(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】制御装置及びコンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240606BHJP
G05B 13/04 20060101ALI20240606BHJP
G05B 13/02 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H02M3/155 H
G05B13/04
G05B13/02 L
(21)【出願番号】P 2020135539
(22)【出願日】2020-08-11
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【氏名又は名称】寺山 啓進
(72)【発明者】
【氏名】関口 大志
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/159504(WO,A1)
【文献】特開2019-201545(JP,A)
【文献】特開平04-211802(JP,A)
【文献】国際公開第2006/068012(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/146641(WO,A1)
【文献】特開2020-096409(JP,A)
【文献】特開昭49-027853(JP,A)
【文献】特開平05-244770(JP,A)
【文献】国際公開第2020/148808(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00
G05B 13/04
G05B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバータの出力電圧を制御する制御装置であって、
コンバータにおいて負荷に電力を供給する電力供給ブロックの出力段からの検出信号に基づいて前記電力供給ブロックを制御するための制御信号を生成するニューラルネットワークと、
前記検出信号から機械学習により非線形動的システムによるモデルを生成するモデル生成部と、
前記モデル生成部で生成したモデルを保存するモデル保存部と、
前記モデル保存部に保存したモデルから選択した直近の前記検出信号に最適なモデルに切り替えて前記ニューラルネットワークに提供するモデル切替部と
を含み、前記ニューラルネットワークは、前記モデル切替部から提供されたモデルを用いて予測した将来の出力電圧に基づいて前記制御信号を生成する制御装置。
【請求項2】
前記ニューラルネットワークから供給された制御信号に基づいて、前記電力供給ブロックを駆動するための波形を生成する波形生成部をさらに含む請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記コンバータは、DC/DCコンバータ又はAC/DCコンバータである請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
コンバータであって、
負荷に電力を供給する電力供給ブロックと、
前記電力供給ブロックを制御する制御ブロックと
を含み、前記制御ブロックは、
前記電力供給ブロックの出力段からの検出信号に基づいて前記電力供給ブロックを制御するための制御信号を生成するニューラルネットワークと、
前記検出信号から機械学習により非線形動的システムによるモデルを生成するモデル生成部と、
前記モデル生成部で生成したモデルを保存するモデル保存部と、
前記モデル保存部に保存したモデルから選択した直近の前記検出信号に最適なモデルに切り替えて前記ニューラルネットワークに提供するモデル切替部と
を含み、前記ニューラルネットワークは、前記モデル切替部から提供されたモデルを用いて予測した将来の出力電圧に基づいて前記制御信号を生成するコンバータ。
【請求項5】
前記制御ブロックは、前記ニューラルネットワークから供給されたデジタルデータによる制御信号をアナログ信号に変換して前記電力供給ブロックに供給する
D/Aコンバータをさらに含む請求項4に記載のコンバータ。
【請求項6】
前記電力供給ブロックは、電源ラインとグランドラインの間に直列に接続されたトランジスタ及びダイオードを含み、前記トランジスタは前記制御ブロックからの制御信号に基づいて駆動され、前記トランジスタと前記ダイオードを接続するノードから電流が出力される請求項4又は5に記載のコンバータ。
