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特許7499047被覆材の厚さ計測方法、被覆材の厚さ計測システム、および、被覆材の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】被覆材の厚さ計測方法、被覆材の厚さ計測システム、および、被覆材の施工方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/06 20060101AFI20240606BHJP
   E04F 21/00 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
G01B11/06 Z
E04F21/00 A
G01B11/06 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020053369
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021152497
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-01-31
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】横田 克彦
(72)【発明者】
【氏名】兼久 定樹
(72)【発明者】
【氏名】西尾 一真
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-536976(JP,A)
【文献】特表2016-526121(JP,A)
【文献】特開2018-109543(JP,A)
【文献】特開2019-128175(JP,A)
【文献】特開2003-269922(JP,A)
【文献】特開2000-283756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
E04F 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の対象面に施工した被覆材の厚さを計測する方法であって、
前記被覆材が吹き付け工法によって施工される断熱材、耐火材または防水材であり、
前記被覆材の施工後に、前記被覆材の表面の三次元座標および前記対象面からの距離が既知である4点以上の基準三次元座標を含む施工形状を取得する工程と、
前記4点以上の基準三次元座標に基づいて前記対象面を推定した推定対象面形状を算出する工程と、
前記被覆材の表面の三次元座標および前記推定対象面形状に基づいて前記被覆材の厚さを算出する工程とを有し、
前記推定対象面形状は、前記4点以上の基準三次元座標に基づいて算出した複数の仮想平面からなり、
前記被覆材の厚さは、前記被覆材の表面の各点の厚さを当該各点の一番近い前記仮想平面からの変位に基づいて算出することにより算出される、
被覆材の厚さ計測方法。
【請求項2】
前記各仮想平面は、前記4点以上の基準三次元座標のうちの少なくとも3点の基準三次元座標に基づいて算出される、
請求項1に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項3】
前記複数の仮想平面を領域が重ならないように算出する、
請求項1または2に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項4】
前記施工形状を取得する工程の前に、前記被覆材上または前記被覆材の近傍に基準マーカーを設置する工程を有し、
前記基準三次元座標は、前記基準マーカー上の三次元座標である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項5】
前記被覆材の厚さの分布を色または濃淡で示した被覆材画像を表示する工程を有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項6】
前記被覆材の厚さが所定の範囲から外れている施工不良箇所の有無を判断する工程を有する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項7】
前記被覆材の厚さが所定の範囲から外れている施工不良箇所の有無を判断する工程と、
前記施工不良箇所を、前記被覆材画像に表示する工程とを有する、
請求項5に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項8】
前記被覆材は吹付けウレタンフォーム断熱材である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の被覆材の厚さ計測方法。
【請求項9】
建築物の対象面に施工した被覆材の厚さを計測するシステムであって、
前記被覆材が吹き付け工法によって施工される断熱材、耐火材または防水材であり、
三次元計測装置と、
データ処理部とを備え、
