IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンナイ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ガスコンロ 図1
  • 特許-ガスコンロ 図2
  • 特許-ガスコンロ 図3
  • 特許-ガスコンロ 図4
  • 特許-ガスコンロ 図5
  • 特許-ガスコンロ 図6
  • 特許-ガスコンロ 図7
  • 特許-ガスコンロ 図8
  • 特許-ガスコンロ 図9
  • 特許-ガスコンロ 図10
  • 特許-ガスコンロ 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】ガスコンロ
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20240606BHJP
   F24C 3/02 20210101ALI20240606BHJP
【FI】
F24C3/12 S
F24C3/02 H
F24C3/12 R
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020106764
(22)【出願日】2020-06-22
(65)【公開番号】P2022001812
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】丹下 雅斗
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-014342(JP,A)
【文献】特開平08-312955(JP,A)
【文献】特開2010-216693(JP,A)
【文献】特開2010-185634(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0217503(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/12
F24C 3/02
F23N 1/00
F23N 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板上の五徳に載置した調理容器を加熱するコンロバーナと、コンロバーナの点火操作及び消火操作を行う手動の操作部材と、コンロバーナに対するガス供給路に介設した手動操作される手動式火力調節弁と、ガス供給路に手動式火力調節弁と直列に介設したモータで駆動される電動式火力調節弁とを備えるガスコンロであって、操作部材による点火操作時に、手動式火力調節弁を最小火力位置と最大火力位置との間の所定の点火火力位置にする連動機構が設けられるものにおいて、
操作部材による点火操作時に、電動式火力調節弁を、最小火力位置と最大火力位置との間の所定の中間火力位置にするようにし、この中間火力位置は、手動式火力調節弁を点火火力位置から最大火力位置側に操作しても、コンロバーナの火力が点火火力位置で得られる火力より大きくなることを抑制できる位置に設定されることを特徴とするガスコンロ。
【請求項2】
前記五徳上の調理容器の有無を検知する調理容器検知手段を備え、前記操作部材による点火操作時に、調理容器検知手段で調理容器無しを検知した場合は、前記電動式火力調節弁を全閉状態にして、コンロバーナへのガス供給を停止するようにし、操作部材による消火操作時に、電動式火力調節弁を所定の待機位置に切換えて次の点火操作まで待機させるようにし、この待機位置は、全閉状態又は全閉状態の近傍の位置に設定され、操作部材による点火操作時に、調理容器検知手段で調理容器有りを検知した場合は、電動式火力調節弁を待機位置から前記中間火力位置に切換えることを特徴とする請求項1記載のガスコンロ。
【請求項3】
前記操作部材による点火操作後、前記コンロバーナへの点火がコンロバーナに付設する火炎検知素子で検知されたときは、前記電動式火力調節弁を前記中間火力位置から最大火力位置に切換えることを特徴とする請求項1又は2記載のガスコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天板上の五徳に載置した調理容器を加熱するコンロバーナと、コンロバーナの点火操作及び消火操作を行う手動の操作部材と、コンロバーナに対するガス供給路に介設した手動操作される手動式火力調節弁と、ガス供給路に手動式火力調節弁と直列に介設したモータで駆動される電動式火力調節弁とを備えるガスコンロに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のガスコンロとして、操作部材による点火操作時に、手動式火力調節弁を所定の火力位置にする連動機構を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、特許文献1に記載のものでは、上記所定の火力位置を最大火力位置に設定している。然し、このものでは、点火時に、調理容器の底面から外方に火炎が溢れ出る炎溢れを生じて、使用者を驚かせてしまうことがある。
