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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】破砕機
(51)【国際特許分類】
   B02C 18/00 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
B02C18/00 102Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2024035613
(22)【出願日】2024-03-08
【審査請求日】2024-03-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521324780
【氏名又は名称】株式会社新居浜鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100129001
【弁理士】
【氏名又は名称】林 崇朗
(72)【発明者】
【氏名】近藤 弘之
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-152810(JP,A)
【文献】特開2002-346420(JP,A)
【文献】特開2005-278327(JP,A)
【文献】特開2012-110846(JP,A)
【文献】特開2016-123956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C18/00-18/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の破砕刃が外周に設けられた第1の回転軸と、
前記第1の回転軸に対して平行に配置され、第2の破砕刃が外周に設けられた第2の回転軸と、を備え、
前記第1の回転軸および前記第2の回転軸を正転方向に回転させることによって前記第1の破砕刃と前記第2の破砕刃との間に送り込んだ廃棄物を破砕する破砕機であって、
前記第1の回転軸および前記第2の回転軸の動作を制御する二軸制御装置と、
前記第1の回転軸を回転駆動する第1の駆動モータと、
前記二軸制御装置からの指示に基づいて第1のセンサレスベクトル制御によって前記第1の駆動モータの回転を制御する第1のインバータ装置と、
前記第2の回転軸を回転駆動する第2の駆動モータと、
前記二軸制御装置からの指示に基づいて第2のセンサレスベクトル制御によって前記第2の駆動モータの回転を制御する第2のインバータ装置と
を備え、
前記第1のインバータ装置は、
前記第1のセンサレスベクトル制御において前記第1の駆動モータの出力トルクとして推定される第1の推定出力トルク値を前記二軸制御装置に出力し、
前記第1の駆動モータが過負荷の状態にあるか否かを判断し、
前記第1の駆動モータが過負荷の状態であると判断した場合、前記第1の駆動モータを過負荷から保護する過負荷保護制御を実行し、
前記過負荷保護制御を実行する場合、前記過負荷保護制御の実行を示す過負荷警報信号を前記二軸制御装置に出力し、
前記第2のインバータ装置は、前記第2のセンサレスベクトル制御において前記第2の駆動モータの出力トルクとして推定される第2の推定出力トルク値を前記二軸制御装置に出力し、
前記二軸制御装置は、
前記第1のインバータ装置から入力される前記第1の推定出力トルク値の移動平均値である第1のトルク移動平均値を算出し、
前記第2のインバータ装置から入力される前記第2の推定出力トルク値の移動平均値である第2のトルク移動平均値を算出し、
前記第1のトルク移動平均値が第1のトルク制限値未満である場合、正転方向へ第1の回転速度で前記第1の駆動モータを駆動するように前記第1のインバータ装置に指示し、
前記第1のトルク移動平均値が前記第1のトルク制限値以上である場合、逆転方向へ前記第1の駆動モータを駆動するように前記第1のインバータ装置に指示し、
前記第2のトルク移動平均値が第2のトルク制限値未満、かつ、前記過負荷警報信号が前記過負荷保護制御の実行を示さない場合、前記第1のトルク移動平均値に応じた回転方向、かつ、前記第1のトルク移動平均値に応じた前記第1の回転速度より遅い回転速度で、前記第2の駆動モータを駆動するように前記第2のインバータ装置に指示し、
前記第2のトルク移動平均値が前記第2のトルク制限値以上である場合、逆転方向へ前記第2の駆動モータを駆動するように前記第2のインバータ装置に指示し、
前記第2のトルク移動平均値が前記第2のトルク制限値未満、かつ、前記過負荷警報信号が前記過負荷保護制御の実行を示す場合、逆転方向へ前記第2の駆動モータを駆動するように前記第2のインバータ装置に指示する、破砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、破砕機に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
破砕機として二軸破砕機が知られている。二軸破砕機は、相互に平行に配置されるとともに破砕刃が外周にそれぞれ設けられた二本の回転軸を備え、二本の回転軸を回転させることによって各破砕刃の間に送り込んだ廃棄物を破砕する。
【0003】
特許文献1,2には、インバータ制御による三相誘導式の駆動モータを用いて回転軸を駆動する二軸破砕機について開示されている。特許文献1の二軸破砕機は、駆動モータの出力トルクをセンサによって検出し、そのセンサ検出値を用いて駆動モータをフィードバック制御しながら破砕処理を行う。特許文献2の二軸破砕機は、駆動モータの回転速度をセンサによって検出し、そのセンサ検出値を用いて駆動モータをフィードバック制御しながら破砕処理を行う。
【0004】
また、一般的に、三相誘導式の駆動モータを制御する方式の一つとしてセンサレスベクトル制御が知られている(例えば、特許文献3を参照)。センサレスベクトル制御は、駆動モータに供給される電流値および電圧値に基づいて駆動モータの出力トルクおよび回転速度を推定し、その推定値を用いて駆動モータをフィードバック制御する。これによって、センサレスベクトル制御は、駆動モータの出力トルクおよび回転速度のセンサ検出値によるフィードバックを必要とすることなく駆動モータを制御可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-346420号公報
