定の組織又は細胞上のPSMAを可視化するために使用することができる。
【0079】
1つの実施形態は、PSMA関連がんを有する対象の治療方法であり、前記治療方法は、必要に応じて放射活性分子及び/又は細胞傷害薬と結合された記載のPSMA特異的結合タンパク質を対象に投与することを含む。様々な実施形態では、本明細書に開示されているPSMA結合タンパク質を、必要に応じて、PSMA結合タンパク質が細胞傷害薬及び/又は放射活性分子と結合されているPSMA関連がんの治療のために使用してよい。いくつかの実施形態は、PSMA関連腫瘍細胞の治療のために、特に、PSMA関連腫瘍細胞、例えば、悪性細胞を制御又は殺生するために適切な放射性同位体又は細胞傷害性化合物で標識化されたPSMA結合タンパク質の使用に関する。1つの実施形態では、放射線の治癒線量を、PSMA関連腫瘍細胞に選択的に送達するが、正常細胞に送達しない。
【0080】
組成物。様々な実施形態は、本明細書に開示されているPSMA結合タンパク質を含む組成物に関する。医薬において使用するため、好ましくは、前立腺がん及びその転移、肝がん、甲状腺がん、B細胞濾胞性リンパ腫、リンパ節、及び骨転移、腎(renal)/腎(kidney)がん、多発性骨髄腫、脳腫瘍、肺がん、卵巣がん、結腸直腸がん、膀胱がん、胃がん、及びその他などの様々なPSMA関連がん腫瘍の診断又は治療において使用するための上記定義されているPSMA結合タンパク質を含む組成物。上記定義されているPSMA結合タンパク質を含む組成物を、診断及び治療目的の両方の臨床応用のために使用してよい。詳細には、上記のPSMA結合タンパク質を含む組成物を、PSMAを発現する病的細胞を画像診断、モニタリング、及び排除又は不活性化するための臨床応用のために使用してよい。
【0081】
様々な実施形態は、本明細書で定義されているPSMA結合タンパク質並びに診断的に許容可能な担体及び/又は希釈剤を含むPSMA関連がんの診断のための診断用組成物に関する。これらとしては、例えば、安定剤、表面活性剤、塩類、緩衝剤、着色料などが挙げられるが、これらに限定されない。組成物は、液体製剤、凍結乾燥物、顆粒剤の形態、乳剤又はリポソーム製剤の形態であり得る。
【0082】
本明細書に記載されているPSMA結合タンパク質を含む診断用組成物を、上記のPSMA関連がんの診断のために使用することができる。
【0083】
様々な実施形態は、本明細書に開示されているPSMA結合タンパク質、並びに薬剤的に(例えば、治療的に)許容可能な担体及び/又は希釈剤を含む疾病の治療のための医薬(例えば、治療用)組成物に関する。医薬(例えば、治療用)組成物は、それ自体公知のさらなる助剤及び賦形剤を必要に応じて含有してよい。これらとしては、例えば、安定剤、表面活性剤、塩類、緩衝剤、着色料などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
本明細書に定義されているPSMA結合タンパク質を含む医薬組成物を、上記の疾病の治療のために使用することができる。
【0085】
組成物は、本明細書に定義されているPSMA結合タンパク質の効果的用量を含む。投与しようとするタンパク質量は、生物、疾病の種類、患者の年齢及び体重並びにそれ自体公知のさらなる因子に依存する。ガレヌス製剤(galenic preparation)に応じて、これらの組成物を、注射若しくは点滴、全身的、腹腔内、筋肉内、皮下、経皮により非経口的に、又は他の従来使用されている適用方法により投与することができる。
【0086】
組成物は、液体製剤、凍結乾燥物、クリーム剤、局所塗布用ローション剤、エアロゾル剤の形態、散剤、顆粒剤の形態、乳剤又はリポソーム剤の形態であり得る。製剤の種類は、疾病の種類、投与経路、疾病の重症度、医薬の技術分野の当業者に公知の患者及び他に依存する。
【0087】
組成物の様々な成分を、使用説明書を備えるキットとして包装してよい。
【0088】
PSMA結合タンパク質の製造。本明細書に記載されているPSMA結合タンパク質を、プレーン有機合成ストラテジー、固相支援合成技術、フラグメントライゲーション技術など多くの従来及び周知の技術又は市販自動合成装置によって製造してよい。一方、本明細書に記載されているPSMA結合タンパク質を、従来の組換え技術単独又は従来の合成技術との組合せで製造してもよい。さらに、本明細書に記載されているPSMA結合タンパク質を、細胞フリーインビトロ転写/翻訳によって製造してもよい。