前記三次元計測装置は、前記被覆材の施工後に、前記被覆材の表面の三次元座標および前記対象面からの距離が既知である4点以上の基準三次元座標を含む施工形状を取得し、
前記データ処理部は、前記4点以上の基準三次元座標に基づいて前記対象面を推定した推定対象面形状を算出し、前記推定対象面形状は、前記4点以上の基準三次元座標に基づいて算出した複数の仮想平面からなり、前記被覆材の表面の三次元座標および前記推定対象面形状に基づいて、前記被覆材の表面の各点の厚さを当該各点の一番近い前記仮想平面からの変位に基づいて算出することにより、前記被覆材の厚さを算出する、
被覆材の厚さ計測システム。
【請求項10】
建築物の対象面に被覆材を施工する方法であって、
前記被覆材が吹き付け工法によって施工される断熱材、耐火材または防水材であり、前記対象面に被覆材を施工する工程と、
施工後の前記被覆材の表面の三次元座標及び前記対象面からの距離が既知である4点以上の基準三次元座標を取得する工程と、
前記4点以上の基準三次元座標に基づいて前記対象面を推定した推定対象面形状を算出する工程と、
前記被覆材の表面の三次元座標および前記推定対象面形状に基づいて前記被覆材の厚さを算出する工程と、
前記被覆材の厚さが所定の範囲から外れている施工不良箇所の有無を判断する工程とを有し、
前記推定対象面形状は、前記4点以上の基準三次元座標に基づいて算出した複数の仮想平面からなり、
前記被覆材の厚さは、前記被覆材の表面の各点の厚さを当該各点の一番近い前記仮想平面からの変位に基づいて算出することにより算出される、
被覆材の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹付け工法等によって建築物の壁や床等の対象面に施工される被覆材の厚さ計測方法、被覆材の厚さ計測システム、および、被覆材の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の壁等に断熱材を設ける方法として、現場で作業者が発泡機を用いて、建築物の壁部、床部、屋根部や天井部等の対象面に、主原料に発泡材を加えた発泡原液を直接吹き付けて、発泡固化させる方法が知られている。この断熱材は、その厚みによって断熱効果が大きく左右されるため、均等な厚みにすることが求められている。特に、ビルや集合住宅等では、均一な品質の提供が求められており、厚みの誤差が0~20mm、厳しいもので0~5mmでの施工が求められている。
そのため、対象面に発泡材を吹き付けて発泡固化させた後、その厚みを確認し、厚すぎる部位については余剰分を切削し、薄すぎる部位については発泡材を追加で吹付ける仕上げ処理を行っている。詳しくは、施工現場において、吹き付け作業をしながら、発泡固化した断熱材の各所に針状の測定ゲージを刺し、その厚みを計測し、各所に仕上げ処理が必要かを確認しながら行っている。そのため、断熱材の施工作業は、作業者にとって非常に煩雑な作業の一つとなっている。また、作業者の熟練度によって、作業スピードが大きく異なり、その品質にもばらつきが見られる。
さらに、断熱材の品質を保証するための施主等への報告は、施工部位の各所に測定ゲージを差し込むことで施工厚さをチェックし、その結果に関するマーク(例えば、厚みの計測値)を断熱材(壁)の表面に記し、その表面の一部の写真を提示することにより行ってきた。
このように断熱材の施工から報告まで断熱材の厚さを確認するべく、測定ゲージを何回も差し込む必要があり、作業が煩雑であり、また断熱材に物理的なダメージを与えるおそれがあった。さらにその断熱材の厚さの報告も、飛び飛びの測定点でしかできなかった。
【0003】
特許文献1には、発泡材の供給源に連結された吹き付けノズル、および、その被覆の厚さをモニターするように構成されたセンシング機器を備えた方法およびロボットが開示されている。この特許文献1の方法では、レーザー距離計で吹き付け厚をモニターしながら、発泡材の吹き付け量を制御することにより、仕上げ処理を減少させることができる。
特許文献2には、先端にスプレーノズルとレンジファインダとを備えた遠隔操作可能なロボットアームが開示されている。このロボットアームにおいて、レンジファインダで塗布する前後の材料(対象物)の測定を行い、補填する厚さを計算することができるとの記載がある。
本出願人は、特願2019-39920号に示すように、対象面に施工した被覆材の厚さを計測する方法であって、前記被覆材の表面の三次元座標及び前記対象面からの距離が既知で同じである3点以上の基準三次元座標を含む施工形状を取得する工程と、取得した前記基準三次元座標に基づいて仮想平面を算出する工程と、前記被覆材の表面の三次元座標と前記仮想平面に基づいて前記被覆材の厚さを算出する工程とを有する被覆材の厚さ計測方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-526121号公報