【文献】特開2005-152877号公報
【文献】特許第4543720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
二軸破砕機においては、センサレスベクトル制御を用いて駆動モータを制御することについて十分な検討がなされていなかった。特に、二軸破砕機では、過負荷によって回転軸が急停止(ロック)する前に回転軸の過負荷を予防することが重要となる。回転軸の急停止は、破砕刃を始めとする破砕機の各部の損傷、並びに、破砕処理の停止に伴う作業効率の低下などの原因となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示する技術は、以下の形態として実現できる。
【0008】
本明細書に開示する一形態は、第1の破砕刃が外周に設けられた第1の回転軸と;前記第1の回転軸に対して平行に配置され、第2の破砕刃が外周に設けられた第2の回転軸と、を備え、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸を正転方向に回転させることによって前記第1の破砕刃と前記第2の破砕刃との間に送り込んだ廃棄物を破砕する破砕機である。この破砕機は、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸の動作を制御する二軸制御装置と;前記第1の回転軸を回転駆動する第1の駆動モータと;前記二軸制御装置からの指示に基づいて第1のセンサレスベクトル制御によって前記第1の駆動モータの回転を制御する第1のインバータ装置と;前記第2の回転軸を回転駆動する第2の駆動モータと;前記二軸制御装置からの指示に基づいて第2のセンサレスベクトル制御によって前記第2の駆動モータの回転を制御する第2のインバータ装置とを備える。前記第1のインバータ装置は、前記第1のセンサレスベクトル制御において前記第1の駆動モータの出力トルクとして推定される第1の推定出力トルク値を前記二軸制御装置に出力し;前記第1の駆動モータが過負荷の状態にあるか否かを判断し;前記第1の駆動モータが過負荷の状態であると判断した場合、前記第1の駆動モータを過負荷から保護する過負荷保護制御を実行し;前記過負荷保護制御を実行する場合、前記過負荷保護制御の実行を示す過負荷警報信号を前記二軸制御装置に出力する。前記第2のインバータ装置は、前記第2のセンサレスベクトル制御において前記第2の駆動モータの出力トルクとして推定される第2の推定出力トルク値を前記二軸制御装置に出力する。前記二軸制御装置は、前記第1のインバータ装置から入力される前記第1の推定出力トルク値の移動平均値である第1のトルク移動平均値を算出し、;前記第2のインバータ装置から入力される前記第2の推定出力トルク値の移動平均値である第2のトルク移動平均値を算出し;前記第1のトルク移動平均値が第1のトルク制限値未満である場合、正転方向へ第1の回転速度で前記第1の駆動モータを駆動するように前記第1のインバータ装置に指示し;前記第1のトルク移動平均値が前記第1のトルク制限値以上である場合、逆転方向へ前記第1の駆動モータを駆動するように前記第1のインバータ装置に指示し;前記第2のトルク移動平均値が第2のトルク制限値未満、かつ、前記過負荷警報信号が前記過負荷保護制御の実行を示さない場合、前記第1のトルク移動平均値に応じた回転方向、かつ、前記第1のトルク移動平均値に応じた前記第1の回転速度より遅い回転速度で、前記第2の駆動モータを駆動するように前記第2のインバータ装置に指示し;前記第2のトルク移動平均値が前記第2のトルク制限値以上である場合、逆転方向へ前記第2の駆動モータを駆動するように前記第2のインバータ装置に指示し;前記第2のトルク移動平均値が前記第2のトルク制限値未満、かつ、前記過負荷警報信号が前記過負荷保護制御の実行を示す場合、逆転方向へ前記第2の駆動モータを駆動するように前記第2のインバータ装置に指示する。
この形態の破砕機によれば、第1のトルク移動平均値に応じた回転方向および回転速度による第2の駆動モータの制御では回避しきれない第1の回転軸の過負荷を、第1のインバータ装置からの過負荷警報信号に基づく第2の駆動モータの制御によって回避することができる。その結果、第1の回転軸の過負荷による急停止を予防できるため、作業効率と安全率との両立を容易に図ることができる。
【0009】
本明細書に開示する技術は、破砕機とは異なる種々の形態で実現できる。本明細書に開示する技術は、例えば、破砕機の制御装置および制御方法などの形態で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】破砕機の構成を示す説明図である。
図2】破砕機の処理容器の内部構成を示す説明図である。
図3】二軸制御装置のプロセッサが実行する二軸制御処理を示すフローチャートである。
図4】二軸制御装置のプロセッサが実行する高速軸制御処理を示すフローチャートである。
図5】二軸制御装置のプロセッサが実行する低速軸制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、破砕機10の構成を示す説明図である。破砕機10は、廃棄物を破砕する二軸破砕機である。破砕機10は、処理容器110と、回転軸210と、回転軸220と、二軸制御装置300と、インバータ装置410と、インバータ装置420と、駆動モータ510と、駆動モータ520と、減速機610と、減速機620とを備える。図1の説明図は、上方から見た処理容器110の平面図を含む。
【0012】
図2は、破砕機10の処理容器110の内部構成を示す説明図である。図2の説明図は、図1の断面F2-F2で処理容器110を切断した断面図を含む。断面F2-F2は、二本の回転軸210,220に直交するとともに水平面に垂直な平面である。
