IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 清水建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-施工管理方法 図1
  • 特許-施工管理方法 図2
  • 特許-施工管理方法 図3
  • 特許-施工管理方法 図4
  • 特許-施工管理方法 図5
  • 特許-施工管理方法 図6
  • 特許-施工管理方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】施工管理方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/18 20060101AFI20240606BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240606BHJP
   E02D 5/20 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
E02D5/18 102
E02F9/20 N
E02D5/20 102
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020124412
(22)【出願日】2020-07-21
(65)【公開番号】P2022021055
(43)【公開日】2022-02-02
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】長澤 正明
(72)【発明者】
【氏名】清水 譲
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-029165(JP,A)
【文献】特開平08-144319(JP,A)
【文献】特開平07-048838(JP,A)
【文献】特開平05-025987(JP,A)
【文献】特開2016-098535(JP,A)
【文献】特開2020-045635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/00-5/20
E02F 3/42,43,84,85
E02F 9/20,22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削機による施工を管理する施工管理方法であって、
掘削動作を行っている掘削機の位置と前記掘削機の姿勢を含む施工情報を計測する計測ステップと、
コンピュータが、前記計測ステップで計測した前記掘削機の施工情報に基づいて、掘削動作中の前記掘削機の三次元空間上の位置及び姿勢を含む三次元情報を、リアルタイムで表示画面に表示させる表示ステップと、
を含み、
前記施工情報に基づいて前記掘削機が掘削した掘削溝の出来形の三次元モデルである出来形モデルを生成する出来形生成ステップを含み、
前記表示ステップは、前記出来形生成ステップで生成された前記出来形モデルを表示画面に表示させ、
前記表示ステップは、前記出来形生成ステップで生成された前記出来形モデルと、予め設計された溝の形状である設計形状と、を比較し、前記設計形状に対して過掘りとなる領域を第1の態様で前記表示画面に表示し、前記設計形状に対して未掘りとなる領域を第1の態様とは異なる第2の態様で前記表示画面に三次元表示させ、
前記第1の態様と前記第2の態様とは表示色を異ならせて前記表示画面に表示させる施工管理方法。
【請求項2】
前記三次元情報は、掘削動作中の前記掘削機の三次元モデルである掘削機モデルを含み、
前記表示ステップは、前記掘削機モデルを掘削深度に関連付けてリアルタイムで表示画面に表示させる、
請求項1に記載の施工管理方法。
【請求項3】
前記表示ステップは、前記掘削機が遠隔操作されている操作内容をリアルタイムで表示させる、
請求項1又は請求項2に記載の施工管理方法。
【請求項4】
前記施工情報を時系列で記録媒体に格納する格納ステップを含み、
前記表示ステップは、前記記録媒体に格納されている前記施工情報を読み取り、読み取った前記施工情報に基づいて前記掘削機の軌跡に沿って前記掘削機モデルの動画を表示画面で再生する、
請求項2に記載の施工管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、地中連続壁の構築するための溝掘り用として、地盤を掘削する掘削機と、掘削機をワイヤー等で吊り下げて支持する地上装置と、を有する掘削装置が開示されている。掘削機のオペレータは、地上装置に設けられた操作室内から掘削機を遠隔制御している。
【0003】
