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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20240606BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240606BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240606BHJP
   H01L 21/336 20060101ALN20240606BHJP
   H01L 29/786 20060101ALN20240606BHJP
【FI】
G09F9/30 330
G09F9/00 309A
G09F9/00 338
G09F9/30 338
G09F9/30 365
H10K59/10
H01L29/78 626C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020110292
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2021105704
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2019236647
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520272868
【氏名又は名称】武漢天馬微電子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松枝 洋二郎
(72)【発明者】
【氏名】河内 玄士朗
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-216323(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082847(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0123098(US,A1)
【文献】特開2000-353809(JP,A)
【文献】特開2017-049568(JP,A)
【文献】特開2001-168346(JP,A)
【文献】特開2017-084846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F9/00-9/46
H01L21/336
29/786
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポリイミド層と、
前記第1ポリイミド層上に直接接触して形成されている第1シリコン酸化物層と、
前記第1シリコン酸化物層上に直接接触して形成されているアモルファスシリコン層と、
前記アモルファスシリコン層に上に直接接触して形成されている第2ポリイミド層と、
前記第2ポリイミド層上に形成されている、複数の発光素子と、
前記第2ポリイミド層上に形成されている、前記複数の発光素子の発光を制御するためのトランジスタアレイと、
前記トランジスタアレイと前記第2ポリイミド層との間に形成されている、透明導電層と、
前記透明導電層と前記第2ポリイミド層との間において、前記透明導電層及び前記第2ポリイミド層それぞれに直接接触して形成されている、第2シリコン酸化物層と、
前記トランジスタアレイのポリシリコン層と、
前記ポリシリコン層と前記透明導電層との間に形成され、前記透明導電層に直接接触している第3シリコン酸化物層と、
前記ポリシリコン層と前記第3シリコン酸化物層との間に形成されている、シリコン窒化物層と、
前記ポリシリコン層と前記シリコン窒化物層との間に形成され、前記ポリシリコン層に直接接触している第4シリコン酸化物層と、
を含む表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記第2シリコン酸化物層及び前記透明導電層は、前記第2ポリイミド層の全面を覆う、
表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記透明導電層は電気的に浮いている、
表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記透明導電層はITO層又はIZO層である、
表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記透明導電層は、アモルファスシリコンで形成されている、
表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の表示装置であって、
前記透明導電層の厚みは1.0nm以上であり5.0nm以下である、
表示装置。
【請求項7】
請求項に記載の表示装置であって、
前記アモルファスシリコン層と前記透明導電層の厚みの和は5.0nm以下である、
表示装置。
【請求項8】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記トランジスタアレイは、トップゲートポリシリコン薄膜トランジスタで構成されている、
表示装置。
【請求項9】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記透明導電層はIZO層であり、
前記複数の発光素子のアノード電極は、二つのIZO層と前記二つのIZO層の間の反射金属層とを含む、
表示装置。
【請求項10】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記第2ポリイミド層は、前記第1ポリイミド層より薄い、
表示装置。
【請求項11】
表示装置の製造方法であって、
第1シリコン酸化物層を、第1ポリイミド層上に直接に形成する第1ステップと、
アモルファスシリコン層を、前記第1シリコン酸化物層上に直接に形成する第2ステップと、
第2ポリイミド層を、前記アモルファスシリコン層上に直接に形成する第3ステップと、
