(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】三脚及び測量装置
(51)【国際特許分類】
F16M 11/20 20060101AFI20240606BHJP
F16M 11/22 20060101ALI20240606BHJP
F16M 11/38 20060101ALI20240606BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
F16M11/20 Z
F16M11/22 Z
F16M11/38 Z
G01C15/00 105R
(21)【出願番号】P 2020022834
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083563
【氏名又は名称】三好 祥二
(72)【発明者】
【氏名】大友 文夫
(72)【発明者】
【氏名】大佛 一毅
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
(72)【発明者】
【氏名】桐生 徳康
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04348034(US,A)
【文献】特開2019-109154(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0131303(US,A1)
【文献】米国特許第03863945(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16M 11/00 - 11/42
G01C 15/00 - 15/14
G03B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主脚と、該主脚に設けられた連結具と、該連結具に設けられ、上端部を中心に前記主脚に対して近接離反する方向に回転自在な2つの補助脚と、前記主脚の下部に該主脚を挟んで設けられた2つの車輪とを具備し、前記主脚と前記補助脚とを閉塞した状態で、前記主脚と前記補助脚とを前記主脚方向に傾斜させることで、前記車輪のみを接地可能とする様構成され、
前記補助脚を所定角度開放した際には、前記主脚の下端と前記補助脚の下端のみが設置面と接触し、該設置面と前記車輪との間には隙間が形成される様構成された三脚。
【請求項2】
主脚と、該主脚に設けられた連結具と、該連結具に設けられ、上端部を中心に前記主脚に対して近接離反する方向に回転自在な2つの補助脚と、前記主脚の下部に該主脚を挟んで設けられた2つの車輪とを具備し、前記主脚と前記補助脚とを閉塞した状態で、前記主脚と前記補助脚とを前記主脚方向に傾斜させることで、前記車輪のみを接地可能とする様構成され、
前記主脚と前記補助脚を閉塞し、前記主脚を
設置面に対して垂直とした状態では、該主脚の下端が前記補助脚の下端及び前記車輪の下端よりも下方に位置する様構成された三脚。
【請求項3】
前記車輪の車軸は、前記主脚の軸心に対して前記補助脚から離反する方向に偏心する様構成された請求項1又は請求項2に記載の三脚。
【請求項4】
前記車輪の車軸の軸心は、前記主脚の軸心と直交する様構成された請求項1又は請求項2に記載の三脚。
【請求項5】
各車輪は平行であり、各車輪間の距離は前記補助脚を閉塞した際の各補助脚間の距離と略同等となる様に構成された請求項1~請求項4のうちのいずれか1項に記載の三脚。
【請求項6】
前記主脚の中途部には主ガイド部材が設けられ、前記補助脚の中途部には副ガイド部材が設けられ、前記主ガイド部材と前記副ガイド部材とが規制部材により連結された請求項1~請求項5のうちのいずれか1項に記載の三脚。
【請求項7】
前記主脚の中途部に設けられた補助脚固定部材を更に具備し、該補助脚固定部材は前記補助脚を保持可能な収納部を有し、前記補助脚を閉塞した際には該補助脚が前記収納部に保持される様構成された請求項1~請求項6のうちのいずれか1項に記載の三脚。
【請求項8】