【文献】特開2017-536976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の方法は、ロボットを用いることを前提としているが、現場において必ずしもロボットの使用が有利であるとは限らない。一方、特許文献1の方法を作業者によって行うことも考えられるが、測定ゲージの代わりにレーザー距離計で厚みを随時モニターしながら発泡材の吹き付け作業による厚みを制御するものであるため、吹き付け作業と厚みの確認(モニターの確認)とを交互に行うことには変わりなく、作業は煩雑である。例えば、モニターを見間違えるなどの人為的なミスが起こりやすい。また特許文献2も塗布する材料(対象面)の全体を測定するものではなく、随時、塗布する材料(対象面)の一部を測定するものであり、特許文献1と同様の問題がある。
本出願人が提案している被覆材の厚さ計測方法は、仮想平面と被覆材の各点とを比較することにより、施工した被覆材の厚さの全体を簡単に計測することができる。しかし、一般に断熱材を吹き付ける対象面である建物の壁面は、完全な平面ではない。例えば、コンクリートを打設する際の型枠の精度等の影響で壁面に数mm単位の凹凸や歪み(壁面の不陸)が存在する。このように、対象面自体に不陸が存在する場合、仮想平面が対象面に対して平行にならず誤差が発生する。また被覆材の厚さ計測方法の一例として、被覆材に挿したピンの頭を基準三次元座標として仮想平面を算出しているが、この場合もピンの設置状態(挿入方向)によって、仮想平面が対象面に対して平行にならないことがある。また被覆材の表面の三次元座標や基準三次元座標を三次元計測装置によって取得しているが、三次元計測装置の計測誤差によっても仮想平面が対象面に対して平行にならないことがある。このように仮想平面と対象面とが平行とならない場合、算出される被覆材の厚みに誤差が生じる。特に、仮想平面を大きく、つまり、仮想平面を算出するために用いた基準三次元座標から離れた位置においては、その誤差は大きくなる。
本発明は、被覆材の厚さの計測が簡単で、かつ、対象面に不陸が存在していても、計測誤差が小さい建築物の壁等の対象面に施工される被覆材の厚さ計測方法、被覆材の厚さ計測システムおよび被覆材の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の被覆材の厚さの計測方法は、対象面に施工した被覆材の厚さを計測する方法であって、前記被覆材の表面の三次元座標および前記対象面からの距離が既知である4点以上の基準三次元座標を含む施工形状を取得する工程と、前記4点以上の基準三次元座標に基づいて前記対象面を推定した推定対象面形状を算出する工程と、前記被覆材の表面の三次元座標および前記推定対象面形状に基づいて前記被覆材の厚さを算出する工程とを有することを特徴としている。
本発明において「被覆材の厚さ」とは、対象面に対して垂直な方向の長さをいう。また「被覆材の表面の三次元座標」とは、対象面と反対の空間側に露出した被覆材の表面上の三次元座標をいう。例えば、被覆材の表面上の複数の点の三次元座標の集合が挙げられる。さらに「対象面からの距離」とは、基準三次元座標から対象面におろした垂線の長さをいう。
三次元座標の表現方法については、計算機上で処理可能なものであれば特に限定しない。例えば、(X,Y,Z)の三次元直交座標系の座標値の集合(いわゆる点群データ)で表現したものであってもよいし、ポリゴンメッシュなどの平面/曲面の数式やパラメータ表現、またはボリュームデータ表現(ボクセル等)、およびそれらの組み合わせであってもよい。
【0007】
本発明の被覆材の厚さ計測方法は、対象面からの距離が既知である4点以上の基準三次元座標に基づいて対象面の形状を推定した推定対象面形状を算出するため、たとえ、対象面に不陸があったり、基準三次元座標が正確でなかったり、三次元計測装置の計測誤差があったりしても、その影響を最小限にすることができる。
【0008】
本発明の被覆材の厚さ計測方法であって、前記推定対象面形状は、前記4点以上の基準三次元座標に基づいて算出した複数の仮想平面からなるのが好ましい。
本発明の被覆材の厚さ計測方法であって、前記各仮想平面は、前記4点以上の基準三次元座標のうちの少なくとも3点の基準三次元座標に基づいて算出されるのが好ましい。
本発明の被覆材の厚さ計測方法であって、前記被覆材の表面の各点における厚さを、前記複数の仮想平面のうち前記各点に応じた仮想平面に基づいて算出するのが好ましい。
本発明の被覆材の厚さ計測方法であって、前記複数の仮想平面を領域が重ならないように算出するのが好ましい。
本発明の被覆材の厚さ計測方法であって、前記施工形状を取得する工程の前に、前記被覆材上または前記被覆材の近傍に基準マーカーを設置する工程を有し、前記基準三次元座標は、前記基準マーカー上の三次元座標であるのが好ましい。
本発明の被覆材の厚さ計測方法であって、前記被覆材の厚さの分布を色または濃淡で示した被覆材画像を表示する工程を有するのが好ましい。
本発明の被覆材の厚さ計測方法であって、前記被覆材の厚さが所定の範囲から外れている施工不良箇所の有無を判断する工程を有するのが好ましい。
本発明の被覆材の厚さ計測方法であって、前記施工不良箇所を、前記被覆材画像に表示する工程を有するのが好ましい。
