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特許7498998太陽電池パネルの周縁部を保持する枠体、壁面設置用太陽電池モジュール、および壁面設置用太陽電池モジュールの設置方法
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  • 特許-太陽電池パネルの周縁部を保持する枠体、壁面設置用太陽電池モジュール、および壁面設置用太陽電池モジュールの設置方法 図1A
  • 特許-太陽電池パネルの周縁部を保持する枠体、壁面設置用太陽電池モジュール、および壁面設置用太陽電池モジュールの設置方法 図1B
  • 特許-太陽電池パネルの周縁部を保持する枠体、壁面設置用太陽電池モジュール、および壁面設置用太陽電池モジュールの設置方法 図2A
  • 特許-太陽電池パネルの周縁部を保持する枠体、壁面設置用太陽電池モジュール、および壁面設置用太陽電池モジュールの設置方法 図2B
  • 特許-太陽電池パネルの周縁部を保持する枠体、壁面設置用太陽電池モジュール、および壁面設置用太陽電池モジュールの設置方法 図3
  • 特許-太陽電池パネルの周縁部を保持する枠体、壁面設置用太陽電池モジュール、および壁面設置用太陽電池モジュールの設置方法 図4
  • 特許-太陽電池パネルの周縁部を保持する枠体、壁面設置用太陽電池モジュール、および壁面設置用太陽電池モジュールの設置方法 図5
  • 特許-太陽電池パネルの周縁部を保持する枠体、壁面設置用太陽電池モジュール、および壁面設置用太陽電池モジュールの設置方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】太陽電池パネルの周縁部を保持する枠体、壁面設置用太陽電池モジュール、および壁面設置用太陽電池モジュールの設置方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20240606BHJP
   H02S 20/22 20140101ALI20240606BHJP
【FI】
E04F13/08 Z ETD
H02S20/22
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024514526
(86)(22)【出願日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 JP2023032782
【審査請求日】2024-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2022144076
(32)【優先日】2022-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502139910
【氏名又は名称】株式会社クリーンベンチャー21
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】室園 幹男
(72)【発明者】
【氏名】石森 二郎
(72)【発明者】
【氏名】高見 潤
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-147923(JP,A)
【文献】中国実用新案第215644519(CN,U)
【文献】特開2013-002067(JP,A)
【文献】特開2012-184606(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073576(WO,A1)
【文献】実開平02-013754(JP,U)
【文献】特開2006-286748(JP,A)
【文献】特表2015-534802(JP,A)
【文献】特開2013-171873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/30
H02S 20/00-20/32
H02S 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面設置用太陽電池モジュールが具備する太陽電池パネルの周縁部を保持する枠体であって、
前記枠体は、
第1方向に延び、かつ互いに対向する一対の第1支持部と、
前記第1方向と交差する第2方向に延び、かつ互いに対向する一対の第2支持部と、を具備し、
前記第1支持部および前記第2支持部は、それぞれ前記第1方向および前記第2方向の両方と交差する第3方向に延びる、前記第1方向に長尺の第1側面部および前記第2方向に長尺の第2側面部を有し、
前記第1側面部の一方の端部側かつ前記第2側面部の一方の端部側に、前記太陽電池パネルが支持され、
前記第1支持部は、前記第1側面部の他方の端部側に、前記太陽電池パネルから遠ざかるように突出する鍔部を有し、
前記第3方向における前記第1側面部の長さが、前記第2側面部の長さよりも長く構成されており、
前記第1側面部が、前記一方の端部と前記他方の端部との間に、外側に向かい、かつ第1方向に延びる段部を有し、
前記第3方向において前記一方の端部側を上側としかつ前記他方の端部側を下側として、前記第1側面部は、前記段部よりも上部の高さが、前記段部よりも下部の高さよりも低く、
前記第1側面部が、前記段部の内側延長線上に、内側に向かって延びる延出部を有する、枠体。
【請求項2】
互いに対向する前記第1側面部の前記段部よりも下側の内面同士の距離は、互いに対向する前記第1側面部の前記段部よりも上側の外面同士の距離よりも大きく、その差は、前記段部の外側への出っ張り幅未満である、請求項1に記載の枠体。
【請求項3】
前記第3方向において、前記一対の第1支持部の一方の前記第1側面部の長さと他方の前記第1側面部の長さとが異なる、請求項1に記載の枠体。
【請求項4】
前記鍔部の突出幅が、20mm以上である、請求項1に記載の枠体。
【請求項5】