請求項1~請求項7のうちのいずれか1項に記載の三脚と、該三脚の上端に設けられた固定具と、前記主脚の下端から既知の距離と該主脚の軸心に対して既知の角度で前記固定具に設けられ、基準光軸を有する測量装置本体とを具備し、該測量装置本体は、測距光を射出し測定対象物迄の距離を測定する測距部と、前記測距光の射出方向を検出する射出方向検出部と、水平に対する前記測量装置本体の傾斜を検出する姿勢検出器と、前記測距部の測距結果と前記射出方向検出部の測定結果と前記姿勢検出器の検出結果に基づき、基準点を基準とした所定の測定点の3次元座標を演算する演算制御部とを有する測量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単に設置可能な三脚及び測量装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、測量装置は小型化や軽量化が進められている。又、測定方法についても、多くの測定点を移動しながら短時間で測定することが求められている。
【0003】
然し乍ら、測量装置を基準点上に設置する場合、主に三脚を用いて設置されるが、測量装置は三脚上で水平に整準されなければならない。又、測量装置の機械中心が前記基準点を通過する鉛直線上に位置する様、垂球や求心望遠鏡を用いて位置決めしなければならない。更に、基準点から前記機械中心迄の高さ(測量装置の器械高)も測定されなければならない。この為、測量装置の設置作業は、煩雑で時間と熟練が必要とされた。
【0004】
又、三脚は木製やアルミ製であり、重量を有し且つ構造も堅牢なものとなっている為、移動が困難である。更に測量装置に大容量の電池や高性能な演算処理系等を搭載すると、重量が増し、測量装置の移動が更に困難となるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-90770号公報
【文献】特開2016-161411号公報
【文献】特開2016-151422号公報
【文献】特開2017-106813号公報
【文献】特開2019-15601号公報
【文献】特開2016-151423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、測量装置を容易に搬送可能な三脚及び測量装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、主脚と、該主脚に設けられた連結具と、該連結具に設けられ、上端部を中心に前記主脚に対して近接離反する方向に回転自在な2つの補助脚と、前記主脚の下部に該主脚を挟んで設けられた2つの車輪とを具備し、前記主脚と前記補助脚とを閉塞した状態で、前記主脚と前記補助脚とを前記主脚方向に傾斜させることで、前記車輪のみを接地可能とする様構成された三脚に係るものである。
【0008】
又本発明は、前記車輪の車軸は、前記主脚の軸心に対して前記補助脚から離反する方向に偏心する様構成された三脚に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記車輪の車軸の軸心は、前記主脚の軸心と直交する様構成された三脚に係るものである。
【0010】
又本発明は、前記補助脚を所定角度開放した際には、前記主脚の下端と前記補助脚の下端のみが設置面と接触し、該設置面と前記車輪との間には隙間が形成される様構成された三脚に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記主脚の下端が前記補助脚の下端及び前記車輪の下端よりも下方に位置する様構成された三脚に係るものである。
【0012】
又本発明は、各車輪は平行であり、各車輪間の距離は前記補助脚を閉塞した際の各補助脚間の距離と略同等となる様に構成された三脚に係るものである。
【0013】
又本発明は、前記主脚の中途部には主ガイド部材が設けられ、前記補助脚の中途部には副ガイド部材が設けられ、前記主ガイド部材と前記副ガイド部材とが規制部材により連結された三脚に係るものである。
【0014】
又本発明は、前記主脚の中途部に設けられた補助脚固定部材を更に具備し、該補助脚固定部材は前記補助脚を保持可能な収納部を有し、前記補助脚を閉塞した際には該補助脚が前記収納部に保持される様構成された三脚に係るものである。
【0015】
更に又本発明は、上記した三脚と、該三脚の上端に設けられた固定具と、前記主脚の下端から既知の距離と該主脚の軸心に対して既知の角度で前記固定具に設けられ、基準光軸を有する測量装置本体とを具備し、該測量装置本体は、測距光を射出し測定対象物迄の距離を測定する測距部と、前記測距光の射出方向を検出する射出方向検出部と、水平に対する前記測量装置本体の傾斜を検出する姿勢検出器とを具備し、前記測距部の測距結果と前記射出方向検出部の測定結果と前記姿勢検出器の検出結果に基づき、基準点を基準とした所定の測定点の3次元座標を演算する演算制御部とを有する測量装置に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、主脚と、該主脚に設けられた連結具と、該連結具に設けられ、上端部を中心に前記主脚に対して近接離反する方向に回転自在な2つの補助脚と、前記主脚の下部に該主脚を挟んで設けられた2つの車輪とを具備し、前記主脚と前記補助脚とを閉塞した状態で、前記主脚と前記補助脚とを前記主脚方向に傾斜させることで、前記車輪のみを接地可能とする様構成されたので、前記主脚を大きく傾けることなく前記車輪のみを設置面に接触させることができ、容易に搬送することができる。
