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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】防眩フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20240606BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20240606BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240606BHJP
   H10K 59/00 20230101ALI20240606BHJP
【FI】
G02B5/02 C
H05B33/02
H05B33/14 A
H10K59/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020128585
(22)【出願日】2020-07-29
(62)【分割の表示】P 2019533964の分割
【原出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020194177
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2020-07-31
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2017151496
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】菅原 慶峰
【合議体】
【審判長】神谷 健一
【審判官】宮澤 浩
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-133066(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103685(WO,A1)
【文献】特開2009-244465(JP,A)
【文献】特開2015-132744(JP,A)
【文献】特開2014-85371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G02B5/02
B32B7/023
C08F2/44
C08J7/04
C08J7/18
G09F9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値の複数の微粒子を含み、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が8.4%以上55%以下の範囲の値である防眩層と、
前記防眩層と重ねて配置される基材フィルムとを備え、
画素密度が441ppiである有機ELディスプレイの表面に装着した状態において、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように調整したときの前記有機ELディスプレイの輝度分布の標準偏差が4.2以上6.0以下の範囲の値であり、且つ、60度グロスが0.9%以上30%以下の範囲の値であり、
前記防眩層には、前記複数の微粒子の凝集が分散しており、分散した前記複数の微粒の凝集より、前記防眩層の表面に凹凸の分布構造が形成されている、防眩フィルム。
【請求項2】
前記防眩層は、複数の樹脂成分を含み、前記複数の樹脂成分の相分離により形成された共連続相構造を有する、請求項1に記載の防眩フィルム。
【請求項3】
前記防眩層は、アクリル共重合体と、セルロースアセテートプロピオネートと、ナノシリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物及びウレタンアクリレートの少なくとも一方と、を含む、請求項2に記載の防眩フィルム。
【請求項4】
前記防眩層は、マトリクス樹脂と、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子を含み、
前記微粒子と前記マトリクス樹脂との屈折率差が、0以上0.07以下の範囲の値である、請求項1に記載の防眩フィルム。
【請求項5】
前記防眩層の前記マトリクス樹脂の重量G1と、前記防眩層に含まれる前記複数の微粒子の総重量G2との比G2/G1が、0.07以上0.20以下の範囲の値である、請求項4に記載の防眩フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイの表面への外光の映り込みを防止する防眩フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
防眩フィルムは、例えば、粗面化により表面に凹凸が形成された防眩層を有するフィルムであり、ディスプレイの表面に装着され、外光を散乱させてディスプレイの表面への外光の映り込みを防止する。
【0003】
防眩層の表面に凹凸を形成する方法としては、例えば特許文献1に開示されるように、防眩層中に微粒子(フィラー)を分散させる方法や、特許文献2に開示されるように、複数のポリマーの液相からのスピノーダル分解によって形成される相分離構造を利用する方法や、特許文献3に開示されるように、金型により凹凸形状を転写成形する方法等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-109702号公報
【文献】特許第3559505号公報
【文献】特開2014-102356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
防眩フィルムをディスプレイの表面に装着すると、ディスプレイの表面への外光の映り込みが防止される反面、ディスプレイからの光が防眩フィルムによる影響を受け、防眩フィルムを介したディスプレイの表示性能が低下する場合がある。このため、防眩フィルムの透過像鮮明度の設計自由度が高いことが望ましい。
【0006】
また、高精細画素を有するディスプレイ等の表面に防眩フィルムを装着すると、防眩フィルムを透過するディスプレイからの光が防眩層の表面の凹凸により屈折したり、防眩層の表面の凹凸によるレンズ効果でディスプレイの画素が拡大されて見えたりすることで、ディスプレイのギラツキが発生し、画像が見づらくなることがある。
【0007】
ディスプレイのギラツキを抑制する方法としては、例えば防眩層の表面の凹凸を縮小することが考えられるが、防眩フィルムの防眩性が低下するおそれがある。また、ディスプレイのギラツキは定量的に評価しにくい面があり、ディスプレイのギラツキを効果的に抑制できる防眩フィルムを客観的指標に従って開発することが困難な場合がある。
【0008】
そこで本発明は、ディスプレイのギラツキを定量的に評価して設計することにより、良好な防眩性を有しながらディスプレイのギラツキを抑制できると共に、高い透過像鮮明度の設計自由度を有する防眩フィルムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、ヘイズ値が50%以上99%以下の範囲の値である防眩層を備え、ディスプレイの表面に装着した状態における前記ディスプレイの輝度分布の標準偏差が0以上6以下の範囲の値であり、且つ、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が0%以上60%以下の範囲の値である。
【0010】
ここで、ディスプレイの輝度分布の標準偏差の値は、ディスプレイ上の輝点のばらつきの程度を示し、ディスプレイのギラツキを定量的に評価できる客観的指標となる。このため上記構成では、当該標準偏差を0以上6以下の範囲の値に設定して防眩層を構成することで、ディスプレイのギラツキを定量的に評価して防眩フィルムを設計できる。従って、例えばギラツキを試験者が目視で主観的に評価した場合等に比べて、ディスプレイのギラツキを効果的に抑制できる防眩フィルムを安定して得ることができる。
【0011】
また、前記標準偏差を所定値に設定すると共に、防眩層のヘイズ値を50%以上99%以下の範囲の値に設定することにより、ディスプレイのギラツキを抑制しながら、良好な防眩性を得ることができる。また、防眩フィルムの光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度を0%以上60%以下の範囲の値に設定することで、防眩フィルムの透過像鮮明度の設計自由度を広く確保できる。
【0012】
前記防眩層は、複数の樹脂成分を含み、前記複数の樹脂成分の相分離により形成された共連続相構造を有していてもよい。このような共連続相構造を利用することで、ディスプレイのギラツキを抑制しながら、良好な防眩性を得易くすることができる。
【0013】
前記防眩層は、アクリル共重合体と、セルロースアセテートプロピオネートと、ナノシリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物及びウレタンアクリレートの少なくとも一方と、を含んでいてもよい。これにより、ディスプレイのギラツキを抑制しながら防眩性を有する防眩フィルムを製造し易くすることができる。
【0014】
前記防眩層は、マトリクス樹脂と、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子を含み、前記微粒子と前記マトリクス樹脂との屈折率差が、0以上0.07以下の範囲の値されていてもよい。
【0015】
これにより、上記防眩層をマトリクス樹脂と複数の微粒子とを用いて構成でき、ディスプレイのギラツキを抑制しながら防眩性を有する防眩フィルムを製造し易くすることができる。
【0016】
前記防眩層の前記マトリクス樹脂の重量G1と、前記防眩層に含まれる前記複数の微粒子の総重量G2との比G2/G1が、0.07以上0.20以下の範囲の値であってもよい。これにより、これにより、マトリクス樹脂に複数の微粒子が分散された構造の防眩層を有する上記防眩フィルムを良好に製造できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ディスプレイのギラツキを定量的に評価して設計することにより、良好な防眩性を有しながらディスプレイのギラツキを抑制できると共に、高い透過像鮮明度の設計自由度を有する防眩フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る防眩フィルムの構成を示す断面図である。
