(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】光学特性測定器
(51)【国際特許分類】
G01N 21/01 20060101AFI20240606BHJP
G01N 21/59 20060101ALI20240606BHJP
G01N 21/57 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
G01N21/01 B
G01N21/59 M
G01N21/57
(21)【出願番号】P 2022030669
(22)【出願日】2022-03-01
【審査請求日】2023-09-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000107583
【氏名又は名称】スガ試験機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須賀 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 剛
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光利
(72)【発明者】
【氏名】田中 智
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-268059(JP,A)
【文献】特開2007-225480(JP,A)
【文献】登録実用新案第3100120(JP,U)
【文献】特開2001-356092(JP,A)
【文献】特開2004-245979(JP,A)
【文献】特公平03-081092(JP,B2)
【文献】特開2015-114298(JP,A)
【文献】特開平09-061319(JP,A)
【文献】特開2019-052972(JP,A)
【文献】特開2003-270152(JP,A)
【文献】特開2014-215257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/958
G01J 1/00-1/60
G01J 3/00-3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の試料における光学特性を測定する機器であって、
前記光学特性を
数値として定量的に測定するための照射光を出射する光源と、
前記照射光を利用して、前記試料における前記光学特性を
数値として定量的に測定する測定機構と、
前記光学特性を測定する際に、前記照射光の測定光路上における測定領域に、前記試料が配置される試料室と、
前記試料室内に前記試料を配置する際に、前記試料を保持する保持部材と
、
開閉可能に構成されており、前記試料室を外部に対して露出または遮断させるための試料扉と、
前記試料扉の開閉状態に連動して、前記測定領域に対する前記照射光の照射状態と非照射状態とを切り替える切替機構と
を備え、
前記保持部材は、吸引機構を用いた吸引の際に使用される、1または複数の吸引用開口を有しており、
前記吸引の際の吸引強度が、前記試料の撓みまたは反りの度合いに応じて、任意かつ連続的に変更され
、
前記測定機構が、
前記照射光における前記測定光路上に配置された入口開口と、前記測定光路とは異なる光路である前記照射光の補償光路上に配置された補償開口と、を有する積分球と、
前記積分球から出射される光束を受光する受光部と、
前記受光部において得られた受光データに基づいて所定の処理を行うことにより、前記光学特性の測定データを得る測定部と、
を含んで構成されていると共に、
前記入口開口を介した前記照射光と、前記補償開口を介した前記照射光とが、前記積分球の内部に、交互に入射するように構成されており、
前記切替機構は、
前記試料室が外部に露出されている前記試料扉の開状態では、前記測定領域に対して前記照射光が照射状態となるように設定し、
前記試料室が外部から遮断されている前記試料扉の閉状態では、前記光学特性の測定が開始される際に、最初に、前記測定領域に対して前記照射光が非照射状態となるように設定する
光学特性測定器。
【請求項2】
前記測定領域の中央付近を中心として、半径方向に沿って、前記吸引用開口が複数設けられている
請求項1に記載の光学特性測定器。
【請求項3】
前記光学特性を測定する際に、前記照射光が前記試料を透過するように構成されており、
前記保持部材が、前記試料が載置されて保持される、試料台である
請求項1または請求項2に記載の光学特性測定器。
【請求項4】
前記試料台上の前記吸引用開口と前記吸引機構との間を連結させる、開口連結部材が更に設けられている
請求項3に記載の光学特性測定器。
【請求項5】
前記試料台と前記測定機構との間に、防塵機能を有するフィルタが、更に設けられている
請求項3に記載の光学特性測定器。
【請求項6】
前記光学特性が、前記試料の曇り度合いとしてのヘーズ値であり、
ヘーズメーターとして構成されている
請求項1ないし請求項