【0017】
又本発明によれば、上記した三脚と、該三脚の上端に設けられた固定具と、前記主脚の下端から既知の距離と該主脚の軸心に対して既知の角度で前記固定具に設けられ、基準光軸を有する測量装置本体とを具備し、該測量装置本体は、測距光を射出し測定対象物迄の距離を測定する測距部と、前記測距光の射出方向を検出する射出方向検出部と、水平に対する前記測量装置本体の傾斜を検出する姿勢検出器とを具備し、前記測距部の測距結果と前記射出方向検出部の測定結果と前記姿勢検出器の検出結果に基づき、基準点を基準とした所定の測定点の3次元座標を演算する演算制御部とを有し、前記三脚を大きく傾けることなく車輪のみを設置面に接触させることができるので、容易に前記測量装置本体を搬送することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施例に係る測量装置を示す概略図である。
【
図2】(A)は三脚を閉とした場合を示す正面図であり、(B)は(A)のX矢視図である。
【
図3】(A)は三脚を閉とし、主脚を垂直とした場合を示す側面図であり、(B)は(A)の状態から車輪が設置面と接触する迄主脚を傾斜させた場合を示す側面図であり、(C)は(B)の状態から主脚の下端が設置面から離反する迄主脚を傾斜させた場合を示す側面図である。
【
図5】(A)は三脚を閉とし、主脚を垂直とした場合を示す側面図であり、(B)は(A)の状態から補助脚を開放した場合を示す側面図であり、(C)は(B)の状態から主脚の下端と補助脚の下端をそれぞれ設置面に接触させた状態を示す側面図である。
【
図6】本発明の第1の実施例に係る測量装置本体を示す概略ブロック図である。
【
図7】(A)~(D)は、作業者による測量装置の搬送を説明する説明図である。
【
図8】本発明の第2の実施例に係る三脚の側面図であり、(A)は三脚を閉とし、主脚を垂直とした場合を示し、(B)は(A)の状態から車輪が設置面と接触する迄主脚を傾斜させた場合を示し、(C)は(B)の状態から主脚の下端が設置面から離反する迄主脚を傾斜させた場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の第1の実施例を説明する。
【0020】
図1、
図2は、本発明の実施例に係る測量装置を示している。
【0021】
測量装置1は、三脚2と、該三脚2の上端に設けられて固定具3と、該固定具3を介して前記三脚2に固定的に取付けられた測量装置本体4とを有している。
【0022】
前記三脚2は、主脚5と、該主脚5と連結具6を介して連結された2本の補助脚7とを有している。前記主脚5の下端には石突き8が設けられ、前記主脚5の上端には前記固定具3が設けられる。更に、前記主脚5には、該主脚5に沿って摺動する主ガイド部材9が設けられている。尚、前記主脚5、前記補助脚7、前記主ガイド部材9の形状については適宜選択できるが、本実施例では円筒形状が用いられている。
【0023】
前記石突き8はテーパ形状であり、下端が尖端となっている。前記石突き8の下端は前記主脚5の軸心と合致し、前記石突き8の下端と前記主脚5の上端との位置関係(水平方向及び垂直方向の距離)は既知となっている。又、前記石突き8の下端と前記固定具3との位置関係は既知であり、前記石突き8の下端と前記固定具3に固定的に取付けられた前記測量装置本体4の機械中心(測定の基準となる点)との位置関係も既知となっている。即ち、該測量装置本体4は、前記主脚5の軸心に対して既知の角度で設けられる。
【0024】
前記補助脚7は、前記連結具6に上端部を中心に回転自在に連結され、前記主脚5に対して近接離反方向に所定の角度回転可能となっている。又、各補助脚7は所要の角度を成して放射状に広がる様に構成される。更に、各補助脚7は、所定位置に固定的に設けられた副ガイド部材11を有している。尚、該副ガイド部材11の形状については、前記補助脚7の使用状態に合わせて適宜選択されるが、本実施例では円筒形状が用いられている。