具体的には、操作室内には、掘削機本体を平面から見た場合における掘削機の二次元の位置情報を表示する表示装置が設置されている。オペレータは、表示装置に表示される掘削機の二次元の位置情報を確認することで掘削機本体の状態を把握しながら、操作部を遠隔操作している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-61862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、熟練者のオペレータが減少しており、非熟練者がオペレータとして掘削機を遠隔操作する機会が多くなってきている。ただし、非熟練者にとって、表示装置に表示される掘削機の二次元の位置情報だけでは、掘削機の状態を把握することが困難である。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、掘削機の状態の把握を支援することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、掘削機による施工を管理する施工管理方法であって、掘削動作を行っている掘削機の位置と前記掘削機の姿勢を含む施工情報を計測する計測ステップと、コンピュータが、前記計測ステップで計測した前記掘削機の施工情報に基づいて、掘削動作中の前記掘削機の三次元空間上の位置及び姿勢を含む三次元情報を、リアルタイムで表示画面に表示させる表示ステップと、を含み、前記施工情報に基づいて前記掘削機が掘削した掘削溝の出来形の三次元モデルである出来形モデルを生成する出来形生成ステップを含み、前記表示ステップは、前記出来形生成ステップで生成された前記出来形モデルを表示画面に表示させ、前記表示ステップは、前記出来形生成ステップで生成された前記出来形モデルと、予め設計された溝の形状である設計形状と、を比較し、前記設計形状に対して過掘りとなる領域を第1の態様で前記表示画面に表示し、前記設計形状に対して未掘りとなる領域を第1の態様とは異なる第2の態様で前記表示画面に三次元表示させ、前記第1の態様と前記第2の態様とは表示色を異ならせて前記表示画面に表示させる施工管理方法である。
【0008】
(2)上記(1)の施工管理方法であって、前記三次元情報は、掘削動作中の前記掘削機の三次元モデルである掘削機モデルを含み、前記表示ステップは、前記掘削機モデルを掘削深度に関連付けてリアルタイムで表示画面に表示させてもよい。
【0010】
)上記(1)または上記(2)の施工管理方法であって、前記表示ステップは、前記掘削機が遠隔操作されている操作内容をリアルタイムで表示させてもよい。
【0013】
)上記(2)の施工管理方法であって、前記施工情報を時系列で記録媒体に格納する格納ステップを含み、前記表示ステップは、前記記録媒体に格納されている前記施工情報を読み取り、読み取った前記施工情報に基づいて前記掘削機の軌跡に沿って前記掘削機モデルの動画を表示画面で再生してもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、掘削機本体の状態の把握を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る施工管理システムの概略構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る遠隔操作装置の概略構成の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る遠隔操作装置内にある操作室内の模式図である。
図4】本実施形態に係る掘削機110の上部における設計上の掘削位置と実際の掘削位置とを示す図である。
図5】本実施形態に係る掘削機110の下部における設計上の掘削位置と実際の掘削位置とを示す図である。
図6】本実施形態の表示装置320の表示画面の一例を示す図である。
図7】本実施形態の出来形モデルが表示されている表示装置320の表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態に係る施工管理方法及び施工管理システムを、図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る施工管理システム1の概略構成の一例を示す図である。施工管理システム1は、地中連続壁の掘削工事の施工を行う。ただし、これに限定されず、施工管理システム1は、あらゆる工種の施工管理に適用可能である。
【0018】
図1に示すように、施工管理システム1は、掘削装置100、位置検出システム200及び遠隔操作装置300を備える。
【0019】
掘削装置100は、掘削機110及び地上装置120を備える。
【0020】