5のいずれか1項に記載の光学特性測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の光学特性を測定する光学特性測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘーズ(曇り)、光沢(つや)、色、像鮮明度(写像性)などの物体の見え方(試料の光学特性)を、数値として定量的に評価する測定器として、例えば、ヘーズメーター、光沢計、測色計、写像性測定器などの光学特性測定器が、提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような光学特性測定器では一般に、測定の際の再現性を向上させたり、利便性を向上させたりすることが求められている。測定の際の再現性を向上させつつ利便性を向上させることが可能な、光学特性測定器を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施の形態に係る光学特性測定器は、フィルム状の試料における光学特性を測定する機器であって、光学特性を数値として定量的に測定するための照射光を出射する光源と、照射光を利用して試料における光学特性を数値として定量的に測定する測定機構と、光学特性を測定する際に、照射光の測定光路上における測定領域に、試料が配置される試料室と、試料室内に試料を配置する際に、試料を保持する保持部材と、開閉可能に構成されており、試料室を外部に対して露出または遮断させるための試料扉と、この試料扉の開閉状態に連動して、測定領域に対する照射光の照射状態と非照射状態とを切り替える切替機構と、を備えたものである。上記保持部材は、吸引機構を用いた吸引の際に使用される、1または複数の吸引用開口を有している。また、上記吸引の際の吸引強度が、試料の撓みまたは反りの度合いに応じて、任意かつ連続的に変更されるようになっている。上記測定機構は、照射光における測定光路上に配置された入口開口と、測定光路とは異なる光路である照射光の補償光路上に配置された補償開口と、を有する積分球と、この積分球から出射される光束を受光する受光部と、この受光部において得られた受光データに基づいて所定の処理を行うことにより、光学特性の測定データを得る測定部と、を含んで構成されていると共に、入口開口を介した照射光と、補償開口を介した照射光とが、積分球の内部に、交互に入射するように構成されている。また、上記切替機構は、試料室が外部に露出されている試料扉の開状態では、測定領域に対して照射光が照射状態となるように設定し、試料室が外部から遮断されている試料扉の閉状態では、光学特性の測定が開始される際に、最初に、測定領域に対して照射光が非照射状態となるように設定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態に係る光学特性測定器によれば、測定の際の再現性を向上させつつ、利便性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る光学特性測定器の概略構成例を表す模式図である。
【
図2】
図1に示した光学特性測定器における試料扉の閉状態での構成例を表す模式図である。
【
図3】
図1に示した光学特性測定器における試料扉の開状態での構成例を表す模式図である。
【
図4】第1の実施の形態の変形例(変形例1)に係る光学特性測定器の概略構成例を表す模式図である。
【
図5】第2の実施の形態に係る光学特性測定器の概略構成例を表す模式図である。
【
図6】
図5に示した試料台の詳細構成例を模式的に表す平面図である。
【
図7】比較例2に係る試料ホルダの構成例を表す模式図である。
【
図8】第2の実施の形態の変形例(変形例2)に係る光学特性測定器の概略構成例を表す模式図である。
【
図9】第2の実施の形態の変形例(変形例3)に係る光学特性測定器の概略構成例を表す模式図である。
【
図10】
図9に示した試料ホルダの詳細構成例を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(試料扉の開閉に連動して照射光の照射状態を切り替える例)
2.第1の実施の形態の変形例
変形例1(積分球に補償開口を更に設けるようにした例)
3.第2の実施の形態(試料の保持部材としての試料台に吸引用開口を設けた例)
4.第2の実施の形態の変形例
変形例2(防塵機能を有するフィルタを更に設けるようにした例)
変形例3(試料の保持部材および試料扉としての試料ホルダに吸引用開口を設けた例)
5.その他の変形例
【0009】
<1.第1の実施の形態>
[構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光学特性測定器(光学特性測定器1)の概略構成例を、模式的に表したものである。
【0010】