【0025】
前記主ガイド部材9は、棒状の規制部材12を介して各副ガイド部材11と連結され、前記規制部材12は前記主ガイド部材9と前記副ガイド部材11に対して回転可能となっている。前記補助脚7を閉じる際には、前記主ガイド部材9が上方に向って前記主脚5に沿って摺動する。又、前記補助脚7を開く際には、前記主ガイド部材9が下方に向って前記主脚に沿って摺動する。
【0026】
この時、前記主ガイド部材9と副ガイド部材11とが前記規制部材12を介して連結されているので、前記主脚5に対する前記補助脚7の離反方向への所定角度以上の回転が前記規制部材12によって規制される。即ち、該規制部材12により、前記三脚2を容易に一定の開度とすることができる。尚、前記規制部材12は、棒状でなくてもよい。例えば、前記規制部材12を鎖状や紐状としてもよい。この場合、前記主ガイド部材9は前記主脚5に対して固定的に設けられる。
【0027】
又、前記主脚5の下部には、車輪取付け部材13が設けられている。該車輪取付け部材13は、例えば2つの前記補助脚7が成す角度の2等分線上であり、且つ該補助脚7が離反する方向とは逆方向に突出している。又、前記車輪取付け部材13の先端部には車軸14が設けられ、該車軸14の両端には、それぞれ車輪15が回転自在に取付けられている。即ち、前記車輪取付け部材13は、前記車輪15が前記補助脚7と干渉しない方向に突出している。
【0028】
上記した様に、前記車輪15は前記主脚5を挟んで設けられ、前記車軸14(回転中心)は、前記主脚5の軸心に対して前記補助脚7から離反する方向に偏心している。又、2つの前記車輪15は同心であり、平行となる様に設けられている。更に、2つの前記車輪15間の距離は、例えば前記三脚2を閉塞した際の前記補助脚7間の距離と略同等であり、前記三脚2を安定して移動可能な最小半径となっている。
【0029】
前記測量装置本体4は、光波距離計としての測距部17(後述)、測定方向撮像部18(後述)とを有している。前記測距部17の光学系の基準光軸は基準光軸Oである。前記測定方向撮像部18の光軸(以下、撮像光軸19)は、前記基準光軸Oに対して所定角(例えば6°)上方に傾斜しており、又前記測定方向撮像部18と前記測距部17との距離及び位置関係は既知となっている。該測距部17と前記測定方向撮像部18は前記測量装置本体4の筐体内部に収納されている。
【0030】
次に、
図2~
図5に於いて、前記三脚2について更に説明する。
【0031】
前記主脚5の中途部には、補助脚固定部材21が設けられている。該補助脚固定部材21は、前記補助脚7が離反する方向に所要の角度で延出する腕部22を有し、該腕部22の先端には半円状の収納部23が形成されている。
【0032】
前記補助脚7を閉じた際には、該補助脚7が前記収納部23に収納される様に構成される。前記補助脚7が前記収納部23に収納された際には、磁石等所定の手段で前記補助脚7が前記補助脚固定部材21で保持される様構成される。或は、前記収納部23を樹脂等屈撓可能な材質とし、前記補助脚7が前記収納部23を撓ませつつ嵌合する構成であってもよい。
【0033】
前記石突き8の下端は、前記補助脚7の下端や前記車輪15の下端よりも下方に位置している。即ち、
図2(A)や
図3(A)に示される様に、前記主脚5を垂直とした状態では、設置面と前記補助脚7の下端との間、及び設置面と前記車輪15の下端との間に、所定の距離Aだけ隙間が形成される。尚、
図2(A)中では、前記補助脚7の下端の位置と前記車輪15の下端の位置とを同等としているが、それぞれの位置を異ならせてもよい。
【0034】
又、
図3(B)に示される様に、前記補助脚7を閉じた状態で、前記車輪15の偏心方向(主脚方向)に前記主脚5を所定角度Cだけ傾斜させた際には、前記石突き8と2つの前記車輪15とが設置面に接触する。この時、前記補助脚7の下端と設置面との間には、所定の大きさの隙間が形成される様になっている。
【0035】
更に、
図3(C)に示される様に、
図3(B)の状態から前記車輪15の偏心方向に前記主脚を更に所定角度Dだけ傾斜させた際には、前記主脚5と前記補助脚7は前記車輪15の設置点を中心に回転する。これにより、前記石突き8が設置面から離反し、前記車輪15のみが設置面と接触する様になっている。尚、この場合も、前記補助脚7と設置面との間に所定の大きさの隙間が形成される。
【0036】
