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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】細胞培養システム、細胞培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240606BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12N1/00 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020074205
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2021170935
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 仁也
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-168436(JP,A)
【文献】特表2018-526016(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0073645(US,A1)
【文献】特表2012-528600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12N 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養液を貯留する気密性のタンクと、
気体の供給源と、
前記供給源と前記タンクとを接続している第1配管と、
前記タンクと前記気体の排出部とを接続している第2配管と、
前記第1配管に設けられ、前記供給源から供給される前記気体の流量を調節する流量調節部と、
前記第2配管に設けられ、前記排出部へ排出される前記気体の流量を制限する絞り部と、
前記培養液と細胞とを収納する培養槽と、
前記タンクに貯留された前記培養液の中と前記培養槽とを接続している送液配管と、
前記タンクから前記送液配管を介して前記培養液を前記培養槽へ送液する際に、前記タンクの内部の圧力を平衡させた状態における前記供給源から供給される前記気体の流量と前記タンクの内部の圧力とが満たす予め算出しておいた相関関係に基づいて、前記タンクの内部の目標圧力に対応する目標流量の前記気体が供給されるように前記流量調節部を制御した状態で前記タンクの内部の圧力を平衡させる制御部と、
を備える細胞培養システム。
【請求項2】
培養液を貯留する気密性のタンクと、
気体の供給源と、
前記供給源と前記タンクとを接続している第1配管と、
前記タンクと前記気体の排出部とを接続している第2配管と、
前記第1配管に設けられ、前記供給源から供給される前記気体の流量を調節する流量調節部と、
前記第2配管に設けられ、前記排出部へ排出される前記気体の流量を制限する絞り部と、
前記培養液と細胞とを収納する培養槽と、
前記タンクに貯留された前記培養液の中と前記培養槽とを接続している送液配管と、
前記タンクの内部の圧力を平衡させた状態における前記供給源から供給される前記気体の流量と前記タンクの内部の圧力とが満たす予め算出しておいた相関関係に基づいて、前記タンクの内部の目標圧力に対応する目標流量の前記気体が供給されるように前記流量調節部を制御した状態で前記タンクの内部の圧力を平衡させて、前記タンクから前記送液配管を介して前記培養液を前記培養槽へ送液させる制御部と、
を備える細胞培養システム。
【請求項3】
前記供給源から供給される前記気体の流量をQ1[L/min]とし、前記絞り部の有効断面積をS[mm^2]とし、大気圧をPa[MPaA]とし、前記タンクの内部の圧力をPv[MPaA]として、
記相関関係は、Q1=226.4S√{Pa(Pv-Pa)}である、請求項1又は2に記載の細胞培養システム。
【請求項4】
前記目標圧力は、10[mmHg]以下であり、
前記供給源から前記気体を供給し始めてから、前記タンクの内部の圧力を平衡させるまでの時間は、5[S]以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の細胞培養システム。
【請求項5】
複数の前記タンクと、
複数の前記培養槽と、
複数の前記送液配管と、
気密性のバッファタンクと、
各タンクと前記バッファタンクとを接続する第3配管と、を備え、
前記第1配管は、前記バッファタンク及び各第3配管を介して前記供給源と各タンクとを接続している、請求項1~4のいずれか1項に記載の細胞培養システム。
【請求項6】
前記バッファタンクは水を貯留し、
前記水を加熱するヒータを備える、請求項5に記載の細胞培養システム。
【請求項7】
水を貯留する気密性のバッファタンクと、
前記タンクと前記バッファタンクとを接続する第3配管と、
前記水を加熱するヒータと、を備え、
前記第1配管は、前記バッファタンク及び前記第3配管を介して前記供給源と前記タンクとを接続している、請求項1~4のいずれか1項に記載の細胞培養システム。
【請求項8】
前記培養液を圧送するポンプと、
前記タンクと前記ポンプとを接続している供給配管と、
前記供給配管に設けられ、前記ポンプから前記タンクへの前記培養液の流通を許容し、前記タンクから前記ポンプへの前記培養液の流通を禁止する逆止弁と、を備え、