前記鍔部が固定具を挿通するための開口部を1つ以上有し、
前記開口部を通して、前記固定具により、前記鍔部と建築物の壁材内部の構造物とが固定される、請求項1に記載の枠体。
【請求項6】
一対の前記第2支持部の間に、前記太陽電池パネルの裏面に接触するように、前記第1支持部同士を架橋する補強部材が設けられており、
前記補強部材が、建築物の壁材内部の構造物と対向する位置に配置されている、請求項1に記載の枠体。
【請求項7】
太陽電池パネルと、前記太陽電池パネルの周縁部を保持する請求項1~のいずれか1項に記載の枠体と、を具備し、
前記太陽電池パネルの周縁部が前記枠体に保持されている、壁面設置用太陽電池モジュール。
【請求項8】
前記太陽電池パネルの表面は、防眩効果を有する層で構成される、請求項に記載の壁面設置用太陽電池モジュール。
【請求項9】
前記太陽電池モジュールの重量が、9.0kg/m2以下である、請求項に記載の壁面設置用太陽電池モジュール。
【請求項10】
請求項に記載の壁面設置用太陽電池モジュールを建築物の壁材に設置する方法であって、前記壁材内部の構造物に固定具を用いて前記鍔部を固定する、方法。
【請求項11】
前記固定具は、スクリュービスである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
複数の前記壁面設置用太陽電池モジュールを建築物の壁材に設置する方法であって、
上下方向で隣接する前記壁面設置用太陽電池モジュールにおいて、下方に位置する前記壁面設置用太陽電池モジュールの前記枠体の上辺の前記鍔部に、上方に位置する前記壁面設置用太陽電池モジュールの前記枠体の下辺の前記鍔部を、前記下方に位置する前記壁面設置用太陽電池モジュールの前記鍔部が前記壁材側に配置されるように重ねて、スクリュービスで両方の前記鍔部を一体に前記壁材内部の構造物に固定する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記鍔部が固定具を挿通するための開口部を1つ以上有し、
前記開口部を通して、前記固定具により、前記鍔部と前記壁材内部の構造物とが固定され、
前記開口部の周縁部と、前記壁材の前記開口部に対応する部分との間に、封止材を介在させる、請求項10に記載の壁面設置用太陽電池モジュールの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽電池パネルの周縁部を保持する枠体、壁面設置用太陽電池モジュール、および壁面設置用太陽電池モジュールの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーとしての太陽光発電が多く設置され、建築物においては屋根設置が行われ、さらなる設置場所として壁面設置が進んできている。例えば、特許文献1に示すような方法で太陽電池モジュールの壁面設置が現在行われている。
【0003】
太陽電池パネルを、構造物に設置する際、一般的には、太陽電池パネルの設置場所に太陽電池パネルを固定するための架台(例えば、特許文献1の横桟R)を設置する工事が行われる。そして、架台に太陽電池パネルが設置される。特許文献1の場合、まず、壁面Wに複数の横桟Rが、略水平な向きに上段及び下段に並べて固定される。次に、パネル体Pの各係止部が横桟Rの各係止部受部に引っ掛けられる([0021]~[0022])。パネル体Pの各係止部は、太陽電池パネルの周囲を固定する枠体に設けられている。パネル体の各係止部はいずれも、内向きに形成されているため、パネル体を上下の向きを問わず、取り付けることができる([0008])。
【0004】
太陽電池モジュールの有効面積を大きくしてより多くの太陽電池パネルを建築物の壁面に設置する観点からも、各係止部は内向きに形成され、太陽電池パネルの裏面下側にくることが一般的である。この形状のため、太陽電池モジュールを係止部によって建築物の壁面などに固定するときは、特許文献1に記載のように、太陽電池モジュールを、架台などを介して建築物に固定する方法がとられ、太陽電池モジュールの表面側から建築物に係止部を直接固定するという方法をとることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-183458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、横桟などの架台を壁面に設置した後に太陽電池モジュールを架台に載置し、太陽電池モジュールの各係止部を各係止部受部に係止させる二段階の工法は、手間がかかるものであった。また、架台を用いる工法は、部品点数が多く、発電コストが高くなる。壁面設置される太陽電池モジュールは、屋根設置される太陽電池モジュールに比べて太陽光の照射角度が小さく、発電効率が低いため、太陽電池モジュールの導入費用対効果は更に小さくなる。
【0007】
上記に鑑み、本開示は、建築物の壁面への架台の取り付けを不要とし、部品点数および施工コストを大幅に低減して設置できる太陽電池モジュールおよびその設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面は、壁面設置用太陽電池モジュールが具備する太陽電池パネルの周縁部を保持する枠体であって、前記枠体は、第1方向に延び、かつ互いに対向する一対の第1支持部と、前記第1方向と交差する第2方向に延び、かつ互いに対向する一対の第2支持部と、を具備し、前記第1支持部および前記第2支持部は、それぞれ前記第1方向および前記第2方向の両方と交差する第3方向に延びる、前記第1方向に長尺の第1側面部および前記第2方向に長尺の第2側面部を有し、前記第1側面部の一方の端部側かつ前記第2側面部の一方の端部側に、前記太陽電池パネルが支持され、前記第1支持部は、前記第1側面部の他方の端部側に、前記太陽電池パネルから遠ざかるように突出する鍔部を有し、前記第3方向における前記第1側面部の長さが、前記第2側面部の長さよりも長く構成されている、枠体に関する。