前記主脚5の軸心と鉛直との成す角度を所定角度Cよりも小さくし、前記車輪15を設置面から離反させる。又、前記車輪15を設置面から離反させた状態で(
図5(A)参照)、前記車輪15の偏心方向の反対側に所定角度Eだけ前記補助脚7(
図5(B)参照)、所定角度Fだけ前記主脚5を傾斜させる(
図5(C)参照)。この時、前記石突き8の下端と2本の前記補助脚7の下端とが設置面に接触し、前記三脚2が3点支持にて自立する。尚、
図4に示される様に、前記三脚2を自立させた際には、前記車輪15と設置面との間に所定の距離Bだけ隙間が形成され、前記車輪15が設置面から離反する様になっている。
【0037】
図6を参照して、前記測量装置本体4の概略構成を説明する。尚、前記測量装置本体4としては、例えば特許文献1に開示されたものを使用することができる。
【0038】
該測量装置本体4は、前記測距部17、演算制御部24、記憶部25、画像処理部26、通信部27、光軸偏向部28、姿勢検出器29、前記測定方向撮像部18、射出方向検出部31を具備し、これらは筐体32に収納され、一体化されている。
【0039】
前記基準光軸O上に、前記測距部17、前記光軸偏向部28が配設される。前記測距部17は、前記光軸偏向部28の中心を通過する測距光軸33を有している。前記測距部17は、該測距光軸33上にレーザ光線として測距光34を発し、前記測距光軸33上から入射する反射測距光35を受光し、該反射測距光35に基づき測定対象物の測定を行う。尚、前記測距部17は光波距離計として機能する。又、該測距部17で得られた測距データは前記記憶部25に格納される。
【0040】
前記光軸偏向部28は、前記測距光軸33を偏向し、前記測距光34を測定対象物に視準させる。前記光軸偏向部28が前記測距光軸33を偏向しない状態では、前記測距光軸33と前記基準光軸Oとは合致する。
【0041】
レーザ光線としては、連続光或はパルス光、或は特許文献2に示される断続変調測距光(バースト光)のいずれが用いられてもよい。尚、パルス光及び断続変調光を総称してパルス光と称する。
【0042】
前記通信部27は、前記測定方向撮像部18で取得した画像データ、前記画像処理部26で処理された画像データ、前記測距部17が取得した測距データ、前記射出方向検出部31が取得した測角データをスマートフォンやタブレット等の端末装置(図示せず)に送信可能となっている。
【0043】
前記記憶部25には、撮像の制御プログラム、画像処理プログラム、測距プログラム、表示プログラム、通信プログラム、前記姿勢検出器29からの姿勢検出結果に基づき前記主脚5の傾斜角、傾斜方向を演算し、更に傾斜角の鉛直成分(前記主脚5の測定対象物に対する前後方向の傾斜角)、傾斜角の水平成分(前記主脚5の測定対象物に対する左右方向の傾斜角)を演算する傾斜角演算プログラム、演算した傾斜に基づき撮影した画像の向きを補正する補正プログラム、測距を実行する為の測定プログラム、前記光軸偏向部28の偏向作動を制御する為の偏向制御プログラム、各種演算を実行する演算プログラム等の各種プログラムが格納される。又、前記記憶部25には、測距データ、測角データ、画像データ等の各種データが格納される。
【0044】
前記演算制御部24は、前記測量装置本体4の作動状態に応じて、前記各種プログラムを展開、実行して前記測距部17の制御、前記光軸偏向部28の制御、前記測定方向撮像部18の制御等を行い、測距を実行する。尚、前記演算制御部24としては、本装置に特化したCPU、或は汎用CPUが用いられる。
【0045】
又、前記記憶部25としては、例えば、磁気記憶装置としてのHDD、半導体記憶装置としての内蔵メモリー、メモリカード、USBメモリー等種々の記憶手段が用いられる。該記憶部25は、前記筐体32に対して着脱可能であってもよい。或は、前記記憶部25は、所望の通信手段を介して外部記憶装置或は外部データ処理装置にデータを送出可能としてもよい。
【0046】
前記光軸偏向部28について説明する。尚、該光軸偏向部28については、例えば特許文献3~特許文献5に開示されたもの等を使用することができる。
【0047】
該光軸偏向部28は、一対の光学プリズム36,37を具備する。該光学プリズム36,37は、それぞれ同径の円板形であり、前記測距光軸33上に該測距光軸33と直交して同心に配置され、所定間隔で平行に配置されている。前記光学プリズム36,37の相対回転、該光学プリズム36,37の一体回転を制御することで、0°から最大偏角迄の任意の角度に前記測距光軸33を偏向することができる。