【0013】
破砕機10の回転軸210は、処理容器110の内側に回転可能に設けられている。回転軸210は、水平面に対して平行に延びた軸である。回転軸210の外周には、破砕刃212とスペーサ214とが交互に複数設けられている。
【0014】
破砕機10の回転軸220は、処理容器110の内側に回転可能に設けられている。回転軸220は、水平面に対して平行に延びた軸である。回転軸220は、回転軸210に対して平行に配置されている。回転軸220は、回転軸210と同じ水平面上に配置されている。回転軸220の外周には、破砕刃222とスペーサ224とが交互に複数設けられている。回転軸220の破砕刃222は、回転軸210のスペーサ214に対向する位置に設けられている。回転軸220のスペーサ214は、回転軸210の破砕刃212に対向する位置に設けられている。
【0015】
破砕機10の処理容器110は、廃棄物810を破砕する処理を内側で実施可能に構成された容器である。処理容器110の内側には二本の回転軸210,220が設けられている。処理容器110は、受入口112と、排出口118とを備える。処理容器110の受入口112は、処理容器110の上方から投入される廃棄物810を処理容器110の内側に受け入れる。処理容器110の排出口118は、処理容器110の内側で破砕された廃棄物810である破砕片820を処理容器110の下方へ排出する。
【0016】
破砕機10は、回転軸210および回転軸220を正転方向FRにそれぞれ回転させることによって、破砕刃212と破砕刃222との間に上方から送り込んだ廃棄物810を破砕する。破砕機10は、回転軸210を正転方向FRの逆方向である逆転方向RRにも回転可能に構成されている。破砕機10は、回転軸220を正転方向FRの逆方向である逆転方向RRにも回転可能に構成されている。
【0017】
破砕機10のインバータ装置410は、二軸制御装置300からの指示に基づいて駆動モータ510を制御する。インバータ装置410は、プロセッサ412と、メモリ414と、コンバータ回路415と、インバータ回路416と、電圧センサ417と、電流センサ418のほか、各種インタフェースを備える。プロセッサ412は、メモリ414に格納されているプログラム命令を実行することによって、駆動モータ510を制御するための各種処理を実現する。コンバータ回路415は、商用電源から供給される交流電力を直流電力に整流する。インバータ回路416は、プロセッサ412からの指示に基づいて、コンバータ回路415によって整流された直流電力を、駆動モータ510に供給する三相交流電力へとパルス幅変調(PWM)によって変換する。電圧センサ417は、コンバータ回路415から出力される直流電圧CV1と、駆動モータ510に出力する出力電圧MV1とを検知する。電流センサ418は、駆動モータ510に出力する出力電流MI1を検知する。
【0018】
インバータ装置410は、インバータ装置410から駆動モータ510に出力する出力電流MI1および出力電圧MV1を参照することによるセンサレスベクトル制御によって駆動モータ510を制御する。インバータ装置410は、センサレスベクトル制御において駆動モータ510の出力トルクとして推定される推定出力トルク値TE1を二軸制御装置300に出力する。本実施形態では、インバータ装置410は、センサレスベクトル制御において駆動モータ510の出力トルクとして演算した値をローパスフィルタで平滑化してノイズを除去し、その値を推定出力トルク値TE1として二軸制御装置300に出力する。
【0019】
インバータ装置410は、駆動モータ510が過負荷の状態であると判断した場合、駆動モータ510を過負荷から保護する過負荷保護制御を実行する。インバータ装置410は、推定出力トルク値TE1がトルク制限値(例えば、駆動モータ510の定格トルクの210%)を超える場合、駆動モータ510が過負荷の状態である判断する。この場合、インバータ装置410は、過負荷保護制御としてトルク制限値を超えるトルクが発生しないように駆動モータ510を制御する。また、駆動モータ510を減速中に駆動モータ510の回生エネルギが過大となり、コンバータ回路415から出力される直流電圧CV1が電圧制限値(例えば、電源電圧(200V)の190%(380V))を超える場合、インバータ装置410は、駆動モータ510が過負荷の状態である判断する。この場合、インバータ装置410は、過負荷保護制御として駆動モータ510に対する出力電力の周波数の下降を中止する。
【0020】
インバータ装置410は、駆動モータ510に対して過負荷保護制御を実行する間、過負荷保護制御の実行を示す過負荷警報信号A1を二軸制御装置300に出力する。本実施形態では、過負荷警報信号A1は、過負荷保護制御を実行中ではない場合に値「0」を示し、過負荷保護制御を実行中である場合に値「1」を示す。
【0021】
破砕機10のインバータ装置420は、二軸制御装置300からの指示に基づいて駆動モータ520を制御する。インバータ装置420は、プロセッサ422と、メモリ424と、コンバータ回路425と、インバータ回路426と、電圧センサ427と、電流センサ428のほか、各種インタフェースを備える。プロセッサ422は、メモリ424に格納されているプログラム命令を実行することによって、駆動モータ520を制御するための各種処理を実現する。コンバータ回路425は、商用電源から供給される交流電力を直流電力に整流する。インバータ回路426は、プロセッサ422からの指示に基づいて、コンバータ回路425によって整流された直流電力を、駆動モータ520に供給する三相交流電力へとパルス幅変調(PWM)によって変換する。電圧センサ427は、コンバータ回路425から出力される直流電圧CV2と、駆動モータ520に出力する出力電圧MV2とを検知する。電流センサ428は、駆動モータ520に出力する出力電流MI2を検知する。本実施形態では、インバータ装置420は、インバータ装置410と同じ仕様のインバータ装置である。
【0022】
