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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】設計支援装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20240606BHJP
   E04B 1/00 20060101ALI20240606BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20240606BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20240606BHJP
【FI】
G06F30/10
E04B1/00 ESW
G06F30/13
G06Q50/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020114233
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012416
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 周作
(72)【発明者】
【氏名】石田 高義
(72)【発明者】
【氏名】亀森 淳也
(72)【発明者】
【氏名】金子 侑樹
(72)【発明者】
【氏名】川上 沢馬
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】内山 元希
(72)【発明者】
【氏名】和多田 遼
(72)【発明者】
【氏名】木下 拓也
(72)【発明者】
【氏名】松岡 康友
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 琢也
(72)【発明者】
【氏名】九嶋 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 周英
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 孝
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-232320(JP,A)
【文献】特開2017-151538(JP,A)
【文献】特開2001-060215(JP,A)
【文献】国際公開第2011/016188(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109684714(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 - 30/398
E04B 1/00
G06Q 50/08
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の平面関数の組み合わせ毎に、入力された設計対象の建物のボリュームを表す空間を、前記複数の平面関数で表される複数の平面で分割し、前記平面の交差部に、構造部材を配置することにより、構造部材の組み合わせ候補を生成する構造部材候補生成部と、
複数の平面関数の組み合わせ毎に、前記複数の平面関数を用いて前記構造部材候補生成部により生成された前記構造部材の組み合わせ候補について、予め定められた目的関数を用いて、スコアを算出するスコア算出部と、
を含む設計支援装置。
【請求項2】
前記目的関数は、前記平面により分割された空間のバランス、階高、構造部材の密集度合い、分散度合い、又は構造部材のスパンを含む目的関数である請求項1記載の設計支援装置。
【請求項3】
前記スコアに応じて選択される前記構造部材の組み合わせ候補を、前記ボリュームに重畳させて表示する表示部を更に含む請求項1又は2記載の設計支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨構造物の基本事項データを入力する工程と、前記基本事項データと予め設定された所定の部材配置ルールとに基づいて鉄骨構造物の構造部材データを生成する工程とを備えたことを特徴とする鉄骨構造物の設計支援システムが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、意匠設計用CAD情報を入力し、意匠設計用CAD情報に含まれる複数の柱又は複数の壁の形状、寸法、及び位置を示す情報に基づいて建物の通り芯を示す情報を生成する構造解析用情報生成装置が知られている(例えば、特許文献2)。
【0004】
また、建物に含まれる全ての平面モジュールで使用される各製品部材の本数、当該各製品部材を切断することによって当該各製品部材より取得される構造部材の本数および当該各構造部材の大きさと配置される位置を示す情報を求める建物用CADシステムが知られている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-245040号公報
【文献】特開2008-158793号公報
【文献】特開2017-10413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の技術では、入力画面における基本事項データの入力完了後に、鉄骨構造物の構造部材データを生成して生成結果を表示する。しかしながら、上記特許文献1には、構造部材の組み合わせ候補を複数生成して、最適な組み合わせを求めることについては記載されていない。
【0007】
上記特許文献2に記載の技術では、建物のボリュームを含む意匠設計のCADデータから構造解析用のデータを一連の流れで作成する。しかしながら、上記特許文献2には、構造部材の組み合わせ候補を複数生成して、最適な組み合わせを求めることについては記載されていない。
【0008】
また、上記特許文献3には、構造部材の組み合わせ候補を複数生成して、最適な組み合わせを求めることについては記載されていない。
【0009】