掘削機110は、地盤を掘削するものである。本実施形態の掘削機110は、例えば水平多軸式の地中連続壁掘削機である。掘削機110は、水平軸の周りに回転するドラムカッター111によって掘削する。具体的には、掘削機110は、下端部に2個のドラムカッター111a,111bが並列に配置されている。掘削機110は、地上装置120から繰り出されるワイヤーL1,L2で吊り下げられている。掘削の進行にともなってワイヤーL1,L2が繰り出されて所定の深さの溝が形成される。
【0021】
掘削機110の側部には、地盤に反力を取らせて掘削機110の掘削方向を修正するアジャスターガイド112が複数配置されている。
【0022】
アジャスターガイド112は、掘削機110の四方の側面の上下に配されており、不図示の油圧ジャッキによって水平方向に伸縮する。アジャスターガイド112が伸長することで、掘削機110の姿勢が修正される。例えば、掘削機110の側部には、12個のアジャスターガイド112(112-1~112-12)が設けられている。
【0023】
地上装置120は、ワイヤーL1,L2で掘削機110を吊り下げており、ワイヤーL1,L2が繰り出すことで溝を形成する。地上装置120には、掘削機110を遠隔操作する操作室130が設けられている。オペレータは、操作室130内から掘削機110を遠隔操作する。
【0024】
位置検出システム200は、地中の掘削機110のXY平面上の位置及び掘削機110の傾斜を検出する。ここで、XY平面とは、掘削機110の掘削方向に対して垂直な平面である。本実施形態の一例として、位置検出システム200は、位置検出装置200a及び位置検出装置200bを備える。
【0025】
位置検出装置200aと掘削機110とは、ワイヤー210aを用いて鉛直方向に接続されている。すなわち、ワイヤー210aは、ワイヤー210aの一端が位置検出装置200aの上部に接続されており、他端が掘削機110に接続されている。位置検出装置200aは、ワイヤー210aに対して張力をかけることで、ワイヤー210aを弛まず鉛直方向に一直線となるように制御する。ワイヤー210aの他端と掘削機110の上部との接続点を測定点S1とする。位置検出装置200aは、ワイヤー210aの変位と傾斜とを計測することで測定点S1の絶対位置(X1,Y1)を求める。位置検出装置200aは、求めた測定点S1の絶対位置(X1,Y1)を、遠隔操作装置300に対して無線又は有線で送信する。
【0026】
位置検出装置200bと掘削機110とは、ワイヤー210bを用いて鉛直方向に接続されている。すなわち、ワイヤー210bは、ワイヤー210bの一端が位置検出装置200bの上部に接続されており、他端が掘削機110に接続されている。位置検出装置200bは、ワイヤー210bに対して張力をかけることで、ワイヤー210bを弛まず鉛直方向に一直線となるように制御する。ワイヤー210bの他端と掘削機110の上部との接続点を測定点S2とする。位置検出装置200bは、ワイヤー210bの変位と傾斜とを計測することで測定点S2の絶対位置(X2,Y2)を求める。位置検出装置200bは、求めた測定点S2の絶対位置(X2,Y2)を、遠隔操作装置300に対して無線又は有線で送信する。
【0027】
遠隔操作装置300は、操作室130内に配置されている。遠隔操作装置300は、掘削機110を遠隔操作する。図2は、本実施形態の遠隔操作装置300の概略構成図である。図2に示すように、遠隔操作装置300は、操作装置310、表示装置320及び情報処理装置330を備える。
【0028】
操作装置310は、オペレータにより操作される。図3は、操作室130内の模式図のである。オペレータは、操作装置310を操作することで掘削機110の掘削方向を調整したり、掘削動作に関する設定値を変更することができる。例えば、操作装置310は、掘削方向を調整するための複数のスイッチ(押下スイッチなど)や、掘削動作に関する設定値を入力する入力装置などが設けられている操作盤である。例えば、設定値とは、掘削機110における掘削方向の速度、ドラムカッター111a,111bの回転数、ドラムカッター111a,111bの回転方向などである。操作装置310は、オペレータにより操作されると、その操作に応じた操作信号を情報処理装置330に送信する。例えば、操作装置310は、スイッチが押下されると、押下されたスイッチに対応する操作信号を情報処理装置330に出力する。例えば、操作装置310には、複数のアジャスターガイド112のそれぞれに対応するスイッチが設けられている。
【0029】
