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特許7499077管体の離脱防止継ぎ手、離脱防止構造、及び、離脱防止構造の施工方法
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  • 特許-管体の離脱防止継ぎ手、離脱防止構造、及び、離脱防止構造の施工方法 図1
  • 特許-管体の離脱防止継ぎ手、離脱防止構造、及び、離脱防止構造の施工方法 図2
  • 特許-管体の離脱防止継ぎ手、離脱防止構造、及び、離脱防止構造の施工方法 図3
  • 特許-管体の離脱防止継ぎ手、離脱防止構造、及び、離脱防止構造の施工方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】管体の離脱防止継ぎ手、離脱防止構造、及び、離脱防止構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/08 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
F16L21/08 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020101462
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2021195979
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】硲 昌也
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徹
(72)【発明者】
【氏名】間宮 聡
(72)【発明者】
【氏名】竹田 誠
(72)【発明者】
【氏名】濱口 武宣
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-158214(JP,A)
【文献】特開平10-274372(JP,A)
【文献】特開2017-002996(JP,A)
【文献】特開2010-144809(JP,A)
【文献】実開昭52-067612(JP,U)
【文献】特開平10-103571(JP,A)
【文献】特開平11-002374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材からなる管体(1)と、
前記管体(1)の挿し口の外周面側に挿入される押輪(2)と、
前記挿し口の外周面側に前記押輪(2)と同軸に挿入される継ぎ輪(3)と、
前記押輪(2)と前記継ぎ輪(3)を一体に締結する締結部材(4)と、
前記押輪(2)と前記継ぎ輪(3)の間に介装され、前記締結部材(4)の締結によって前記管体(1)の外周面に押し付けられるリング状の止水部材(5)と、
前記継ぎ輪(3)に設けられる第一ストッパ部(6)と、
前記管体(1)の外周面に取り付けられ、該管体(1)に引き抜き力が作用した際に前記第一ストッパ部(6)と当接して該管体(1)を抜け止めする第二ストッパ部(7)と、
を有し、
前記第一ストッパ部(6)が、リング状部材またはブロック状部材から構成され、前記継ぎ輪(3)の内周面側に前記第二ストッパ部(7)に臨むように形成された段部(15)にボルト(23)によって固定されている管体の離脱防止継ぎ手。
【請求項2】
前記第一ストッパ部(6)及び前記第二ストッパ部(7)が剛体からなる請求項1に記載の管体の離脱防止継ぎ手。
【請求項3】
前記第二ストッパ部(7)の表面、及び、該第二ストッパ部(7)の周囲の前記管体(1)の外周面に、該表面及び該外周面を被覆する樹脂を含む積層部(25)を設けた請求項2に記載の管体の離脱防止継ぎ手。
【請求項4】
軸方向に沿って隣り合うように配置された複数の管体(1)の挿し口に、それぞれ対向するように取り付けられた請求項1から3のいずれか1項に記載の管体の離脱防止継ぎ手と、
前記管体の離脱防止継ぎ手の前記挿し口側の端部同士を連結する連結継ぎ輪(8)と、
を有する管体の離脱防止構造。
【請求項5】
樹脂材を有する管体(1)の挿し口の外周面側に、押輪(2)、リング状の止水部材(5)、継ぎ輪(3)をこの順序で挿入する挿入工程と、
前記管体(1)の外周面に、該管体(1)と別体であり、該管体(1)に引き抜き力が作用した際に前記継ぎ輪(3)に設けられた第一ストッパ部(6)と当接して該管体(1)を抜け止めする第二ストッパ部(7)を取り付ける取付工程と、
