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特許7498999情報処理方法、情報処理システム、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理システム、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/60 20180101AFI20240606BHJP
【FI】
G16H10/60
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2024522710
(86)(22)【出願日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2023030231
【審査請求日】2024-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2022132625
(32)【優先日】2022-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522336236
【氏名又は名称】一般社団法人 臨床医工情報学 コンソーシアム関西
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 憲嗣
(72)【発明者】
【氏名】落合 渉悟
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 絢也
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/145312(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2022-0005277(KR,A)
【文献】特許第7043672(JP,B1)
【文献】特開2022-000765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の診療に関する医療データの他者からのアクセス可能なストレージへの提供への合意と、前記医療データの真偽についての確認とを、前記患者の第1装置にて受け付け、
前記合意及び確認を受け付けることができた医療データを、前記患者の診断先の医療機関の第2装置から、前記ストレージに記憶させ、
前記医療データには、前記患者のバイタルを測定する測定装置による測定結果、前記測定装置の識別データ、及び前記測定結果の信用度を示すデータが含まれ、
記憶された前記医療データにアクセスするためのアドレスを含むNFT(Non-Fungible Token)を、ブロックチェーンシステムにおける前記患者のブロックチェーンアカウントに対して所定の発行制限個数以内で複数、前記患者に対して発行し、
前記ブロックチェーンシステムは前記NFTの他者からの購入を受け付け、
前記NFTの所有者の装置からの前記医療データへのアクセスを許可する
情報処理方法。
【請求項2】
前記ストレージは、前記医療データをブロックチェーンに取り込んで記憶する
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記ストレージには、複数の医療データが記憶され、
前記ブロックチェーンシステムは、前記複数の医療データそれぞれに対応するNFTの購入のトランザクションを受け付ける
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記ブロックチェーンシステムは、
発行済みのNFTの検索を受け付け、
検索を受け付けた場合、対応する医療データに検索キーが含まれているNFTのトークンIDと、前記検索キーと合致した医療データの一部とを返す
請求項1又は3に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記NFTの購入希望者の装置が、検索結果から選択されたNFTの購入を受け付け、
前記ブロックチェーンシステムは、前記NFTを該NFTに対応する患者から購入希望者へ移転するトランザクションを前記購入希望者の装置から受け付ける
請求項4に記載の情報処理方法。
【請求項6】
購入されるNFTの患者から、前記NFTの購入希望者のブロックチェーンアカウントへ、前記NFTが移転することに応じて、購入費用の一部又は全部が、前記患者のブロックチェーンアカウントに付与される
請求項3に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記ブロックチェーンシステムは、前記医療データそれぞれに対応するNFTの原始所有者である患者以外の所有者からの二次購入を受け付け、
前記二次購入に係る購入費用の一部が、前記患者のブロックチェーンアカウントに付与される
請求項5に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記ブロックチェーンシステムは、前記NFTの所有者でない場合であっても、前記NFTの原始所有者である患者のブロックチェーンアカウントから、前記NFTを焼却するトランザクションを受け付ける
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記医療データには、前記患者の診療先の医療機関の識別データに基づく承認データが含まれる
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記信用度を示すデータは、前記測定装置から得られたデータが発生した時点で、改ざんされた可能性が低いことを示す発生トラストデータを含む
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記信用度を示すデータは、前記医療データが患者本人のデータであることを確認した結果である承認トラストデータを含む
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項12】
前記信用度を示すデータは、前記医療データの患者が認知可能か否かを示す認知トラストデータを含む
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項13】
患者の第1装置と、前記患者の診断先の医療機関の第2装置と、前記患者及び前記医療機関それぞれがブロックチェーンアカウントを有するブロックチェーンシステムとを含み、
前記第1装置は、前記患者の診療に関する医療データの他者からのアクセス可能なストレージへの提供への合意と前記医療データの真偽についての確認とを受け付け、
前記第2装置は、前記合意及び確認を受け付けることができた医療データを前記ストレージに記憶させ、
