(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】メラトニン産生促進剤及び睡眠の質改善剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20240606BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240606BHJP
A61P 5/00 20060101ALI20240606BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20240606BHJP
A61K 31/26 20060101ALI20240606BHJP
A61K 31/7024 20060101ALI20240606BHJP
A61K 36/31 20060101ALI20240606BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20240606BHJP
【FI】
A23L33/105
A61P43/00 111
A61P5/00
A61P25/20
A61K31/26
A61K31/7024
A61K36/31
A61K131:00
(21)【出願番号】P 2019175044
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2021-11-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
(72)【発明者】
【氏名】西▲崎▼ 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】菊池 真大
(72)【発明者】
【氏名】青木 雄大
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109479689(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102526217(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104187295(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106473137(CN,A)
【文献】特開2004-043378(JP,A)
【文献】特開2003-335691(JP,A)
【文献】国際公開第2015/163443(WO,A1)
【文献】特開2006-109754(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109588698(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0068389(KR,A)
【文献】青木雄大ほか,ブロッコリースプラウト抽出物が睡眠に与える影響の探索,NEW DIET THERAPY,2019年,Vol.35, No.2,P.174
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/
A61P
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/AGRICOLA/FSTA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラトニン産生促進剤であって、
その有効成分は、グルコラファニン及びスルフォラファンの少なくとも一種である。
【請求項2】
請求項1のメラトニン産生促進剤であって、
前記グルコラファニン及びスルフォラファンは、アブラナ科植物由来である。
【請求項3】
請求項
2のメラトニン産生促進剤であって、
前記アブラナ科植物は、ブロッコリーである。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかのメラトニン産生促進剤であって、
それが含有するのは、ブロッコリースプラウト抽出物である。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかのメラトニン産生促進剤であって、
当該有効成分の投与量は1日当たり24mg以上である。
【請求項6】
メラトニン産生促進用食品組成物であって、
それが有効成分として含有するのは、グルコラファニン及びスルフォラファンの少なくとも一種である。
【請求項7】
請求項6のメラトニン産生促進用食品組成物であって、
前記グルコラファニン及びスルフォラファンは、アブラナ科植物由来である。
【請求項8】
請求項
7のメラトニン産生促進用食品組成物であって、
前記アブラナ科植物は、ブロッコリーである。
【請求項9】
請求項6乃至8の何れかのメラトニン産生促進用食品組成物であって、
それが含有するのは、ブロッコリースプラウト抽出物である。
【請求項10】
請求項6乃至9の何れかのメラトニン産生促進用食品組成物であって、