第2シリコン酸化物層を、前記第2ポリイミド層上に直接に形成する第4ステップと、
透明導電層を、前記第2シリコン酸化物層上に直接に形成する第5ステップと、
前記第2シリコン酸化物層上に、複数の発光素子の発光を制御するためのトランジスタアレイを、形成する第6ステップと、
を含み、
前記表示装置の製造方法は、さらに、前記第6ステップの前に、
第3シリコン酸化物層を前記透明導電層上に直接に形成する第7ステップと、
シリコン窒化物層を、前記第3シリコン酸化物層上に形成する第8ステップと、
第4シリコン酸化物層を、前記シリコン窒化物層上に形成する第9ステップと、
を含み、
前記第6ステップは、ポリシリコン層を、前記第4シリコン酸化物層上に直接に形成するステップを含む、
表示装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の表示装置の製造方法であって、
前記第4ステップは、シリコン酸化物を堆積して前記第2シリコン酸化物層を形成し、前記第2シリコン酸化物層のパターニングを行うことなく終了し、
前記第5ステップは、透明導電体を堆積して前記透明導電層を形成し、前記透明導電層のパターニングを行うことなく終了する、
表示装置の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の表示装置の製造方法であって、
前記第6ステップは、ポリシリコン層に不純物をドープした後の、不活性ガス雰囲気での加熱処理を含む、
表示装置の製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載の表示装置の製造方法であって、
前記第6ステップは、第2アモルファスシリコン層を形成した後、レーザアニールにより前記第2アモルファスシリコン層をポリシリコン層に変化させる前に、不活性ガス雰囲気での加熱処理を含む、
表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
OLED(Organic Light-Emitting Diode)素子は電流駆動型の自発光素子であるため、バックライトが不要となる上に、低消費電力、広視野角、高コントラスト比が得られるなどのメリットがある。また、有機ELデバイスを用いたフレキシブルOLED表示装置は、バックライトを必要としないため、超薄型で柔軟なフレキシブル表示装置を実現できる。
【0003】
従来のフレキシブルOLED表示装置の基板構造は、10umから15um厚のポリイミド膜上に、シリコン酸化物層、シリコン窒化物層及びシリコン酸化物層を順次積層する構造を有し、その基板上にTFT(Thin Film Transistor)アレイが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-216323号公報
【文献】特開2018-6671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリイミド膜を基板として使用するフレキシブルOLED表示装置においては、ガラス基板のOLED表示装置に比べ、イメージリテンション(可逆的な残像)が強いことが課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の表示装置は、第1ポリイミド層と、前記第1ポリイミド層上に直接接触して形成されている第1シリコン酸化物層と、前記第1シリコン酸化物層上に直接接触して形成されているアモルファスシリコン層と、前記アモルファスシリコン層に上に直接接触して形成されている第2ポリイミド層と、前記第2ポリイミド層上に形成されている、複数の発光素子と、前記第2ポリイミド層上に形成されている、前記複数の発光素子の発光を制御するためのトランジスタアレイと、前記トランジスタアレイと前記第2ポリイミド層との間に形成されている、透明導電層と、前記透明導電層と前記第2ポリイミド層との間において、前記透明導電層及び前記第2ポリイミド層それぞれに直接接触して形成されている、第2シリコン酸化物層と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、表示装置を構成する積層膜が製造中に剥離するのを防止し、または折り曲げ耐性が向上した表示装置におけるイメージリテンションを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】OLED表示装置の構成例を模式的に示す。
図2A】画素回路の構成例を示す。
図2B】画素回路の他の構成例を示す。
図3】従来のフレキシブル基板上のTFTとガラス基板上のTFTの特性の比較評価結果を示す。
図4】TFT基板のフレキシブル基板、駆動TFT及びOLED素子、並びに、封止構造部の断面構造を模式的に示す。
図5A】OLED表示装置の製造方法の一例のバックプレーンの製造工程を示す。
図5B】OLED表示装置の製造方法の一例のバックプレーンの製造工程を示す。
図6A】比較例のOLED表示装置の断面を模式的に示す。
図6B】実施形態の透明導電層を含むOLED表示装置の断面を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。本実施形態は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではないことに注意すべきである。各図において共通の構成については同一の参照符号が付されている。説明をわかりやすくするため、図示した物の寸法、形状については、誇張して記載している場合もある。
【0010】
以下に開示するOLED(Organic Light-Emitting Diode)表示装置は、ポリイミド層とTFT(Thin Film Transistor)アレイとの間に透明導電層を含む。透明導電層は、ポリイミド層内の電荷による電界がTFTの特性に与える影響を低減し、イメージリテンションを低減できる。また、透明導電層は、パターニングすることなく、後工程におけるアライメントへの影響を避けることができる。
【0011】