表示装置320は、情報処理装置330からの情報を表示する。例えば、表示装置320は、掘削動作中の掘削機110をリアルタイムで三次元表示する。例えば、表示装置320は、リアルタイムでの掘削溝の出来形を三次元で表示可能である。例えば、表示装置320は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイである。ここで、本実施形態においてリアルタイムとは、掘削動作中の掘削機110に対する遠隔制御に求められる応答性を実現することが可能な程度に短い周期であり、より短いことが望ましいが、完全に同時である必要はなく、ネットワークを介した通信によるタイムラグや、情報処理装置330,位置検出システム200,掘削装置100などの装置の処理速度によるタイムラグなどを含む。
【0030】
情報処理装置330は、遠隔制御部400、情報収集部410、計測部420、モデル生成部430、出来形生成部440、格納部450及び表示制御部460を備える。
【0031】
遠隔制御部400は、操作装置310から送信された操作信号に基づいて、掘削機110の掘削動作を制御する。遠隔制御部400は、操作装置310から送信された操作信号が掘削方向を修正する操作内容である場合には、複数のアジャスターガイド112のうち、少なくともいずれかのアジャスターガイド112を伸長させるように制御する。例えば、遠隔制御部400は、アジャスターガイド112-1に対応するスイッチが操作された場合には、アジャスターガイド112-1を伸長させるように制御する。また、遠隔制御部400は、操作装置310により設定された掘削速度の設定値に基づいて、掘削機110の掘削速度を制御する。遠隔制御部400は、操作装置310から送信された操作信号がドラムカッター111a,111bの回転数を変更する操作内容である場合には、その操作内容に応じてドラムカッター111aやドラムカッター111bの回転速度を制御する。回転するドラムカッター111aやドラムカッター111bが地盤を掘削することにより、ドラムカッター111aやドラムカッター111bに負荷が生じ、ドラムカッター111bに流れる電流値が上昇又は減少する。また、遠隔制御部400は、操作装置310から送信された操作信号がドラムカッター111a,111bの回転方向を変更する操作内容である場合には、その操作内容に応じてドラムカッター111a,111bの回転方向を制御する。
【0032】
情報収集部410は、位置検出装置200aから測定点S1の絶対位置(X1,Y1)の情報をリアルタイムで取得する。情報収集部410は、位置検出装置200bから測定点S2の絶対位置(X2,Y2)の情報をリアルタイムで取得する。
【0033】
計測部420は、測定点S1の絶対位置(X1,Y1)と、測定点S2の絶対位置(X2,Y2)と、に基づいて、掘削動作を行っている掘削機110の上部の位置情報(以下、「上部位置情報」という。)と、掘削機110の下部の位置情報(以下、「下部位置情報」という。)と、をリアルタイムで計測する。計測部420は、掘削動作を行っている掘削機110の傾斜をリアルタイムで計測する。例えば、計測部420は、掘削機110に取り付けられた傾斜計(不図示)からの信号に基づいて、掘削機110の傾斜を計測する。計測部420は、ワイヤーL1を巻き取るドラムのドラム径と、当該ドラムの回転速度と、ワイヤーL1の張力とに基づいて掘削機110の深度を計測する。計測部420は、各ドラムカッターの電流値を計測する。計測部420は、掘削機110をワイヤーL1で吊っているときの吊り荷重を計測する。計測部420は、掘削機110に取り付けられた水中ポンプ(不図示)の揚水量を計測する。例えば、計測部420は、掘削装置100に取り付けられた流量計などからの信号に基づいて、水中ポンプの揚水量を計測する。一例として、水中ポンプは、2つのドラムカッター111a,111bの間に位置しており、掘削ずりを安定液と共に吸込口から吸い込んで地上へ揚水する。
【0034】
モデル生成部430は、計測部420によって計測された最新の施工情報に基づいて掘削動作中の掘削機110の三次元モデルである掘削機モデルを生成する。施工情報は、少なくとも、掘削動作を行っている掘削機110の位置(上部位置情報、下部位置情報)と掘削機110の姿勢と、深度との情報を含む。掘削機110の姿勢とは、掘削機110のねじれ角及び傾斜の少なくともいずれかを含む。本実施形態の一例として、施工情報は、各ドラムカッター111a,111bの電流値、吊り荷重及び揚水量を含んでもよい。
【0035】
以下において、掘削機モデルの生成方法を、図4及び図5を用いて説明する。図4は、掘削機110の上部における設計上の掘削位置と実際の掘削位置とを示す図である。図5は、掘削機110の下部における設計上の掘削位置と実際の掘削位置とを示す図である。
【0036】
モデル生成部430は、計測部420で計測された上部位置情報と下部位置情報とを用いて設計上の掘削機110の掘削位置に対する実際の掘削機110の掘削位置のずれ(変位)を算出する。
【0037】