【0009】
本開示の別の側面は、太陽電池パネルと、前記太陽電池パネルの周縁部を保持する上記の枠体と、を具備し、前記太陽電池パネルの周縁部が前記枠体に保持されている、壁面設置用太陽電池モジュールに関する。
【0010】
本開示の更に別の側面は、上記の壁面設置用太陽電池モジュールを建築物の壁材に設置する方法であって、前記壁材内部の構造物に固定具を用いて前記鍔部を固定する、方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、壁面設置用太陽電池モジュールを建築物の壁面に設置する場合に、壁面への架台の取り付けを要さず、部品点数および施工コストを大幅に低減して設置することができる。
【0012】
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本願の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】建築物の壁面に設置された本開示の一実施形態に係る壁面設置用太陽電池モジュールの平面図(a)、B-B’線断面図(b)、C-C’線断面図(c)である。
図1B図1Aに示す壁面設置用太陽電池モジュールの裏面図である。
図2A図1A(b)の領域Aの拡大図である。
図2B図1A(b)の領域Bの拡大図である。
図3】本開示の別の実施形態に係る壁面設置用太陽電池モジュールの斜視図である。
図4図3に示す壁面設置用太陽電池モジュールを積み重ねたときの斜視図である。
図5図3に示す壁面設置用太陽電池モジュールの第1支持部の第1方向と垂直な断面の端部の拡大図である。
図6】本開示の更に別の実施形態に係る壁面設置用太陽電池モジュールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本開示の実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。この明細書において、「数値A~数値B」という記載は、数値Aおよび数値Bを含み、「数値A以上で数値B以下」と読み替えることが可能である。複数の材料が例示される場合、その中から1種を選択して単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
また、本開示は、添付の請求の範囲に記載の複数の請求項から任意に選択される2つ以上の請求項に記載の事項の組み合わせを包含する。つまり、技術的な矛盾が生じない限り、添付の請求の範囲に記載の複数の請求項から任意に選択される2つ以上の請求項に記載の事項を組み合わせることができる。
【0016】
本開示に係る枠体(以下、「枠体(F=Frame)」とも称する。)は、壁面設置用太陽電池モジュールが具備する太陽電池パネルの周縁部を保持する。以下、本開示に係る壁面設置用太陽電池モジュールを「太陽電池モジュール(SCM)」とも称する。
【0017】
枠体(F)は、第1方向に延び、かつ互いに対向する一対の第1支持部と、第1方向と交差する第2方向に延び、かつ互いに対向する一対の第2支持部と、を具備する。枠体(F)の外形は、全体として四角形の形状を有する。一対の第1支持部は、四角形の4つの辺のうちの互いに対向する2辺に対応する。一対の第2支持部は、残りの互いに対向する2辺に対応する。
【0018】
第1方向と第2方向とは、枠体(F)の強度、枠体(F)の製造プロセス、太陽電池モジュール(SCM)への組み込みの容易さ、壁材への設置の容易さなどを考慮すると、直交していることが望ましい。すなわち、枠体(F)の外形は、矩形であることが望ましい。ただし、第1方向と第2方向とが成す角度は、必ずしも90°である必要はない。例えば、枠体(F)の外形は台形であってもよいし、平行四辺形であってもよい。
【0019】
第1支持部および第2支持部は、それぞれ第1方向に長尺の第1側面部および第2方向に長尺の第2側面部を有する。第1側面部および第2側面部は、第1方向および第2方向の両方と交差する第3方向に延びている。
【0020】
枠体(F)の強度、枠体(F)の製造プロセス、太陽電池モジュール(SCM)への組み込みの容易さ、壁材Wへの設置の容易さなどを考慮すると、第3方向は、第1方向および第2方向と、それぞれ直交していることが望ましい。ただし、第3方向と第1方向とが成す角度および第3方向と第2方向とが成す角度は、必ずしも90°である必要はない。
【0021】
第1側面部は、第1支持部の全長に亘って形成されていることが望ましいが、部分的に切欠していてもよい。第2側面部は、第2支持部の全長に亘って形成されていることが望ましいが、部分的に切欠していてもよい。
【0022】
第1側面部の一方の端部側かつ第2側面部の一方の端部側に、太陽電池パネル2が支持される。以下、太陽電池パネル2が支持される一方の端部を、便宜上、「上端」とも称する。
【0023】
第1側面部の上端側と第2側面部の上端側には、面一に構成された太陽電池パネル支持部が設けられている。太陽電池パネル支持部は、例えば、太陽電池パネルの周縁部を挟持する溝構造を有し、溝構造には当該周縁部をビス止めするための孔が設けられていてもよい。
【0024】
第1支持部の第1側面部の他方の端部側には、鍔部が設けられている。以下、鍔部に連続する他方の端部を、便宜上、「下端」とも称する。
【0025】
鍔部は、太陽電池パネルから遠ざかるように外側に向けて突出している。鍔部は、「フランジ」と呼び変えてもよい。鍔部の突出幅は、強度などを考慮すると、全体として均一であることが望ましい。鍔部の突出幅は、例えば20mm以上であればよく、作業性を考慮すると25mm以上でもよい。ただし、鍔部の突出幅は、太陽電池モジュールの重量および強度や設置面積などとの兼合いで適宜設計する。
【0026】