本発明の被覆材の厚さ計測方法であって、前記被覆材が吹付けウレタンフォーム断熱材であるのが好ましい。
【0009】
本発明の被覆材の厚さ計測システムは、対象面に施工した被覆材の厚さを計測するシステムであって、三次元計測装置と、データ処理部とを備え、前記三次元計測装置は、前記被覆材の表面の三次元座標および前記対象面からの距離が既知である4点以上の基準三次元座標を含む施工形状を取得し、前記データ処理部は、前記4点以上の基準三次元座標に基づいて前記対象面を推定した推定対象面形状を算出し、前記被覆材の表面の三次元座標および前記推定対象面形状に基づいて前記被覆材の厚さを算出することを特徴としている。
【0010】
本発明の被覆材の施工方法は、対象面に被覆材を施工する方法であって、前記対象面に被覆材を施工する工程と、前記被覆材の表面の三次元座標及び前記対象面からの距離が既知である4点以上の基準三次元座標を取得する工程と、前記4点以上の基準三次元座標に基づいて前記対象面を推定した推定対象面形状を算出する工程と、前記被覆材の表面の三次元座標および前記推定対象面形状に基づいて前記被覆材の厚さを算出する工程と、前記被覆材の厚さが所定の範囲から外れている施工不良箇所の有無を判断する工程とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、対象面に不陸があったり、ピンの挿入方向がずれる等の作業員による作業が正確でなかったり、三次元計測装置の計測誤差があったりしても、その対象面に施工される被覆材の厚みを正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の被覆材の厚さ計測システムの実施形態の構成を示す概略図である。
図2図2aは本発明の被覆材の厚さ計測方法の実施形態を示すフローチャートであり、図2bはその被覆材の厚さの算出方法を示すフローチャートである。
図3図3aは施工形状を示す正面図であり、図3bはX-X線断面図であり、図3cは仮想平面を算出した施工形状を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1の被覆材の厚さ計測システム1は、対象面Wに施工した被覆材Cの厚さTを計測するものであり、三次元計測装置10と、制御部20と、表示部30とを備えている。被覆材Cには、対象面Wからの距離が既知である基準マーカーMが6つ(4つ以上)設けられている。
【0014】
実施形態の厚さ計測方法が計測する被覆材は、作業者等が、現場において対象面に施工することによって被覆するものである。被覆材の施工方法については、吹き付け(スプレー)または塗布が挙げられる。特に、吹き付けで施工する被覆材は、施工後の厚みが塗布に比べて均一な厚さにすることが難しいため、被覆材の厚さ計測システム1に適している。
対象面(施工面)としては、建築物の壁、床、屋根、天井、屋上などが挙げられ、特に屋根・天井のような厚み測定の難しい部位に有用である。
【0015】
被覆材としては、断熱材、耐火材、防水材、一般建材(FRP、FRC、FRG)等が挙げられる。断熱材としては、軟質または硬質ウレタンフォーム、ロックウール、セルロースファイバー等が挙げられる。特に、吹付け工法によって施工される現場発泡型の硬質ウレタンフォーム(例えばJISA9526に規定される硬質ウレタンフォーム)が好ましい。オクチル酸カリウムやオクチル酸鉛を用いた反応速度の速い吹付けウレタンフォームは、対象面に吹き付けた発泡原液が、発泡倍率20倍~120倍程度に不規則に膨張するため、熟練者であっても均一な厚さ(10~200mm程度)に施工するのが難しいうえ、施工厚さが断熱性能に直接影響するからである。一方、防水材としては、ウレタン系、FRP系、アクリルゴム系、アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0016】
基準マーカーMは、円板状のものであり、図3bに示すように、ピンNの頭(上端)にピンNに対して円板の天面(平面部分)が垂直になるよう設けられている。ピンNが対象面Wに対して垂直となるように被覆材Cに挿すことにより、基準マーカーM(天面)は対象面Wと平行となる。つまり、基準マーカーMから対象面Wにおろした垂線の長さが距離L(ピンNの長さ+基準マーカーMの厚み)となる。そのため、後述するように基準マーカーM上の任意の点の三次元座標を対象面から距離が既知である基準三次元座標とすることができる。なお、ピンNの長さは、予定している被覆材Cの厚さに対して、実質的に同じか、若干大きくする。これにより、基準マーカーMが予定された厚みに施工されている被覆材C内に埋もれることがない。
基準マーカーMとしては、円板状のものを挙げたが、特に限定されるものではなく、球体やキューブ、三角や四角等の多角形の平板などが挙げられる。上記列挙したような幾何的特徴を有していれば画像処理で自動認識しやすいため好ましい。また、基準マーカーMに、被覆材Cを背景としたときに識別しやすい色を施すのが好ましい。例えば、白やアイボリー系の被覆材に対して、基準マーカーMの色を赤、青、緑等とすることにより、色の特徴を手掛かりに基準マーカーMを自動認識することが容易となる。