本発明は上記事実を考慮して、最適な構造部材の組み合わせを用いた建物の構造設計を支援することができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る設計支援装置は、複数の平面関数の組み合わせ毎に、入力された設計対象の建物のボリュームを表す空間を、前記複数の平面関数で表される複数の平面で分割し、前記平面の交差部に、構造部材を配置することにより、構造部材の組み合わせ候補を生成する構造部材候補生成部と、複数の平面関数の組み合わせ毎に、前記複数の平面関数を用いて前記構造部材候補生成部により生成された前記構造部材の組み合わせ候補について、予め定められた目的関数を用いて、スコアを算出するスコア算出部と、を含んで構成されている。
【0011】
本発明に係る設計支援装置によれば、構造部材候補生成部によって、複数の平面関数の組み合わせ毎に、入力された設計対象の建物のボリュームを表す空間を、前記複数の平面関数で表される複数の平面で分割し、前記平面の交差部に、構造部材を配置することにより、構造部材の組み合わせ候補を生成する。そして、スコア算出部によって、複数の平面関数の組み合わせ毎に、前記複数の平面関数を用いて前記構造部材候補生成部により生成された前記構造部材の組み合わせ候補について、予め定められた目的関数を用いて、スコアを算出する。
【0012】
このように、複数の平面関数の組み合わせ毎に、入力された設計対象の建物のボリュームを表す空間を、前記複数の平面関数で表される複数の平面で分割し、前記平面の交差部に、構造部材を配置することにより、構造部材の組み合わせ候補を生成し、予め定められた目的関数を用いて、スコアを算出することにより、最適な構造部材の組み合わせを用いた建物の構造設計を支援することができる。
【0013】
本発明に係る設計支援装置において、前記目的関数は、構造部材の密集度合い、構造部材の分散度合い、又は構造部材のスパンを含む目的関数である。これにより、構造部材の密集度合い、構造部材の分散度合い、又は構造部材のスパンを考慮して、最適な構造部材の組み合わせを用いた建物の構造設計を支援することができる。
【0014】
本発明に係る設計支援装置は、前記スコアに応じて選択される前記構造部材の組み合わせ候補を、前記ボリュームに重畳させて表示する表示部を更に含むことができる。これにより、より効果的に、建物の構造設計を支援することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の設計支援装置によれば、複数の平面関数の組み合わせ毎に、入力された設計対象の建物のボリュームを表す空間を、前記複数の平面関数で表される複数の平面で分割し、前記平面の交差部に、構造部材を配置することにより、構造部材の組み合わせ候補を生成し、予め定められた目的関数を用いて、スコアを算出することにより、最適な構造部材の組み合わせを用いた建物の構造設計を支援することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る設計支援装置を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る設計支援装置を示す機能ブロック図である。
図3】建物のボリュームを表す画像の例を示す図である。
図4】建物の平面形状に対して平面で分割した例を示す条件図である。
図5】建物のボリュームに柱の組み合わせを重畳して表示する画面の例を示す図である。
図6】本発明の実施の形態に係る設計支援装置の設計支援処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図7】建物の平面形状に対して平面で分割した例を示す条件図である。
図8】部屋の用途に応じて色分けした、建物の平面形状の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
<本発明の形態の設計支援装置の構成>
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る設計支援装置100は、CPU12、グラフィックカード13、GPU14、RAM16、HDD18、通信インタフェース21、及びこれらを相互に接続するためのバス23を備えている。
【0019】
CPU12、GPU14は、各種プログラムを実行する。RAM16は、CPU12による各種プログラムの実行時におけるワークエリア等として用いられる。記録媒体としてのHDD18には、後述する設計支援処理ルーチンを実行するためのプログラムを含む各種プログラムや各種データが記憶されている。
【0020】
本実施の形態における設計支援装置100を、設計支援処理ルーチンを実行するためのプログラムに沿って、機能ブロックで表すと、図2に示すようになる。設計支援装置100は、入力部10、演算部20、及び出力部50を備えている。
【0021】
入力部10は、設計対象の建物のボリュームを表す空間を入力として受け付ける。例えば、図3に示すような設計対象の建物のボリュームの3次元空間を表すデータを入力として受け付ける。
【0022】
演算部20は、構造部材候補生成部22、スコア算出部24、及び表示部26を備えている。
【0023】
構造部材候補生成部22は、入力された建物のボリュームを表す空間を、ランダムに決定される複数の平面関数で表される複数の平面で分割する(図4)。
【0024】
このとき、平面の数もランダムに決定し、決定された数だけ、平面関数のパラメータをランダムに決定し、決定されたパラメータを用いた平面関数で表される平面で、建物のボリュームを表す空間を分割する。なお、平面の数をランダムに決定するのではなく、任意の指定数としてもよい。また、整形な平面のみとする制約を設けて、平面関数を決定してもよい。図4では、平面が、ボリュームを表す空間の面と平行になる、という制約の下で平面関数をランダムに決定した場合について、建物のボリュームを表す空間及び平面関数で表される平面を、上面から見た例を示している。