前記押輪(2)と前記継ぎ輪(3)を締結部材(4)で一体に締結し、該締結部材(4)の締結によって、該押輪(2)と該継ぎ輪(3)の間に介装されたリング状の止水部材(5)を前記管体(1)の外周面に押し付ける締結工程と、
軸方向に沿って隣り合うように配置された複数の管体(1)の挿し口にそれぞれ取り付けられた前記継ぎ輪(3)同士を連結継ぎ輪(8)で連結する連結工程と、
を有する管体の離脱防止構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管体同士の離脱を防止しつつ連結する離脱防止継ぎ手、離脱防止構造、及び、離脱防止構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用水や上水道等の管路においては、筒状の継ぎ手によって管体の挿し口同士が連結される。管体と継ぎ手との間には、漏水を防止する水密部材が介装されるとともに、継ぎ手と管体の離脱を防止するための離脱防止構造が採用される。
【0003】
例えば、特許文献1に示す管体の離脱防止機構においては、挿し側管体1の外周面先端に係止突起3を設けるとともに、受け側管体2の内周面に抜け止め部材4と水密部材5を設けている。
【0004】
係止突起3には、挿し側管体1の先端に向かうほど径方向の肉厚を小さくする傾斜面3aが形成されるとともに、奥側端部に、径方向外向きに起立した当接壁3bが形成されている。係止突起3は、例えば、樹脂を含浸させた樹脂含浸繊維を複数積層した積層体からなる硬質の部材である。抜け止め部材4には、その内径側に、受け側管体2の先端に向かうほど径方向の肉厚を小さくする丸め加工部4aが形成されるとともに、奥側端部に、径方向内向きに起立した当接壁4bが形成されている。水密部材5には、その内径側に、径方向内向きに起立した環状突部5aが形成されており、この環状突部5aには、受け側管体2の先端に向かうほど径方向の肉厚を小さくする傾斜面5bが形成されるとともに、奥側端部に、径方向内向きに起立した起立面5cが形成されている。抜け止め部材4及び水密部材5には、例えば、ゴムなどの弾性体が採用される。
【0005】
挿し側管体1を受け側管体2に連結するときは、抜け止め部材4に形成された丸め加工部4a、及び、水密部材5の環状突部5aに形成された傾斜面5bが変形しつつ、係止突起3に形成された傾斜面3aによって案内される。また、地震のときのように両管体1、2に引き抜き力が作用したときは、係止突起3に形成された当接壁3bに、抜け止め部材4に形成された当接壁4bが当接して、離脱防止作用が発揮される(特許文献1の段落0016~0025、図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-2996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に係る構成は、挿し側管体1と受け側管体2の連結の際に、硬質の部材からなる係止突起3に、弾性部材からなる抜け止め部材4及び水密部材5が変形しつつ摩擦力を受けながら挿入される。このため、その挿入の際に、挿入抵抗に抗して管体を挿し込まなければならず、その作業に大きな労力を要するとともに、抜け止め部材4や水密部材5に過大な負荷が作用してその耐久性が低下する虞がある。
【0008】
そこで、この発明は、管体と継ぎ輪の間に設けられる抜け止め部材や水密部材の耐久性を向上して、管体の離脱防止作用及び止水作用の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、この発明では、樹脂材からなる管体と、前記管体の挿し口の外周面側に挿入される押輪と、前記挿し口の外周面側に前記押輪と同軸に挿入される継ぎ輪と、前記押輪と前記継ぎ輪を一体に締結する締結部材と、前記押輪と前記継ぎ輪の間に介装され、前記締結部材の締結によって前記管体の外周面に押し付けられるリング状の止水部材と、前記継ぎ輪に設けられる第一ストッパ部と、前記管体の挿入前は該管体と別体であり、該管体の挿入後にその挿し口の外周面に取り付けられ、該管体に引き抜き力が作用した際に前記第一ストッパ部と当接して該管体を抜け止めする第二ストッパ部と、を有する管体の離脱防止継ぎ手を構成した。
【0010】
このようにすると、管体に押輪、継ぎ輪、止水部材、及び、第一ストッパ部を挿入した後に、この管体に第二ストッパ部を設けることができるため、止水部材及び第一ストッパ部の挿入時には、第二ストッパ部からの挿入抵抗を受けない。このため、管体の連結作業をスムーズに行うことができるとともに、止水部材及び第一ストッパ部の耐久性を向上して、管体の離脱防止作用及び止水作用の向上を図ることができる。