【0003】
そこで、上記所定の火力位置を、最小火力位置と最大火力位置との間の点火火力位置に設定し、コンロバーナの火力を中火程度にして、点火時の炎溢れを抑制するようにしたものも従来知られている(例えば、特許文献2参照)。然し、使用者によっては、強い火力で調理を開始したくて、操作部材による点火操作とほぼ同時に手動式火力調節弁を点火火力位置から最大火力位置に切換え操作してしまうことがある。この場合は、点火時の炎溢れを抑制することができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-108344号公報
【文献】特開平8-312955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、点火時の炎溢れをより確実に抑制することができるようにしたガスコンロを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、天板上の五徳に載置した調理容器を加熱するコンロバーナと、コンロバーナの点火操作及び消火操作を行う手動の操作部材と、コンロバーナに対するガス供給路に介設した手動操作される手動式火力調節弁と、ガス供給路に手動式火力調節弁と直列に介設したモータで駆動される電動式火力調節弁とを備えるガスコンロであって、操作部材による点火操作時に、手動式火力調節弁を最小火力位置と最大火力位置との間の所定の点火火力位置にする連動機構が設けられるものにおいて、操作部材による点火操作時に、電動式火力調節弁を、最小火力位置と最大火力位置との間の所定の中間火力位置にするようにし、この中間火力位置は、手動式火力調節弁を点火火力位置から最大火力位置側に操作しても、コンロバーナの火力が点火火力位置で得られる火力より大きくなることを抑制できる位置に設定されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、操作部材による点火操作とほぼ同時に手動式火力調節弁を点火火力位置から最大火力位置に切換え操作しても、点火操作時は電動式火力調節弁が中間火力位置になっているため、コンロバーナの火力が点火火力位置で得られる火力より大きくなることが抑制される。その結果、点火時の炎溢れをより確実に抑制することができる。
【0008】
また、本発明においては、五徳上に調理容器が無い状態でのコンロバーナの点火を防止するため、五徳上の調理容器の有無を検知する調理容器検知手段を設け、操作部材による点火操作時に、調理容器検知手段で調理容器無しを検知した場合は、電動式火力調節弁を全閉状態にして、コンロバーナへのガス供給を停止することが望まれる。更に、操作部材による消火操作時に、電動式火力調節弁を所定の待機位置に切換えて次の点火操作まで待機させることが考えられる。この場合、待機位置を中間火力位置に設定すれば、点火操作時に電動式火力調節弁を駆動せずに済む。然し、これでは、点火操作時に調理容器無しを検知した場合、電動式火力調節弁を中間火力位置から全閉状態に切換えることが必要になり、この切換に要する時間中に生ガスが放出されてしまう。
【0009】
これに対し、上記待機位置を全閉状態又は全閉状態の近傍の位置に設定しておけば、点火操作時に調理容器無しを検知した場合、電動式火力調節弁を直ちに全閉状態にして、生ガスの放出を防止でき有利である。尚、このものでは、点火操作時に、調理容器検知手段で調理容器有りを検知した場合、電動式火力調節弁を全閉状態又は全閉状態の近傍の待機位置から中間火力位置に切換えればよい。
【0010】
また、本発明において、操作部材による点火操作後、コンロバーナへの点火がコンロバーナに付設する火炎検知素子で検知されたときは、電動式火力調節弁を中間火力位置から最大火力位置に切換えることが望ましい。これによれば、コンロバーナへの点火検知後は、コンロバーナの火力を、電動式火力調節弁で律速されることなく、手動式火力調節弁により最大火力まで増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態のガスコンロの斜視図。
図2】実施形態のガスコンロのガス配管を示す回路図。