図2】第2実施形態に係る防眩フィルムの製造方法を示す図である。
図3】ギラツキ検査機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の各実施形態について、図を参照して説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る防眩フィルム1の構成を示す断面図である。防眩フィルム1は、表示装置16(図3参照)のディスプレイ16aの表面に装着される。防眩フィルム1は、基材フィルム2、防眩層3、及び粘着層4を備える。
【0021】
基材フィルム2は、ディスプレイ16aと防眩層3との間に配置され、防眩層3を支持する。粘着層4は、ディスプレイ16aと基材フィルム2との間に配置され、防眩フィルム1をディスプレイ16aの表面に固定する。粘着層4は、例えば光学糊であり、防眩フィルム1の光学特性に影響を及ぼしにくい材質で構成されている。
【0022】
防眩層3は、基材フィルム2の少なくとも一方の面に形成されている。防眩層3は、防眩フィルム1に防眩性を付与し、外光を散乱反射させてディスプレイ16aの表面への外光の映り込みを防止する。防眩層3は、ディスプレイ16aの表面を保護するハードコート(HC)層としても機能する。防眩層3は、一例として、相分離可能な複数の樹脂成分を含む。
【0023】
防眩フィルム1は、ディスプレイ16aの表面に装着した状態におけるディスプレイ16aの輝度分布の標準偏差が0以上6以下の範囲の値に設定され、且つ、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が0%以上60%以下の範囲の値に設定されている。防眩層3は、ヘイズ値が50%以上99%以下の範囲の値に設定されている。
【0024】
本実施形態で示すヘイズ値は、JIS K7136に準拠する方法により測定した値である。
【0025】
前記標準偏差の値は、上記範囲内において適宜設定可能であるが、0以上5.5以下の範囲の値であることが一層望ましく、0以上5.0以下の範囲の値であることがより望ましい。また、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度(写像性)の値も、上記範囲内において適宜設定可能であるが、0%以上55%以下の範囲の値であることが一層望ましく、0%以上50%以下の範囲の値であることがより望ましい。
【0026】
また、防眩層3のヘイズ値は、上記範囲において適宜設定可能であるが、50%以上90%以下の範囲の値であることが一層望ましく、50%以上85%以下の範囲の値であることがより望ましい。
【0027】
このように本実施形態では、ディスプレイ16aの輝度分布の標準偏差の値が、ディスプレイ16a上の輝点のばらつきの程度を示し、ディスプレイ16aのギラツキを定量的に評価できる客観的指標となることに基づき、当該標準偏差が0以上6以下の範囲の値に設定されるように防眩フィルム1を構成することで、ディスプレイ16aのギラツキを定量的に評価して防眩フィルム1を設計できる。
【0028】
従って、例えばディスプレイ16aのギラツキを試験者が目視で主観的に評価した場合等に比べて、ディスプレイ16aのギラツキを効果的に抑制できる防眩フィルム1を安定して得ることができる。
【0029】
また、防眩フィルム1の前記標準偏差を所定値に設定すると共に、防眩層3のヘイズ値を50%以上99%以下の範囲の値に設定することにより、ディスプレイ16aのギラツキを抑制しながら、良好な防眩性を得ることができる。また、防眩フィルム1の光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度を0%以上60%以下の範囲の値に設定することで、防眩フィルム1の透過像鮮明度の設計自由度を広く確保できる。
【0030】
また、本実施形態の防眩層3は、複数の樹脂成分を含み、この複数の樹脂成分の相分離により形成された共連続相構造を有している。このような共連続相構造を利用することで、防眩フィルム1では、ディスプレイ16aのギラツキを抑制しながら、良好な防眩性を得易くすることができる。
【0031】
また、本実施形態の防眩層3は、アクリル共重合体と、セルロースアセテートプロピオネートと、ナノシリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物及びウレタンアクリレートの少なくとも一方(ここでは両方)と、を含んでいる。これにより、ディスプレイ16aのギラツキを抑制しながら防眩性を有する防眩フィルム1を製造し易くすることができる。以下、基材フィルム2及び防眩層3の具体例について説明する。
【0032】
基材フィルム2の材質としては、ガラス、セラミックス、及び樹脂を例示できる。前記樹脂としては、防眩層3の材質と同様の樹脂を使用できる。好ましい基材フィルム2の材質としては、透明性ポリマー、例えば、セルロース誘導体(セルローストリアセテート(TAC)、セルロースジアセテート等のセルロースアセテート等)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアリレート系樹脂等)、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)等)、ポリエーテルケトン系樹脂(ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等)、ポリカーボネート系樹脂(PC)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、環状ポリオレフィン系樹脂(JSR(株)製フィルム「アートン(ARTON)」(登録商標)、日本ゼオン(株)製フィルム「ゼオネックス(ZEONEX)」(登録商標)等)、ハロゲン含有樹脂(ポリ塩化ビニリデン等)、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレン等)、酢酸ビニル又はビニルアルコール系樹脂(ポリビニルアルコール等)を例示できる。
【0033】
基材フィルム2は、1軸又は2軸延伸されていてもよいが、光学的に等方性で低屈折率であることが好ましい。光学的に等方性の基材フィルム2としては、未延伸フィルムを例示できる。
【0034】
基材フィルム2の厚み寸法は適宜設定可能であるが、例えば、5μm以上2000μm以下の範囲の値であることが望ましく、15μm以上1000μm以下の範囲であることが一層望ましく、20μm以上500μm以下の範囲の値であることがより望ましい。
【0035】
[防眩層の構造]
第1実施形態の防眩層3は、複数の樹脂成分の相分離構造を有する。防眩層3は、一例として、複数の樹脂成分の相分離構造により、複数の長細状(紐状又は線状)凸部が表面に形成されている。長細状凸部は分岐しており、密な状態で共連続相構造を形成している。
【0036】
防眩層3は、複数の長細状凸部と、隣接する長細状凸部間に位置する凹部とにより防眩性を発現する。防眩フィルム1は、このような防眩層3を備えることで、ヘイズ値と透過像鮮明度(写像性)とのバランスに優れたものとなっている。防眩層3の表面は、長細状凸部が略網目状に形成されることにより、網目状構造、言い換えると、連続し又は一部欠落した不規則な複数のループ構造を有する。
【0037】
防眩層3の表面は、上記した構造が形成されることで、レンズ状(海島状)の凸部が形成されるのが防止されている。よって、防眩層3を透過するディスプレイ16aからの光が防眩層3の表面の凹凸により屈折したり、防眩層3の表面の凹凸によるレンズ効果でディスプレイ16aの画素が拡大されて見えたりするのが防止され、ディスプレイ16aのギラツキが抑制される。これにより、高精細画素を有するディスプレイ16aに防眩フィルム1を装着しても、防眩性を確保しながらディスプレイ16aのギラツキを高度に抑制でき、文字・画像のボケや色調の変化も抑制できる。
【0038】
なお複数の長細状凸部は、互いに独立していてもよいし、繋がっていてもよい。防眩層3の相分離構造は、後述するように、防眩層3の原料となる溶液を用いて、液相からのスピノーダル分解(湿式スピノーダル分解)により形成される。防眩層3の詳細については、例えば、特願2012-231496の記載を参照できる。
【0039】
[防眩層の材質]
防眩層3が含む複数の樹脂成分は、相分離可能なものであればよいが、長細状凸部が形成され且つ高い耐擦傷性を有する防眩層3を得る観点から、ポリマー及び硬化性樹脂を含むことが好ましい。
【0040】
防眩層3が含むポリマーとしては、熱可塑性樹脂を例示できる。熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂(脂環式オレフィン系樹脂を含む)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホン等)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6-キシレノールの重合体等)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類等)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等)、ゴム又はエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレン等のジエン系ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等)等を例示できる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上の組み合わせで使用できる。
【0041】
またポリマーとしては、硬化反応に関与する官能基、又は、硬化性化合物と反応する官能基を有するものも例示できる。このポリマーは、官能基を主鎖又は側鎖に有していてもよい。
【0042】
前記官能基としては、縮合性基や反応性基(例えば、ヒドロキシル基、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基又はイミノ基、エポキシ基、グリシジル基、イソシアネート基等)、重合性基(例えば、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、アリル基等のC2-6アルケニル基、エチニル、プロピニル、ブチニル基等のC2-6アルキニル基、ビニリデン基等のC2-6アルケニリデン基、又はこれらの重合性基を有する基((メタ)アクリロイル基等)等)等を例示できる。これらの官能基のうち、重合性基が好ましい。
