(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】車両用灯具及びレンズ体
(51)【国際特許分類】
F21S 43/241 20180101AFI20240606BHJP
F21S 43/237 20180101ALI20240606BHJP
F21S 43/247 20180101ALI20240606BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20240606BHJP
F21S 43/15 20180101ALI20240606BHJP
F21V 8/00 20060101ALI20240606BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20240606BHJP
F21W 103/35 20180101ALN20240606BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20240606BHJP
F21W 103/55 20180101ALN20240606BHJP
F21W 103/10 20180101ALN20240606BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240606BHJP
【FI】
F21S43/241
F21S43/237
F21S43/247
F21S43/14
F21S43/15
F21V8/00 310
F21W103:00
F21W103:35
F21W103:20
F21W103:55
F21W103:10
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2020090338
(22)【出願日】2020-05-25
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】金徳 大地
(72)【発明者】
【氏名】菊地 賢三
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-006153(JP,A)
【文献】特開2012-028156(JP,A)
【文献】特開2012-028155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/241
F21S 43/237
F21S 43/247
F21S 43/14
F21S 43/15
F21V 8/00
F21W 103/00
F21W 103/35
F21W 103/20
F21W 103/55
F21W 103/10
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源の前方に配置される第1導光部と、前記第1導光部の反光源側の端部から前記光源の光照射方向に対して斜め方向に延びる第2導光部と、前記第2導光部の先端部から反第2導光部側かつ前記光源の光軸に対して交差する方向に延びる楔形レンズ部と、を含むレンズ体と、を備え、
前記第1導光部は、入光部と、第1全反射面と、を含み、
前記第2導光部は、第2全反射面及び第3全反射面を含み、
前記楔形レンズ部は、反光源側に配置される出光面と、その反対側に配置される第4全反射面と、を含み、かつ、当該楔形レンズ部の先端部に向かうに従って前記出光面と前記第4全反射面との間の厚みが薄くなる楔形レンズ部であり、
前記入光部は、前記光源の前方に配置され、当該入光部から前記レンズ体に入光する前記光源からの光をコリメートする入光部であり、
前記第1全反射面は、当該第1全反射面に入射する前記入光部からのコリメート光が、前記第2全反射面に向かって全反射されるように傾斜した状態で、前記入光部からのコリメート光の光路上に配置されており、
前記第2全反射面は、当該第2全反射面に入射する前記第1全反射面からの反射光が、前記第3全反射面に向かって全反射されるように傾斜した状態で、前記第1全反射面からの反射光の光路上に配置されており、
前記第3全反射面は、当該第3全反射面に入射する前記第2全反射面からの反射光が、前記楔形レンズ部の先端部に向かって前記楔形レンズ部内を進行するように傾斜した状態で、前記第2全反射面からの反射光の光路上に配置されており、
前記第4全反射面は、前記第3全反射面からの反射光の光路上に配置された複数の構造物を含み、
前記複数の構造物は、当該複数の構造物に入射する前記第3全反射面からの反射光が、前記出光面に向かって全反射されて当該出光面から出光するように構成され
、
少なくとも前記光源からの光のうち相対強度が強い光が、前記第1全反射面、前記第2全反射面及び前記第3全反射面でこの順に全反射されて、楔形レンズ部の先端部又はその近傍に到達して前記第4全反射面で全反射されて前記出光面から出光する車両用灯具。