【請求項7】
前記ニューラルネットワークは、前記トランジスタが活性領域で動作するように制御する請求項6に記載のコンバータ。
【請求項8】
前記電力供給ブロックは、電源ラインとグランドラインの間に直列に接続された第1トランジスタ及び第2トランジスタを含み、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタは前記制御ブロックからの制御信号に基づいて駆動され、前記第1トランジスタと前記第2トランジスタを接続するノードから電流が出力される請求項4又は5に記載のコンバータ。
【請求項9】
前記ニューラルネットワークは、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタの数なくとも一方が活性領域で動作するように制御する請求項8に記載のコンバータ。
【請求項10】
前記制御ブロックと、前記電力供給ブロックとは、ガルバニック絶縁された請求項4から9のいずれか一項に記載のコンバータ。
【請求項11】
DC/DCコンバータ又はAC/DCコンバータを構成する請求項4から10のいずれか一項に記載のコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバータを制御するための制御装置及びコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルス幅変調(PWM)を用いて入力した直流や交流の電力を所定の電圧の直流電力に変換して供給するDC/DCコンバータやAC/DCコンバータが提供されている。このようなコンバータにおいては、負荷の変動などに伴って生じ得る出力電圧の変動を低減して直流電力を安定して供給するために、目標値との偏差、その積分及び微分を用いてフィードバック制御するPID制御が使用されることがあった。非特許文献1には、PID制御と人工知能のニューラルネットワークによるファジー制御とを切り替えて使用するDC/DCコンバータが開示されている。
【0003】
一方、非特許文献2には、自然界の生態系モデルにおけるレジーム・シフトの概念を拡張し、時系列イベントデータを適応型非線形動的システムとして表現することで、センサデータのような大規模データストリームの中から特徴を発見し、潜在的な時系列パターン、すなわちレジームを自動的に認識することで、長期的なイベント予測を実現するというRegimeCastの手法が開示されている。
【0004】
図1は、RegimeCastを説明するタイムチャートである。過去の時刻t
mから現在時刻t
Cまでの直近の時間枠X
Cには、あり得るレジームの実データが異なる細線で示されている。これらの実データに異なる太線に示す複数のモデルから最適なモデルを選択して現在時刻t
cから将来の時刻t
sまでの時間枠X
Fに適用し、将来のデータを予測することができる。例えば、直近の時間枠X
Cのイベントストリームに基づいて、将来の時間枠X
Fにおける時刻t
cからt
sまでのイベントを予測することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Waleed Ishaq Hameed, et al., “Voltage Tracking Control of DC-DC Boost Converter Using Fuzzy Neural Network,” International Journal of Power Electronics and Drive System (IJPEDS), Vol. 9, No. 4, December 2018, pp. 1657-1665
【文献】松原靖子他、「大規模データストリームの将来予測アルゴリズム」、情報処理学会論文誌 データベース、Vol.9、No.4、32-45(Dec.2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、PID制御では、目標値との偏差、その積分及び微分を調整することで目標値に追随するように制御するが、あらゆる制御に対応することは困難であり、予期せぬ変動に対する制御時には、出力電圧にオーバーシュート、リンギングやノイズが発生したり、損失が発生したりして、出力電圧が目標値に収束するまで時間がかかっていた。
【0007】