光学特性測定器1は、試料室140内に配置された各種の材料からなる試料9について、ヘーズ(曇り)、光沢(つや)、色、像鮮明度(写像性)などの光学特性を、数値として定量的に評価する測定器である。特に本実施の形態の光学特性測定器1は、試料9の曇り度合いとしてのヘーズ値を評価する、ヘーズメーターとして構成されている。
【0011】
光学特性測定器1は、
図1に示したように、筐体10内に、光源11、レンズ系12a、反射板131、シャッターSを有する遮光板130、試料室140、試料台141、および、試料扉142を、備えている。光学特性測定器1はまた、積分球15、光トラップ160、受光部161、測定部162、センサー163、および、制御部19を、備えている。
【0012】
ここで、シャッターS、センサー163および制御部19は、本発明における「切替機構」の一具体例に対応している。また、積分球15、受光部161および測定部162は、本発明における「測定機構(照射光を利用して、試料における光学特性を測定する機構)」の一具体例に対応している。
【0013】
光源11は、試料9の光学特性を測定するための照射光Loを出射する光源である。光源11から出射された照射光Loは、
図1に示したように、レンズ系12aおよび反射板131を介して、測定光路P1に沿って、遮光板130および試料9(試料9上の測定領域Am)の方向へ向けて、進行するようになっている。この光源11は、例えば、ハロゲンランプ等のランプ光源や、LED(半導体発光素子)などを用いて構成されている。
【0014】
遮光板130は、
図1に示したように、試料室140の上面側(光源11と試料9上の測定領域Amとの間)に配置されており、測定光路P1上を進行する照射光Loが通過可能な、シャッターS(シャッター開口)を有している。この遮光板130は、後述する制御部19から供給される制御信号CTLに従って、例えば
図1中に示した方向d1(X軸方向)に沿って、移動(変位)することが可能となっている。これにより後述するように、シャッターSの開状態(照射光Loの通過状態)と、シャッターSの閉状態(照射光Loの非通過状態(遮断状態))とが、切り替えられるようになっている。
【0015】
試料室140は、試料9の光学特性を測定する際に、照射光Loの測定光路P1上における測定領域Amに、試料9が配置される部屋である。具体的には、試料9の光学特性を測定する際に、試料室140内において、試料台141上に試料9が載置されて、保持されている。また、
図1に示したように、本実施の形態では、試料9の光学特性を測定する際に、試料室140内において、測定光路P1上を進行する照射光Loが試料9に照射され、試料9を透過した光が入口開口A1から積分球15へと入射されるように構成されている。
【0016】
試料扉142は、
図1の例では、試料室140の前面(Z-X平面)上に配置可能に構成されている。具体的には、この試料扉142は、
図1中に示した方向d2(Z軸方向)に沿って開閉可能に構成されており、試料室140を光学特性測定器1の外部に対して露出または遮断させるための扉となっている。つまり、詳細は後述するが、試料扉142が開状態に設定された場合には、試料室140が外部に露出されている状態(露出状態)に設定され、試料扉142が閉状態に設定された場合には、試料室140が外部から遮断された状態(遮断状態)に設定されるようになっている。
【0017】
積分球15は、
図1に示したように、試料室140の下方に配置されており、照射光Loにおける測定光路P1上に配置された入口開口A1と、出口開口A3とを有する、球面状体となっている。積分球15の内面は、拡散反射面となっている。また、この積分球15の外部における入口開口A1付近において、試料台141上に試料9が載置されている。一方、積分球15の外部における出口開口A3付近には、積分球15の外部(下方)において、光トラップ160が配置されている。これにより、入口開口A1を介して積分球15内に入射した照射光Loのうち、平行光が光トラップ160にて吸収されると共に、散乱した光は積分球15の内面(拡散反射面)で拡散反射され、図示しない開口を介して、後述する受光部161によって受光されるようになっている。
【0018】
受光部161は、積分球15上の入口開口A1から約90°の中心角をなす位置に配置されており、積分球15内において拡散反射された光(測定光Lm)を、受光するものである。この受光部161は、例えば、Si(シリコン)フォトダイオード等を含んで構成されている。
【0019】
測定部162は、受光部161において得られた受光データDに基づいて、所定の処理を行うものである。この所定の処理により、受光データDに基づいて、試料9の光学特性の測定データが得られるようになっている。
【0020】
センサー163は、試料扉142の開閉状態を検出するセンサーである。このセンサー163による、試料扉142の開閉状態の検出結果は、
図1に示したように、制御部19へと出力されるようになっている。
【0021】
制御部19は、光学特性測定器1全体の動作を制御する部分である。本実施の形態では制御部19は、このような制御動作の1つとして、詳細は後述するが、センサー163による検出結果(試料扉142の開閉状態の検出結果)に応じて、シャッターSを開状態または閉状態に設定するようになっている。
