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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】塩素ガスの処理方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 7/01 20060101AFI20240606BHJP
   B01D 53/68 20060101ALI20240606BHJP
   B09B 3/70 20220101ALI20240606BHJP
   C22B 3/10 20060101ALI20240606BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
C01B7/01 A
B01D53/68 120
B09B3/70
C22B3/10 ZAB
C22B7/00 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023523065
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2022035235
(87)【国際公開番号】W WO2023048196
(87)【国際公開日】2023-03-30
【審査請求日】2023-04-14
【審判番号】
【審判請求日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】P 2021154003
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021159036
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391023415
【氏名又は名称】株式会社アサカ理研
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山田 慶太
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】平岡 太郎
(72)【発明者】
【氏名】中澤 順
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】増山 淳子
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-293356(JP,A)
【文献】特開2008-110339(JP,A)
【文献】特開2010-77399(JP,A)
【文献】特開昭51-93552(JP,A)
【文献】特開2005-52724(JP,A)
【文献】特開2012-46794(JP,A)
【文献】特開2000-264641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B7/00
B01D53/68
B01D53/78
C22B3/04
C22B3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃リチウムイオン電池から得られた有価金属を含む粉末を塩酸に溶解し、該有価金属を塩酸により浸出する際に発生する塩素ガスの処理方法であって、
該塩素ガスを、第1の塩化第一鉄水溶液に吸収させて、該第1の塩化第一鉄水溶液に対して塩化第二鉄の濃度が増大した、塩化第二鉄を含有する第2の塩化第一鉄水溶液を生成させる工程を含むことを特徴とする塩素ガスの処理方法。
【請求項2】
請求項記載の塩素ガスの処理方法において、前記塩化第二鉄を含有する第2の塩化第一鉄水溶液を、鉄と接触させて該第2の塩化第一鉄水溶液が含有する塩化第二鉄の少なくとも一部を還元し、該第2の塩化第一鉄水溶液に対して塩化第二鉄の濃度が低減した、塩化第二鉄を含有する第3の塩化第一鉄水溶液を生成させる工程を更に含むことを特徴とする塩素ガスの処理方法。
【請求項3】
請求項記載の塩素ガスの処理方法において、前記第3の塩化第一鉄水溶液の少なくとも一部を前記第1の塩化第一鉄水溶液として、前記塩素ガスの吸収に用いることを特徴とする塩素ガスの処理方法。
【請求項4】
廃リチウムイオン電池から得られた有価金属を含む粉末を第1の塩酸に溶解し、該有価金属を第1の塩酸により浸出する際に発生する塩素ガスの処理方法であって、
該塩素ガスを、水素ガスと反応させて、塩化水素を生成させる工程と、
該塩化水素を水に吸収させて、第2の塩酸を生成させる工程を含むことを特徴とする塩素ガスの処理方法。
【請求項5】
請求項記載の塩素ガスの処理方法において、前記塩素ガスを前記水素ガスと反応させて、前記塩化水素を生成させる工程の前に該塩素ガスを精製し、該塩素ガスに含まれる酸素を除去する工程を更に含むことを特徴とする塩素ガスの処理方法。
【請求項6】
請求項または記載の塩素ガスの処理方法において、前記第2の塩酸の少なくとも一部を前記第1の塩酸として、前記有価金属の浸出に用いることを特徴とする塩素ガスの処理方法。