この発明は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、コンバータにおいて予期せぬ変動に対しても出力電圧を目標値に迅速に収束させることができ、ひいては変動に伴って生じ得るオーバーシュート、リンギングやノイズ、損失を低減することができるような制御装置及びコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、この出願に係る制御装置は、コンバータの出力電圧を制御する制御装置であって、コンバータにおいて負荷に電力を供給する電力供給ブロックからの検出信号に基づいて電力供給ブロックを制御するための制御信号を生成するニューラルネットワークと、検出信号から機械学習により非線形動的システムによるモデルを生成するモデル生成部と、モデル生成部で生成したモデルを保存するモデル保存部と、モデル保存部に保存したモデルから選択した直近の検出信号に最適なモデルに切り替えてニューラルネットワークに提供するモデル切替部とを含み、ニューラルネットワークは、モデル切替部から提供されたモデルを用いて予測した将来の出力電圧に基づいて制御信号を生成する。
【0009】
ニューラルネットワークから供給された制御信号に基づいて、電力供給ブロックを駆動するための波形を生成する波形生成部をさらに含んでもよい。コンバータは、DC/DCコンバータ又はAC/DCコンバータであってもよい。
【0010】
この出願に係るコンバータは、負荷に電力を供給する電力供給ブロックと、電力供給ブロックを制御する制御ブロックとを含み、制御ブロックは、電力供給ブロックからの検出信号に基づいて電力供給ブロックを制御するための制御信号を生成するニューラルネットワークと、検出信号から機械学習により非線形動的システムによるモデルを生成するモデル生成部と、モデル生成部で生成したモデルを保存するモデル保存部と、モデル保存部に保存したモデルから選択した直近の検出信号に最適なモデルに切り替えてニューラルネットワークに提供するモデル切替部とを含み、ニューラルネットワークは、モデル切替部から提供されたモデルを用いて予測した将来の出力電圧に基づいて制御信号を生成する。
【0011】
制御ブロックは、ニューラルネットワークから供給されたデジタルデータによる制御信号をアナログ信号に変換して電力供給ブロックに供給してもよい。
【0012】
電力供給ブロックは、電源ラインとグランドラインの間に直列に接続されたトランジスタ及びダイオードを含み、トランジスタは制御ブロックからの制御信号に基づいて駆動され、トランジスタとダイオードを接続するノードから電流が出力されてもよい。ニューラルネットワークは、トランジスタが活性領域で動作するように制御してもよい。
【0013】
電力供給ブロックは、電源ラインとグランドラインの間に直列に接続された第1トランジスタ及び第2トランジスタを含み、第1トランジスタ及び第2トランジスタは制御ブロックからの制御信号に基づいて駆動され、第1トランジスタと第2トランジスタを接続するノードから電流が出力されてもよい。ニューラルネットワークは、第1トランジスタ及び第2トランジスタの少なくとも一方が活性領域で動作するように制御してもよい。
【0014】
制御ブロックと、電力供給ブロックとは、ガルバニック絶縁されてもよい。DC/DCコンバータ又はAC/DCコンバータを構成してもよい。
【発明の効果】
【0015】
この発明によると、コンバータにおいて予期せぬ変動に対しても出力電圧を目標値に迅速に収束させることができ、ひいては変動に伴って生じ得るオーバーシュート、リンギングやノイズ、損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】RegimeCastを説明するタイムチャートである。
【
図2】第1の実施の形態の制御装置の概略的な構成を示す図である。
【
図3】第2の実施の形態の制御装置の概略的な構成を示す図である。
【
図4】第3の実施の形態のDC/DCコンバータの概略的な構成を示す図である。
【
図5】第3の実施の形態のDC/DCコンバータの制御ブロックの概略的な構成を示す図である。
【
図6】第3の実施の形態のDC/DCコンバータにおける波形を示すタイムチャートである。
【
図7】第4の実施の形態のDC/DCコンバータの概略的な構成を示す図である。
【
図8】第5の実施の形態のDC/DCコンバータの概略的な構成を示す図である。
【
図9】比較例のDC/DCコンバータの概略的な構成を示す図である。
【