【0011】
前記構成においては、前記第一ストッパ部及び前記第二ストッパ部が剛体からなる構成とすることができる。
【0012】
このようにすると、管体に引き抜き力が作用したときに、剛体からなるストッパ部同士が当接するため、高い離脱防止作用が発揮される。また、ゴムなどの弾性部材からなるストッパ部と比較して剛体からなるストッパ部は耐久性があるため、メンテナンス頻度を減らす効果も期待できる。
【0013】
前記第一ストッパ部及び前記第二ストッパ部を剛体とした構成においては前記第二ストッパ部の表面、及び、該第二ストッパ部の周囲の前記管体の外周面に、該表面及び該外周面を被覆する樹脂を含む積層部を設けた構成とすることができる。
【0014】
このようにすると、いずれも剛体である第一ストッパ部と第二ストッパ部が積層部を介して当接するため、両ストッパ部同士が直接強く当接することによるクラックの発生などのトラブルを防止することができる。また、第二ストッパ部と管体の外周面が積層部で被覆されているため、第一ストッパ部との当接によって第二ストッパ部が管体の外周面から脱落するのを防止することができる。
【0015】
また、この発明においては、軸方向に沿って隣り合うように配置された複数の管体の挿し口に、それぞれ対向するように取り付けられた、上記の管体の離脱防止継ぎ手と、前記管体の離脱防止継ぎ手の前記挿し口側の端部同士を連結する連結継ぎ輪と、を有する管体の離脱防止構造を構成した。
【0016】
このようにすると、大地震などによって接続した管体同士が大きく伸縮したときに、その伸縮を複数の管体で吸収することができるため、一部の管体に伸縮が集中してストッパ部が破損し、継ぎ輪から脱落するトラブルを確実に防止することができる。
【0017】
さらに、この発明においては、樹脂材を有する管体の挿し口の外周面側に、押輪、リング状の止水部材、継ぎ輪をこの順序で挿入する挿入工程と、前記管体の外周面に、該管体と別体であり、該管体に引き抜き力が作用した際に前記継ぎ輪に設けられた第一ストッパ部と当接して該管体を抜け止めする第二ストッパ部を取り付ける取付工程と、前記押輪と前記継ぎ輪を締結部材で一体に締結し、該締結部材の締結によって、該押輪と該継ぎ輪の間に介装されたリング状の止水部材を前記管体の外周面に押し付ける締結工程と、軸方向に沿って隣り合うように配置された複数の管体の挿し口にそれぞれ取り付けられた前記継ぎ輪同士を連結継ぎ輪で連結する連結工程と、を有する管体の離脱防止構造の施工方法を構成した。
【0018】
このようにすると、管体に押輪、止水部材、及び、第一ストッパ部を挿入した後に、この管体に第二ストッパ部が設けられるため、止水部材及び第一ストッパ部の挿入時には、第二ストッパ部からの挿入抵抗を受けない。このため、管体の連結作業をスムーズに行うことができるとともに、止水部材及び第一ストッパ部の耐久性を向上して、管体の離脱防止作用及び止水作用の向上を図ることができる。しかも、隣り合う継ぎ輪同士が連結継ぎ輪で連結されているため、大地震などによって接続した管体同士が大きく伸縮したときに、その伸縮を複数の管体で吸収することができ、一部の管体に伸縮が集中して継ぎ輪から脱落するトラブルを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明では、管体の挿入前に、管体に設けられる第二ストッパ部を管体と別体とし、その挿入後に、管体の挿し口の外周面に第二ストッパ部を取り付けるようにしたので、止水部材及び第一ストッパ部の挿入時には、第二ストッパ部からの挿入抵抗を受けない。このため、管体の連結作業をスムーズに行うことができるとともに、止水部材及び第一ストッパ部の耐久性を向上して、管体の離脱防止作用及び止水作用の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明に係る管体の離脱防止構造の一実施形態を示す断面図
図2】この発明に係る管体の離脱防止構造の施工方法の一実施形態を示す断面図であって、(a)は管体に押輪、止水部材、継ぎ輪をこの順序で挿入した状態、(b)は継ぎ輪に第一ストッパ部を設けた状態、(c)は管体の開口部に第二ストッパ部を取り付けた状態、(d)は押輪と継ぎ輪を締結部材で一体に締結した状態、(e)は継ぎ輪同士を連結継ぎ輪で連結した状態
図3図1に示す離脱防止構造において、第一ストッパ部と第二ストッパ部が当接して管体が抜け止めされている状態を示す断面図