具体的には、計測部420は、絶対位置(X1,Y1)と絶対位置(X2,Y2)とを含む施工情報に基づいて、実際の掘削機110の上部の中心位置O’を求める。この中心位置O’は、XY平面上における現在の掘削機110の上部の中心位置である。中心位置O’は、上部位置情報の一例である。計測部420は、絶対位置(X1,Y1)と絶対位置(X2,Y2)とを含む施工情報とに基づいて、実際の掘削機110の下部の中心位置O’’を求める。この中心位置O’’は、XY平面上における現在の掘削機110の下部の中心位置である。中心位置O’’は、下部位置情報の一例である。
【0038】
モデル生成部430は、設計上の中心位置Oと、実際の中心位置O’とを比較して、中心位置Oから中心位置O’へのX軸方向及びY軸方向の変位(x’、y’)を算出する。中心位置Oは、掘削機110の上部における設計上の中心位置である。このx’は、実際の掘削機110の掘削位置が設計上の掘削機110の掘削位置に対してX軸方向にどのくらい移動しているかを表すものである。このy’は、実際の掘削機110の掘削位置が設計上の掘削機110の掘削位置に対してY軸方向にどのくらい移動しているかを表すものである。設計上の掘削機110の掘削位置は、予め情報処理装置330に登録されている。
【0039】
モデル生成部430は、設計上の掘削機110の掘削位置を基準として、絶対位置(X1,Y1)と絶対位置(X2,Y2)とに基づいて、ねじれ角αを求める。
【0040】
モデル生成部430は、変位(x’、y’)、掘削機110の傾斜、及び掘削機110の下部と上部の各深度とに基づいて、中心位置Oから中心位置O’’へのX軸方向及びY軸方向の変位(x’’、y’’)を算出する。中心位置Oは、掘削機110の下部における設計上の中心位置である。中心位置O’’は、実際の掘削機110の下部の中心位置である。
【0041】
なお、x’、y’、x”,y”の値は、位置検出システム200によって算出されてもよい。この場合には、モデル生成部430は、位置検出システム200からx’、y’、x”,y”の値を取得する。
【0042】
掘削機110のX軸方向の辺長をx、Y軸方向の辺長をyとすると、モデル生成部430は、下記に示す式(1)~(4)を用いて、掘削機110の上部における四隅の各点A、B、C、Dの座標を算出する。
【0043】
点A:(-x×cosα-y×sinα+x’、-x×sinα+y×cosα+y’) …(1)
点B:( x×cosα-y×sinα+x’、 x×sinα+y×cosα+y’) …(2)
点C:( x×cosα+y×sinα+x’、 x×sinα-y×cosα+y’) …(3)
点D:(-x×cosα-y×sinα+x’、-x×sinα-y×cosα+y’) …(4)
【0044】
また、モデル生成部430は、下記に示す(5)~(8)を用いて、掘削機110の下部における四隅の各点A’、B’、C’、D’を算出する。
【0045】
点A’:(-x×cosα-y×sinα+x”、-x×sinα+y×cosα+y”) …(5)
点B’:( x×cosα-y×sinα+x”、 x×sinα+y×cosα+y”) …(6)
点C’:( x×cosα+y×sinα+x”、 x×sinα-y×cosα+y”) …(7)
点D’:(-x×cosα-y×sinα+x”、-x×sinα-y×cosα+y”) …(8)
【0046】
モデル生成部430は、掘削機110の上部の四隅の点A、B、C、Dと、掘削機110の下部の四隅の点A’、B’、C’、D’と、に基づいて、掘削動作中の掘削機110をリアルタイムで三次元モデル化する。なお、掘削機モデルにおいて、アジャスターガイド112もモデル化されている。アジャスターガイド112の三次元モデルを「アジャスターガイドモデル」と称する。
【0047】
出来形生成部440は、施工情報に基づいて掘削機110が掘削した掘削溝の出来形の三次元モデルである出来形モデルを生成する。出来形生成部440は、施工情報に基づいて掘削動作中における掘削機110の軌跡を算出し、この軌跡と掘削機モデルとを組み合わせることで出来形モデルを生成する。出来形生成部440は、リアルタイムで出来形モデルを生成してもよいし、掘削溝が形成されて後に格納部450から施工情報を読み込んで出来形モデルを生成してもよい。
【0048】
格納部450には、計測部420で計測された施工情報を時系列で格納する。格納部450には、情報収集部410が収集した絶対位置(X1,Y1)、絶対位置(X2,Y2)が時系列で格納されてもよい。
【0049】