前記供給配管は、前記タンクにおいて前記培養液の液面よりも低く、且つ前記送液配管の下端よりも高い位置に接続されている、請求項1~4,7のいずれか1項に記載の細胞培養システム。
【請求項9】
培養液を貯留する気密性のタンクと、
気体の供給源と、
前記供給源と前記タンクとを接続している第1配管と、
前記タンクと前記気体の排出部とを接続している第2配管と、
前記第1配管に設けられ、前記供給源から供給される前記気体の流量を調節する流量調節部と、
前記第2配管に設けられ、前記排出部へ排出される前記気体の流量を制限する絞り部と、
前記培養液と細胞とを収納する培養槽と、
前記タンクに貯留された前記培養液の中と前記培養槽とを接続している送液配管と、
前記流量調節部を制御する制御部と、
を備える細胞培養システムによる細胞培養方法であって、
前記制御部は、前記タンクから前記送液配管を介して前記培養液を前記培養槽へ送液する際に、前記タンクの内部の圧力を平衡させた状態における前記供給源から供給される前記気体の流量と前記タンクの内部の圧力とが満たす予め算出しておいた相関関係に基づいて、前記タンクの内部の目標圧力に対応する目標流量の前記気体が供給されるように前記流量調節部を制御した状態で前記タンクの内部の圧力を平衡させる、細胞培養方法。
【請求項10】
培養液を貯留する気密性のタンクと、
気体の供給源と、
前記供給源と前記タンクとを接続している第1配管と、
前記タンクと前記気体の排出部とを接続している第2配管と、
前記第1配管に設けられ、前記供給源から供給される前記気体の流量を調節する流量調節部と、
前記第2配管に設けられ、前記排出部へ排出される前記気体の流量を制限する絞り部と、
前記培養液と細胞とを収納する培養槽と、
前記タンクに貯留された前記培養液の中と前記培養槽とを接続している送液配管と、
前記流量調節部を制御する制御部と、
を備える細胞培養システムによる細胞培養方法であって、
前記制御部は、前記タンクの内部の圧力を平衡させた状態における前記供給源から供給される前記気体の流量と前記タンクの内部の圧力とが満たす予め算出しておいた相関関係に基づいて、前記タンクの内部の目標圧力に対応する目標流量の前記気体が供給されるように前記流量調節部を制御した状態で前記タンクの内部の圧力を平衡させて、前記タンクから前記送液配管を介して前記培養液を前記培養槽へ送液させる、細胞培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を培養するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、培養液が入ったタンク内に加圧手段により加圧気体を供給し、タンクと培養装置との間に設けた流量計の流量が所定流量になるように加圧手段を制御する細胞培養システムがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-168436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の細胞培養システムは、培養液の流量が所定流量(目標流量)になるように加圧気体による加圧圧力を制御している。しかし、血管を有する組織培養等では、血管の耐圧性や生体機能の発現性の点から、より生体に近い状態で培養液を送液することが望ましい。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、より生体に近い状態で培養液を送液することのできる細胞培養システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、細胞培養システムであって、
培養液を貯留する気密性のタンクと、
気体の供給源と、
前記供給源と前記タンクとを接続している第1配管と、
前記タンクと前記気体の排出部とを接続している第2配管と、
前記第1配管に設けられ、前記供給源から供給される前記気体の流量を調節する流量調節部と、
前記第2配管に設けられ、前記排出部へ排出される前記気体の流量を制限する絞り部と、
前記培養液と細胞とを収納する培養槽と、
前記タンクに貯留された前記培養液の中と前記培養槽とを接続している送液配管と、
前記タンクから前記送液配管を介して前記培養液を前記培養槽へ送液する際に、前記タンクの内部の圧力を平衡させた状態における前記供給源から供給される前記気体の流量と前記タンクの内部の圧力との所定の相関関係に基づいて、前記タンクの内部の目標圧力に対応する目標流量の前記気体が供給されるように前記流量調節部を制御した状態で前記タンクの内部の圧力を平衡させる制御部と、
を備える。
【0007】
上記構成によれば、気密性のタンクは培養液を貯留する。第1配管は、気体の供給源とタンクとを接続している。第2配管は、タンクと気体の排出部とを接続している。流量調節部は、第1配管に設けられ、気体の供給源から供給される気体の流量を調節する。絞り部は、第2配管に設けられ、排出部へ排出される気体の流量を制限する。このため、流量調節部により気体の供給源から供給される気体の流量を調節し、絞り部により排出部へ排出される気体の流量を制限することにより、気密性のタンクの内部の圧力を制御することができる。そして、培養槽は、培養液と細胞とを収納する。送液配管は、タンクに貯留された培養液の中と培養槽とを接続している。このため、タンクに気体を供給してタンクの内部の圧力を上昇させることにより、タンクから送液配管を介して培養液を培養槽の細胞へ送液することができる。