図4図1に示す離脱防止構造の断面図であって、(a)は管体同士が最も伸びた状態、(b)は管体同士が最も縮んだ状態
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明に係る管体の離脱防止構造、及び、離脱防止継ぎ手を、図面を用いて説明する。図1図2(a)などに示すように、この離脱防止構造に用いられる離脱防止継ぎ手は、樹脂材からなる管体1と、管体1の挿し口の外周面側に挿入される押輪2と、挿し口の外周面側に押輪2と同軸に挿入される継ぎ輪3と、押輪2と継ぎ輪3を一体に締結する締結部材4と、押輪2と継ぎ輪3の間に介装されるリング状の止水部材5と、継ぎ輪3に設けられる第一ストッパ部6と、管体1の外周面側に取り付けられる第二ストッパ部7を備えている。離脱防止構造は、離脱防止継ぎ手の継ぎ輪3同士を連結継ぎ輪8で連結することで構成される。
【0022】
管体1は、その全長に亘って外径が一定の樹脂管である。具体的には、繊維強化プラスチック(FRP)とモルタル層を積層した強化プラスチック複合管(FRPM管)である。管体1の挿し口の外周面側には、第二ストッパ部7を取り付けるための周溝9がその全周に亘って形成されている。周溝9内には、周方向の所定角度ごとに、内周側に貫通しない有底のピン穴10が形成されている。周溝9の代わりに、第二ストッパ部7の軸方向の一端部を突き当てることが可能な段部を形成することもできる。
【0023】
押輪2は、その中心に管体1を通す貫通穴11が形成された鋼製のリング状の部材である。このリング状の部分には、周方向の所定角度ごとに、その軸方向に締結部材4を通すための貫通穴12が形成されている。止水部材5と対向する押輪2の軸方向端面は、この押輪2の軸方向中心に向かって傾斜する法線を有するテーパ面13となっている。押輪2の中心に形成された貫通穴11と管体1の外周面との間には、隙間gが形成されている。
【0024】
継ぎ輪3は、その中心に管体1を通す貫通穴14が形成された鋼製の略筒状の部材である。この筒状の内周面側には、その内径の大きさが階段状に変化する段部15が形成されている。この段部15内には、継ぎ輪3の軸方向に延びる、有底のねじ穴16が形成されている。また、筒状の外周面側端部には、径方向外向きに起立する第一フランジ17、第二フランジ18が形成されている。第一フランジ17には、締結部材4を通すための貫通穴19が、第二フランジ18には、継ぎ輪3と連結継ぎ輪8を連結する連結部材20を通すための貫通穴21が、それぞれ形成されている。継ぎ輪3の止水部材5に当接する面は、この止水部材5に向かって突出した円弧面22となっている。
【0025】
締結部材4は、T字形の頭部を有するTボルト4aとナット4bで構成される。Tボルト4aの代わりに、六角ボルトなどの他のタイプのボルトを採用することもできる。
【0026】
止水部材5は、弾性ゴムで構成されている。Tボルト4aを継ぎ輪3の第一フランジ17に形成された貫通穴19を通して押輪2に形成された貫通穴12に挿し込み、この押輪2の反対側からナット4bをねじ込んで締結部材4を締結すると、押輪2と継ぎ輪3が軸方向に互いに接近し、この押輪2と継ぎ輪3の間に介装された止水部材5が、管体1の外周面に押し付けられる。この押し付けによって水密性が高まるため、管体1と継ぎ輪3との間からの漏水を確実に防止することができる。本構成においては、押輪2にテーパ面13が、継ぎ輪3に円弧面22がそれぞれ形成されているため、このテーパ面13及び円弧面22によって止水部材5が管体1の外周面に強く押し付けられる。このため、管体1と継ぎ輪3の間の高い水密性を確保することができる。
【0027】
第一ストッパ部6は、リング状部材を周方向に2分割した、2個の半リング状部材から構成される。第一ストッパ部6の素材は、剛体である鋼である。リング状の部分には、周方向の所定角度ごとに、軸方向に貫通する貫通穴が形成されている。この第一ストッパ部6を継ぎ輪3の内周面側に形成された段部15に嵌め込んだ上で、リング状の部分に形成された貫通穴に六角ボルト23を挿し込み、継ぎ輪3に形成されたねじ穴16にこの六角ボルト23をねじ込むと、第一ストッパ部6は継ぎ輪3の内周面に固定される。この固定状態で、第一ストッパ部6のリング内周面と管体1の外周面との間には、隙間gが形成されている。なお、第一ストッパ部6は、継ぎ輪3と一体的に形成することもできる。
【0028】