インバータ装置420は、インバータ装置420から駆動モータ520に出力する出力電流MI2および出力電圧MV2を参照することによるセンサレスベクトル制御によって駆動モータ520を制御する。インバータ装置420は、センサレスベクトル制御において駆動モータ520の出力トルクとして推定される推定出力トルク値TE2を二軸制御装置300に出力する。本実施形態では、インバータ装置420は、センサレスベクトル制御において駆動モータ520の出力トルクとして演算した値をローパスフィルタで平滑化してノイズを除去し、その値を推定出力トルク値TE2として二軸制御装置300に出力する。
【0023】
インバータ装置420は、駆動モータ520が過負荷の状態であると判断した場合、駆動モータ520を過負荷から保護する過負荷保護制御を実行する。インバータ装置420は、推定出力トルク値TE2がトルク制限値(例えば、駆動モータ520の定格トルクの210%)を超える場合、駆動モータ520が過負荷の状態である判断する。この場合、インバータ装置420は、過負荷保護制御としてトルク制限値を超えるトルクが発生しないように駆動モータ520を制御する。また、駆動モータ520を減速中に駆動モータ520の回生エネルギが過大となり、コンバータ回路425から出力される直流電圧CV2が電圧制限値(例えば、電源電圧(200V)の190%(380V))を超える場合、インバータ装置420は、駆動モータ520が過負荷の状態である判断する。この場合、インバータ装置420は、過負荷保護制御として駆動モータ520に対する出力電力の周波数の下降を中止する。
【0024】
インバータ装置420は、駆動モータ520に対して過負荷保護制御を実行する間、過負荷保護制御の実行を示す過負荷警報信号A2を二軸制御装置300に出力する。本実施形態では、過負荷警報信号A2は、過負荷保護制御を実行中ではない場合に値「0」を示し、過負荷保護制御を実行中である場合に値「1」を示す。
【0025】
破砕機10の駆動モータ510は、回転軸210を回転駆動する。駆動モータ510は、三相誘導式の駆動モータである。駆動モータ510は、インバータ装置410から供給される三相交流に基づいて出力軸512に回転動力を出力する。駆動モータ510の回転動力は、出力軸512に連結された減速機610を介して回転軸210に伝達される。
【0026】
破砕機10の駆動モータ520は、回転軸220を回転駆動する。駆動モータ520は、三相誘導式の駆動モータである。本実施形態では、駆動モータ520は、駆動モータ510と同じ仕様の三相誘導式の駆動モータである。駆動モータ520は、インバータ装置420から供給される三相交流に基づいて出力軸522に回転動力を出力する。駆動モータ520の回転動力は、出力軸522に連結された減速機620を介して回転軸220に伝達される。
【0027】
破砕機10の減速機610は、駆動モータ510から出力される回転動力を減速して回転軸210に伝達する。減速機610は、複数の歯車を備える機械装置である。本実施形態では、インバータ装置410が60Hz(ヘルツ)の三相交流で駆動モータ510を駆動する場合、出力軸512の回転動力が減速機610を介して減速されることによって、回転軸210は10rpm(回転毎分)程度で回転する。駆動モータ510および回転軸210の回転数は、インバータ装置410から供給される三相交流の周波数が高くなるのに比例して高くなり、その周波数が低くなるのに比例して低くなる。
【0028】
破砕機10の減速機620は、駆動モータ520から出力される回転動力を減速して回転軸220に伝達する。減速機620は、複数の歯車を備える機械装置である。本実施形態では、減速機620は、減速機610と同じ仕様の機械装置である。
【0029】
破砕機10の二軸制御装置300は、回転軸210および回転軸220の動作を制御する。二軸制御装置300は、プロセッサ310と、メモリ320と、各種インタフェースとを備えるコンピュータである。二軸制御装置300は、回転軸210および回転軸220の一方を高速駆動軸SFとして制御し、その他方を低速駆動軸SLとして制御する。二軸制御装置300は、破砕機10における各部の損耗の均一化を図ることを目的として、所定の運転時間(例えば、60分)ごとに高速駆動軸SFと低速駆動軸SLとを切り替える。
【0030】
回転軸210が高速駆動軸SF(第1の回転軸)に設定されるとともに回転軸220が低速駆動軸SL(第2の回転軸)に設定される場合、インバータ装置410が高速側インバータ装置IF(第1のインバータ装置)として、駆動モータ510が高速側駆動モータMF(第1の駆動モータ)として設定される。この場合、インバータ装置420が低速側インバータ装置IL(第2のインバータ装置)として、駆動モータ520が低速側駆動モータML(第2の駆動モータ)として設定される。高速側インバータ装置IFであるインバータ装置410は、推定出力トルク値TF(第1の推定出力トルク値)として推定出力トルク値TE1を二軸制御装置300に出力するとともに、高速側インバータ装置IFからの高速側警報信号AFとして過負荷警報信号A1を二軸制御装置300に出力する。低速側インバータ装置ILであるインバータ装置420は、推定出力トルク値TL(第2の推定出力トルク値)として推定出力トルク値TE2を二軸制御装置300に出力する。
【0031】
回転軸220が高速駆動軸SF(第1の回転軸)に設定されるとともに回転軸210が低速駆動軸SL(第2の回転軸)に設定される場合、インバータ装置420が高速側インバータ装置IF(第1のインバータ装置)として、駆動モータ520が高速側駆動モータMF(第1の駆動モータ)として設定される。この場合、インバータ装置410が低速側インバータ装置IL(第2のインバータ装置)として、駆動モータ510が低速側駆動モータML(第2の駆動モータ)として設定される。高速側インバータ装置IFであるインバータ装置420は、推定出力トルク値TF(第1の推定出力トルク値)として推定出力トルク値TE2を二軸制御装置300に出力するとともに、高速側インバータ装置IFからの高速側警報信号AFとして過負荷警報信号A2を二軸制御装置300に出力する。低速側インバータ装置ILであるインバータ装置410は、推定出力トルク値TL(第2の推定出力トルク値)として推定出力トルク値TE1を二軸制御装置300に出力する。