【請求項2】
光源と、
前記光源の前方に配置される第1導光部と、前記第1導光部の反光源側の端部から前記光源の光照射方向に対して斜め方向に延びる第2導光部と、前記第2導光部の先端部から反第2導光部側かつ前記光源の光軸に対して交差する方向に延びる楔形レンズ部と、を含むレンズ体と、を備え、
前記第1導光部は、入光部と、第1全反射面と、を含み、
前記第2導光部は、第2全反射面及び第3全反射面を含み、
前記楔形レンズ部は、反光源側に配置される出光面と、その反対側に配置される第4全反射面と、を含み、かつ、当該楔形レンズ部の先端部に向かうに従って前記出光面と前記第4全反射面との間の厚みが薄くなる楔形レンズ部であり、
前記入光部は、前記光源の前方に配置され、当該入光部から前記レンズ体に入光する前記光源からの光をコリメートする入光部であり、
前記第1全反射面は、当該第1全反射面に入射する前記入光部からのコリメート光が、前記第2全反射面に向かって全反射されるように傾斜した状態で、前記入光部からのコリメート光の光路上に配置されており、
前記第2全反射面は、当該第2全反射面に入射する前記第1全反射面からの反射光が、前記第3全反射面に向かって全反射されるように傾斜した状態で、前記第1全反射面からの反射光の光路上に配置されており、
前記第3全反射面は、当該第3全反射面に入射する前記第2全反射面からの反射光が、前記楔形レンズ部の先端部に向かって前記楔形レンズ部内を進行するように傾斜した状態で、前記第2全反射面からの反射光の光路上に配置されており、
前記第4全反射面は、前記第3全反射面からの反射光の光路上に配置された複数の構造物を含み、
前記複数の構造物は、当該複数の構造物に入射する前記第3全反射面からの反射光が、前記出光面に向かって全反射されて当該出光面から出光するように構成され
、
前記第2導光部と前記楔形レンズ部との組み合わせを二組備え、
前記第2導光部と前記楔形レンズ部との一方の組み合わせと前記第2導光部と前記楔形レンズ部との他方の組み合わせは、前記光源の光軸に対して回転対称に配置されてい
る車両用灯具。
【請求項3】
前記第2導光部と前記楔形レンズ部との組み合わせを二組備え、
前記第2導光部と前記楔形レンズ部との一方の組み合わせと前記第2導光部と前記楔形レンズ部との他方の組み合わせは、前記光源の光軸に対して回転対称に配置されている請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記光源と前記レンズ体との組み合わせを複数組備え、
前記光源と前記レンズ体との組み合わせは、並列に配置されており、
前記並列に配置された各々の前記レンズ体は一体成形されている請求項1
又は2に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記第2導光部の前記交差する方向に関する幅をW1とし、前記第1導光部の前記交差する方向に関する幅をW2とした場合、1:2<W1:W2≦1:6である請求項1から
4のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
光源と、
少なくとも、前記光源からの光をコリメートする入光部と、前記入光部によりコリメー
トされた前記光源からの光が入射する第1全反射面と、前記第1全反射面からの反射光が入射する第2全反射面と、前記第2全反射面からの反射光が入射する第3全反射面と、前記第3全反射面からの反射光が入射する第4全反射面と、前記第4全反射面からの反射光が出光する出光面と、を含むレンズ体と、を備え、
前記第4全反射面及び前記出光面は、基端部から先端部に向かうに従って前記出光面と前記第4全反射面との間の厚みが薄くなる楔形レンズ部を構成しており、
前記第4全反射面は、複数の構造物を含み、
前記光源は、少なくとも、前記入光部から前記レンズ体に入光し、当該入光部でコリメートされ、前記第1全反射面、前記第2全反射面及び前記第3全反射面でこの順に全反射されて前記楔形レンズ部の前記先端部又はその近傍まで到達し、前記第4全反射面に設けられた前記複数の構造物で全反射されることで前記出光面から出光する狭角方向の光を発光
し、
前記光源は、さらに、前記入光部から前記レンズ体に入光し、当該入光部でコリメートされ、前記第1全反射面で全反射されて前記楔形レンズ部の前記先端部又はその近傍に到達する前に前記第4全反射面に設けられた前記複数の構造物で全反射されることで前記出光面から出光する、前記狭角方向の光より前記楔形レンズ部内の光路長が短い広角方向の光を発光する車両用灯具。
【請求項7】
光源の前方に配置される第1導光部と、前記第1導光部の反光源側の端部から前記光源の光照射方向に対して斜め方向に延びる第2導光部と、前記第2導光部の先端部から反第2導光部側かつ前記光源の光軸に対して交差する方向に延びる楔形レンズ部と、を含み、
前記第1導光部は、入光部と、第1全反射面と、を含み、