前記医療データには、前記患者のバイタルを測定する測定装置による測定結果、前記測定装置の識別データ、及び前記測定結果の信用度を示すデータが含まれ、
前記ブロックチェーンシステムは、
前記ストレージに記憶された前記医療データにアクセスするためのアドレスを含むNFTを、前記患者のブロックチェーンアカウントに対して所定の発行制限個数以内で複数発行し、
前記ブロックチェーンシステムは前記NFTの他者からの購入を受け付け、
前記NFTの所有者の第3装置から前記医療データへのアクセスを許可する
情報処理システム。
【請求項14】
ブロックチェーンにおけるノードであるコンピュータに、
患者の診療に関する医療データのストレージへの記憶の追加リクエストがブロードキャストされた場合に呼び出され、
前記患者のバイタルを測定する測定装置による測定結果、前記測定装置の識別データ、及び前記測定結果の信用度を示すデータを含む前記ストレージ上における前記医療データにアクセスするためのアドレスを含むNFTを、前記患者のブロックチェーンアカウントに対して所定の発行制限個数以内で複数発行し、
前記NFTの他者からの購入を受け付け、
前記NFTの所有者の装置から前記医療データへのアクセスを許可する
処理を、スマートコントラクトとして実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックチェーンシステムを用いた情報処理方法、情報処理システム、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信技術及び半導体技術の進展により、莫大な量の情報がネットワーク上で送受信可能となった。しかしながら、送受信されるデータの真偽の証明が難しいケースや、データが改ざんされる虞、デジタルデータの複製の容易性を鑑みて、送受信の対象外とされるデータもある。例えば、遠隔から医師が患者を診療する種々の遠隔医療システムが近年提案されて続けているが(特許文献1等)、データは個人情報そのものであり、人命に係る医療データの送受信が必要であるため、閉じたネットワーク内でなければ実現は困難であった。同一人物に対する測定データであっても、測定したデバイス間で連携がとれない場合や、測定した施設が異なる場合では、同一人物の情報であっても横断的にそのデータを扱うことが難しい。
【0003】
改ざん等のデータのセキュリティに関しては、ブロックチェーンを利用したデータ流通を利用したシステムが種々提案されている(特許文献2等)。特許文献2には、IoTデータのアクセス権をトークンとして売買することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-135816号公報
【文献】特許第6721903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療データのような秘匿すべきデータについて、クライアントサーバシステムのサーバで集中的に記憶を管理することを避けつつ、複数の医療機関や研究者からの横断的なアクセスを可能とするシステムが期待される。
【0006】
本発明は、斯かる事情を鑑みてなされたものであり、NFT(Non-Fungible Token)を利用して改ざんや不正を防止しつつデータの流通を可能とする情報処理方法、情報処理システム、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態の情報処理方法は、患者の診療に関する医療データをストレージに記憶させ、記憶された前記医療データに対応するNFTを、ブロックチェーンシステムにおける前記患者のブロックチェーンアカウントに対して発行し、前記NFTの所有者の装置からの前記医療データへのアクセスを許可する。
【0008】
本開示の情報処理方法では、患者の診療に関する医療データに基づくNFTが患者に対して発行される。医療データは、患者が用いる第1装置又はその第1装置に接続される医療機器で発生する測定データであってもよいし、患者を診療する医療機関におけるチャート(カルテ)であってもよい。医療機関に対応する第2装置からストレージへの記憶、及びNFTの発行リクエストを送信してもよい。患者の診療先の医療機関からはストレージ上の医療データのアクセスは許可されてよい。医療機関以外からは、NFTを所有していない限り、医療データへのアクセスが許可されない。
【0009】
本開示の情報処理方法では、ストレージは、分散型ストレージでもよいし、サーバ経由でアクセスされるストレージであってもよい。
【0010】
記憶されるデータは、一人の患者に対する種々の医療診断に係る医療データであってもよいし、農作物の生育工程に関するデータであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、複数の装置からアクセス可能なストレージに記憶されるデータへのアクセスを、NFTを利用して制御できる。NFTを利用することにより、データへアクセスするためのデータ(URI:Uniform Resource Identifier)及び所有者を改ざんすることを困難にしつつ、データの移転が可能となる。これにより、データを共有可能としつつ、その利用価値を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の遠隔医療システムの概要図である。
図2】第1装置の構成を示すブロック図である。
図3】第2装置の構成を示すブロック図である。
図4】第3装置の構成を示すブロック図である。
図5】ブロックチェーンシステムにおけるノードの構成を示すブロック図である。
図6】遠隔医療システムで実行される処理手順を示すシーケンス図である。
図7】第1装置で表示される画面例を示す図である。
図8】第1装置で表示される画面例を示す図である。
図9】医療データのNFTの取引処理を示すシーケンス図である。
図10】第3装置にて表示される画面例を示す。
図11】詳細画面の内容例を示す。
図12】第1装置への通知画面を示す。
図13】複数のNFTを発行した場合の検索画面を示す。
図14】NFTの焼却処理の手順を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。以下の実施の形態では、本開示の情報処理方法を適用した遠隔医療システムについて説明する。
【0014】
本開示において「ブロックチェーンシステム」は、相互に通信接続が可能な複数のコンピュータ及び複数のコンピュータを接続するネットワークを含み、前記複数のコンピュータの分散処理によってブロックチェーンを作成するシステムを言う。ブロックチェーンには、要求されるトランザクションの内容が取り込まれる。
【0015】