本開示は、太陽電池モジュール(SCM)を建築物の壁材に設置する方法にも関する。太陽電池モジュール(SCM)を建築物の壁材に設置する方法は、例えば、壁材内部の構造物に枠体(F)の鍔部を固定する工程を有する。壁材の内部の構造物としては、例えば、胴縁を用い得る。
【0027】
一般的な鉄骨造建築物では、梁に胴縁を金具で固定し、胴縁に金具で壁材を固定している。鉄骨造の場合、胴縁の材質はリップ溝形鋼(C形鋼)であり、木造建築物では、柱、間柱、梁等の木製角材に胴縁もしくは直接壁材を固定している。
【0028】
複数の太陽電池モジュールを建築物の壁材に設置する場合には、隣接する太陽電池モジュールの鍔部同士を重ねてもよい。その場合にも、壁材の内部の構造物に鍔部を重ねて固定することが望ましい。鍔部同士を重ねることで、太陽電池モジュール(SCM)の設置面積を縮小することができる。すなわち、壁面の面積の利用効率が高くなる。
【0029】
鍔部は、固定具を挿通するための開口部を1つ以上有してもよい。すなわち、鍔部には、鍔部を建築物の壁材にビスのような固定具で固定するための孔が設けられていてもよい。開口部(孔)を通して、固定具により、鍔部と建築物の壁材の内部の構造物とを固定してもよい。鍔部を利用して建築物の壁材にダイレクトに枠体を固定する場合、架台の設置は不要であるため、設置費用を低コストに抑えることが可能である。
【0030】
鍔部の開口部(孔)の周縁部と、壁材の開口部に対応する部分との間には、封止材を介在させることが望ましい。開口部の周縁部と壁材との間に封止材を介在させることにより、開口部の周縁部と壁材との隙間が埋まり、水分(雨や湿気)が建築物の内部に侵入することを防止することができる。
【0031】
封止材としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ブチルゴム、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)、接着剤などを用いることができる。
【0032】
枠体(F)の強度、枠体(F)の製造プロセス、太陽電池モジュール(SCM)への組み込みの容易さ、壁面への設置の容易さなどを考慮すると、鍔部と第1側面部とは、直交していることが望ましい。ただし、鍔部と第1側面部とが成す角度は、必ずしも90°である必要はない。一対の第1側面部の高さが等しく、かつ鍔部と第1側面部とが直交している場合、鍔部と太陽電池パネルの面方向とが平行になる。
【0033】
鍔部は、第1支持部の全長に亘って形成されていることが望ましいが、部分的に切欠していてもよい。鍔部は、第1支持部の全長に亘って均一に形成されていてもよい。鍔部は、枠体(F)の軽量化、低価格化観点から、構造物の壁材に固定される部分のみ設けてもよい。
【0034】
第3方向における第1側面部の長さは、同方向における第2側面部の長さよりも長く構成されている。これにより、太陽電池モジュール(SCM)を建築物の壁材に設置したときに、壁面と第2側面部の下端との間に隙間が確保される。隙間の幅は、例えば電源ケーブルが通る幅以上であればよい。電源ケーブルのジョイント部の直径が、例えば15mm~20mmである場合、作業性を考慮すると、隙間の幅は、20mm~25mmが好ましい。ジョイント部が改良によって小型化された場合には、それに応じて、隙間の幅も小さくすればよい。ただし、電源ケーブルを通すために必要な隙間の幅は、10mm以上が望ましい。すなわち、第1側面部の長さは、第2側面部よりも10mm~25mm長いことが望ましい。
【0035】
一対の第1支持部は、それぞれ、建築物の壁材の上下に配置し、一対の第2支持部は、左右に配置すればよい。これにより、壁材と第2側面部の下端との隙間への雨露の侵入を防止することができる。
【0036】
枠体(F)の材質は、所定の強度を確保できる材質であればよく、特に限定されない。現在、太陽電池モジュールの枠体(F)には主にアルミニウムが用いられているが、例えば、他の金属、FRP(繊維強化プラスチック)などで枠体を構成してもよい。
【0037】
一対の第1支持部は、互いに同じ構造を有してよい。一対の第2支持部も互いに同じ構造を有してよい。これにより、枠体(F)の上下および左右を考慮することなく、太陽電池モジュール(SCM)を建築物の壁材に設置することができる。
【0038】
一対の第1支持部は、互いに異なる構造を有してもよい。例えば、第3方向において、一対の第1支持部の一方の第1側面部の長さを、他方の第1側面部の長さと異ならせてもよい。この場合、第3方向における長さが短い方を建築物の壁材の上方に、長い方を建築物の壁材の下方に固定する。このような配置の仕方によれば、太陽電池パネルは、壁面と平行ではなく、角度を成して上方を向くように傾斜する。そのため、より多くの太陽光を太陽電池パネルに照射することができる。
【0039】
第1側面部は、一方の端部と他方の端部との間に、外側に向かい、かつ第1方向に延びる段部を有してもよい。段部を有する場合、対向する第1側面部の段部より下側の内面同士の距離(Y)は、第1側面部の段部より上側の外面同士の距離(X)よりも大きいものであることが望ましい(Y>X)。この場合、枠体(F)や太陽電池モジュール(SCM)を複数枚重ねて保管、運搬することが容易になる。すなわち、下方の枠体(F)の第1側面部の段部の上面と、上方の枠体(F)の鍔部の下面とを当接させて、枠体(F)や太陽電池モジュール(SCM)を積み重ねることができる。これにより、枠体(F)や太陽電池モジュール(SCM)の積層物の体積効率が向上し、かつ積層物の構造が安定化する。上下の枠体(F)や太陽電池モジュール(SCM)の位置ズレも防止され損傷することも低減できる。このため運搬時の積層物の輸送手段への固定しやすさも向上し、積重ね枚数を増やすことができ、運搬コストを削減することが可能である。
【0040】