【0089】
様々な実施形態は、本明細書に開示されているPSMA結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドに関する。1つの実施形態は、前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び前記単離ポリヌクレオチド又は発現ベクターを含む宿主細胞をさらに提供する。
【0090】
様々な実施形態は、前記PSMA結合タンパク質の発現及び必要に応じて前記PSMA結合タンパク質を単離することを可能とする適切な条件下、宿主細胞の培養することを含む本明細書に開示されているPSMA結合タンパク質の製造方法に関する。
【0091】
例えば、PSMA結合タンパク質をコードする1つ以上のポリヌクレオチドは、適切な宿主細胞内で発現され得、産生されたPSMA結合タンパク質を単離することができる。宿主細胞は、前記核酸分子又はベクターを含む。適切な宿主細胞としては、原核生物又は真核生物が挙げられる。ベクターは、宿主細胞内にタンパク質コード情報を導入するために使用することができるいずれかの分子又は実体(例えば、核酸、プラスミド、バクテリオファージ又はウイルス)を意味する。様々な細胞培養システム、例えば、これらに限定されないが、哺乳類、酵母、植物、又は昆虫を使用して組換えタンパク質を発現することもできる。原核生物又は真核生物宿主細胞を培養するために適切な条件は、当業者に周知である。タンパク質製造の目的のための細胞培養及びタンパク質発現を、あらゆる規模で、少量振盪フラスコから開始し大きな発酵槽まで、当業者に周知の技術を適用して行うことができる。
【0092】
1つの実施形態は、上記詳細のように結合タンパク質の製造方法を対象とし、前記方法は、次のステップ:(a)本明細書で定義されているPSMA結合タンパク質をコードする核酸を製造するステップ;(b)発現ベクターに前記核酸を導入するステップ;(c)宿主細胞内に前記発現ベクターを導入するステップ;(d)宿主細胞を培養するステップ;(e)PSMA結合タンパク質が発現される培養条件に宿主細胞を付し、それにより、本明細書で定義されているPSMA結合タンパク質を産生させるステップ;(f)必要に応じて、ステップ(e)で産生されたPSMA結合タンパク質を単離するステップ;及び(g)必要に応じて、本明細書で定義されているさらなる機能的部分とPSMA結合タンパク質を結合するステップを含む。
【0093】
概して、精製PSMA結合タンパク質の、培養混合液からの単離を、遠心分離、沈殿、凝結、クロマトグラフィーの種々の実施形態、ろ過、透析、濃縮及びこれらの組合せ、及びその他などの従来の方法及び当技術分野において周知の技術を適用して行うことができる。クロマトグラフィー法は、当技術分野において周知であり、これらに限定されないが、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー(サイズ排除クロマトグラフィー)、又はアフィニティクロマトグラフィーを含む。
【0094】
簡易精製のため、PSMA結合タンパク質を、分離材料とのさらに高い親和性を有する他のペプチド配列と融合することができる。好ましくは、PSMA結合タンパク質の機能性に有害な影響を与えないか、又は特異的プロテアーゼ切断部位の導入により精製後分離することができるような融合を選択する。かかる方法も当業者に公知である。
【実施例】
【0095】
本発明をさらに例証するために、以下の実施例を提供する。PSMAとの結合をもたらすユビキチン(配列番号1又は配列番号2)の特定の修飾によって本発明を詳細に例示する。しかしながら、本発明はこれらに限定されず、以下の実施例は上記説明に基づいて本発明の実用性を単に示すだけである。
【0096】
実施例1.PSMA結合タンパク質の同定
ライブラリー構築及びクローニング。無作為化アミノ酸位置を含むユビキチンライブラリーを、triplet technology(MorphoSys Slonomics、独国)により合成あるいは合成トリヌクレオチドホスホラミダイト(ELLA Biotech)により生成される無作為化オリゴヌクレオチドによる社内合成して無作為化位置のシステイン及び他のアミノ酸残基を同時に除いてバランスのよいアミノ酸分布を達成した。
【0097】
いくつかのライブラリーを使用してPSMA結合タンパク質を同定した。