図1は、本実施形態の遠隔医療システム100の概要図である。遠隔医療システム100は、患者であるユーザが使用する第1装置1と、医療機関で使用される第2装置2と、他のユーザが用いる第3装置3と、ブロックチェーンシステム5と、分散型ストレージ6とを含む。遠隔医療システム100は、第1装置1、第2装置2、第3装置3、ブロックチェーンシステム5及び分散型ストレージ6との間でデータを送受信するネットワークNを含む。
【0016】
ブロックチェーンシステム5は、例えば、Secret Networkと呼ばれるプロトコルに基づくブロックチェーンを用いる。ブロックチェーンシステム5は、Ethereum(登録商標)ベースのブロックチェーンシステムであってもよい。ブロックチェーンシステム5は、パブリックチェーン、且つ、後述の処理を実行するスマートコントラクトが使用可能なプロトコルのブロックチェーンであることが好ましい。
【0017】
第1装置1、第2装置2又は第3装置3は、パブリックチェーンであるブロックチェーンシステム5上のスマートコントラクトに対してリクエストを送ることができる。ブロックチェーンシステム5には、医療に関するデータ(以下、医療データという)に基づきNFT(Non-Fungible Token)を発行するスマートコントラクトがデプロイされる。ブロックチェーンシステム5は、Secret Networkベース又はEthereumベースに限らず、NFTの発行が可能な他のブロックチェーン規格に基づくものであってもよい。
【0018】
分散型ストレージ6は例えば、Dfinityベースのブロックチェーンを用いる。分散型ストレージ6に適用されるブロックチェーンはパブリックチェーンであって、第1装置1、第2装置2、及び第3装置3の何れからもアクセス可能である。分散型ストレージ6は具体的には、複数の分散した記憶媒体を含んで構成される。医療データを分散型ストレージ6に書き込むと、その医療データにアクセスするためのアドレス(例えばURI、又は識別データ)が得られ、そのアドレスから記憶された医療データにアクセス可能となる。分散型ストレージ6は、例えばIPFS(Inter Planetary File System )に基づくストレージであってもよい。IPFSを用いる場合であっても、医療データを分散型ストレージ6に加える処理を実行すると、その医療データにアクセスするためのアドレス(識別データ)が得られ、そのアドレスから医療データにアクセス可能となる。
【0019】
分散型ストレージ6は、DfinityベースあるいはIPFSには限られず、ブロックチェーンではない分配サーバの形態であってもよい。この場合、少なくともデータのハッシュ値及びデータのURIは、ブロックチェーンシステム5のブロックに取り込み、改ざんされているか否かを確認できるようにしておく。分散型ストレージ6は、非集中型として耐攻撃性を担保しつつ、改ざんが困難なシステムで構成されることが好ましい。そのため分散型ストレージ6は、データサイズが比較的大きな画像データ、動画データ等も記憶可能であるブロックチェーンに記憶されることが好ましい。更に分散型ストレージ6は、ブロックチェーンシステム5と同一であってもよい。ブロックチェーンではない分散型ストレージ6への医療データの記憶の際には、電子契約情報に基づき、第1装置1又は第2装置2にて自動的且つセキュアに医療データを記憶できるように構成されているとよい。
【0020】
ネットワークNは、キャリアネットワーク及び公衆通信網(インターネット)を含む通信網である。ネットワークNは専用線を含んでもよい。キャリアネットワークは基地局を含む。公衆通信網はアクセスポイントを含む。例えば第1装置1は、基地局及びネットワークN経由で第2装置2と通信可能である。第1装置1、第2装置2、及び第3装置3は、ブロックチェーンシステム5及び分散型ストレージ6との間で、ネットワークN経由で医療データ等のデータの授受が可能である。
【0021】
遠隔医療システム100において、ユーザは医療における Patient(患者)である。遠隔医療システム100は、ユーザの医療に関する記憶を逐次、分散型ストレージ6へ医療データとして記憶する。遠隔医療システム100は、その記憶に対し、ブロックチェーンシステム5において元始的にユーザを所有者とするNFTを発行する。更に、遠隔医療システム100は、分散型ストレージ6に記憶された医療データの利用を、NFTの所有権を用いて制御する。
【0022】
遠隔医療システム100において、医療データは、各医療機関における秘匿されたストレージに記憶されるのではなく、分散型ストレージ6に改ざんされている場合にはアクセスできなくなるようにして保持される。したがって、ユーザの診療先の複数の医療機関それぞれから正確なまま閲覧可能になる。ある医療機関において対面で診断を受けた患者に対し、次の他の医療機関が遠隔で診断する際に、患者の個別識別データに基づいて一つ目の医療機関での検査結果を参照することができるようになる。これにより、遠隔医療診断の信頼性、正確性が維持されることが期待できる。
【0023】
更に、本開示の遠隔医療システム100では、NFT及び分散型ストレージ6を用いた後述の処理により、NFTを購入した者の第3装置3がユーザの医療データを利用可能となる。つまり、医療データは、NFTを購入した例えば医療研究者が、貴重なデータとして第3装置3で利用できる。更に、NFTを利用した遠隔医療システム100により、医療データに対してNFTを発行したユーザへ、NFTの譲渡に係る収益を還元することも可能である。これにより、改ざんされない信頼し得る医療データを遠隔医療に用いることができると共に、一人の患者の多角的な診断データに基づく診断及び研究が可能になる。
【0024】
このような遠隔医療システム100を実現する具体的な構成について以下に説明する。
図2は、第1装置1の構成を示すブロック図である。第1装置1は、患者が用いる例えばスマートフォン、又はタブレット端末である。スマートフォン、又はタブレット端末に限られず、通信が可能なパーソナルコンピュータであってよい。第1装置1は、処理部10、記憶部11、通信部12、表示部13、操作部14、撮像部15、及び認証部16を備える。
【0025】
処理部10は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ等を用いる。ROMには、第1装置1の固有の識別データが記憶されている。固有の識別データは、例えばMACアドレスである。処理部10は、プロセッサ、メモリ、更には記憶部11及び通信部12を集積した1つのハードウェア(SoC:System On a Chip)として構成されていてもよい。
【0026】
