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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】軸受及び回転装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 32/04 20060101AFI20240606BHJP
   C10M 125/02 20060101ALI20240606BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20240606BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20240606BHJP
【FI】
F16C32/04 Z
F16C32/04 F
C10M125/02
C10N30:06
C10N40:02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023515214
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2022032081
(87)【国際公開番号】W WO2023032812
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2021140044
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021205736
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508264841
【氏名又は名称】有限会社 宮脇工房
(74)【代理人】
【識別番号】100127661
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 一彦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 啓佐敏
(72)【発明者】
【氏名】壬生 喬大
(72)【発明者】
【氏名】高柳 秀明
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-532516(JP,A)
【文献】実開昭49-128950(JP,U)
【文献】実開昭60-143925(JP,U)
【文献】特開昭58-131426(JP,A)
【文献】特開平04-006667(JP,A)
【文献】特開平07-317765(JP,A)
【文献】実開平01-163213(JP,U)
【文献】特開平04-119220(JP,A)
【文献】特開平01-229819(JP,A)
【文献】実開昭50-042146(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 32/04
C10M 125/02
C10N 30/06
C10N 40/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心として回転するよう構成された軸と、
前記軸の少なくとも一端側に配置され、前記回転軸に平行なスラスト方向の荷重を受けるスラスト軸受と、
を備えた回転装置であって、
前記スラスト軸受は、
前記軸の前記一端側に接続され第1磁極が配された第1面、及び、前記第1面とは反対側に位置し第2磁極が配された第2面を有し、前記軸と一体となって同軸に回転するよう構成された第1永久磁石と、
前記第1永久磁石の前記第2面に対向するように位置し前記第2磁極が配された第3面、及び、前記第3面とは反対側に位置し前記第1磁極が配された第4面を有し、所与の固定部に固定される第2永久磁石と、
を具備し、
前記第1永久磁石の前記第2面上では、前記回転軸の位置においても当該第1永久磁石の部材が存在しており、
前記第2永久磁石の前記第3面上では、前記回転軸の位置においても当該第2永久磁石の部材が存在しており、
前記スラスト軸受は、前記第1永久磁石と対になって磁気回路を構成する第1ヨークと、前記第2永久磁石と対になって磁気回路を構成する第2ヨークと、を更に具備し、
前記第1ヨークは、軟磁性体からなり、一方の側が開口した筒状胴部と該筒状胴部の他方の側に連成された底部とを有する有底円筒形をなしており、前記底部及び前記筒状胴部により前記第1永久磁石の前記第1面及び側面を取り囲むようにして内部に同軸的に前記第1永久磁石を収容しており、
前記底部の内底面は前記第1永久磁石の前記第1面と当接すると共に、前記筒状胴部の内壁面と前記第1永久磁石の前記側面との間が非磁性体で埋められており、
前記第1ヨークの前記筒状胴部の開口側の端面と前記第1永久磁石の前記第2面とにより略同一の平面を形成しており、
前記第2ヨークは、軟磁性体からなり、一方の側が開口した筒状胴部と該筒状胴部の他方の側に連成された底部とを有する有底円筒形をなしており、前記底部及び前記筒状胴部により前記第2永久磁石の前記第4面及び側面を取り囲むようにして内部に前記第2永久磁石を収容しており、
前記底部の内底面は前記第2永久磁石の前記第4面と当接すると共に、前記筒状胴部の内壁面と前記第2永久磁石の前記側面との間が非磁性体で埋められており、
前記第2ヨークの前記筒状胴部の開口側の端面と前記第2永久磁石の前記第3面とにより略同一の平面を形成しており、
前記回転装置は、前記回転軸の延びる方向が重力加速度の向かう方向となるように配置されるものであり、
前記スラスト軸受は、前記第1永久磁石、前記軸及び該軸に接続された回転体の全ての重力をスラスト荷重として受けるものであり、
前記回転軸に垂直なラジアル方向の荷重を受けるラジアル軸受を更に備えており、
前記ラジアル軸受は、
前記軸のラジアル荷重を受ける受け部材と、
正磁極及び負磁極を有する磁石と、
前記正磁極及び前記負磁極の間の磁力線の影響を受ける磁性体粒子を含有した磁気潤滑剤と、を備え
記磁石は、一対の前記正磁極及び前記負磁極を互いに結ぶ磁軸がラジアル方向と一致するように構成され、
前記磁石には、一対の前記正磁極及び前記負磁極で定義される極が少なくとも2極以上含まれており、
前記磁石と前記受け部材との間には前記スラスト方向の間隙を有し、該間隙に、非磁性体の材料からなる非磁性体部材が前記磁軸に平行な方向に沿って設けられ
前記受け部材は前記磁石を起磁力源とする磁路の一部を形成しており、
前記磁気潤滑剤が、前記軸と前記受け部材との間に配置されている、
ことを特徴とする回転装置。
【請求項2】
回転軸を中心として回転するよう構成された軸と、
前記軸の少なくとも一端側に配置され、前記回転軸に平行なスラスト方向の荷重を受けるスラスト軸受と、
を備えた回転装置であって、
前記スラスト軸受は、
前記軸の前記一端側に接続され第1磁極が配された第1面、及び、前記第1面とは反対側に位置し第2磁極が配された第2面を有し、前記軸と一体となって同軸に回転するよう構成された第1永久磁石と、
前記第1永久磁石の前記第2面に対向するように位置し前記第2磁極が配された第3面、及び、前記第3面とは反対側に位置し前記第1磁極が配された第4面を有し、所与の固定部に固定される第2永久磁石と、
を具備し、
前記第1永久磁石の前記第2面上では、前記回転軸の位置においても当該第1永久磁石の部材が存在しており、
前記第2永久磁石の前記第3面上では、前記回転軸の位置においても当該第2永久磁石の部材が存在しており、
前記スラスト軸受は、前記第1永久磁石と対になって磁気回路を構成する第1ヨークと、前記第2永久磁石と対になって磁気回路を構成する第2ヨークと、を更に具備し、
前記第1ヨークは、軟磁性体からなり、一方の側が開口した筒状胴部と該筒状胴部の他方の側に連成された底部とを有する有底円筒形をなしており、前記底部及び前記筒状胴部により前記第1永久磁石の前記第1面及び側面を取り囲むようにして内部に同軸的に前記第1永久磁石を収容しており、
前記底部の内底面は前記第1永久磁石の前記第1面と当接すると共に、前記筒状胴部の内壁面と前記第1永久磁石の前記側面との間が非磁性体で埋められており、
前記第1ヨークの前記筒状胴部の開口側の端面と前記第1永久磁石の前記第2面とにより略同一の平面を形成しており、
前記第2ヨークは、軟磁性体からなり、一方の側が開口した筒状胴部と該筒状胴部の他方の側に連成された底部とを有する有底円筒形をなしており、前記底部及び前記筒状胴部により前記第2永久磁石の前記第4面及び側面を取り囲むようにして内部に前記第2永久磁石を収容しており、
前記底部の内底面は前記第2永久磁石の前記第4面と当接すると共に、前記筒状胴部の内壁面と前記第2永久磁石の前記側面との間が非磁性体で埋められており、
前記第2ヨークの前記筒状胴部の開口側の端面と前記第2永久磁石の前記第3面とにより略同一の平面を形成しており、
前記回転装置は、前記回転軸の延びる方向が重力加速度の向かう方向となるように配置されるものであり、
前記スラスト軸受は、前記第1永久磁石、前記軸及び該軸に接続された回転体の全ての重力をスラスト荷重として受けるものであり、
前記回転軸に垂直なラジアル方向の荷重を受けるラジアル軸受を更に備えており、
前記ラジアル軸受は、
前記軸のラジアル荷重を受ける受け部材と、
正磁極及び負磁極を有する磁石と、
前記正磁極及び前記負磁極の間の磁力線の影響を受ける磁性体粒子を含有した磁気潤滑剤と、を備え、
前記磁気潤滑剤が、前記軸と前記受け部材との間に配置されており、
前記受け部材は、前記軸に対して、直接的に又は前記磁気潤滑剤を介して間接的に接触する接触部を有し、
前記接触部は、前記磁石の内側面の位置よりも更に前記回転軸寄りに突出している突出部の先端に形成されており、
前記接触部には、セラミックを含有した磁性材料が用いられていることを特徴とする回転装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転装置において、
前記軸に所与の回転体が取り付けられて当該軸に対しスラスト方向の荷重が課せられたとき、
前記軸が、前記第1永久磁石の前記第2面と前記第2永久磁石の前記第3面との間が離間するようにして鉛直上向きに浮上して、回転するように構成されている、
ことを特徴とする回転装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の回転装置において、
前記軸の他端側においても、前記一端側に配置された前記スラスト軸受と同様の構成を有する別のスラスト軸受が配置されており、