ライブラリーSPV2:アミノ酸位置6位、8位、9位、10位、12位、42位、44位、46位、62位、63位、64位、65位、66位、68位、70位、及び72位に無作為化されたユビキチン(配列番号1)。
ライブラリーSPL27:62位、63位、64位、65位、66位、68位、70位、及び72位に対応するアミノ酸に無作為化されたユビキチン(配列番号1)並びにユビキチンのT9及びG10間に導入された6無作為化アミノ酸の挿入。アミノ酸残基Cys、Ile、Leu、Val及びPheは挿入において出現しなかった。
ライブラリーSPVF19:アミノ酸位置6位、8位、62位、63位、64位、65位、66位、68位、70位、72位、82位、84位、138位、139位、140位、141位、142位に無作為化されたビスユビキチン(配列番号2)(これは、両方のユビキチン部分における6位、8位、62位、63位、64位、65位、66位の無作為化に対応する;ライブラリーSPVF19では、2つのユビキチン部分は直接結合している)。
【0098】
対応するcDNAライブラリーをPCRにより増幅し、当業者に公知の標準的方法を用いて修飾pCD87SAファージミド(本明細書ではpCD12とも呼ぶ)でライゲートした。pCD12ファージミドは、修飾torAリーダー配列を含み、N末端に追加のアミノ酸なしでタンパク質プロセシングを行う。ライゲーション混合物のアリコートを、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)ER2738(Lucigen)のエレクトロポレーションのために使用した。特に指定されない限り、確率された組換え遺伝子方法を、例えば、 Sambrook,J & Russel,D.W.[2001](Cold Spring Harbor Laboratory,NYに記載されているように使用した。
【0099】
標的発現、精製及び分析。
ヒトPSMAの細胞外ドメインをコードするDNA配列(uniprot受託番号Q04609;残基45~750)をヒトIgG1のFc領域と遺伝子的に融合し、次いで、N末端にHisタグ化した。ヒトコドン使用頻度を有する完全長cDNAは、GeneArt(Thermo Scientific)により提供され、哺乳類発現ベクターpCEP4にクローン化され、振盪フラスコ中250mlの規模で、哺乳類Expi293F細胞内で発現された。SDS-PAGE及びPSMAに対する抗体及びヒトIgG1のFc部分を用いて免疫ブロット解析により発現を分析した。大規模発現の130ml細胞培養液の上澄液を遠心分離し、タンパク質A HP 1mLカラム(GE Healthcare)のアフィニティクロマトグラフィーへの適用のためにろ過した。標的タンパク質を、穏やかなpHシフト(pH4)により溶離し、Superdex XK16/600ゲルろ過カラムに適用した。9mgのHis-Fc-PSMAを回収することができた;SDS-PAGE分析及びSE-HPLC分析により標的タンパク質の純度を確認した。基質N-アセチル-L-アスパルチル-L-グルタメート(NAAG)に対する標的タンパク質の酵素活性を確認した。
【0100】
TATファージディスプレイによる一次選択。選択システムとしてTATファージディスプレイを用いて、ナイーブライブラリーを、標的PSMAに対して濃縮した。形質転換受容性のある細菌ER2738細胞(Lucigene)を、ライブラリーを運ぶファージミドpCD12を用いて形質転換した後、当業者に公知の標準的方法を用いてファージ増幅及び精製を行った。選択のため、標的タンパク質を、Dynabeads(登録商標)タンパク質A又はDynabeads(登録商標)タンパク質G上のヒトPSMAの細胞外ドメインのFc融合として固定化した。ファージインキュベーション中の標的濃度は、200nM(第1ラウンド)から100nM(第2ラウンド)及び50nM(第3ラウンド)及び25nM(第4ラウンド)まで低下した。選択ラウンドの一部では、マウス血清を、血清安定性が増大した選択分子に添加した。標的ファージ複合体を、上澄液から磁気的に分離し、数回洗浄した。標的結合ファージをトリプシンによって溶離した。Fc結合多様体のファージライブラリーを枯渇させるため、IgG1の固定Fcフラグメント(Athens Research & Technology)を有するファージの事前選択を、ラウンド2及び3前に行った。標的特異的ファージプールを同定するため、各選択ラウンドの溶離及び再増幅されたファージを、ファージプールELISAにより分析した。中間結合マイクロタイタープレート(Greiner Bio-One)のウェルを、それぞれ、PSMA-Fc(2.5μg/ml)及びIgG1のFcフラグメント(2.5μg/ml)で被覆した。結合ファージを、α-M13 HRP結合抗体(GE Healthcare)を用いて検出した。