記憶部11はフラッシュメモリ又はSSD(Solid State Drive)を用い、第1プログラムP1を始めとする処理部10が参照するプログラム、データが記憶される。第1プログラムP1は、コンピュータを、本開示の遠隔医療システム100の第1装置1として機能させるためのプログラムである。記憶部11には、患者であるユーザを認証するための本人確認用データが予め登録されている。記憶部11には、ユーザの個別識別データが記憶されている。個別識別データは例えば、ユーザの顔写真とマイナンバー(登録商標)との組み合わせであってよい。ユーザの個別識別データは、保険証の識別データや自治体での識別データ等を用いてもよい。記憶部11には、図2に示すように、ブロックチェーンシステム5におけるユーザの秘密鍵を記憶している。この場合、秘密鍵は、処理部10のROM又は記憶部11に書き換え不可に記憶されているとよい。
【0027】
記憶部11に記憶されている第1プログラムP1は、コンピュータから読み取り可能な記憶媒体8に記憶されていた第1プログラム81Pを処理部10が読み出して記憶部11に記憶したものであってもよい。
【0028】
通信部12は、第2装置2、ブロックチェーンシステム5又は分散型ストレージ6等の通信装置との通信接続を実現する通信モジュールである。通信部12は、ネットワークカード、無線通信デバイス又はキャリア通信用モジュールを用いる。通信部12は、医療機器である測定装置4との通信接続を実現してもよい。測定装置4との通信接続用のインタフェースは別途設けられてもよい。
【0029】
表示部13は液晶パネル又は有機ELディスプレイ等のディスプレイ装置を用いる。操作部14は、ユーザの操作を受け付けるインタフェースであり、物理ボタン、ディスプレイ内蔵のタッチパネルデバイス、スピーカ及びマイクロフォン等を用いる。操作部14は、物理ボタン又はタッチパネルにて表示部13で表示している画面上で操作を受け付けてもよいし、マイクロフォンにて入力音声から操作内容を認識し、スピーカで出力する音声との対話形式で操作を受け付けてもよい。
【0030】
撮像部15は、第1装置1を用いる患者を撮像するカメラである。撮像部15は、遠隔医療システム100にてユーザ自身の動画を送受信して医療機関の医師又はスタッフと通話するために用いられる。処理部10は、撮像部15で撮像した画像信号(動画)を取得し、通信部12を介して医療事業者へ向けて送信できる。
【0031】
認証部16は、第1装置1を用いる患者が、予め登録されているユーザと一致するか否かを判定するためのデバイスである。認証部16は、撮像部15で用いるカメラと、カメラから得られる画像に対して顔認識の演算及び顔の特徴データを導出する演算を行なう演算部とで構成されてもよい。認証部16は、生体認証用のセンサと、センサから得られるデータから生体特徴データを導出する演算部とで構成されてもよい。処理部10は、認証部16から得られる顔の特徴データ又は生体の特徴データが、記憶部11に予め登録されている本人確認用データと合致するか否かを判定して認証を行なえる。
【0032】
第1装置1は、医療機器である測定装置4と接続し、測定装置4にて測定されたデータを取り込むことが可能である。測定装置4は、ユーザの身体のバイタル又は身体の変化を測定できるものである。測定装置4は、体温計、心電計、血圧計、筋力計、パルスオキシメーター等である。第1装置1は例えば、測定装置4から心拍等のバイタルデータを取り込むことができる。第1装置1は、測定装置4と通信部12を介して接続してもよいし、別途USB(Universal Serial Bus)や他のバス等の入出力インタフェースを介して接続されてもよい。第1装置1の処理部10は、測定装置4から得られるデータを、第1プログラムP1に基づいてブロックチェーンシステム5及び分散型ストレージ6へ送信する。処理部10は、測定装置4から、患者のバイタルデータや測定結果を示す数値情報と共に、測定装置4の種類及び/又は個々に識別可能な測定装置IDを取得できる。
【0033】
図3は、第2装置2の構成を示すブロック図である。第2装置2は、処理部20、記憶部21、通信部22、表示部23、及び操作部24を備える。第2装置2のハードウェア構成は、第1装置1と同様であるから、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。第2装置2は、医療事業者、特に医師が用いるチャート(カルテ)管理システムにおける端末の機能を有する。第2装置2は、第1装置1と同様にスマートフォンやタブレット端末であってもよいが、精彩な表示部23に対する画像表示処理を実行可能なデスクトップ型又はラップトップ型のパーソナルコンピュータであることが好ましい。第2装置2は、測定装置4や、チャート管理システムに含まれるサーバ等との通信が可能である。
【0034】
第2装置2の記憶部21は、汎用コンピュータを第2装置2として機能させるための第2プログラムP2を記憶している。第2プログラムP2は、コンピュータから読み取り可能な記憶媒体8に記憶されていた第2プログラム82Pを処理部20が読み出して記憶部21に記憶したものであってもよい。第2プログラムP2は、外部の配布サーバから第2プログラムをダウンロードして記憶部21に記憶したものであってもよい。
【0035】
第2装置2も、医療機関の測定装置4で測定されたデータを取り込むことができる。第2装置2の処理部20は、医療機関におけるネットワークを介して測定装置4の測定装置ID、測定装置4で測定された患者の識別データ(認証データ)、及び測定されたデータを取得できる。
【0036】
図4は、第3装置3の構成を示すブロック図である。第3装置3のハードウェア構成は、第1装置1又は第2装置2と同様であるから、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。第3装置3は、例えば医療データを用いて研究を行なう研究者が用いるデスクトップ型又はラップトップ型のパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータである。処理部30は、記憶部31に記憶されている第3プログラムP3に基づき、ブロックチェーンシステム5及び分散型ストレージ6から医療データの検索や受信が可能である。
【0037】
第3装置3の記憶部31は、汎用コンピュータを第3装置3として機能させるための第3プログラムP3を記憶している。第3プログラムP3は、コンピュータから読み取り可能な記憶媒体8に記憶されていた第3プログラム83Pを処理部30が読み出して記憶部31に記憶したものであってもよい。第3プログラムP3は、外部の配布サーバから第3プログラムをダウンロードして記憶部31に記憶したものであってもよい。
【0038】