【0032】
二軸制御装置300は、高速側インバータ装置IFから入力される推定出力トルク値TFの移動平均値であるトルク移動平均値TFAを算出する。本実施形態では、二軸制御装置300は、直近の推定出力トルク値TFを4つ抽出し、これら4つの推定出力トルク値TFからトルク移動平均値TFAを算出する。トルク移動平均値TFAを算出する元となる推定出力トルク値TFの数は、4つ以外であってもよく、破砕機10の構成に応じて適宜設定できる。
【0033】
二軸制御装置300は、低速側インバータ装置ILから入力される推定出力トルク値TLの移動平均値であるトルク移動平均値TLAを算出する。本実施形態では、二軸制御装置300は、直近の推定出力トルク値TLを4つ抽出し、これら4つの推定出力トルク値TLからトルク移動平均値TLAを算出する。トルク移動平均値TLAを算出する元となる推定出力トルク値TLの数は、4つ以外であってもよく、破砕機10の構成に応じて適宜設定できる。
【0034】
トルク移動平均値TFAがトルク制限値TFmax以上である場合、二軸制御装置300は、逆転方向RRへ高速側駆動モータMFを駆動(本実施形態では70Hz駆動)するように高速側インバータ装置IFに指示する。一方、トルク移動平均値TFAがトルク制限値TFmax未満である場合、二軸制御装置300は、正転方向FRへ第1の回転速度(本実施形態では60Hz駆動)で高速側駆動モータMFを駆動するように高速側インバータ装置IFに指示する。
【0035】
また、トルク移動平均値TLAがトルク制限値TLmax以上である場合、二軸制御装置300は、逆転方向RRへ低速側駆動モータMLを駆動(本実施形態では70Hz駆動)するように低速側インバータ装置ILに指示する。
【0036】
一方、トルク移動平均値TLAがトルク制限値TLmax未満、かつ、高速側警報信号AFが高速側駆動モータMFに対する過負荷保護制御の実行を示さない場合、二軸制御装置300は、トルク移動平均値TFAに応じた回転方向、かつ、トルク移動平均値TFAに応じた第1の回転速度より遅い回転速度(本実施形態では、正転方向FRへ6Hz,4.5Hzまたは3Hz駆動、および、逆転方向RRへ30Hz駆動)で、低速側駆動モータMLを駆動するように低速側インバータ装置ILに指示する。
【0037】
また、トルク移動平均値TLAがトルク制限値TLmax未満、かつ、高速側警報信号AFが高速側駆動モータMFに対する過負荷保護制御の実行を示す場合、二軸制御装置300は、逆転方向RRへ低速側駆動モータMLを駆動(本実施形態では6Hz駆動)するように低速側インバータ装置ILに指示する。高速側警報信号AFに基づいて高速駆動軸SFの過負荷を検知する応答性は、ローパスフィルタで平滑化された推定出力トルク値TFの移動平均値であるトルク移動平均値TFAよりも高いことから、トルク移動平均値TFAに基づく制御では回避しきれない高速駆動軸SFの過負荷を、高速側警報信号AFに基づく制御によって防止できる。
【0038】
図3は、二軸制御装置300のプロセッサ310が実行する二軸制御処理を示すフローチャートである。図3の二軸制御処理は、回転軸210および回転軸220の動作を制御するための処理である。二軸制御装置300のプロセッサ310は、メモリ320に格納されているプログラム命令を実行することによって、図3の二軸制御処理を所定のタイミングで繰り返し実行する。
【0039】
図3の二軸制御処理を開始した後、二軸制御装置300のプロセッサ310は、回転軸210と回転軸220との間で高速駆動軸SFと低速駆動軸SLとを切り替える軸設定タイミングであるか否かを判断する(ステップS110)。本実施形態では、プロセッサ310は、先回の軸設定タイミングから60分を経過して破砕処理を実施している場合、軸設定タイミングであると判断する。
【0040】
軸設定タイミングである場合(ステップS110:「YES」)、二軸制御装置300のプロセッサ310は、回転軸210と回転軸220との間で高速駆動軸SFと低速駆動軸SLとの設定を切り替える(ステップS120)。例えば、回転軸210が高速駆動軸SFとして設定されるとともに回転軸220が低速駆動軸SLとして設定されている状況で軸設定タイミングになった場合、プロセッサ310は、回転軸220を高速駆動軸SFに設定するとともに、回転軸210を低速駆動軸SLに設定する。逆に、回転軸220が高速駆動軸SFとして設定されるとともに回転軸210が低速駆動軸SLとして設定されている状況で軸設定タイミングになった場合、プロセッサ310は、回転軸210を高速駆動軸SFに設定するとともに、回転軸220を低速駆動軸SLに設定する。
【0041】
軸設定タイミングではない場合(ステップS110:「NO」)、または、高速駆動軸SFと低速駆動軸SLとを切り替えた後(ステップS120)、二軸制御装置300のプロセッサ310は、高速側インバータ装置IFから入力される高速側駆動モータMFの推定出力トルク値TFおよび高速側警報信号AFをメモリ320に読み込むとともに、低速側インバータ装置ILから入力される低速側駆動モータMLの推定出力トルク値TLをメモリ320に読み込む(ステップS130)。
【0042】
高速側インバータ装置IFおよび低速側インバータ装置ILから各種信号を読み込んだ後(ステップS130)、二軸制御装置300のプロセッサ310は、高速側インバータ装置IFから入力される推定出力トルク値TFの移動平均値であるトルク移動平均値TFAを算出する(ステップS140)。プロセッサ310は、所定個数(本実施形態では4つ)の直近の推定出力トルク値TFをメモリ320から読み出し、これらの推定出力トルク値TFからトルク移動平均値TFAを算出する。プロセッサ310は、トルク移動平均値TFAをメモリ320に格納する。
【0043】
