(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】装置
(51)【国際特許分類】
E02D 1/02 20060101AFI20240606BHJP
G01N 29/07 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
E02D1/02
G01N29/07
(21)【出願番号】P 2020016058
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉河 秀郎
(72)【発明者】
【氏名】青野 泰久
(72)【発明者】
【氏名】吉成 勝美
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-168961(JP,A)
【文献】特開2013-087572(JP,A)
【文献】特開2003-321828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/02
G01N 29/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩盤または地盤の内部を伝搬する弾性波の反射波の極性反転と、岩盤性状変化または地盤性状変化の関係を検証する装置であって、
内部における弾性波速度がそれぞれ既知である複数の異なる種類の岩盤材料または地盤材料を繋ぎ合わせてなる試験体と、試験体の内部に弾性波を発生させる発生手段と、発生した弾性波の直接波と反射波
の両方を受振するセンサーと、受振した
直接波と反射波の波形データに基づいて
検出される反射波の極性反転から、岩盤材料の性状変化または地盤材料の性状変化を求めることにより、前記関係を検証する検証手段とを備えることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば地盤・岩盤における弾性波探査に好適な弾性波伝搬特性の検証方法および検証装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
弾性波は均質媒質中では直進するが、弾性波速度と密度の積である音響インピーダンスが異なる境界で反射・屈折が起きる。したがって、山岳トンネルにおける反射法地震探査の場合には、地山内部にある断層破砕帯など音響インピーダンスの境界面で反射面が生じる。また、硬質な層から軟質な層、すなわち高い音響インピーダンスから低い音響インピーダンスの層に波が入射すると(その逆に軟質から硬質の変化のパターンもある)、波の押し引き関係が逆転し、“反射波の極性が反転”することも理論的には理解されている。しかし、速度センサーや加速度センサーにより地山弾性波探査が広く行われるものの、各センサーの弾性波伝搬特性(反射波の極性反転)は、実際の掘削やボーリング調査を行わない限り厳密には検証することができない。
【0003】
建築分野では、建物の基礎杭欠陥(ひび割れ等)や地盤性状評価に弾性波伝搬特性を活用したものとして、例えば特許文献1~5に記載の技術が知られている。これらの技術は、弾性波速度・反射波の波形と、杭の長さの決定、杭の欠陥位置(ひび割れ部)の推定、杭先端部の地盤性状評価に関する検討や、固有振動数と杭の健全性の関係についての検討であり、地盤性状の変化(反射波の極性反転)は検討対象とされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-172115号公報
【文献】特開2014-224756号公報
【文献】特開2011-220003号公報
【文献】特開平9-88110号公報
【文献】特開2019-32303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
反射波の極性反転と岩盤性状の関係を検証できるようになると、あるセンサーを用いた弾性波探査による地山状況の変化(硬質⇔軟質)の予測を可能にすると考えられる。しかし、上述のとおり掘削やボーリング調査を行わない限り検証することができず、容易に繰返し実験できないという問題がある。また、高い精度で位置精度を検証することも容易ではない。