【0043】
また防眩層3には、複数種類のポリマーが含まれていてもよい。これらの各ポリマーは、液相からのスピノーダル分解により相分離可能であってもよいし、互いに非相溶であってもよい。複数種類のポリマーに含まれる第1のポリマーと第2のポリマーとの組み合わせは特に制限されないが、加工温度付近で互いに非相溶なものを使用できる。
【0044】
例えば、第1のポリマーがスチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体等)である場合、第2のポリマーとしては、セルロース誘導体(例えば、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル類)、(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル等)、脂環式オレフィン系樹脂(ノルボルネンを単量体とする重合体等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリC2-4アルキレンアリレート系コポリエステル等)等を例示できる。
【0045】
また例えば、第1のポリマーがセルロース誘導体(例えば、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル類)である場合、第2のポリマーとしては、スチレン系樹脂(ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体等)、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂(ノルボルネンを単量体とする重合体等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリC2-4アルキレンアリレート系コポリエステル等)等を例示できる。
【0046】
複数種類のポリマーには、少なくともセルロースエステル類(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースC2-4アルキルカルボン酸エステル類)が含まれていてもよい。
【0047】
ここで、防眩層3の相分離構造は、防眩層3の製造時に、複数の樹脂成分に含まれていた硬化性樹脂の前駆体が活性エネルギー線(紫外線又は電子線等)や熱等により硬化することで固定される。また、このような硬化性樹脂により、防眩層3に耐擦傷性及び耐久性が付与される。
【0048】
防眩層3の耐擦傷性を得る観点から、複数種類のポリマーに含まれる少なくとも一つのポリマーは、硬化性樹脂前駆体と反応可能な官能基を側鎖に有するポリマーであることが好ましい。相分離構造を形成するポリマーとしては、上記した互いに非相溶な2つのポリマー以外に、熱可塑性樹脂や他のポリマーが含まれていてもよい。第1のポリマーの重量M1と第2のポリマーの重量M2との重量比M1/M2、及び、ポリマーのガラス転移温度は、適宜設定可能である。
【0049】
硬化性樹脂前駆体としては、活性エネルギー線(紫外線又は電子線等)や熱等により反応する官能基を有し、この官能基により硬化又は架橋して樹脂(特に硬化樹脂又は架橋樹脂)を形成する硬化性化合物を例示できる。
【0050】
このような化合物としては、熱硬化性化合物又は熱硬化性樹脂(エポキシ基、重合性基、イソシアネート基、アルコキシシリル基、シラノール基等を有する低分子量化合物(例えば、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂等))、紫外線や電子線等により硬化する光硬化性(電離放射線硬化性)化合物(光硬化性モノマー、オリゴマー等の紫外線硬化性化合物等)等を例示できる。
【0051】
好ましい硬化性樹脂前駆体としては、紫外線や電子線等により短時間で硬化する光硬化性化合物を例示できる。このうち、特に紫外線硬化性化合物が実用的である。耐擦傷性等の耐性を向上させるため、光硬化性化合物は、分子中に2以上(好ましくは2~15、更に好ましくは4~10程度)の重合性不飽和結合を有することが好ましい。具体的に光硬化性化合物は、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、少なくとも2つの重合性不飽和結合を有する多官能性単量体であることが好ましい。
【0052】
硬化性樹脂前駆体には、その種類に応じた硬化剤が含まれていてもよい。例えば熱硬化性樹脂前駆体には、アミン類、多価カルボン酸類等の硬化剤が含まれていてもよく、光硬化性樹脂前駆体には、光重合開始剤が含まれていてもよい。光重合開始剤としては、慣用の成分、例えば、アセトフェノン類又はプロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類等を例示できる。
【0053】
また硬化性樹脂前駆体には、硬化促進剤が含まれていてもよい。例えば光硬化性樹脂前駆体には、光硬化促進剤、例えば、第三級アミン類(ジアルキルアミノ安息香酸エステル等)、ホスフィン系光重合促進剤等が含まれていてもよい。
【0054】
防眩層3の製造工程では、防眩層3の原料となる溶液に含まれるポリマーと硬化性樹脂前駆体のうち、少なくとも2つの成分を、加工温度付近で互いに相分離させる組み合わせとして使用する。相分離させる組み合わせとしては、例えば、(a)複数種類のポリマー同士を互いに非相溶で相分離させる組み合わせ、(b)ポリマーと硬化性樹脂前駆体とを非相溶で相分離させる組み合わせ、又は、(c)複数の硬化性樹脂前駆体同士を互いに非相溶で相分離させる組み合わせ等が挙げられる。これらの組み合わせのうち、通常は、(a)複数種類のポリマー同士の組み合わせや、(b)ポリマーと硬化性樹脂前駆体との組み合わせが挙げられ、特に(a)複数種類のポリマー同士の組み合わせが好ましい。
【0055】
ここで通常、ポリマーと、硬化性樹脂前駆体の硬化により生成した硬化樹脂又は架橋樹脂とは、互いに屈折率が異なる。また通常、複数種類のポリマー(第1のポリマーと第2のポリマー)の屈折率も互いに異なる。ポリマーと、硬化樹脂又は架橋樹脂との屈折率差、及び、複数種類のポリマー(第1のポリマーと第2のポリマー)の屈折率差は、例えば、0以上0.04以下の範囲の値であることが望ましく、0以上0.02以下の範囲の値であることがより望ましい。
【0056】
防眩層3は、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子(フィラー)を含んでいてもよい。微粒子は、有機系微粒子及び無機系微粒子のいずれでも良く、複数の微粒子は、複数種類の微粒子を含んでいてもよい。
【0057】
有機系微粒子としては、架橋アクリル粒子や架橋スチレン粒子を例示できる。また無機系微粒子としては、シリカ粒子及びアルミナ粒子を例示できる。また、防眩層3中に含まれる微粒子とマトリクス樹脂との屈折率差は、一例として、0以上0.20以下の範囲の値に設定できる。この屈折率差は、0以上0.15以下の範囲の値であることが一層望ましく、0以上0.07以下の範囲の値であることがより望ましい。
【0058】
微粒子の平均粒径は特に限定されず、例えば、0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定できる。この平均粒径は、0.5μm以上3.0μm以下の範囲の値であることが一層望ましく、0.5μm以上2.0μm以下の範囲の値であることがより望ましい。
【0059】
なお、ここで言う平均粒径は、コールターカウンター法における50%体積平均粒径である(以下に言及する平均粒径も同様とする。)。微粒子は、中実でもよいし、中空でもよい。微粒子の平均粒径が小さすぎると、防眩性が得られにくくなり、大き過ぎると、ディスプレイのギラツキが大きくなるおそれがあるため留意する。
【0060】
防眩層3の厚み寸法は、適宜設定可能であるが、例えば、0.3μm以上20μm以下の範囲の値であることが望ましく、1μm以上15μm以下の範囲の値であることが一層望ましく、1μm以上10μm以下の範囲の値であることがより望ましい。通常は、2μm以上10μm以下の範囲の値(特に3μm以上7μm以下の範囲の値)に設定できる。
【0061】
なお、基材フィルム2を省略した防眩フィルムも構成できるが、この場合の防眩層3の厚み寸法は、例えば、1μm以上100μm以下の範囲の値であることが望ましく、3μm以上50μm以下の範囲の値であることがより望ましい。
【0062】
防眩層3には、光学特性を損なわない範囲で、慣用の添加剤、例えば、有機又は無機粒子、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤等)、界面活性剤、水溶性高分子、充填剤、架橋剤、カップリング剤、着色剤、難燃剤、滑剤、ワックス、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤等が含まれていてもよい。
【0063】
第1実施形態における防眩フィルム1の製造方法は、一例として、防眩層3の原料となる溶液(以下、単に溶液とも称する。)を調製する調製工程と、調製工程で調製した溶液を所定の支持体(本実施形態では基材フィルム2)の表面に塗布し、溶液中の溶媒を蒸発させると共に、液相からのスピノーダル分解により相分離構造を形成する形成工程と、形成工程後に硬化性樹脂前駆体を硬化する硬化工程とを有する。
【0064】
[調製工程]
調製工程では、溶媒と、防眩層3を構成するための樹脂組成物と、所定の微粒子を含む溶液を調製する。溶媒は、前述した防眩層3に含まれるポリマー及び硬化性樹脂前駆体の種類及び溶解性に応じて選択できる。溶媒は、少なくとも固形分(複数種類のポリマー及び硬化性樹脂前駆体、反応開始剤、その他添加剤)を均一に溶解できるものであればよい。
【0065】
溶媒としては、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)等を例示できる。また、溶媒は混合溶媒であってもよい。
【0066】