前記スラスト軸受と前記別のスラスト軸受との間に、所与の回転体が前記軸に取り付けられて配置されるよう構成されている、
ことを特徴とする回転装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の回転装置において、
前記第2永久磁石の前記第3面を含む受け側対向面の上、又は、前記第1永久磁石の前記第2面を含む荷重側対向面の上のいずれかにおいて磁気検出部が配設されており、
前記磁気検出部が、前記受け側対向面と前記荷重側対向面との離間距離の変位を検出する、
ことを特徴とする回転装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の回転装置において、
前記磁気潤滑剤には、潤滑性ある油性成分が含有されていることを特徴とする回転装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の回転装置において、
前記磁気潤滑剤には、潤滑性ある炭素粒子が含有されていることを特徴とする回転装置。
【請求項8】
請求項に記載の回転装置において、
前記受け部材は、前記軸に対して、直接的に又は前記磁気潤滑剤を介して間接的に接触する接触部を有し、
前記接触部は、前記磁石の内側面の位置よりも更に前記回転軸寄りに突出している突出部の先端に形成されている、
ことを特徴とする回転装置。
【請求項9】
請求項に記載の回転装置において、
前記接触部には鋳鉄が用いられていることを特徴とする回転装置。
【請求項10】
請求項に記載の回転装置において、
前記接触部には炭素鋼が用いられていることを特徴とする回転装置。
【請求項11】
請求項に記載の回転装置において、
前記接触部には、セラミックを含有した磁性材料が用いられていることを特徴とする回転装置。
【請求項12】
請求項に記載の回転装置において、
前記磁石は、一対の前記正磁極及び前記負磁極を互いに結ぶ磁軸がスラスト方向と一致するように構成され、
前記磁石には、一対の前記正磁極及び前記負磁極で定義される極が少なくとも2極以上含まれている、
ことを特徴とする回転装置。
【請求項13】
請求項12に記載の回転装置において、
前記磁石からみて前記磁気潤滑剤が配置された位置とは反対側のラジアル方向上の位置に、非磁性体の材料からなる非磁性体部材が設けられていることを特徴とする回転装置。
【請求項14】
請求項に記載の回転装置において、
前記磁石は、一対の前記正磁極及び前記負磁極を互いに結ぶ磁軸がラジアル方向と一致するように構成され、
前記磁石には、一対の前記正磁極及び前記負磁極で定義される極が少なくとも2極以上含まれている、
ことを特徴とする回転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の周りを回転する軸についての軸受及び当該軸を備えた回転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸の周りを回転する軸及び当該軸を支える軸受は、大きく分類して2つの荷重がかかる。その1つはスラスト方向の荷重(スラスト荷重)であり、もう1つはラジアル方向の荷重(ラジアル荷重)である。
【0003】
A.スラスト荷重を受けるスラスト軸受
図12は従来の回転装置900の一例を示す図である。図12に示すように、従来の回転装置900では、軸100の一端側(鉛直方向の側)にはスラスト軸受990が配置され、軸100の他端側には回転体500が取り付けられている。回転装置900は、スラスト軸受990で回転体500及び軸100の重力方向の荷重を受けながら、回転体500及び軸100が回転軸RAの回りを回転するように構成されている。なお符号300はラジアル軸受である。
【0004】
しかし、質量が大きな回転体500及び軸100を扱う場合には、それらの荷重を受けるスラスト軸受についても大きな荷重に耐えられる構造が要求されるため、結果的にサイズの大きい大規模なスラスト軸受990が用いられている。大規模なスラスト軸受990では、軸100との接触面積も大きいことからスラスト方向の荷重による摩擦抵抗も大きくなり、回転体500及び軸100が回転する際には大きな負荷(回転負荷)となり、更にはそれによるエネルギー損失も生じていた。
【0005】
この問題を解決するため、永久磁石を用いた軸受による回転装置も提案されている(例えば特許文献1及び2参照)。
本明細書による図示は省略するが、特許文献1に記載された回転装置では、荷重を担う側(上側)の永久磁石(3)と荷重を受ける側(下側)の永久磁石(10)とが互いに同じ磁極Sが対向するようにして配置されている。同じ磁極Sを対向させることによって磁気的な反発力(斥力)を生じさせ、かかる斥力により軸(1)を浮かせてスラスト荷重による摩擦抵抗の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実公昭59-27536号公報
【文献】特開平7-325165号公報
【文献】特開2018-91358号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】理学メカトロニクス社ホームページ、”当社の技術について”、[online]、[2021年11月15日検索]、インターネット(URL: https://www.rigaku-mechatronics.com/technology/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら特許文献1に記載された回転装置においては、軸(1)の一部であるホゾ部(5)が荷重を受ける側の軸受(6)に嵌挿されており、ホゾ部(5)と軸受(6)とが互いに接触している。このため、軸(1)及び回転体(図示なし)が回転しようとすると、ホゾ部(5)と軸受(6)との間に摩擦抵抗が生じる。軸(1)及び回転体が回転すると、この摩擦抵抗に起因した回転負荷がかかることとなり、ひいては摩擦抵抗によるエネルギー損失も生じることとなる。
特に、回転体が蓄電用フライホイール、風力発電用タービン等である場合のように、軸及び回転体が重量物の場合には、かかる接触による摩擦抵抗に起因した回転負荷は無視できない大きなものとなる。よって、軸及び回転体が重量物になればなるほど、かかる接触による摩擦抵抗の低減が求められる。
【0009】
B.ラジアル荷重を受けるラジアル軸受
他方、シャフトなどの軸をラジアル方向で受ける軸受として、ボールベアリングが活用されている。
【0010】
しかし、ボールベアリングは、機構上の摩擦抵抗があるため、軸の回転数が上がると、これに伴い発熱が大きくなっていくという問題がある。軸の回転数が例えば1000rpmを超えると発熱量が2次関数的に増加して無視できないレベルに達すると言われている。このため、昨今では、油冷などの方法により熱を逃がしてボールベアリングの温度上昇を抑制している。ただ、この方法では温度上昇の抑制に限界もあり、かつまた、外付けされる冷却システムも大掛かりとなり、そのためのスペースや重量も増すこととなる。
また、上記した温度上昇の問題に限らず、軸と一体に回転している回転体(フライホイール等)が元々持っているエネルギーが摩擦抵抗により損失してしまうという問題もある。さらに、ボールベアリングは機構を必要とすることから、機械的な耐久性の点でも問題が残る。こうしたことから、近年ではボールベアリングに変わる軸受が求められている。
【0011】
ところで、従来より、回転装置に対し磁性流体を適用する動きがみられる(例えば特許文献3及び非特許文献1参照)。
特許文献3の軸受に適用された磁性流体、及び、非特許文献1のシャフトに当てられた磁性流体は、いずれも機構の中に水、埃、塵等が入らぬようシール目的で用いられている。しかし、一方でラジアル荷重については依然としてボールベアリングが受けており、上記した発熱・エネルギーの損失・耐久性の問題は解消できていない。
【0012】
そこで本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、軸が回転する際に生ずる摩擦抵抗を低減することができる軸受及び当該軸受を備えた回転装置を提供することを目的とする。
また、スラスト荷重にあっては、回転時の摩擦抵抗に起因した負荷(回転負荷)を低減することができ、ひいてはエネルギー損失を低減することができる回転装置を提供することを目的とする。さらに、ラジアル荷重にあっては、ボールベアリングよりも摩擦抵抗の小さい軸受を提供することを目的とする。なお、本明細書において、スラスト軸受及びラジアル軸受を包括的に「軸受」というものとするが、「スラスト軸受」単体又は「ラジアル軸受」単体のことを単に「軸受」ということもある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、回転軸を中心に回転する回転部と、回転部の回転に対し相対的に固定状態となっている固定部と、を備えた回転装置が提供される。
回転部は、回転軸を中心に回転する軸と、軸を支える軸受部が設けられ軸の少なくも一端側に設けられた第1永久磁石と、を有する。第1永久磁石は軸側と反軸側とに着磁されている。固定部は、第1永久磁石に面した側が第1永久磁石の反軸側の磁極と同極となるよう着磁されており、第1永久磁石との間で互いに磁力反発し第1永久磁石と非接触状態となるようにして回転軸上に設けられた第2永久磁石を有している。
【0014】
本発明の別の一態様によれば、回転軸を中心として回転するよう構成された軸と、軸の少なくとも一端側に配置され、回転軸に平行なスラスト方向の荷重を受けるスラスト軸受と、を備えた回転装置が提供される。
スラスト軸受は、軸の一端側に接続され第1磁極が配された第1面、及び、第1面とは反対側に位置し第2磁極が配された第2面を有し、軸と一体となって同軸に回転するよう構成された第1永久磁石と、第1永久磁石の第2面に対向するように位置し第2磁極が配された第3面、及び、第3面とは反対側に位置し第1磁極が配された第4面を有し、所与の固定部に固定される第2永久磁石と、を具備する。
回転装置において、第1永久磁石の第2面上では、回転軸の位置においてもその部材が存在し、かつ、回転軸の位置において磁力線が集中するように第2磁極が配されており、第2永久磁石の第3面上では、回転軸の位置においてもその部材が存在し、かつ、回転軸の位置において磁力線が集中するように第2磁極が配されている。