前記第2導光部は、第2全反射面及び第3全反射面を含み、
前記楔形レンズ部は、反光源側に配置される出光面と、その反対側に配置される第4全反射面と、を含み、かつ、当該楔形レンズ部の先端部に向かうに従って前記出光面と前記第4全反射面との間の厚みが薄くなる楔形レンズ部であり、
前記入光部は、前記光源の前方に配置され、当該入光部から入光する前記光源からの光をコリメートする入光部であり、
前記第1全反射面は、当該第1全反射面に入射する前記入光部からのコリメート光が、前記第2全反射面に向かって全反射されるように傾斜した状態で、前記入光部からのコリメート光の光路上に配置されており、
前記第2全反射面は、当該第2全反射面に入射する前記第1全反射面からの反射光が、前記第3全反射面に向かって全反射されるように傾斜した状態で、前記第1全反射面からの反射光の光路上に配置されており、
前記第3全反射面は、当該第3全反射面に入射する前記第2全反射面からの反射光が、前記楔形レンズ部の先端部に向かって前記楔形レンズ部内を進行するように傾斜した状態で、前記第2全反射面からの反射光の光路上に配置されており、
前記第4全反射面は、前記第3全反射面からの反射光の光路上に配置された複数の構造物を含み、
前記複数の構造物は、当該複数の構造物に入射する前記第3全反射面からの反射光が、前記出光面に向かって全反射されて当該出光面から出光するように構成され、
前記楔形レンズ部の先端部又はその近傍において、前記第4全反射面は、前記第1全反射面、前記第2全反射面及び前記第3全反射面でこの順に全反射され到達する前記光源からの光のうち相対強度が強い光を全反射して前記出光面から出光させるレンズ体。
【請求項8】
光源の前方に配置される第1導光部と、前記第1導光部の反光源側の端部から前記光源の光照射方向に対して斜め方向に延びる第2導光部と、前記第2導光部の先端部から反第2導光部側かつ前記光源の光軸に対して交差する方向に延びる楔形レンズ部と、を含み、
前記第1導光部は、入光部と、第1全反射面と、を含み、
前記第2導光部は、第2全反射面及び第3全反射面を含み、
前記楔形レンズ部は、反光源側に配置される出光面と、その反対側に配置される第4全反射面と、を含み、かつ、当該楔形レンズ部の先端部に向かうに従って前記出光面と前記第4全反射面との間の厚みが薄くなる楔形レンズ部であり、
前記入光部は、前記光源の前方に配置され、当該入光部から入光する前記光源からの光をコリメートする入光部であり、
前記第1全反射面は、当該第1全反射面に入射する前記入光部からのコリメート光が、前記第2全反射面に向かって全反射されるように傾斜した状態で、前記入光部からのコリメート光の光路上に配置されており、
前記第2全反射面は、当該第2全反射面に入射する前記第1全反射面からの反射光が、前記第3全反射面に向かって全反射されるように傾斜した状態で、前記第1全反射面からの反射光の光路上に配置されており、
前記第3全反射面は、当該第3全反射面に入射する前記第2全反射面からの反射光が、前記楔形レンズ部の先端部に向かって前記楔形レンズ部内を進行するように傾斜した状態で、前記第2全反射面からの反射光の光路上に配置されており、
前記第4全反射面は、前記第3全反射面からの反射光の光路上に配置された複数の構造物を含み、
前記複数の構造物は、当該複数の構造物に入射する前記第3全反射面からの反射光が、前記出光面に向かって全反射されて当該出光面から出光するように構成され
、
前記第2導光部と前記楔形レンズ部との組み合わせを二組備え、
前記第2導光部と前記楔形レンズ部との一方の組み合わせと前記第2導光部と前記楔形レンズ部との他方の組み合わせは、前記光源の光軸に対して回転対称に配置されているレンズ体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具及びレンズ体に関し、特に、楔形レンズ部を均一に発光させる(均一に発光しているように視認させる)ことができる車両用灯具及びレンズ体に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、特許文献1に記載の車両用灯具1の断面図である。
【0003】
図8に示すように、光源2の前方に配置された入光面3と、入光面3から入光した光源2からの光を全反射する全反射面4と、全反射面4で全反射された光源2からの光が入光する発光部5と、を備えたレンズ体6を用いた車両用灯具1が例えば特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の車両用灯具1においては、入光面3から入光し全反射面4で全反射された光源2からの光Rayは、発光部5に入光し、発光部5に設けられた全反射面5aにより全反射されて当該発光部5に設けられた出光面5bから出光する。これにより、発光部5が発光する。
【0005】
これに対して、本発明者らは、