樹脂組成物としては、前記熱可塑性樹脂、光硬化性化合物、光重合開始剤、前記熱可塑性樹脂、及び光硬化性化合物を含む組成物が望ましい。或いは樹脂組成物としては、前記互いに非相溶な複数種類のポリマー、光硬化性化合物、及び光重合開始剤を含む組成物が望ましい。
【0067】
溶液中の溶質(ポリマー及び硬化性樹脂前駆体、反応開始剤、その他添加剤)の濃度は、複数の樹脂成分の相分離が生じる範囲、及び、溶液の流延性やコーティング性等を損なわない範囲において調整できる。
【0068】
ここで、防眩層3のヘイズ値、防眩フィルム1の透過像鮮明度、及び、表面に防眩フィルム1を装着したディスプレイ16aの輝度分布の標準偏差の値(ギラツキ値)は、溶液中の樹脂組成物の組み合わせや重量比、或いは、調製工程、形成工程、及び硬化工程の施工条件等によって変化しうる。従って、各条件を変化させて防眩層を形成し、得られた防眩層の物性を予め測定・把握しておくことで、目的の物性を有する防眩フィルムを得ることができる。
【0069】
[形成工程]
形成工程では、調製工程で調製した溶液を、支持体(ここでは一例として基材フィルム2)の表面に流延又は塗布する。溶液の流延方法又は塗布方法としては、慣用の方法、例えば、スプレー、スピナー、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ディップ、ディップ・スクイズコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、シルクスクリーンコーター等を例示できる。
【0070】
支持体の表面に流延又は塗布した溶液から、溶媒を乾燥により蒸発させて除去する。この蒸発過程における溶液の濃縮に伴って、複数の樹脂成分の液相からのスピノーダル分解による相分離を生じさせ、相間距離(ピッチ又は網目径)が比較的規則的な相分離構造を形成する。長細状凸部の共連続相構造は、溶媒蒸発後の樹脂成分の溶融流動性がある程度高くなるような乾燥条件や処方を設定することにより形成できる。
【0071】
溶媒の蒸発は、防眩層3の表面に長細状凸部を形成し易い点から、加熱乾燥により行うのが好ましい。乾燥温度が低過ぎたり、乾燥時間が短か過ぎると、樹脂成分に対する熱量の付与が不十分となり、樹脂成分の溶融流動性が低下して、長細状凸部の形成が困難となるおそれがあるため留意する。
【0072】
一方、乾燥温度が高過ぎたり、乾燥時間が長過ぎると、一旦形成された長細状凸部が流動して高さが低下する場合があるものの、長細状凸部の構造は維持される。そのため、長細状凸部の高さを変えて防眩層3の防眩性や滑り性を調整する手段として、乾燥温度及び乾燥時間を利用できる。また形成工程では、溶媒の蒸発温度を高くしたり、樹脂成分に粘性の低い成分を用いたりすることにより、相分離構造が繋がった共連続相構造を形成できる。
【0073】
複数の樹脂成分の液相からのスピノーダル分解による相分離の進行に伴って、共連続相構造が形成されて粗大化すると、連続相が非連続化し、液滴相構造(球状、真球状、円盤状や楕円体状等の独立相の海島構造)が形成される。ここで、相分離の程度によって、共連続相構造と液滴相構造との中間的構造(共連続相から液滴相に移行する過程の相構造)も形成できる。溶媒除去後、表面に微細な凹凸を有する層が形成される。
【0074】
[硬化工程]
硬化工程では、溶液中の硬化性樹脂前駆体を硬化させることで、形成工程で形成された相分離構造を固定化し、防眩層3を形成する。硬化性樹脂前駆体の硬化は、硬化性樹脂前駆体の種類に応じて、加熱又は活性エネルギー線の照射、或いはこれらの方法の組み合わせにより行う。照射する活性エネルギー線は、光硬化成分等の種類に応じて選択する。
【0075】
活性エネルギー線の照射は、不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。活性エネルギー線が紫外線である場合、光源として、遠紫外線ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザ光源(ヘリウム-カドミウムレーザ、エキシマレーザ等の光源)等を用いることができる。
【0076】
なお粘着層4を形成する場合、粘着成分を含む溶液を調製した後、慣用の方法、例えば、形成工程において前述した流延方法又は塗布方法により、溶液を基材フィルム2の他方の面に塗布・乾燥させることで粘着層4を形成できる。
【0077】
以上の各工程を経ることにより、第1実施形態の防眩フィルム1が製造される。なお、支持体として剥離性を有する支持体を用いる場合には、防眩層3を支持体から剥離することにより、防眩層3のみで構成された防眩フィルムを得ることができる。また、支持体として非剥離性支持体(好ましくは基材フィルム2等の透明支持体)を用いる場合には、支持体(基材フィルム2)と防眩層3との積層構造を有する防眩フィルム1を得ることができる。
【0078】
ここで、ディスプレイ16aのギラツキを抑制する方法としては、例えば防眩層の表面の凹凸を縮小することが考えられるが、防眩フィルムの防眩性が低下するおそれがある。しかしながら、防眩層の凹凸を縮小するだけでなく、防眩層の凹凸の傾斜を高くして凹凸を急峻化すると共に凹凸の数を増やすことで、ディスプレイのギラツキを抑制しながら防眩性を向上させることができる。
【0079】
第1実施形態において前述したスピノーダル分解によって、このような凹凸を防眩層に形成できるが、その他の方法によっても、このような凹凸を防眩層に形成できる。例えば第2実施形態のように、防眩層の表面の凹凸を形成するために複数の微粒子を使用する場合でも、防眩層の形成時に微粒子とそれ以外の樹脂や溶剤との斥力相互作用が強くなるような材料選定を行うことによって、微粒子の適度な凝集を引き起こし、急峻且つ数密度の高い凹凸の分布構造を防眩層に形成できる。そこで以下では、その他の実施形態の防眩層について、第1実施形態との差異を中心に説明する。
【0080】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る防眩フィルムの防眩層は、マトリクス樹脂と、マトリクス樹脂中に分散された複数の微粒子を含む。微粒子は、真球状に形成されているが、これに限定されず、実質的な球状や楕円体状に形成されていてもよい。また微粒子は、中実に形成されているが、中空に形成されていてもよい。微粒子が中空に形成されている場合、微粒子の中空部には、空気或いはその他の気体が充填されていてもよい。防眩層には、各微粒子が一次粒子として分散していてもよいし、複数の微粒子が凝集して形成された複数の二次粒子が分散していてもよい。
【0081】
マトリクス樹脂と、微粒子との屈折率差は、0以上0.20以下の範囲の値に設定されている。この屈折率差は、0以上0.15以下の範囲の値であることが更に望ましく、0以上0.07以下の範囲の値であることがより望ましい。
【0082】
微粒子は、平均粒径が0.5μm以上5.0μm以下の範囲の値に設定されている。微粒子の平均粒径は、0.5μm以上3.0μm以下の範囲の値であることが一層望ましく、0.5μm以上2.0μm以下の範囲の値であることがより好ましい。
【0083】
また、微粒子の粒径のバラツキは小さい方が望ましく、例えば、防眩層に含まれる微粒子の粒径分布において、防眩層に含まれる微粒子の50重量%以上の平均粒径が1.0μm以内のバラツキに収められていることが望ましい。
【0084】
このように、粒径が比較的均一に揃えられ且つ平均粒径が上記範囲に設定された微粒子により、防眩層の表面に均一且つ適度な凹凸が形成される。これにより、防眩性を確保しつつディスプレイ16aのギラツキを抑制できる。
【0085】
防眩層におけるマトリクス樹脂の重量と複数の微粒子の総重量との比は、適宜設定することが可能である。本実施形態では、防眩層のマトリクス樹脂の重量G1と、防眩層に含まれる前記複数の微粒子の総重量G2との比G2/G1は、0.07以上0.20以下の範囲の値に設定されている。比G2/G1は、0.10以上0.20以下の範囲の値であることが望ましく、0.12以上0.20以下の範囲の値であることがより望ましい。
【0086】
マトリクス樹脂中に分散される微粒子は、無機系及び有機系のいずれのものでもよいが、良好な透明性を有するものが好ましい。有機系微粒子としては、プラスチックビーズを例示できる。プラスチックビーズとしては、スチレンビーズ(屈折率1.59)、メラミンビーズ(屈折率1.57)、アクリルビーズ(屈折率1.49)、アクリル-スチレンビーズ(屈折率1.54)、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ等を例示できる。スチレンビーズは、架橋スチレンビーズでもよく、アクリルビーズは、架橋アクリルビーズでもよい。プラスチックビーズは、表面に疎水基を有するものが望ましい。このようなプラスチックビーズとしては、スチレンビーズを例示できる。
【0087】
マトリクス樹脂としては、活性エネルギー線により硬化する光硬化性樹脂、塗工時に添加した溶剤の乾燥により硬化する溶剤乾燥型樹脂、及び、熱硬化性樹脂の少なくともいずれかを例示できる。
【0088】
光硬化性樹脂としては、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アルリレート等のオリゴマー、プレポリマー、反応性希釈剤を例示できる。
【0089】
これらの具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N-ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を例示できる。
【0090】
光硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂である場合、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α-アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノスルフィド、チオキサントン類を例示できる。また光硬化性樹脂には、光増感剤を混合して用いることも好ましい。光増感剤としては、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ-n-ブチルホスフィン等を例示できる。
【0091】