表示制御部460は、掘削機110の施工情報に基づいて、掘削動作中の掘削機110の三次元空間上の位置及び姿勢を示す三次元情報を、リアルタイムで表示装置320の表示画面に表示させる。例えば、表示制御部460は、掘削動作中の掘削機110の三次元空間上の位置及び姿勢を含む三次元情報を数値で表示装置320の画面上に表示させてもよい。例えば、表示制御部460は、中心位置O’、中心位置O’’、掘削機110の深度を三次元空間上の位置として、また、掘削機110の傾斜及びねじれ角を掘削機110の姿勢として表示装置320にリアルタイムで表示してもよい。
【0050】
また、表示制御部460は、掘削動作中の掘削機110の三次元空間上の位置及び姿勢を示す三次元情報を三次元モデルで表示装置320に表示してもよい。
【0051】
図6は、本実施形態の表示装置320の表示画面の一例である。図6に示すように、表示画面の表示領域は、大別して3つの表示領域510~530に分かれている。表示制御部460は、表示領域510に対して、モデル生成部430で生成される掘削機モデルをリアルタイムで表示する。この際、表示制御部460は、掘削機モデルを掘削深度に関連付けてリアルタイムで表示領域510に表示させてもよい。また、表示制御部460は、表示領域510に対して現在時刻、掘削機110の深度、掘削機110の傾斜、ねじれ角を掘削機モデルとは別に、数値としてリアルタイムで表示してもよい。
【0052】
ここで、上述したように、表示制御部460は、掘削機モデルをリアルタイムで表示するにあたって、例えば、掘削動作中における実際の掘削機110の姿勢や位置,深度と、表示制御部460によって表示装置320に表示される三次元情報(例えば、掘削機モデルの姿勢や位置など)とは、完全に一致する必要はなく、三次元情報の演算処理や三次元情報の表示処理に要する時間によってやや遅れて三次元情報に表示されてもよい。例えば、三次元情報(掘削機モデルの動き(例えば、姿勢)や深度の値)は、逐次計測している施工情報に基づいて掘削動作中における実際の掘削機110の動きや深度に連動するように変化するが、その連動には、前記タイムラグが含まれてもよい。
【0053】
表示制御部460は、操作信号に基づいて、掘削機110が遠隔操作されている操作内容を表示装置320にリアルタイムで表示させてもよい。例えば、表示制御部460は、掘削機モデルを表示装置320に表示するにあたって、掘削機モデルにおける複数のアジャスターガイド112のうち、遠隔操作されているアジャスターガイド112に対応するアジャスターガイドモデル600を第1の色で表示し、遠隔操作されていないアジャスターガイド112に対応するアジャスターガイドモデル610を第1の色とは異なる第2の色で表示する。すなわち、アジャスターガイド112の伸縮状態を色で表してもよい。ここで、遠隔操作されているとは、伸長している状態である。遠隔操作されていない状態とは、伸長していない状態である。このように、表示制御部460は、表示装置320において、アジャスターガイド112の伸縮状態を色で表現することにより、アジャスターガイド112の伸縮状態を可視化することができる。
【0054】
表示制御部460は、掘削機110の深度、ドライムカッターの電流値、吊り荷重、水中ポンプの揚水量の各数値を表示領域520に対して時系列でグラフ表示してもよい。例えば、表示制御部460は、計測部420で計測された施工情報を表示領域520に対してグラフで表示してもよい。なお、表示領域520に表示される項目は、オペレータによって任意に変更可能である。
【0055】
表示制御部460は、表示領域530に対して、掘削機110の深度、ドライムカッターの電流値、吊り荷重、水中ポンプの揚水量のうち、一つ以上の数値をリアルタイムで表示してもよい。また、表示制御部460は、表示領域530に対して、掘削に関する情報である掘削情報を表示してもよい。例えば、掘削情報は、掘削すべて溝の長さや掘削位置などの情報である。
【0056】
図7は、出来形モデルが表示されている表示装置320の表示画面の一例である。表示制御部460は、出来形生成部440で生成された出来形モデルを表示装置320に表示可能である。表示制御部460は、出来形生成部440で生成された出来形モデルを表示装置320に表示可能である。例えば、表示制御部460は、出来形モデルを表示するにあたって、出来形生成部440で生成された出来形モデルと、予め設計された溝の形状である設計形状と、を比較し、設計形状に対して過掘りとなる領域を第1の態様(例えば、赤色)で表示画面に表示し、設計形状に対して未掘りとなる領域を第1の態様とは異なる第2の態様(例えば、青色)で表示装置320に三次元表示させる。
【0057】