【0015】
本発明の回転装置によれば、軸が回転する際に生ずる摩擦抵抗を低減することができる。また、回転時の摩擦抵抗に起因した負荷(回転負荷)を低減することができ、ひいてはエネルギー損失を低減することができる。
【0016】
本発明の更に別の一態様によれば、回転軸の周りを回転する軸のラジアル荷重を受ける軸受が提供される。かかる軸受は、軸のラジアル荷重を受ける受け部材と、正磁極及び負磁極を有する磁石と、正磁極及び負磁極の間の磁力線の影響を受ける磁性体粒子を含有した磁気潤滑剤とを備えており、磁気潤滑剤が軸と受け部材との間に配置されている。
【0017】
本発明の軸受によれば、軸が回転する際に生ずる摩擦抵抗を低減することができる。本発明によれば、ボールベアリングよりも摩擦抵抗の小さい軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態A1に係る回転装置1を説明するために示す図である。
図2】実施形態A2に係る回転装置2を説明するために示す図である。
図3】実施形態A3に係る回転装置3を説明するために示す図である。
図4】実施形態A4に係る回転装置4を説明するために示す図である。
図5】実施形態A5に係る回転装置5(態様1)を説明するために示す図である。
図6】実施形態A5に係る回転装置6(態様2)を説明するために示す図である。
図7】応用例に係る回転装置710を説明するために示す図である。
図8】応用例に係る回転装置711を説明するために示す図である。
図9】応用例に係る回転装置712を説明するために示す図である。
図10】変形例に係る回転装置720を説明するために示す図である。
図11】変形例に係る回転装置721を説明するために示す図である。
図12】従来の回転装置900の一例を示す図である。
図13】実施形態B1に係る軸受301を説明するために示す図である。
図14】実施形態B1に係る軸受301の作用・効果について説明する断面図である。
図15】鋳鉄による受け部材10aと磁気潤滑剤50とが馴染む様子を描いた図である。
図16】実施形態B2に係る軸受302を説明するために示す図である。
図17】実施形態B3に係る軸受303を説明するために示す図である。
図18】実施形態B4に係る軸受304を説明するために示す図である。
図19】実施形態B5に係る軸受305を説明するために示す図である。
図20】応用例に係る回転装置750を説明するために示す図である。
図21】応用例に係る回転装置751を説明するために示す図である。
図22】応用例に係る回転装置752を説明するために示す図である。
図23】応用例に係る回転装置753を説明するために示す図である。
図24】応用例に係る回転装置754を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る軸受及び回転装置について図を参照しながら説明する。始めにスラスト軸受について説明を行い、次いでラジアル軸受について説明を行う。
なお、各図に共通する符号については当該符号について既に説明した内容を他の図の説明においても援用できることから、他の図における説明を省略する。また、各図面は一例を示した模式図であり必ずしも実際の寸法、比率等を厳密に反映したものではない。明細書において「上」,「下」と表記したものは説明の便宜上のものであり、本発明を実施する際には天地を逆にしたり、鉛直方向の軸と一致しない配置とすることも可能である。
【0020】
A.スラスト軸受について
[実施形態A1]
1.実施形態A1に係る回転装置1の構成
図1は、実施形態A1に係る回転装置1を説明するために示す図である。
【0021】
図1に示すように、実施形態A1に係る回転装置1は、回転軸RAを中心に回転する「回転部(符号省略)」と、該回転部の回転に対し相対的に固定状態となっている「固定部(符号省略)と、を備えている。
回転部は、回転軸RAを中心に回転する軸100と、軸100を支える軸受部217が設けられ軸100の少なくも一端側に設けられた第1永久磁石210と、を有している。
このとき、第1永久磁石210は軸側(軸100が設けられた側又は配置された側をいう)と反軸側(軸100が配置された側とは反対の側をいう)とに着磁されている。
固定部は、第2永久磁石220を有している。
この第2永久磁石220は、第1永久磁石210に面した側が第1永久磁石210の反軸側の磁極と同極となるよう着磁されており(別言すると、回転部を構成する第1永久磁石210と固定部を構成する第2永久磁石220との間では、互いに対向する面で同極となるよう着磁されている)、第1永久磁石210との間で互いに磁力反発し第1永久磁石210と非接触状態となるようにして軸100上に設けられている。
【0022】
なお、本明細書において、第1永久磁石210における「軸側の面」のことを「第1面211」と、「反軸側の面」のことを「第2面212」と言い換えることができる。また、第2永久磁石220における「第1永久磁石210に面した側の面」のことを「第3面221」と、「第1永久磁石210に面した側とは反対側の面」のことを「第4面222」と言い換えることができる。さらに、逆の言い換えについても相互に可能である。
【0023】
参考までに、実施形態A1に係る回転装置1を別の観点でみると、大きく分けて軸100とスラスト軸受200とを備えているとも言える。
以下、「回転部」、「固定部」、軸100、スラスト軸受200の構成要件ごとの詳しい説明を続ける。
【0024】
軸100は、シャフトとも呼ばれ、回転軸RAを中心として回転するように構成されている。軸100には回転体(図示を省略)が取り付けられる。回転体は、軸100と一体になって回転軸RAを中心に回転する。
【0025】
スラスト軸受200は、回転軸RAに平行な方向であるスラスト方向TDの荷重を受ける。スラスト方向TDの荷重はアキシャル荷重などともいう。荷重は軸100,回転体等による荷重である。スラスト軸受200は、上記した軸100の少なくとも一端側100aに配置されている。
【0026】
スラスト軸受200は、軸100の一端側100aに接続された第1永久磁石210と、第1永久磁石210からみて軸100が配置された側とは反対側に配置された第2永久磁石220とを具備している。
第1永久磁石210は、第1磁極(図の例ではS極。以下同様)が配された第1面211、及び、第1面211とは反対側に位置し第2磁極(図の例ではN極。以下同様)が配された第2面212を有している。第1永久磁石210は、軸100と一体となって軸100の回転軸RAと同軸上で回転するよう構成されている。
第2永久磁石220は、第1永久磁石210の第2面212に対向するように位置し第2磁極(N極)が配された第3面221、及び、第3面221とは反対側に位置し第1磁極(S極)が配された第4面222を有している。第2永久磁石220は、所与の固定部に固定される。
【0027】
第1永久磁石210と第2永久磁石220とは、荷重側対向面215である第2面212、及び、受け側対向面225である第3面221が互いに対向するようして、同軸的に配置されて1つのスラスト軸受200を構成している。
【0028】
なお、第1磁極と第2磁極とは互いに逆の極性を有する磁極同士となっている。実施形態A1では仮に第1磁極をS極とし第2磁極をN極として図示及び説明をしている。
また、第1永久磁石210は、第1永久磁石210に配される第1磁極(S極)の中心が回転軸RAと略同軸となるように構成されていることが好ましい。同様に、第2永久磁石220は、第2永久磁石220に配される第1磁極(S極)の中心が回転軸RAと略同軸となるように構成されていることが好ましい。
【0029】
ここで、第1永久磁石210の第2面212の上では、回転軸RAの位置は空隙/空間となっておらず、回転軸RAの位置においてもその部材(永久磁石の部材)が存在し、かつ、回転軸RAの位置において磁力線が集中するように第2磁極(N極)が配されている。
また、第2永久磁石220の第3面221の上では、回転軸RAの位置は空隙/空間となっておらず、回転軸RAの位置においてもその部材(永久磁石の部材)が存在し、かつ、回転軸RAの位置において磁力線が集中するように第2磁極(N極)が配されている。
【0030】
実施形態A1において、第2面212及び第3面221は、回転軸RA上に直交する面であり、回転軸RAに沿ってみたときには円形となっている。ここでの第2面212及び第3面221は、それぞれ平坦であり対向面の面積は同じとなっており互いに同一形状の面として説明しているが、これに限定されるものではない。なお、第1永久磁石210と第2永久磁石220とは、互いに異なる材料のものであったり互いに異なる構造のものとして設定してもよい。
【0031】
実施形態A1の回転装置1の使用態様の1つとして、軸100及びスラスト軸受200は回転軸RAの延びる方向が鉛直方向と略同じ方向となるように配置されていることが好ましい。ここで「鉛直方向」とは、重力加速度が向かう方向(重力gが向かう方向。図1参照)と平行な方向をいうものとする。
【0032】
また、回転装置1の使用態様の1つとして、軸100に所与の回転体が取り付けられて当該軸100に対しスラスト方向TDの荷重が課せられたとき、軸100が、第1永久磁石210の第2面212と第2永久磁石220の第3面221との間がギャップGP1をもって離間するようにして鉛直上向き(重力gが向かう方向とは逆の方向)に浮上して、回転するように構成されていることが好ましい。
【0033】
2.実施形態A1に係る回転装置2の作用・効果
(1)実施形態A1に係る回転装置1において、回転部を構成する第1永久磁石210と固定部を構成する第2永久磁石220との間では互いに対向する面で同極となるようそれぞれ着磁されている。このため、互いに対向する面の間に磁気的な反発力(斥力)が生じ、
第2永久磁石220は第1永久磁石との間で互いに磁力反発し、第2永久磁石220は第1永久磁石と非接触状態となる。したがって、回転部が回転したときに生ずる摩擦抵抗をほぼ0とすることができ、回転時の摩擦抵抗に起因した負荷(回転負荷)も低減することができる。そして、ひいてはエネルギー損失の低減を図ることができる。
【0034】
また、回転装置1においては、第2永久磁石220は回転軸RA上に設けられており、かつ、第2永久磁石220と対向している第1永久磁石210についても回転軸RA上に設けられている。よって、回転軸RAの位置で互いの磁力線が集中するようになっており、第1永久磁石210及び第2永久磁石220の間の斥力は回転軸RA付近で最大となる。したがって、回転軸RAを中心に回転部を滑らかに回転させることができ、エネルギー損失の低減に寄与することができる。