【請求項7】
廃リチウムイオン電池から得られた有価金属を含む粉末を塩酸に溶解し、該有価金属を塩酸により浸出する際に発生する塩素ガスの処理方法であって、
該塩素ガスを、アルカリ金属水酸化物、及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むアルカリ性吸収液と接触させ、次亜塩素酸塩を生成させる次亜塩素酸塩生成工程と、
次亜塩素酸塩と炭素を反応させる第1の次亜塩素酸塩の還元工程を含むことを特徴とする塩素ガスの処理方法。
【請求項8】
廃リチウムイオン電池から得られた有価金属を含む粉末を塩酸に溶解し、該有価金属を塩酸により浸出する際に発生する塩素ガスの処理方法であって、
該塩素ガスを、アルカリ金属水酸化物、及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むアルカリ性吸収液と接触させ、次亜塩素酸塩を生成させる次亜塩素酸塩生成工程と、
次亜塩素酸塩とアルミニウムを反応させる第2の次亜塩素酸塩の還元工程を含むことを特徴とする塩素ガスの処理方法。
【請求項9】
廃リチウムイオン電池から得られた有価金属を含む粉末を塩酸に溶解し、該有価金属を塩酸により浸出する際に発生する塩素ガスの処理方法であって、
該塩素ガスを炭素及び水と反応させ、二酸化炭素を生成させる二酸化炭素生成工程を含むことを特徴とする塩素ガスの処理方法。
【請求項10】
廃リチウムイオン電池から得られた有価金属を含む粉末を塩酸に溶解し、該有価金属を塩酸により浸出する際に発生する塩素ガスの処理方法であって、
該塩素ガスをアルミニウムと反応させ、塩化アルミニウムを生成させる塩化アルミニウム生成工程を含むことを特徴とする塩素ガスの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素ガスの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池の普及に伴い、廃リチウムイオン電池からリチウム、マンガン、ニッケル、コバルト等の有価金属を回収し、前記リチウムイオン電池の正極活物質として再利用する方法が検討されている。
【0003】
従来、前記廃リチウムイオン電池から前記有価金属を回収する際には、該廃リチウムイオン電池を加熱処理(焙焼)して、ないし加熱処理せずに粉砕、分級する等して得られた前記有価金属を含む粉末(以下、電池粉という)を塩酸に溶解し、該有価金属を塩酸により浸出して得られた浸出液を溶媒抽出に供することが行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4388091号公報
【文献】特許第4865745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記電池粉を塩酸に溶解し、前記有価金属を塩酸により浸出すると、浸出反応により発生する塩素ガスにより、装置が腐食されたり、作業環境が汚染されたりするという不都合がある。
【0006】
本発明は、かかる不都合を解消して、前記電池粉を塩酸に溶解し、前記有価金属を塩酸により浸出する際に発生する塩素ガスを無害化又は有効に活用できる塩素ガスの処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題に鑑み検討を重ね、廃リチウムイオン電池から得られた有価金属を含む粉末を塩酸に溶解し、該有価金属を塩酸により浸出する際に発生する塩素ガスを還元剤、アルカリ金属水酸化物、及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つと反応させ、無害化又は有効に活用できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明の塩素ガスの処理方法は、廃リチウムイオン電池から得られた有価金属を含む粉末を塩酸に溶解し、該有価金属を塩酸により浸出する際に発生する塩素ガスを還元剤、アルカリ金属水酸化物、及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つと反応させ、無害化又は有効に活用できる。
【0009】
本発明の塩素ガスの処理方法は、廃リチウムイオン電池から得られた有価金属を含む粉末を塩酸に溶解し、該有価金属を塩酸により浸出する際に発生する塩素ガスを、第1の塩化第一鉄水溶液に吸収させて、該第1の塩化第一鉄水溶液に対して塩化第二鉄の濃度が増大した、塩化第二鉄を含有する第2の塩化第一鉄水溶液を生成させる工程を含む。
尚、前記塩化第一鉄水溶液における前記塩化第二鉄の濃度とは、前記塩化第一鉄水溶液が含有する塩化第一鉄と塩化第二鉄との合計モル数に対する塩化第二鉄の割合を意味する。また、前記第2の塩化第一鉄水溶液は、前記第1の塩化第一鉄水溶液に対して塩化第二鉄の濃度が増大しているので、以下、便宜的に塩化第二鉄水溶液と記載することがある。