図9に示すように、入光部101でコリメートされ第1全反射面102で全反射された光源103からの光(コリメート光)を楔形レンズ部104に入光させ、楔形レンズ部104に設けられた第2全反射面105で全反射させて楔形レンズ部104に設けられた出光面106から出光させることで、楔形レンズ部104を発光させることを検討した。
図9は、本発明者らが検討した楔形レンズ部104を含むレンズ体を用いた車両用灯具の断面図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、上記楔形レンズ部においては、相対強度が弱い光(光源103の光軸AX
103に対して広角方向の光(例えば、
図9に示す光Ray1))が楔形レンズ部の先端部まで到達するのに対して、相対強度が強い光(光源103の光軸AX
103に対して狭角方向の光(例えば、
図9に示す光Ray2、3))が楔形レンズ部の先端部まで到達しない(楔形レンズ部の中間部までしか到達しない)ため、先端部が相対的に暗くなり、楔形レンズ部を均一に発光させる(均一に発光しているように視認させる)ことが難しいことが判明した。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、楔形レンズ部を均一に発光させる(均一に発光しているように視認させる)ことができる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる車両用灯具は、光源と、前記光源の前方に配置される第1導光部と、前記第1導光部の反光源側の端部から前記光源の光照射方向に対して斜め方向に延びる第2導光部と、前記第2導光部の先端部から反第2導光部側かつ前記光源の光軸に対して交差する方向に延びる楔形レンズ部と、を含むレンズ体と、を備え、前記第1導光部は、入光部と、第1全反射面と、を含み、前記第2導光部は、第2全反射面及び第3全反射面を含み、前記楔形レンズ部は、反光源側に配置される出光面と、その反対側に配置される第4全反射面と、を含み、かつ、当該楔形レンズ部の先端部に向かうに従って前記出光面と前記第4全反射面との間の厚みが薄くなる楔形レンズ部であり、前記入光部は、前記光源の前方に配置され、当該入光部から前記レンズ体に入光する前記光源からの光をコリメートする入光部であり、前記第1全反射面は、当該第1全反射面に入射する前記入光部からのコリメート光が、前記第2全反射面に向かって全反射されるように傾斜した状態で、前記入光部からのコリメート光の光路上に配置されており、前記第2全反射面は、当該第2全反射面に入射する前記第1全反射面からの反射光が、前記第3全反射面に向かって全反射されるように傾斜した状態で、前記第1全反射面からの反射光の光路上に配置されており、前記第3全反射面は、当該第3全反射面に入射する前記第2全反射面からの反射光が、前記楔形レンズ部の先端部に向かって前記楔形レンズ部内を進行するように傾斜した状態で、前記第2全反射面からの反射光の光路上に配置されており、前記第4全反射面は、前記第3全反射面からの反射光の光路上に配置された複数の構造物を含み、前記複数の構造物は、当該複数の構造物に入射する前記第3全反射面からの反射光が、前記出光面に向かって全反射されて当該出光面から出光するように構成されている。
【0010】
このような構成により、楔形レンズ部を均一に発光させる(均一に発光しているように視認させる)ことができる車両用灯具を提供することができる。
【0011】
これは、主に、第2導光部(第2全反射面及び第3全反射面)を設けたことで、相対強度が強い光(光源の光軸に対して狭角方向の光)が楔形レンズ部の先端部又はその近傍まで到達することによるものである。
【0012】
上記車両用灯具において、前記第2導光部と前記楔形レンズ部との組み合わせを二組備え、前記第2導光部と前記楔形レンズ部との一方の組み合わせと前記第2導光部と前記楔形レンズ部との他方の組み合わせは、前記光源の光軸に対して回転対称に配置されていてもよい。
【0013】
また、上記車両用灯具において、前記光源と前記レンズ体との組み合わせを複数組備え、前記光源と前記レンズ体との組み合わせは、並列に配置されており、前記並列に配置された各々の前記レンズ体は一体成形されていてもよい。
【0014】
また、上記車両用灯具において、前記第2導光部の前記交差する方向に関する幅をW1とし、前記第1導光部の前記交差する方向に関する幅をW2とした場合、W1:W2が1:6以上であってもよい。
【0015】
また、上記車両用灯具において、少なくとも前記光源からの光のうち相対強度が強い光が、前記第1全反射面、前記第2全反射面及び前記第3全反射面でこの順に全反射されて、楔形レンズ部の先端部又はその近傍に到達して前記第4全反射面で全反射されて前記出光面から出光してもよい。
【0016】