また基準マーカーMを支持するピンNも、特に限定されない。例えば、3本以上のピンNで基準マーカーを支持してもよい。この場合、3本のピンの先端を対象面Wと当接させることにより、3本のピンを対象面Wに対して垂直としやすく、作業者は、簡単に基準マーカーMを対象面Wから所定の距離に設置することができる。
【0017】
図1に戻って、三次元計測装置10は、被覆材Cの表面の三次元座標およびその表面に設けられた基準マーカーMの表面の三次元座標を含む施工形状を取得するものである。
三次元計測装置10としては、三次元スキャナーやステレオカメラ等が挙げられる。三次元スキャナーは、対象面にレーザー光を当てて、その反射光によって対象面の三次元形状を算出するもの(LIDAR方式)や照射した光が反射して返ってくるまでの時間で距離を計測するもの(TOF方式)等がある。いずれかの方式を採用したハンディ三次元スキャナーであって、対象面に沿って計測することにより、対象面の部分ごとの計測領域からなる複数の画像を結合して、全体の画像を取得するハンディ三次元スキャナーが知られている。
一方、ステレオカメラは、2台のカメラによって撮像した対象面の画像から三角測量の原理で三次元形状を算出するものであり、2台のカメラ画像のマッチング精度を高めるために別途プロジェクターで計測用パターンを投影する手法や2台のカメラのうち片方を、パターン光を投影するプロジェクターに置き換えた手法も存在する(アクティブステレオ法)。そして、広い対象面を一度に撮像することができるアクティブステレオ方式のハンディステレオカメラが知られている。
現場での使用を考慮するとハンディ三次元スキャナーあるいはハンディステレオカメラが好ましい。特に、データ処理量を抑えられ、三次元形状の計測時間を短くできるハンディ三次元スキャナーが好ましい。
施工形状の表現方法としては、計算機上で処理可能なものであれば特に限定されないが、例えば、(X,Y,Z)の三次元直交座標系の座標値の集合(いわゆる点群データ)で表現した三次元データが挙げられる。
また施工形状には対象の色情報が含めるのが好ましい。例えば、三次元計測にカラーカメラを用いる場合は、三次元座標と同時にカラー画像も取得することができ、色情報を付加した点群データを生成できる。このように色情報を付与することにより、施工形状データの色情報に基づいて基準マーカーや被覆材領域を認識することができる。
【0018】
制御部20は、記憶部21と、被覆材の厚さを算出するデータ処理部22とを備えている。
記憶部21は、三次元計測装置10が取得した施工形状を記憶する。また後述するようにデータ処理部22によって算出される仮想平面および被覆材の厚さを記憶する。そして、被覆材の表面の三次元座標および被覆材の厚さ、特に、被覆材画像と、対象面Wとを関連付けて記憶する。その他、必要な各種データを記憶する。
データ処理部22は、三次元計測装置10が取得した被覆材の表面の三次元座標および4つ以上の基準マーカーMの三次元座標を含む施工形状に基づいて、対象面Wから距離Lの推定対象面形状を算出する。ここで、推定対象面形状は複数の仮想平面からなる(図3cの符号V1~V4)。推定対象面形状は、不陸を含む対象面Wの形状を複数の平面で近似したものである。そして、被覆材Cの厚さを、被覆材の表面の三次元座標と複数の仮想平面に基づいて算出する。詳しくは、後述の工程140に示すように、被覆材の表面上の各点の厚さを、各点の一番近い仮想平面からの変位に基づいて算出する。被覆材の表面の全域の点にわたって、被覆材Cの全体の厚さを求める。そして、被覆材の表面を表示した画像であって、被覆材の厚さの分布を色または濃淡で示した被覆材画像を算出する。なお、各点の間隔は、三次元計測装置10あるいは表示部30の解像度に応じて適宜決定される。
表示部30は、データ処理部22によって作成された被覆材画像を表示する二次元モニターである。表示部30としては、現場での使用を考慮するとタブレット型のモニターが好ましい。
【0019】
被覆材の厚さ計測システム1は、対象面Wに設けられた被覆材Cおよび基準マーカーMを含む施工形状を取得することにより、被覆材の全体の厚さを算出することができるため、作業者の手間を大幅に減少させることができる。特に、施工形状Aに分布した複数の基準マーカーMの少なくとも3つの基準マーカーMに基づいて仮想平面を複数算出しているため、対象面を、複数の仮想平面と対応する領域に分割することができ、対象面に歪みがあったり、作業者の基準マーカーの設置が正確でなかったり、三次元計測装置の計測誤差があったとしても、その影響を最小限にできる。よって、被覆材の各点の厚みを正確に測定できる。
【0020】