前記工程により、前記塩素ガスが塩化第二鉄として固定化されるので、該塩素ガスを無害化できる。
【0010】
本発明の塩素ガスの処理方法は、好ましくは、前記塩素ガスを、第1の塩化第一鉄水溶液に吸収させることにより生成した、前記塩化第二鉄を含有する第2の塩化第一鉄水溶液を、鉄と接触させて該第2の塩化第一鉄水溶液が含有する塩化第二鉄の少なくとも一部を還元し、該第2の塩化第一鉄水溶液に対して塩化第二鉄の濃度が低減した、塩化第二鉄を含有する第3の塩化第一鉄水溶液を生成させる工程を更に含む。
前記塩化第二鉄を含有する第2の塩化第一鉄水溶液は、鉄と接触させることにより、含有する塩化第二鉄の少なくとも一部が還元されて塩化第一鉄となり、該第2の塩化第一鉄水溶液に対して塩化第二鉄の濃度が低減した、塩化第二鉄を含む第3の塩化第一鉄水溶液とできる。
【0011】
前記塩化第二鉄を含む第3の塩化第一鉄水溶液の少なくとも一部を前記第1の塩化第一鉄水溶液として、前記塩素ガスの吸収に用いることができるので、前記塩素ガスを有効に活用できる。
【0012】
本発明の塩素ガスの処理方法は、廃リチウムイオン電池から得られた有価金属を含む粉末を塩酸に溶解し、該有価金属を塩酸により浸出する際に発生する塩素ガスを、水素ガスと反応させて、塩化水素を生成させる工程と、該塩化水素を水に吸収させて、第2の塩酸を生成させる工程とを含む。この結果、前記塩素ガスを塩酸にすることで、有効に活用できる。
【0013】
本発明の塩素ガスの処理方法は、好ましくは、前記塩素ガスを前記水素ガスと反応させて、前記塩化水素を生成させる工程の前に該塩素ガスを精製し、該塩素ガスに含まれる酸素を除去する工程を更に含む。前記塩化水素を生成させる工程の前に該塩素ガスに含まれる酸素を除去することにより、該塩素ガスを前記水素ガスと反応させる際に、酸素によって水素が消費されることを防ぐことができる。
【0014】
前記第2の塩酸の少なくとも一部を、好ましくは、前記第1の塩酸として、前記有価金属の浸出に用いる。
【0015】
本発明の塩素ガスの処理方法は、塩素ガスを、アルカリ金属水酸化物、及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むアルカリ性吸収液と接触させ、次亜塩素酸塩を生成させる次亜塩素酸塩生成工程と、次亜塩素酸塩と炭素を反応させる第1の次亜塩素酸塩の還元工程を含む。
本発明の塩素ガスの処理方法は、塩素ガスを、アルカリ金属水酸化物、及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むアルカリ性吸収液と接触させ、次亜塩素酸塩を生成させる次亜塩素酸塩生成工程と、次亜塩素酸塩とアルミニウムを反応させる第2の次亜塩素酸塩の還元工程を含む。
【0016】
本発明の塩素ガスの処理方法は、塩素ガスを炭素及び水と反応させ、二酸化炭素を生成させる二酸化炭素生成工程を含む。
【0017】
本発明の塩素ガスの処理方法は、塩素ガスをアルミニウムと反応させ、塩化アルミニウムを生成させる塩化アルミニウム生成工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の1実施態様の塩素ガスの処理方法を示すフローチャート。
図2】本発明の1実施態様の塩素ガスの処理方法に用いる装置構成の一例を示すシステム構成図。
図3】本発明の1実施態様の塩素ガスの処理方法を示すフローチャート。
図4】本発明の1実施態様の塩素ガスの処理方法に用いる装置構成の一例を示すシステム構成図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付の図面を参照しながら本発明について更に詳細に説明する。
本発明の塩素ガスの処理方法は、廃リチウムイオン電池から得られた有価金属を含む粉末(電池粉)を塩酸に溶解し、該有価金属を塩酸により浸出する際に発生する塩素ガスの処理に用いることができる。
【0020】
本発明の塩素ガスの処理方法において、前記廃リチウムイオン電池とは、電池製品としての寿命が消尽した使用済みのリチウムイオン電池、製造工程で不良品等として廃棄されたリチウムイオン電池、製造工程において製品化に用いられた残余の正極材料等を意味する。
【0021】
前記有価金属を含む粉末は、例えば、次のようにして得ることができる。まず、リチウムイオン電池の製造工程において製品化に用いられた残余の正極材料である正極箔(集電体であるアルミニウム箔に正極活物質を含む正極合剤が塗布されたもの)を、電気炉中、例えば100~450℃の範囲の温度で加熱処理(焙焼)した後、又は加熱処理せずにハンマーミル、ジョークラッシャー等の粉砕機で粉砕し、該廃リチウムイオン電池を構成する筐体、集電体等を篩分けにより除去(分級)して、有価金属を含む粉末として、電池粉を得ることができる。
【0022】