【0048】
又、前記測距光34を連続して照射しつつ、前記光学プリズム36,37を連続的に駆動し、連続的に偏向することで、前記測距光34を所定のパターンで2次元スキャンさせることができる。
【0049】
前記射出方向検出部31は、前記光学プリズム36,37の相対回転角、該光学プリズム36,37の一体回転角を検出し、前記測距光軸33の偏向方向(射出方向)をリアルタイムで検出する。
【0050】
射出方向検出結果(測角結果)は、測距結果に関連付けられて前記演算制御部24に入力され、更に前記記憶部25に格納される。尚、前記測距光34がバースト発光される場合は、断続測距光毎に測距、測角が実行される。
【0051】
前記演算制御部24は、前記測距光34の偏角、射出方向から、前記基準光軸Oに対する測定点の水平角、鉛直角を演算する。更に、前記演算制御部24は、測定点についての水平角、鉛直角を前記測距データに関連付けることで、前記測定点の3次元データ(3次元座標)を演算することができる。而して、前記測量装置本体4は、トータルステーションとして機能する。又、前記測量装置1をトータルステーションとして用いることで、前記撮像光軸19の位置を変更することなく測定対象物の視準、測距が可能となるので作業性が向上する。
【0052】
前記姿勢検出器29は、前記測量装置本体4の水平、又は鉛直に対する傾斜角を検出し、検出結果は前記演算制御部24に入力される。尚、前記姿勢検出器29としては、特許文献6に開示された姿勢検出装置を使用することができる。
【0053】
前記演算制御部24は、前記姿勢検出器29からの検出結果から前記主脚5の前後方向の倒れ角(測定対象物に対して近接離反する方向の倒れ角)及び前記主脚5の左右方向の倒れ角を演算する。前後方向の倒れ角は、前記基準光軸Oの水平に対する傾斜角として現れ、左右方向の倒れ角は、前記測定方向撮像部18で取得する画像の傾き(回転)として現れる。
【0054】
前記演算制御部24は、前記倒れ角と前記光軸偏向部28による偏角により、前記測距光軸33の水平に対する傾斜角を演算する。又、前記画像処理部26は、前記画像の傾きに基づき、鉛直画像を作成する。作成された鉛直画像は、前記記憶部25に格納されるか、前記通信部27を介して端末装置へ送信される。
【0055】
前記測定方向撮像部18は、前記光学プリズム36,37による最大偏角θ/2(例えば±30°)と略等しい、例えば50°~60°の画角を有するカメラである。前記撮像光軸19と前記測距光軸33及び前記基準光軸Oとの関係は既知であり、又各光軸間の距離も既知の値となっている。
【0056】
又、前記測定方向撮像部18は、静止画像又は連続画像或は動画像がリアルタイムで取得可能である。前記測定方向撮像部18で取得された画像(観察画像)は、操作部(図示せず)に送信される。作業者は前記操作部に表示された前記観察画像を観察して測定作業を実行できる。前記観察画像の中心は、前記撮像光軸19と合致し、前記基準光軸Oは前記撮像光軸19と既知の関係に基づき前記観察画像の中心に対して所定の画角ずれた位置となる。
【0057】
前記演算制御部24は、前記測定方向撮像部18の撮像を制御する。前記演算制御部24は、前記測定方向撮像部18が前記動画像、又は連続画像を撮像する場合に、該動画像、又は連続画像を構成するフレーム画像を取得するタイミングと前記測量装置本体4でスキャンし測距するタイミングとの同期を取っている。又、前記演算制御部24は、前記測定方向撮像部18が静止画像を取得する場合に、該静止画像を取得するタイミングと、前記測量装置本体4でスキャンするタイミングとを同期させる。前記演算制御部24は画像と測定データ(測距データ、測角データ)との関連付けも実行する。
【0058】
前記測定方向撮像部18の撮像素子(図示せず)は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記撮像光軸19を原点とした画素座標を有し、該画素座標によって画像素子上での位置が特定される。又、前記撮像光軸19と前記基準光軸Oとの関係(距離)が既知であるので、前記測距部17による測定位置と前記撮像素子上での位置(画素)との相互関連付けが可能である。前記撮像素子からの画像信号と画素に関係付けられた座標情報は、前記演算制御部24を介して前記画像処理部26に入力される。
【0059】
前記光軸偏向部28による偏向作用、スキャン作用について説明する。
【0060】