図10】比較例のDC/DCコンバータにおける波形を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、制御装置及びDC/DCコンバータの実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
本実施の形態の制御装置は、非特許文献2に開示されたようなRegimeCastをニューロネットワークによる人工知能によって実現し、コンバータの電力供給ブロックを制御して目標値の出力電圧を供給するようにすることを想定している。制御装置は、コンバータに制御ブロックとして含まれてもよく、電力供給ブロックとともにコンバータを構成してもよい。なお、本明細書においては、DC/DCコンバータ及びAC/DCコンバータを併せてコンバータと称している。
【0019】
(第1の実施の形態)
図2は、第1の実施の形態の制御装置の概略的な構成を示す図である。制御装置10は、コンバータにおける電力供給ブロックを制御するための制御信号を生成するニューラルネットワーク11を有している。ニューラルネットワーク11は、図示しない電力供給ブロックから提供された検出信号に基づいて、非線形動的システムによるモデルを用いて電力供給ブロックを制御するための制御信号を生成する。
【0020】
検出信号は、ニューラルネットワーク11に図示しないA/Dコンバータによってデジタルデータに変換された時系列データとして入力されている。検出信号は、電力供給ブロックの出力電圧値、出力電流値、入力電圧値、インダクタ電流値、キャパシタ電流値などの少なくとも一つ以上であればよい。ニューラルネットワーク11からは、モデルを用いて生成した制御信号がデジタルデータとして出力されている。ニューラルネットワーク11は、スパイキングニューラルネットワーク、リカレントニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、ファジーニューラルネットワークなど適切な種類のニューラルネットワークであればよい。
【0021】
制御装置10は、電力供給ブロックから供給された検出信号から機械学習によりモデルを生成するモデル生成部12を有している。モデル生成部12は、検出信号を教師データとして学習し、非線形動的システムによるモデルを生成する。例えば、非線形動的システムによるモデルのパラメータを決定してもよい。
【0022】
モデル生成部12には、ニューラルネットワーク11に入力する検出信号と同様の検出信号が入力している。検出信号は、図示しないD/Aコンバータによってデジタル信号に変換された時系列データである。
【0023】
制御装置10は、モデル生成部12によって生成されたモデルを保存するモデル保存部13を有している。モデル保存部13には、モデル生成部12によって生成されたモデルのデータが供給されている。モデルのデータは、例えば、非線形動的システムによるモデルのパラメータであってもよい。モデル保存部13は、不揮発性メモリによって構成されてもよい。
【0024】
制御装置10は、モデル保存部13に保存されたモデルを切り替えてニューラルネットワーク11に提供するモデル切替部14を有している。モデル切替部14には、ニューラルネットワーク11に入力する検出信号と同様の検出信号が図示しない信号ラインを通じて入力している。検出信号は、図示しないA/Dコンバータによってデジタル信号に変換された時系列データである。
【0025】
モデル切替部14は、入力された検出信号の時系列データに基づいて、モデル保存部13に保存された複数のモデルの内から時系列データにリアルタイムで最適なモデルに適応的に切り替え、そのモデルをニューラルネットワーク11に提供する。モデルは、非線形動的システムによるモデルのパラメータによって与えてもよい。
【0026】
ニューラルネットワーク11は、モデル切替部14から提供されたモデルを用い、検出信号の時系列データに基づいて電力供給ブロックを制御するための制御信号を発生する。ニューラルネットワーク11は、レジーム・シフトの概念により時系列データを適応型非線形動的システムとして表現することにより、将来の時系列データを予測して、目標値に迅速に収束するように電力供給ブロックを制御する制御信号を生成することができる。ニューラルネットワーク11には、モデル切替部14から選択したモデルとして、モデルの非線形動的システムのパラメータが提供されてもよい。ニューラルネットワークは、制御信号をデジタルデータとして出力する。
【0027】