あるいは、放電処理後又は加熱処理していない廃リチウムイオン電池を前記粉砕機で粉砕し、筐体、集電体等を篩分けにより除去した後、前記範囲の温度で加熱処理することにより、前記電池粉を得るようにしてもよい。
【0023】
本発明の塩素ガスの処理方法では、前記電池粉を塩酸により浸出する。この結果、前記各種有価金属の浸出液が得られる。
【0024】
本発明の塩素ガスの処理方法は、該塩素ガスを、還元剤と反応させる工程を含む。以下、塩素ガスと前記還元剤の反応について更に詳しく説明する。
【0025】
本発明の塩素ガスの処理方法の第1の実施態様では、図1に示すように、前記廃リチウムイオン電池に対し、STEP1で前処理を行い、STEP2の電池粉を得ることができる。
【0026】
次に、STEP3で、前記電池粉を塩酸に溶解し、前記有価金属を塩酸により浸出する。この結果、STEP4で、前記有価金属の塩酸溶液である浸出液を得ることができる。
前記浸出液は、STEP5の溶媒抽出で、中和された後、前記有価金属のうち、マンガン、コバルト、ニッケルが順次溶媒抽出される。そして、STEP6で、抽出残液としてリチウム塩水溶液を得ることができる。前記リチウム塩水溶液は、炭酸ガス又は炭酸化合物と反応させることにより、炭酸リチウムを得ることができる。
【0027】
一方、STEP3で、前記電池粉を塩酸に溶解すると、前記有価金属が塩酸に浸出される際の浸出反応により、STEP7で塩素ガスが発生する。第1の実施態様の塩素ガスの処理方法は、STEP7で発生する塩素ガスの処理方法であり、例えば、図2に示す塩素ガス処理装置1により実施することができる。
【0028】
塩素ガス処理装置1は、廃リチウムイオン電池から得られた電池粉を塩酸に溶解し、該電池粉に含まれる有価金属を塩酸により浸出する塩酸浸出槽2と、塩酸浸出槽2で生成した塩素ガスを第1の塩化第一鉄水溶液(以下、便宜的に、塩化第一鉄水溶液と記載することがある)に吸収させ、塩化第二鉄を含有する第2の塩化第一鉄水溶液を生成させる反応塔3と、反応塔3で生成した塩化第二鉄を含有する第2の塩化第一鉄水溶液を鉄と接触させ、該第2の塩化第一鉄水溶液が含有する塩化第二鉄の少なくとも一部を還元して塩化第一鉄とする還元反応槽4とを備える。
【0029】
前記第2の塩化第一鉄水溶液は、前記第1の塩化第一鉄水溶液が反応塔3で塩素ガスを吸収して生成された結果、該第1の塩化第一鉄水溶液に対して塩化第二鉄の濃度が増大しているので、以下、便宜的に、塩化第二鉄水溶液と記載することがある。また、前記還元反応槽4では、前記第2の塩化第一鉄水溶液が含有する塩化第二鉄の少なくとも一部が還元されて塩化第一鉄となるので、該第2の塩化第一鉄水溶液に対して塩化第二鉄の濃度が低減した、塩化第二鉄を含む第3の塩化第一鉄水溶液(以下、便宜的に、塩化第一鉄水溶液と記載することがある)が生成される。
【0030】
塩酸浸出槽2は、塩酸を供給する塩酸供給導管21と、電池粉を供給する電池粉供給手段22と、希釈空気を供給する希釈空気供給導管23とを上部に備える一方、電池粉に含まれる有価金属を塩酸により浸出して得られた浸出液24を取り出す浸出液取出導管25を底部に備える。また、塩酸浸出槽2は、前記有価金属を塩酸により浸出する際の浸出反応により生成する塩素ガスを取り出す塩素ガス取出導管26を上部に備え、塩素ガス取出導管26は反応塔3に接続されている。
【0031】
反応塔3は、底部に塩化第一鉄水溶液31(第1の塩化第一鉄水溶液)が貯留される一方、塩化第一鉄水溶液31の上方に充填材が充填された充填材層32が形成されている。また、反応塔3は、底部に貯留されている塩化第一鉄水溶液31を取り出し、充填材層32の上方から供給する循環導管33を備える。循環導管33は、途中に第1ポンプ34を備える一方、第1ポンプ34の下流側に第1切換弁35を備える。第1切換弁35からは、反応塔3で生成した塩化第二鉄水溶液(塩化第二鉄を含む第2の塩化第一鉄水溶液)を還元反応槽4に供給する塩化第二鉄水溶液供給導管36が分岐しており、塩化第二鉄水溶液供給導管36は還元反応槽4の上部に接続されている。さらに、反応塔3は、空気を大気に解放する空気解放導管37を充填材層32の上方の塔頂に備え、空気解放導管37は、途中に反応塔3内の空気を吸引するブロワー38を備えている。
【0032】
還元反応槽4は、濃度調整水を供給する水供給導管41と、鉄片等の鉄を供給する鉄供給手段42とを上部に備える一方、塩化第二鉄水溶液供給導管36により供給される塩化第二鉄水溶液(塩化第二鉄を含む第2の塩化第一鉄水溶液)が含有する塩化第二鉄の少なくとも一部が鉄との反応により還元されて生成する、該第2の塩化第一鉄水溶液に対して塩化第二鉄の濃度が低減した、塩化第二鉄を含む第3の塩化第一鉄水溶液43を取り出す塩化第一鉄水溶液取出導管44を底部に備える。塩化第一鉄水溶液取出導管44は途中に設けられた第2ポンプ45を介して反応塔3の底部に接続される一方、第2ポンプ45の下流側に第2切換弁46を備える。第2切換弁46からは、塩化第一鉄水溶液43の増加分を取り出す増加分取出導管47が分岐している。