本発明にかかるレンズ体は、光源の前方に配置される第1導光部と、前記第1導光部の反光源側の端部から前記光源の光照射方向に対して斜め方向に延びる第2導光部と、前記第2導光部の先端部から反第2導光部側かつ前記光源の光軸に対して交差する方向に延びる楔形レンズ部と、を含み、前記第1導光部は、入光部と、第1全反射面と、を含み、前記第2導光部は、第2全反射面及び第3全反射面を含み、前記楔形レンズ部は、反光源側に配置される出光面と、その反対側に配置される第4全反射面と、を含み、かつ、当該楔形レンズ部の先端部に向かうに従って前記出光面と前記第4全反射面との間の厚みが薄くなる楔形レンズ部であり、前記入光部は、前記光源の前方に配置され、当該入光部から入光する前記光源からの光をコリメートする入光部であり、前記第1全反射面は、当該第1全反射面に入射する前記入光部からのコリメート光が、前記第2全反射面に向かって全反射されるように傾斜した状態で、前記入光部からのコリメート光の光路上に配置されており、前記第2全反射面は、当該第2全反射面に入射する前記第1全反射面からの反射光が、前記第3全反射面に向かって全反射されるように傾斜した状態で、前記第1全反射面からの反射光の光路上に配置されており、前記第3全反射面は、当該第3全反射面に入射する前記第2全反射面からの反射光が、前記楔形レンズ部の先端部に向かって前記楔形レンズ部内を進行するように傾斜した状態で、前記第2全反射面からの反射光の光路上に配置されており、前記第4全反射面は、前記第3全反射面からの反射光の光路上に配置された複数の構造物を含み、前記複数の構造物は、当該複数の構造物に入射する前記第3全反射面からの反射光が、前記出光面に向かって全反射されて当該出光面から出光するように構成されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、楔形レンズ部を均一に発光させる(均一に発光しているように視認させる)ことができる車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】(a)XY平面に対して平行な平面による車両用灯具10の断面図、(b)円C内の拡大図である。
【
図3】(a)車両用灯具10(レンズ体30)の正面図、(b)
図3(a)のA-A断面における輝度分布である。
【
図4】比較例1~5それぞれの最大輝度/最小輝度(MAX/MIN)を表す表である。
【
図8】特許文献1に記載の車両用灯具1の断面図である。
【
図9】本発明者が検討した楔形レンズ部を含むレンズ体を用いた車両用灯具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態である車両用灯具10について添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0020】
図1は、車両用灯具10の斜視図である。
図2(a)はXY平面に対して平行な平面による車両用灯具10の断面図である。
【0021】
図1、
図2に示す車両用灯具10は、テールランプ、ストップランプ、ターンランプ、DRLランプ又はポジションランプ等の車両用信号灯具に適用することができる。車両用灯具10は、図示しないが、アウターレンズとハウジングとによって構成される灯室内に配置され、ハウジング等に取り付けられる。以下、説明の便宜のため、
図1、
図2(a)に示すように、XYZ軸を定義する。X軸は、車両前後方向に延びている。Y軸は、例えば、車幅方向に延びている。Z軸は、例えば、鉛直方向に延びている。
【0022】
図1、
図2(a)に示すように、車両用灯具10は、光源20と、レンズ体30と、を備えている。
【0023】
光源20は、LED等の半導体発光素子である。
図2(a)に示すように、光源20は、発光面20aを備えている。発光面20aは、例えば、1mm角の矩形の発光面である。光源20の光軸AX
20は、発光面20aの中心を通り、かつ、発光面20aに直交する方向(X軸方向)に延びている。
【0024】
光源20の前方には、レンズ体30が配置されている。
【0025】
レンズ体30は、アクリルやポリカーボネイト等の透明樹脂製で、
図2(a)に示すように、光源20の前方に配置される第1導光部31と、第1導光部31の反光源側の端部から光源20の光照射方向(
図2(a)中上方向)に対して斜め方向に延びる第2導光部32と、第2導光部32の先端部から反第2導光部側かつ光源20の光軸AX
20に対して交差する方向(例えば、直交する方向)に延びる楔形レンズ部33と、を含む。レンズ体30は、例えば、射出成形により一体的に成形されている。
【0026】
第1導光部31は、入光部31aと、第1全反射面31bと、を含む。
【0027】