以下に開示するOLED表示装置は、さらに、透明導電層とポリイミド層との間に密着改善層を含む。密着改善層により、透明導電層のポリイミド層からの剥がれを防止することができる。なお、本実施形態の特徴は、OLED表示装置と異なる自発光型の表示装置に適用することができる。
[全体構成]
【0012】
図1は、OLED表示装置10の構成例を模式的に示す。OLED表示装置10は、OLED素子(発光素子)が形成されるTFT(Thin Film Transistor)基板100と、OLED素子を封止する封止構造部200を含んで構成されている。TFT基板100の表示領域125の外側のカソード電極形成領域114の周囲に、走査ドライバ131、エミッションドライバ132、保護回路133、ドライバIC134、デマルチプレクサ136が配置されている。
【0013】
ドライバIC134は、FPC(Flexible Printed Circuit)135を介して外部の機器と接続される。走査ドライバ131はTFT基板100の走査線を駆動する。エミッションドライバ132は、エミッション制御線を駆動して、各画素の発光を制御する。保護回路133は、TFT基板における素子の静電破壊を防ぐ。ドライバIC134は、例えば、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)を用いて実装される。
【0014】
ドライバIC134は、走査ドライバ131及びエミッションドライバ132に電源及びタイミング信号(制御信号)を与える。さらに、ドライバIC134は、デマルチプレクサ136に、電源及びデータ信号を与える。
【0015】
デマルチプレクサ136は、ドライバIC134の一つのピンの出力を、d本(dは2以上の整数)のデータ線に順次出力する。デマルチプレクサ136は、ドライバIC134からのデータ信号の出力先データ線を、走査期間内にd回切り替えることで、ドライバIC134の出力ピン数のd倍のデータ線を駆動する。
[回路構成]
【0016】
TFT基板100上には、複数の副画素のアノード電極にそれぞれ供給する電流を制御する複数の画素回路が形成されている。図2Aは、画素回路の構成例を示す。各画素回路は、駆動トランジスタT1と、選択トランジスタT2と、エミッショントランジスタT3と、保持容量C1とを含む。画素回路は、OLED素子E1の発光を制御する。トランジスタは、TFTである。
【0017】
選択トランジスタT2は副画素を選択するスイッチである。選択トランジスタT2はpチャネル型TFTであり、ゲート端子は、走査線106に接続されている。ソース端子は、データ線105に接続されている。ドレイン端子は、駆動トランジスタT1のゲート端子に接続されている。
【0018】
駆動トランジスタT1はOLED素子E1の駆動用のトランジスタ(駆動TFT)である。駆動トランジスタT1はpチャネル型TFTであり、そのゲート端子は選択トランジスタT2のドレイン端子に接続されている。駆動トランジスタT1のソース端子は電源線108(Vdd)に接続されている。ドレイン端子は、エミッショントランジスタT3のソース端子に接続されている。駆動トランジスタT1のゲート端子とソース端子との間に保持容量C1が形成されている。
【0019】
エミッショントランジスタT3は、OLED素子E1への駆動電流の供給と停止を制御するスイッチである。エミッショントランジスタT3はpチャネル型TFTであり、ゲート端子はエミッション制御線107に接続されている。エミッショントランジスタT3のソース端子は駆動トランジスタT1のドレイン端子に接続されている。エミッショントランジスタT3のドレイン端子は、OLED素子E1に接続されている。
【0020】
次に、画素回路の動作を説明する。走査ドライバ131が走査線106に選択パルスを出力し、選択トランジスタT2をオン状態にする。データ線105を介してドライバIC134から供給されたデータ電圧は、保持容量C1に格納される。保持容量C1は、格納された電圧を、1フレーム期間を通じて保持する。保持電圧によって、駆動トランジスタT1のコンダクタンスがアナログ的に変化し、駆動トランジスタT1は、発光階調に対応した順バイアス電流をOLED素子E1に供給する。
【0021】
エミッショントランジスタT3は、駆動電流の供給経路上に位置する。エミッションドライバ132は、エミッション制御線107に制御信号を出力して、エミッショントランジスタT3のオンオフを制御する。エミッショントランジスタT3がオン状態のとき、駆動電流がOLED素子E1に供給される。エミッショントランジスタT3がオフ状態のとき、この供給が停止される。エミッショントランジスタT3のオンオフを制御することにより、1フィールド周期内の点灯期間(デューティ比)を制御することができる。
【0022】
図2Bは、画素回路の他の構成例を示す。当該画素回路は、図2AのエミッショントランジスタT3に代えて、リセットトランジスタT4を有する。リセットトランジスタT4は、基準電圧供給線110とOLED素子E1のアノードとの電気的接続を制御する。リセットトランジスタT4のゲートにリセット制御線109からリセット制御信号が供給されることによりこの制御が行われる。
【0023】
リセットトランジスタT4は、様々な目的で使用することができる。リセットトランジスタT4は、例えば、OLED素子E1間のリーク電流によるクロストークを抑制するために、一旦、OLED素子E1のアノード電極を黒信号レベル以下の十分低い電圧にリセットする目的で使用しても良い。
【0024】
他にも、リセットトランジスタT4は、駆動トランジスタT1の特性を測定する目的で使用してもよい。例えば、駆動トランジスタT1を飽和領域、リセットトランジスタT4を線形領域で動作するようにバイアス条件を選んで、電源線108(Vdd)から基準電圧供給線110(Vref)に流れる電流を測定すれば、駆動トランジスタT1の電圧・電流変換特性を正確に測定することができる。副画素間の駆動トランジスタT1の電圧・電流変換特性の違いを補償するデータ信号を外部回路で生成すれば、均一性の高い表示画像を実現できる。
【0025】