【0101】
標的結合ファージプールの発現ベクターへのクローン化。ファージプールELISAにおける標的と特異的結合を示す選択プールを、当技術分野において公知の方法に従ってPCRにより増幅し、適切な制限ヌクレアーゼで切断し、StrepタグII(IBA GmbH)を含む発現ベクターpET-28aの誘導体(Merck、独国)にライゲートした。
【0102】
単一コロニーヒット分析。BL21(DE3)細胞(Merck、独国)の形質転換後、カナマイシン耐性単一コロニーを生育した。標的結合修飾ユビキチン多様体の発現を、自動誘導培地を用いて384ウェルプレート(Greiner Bio-One)における培養によって行った。細胞を収穫し、その後、それぞれ、BugBuster試薬(Novagen)によって化学的又は酵素的に、及び凍結/解凍サイクルにより機械的に溶解した。遠心分離後、得られた上澄液をHigh Bind 384 ELISAマイクロタイタープレート(Greiner Bio-One)において固定された標的を用いてELISAによりスクリーニングした。結合タンパク質の検出を、TMB-Plus基質(Biotrend、独国)と組み合わせてStrep-Tactin(登録商標)HRP複合体(IBA GmbH)により行った。0.2M H2SO4溶液の添加により反応を停止し、450nm対620nmにおいてプレートリーダーで測定した。
【0103】
成熟ライブラリーの構築。各選択多様体の成熟のため、結合分子を2つのモジュールに分割するモジュールシャッフリングアプローチを使用した。配列番号1に基づいたユビキチン変異タンパク質のため、第一モジュールは、アミノ酸1~40及び第二モジュールアミノ酸32~76を含む。配列番号2に基づいたビスユビキチン変異タンパク質のため、第一モジュールは、アミノ酸1~77及び第二モジュールアミノ酸71~152を含む。モジュールシャッフリング成熟ライブラリーのクローン化のため、多様体のいずれかのモジュールを一定に保持し、元のライブラリーのネイティブ第二モジュールと融合し、その逆も行った。2つのモジュールの融合を、オーバーラップ伸長PCRにより行った。得られた成熟ライブラリーのcDNAを、上記pCD12を用いてライゲートした。あるいは、予め確定された分子又はプールのさらなる変異が誘発される変異性PCRアプローチを使用した。
【0104】
成熟選択及び分析
成熟選択及び分析親和性成熟のため、計画の2ラウンドを行った。両ラウンドのため、IgG1のFcフラグメントでの事前選択を行った。選択ラウンドの一部では、マウス血清を、血清安定性が増大した選択分子に添加した。特異的標的結合に関する成熟及び選択プールを分析するため、ファージプールELISAを行い、次いで、ポジティブプールを発現ベクターpET-28aにクローン化し、上記のようにヒットELISAを行った。
【0105】
実施例2.PSMA結合タンパク質の発現及び精製
PSMA結合分子を当業者に公知の標準的方法を用いて発現ベクターにクローン化し、精製して下記のように分析した。
【0106】
T7プロモーターの規制下、低複製プラスミドシステムを用いてエシェリキア・コリ(Escherichia coli)BL21(DE3)内で、全構築物は発現された。培地(自動誘導培地)中に含まれるラクトースにより誘導後、タンパク質を、ほとんど可溶な形態で細胞質によって産生した。新たな確定されたプラスミドで形質転換後、単一コロニーから、全ての一夜の培養液に播種した。
【0107】
Studier et al.(2005)に従ってZYM5052自動誘導培地中、PSMA結合タンパク質を産生した。2xYT培地中20~100mLの容量で振盪フラスコ中、一夜の培養液を飽和するまで生育した。主培養液を0.05~0.1のOD600まで接種し、整流装置を用いても用いなくても振盪フラスコ中200rpmの回転式振盪機で30℃、24時間まで50μg/mLカナマイシンと共にZYM5052中でインキュベートした。発現レベルに応じて、各々350mL培地を含む1L振盪フラスコ中、又は各々1L培地を含む5Lフラスコ中のいずれかを使用した。