【0022】
[動作および作用・効果]
(切替動作)
この光学特性測定器1では、試料扉142の開閉状態に連動して、試料9が配置された測定領域Amに対する、照射光Loの照射状態と非照射状態とが、切り替えられる。以下、このような切替動作について、詳細に説明する。
【0023】
ここで、
図2は、光学特性測定器1における試料扉142の閉状態での構成例を、模式的に表したものである。また、
図3は、光学特性測定器1における試料扉142の開状態での構成例を、模式的に表したものである。
【0024】
まず、
図2に示した試料扉142の閉状態では、試料扉142が下方に(
図2中に示した方向d2に沿って)下ろされた状態となり、試料室140が、光学特性測定器1の外部から遮断された状態(遮断状態)に設定される。このような試料扉142の閉状態の際には、制御部19によって、シャッターSが閉状態となるように、遮光板130が移動される(
図2中に示した方向d1参照)。このようにしてシャッターSが閉状態に設定されることで、
図2に示したように、光源11から出射されて測定光路P1上を進行する照射光Loが、遮光板130上で遮断され、その結果、測定領域Amに対して、照射光Loが非照射状態となるように設定される(
図2参照)。また、このような測定領域Amに対する照射光Loの非照射状態の際にも、
図2に示したように、光源11では、照射光Loの出射状態が維持されている。
【0025】
一方、
図3に示した試料扉142の開状態では、試料扉142が上方に(
図3中に示した方向d2に沿って)上げられた状態となり、試料室140が、光学特性測定器1の外部に露出された状態(露出状態)に設定される。このような試料扉142の開状態の際には、制御部19によって、シャッターSが開状態となるように、遮光板130が移動される(
図3中に示した方向d1参照)。このようにしてシャッターSが開状態に設定されることで、
図3に示したように、光源11から出射されて測定光路P1上を進行する照射光Loが、遮光板130上で遮断されずにシャッターS内を通過する結果、測定領域Amに対して、照射光Loが照射状態となるように設定される(
図3参照)。
【0026】
(作用・効果)
このようにして、本実施の形態の光学特性測定器1では、照射光Loを利用して試料9の光学特性を測定する際に、試料扉142の開閉状態に連動して、試料9が配置された測定領域Amに対する、照射光Loの照射状態と非照射状態とが切り替えられる。
【0027】
これにより本実施の形態では、例えば、測定領域(測定位置)を確認(観察)するための光源(投光器や観察光源など)や機構(観察光源の挿抜機構など)等の専用部材を、別途設けることなく、照射光Loを利用して測定領域の確認を行うことができる。よって、本実施の形態の光学特性測定器1では、そのような専用部材を別途設けるようにした比較例1の場合等と比べ、簡易な構成で利便性を向上させることが可能となる。
【0028】
また、本実施の形態では、測定領域Amに対する照射光Loの非照射状態の際にも、光源11において、照射光Loの出射状態を維持する(光源11を消灯させない)ようにしたので、以下のようになる。すなわち、光源11から出射される照射光Loの照度が安定化するため、この照射光Loを利用した測定の際に、測定精度の低下を防止することができる。これは、光源11が前述したランプ光源を用いて構成されている場合、光源11の消灯や点灯を繰り返すと、照射光Loの照度が不安定になってしまうからである。
【0029】
更に、本実施の形態では、試料扉142の閉状態(試料室140が外部から遮断されている状態)では、シャッターSを閉状態に設定することによって、測定領域Amに対して照射光Loが非照射状態となるようにしたので、以下のようになる。すなわち、試料扉142を閉状態にして測定を開始した際に、最初にシャッターSを閉じる動作が不要となることから、測定時間を短縮することが可能となる。これは、従来では測定開始時に、シャッターSを、スイッチなどを用いて手動で閉状態に設定する必要があり、測定時間の増大につながっていたためである。
【0030】
以下、上記第1の実施の形態の変形例(変形例1)、ならびに、本発明の他の実施の形態(第2の実施の形態)およびその変形例(変形例2,3)について、説明する。なお、以下では、第1の実施の形態等における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0031】
<2.第1の実施の形態の変形例>
続いて、上記第1の実施の形態の変形例(変形例1)について説明する。
【0032】
[変形例1]
図4は、変形例1に係る光学特性測定器(光学特性測定器1A)の概略構成例を、模式的に表したものである。
【0033】
この
図4に示した変形例1の光学特性測定器1Aは、