一方、駆動トランジスタT1をオフ状態にしてリセットトランジスタT4をリニア領域で動作させ、OLED素子E1を発光させる電圧を基準電圧供給線110から印加すれば、OLED素子E1の電圧・電流特性を正確に測定することができる。例えば、長時間の使用によってOLED素子E1が劣化した場合にも、その劣化量を補償するデータ信号を外部回路で生成すれば、長寿命化を実現できる。
【0026】
図2A及び2Bの画素回路は例であって、画素回路は他の回路構成を有してよい。図2A及び2Bの画素回路はpチャネル型TFTを使用しているが、画素回路はnチャネル型TFTを使用してもよい。
[イメージリテンション]
【0027】
従来のフレキシブルOLED表示装置の基板構造は、10umから15um厚のポリイミド膜上に、シリコン酸化物層、シリコン窒化物層及びシリコン酸化物層を順次積層する構造を有し、その基板上にTFT(Thin Film Transistor)アレイが形成される。
【0028】
ポリイミド膜を基板として使用するフレキシブルOLED表示装置においては、ガラス基板のOLED表示装置に比べ、イメージリテンション(可逆的な残像)が強い。図3は、従来のフレキシブル基板上のTFTとガラス基板上のTFTの特性の比較評価結果を示す。
【0029】
図3に示すグラフにおいて、線251はガラス基板上のTFTに対して白を表示するデータ信号を与えた後にグレーを表示するデータ信号を与えた時の、駆動電流の時間変化を示す。線252はガラス基板上のTFTに対して黒を表示するデータ信号を与えた後にグレーを表示するデータ信号を与えた時の、駆動電流の時間変化を示す。
【0030】
駆動電流は、信号の急激な変化に対して過渡応答特性(オーバーシュート)を示す。具体的には、白からグレーに切り替えた場合には線251に示すように、一旦目的の電流値よりやや少なめの電流値となり時間とともに徐々に増えて目的の電流値に近づいていく。一方、黒からグレーに切り替えた場合には線252に示すように、一旦目的の電流値よりやや大きめの電流値となり時間とともに徐々に減少して目的の電流値に近づいていく。この線251と252の電流値の変化が短時間で収束して同じ値になれば残像は見えない。しかし、実際には、駆動電流251及び252は同じ値に収束するまでにかなりの時間を要し、その差253が、残像の原因となる。
【0031】
また、図3に示すグラフにおいて、線255はフレキシブル基板(ポリイミド基板)上のTFTに対して白を表示するデータ信号を与えた後にグレーを表示するデータ信号を与えた時の、駆動電流の時間変化を示す。線256はフレキシブル基板上のTFTに対して黒を表示するデータ信号を与えた後にグレーを表示するデータ信号を与えた時の、駆動電流の時間変化を示す。駆動電流255及び256の間の差257が、残像の原因となる。
【0032】
従来のフレキシブル基板上のTFTとガラス基板上のTFTの特性の比較評価結果によれば、ガラス基板上のTFTに流れる駆動電流251と252は、時間軸方向に対して、ほぼ対称的な電流過渡特性を示している。しかし、フレキシブル基板上のTFTに流れる駆動電流255と256は、対称性を欠いている。つまり、フレキシブル基板上のTFTを駆動すると、ガラス基板上のTFTには見られない電流ドリフトが生じている。TFTによりバイアスが印加され続け、この電流ドリフトが、TFTが本来有する、対称性のある電流過渡特性に重畳される結果、イメージリテンションをより悪化させていることがわかった。
【0033】
このようにフレキシブル基板上のTFTに流れる電流は、イメージリテンションを悪化させる不安定性を示す。ガラス基板上のTFTでは、こうした不安定性を示さないことから、この不安定性は、TFTを駆動する際、ポリイミド膜に起因した電気的バイアスストレスによって生じていると考えるのが理にかなっている。すなわち、ポリイミド膜からの電界がTFTのチャネル部に到達し、TFTの特性を変化させていることが、イメージリテンション悪化の主たる原因である。
【0034】
従って、TFTを駆動する際、ポリイミド膜に対してTFT駆動の影響を与えないようにするには、TFTとポリイミド膜の間を電気的に隔てる静電シールドを配置することが有効である。
【0035】
以下において、静電シールドによってポリイミド膜からTFTのチャネル部への電界を防ぐフレキシブルOLED表示装置の構造を説明する。また、その構造を有するOLED表示装置の製造方法(プロセス条件)を説明する。
[OLED表示装置の構造]
【0036】
以下において、OLED表示装置の構造を説明する。図画素回路及び発光素子の構造の概略を説明する。図4は、TFT基板100のフレキシブル基板、駆動TFT及びOLED素子、並びに、封止構造部200の断面構造を模式的に示す。以下の説明において、上下は、図面における上下を示す。
【0037】
OLED表示装置は、TFT基板100及び封止構造部200を含む。TFT基板100は、フレキシブル基板並びにフレキシブル基板上に構成された画素回路(TFTアレイ)及びOLED素子を含む。画素回路及びOLED素子はフレキシブル基板と封止構造部200との間に構成される。
【0038】
フレキシブル基板は、下層から、ポリイミド層(第1ポリイミド層)302、シリコン酸化物層(第1シリコン酸化物層、SiOx層)303、アモルファスシリコン層(a-Si層)304、ポリイミド層(第2ポリイミド層)305を含む。シリコン酸化物層303は、ポリイミド層302上に直接接触して形成されている。アモルファスシリコン層304は、シリコン酸化物層303上に直接接触して形成されている。ポリイミド層305は、アモルファスシリコン層304上に直接接触して形成されている。
【0039】
TFT基板100は、フレキシブル基板(ポリイミド層305)上に、下層から、シリコン酸化物層(第2シリコン酸化物層)306、透明導電層307、シリコン酸化物層(第3シリコン酸化物層)308、シリコン窒化物層(SiNx層)309、及びシリコン酸化物層(第4シリコン酸化物層)310を含む。
【0040】