制御装置10は、ニューラルネットワーク11から供給されたデジタルデータによる制御信号をアナログ信号の波形に変換して電力供給ブロックに提供する波形生成部15を有している。波形生成部15は、D/Aコンバータによって構成してもよい。波形生成部15は、電力供給ブロックにおいて対応するスイッチング素子となる単一のトランジスタのオン/オフを制御するために必要な波形を生成する。ここで、電力供給ブロックにスイッチング素子として単一のトランジスタが含まれるのは、電力供給ブロックがDC/DCコンバータ又は単相交流/DCコンバータを構成する場合であってもよい。
【0028】
このように、制御装置10においては、モデル生成部12で検出信号による一つの時系列データから様々なモデルを生成し、モデル保存部13に作成したモデルを保存し、モデル切替部14で検出信号の時系列データに基づいてモデル保存部13に保存されたモデルから最適なモデルをリアルタイムで選択し、ニューラルネットワーク11ではモデル切替部14から提供されたモデルを用いて検出信号の時系列データに基づいて電力供給ブロックの将来の出力電圧を予測した予測値を生成し、この予測値に基づいて予測値が目標値に収束するように適切な制御信号を生成して波形生成部15を通じて電力供給ブロックに提供している。
【0029】
したがって、制御装置10においては、検出信号の時系列データに基づいて制御が必要になるタイミングで適切な制御信号を生成することができる。このため、予期せぬ変動に対しても電力供給ブロック30の出力電圧を目標値に迅速に収束させることができ、ひいては変動に伴って生じ得るオーバーシュート、リンギングやノイズ、損失を低減することができる。
【0030】
なお、制御装置10は、電力供給ブロックを制御するために単独で提供してもよいし、電力供給ブロックとともにDC/DCコンバータ又は単相交流/DCコンバータを構成してもよい。また、制御装置10は、半導体集積回路による単一のデバイスとして構成してもよいし、ニューラルネットワーク11、モデル生成部12、モデル保存部13、モデル切替部14及び波形生成部15を個別のデバイスにより構成してもよい。ニューラルネットワーク11、モデル生成部12及びモデル切替部14を論理ブロックとして単一のデバイスに構成してもよい。
【0031】
(第2の実施の形態)
図3は、第2の実施の形態の制御装置の概略的な構成を示す図である。第2の実施の形態の制御装置は、コンバータにおける電力供給ブロックを制御するための制御信号を生成するニューラルネットワーク11と、電力供給ブロックから供給された検出信号から機械学習によりモデルを生成するモデル生成部12と、モデル生成部12によって生成されたモデルを保存するモデル保存部13と、モデル保存部13に保存されたモデルを切り替えてニューラルネットワーク11に提供するモデル切替部14とを有する点において、
図2に示した第1の実施の形態の制御装置10と共通している。簡単のため、第1の実施の形態の制御装置10と共通する構成要素については、第1の実施の形態と同一の参照番号を付すことにする。
【0032】
第2の実施の形態の制御装置10は、第1の実施の形態の制御装置10が単一の波形生成部15を有していたのに代わって、第1波形生成部16及び第2波形生成部17という二つを有している点で相違している。第1波形生成部16及び第2波形生成部17には、ニューラルネットワーク11からそれぞれデジタルデータによる制御信号が供給されている。第1波形生成部16及び第2波形生成部17は、第1の実施の形態の制御装置10の波形生成部と同様に、それぞれD/Aコンバータによって構成してもよい。
【0033】
第1波形生成部16及び第2波形生成部17は、ニューラルネットワーク11からの制御信号に基づいて、電力供給ブロックにおいて対応するスイッチング素子となる二個のトランジスタのオン/オフを個別に制御するために必要な波形をそれぞれ生成している。ここで、電力供給ブロックにスイッチング素子として二個のトランジスタが含まれるのは、電力供給ブロックがDC/DCコンバータ、単相交流/DCコンバータ又は二相交流/DCコンバータを構成する場合であってもよい。
【0034】
このように、第2の実施の形態の制御装置10においては、第1の実施の形態の制御装置10と同様に、ニューラルネットワーク11ではリアルタイムで最適なモデルを用いて検出信号の時系列データから電力供給ブロックの将来の出力電圧を予測した予測値を生成し、この予測値に基づいて予測値が目標値に収束するように適切な制御信号を生成して第1波形生成部16及び第2波形生成部17を通じて電力供給ブロックに提供することができる。