上記のように、押輪2の中心に形成された貫通穴11と管体1の外周面との間、及び、第一ストッパ部6のリング内周面と管体1の外周面との間に隙間g、gが形成されているため、管体1と継ぎ輪3との間で若干の屈曲が許容されている。
【0029】
第二ストッパ部7は、リング状部材を周方向に2分割した、2個の半リング状部材から構成される。第二ストッパ部7の素材は、第一ストッパ部6と同様に剛体である鋼である。リング状の部分には、周方向の所定角度ごとに、径方向に貫通する貫通穴が形成されている。この第二ストッパ部7を管体1の外周面側に形成された周溝9(図2(a)参照)に嵌め込んだ上で、リング状の部分に形成された貫通穴及びピン穴10(図2(a)参照)にピン24を挿入する。
【0030】
第一ストッパ部6及び第二ストッパ部7の形状はリング状に限定されない。管体1に引き抜き力が作用した際に両ストッパ部6、7が当接してその抜け止め作用を発揮できるのであれば、例えば、周方向に所定角度ごとに設けたブロック状部材とすることもできる。
【0031】
第二ストッパ部7の表面、及び、第二ストッパ部7の周囲の管体1の外周面には、この表面及び外周面を被覆する、樹脂含浸繊維からなる積層部25が設けられる。積層部25の素材はこれに限定されず、樹脂材、金属、モルタル、又はこれらを積層した積層体も適宜採用することができる。
【0032】
第一ストッパ部6及び第二ストッパ部7の素材を剛体とすると、管体1に引き抜き力が作用して両ストッパ部6、7が当接したときに高い離脱防止作用が発揮される。また、ゴムなどの弾性部材からなるストッパ部と比較して剛体からなるストッパ部6、7は耐久性があるため、メンテナンス頻度を減らす効果も期待できる。しかも、第二ストッパ部7に積層部25を設けたので、いずれも剛体である第一ストッパ部6と第二ストッパ部7が積層部25を介して当接する。このため、両ストッパ部6、7同士が直接強く当接することによって、クラックが発生するなどのトラブルを防止することができる。また、第二ストッパ部7と管体1の外周面が連続する積層部25で被覆されているため、第一ストッパ部6との当接によって第二ストッパ部7が管体1の外周面から脱落するのを防止することができる。
【0033】
この実施形態に示すように、第二ストッパ部7に積層部25を設ける代わりに、第一ストッパ部6に積層部25を設けた構成とすることもできる。また、両ストッパ部6、7の両方に積層部25を設けた構成とすることもできる。あるいは、いずれのストッパ部6、7にも積層部25を設けない構成とすることもできる。
【0034】
上記実施形態では、第二ストッパ部7とその周囲の管体1の外周面のみに積層部25を形成したが、管体1の挿し口端部を巻き込むように管体1の内周面まで積層部25を延設することもできる。このようにすると、例えば、地震の揺れによって隣り合う管体1の挿し口同士が接触したときに(図4(b)参照)、その挿し口を損傷から保護することができる。
【0035】
連結継ぎ輪8は、その中心に管体1を通す貫通穴26が形成された鋼製の略筒状の部材である。筒状の外周面側両端には、径方向外向きに起立するフランジ27が形成されている。各フランジ27には、継ぎ輪3と連結継ぎ輪8を連結する連結部材20を通すための貫通穴28が形成されている。この連結部材20は、六角ボルト20aとナット20bで構成される。六角ボルト20aを継ぎ輪3の第二フランジ18に形成された貫通穴21を通して連結継ぎ輪8に形成された貫通穴28に挿し込み、この連結継ぎ輪8の反対側からナット20bをねじ込んで連結部材20を締結すると、継ぎ輪3と連結継ぎ輪8が連結される。継ぎ輪3の第二フランジ18と連結継ぎ輪8のフランジ27の間にはリング状の水密部材29が挟み込まれており、この水密部材29によって両フランジ18、27間の水密が確保されている。
【0036】
管体の離脱防止構造の施工方法の手順を図2(a)~(e)で説明する。この施工方法では、まず、管体1の挿し口の外周面側に、押輪2、リング状の止水部材5、継ぎ輪3をこの順序で挿入する(挿入工程)(図2(a)参照)。この段階では、管体1の挿し口に第二ストッパ部7(図2(c)参照)がまだ取り付けられていないので、止水部材5などを抵抗なく挿入することができる。このため、その作業をスムーズに行うことができるとともに、止水部材5などの挿入の際に過大な負荷が作用しないためその耐久性を向上することができる。
【0037】
管体1に押輪2などを挿入したら、継ぎ輪3の内周面側に形成された段部15に、第一ストッパ部6を嵌め込み、第一ストッパ部6に形成された貫通穴を通って継ぎ輪3に形成されたねじ穴16に六角ボルト23をねじ込み、この第一ストッパ部6を継ぎ輪3の内面側に固定する(図2(b)参照)。