シリコン酸化物層310上に、画素回路(TFTアレイ)及びOLED素子が形成されている。上述のように、フレキシブル基板が、複数のポリイミド層302及び305を含むことにより、後述するように良好な特性をもつポリシリコンを形成するための下地層を得ることができる。
【0041】
また、ポリイミド層は水分を含み、TFTが形成される層に拡散すると、TFT特性を悪化させることが知られている。下層のポリイミド層302は、上層のポリイミド層305に含まれる水分を低減し、TFT特性の悪化を抑制できる。一例において、下層のポリイミド層302の厚みは、上層のポリイミド層305よりも厚い。これにより、上層のポリイミド層305に含まれる水分を低減し、より効果的に、TFTアレイへの水分の影響を低減することができる。
【0042】
本実施例のような複数の膜で構成されるフレキシブル積層膜において、膜どうしの密着性を考慮することは非常に重要である。密着性が考慮されないと、製造中に膜の剥離が生じ、また折り曲げ耐性が確保できない。
【0043】
シリコン酸化物層303及びアモルファスシリコン層304は、二つのポリイミド層302及び305の密着性を改善する。シリコン酸化物層303は、直下のポリイミド層302との密着性が高く、アモルファスシリコン層304は、直下のシリコン酸化物層303及び直上のポリイミド層305との密着性が高い。シリコン酸化物層303及びアモルファスシリコン層304により、上層のポリイミド層305が下層のポリイミド層302から剥がれることを防ぐことができる。
【0044】
ポリイミド層305と画素回路との間に透明導電層307が形成されている。膜の密着性や折り曲げ耐性の観点から、透明導電層307の膜厚は、例えば50nm以下である。透明導電層307は、ポリイミド層305又は302に存在する電荷からの電界の画素回路内のTFTへの影響を低減する。透明導電層307は透明であるため、後述する製造工程におけるマスクアライメントへの響を避けることができる。透明導電層307は、ポリイミド層305の全面を覆うように形成されている。これにより、より効果的にポリイミド層305からの電界を抑制することができると共に、後述するように、製造工程におけるパターニングが不要となる。
【0045】
本実施例では、ポリイミド層305と画素回路との間に透明導電層307を用いたが、透明導電層307は完全に透明である必要はなく、マスクアライメント時に反射光が影響を与えない導電膜であればよい。例えば薄いアモルファスシリコン膜であればシールド効果として機能する導電性を有しながら、反射光が弱くマスクアライメントに影響を与えず、しかも絶縁膜との密着性も良好なため十分適用可能である。
【0046】
透明導電層307は、接地電位が与えられる、又は、電気的に浮いた状態である。接地電位は、透明導電層307により、TFTとポリイミド膜の間に生じる電界の影響を効果的に抑制できる。電気的に浮いている状態であっても、透明導電層307は、TFTの素子面積に比べて圧倒的に大きな面積で十分な容量を有しているため、電気的には接地電位を与えた場合と同等のシールド効果を得ることがでる。本例の透明導電層307は、OLED表示装置の構成を簡便なものとすることができる。
【0047】
透明導電層307は、例えば、ITO及びIZO等のアモルファス酸化物で形成される。ITOは、その高導電性(低抵抗性)により、ポリイミド内の電荷による電界を効果的に抑制できる。IZOは、OLED表示装置の折り曲げ耐性を向上できる。
【0048】
シリコン酸化物層306は、ポリイミド層305と透明導電層307との間において、それらに直接接触して形成されている。シリコン酸化物層306は、ポリイミド層305の全面を覆う。シリコン酸化物層306は、透明導電層307のポリイミド層305に対する密着性を改善することができる。
【0049】
シリコン酸化物層308は、透明導電層307上に直接接触して形成されている。シリコン酸化物層308は、透明導電層307とシリコン窒化物層309との密着性を改善するとともに、OLED素子のための水分や酸素に対するバリア層である。シリコン窒化物層309は、シリコン酸化物層308上に直接接触して形成されている。シリコン窒化物層309もまたバリア層として働くので、ポリイミド層305からOLED素子の層への水分の侵入を効果的に抑制できる。
【0050】
シリコン酸化物層310は、シリコン窒化物層309上に直接接触して形成されている。シリコン酸化物層310は、この後に形成されるポリシリコンの良好な特性を可能とする。上述のように、下層側のシリコン酸化物層308は、水分及び酸素に対するバリア層であり、その厚みは、上層側のシリコン酸化物層310の厚みより厚い。
【0051】
上記複数の層を含むフレキシブル基板上に、OLED素子が形成されている。OLED素子は、下部電極(例えば、アノード電極408)と、上部電極(例えば、カソード電極402)と、有機発光多層膜404とを含む。カソード電極402とアノード電極408との間に、有機発光多層膜404が配置されている。複数のアノード電極408は、同一面上(例えば、平坦化膜421の上)に配置され、1つのアノード電極408の上に1つの有機発光多層膜404が配置されている。図4の例において、一つの副画素のカソード電極402は、連続する導体膜の一部である。
【0052】
図4は、トップエミッション型(OLED素子)の画素構造の例である。トップエミッション型の画素構造は、光が出射する側(図面上側)に、複数の画素に共通のカソード電極402が配置される。カソード電極402は、表示領域125の全面を覆う形状を有する。トップエミッション型の画素構造において、アノード電極408は光を反射し、カソード電極402は光透過性をもっている。これにより、有機発光多層膜404からの光を封止構造部200に向けて出射させる構成となっている。
【0053】
トップエミッション型では、光をポリイミド層側に取り出すボトムエミッション型と比べて、光取出しのための透過領域を画素領域内に設ける必要がないため、発光部を画素回路や配線の上にも形成することができるといった、画素回路のレイアウトにおいて高い自由度を有する。
【0054】