当該有効成分の摂取量は1日当たり24mg以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、メラトニン産生促進剤及び睡眠の質改善剤、並びに、メラトニン産生促進用食品組成物及び睡眠の質改善用食品組成物である。
【背景技術】
【0002】
睡眠は食や運動と同様に健康長寿に影響する重要な因子である。一方で、現代社会においては、生活リズムの乱れやストレス、運動不足等により睡眠不足、不眠等の症状を訴える人が多く存在する。睡眠の質の低下は、心筋梗塞や脳梗塞等の重大な疾患に繋がるだけでなく、日中の眠気から作業能率が低下し、重大な事故を誘発する可能性があり、睡眠の質を改善することは重要な課題である。
【0003】
睡眠の質の低下は、一般的に、寝つきが悪い入眠障害、夜中に何度も目が覚める中途覚醒、朝早くに目が覚めてしまう早期覚醒、よく眠った感じがしない熟眠不全等に分類される。これらの症状に対する治療法としては、ベンゾジアゼピン系や抗ヒスタミン系等の睡眠改善医薬品による薬物療法が挙げられる。これらの医薬品は、睡眠改善効果を有するが、精神症状や筋弛緩作用などの副作用があり、医薬品であるため、簡便に入手できない。
【0004】
これまでに、睡眠改善効果を有する成分として、テアニン(特許文献1)、グリシン(特許文献2)、オルニチン(特許文献3)、γ-アミノ酪酸(特許文献4)等が開示されている。
【0005】
一方、ブロッコリー等のアブラナ科の植物には、スルフォラファンの前駆体グルコラファニンが多く含まれ、当該植物の組織中に含まれるグルコラファニンは、組織が破壊されると内在性の酵素ミロシナーゼにより加水分解され、スルフォラファンを生じることが知られている(非特許文献1)。また、グルコラファニンを摂取した場合においても、腸内細菌によってスルフォラファンに変換されて腸管から吸収されることが知られている。スルフォラファン及びその前駆体グルコシノレートであるグルコラファニンには、第二相解毒酵素を誘導する作用等が知られているが、メラトニンの産生及び睡眠に対する作用効果はこれまでに知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4961087号公報
【文献】特開2006-333872号公報
【文献】特許第5053535号公報
【文献】特開2007-63236号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】J.Agric.Food Chem., 52:916-926(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、安全性が高く、長期に適用可能なメラトニン産生促進剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上を踏まえて、本願発明者が鋭意検討して見出したのは、グルコラファニン及びスルフォラファンの少なくとも1種によるメラトニン産生促進機能、及び、それによる睡眠の質改善機能である。すなわち、グルコラファニン及びスルフォラファンの少なくとも一種の作用により、メラトニン産生が促進され、睡眠の質が改善される。この観点から、本発明を定義すると、以下のとおりである。
【0010】
本発明に係るメラトニン産生促進剤の有効成分は、グルコラファニン及びスルフォラファンの少なくとも一種である。ここで、グルコラファニン及びスルフォラファンはアブラナ科植物由来であり、ブロッコリー由来であることが好ましく、ブロッコリースプラウト抽出物の形態であることがより好ましい。
【0011】
本発明に係るメラトニン産生促進用食品組成物が含有するのは、少なくとも、グルコラファニン及びスルフォラファンの少なくとも一種である。ここで、グルコラファニン及びスルフォラファンはアブラナ科植物由来であり、ブロッコリー由来であることが好ましく、ブロッコリースプラウト抽出物の形態であることがより好ましい。言い換えると、当該メラトニン産生促進用食品組成物の機能性成分は、少なくとも、グルコラファニン及びスルフォラファンの少なくとも一種である。
【0012】
本発明に係る睡眠の質改善剤の有効成分は、グルコラファニン及びスルフォラファンの少なくとも一種である。ここで、グルコラファニン及びスルフォラファンはアブラナ科植物由来であり、ブロッコリー由来であることが好ましく、ブロッコリースプラウト抽出物の形態であることがより好ましい。
【0013】
本発明に係る睡眠の質改善用食品組成物が含有するのは、少なくとも、グルコラファニン及びスルフォラファンの少なくとも一種である。ここで、グルコラファニン及びスルフォラファンはアブラナ科植物由来であり、ブロッコリー由来であることが好ましく、ブロッコリースプラウト抽出物の形態であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明が可能にするのは、安全性が高く、長期に適用可能なメラトニン産生促進剤である。すなわち、グルコラファニン及びスルフォラファンは、ブロッコリーやケール等の食経験の豊富な植物から容易に取得可能であり、長期投与又は摂取が可能である。さらに、グルコラファニン及びスルフォラファンの少なくとも一種の作用により、メラトニンの産生が促進されることで、睡眠の質改善効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】スルフォラファン摂取による唾液中メラトニンの経時変化を示す図