【0033】
次に、塩素ガス処理装置1による本実施形態の塩素ガスの処理方法について説明する。
塩素ガス処理装置1では、まず、電池粉供給手段22からSTEP2で得られた電池粉が塩酸浸出槽2に供給される一方、塩酸供給導管21から塩酸が塩酸浸出槽2に供給される。前記塩酸は、例えば、3~12モル/Lの濃度であり、前記電池粉1kgに対し、例えば3~15Lの量が供給される。この結果、塩酸浸出槽2内で前記電池粉が塩酸に溶解され、前記有価金属が塩酸により浸出されて(STEP3)、該有価金属の塩酸溶液である浸出液24を得ることができる(STEP4)。浸出液24は、浸出液取出導管25により取り出され、STEP5の溶媒抽出に供される。
【0034】
また、塩酸浸出槽2では、前記有価金属が塩酸により浸出される際の浸出反応により、塩素ガスが発生する(STEP7)。前記塩素ガスは、反応塔3の空気解放導管37に設けられたブロワー38により、塩素ガス取出導管26を介して吸引されることにより塩酸浸出槽2から取り出され、反応塔3に導入される。
【0035】
塩素ガス取出導管26を介して反応塔3に導入された前記塩素ガスは、ブロワー38に吸引されることにより、希釈空気供給導管23から流入する空気と共に、反応塔3内を下方から上方に向かって移動する。一方、反応塔3の底部に貯留される塩化第一鉄水溶液31は、循環導管33を介して第1ポンプ34に吸引されることにより反応塔3から取り出され、充填材層32の上方から反応塔3内に供給される。
【0036】
塩化第一鉄水溶液31における塩化第二鉄の濃度、すなわち塩化第一鉄水溶液31が含有する塩化第一鉄と塩化第二鉄との合計モル数に対する塩化第二鉄の割合は、初期状態では、例えば、0.1~30モル%の範囲である。
【0037】
そこで、前記塩素ガスは、反応塔3内を下方から上方に向かって移動する間に塩化第一鉄水溶液31に吸収され(STEP8)、塩化第一鉄水溶液31に含まれる塩化第一鉄の一部を塩化第二鉄に酸化し、塩化第二鉄水溶液(塩化第二鉄を含む第2の塩化第一鉄水溶液)を生成する(STEP9)。前記塩素ガスが塩化第一鉄水溶液31に吸収される反応は気液反応であり、充填材層32を形成する充填材の表面で両者が接触することにより効率よく進行する。前記充填材としては、ガラス又は合成樹脂からなるメッシュ状リング(例えば、ラシヒ社製ラシヒスーパーリング(登録商標))等を用いることができる。
【0038】
また、前記塩素ガスと共に反応塔3に供給される空気は、塩化第一鉄水溶液31に吸収されることがないので、ブロワー38に吸引されて、空気解放導管37から大気中に解放される。
【0039】
前記塩化第一鉄が酸化されて前記塩化第二鉄が生成すると、反応塔3の底部に貯留される塩化第一鉄水溶液31が含有する塩化第二鉄の濃度が次第に大きくなり、これに伴って前記塩素ガスの吸収効率が次第に低下する。そこで、塩素ガス処理装置1では、前記塩素ガスの吸収効率が低下する程度に塩化第一鉄水溶液31が含有する塩化第二鉄の濃度が大きくならないように、循環導管33の途中に設けられた第1切換弁35を操作し、塩化第二鉄水溶液(塩化第二鉄を含む第2の塩化第一鉄水溶液)の一部を、塩化第二鉄水溶液供給導管36を介して還元反応槽4に供給する。前記塩化第二鉄水溶液(塩化第二鉄を含む第2の塩化第一鉄水溶液)の供給は、切換弁35により塩化第二鉄水溶液供給導管36の流量を調整することにより常時行ってもよく、切換弁35を間欠的に操作することにより行ってもよい。
【0040】
還元反応槽4では、塩化第二鉄水溶液供給導管36から供給される前記塩化第二鉄水溶液(塩化第二鉄を含む第2の塩化第一鉄水溶液)に対して、鉄供給手段42から鉄片等の鉄を供給し、該塩化第二鉄水溶液が含有する塩化第二鉄の少なくとも一部を鉄との反応により還元して塩化第一鉄とする(STEP10)ことにより、塩化第一鉄水溶液(塩化第二鉄を含む第3の塩化第一鉄水溶液)43を生成する(STEP11)。
【0041】
このとき、還元反応槽4では、水供給導管41から供給される濃度調整水により、生成する塩化第一鉄水溶液43が含有する塩化第二鉄の濃度を反応塔3の底部に貯留される塩化第一鉄水溶液31の初期状態と同等の0.1~30モル%の範囲とすることができる。
【0042】
第3の塩化第一鉄水溶液43は、塩化第一鉄水溶液取出導管44を介して第2ポンプ45に吸引されることにより、少なくともその一部が還元反応槽4から取り出されて反応塔3に還流され、第1の塩化第一鉄水溶液31として、STEP8で前記塩素ガスの吸収に用いられる。
【0043】
また、還元反応槽4では、水供給導管41から供給される濃度調整水により、前記塩化第二鉄水溶液(塩化第二鉄を含む第2の塩化第一鉄水溶液)が吸収している前記塩素ガスの量に対応して、生成する塩化第一鉄水溶液43の量が供給される該塩化第二鉄水溶液の量よりも増加する。そこで、塩化第一鉄水溶液取出導管44に設けられた切換弁46を操作することにより、生成する塩化第一鉄水溶液43の増加分を増加分取出導管47から取り出してもよい。前記増加分取出導管47から取り出される増加分の塩化第一鉄水溶液43は、含有する塩化第一鉄を別途塩素により酸化して塩化第二鉄とすることにより、実質的に塩化第一鉄を含有しない塩化第二鉄水溶液とすることができ、該塩化第二鉄水溶液は、例えば、プリント基板における銅のエッチング液に使用することができる。