図5は、ブロックチェーンシステム5におけるノード50の構成を示すブロック図である。ノード50は、サーバコンピュータであってもよいし、デスクトップ型又はラップトップ型パーソナルコンピュータであってもよいし、スマートフォン等の通信端末機器であってもよい。ノード50は、処理部51、記憶部52及び通信部53を備える。またノード50は、少なくとも処理部51及び通信部53を備える装置であれば、処理部51の一部によってノードの一部又は全部を構成することができる。
【0039】
処理部51は、CPU、GPU等のプロセッサと、メモリ等を用いる。処理部51は、プロセッサ、メモリ、更には記憶部52及び通信部53を集積した1つのハードウェアとして構成されていてもよい。処理部51のメモリには、ノード50夫々独自に所有する秘密鍵が記憶されているとよい。そして処理部51は、記憶部52に記憶されているノードプログラムに基づいた各処理を実行し、汎用コンピュータをブロックチェーンシステム5におけるノードとして機能させる。
【0040】
記憶部52は、ハードディスク又はフラッシュメモリを用い、ノードプログラムを始めとする処理部51が参照するプログラム、データを記憶する。記憶部52は、ブロックチェーンを記憶する。ノードプログラムには例えば、NFTを発行するスマートコントラクトとして機能させるためのプログラムが含まれる。上述の秘密鍵は記憶部52に記憶されてもよい。記憶部52は、秘密鍵に基づく公開鍵及びアドレスを記憶してもよい。
【0041】
通信部53は、ノード50の相互通信を実現する通信モジュールである。通信部53は、ネットワークカード、光通信用デバイス、又は無線通信デバイス等を用いる。
【0042】
ノード50それぞれにおける演算に基づき、後述する種々のスマートコントラクトが呼び出され、規定された処理が実行される。
【0043】
このように構成される遠隔医療システム100における処理手順について説明する。遠隔医療100システムにおいて、患者であるユーザ、医療事業者、研究者等のデータの需要者それぞれについて、少なくともブロックチェーンシステム5及び/又は分散型ストレージ6へのアクセスに必要なウォレットの設定が必要である。ウォレットの設定は、ブロックチェーンアカウントの設定である。患者であるユーザには、ユーザの個別識別データに関連付けてブロックチェーンアカウントが発行される。ユーザの個別識別データは例えば、第1装置1に記憶されているユーザの顔写真とマイナンバー(登録商標)との組み合わせである。ユーザの個別識別データは、保険証の識別データや自治体での識別データ等を用いてもよい。医療事業者及びデータの需要者に対しても同様にして、ブロックチェーンアカウントが発行される。ブロックチェーンアカウント、これに対応する秘密鍵が第1装置1、第2装置2及び第3装置3それぞれの記憶部11,21,31に記憶される。
【0044】
ウォレットが設定されると、第1装置1の第1プログラムP1及び第2装置2の第2プログラムP2に基づく処理により、以下のようにして患者の医療データが記憶され、NFTが発行される。図6は、遠隔医療システム100で実行される処理手順を示すシーケンス図である。図6に示す処理手順は例えば、遠隔医療システム100を利用して診療を受けるべく、ユーザ又は補助者が第1装置1の第1プログラムP1を起動することにより開始される。
【0045】
第1装置1の処理部10は、認証部16を用い、第1装置1の操作者、あるいは、第1装置1の前に存在している患者が、個別識別データで識別されるユーザ本人であるか否かの認証を実行する(ステップS101)。ステップS101における認証は、遠隔医療システム100内部又は外部に存在する認証サーバと連係して実行されてもよい。ステップS101の認証に失敗した場合、処理部10は以降のシーケンスを実行せずにエラーを表示部13に表示して処理を終了する。処理部10は、認証に成功すると、以下のシーケンスを続行する。
【0046】
処理部10は、患者であるユーザに対応する診療先の医療機関へ向けて、測定装置4から得られるデータを含む医療データ(患者の診療に係る複数のデータの集合)を送信する(ステップS102)。診療先の医療機関は、予め登録されていてもよいし、ステップS102の前にユーザの操作によって選択されてもよい。ステップS102のうち、ビデオ通話のために撮像部15にて撮像される動画データは、以後も撮像及び送信が続行されてよい。
【0047】
第1装置1で処理部10は、ステップS102の医療データの送信の前に、対象の医療データを分散型ストレージ6におけるデータマーケットに提供してよいか否かの合意をユーザから受け付けるとよい。合意については、医療データの送信の都度行なわれてもよいし、第1装置1の処理部10が、遠隔医療システム100の利用時のウォレット設定時に、データマーケットに用いるか否かを一括で受け付けてもよい。医療機関において医療事業者における医師等のスタッフの操作の第2装置2での操作により、データマーケットに提供することについて合意を取ってもよい。
【0048】
ステップS102で送信される医療データには、ステップS101で認証されたユーザの個別識別データ、ブロックチェーンアカウントデータ、撮像部15で撮像された画像データを少なくとも含む。医療データには、第1装置1の固有識別データが含まれてもよい。撮像部15から得られる画像データには、撮像部15のカメラの識別データと、その画像が改ざんされた可能性が極めて低いことを示す「発生トラスト」データとが含まれている。「発生トラスト」は、改ざんされた場合に検証可能なデータ(暗号)である。第1装置1に測定装置4が接続されている場合、医療データには、1又は複数の測定装置4から得られるデータが含まれてもよい。測定装置4から得られるデータには、上述したように、測定装置4の測定装置ID(MACアドレス等)、データそのものが含まれるとよい。医療データには、測定装置4のデータについてそれぞれ、撮像部15又は測定装置4にてデータが発生した時点では、改ざんされた可能性が極めて低いことを示す「発生トラスト」データが含まれる。「発生トラスト」データは例えば、カメラで撮影された画像データのハッシュ値、測定装置4から得られるデータのハッシュ値である。
【0049】
第1装置1で処理部10は、ステップS102の医療データの送信の前に、対象の医療データを分散型ストレージ6におけるデータマーケットに提供してよいか否かの合意をユーザから受け付けるとよい。合意については、医療データの送信の都度行なわれてもよいし、第1装置1の処理部10が、遠隔医療システム100の利用時のウォレット設定時に、データマーケットに用いるか否かを一括で受け付けてもよい。医療機関において医療事業者における医師等のスタッフの操作の第2装置2での操作により、データマーケットに提供することについて合意を取ってもよい。合意が取れた場合には、医療データにその合意が取れたことを示すデータが含まれてもよい。
【0050】