表示制御部460は、表示領域510に対して出来形モデルをリアルタイムで表示してもよいし、掘削溝が形成されて後に表示領域510に対して出来形モデルを表示してもよい。出来形モデルの表示は、オペレータが、タッチパネル、キーボード等に代表されるハードウェアキー、マウス等のポインティングデバイスを用いて行われてもよい。表示制御部460は、掘削機モデルに対して重ねて出来形モデルを表示してもよいし、掘削機モデルを非表示にし、出来形モデルを表示してもよい。この設定は、オペレータが、タッチパネル、キーボード等に代表されるハードウェアキー、マウス等のポインティングデバイスを用いて行われてもよい。
【0058】
表示制御部460は、格納部450に格納されている施工情報を読み取り、読み取った施工情報に基づいて掘削機110の軌跡に沿って掘削機モデルを表示装置320の表示画面で動かす動画(掘削モデル映像)を再生してもよい。すなわち、表示制御部460は、実際の掘削機110の掘削動作の動きを、掘削機モデルで表示装置320の表示画面において再現してもよい。オペレータは、タッチパネル、キーボード等に代表されるハードウェアキーやマウス等のポインティングデバイスを操作することで、掘削機モデルを表示装置320の表示画面で動かすことができる。例えば、表示制御部460は、掘削モデル映像の再生、停止、コマ送り、早送り、巻き戻し等を制御するボタンを含むコントローラを表示領域530に対して表示してもよい。オペレータは、このコントローラの各ボタンを押下することで掘削モデル映像の再生、停止、コマ送り、早送り、巻き戻し等を行うことができる。
【0059】
次に、本実施形態の施工管理システム1の動作を説明する。
【0060】
オペレータは、操作室130内に設置されている操作装置310を操作して、掘削機110の掘削動作を開始させる。掘削機110の掘削動作が開始されると、情報処理装置330は、掘削動作を行っている掘削機110の位置と掘削機110の姿勢を含む施工情報を逐次計測する。そして、情報処理装置330は、この施工情報に基づいて掘削動作中の掘削機110の三次元空間上の位置及び姿勢を含む三次元情報を、例えばリアルタイムで一つの画面上に表示させる。このように、例えば、表示制御部460は、施工情報を逐次計測していき、その施工情報に基づいて掘削機110における最新の三次元情報を表示装置320に順次表示させる。
【0061】
一例として、情報処理装置330は、計測した最新の施工情報に基づいて、掘削動作中の掘削機110の三次元モデルである掘削機モデルを生成する。そして、情報処理装置330は、生成した掘削機モデルを、計測した掘削機110の深度に関連付けてリアルタイムで表示装置320にリアルタイム表示させる。これにより、表示装置320には現在の深度とともに、掘削機モデルが表示されるため、オペレータは、表示装置320の表示画面を確認することで、現在の掘削機110の姿勢などの状態を把握することができる。例えば、実際の掘削機110の姿勢が第1の姿勢から第2の姿勢に変化した場合には、表示装置320に表示される掘削機モデルの姿勢も第1の姿勢から第2の姿勢に変化する。これにより、オペレータは、表示装置320の表示画面を確認することで、現在の掘削機110の姿勢をリアルタイムで把握することができる。そして、オペレータは、表示装置320に表示されている掘削機モデルを確認しながら操作装置310を操作することで設計どおりの掘削溝を形成するように掘削機110の掘削動作を制御する。なお、情報処理装置330は、オペレータが操作装置310を操作した場合には、その操作内容を掘削機モデルが表示されている画面にリアルタイムで表示させてもよい。
【0062】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0063】
(変形例1)本実施形態の施工管理システム1では、掘削機110の位置をワイヤー210a,210bで計測したが、これに限定されない。施工管理システム1は、ジャイロを用いて掘削機110の位置を計測してもよいし、傾斜計を用いて掘削機110の位置を計測してもよい。
【0064】
(変形例2)本実施形態の情報処理装置330は、作成した掘削機モデルや出来形モデルを紙媒体や電子データで出力してもよいし、掘削機モデルや出来形モデルを三次元図面又は二次元図面として紙媒体や電子データで出力してもよい。掘削溝の出来形を三次元モデルで出力することにより、掘削工事以降の工事(例えば、土留めとして使用されるのであれば、開削工事等)の作業を効率化させることが可能である。例として、内部掘削土量の3次元モデルによる数量算出、出力された3次元モデルと設計図を用いた内部構築物との干渉の有無の確認、3次元モデルを用いた山留支保工の形状の決定、3次元モデルを用いた足場や支保工等の仮設材の使用の決定等に用いることが挙げられる。
【0065】
(変形例3)上記表示装置320は、操作室130に設けられていなくもよく、例えば、スマートフォンやタブレット、ウェアラブル端末に設けられた表示装置であってもよい。これにより、遠隔地でも施工状況をリアルタイムで確認が可能であるため、掘削機110のオペレータだけではなく、施工管理者も施工状況を把握することが可能であるため、的確な管理・監督が可能となる。