【0038】
次に、管体1の挿し口の外周面側に形成された周溝9に、第二ストッパ部7を嵌め込み、第二ストッパ部7に形成された貫通穴を通って管体1に形成されたピン穴10に至るピン24を挿入する(取付工程)。さらに、第二ストッパ部7の表面、及び、第二ストッパ部7の周囲の管体1の外周面に、樹脂含浸繊維からなる積層部25を設ける(図2(c)参照)。
【0039】
積層部25を設ける方法は特に限定されないが、例えば、ハンドレイアップ法を採用することができる。ハンドレイアップ法は、積層部25を設けたい部分(この実施形態では、第二ストッパ部7の表面、及び、第二ストッパ部7の周囲の管体1の外周面)にマット状の強化繊維をセットし、刷毛やローラなどの手作業によってその強化繊維に樹脂を含浸させる方法である。ハンドレイアップ法によると、積層部25を設けたい部分に樹脂と強化繊維の混合物をスプレー塗布する従来のライニング方法よりも均一にFRPライニングを施すことができる。
【0040】
さらに、Tボルト4aを継ぎ輪3の第一フランジ17に形成された貫通穴19を通して押輪2に形成された貫通穴12に挿し込み、この押輪2の反対側からナット4bをねじ込んで締結部材4を締結すると、押輪2と継ぎ輪3が軸方向に互いに接近し、この押輪2と継ぎ輪3の間に介装された止水部材5が、管体1の外周面に押し付けられる(締結工程)(図2(d)参照)。この押し付けによって水密性が高まるため、管体1と継ぎ輪3との間からの漏水を確実に防止することができる。
【0041】
最後に、六角ボルト20aを継ぎ輪3の第二フランジ18に形成された貫通穴21を通して連結継ぎ輪8に形成された貫通穴28に挿し込み、この連結継ぎ輪8の反対側からナット20bをねじ込んで連結部材20を締結すると、継ぎ輪3と連結継ぎ輪8が連結される(連結工程)。継ぎ輪3の第二フランジ18と連結継ぎ輪8のフランジ27の間にはリング状の水密部材29が挟み込まれており、この水密部材29によって両フランジ18、27間の水密が確保されている((図2(e)参照))。
【0042】
離脱防止継ぎ手を設けた管体1に引き抜き力(図3中の白抜き矢印で示す方向の力)が作用すると、図3に示すように、離脱防止継ぎ手に対して、管体1がその力の作用方向にスライドし、第一ストッパ部6と第二ストッパ部7が当接する。そして、この当接によって管体1のスライドが阻止されて抜け止めされる。このとき、第一ストッパ部6と第二ストッパ部7が積層部25を介して当接するため、両ストッパ部6、7同士が直接強く当接することによって、クラックが発生するなどのトラブルを防止することができる。また、第二ストッパ部7と管体1の外周面が連続する積層部25で被覆されているため、第一ストッパ部6との当接によって第二ストッパ部7が管体1の外周面から脱落するのを防止することができる。
【0043】
また、この離脱防止構造においては、図4(a)に示すように、隣り合う管体1が最も離間して、両管体1に取り付けられた第二ストッパ部7がいずれも第一ストッパ部6に当接した最大長の状態から、図4(b)に示すように、隣り合う管体1がその挿し口で当接した最小長の状態まで、非常に大きな伸縮可能長さを確保することができる。このため、地震の際に管路が大きく伸縮したときでも、管体1の離脱を確実に防止することができる。
【0044】
上記の実施形態において説明した管体1の離脱防止継ぎ手、離脱防止構造、及び、離脱防止構造の施工方法はあくまでも例示に過ぎず、管体1と継ぎ輪3の間に設けられる抜け止め部材や止水部材5の耐久性を向上して、管体1の離脱防止作用及び止水作用の向上を図る、という本願発明の課題を解決し得る限りにおいて、その構成部材の形状、配置、個数、素材等は適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 管体
2 押輪
3 継ぎ輪
4 締結部材
4a Tボルト
4b ナット
5 止水部材
6 第一ストッパ部
7 第二ストッパ部
8 連結継ぎ輪
9 周溝
10 ピン穴
11、12 (押輪に形成された)貫通穴
13 テーパ面
14、19、21 (継ぎ輪に形成された)貫通穴
15 段部
16 ねじ穴
17 第一フランジ
18 第二フランジ
20 連結部材
20a 六角ボルト
20b ナット
22 円弧面
23 六角ボルト
24 ピン
25 積層部
26、28 (連結継ぎ輪に形成された)貫通穴
27 フランジ
29 水密部材
図1
図2
図3
図4