該光軸偏向部28は、前記光学プリズム36と前記光学プリズム37との回転位置の組合わせにより、射出する前記測距光34の偏向方向、偏角を任意に変更することができる。
【0061】
従って、前記測距部17よりレーザ光線を発光させつつ、偏向角を変更し、更に前記光軸偏向部28を回転させれば、前記測距光34を任意の2次元パターンでスキャンさせることができる。
【0062】
次に、
図7を参照し、前記測量装置1の測定について説明する。尚、以下の測定は、前記記憶部25に格納されたプログラムを前記演算制御部24が実行することでなされる。
【0063】
前記補助脚7が開放された状態で設置されていた場合(
図7(A)参照)、先ず前記主脚5を傾斜させて設置面から前記補助脚7を離反させた後、該補助脚7を閉塞して該補助脚7を前記補助脚固定部材21で固定する(
図7(B)参照)。
【0064】
前記補助脚7が閉塞されると、次に設置面から前記石突き8が離反する様、前記主脚5を更に傾斜させ、前記車輪15のみが設置面と接触した状態とする(
図7(C)参照)。この状態で、作業者は前記測量装置1を押す又は引いて基準点Rの概略位置迄移動する。
【0065】
この時、前記車輪15間の距離は、閉塞した際の前記補助脚7間の距離と略同等となっているので、移動中に前記補助脚7の重量で前記三脚2が進行方向に対して左右方向に倒れることがなく、安定して移動することができる。又、前記車輪15間の距離は、前記三脚2を安定して移動可能な最小半径となっているので、容易に旋回させることができ、前記三脚2の向きを容易に変更することができる(
図7(D)参照)。
【0066】
前記測量装置1を基準点Rの概略位置迄移動させると、前記基準光軸Oを測定対象物に向けると共に、前記石突き8の下端が基準点Rと合致する様、前記主脚5を傾斜させる(
図7(B)参照)。その後、該主脚5を更に傾斜させ、前記車輪15を設置面から離反させる。
【0067】
最後に、前記補助脚7を前記規制部材12で規制される迄開放し、前記主脚5を傾斜させて前記補助脚7を設置面に接触させる(
図7(A)参照)。この時、前記車輪15は設置面から離反した状態となる。これにより、前記測量装置1は、前記主脚5が所定の角度で傾斜した状態で、該主脚5と2つの前記補助脚7により3点支持される。尚、前記測定方向撮像部18は、作動状態で前記測量装置1の設置が行われる。
【0068】
該測量装置1が設置されると、前記測定方向撮像部18が取得した観察画像が端末装置に表示され、前記観察画像から前記基準光軸Oの方向、位置を確認することができる。この時の前記主脚5の傾斜角及び傾斜方向は、前記姿勢検出器29によって検出される。
【0069】
前記基準光軸Oの方向が確定した状態では、前記基準光軸Oを中心とする測定可能な偏向範囲を前記観察画像上で確認できる。作業者は、前記観察画像中の測定可能範囲の任意の点を測定点(測定対象物)として指定が可能である。測定点の指定で前記演算制御部24は前記光軸偏向部28を用いて前記測距光軸33を測定対象物に向ける。
【0070】
該測距光軸33が測定点に向けられ、前記測距光34が照射され、測定点の測定(測距、測角)が実行される。前記測距光34の方向、測距結果等は、端末装置に表示される。又、測定点の測定と同期して、前記測定方向撮像部18により画像が取得される。
【0071】
尚、前記測量装置1の水平に対する傾斜は前記姿勢検出器29によってリアルタイムで検出されている。従って、前記主脚5が傾斜していた場合であっても、前記姿勢検出器29の検出結果に基づき、前記測量装置1の測定結果を基準点Rを基準とした測定結果に補正することができる。即ち、前記演算制御部24は、前記基準点Rを基準とした測定点の3次元座標を演算することができる。而して、前記測量装置1を水平に調整する為の整準作業を省略することができる。
【0072】
上記説明では、前記測距光軸33を測定点に固定した状態で、トータルステーションと同様の作用で測定したが、前記測量装置1を2次元スキャンを行うレーザスキャナとしても測定することができる。
【0073】
又、観察画像と2次元スキャンで得られた軌跡に沿ったデータとを関連付けることで、画素毎に3次元データを有する画像が取得できる。
【0074】
前記測量装置1を再度移動させる際には、上記と同様、前記補助脚7を設置面から離反させ、該補助脚7を閉じた後、前記石突き8の下端を設置面から離反させ、前記車輪15を転動させて前記測量装置1を基準点Rから他の設置点に搬送する。搬送後は、前記石突き8の下端を他の設置点に合致させ、前記車輪15を離反させた状態で前記補助脚7を開き、前記主脚5と2つの前記補助脚7で3点支持する。