【0008】
ここで、制御部は、タンクから送液配管を介して培養液を培養槽へ送液する際に、タンクの内部の圧力を平衡させた状態における供給源から供給される気体の流量とタンクの内部の圧力との所定の相関関係に基づいて、タンクの内部の目標圧力に対応する目標流量の気体が供給されるように流量調節部を制御した状態でタンクの内部の圧力を平衡させる。このため、タンクの内部の圧力を目標圧力に平衡させた状態で培養液を培養槽へ送液することができ、目標流量の培養液を送液する場合と比較して、より生体に近い状態で培養液を培養槽の細胞へ送液することができる。さらに、タンクの内部の圧力を平衡させた状態では、後述するように、タンクの内部の圧力と供給源から供給される気体の流量とは、温度の影響が小さい相関関係を有している。したがって、培養液の送液状態が周囲温度による外乱の影響を受けることを抑制することができる。
【0009】
第2の手段は、細胞培養システムであって、
培養液を貯留する気密性のタンクと、
気体の供給源と、
前記供給源と前記タンクとを接続している第1配管と、
前記タンクと前記気体の排出部とを接続している第2配管と、
前記第1配管に設けられ、前記供給源から供給される前記気体の流量を調節する流量調節部と、
前記第2配管に設けられ、前記排出部へ排出される前記気体の流量を制限する絞り部と、
前記培養液と細胞とを収納する培養槽と、
前記タンクに貯留された前記培養液の中と前記培養槽とを接続している送液配管と、
前記タンクの内部の圧力を平衡させた状態における前記供給源から供給される前記気体の流量と前記タンクの内部の圧力との所定の相関関係に基づいて、前記タンクの内部の目標圧力に対応する目標流量の前記気体が供給されるように前記流量調節部を制御した状態で前記タンクの内部の圧力を平衡させて、前記タンクから前記送液配管を介して前記培養液を前記培養槽へ送液させる制御部と、
を備える。
【0010】
上記構成によっても、タンクの内部の圧力を目標圧力に平衡させた状態で培養液を培養槽へ送液することができ、目標流量の培養液を送液する場合と比較して、より生体に近い状態で培養液を培養槽の細胞へ送液することができる。さらに、培養液の送液状態が周囲温度による外乱の影響を受けることを抑制することができる。
【0011】
一般に、Pv≦1.89Paである亜音速の圧力条件では、以下の式(1)が成立する。
【0012】
Qr=226.4S√{Pa(Pv-Pa)}・√(273/T) ・・・(1)
上記式(1)において、Qr[L/min]は排出部へ排出される気体の流量、S[mm^2]は絞り部の有効断面積、Pa[MPaA]は大気の絶対圧力、Pv[MPaA]はタンクの内部の絶対圧力、T[K]は気体の絶対温度である。なお、「mm^2」は「mm」の2乗を表す。ここで、気体の絶対温度T[K]は、通常の環境において298[K]程度であり、その場合に√(273/T)=0.957となり、略1としても影響は小さい。また、気体の供給源から供給される気体の流量をQ1[L/min]として、タンクの内部の圧力を平衡させた状態では、Qr=Q1となる。このため、√(273/T)=1、Qr=Q1として、式(1)から以下の式(2)を導くことができる。
【0013】
Q1=226.4S√{Pa(Pv-Pa)} ・・・(2)
そこで、第2の手段のように、前記供給源から供給される前記気体の流量をQ1[L/min]とし、前記絞り部の有効断面積をS[mm^2]とし、大気圧をPa[MPaA]とし、前記タンクの内部の圧力をPv[MPaA]として、前記所定の相関関係は、Q1=226.4S√{Pa(Pv-Pa)}である、といった構成を採用することができる。
【0014】
上記構成によれば、タンクの内部の圧力Pv[MPaA]に目標圧力を当てはめることにより、気体の供給源から供給される気体の流量Q1[L/min]としての目標流量を、容易に算出することができる。さらに、タンクの内部の圧力Pv[MPaA]と供給源から供給される気体の流量Q1[L/min]とは、温度の影響を受けにくく、式(2)の相関関係を有している。したがって、培養液の送液状態が周囲温度による外乱の影響を受けることを抑制することができる。
【0015】
気体の供給源から気体を供給し始めてから、タンクの内部の圧力を平衡させるまでの時間は、タンクの容積が大きいほど、絞り部の有効断面積が大きいほど、タンクの内部の目標圧力が高いほど、長くなる。この点、血管を有する組織培養等では、10[mmHg]以下の微圧で培養槽へ培養液を送液する必要があるため、タンクの内部の目標圧力を非常に低く設定することができる。なお、圧力の単位において、絶対圧力と表記しない場合は、ゲージ圧力を表すものとする。
【0016】
したがって、第4の手段のように、前記目標圧力は、10[mmHg]以下であり、前記供給源から前記気体を供給し始めてから、前記タンクの内部の圧力を平衡させるまでの時間は、5[S]以下である、といった構成を採用することができる。こうした構成によれば、5[S]以下の短時間でタンクの内部の圧力を平衡させることができ、培養液を目標圧力で速やかに培養槽へ送液することができる。なお、目標圧力が10[mmHg]以下であれば、気体の供給源から気体を供給し始めてから、タンクの内部の圧力を平衡させるまでの時間を、3[S]以下や、1[S]以下にすることもできる。