【0108】
親和性タグを有するAffilinタンパク質を、アフィニティクロマトグラフィー及びゲルろ過により精製した。アフィニティクロマトグラフィー精製後、Aktaシステム及びSuperdex(商標)200 HiLoad 16/600カラム(GE Healthcare)を用いて、サイズ排除クロマトグラフィー(SE HPLC又はSEC)を行った。カラムは120mlの容積であり、2CVと平衡を保っていた。サンプルを、1ml/分の流速で適用した。分別捕集は、シグナル強度が10mAUに達したときに開始する。SDS-PAGE分析後、ポジティブフラクションをプールし、これらのタンパク質濃度を測定した。
【0109】
親和性タグを有しない二量体PSMA結合タンパク質を、エンドトキシンの量を低減するために陽イオン交換クロマトグラフィー(SP Sepharose HP、GE Healthcare)、次いで、陰イオン交換クロマトグラフィー(Q Sepharose HP、GE Healthcare)を用いて精製した。
【0110】
最終的に、サイズ排除クロマトグラフィー(Sephacryl S200HR、GE Healthcare)を行った。さらなる分析としては、SDS-PAGE、SE-HPLC及びRP-HPLCが挙げられる。モル吸光係数を用いて280nmにおいて吸光度を測定することによってタンパク質濃度を決定した。例えば、配列番号5の純度は、SE-HPLCによれば98%である。Dionex HPLCシステム及びPLRP-S(5μm、300Å)カラム(Agilents)を用いてRPクロマトグラフィー(RP-HPLC)を行った。
【0111】
実施例3.PSMA結合タンパク質は高温において安定である
本発明の結合タンパク質の熱安定性を、示差走査蛍光分析(DSF)によって決定した。各サンプルを0.1μg/μLの濃度において、LightCycler(登録商標)480 Multiwell Plate 96(Roche)に移し、SYPRO橙色染料を適切な希釈で添加した。20~90℃の温度勾配を、毎分1℃の加熱速度でプログラムした(LightCycler(登録商標)480、Roche)。465nmの励起波長及び580nmの発光波長において蛍光を常に測定した(LightCycler(登録商標)480、Roche)。熱的アンフォールディング転移の中間点(Tm、融点)を、
図1,
図2、及び
図3に選択された変異タンパク質について示す。本発明のPSMA結合タンパク質は、85℃以下の融点を有する。配列番号5のTmは69.3℃であり、配列番号6のTmは84.2℃である。選択された二量体PSMA結合タンパク質の熱安定性について、表2参照。
【0112】
実施例4.PSMA結合タンパク質の分析(表面プラズモン共鳴、SPR)
CM5センサーチップ(GE Healthcare)をSPRランニングバッファーと平衡を保った。表面露出カルボン酸を、EDC及びNHSの混合物を通過させることにより活性化し、反応性エステル基を得た。標的に対して1:3の比(hIgG-Fc:標的)で、700~1500RU PSMA-Fc(オンリガンド)をフローセルに固定し、IgG-Fc(オフリガンド)を別のフローセルに固定した。リガンド固定化後のアタノールアミンの注射を使用して未反応のNHS基を遮断した。リガンド結合時、タンパク質分析物を表面に蓄積し、屈折率が増加した。この屈折率変化をリアルタイムで測定し、時間に対する応答又は応答単位(RU)としてプロットした。分析物を、30μl/分の流速で段階希釈してチップに適用した。会合を120秒行い、解離を360秒行った。各実行後、チップ表面を30μl再生バッファーで再生し、ランニングバッファーと平衡を保った。希釈系列はポジティブコントロールの役割をしたが、未修飾ユビキチンの希釈系列はネガティブコントロールである。コントロールサンプルを30μl/分の流速でマトリックスに適用したが、これらは60秒間で会合し、120秒間で解離した。再生及び再平衡を前述のように行った。Biacore 3000(GE Healthcare)の使用により結合試験を行い;データ評価を、ラングミュア1:1モデル(RI=0)を用いて、製造者により提供されたBIAevaluation 3.0ソフトウェアにより操作した。1:1ラングミュアモデルでデータをフィッティング後、例えば、K
D値を算出し、
図1、