【
図2】スルフォラファン摂取による唾液中メラトニンのAUCを示す図
【
図3】スルフォラファン摂取によるVASアンケートの経時変化を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<メラトニン産生促進剤>
本発明に係るメラトニン産生促進剤は、有効成分としてグルコラファニン及びスルフォラファンの少なくとも一種を含有する。グルコラファニン及びスルフォラファンは、好ましくは植物由来であり、ブロッコリースプラウト由来であることがより好ましい。メラトニン産生促進剤の詳細は、後述する。
【0017】
<メラトニン産生促進用食品組成物>
本発明に係るメラトニン産生促進用食品組成物は、グルコラファニン及びスルフォラファンの少なくとも一種を含有する。グルコラファニン及びスルフォラファンは、好ましくは植物由来であり、ブロッコリースプラウト由来であることがより好ましい。メラトニン産生促進用食品組成物の詳細は、後述する。
【0018】
<グルコラファニン及びスルフォラファン>
グルコラファニンは、グルコシノレートの1種であり、スルフォラファンの前駆体である。酵素ミロシナーゼにより加水分解され、スルフォラファンとなる。また、ヒト等の哺乳動物がグルコラファニンを摂取した場合においても、スルフォラファンに変換されて腸管から吸収される。グルコラファニンはアブラナ科植物に多く含有されていることが知られており、本発明において、グルコラファニンは、精製された状態で剤や飲食品に含有されていてもよく、アブラナ科植物、その抽出物又はその分画、及びその粉砕物から選択される一以上の状態で含有されてもよい。
【0019】
<アブラナ科植物>
アブラナ科植物は、特に限定されないが、例示すると、ブロッコリー、ケール、キャベツ、カリフラワー、高菜、アブラナ、カラシナ、大根、大根葉、野沢菜、小松菜、白菜、芽キャベツ、プチヴェール、及び、これらを適宜交配して作製した植物が挙げられる。植物体の部分としては、植物の成長体(芽、葉、茎、根、又は花など)でも、スプラウト(発芽体)でも、種子でもよく、特に制限されない。これらのうちより好ましいのは、アブラナ科アブラナ属に属するブロッコリーである。さらに、グルコラファニン及びスルフォラファンの少なくとも一種の含量の高さから、ブロッコリーのスプラウト又は種子が特に好ましい。
【0020】
<ブロッコリースプラウト抽出物>
ブロッコリースプラウトからグルコラファニン及びスルフォラファンの少なくとも一種を抽出する場合は、その含有量が減少傾向になる成長体になる前であれば発芽後何日後であってもよいが、好ましくは、発芽と1~10日後、より好ましくは1~3日後のスプラウトを用いることである。また、グルコラファニン及びスルフォラファンの少なくとも一種の含有量が、好ましくは、50~350mg/100g(湿重量)、より好ましくは150~330mg/100g(湿重量)、さらに好ましくは、250~300mg/100g(湿重量)のブロッコリースプラウトを用いることである。
【0021】
<グルコラファニン及びスルフォラファンの取得>
ブロッコリースプラウト等を含むアブラナ科植物からのグルコラファニン及びスルフォラファンの少なくとも一種の取得は、周知の方法により行うことができる。また、単離精製されたグルコラファニン及びスルフォラファンは市販されており、当該市販品を使用することもできる。
【0022】
<植物からの抽出>
例えば、グルコラファニンは、植物の一部または全体をそのまま又は乾燥粉砕したものを溶媒等で抽出して取得することができ、溶媒としては、水、低級1価アルコール(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等)、低級エステル(酢酸エチル等)、炭化水素(ベンゼン、ヘキサン、ペンタン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル等)、アセトニトリル等が挙げられ、それらの一種又は2種以上を用いることができる。
【0023】
本発明の剤又は食品組成物は経口で投与又は摂取されることを考慮すると、抽出溶媒としては、水、エタノール、又は含水エタノールが特に好ましい。好ましい抽出方法の例としては、例えば熱水(90~100℃)で、10~30分間抽出する方法や、0~100体積%の含水エタノールで室温又は加温して1~10日間抽出する方法が挙げられ、その抽出液をさらに分画・精製してもよい。その他に、超臨界抽出によってグルコラファニンを抽出してもよい。
【0024】
<グルコラファニンからスルフォラファンを得る方法>