図3】実施形態のガスコンロに設けられるコンロバーナ用バルブユニットの切断側面図。
図4】コンロバーナ用バルブユニットに設けられる電磁安全弁と元弁の操作部材による動作を示す要部の切断側面図。
図5】コンロバーナ用バルブユニットに設けられる操作部材の位置検出のためのマイクロスイッチの作動を示す説明図。
図6】コンロバーナ用バルブユニットに設けられる手動式火力調節弁による火力変化を示すグラフ。
図7図3のVII-VII線で切断した切断平面図。
図8】コンロバーナ用バルブユニットに設けられる電動式火力調節弁の拡大切断側面図。
図9】コンロバーナ用バルブユニットに設けられる電動式火力調節弁による火力変化を示すグラフ。
図10】実施形態のガスコンロに設けられる調理容器検知手段の動作を模式的に示す説明図。
図11】実施形態のガスコンロにおける電動式火力調節弁の制御内容を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示す本発明の実施形態のガスコンロは、コンロ本体1の上面を覆う天板2に開設した左右一対のバーナ用開口(図示せず)に臨む左右一対のコンロバーナ3,3と、左右夫々のバーナ用開口を囲うようにして天板2上に載置される左右一対の五徳4,4と、コンロ本体1に組み込んだグリル5とを備えている。コンロ本体1の前面パネル11には、左右のコンロバーナ用の点消火キー12,12と、これら点消火キー12,12の上方に位置する横方向に揺動自在なコンロバーナ用の火力調節レバー13,13と、グリル用の点消火キー14と、その上方に位置する横方向に揺動自在なグリル5の上火バーナ用と下火バーナ用の上下一対の火力調節レバー15、15とが設けられている。
【0014】
図2を参照して、ガス供給路6は、左右のコンロバーナ3,3にガスを供給するコンロバーナ用の一対のガス供給路6a,6aとグリル5の上火バーナ51と下火バーナ52とにガスを供給するグリル用のガス供給路6bとに分岐されている。各コンロバーナ用ガス供給路6aには、電磁安全弁71と元弁72と電動式火力調節弁73と火力調節レバー13に連動する手動式火力調節弁74とを備えるコンロバーナ用のバルブユニット7が介設され、グリル用ガス供給路6bには、電磁安全弁81と元弁82と上火バーナ51用の火力調節レバー15に連動する手動式の上火バーナ用火力調節弁83と下火バーナ52用の火力調節レバー15に連動する手動式の下火バーナ用火力調節弁83とを備えるグリル用のバルブユニット8が介設されている。
【0015】
以下、図3を参照して、コンロバーナ用のバルブユニット7について詳述する。尚、グリル用のバルブユニット8の電磁安全弁81、元弁82及び手動式火力調節弁83,83は、コンロバーナ用のバルブユニット7の後述する電磁安全弁71、元弁72及び手動式火力調節弁74と同様の構造になっており、その説明は省略する。
【0016】
コンロバーナ用のバルブユニット7は、コンロバーナ用ガス供給路6aの上流側部分を接続する流入口70aとコンロバーナ用ガス供給路6aの下流側部分を接続する流出口70bとを有するバルブケーシング70を備えており、このバルブケーシング70内に、上流側から順に、電磁安全弁71と元弁72と電動式火力調節弁73と手動式火力調節弁74とが組み込まれている。
【0017】
電磁安全弁71は、弁座711と、弁座711に上流側たる後方(図3で左方)から着座可能な弁体712と、弁体712に後方にのびる弁軸712aを介して連結されるアーマチュア713と、弁体712が弁座711から離隔した所定の開弁位置に変位したときにアーマチュア713が当接する電磁石714と、弁体712を弁座711に着座する閉弁位置(図3に示す位置)に付勢する弁バネ715とを備えている。元弁72は、弁座721と、弁座721に後方から着座可能で、後述する操作ロッド76に固定された弁体722と、弁体722を弁座721に着座する閉弁位置(図3に示す位置)に付勢する弁バネ723とを備えている。
【0018】
また、バルブユニット7は、バルブケーシング70の前端に取付けたガイドブロック751に前後方向に摺動自在に支持される手動の操作部材75を備えている。操作部材75は、バネ752で前方に付勢されて点消火キー12の裏面に当接しており、点消火キー12を介して前端の消火位置(図3に示す位置)から後端の点火位置まで押し操作される。更に、操作部材75は、ハート形のカム溝753aとこれに係合する係合子753bとから成るプッシュプッシュ機構753により、点火位置での押圧解除で消火位置と点火位置との間の所定の燃焼位置に移動して係止され、燃焼位置での押し操作後の押圧解除で消火位置に戻される。