【0044】
尚、本実施形態では、切換弁46を操作することにより、塩化第一鉄水溶液43の増加分を増加分取出導管47から取り出すようにしているが、還元反応槽4をオーバーフロー型としておき、前記増加分をオーバーフローさせて図示しない貯留槽に貯留し、該貯留槽から取り出すようにしてもよい。
【0045】
本発明の塩素ガスの処理方法の第2の実施態様では、図3に示すように、前記廃リチウムイオン電池に対し、STEP1で前処理を行い、STEP2の電池粉を得ることができる。
【0046】
次に、STEP3で、前記電池粉を第1の塩酸に溶解し、前記有価金属を第1の塩酸により浸出する。この結果、STEP4で、前記有価金属の塩酸溶液である浸出液を得ることができる。
【0047】
前記浸出液は、STEP5の溶媒抽出で、中和された後、前記有価金属のうち、マンガン、コバルト、ニッケルが順次溶媒抽出される。そして、STEP6で、抽出残液としてリチウム塩水溶液を得ることができる。前記リチウム塩水溶液は、炭酸ガス又は炭酸化合物と反応させることにより、炭酸リチウムを得ることができる。
【0048】
一方、STEP3で、前記電池粉を第1の塩酸に溶解すると、前記有価金属が第1の塩酸に浸出される際の浸出反応により、STEP7で塩素ガスが発生する。本実施形態の塩素ガスの処理方法は、STEP7で発生する塩素ガスの処理方法であり、例えば、図4に示す塩素ガス処理装置1aにより実施することができる。
【0049】
塩素ガス処理装置1aは、廃リチウムイオン電池から得られた電池粉を第1の塩酸に溶解し、該電池粉に含まれる有価金属を第1の塩酸により浸出する塩酸浸出槽2と、塩酸浸出槽2で生成した塩素ガスから酸素を含む空気や粉塵などを分離・除去し、塩素ガスを精製する塩素精製塔3aと、水素ガスを精製する水素供給設備4aと、精製した塩素ガスと水素ガスとを高温下で反応させ、塩化水素を生成させる燃焼塔5と、燃焼塔5で生成した塩化水素を水に吸収させ、第2の塩酸を生成させる塩酸吸収塔6と、塩酸吸収塔6に吸収液を供給する吸収液供給槽7を備える。
【0050】
塩酸浸出槽2は、第1の塩酸を供給する塩酸供給導管21と、電池粉を供給する電池粉供給手段22とを上部に備える一方、電池粉に含まれる有価金属を第1の塩酸により浸出して得られた浸出液23aを取り出す浸出液取出導管24aを底部に備える。また、塩酸浸出槽2は、前記有価金属を第1の塩酸により浸出する際の浸出反応により生成する塩素ガスを取り出す塩素ガス取出導管25aを上部に備え、塩素ガス取出導管25aは塩素精製塔3aに接続されている。
【0051】
塩素精製塔3aは、精製した塩素ガスを取り出す精製塩素ガス取出導管31aを上部に備え、精製塩素ガス取出導管31aは燃焼塔5の塩素バーナ51に接続されている。
【0052】
水素供給設備4aは水素ガス取出導管41aを上部に備え、水素ガス取出導管41aは燃焼塔5の塩素バーナ51に接続されている。
【0053】
燃焼塔5は、精製塩素ガス取出導管31aから供給される塩素ガスと、水素ガス取出導管41aから供給される水素ガスとを燃焼させて塩化水素を生成させる塩素バーナ51を底部に備える一方、生成した塩化水素を冷却する燃焼塔冷却水ジャケット52を外周部に備える。また、燃焼塔5は、生成した塩化水素を塩酸吸収塔6に供給する塩化水素供給導管53を上部に備える。燃焼塔冷却水ジャケット52は、下部に冷却水を供給する燃焼塔冷却水供給導管54を備え、上部に冷却水を取り出す燃焼塔冷却水取出導管55を備える。
【0054】
塩化水素供給導管53の上方には、塩化水素を冷却する冷却水を散布する散水槽56が設けられ、下方には、散水槽56から散布された冷却水を収容する受水槽57が設けられている。散水槽56は冷却水を供給する散水槽冷却水供給導管58を備え、受水槽57は冷却水を取り出す受水槽冷却水取出導管59を備える。
【0055】
塩酸吸収塔6は、生成した第2の塩酸を取り出す塩酸取出導管61を底部に備える一方、未反応の塩化水素を取り出す塩化水素取出導管62を下部に備える。また、塩酸吸収塔6は、内部の塔頂の直下に、吸収液供給槽7から吸収液が供給される第1の貯留槽63を備え、第1の貯留槽63の下方に内筒64を備える。内筒64は上端縁の外周側に第2の貯留槽65を備える。さらに、塩酸吸収塔6は塩化水素及び生成した第2の塩酸を冷却する塩酸吸収塔冷却水ジャケット66を外周部に備える。
【0056】
塩酸取出導管61は、途中に設けられた塩酸ポンプ61aを介して塩酸浸出槽2に接続されている。塩化水素取出導管62は途中で設けられたブロワー62aを介して吸収液供給槽7の底部に接続されている。塩酸吸収塔冷却水ジャケット66は、下部に冷却水を供給する塩酸吸収塔冷却水供給導管67を備え、上部に冷却水を取り出す塩酸吸収塔冷却水取出導管68を備える。