グルコラファニンからスルフォラファンを得る方法としては、グルコラファニンとミロシナーゼを反応させればよく、その方法は限定されない。例えば、グルコラファニンを含むアブラナ科植物を、加熱せずに破砕、摩砕、粉砕、せん断、搾汁等することでグルコラファニンと内在のミロシナーゼを反応させ、スルフォラファンに代謝させる方法や、グルコラファニンにミロシナーゼを添加してスルフォラファンに代謝させる方法等が挙げられる。スルフォラファンは、これらの方法にてグルコラファニンから代謝されたスルフォラファンを含む原料から、グルコラファニンと同様の方法(例えば、前述の抽出等の方法)にて取得することができる。
【0025】
<グルコラファニンの濃度測定>
剤、食品組成物、又は抽出物等の中のグルコラファニンの濃度測定は、当業者周知の方法により行うことができる。例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を用いることができ、具体的な方法としては、Faheyらの方法(Fahey et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 10367-10372, 1997)等に従って行うことができる。
【0026】
<スルフォラファンの濃度測定>
剤、食品組成物、又は抽出物等の中のスルフォラファンの濃度測定は、当業者周知の方法により行うことができる。例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を用いることができ、具体的な方法としては、Hanらの方法(Han et al., Int. J. Mol. Sci., 12, 1854-1861, 2011)等に従って行うことができる。
【0027】
<メラトニン産生促進剤>
本発明のメラトニン産生促進剤の投与形態としては、例えば、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、溶液、シロップ剤、乳液等による経口投与を好ましく挙げることができる。なお、非経口投与形態が排除されるわけではなく、局所組織投与や、注射による皮下、皮内、筋肉内、静脈内投与、或いは、有効成分を揮発させることによる鼻腔内投与等によってもよい。
【0028】
本発明のメラトニン産生促進剤は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などの医薬等の製剤技術分野において通常使用し得る既知の補助剤を用いて製剤化することができる。また、本発明のメラトニン産生促進剤の分類としては、医薬品または医薬部外品の態様であってもよい。
【0029】
<メラトニン産生促進用食品組成物>
本発明のメラトニン産生促進用食品組成物としては、例えば、飲料(ジュース、コーヒー、紅茶、茶、炭酸飲料、スポーツ飲料、青汁等)、菓子類(ガム、キャンディー、キャラメル、チョコレート、クッキー、スナック、ゼリー、グミ、錠菓等)、麺類(そば、うどん、ラーメン等)、乳製品(ミルク、アイスクリーム、ヨーグルト等)、調味料(味噌、醤油等)、スープ類、をはじめとする一般食品や、健康食品(錠剤、カプセル等)、栄養補助食品(サプリメント、栄養ドリンク等)が挙げられる。
【0030】
これら食品組成物には、その種類に応じて種々の成分を配合することができ、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、コーンスターチ、デキストリン、ステビオサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L-アスコルビン酸、dl-α-トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、セルロース、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤等の食品添加物を任意に使用することができる。
【0031】
<グルコラファニン及びスルフォラファンの含有量>
本発明のメラトニン産生促進剤は、特に限定されないが、グルコラファニン及びスルフォラファンの少なくとも一種を合計で0.03質量%以上含有していることが好ましく、0.5質量%以上含有していることがより好ましく、5質量%以上含有していることが特に好ましい。
【0032】
また、本発明のメラトニン産生促進用食品組成物は、特に限定されないが、グルコラファニン及びスルフォラファンの少なくとも一種を合計で0.01質量%以上含有していることが好ましく、0.04質量%以上含有していることがより好ましく、0.25質量%以上含有していることが特に好ましい。
【0033】
<投与量/摂取量>
本発明のメラトニン産生促進剤の投与量、又はメラトニン産生促進用食品組成物の摂取量は、投与/摂取する対象がヒトである場合、その性別、症状、年齢、投与方法によって異なるが、グルコラファニン及びスルフォラファンの少なくとも一種が通常、成人(体重60kg程度)1日当たり24mg以上であればよく、30mg以上であることが、作用が十分に発揮される観点から好ましい。この1日当たりの量を一度に又は数回に分けて投与/摂取することができ、そのタイミングとしては、食前、食後、食間のいずれでもよい。また、投与/摂取期間は特に限定されないが、4週間以上継続的に摂取することが好ましい。