【0035】
(2)また別の観点から説明すると、実施形態A1に係る回転装置1においては、第2面212及び第3面221が、それぞれ回転軸RAの位置で磁力線が集中するように同じ極性の第2磁極が配されて対面している。このため、第2面212及び第3面221の間には磁気的な反発力(斥力)が生じ、かかる斥力により第1永久磁石210はギャップGP1をもって第2永久磁石220から離間して浮上する。第1永久磁石210は第2永久磁石220との間で非接触となるため、第1永久磁石210、軸100及び回転体が回転したときに生ずる摩擦抵抗(スラスト軸受200による摩擦抵抗)をほぼ0とすることができ、回転時の摩擦抵抗に起因した負荷(回転負荷)も低減することができる。そして、ひいてはエネルギー損失の低減を図ることができる。
【0036】
また、回転装置1は、回転軸RAの位置で互いの磁力線が集中するよう構成されているため、第1永久磁石210及び第2永久磁石220の間の斥力は回転軸RA付近で最大となる。したがって、回転軸RAを中心に第1永久磁石210、軸100及び回転体を滑らかに回転させることができ、エネルギー損失の低減に寄与することができる。
【0037】
上記のとおり実施形態A1に係る回転装置1によれば、回転時の摩擦抵抗に起因した負荷(回転負荷)を低減することができ、ひいては、エネルギー損失を低減することができる
【0038】
(3)回転装置1では、スラスト方向TDの荷重が集中する回転軸RAの位置で斥力が最大になることから、回転軸RA付近で効率的に斥力を発生させることができる。このため、たとえ軸100及び回転体が重量物であったとしても、大掛かりな構造を採用せずとも、斥力を適宜調節することにより比較的容易に非接触の軸受を実現でき、かつ、回転時の摩擦抵抗に起因した負荷(回転負荷)を低減しエネルギー損失を低減することができる。
【0039】
(4)実施形態A1に係る回転装置1において、軸100及びスラスト軸受200を、回転軸RAの延びる方向を鉛直方向と略同じ方向となるように配置すると、軸100及び回転体は重力gに反発して浮上することとなるため、スラスト方向TDの軸受の摩擦抵抗・回転負荷を低減することができる。またこの場合に、軸100及び回転体は、鉛直方向(重力g)と同じ方向を中心に回転することから、回転軸RAが鉛直方向とは異なる方向にセッティングされている場合(横置き・斜め置きされている場合)に比べて、より安定的な回転を得ることができ、かつ、ラジアル方向RDの軸受の摩擦抵抗についても極めて小さくすることができる。
よって、軸100及びスラスト軸受200を回転軸RAの延びる方向が鉛直方向と略同じ方向となるように配置することにより、軸100及び回転体を横置き・斜め置き等する場合に比べて、回転体の回転エネルギーの損失を更に抑えることができる。
【0040】
[実施形態A2]
図2は、実施形態A2に係る回転装置2を説明するために示す図である。図2(a)は図1に対応した模式的な断面図であり、図2(b)は第1永久磁石210及び第1ヨーク230を分解したときの斜視図であり、図2(c)は第2永久磁石220及び第2ヨーク240を分解したときの斜視図である。
【0041】
実施形態A2に係る回転装置2は基本的には実施形態A1に係る回転装置1と同様の構成を有するが、第1ヨーク230及び第2ヨーク240を更に具備し、これらも含めてスラスト軸受200’を構成している点において実施形態A1に係る回転装置1と異なる。
【0042】
1.実施形態A2に係る回転装置2の構成
実施形態A2のスラスト軸受200’は、第1永久磁石210と対になって磁気回路を構成する第1ヨーク230と、第2永久磁石220と対になって磁気回路を構成する第2ヨーク240とを更に具備する《図2(a)参照》。
第1ヨーク230及び第2ヨーク240は、それぞれ軟磁性体からなる。
【0043】
第1ヨーク230は、図2(b)に示すように、一方の側が開口した筒状胴部232と該筒状胴部232の他方の側に連成された底部234とを有する有底円筒形をなしている。
第1ヨーク230は、底部234及び筒状胴部232により第1永久磁石210の第1面211及び側面213を取り囲むようにして内部に同軸的に第1永久磁石210を収容している。底部234の内底面236は、第1永久磁石210の第1面211と当接している。筒状胴部232の内壁面235と第1永久磁石210の側面213との間は空気層(空間)又は非磁性体290で埋められている《図1(a)も併せて参照》。
第1永久磁石210と軸100とは何等かの形で結合されている。ここでは、第1永久磁石210が第1ヨーク230に収容されて一体になりつつ、第1ヨーク230の底部234と軸100の一端側が接続され、全体として一体的に接続されている。
第1ヨーク230の筒状胴部232の開口側の口縁面237と第1永久磁石210の第2面212とにより略同一の平面である「荷重側対向面215」を形成している。
【0044】
同様に第2ヨーク240は、図2(c)に示すように、一方の側が開口した筒状胴部242と該筒状胴部242の他方の側に連成された底部244とを有する有底円筒形をなしている。
第2ヨーク240は、底部244及び筒状胴部242により第2永久磁石220の第4面222及び側面223を取り囲むようにして内部に第2永久磁石220を収容している。底部244の内底面246は第2永久磁石220の第4面222と当接している。筒状胴部242の内壁面245と第2永久磁石220の側面223との間は空気層(空間)又は非磁性体290で埋められている《図1(a)も併せて参照》。
第2ヨーク240及び第2永久磁石220は何等かの形で所与の固定部に固定される。
第2ヨーク240の筒状胴部242の口縁面247と第2永久磁石220の第3面221とにより略同一の平面である「受け側対向面225」を形成している。
【0045】
第1永久磁石210及び第1ヨーク230のセットと、第2永久磁石220及び第2ヨーク240のセットとは、荷重側対向面215及び受け側対向面225が互いに対向するようして、同軸的に配置されて1つのスラスト軸受200’を構成している。
【0046】
2.実施形態A2に係る回転装置2の作用・効果
第1ヨーク230において、底部234の内底面236は第1永久磁石210の第1面211と当接すると共に筒状胴部232の内壁面235と第1永久磁石210の側面213との間は空気層(空間)又は非磁性体290で埋められている。こうして第1ヨーク230は第1永久磁石210と磁気的に結合して磁気回路の一部を構成している。
このような構成となっているため、第1永久磁石210の第2面212の第2磁極(N極)からギャップGP1に向けて放出された磁力線は、第1ヨーク230の口縁面237に収束するようにして集まり、当該磁力線は第1ヨークの内部を通過して第1永久磁石210の第1面の第1磁極(S極)に至ることとなる。
【0047】
同様に第2ヨーク240においても、底部244の内底面246は第2永久磁石220の第4面222と当接すると共に筒状胴部242の内壁面245と第2永久磁石220の側面223との間は空気層(空間)又は非磁性体290で埋められている。こうして第2ヨーク240は第2永久磁石220と磁気的に結合して磁気回路の一部を構成している。
このような構成となっているため、第2永久磁石220の第3面221の第2磁極(N極)からギャップGP1に向けて放出された磁力線は、第2ヨーク240の口縁面247に収束するようにして集まり、当該磁力線は第2ヨークの内部を通過して第2永久磁石220の第4面の第1磁極(S極)に至ることとなる。
【0048】
このように磁力線を、第1永久磁石210及び第1ヨーク230、並びに、第2永久磁石220及び第2ヨーク240にそれぞれ集中的に高密度で通過させることができるため、荷重側対向面215~受け側対向面225《図2(a)参照》の間の斥力を更に高めることができる。したがって、より質量が大きい重量物でも対応できるスラスト軸受200’とすることができ、より質量の大きな軸100及び回転体であっても回転負荷を低減し、回転時の摩擦抵抗に起因したエネルギー損失の低減を図ることができる。
【0049】
実施形態A2に係る回転装置2は、第1ヨーク230及び第2ヨーク240を備える以外の点においては、実施形態A1に係る回転装置1と基本的に同様の構成を有する。そのため、実施形態A1に係る回転装置1が有する効果のうち該当する効果を同様に有する。
【0050】
[実施形態A3]
図3は、実施形態A3に係る回転装置3を説明するために示す図である。
実施形態A3に係る回転装置3は基本的には実施形態A1に係る回転装置1及び実施形態A2に係る回転装置2と同様の構成を有するが、ラジアル軸受300を更に備えた点において実施形態A1に係る回転装置1及び実施形態A2に係る回転装置2とは異なる。
【0051】
実施形態A3に係る回転装置3は、ラジアル方向RD(軸100に垂直な方向)の荷重を受けるラジアル軸受300を更に備える。例えば図3に示すように、ラジアル軸受300としてボールベアリングを採用し、当該ボールベアリングを軸100の回転軸RA方向の2箇所に配置することによりラジアル方向RDの荷重を受けるように構成してもよい(図3の符号300a,300b参照)。
ラジアル軸受300としては、ボールベアリングの代わりに、軸100の回転とラジアル方向RDへの軸方向のスライドにも対応できるいわゆるスライドブッシュやリニアブッシュを採用してもよい。また、それらの他、磁性流体をラジアル方向RDに当てがうようにしてラジアル軸受300を構成してもよい。
【0052】
このように、実施形態A1又はA2に係る回転装置1又は2に対して、更にラジアル軸受300を設けることにより、軸100及び回転体は更に安定した回転を得ることができ、エネルギー損失をより低減することができる。
【0053】
実施形態A3に係る回転装置3は、ラジアル軸受300を備える以外の点においては、実施形態A1に係る回転装置1及び実施形態A2に係る回転装置2と基本的に同様の構成を有する。そのため、実施形態A1に係る回転装置1及び実施形態A2に係る回転装置2が有する効果のうち該当する効果を同様に有する。
【0054】
[実施形態A4]
図4は、実施形態A4に係る回転装置4を説明するために示す図である。