【0035】
したがって、第2の実施の形態の制御装置10は、制御信号の時系列データに基づいて制御が必要になるタイミングで適切な制御信号を生成し、第1波形生成部16及び第2波形生成部17を通じて電力供給ブロックに含まれる二個のトランジスタを個別に制御することができる。このため、予期せぬ変動に対しても電力供給ブロックの出力電圧を目標値に迅速に収束させることができ、ひいては変動に伴って生じ得るオーバーシュート、リンギングやノイズ、損失を低減することができる。
【0036】
なお、第2の実施の形態の制御装置10は、電力供給ブロックを制御するために単独で提供してもよいし、電力供給ブロックとともにDC/DCコンバータ、単相交流/DCコンバータ又は二相交流/DCコンバータを構成してもよい。また、第2の実施の形態の制御装置10は、第1の実施の形態の制御装置10と同様に、半導体集積回路による単一のデバイスとして構成してもよいし、ニューラルネットワーク11、モデル生成部12、モデル保存部13、モデル切替部14及び波形生成部15を個別のデバイスとして構成してもよいし、ニューラルネットワーク11、モデル生成部12及びモデル切替部14を論理ブロックとして単一のデバイスで構成してもよい。
【0037】
第2の実施の形態の制御装置10では、電力供給ブロックにおいて対応するスイッチング素子となる二個のトランジスタのオン/オフを個別に制御する制御信号の波形を生成するために第1波形生成部16及び第2波形生成部17を含んでいたが、電力供給ブロックにおいて対応するスイッチング素子となる三個のトランジスタのオン/オフを個別に制御する必要がある場合には、同様に三個の波形生成部を有してもよい。この場合にも、三個の波形生成部は、ニューラルネットワーク11からの制御信号に基づいて電力供給ブロックにおいて対応するスイッチング素子となる三個のトランジスタのオン/オフを個別に制御するために必要な波形をそれぞれ生成する。ここで、電力供給ブロックにスイッチング素子として三個のトランジスタが含まれるのは、電力供給ブロックがDC/DCコンバータ、単相交流/DCコンバータ、二相交流/DCコンバータ又は三相交流/DCコンバータを構成する場合であってもよい。同様に、第2の実施の形態の制御装置10は、四個以上の波形生成部を有してもよい。
【0038】
(第3の実施の形態)
図4は、第3の実施の形態のDC/DCコンバータの概略的な構成を示す図である。このDC/DCコンバータは、非同期整流型の降圧DC/DCコンバータを構成している。
【0039】
このDC/DCコンバータは、制御ブロック20と、制御ブロック20から供給された制御信号に基づいて駆動される電力供給ブロック30とを有している。制御ブロック20は、モデル作成、モデル切替及びニューラルネットワークの機能を有する論理ブロック21と、モデルを保存する不揮発性メモリ23とを有している。
【0040】
また、制御ブロック20は、電力供給ブロック30から提供されたアナログ信号による検出信号をデジタルデータに変換して論理ブロック21に提供するA/Dコンバータ24と、論理ブロック21から出力されたデジタルデータによる制御信号をアナログ信号に変換して電力供給ブロック30に供給するD/Aコンバータ25とを有している。さらに、制御ブロック20は、この制御ブロック20に電源を供給するシステム電源用DC/DCコンバータ26を有している。
【0041】
図5は、第3の実施の形態のDC/DCコンバータの制御ブロック20の概略的な構成を示す図である。制御ブロック20において、論理ブロック21は、電力供給ブロック30を制御するための制御信号を生成するニューラルネットワーク11と、電力供給ブロック30から供給された検出信号から機械学習によりモデルを生成するモデル生成部12と、電力供給ブロック30から供給された検出信号に基づいて最適なモデルを選択するモデル切替部14とを有している。
【0042】
ここで、論理ブロック21の構成要素について、第1の実施の形態の制御装置10と共通する構成要素には対応する参照番号を付している。なお、不揮発性メモリ23及びD/Aコンバータ25は、それぞれ第1の実施の形態の制御装置10のモデル保存部13及び波形生成部15に対応している。
【0043】