【0017】
第5の手段では、複数の前記タンクと、複数の前記培養槽と、複数の前記送液配管と、気密性のバッファタンクと、各タンクと前記バッファタンクとを接続する第3配管と、を備え、前記第1配管は、前記バッファタンク及び各第3配管を介して前記供給源と各タンクとを接続している。
【0018】
上記構成によれば、細胞培養システムは、複数の培養液のタンクと、複数の培養槽と、複数の送液配管と、を備えている。そして、第1配管は、気密性のバッファタンク及び各第3配管を介して、気体の供給源と各タンクとを接続している。このため、バッファタンクに気体を供給して、バッファタンクの内部の圧力を制御することにより、複数のタンクの内部の圧力を等しい目標圧力に制御することができる。したがって、複数のタンクから複数の培養槽へ、等しい目標圧力で培養液を容易に送液することができる。
【0019】
供給源から供給される気体が乾燥していると、タンク内の培養液の蒸発を助長するおそれがある。
【0020】
この点、第6の手段では、前記バッファタンクは水を貯留し、前記水を加熱するヒータを備える。したがって、バッファタンクの内部において、気体に水分を加える(加湿する)ことができ、タンク内の培養液の蒸発を抑制することができる。さらに、複数のタンクへ供給される気体に、バッファタンクにおいてまとめて水分を加えることができる。
【0021】
第7の手段では、水を貯留する気密性のバッファタンクと、前記タンクと前記バッファタンクとを接続する第3配管と、前記水を加熱するヒータと、を備え、前記第1配管は、前記バッファタンク及び前記第3配管を介して前記供給源と前記タンクとを接続している。
【0022】
上記構成によっても、バッファタンクの内部において、気体に水分を加えることができ、タンク内の培養液の蒸発を抑制することができる。
【0023】
第8の手段では、前記培養液を圧送するポンプと、前記タンクと前記ポンプとを接続している供給配管と、前記供給配管に設けられ、前記ポンプから前記タンクへの前記培養液の流通を許容し、前記タンクから前記ポンプへの前記培養液の流通を禁止する逆止弁と、を備え、前記供給配管は、前記タンクにおいて前記培養液の液面よりも低く、且つ前記送液配管の下端よりも高い位置に接続されている。
【0024】
上記構成によれば、細胞培養システムは、培養液を圧送するポンプと、タンクとポンプとを接続している供給配管とを備えている。このため、供給配管を介して、タンクに培養液を補充することができる。そして、供給配管は、タンクにおいて培養液の液面よりも低く、且つ送液配管の下端よりも高い位置に接続されている。このため、供給配管がタンクにおいて培養液の液面よりも高い位置に接続されている場合と比較して、培養液が液面に落下して気泡が発生することを抑制することができる。また、供給配管がタンクにおいて送液配管の下端よりも低い位置に接続されている場合と比較して、培養液に混入した気泡が送液配管に取り込まれることを抑制することができる。さらに、ポンプからタンクへの培養液の流通を許容し、タンクからポンプへの培養液の流通を禁止する逆止弁が、供給配管に設けられている。したがって、供給配管がタンクにおいて培養液の液面よりも低い位置に接続されることで供給配管に培養液の圧力がかかっても、タンクからポンプへ培養液が逆流することを抑制することができる。
【0025】
第9の手段は、細胞培養方法であって、
培養液を貯留する気密性のタンクと、
気体の供給源と、
前記供給源と前記タンクとを接続している第1配管と、
前記タンクと前記気体の排出部とを接続している第2配管と、
前記第1配管に設けられ、前記供給源から供給される前記気体の流量を調節する流量調節部と、
前記第2配管に設けられ、前記排出部へ排出される前記気体の流量を制限する絞り部と、
前記培養液と細胞とを収納する培養槽と、
前記タンクに貯留された前記培養液の中と前記培養槽とを接続している送液配管と、
前記流量調節部を制御する制御部と、
を備える細胞培養システムによる細胞培養方法であって、
前記制御部は、前記タンクから前記送液配管を介して前記培養液を前記培養槽へ送液する際に、前記タンクの内部の圧力を平衡させた状態における前記供給源から供給される前記気体の流量と前記タンクの内部の圧力との所定の相関関係に基づいて、前記タンクの内部の目標圧力に対応する目標流量の前記気体が供給されるように前記流量調節部を制御した状態で前記タンクの内部の圧力を平衡させる。
【0026】
第10の手段は、細胞培養方法であって、
培養液を貯留する気密性のタンクと、
気体の供給源と、
前記供給源と前記タンクとを接続している第1配管と、
前記タンクと前記気体の排出部とを接続している第2配管と、
前記第1配管に設けられ、前記供給源から供給される前記気体の流量を調節する流量調節部と、
前記第2配管に設けられ、前記排出部へ排出される前記気体の流量を制限する絞り部と、
前記培養液と細胞とを収納する培養槽と、
前記タンクに貯留された前記培養液の中と前記培養槽とを接続している送液配管と、
前記流量調節部を制御する制御部と、
を備える細胞培養システムによる細胞培養方法であって、
前記制御部は、前記タンクの内部の圧力を平衡させた状態における前記供給源から供給される前記気体の流量と前記タンクの内部の圧力との所定の相関関係に基づいて、前記タンクの内部の目標圧力に対応する目標流量の前記気体が供給されるように前記流量調節部を制御した状態で前記タンクの内部の圧力を平衡させて、前記タンクから前記送液配管を介して前記培養液を前記培養槽へ送液させる。