実施形態A4に係る回転装置4は基本的には実施形態A1~A3に係る各回転装置1~3と同様の構成を有するが、別のスラスト軸受400を更に備えた点において実施形態A1~A3に係る各回転装置1~3とは異なる。
【0055】
実施形態A4に係る回転装置4は、図4に示すように、軸100の他端側(図面の上側)においても、一端側(図面の下側)に配置されたスラスト軸受200と同様の構成を有する別のスラスト軸受400が配置されている。このとき、所与の回転体(ここでは一例としてタービン530)は、軸100に取り付けられて、スラスト軸受200と別のスラスト軸受400との間に配置されるよう構成されている。
別のスラスト軸受400の構成は、基本的にスラスト軸受200と同様の構成を取っており、軸100の他端側に接続された第1永久磁石410及び該第1永久磁石410と対になって磁気回路を構成する第1ヨーク430と、所与の固定部に間接的に固定された第2永久磁石420及び該第2永久磁石420と対になって磁気回路を構成する第2ヨーク440と、を備えている。第1永久磁石410と第2永久磁石420との間はギャップGP2をもって離間されている。
【0056】
実施形態A4に係る回転装置4によれば、所与の回転体が、軸100に取り付けられて、スラスト軸受200と別のスラスト軸受400との間に配置されるよう構成されている。
つまり、軸100及び回転体(タービン530)は、軸100の一端側のスラスト軸受200及び他端側の別のスラスト軸受400によって挟まれ、スラスト方向ではフローティング状態で回転することとなる。別の言い方をすると、スラスト軸受200及び別のスラスト軸受400は、一端側及び他端側からそれぞれ斥力により中央に向かうような力で挟み込むようにして軸100や回転体の荷重を軸受している。
例えば回転体がタービン530だったときに、流体の流れ方の変動等によりスラスト方向(図では上下方向)の荷重が変動するが、このような荷重の変動があったときでも、軸100及び回転体(タービン530)がスラスト方向にぐらつきながらシフトするのを抑えることができる。そのため安定した回転を持続することができ、スラスト方向のシフトによるエネルギー損失を抑えることができる。
【0057】
実施形態A4に係る回転装置4は、別のスラスト軸受400を更に備えた以外の点において実施形態A1~A3に係る各回転装置1~3と基本的に同様の構成を有する。そのため、実施形態A1~A3に係る各回転装置1~3が有する効果のうち該当する効果を同様に有する。
【0058】
[実施形態A5]
図5は、実施形態A5に係る回転装置5(態様1)を説明するために示す図である。
図6は、実施形態A5に係る回転装置6(態様2)を説明するために示す図である。
実施形態A5に係る回転装置5,6は基本的には実施形態A1~A4に係る各回転装置1~4と同様の構成を有するが、磁気検出部600が配設されている点において実施形態A1~A4に係る各回転装置1~4とは異なる。すなわち、回転装置5,6は、第2永久磁石220の第3面221を含む受け側対向面225の上(第2永久磁石220の第3面221,第2ヨーク240の口縁面247,またはその間を埋める空気層/非磁性体290がなす端面のいずれか)、又は、第1永久磁石210の第2面212を含む荷重側対向面215の上(第1永久磁石210の第2面212,第1ヨーク230の口縁面237,またはその間を埋める空気層/非磁性体290がなす端面のいずれか)のいずれかにおいて磁気検出部600が配設されており、かかる磁気検出部600が、受け側対向面225と荷重側対向面215との離間距離GP1の変位を検出するように構成されている。
なお、磁気検出部600は、磁束密度の濃淡を相対的に検出することができれば如何なるものを採用してもよい。
【0059】
(1)図5(a)は回転装置5の断面図を示す。図5(b)はスラスト方向TDの荷重(横軸)と磁気検出部600が検出した磁束密度(縦軸)との関係を示すグラフである。図5(c)はスラスト方向TDの荷重が比較的軽いときの磁力線(磁束密度)の様子を模式的に示す図であり、図5(d)はスラスト方向TDの荷重が比較的重いときの磁力線(磁束密度)の様子を模式的に示す図である。
【0060】
回転装置5においては、図5(a)に示すように、磁気検出部600は受け側対向面225の上であって回転軸RA付近に配設されている。
図5(c)に示すスラスト方向TDの荷重が比較的軽いときから(ギャップはGP1)、図5(d)に示すスラスト方向TDの荷重が比較的重いとき(ギャップはGP1’)に移行すると、磁気検出部600が配置された位置では磁束密度0点(B=0点)が近づくため、その分、磁束密度は減衰することとなる《図5(b)も併せて参照》。
この原理を活用することにより、回転装置5は、磁気検出部600で磁束密度の変化を検出することにより、受け側対向面225と荷重側対向面215との離間距離GP1,GP1’の変位を検出し、これによりスラスト方向TDの荷重を検出することができる。さらには間接的に荷重LDの重量を測定することも可能となる。
【0061】
(2)図6(a)は回転装置6の断面図を示す。図6(b)はスラスト方向TDの荷重(横軸)と磁気検出部600が検出した磁束密度(縦軸)との関係を示すグラフである。
【0062】
回転装置6においては、図6(a)に示すように、磁気検出部600は受け側対向面225の上であって第2ヨーク240の縁(口縁面247)付近に配設されている。
スラスト方向TDの荷重が比較的軽いときから、スラスト方向TDの荷重が比較的重いときに移行すると、磁気検出部600が配置された位置では回転装置5とは逆に磁束密度が増加することとなる《図6(b)参照》。
荷重の変化と磁束密度の変化との関係は、回転装置5の場合とは異なるが、いずれにしても回転装置6は、磁気検出部600で磁束密度の変化を検出することにより、受け側対向面225と荷重側対向面215との離間距離の変位を検出し、これによりスラスト方向TDの荷重を検出することができる。さらには間接的に荷重LDの重量を測定し、重量に応じて軸100の最大回転数制御を行ったり、地震、天災による異常な重量を測定することで安全を維持するための回転抑制を行ったりすることが可能となる。
【0063】
実施形態A5に係る回転装置5,6は磁気検出部600が配設されている以外の点において実施形態A1~A4に係る各回転装置1~4と基本的に同様の構成を有する。そのため、実施形態A1~A4に係る各回転装置1~4が有する効果のうち該当する効果を同様に有する。
【0064】
[応用例]
図7は、応用例に係る回転装置710を説明するために示す図である。図8は、応用例に係る回転装置711を説明するために示す図である。図9は、応用例に係る回転装置712を説明するために示す図である。
【0065】
(1)各実施形態に係る回転装置は適宜の応用が可能である。例えば図7に示すように、回転軸RAの方向を重力gの向く方向と同じとし、軸100の他端側に回転体500としてのフライホイール510を設けるといった応用をすることができる。本発明の各回転装置は、回転負荷が極めて小さく、かつ、回転時の摩擦抵抗に起因したエネルギー損失も小さいことから、例えばフライホイール510を回転体500として畜エネルギーを行うような応用には好適である。
【0066】
(2)また、図8に示すように、モータ等の電動装置のロータ520を本発明における回転体500として応用することもできる。比較的質量の大きな重量物としての電動装置であっても、本発明の回転装置として重力gに逆らうように浮上させて回転させることにより、回転負荷を低減しかつエネルギー損失を低減することができる。
なお、符号522はロータ520に属する永久磁石であり、符号524はステータに属するコイルであり、符号526はバックヨークを示している。
【0067】
(3)また、図9に示すように、例えば垂直型の風力発電に用いるタービン530を本発明における回転体500として応用することもできる。比較的質量の大きな重量物としてのタービン530であっても、本発明の回転装置として重力gに逆らうように浮上させて回転させることにより、回転負荷を低減しかつエネルギー損失を低減することができる。
【0068】
以上、本発明(スラスト軸受)を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0069】
(1)実施形態A4においては、別のスラスト軸受400は、軸100の他端側に、第1ヨーク430の内底面236とは逆側の面(外側の面)が接続された構成となっている(図4参照)。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、変形例に係る回転装置720では、図10に示すように、別のスラスト軸受901を、軸100の他端側に、第1ヨーク930の内底面936(内側の面)が接続された構成としてもよい。このとき、第2ヨーク940及び第2永久磁石920は所与の固定部に固定され、第1ヨーク930及び第1永久磁石910は回転側として、第2ヨーク940及び第2永久磁石920からみて重力gとは反対の側に配置される。
【0070】
(2)また、図11に示すように、上記変形例に係る回転装置720の別のスラスト軸受901のみを取り出して単独のスラスト軸受として応用することも可能である(変形例に係る回転装置721)。
【0071】
(3)実施形態A2においては、第1ヨーク230の内底面236が第1永久磁石210の第1面211と当接している構成を示して説明した。しかしながら、本発明においてはこれに限定されるものではない。すなわち、内底面236と第1面211との間に小さなギャップを有するように構成してもよい。このような構成となったとしても、第1永久磁石210の第1磁極を終端/始端として生じる磁力線が第1ヨーク230内部を通過することに変わりがないため、内底面236と第1面211とが当接する場合と同様の作用・効果を奏することができる。このような構成も本発明の均等物である。
なお、第2ヨーク240の内底面246と第2永久磁石220の第4面222との間においても同様である。
【0072】
(4)各実施形態においては、第1磁極をS極とし第2磁極をN極として図示及び説明を行った。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。第1磁極をN極とし第2磁極をS極として各実施形態を適用してもよい。
【0073】