入光部31aは、光源20の前方に配置され、当該入光部31aからレンズ体30(第1導光部31)に入光する光源20からの光をコリメートする(光源20の光軸AX20に対して平行な光に変換する)入光部である。例えば、入光部31aは、光源20に向かって凸で、焦点が光源20(例えば、発光面20aの中心)近傍に位置するレンズ面31a1を含む。なお、これに限らず、入光部31aは、光源20からの光をコリメートできればよく、どのような構成であってもよい。
【0028】
第1全反射面31bは、例えば、平面反射面で、当該第1全反射面31bに入射する入光部31aからのコリメート光が、第2導光部32に設けられた第2全反射面32aに向かって全反射されるように光源20の光軸AX20に対して45度傾斜した状態で、入光部31aからのコリメート光の光路上に配置されている。
【0029】
第2導光部32は、第2全反射面32a及び第3全反射面32bを含む。第1全反射面31b、第2全反射面32a及び第3全反射面32bは、例えば、互いに平行である。
【0030】
第2全反射面32aは、例えば、平面反射面で、当該第2全反射面32aに入射する第1全反射面31bからの反射光が、第2導光部32に設けられた第3全反射面32bに向かって全反射されるようにY軸(第1全反射面31bからの反射光の入射方向)に対して45度傾斜した状態で、第1全反射面31bからの反射光の光路上に配置されている。
【0031】
第3全反射面32bは、当該第3全反射面32bに入射する第2全反射面32aからの反射光が、楔形レンズ部33に入光し、その先端部33dに向かって進行するようにX軸(第2全反射面32aからの反射光の入射方向)に対して45度傾斜した状態で、第2全反射面32aからの反射光の光路上に配置されている。第3全反射面32bは、例えば、第1導光部31に設けられた第1全反射面31bと同一面内において隣接して配置されている。
【0032】
楔形レンズ部33は、反光源側に配置される出光面33aと、その反対側に配置される第4全反射面33bと、を含み、かつ、当該楔形レンズ部33の基端部33cから先端部33dに向かうに従って出光面33aと第4全反射面33bとの間の厚みが薄くなる楔形レンズ部である。
【0033】
出光面33aは、例えば、YZ平面に対して平行な平面である。
【0034】
第4全反射面33bは、例えば、平面反射面で、楔形レンズ部33の基端部33cから先端部33dに向かうに従って出光面33aと当該第4全反射面33bとの間の厚みが薄くなるように傾斜した状態で配置されている。
【0035】
第4全反射面33bは、複数の構造物33e
1~33e
nを含む。
図2(a)に示すように、複数の構造物33e
1~33e
nには、第2全反射面32a及び第3全反射面32bでこの順に全反射された反射光Ray2~Ray4及び第1全反射面31bで反射された反射光Ray1が入射する。
【0036】
次に、複数の構造物33e1~33enの構成例について説明する。
【0037】
図2(b)は、
図2(a)中の円C内の拡大図である。
【0038】
例えば、複数の構造物33e
1~33e
nは、
図2(b)に示すように、楔形レンズ部33の基端部33cから先端部33dに向かって階段状に配置された複数の全反射面である。以下、全反射面33e
1~33e
nと呼ぶ。全反射面33e
1~33e
nは、それぞれ、例えば、Z軸方向に細長の平面反射面である。全反射面33e
1~33e
nは、当該全反射面33e
1~33e
nに入射する第3全反射面32bからの反射光(例えば、反射光Ray2~Ray4)及び第1全反射面31bからの反射光(例えば、反射光Ray1)が出光面33aに向けて全反射されるように例えばX軸(第3全反射面32bからの反射光の入射方向)に対して45度傾斜した状態で配置されている。
【0039】
上記構成の車両用灯具10においては、入光部31aからレンズ体30に入光した光源20からの光は、第1導光部31に設けられた第1全反射面31b、第2導光部32に設けられた第2全反射面32a及び第3全反射面32b、楔形レンズ部33に設けられた第4全反射面33bでこの順に全反射され、最終的に楔形レンズ部33に設けられた出光面33aから出光する。これにより、楔形レンズ部33が発光する。
【0040】
すなわち、上記構成の車両用灯具10においては、光源20を点灯すると、
図2(a)に示すように、光源20からの光は、入光部31aからレンズ体30に入光する。その際、光源20からの光は、入光部31aによって光源20の光軸AX
20に対して平行な光にコリメートされる。このコリメートされた光Ray1~4は、第1全反射面31b、第2全反射面32a及び第3全反射面32bでこの順に全反射されて楔形レンズ部33に入光し、その先端部33dに向かって進行し、全反射面33e
1~33e
nに入射する。
【0041】
全反射面33e1~33enは、当該全反射面33e1~33enに入射するコリメート光Ray1~4を出光面33aに向けて全反射する。
【0042】