診療先の医療機関では、第2装置2が患者の第1装置1から医療データを受信すると(ステップS201)、第2装置2の処理部20は、受信した医療データに含まれる患者であるユーザの個別識別データを特定する(ステップS202)。第2装置2の処理部20は、送信された医療データの真贋について、第1装置1へ問い合わせる(ステップS203)。
【0051】
第1装置1の処理部10は、問い合わせを受けて(ステップS103)、ステップS102で送信した医療データについて、自身のデータであるか否か(真贋)の確認を、表示部13に表示される画面上でユーザから受け付ける(ステップS104)。確認を受け付けると処理部10は、確認結果を第2装置2へ送信する(ステップS105)。
【0052】
第2装置2は、確認結果を受信し(ステップS204)、医療データについて承認(真贋の判断)が得られたことを示す「承認トラスト」データを更新する(ステップS205)。「承認トラスト」は、真贋の判断の結果を示すデータ(TRUE又はFALSEの二値等)である。ステップS103において第1装置1にて、患者自身の認知の問題や、操作の困難性で確認がとれない場合には、医療事業者による第2装置2への操作に基づいて、「承認トラスト」が更新されるとよい。この場合、「承認トラスト」として例えば、医療事業者の第2装置2のブロックチェーンアカウントで署名された認知レベル、障害レベルデータが、医療データに追加される。処理部20は、ブロックチェーンシステム5へ、医療データの追加リクエストを送信する(ステップS206)。追加リクエストには、患者の個別識別データに関連するウォレットアドレス(ブロックチェーンアカウント)が含まれる。
【0053】
ブロックチェーンシステム5では、医療データの追加リクエストにより呼び出されるスマートコントラクトにて、医療データの記憶及び医療データに対するNFT発行を実施する(ステップS501)。ブロックチェーンシステム5は、医療データの持ち主のユーザの個別識別データが関連付けられたブロックチェーンアカウントによって、送信されたトランザクションを検証、承諾する。
【0054】
ステップS501においてブロックチェーンシステム5のスマートコントラクトは、画像等の医療データをJSON形式で分散型ストレージ6に記憶させ、そのURIを特定する。分散型ストレージ6に記憶される医療データは、暗号化される。分散型ストレージ6のスマートコントラクトによって記憶するトランザクションを受け付けて実行してもよい。ブロックチェーンシステム5のスマートコントラクトは、特定したURIで特定される医療データに対するNFTを、ユーザ(患者)に対して発行する。発行されたNFTは、トークンID、患者の個別識別データ、及び、医療データの分散型ストレージ6におけるURIを含み、ブロックチェーンシステム5のブロックに取り込まれる。
【0055】
ブロックチェーンシステム5のスマートコントラクトは、発行したNFTのトークンIDと、記憶したURIとを第2装置2へ返す(ステップS502)。
【0056】
第2装置2では、返されたURIに基づき、発行されたNFTに関するメタデータとして記憶された患者の医療データをチャート(カルテ)として表示部23に表示する(ステップS207)。第2装置2では、第2プログラムP2に基づき、暗号化されて分散型ストレージ6に記憶された医療データを復号して表示させることが可能である。ここに含まれる医療データは、ステップS501で記憶された対象の患者の医療データのみならず、過去における対象の患者の測定結果や、問診データ、服薬情報、遺伝子情報等が含まれる。
【0057】
第2装置2で表示されたチャートが医師によってチェックされ、問診データ、診断結果や処方情報のテキストが加えられると、処理部20はそのデータも、同一のユーザの医療データとして追加する追加リクエストをブロックチェーンシステム5へ送信する(ステップS208)。
【0058】
ブロックチェーンシステム5のスマートコントラクトは、送信された問診結果、診断結果、処方情報を、当該患者の医療データに加える(ステップ503)。スマートコントラクトは、公開鍵暗号方式における署名を医療データに埋め込み(ステップS504)、第1装置1又は第2装置2へ返送する(ステップS505)。これにより、患者の同意の上で医師によって医療データが承認されたことが改ざん困難に記憶され、一回の診療における処理が終了する。
【0059】
ステップS207及びステップS503-S505の処理では、同一のURIで特定できる同一IDのトークンに対応するメタデータに加えられてもよいし、同一のユーザの個別識別データに対して情報が加えられる(イベントが発生する)都度に別のトークンが発行されて実行され、複数のURIに分けて記憶されてもよい。
【0060】
図7及び図8は、第1装置1で表示される画面例を示す図である。図7は、ステップS103で表示される画面例を示す。患者であるユーザが用いる画面130には、医療データに含まれる画像データ131と、真贋について回答を受け付けるアイコン132が含まれる。ユーザあるいは補助者がアイコン132を選択すると、真偽の結果が第2装置2へ送信される。
【0061】
図8は、ステップS102の前等に表示される画面例を示す。図8の画面133には、第1装置1を用いる患者に対して測定されたデータのうち、図7同様に画像データ131が表示されている。画面133には、分散型ストレージ6におけるデータマーケットに提供してよいか否かを受け付けるアイコン134が表示されている。ユーザがアイコン134を選択すると、患者にて承認が取れたことが第2装置2へ送信される。
【0062】
本実施の形態においては、図6に示したシーケンス中、あるいは事後的に、患者が認知可能であるか否かを示す「認知トラスト」というデータ(医療データに含む)を更新するようにしてもよい。「認知トラスト」は例えば、認知症のレベルを示す数値や、日常生活自立度の数値を含むデータである。「認知トラスト」は、第2装置2で医師の権限で付加されるデータであってよい。この「認知トラスト」により、分散型ストレージ6に記憶されたデータが他から共有可能かどうかを客観的に判断可能である。
【0063】
このようにして、分散型ストレージ6において、暗号化された医療データがパブリックブロックチェーンで記憶されることになる。同一の患者について、医療機器である測定装置4で測定が行なわれる都度、医療機関にて遠隔診断が行なわれる都度、医療データが記憶される。第1装置1及び第2装置2間で遠隔で診療された場合に限らず、医療機器にて直接的に第2装置2にてレントゲンやMRI等の測定データが得られた場合も、ステップS201-ステップS207及びステップS501-ステップS505の処理が実行される。図6のシーケンス図に示した処理は、同一の患者に対して、異なる医療機関で行なわれた場合も実行される。同一の患者の医療データは、マイナンバー等の患者の個別識別データに関連付けられたブロックチェーンアカウントを用いて記憶されるので、異なる医療機関を介して記憶されていても、同一の患者のデータとして扱うことができる。同一の患者の医療データであれば同一の患者がそれらの医療データのNFTの最初の所有者である。