【0057】
吸収液供給槽7は、水を供給する水供給導管71と、ガスを解放するガス解放導管72とを上部に備え、塩化水素を吸収して希塩酸となった吸収液を塩酸吸収塔6の上部へ供給する吸収液供給導管73を下部に備える。ガス解放導管72は、吸収液供給槽7の内圧が一定以上になると開く逆止弁74を備える。
【0058】
また、塩素ガス処理装置1aは、塩酸吸収塔冷却水取出導管68により塩酸吸収塔冷却水ジャケット66から取り出された冷却水が、散水槽56、受水槽57及び燃焼塔冷却水ジャケット52を介して塩酸吸収塔冷却水取出導管68に循環されるように構成されていてもよい。この場合、例えば、塩酸吸収塔冷却水取出導管68は、散水槽56に冷却水を供給する散水槽冷却水供給導管58に接続され、受水槽57から冷却水を取り出す受水槽冷却水取出導管59は、燃焼塔冷却水ジャケット52に冷却水を供給する燃焼塔冷却水供給導管54に接続され、燃焼塔冷却水ジャケット52から冷却水を取り出す燃焼塔冷却水取出導管55は、塩酸吸収塔冷却水ジャケット66に冷却水を供給する塩酸吸収塔冷却水供給導管67に接続される。また、燃焼塔冷却水取出導管55と塩酸吸収塔冷却水供給導管67との途中に熱交換器81と冷却水ポンプ82とを設けてもよい。
【0059】
次に、塩素ガス処理装置1aによる本発明の第2の実施態様の塩素ガスの処理方法について説明する。
塩素ガス処理装置1aでは、まず、電池粉供給手段22からSTEP2で得られた電池粉が塩酸浸出槽2に供給される一方、塩酸供給導管21から第1の塩酸が塩酸浸出槽2に供給される。前記第1の塩酸は、例えば、3~12モル/Lの濃度であり、前記電池粉1kgに対し、例えば3~15Lの量が供給される。この結果、塩酸浸出槽2内で前記電池粉が第1の塩酸に溶解され、前記有価金属が第1の塩酸により浸出されて(STEP3)、該有価金属の塩酸溶液である浸出液23aを得ることができる(STEP4)。浸出液23aは、浸出液取出導管24aにより取り出され、STEP5の溶媒抽出に供される。
【0060】
また、塩酸浸出槽2では、前記有価金属が第1の塩酸により浸出される際の浸出反応により、塩素ガスが発生する(STEP7)。前記塩素ガスは、塩素精製塔3aに設けられた図示しない塩素ガス供給手段により塩素ガス取出導管25aを介して塩酸浸出槽2から取り出され、塩素精製塔3aに供給される。
【0061】
塩素ガス取出導管25aを介して塩素精製塔3aに導入された前記塩素ガスは、水を充填した湿式スクラバ、膜分離法、加圧冷却による塩素の液化等により酸素を含む空気や粉塵などを分離・除去され、精製される(STEP8)。精製された塩素ガスは前記塩素ガス供給手段により塩素精製塔3aから取り出され、精製塩素ガス取出導管31aを介して燃焼塔5に供給される。
【0062】
燃焼塔5に供給された前記塩素ガスは、水素供給設備4aにより供給された水素ガスと共に塩素バーナ51により燃焼され(STEP9)、高温下で反応して塩化水素を生成する(STEP10)。生成した塩化水素は、燃焼塔冷却水ジャケット52により冷却され、塩化水素供給導管53に導入され、さらに散水槽56から受水槽57に散水される冷却水により冷却され、塩酸吸収塔6に導入される。
【0063】
塩酸吸収塔6に導入された前記塩化水素は、吸収液供給槽7から供給されて流下する吸収液に吸収されて(STEP11)、第2の塩酸を生成する(STEP12)。ここで、吸収液供給槽7から供給される吸収液は、一旦第1の貯留槽63に貯留され、第1の貯留槽63から溢流した吸収液は第2の貯留槽65に貯留され、第2の貯留槽65から溢流した吸収液は内筒64の外面及び内面に沿って流下する。内筒64の外面に沿って流下する吸収液は塩化水素を吸収して第2の塩酸を生成し、内筒64の内面に沿って流下する吸収液は塩酸吸収塔冷却水ジャケット66と協働して、生成した第2の塩酸を冷却する。生成された第2の塩酸の濃度は、例えば、1~37質量%の範囲であり、第2の塩酸は、塩酸ポンプ61aにより、塩酸取出導管61を介して塩酸浸出槽2に供給され、第1の塩酸として前記有価金属の浸出に再利用することができる。
【0064】
また、塩酸吸収塔6にて未反応の前記塩化水素は、ブロワー62aに吸引されることにより、塩化水素取出導管62を介して吸収液供給槽7に導入される。吸収液供給槽7に導入された前記塩化水素は、水供給導管71から供給された水に吸収され、希塩酸を生成する。生成した希塩酸は、吸収液供給導管73を介して、吸収液として塩酸吸収塔6に供給される。吸収液供給槽7において塩化水素が吸収された後の残余に気体は、ガス解放導管72を通じて塩素ガス処理装置1aの外部へ排出される。
【0065】