図2、
図3、及び表2に示した。評価された解離定数(K
D)をオフターゲットに対して標準化し、示した。例えば、配列番号5のK
Dは、hPSMA-Fcに対して1.8nMであり(1100RU、タンパク質Aによる固定化);配列番号6のK
Dは113nMであり、配列番号22のK
Dは484nMであり、配列番号45のK
Dは33nMであり、配列番号26のK
Dは9.3nMである。表2は、二量体PSMA結合タンパク質のSPRにより決定された結合親和性及び温度安定性(実施例3参照)を示す。
【0113】
【0114】
実施例5.機能的特性化:細胞表面発現PSMAとの結合(フローサイトメトリー)
フローサイトメトリーを使用して細胞表面露出PSMAとのPSMA結合タンパク質の結合を分析した。PSMA過剰発現ヒト前立腺がんセルラインLNCaP、PSMA過剰発現トランスフェクトHEK293-PSMA細胞、PSMA非発現PC3細胞及び空ベクターコントロールHEK293-pEntry細胞を使用した。細胞をトリプシン処理し、FCSを含む培地に再懸濁し、洗浄し、予備冷却されたFACSブロッキングバッファーで染色した。1×10
6細胞/mlの細胞濃度を細胞染色のために調製し、100μlを、それぞれ、各セルラインに対して三通り96ウェルプレート(Greiner)のウェル中に充填した。いくつかの実験において、ポジティブコントロールとして、PSMA結合タンパク質の異なる濃度、例えば、50nM、又は0.5μg/mlモノクローナル抗ヒトPSMA抗体(クローンLNI-17;Biolegend;342502)を、PSMA過剰発現及びコントロール細胞に添加した。PSMA結合タンパク質は、精製及び検出目的のため、C末端Strepタグ(例えば、配列番号71参照)を含んだ。45分後、上澄液を取り出し、FACSブロッキングバッファー中に1:300希釈した、100μl/ウェルウサギ抗Strepタグ抗体(GenScriptから得た;A00626)を添加した。抗PSMA抗体を、ポジティブコントロールウェル中において1:1000希釈の抗マウスIgG-Alexa488(Invitrogen;A-10680)を用いて検出した。他のウェルからの抗Strepタグ抗体の除去後、ヤギ抗ウサギIgG Alexa Fluor 488抗体(Invitrogenから得た;A11008)を1:1000希釈で適用した。励起波長488nm及び発光波長525/30nmにおいてMerck-MilliporeのGuava easyCyte 5HT装置でフローサイトメトリー測定を行った。本発明の全てのPSMA結合タンパク質(二量体を含む)は、LNCaP細胞及びHEK293-PSMA細胞の細胞表面発現PSMAと結合していること(
図1、
図2、
図3参照;結合は、図において「はい」で示す)、及びPSMAネガティブセルラインHEK293-pEntry又はPC3細胞で結合しないことを示した。ユビキチンは、LNCaP細胞及びHEK293-PSMA細胞で結合しないことを示した。PSMA発現細胞でのポジティブ結合も、抗PSMA抗体に対して観察された。例えば、配列番号4は、HEK-PSMA及びLNCaP細胞との強い細胞結合を示した。
【0115】
実施例6.細胞表面発現PSMAとの結合(免疫細胞化学及び蛍光顕微鏡)
50nMの濃度を、PSMA発現LNCaP細胞及びコントロールセルラインPC3(PSMA発現なし)で試験した。ビスユビキチンを、非PSMA結合タンパク質に対するコントロールとして使用し、1μg/ml抗PSMA抗体はPSMA結合に対するポジティブコントロールの役割をした。ポリ-D-溶解素被覆Lab-Tek(登録商標)Chamber-Slides(Sigma-Aldrich)中に1×105細胞/mlの濃度で細胞を播種した。72時間を超えて培養後、細胞をメタノール(5分、-20℃)で固定し、次いで、遮断(PBS中の5%ウマ胎児血清、1時間)し、室温で45分間50nMのPSMA結合タンパク質と共にインキュベーションした。ウサギ抗Strepタグ抗体(1:500)と共に1時間、その後、抗ウサギIgG-Alexa488抗体(1:1000)と共に1時間のインキュベーションによりPSMA結合を検出した。4μg/mlのDAPIで核を染色した。全インキュベーションステップを室温で行った。LNCaP細胞の二量体配列番号54、二量体配列番号55及び単量体配列番号25のPSMA結合を確証したが、PC3細胞との結合は観察できなかった。