【0025】
構造部材候補生成部22は、建物のボリュームを表す空間に対して、平面の交差部に、構造部材の種類(柱、梁、壁等)毎に、構造部材を配置することにより、構造部材の組み合わせ候補を生成する。
【0026】
例えば、構造部材の種類(柱、梁、壁等)毎に定められた、平面の交差部に対する構造部材の生成ルールに基づいて、平面の交差部に構造部材を生成し、構造部材の組み合わせ候補を生成する。
【0027】
上記の処理を、ランダムに決定される平面数及び平面関数の組み合わせ毎に繰り返し、構造部材の種類毎の構造部材の組み合わせ候補を複数生成する。
【0028】
スコア算出部24は、平面関数の組み合わせ毎に、構造部材候補生成部22により当該平面関数の組み合わせを用いて構造部材の種類毎に生成された構造部材の組み合わせ候補について、予め定められた目的関数を用いて、スコアを算出する。
【0029】
例えば、構造部材の種類(柱、梁、壁等)毎に生成された構造部材の組み合わせ候補について、分割された空間のバランス、階高、構造部材の密集度合い/分散度合い、及び構造部材のスパンを用いて表される目的関数を用いて、スコアを算出する。具体的には、分割された空間のバランスが良いほど、スコアが高く、階高が、標準値に近いほど、スコアが高く、構造部材の密集度合い/分散度合いが、標準値に近いほど、スコアが高く、構造部材のスパンが、標準値に近いほどスコアが高くなるように定められた目的関数を用いて、スコアを算出する。
【0030】
スコア算出部24は、算出したスコアに応じて、構造部材の組み合わせ候補を決定する。例えば、スコアが最大となる、構造部材の種類毎の構造部材の組み合わせ候補を決定する。
【0031】
表示部26は、スコア算出部24によって決定された、構造部材の種類毎の構造部材の組み合わせ候補を、建物のボリューム又は平面形状に重畳させて、出力部50により表示する(図5)。図5では、設計対象の建物のボリュームに、生成された柱の組み合わせを重畳させて表示する例を示している。
【0032】
<設計支援装置の動作>
次に、本発明の実施の形態に係る設計支援装置100の動作について説明する。
【0033】
まず、入力部10によって、設計対象の建物のボリュームを表す空間を入力として受け付けると、設計支援装置100によって、図6に示す設計支援処理ルーチンが実行される。
【0034】
まず、ステップS100において、構造部材候補生成部22は、入力された建物のボリュームを表す空間を取得する。
【0035】
ステップS102では、構造部材候補生成部22は、ランダムに複数の平面関数を決定し、決定された平面関数で表される平面で、建物のボリュームを表す空間を分割する。
【0036】
ステップS104では、構造部材候補生成部22は、建物のボリュームを表す空間に対して、平面の交差部に、構造部材の種類(柱、梁、壁等)毎に、構造部材を配置することにより、構造部材の組み合わせ候補を生成する。
【0037】
ステップS106では、予め定められた反復終了条件を満たすか否かを判定する。反復終了条件を満たさない場合には、上記ステップS102へ戻り、上記ステップS102、S104の処理を繰り返す。一方、反復終了条件を満たす場合には、ステップS108へ進む。反復終了条件としては、例えば、反復回数が上限値に到達したことを用いればよい。
【0038】
ステップS108では、スコア算出部24は、平面関数の組み合わせ毎に、構造部材候補生成部22により当該平面関数の組み合わせを用いて構造部材の種類毎に生成された構造部材の組み合わせ候補について、予め定められた目的関数を用いて、スコアを算出する。
【0039】
ステップS110では、スコア算出部24は、算出したスコアに応じて、構造部材の組み合わせ候補を決定する。
【0040】
ステップS112では、表示部26は、上記ステップS110で決定された、構造部材の種類毎の構造部材の組み合わせ候補を、ボリュームに重畳させて、出力部50により表示し、設計支援処理ルーチンを終了する。
【0041】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る設計支援装置によれば、複数の平面関数の組み合わせ毎に、入力された設計対象の建物のボリュームを表す空間を、複数の平面関数で表される複数の平面で分割し、平面の交差部に、構造部材を配置することにより、構造部材の組み合わせ候補を生成し、予め定められた目的関数を用いて、スコアを算出する。これにより、最適な構造部材の組み合わせを用いた建物の構造設計を支援することができる。
【0042】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0043】
例えば、上述した実施形態において、制約を設けずに、平面関数を決定してもよい(図7)。図7では、平面の決定に関する制約を設けずに平面関数をランダムに決定した場合について、建物のボリュームを表す空間及び平面関数で表される平面を、上面から見た例を示している。
【0044】
また、入力された建物のボリュームを分割した空間毎の用途を受け付け、分割した空間毎に、構造部材の種類毎に生成された構造部材の組み合わせ候補について、当該用途に対して定めた目的関数を用いて、スコアを算出してもよい。例えば、図8に示す上面図のように、建物のボリュームを表し、かつ、部屋の用途毎に色分けした空間を入力とし、部屋毎に、構造部材の種類毎に生成された構造部材の組み合わせ候補について、当該部屋の用途に対して定めた目的関数を用いて、スコアを算出してもよい。
【0045】
また、本発明のプログラムは、記憶媒体に格納して提供するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 入力部
20 演算部
22 構造部材候補生成部
24 スコア算出部
26 表示部
50 出力部
100 設計支援装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8