【0064】
分散型ストレージ6に記憶される医療データには、例えば、診療記憶(遠隔医療における動画データ)、送迎記憶、診療を行なった医療機関の識別データ、医師による診療記憶、処方情報、問診データ(事前に確認した服薬、副作用、アレルギー等の問診表データ)、測定装置4による測定データ等のいずれかが含まれる。測定データは、上述したように、遠隔でもユーザ側で測定できる心拍計、血圧計等のデータのみならず、医療機関の医療機器での検査結果(レントゲン画像、MRI画像等)等のいずれかを含んでもよい。医療データにはほかに、入院の記憶、介護関連情報(ADL、要介護度)、服薬情報、身体基本情報(体組成、足サイズ等)、認知機能の評価、嚥下機能の評価、歩行機能の評価が含まれてもよい。医療データには、NFT化に対して患者が合意をしたことを示すデータが含まれている。
【0065】
分散型ストレージ6に記憶された医療データは、その医療データの患者の診断先の医師が用いる第2装置2の他、対応するNFTの所有者によって利用(ダウンロード)が可能になる。次に、分散型ストレージ6のデータマーケットにおけるNFTの流通及びこれによるデータの利用について説明する。
【0066】
分散型ストレージ6が実装されるDfinityブロックチェーンにおいて、あるいは、分散型ストレージ6にアクセス可能なブロックチェーンシステム5において、医療データを検索する検索用スマートコントラクトがデプロイされている。検索用スマートコントラクトにより、各NFTに対応する医療データ(メタデータ)に含まれるテキスト等からキーワード検索を実行することが可能である。ブロックチェーンシステム5に取り込まれているNFTのデータ自体に、検索用キーワードが含まれていてもよい。また各々の医療データには、図示しないWebサーバにおけるWebページへのリンクデータが含まれており、このWebページの検索が行なわれてもよい。Webページには、医療データに含まれる画像のサムネイルが含まれているとよい。
【0067】
図9は、医療データのNFTの取引処理を示すシーケンス図である。図9のシーケンスは、第3装置3にて第3プログラムP3が起動し、検索が実行されることによって開始される。
【0068】
第3装置3の処理部30は、第3プログラムP3に基づき、研究者等の操作に応じて検索画面を表示する(ステップS301)。処理部30は、検索画面にて検索キーワードを受け付け(ステップS302)、ブロックチェーンシステム5の検索用スマートコントラクトを呼び出して検索を実行する(ステップS303)。検索用スマートコントラクトは例えば、各NFTのURIから特定される医療データ(メタデータ)の概要に、検索キーワードが含まれるか否かを判定して返す。ステップS303で呼び出される検索用スマートコントラクトは、分散型ストレージ6にて実装されていてもよい。検索の方法はこれらの方法に限られない。
【0069】
検索用スマートコントラクトは、検索キーワードにより、分散型ストレージ6に記憶されているNFTの検索の実行結果を第3装置3へ返す(ステップS511)。検索により抽出されたNFTのトークンID及びそのNFTに対応する医療データの概要(Webページのサムネイル)が実行結果として返される。
【0070】
第3装置3の処理部30は、返された実行結果を受信し(ステップS304)、検索結果を表示部33に表示する(ステップS305)。処理部30は、検索結果から購入対象のNFTの選択を受け付ける(ステップS306)。選択されたNFTのデータ(トークンID、現在の所有者、取引の履歴等)及びURIにより得られる概要と、購入ボタンとを含む詳細画面を表示部33に表示する(ステップS307)。詳細画面には、NFTを購入するためのコストや取引に必要な情報が表示される。
【0071】
処理部30は、詳細画面に含まれる購入ボタンにて購入が選択された場合にこれを受け付ける(ステップS308)。処理部30は、購入対象のNFTを購入するトランザクションをブロックチェーンシステム5へブロードキャストする(ステップS309)。
【0072】
ブロックチェーンシステム5では、購入対象のNFTの購入者への移転処理を実施し(ステップS512)、処理の結果であるNFTに含まれる医療データへのURIを第3装置3へ返す(ステップS513)。
【0073】
第3装置3の処理部30は、NFTの移転処理の結果を受信すると(ステップS310)、NFTに含まれる医療データへのURIに基づき医療データを分散型ストレージ6から取得し(ステップS311)、処理を終了する。
【0074】
これにより、医療データの記憶に対して発行されたNFTにより、第三者である研究者は、医療データを取得することができる。医療データは、同一のユーザに対して複数の医療機関で横断的に診断されたデータを含み、研究対象として価値が非常に高い。医療データに「発生トラスト」「承認トラスト」等のデータが含まれ、これらのデータを改ざん困難に記憶されていることで、発生時から測定装置4からデータが改ざんされずに保持されていることを確認可能である。
【0075】
図10は、第3装置3にて表示される画面例を示す。図10は、ステップS301で第3装置3の表示部33に表示される検索画面330を示す。検索画面330は、年代、性別、診断された病名等のキーワードの入力を受け付ける検索欄331と、検索結果のNFTそれぞれに対応する医療データの概要(図10ではサムネイル)の一覧の表示欄332とを含む。表示欄332で表示される一覧はそれぞれ、各NFTの詳細画面へのリンクが対応付けられており、第3装置3を操作する研究者が操作部34によりいずれかを選択すると、詳細画面へ遷移する。
【0076】
図11は、詳細画面333の内容例を示す。詳細画面333には、選択されたNFTのURIにより得られる概要が含まれる。詳細画面333には、選択されたNFTのトークンID、現時点の所有者の個別識別データ若しくはそれに対応付けられている所有者名が表示される。詳細画面333には、選択されたNFTに対応する医療データの患者の属性(性別、年代、血液型、病歴、国籍等)が表示される。詳細画面333には、選択されたNFTの取引履歴等の関連データが表示されてもよい。
【0077】
詳細画面333には、購入ボタン334が含まれている。購入ボタン334が研究者等の第3装置3の操作者から選択されると、NFTの移転処理(S512)が実行される。
【0078】