尚、本発明の第2の実施態様では、塩酸吸収塔6が底部に塩酸取出導管61を備え、塩酸取出導管61が塩酸浸出槽2に接続されていることにより、塩酸吸収塔6で生成された第2の塩酸を有価金属の浸出に用いる第1の塩酸として再利用するようにしているが、塩酸取出導管61を図示しない貯留槽に接続させることで第2の塩酸を該貯留槽に貯留し、取り出すようにしてもよい。
【0066】
本発明の塩素ガスの処理方法の第3の実施態様は、塩素ガスを、アルカリ金属水酸化物、及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むアルカリ性吸収液と接触させ、次亜塩素酸塩を生成させる次亜塩素酸塩生成工程を含む。
【0067】
前記アルカリ金属水酸化物を構成するアルカリ金属は、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びフランシウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、より好ましくはリチウム、ナトリウム、及びカリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、更に好ましくはナトリウム、及びカリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。前記アルカリ土類金属水酸化物を構成するアルカリ土類金属は、好ましくはベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、より好ましくはマグネシウム、カルシウム、及びバリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、更に好ましくはマグネシウム及びカルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0068】
前記アルカリ性吸収液は、好ましくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む水溶液または懸濁液である。
【0069】
例えば前記アルカリ性吸収液が水酸化ナトリウムを含む場合、前記次亜塩素酸塩生成工程では、下記式(1)で示される反応が起きる。
2NaOH+Cl→NaClO+NaCl+HO (1)
【0070】
本発明の塩素ガスの処理方法の第3の実施態様は、好ましくは、次亜塩素酸塩と炭素を反応させる第1の次亜塩素酸塩の還元工程を更に含む。次亜塩素酸塩を含有する前記アルカリ性吸収液と還元剤となる炭素を接触させ、塩化物塩と二酸化炭素を生成させる。例えば前記アルカリ性吸収液が水酸化ナトリウムを含む場合、前記第1の次亜塩素酸塩の還元工程では、下記式(2)で示される反応が起きる。
2NaClO+C→2NaCl+CO (2)
【0071】
本発明の塩素ガスの処理方法の第3の実施態様は、好ましくは、次亜塩素酸塩とアルミニウムを反応させる第2の次亜塩素酸塩の還元工程を更に含む。次亜塩素酸塩を含有する前記アルカリ性吸収液と還元剤となるアルミニウムを接触させ、酸化アルミニウムと塩化物塩を生成させる。例えば前記アルカリ性吸収液が水酸化ナトリウムを含む場合、前記第2の次亜塩素酸塩の還元工程では、下記式(3)で示される反応が起きる。
3NaClO+2Al→2Al+3NaCl (3)
【0072】
本発明の塩素ガスの処理方法の第4の実施態様は、塩素ガスを炭素及び水と反応させ、二酸化炭素を生成させる二酸化炭素生成工程を含む。例えば塩素ガスを直接炭素充填塔に通気し、水のシャワーリングまたは水蒸気導入を実施する。前記二酸化炭素生成工程では、下記式(4)で示される反応が起きる。
2Cl+C+2HO→CO+4HCl (4)
【0073】
本発明の塩素ガスの処理方法の第5の実施態様は、塩素ガスをアルミニウムと反応させ、塩化アルミニウムを生成させる塩化アルミニウム生成工程を含む。塩素ガスを直接アルミニウム充填塔に通気して直接還元反応を起こせる。前記塩化アルミニウム生成工程では、下記式(5)で示される反応が起きる。生成した塩化アルミニウムを溶出させるためにアルミニウム充填塔に水のシャワーリングを実施してもよい。
2Al+3Cl→2AlCl (5)
【符号の説明】
【0074】
1…塩素ガス処理装置、 2…塩酸浸出槽、 3…反応塔、 4…還元反応槽、 21…塩酸供給導管、 22…電池粉供給手段、 23…希釈空気供給導管、 24…浸出液、 25…浸出液取出導管、 26…塩素ガス取出導管、 31…塩化第一鉄水溶液、 32…充填材層、 33…循環導管、 34…第1ポンプ、 35…第1切換弁、 36…塩化第二鉄水溶液供給導管、 37…空気解放導管、 38…ブロワー、 41…水供給導管、 42…鉄供給手段、 43…塩化第一鉄水溶液、 44…塩化第一鉄水溶液取出導管、 45…第2ポンプ、 46…第2切換弁、 47…増加分取出導管、 1a…塩素ガス処理装置、 3a…塩素精製塔、 4a…水素供給装置、 5…燃焼塔、 51…塩素バーナ、 6…塩酸吸収塔、 7…吸収液供給槽。
図1
図2
図3
図4