【0019】
また、操作部材75の後方に対向する操作ロッド76がバルブケーシング70内に前後方向に進退自在に挿入されている。操作部材75を消火位置から押し操作すると、操作部材75に押されて操作ロッド76が後方に移動し、操作ロッド76に固定した元弁72の弁体722が弁バネ723の付勢力に抗して弁座721から離れ、元弁72が開弁される。操作ロッド76が更に後方に移動すると、電磁安全弁71の弁体712に操作ロッド76が当接して、弁体712が弁バネ715の付勢力に抗して後方に押動される。そして、操作部材75を点火位置まで押し操作したとき、図4(a)に示す如く、アーマチュア713が電磁石714に当接する開弁位置まで弁体712が押動されて電磁安全弁71が強制開弁されるようにしている。また、操作部材75を点火位置での押圧解除で弁バネ723及びバネ752の付勢力により燃焼位置に戻すと、図4(b)に示す如く、元弁72は開弁状態に維持されるが、操作ロッド76の後端が電磁安全弁71の弁座711よりも前方に変位して、電磁安全弁71の強制開弁が解除される。更に、操作部材75を燃焼位置での押し操作後の押圧解除で弁バネ723及びバネ752の付勢力により消火位置に戻すと、元弁72が閉弁される。
【0020】
図5を参照して、ガイドブロック751には、操作部材75の位置を検出するマイクロスイッチ77が設けられている。このマイクロスイッチ77は、第1と第2の2つの接点771,772を有している。操作部材75が消火位置に存するときは、図5(a)に示す如く、第1と第2の両接点771,772がオフしているが、操作部材75が燃焼位置に存するときは、図5(b)に示す如く、操作部材75に設けた第1のカム部754に押されて第1接点771がオンし、操作部材75が点火位置に存するときは、図5(c)に示す如く、操作部材75に設けた第2のカム部754に押されて、第1接点771に加えて第2接点772がオンする。
【0021】
第1と第2の各接点771,772のオンオフ信号は、制御手段たる図外のコントローラに入力される。コントローラは、操作部材75の消火位置からの押し操作で、操作部材75が燃焼位置に到達して第1接点771がオンしたときに、電磁安全弁71の電磁石714への通電を開始し、操作部材75が点火位置に到達して第2接点772がオンしたときに、コンロバーナ3に付設した点火電極31でのスパークを行い、コンロバーナ3に点火する。点火後、操作部材75を燃焼位置に戻すことで第2接点772がオフしたときは、点火電極31でのスパークを終了するが、第1接点771がオンしてから所定の待ち時間が経過するまでは電磁安全弁71の電磁石714への通電を継続して、電磁安全弁71を開弁保持する。この待ち時間の間に、コンロバーナ3に付設した火炎検知素子たる熱電対32の起電圧が所定レベル以上に上昇すれば、コントローラは、以後、コンロバーナ3の失火で熱電対32の起電圧が所定レベルを下回るまで電磁石714への通電を継続する。操作部材75を消火位置に戻すことで、第1接点771がオフしたときは、電磁石714への通電を停止し、元弁72に加えて電磁安全弁71を閉弁させる。
【0022】
手動式火力調節弁74は、流出口70bに連なる弁孔741aを開設した、バルブケーシング70の上部の弁座741と、弁座741に上流側たる前方から接近可能なニードル弁体742とを備えている。ニードル弁体742のバルブケーシング70外に突出する前端部には、上方にのびるピン743が固定されている。また、火力調節レバー13は、バルブケーシング70の上端面に突設したボス部701により、横方向に揺動自在に軸支されている。更に、火力調節レバー13には、前後方向に対し横方向に傾斜した長孔状のカム孔131が形成されている。そして、ピン743を、バルブケーシング70の上端に固定のガイド板702に形成した前後方向に長手のガイド孔702aを通してカム孔131に係合させている。これにより、火力調節レバー13の横方向への揺動で、カム孔131を介してピン743、即ち、ニードル弁体742が前後方向に進退し、コンロバーナ3の火力が調節される。
【0023】
ここで、ニードル弁体742は、弁孔741aに挿入可能なニードル部742aと、弁座741に着座可能な閉塞部742bと、閉塞部742bが弁座741に着座した状態での弁体742の上流側から弁孔741aにガスを流すオリフィス孔742cとを有している。閉塞部742bが弁座741に着座する状態が手動式火力調節弁74の最小火力位置であって、コンロバーナ3の火力はオリフィス孔742cで規定される最小火力となる。また、ニードル部742aが弁孔741aから完全に抜け出た状態が、手動式火力調節弁74の最大火力位置になる。電動式火力調節弁73を後述する最大火力位置にした状態で、手動式火力調節弁74を最小火力位置から最大火力位置まで変化させると、コンロバーナ3の火力は図6に示す如く変化する。