次に、図2のフローチャートを参照して、対象面に施工した被覆材の厚さを計測する方法(以下、厚さ計測方法とする)の実施形態について説明する。被覆材の厚さ計測方法は、基準マーカーを設置する工程(工程110)と、施工形状を取得する工程(工程120)と、複数の仮想平面を算出する工程(工程130)と、被覆材の厚さを算出する工程(工程140)と、被覆材画像を表示する工程(工程150)と、被覆材画像に基づいて仕上げ処理が必要かを判断する工程(工程160)と、仕上げ処理が必要であると判断した場合、仕上げ処理を行う工程(工程170)と、仕上げ処理が必要でないと判断した場合、被覆材の三次元データを対象面と関連付けて記憶させる工程(工程180)とを有する。
【0021】
基準マーカーMを被覆材上に設置する(工程110)。図3bに示すように、ピンNが対象面Wと垂直となるように挿し、対象面Wから所定の距離Lだけ離れた位置に4つ以上の基準マーカーMを設置する。これらの基準マーカーMの表面は対象面から距離が既知で同じとなる。
基準マーカーMの設置位置は、特に、限定されないが、対象面Wの全体に分布させるのが好ましい。これにより対象面Wを覆うように複数の仮想平面を作成することができ、被覆材の厚みの計算の誤差を小さくすることができる。また、基準マーカーMは格子状に等間隔に設置するのが好ましい。これにより各仮想平面の形状と大きさを平均化でき、被覆材の厚みの計算の誤差を小さくすることができる。
例えば、図1では、被覆材Cに基準マーカーMを6つ設けている。
【0022】
次に、被覆材の表面の三次元座標および基準マーカーMの三次元座標を含む施工形状を取得する(工程120)。例えば、図3aの施工形状Aは、被覆材Cの三次元座標および6つの基準マーカーMの表面の三次元座標を含むものである。
施工形状Aは、例えば、三次元計測装置10でスキャンした形状を点群データとして記録したものである。
【0023】
複数の仮想平面を算出する(工程130)。詳しくは、施工形状Aから基準マーカーMを選択し、基準マーカーMから基準点(基準三次元座標)を抽出し、少なくとも3つの基準点で結んだ仮想平面を複数算出する。つまり、対象面Wの一部を垂直方向に所定の距離Lだけ平行移動させた仮想平面を複数算出する。例えば、図3cでは、6つの基準マーカーMから4つの仮想平面V1、V2、V3、V4を算出している。
施工形状Aから基準マーカーMを選択する方法は、施工形状の中から色や形状の特徴に基づいて指定する。このような認識は、作業者が手動で画面上の基準マーカーの位置を指示してもよく、コンピューターの処理部に自動的に認識させてもよい。
基準マーカーMから基準点を抽出する方法は、特に限定されるものではなく、基準マーカーMの三次元座標に基づいて予め設定された条件に基づいて決定する。例えば、各基準マーカーMの重心座標などが挙げられる。
【0024】
仮想平面の算出は、4つ以上の基準点から少なくとも3つの基準点を選択して、それらに囲まれた平面を算出することにより行う。仮想平面を構成する基準点の選択は、作業者が手動で画面上の基準マーカー(基準点)の位置を指示してもよく、予め設定した条件に基づいてデータ処理部22に自動的に認識させてもよい。例えば、図3cに示すように、6つの基準点に基づいて形成される一番大きい平面を、領域が重ならないように分割して、複数の仮想平面(仮想平面V1~V4)を設定する方法などが挙げられる。各仮想平面の領域が重ならないようにすることにより、各仮想平面を小さくとることができ、対象面の歪みや基準マーカーの設置不備等の影響を最小限にすることができる。また全ての基準点に基づいて形成される一番大きい平面を分割することにより、仮想平面を被覆材上の大きな領域に渡って設定することができ、被覆材全体の厚みの誤差を小さくすることができる。ここで算出される複数の仮想平面は、それぞれ独立している。つまり、対象面が理想的な平面であれば、複数の仮想平面は平行で、かつ、対象面Wからの距離が同じであるが、実際は少しずつずれる場合が多くなる。
なお、各仮想平面は3点の基準三次元座標に基づいて算出することが好ましい。3点の基準三次元座標に基づいて仮想平面を算出する場合は、3点を頂点とする平面を一意に求めることができるからである。しかし、4点以上の基準三次元座標から1つの仮想平面を算出してもよい。その場合、対象面の不陸、三次元計測装置の計測誤差、基準マーカーMの対象面Wに対する傾き等の影響で、各基準点の三次元座標が平面に乗らない場合がある。その場合、複数の基準点の三次元座標に対して平均面を算出すればよい。つまり、平面をフィッティングすればよい。これには既知の手法を用いることができる。例えば、最小二乗法で複数の基準点の三次元座標に対して最小二乗平面を求めればよい。
算出する仮想平面の数および大きさは、特に限定されるものではない。対象面Wの大きさや最終的に必要な計測精度、用いる基準マーカー等に応じて適宜設定することができる。
【0025】
被覆材の厚さを算出する(工程140)。詳しくは、図2bに示すように、被覆材の表面上の点Pを選択する工程(工程141)と、その点Pに最も近い仮想平面を選択する工程(工程142)、その被覆材の表面の点Pの厚みを選択した仮想平面に基づいて算出する工程(工程143)とを有する。そして、被覆材の表面の全域の点にわたって計算することにより、被覆材の表面の全体の厚さを求めることができる。