なお、ボトムエミッション型の画素構造は、透明アノード電極と反射カソード電極を有し、フレキシブル基板を介して外部に光を出射する。また、アノード電極とカソード電極の双方を光透過性材料で形成することで透明表示装置を実現することもできる。本開示のフレキシブル基板構造は、これらのうちの任意の型のOLED表示装置にも適用でき、さらには、OLEDと異なる発光素子を含む表示装置に適用できる。
【0055】
副画素は、フルカラーOLED表示装置において一般に、赤、緑、又は青のいずれかの色を表示する。赤、緑、及び青の副画素により一つの主画素が構成される。複数の薄膜トランジスタを含む画素回路は、対応するOLED素子の発光を制御する。OLED素子は、下部電極であるアノード電極、有機発光層、及び上部電極であるカソード電極で構成される。
【0056】
OLED表示装置は、それぞれが複数のスイッチを含む複数の画素回路(TFTアレイ)を有する。複数の画素回路の各々は、シリコン酸化物層310とアノード電極408との間に形成され、複数のアノード電極408の各々に供給する電流を制御する。図4に示す駆動TFTは、トップゲート構造を有する。他のTFTも同様に、トップゲート構造を有する。
【0057】
ポリシリコン層が、シリコン酸化物層310上の直接接触して存在している。ポリシリコン層にはTFTのトランジスタ特性をもたらすチャネル415が、のちにゲート電極414が形成される位置に存在する。その両端には上部の配線層と電気的に接続をとるために高濃度不純物がドープされたソース/ドレイン領域416、417が存在する。
【0058】
チャネル415とソース/ドレイン領域416、417の間には、低濃度の不純物をドープされたLDD(Lightly Doped Drain)を形成する場合もある。なお、LDDについては、煩雑になるため図示を省略している。ポリシリコン層の上には、ゲート絶縁膜423を介して、ゲート電極414が形成されている。ゲート電極414の層上に層間絶縁膜422が形成されている。
【0059】
表示領域125内において、層間絶縁膜422上にソース/ドレイン電極410、412が形成されている。ソース/ドレイン電極410、412は、例えば、高融点金属又はその合金で形成される。ソース/ドレイン電極410、412は、層間絶縁膜422及びゲート絶縁膜423に形成されたコンタクトホール411、413を介してポリシリコン層のソース/ドレイン領域416、417に接続されている。
【0060】
ソース/ドレイン電極410、412の上に、絶縁性の有機平坦化膜421が形成される。平坦化膜421の上に、アノード電極408が形成されている。アノード電極408は、平坦化膜421のコンタクトホール409を介してソース/ドレイン電極412に接続されている。画素回路のTFTは、アノード電極408の下側に形成されている。
【0061】
アノード電極408は、例えば、中央の反射金属層と反射金属層を挟む透明導電層で構成される。アノード電極408は、例えば、ITO/Ag/ITO構造又はIZO/Ag/IZO構造を有する。IZOはITOより高抵抗であるが、OLED表示装置の折り曲げ耐性を向上することができる。
【0062】
アノード電極408の上に、OLED素子を分離する絶縁性の画素定義層(Pixel Defining Layer:PDL)407が形成されている。OLED素子は、画素定義層407の開口406に形成されている。
【0063】
アノード電極408の上に、有機発光多層膜404が形成されている。有機発光多層膜404は、画素定義層407の開口406及びその周囲において、画素定義層407に付着している。RGBの色毎に、有機発光材料を成膜して、アノード電極408上に、有機発光多層膜404が形成される。
【0064】
有機発光多層膜404の成膜は、メタルマスクを使用して、画素に対応する位置に有機発光材料を蒸着させる。有機発光多層膜404は、下層側から、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層によって構成される。有機発光多層膜404の積層構造は設計により決められる。
【0065】
有機発光多層膜404の上にカソード電極402が形成されている。カソード電極402は、光透過性を有する電極である。カソード電極402は、有機発光多層膜404からの可視光の一部を透過させる。カソード電極402の層は、例えば、Al、Mg等の金属又はこれらの金属を含む合金を蒸着して、形成する。カソード電極402の抵抗が高く発光輝度の均一性が損なわれる場合には、さらに、ITO、IZO、ZnOまたはIn2O3などの透明電極形成用の材料で補助電極層を追加する。
【0066】
画素定義層407の開口406に形成された、アノード電極408、有機発光多層膜404及びカソード電極402の積層膜が、OLED素子を構成する。カソード電極402上には、封止構造部200が直接接触して形成されている。封止構造部(薄膜封止部)200は、下層から、無機絶縁物(例えばSiNx、AlOx)層401、有機平坦化膜431、無機絶縁物(例えばSiNx、AlOx)層432を含む。無機絶縁物401及び432は、それぞれ、信頼性向上のために下層及び上層のパッシベーション層である。
【0067】
封止構造部200上に、下層から、タッチスクリーンフィルム433、λ/4板434、偏光板435、及び樹脂カバーレンズ436が積層されている。λ/4板434及び偏光板435は、外部から入射した光の反射を抑制する。なお、図4を参照して説明したOLED表示装置の積層構造は一例であり、図4に示す層の一部が省略されてもよく、図4に示されていない層が追加されてもよい。
[製造方法]
【0068】
次に、OLED表示装置の製造方法の一例を説明する。図5A及び5Bは、OLED表示装置の製造方法の一例のバックプレーンの製造工程を示す。なお、以下の説明は本実施形態の特徴を説明するためのものであって、実際のOLED表示装置の製造における工程の一部は省略されている。
【0069】
図5Aに示すように、まず、OLED表示装置の製造は、不図示のガラス基板(絶縁性支持基板)上に、例えば塗布及び加熱処理により、ポリイミド層302(第1ポリイミド層)を形成する(S11)。ポリイミド層302は、フレキシブル基板に対して要求される強度を得ることができる厚みを有する。