【0027】
上記方法によれば、第1,第2の手段と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】細胞培養システムを示す模式図。
図2】タンクに対して空気を供給及び排出するモデルを示す模式図。
図3】タンク及び周囲環境のモデルを示す模式図。
図4図3のモデルにおける試験結果を示すグラフ。
図5図3のモデルにおける試験結果を示すグラフ。
図6】空気を供給する配管及び排出する配管の変更例を示す模式図。
図7】空気に加湿する構成を示す模式図。
図8】複数のタンク、バッファタンク、複数の送液配管、及び複数の培養槽を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、細胞を培養する細胞培養システムに具現化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0030】
図1に示すように、細胞培養システム10は、圧力制御送液部20、培養槽50、ポンプ70等を備えている。
【0031】
圧力制御送液部20は、空気供給源21、流量比例弁24、絞り弁27、滅菌フィルタ31、タンク34、圧力センサ37、液面センサ41、制御部45等を備えている。
【0032】
空気供給源21(気体の供給源)は、所定圧力の空気(気体)を供給する。空気供給源21は、配管22,23によりタンク34に接続されている。配管22には、流量比例弁24が設けられている。流量比例弁24(流量調節部)は、入力信号に比例して開度を調節可能であり、空気供給源21から供給される空気の流量を調節する。流量比例弁24は制御部45によって制御される。
【0033】
配管22と配管23とは、接続部25において接続されている。配管23には、滅菌フィルタ31が設けられている。滅菌フィルタ31は、配管23を介してタンク34へ流れる空気を滅菌する。タンク34は、有底円筒状に形成されており、気密性であり、培養液Lを貯留している。配管23は、タンク34の上部に接続されている。すなわち、配管23は、タンク34において培養液Lの液面よりも高い位置に接続されており、培養液Lと接していない。なお、配管22,23によって、第1配管が構成されている。タンク34の形状は、有底円筒状に限らず、任意である。
【0034】
培養液Lには、例えば重炭酸塩等、pH6~8の範囲において遊離してpH緩衝機能を有する試薬が添加されている。重炭酸塩としては、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム等を採用することができる。その他、培養液Lには、血管を有する細胞組織B(細胞)が活動するために必要な養分として、血清、アミノ酸、ビタミン、糖類等が添加されている。なお、培養液Lには、pHを目視で確認するためにフェノールレッド等の指示薬が添加されている。
【0035】
圧力センサ37は、タンク34の下部における培養液Lの圧力を検出する。液面センサ41は、培養液Lの液面の位置を検出する。
【0036】
接続部25には、配管26が接続されている。接続部25は、配管26により空気の排出部28に接続されている。配管26には、絞り弁27が設けられている。絞り弁27(絞り部)は、例えば微少な流量を調節するニードル弁であり、排出部28へ排出される空気の流量を制限(調節)する。絞り弁27の開度は、タンク34内の空気の圧力(タンク34内の圧力)を目標圧力にすべく、所定開度に設定されている。タンク34内の空気の目標圧力に応じて、絞り弁27の開度を変更してもよい。排出部28へ流れた空気は圧力制御送液部20の外部(大気)へ排出される。なお、配管23,26によって、第2配管が構成されている。
【0037】
送液配管42は、タンク34に貯留された培養液Lの中と培養槽50とを接続している。すなわち、送液配管42は培養液Lの中に挿入されており、送液配管42の下端は培養液Lの液面よりも低い位置にある。
【0038】
培養槽50は、培養液Lと細胞組織Bとを収納している。培養槽50には、タンク34から送液配管42を介して培養液Lが送液される。細胞組織B(細胞)は、例えば血管を有する動物細胞組織である。細胞組織Bは、培養液Lにより培養され、所定の生体機能を発現する。その際に、細胞の活動により培養槽50内の培養液Lの溶存酸素濃度DO及びpHが変化する。
【0039】
細胞組織Bの血管を損傷しないように、培養液Lは10[mmHg]以下の圧力(加圧)で培養槽50へ送液される。また、細胞組織Bが所定の生体機能を発現するためには、目標流量の培養液Lを送液する流量制御送液ではなく、目標圧力で培養液Lを送液する圧力制御送液とすることが望ましい。この理由は、実際の動物の動物細胞組織では、心臓により血液が送液されており、流量制御送液よりも圧力制御送液に近いためである。なお、培養液Lを10[mmHg]以下の圧力(加圧)で培養槽50へ送液する場合、培養液Lの流量は1[mL/min]以下となる。
【0040】