【0024】
また、操作部材75を点火位置まで押し操作する点火操作時は、連動機構78を介して手動式火力調節弁74を最小火力位置と最大火力位置との間の所定の点火火力位置(図3に示す位置)にする。連動機構78は、図7に示す如く、火力調節レバー13に一体の一対の羽根部781,781と、これら羽根部781,781に前方から対向する操作部材75に一体の一対の爪部782,782とで構成されている。一対の羽根部781,781は、バルブケーシング70の前面に揺動自在に支持される中間の支点部781aを介して連結されている。火力調節レバー13が点火火力位置に対応する揺動位置(以下、点火揺動位置と記す)に存するときは、これら羽根部781,781は、図7に示す中立位置に存する。火力調節レバー13が点火揺動位置に存しない状態で、操作部材75を点火位置まで押し込んだときは、片側の羽根部781に片側の爪部782が当接して、この羽根部781が中立位置に押し動かされ、火力調節レバー13が点火揺動位置に揺動される。これにより、手動式火力調節弁74は、点火火力位置になる。
【0025】
電動式火力調節弁73は、コンロバーナ3へのガス供給を停止する全閉状態に切換え自在であって、付勢手段734により開き方向に付勢され、ステッピングモータ等から成るモータ735により運動変換機構736を介して駆動される直動部材737により付勢手段734の付勢力に抗して全閉状態に切換えられるように構成されている。図8を参照して、より具体的に説明すれば、電動式火力調節弁73は、弁座731と、弁座731に接近する閉じ方向(図8の右方)と弁座731から離隔する開き方向(図8の左方)とに移動自在な主弁体732と、主弁体732に対し開き方向に対向する、直動部材737に当接する副弁体733とを備えている。主弁体732は、弁座731に開設した弁孔731aに挿入可能なニードル部732aと、弁座731に着座可能な弾性材料製の閉塞部732bと、閉塞部732bが弁座731に着座した状態でも主弁体732の上流側から下流側にガスを流すオリフィス孔732cと、副弁体733が着座可能で、オリフィス孔732cが開口する副弁座732dとを有している。副弁体733には、副弁座732dに着座した状態でのシール性を向上するため、副弁座732dに対向する弾性材料製のパッキン733aが取付けられている。
【0026】
付勢手段734は、主弁体732を開き方向に付勢する第1の付勢手段734aと、主弁体732に対し副弁体733を第1の付勢手段734aよりも強い力で開き方向に付勢する第2の付勢手段734bとで構成されている。また、主弁体732に対する副弁体733の開き方向への移動を定位置で制止するストッパ手段738を備えている。このストッパ手段738は、副弁体733を囲う主弁体732の筒部732eに形成した窓孔738aと、副弁体733の外周面に突設した、窓孔738aに遊びを持って挿入される爪部738bとで構成されている。そして、窓孔738aの開き方向の端縁に爪部738bが係合したところで、副弁体733が主弁体732に対しそれ以上開き方向に移動しないようにしている。
【0027】
運動変換機構736は、モータ735の出力軸735aに連結される雄ねじ736aと、雄ねじ736aが螺合する、回り止めされた摺動子736bとから成る送りねじ機構で構成されている。摺動子736bは、運動変換機構736の配置部をガスシールするダイヤフラム737aに当接しており、このダイヤフラム737aに直動部材737を連結している。
【0028】
図8に示す如く、主弁体732の閉塞部732bが弁座731に着座すると共に、副弁体733が主弁体732の副弁座732dに着座してオリフィス孔732cを閉塞する状態が、電動式火力調節弁73の全閉状態であって、コンロバーナ3へのガス供給が停止される。この全閉状態からモータ735により運動変換機構736を介して直動部材737を開き方向に移動させると、副弁体733が第2の付勢手段734bの付勢力により直動部材737に追従して開き方向に移動する。主弁体732に対する副弁体733の開き方向への移動がストッパ手段738で制止されるまでは、主弁体732の開き方向への移動が第2の付勢手段734bの付勢力によって阻止されて、主弁体732の閉塞部732bが弁座731に着座した状態に維持されると共に、副弁体733が副弁座732dから離隔して、オリフィス孔732cが開放され、電動式火力調節弁73は、コンロバーナ3の火力をオリフィス孔732cで規定される最小火力とする最小火力位置になる。