(5)各実施形態では、軸100及び第1永久磁石210が回転し、第2永久磁石220が固定する関係を想定して説明したが、これは相対的な関係を説明したものであり、本発明はこれに限定されるものではない。逆に、軸100及び第1永久磁石210を固定し、第2永久磁石220が回転するような関係の使用のされ方をしてもよい。このとき、本明細書の説明及び請求項において「回転する」は「固定する」に、「回転部」は「固定部」に、「固定部」は「回転部」などと読み替えて適用することができる。
【0074】
(6)これまで述べてきた各実施形態や応用例において、ラジアル軸受300としてボールベアリングを採用した場合を想定して説明を行った。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、後ほど実施形態B1~B5等で述べる磁気潤滑剤50(磁性流体など)が配置された軸受301~305等をラジアル軸受300として導入して、これらのラジアル軸受を本発明に係るスラスト軸受と適宜に組み合わせることができる。
【0075】
B.ラジアル軸受について
[実施形態B1]
1.実施形態B1に係る軸受301の構成
図13は、実施形態B1に係る軸受301(ラジアル軸受)を説明するために示す図である。図13(a)は、軸受301を回転軸RAを含む仮想面で切断したときの断面図であり、図13(b)は図13(a)の破線Aで囲まれた領域を拡大した拡大断面図であり、図13(c)は磁石30の斜視図である。なお、図13においては軸受301に対して軸100(後述)が挿入されていない状態を示している(以降説明する図16図19においても同様)。
【0076】
(1)軸100
実施形態B1に係る軸受301は、回転軸RAを中心軸として回転する軸100(別言すると回転軸RAの周りを回転する軸100。図14参照)のラジアル方向RDの荷重(ラジアル荷重)を受ける軸受である。軸100は、シャフトとも呼ばれ、回転軸RAを中心として回転するように構成されている。軸100には回転体が取り付けられる。回転体は軸100と一体になって回転軸RAの周りを回転する。
【0077】
(2)軸受301の全体構成
図13(a)に示すように、軸受301は、受け部材10-1,10-2(以下、単に受け部材10と表記することがある)と、磁石30と、磁気潤滑剤50とを備えている。
【0078】
(3)受け部材10
受け部材10は、軸100のラジアル荷重を受ける部材である。
実施形態B1で例示した受け部材10は、スラスト方向TDに扁平圧縮された円環形状を呈している。かかる円環形状の内周面が、軸100に対して直接的に又は磁気潤滑剤50を介して間接的に接触する広義の「接触部14」となる。かかる接触部14は、ラジアル荷重を一次的に受ける、いわば「受け壁」となる。
【0079】
受け部材10は、軟磁性体からなり、磁力線の磁路(磁石30を起磁力源とする磁気回路)の一部を構成しており、かかる磁路を通じて繋がる磁力線により接触部14付近で磁気潤滑剤50を滞留させる(後述)よう構成されている。
【0080】
受け部材10は、基部11と回転軸RA側に突出した突出部12とを有している。突出部12の先端側には上記した接触部14(受け壁)が設けられている。
図13(b)に示すように、接触部14は、磁石30の内側面34の位置よりも更に回転軸RA寄りに符号PR分だけ突出している突出部12の先端に形成されている。
【0081】
受け部材10の少なくとも接触部14には鋳鉄が用いられている。実施形態B1の例では、接触部14のみならず、突出部12ひいては受け部材10全体において鋳鉄が用いられている。
【0082】
(4)磁石30
磁石30は、軸受301における磁気回路上での起磁力源となるもので、正磁極31(N極)及び負磁極32(S極)を有する。磁石30は永久磁石である。但し、これに限定されることなく、磁石30を電磁石で構成してもよい。
【0083】
図13(c)に示すように、実施形態B1の磁石30は内側面34、外側面35、上面36及び下面37を有する厚みのある略円筒形状を呈している。
実施形態B1の磁石30は、いわゆるアキシャル異方性の磁石であり、その上面36は全面に渡って正磁極31(N極)となっており、下面37は全面に渡って負磁極32(S極)となっている。なお、上面36/下面37と、正磁極31/負磁極32の配置関係は適宜変更が可能である。
磁石30は、一対の正磁極31及び負磁極32を互いに結ぶ磁軸がスラスト方向TDと一致(完全に一致している場合のほか、実用上、概略一致している場合も含まれる)するように構成されており、例えば、アキシャルギャップ着磁で得ることができる。
【0084】
磁石30は、受け部材10のリブ16を互いに対向するように並べられた2個の受け部材10-1,10-2の間に、挟み込まれるようにして配置されている。磁石30は、リブ16の外側に配置され、リブ16により内側への移動が規制されている。
磁石30の上面36は受け部材10―1のリブ16側の面と接触しており、下面37は受け部材10-2のリブ16側の面と接触している。
磁石30及び受け部材10-1,10-2により磁気回路が構成されている。すなわち、磁石30の正磁極31から発せられた磁力線が、上側に配置された受け部材10-1の内部、接触部14及び磁気潤滑剤50、軸100が配置される空間、下側に配置された受け部材10-2に属する磁気潤滑剤50及び接触部14、下側に配置された受け部材10-2の内部と順次繋がり、最後は磁石30の負磁極32に引き込まれて戻るようになっている《図13(a)の矢印を参照》。
接触部14から発せられる又は引き込まれる磁力線は、回転軸RA側に向かうような方向となっており、接触部14(受け壁の面)に対して交差している。
【0085】
(5)ケース60
更に実施形態B1の軸受301においては、最外周に非磁性体の材料からなるケース60(非磁性体部材)が設けられている。ケース60は、磁石30からみて磁気潤滑剤50が配置された位置(軸100が配置される側)とは反対側のラジアル方向RD上の位置に配置され、磁石30の外側面35及び受け部材10の外側面(符号なし)にそれぞれ接するようにして設けられている。
非磁性体部材であるケース60を、このように磁石30及び受け部材10の外周側に設けることにより、磁石30の正磁極31から発せられた磁力線を外側ではなく内側(磁気潤滑剤が配置された側)に誘導することができ、接触部14付近ではより強く磁気潤滑剤50を拘束することができる。
【0086】
(6)磁気潤滑剤50
磁気潤滑剤50は、磁石30の正磁極31及び負磁極32の間の磁力線の影響を受ける磁性体粒子51を含有した流動性のある材料である。実施形態B1の例では、磁気潤滑剤50としていわゆる磁性流体を用いる。磁性流体は、界面活性剤に覆われた強磁性微粒子がベース液の中に数多く分散してなる流体である。
【0087】
また、実施形態B1の例では、オイルを主成分とする液体をベース液とした磁性流体を用いる。すなわち、磁気潤滑剤には潤滑性ある油性成分が含有されている。
【0088】
さらに、実施形態B1の例で用いる磁気潤滑剤50には、潤滑性ある炭素粒子55が含有されている《後述する図15(b)参照》。
磁気潤滑剤50内の炭素粒子55は、詳細は後述するように鋳鉄による受け部材10aの巣から供給されたものでもよいし、カーボン等でなる粒子を予め磁気潤滑剤50に混入しておいたものでもよい。
【0089】
実施形態B1において、磁気潤滑剤50は、軸100と受け部材10との間に配置されている(図13図15参照)。かかる磁気潤滑剤50は、磁力線の影響を受ける磁性体粒子を含有しているので、軸100と受け部材10と軸との間に配置されると、受け部材を通じて生じる磁力線により拘束されて、接触部14(受け壁の面)に付着するようにして配置場所に留まる。
【0090】
実施形態B1に係る軸受301において、受け部材10は軟磁性体からなり、磁石30、受け部材10及び軸100が磁気回路を構成しており、この磁気回路の磁路内に磁気潤滑剤50が配置されている。
【0091】
2.実施形態B1に係る軸受301の作用・効果
図14は、実施形態B1に係る軸受301の作用・効果について説明する断面図である。図15は、鋳鉄による受け部材10aと磁気潤滑剤50とが馴染む様子を描いた図である。図15(a)は受け部材10-2付近の軸100及び受け部材10-2(10a)の様子を示した断面図であり、図15(b)は図15(a)の破線Bで囲まれた領域を拡大した拡大断面図である。
【0092】
(1)軸受301に対し軸100を挿入すると、図14に示すような状態となる。軸100が挿入されたときにも、起磁力源たる磁石30及び磁路の一部を構成する受け部材10により、図1の状態と同様、磁気回路が形成される(図14の矢印で示した磁力線を参照)。
実施形態B1に係る軸受301は、軸100のラジアル荷重を受ける受け部材10と、正磁極31及び負磁極32を有する磁石30と、正磁極31及び負磁極32の間の磁力線の影響を受ける磁性体粒子51を含有した磁気潤滑剤50とを備え、磁気潤滑剤50が、軸100と受け部材10との間に配置されている。
【0093】
このように、磁気潤滑剤50が軸100と受け部材10との間に配置されているので、軸100の外周面とラジアル荷重を受ける壁になる受け部材10の部位との間に、磁気潤滑剤50による液膜(油性成分が含有されているときには「油膜」)が介在することとなり、軸100が受け部材10に直接接触しない状態(非接触状態)を作ることができる。剛体同士の擦り合わせが無くなるため、それらによる摩擦抵抗は生じない。
逆に、軸100は液膜に対して常に接触することとなるが、液膜を構成する材は潤滑性に富んだ磁気潤滑剤50であるため、軸100及び磁気潤滑剤50による摩擦抵抗は極めて小さい。したがって、軸100が回転する際の軸100が受ける総体としての摩擦抵抗も極めて小さくすることができる。
【0094】
また、磁気潤滑剤は正磁極及び負磁極の間の磁力線の影響を受ける磁性体粒子を含有しているものであるため、磁気潤滑剤は上記磁石を起磁力源とした磁気回路(磁路)上に拘束されている。したがって、軸が回転した時でも荷重が変動した時でも、磁気潤滑剤は軸と受け部材との間の所定の場所に留まり続けることとなり、漏洩、飛散等により磁気潤滑剤が減ることも無く、持続的に安定して上記した液膜を所定の場所に介在させることができる。
【0095】
以上より、実施形態B1に係る軸受301によればボールベアリングよりも摩擦抵抗の小さい軸受を提供することができる。