溶剤乾燥型樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を例示できる。この熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂、及びゴム又はエラストマー等を例示できる。溶剤乾燥型樹脂としては、有機溶媒に可溶であって、特に、成形性、製膜性、透明性、及び耐候性に優れる樹脂が望ましい。このような溶剤乾燥型樹脂としては、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)を例示できる。
【0092】
ここで、基材フィルム2の材質がトリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂である場合、溶剤乾燥型樹脂に用いられる熱可塑性樹脂として、セルロース系樹脂を例示できる。このセルロース系樹脂は、ニトロセルロース、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、エチルヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体を例示できる。溶剤乾燥型樹脂としてセルロース系樹脂を用いることで、基材フィルム2と防眩層3とを良好に密着させることができると共に、優れた透明性を有する防眩フィルム1が得られる。
【0093】
また、溶剤乾燥型樹脂としては、その他、ビニル系樹脂、アセタール樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、及びポリカーボネート樹脂等を例示できる。
【0094】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を例示できる。マトリクス樹脂として熱硬化性樹脂を用いる場合、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、及び粘度調整剤等の少なくともいずれかを併用してもよい。
【0095】
第2実施形態における防眩フィルムの製造方法は、一例として、防眩層3の原料となる溶液を調製する調製工程と、調製工程で調製した溶液を所定の支持体(本実施形態では基材フィルム2)の表面に塗布する塗布工程と、塗布した溶液中の樹脂を硬化する硬化工程とを有する。
【0096】
[調製工程]
調製工程では、溶媒と、防眩層を構成するための樹脂組成物と、微粒子とを含む溶液を調製する。溶媒としては、アルコール類(イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等)、ケトン類(メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素(トルエン、キシレン等)の少なくともいずれかを例示できる。溶液には、更に公知のレベリング剤を添加してもよい。例えば、フッ素系やシリコーン系のレベリング剤を用いることにより、防眩層に良好な耐擦傷性を付与できる。
【0097】
[塗布・硬化工程]
塗布工程では、調製工程で調製した溶液を、第1実施形態と同様の方法により、支持体(ここでは一例として基材フィルム2)の表面に流延又は塗布する。支持体の表面に流延又は塗布した溶液から、溶媒を乾燥により蒸発させて除去する。
【0098】
マトリクス樹脂が光硬化性樹脂である場合、塗布工程後に、一例として紫外線又は電子線による硬化工程を行う。紫外線源としては、各種水銀灯、紫外線カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプの光源を例示できる。また紫外線の波長域としては、例えば、190nm以上380nm以下の範囲の波長域を例示できる。
【0099】
また電子線源としては、公知の電子線加速器を例示できる。具体的には、ヴァンデグラフ型、コッククロフト・ウォルトン型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を例示できる。
【0100】
溶液に含まれていたマトリクス樹脂が硬化することにより、マトリクス樹脂中の微粒子の位置が固定される。これにより、マトリクス樹脂中に複数の微粒子が分散され、表面に微粒子による凹凸が形成された構造の防眩層が形成される。
【0101】
第2実施形態の防眩フィルムによれば、マトリクス樹脂と微粒子との屈折率差を所定範囲に設定して、マトリクス樹脂中に複数の微粒子を分散することにより、良好な防眩性を確保しながらディスプレイ16aのギラツキを抑制できると共に、防眩フィルムの着色を防止できる。
【0102】
また、防眩層の比G2/G1が、0.07以上0.20以下の範囲の値に設定されているので、マトリクス樹脂に複数の微粒子が分散された構造の防眩層を有する防眩フィルムを良好に製造できる。
【0103】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る防眩フィルムの防眩層33は、基材フィルム側とは反対側の表面に凹凸形状が賦形された構造を有する。防眩層33は、樹脂層で構成されている。この樹脂層は、一例として、第2実施形態のマトリクス樹脂と同様の材質により構成されている。
【0104】
具体的に、第3実施形態に係る防眩フィルムは、基材フィルム上に硬化性樹脂を含むコート層を形成し、このコート層の表面を凹凸形状に賦形した後、コート層を硬化することにより製造される。図2は、第3実施形態に係る防眩フィルムの製造方法を示す図である。図2の例では、硬化性樹脂として紫外線硬化樹脂を用いている。
【0105】
図2に示すように、この製造方法では、基材フィルム20aが、図示しない巻出ロールから巻き出され、所定方向に搬送される。基材フィルム20aの搬送方向下流端部は、一対のロール21,22のニップ点N1に挿通される。
【0106】
ロール22の周面には、ロール22に隣接して軸支されたロール23の周面から紫外線硬化樹脂前駆体が付着させられる。基材フィルム20aがニップ点N1を通過する際、この紫外線硬化樹脂前駆体が、基材フィルム20aの一方の面に塗布される。
【0107】
基材フィルム20aに塗布された紫外線硬化樹脂前駆体の層(以下、コート層と称する。)は、ロール21,24のニップ点において、基材フィルム20aと共に押圧される。ロール24は、周面に微細な凹凸が形成されたロール状金型(エンボスロール)であり、ロール21,24のニップ点N2を通過する際にコート層の表面に凹凸形状を転写する。
【0108】
ロール24により表面に凹凸形状が転写されたコート層は、ロール21,24の下方に設けられた紫外線ランプ26から照射される紫外線により硬化される。これにより、防眩層33が形成される。このようにして製造された防眩フィルム33は、ロール24に隣接して軸支されたロール25によりロール24からリリースされ、所定方向へ搬送される。
【0109】
ここで、ロール24の表面の凹凸部は、ブラスト法により、所定の粒径のブラスト粒子を衝打させて形成されており、ブラスト粒径を調整することで、防眩フィルム33のコート層に形成される凹凸形状を調整できる。
【0110】
基材フィルム20aは、PET(ポリエチレン・テレフタレート)フィルム、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム、COP(シクロオレフィンポリマー)フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルムが好適に用いることができる。
【0111】
このように、第3実施形態に係る防眩フィルムの作製方法は、基材フィルムに硬化性樹脂前駆体を塗布するステップ(a)と、ブラスト粒子を衝打させて表面に凹凸形状を有するロール状金型を作製するステップ(b)と、このロール状金型を用いて、基材フィルムに塗布した硬化性樹脂前駆体の表面に凹凸形状を転写するステップ(c)と、凹凸形状を転写した硬化性樹脂前駆体を硬化させて、表面に凹凸形状を有する防眩層を形成するステップ(d)とを有する。
【0112】
ステップ(b)において使用するブラスト粒子の平均粒径は、適宜設定可能であるが、一例として、10μm以上50μm以下の範囲の値に設定できる。ブラスト粒子の平均粒径は、20μm以上45μm以下の範囲の値が一層望ましく、30μm以上40μm以下の範囲の値がより望ましい。これにより、表面に凹凸形状が賦形された防眩層33が得られる。
【0113】
なお、第3実施形態において使用する金型は、ロール状金型以外でもよく、例えば、板状金型(エンボス板)でもよい。また、基材フィルムの一方の面にコート層(樹脂層)を形成した後、このコート層の表面を金型により賦形し、コート層を硬化することで、防眩層33を形成してもよい。また、上記例では、コート層の表面を賦形した後にコート層を硬化させたが、コート層の賦形と硬化とを並行して行ってもよい。
【0114】
金型の材質は、一例として、金属、プラスチック、及び木を例示できる。金型のコート層との接触面には、金型の耐久性(耐摩耗性)を向上させるために被膜を設けてもよい。ブラスト粒子の材質は、一例として、金属、シリカ、アルミナ、及びガラスを例示できる。ブラスト粒子は、例えば、気体又は液体の圧力により金型の表面に衝打させることができる。また、硬化樹脂前駆体が電子線硬化型であれば、紫外線ランプ26の代りに電子線加速器等の電子線源を利用でき、熱硬化性であれば、紫外線ランプ26の代りにヒーター等の加熱源を利用できる。
【0115】
第3実施形態の防眩フィルムでは、防眩層33中に微粒子を分散させなくてもよいので、防眩フィルム内に入射した光が、防眩層中のマトリクス樹脂と微粒子との屈折率差によって広角に散乱することで防眩フィルムが着色するのを良好に防止できる。
【0116】
なお、上記各実施形態に係る防眩フィルムの防眩層は、基材フィルム2側とは反対側の表面に配置された上層を更に有していてもよい。この上層を設けることで、防眩層のヘイズ値を調整し易くすることができると共に、防眩フィルムを外部から保護し易くすることができる。
【0117】
上層の厚みは、適宜設定可能であるが、例えば、0.5μm以上20μm以下の範囲の値に設定できる。上層の厚みは、2.0μm以上12μm以下の範囲の値であることが一層望ましく、3.0μm以上8.0μm以下の範囲の値であることがより望ましい。以下、上記した各実施形態の防眩フィルムを検査・評価するためのギラツキ検査機とギラツキ評価方法とについて順に説明する。
【0118】
(ギラツキ検査機)