ただし、対向する第1側面部の段部より下側の内面同士の距離(Y)と、第1側面部の段差より上側の外面同士の距離(X)の差は、段部の外側への段部の出張り幅(C)未満であることが望ましい(Y-X<C)。段部の出張り幅(C)以上の場合(Y-X≧C)は、段部から鍔部が脱落する可能性があるので積み重ねが不安定となる。
【0041】
なお、対向する第1側面部の段部より下側の内面同士の距離(Y)と第1側面部の段部より上側の外面同士の距離(X)の差が段部の出張り幅(C)と等しい場合(Y-X=C)は、段部の出っ張り幅(C)は第1側面部の厚さ(B)の2倍の値となるため(C=2B)、上記脱落を防ぐためには段部の出っ張り幅(C)は第1側面部の厚さ(B)の2倍未満であることが望ましく(C<2B)、さらに公差を考慮すると第1側面部の厚さ(B)の2倍より0.2mm以上小さい方が好ましい(C<2B-0.2mm)。
【0042】
また、段部の外側への出張り幅(C)は、第1側面部の厚さ(B)以上であることが望ましく(C>B)、さらに公差を考慮すると第1側面部の厚さ(B)より0.2mm以上大きい方が好ましい(C>B+0.2mm)。段部の外側への出張り幅(C)と第1側面部の厚さ(B)が等しい場合(C=B)では、対向する第1側面部の段部より下側の内面同士の距離(Y)と第1側面部の段部より上側の外面同士の距離(X)が等しくなり、段部の外側への出張り幅(C)が第1側面部の厚さ(B)以下の場合(C≦B)では、対向する第1側面部の段部より下側の内面同士の距離(Y)が、第1側面部の段部より上側の外面同士の距離(X)よりも小さくなるため(Y≦X)、下方の枠体(F)の第1側面部の段部の上面と上方の枠体(F)の鍔部の下面とを当接させて積み重ねることは不可能となる。
【0043】
よって、公差を考慮した場合、段部外側への出張り幅(C)は、B+0.2mm<C<2B-0.2mmが好ましく、第1側面部の厚さ(B)の1.2~1.5倍であることが、安定性の観点から好ましい。
【0044】
さらに、第1側面部が、段部の内側延長線上に、内側に向かって延びる延出部を有することが好ましい。これにより、枠体を強化することができる。また、枠体として太陽電池パネルを支える強度の向上が図れるため、壁面設置した場合の太陽電池モジュールの安定性が向上する。延出部が内側に延びる長さは、20mm~30mmであることが強度と重量から望ましい。内側への延出部は、第1側面と同様に第2側面にも有することにより枠体の第1方向と第2方向への強度が強化される。内側に延びる長さは第1側面と第2側面で異なってもよく、鍔部を有しない第2側面の延出部の長さが第1側面の延出部の長さより短くてもよい。ただし、段部より上部の高さが下部の高さより高くなった場合、枠体や太陽電池モジュールを積み重ねたとき、下方の枠体の第1側面部の上端が、上方の枠体の第1側面部の延出部に当接し、傷つける可能性があるので、段部より上部の高さは下部の高さより低くすることが好ましい。
【0045】
段部の角にある部分はRを付けるのが好ましい。Rを付けることにより、枠体の強度を高めることができると共に、枠体や太陽電池モジュールを積み重ねるとき、当該角になる部分による傷が生じにくくなる。
【0046】
一対の第1支持部の一方の第1側面部の長さを、他方の第1側面部の長さと異ならせた上で、第1側面部の一方の端部と他方の端部との間に、外側に向かい、かつ第1方向に延びる段部を設けてもよい。
【0047】
一対の第2支持部の間に、第1支持部同士を架橋する補強部材を設けてもよい。補強部材は、太陽電池パネルの裏面に接触するように設けることが望ましい。これにより、太陽電池パネルを裏面から補強部材で支持することができる。補強部材は1本でもよく、太陽電池パネルの大きさや重量などにより補強が必要な場合は本数を増やしてもよい。
【0048】
補強部材を、建築物の壁材の内部の構造物と対向する位置に配置してもよい。この場合、そのような構造物と補強部材とをビス止めなどの手段で固定することができる。よって、壁材に設置された太陽電池モジュール(SCM)の構造安定性が向上する。
【0049】
建築物の壁材にダイレクトに枠体(F)を固定する場合、太陽電池モジュール(SCM)の重量は、9.0kg/m2以下であることが望ましい。太陽電池モジュール(SCM)を軽量にすることで、壁材に設置された太陽電池モジュール(SCM)の構造安定性が更に向上する。
【0050】
太陽電池モジュール(SCM)の重量は、壁材、胴縁などの強度を考慮して選択すればよいが、0.045kg/W以下であることが好ましい。
【0051】
なお、太陽電池の種類は特に限定されない。例えば、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンを用いた結晶系のシリコン太陽電池でもよく、アモルファス系のシリコン太陽電池でもよく、CdTe系、CIS系、GaAs系の化合物系太陽電池でもよい。また、次世代型太陽電池である色素増感、有機薄膜、ペロブスカイトなどを用いることが可能である。
【0052】
太陽電池パネルの表面は太陽光を透過できるガラスコーティングなどが施されており、照射された太陽光が太陽電池セルに到達することができるが、一部の太陽光はその表面で反射されてしまい、反射光として太陽光の入射方向とは反対の方向に放射されることになる。屋根設置の場合には屋根よりも上に向けての反射光となるため、設置の角度や方法により周辺への影響を調節することも可能である。しかしながら、壁面設置の場合には、太陽光が下方向に向けて反射されることになり、近隣の建築物などへの大きな影響が生じることがある。特に、本発明の壁面設置用太陽電池モジュールにおいては、枠体を壁面に直接設置する構成であるため、反射光を調整するために傾きを変更することは困難である。このため、太陽電池パネルの表面ガラスに防眩効果を有する層を用いることで、反射光を低減することが好ましい。防眩効果を有する層は、フィルム状または板状であり、太陽光が入射する表面に凹凸を形成し、可視光が凹凸によって散乱し乱反射するものである。これにより、反射光が分散されて眩しさが低減される。