培養槽50は、返液配管43によりタンク34に接続されている。返液配管43(供給配管)には、ポンプ70及びチェック弁72が設けられている。ポンプ70は、液面センサ41により検出された液面の位置が所定位置よりも下がった場合に、培養液Lを圧送する。そして、ポンプ70は、液面センサ41により検出された液面の位置が所定位置よりも上がった場合に、培養液Lの圧送を停止する。チェック弁72(逆止弁)は、ポンプ70からタンク34への培養液Lの流通を許容し、タンク34からポンプ70への培養液Lの流通を禁止する。返液配管43は、タンク34において培養液Lの液面よりも低く、且つ送液配管42の下端よりも高い位置に接続されている。
【0041】
制御部45は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を備えるマイクロコンピュータである。制御部45は、目標圧力で培養液Lを培養槽50へ送液すべく、流量比例弁24を制御する。
【0042】
図2は、タンク34に対して空気を供給及び排出するモデルを示す模式図である。タンク34の容積のうち、培養液Lの部分を除いた空気の部分の容積を容積Vとしている。
【0043】
流量比例弁24を流れる空気の単位時間当たりの流量をQ1とし、絞り弁27を流れる空気の単位時間当たりの流量をQrとする。容積Vに空気を供給する前においては、容積Vの空気の圧力は大気圧Paであり、空気の温度はT1である。そして、容積Vに、Qm=Q1-Qrの流量で時間tだけ空気を供給した後、容積Vの空気の圧力がPvとなり、容積Vの空気の温度がT2になったとする。この場合、ボイル・シャルルの法則により、以下の式(3)が成立する。
【0044】
Pa(V+Qm・t)/T1=Pv・V/T2 ・・・(3)
式(3)をPvについて解くと、以下の式(4)が導かれる。
【0045】
Pv=Pa・T2(V+Qm・t)/(T1・V) ・・・(4)
圧力Pvを時間tの関数Pv(t)と考えると、圧力Pvを平衡させる条件は、圧力Pvを時間tで微分したPv(t)’=0となることである。このため、以下の式(5)が導かれる。
【0046】
Pv(t)’=Pa・T2・Qm/(T1・V)=0 ・・・(5)
上記式(5)から、Qm=Q1-Qr=0、すなわちQ1=Qrとなる。このことは、圧力Pvを平衡させた状態では、流量比例弁24を流れる空気の流量Q1と、絞り弁27を流れる空気の流量Qrとが等しいことを表している。
【0047】
また、10[mmHg]以下の圧力で培養液Lを培養槽50へ送液する場合、絞り弁27を流れる空気の流量は以下のようになる。この場合、タンク34内の空気の絶対圧力をPv[MPaA]とし、大気の絶対圧力をPa[MPaA]として、Pv≦1.89Paとなる。このため、絞り弁27を流れる空気の流量は、亜音速の圧力条件を満たす。なお、圧力の単位において、絶対圧力[MPaA]と表記しない場合は、ゲージ圧力を表すものとする。
【0048】
一般に、Pv≦1.89Paである亜音速の圧力条件では、上述した式(1)が成立する。そして、式(1)は、Q1=Qrの場合に、上記式(2)のように近似することができる。
【0049】
そこで、制御部45は、式(2)において、タンク34の内部の圧力Pv[MPaA]に目標圧力を当てはめることにより、空気供給源21から供給すべき空気の流量Q1[L/min]としての目標流量を算出する。そして、制御部45は、タンク34から送液配管42を介して培養液Lを培養槽50へ送液する際に、算出した目標流量の空気が供給されるように流量比例弁24を制御する。制御部45は、圧力Pvが平衡するまで、その状態を5[S]以下の所定時間(例えば3[S])維持する。本実施形態では、略1[S]で、圧力Pvが平衡する。その結果、培養液Lが目標圧力で培養槽50へ送液される。
【0050】
空気供給源21から空気を供給し始めてから、タンク34の内部の圧力Pvを平衡させるまでの時間は、タンク34の容積が大きいほど、絞り弁27の有効断面積Sが大きいほど、タンク34の内部の目標圧力が高いほど、長くなる。この点、血管を有する細胞組織Bの培養では、10[mmHg]以下の微圧で培養槽50へ培養液Lを送液する必要があるため、タンク34の内部の目標圧力を非常に低く設定している。したがって、圧力Pvが平衡するまでの時間は非常に短くなる。
【0051】
このように、制御部45は、タンク34から送液配管42を介して培養液Lを培養槽50へ送液する際に、タンク34の内部の圧力を平衡させた状態における空気供給源21から供給される空気の流量とタンク34の内部の圧力との所定の相関関係(式(2))に基づいて、タンク34の内部の目標圧力に対応する目標流量の空気が供給されるように流量比例弁24を制御した状態でタンク34の内部の圧力を平衡させる。換言すれば、制御部45は、タンク34の内部の圧力を平衡させた状態における空気供給源21から供給される空気の流量とタンク34の内部の圧力との所定の相関関係(式(2))に基づいて、タンク34の内部の目標圧力に対応する目標流量の空気が供給されるように流量比例弁24を制御した状態でタンク34の内部の圧力を平衡させて、タンク34から送液配管42を介して培養液Lを培養槽50へ送液させる。
【0052】
図3は、タンク34及び周囲環境のモデルを示す模式図である。ここでは、流量比例弁24を流れる空気の流量Q1、絞り弁27を流れる空気の流量Qrで、培養液Lの液圧Pwを平衡させた状態において、冷却水温度Twを意図的に上昇させている。冷却水温度Twが上昇する状態は、周囲温度Tが上昇(変化)する状態を擬似的に再現している。
【0053】