図3は、ギラツキ検査機10の概略図である。ギラツキ検査機10は、表面に防眩フィルム等のフィルムを装着した表示装置16におけるディスプレイ16aのギラツキを評価する装置であって、筐体11、撮像装置12、保持部13、撮像装置用架台14、表示装置用架台15、及び画像処理装置17を備える。市販されているギラツキ検査機10としては、コマツNTC(株)製「フィルムギラツキ検査機」が挙げられる。
【0119】
筐体11は、撮像装置12によりディスプレイ16aを撮像するための暗室を有する。筐体11内には、撮像装置12、保持部13、撮像装置用架台14、及び表示装置用架台15と、評価対象の表示装置16とが収容される。
【0120】
撮像装置12は、一例としてレンズ18と撮像素子とを有するエリアカメラであり、ディスプレイ16aに表示される画像を撮像する。撮像装置12は画像処理装置17に接続され、レンズ18とディスプレイ16aとが対向するように保持部13に保持される。撮像装置12により撮像された画像データは、画像処理装置17に送信される。
【0121】
保持部13は、上下方向に延び、下端において撮像装置用架台14に固定されながら、撮像装置12を保持する。保持部13は、撮像装置12を表示装置16に対して鉛直方向に相対移動させることで、ディスプレイ16aとレンズ18との間の相対距離を変更可能に撮像装置12を保持する。
【0122】
表示装置16は、フィルムを装着したディスプレイ16aを撮像装置12と対向させた状態で、表示装置用架台15の上面に載置される。表示装置用架台15は、フィルムを装着したディスプレイ16aの表面が撮像装置12と対向し、且つ水平面となるように支持すると共に、表示装置16を撮像装置12に対して鉛直方向に相対移動させる。
【0123】
ギラツキ検査機10では、撮像装置12とディスプレイ16aとの間の相対距離を調整することによって、撮像装置12の撮像素子の単位画素(例えば1画素)当たりに撮像される、ディスプレイ16aに表示された画像の画素サイズが調整される。
【0124】
画像処理装置17は、撮像装置12によって撮像された画像データのデータ処理を行う。具体的に画像処理装置17は、撮像装置12によって撮像された画像データから、ディスプレイ16aの輝度の標準偏差を求める。
【0125】
本実施形態の画像処理装置17は、撮像装置12によって撮像された画像データが入力される入力部と、入力された画像データを画像処理する画像処理部と、画像処理部によって処理された結果を表示装置又は印字装置等に出力する出力部等を備える。
【0126】
ディスプレイ16aに表示された画像を撮像装置12で撮像するときの撮像素子の単位画素(例えば1画素)当たりに撮像される画像の画素サイズの調整方法としては、撮像装置12とディスプレイ16aとの間の相対距離を変更させる方法の他、撮像装置12が備えるレンズ18がズームレンズである場合には、撮像装置12の焦点距離を変える方法でもよい。
【0127】
(ギラツキ評価方法)
次に、ギラツキ検査機10を用いたディスプレイ16aのギラツキ評価方法について説明する。このギラツキ評価方法では、評価の便宜上、表面にフィルムを装着したディスプレイ16aを予め一色(一例として緑色)に均一発光させて表示させる。
【0128】
次に、撮像装置12の撮像素子の単位画素当たりに撮像されるフィルムを装着したディスプレイ16aの画素サイズを調整する調節ステップを行う。調整ステップでは、撮像装置12の撮像素子の有効画素数に応じて、撮像装置12が撮像する画像において、画素による輝線がない、或いは、画素による輝線があってもディスプレイ16aのギラツキの評価に影響を与えない程度に、撮像装置12と、フィルムを装着したディスプレイ16aとの間の相対距離を調整する。
【0129】
なお、撮像装置12と表示装置16との間の相対距離は、表示装置16の使用態様(例えば、ユーザの目とディスプレイ16aの表面との間の相対距離)を考慮して設定されることが望ましい。
【0130】
調整ステップを行った後、フィルムを装着したディスプレイ16aのギラツキを評価する測定エリアを設定する設定ステップを行う。設定ステップでは、測定エリアは、例えばディスプレイ16aのサイズ等に応じて適切に設定する。
【0131】
調整ステップを行った後、フィルムを装着したディスプレイ16aの測定エリアを撮像装置12により撮像する撮像ステップを行う。このとき一例として、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように、撮像装置12の露光時間又はディスプレイ16aの全画素の輝度の少なくともいずれかを調整する。撮像ステップで撮像された画像データは、画像処理装置17へと入力される。
【0132】
撮像ステップ後、画像処理装置17は、画像データを用いて、フィルムを装着したディスプレイ16aの測定エリアにおける輝度のばらつきを求める演算ステップを行う。この演算ステップにおいて、輝度のばらつきは、輝度分布の標準偏差として数値化される。
【0133】
ここで、フィルムを装着したディスプレイ16aのギラツキは、フィルムを装着したディスプレイ16aの輝度のばらつきが大きいほど大きくなる。これにより、輝度分布の標準偏差の値が小さいほど、ディスプレイ16aのギラツキは小さいと定量的に評価できる。また調整ステップにおいて、フィルムを装着したディスプレイ16aの輝線がディスプレイ16aのギラツキの評価に影響を与えない程度に調整されているので、輝線による輝度ムラを抑え、ディスプレイ16aの正確なギラツキの評価を行うことができる。
【0134】
以上の各ステップを経ることにより、表面にフィルムを装着したディスプレイ16aの輝度分布の標準偏差を求め、その値によりディスプレイ16aのギラツキを評価できる。
【0135】
(実施例及び比較例)
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0136】
実施例1~4は、相分離構造を基本構造とし、且つ所定成分を含む防眩層3を形成するものである。実施例5は、ビーズ(シリカ微粒子)によりヘイズ値を上昇させた防眩層を形成するものである。比較例1は、ビーズ(ジルコニア微粒子)によりヘイズ値を上昇させた防眩層を形成するものである。比較例2及び3は、相分離構造からなる防眩層を形成するものである。
【0137】
比較例4及び5は、ビーズ(アクリル微粒子)によりヘイズ値を上昇させた防眩層を形成するものである。比較例6は、ビーズ(シリカ微粒子)によりヘイズ値を上昇させた防眩層を形成するものである。比較例7~9は、高屈折率ビーズ(ポリスチレン微粒子等)によりヘイズ値を上昇させた防眩層を形成するものである。比較例10及び11は、基材フィルム上に塗布した透明樹脂の表面に、型押しにより凹凸を形成して防眩層を形成するものである。なお、以下の実施例及び比較例の説明において記載する屈折率は、架橋により硬化するものについては架橋後(硬化後)の屈折率を示す。
【0138】
[原料]
実施例及び比較例で用いる各原料には、次のものを用いた。
重合性基を有するアクリル系重合体A:ダイセル・オルネクス(株)製「サイクロマーP」、屈折率1.51
セルロースアセテートプロピオネート:イーストマン社製「CAP-482-20」、アセチル化度=2.5%、プロピオニル度=46%、ポリスチレン換算の数平均分子量75000、屈折率1.49
シリコーンアクリレート:ダイセル・オルネクス(株)製「EB1360」、屈折率1.52
ウレタンアクリレート:新中村化学工業(株)製「UA-53H」
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:ダイセル・オルネクス(株)製「DPHA」、屈折率1.52
ペンタエリスリトールテトラアクリレート:ダイセル・オルネクス(株)製「PETRA」、屈折率1.52
ナノシリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物A:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(合同会社)製「UVHC-7800」
シリカ(屈折率1.46)含有アクリル系紫外線硬化性化合物:アイカ工業(株)製「Z-753-11R」、屈折率1.52
アクリル系ハードコート配合物A:日本化工塗料(株)製「FA-3155クリア」、アクリル微粒子(屈折率1.50)とマトリクス樹脂(屈折率1.46)を含有する
アクリル系ハードコート配合物B:日本化工塗料(株)製「FA-3155M」、屈折率1.46
重合性基を有するフッ素系化合物A:信越化学工業(株)製「KY-1203」
重合性基を有するフッ素系化合物B:(株)ネオス製「フタージェント602A」
ジルコニア微粒子(屈折率約20分散液:東洋インキ(株)製「リオデュラスTYZ」
光開始剤A:BASFジャパン(株)製「イルガキュア184」
光開始剤B:BASFジャパン(株)製「イルガキュア907」
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム:三菱樹脂(株)製「ダイアホイル」
セルローストリアセテート(TAC)フィルム:富士フイルム(株)製「フジタックTG60UL」
【0139】
[実施例1]
【0140】
重合性基を有するアクリル系重合体A12.5重量部、セルロースアセテートプロピオネート4重量部、ナノシリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物A150重量部、シリコーンアクリレート1重量部、光開始剤A1重量部、光開始剤B1重量部を、メチルエチルケトン81重量部と1-ブタノール24重量部と1-メトキシ-2-プロパノール13重量部との混合溶媒に溶解し、溶液を調製した。
【0141】
この溶液を、ワイヤーバー(#20)を用いて、PETフィルム(基材フィルム2)上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約9μmのコート層を形成した。
【0142】
そして、高圧水銀ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射してコート層を紫外線硬化処理した。これにより防眩層3を形成し、実施例1の防眩フィルムを得た。
【0143】
[実施例2]