全反射面33e1~33enそれぞれで全反射されるコリメート光Ray1~4は、楔形レンズ部33に設けられた出光面33aから出光する。これにより、楔形レンズ部33が発光する。
【0043】
次に、楔形レンズ部33が均一に発光する(均一に発光しているように視認される)条件について比較例を用いて説明する。
【0044】
本発明者らは、楔形レンズ部33が均一に発光する(均一に発光しているように視認される)条件を求めるため、第1~第5比較例についてシミュレーションを行った。その結果、折り返し幅W1(第2導光部32のY軸方向の幅。
図3(a)参照):入光部幅W2(第1導光部31のY軸方向の幅。
図3(a)参照)を、1:2<W1:W2≦1:6にしたときに、ほぼ満足できる結果が得られることを確認した。以下、この点について、
図3、
図4を参照しながら説明する。
【0045】
第1比較例は、
図8に示す構成の車両用灯具1である。
【0046】
第2比較例は、
図3(a)に示す構成の車両用灯具10で、折り返し幅W1が1mm、入光部幅W2が6mm、W1:W2が1:6である。
【0047】
第3比較例は、
図3(a)に示す構成の車両用灯具10で、折り返し幅W1が2mm、入光部幅W2が6mm、W1:W2が1:3である。
【0048】
第4比較例は、
図3(a)に示す構成の車両用灯具10で、折り返し幅W1が2.5mm、入光部幅W2が6mm、W1:W2が1:2.4である。
【0049】
第5比較例は、
図3(a)に示す構成の車両用灯具10で、折り返し幅W1が3mm、入光部幅W2が6mm、W1:W2が1:2である。
【0050】
図3(a)は車両用灯具10(レンズ体30)の正面図、
図3(b)は
図3(a)のA-A断面における輝度分布である。
【0051】
図3(b)中の符号LAが示す直線(実線)は、グラフL1~L5の近似直線である。
図3(b)中、直線LAは、右下がりに引かれている。また、
図3(b)中の符号LBが示す点線は、直線LAに対して+5%の輝度を表す直線である。また、
図3(b)中の符号LCが示す点線は、直線LAに対して-5%の輝度を表す直線である。
【0052】
図3(b)の符号L1が示すグラフは、第1比較例のA-A断面に相当する断面における輝度分布を表す。
図3(b)の符号L2が示すグラフは、第2比較例のA-A断面における輝度分布を表す。
図3(b)の符号L3が示すグラフは、第3比較例のA-A断面における輝度分布を表す。
図3(b)の符号L4が示すグラフは、第4比較例のA-A断面における輝度分布を表す。
図3(b)の符号L5が示すグラフは、第5比較例のA-A断面における輝度分布を表す。
【0053】
図3(b)を参照すると、比較例2~5においては、楔形レンズ部33の基端部33cと先端部33dの間の出光面33aの輝度は、点線LBと点線LCとの間であり、概ね均一である。
【0054】
図4は、比較例1~5それぞれの最大輝度/最小輝度(MAX/MIN)を表す表である。最大輝度/最小輝度(MAX/MIN)が小さいほど、均一に発光している(均一に発光しているように視認される)ことを表す。
【0055】
図4を参照すると、比較例1の最大輝度/最小輝度(MAX/MIN)が2.03であるのに対して、比較例2~5の最大輝度/最小輝度(MAX/MIN)が1.77以下である。つまり、比較例1より、比較例2~5の方が均一に発光している(均一に発光しているように視認される)。
【0056】
以上のことから、折り返し幅W1:入光部幅W2を、1:2<W1:W2≦1:6にすることで、楔形レンズ部33が均一に発光する(均一に発光しているように視認される)ことが分かる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、楔形レンズ部33を均一に発光させる(均一に発光しているように視認させる)ことができる車両用灯具10を提供することができる。
【0058】
これは、主に、第2導光部32(第2全反射面32a及び第3全反射面32b)を設けたことで、相対強度が強い光(光源20の光軸AX
20に対して狭角方向の光(例えば、
図2(a)に示す光Ray2、3))が第2全反射面32a及び第3全反射面32bでこの順に全反射されて楔形レンズ部33の先端部33d又はその近傍まで到達し、楔形レンズ部33に設けられた出光面33aのうち楔形レンズ部33の先端部33d又はその近傍から出光することによるものである。
【0059】
また、本実施形態によれば、相対強度が弱い光(光源20の光軸AX
20に対して広角方向の光)、例えば、
図2(a)に示すRay1については、第1全反射面31b(及び全反射面33e
1~33e
n)で全反射され楔形レンズ部33に設けられた出光面33aのうち楔形レンズ部33の基端部33cから出光する。さらに、相対強度が弱い光(光源20の光軸AX
20に対して広角方向の光)、例えば、
図2(a)に示すRay4については、第2全反射面32a及び第3全反射面32b(及び全反射面33e