【0096】
また、実施形態B1に係る軸受301によればボールベアリング等を備えずともラジアル荷重を受けることができる。つまり、軸受内に機械的な可動部(ボールベアリングの玉など)が無いため摩擦損失(又は発熱による損失)が極めて小さいものとなる。したがって、軸100及び軸100に付随した回転装置が元々持っているエネルギーの損失も大幅に抑制することができる。
【0097】
また、実施形態B1に係る軸受301は、機械的な構造も単純であり、かつ、ラジアル荷重を液膜(油膜)で受けるため耐摩耗性や耐久性に優れたものとなる。さらに、軸受301は機械的な構造が単純であるため安価に構成することができ、経済的にも有利な軸受を得ることができる。
【0098】
(2)実施形態B1に係る軸受301において、受け部材10は、軸100に、直接的に又は磁気潤滑剤50を介して間接的に接触する接触部14(受け壁)を有し、接触部14は磁石30の内側面34の位置よりも更に回転軸RA寄りに突出している突出部12の先端に形成されている。逆にいうと、磁石30の内側面34は、受け部材10の接触部14よりも外側に(回転軸RAから遠い位置に)配置されている。
【0099】
このような構成となっているため、軸100からのラジアル荷重は接触部14で受け止られ、その一方で磁石30にはラジアル荷重が掛からない。軸100からのラジアル荷重による機械的応力が掛からないので磁石30の損壊を防止することができる。
【0100】
(3)実施形態B1の磁気潤滑剤50には、潤滑性ある炭素粒子55が含有されている。
この点について、図15を参照しながら以下説明する。
カーボン等の炭素粒子は一般に自己潤滑性を有していると言われており、磁気潤滑剤50中にかかる炭素粒子55が混入していると《図15(b)参照》、かかる潤滑性が磁気潤滑剤50の中でも発揮され、磁気潤滑剤50は更に滑りやすいものとなる。
【0101】
ところで、鋳鉄は一般的な鋼に比べて炭素量が多いと言われている。
図15に示すように、実施形態B1では受け部材10として鋳鉄による受け部材10aが採用されており、基部11a,突出部12aなど、少なくとも接触部14aにも鋳鉄が用いられている。
そのため、鋳鉄に数多く存在する巣18aに磁気潤滑剤50が入り込み、磁気潤滑剤50と鋳鉄による受け部材10a(接触部14a)との接触面積が増えて互いに馴染みやすい状況となっている。接触面積が増えた中で、軸100の回転によって磁気潤滑剤50も適宜対流することから、鋳鉄が有していた炭素粒子55も磁気潤滑剤50の中に混入しやすい。特に、鋳鉄の巣18aには炭素粒子55が多く含まれていることから、なおさら炭素粒子55が磁気潤滑剤50に混入しやすい。
磁気潤滑剤50の中に炭素粒子55が混入すると、炭素粒子55自身が備えている潤滑性が磁気潤滑剤50の中でも発揮され、磁気潤滑剤50は更に滑りやすいものとなる。
したがって、以上のような構成とすることで、軸受301は摩擦抵抗が一層小さなものとなる。
【0102】
[実施形態B2]
図16は、実施形態B2に係る軸受302を説明するために示す図である。図16(a)は軸受302の断面図であり、図16(b)は磁石30-1,30-2の斜視図である。
【0103】
実施形態B2に係る軸受302は、基本的には実施形態B1に係る軸受301と同様の構成を有するが、起磁力源たる磁石を複数(ここでは2個)備えている点などにおいて実施形態B1に係る軸受301と異なる。
【0104】
図16に示すように、実施形態B2に係る軸受302は、略円筒形状のアキシャル異方性の磁石30を2個備えている。双方の磁石30-1,30-2は、スラスト方向TDの面(上面36又は下面37)が互いに同じ極性の磁極(図の例では正磁極31たるN極)が対向するようにして、回転軸RAに沿って配列されている。
上に配置された磁石30-1と当接する受け部材10-2、及び、下に配置された磁石30-2と当接する受け部材10-2は、磁石30-1,30-2で共有する共通のものである。また、非磁性体でなるケース60(非磁性体部材)も双方の磁石に対応した位置で共通のものが用いられている。
【0105】
受け部材10-2は、双方の磁石30-1,30-2から発せられた/引き込まれる磁力線が合流する共通の磁路となることから、受け部材10-2における接触部14(符号の図示は省略)においては、より強力に磁気潤滑剤50を拘束することができる。したがって、実施形態B2に係る軸受302は、ラジアル荷重の増加・変動等にも強い、よりロバストな軸受となる。
【0106】
また、実施形態B2に係る軸受302は、実施形態B1よりも接触部14の箇所が増やされており(受け部材10-1,10-2,10-3による3箇所)、軸100の長い区間でラジアル荷重を受けることができるため、ブレの少ない回転に寄与することができる。
【0107】
実施形態B2に係る軸受302は、磁石を複数備えている点など以外の点においては、実施形態B1に係る軸受301と基本的に同様の構成を有する。そのため、実施形態B1に係る軸受301が有する効果のうち該当する効果を同様に有する。
【0108】
[実施形態B3]
図17は、実施形態B3に係る軸受303を説明するために示す図である。図17(a)は軸受303の断面図《図17(b)のD-D断面図》であり、図17(b)は、図17(a)の矢印Cに沿って軸受303を視たときの平面図である(受け部材10-1は描いていない)。
【0109】
実施形態B3に係る軸受303は、基本的には実施形態B1に係る軸受301と同様の構成を有するが、磁石の構成において実施形態B1に係る軸受301と異なる。
【0110】
図17(b)に示すように、実施形態B3の磁石30aは、一対の正磁極31-n及び負磁極32-n(nは自然数でインデックス番号が入る。以下同様)を互いに結ぶ磁軸がスラスト方向TDと一致するように構成されたアキシャル異方性の極を複数有する。すなわち、磁石30aは、一対の正磁極31-n及び負磁極32-nで定義される極MPnが少なくとも2極以上含まれている。図17で例示した磁石30aにおいては、回転軸RAを中心に360度を8等分割した8個の極MP1~MP8が含まれている。
互いに隣接した極MP(n),MP(n+1)との間では、同じ受け部材10に当接する面(上面又は下面)に対して、同じ磁極(正磁極/負磁極)で配置され、各極MP間は非磁性体部材75で仕切られている。
【0111】
実施形態B3の磁石30aは、アキシャルギャップ着磁で製造することができる。また、各極MP1~MP8に対応した分割磁石の集合体として磁石30aを準備することもできるため、径の大きな軸受を構成する場合などは製造性に優れた軸受であるとも言える。
【0112】
実施形態B3に係る軸受303は、磁石の構成以外の点においては、実施形態B1に係る軸受301と基本的に同様の構成を有する。そのため、実施形態B1に係る軸受301が有する効果のうち該当する効果を同様に有する。
【0113】
[実施形態B4]
図18は、実施形態B4に係る軸受304を説明するために示す図である。図18(a)は軸受304の断面図《図18(b)のF-F断面図》であり、図18(b)は、図18(a)の矢印Eに沿って軸受304を視たときの平面図である(受け部材10-1は描いていない)。
【0114】
実施形態B4に係る軸受304は、基本的には実施形態B3に係る軸受303と同様の構成を有するが、起磁力源たる磁石を複数(ここでは2個)備えている点などにおいて実施形態B3に係る軸受303と異なる。
【0115】
図18に示すように、実施形態B4に係る軸受304は、実施形態B3で説明したアキシャル異方性の多極の磁石30aを2個備えている。
双方の磁石30a-1,30a-2は、同じセクションSCn内で同じ極性の磁極が対向するようにして配列されている。図18(a)をみると、受け部材10-2を挟むようにして、左側のセクションSC1では双方の負磁極(S極)が対向し、右側のセクションSC5では双方の負磁極(S極)が対向するようにして配置されている。
【0116】
上に配置された磁石30a-1と当接する受け部材10-2、及び、下に配置された磁石30a-2と当接する受け部材10-2は、磁石30a-1,30a-2で共有する共通のものである。また、非磁性体でなるケース60(非磁性体部材)も双方の磁石に対応した位置で共通のものが用いられている。
【0117】
2つの磁石30a-1,30a-2に挟まれた受け部材10-2が共通の磁路となること、及びそれによる作用・効果等については実施形態B2に係る軸受302と同様であることから、かかる説明を援用する。
【0118】
また、実施形態B4に係る軸受304は、図18(a)に示すように、上の磁石30a-1の内径は下の磁石30a-2の内径よりも大きくなっている。また、上段の受け部材10-1の内径は、下段の受け部材10-3の内径よりも大きくなっている。さらに、中段の受け部材10-2の突出部12付近には上に向けて開口した座ぐり穴15が設けられている。
実施形態B4に係る軸受304はこのような構成となっているため、符号110で示すような、長手方向の位置によって細い外径と太い外径を有する段の付いた軸(シャフト)を軸受することもできる。
【0119】
実施形態B4に係る軸受304は、磁石30aを複数備えている点など以外の点においては、実施形態B3に係る軸受303と基本的に同様の構成を有する。そのため、実施形態B3に係る軸受303が有する効果のうち該当する効果を同様に有する。
【0120】
[実施形態B5]
図19は、実施形態B5に係る軸受305を説明するために示す図である。図19(a)は、軸受305を、回転軸RAを含む仮想面で切断したときの断面図であり、図19(b)は図19(a)の破線Gで囲まれた領域を拡大した拡大断面図であり、図19(c)は磁石30bの斜視図である。
【0121】
実施形態B5に係る軸受305は、基本的には実施形態B1に係る軸受301と同様の構成を有するが、磁石の構成において実施形態B1に係る軸受301と異なる。
【0122】
図19に示すように、実施形態B5の磁石30bは、一対の正磁極31及び負磁極32を互いに結ぶ磁軸がラジアル方向RDと一致するように構成されたラジアル異方性の磁石である。磁石30bは、ラジアルギャップ着磁で製造することができる。
【0123】