重合性基を有するアクリル系重合体A15.0重量部、セルロースアセテートプロピオネート3重量部、ナノシリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物Aの150重量部、シリコーンアクリレート1重量部、光開始剤A1重量部、光開始剤B1重量部を、メチルエチルケトン101重量部と1-ブタノール24重量部との混合溶媒に溶解し、溶液を調製した。
【0144】
この溶液を、ワイヤーバー(#20)を用いて、PETフィルム(基材フィルム2)上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約9μmのコート層を形成した。
【0145】
そして、高圧水銀ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射してコート層を紫外線硬化処理した。これにより防眩層3を形成し、実施例2の防眩フィルムを得た。
【0146】
[実施例3]
重合性基を有するアクリル系重合体A12.5重量部、セルロースアセテートプロピオネート5.5重量部、ナノシリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物Aの149.2重量部、重合性基を有するフッ素系化合物B0.1重量部、光開始剤A1重量部、光開始剤B1重量部を、メチルエチルケトン129重量部と1-ブタノール24重量部と1-メトキシ-2-プロパノール13重量部との混合溶媒に溶解し、溶液を調製した。
【0147】
この溶液を、ワイヤーバー(#16)を用いて、PETフィルム(基材フィルム2)上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約7μmのコート層を形成した。
【0148】
そして、高圧水銀ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射してコート層を紫外線硬化処理した。これにより防眩層3を形成し、実施例3の防眩フィルムを得た。
【0149】
[実施例4]
重合性基を有するアクリル系重合体A50重量部、セルロースアセテートプロピオネート2.5重量部、ウレタンアクリレート79.5重量部、シリコーンアクリレート1重量部、光開始剤A1重量部、光開始剤B1重量部を、メチルエチルケトン106重量部と1-ブタノール28重量部とシクロヘキサノン70重量部との混合溶媒に溶解し、溶液を調製した。
【0150】
この溶液を、ワイヤーバー(#12)を用いて、PETフィルム(基材フィルム2)上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約5μmのコート層を形成した。
【0151】
そして、高圧水銀ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射してコート層を紫外線硬化処理した。これにより防眩層3を形成し、実施例4の防眩フィルムを得た。
【0152】
[実施例5]
アクリル系ハードコート配合物A25質量部とシリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物25質量部と1-ブタノール50質量部とを混合した溶液を調製した。この溶液を、ワイヤーバー(#16)を用いて、PETフィルム(基材フィルム2)上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約7μmのコート層を形成した。そして、紫外線ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射して紫外線硬化処理し、これにより防眩層3を形成し、実施例5の防眩フィルムを得た。
【0153】
[比較例1]
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート50重量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート50重量部、ジルコニア微粒子分散液100重量部、光開始剤Aの2重量部、光開始剤Bの1重量部を、メチルエチルケトン116重量部と1-ブタノール19重量部と1-メトキシ-2-プロパノール58重量部との混合溶媒に溶解し、溶液を調製した。
【0154】
この溶液を、ワイヤーバー(#14)を用いて、PETフィルム(基材フィルム2)上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約6μmのコート層を形成した。
【0155】
そして、高圧水銀ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射してコート層を紫外線硬化処理した。これにより防眩層を形成し、比較例1の防眩フィルムを得た。
【0156】
[比較例2]
重合性基を有するアクリル系重合体A5.7重量部、セルロースアセテートプロピオネート1.2重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート4重量部、シリコーンアクリレート2.77重量部、光開始剤Aの0.5重量部を、メチルエチルケトン25重量部と1-ブタノール12.2重量部との混合溶媒に溶解し、溶液を調製した。
【0157】
この溶液を、ワイヤーバー(#24)を用いて、PETフィルム(基材フィルム)上に流延した後、80℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約7μmのコート層を形成した。
【0158】
そして、高圧水銀ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射してコート層を紫外線硬化処理した。これにより防眩層を形成し、比較例2の防眩フィルムを得た。
【0159】
[比較例3]
重合性基を有するアクリル系重合体A4.1重量部、セルロースアセテートプロピオネート1.2重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート4重量部、シリコーンアクリレート2.77重量部、光開始剤Aの0.5重量部を、メチルエチルケトン25重量部と1-ブタノール12.2重量部との混合溶媒に溶解した。この溶液を、ワイヤーバー(#22)を用いて、PETフィルム(基材フィルム)上に流延した後、100℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約6μmのコート層を形成した。
【0160】
そして、高圧水銀ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射してコート層を紫外線硬化処理した。これにより防眩層を形成し、比較例3の防眩フィルムを得た。
【0161】
[比較例4]
アクリル系ハードコート配合物A63重量部と、アクリル系ハードコート配合物B37重量部とを混合した。この溶液を、ワイヤーバー(#10)を用いて、TACフィルム(基材フィルム)上に流延した後、100℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約6μmのコート層を形成した。
【0162】
そして、高圧水銀ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射してコート層を紫外線硬化処理した。これにより防眩層を形成し、比較例4の防眩フィルムを得た。
【0163】
[比較例5]
アクリル系ハードコート配合物A32重量部と、アクリル系ハードコート配合物B68重量部とを混合した。この溶液を、ワイヤーバー(#10)を用いて、TACフィルム(基材フィルム)上に流延した後、100℃のオーブン内で1分間放置し、溶媒を蒸発させて厚さ約6μmのコート層を形成した。
【0164】
そして、高圧水銀ランプにより紫外線をコート層に約5秒間照射してコート層を紫外線硬化処理した。これにより防眩層を形成し、比較例5の防眩フィルムを得た。
【0165】
[比較例6]
基材フィルムとして、厚み125μmの透明ポリエステルフィルム(東洋紡(株)製、コスモシャインA4300)を用いた。透明樹脂として有機無機ハイブリッドタイプの電離放射線硬化型樹脂組成物であるオプスターZ7501(JSR(株)製,固形分50%)を用い、これに透光性シリカ粒子であるOK-500(デグサ社製,平均粒子系3.0μm,屈折率1.46)を、透明樹脂200重量部に対して8.5部含有させた。これに光重合開始剤としてイルガキュア651(BASF社製)を1重量部、溶剤として酢酸ブチル(沸点100℃)を200重量部配合して得られた樹脂組成物を、基材フィルムに塗工し、1m/sの流速で85℃の乾燥空気を流通させ、1分間乾燥させた。
【0166】
これに紫外線を照射して(窒素雰囲気下にて200/cm)透明樹脂を硬化させることで防眩層を形成し、比較例6の防眩フィルムを得た。塗膜厚は6μmとした。
【0167】
[比較例7]
基材フィルムとして、トリアセチルセルロース(富士フィルム(株)製、厚さ80μm)を用意した。透明樹脂としてペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA;ダイセル・オルネクス(株)製,屈折率1.51)を用い、これに透光性粒子として、スチレン-アクリル共重合粒子(屈折率1.51、平均粒径9.0μm)、及びポリスチレン粒子(屈折率1.60、平均粒径3.5μm)を、それぞれ透明樹脂100重量部に対して、10.0重量部、及び16.5重量部含有させた。これに溶剤としてトルエン(沸点110℃)とシクロヘキサノン(沸点156℃)の混合溶剤(重量比7:3)を、透明樹脂100重量部に対して、190重量部配合して得られた樹脂組成物を、基材フィルムに塗工し、1m/sの流速で85℃の乾燥空気を流通させ、1分間乾燥させた。
【0168】
これに紫外線を照射して(窒素雰囲気下にて200/cm)透明樹脂を硬化させることで防眩層を形成し、比較例7の防眩フィルムを得た。塗膜厚は5μmとした。
【0169】
[比較例8]