【0066】
上述したように、本実施形態の施工管理システム1は、掘削機110による施工を管理する施工管理方法であって、掘削動作を行っている掘削機110の位置と掘削機110の姿勢を含む施工情報を計測する。そして、施工管理システム1は、計測した掘削機110の施工情報に基づいて、掘削動作中の掘削機110の三次元空間上の位置及び姿勢を含む三次元情報を、リアルタイムで表示画面に表示させる。
【0067】
このような構成により、オペレータによる掘削機110の状態の把握が容易となる。したがって、施工管理システム1は、掘削機110の状態の把握を支援することができる。
【0068】
ここで、現在において、掘削した溝の出来形を測定するには、超音波計測装置を用いた計測を行うことが一般的である。超音波計測装置を使用する際は、計測する溝の真上に計測装置をセットし、超音波計測装置内にあるセンサーユニットを溝内に挿入する作業が必要である。また、計測を行う際も溝の上端から下端まで同じ速度で計測する必要があるため、溝の深度が深くなるほど計測時間が長く必要となる。その際、掘削機が溝内にあると、超音波計測を阻害してしまう。そのため、超音波計測装置による出来形計測を行う際は、掘削機を溝の外へ出す必要がある。つまり、現在の技術においては掘削作業と出来形の確認作業は、平行作業ができず、掘削機の待機が必要となるため、工程に大きく影響を及ぼしている。例えば掘削機での作業終了後、掘削機を溝から出して、溝内の泥水の動きが収まってから、超音波計測装置を用いて溝の測定を行うが、測定結果が設計に対して出来形不足になった場合は、掘削機は再掘削を行う必要があるため、測定結果が出るまで掘削機は待機している必要がある。そのため、待機している掘削機は別の溝の掘削準備・掘削作業ができないこと、また再掘削を行う必要がある場合は移動・掘削準備・掘削作業を行うこと等により、作業効率が低下し、工程へ影響を及ぼす。
【0069】
一方、本実施形態の情報処理装置330は、掘削機モデルの軌跡情報から出来形を計測する。具体的には、情報処理装置330は、施工情報に基づいて出来形モデルを生成し、生成した出来形モデルを表示画面に表示させる。このような構成により、超音波計測装置を用いることなく、出来形を計測することができるため、出来形計測に時間をかける必要がなく、作業効率を低下させることなく、工程を進めることができる。
【0070】
また、従来では、施工情報は記録として残っておらず、掘削作業の記録も残らないため、何かしらのトラブルが発生したときに客観的なフィードバックができず、適切な不具合対策ができないまま施工を進めてしまい、同じような不具合が発生してしまって、効率的な施工ができない場合がある。
【0071】
一方、本実施形態の情報処理装置330は、施工情報を記録しているため、何かしらのトラブルが発生したときに客観的なフィードバックができきる。また、掘削作業・掘削溝を再現可能である。そのため、掘削終了後に掘削溝の設計に対する出来形の合否判定を再現にて確認することも可能となる。また、掘削途中でオペレータが交代した場合に情報を容易に引き継ぐことができる。さらに、不具合発生時に施工情報を再現することで不具合の再発防止対策を的確に立てることが可能となる。
【0072】
また、本実施形態の情報処理装置330は、施工情報をグラフなどで同一画面中に、リアルタイムに表示可能であるため、施工状況を統合的に把握することができ、効率的な掘削が可能となる。
【0073】
なお、上述した情報処理装置330の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、上記コンピュータは、CPU、GPUなどのプロセッサ及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えてもよい。そして、情報処理装置330の全部または一部の機能をコンピュータで実現するためのプログラムを上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムを上記プロセッサに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。ここで、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…施工管理システム、100…掘削装置、110…掘削機、120…地上装置、200…位置検出システム、300…遠隔操作装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7