【0070】
次に、ポリイミド層302上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法によってシリコン酸化物を堆積して、シリコン酸化物層303を形成する(S13)。次に、シリコン酸化物層303上に、例えばCVD法によってアモルファスシリコンを堆積して、アモルファスシリコン層304を形成する(S15)。
【0071】
上述のように、シリコン酸化物層303はポリイミド層302に対する密着性改善層であり、アモルファスシリコン層304はポリイミド層305(第2ポリイミド層)に対する密着性改善層である。これらの層により、ポリイミド層305のポリイミド層302からの剥がれを防止する。
【0072】
次に、アモルファスシリコン層304上に、例えば塗布及び加熱処理により、ポリイミド層305を形成する(S17)。上述のように、ポリイミド層305内の水分に起因する電界のTFTの特性へ影響を低減するため、ポリイミド層305は下層のポリイミド層302より薄く形成される。次に、ポリイミド層305上に、例えばCVD法によってシリコン酸化物層306を形成する(S19)。上述のように、シリコン酸化物層306は上層の透明導電層307のポリイミド層305に対する密着性を改善する。
【0073】
次に、シリコン酸化物層306上に、例えばスパッタ法によって透明導電体を堆積して透明導電層307を形成する(S21)。透明導電層307は、例えば、ITO層又はIZO層のような金属酸化物薄膜の他、CVD法によって形成されたアモルファスシリコン等の半導体膜を用いることもできる。
【0074】
一般にアモルファスシリコン薄膜は電気抵抗が高いため導電配線層として用いるのには適していないが、シールド層として用いるのには十分低い抵抗値である。出願人らの実験によると、1.0nm以上の膜厚であればポリイミド層305及び302内の電荷のTFTへの影響を遮断する効果が確認された。また5.0nm以下の膜厚であれば、金属薄膜と同様に十分な透過率を確保できることも確認できた。
【0075】
さらに望ましくは、304層のアモルファスシリコン層の膜厚とあわせて5.0nm以下にすれば透明ディスプレイやパネル下カメラなどの透過光を用いた用途にも十分使用可能である。透明導電層307は透明であるため、反射金属層と異なり、パターニングを行うことなく、後工程におけるマスクアライメントへの影響を避けることができる。
【0076】
また、パターニングをしないので基板全体をTFT素子の下側から導電層で覆うこととなり、TFT製造工程中に発生する静電気に対して見かけ上の接地電極と同様の効果を発揮し、静電気によって生じる欠陥の低減や、静電気によって生じる特性ばらつきの抑制に寄与する。
【0077】
さらに陰極が形成された後もTFT素子回路を陰極の面積以上の大きな面積でパネルモジュール全面を下から覆っているため、モジュール全体を静電シールドするのと同様の効果が得られる。例えば異方性導電膜を用いたドライバICの実装端子部は、カソード電極の領域からは外れているため静電気の影響を受けやすいが、この構造であればフローティング導電膜が端子部領域全域を覆うことになり、実装工程における静電気の影響を抑制することができる。
【0078】
次に、透明導電層307上に、例えばCVD法によってシリコン酸化物を堆積して、シリコン酸化物層308を形成する(S23)。シリコン酸化物層308は、水分や酸素に対するバリア層であり、スループット重視で、バリア層として適切に機能する厚みで形成され、その厚みは上層のシリコン酸化物層310の厚みより厚い。
【0079】
次に、シリコン酸化物層308上に、シリコン窒化物層309、シリコン酸化物層310及びアモルファスシリコン層を、膜質重視の製膜条件において、例えばCVD法により、連続して形成する(S25)。これら3層は、良好な膜質を得るために、シリコン酸化物層308よりも低いデポジションレートで形成される。さらに、アモルファスシリコン層を加熱して脱水素処理を行う。通常、この加熱処理は、400℃以上の空気中で行われることが多いが、本実施例において、例えば、400℃以下、不活性ガス(例えば窒素ガス)雰囲気において実施される。これにより、TFTよりも前の工程で製膜される透明導電層307の結晶化による膜質の劣化を抑制しつつ良好なTFT特性を確保できる。
【0080】
以上のステップにより、フレキシブル基板が形成される。図5Aを参照して説明した各ステップは、各層のパターニングは行うことなく終了している。
【0081】
次に、図5Bに示すように、OLED表示装置の製造は、ELA(Excimer Laser Annealing)により、アモルファスシリコンを結晶化して、ポリシリコン膜を形成し(S27)、ポリシリコン層をパターニングする(S29)。ELAは、TFT特性均一性を重視した条件(移動度最大条件よりかなり低めのエネルギ)で実施される
【0082】
次に、ソース/ドレイン電極410、412と接続するためのソース/ドレイン領域416、417には高濃度に不純物をドープして低抵抗化する(S31)。同様に低抵抗化したポリシリコンは、表示領域125内において要素間の接続にも利用され得る。
【0083】
次に、チャネル415を含むポリシリコン層上に、例えばCVD法によって、例えばシリコン酸化物を堆積してゲート絶縁膜423を形成する(S33)。更に、例えばスパッタ法により金属材料を堆積し、パターニングを行って、ゲート電極414を含む金属層を形成する(S35)。金属層は、ゲート電極414の他、例えば、保持容量電極、走査線106、エミッション制御線107等を含むことができる。
【0084】
金属層として、例えばMo、W、Nb、MoW、MoNb、Al、Nd、Ti、Cu、Cu合金、Al合金、Ag、Ag合金からなる群より選択される一つの物質で単一層を形成する、又は、配線抵抗を減少させるために低抵抗物質であるMo、Cu、Al又はAgから選択された1又は複数材料の2層構造又はそれ以上の多重構造を形成してもよい。