【0053】
枠体の鍔部は、第1支持部に一体型として形成することが、高強度が得られ、かつ枠体の製造プロセスが容易で好ましいが、別体の鍔部を第1支持部に取り付けてもよい。ただし、この場合も、第3方向における第1側面部の長さが、第3方向における第2側面部の長さよりも長くなるように構成する。
【0054】
枠体や鍔部の材質の厚さは、太陽電池パネルの大きさと重量から強度計算して選択すればよい。
【0055】
鍔部に設ける開口部の位置は、鍔部の幅方向の中央部が、強度面で好ましいが、上下の重ねられた太陽電池モジュール(SCM)の枠体を固定具で安定して固定できる位置であればよい。
【0056】
固定具としては、シールステンヘッドスクリュービスのようなスクリュービスが好ましい。スクリュービスによれば、鋼材で構成された胴縁であるリップ溝形鋼に容易に穴をあけてビス止めできるので、既存の建築物に後から太陽電池モジュール(SCM)を容易に設置することが可能である。
【0057】
太陽電池モジュール(SCM)の設置面(壁面)は、地面に対して直行する面(鉛直方向の面)に限定されず、鉛直方向と角度を成す傾斜した面でもよい。
【0058】
以下、枠体(F)と太陽電池モジュール(SCM)の構造および設置方法について図面を参照しながら説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0059】
図1Aは、建築物の壁面に設置された太陽電池モジュール(SCM)の平面図(a)、B-B’線断面図(b)、C-C’線断面図(c)である。図1Bは、図1Aに示す太陽電池モジュール(SCM)の裏面図である。図2Aは、図1A(b)の領域Aの拡大図であり、図2Bは、図1A(b)の領域Bの拡大図である。図2Bでは、上下方向において隣接する太陽電池モジュール(SCM)の枠体(F)の鍔部同士が重ねられている。
【0060】
太陽電池モジュール1は、太陽電池パネル2を具備する。太陽電池パネル2は、連結した太陽電池セルを表面材、充填剤、および裏面材を用いて封止したものである。太陽電池パネル2の周縁部は、太陽電池の受光面を表面側にして、枠体4で保持されている。受光面の反対側の裏面は、建築物の壁材の壁面(外壁面)に対向している。
【0061】
枠体4は、第1方向(ここでは水平方向)に延び、かつ互いに対向する一対の第1支持部41と、第1方向と直交する第2方向(ここでは鉛直方向)に延び、かつ互いに対向する一対の第2支持部42とを具備する。第1支持部41および第2支持部42は、それぞれ第1方向および第2方向の両方と直交する第3方向(壁面の法線方向)に垂下する第1側面部411および第2側面部421を有する。第1側面部411は、第1方向に長尺の形状であり、第2側面部421は、第2方向に長尺の形状である。
【0062】
第1側面部411および第2側面部421は、単層構造でもよいが、複層構造でもよく、様々な補強加工部413を設けてもよい。枠体4のコーナー部には、機械強度を確保し、仕上がりを向上させるために、留加工を施すことが望ましい。
【0063】
第1側面部411の上端側かつ第2側面部421の上端側には、太陽電池パネル2が支持されている。第1側面部の上端側と第2側面部の上端側には、面一に構成された太陽電池パネル支持部43が設けられている。太陽電池パネル支持部43は、太陽電池パネル2の周縁部を挟持する溝構造を有する。溝構造には当該周縁部をビス止めするための孔が設けられていてもよい。
【0064】
第1側面部411の上端および下端、並びに、第2側面部421の上端および下端は、太陽電池パネル2の面方向と平行である。太陽電池パネル2と枠体4と建築物の壁面とで囲われた空間(空洞部)は、電源ケーブル6を通すための空間として利用される。
【0065】
第1側面部411の下端側には、当該下端に連続し、かつ太陽電池パネル2から遠ざかるようにフランジ状に突出する鍔部412が設けられている。
【0066】
第3方向における第2側面部421の長さ(以下、「第2側面部421の高さ」ともいう。)は、25mm~35mmが太陽電池パネル2の裏面に設置する部品などから好ましい。また、第3方向における第1側面部411の長さ(以下、「第1側面部411の高さ」ともいう。)は、第2側面部421の長さよりも長く構成されている。第1側面部411の高さは、第2側面部421の高さよりも10mm~30mm高いことが好ましい。これにより、太陽電池パネル2と枠体4と建築物の壁面とで囲われた空間(空洞部)が大きくなり、電源ケーブル6の配設にゆとりをもたせることができる。また、壁面と第2側面部421の下端との間に隙間Sが確保されることで、電源ケーブル6を通しやすくなる。さらに、隙間Sが空気の通過となるため、空気や湿気が籠りにくくなる。
【0067】
鍔部412の突出幅は、全体として均一であり、例えば20mm以上の幅を有する。突出幅を20mm以上とすることで、枠体4の強度が向上し、壁面に設置された太陽電池モジュール1の安定性が得られる。さらに、鍔部412の突出幅を25mm以上とすることにより、治具などを用いた建築物の壁材への固定作業がし易くなり、壁面に鍔部412を重ねて複数枚設置する場合でも太陽電池モジュール1の設置の作業性が向上する。
【0068】
鍔部412のうち、建築物の壁材Wの内部の構造物であるリップ溝形鋼(C形鋼)Lと対応する位置には、複数個の固定用の開口部OPが設けられている。本実施形態のリップ溝形鋼Lは、壁材Wに沿って延びる第1部分L1と、第1部分L1から建築物の内部に向かって延びる第2部分L2と、第2部分L2の端部から第1部分L1と平行に延びる第3部分L3とを有する。そして、開口部OPから固定具(例えば、スクリュービス)5を壁材Wの内部に通して、リップ溝形鋼L(具体的には、リップ溝形鋼Lの第1部分L1)に鍔部412が固定される(図2A参照)。
【0069】