【0075】
上述の様に、第1の実施例では、前記主脚5に該主脚5を挟んで2つの前記車輪15を設け、該車輪15を介して前記測量装置1を移動させている。従って、大容量の電池や高性能な演算処理系を搭載し、前記測量装置本体4の重量が増大した場合であっても、或は前記三脚2自体が重量を有する場合であっても、作業者に負担を掛けることなく容易に前記測量装置1を移動させることができる。
【0076】
又、前記車輪15の前記車軸14は、前記主脚5の軸心に対して前記補助脚7から離反する方向に偏心している。従って、前記主脚5を必要以上に傾斜させることなく前記車輪15のみを設置面に接触させることができるので、前記測量装置1を移動させる際の作業性を向上させることができる。
【0077】
又、前記補助脚7を開放した際には、前記主脚5と前記補助脚7のみが設置面と接触し、前記車輪15は前記設置面から離れた状態となる。従って、前記測量装置1は前記主脚5と2つの前記補助脚7とで3点支持されるので、前記三脚2の安定性を向上させることができる。
【0078】
又、前記主脚5は前記補助脚7よりも長くなっている。即ち、前記石突き8の下端は前記補助脚7と前記車輪15の下端よりも下方に位置している。従って、前記主脚5を垂直又は略垂直とするだけで前記車輪15設置面から離反させることができるので、前記主脚5を必要以上に傾斜させることなく容易に前記補助脚7を開閉することができる。
【0079】
又、前記車輪15は平行であり、前記車輪15間の距離は、前記三脚2を安定して移動可能な最小半径となっている。従って、前記測量装置1の移動が容易になると共に、旋回半径が小さくなるので、前記三脚2に旋回機構を別途設ける必要がない。
【0080】
又、前記主脚5と前記補助脚7とは、前記規制部材12を介して連結され、前記補助脚7は前記規制部材12により所定角度以上は開かない様に構成されている。従って、前記補助脚7を常に同一の開度とすることができ、設置の際の作業性を向上させることができる。
【0081】
更に、前記主脚5に前記補助脚固定部材21を設け、前記補助脚7を閉じた際には、前記補助脚固定部材21により前記補助脚7を閉じた状態で保持できるので、搬送中等に意図せず前記補助脚7が開くのを防止できる。
【0082】
次に、
図8(A)~
図8(C)に於いて、本発明の第2の実施例について説明する。尚、
図8(A)~
図8(C)中、
図3(A)~
図3(C)中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0083】
第2の実施例では、主脚5の軸心と車軸14の軸心とが直交する様、車輪取付け部材13を介して車輪15が前記主脚5に設けられている。即ち、前記車軸14は前記主軸5の軸心に対して補助脚7から近接離反する方向には偏心していない。その他の構成については第1の実施例と同様である。
【0084】
第2の実施例の場合も、
図8(A)に示される様に、先ず前記主脚5を垂直とし、前記補助脚7を閉じ、設置面と前記補助脚7の下端との間、及び設置面と前記車輪15の下端との間に所定の距離Aだけ隙間が形成された状態とする。
【0085】
この状態から、
図8(B)に示される様に、前記主脚5を前記補助脚7に対して反対方向(主脚方向)に所定角度Gだけ傾斜させ、2つの前記車輪15を設置面に接触させる。その後、
図8(C)に示される様に、前記主脚5を所定角度Hだけ更に傾斜させることで、該主脚5と前記補助脚7が前記車輪15の設置点を中心に回転する。これにより、石突き8が設置面から離反し、前記車輪15のみが設置面と接触した状態とすることができる。
【0086】
第2の実施例に於いても、前記車輪15を介して測量装置1(
図1参照)を移動させているので、測量装置本体4(
図1参照)や三脚2が重量を有する場合であっても、作業者に負担を掛けることなく容易に前記測量装置1を移動させることができる。
【0087】
尚、所定角度Gは所定角度C(
図3参照)よりも大きくなっている。従って、前記車輪15のみを接地させた際に上方に延出する取手等を別途設け、該取手を介して前記三脚2を移動できる様にしてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 測量装置
2 三脚
4 測量装置本体
5 主脚
6 連結具
7 補助脚
8 石突き
9 主ガイド部材
11 副ガイド部材
12 規制部材
15 車輪