図4,5は、図3のモデルにおける試験結果を示すグラフである。図4は培養液Lの液圧Pw=5[mmHg]の場合の試験結果であり、図5は培養液Lの液圧Pw=3[mmHg]の場合の試験結果である。図4,5において、冷却水温度Twが上昇し、それに遅れてタンク内温度Ttが上昇している。しかし、培養液Lの液圧Pwが5[mmHg]及び3[mmHg]のいずれであっても、培養液Lの液圧Pwは略一定に維持されており、冷却水温度Tw、すなわち周囲温度Tが変化しても、培養液Lの液圧Pwに対する影響が小さいことを示している。また、空気の流量Q1に応じて、培養液Lの液圧Pwが変化している。なお、空気の流量Q1も、略一定に維持されている。
【0054】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0055】
・流量比例弁24により空気供給源21から供給される空気の流量Q1を調節し、絞り弁27により排出部28へ排出される空気の流量Qrを制限することにより、気密性のタンク34の内部の圧力Pvを制御することができる。そして、培養槽50は、培養液Lと細胞組織Bとを収納する。送液配管42は、タンク34に貯留された培養液Lの中と培養槽50とを接続している。このため、タンク34に空気を供給してタンク34の内部の圧力Pvを上昇させることにより、タンク34から送液配管42を介して培養液Lを培養槽50の細胞組織Bへ送液することができる。
【0056】
・制御部45は、タンク34から送液配管42を介して培養液Lを培養槽50へ送液する際に、タンク34の内部の圧力Pvを平衡させた状態における空気供給源21から供給される空気の流量Q1とタンク34の内部の圧力Pvとの所定の相関関係に基づいて、タンク34の内部の目標圧力に対応する目標流量の空気が供給されるように流量比例弁24を制御した状態でタンク34の内部の圧力Pvを平衡させる。このため、タンク34の内部の圧力Pvを目標圧力に平衡させた状態で培養液Lを培養槽50へ送液することができ、目標流量の培養液Lを送液する場合と比較して、より生体に近い状態で培養液Lを培養槽50の細胞組織Bへ送液することができる。
【0057】
・タンク34の内部の圧力Pvを平衡させた状態では、タンク34の内部の圧力Pvと空気供給源21から供給される空気の流量Q1とは、温度の影響が小さい相関関係を有している。したがって、培養液Lの送液状態が周囲温度Tによる外乱の影響を受けることを抑制することができる。
【0058】
・式(2)において、タンク34の内部の圧力Pv[MPaA]に目標圧力を当てはめることにより、空気供給源21から供給される空気の流量Q1[L/min]としての目標流量を、容易に算出することができる。さらに、タンク34の内部の圧力Pv[MPaA]と空気供給源21から供給される空気の流量Q1[L/min]とは、温度の影響を受けにくく、式(2)の相関関係を有している。したがって、図4,5に示すように、培養液Lの送液状態が周囲温度Tによる外乱の影響を受けることを抑制することができる。さらに、培養液Lの送液状態が周囲温度Tによる外乱の影響を受けにくいため、圧力制御送液部20全体の温度を管理する必要がなく、圧力制御送液部20を温度管理された環境の外に配置することができる。
【0059】
・目標圧力は、10[mmHg]以下であり、空気供給源21から空気を供給し始めてから、タンク34の内部の圧力Pvを平衡させるまでの時間は、5[S]以下である。こうした構成によれば、5[S]以下の短時間でタンク34の内部の圧力Pvを平衡させることができ、培養液Lを目標圧力で速やかに培養槽50へ送液することができる。
【0060】
・細胞培養システム10は、培養液Lを圧送するポンプ70と、タンク34とポンプ70とを接続している返液配管43とを備えている。このため、返液配管43を介して、タンク34に培養液Lを補充することができる。
【0061】
・返液配管43は、タンク34において培養液Lの液面よりも低く、且つ送液配管42の下端よりも高い位置に接続されている。このため、返液配管43がタンク34において培養液Lの液面よりも高い位置に接続されている場合と比較して、培養液Lが液面に落下して気泡が発生することを抑制することができる。
【0062】
・返液配管43がタンク34において送液配管42の下端よりも低い位置に接続されている場合と比較して、培養液Lに混入した気泡が送液配管42に取り込まれることを抑制することができる。
【0063】
・ポンプ70からタンク34への培養液Lの流通を許容し、タンク34からポンプ70への培養液Lの流通を禁止するチェック弁72が、返液配管43に設けられている。したがって、返液配管43がタンク34において培養液Lの液面よりも低い位置に接続されることで返液配管43に培養液Lの圧力がかかっても、タンク34からポンプ70へ培養液Lが逆流することを抑制することができる。
【0064】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0065】
・流量比例弁24に代えて、開閉式の電磁弁を採用し、制御部45は、所定期間における電磁弁の開弁割合をDUTY制御することで、空気の流量を調節させることもできる。
【0066】
・絞り弁27(絞り部)は、ニードル弁に限らず、固定のオリフィスであってもよい。
【0067】