【0116】
実施例7.機能的特性化:PSMA結合タンパク質は種晶組織で発現されたPSMAと結合する(免疫組織化学)
凍結LNCaP異種移植腫瘍及びF9同系移植腫瘍スライスの組織片を使用して、本発明の結合タンパク質を分析した。組織片を、10分間氷冷アセトンで固定した。PSMA結合タンパク質の二量体は、精製及び検出目的のため、C末端Strepタグ(例えば、配列番号71参照)を含んだ。遮断し、配列番号54の50nM及び10nMの二量体、配列番号52及び配列番号53の100nM及び10nMの二量体並びに100nMのコントロールタンパク質未修飾ビスユビキチンと共にインキュベートした後、ウサギ抗Strepタグ抗体(1:500)と共に1時間、切片をインキュベートした。次いで、Novolink(商標)ポリマー(Leica、RE7290-CE)で、切片を処理した。AEC溶液(DAKO)で1分間、切片をインキュベートしてタンパク質の結合を可視化した。核をマイアーのヘマラム溶液(Merck Millipore、カタログ番号109249)で染色した。全インキュベーションステップを室温で行った。2μg/mlの抗PSMA抗体GCP-04(Novus Biologicals)及び14μg/mlのGCP-05(Thermo Scientific)は、ポジティブコントロールの役割をした。LNCaP腫瘍組織の50nMヘテロ二量体(配列番号54)及び100nMホモ二量体(配列番号52及び配列番号53)の強いPSMA結合を確証した。抗PSMA抗体GCP-04及びGCP-05は同じ染色パターンを示したが、未修飾ユビキチンは染色しなかった。F9腫瘍組織の非特異的染色は観察されなかった。
【0117】
実施例8.PSMA結合タンパク質の競合分析
単離PSMA-Affilinタンパク質が同じ又は異なるPSMAエピトープと結合するかどうかを調査するため、次のアッセイを行った:PSMA-Fc融合タンパク質(60nM)を、NHS/EDC化学を用いて組換えタンパク質Aと結合されたCM5 Biacoreチップに固定し、1000応答単位(RU)を得た。第一実験では、配列番号25(モチーフKHNTW)及び配列番号15(モチーフGFAHR及びWTTTF)を、0.005%のTween20を含むPBST 30μl/分の流速で1つの規定濃度(0.5μM)で注射した。第二実験では、同じフローチャネルに、先ず500nMの配列番号25を、チップ表面が飽和するまで事前ロードした。次のステップでは、500nMの配列番号15を、第一実験と同様に適用した。あるいは、第二実験では、同じフローチャネルに、先ず500nMの配列番号15を、チップ表面が飽和するまで事前ロードし、次いで、500nMの配列番号25をロードした。
【0118】
実験は、モチーフKHNTWを有するPSMA結合タンパク質の結合がモチーフGFAHR及びWTTTFを有するPSMA結合タンパク質の存在による影響を受けなかったこと、その逆もまた同じであることを示した。したがって、これらのPSMA結合タンパク質が異なる又は重複しないPSMAエピトープと、すなわち、異なる表面露出アミノ酸と結合するという結論に至る競合は観察されなかった。
【0119】
実施例9:DOTAとの融合タンパク質の標識化
二量体タンパク質を、室温で3時間、50mM HEPES、150mM塩化ナトリウム、5mM EDTA pH7.0中の20倍過剰のマレイミド-DOTA(2,2’,2’’-(10-(2-((2-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)エチル)アミノ)-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)三酢酸、CheMatech)と共にインキュベートした。DOTA分子と相互作用するかもしれない金属イオンを低減するため、全カラム及びAKTA装置(GE Healthcare)を、30分間、0.1M EDTA溶液と共にインキュベートした。溶液を調製するため、金属フリー又は金属低減成分のみを使用した。インキュベーション後、サンプルを、100mM酢酸ナトリウム pH5.0~5.8中のゲルろ過(Superdex S200、GE Healthcare)によって、非結合DOTA分子から分離した。標識化タンパク質のサンプルを、室温で1時間、5mM塩化鉄(II)と共にインキュベートして、DOTA分子が放射性同位体との結合に使用可能であることを証明した。インキュベーション後、非結合鉄を、HiTrap脱塩カラム(GE Healthcare)を用いて除去した。MALDI-TOF分析を使用して、標識化の程度を決定した。