ニューラルネットワーク11は、電力供給ブロック30から提供された検出信号に基づいて、非線形動的システムによるモデルを用いて電力供給ブロックを制御するための制御信号を生成する。検出信号は、A/Dコンバータ24によってデジタル信号に変換された時系列データとして入力されている。
【0044】
検出信号は、電力供給ブロック30の出力電圧値、出力電流値、入力電圧値、インダクタ電流値、キャパシタ電流値などの少なくとも一つ以上であればよい。ニューラルネットワーク11からは、モデルを用いて生成した制御信号がデジタルデータとして出力されている。ニューラルネットワーク11は、スパイキングニューラルネットワーク、リカレントニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、ファジーニューラルネットワークなど適切な種類のニューラルネットワークであればよい。
【0045】
モデル生成部12は、検出信号を教師データとして学習し、非線形動的システムによるモデルを生成する。例えば、非線形動的システムによるモデルのパラメータを決定してもよい。モデル生成部12には、ニューラルネットワーク11に入力する検出信号と同様の検出信号が入力している。検出信号は、A/Dコンバータ24によってデジタル信号に変換された時系列データである。モデル生成部12からは、不揮発性メモリ23に生成されたモデルのデータが供給される。
【0046】
モデル切替部14は、入力された検出信号の時系列データに基づいて、モデル保存部13に保存された複数のモデルの内から時系列データにリアルタイムで最適なモデルに適応的に切り替え、そのモデルをニューラルネットワーク11に提供する。モデルは、非線形動的システムによるモデルのパラメータを与えてもよい。
【0047】
ニューラルネットワーク11は、モデル切替部14から提供されたモデルを用い、検出信号の時系列データに基づいて電力供給ブロックを制御するための制御信号を発生する。ニューラルネットワーク11は、レジーム・シフトの概念により時系列データを適応型非線形動的システムとして表現することにより、将来の時系列データを予測して、目標値に迅速に収束するように電力供給ブロック30を制御する制御信号を生成してもよい。ニューラルネットワーク11には、モデル切替部14から選択したモデルとして、モデルの非線形動的システムのパラメータが提供されてもよい。ニューラルネットワークは、制御信号をデジタルデータとして出力する。
【0048】
不揮発性メモリ23は、論理ブロック21から供給されたモデルのデータを保存し、保存したモデルのデータを論理ブロック21に提供する。不揮発性メモリ23は、論理ブロック21のモデル生成部12から供給されたモデルのデータを保存し、保存したモデルのデータを論理ブロック21のモデル切替部14に提供する。モデルのデータは、例えば、非線形動的システムによるモデルのパラメータであってもよい。
【0049】
D/Aコンバータ25は、電力供給ブロック30において対応するスイッチング素子となる単一のトランジスタのオン/オフを制御するために必要な波形を生成する。A/Dコンバータ24は、電力供給ブロック30からの検出信号をアナログ信号からデジタルデータに変換する。システム電源用DC/DCコンバータ26は、制御ブロック20を駆動するために必要な所定の電圧の電力を供給する。
【0050】
制御ブロック20は、論理ブロック21に不揮発性メモリ23、A/Dコンバータ24、D/Aコンバータ25なども加えて半導体集積回路によるデバイスとして構成してもよいし、論理ブロック21、不揮発性メモリ23、A/Dコンバータ24、D/Aコンバータ、システム電源用DC/DCコンバータ26を個別のデバイスで構成してもよい。
【0051】
再び
図4を参照すると、電力供給ブロック30において、電源ラインからグランドラインの間に、第1インダクタ35、スイッチング素子となるトランジスタ31及びダイオード33が直列に設けられている。トランジスタ31はPチャネルのMOSFETであってもよく、ダイオード33はショットキーダイオードであってもよい。第1インダクタ35とトランジスタ31のソースとを接続するノードとグランドラインとの間には、第1キャパシタ36が設けられている。図中にグランドラインに付された符号PGは、電力供給ブロックのグランドラインであることを意味している。第1インダクタ35及び第1キャパシタ36によって、ローパスフィルタが構成されている。このローパスフィルタは、電源ラインからのノイズ等を遮断している。
【0052】