・返液配管43を、タンク34において培養液Lの液面よりも低く、且つ送液配管42の下端よりも低い位置に接続することもできる。また、返液配管43を、タンク34において培養液Lの液面よりも高い位置に接続することもできる。
【0068】
・上記式(2)に代えて、タンク34の内部の絶対圧力Pv[MPaA]と、空気供給源21から供給される空気の流量Q1[L/min]との所定の相関関係を規定したテーブルを採用することもできる。また、所定の相関関係として、式(2)に代えて、式(1)を採用することもできる。なお、式(1)に代えて、タンク34の内部の絶対圧力Pv[MPaA]と、空気供給源21から供給される空気の流量Q1[L/min]と、空気の絶対温度T[K]との所定の相関関係を規定したマップを採用することもできる。
【0069】
・細胞としては、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、細菌、酵母、真菌等を採用することができる。また、細胞は、複数個の細胞からなる組織や、複数種の細胞からなる組織であってもよい。
【0070】
・細胞の種類に応じて、目標圧力は、10[mmHg]よりも高く且つ20[mmHg]以下であり、空気供給源21から空気を供給し始めてから、タンク34の内部の圧力Pvを平衡させるまでの時間は、5[S]よりも長く且つ10[S]よりも短い、といった構成を採用することもできる。また、目標圧力は、20[mmHg]よりも高く、空気供給源21から空気を供給し始めてから、タンク34の内部の圧力Pvを平衡させるまでの時間は、10[S]よりも長い、といった構成を採用することもできる。
【0071】
図6に示すように、空気供給源21とタンク34とを接続する配管122と、タンク34と排出部28とを接続する配管126とを、互いに独立して設けることもできる。なお、配管122が第1配管に相当し、配管126が第2配管に相当する。また、滅菌フィルタ31を省略することもできる。また、返液配管43、ポンプ70、及びチェック弁72を省略することもできる。その場合、培養液Lは、タンク34及び培養槽50を循環せず、培養槽50で使用された後に廃棄される。しかし、タンク34内の培養液Lが減少した場合に、培養液Lを補充すればよい。
【0072】
・空気供給源21から供給される空気が乾燥していると、タンク34内の培養液Lの蒸発を助長するおそれがある。そこで、図7に示すように、細胞培養システム10は、水Wを貯留する気密性のバッファタンク35と、タンク34とバッファタンク35とを接続する配管38(第3配管)と、水Wを加熱するヒータ39と、を備え、配管22,23(第1配管)は、バッファタンク35及び配管38を介して空気供給源21とタンク34とを接続している、といった構成を採用することもできる。こうした構成によれば、バッファタンク35の内部において、空気に水分を加える(加湿する)ことができ、タンク34内の培養液Lの蒸発を抑制することができる。
【0073】
図8に示すように、細胞培養システム10は、タンク34A,34B(複数のタンク)と、培養槽50A,50B(複数の培養槽)と、送液配管42A,42B(複数の送液配管)と、気密性のバッファタンク35と、各タンク34A,34Bとバッファタンク35とを接続する配管38A,38B(第3配管)と、を備え、配管22,23(第1配管)は、バッファタンク35及び各配管38A,38Bを介して空気供給源21と各タンク34A,34Bとを接続している、といった構成を採用することもできる。
【0074】
上記構成によれば、バッファタンク35に空気を供給して、バッファタンク35の内部の圧力Pvを制御することにより、タンク34A,34Bの内部の圧力を等しい目標圧力に制御することができる。したがって、タンク34A,34Bから培養槽50A,50Bへ、等しい目標圧力で培養液La,Lbを容易に送液することができる。なお、培養液Laと培養液Lbとは、同一の培養液であってもよいし、異なる培養液であってもよい。
【0075】
また、バッファタンク35に水を貯留し、バッファタンク35に水を加熱するヒータを設けてもよい。こうした構成によっても、バッファタンク35の内部において、空気に水分を加えることができ、タンク34A,34B内の培養液La,Lbの蒸発を抑制することができる。さらに、タンク34A,34Bへ供給される空気に、バッファタンク35においてまとめて水分を加えることができる。
【0076】
・空気供給源21に代えて、窒素(気体)を供給する供給源を採用することもできる。また、タンク34,34A,34B、バッファタンク35、及び培養槽50,50A,50Bの少なくとも1つに二酸化炭素を供給することにより、培養液LのpHを調節することもできる。
【符号の説明】
【0077】
10…細胞培養システム、20…圧力制御送液部、21…空気供給源(供給源)、22…配管、23…配管、24…流量比例弁(流量調節部)、26…配管、27…絞り弁(絞り部)、28…排出部、34…タンク、34A…タンク、34B…タンク、35…バッファタンク、38…配管(第3配管)、38A…配管(第3配管)、38B…配管(第3配管)、42…送液配管、42A…送液配管、42B…送液配管、43…返液配管(供給配管)、45…制御部、50…培養槽、50A…培養槽、50B…培養槽、70…ポンプ、122…配管(第1配管)、126…配管(第2配管)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8