主弁体732に対する副弁体733の開き方向への移動がストッパ手段738で制止された後、副弁体733を更に開き方向に移動させれば、主弁体732が第1の付勢手段734aの付勢力により副弁体733に追従して開き方向に移動し、主弁体732の閉塞部732bが弁座731から離隔して、コンロバーナ3の火力が増加する。そして、主弁体732のニードル部732aが弁孔731aから完全に抜け出た状態が、電動式火力調節弁73の最大火力位置になる。手動式火力調節弁74を最大火力位置にした状態で、電動式火力調節弁73を全閉状態から最大火力位置まで変化させると、コンロバーナ3の火力は図9に示す如く変化する。
【0029】
コンロバーナ3には、五徳4上の調理容器の底面に当接する鍋底温度センサ33が付設されている。そして、コントローラは、温調モードでの調理が選択されたとき、鍋底温度センサ33の検出温度が所定の設定温度になるよう電動式火力調節弁73を介してコンロバーナ3の火力を最小火力と最大火力との間で調節する温調制御を行う。
【0030】
また、本実施形態のガスコンロは、五徳4上の調理容器の有無を検知する調理容器検知手段9を備えている。具体的には、鍋底温度センサ33を利用して調理容器検知手段9を構成している。ここで、鍋底温度センサ33は、昇降自在に支持されている。そこで、図10に示す如く、鍋底温度センサ33と一緒に昇降する部材に取付けたドグ92と協働するマイクロスイッチ91を設け、これらマイクロスイッチ91とドグ92により調理容器検知手段9を構成している。五徳4上に調理容器が無いときは、図10(a)に示す如く、鍋底温度センサ33が上昇して、マイクロスイッチ91はオフとなり、五徳4上に調理容器Pが有るときは、図10(b)に示す如く、鍋底温度センサ33が下降して、マイクロスイッチ91はドグ92に押されてオンになる。
【0031】
ここで、安全性を確保するには、五徳4上に調理容器が無い状態でコンロバーナ3に点火することを阻止する必要がある。そこで、操作部材75による点火操作時に、調理容器検知手段9で調理容器無しを検知した場合は、点火電極31でのスパークを中止し、更に、電動式火力調節弁73を全閉状態に切換えて、コンロバーナ3から生ガスが放出されないようにしている。
【0032】
また、操作部材75による点火操作時は、手動式火力調節弁74を連動機構78により上記の如く最小火力位置と最大火力位置との間の所定の点火火力位置として、点火時に、調理容器の底面から外方に火炎が溢れ出る炎溢れを生じないようにしている。然し、使用者によっては、強い火力で調理を開始したくて、操作部材75による点火操作とほぼ同時に手動式火力調節弁74を火力調節レバー13の操作で点火火力位置から最大火力位置に切換えてしまうことがある。この場合は、点火時の炎溢れを防止することができなくなる。そこで、操作部材75による点火操作時に、電動式火力調節弁73を、最小火力位置と最大火力位置との間の所定の中間火力位置にするようにしている。この中間火力位置は、手動式火力調節弁74を点火火力位置から最大火力位置側に操作しても、コンロバーナ3の火力が点火火力位置で得られる火力より大きくなることを抑制できる位置、例えば、手動式火力調節弁74の点火火力位置での開度と同等開度になる位置に設定される。
【0033】
これによれば、操作部材75による点火操作とほぼ同時に手動火力調節弁74を点火火力位置から最大火力位置に切換え操作しても、点火操作時は電動式火力調節弁73が中間火力位置になっているため、コンロバーナ3の火力が点火火力位置で得られる火力より大きくなることが抑制される。その結果、点火時の炎溢れをより確実に抑制することができる。
【0034】
以下、コントローラによる電動式火力調節弁73の制御内容を図11を参照して説明する。電動式火力調節弁73の制御では、先ず、STEP1において、操作部材75による点火操作が行われたか否か、具体的には、操作部材75が点火位置まで押し込まれてマイクロスイッチ77の第1と第2の両接点771,772がオンしたか否かを判別する。そして、操作部材75による点火操作時は、STEP2に進み、マイクロスイッチ91のオンオフで五徳4上の調理容器の有無を検知する。マイクロスイッチ91がオンし、調理容器有りを検知した場合は、STEP3に進み、電動式火力調節弁73を中間火力位置に切換える。
【0035】