被覆材の表面の点Pに最も近い仮想平面の選択(工程142)は、点Pに最も近い仮想平面を選択することにより行う。例えば、点Pと各仮想平面の重心座標との距離を求め、距離が最短の仮想平面を選択してもよい。または、所定の2次元平面(例えば、すべての基準三次元座標から求めた平均面)に点Pと各仮想平面を投影し、投影された点Pと各仮想平面との内外判定を行い、点Pを内包する仮想平面を選択してもよい。または、施工形状から対象面と平行な面にX軸およびY軸を定め、その厚さ方向をZ軸とした三次元直交座標系に基づいて選択し、その上で点PのXY座標と同じXY座標の点を含む仮想平面がある場合(点Pが最も近い仮想平面の領域内にある場合)には、当該仮想平面を選択する。一方、点PのXY座標と同じXY座標の点を含む仮想平面が無い場合(点Pが最も近い仮想平面の領域内に無い場合)は、Z方向に投影した投影平面上で点Pと一番近い点を含む仮想平面を選択する。なお、対象面と平行な面は、特に限定されないが、例えば、6つの基準三次元座標によって求める。図3cにおいて、点P1に最も近い平面は仮想平面V3となり、点P2に最も近い平面は仮想平面V2となる。
【0026】
次に、被覆材の表面の点Pの厚さを選択した仮想平面に基づいて求める(工程143)。つまり、点Pと最も近い仮想平面Vが対象面Wと平行であると仮定し、点Pの厚みをその仮想平面Vを基準にして算出する。詳しくは、点Pが最も近い仮想平面の領域内にある場合、点Pと当該仮想平面のZ方向の変位から点Pの厚みを求める。一方、点Pが最も近い仮想平面の領域内に無い場合、当該仮想平面を延長し、点Pと当該仮想平面の延長した部位のZ方向の変位から点Pの厚みを求める。例えば、図3cの点P1のように、点P1が最も近い仮想平面V3の領域内にある場合、仮想平面V3にX’軸およびY’軸を定め、点P1のZ’座標と、仮想平面V3のZ’座標の差(Z1)から被覆材の点P1の厚みT1は、L-Z1となる。このようにX’軸およびY’軸を仮想平面V3を基準に定めた場合は、点P1の厚みT1は仮想平面V3に垂直な方向の厚みとなる。または、X’軸およびY’軸をすべての仮想平面の平均面またはすべての基準三次元座標から求めた平均面を基準に定めてもよい。こうすることですべての点における厚みを共通の座標系で算出でき、好ましい。各仮想平面は、予めLだけ平行移動して対象面Wの位置に重なって存在する状態としてもよい。この場合、被覆材の点P1の厚みT1=Z1=P1-V3となる。また図3cの点P2のように、点P2が最も近い仮想平面V2の領域内に無い場合、仮想平面V2と平行にX”軸およびY”軸を定めた上で、仮想平面V2を点P2のX”Y”の座標まで延長させ、点P2のZ”座標と、仮想平面V2の延長した部位のZ”座標の差(Z2)から被覆材の点P2の厚みT2は、L-Z2となる。なお、図3cでは、工程142における対象面と平行な面に設定するX軸、Y軸、Z軸は、X’軸、Y’軸、Z’軸ならびにZ”軸、Y”軸、Z”軸とは理想的に平行となっているが、実際は平行とならない場合が多い。
この方式で被覆材の全領域における厚さを算出することができる。各点の間隔は、三次元計測装置10あるいは表示部30の解像度に応じて決定される。このような計算は、被覆材の表面の点群座標および仮想平面の点群座標を減算して求めてもよく、点群からメッシュに変換して面同士の計算によって差分を計算してもよい。
被覆材の表面の各点の厚みを、対象面からの距離が既知である複数の仮想平面のうち最も近いものに基づいて算出するため、対象面に不陸があったり、三次元計測装置の計測誤差があったりしても、その影響を最小限にすることができる。
【0027】
被覆材画像を表示する(工程150)。詳しくは、被覆材の表面を表示した画像であって、被覆材の厚さの分布を色または濃淡で示した被覆材画像を算出し、表示する。
被覆材の表面を表示した画像としては、三次元的に表現したパースペクティブ画像や、施工形状を所定の平面(例えば、対象面と平行な平面)に投影した二次元画像が挙げられる。
【0028】
被覆材画像に基づいて仕上げ処理が必要かを判断する(工程160)。詳しくは、被覆材画像に基づいて、被覆材の厚さが所定の範囲から外れている施工不良箇所の有無を確認し、施工不良箇所がある場合、仕上げ処理が必要と判断し、施工不良箇所が無い場合は、仕上げ処理が不必要と判断する。またその被覆材の部位が所定の基準厚さからどれだけ厚いか、または、薄いかを算出し、厚さが所定の範囲内かどうかで判定する。被覆材を断熱材とする場合、その施工基準の一例としては、基準厚さ30mmに対して-0mm~+20mmの範囲である(基準より薄い部分は不良、厚い部分は20mmまで許容する)。より厳しく-0mm~+5mmの範囲と設定することもできる。例えば、工程150の被覆材画像において、施工不良箇所を色または濃淡で示して表示してもよい(施工不良判定画像)。また例えば、被覆材画像において、引き出し線でその部位を特定し、その部位が所定値からどれだけずれているかの数値を示してもよい。このように施工不良箇所を特定し、かつ、その不良度合を明確にすることにより、工程170の仕上げ処理を行いやすい。