図1に示した第1の実施の形態の光学特性測定器1において、いわゆるダブルビーム方式の光学測定器に変更したものに対応している。具体的には、光学特性測定器1Aは、光学特性測定器1において、測定光路P1とは異なる補償光路P2上に、レンズ系12bおよび反射板132を更に設けると共に、積分球15上に補償開口A2を更に設けたものに対応しており、他の構成は基本的には同様となっている。
【0034】
補償開口A2は、積分球15において、照射光Loの補償光路P2上に配置されている。具体的には、光源11から出射された照射光Loが、補償光路P2上のレンズ系12bおよび反射板132を介して、積分球15上の補償開口A2へと到達するようになっている。
【0035】
このようにして光学特性測定器1Aでは、測定光路P1上の入口開口A1を介した照射光Loと、補償光路P2上の補償開口A2を介した照射光Loとが、積分球15の内部に、交互に入射するように構成されている。これにより光学特性測定器1Aでは、経時変化による照射光Loの光量減少が、補償光路P2を利用して常時補償されるため、長時間での安定した測定が実現可能となっている。より詳しくは、測定開始時にシャッターSを閉状態に設定し、補償光路P2上の図示しないシャッターを、開状態に設定する。照射光Loは試料9を介さずに積分球15内に入射されるため、単純に照射光Loの光量が受光部161にて得られる。続いて、シャッターSを開状態に設定し、補償光路P2上のシャッターを、閉状態に設定する。照射光Loは試料9に照射されると共に、透過した光が積分球15内に入射され、試料9の光学特性が測定される。このとき、試料9を透過した光によって得られた測定値を、試料9を介さずに測定した光の経時変化(光の安定性)によって、補正する。このように、測定開始時の動作は、シャッターSの閉状態から開始されるため、試料扉142を閉状態に設定して測定を開始した際に、最初にシャッターSを閉じる動作が不要となることから、測定時間を短縮することが可能となる。
【0036】
このような変形例1においても、基本的には、第1の実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。すなわち、簡易な構成で利便性を向上させることが可能となる。
【0037】
<3.第2の実施の形態>
[構成]
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る光学特性測定器(光学特性測定器1B)の概略構成例を、模式的に表したものである。また、
図6は、
図5に示した試料台(後述する試料台141B)の詳細構成例を、模式的に平面図(X-Y平面図)で表したものである。
【0038】
図5に示した第2の実施の形態の光学特性測定器1Bは、
図1に示した第1の実施の形態の光学特性測定器1において、試料台141の代わりに試料台141Bを設けると共に、チューブ171、ポンプ172および開口連結部材181を更に設けるようにしたものとなっており、他の構成は基本的には同様となっている。
【0039】
試料台141Bは、試料室140内に試料9を配置する際に、試料9を保持する部材となっている。つまり、この試料台141Bは、本発明における「保持部材」の一具体例に対応している。具体的には、
図5に示したように、この光学特性測定器1Bでは、試料9の光学特性を測定する際に、測定光路P1上を進行する照射光Loが試料9に照射され、試料9を透過した光が入口開口A1から積分球15に入射されるように、構成されている。また、試料台141B上に試料9が載置されることで、試料9が保持されるようになっている。
【0040】
このような試料台141B上には、以下説明する吸引の際に使用される、1または複数の吸引用開口A4(
図5,
図6の例では、複数の吸引用開口A4)が、設けられている。具体的には、
図6の例では、試料9が配置される測定領域Amの中央付近(入口開口A1付近)を中心として、その半径方向に沿って、吸引用開口A4が複数設けられている。詳細には、
図6の例では、測定領域Amの中央付近を中心として、十字状(縦方向および横方向)に、複数の吸引用開口A4が設けられている。
【0041】
ポンプ172は、チューブ171を介して、上記した吸引用開口A4上での吸引(試料9の吸引)を行う部材である。本実施の形態では、このような吸引の際の吸引強度が、例えば、試料9の撓みまたは反りの度合いに応じて、任意に調整可能となっていてもよい。つまり、ポンプ172等による吸引動作は、例えば、スイッチ等によって、オン状態(実行状態)とオフ状態(停止状態)とが切り替えられるようにしてもよいし、あるいは、吸引強度が連続的に変更できるようにしてもよい。
【0042】
なお、これらのチューブ171およびポンプ172は、本発明における「吸引機構」の一具体例に対応している。
【0043】
開口連結部材181は、
図5に示したように、試料台141Bの下方において、試料台141B上の吸引用開口A4と、吸引機構(チューブ171およびポンプ172)との間を、連結させる部材である。