次に、STEP4に進み、操作部材75が燃焼位置に戻されたか否か、具体的には、マイクロスイッチ77の第1接点771がオンで、第2接点772がオフになったか否かを判別する。操作部材75が燃焼位置に戻されると、STEP5に進み、コンロバーナ3への点火が火炎検知素子たる熱電対32で検知されたか否か、具体的には、熱電対32の起電圧が所定レベルに上昇したか否かを判別する。点火が検知されたときは、STEP6に進んで電動式火力調節弁73を最大火力位置に切換える。これにより、コンロバーナ3の火力を、電動式火力調節弁73で律速されることなく、手動式火力調節弁74により最大火力まで増加させることができる。尚、図示しないが、、温調モードの選択時は、鍋底温度センサ33の検出温度に基づく電動式火力調節弁73の制御を行う。
【0036】
次に、STEP7に進み、操作部材75による消火操作が行われたか否か、具体的には、操作部材75が消火位置に戻されて、マイクロスイッチ77の第1と第2の両接点771,772がオフしたか否かを判別する。そして、操作部材75による消火操作時は、STEP8で電動式火力調節弁73を所定の待機位置に切換えた後STEP1に戻り、次の点火操作まで電動式火力調節弁73を待機位置で待機させる。
【0037】
STEP2において、マイクロスイッチ91がオフのままで、調理容器無しを検知した場合は、STEP9に進んで電動式火力調節弁73を全閉状態に切換え、更に、STEP10で調理容器無しであることを報知するエラー表示を行う。このように電動式火力調節弁73を全閉状態に切換えれば、点火操作時に電磁安全弁71と元弁72とが開弁されていても、コンロバーナ3にガスは供給されない。次に、STEP11で操作部材75による点火操作が終了したか否か、具体的には、操作部材75が点火位置での押圧解除で燃焼位置に戻されてマイクロスイッチ77の第2接点772がオフされたか否かを判別し、点火操作が終了するまでは、STEP10に戻ってエラー表示を継続する。そして、点火操作が終了したときに、STEP8に進んで電動式火力調節弁73を待機位置に切換える。
【0038】
ここで、待機位置を中間火力位置に設定すれば、操作部材75による点火操作時に電動式火力調節弁73を駆動せずに済む。然し、これでは、点火操作時に調理容器無しを検知した場合、電動式火力調節弁73を中間火力位置から全閉状態に切換えることが必要になり、この切換に要する時間中に生ガスが放出されてしまう。そこで、本実施形態では、待機位置を全閉状態又は全閉状態の近傍の位置、例えば、最小火力位置に設定している。これによれば、点火操作時に調理容器無しを検知した場合、電動式火力調節弁73を直ちに全閉状態にして、生ガスの放出を防止できる。
【0039】
尚、点火操作時に調理容器有りを検知した場合は、電動式火力調節弁73を全閉状態又は全閉状態の近傍の待機位置から中間火力位置に切換えることが必要になる。但し、電動式火力調節弁73は、付勢手段734により開き方向に付勢されているため、電動式火力調節弁73を開き方向に動作させる際に殆ど負荷は係らず、モータ735を高速回転させることができる。従って、点火操作時に調理容器有りを検知した場合は、電動式火力調節弁73をモータ735の高速回転で全閉状態又は全閉状態の近傍の待機位置から中間火力位置に速やかに切換えて、コンロバーナ3に応答性よく点火することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、電動式火力調節弁73を主弁体732と副弁体733とを備えるものとしているが、単一の弁体を備える型式の電動式火力調節弁を用いることも可能である。更に、上記実施形態では、調理容器検知手段9を、五徳4上の調理容器の有無を鍋底温度センサ33の昇降を利用して検知するように構成しているが、光学センサ等の他の手段で調理容器検知手段9を構成することも可能である。
【0042】
また、本発明は、調理容器検知手段9を具備しないガスコンロにも適用可能である。この場合は、電動式火力調節弁73の待機位置を中間火力位置に設定してもよい。更に、上記実施形態において、手動式火力調節弁74は、揺動式の火力調節レバー13で操作されるが、回転摘みにより回転操作される型式のものとすることも可能である。
【符号の説明】
【0043】
2…天板、3…コンロバーナ、4…五徳、6a…コンロバーナ用ガス供給路(コンロバーナに対するガス供給路)、73…電動式火力調節弁、735…モータ、74…手動式火力調節弁、75…操作部材、78…連動機構、9…調理容器検知手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11