このため、反射波の極性反転と岩盤性状の関係を容易に検証することができる技術が求められていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、反射波の極性反転と岩盤性状の関係を容易に検証することができる弾性波伝搬特性の検証方法および検証装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る弾性波伝搬特性の検証方法は、岩盤または地盤の弾性波伝搬特性を容易に精度高く繰返し検証可能な方法であって、内部における弾性波速度がそれぞれ既知である複数の異なる種類の岩盤材料または地盤材料を繋ぎ合わせてなる試験体の内部に弾性波を発生させるステップと、発生した弾性波の直接波と反射波をセンサーで受振するステップと、受振した波形データに基づいて、弾性波伝搬特性を検証するステップとを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る弾性波伝搬特性の検証方法は、上述した発明において、弾性波伝搬特性が、反射波の極性反転と、岩盤性状変化または地盤性状変化の関係であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る弾性波伝搬特性の検証装置は、岩盤または地盤の弾性波伝搬特性を容易に精度高く繰返し検証可能な装置であって、内部における弾性波速度がそれぞれ既知である複数の異なる種類の岩盤材料または地盤材料を繋ぎ合わせてなる試験体と、試験体の内部に弾性波を発生させる発生手段と、発生した弾性波の直接波と反射波を受振するセンサーと、受振した波形データに基づいて、弾性波伝搬特性を検証する検証手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る弾性波伝搬特性の検証装置は、上述した発明において、弾性波伝搬特性が、反射波の極性反転と、岩盤性状変化または地盤性状変化の関係であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る弾性波伝搬特性の検証方法によれば、岩盤または地盤の弾性波伝搬特性を容易に精度高く繰返し検証可能な方法であって、内部における弾性波速度がそれぞれ既知である複数の異なる種類の岩盤材料または地盤材料を繋ぎ合わせてなる試験体の内部に弾性波を発生させるステップと、発生した弾性波の直接波と反射波をセンサーで受振するステップと、受振した波形データに基づいて、弾性波伝搬特性を検証するステップとを備えるので、例えば反射波の極性反転と岩盤性状の関係のような弾性波伝搬特性を容易に検証することができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係る弾性波伝搬特性の検証方法によれば、弾性波伝搬特性が、反射波の極性反転と、岩盤性状変化または地盤性状変化の関係であるので、反射波の極性反転と岩盤性状の関係を容易に検証することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る弾性波伝搬特性の検証装置によれば、岩盤または地盤の弾性波伝搬特性を容易に精度高く繰返し検証可能な装置であって、内部における弾性波速度がそれぞれ既知である複数の異なる種類の岩盤材料または地盤材料を繋ぎ合わせてなる試験体と、試験体の内部に弾性波を発生させる発生手段と、発生した弾性波の直接波と反射波を受振するセンサーと、受振した波形データに基づいて、弾性波伝搬特性を検証する検証手段とを備えるので、例えば反射波の極性反転と岩盤性状の関係のような弾性波伝搬特性を容易に検証することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る弾性波伝搬特性の検証装置によれば、弾性波伝搬特性が、反射波の極性反転と、岩盤性状変化または地盤性状変化の関係であるので、反射波の極性反転と岩盤性状の関係を容易に検証することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係る弾性波伝搬特性の検証方法および検証装置の実施の形態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る弾性波伝搬特性の検証方法および検証装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
図1は、試験用杭を用いた弾性波伝搬特性の検証試験の概念図である。この図に示すように、本実施の形態に係る弾性波伝搬特性の検証装置10は、岩盤または地盤の弾性波伝搬特性を検証するための装置であって、試験用杭12(試験体)の内部に弾性波を発生させるハンマー14(発生手段)と、発生した弾性波の直接波と反射波を受振する受振センサー16と、受振した波形データを収録するデータ収録部18と、受振した波形データに基づいて、弾性波伝搬特性を検証する検証手段20とを備える。
【0018】