そして、仕上げ処理が必要であると判定した場合、工程170に行き、仕上げ処理が不必要であると判定した場合、工程180に行く。
【0029】
仕上げ処理が必要であると判断した場合、仕上げ処理を行う(工程170)。つまり、工程160において、仕上げ処理が必要であると判断された場合、仕上げ処理が必要である部位に、被覆材の厚みが所定の範囲となるように仕上げ処理を行う。詳しくは、所定の範囲より厚い部分についてはその余剰分を切削し、所定の範囲より薄い部分については追加で吹き付けたり、塗布したりする。なお、仕上げ処理を行った後は、工程120に戻り、その施工形状を取得する。
その後、工程160において、仕上げ処理が不必要となるまで工程120から工程170を繰り返す。
【0030】
仕上げ処理が必要でないと判断した場合、被覆材の表面の三次元座標および被覆材の厚さ、特に、被覆材画像と、対象面と関連付けてデータベースとして記憶させる(工程180)。つまり、工程160において、仕上げ処理が必要でないと判断された場合、被覆材の施工を完了し、そのデータを保存する。例えば、102号室の東側の壁等のように対象面の位置情報や識別情報と、被覆材画像とを関連付けて記憶させておくことにより、対象面(壁)毎に管理するデータベースのデータとすることができる。また、建築物の3DCADデータが存在する場合は、当該3DCADデータに関連付けて記憶することが好ましい。特に、近年提唱されているBIM(Building Information Modeling)と関連付けて記憶することでより効率的な工程管理・品質管理が可能である。特に、ビルや集合住宅のように対象面が多数ある場合、管理しやすい。なお、仕上げ前の三次元形状も一緒に保存してもよい。これにより、作業の過程を追跡することができる。
なお、これらのデータは、例えば、パスワードでセキュリティを設定し編集不可の電子ファイルとして保存するのが好ましい。特に、タイムスタンプを付与して非改ざん証明および時刻証明を行った電子ファイルとするのが好ましい。このように編集不可の電子ファイルとすることにより、データの客観性を保つことができる。
【0031】
このように本実施形態の被覆材の厚さ計測方法は、4つ以上の基準点に基づいて、対象面に対して垂直方向に所定の距離だけ平行移動させた仮想平面を施工形状内に複数算出し、被覆材の表面の点Pと一番近い仮想平面に基づいて、被覆材の表面の点Pの厚さを算出しているため、対象面Wが歪んでいたり、基準マーカーがずれていたり、三次元計測装置の計測誤差があったとしてもその影響を最小限に被覆材の厚さの測定できる。そのため、被覆材の仕上げ処理も正確にできる。
この厚さ計測方法を用いた被覆材の施工方法は、作業者の熟練度に限らず、均一な品質の被覆材を提供することができる。
【0032】
上述した被覆材の厚さ計測方法は、上記に限定されるものではない。
例えば、基準マーカーを設置する工程(工程110)において、被覆材上に基準マーカーを設置しているが、被覆材の近傍に基準マーカーを設置してもよい。例えば、被覆材の周辺の柱に基準マーカーを設置してもよい。どこに基準マーカーを設置するかは、対象面に応じて適宜決めることができる。また対象面に隣接もしくは近傍に位置し、対象面からの距離が既知である構造物の表面に基準三次元座標を設定してもよい。構造物としては、例えば、対象面の壁面と同室に位置した柱、サッシ、敷居、回り縁、幅木、梁材等の構造物、または、床、天井、壁の境界部、配管、ドア、窓、換気口等の開口部、配電ボックスの特徴的な形状を有する構造物が挙げられる。
また被覆材画像を作成する工程(工程150)において、厚みを色または濃淡で示した被覆材画像を挙げているが、厚みによる色または濃淡を設けない被覆材の投影画像あるいは三次元画像(パースペクティブ画像)としてもよい。また工程150において、画像だけを表示するのではなく、対象面における位置データと、被覆材の厚さデータとを関連付けた表を表示してもよい。
また、推定対象面形状には曲面を含んでもよい。曲面生成の手法は特に限定されず、4点以上の基準三次元座標に対して公知の手法で近似曲面を生成すればよい。例えば、4点以上の基準三次元座標を制御点としてベジェ曲面、B-スプライン曲面、NURBS曲面を生成することができる。このとき、4点以上の基準三次元座標を通る曲面を生成することが好ましい。また、発生しうる壁面の歪み・凹凸の程度を予め調べておき、それに基づいて曲面生成時のパラメータを調整してもよい。推定対象面形状が曲面の場合は、被覆材の表面の三次元座標と曲面との差分を計算することで点Pの厚さを求めることができる。被覆材の表面の三次元座標(被覆材表面の点群データ)に基づいて曲面を生成し、曲面同士の差分を求めてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 厚さ計測システム
10 三次元計測装置
20 制御部
21 記憶部
22 データ処理部
30 表示部
A 施工形状
C 被覆材
M 基準マーカー
N ピン
V1-V4 仮想平面
W 対象面
図1
図2
図3