トルク移動平均値TFAを算出した後(ステップS140)、二軸制御装置300のプロセッサ310は、低速側インバータ装置ILから入力される推定出力トルク値TLの移動平均値であるトルク移動平均値TLAを算出する(ステップS150)。プロセッサ310は、所定個数(本実施形態では4つ)の直近の推定出力トルク値TLをメモリ320から読み出し、これらの推定出力トルク値TLからトルク移動平均値TLAを算出する。プロセッサ310は、トルク移動平均値TLAをメモリ320に格納する。
【0044】
トルク移動平均値TLAを算出した後(ステップS150)、二軸制御装置300のプロセッサ310は、高速軸制御処理(ステップS200)および低速軸制御処理(ステップS300)を実行する。高速軸制御処理(ステップS200)は、高速駆動軸SFの回転を制御する処理である。低速軸制御処理(ステップS300)は、低速駆動軸SLの回転を制御する処理である。高速軸制御処理(ステップS200)および低速軸制御処理(ステップS300)を完了した後、プロセッサ310は、図3の二軸制御処理を終了する。
【0045】
図4は、二軸制御装置300のプロセッサ310が実行する高速軸制御処理(ステップS200)を示すフローチャートである。高速軸制御処理(ステップS200)を開始した後、プロセッサ310は、高速側駆動モータMFのトルク移動平均値TFAをメモリ320から読み出す(ステップS210)。
【0046】
高速側駆動モータMFのトルク移動平均値TFAを読み出した後(ステップS210)、二軸制御装置300のプロセッサ310は、メモリ320から読み出したトルク移動平均値TFAがトルク制限値TFmax以上であるか否かを判断する(ステップS220)。本実施形態では、トルク制限値TFmaxは、高速側駆動モータMFの定格トルクの200%に設定されている。他の実施形態では、トルク制限値TFmaxは、高速側駆動モータMFの定格トルクの200%未満であってもよいし、高速側駆動モータMFの定格トルクの200%超過であってもよい。
【0047】
高速側駆動モータMFのトルク移動平均値TFAがトルク制限値TFmax未満である場合(ステップS220:「NO」)、二軸制御装置300のプロセッサ310は、正転動作で高速側駆動モータMFを駆動するように高速側インバータ装置IFに指示する(ステップS230)。高速側駆動モータMFの正転動作(ステップS230)は、廃棄物810を破砕可能な十分な速度で高速駆動軸SFを正転方向FRへ回転させる制御である。本実施形態では、高速側駆動モータMFの正転動作(ステップS230)において、プロセッサ310は、正転方向FRへ周波数60Hz(第1の回転速度)の三相交流で高速側駆動モータMFを駆動するように高速側インバータ装置IFに指示する。高速側駆動モータMFの正転動作(ステップS230)を高速側インバータ装置IFに指示した後、プロセッサ310は、図4の高速軸制御処理(ステップS200)を終了する。
【0048】
高速側駆動モータMFのトルク移動平均値TFAがトルク制限値TFmax以上である場合(ステップS220:「YES」)、二軸制御装置300のプロセッサ310は、逆転動作で高速側駆動モータMFを駆動するように高速側インバータ装置IFに指示する(ステップS240)。高速側駆動モータMFの逆転動作(ステップS240)は、高速駆動軸SFにかかる過剰な負荷による破砕機10の破損を防止するために高速駆動軸SFを逆転方向RRへ回転させる制御である。本実施形態では、高速側駆動モータMFの逆転動作(ステップS240)において、プロセッサ310は、逆転方向RRへ周波数70Hzの三相交流で高速側駆動モータMFを駆動するように高速側インバータ装置IFに指示する。本実施形態では、逆転動作(ステップS240)で高速側駆動モータMFを駆動する周波数(70Hz)は、正転動作(ステップS230)で高速側駆動モータMFを駆動する周波数(60Hz)より高い。他の実施形態では、逆転動作(ステップS240)の周波数は、正転動作(ステップS230)の周波数と同じであってもよいし、正転動作(ステップS230)の周波数より低くてもよい。高速側駆動モータMFの逆転動作(ステップS240)を高速側インバータ装置IFに指示した後、プロセッサ310は、図4の高速軸制御処理(ステップS200)を終了する。
【0049】
図5は、二軸制御装置300のプロセッサ310が実行する低速軸制御処理(ステップS300)を示すフローチャートである。低速軸制御処理(ステップS300)を開始した後、プロセッサ310は、高速側駆動モータMFのトルク移動平均値TFAと、高速側警報信号AFと、低速側駆動モータMLのトルク移動平均値TLAとを、メモリ320から読み出す(ステップS310)。
【0050】
トルク移動平均値TFA、高速側警報信号AFおよびトルク移動平均値TLAを読み出した後(ステップS310)、二軸制御装置300のプロセッサ310は、メモリ320から読み出した低速側駆動モータMLのトルク移動平均値TLAがトルク制限値TLmax以上であるか否かを判断する(ステップS320)。本実施形態では、トルク制限値TLmaxは、低速側駆動モータMLの定格トルクの200%に設定されている。他の実施形態では、トルク制限値TLmaxは、低速側駆動モータMLの定格トルクの200%未満であってもよいし、低速側駆動モータMLの定格トルクの200%超過であってもよい。
【0051】
低速側駆動モータMLのトルク移動平均値TLAがトルク制限値TLmax以上である場合(ステップS320:「YES」)、二軸制御装置300のプロセッサ310は、逆転動作で低速側駆動モータMLを駆動するように低速側インバータ装置ILに指示する(ステップS325)。低速側駆動モータMLの逆転動作(ステップS325)は、低速駆動軸SLにかかる過剰な負荷による破砕機10の破損を防止するために低速駆動軸SLを逆転方向RRへ回転させる制御である。本実施形態では、低速側駆動モータMLの逆転動作(ステップS325)において、プロセッサ310は、逆転方向RRへ周波数70Hz(第2の回転速度)の三相交流で低速側駆動モータMLを駆動するように低速側インバータ装置ILに指示する。本実施形態では、逆転動作(ステップS325)で低速側駆動モータMLを駆動する周波数(70Hz)は、正転動作(図4のステップS230)で高速側駆動モータMFを駆動する周波数(60Hz)より高い。他の実施形態では、逆転動作(ステップS325)の周波数は、高速側駆動モータMFの正転動作(図4のステップS230)の周波数と同じであってもよいし、高速側駆動モータMFの正転動作(図4のステップS230)の周波数より低くてもよい。低速側駆動モータMLの逆転動作(ステップS325)を低速側インバータ装置ILに指示した後、プロセッサ310は、図5の低速軸制御処理(ステップS300)を終了する。