【0044】
[作用・効果]
本実施の形態の光学特性測定器1Bでは、試料室140内において試料9を保持する試料台141Bに、吸引機構(チューブ171およびポンプ172)を用いた吸引の際に使用される、吸引用開口A4が設けられている。
【0045】
これにより本実施の形態では、例えば
図7に示した比較例2に係る試料ホルダ101,102の場合等とは異なり、以下のようになる。
【0046】
すなわち、まず、フィルムなどの薄い試料9の光学特性を測定する際に、試料9に撓みや反りがあると、試料9に対して照射光Loが正確な角度で入射しにくくなる場合があり、測定の際の再現性が低下してしまうおそれがある。
【0047】
ここで、
図7に示した比較例2の場合、一対の試料ホルダ101,102(例えば、マグネット式やリング式などの専用の治具)を用いて、試料9を上下方向から挟むことで、試料9を保持(固定)するようにしている。ところが、このような比較例2の構成(上記したような専用の治具を用いた構成)では、照射光Loを利用して試料9の光学特性を測定する際に、例えば、専用の治具の設定に手間がかかったり、専用の治具に起因した痕(不可逆な測定痕)が試料9に残存してしまうおそれがある。
【0048】
これに対して本実施の形態では、試料台141上に吸引用開口A4を設けて、吸引を利用して試料9を保持することから、上記比較例2の場合等とは異なり、以下のようになる。すなわち、本実施の形態では、専用の治具の設定の手間を省いたり、専用の治具に起因した痕が試料9に残存してしまうおそれを回避したうえで、試料9の撓みや反りを抑えた状態で、試料9を保持することができる。その結果、本実施の形態の光学特性測定器1Bでは、測定の際の再現性を向上させつつ、上記比較例2の場合等と比べ、利便性を向上させることが可能となる。
【0049】
また、本実施の形態では、測定領域Amの中央付近を中心として、半径方向に沿って、吸引用開口A4が複数設けられているようにした場合には、以下のようになる。すなわち、様々な大きさの試料9にも対応可能となるため、利便性を更に向上させることが可能となる。
【0050】
更に、本実施の形態では、吸引の際の吸引強度が、試料9の撓みまたは反りの度合いに応じて、任意に調整可能となっているので、以下のようになる。すなわち、吸引強度を連続的に変更できることから、試料9の硬さ(撓みや反りの度合い等)に応じて、吸引強度を適切に調整することができ、試料9に上記した痕が残存してしまうおそれを、より確実に回避することが可能となる。
【0051】
加えて、本実施の形態では、試料台141B上の吸引用開口A4と吸引機構(チューブ171およびポンプ172)との間を連結させる、開口連結部材181を設けるようにしたので、以下のようになる。すなわち、開口連結部材181にチューブ171等を連結させて、直接吸引しているため、筐体10内に配置されている各部材(制御部19や測定部162、光学系(積分球15や受光部161等))に、埃等が侵入するのを防止することができる。よって、これらの各部材での埃等による不具合などを回避することができ、光学特性測定器1Bにおける信頼性を向上させることが可能となる。
【0052】
<4.第2の実施の形態の変形例>
続いて、上記第2の実施の形態の変形例(変形例2,3)について説明する。
【0053】
[変形例2]
図8は、変形例2に係る光学特性測定器(光学特性測定器1C)の概略構成例を、模式的に表したものである。
【0054】
この
図8に示した変形例2の光学特性測定器1Cは、
図5に示した第2の実施の形態の光学特性測定器1Bにおいて、チューブ171および開口連結部材181の代わりに、吸引用空間170およびフィルタ182を設けるようにしたものとなっており、他の構成は基本的には同様となっている。
【0055】
吸引用空間170内には、積分球15、受光部161、測定部162および制御部19等の各部材が、配置されている。この吸引用空間170は、
図8に示したように、ポンプ172を用いて、例えば真空状態に設定されている。
【0056】
なお、これらの吸引用空間170およびポンプ172は、本発明における「吸引機構」の一具体例に対応している。
【0057】
フィルタ182は、試料台141Bと測定機構との間、具体的には、試料台141Bと隣接するように吸引用空間170との間に、配置されている。このフィルタ182は、防塵機能を有するフィルタとなっている。
【0058】
このような変形例2においても、基本的には、第2の実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。すなわち、測定の再現性を向上させつつ、利便性を向上させることが可能となる。
【0059】
また、特にこの変形例2では、試料台141Bと吸引用空間170との間に、防塵機能を有するフィルタ182を設けるようにしたので、以下のようになる。すなわち、吸引用空間170内に配置されている各部材(制御部19や測定部162、光学系(積分球15や受光部161等))に、埃等が侵入するのを防止することができる。よって、これらの各部材での埃等による不具合などを回避することができ、光学特性測定器1Cにおける信頼性を向上させることが可能となる。