複数の太陽電池モジュール1を建築物の壁面に複数枚設置する場合、下方から上方に向かって順に取り付けていけばよい。上下方向で隣接する太陽電池モジュール1において、下方に位置する太陽電池モジュール1の枠体4の上辺の鍔部412に、上方に位置する太陽電池モジュール1の枠体4の下辺の鍔部412を重ねて、スクリュービスでこれらを一体に壁材Wの内部の構造物に固定する。図2Bに示すように、接する太陽電池モジュール1の鍔部412同士を重ねることで、太陽電池モジュール1の設置面積を縮小することができる。
【0070】
また、下方に位置する太陽電池モジュール1の枠体4の上辺の鍔部412に、上方に位置する太陽電池モジュール1の枠体4の下辺の鍔部412を重ねることで、上辺の鍔部412と壁面との接地面をさらに上方に位置するパネルの下辺の鍔部でカバーすることができ、隙間からの水分の侵入を効果的に阻止することができる。
【0071】
一対の第2支持部42の間には、第1支持部41同士を架橋する3本の補強部材45が設けられている。補強部材45は、太陽電池パネル2の裏面に接触している。図1Bでは、補強部材45の取り付け位置は、太陽電池モジュール1を等間隔に分割する位置である。なお、補強部材45を建築物の壁材Wの内部のリップ溝形鋼Lと対応する位置に取り付けてもよい。これにより、壁面に設置された太陽電池モジュール1の構造安定性の向上が図られる。補強部材45の設置本数、間隔は、太陽電池モジュール1の面積、強度、取付け場所などにより任意に選定することができる。
【0072】
図3は、本開示の別の実施形態に係る太陽電池モジュール(SCM)の斜視図である。第1支持部41の第1側面部411の上端と下端との間に、外側に向かう段部415を有している。図4は、複数の太陽電池モジュール1を積み重ねたときの斜視図である。図5図3の第1支持部41の第1方向と垂直な断面の端部(領域C)の拡大図を示す。第1側面部411は、上端と下端との間に、外側に向かう段部415を有している。段部415は、第1側面部411の第1方向に延在するように形成されている。段部415を設けることで、複数の太陽電池モジュール1を積み重ねた場合には、下方の枠体4の段部415に上方の枠体4の鍔部412が載置され、固定された状態になる。これにより、積層物の高さが減少し、かつ太陽電池モジュール1同士のズレが防止され、安定した状態で多くの太陽電池モジュール1を運搬することが可能となる。
【0073】
図4で示すように、太陽電池モジュール1を積み重ねるためには、対向する第1側面部411の段部より下側の内面同士の距離は、第1側面部411の段部より上側の外面同士の距離よりも大きくする必要がある。その差は段部415の出張り幅未満が好ましく、段部415の出張り幅以上であると積み重ねたときの隙間が大きくなり安定性が悪く、輸送時の衝撃等で傷付く可能性がある。また、小さくなりすぎると枠体の歪などにより積み重ねが困難になる。
【0074】
段部415の外側への出張り幅は、第1側面部411の厚さより僅かに大きく、第1側面部411の厚さの1.2~1.5倍が好ましく、例えば、一般的なフレーム厚み1.1mmの太陽電池モジュールに対しては、1.4~1.7mmが好ましい。出張り幅が第1側面部411の厚さより大きいことで、段部415よりも下方の内幅が段部415よりも上方の外幅よりも僅かに大きくなり、図4で示すような太陽電池モジュール1の積み重ねが可能になる。また、出張り幅が第1側面部411の厚さの2倍より小さいことで、対向する第1側面部411の段部より下側の内面同士の距離と、第1側面部411の段部より上側の外面同士の距離の差は段部415の出張り幅未満になり、輸送時の衝撃等で傷付くことを防ぐことができる。
【0075】
なお、出張り幅は、枠体の側面部の厚みなどにより最適値が決定されるので限定されるものではない。また、段部の上部と下部で枠体の厚さが異なってもよい。この場合も、対向する第1側面部の段部より下側の内面同士の距離は、第1側面部の段部より上側の外面同士の距離より大きいものとする。
【0076】
段部415の数は、2段以上でもよいが、一段のみの枠体4の製造が容易である。段部415を設ける第1側面部411の下端からの高さは、第2側面部421の下端に合わせてもよい。このような構造であれば、複数の太陽電池モジュール1を積み重ねやすく、枠体4の製造プロセスも容易である。
【0077】
一対の第1側面部411の上端から段部415までの距離は、一対の第1側面部411において同じであることが望ましい。これにより、複数の太陽電池モジュール1同士を重ねるときに、太陽電池モジュール1の向きを考慮する必要がなくなり、効率的に作業が行える。
【0078】
第1側面部411が、段部415の内側延長線上に、内側に向かって延びる延出部416を有することが好ましい。これにより、枠体4として太陽電池パネル2を支える強度の向上が図れるため、壁面設置した場合の太陽電池モジュール1の安定性が向上する。
【0079】
図6は、本開示の別の実施形態に係る壁面設置用太陽電池モジュール1Aの斜視図である。太陽電池モジュール1Aでは、第3方向において、一対の第1支持部41の一方の第1側面部411の長さ(高さ)と他方の第1側面部411の長さ(高さ)とが異なる。第3方向における長さが短い(高さが低い)方を建築物の壁面の上方に、長い方(高い方)を建築物の壁面の下方に固定することで、太陽電池パネル2の受光面は、鉛直方向と角度を成して上方を向くように傾斜する。そのため、より多くの太陽光を受光面に照射することができる。
【0080】
前記傾斜を有する太陽電池パネルが壁面(鉛直方向)と成す鋭角の角度は、5~15度が好ましい。5度以上であれば、太陽電池パネルに照射される太陽光を顕著に増加させることができる。また、15度以下であれば、建築物の壁面への太陽電池モジュールの取り付けが容易である。
【0081】