【0052】
低速側駆動モータMLのトルク移動平均値TLAがトルク制限値TLmax未満である場合(ステップS320:「NO」)、二軸制御装置300のプロセッサ310は、高速側警報信号AFが値「1」であるか否か、すなわち、高速側インバータ装置IFが過負荷保護制御の実行中であるか否か、を判断する(ステップS330)。
【0053】
高速側警報信号AFが値「1」である場合、すなわち、高速側インバータ装置IFが過負荷保護制御の実行中である場合(ステップS330:「YES」)、二軸制御装置300のプロセッサ310は、逆転動作で低速側駆動モータMLを駆動するように低速側インバータ装置ILに指示する(ステップS335)。低速側駆動モータMLの逆転動作(ステップS335)は、過負荷保護制御中にある高速駆動軸SFの過負荷を軽減するために低速駆動軸SLを逆転方向RRへ回転させる制御である。本実施形態では、低速側駆動モータMLの逆転動作(ステップS335)において、プロセッサ310は、逆転方向RRへ周波数6Hz(第3の回転数)の三相交流で低速側駆動モータMLを駆動するように低速側インバータ装置ILに指示する。本実施形態では、高速側警報信号AFに基づく逆転動作(ステップS335)の周波数(6Hz)は、トルク移動平均値TLAに基づく逆転動作(ステップS325)の周波数(70Hz)より低い。低速側駆動モータMLの逆転動作(ステップS335)を低速側インバータ装置ILに指示した後、プロセッサ310は、図5の低速軸制御処理(ステップS300)を終了する。
【0054】
高速側警報信号AFが値「0」である場合、すなわち、高速側インバータ装置IFが過負荷保護制御の実行中ではない場合(ステップS330:「NO」)、二軸制御装置300のプロセッサ310は、高速側駆動モータMFのトルク移動平均値TFAが定格トルクの150%以上200%未満であるか否かを判断する(ステップS340)。
【0055】
高速側駆動モータMFのトルク移動平均値TFAが定格トルクの150%以上200%未満である場合(ステップS340:「YES」)、二軸制御装置300のプロセッサ310は、逆転動作で低速側駆動モータMLを駆動するように低速側インバータ装置ILに指示する(ステップS345)。低速側駆動モータMLの逆転動作(ステップS345)は、高速駆動軸SFの過負荷を軽減するために低速駆動軸SLを逆転方向RRへ回転させる制御である。本実施形態では、低速側駆動モータMLの逆転動作(ステップS345)において、プロセッサ310は、逆転方向RRへ周波数30Hzの三相交流で低速側駆動モータMLを駆動するように低速側インバータ装置ILに指示する。本実施形態では、トルク移動平均値TFAに基づく逆転動作(ステップS345)の周波数(30Hz)は、トルク移動平均値TLAに基づく逆転動作(ステップS325)の周波数(70Hz)よ
り低い。低速側駆動モータMLの逆転動作(ステップS345)を低速側インバータ装置ILに指示した後、プロセッサ310は、図5の低速軸制御処理(ステップS300)を終了する。
【0056】
高速側駆動モータMFのトルク移動平均値TFAが定格トルクの150%未満である場合(ステップS340:「NO」)、二軸制御装置300のプロセッサ310は、高速側駆動モータMFのトルク移動平均値TFAが定格トルクの80%以上150%未満であるか否かを判断する(ステップS350)。
【0057】
高速側駆動モータMFのトルク移動平均値TFAが定格トルクの80%以上150%未満である場合(ステップS350:「YES」)、二軸制御装置300のプロセッサ310は、正転動作で低速側駆動モータMLを駆動するように低速側インバータ装置ILに指示する(ステップS355)。低速側駆動モータMLの正転動作(ステップS355)は、高速駆動軸SFの負荷が比較的に高い状況で低速駆動軸SLを正転方向FRへ回転させて破砕処理を継続して実施する制御である。本実施形態では、低速側駆動モータMLの正転動作(ステップS355)において、プロセッサ310は、正転方向FRへ周波数3Hzの三相交流で低速側駆動モータMLを駆動するように低速側インバータ装置ILに指示する。本実施形態では、正転動作(ステップS355)において低速側駆動モータMLを制御する周波数(3Hz)は、正転動作(図4のステップS230)で高速側駆動モータMFを駆動する周波数(60Hz)より低い。低速側駆動モータMLの正転動作(ステップS355)を低速側インバータ装置ILに指示した後、プロセッサ310は、図5の低速軸制御処理(ステップS300)を終了する。
【0058】
高速側駆動モータMFのトルク移動平均値TFAが定格トルクの80%未満である場合(ステップS350:「NO」)、二軸制御装置300のプロセッサ310は、高速側駆動モータMFのトルク移動平均値TFAが定格トルクの30%以上80%未満であるか否かを判断する(ステップS360)。
【0059】