【0060】
[変形例3]
図9は、変形例3に係る光学特性測定器(光学特性測定器1D)の概略構成例を、模式的に表したものである。また、
図10は、
図9に示した試料ホルダ(後述する試料ホルダ141C)の詳細構成例を、模式的に断面図(Z-X断面図)で表したものである。
【0061】
図9,
図10に示した変形例3の光学特性測定器1Dは、これまでに説明してきた構成(照射光Loが試料9を透過する構成)とは異なり、以下のような構成となっている。すなわち、この光学特性測定器1Dでは、試料9の光学特性を測定する際に、光源11から照射された照射光Loが試料9にて反射されると共に、試料9にて反射された光を測定光Lmとして、受光部161にて受光する構成となっている。
【0062】
更に、例えば
図9,
図10に示したように、この変形例3の光学特性測定器1Dでは、
図8に示した変形例2の光学特性測定器1Cにおいて、試料台141Bおよび試料扉142の代わりに、試料ホルダ141Cを設けると共に、フィルタ182を設けないようにした(省いた)ものとなっており、他の構成は基本的には同様となっている。
【0063】
試料ホルダ141Cは、例えば
図9中に矢印d3で示したように、試料台上に載置されるようになっており、
図9,
図10に示したように、試料9を保持する部材である。つまり、この試料ホルダ141Cは、本発明における「保持部材」の一具体例に対応している。
【0064】
また、
図9,
図10に示したように、試料ホルダ141Cにおける試料9の保持面上には、ポンプ172を用いた吸引の際に使用される、吸引用開口A4(この例では、複数の吸引用開口A4)が設けられている。
【0065】
このような変形例3においても、基本的には、第2の実施の形態や変形例2と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。すなわち、測定の再現性を向上させつつ、利便性を向上させることが可能となる。
【0066】
<5.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例をいくつか挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0067】
例えば、上記実施の形態等では、光学特性測定器における各機器の構成(形状、配置、個数等)を具体的に挙げて説明したが、これらの構成については、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。
【0068】
具体的には、上記実施の形態等では、前述したランプ光源を用いて本発明における「光源」を構成する場合の例について説明したが、これには限られず、他の光源を用いて、本発明における「光源」を構成するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施の形態等では、本発明における「切替機構」や「測定機構」、「吸引機構」および「保持部材」の構成例について、具体的に挙げて説明したが、これらの各機構の構成を、他の構成としてもよい。
【0070】
更に、例えば、第1および第2の実施の形態、ならびに変形例1~3にて説明した各種構成例を、任意の組み合わせにて構成するようにしてもよい。
【0071】
加えて、上記実施の形態等では主に、試料の曇り度合いとしてのヘーズ値を評価する、ヘーズメーターとして構成された光学特性測定器を例に挙げて説明したが、この場合の例には限られない。すなわち、本発明に係る「光学特性測定器」は、例えば、試料の光沢(つや)、色、像鮮明度(写像性)などの、他の光学特性を測定する光学特性測定器においても、適用することが可能である。
【0072】
また、上記実施の形態等で説明した一連の制御は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、上記した各機能をコンピュータ(マイクロコンピュータ等)により実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1,1A~1D…光学特性測定器、10…筐体、11…光源、12a,12b…レンズ系、130…遮光板、131,132…反射板、140…試料室、141,141B…試料台、141C…試料ホルダ、142…試料扉、15…積分球、160…光トラップ、161…受光部、162…測定部、163…センサー、170…吸引用空間、171…チューブ、172…ポンプ、181…開口連結部材、182…フィルタ、19…制御部、9…試料、Lm…測定光、Lo…照射光、P1…測定光路、P2…補償光路、S…シャッター、Am…測定領域、A1…入口開口、A2…補償開口、A3…出口開口、A4…吸引用開口、D…受光データ、CTL…制御信号、d1,d2…方向、d3…矢印。