【0034】
なお、前述の1日当たりの投与量は、食品組成物の形態によって異なるが、表示される1日の摂取目安量や、通常1度で消費する飲みきりタイプの飲料であれば1本当たりに含まれる量を指すものである。
【0035】
<睡眠の質改善剤及び睡眠の質改善用食品組成物>
後述の実施例にて示される通り、本発明のメラトニン産生促進剤の作用により、睡眠の質が改善されると考えられる。ここで、「睡眠の質改善」とは、メラトニンが産生されることにより、例えば、概日リズム睡眠障害が予防される、寝付きが良くなる、深い眠りに入ることをいうが、これに限定されない。
【0036】
したがって、本発明の他の態様として、グルコラファニン及びスルフォラファンの少なくとも一種を有効成分として含有する、睡眠の質改善剤及び睡眠の質改善用食品組成物も提供される。
【0037】
本発明の睡眠の質改善剤及び睡眠の質改善用食品組成物の寄与成分、投与量、態様等の具体的な説明については、前述したメラトニン産生促進剤及びメラトニン産生促進用の食品組成物の説明に準ずる。
【0038】
本発明のメラトニン産生促進用食品組成物及び睡眠の質改善用食品組成物は、前述した機能性や生体に対する有用な作用に基づいて、好適に機能性表示食品や特定保健用食品とすることができる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
事前アンケートで自身の睡眠に不満をもつと回答した30歳以上70歳未満の健常成人男女16名を対象とし、以下の実施例1の試験食品又は比較例1のプラセボ食品を4週間摂取させて、二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験を実施した。
【0041】
<実施例1>
試験食品として、ブロッコリースプラウト由来のグルコラファニンを含有するカプセル剤(3粒中にグルコラファニン31.3mg)を用いた(スルフォラファン摂取群)。試験食品は、摂取期間中1日1回3粒を約100mLの水又は白湯とともに毎日摂取するよう、研究対象者に説明した。
【0042】
<比較例1>
プラセボ食品として、グルコラファニン及びスルフォラファンを含まないカプセル剤を使用した(プラセボ摂取群)。
【0043】
<試験例1>
実施例の1試験食品及び比較例1のプラセボ食品の摂取前と4週間摂取後に各々21時、23時、翌朝7時から8時の間、の3点でそれぞれ4mLの唾液を採取して、マイナス80℃で保管した。採種した唾液サンプルを解凍後、Salivary Melatonin Enzyme Immunoassay Kit(Salimetrics社)を用いて、取扱説明書に記載のとおり、ELISA法により唾液中のメラトニン量を測定した(
図1)。また、摂取前後における、各時間でのメラトニン量からAUC値(Area Under the Curve:曲線下面積値)の評価を行い、平均値の比較と、Wilcoxon符号付順位和検定による解析を行った(
図2)。
【0044】
<試験例2>
睡眠の質について、ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)法を用いて評価を行った。VAS法とは、両端に対をなす極端な状態を表記した長さ100mmの線分上に、被験者自身に記入時の主観的な感覚を垂直な1本線で表してもらい、端からその垂線までの長さを測定してVASスコアとすることで、被験者の主観的な感覚を評価する方法である。今回の評価では、「睡眠の質」の左端を「昨晩の睡眠の質は非常に悪かった」としてスコア0とし、右端を「昨晩の睡眠の質は非常に良かった」としてスコア10とした。つまり、数字が大きいほど、良い評価となる。VAS法の評価結果は、摂取開始前と1、2、4週間摂取後について、2元配置分散分析後、Dunnet検定(vs 0週)により解析した(
図3)。
【0045】
<評価結果>
試験例1において、スルフォラファン摂取群(実施例1)では、唾液中のメラトニン量が、摂取前と比較して摂取後の21時の測定ポイントで有意な高値を示した。プラセボ摂取群(比較例1)では摂取前後で有意な差はなく、実測値・変化量ともに群間での差は確認されなかった(
図1)。また、AUCにおいて、スルフォラファン摂取群では、摂取前と比較して摂取後で有意な高値を示した。プラセボ摂取群では摂取前後で有意な差はなく、実測値・変化量ともに群間での差は確認されなかった(
図2)。したがって、スルフォラファンはメラトニン量の増加を引き起こすこと、つまり、メラトニンの産生を促進していることが示された。
【0046】
試験例2において、スルフォラファン摂取群のVAS値は、試験食品摂取前と比較して、試験食品摂取2、4週目で有意な高値を示した(
図3)。一方、プラセボ摂取群では、有意な変化はなかった。したがって、スルフォラファン摂取による睡眠の質の改善効果が示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明が有用な分野は、医薬品、栄養補助食品及び機能性表示食品である。