試験用杭12は、複数の異なる岩種からなる円柱状体22A~22D(岩盤材料または地盤材料)を柱軸方向に繋ぎ合わせた円柱状の試験体である。この試験用杭12は、内部を伝搬する弾性波の速度(弾性波速度)が既知の岩種を組み合わせて製作している。なお、本実施の形態の試験用杭12は、4種類の岩種を組み合わせた杭を想定し、杭12の全長は例えば4m程度、杭12を構成する各岩種の円柱状体22A~22Dの長さは1m程度を想定しているが、本発明はこれに限るものではない。また、試験用杭12の形状は円柱状に限定されるものではなく、他の形状でも構わない。
【0019】
この試験用杭12を用いた計測手順について説明する。まず、受振センサー16を試験用杭12の端面に設置する。受振センサー16には、例えば速度センサー、加速度センサーなど弾性波の波形データを検出可能なセンサーを用いることができる。受振センサー16は、例えばビス止めや両面テープ等で試験用杭12の端面に設置する。続いて、受振センサー16とデータ収録部18の間をセンサーケーブル24で結線する。データ収録部18は、例えば、パソコン、ロガーなどにより構成することができる。
【0020】
計測準備が整ったら、試験用杭12の端面をハンマー14で打撃する。打撃により発生した弾性波の直接波と、岩種の境界や打撃位置の試験用杭12の反対側の端面等から反射してくる反射波の波形データを受振センサー16で受振する。受振した波形データはセンサーケーブル24を介してデータ収録部18に収録される。検証手段20は、データ収録部18に収録された波形データを用いて弾性波伝搬特性を検証する。本実施の形態で検証する弾性波伝搬特性は、反射波の極性反転と岩盤性状の関係を想定するが、本発明はこれに限るものではない。検証手段20は、例えば、パソコンに備わる演算装置などを用いて構成することができる。
【0021】
本実施の形態によれば、弾性波伝搬特性、特に反射波の極性反転と岩盤性状の関係を、試験用杭12と受振センサー16を用いて、比較的低コストで正確かつ容易に何度でも検証することができる。反射波の極性変化だけでなく、波形の振幅値の減衰率なども何度も容易に検証することができる。また、本実施の形態を適用すれば、従来の杭検査のような、ひび割れ位置の精度の検証も可能である。また、地山の弾性波探査だけでなく、岩盤・地盤を対象に広く有用なデータを提供することができる。
【0022】
以上説明したように、本発明に係る弾性波伝搬特性の検証方法によれば、岩盤または地盤の弾性波伝搬特性を検証するための方法であって、内部における弾性波速度がそれぞれ既知である複数の異なる種類の岩盤材料または地盤材料を繋ぎ合わせてなる試験体の内部に弾性波を発生させるステップと、発生した弾性波の直接波と反射波をセンサーで受振するステップと、受振した波形データに基づいて、弾性波伝搬特性を検証するステップとを備えるので、例えば反射波の極性反転と岩盤性状の関係のような弾性波伝搬特性を容易に検証することができる。
【0023】
また、本発明に係る弾性波伝搬特性の検証方法によれば、弾性波伝搬特性が、反射波の極性反転と、岩盤性状変化または地盤性状変化の関係であるので、反射波の極性反転と岩盤性状の関係を容易に検証することができる。
【0024】
また、本発明に係る弾性波伝搬特性の検証装置によれば、岩盤または地盤の弾性波伝搬特性を検証するための装置であって、内部における弾性波速度がそれぞれ既知である複数の異なる種類の岩盤材料または地盤材料を繋ぎ合わせてなる試験体と、試験体の内部に弾性波を発生させる発生手段と、発生した弾性波の直接波と反射波を受振するセンサーと、受振した波形データに基づいて、弾性波伝搬特性を検証する検証手段とを備えるので、例えば反射波の極性反転と岩盤性状の関係のような弾性波伝搬特性を容易に検証することができる。
【0025】
また、本発明に係る弾性波伝搬特性の検証装置によれば、弾性波伝搬特性が、反射波の極性反転と、岩盤性状変化または地盤性状変化の関係であるので、反射波の極性反転と岩盤性状の関係を容易に検証することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように、本発明に係る弾性波伝搬特性の検証方法および検証装置は、地盤・岩盤における弾性波探査に有用であり、特に、反射波の極性反転と岩盤性状の関係を容易に検証するのに適している。
【符号の説明】
【0027】
10 弾性波伝搬特性の検証装置
12 試験用杭(試験体)
14 ハンマー(発生手段)
16 受振センサー(センサー)
18 データ収録部
20 検証手段
22A~22D 円柱状体(岩盤材料または地盤材料)
24 センサーケーブル