【0120】
実施例10:マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI-TOF)質量分析法
マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI-TOF)を次のように行った:融合タンパク質を、C18-P10-ZipTips(Millipore;カタログ番号ZTC18S096)を用いて精製・濃縮した。チップを0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液で洗浄し、50%(v/v)アセトニトリル/0.1%TFAで溶離した。サンプルを2%(v/v)TFA水溶液で処理し、2,5-ジヒドロキシアセトフェノン(DHAP)マトリックス(Bruker、カタログ番号8231829)に包埋した。融合タンパク質の質量を、autoflex(商標)speed質量分析装置(Bruker)で測定した。タンパク質校正標準(Bruker、パーツ番号8206355及びパーツ番号8207234)を、autoflex speed質量分析装置の調節のために使用した。
【0121】
DOTA標識を有する及び有しない融合タンパク質を、MALDI-TOF質量分析により分析し、ピークを比較した。MALDI-TOF分析は、二量体PSMA結合タンパク質に標識化されたDOTA分子は、塩化鉄(II)分子との結合に使用可能であることを示している。
【0122】
KDは、融合タンパク質の標識化後に僅かに変化するが、標識化は、標的への融合タンパク質の親和性に有意に影響を与えるとは言えない。結果を表3に纏めている。
【0123】
【0124】
実施例11.PSMA結合タンパク質の血清安定性(フローサイトメトリー)
たとえ血清が存在してもPSMA結合タンパク質が安定することを分析した。PSMA結合タンパク質は、精製及び検出目的のため、C末端FLAGタグ(DYKDDDDK;例えば、配列番号78参照)を含んだ。GFAHRを有するユビキチン変異タンパク質、又はこれと80%同一性を有するモチーフ、例えば、配列番号4又は配列番号11をベースとするPSMA結合タンパク質を、37℃0時間又は24時間、100%マウス血清中1μM~5.6pMの段階希釈と共にインキュベートした。100μlのAffilin血清溶液を使用してHEK293-PSMA細胞における血清安定性を分析した。上澄みを取り出した後、1μg/ml抗Flagタグ抗体(Sigma-Aldrich;F1804)及び抗マウスIgG-Alexa488(Invitrogen;A10680)を用いて結合を証明した。FACS分析は、マウス血清における24時間インキュベーション後でさえPSMA結合を確認した(表4参照)。さらに、PSMA結合タンパク質を試験し、PSMAとの結合を血清の存在下でも確認した。
【0125】
【0126】
実施例12.PSMA結合タンパク質の血清安定性(ELISA)
高結合96ウェルプレート(Greiner、781061)を、4℃で一夜、2.5μg/mlのPSMA-Fcで固定した。Affilin-191871(C末端SACを有する;配列番号5)の段階希釈及びルテチウムLu3+で標識化された配列番号5 Dotaを、37℃で一夜、100%マウス血清中でインキュベートした。ELISAプレートを1×PBSで洗浄し、室温において2時間、3%BSA/0.5%Tween/PBSで遮断した。血清の存在下、0時間又は24時間インキュベーション後の段階希釈を、室温で1時間、ELISAプレートでインキュベートした。PBSTでの洗浄後、ウェルを、室温で1時間、ビオチン化抗ユビキチン抗体(1:1000)と共にインキュベートした。結合を、ストレプトアビジン-HRP(1:10,000)で可視化した。PSMA結合タンパク質は、24時間の血清インキュベーション後、KDの有意なシフトを示さない。例えば、ELISA分析は、0.75±0.02のKDを有するマウス血清中の24時間インキュベーション後でさえ、配列番号5及びルテチウムLu3+で標識化された配列番号5 Dotaの、PSMAとの結合を確証した(マウス血清中0時間のインキュベーションにおける0.53±0.02のKDと比較して)。
【配列表】