1~33e
n)でこの順に全反射されて楔形レンズ部33に設けられた出光面33aのうち楔形レンズ部33の基端部33c近傍から出光する。
【0060】
このように、相対強度が弱い光(例えば、
図2(a)に示すRay1、4)については、相対強度が強い光(例えば、
図2(a)に示すRay2、3)と比べ、レンズ体30内での光路長が短いため、レンズ体30内で吸光により光度が減衰する(ランベルト・ベールの法則)のが抑制される。また、相対強度が弱い光(例えば、
図2(a)に示すRay1)については、Ray2~4と比べ全反射の回数が少ないため、レンズ体30内で光度が減衰するのが抑制される。
【0061】
以上のように、第4全反射面33b(全反射面33e1~33en)に第2全反射面32a及び第3全反射面32bでこの順に全反射された反射光Ray2~Ray4及び第1全反射面31bで反射された反射光Ray1が入射することにより、楔形レンズ部33を均一に発光させる(均一に発光しているように視認させる)ことができる。
【0062】
次に、変形例について説明する。
【0063】
【0064】
上記実施形態では、第2導光部32と楔形レンズ部33との組み合わせを一組用いた例について説明したが、これに限らない。
【0065】
例えば、
図5に示すように、第2導光部32と楔形レンズ部33との組み合わせを二組用いてもよい。この場合、第2導光部32と楔形レンズ部33との一方の組み合わせと第2導光部32と楔形レンズ部33との他方の組み合わせは、光源20の光軸AX
20に対して回転対称に配置される。
【0066】
【0067】
上記実施形態では、光源20とレンズ体30との組み合わせを一組用いた例について説明したが、これに限らない。
【0068】
例えば、
図6に示すように、光源20とレンズ体30との組み合わせを複数組用いてもよい。この場合、光源20とレンズ体30との組み合わせは、並列に配置してもよい。そして、この並列に配置された各々のレンズ体30を一体成形してもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、光源20としてLEDを用いた例について説明したが、これに限らず、LED以外の光源を用いてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、第1全反射面31b等が45度傾斜している例について説明したが、これに限らず、45度以外の角度で傾斜していてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、第1全反射面31b等が45度傾斜している例について説明したが、これに限らず、45度以外の角度で傾斜していてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、第2導光部32において相対強度が強い光(光源20の光軸AX
20に対して狭角方向の光(例えば、
図2(a)に示す光Ray2、3))を二回全反射する例について説明したが、これに限らず、三回以上全反射させてもよい。
【0073】
【0074】
例えば、
図7に示すように、第1全反射面31b、第2全反射面32a及び第3全反射面32bの組み合わせを追加することで、相対強度が強い光(光源20の光軸AX
20に対して狭角方向の光)をさらに(例えば、三回以上)全反射させてもよい。このように、車両用灯具10の設置スペースに応じてレンズ体30の形状を自由に変形させることができる。
【0075】
また、上記実施形態では、本発明の車両用灯具をテールランプ、ストップランプ、ターンランプ、DRLランプ又はポジションランプ等の車両用信号灯具に適用した例について説明したが、これに限らない。例えば、本発明の車両用灯具を、ヘッドランプ(ハイビーム用、ロービーム用)、リヤフォグランプ等のその他の車両用信号灯具、アクセサリーランプ、車両用灯具全般のインナーレンズ、一般照明のインナーレンズに適用してもよい。
【0076】
上記実施形態で示した数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができるのは無論である。
【0077】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。上記実施形態の記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0078】
10…車両用灯具、20…光源、20a…発光面、30…レンズ体、31…第1導光部、31a…入光部、31a1…レンズ面、31b…第1全反射面、32…第2導光部、32a…第2全反射面、32b…第3全反射面、33…楔形レンズ部、33a…出光面、33b…第4全反射面、33c…基端部、33d…先端部、33e1…全反射面(構造物)、AX20…光軸、W1…折り返し幅、W2…入光部幅