基材フィルムとして、トリアセチルセルロース(富士フィルム(株)製、厚さ80μm)を用意した。透明樹脂としてペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA;ダイセル・オルネクス(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA;ダイセル・オルネクス(株)製)、及びポリメタクリル酸メチル(BR85;三菱レーヨン(株)製)の混合物(重量比;PETA/DPHA/PMMA=86/5/9)を用い(屈折率1.51)、これに透光性粒子として、ポリスチレン粒子(屈折率1.60、平均粒径3.5μm)及びスチレン-アクリル共重合粒子(屈折率1.56、平均粒径3.5μm)を、透明樹脂100重量部に対して、各々18.5及び3.5重量部含有させた。これに溶剤としてトルエン(沸点110℃)とシクロヘキサノン(沸点156℃)の混合溶剤(重量比7:3)を、透明樹脂100重量部に対して、190重量部配合して得られた樹脂組成物を、基材フィルムに塗工し、0.2m/sの流速で70℃の乾燥空気を流通させ、1分間乾燥させた。
【0170】
その後、紫外線を照射して(窒素雰囲気下にて200mJ/cm)透明樹脂を硬化させることで防眩層を形成し、比較例8の防眩フィルムを得た。塗膜厚は3.5μmとした。
【0171】
[比較例9]
基材フィルムとして、トリアセチルセルロース(富士フィルム(株)製、厚さ80μm)を用意した。透明樹脂としてペンタエリスリトールトリアクリレート(PE-3A;共栄社化学(株)製,屈折率1.53)を用い、これに透光性粒子として、シリカ粒子(SS50F;東ソー・シリカ工業(株)製,屈折率1.47、平均粒径1.1μm)及びポリスチレン粒子(屈折率1.59、平均粒径3.5μm)を、透明樹脂100重量部に対して、各々26重量部及び6.6重量部含有させた。これに光重合開始剤としてイルガキュア184(BASF社製)を5.3重量部及び溶剤としてトルエン(沸点110℃)を138重量部配合して得られた樹脂組成物を、基材フィルムに塗工し、0.2m/sの流速で90℃の乾燥空気を流通させ、1分間乾燥させた。
【0172】
その後、紫外線を照射して(窒素雰囲気下にて200mJ/cm)透明樹脂を硬化させることで防眩層を形成し、比較例9の防眩フィルムを得た。塗膜厚は5μmとした。
【0173】
[比較例10,11]
比較例10,11の防眩フィルムは、図3に示したように、基材フィルム上に、金型を用いて表面に凹凸が転写された紫外線硬化樹脂からなるコート層を形成して作製した。
【0174】
すなわち、実施例5及び比較例2~5では、図3に示すように、図示しない巻出ロールから巻き出されて搬送される基材フィルム20aを一対のロール21,22のニップ点に挿通し、ロール22に隣接して軸支されたロール23の周面からロール22の周面に紫外線硬化樹脂前駆体を付着させ、この紫外線硬化樹脂前駆体を基材フィルム20aの上面に塗布した。
【0175】
塗布された紫外線硬化樹脂前駆体は、ロール(ロール状金型)21,24のニップ点N1において基材フィルム20aと共に押圧した。これにより、塗布された紫外線硬化樹脂前駆体が基材フィルム20aと共にロール21,24のニップ点N1を通過する際に紫外線硬化樹脂前駆体の表面に凹凸形状を転写した。
【0176】
ロール24により凹凸形状が転写された紫外線硬化樹脂前駆体を、ロール21,24の下方に設けられたUVランプから照射される紫外線により硬化し、コート層(防眩層)とした。このようにして得られた防眩フィルムを、ロール24に隣接して軸支されたロール25によりロール24からリリースし、所定方向へ搬送した。基材フィルムとしては、TAC(トリアセチルセルロース)フィルムを用いた。
【0177】
ブラスト粒子を衝打させて表面に凹凸形状を有するロール状金型を作製するステップ(b)では、ブラスト粒径の値を30μm以上40μm以下の範囲で変化させてロール状金型を作製した。上記作製方法により、ヘイズ(Hz)値が異なる2種類のフィルム(比較例10,11)を作製した。
【0178】
次に、実施例1~5及び比較例1~11の各防眩フィルムについて、以下の項目を測定して評価した。ヘイズ及び全光線透過率、透過像鮮明度、60度グロスの測定に際しては、粘着層は省略した。
【0179】
[ヘイズ及び全光線透過率]
ヘイズメーター(日本電色(株)製、NDH-5000W)を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。ヘイズは、防眩層の凹凸構造を有する表面が受光器側となるように配置して測定した。
【0180】
[透過像鮮明度]
写像測定器(スガ試験機(株)製、ICM-1T)を用いて、JIS K7105に準拠し、防眩フィルムの製膜方向と光学櫛の櫛歯の方向とが平行になるように防眩フィルムを設置して測定した。光学櫛幅は、0.5mmとした。
【0181】
[60度グロス]
グロスメーター((株)掘場製作所製、IG-320)を用いて、JlS K7105に準拠し、角度60°で測定した。
【0182】
[ディスプレイの輝度分布の標準偏差(ギラツキ値)]
表示装置16としてスマートフォン(三星電子(株)製「Galaxy S4」)を用い、そのディスプレイ16aの表面に、各サンプルの防眩フィルムを粘着層(光学糊)により貼り付けた。コマツNTC(株)製フィルムギラツキ検査機10を用い、各サンプルの防眩フィルムを介して、ディスプレイ16aの輝度分布の標準偏差(ギラツキσ:ギラツキ値)を測定した。この測定に際しては、8ビット階調表示で且つ平均輝度が170階調のグレースケール画像として画像データが得られるように、撮像装置12の露光時間又はディスプレイ16aの全画素の輝度の少なくともいずれかを調整した。
各測定結果を表1及び2に示す。
【0183】
【表1】
【0184】
【表2】
【0185】
表1に示されるように、実施例1~5の防眩フィルム1は、光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が3%以上40%以下の範囲の値に設定され、防眩層3のヘイズ値が55.5%以上93.0%以下の範囲に設定されている。また、実施例1~5の防眩フィルムは、ディスプレイ16aのギラツキ値(ギラツキσ)が4.2以上6.0以下の範囲の値に抑制されている。すなわち実施例1~5の防眩フィルム1では、ディスプレイのギラツキ値を抑制しながら良好な防眩性が得られることが分かった。
【0186】
この理由として、実施例1~4の防眩層3では、アクリル共重合体Aとセルロースアセテートプロピオネート間で相分離が生じると共に、ナノシリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物Aや、ウレタンアクリレートにより、相分離構造が強調され、防眩層3の表面を非常に急峻又は高低差のある構造に形成できたことが考えられる。
【0187】
すなわち、ナノシリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物Aや、ウレタンアクリレートは、アクリル共重合体Aに対する親和性が高く、セルロースアセテートプロピオネートに対して斥力相互作用を生じたことにより、実施例1~4の防眩層3の相分離構造が強調されたものと考えられる。
【0188】
また、実施例5の防眩層3では、シリカ含有アクリル系紫外線硬化性化合物中のシリカ粒子に対して親和性の低い溶媒であるブタノールを多量に加えることで、シリカ粒子の凝集が激しく生じ、防眩層3の表面を非常に急峻又は高低差のある構造に形成できたことが考えられる。すなわち、シリカ粒子がブタノールに対して斥力相互作用を生じたことにより、親和性の高い溶媒では起こりえない程度にまで、防眩層3の表面に形成される凹凸構造が強調されたものと考えられる。更に実施例5の防眩層3では、アクリル系紫外線硬化樹脂とアクリル系ハードコート配合物Aとを共存させたことにより、光学性能を表1に示す範囲に調節することができた。
【0189】
表1及び2に示すように、比較例1~6及び11は、実施例1~5に比べて、透過像鮮明度及び60度グロスの各値が比較的高い。比較例7~9は、透過像鮮明度の値は比較的低いが、60度グロスの値が比較的高く、比較例10は、60度グロスの値は比較的低いが、透過像鮮明度の値が比較的高い。このように比較例1~11は、実施例1~5に比べて透過像鮮明度及び60度グロスのバランスが優れないため、実施例1~5に比べて防眩性が低くなったものと考えられる。
【0190】
具体的に、比較例1の防眩フィルムは、ビーズ(ジルコニア微粒子)を用いて防眩層のヘイズ値が高められ、防眩層に含まれるビーズとマトリクス樹脂との屈折率差が0.2に設定された構成を有する。しかしながら比較例1の防眩フィルムは、表2に示されるように、ディスプレイのギラツキ値はある程度抑制されているものの、透過像鮮明度及び60度グロスの値が高く、防眩性に優れないことが分かった。
【0191】
比較例2及び3の防眩フィルムは、相分離構造により形成された防眩層を有するが、実施例1~4のように、防眩層の相分離構造が強調されていないため、実施例1~4と比較すると、防眩性に優れないことが分かった。
【0192】
比較例4~6は、防眩層に含まれるビーズとマトリクス樹脂との屈折率差が小さいため、実施例1~5に比べてヘイズ値を高めることが難しく、ディスプレイのギラツキ値を抑制しながら良好な防眩性を得ることは困難であることが分かった。
【0193】
比較例7~9は、高屈折率ビーズ(ポリスチレン微粒子等)により防眩層の内部ヘイズ値を調整することで防眩層のヘイズ値をある程度上昇させているが、実施例1~5のように、ディスプレイのギラツキ値を抑制しながら良好な防眩性を得ることは困難であることが分かった。
【0194】
比較例10,11は、表面に型押しにより凹凸が形成された防眩層を有しているが、実施例1~5のように、ディスプレイのギラツキ値を抑制しながら良好な防眩性を得ることは困難であることが分かった。
【0195】
なお、実施例1~5が示した特性の傾向と、本願発明者らが行った別の検討により、ディスプレイ16aのギラツキ値が、0以上4.2未満の範囲の値に設定され、防眩フィルム1の光学櫛幅0.5mmの透過像鮮明度が、0%以上8.4%未満、及び、55%以上60%以下の範囲の値に設定され、防眩層3のヘイズ値が、50%以上55.5未満、及び、93.0より大きく99.0%以下の範囲の値に設定されている場合においても、実施例1~5と同様の効果が奏されると考えられる。
【0196】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成又は方法を変更、追加、又は削除できる。
【符号の説明】
【0197】
1 防眩性フィルム
3 防眩層
16a ディスプレイ
図1
図2
図3