NFTの移転処理が実行されると、NFTの元の所有者に通知されることが好ましい。図12は、第1装置1への通知画面135を示す。元の所有者の個別識別データに基づいて第1装置1へ、ウォレットへの入金通知として通知が送信される。通知画面135には、販売されたNFTの内容の概要が表示される。図12の通知画面135では、NFTに対応する医療データに含まれる画像データ131が代表として表示されている。通知画面135には、医療データの譲渡に伴う患者向けの報酬のアセットと、ウォレットに紐づくアセットの内容とが含まれる。購入に必要なアセットは法定通貨でもよいし、ブロックチェーンシステム5上で流通可能な種々のアセットが使用でき、いずれか選択可能であってもよい。
【0079】
このようにして分散型ストレージ6には、患者の医療データが記憶され、NFTを購入した者の第3装置3からのみ、医療データを利用(ダウンロード)可能となる。一旦、購入されたNFTは、二次的に流通可能であって、他の研究者へも移転できる。また、元の医療データに対し、複数のNFTを発行可能として、複数の第3装置3から購入可能としてもよい。複数のNFTが購入される都度、元の所有者にアセットが還元される。図13は、複数のNFTを発行した場合の検索画面330を示す。複数のNFTを発行する場合、検索画面330の一覧には、発行個数と、残数とが表示されている。
【0080】
なお、分散型ストレージ6におけるデータマーケットで取引可能となった医療データに対し、事後的に焼却可能とすることが好ましい。このため、NFTのメタデータである医療データには、焼却フラグが含まれる。NFTの焼却については、NFTの原始所有者である患者、又はその代理人による合意撤回の申し出に基づき、実行可能とする。
【0081】
図14は、NFTの焼却処理の手順を示すシーケンス図である。図14の処理手順は、第1装置1のユーザ又は補助者が第1装置1の第1プログラムP1を起動することにより開始される。
【0082】
処理部10は、第1装置1のユーザ(患者)の医療データの分散型ストレージ6上での検索を、ブロックチェーンシステム5の検索用スマートコントラクトを呼び出して実行する(ステップS121)。
【0083】
ブロックチェーンシステム5の検索用スマートコントラクトは、ユーザの個別識別データを原始所有者とするNFTを、分散型ストレージ6に記憶されているNFTから実行し、検索の実行結果を第1装置1へ返す(ステップS521)。検索により抽出されたNFTのトークンID及びそのNFTに対応する医療データの概要(Webページのサムネイル)が実行結果として返される。
【0084】
第1装置1の処理部10は、返された実行結果を受信し(ステップS122)、患者の医療データのNFTの一覧を表示部33に表示する(ステップS123)。処理部10は、一覧から焼却対象のNFTの選択を受け付ける(ステップS124)。このとき、全選択等のインタフェースが表示されているとよい。
【0085】
処理部10は、選択されたNFTを焼却するトランザクションをブロックチェーンシステム5へブロードキャストする(ステップS125)。
【0086】
ブロックチェーンシステム5では、対象のNFTの所有者へ、NFTの焼却を通知する処理を実行する(ステップS522)。この際、各所有者から確認を受けるまで、次のステップS523の処理を実行するまで期限を設けてもよい。例えば、10日間で焼却するので、所有者は利用可能な期間内に利用させるようにしてもよい。
【0087】
ブロックチェーンシステム5では、対象のNFTの焼却処理(トランザクションの検証・承認)を実施し(ステップS523)、処理の結果(成功/失敗)を第1装置1へ返す(ステップS524)。
【0088】
第1装置1では、処理の結果を受信し(ステップS126)、処理を終了する。
【0089】
このように、NFTが購入されて所有者が変更されていたとしても、所有者でない患者の合意撤回によって、NFTの焼却が可能である。したがって、事後的にNFTの流通を止めることもでき、一旦データマーケットに流通され始めたデータの取引を停止できる。なお、NFT発行時に、流通期限を設け、期限が経過した場合に自動的に焼却が行なわれるようにしてもよい。
【0090】
本実施形態では、NFTを用いて患者であるユーザから提供される医療に関するデータに対してNFTを発行し、データの横断的な使用を可能とする遠隔医療システム100を開示した。しかしながら、本開示における情報処理方法は、医療に限定されず、農業、教育、流通等に関するデータの横断的な使用にも適用可能である。
【0091】
例えば農業の場合、所定単位の農作物の植え付けから収穫までの工程の育成データを、分散型ストレージ6に記憶し、その育成データに基づくNFTを発行する。育成データは、種又は苗の種別、農地の地域、天候情報、肥料、農薬等のデータを含む。収穫されて出荷される農産物に対応する育成データに対してNFTを発行することにより、育成方法の共有や、地域毎の農作物の生育状況の研究等の研究に利用可能である。また、NFTの発行により、NFTが対応付けられた育成データによって生産された農産物の価値を高めることも可能である。
【0092】
例えば教育の場合、生徒毎の教育機関、指導教諭、指導内容、試験結果、進路情報等を含む学習データを、分散型ストレージ6に記憶し、その学習データに基づくNFTを発行する。学習内容と進路との統計データの作成等に基づく教育研究に利用可能である。
【0093】
その他、物品が複数の事業者間で流通して消費されるまでの流通データや、異なる環境で観測されて研究対象となり得る事象に関するデータ等についても適用可能である。
【0094】
上述のように開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0095】
100 遠隔医療システム
1 第1装置
2 第2装置
3 第3装置
10,20,30 処理部
P1 第1プログラム
P2 第2プログラム
P3 第3プログラム
5 ブロックチェーンシステム
6 分散型ストレージ
【要約】
NFT(Non-Fungible Token)を利用して改ざんや不正を防止しつつデータの流通を可能とする情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラムを提供する。情報処理方法は、患者の診療に関する医療データをストレージに記憶させ、記憶された前記医療データに対応するNFTを、ブロックチェーンシステムにおける前記患者のブロックチェーンアカウントに対して発行し、前記NFTの所有者の装置からの前記医療データへのアクセスを許可する処理を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
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図14