鍔部412を有さない一対の第2支持部42は、鉛直方向を向いて壁面に対向している。第2支持部42(第2側面部421の下端)と壁材Wとの間には、10mm以上、好ましくは20mm以上の隙間Sがある。隙間Sから太陽電池モジュール1の裏面に取り付けられている電源ケーブル6を外部に取り出すことができる。複数の太陽電池モジュール1を並べて設置する場合にも、隙間Sを通して複数の太陽電池モジュール1を接続すればよい。
【0082】
開口部OPの周縁部と壁材Wとの間に、封止材を挟み込んでもよい。封止材としては、例えば、ドーナツ状のシリコーン樹脂製シートが、封止性、作業性において好ましいが、特に限定されない。封止材がスクリュービスなどの固定具5の周囲の鍔部412と壁材Wとの隙間を埋めることにより、開口部OPや固定具5の周辺から水分などが建築物に侵入することを抑制することができる。
【0083】
[実施例]
本実施例では、鉄骨造の建造物への壁面設置用太陽電池モジュールを複数枚設置した。なお、本開示は、以下の実施例に限定されない。
【0084】
鉄骨造建築物は、鉄骨の梁の外側に455mm間隔に地面から垂直に設置されているリップ溝形鋼を有する。リップ溝形鋼は、4隅を丸くした概ね四角柱の断面を有し、2つの長辺のうちの1つで中央の一部分が欠如したC形状を有する。一般に短辺の一方が梁に固定されている。リップ溝形鋼の長辺の長さは100mm、短辺の長さは50mmである。リップ溝形鋼を構成する鋼材の厚さは2.3mmである。
【0085】
建築物の壁材の外壁面に、1423mm×1046mmの太陽電池モジュールを、縦3行×横2列で合計6個設置した。太陽電池パネルの表面には防眩効果のあるガラスを用いた。太陽電池モジュールの鍔部が上下方向に位置するように枠体を設置し、鍔部に設けた開口部に、シールステンヘッドスクリュービス(ビス径φ6mm、長さ45mm、SCH-6×45WS)を差し込んで、壁材を貫通させて枠体をリップ溝形鋼に固定した。外壁面の下方から順に太陽電池モジュールを設置した。太陽電池モジュールの裏面には、補強部材が均等割り付けで取り付けられている。補強部材はアルミニウム製で、アングルの10mm×10mm×厚さ2mmにした。
【0086】
前述したように、一般的な鉄骨造建築物は、鉄骨の梁の外側に455mm間隔に地面から垂直に設置されているリップ溝形鋼を有する。鍔部の開口部は、その建築物のリップ溝形鋼の間隔の半分に合わせて、455mm/2=227.5mm間隔で開けられている。これは太陽電池モジュールの壁面敷設にあたり、第1方向のモジュール配置間隔を可能な限り狭くできるように微調整するためである。
【0087】
一段目の太陽電池モジュールの下辺の鍔部の位置がずれないように外壁面に横木を仮取付けし、これに合わせて一段目の太陽電池モジュールを横に並べて下辺の鍔部を固定した後、その太陽電池モジュールの上辺の鍔部にある開口部に、二段目の太陽電池モジュールの下辺の鍔部の開口部を重ね、位置合わせされた開口部にシールステンヘッドスクリュービスを差し込んで、壁材を貫通させて、重ねられた鍔部をリップ溝形鋼に固定した。これにより、一段目の太陽電池モジュールの上辺の鍔部、二段目の太陽電池モジュールの下辺の鍔部、壁材、リップ溝形鋼および建築物の梁が一体に固定された。壁材と太陽電池モジュールの鍔部の開口部の間には、それぞれドーナツ状のシリコーン樹脂製シートを挟んだ。
同様の手順で、合計6枚(発電量1.77kw)の太陽電池モジュールを取り付けた。
【0088】
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。例えば、鉄筋コンクリート造の壁面設置の場合は鉄骨造のシールステンヘッドスクリュービス固定の代わりにコンクリート躯体に下孔を空けて、ねじ径6mmの打ち込み式アンカーSUS(躯体への有効埋込深さ40mm以上)を敷設の上、太陽電池モジュールの鍔と壁面表面間に止水処理を行い設置する方法に置き換えることができる。また、木造建物に設置する場合は表層仕上材に下孔を空け、太陽電池モジュールの鍔と壁面表面間に止水処理を行い、柱は間柱などの構造体に木ビスで直接取り付ける方法にも置き換えることができる。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示に係る壁面設置用太陽電池モジュールは、壁材に架台なしで設置できるため、部品点数および施工コストを大幅に低減して、設置工事が短期間で、安価に行える。太陽電池モジュールを屋根のみでなく壁面にも設置することで、太陽光発電の住宅への普及が促進される。
【符号の説明】
【0090】
1、1A 太陽電池モジュール
2 太陽電池パネル
4 枠体
41 第1支持部
411 第1側面部
412 鍔部
413 補強加工部
415 段部
416 延出部
42 第2支持部
421 第2側面部
45 補強部材
5 固定具
6 電源ケーブル
W 壁材
L リップ溝形鋼
S 隙間
OP 開口部
【要約】
壁面設置用太陽電池モジュールが具備する太陽電池パネルの周縁部を保持する枠体は、第1方向に延び、かつ互いに対向する一対の第1支持部と、第1方向と交差する第2方向に延び、かつ互いに対向する一対の第2支持部と、を具備し、第1支持部および第2支持部は、それぞれ第1方向および第2方向の両方と交差する第3方向に延びる、第1方向に長尺の第1側面部および第2方向に長尺の第2側面部を有し、第1側面部の一方の端部側かつ第2側面部の一方の端部側に、太陽電池パネルが支持され、第1支持部は、第1側面部の他方の端部側に太陽電池パネルから遠ざかるように突出する鍔部を有し、第3方向における第1側面部の長さが、第2側面部の長さよりも長く構成されている。これにより、壁面設置用太陽電池モジュールを建築物の壁面に設置する場合に、壁面への架台の取り付けを要さず、部品点数および施工コストを大幅に低減して設置することができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6