このような磁石30bを用いると、図19(a)に示すように、磁石30bの内側面34に配置された磁極《図では正磁極31(N極)》からは、磁力線が回転軸RAに向かって発せられる/引き込まれる。この点では実施形態B1に係る軸受301とは異なる。ただ、受け部材10も含めて磁路が形成され、受け部材10の接触部14-1,14-2付近で磁気潤滑剤50が拘束される点は同様な構成及び作用を有している。
【0124】
実施形態B5に係る軸受305においては、上に位置する接触部14-1を有する上の受け部材10b(符号共通)と、下に位置する接触部14-2を有する下の受け部材10b(符号共通)と、が渡り部17を通じて連続的に構成(連成)されている。したがって、渡り部17も磁路の一部を構成している《図20(a)の磁力線を示す矢印を参照》。
【0125】
また、軸受305においては、磁軸に平行な方向(回転軸RAに直交する方向)に沿って、磁石30bが配置された位置と磁気潤滑剤50が配置されたスラスト方向TD上の位置との間に非磁性体の材料からなるスペーサー70(非磁性体部材)が設けられている。
【0126】
その他の構成《例えば図19(b)で示す接触部14の位置と磁石の内側面の位置との関係など》については、基本的に実施形態B1と同様であるため説明を援用し、ここでの説明を省略する。実施形態B5に係る軸受305は、磁石の構成以外の点においては、実施形態B1に係る軸受301と基本的に同様の構成を有する。そのため、実施形態B1に係る軸受301が有する効果のうち該当する効果を同様に有する。
【0127】
[応用例]
図20は応用例に係る回転装置750を説明するために示す図である。図21は応用例に係る回転装置751を説明するために示す図である。図22は応用例に係る回転装置752を説明するために示す図である。図23は応用例に係る回転装置753を説明するために示す図である。図24は応用例に係る回転装置754を説明するために示す図である。
なお、応用例で図示する本発明の軸受はブラックボックスとして描いているが、細部の構成は上記してきた対応する実施形態の構成と同様となっている。
【0128】
(1)各実施形態に係る軸受は適宜の応用が可能である。例えば図20で示す垂直側の回転装置750のように、下部にフライホイール510を設けた軸100の側面を補助するようにして、実施形態B1,B2,B3,B5のいずれかの軸受301,302,303,305を配置し、ラジアル荷重を受けてもよい。同様に、図21に示す回転装置751のように、上部にフライホイール510’を設けた軸100の側面を補助するようにして、実施形態B1,B2,B3,B5のいずれかの軸受301,301,302,303,305を配置してもよい。
本発明の各軸受は、摩擦係数が極めて小さく、かつ、摩擦抵抗に起因したエネルギー損失も小さいことから、フライホイール510,510’によりエネルギーを保持しておく装置への応用には好適である。
【0129】
(2)各実施形態に係る軸受は、図22で示す回転装置752のように、垂直側の発電装置のロータ520を軸100に接続した回転装置への応用も可能である。なお、符号522はロータ520に属する永久磁石であり、符号524はステータに属するコイルであり、符号526はコイルバックヨークを示している。ロータ520の基に近い位置では段差のある軸に対応可能な実施形態B4に係る軸受304を配置し、その他の位置では実施形態B1,B2,B3,B5のいずれかの軸受301,302,303,305を配置することができる。なお、本発明に係る軸受(ラジアル軸受)は、発電装置に限らずモータの主軸のラジアル荷重を受ける軸受としても適用可能である。
【0130】
(3)各実施形態に係る軸受は、図23に示す回転装置753のように、垂直型の風力発電用の羽根530、非接触のスラスト軸受200を使った回転装置への応用も可能である。
非接触のスラスト軸受200は、互いに対向する面が同極となるように着磁された第1永久磁石210と第2永久磁石220が回転軸RA上に配置され、第1永久磁石210の側に軸100の一端が接続されて、第1永久磁石210及び第2永久磁石の間で互いに磁力反発して適宜の間隔を置きながら非接触状態となるよう構成されている。
このようにスラスト荷重の軸受をしたうえで、軸100の側面を補助するようにして、実施形態B1,B2,B3,B5のいずれかの軸受301,302,303,305を配置してもよい。
【0131】
また、各実施形態に係る軸受は、図24に示す回転装置754のように、図23の回転装置753に対し羽根530の上方にも非接触のスラスト軸受400を設けた回転装置への応用も可能である。上方のスラスト軸受400の構成についても基本的に下方のスラスト軸受200と同様の構成となっている。
このようにスラスト荷重の軸受をしたうえで、軸100の側面を補助するようにして、実施形態B1,B2,B3,B5のいずれかの軸受301,302,303,305を配置してもよい。
【0132】
図23及び図24に示した回転装置753,754においては、上記したスラスト軸受200,400が設けられているので、回転軸RAに沿った軸100に上下変動があったとしても、第1永久磁石210/410と第2永久磁石220/220との間の磁力反発によって適宜の間隔を置きながら非接触状態を維持することができる。このため、上部の羽根530の回転方向の摩擦抵抗の低減のみならず、上下方向に対しても摩擦抵抗を軽減できる効果も持ち合わせている。
したがって、ここで示したようなラジアル荷重の軸受301,302,303,305及び非接触のスラスト軸受200,400が設けられた羽根530(タービン530と換言可能)を有する回転装置753,754は、同じ仕様のものが地球上の様々な標高の場所で設置されることが想定される場合であったり、地球上の様々な標高・緯度・経度の場所の間を行き来することが想定される場合など、重量や磁力の変異によって軸100が上下変動しうる場合の用途にも適応できる。
【0133】
なお、非接触のスラスト軸受200,400については、発明者らが発明した先願である特願2021-140044で詳しく開示している。本願においてはかかる先願の内容がそのまま取り込まれる。本願における図23の回転装置753は先願の応用例(3)に対応し、図24の回転装置754は先願の実施形態4に対応しており、符号についても同様の符号を用いている。したがって、本応用例のスラスト軸受200,400の詳細な説明は、先願の内容をそのまま援用して本応用例に適用することができる。
【0134】
以上、本発明(ラジアル軸受)を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0135】
(1)磁石としてラジアル異方性の磁石を用いた実施形態は、実施形態B5で説明した。
実施形態B5に係る軸受305で用いられている磁石30bは、一対の正磁極31及び負磁極32で定義される極が一つの場合であった。しなしながら、本発明はこれに限定されるものではない。ラジアル異方性の磁石についても、実施形態B3及び実施形態B4の内容と同様に、一対の正磁極31及び負磁極32で定義される極が多極となるように構成することも可能である。
このとき、磁石は、一対の正磁極31及び負磁極32を互いに結ぶ磁軸がラジアル方向と一致するように構成されたラジアル異方性の磁石であり、磁石には、一対の正磁極31及び負磁極32で定義される極MPが少なくとも2極以上含まれている構成となる。
【0136】
(2)各実施形態においては、潤滑性ある油性成分が含有されている磁気潤滑剤50を用いることを想定して説明を行った。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。磁気潤滑剤50は水溶性のある液体を含有したものであってもよい。こうすることにより、磁気潤滑剤全体としての粘度を低くし易くなるため潤滑性向上が期待できる。
【0137】
(3)各実施形態においては、少なくとも接触部14には鋳鉄が用いられていることを想定して説明を行った。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、接触部14に炭素鋼が用いられていてもよい(少なくとも接触部は炭素鋼でなってもよい)。また、接触部14には、セラミックを含有した磁性材料が用いられていてもよい。具体的には、例えば鉄粉にセラミックの粒子を混ぜたもので接触部14を構成してもよい。
【0138】
なお、磁石においては磁石配列による高磁束密度化技術があり、代表的なハルバッハ磁石配列や特許第5381072号:図3の磁石配列を、本発明の各磁極に用いることで同形状において実施形態A1~A5における反発力を更に高めたり、実施形態B1~B5の磁気潤滑剤50の滞留量を更に増加させたりすることができる。
【符号の説明】
【0139】
1,2,3,4,5,6,710,711,712,720,721,750,751,752,753,754,900…回転装置、10,10a,10b…受け部材、11,11a…(受け部材の)基部、12,12a…(受け部材の)突出部、14,14a…接触部、15…座ぐり穴、16…リブ、17…渡り部、18a…鋳鉄の巣、30,30a,30b…磁石、31…正磁極、32…負磁極、34…(磁石の)内側面、35…(磁石の)外側面、36…(磁石の)上面、37…(磁石の)下面、50…磁気潤滑剤、51…磁性体粒子、55…炭素粒子、60…ケース、70…スペーサー、100…軸、100a…(軸の)一端側、200,200’,400,901,990…スラスト軸受、210,410,910…第1永久磁石、211…第1面、212…第2面、213…(第1永久磁石の)側面、215…荷重側対向面、217…軸受部、220,420,920…第2永久磁石、221…第3面、222…第4面、223…(第2永久磁石の)側面、225…受け側対向面、230,430,930…第1ヨーク、232…筒状胴部、234…底部、235…内壁面、236,936…内底面、237…口縁面、240,440,940…第2ヨーク、242…筒状胴部、244…底部、245…内壁面、246…内底面、247…口縁面、290…空気層又は非磁性体、300,301,302,303,304,305…(ラジアル)軸受、500…回転体、501,502,503,504、510,510’ …フライホイール、520…ロータ、522…ロータに属する永久磁石、524…ステータに属するコイル、526…コイルバックヨーク、530…羽根(タービン)、600…磁気検出部


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