【0085】
次に、例えばCVD法によってシリコン窒化物を堆積して、層間絶縁膜422を形成する(S37)。次に、アニール処理を行いポリシリコン層の活性化及び水素化を行う(S39)。水素化は、シリコン窒化物で形成された層間絶縁膜422内の水素を利用する。このアニール処理は、例えば、400℃以下、不活性ガス(例えば窒素ガス)雰囲気において実施される。これにより、透明導電層307の結晶化を抑制しつつ、良好なTFT特性を確保できる。なお、アニール処理S39を、この後のコンタクトホール形成S41の後に行ってもよい。
【0086】
次に、層間絶縁膜422及びゲート絶縁膜423に、異方性エッチングを行い、コンタクトホールを開口する(S41)。ソース/ドレイン電極410、412とソース/ドレイン領域416、417とを接続するコンタクトホール411、413が、層間絶縁膜422及びゲート絶縁膜423に形成される。
【0087】
次に、例えばスパッタ法によって、例えば、Ti/Al/Ti等の導電膜を堆積し、パターニングを行って、金属層を形成する。金属層は、ソース/ドレイン電極410、412及びコンタクトホール411、413の内側を含む。この他に同じ層で、データ線105や電源線108等も形成され得る。
【0088】
次に、感光性の有機材料を堆積し、平坦化膜421を形成する(S45)。露光、現像によってTFTのソース/ドレイン電極412とアノード電極408を接続するためのコンタクトホール409を開口する。
【0089】
次に、コンタクトホール409を形成した平坦化膜421上に、アノード電極408を形成する(S47)。アノード電極408は、例えば、ITO、IZO、ZnO、In2O3等の透明導電層、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr等の金属又はこれらの金属を含む合金の反射層、前記した透明導電層の3層を含む。IZO透明導電層は、OLED表示装置の折り曲げ耐性を向上することができる。なお、アノード電極408の3層構成は、一例であり2層でもよい。アノード電極408は、コンタクトホール409を介して、ソース/ドレイン電極412と接続される。
【0090】
次に、例えばスピンコーティングによって、例えば感光性の有機樹脂膜を堆積し、パターニングを行って画素定義層407を形成する(S49)。パターニングにより画素定義層407には開口406が形成され、各副画素のアノード電極408が形成された開口406の底で露出する。画素定義層407により、各副画素の発光領域が分離される。
【0091】
以上の工程により、フレキシブル基板及びフレキシブル基板上の画素回路(TFTアレイ)を形成することができる。なお、画素定義層407を形成した後の工程は従来の技術により実施でき、説明を省略する。
【0092】
なお、OLED表示装置の製造において、アモルファスシリコン層を加熱して脱水素処理S25又はポリシリコン層の水素化及び活性化処理における温度が最も高い。したがって、これらの処理を例えば400℃以下で行うことで、OLED表示装置の製造における全行程が400℃以下で実施される。また、上記工程に金属層と層間絶縁膜を形成する工程を追加して、保持容量を形成することもできる。
【0093】
上述のように、本実施形態のOLED表示装置は、ポリイミド層とTFTアレイ(画素回路)との間に透明導電層を含む。これにより、ポリイミド層に含まれる電荷による電界のTFTへの影響を低減することでTFTの動作をより安定化させ、イメージリテンションを抑制できる。また、透明導電層がTFTアレイの下側に配置されていることで、TFT層にニュートラルプレーンが一致するように調整しやすくなる。ここでいうニュートラルプレーンとは、フレキシブル積層体の断面において、折り曲げ時に応力がかからない仮想面を意味する。
【0094】
図6Aは、比較例のOLED表示装置の断面を模式的に示す。TFT層501は、上側多層膜503と下側多層膜505との間に挟まれている。フレキシブルOLED表示装置において、上側多層膜503に多機能層が集中するため、ニュートラルプレーン507は、TFT層501より上の上側多層膜503に位置している。
【0095】
図6Bは、本実施形態の透明導電層519を含むOLED表示装置の断面を模式的に示す。TFT層511は、上側多層膜513と下側多層膜515との間に挟まれている。透明導電層519は、下側多層膜515に含まれている。このように、透明導電層519がTFT層511の下方に存在するため、TFT層511にニュートラルプレーン517が一致するように調整しやすくなる。したがって、OLED表示装置の折り曲げ信頼性を向上させることができる。
【0096】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本開示の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0097】
10 表示装置、100 TFT基板、200 封止構造部、302 ポリイミド層、303 シリコン酸化物層、304 アモルファスシリコン層、305 ポリイミド層、306 シリコン酸化物層、307 透明導電層、308 シリコン酸化物層、309 シリコン窒化物層、310 シリコン酸化物層、401 無機絶縁物層、402 カソード電極、404 有機発光多層膜、406 開口、407 画素定義層、408 アノード電極、409 コンタクトホール、410、412 ソース/ドレイン電極、411、413 コンタクトホール、414 ゲート電極、415 チャネル、416、417 ソース/ドレイン領域、421 平坦化膜、422 層間絶縁膜、423 ゲート絶縁膜、431 平坦化膜、432 無機絶縁物層、433 タッチスクリーンフィルム、434 λ/4板、435 偏光板、436 樹脂カバーレンズ、501、511 TFT層、503、513 上側多層膜、505、515 下側多層膜、507、517 ニュートラルプレーン、519 透明導電層
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B