高速側駆動モータMFのトルク移動平均値TFAが定格トルクの30%以上80%未満である場合(ステップS360:「YES」)、二軸制御装置300のプロセッサ310は、正転動作で低速側駆動モータMLを駆動するように低速側インバータ装置ILに指示する(ステップS365)。低速駆動軸SLの正転動作(ステップS365)は、高速駆動軸SFの負荷が中程度である状況で低速駆動軸SLを正転方向FRへ回転させて破砕処理を継続して実施する制御である。本実施形態では、低速駆動軸SLの正転動作(ステップS365)において、プロセッサ310は、正転方向FRへ周波数4.5Hzの三相交流で低速側駆動モータMLを駆動するように低速側インバータ装置ILに指示する。本実施形態では、正転動作(ステップS365)において低速側駆動モータMLを制御する周波数(4.5Hz)は、正転動作(図4のステップS230)で高速側駆動モータMFを駆動する周波数(60Hz)より低く、正転動作(ステップS355)において低速側駆動モータMLを制御する周波数(3Hz)より高い。低速駆動軸SLの正転動作(ステップS365)を低速側インバータ装置ILに指示した後、プロセッサ310は、図5の低速軸制御処理(ステップS300)を終了する。
【0060】
高速側駆動モータMFのトルク移動平均値TFAが定格トルクの0%以上30%未満である場合(ステップS360:「NO」)、二軸制御装置300のプロセッサ310は、正転動作で低速側駆動モータMLを駆動するように低速側インバータ装置ILに指示する(ステップS375)。低速駆動軸SLの正転動作(ステップS375)は、高速駆動軸SFの負荷が比較的に低い状況で低速駆動軸SLを正転方向FRへ回転させて破砕処理を継続して実施する制御である。本実施形態では、低速駆動軸SLの正転動作(ステップS375)において、プロセッサ310は、正転方向FRへ周波数6Hzの三相交流で低速側駆動モータMLを駆動するように低速側インバータ装置ILに指示する。本実施形態では、正転動作(ステップS375)において低速側駆動モータMLを制御する周波数(6Hz)は、正転動作(図4のステップS230)で高速側駆動モータMFを駆動する周波数(60Hz)より低く、正転動作(ステップS365)において低速側駆動モータMLを制御する周波数(4.5Hz)より高い。低速駆動軸SLの正転動作(ステップS375)を低速側インバータ装置ILに指示した後、プロセッサ310は、図5の低速軸制御処理(ステップS300)を終了する。
【0061】
以上説明した実施形態によれば、高速側駆動モータMFのトルク移動平均値TFAに応じた回転方向および回転速度による低速側駆動モータMLの制御(ステップS345,S355,S365,S375)では回避しきれない高速駆動軸SFの過負荷を、高速側駆動モータMF側の過負荷警報信号である高速側警報信号AFに基づく低速側駆動モータMLの制御によって回避することができる。その結果、高速駆動軸SFの過負荷による急停止を予防できるため、作業効率と安全率との両立を容易に図ることができる。
【0062】
本明細書に開示する技術は、上述した実施形態、実施例および変形例に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現できる。例えば、上述した実施形態、実施例および変形例における技術的特徴のうち、発明の概要の欄に記載した各形態における技術的特徴に対応するものは、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えおよび組み合わせることができる。また、本明細書中に必須なものとして説明されていない技術的特徴については、適宜、削除できる。
【0063】
上述の実施形態では、破砕機10は、高速駆動軸SFを一定の回転数で正転方向FRに駆動しつつ、トルク移動平均値TFAに応じた3段階の回転数で低速駆動軸SLを正転方向FRに駆動することによって破砕処理を実施する。他の実施形態では、破砕機10は、トルク移動平均値TFAに応じた複数段階の回転数で高速駆動軸SFを正転方向FRに駆動することによって破砕処理を実施してもよい。また、破砕機10は、低速駆動軸SLを一定の回転数で正転方向FRに駆動することによって破砕処理を実施してもよい。また、破砕機10は、トルク移動平均値TFAに応じた2段階または4段階以上の回転数で低速駆動軸SLを正転方向FRに駆動することによって破砕処理を実施してもよい。
【0064】
また、インバータ装置410,420は、二軸制御装置300に対して高速側警報信号AFの出力を開始するタイミングを遅延させてもよい。これによって、高速側警報信号AFに基づく低速側駆動モータMLの正転動作(図5のステップS355)の瞬間的な実施を抑制できる。その結果、破砕処理の作業効率を向上させることができる。
【0065】
また、低速側駆動モータMLの逆転動作(ステップS325,S335)の周波数は、破砕機10の構成に応じて適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0066】
10…破砕機
110…処理容器
112…受入口
118…排出口
210,220…回転軸
212,222…破砕刃
214,224…スペーサ
300…二軸制御装置
310…プロセッサ
320…メモリ
410,420…インバータ装置
412,422…プロセッサ
414,424…メモリ
415,425…コンバータ回路
416,426…インバータ回路
417,427…電圧センサ
418,428…電流センサ
510,520…駆動モータ
512,522…出力軸
610,620…減速機
810…廃棄物
820…破砕片
【要約】
【課題】破砕機において、過負荷による急停止を予防することによって作業効率と安全率との両立を容易に図る。
【解決手段】破砕機は、第1および第2のインバータ装置と、二軸制御装置とを備える。第2のトルク移動平均値が第2のトルク制限値未満、かつ、過負荷警報信号が過負荷保護制御の実行を示さない場合、第1のトルク移動平均値に応じた回転方向、かつ、第1のトルク移動平均値に応じた第1の駆動モータより遅い回転速度で、第2の駆動モータが駆動される。第2のトルク移動平均値が第2のトルク制限値以上である場合、逆転方向へ第2の駆動モータが駆動される。第2のトルク移動平均値が第2のトルク制限値未満、かつ、過負荷警報信号が過負荷保護制御の実行を示す場合、逆転方向へ第2の駆動モータが駆動される。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5