トランジスタ31のドレインとダイオード33のカソードとを接続するノードは、第2インダクタ37を介して図示しない出力端子に接続され、このノードから出力端子に向けて出力電流が供給される。第2インダクタ37と出力端子とを接続するノードとグランドラインとの間には、第2キャパシタ38が設けられている。第2インダクタ37及び第2キャパシタ38によって、ローパスフィルタが構成されている。
【0053】
電力供給ブロック30において、スイッチング素子となるトランジスタ31のゲートには、ドライバ32を通じて制御ブロック20からの制御信号が供給され、ドレイン電流が制御される。ドレイン電流は電源ラインから供給されて出力端子に向かって流れ、出力電流を形成する。第2インダクタ37のフライバック電圧により発生した電流は、ダイオード33を通じて還流される。
【0054】
電力供給ブロック30においては、制御ブロック20からの制御信号に従いトランジスタ31が駆動されるためドレイン電流は一般に脈流になるが、第2インダクタ37及び第2キャパシタ38によって構成されたローパスフィルタによって平滑化されて出力端子に送られる。これによって、出力端子からは、電源ラインの電圧よりも降圧された直流電力が供給される。
【0055】
電力供給ブロック30においては、出力端子に接続する出力ラインから得られた出力電圧を検出信号として制御ブロック20に提供している。しかしながら、検出信号は、出力電圧に限らず、他の種類のものであってもよい。図中に破線で示したように、検出信号は、トランジスタ31のゲート電圧、第1インダクタ35の電流、トランジスタ31のソース電流、第2インダクタ37の電流、出力電流であってもよい。また、これら出力電圧、ゲート電圧などのうちから複数の種類を検出してもよい。ここで、ソース電流及び出力電流は、ソースライン及び出力ラインから電流センサによって検出してもよい。また、第1キャパシタ36又は第2キャパシタ38の電流を検出してもよい。以下の実施の形態においても、同様である。
【0056】
図6は、第3の実施の形態のDC/DCコンバータにおける波形を示すタイムチャートである。
図6(a)は、電力供給ブロック30の出力端子を通じて流れた負荷電流I
Lの時間変化を示している。一定の期間にわたって、負荷電流I
Lがパルス状に増加したことが見られる。
図6(b)は、制御ブロック20によって生成された制御信号の時間変化を示している。この制御信号は、電力供給ブロック30からの検出信号に基づいて制御ブロック20のニューラルネットワーク11によって生成されたものである。制御信号は、負荷電流I
Lの立ち上がりのタイミングで低位の第1レベルから高位の第2レベルに所定期間にわたる過渡的な振動を経て移行し、負荷電流I
Lの立ち下がりのタイミングで高位の第2レベルから低位の第1レベルに所定期間にわたる過渡的な振動を経て移行している。
【0057】
図6(b)には、トランジスタ31がオンとなるレベルとオフとなるレベルが示されている。これらのオン/オフのレベルを参照すると、低位の第1レベル及び高位の第2レベルは、いずれもオン/オフのレベルの中間のレベルに位置している。したがって、トランジスタ31は、オン/オフに相当する飽和領域/遮断領域だけではなく、飽和領域と遮断領域の間にある活性領域においても動作するように制御されていることが見られる。
【0058】
図6(c)には、電力供給ブロック30の出力電圧の時間変化を示している。負荷電流I
Lの立ち上がりで第1オーバーシュートP1、負荷電流I
Lの立ち下がりで第2オーバーシュートP2が見られる。しかしながら、第1オーバーシュートP1及び第2オーバーシュートP2のいずれについても、電圧の変動は小さく、収束するまでの時間も短いことが見られる。
【0059】
第3の実施の形態のDC/DCコンバータにおいては、制御ブロック20は、ニューラルネットワーク11、モデル生成部12及びモデル切替部14を含む論理ブロック21と、不揮発性メモリ23とを有し、モデル生成部12で検出信号による一つの時系列データから様々なモデルを生成し、不揮発性メモリ23に作成したモデルを保存し、モデル切替部14で検出信号の時系列データに基づいて不揮発性メモリ23に保存されたモデルから最適なモデルをリアルタイムで選択し、ニューラルネットワーク11ではモデル切替部14から提供されたモデルを用いて検出信号の時系列データに基づいて電力供給ブロック30の将来の出力電圧を予測した予測値を生成し、この予測値に基づいて予測値が目標値に収束するように適切な制御信号を生成してD/Aコンバータ25を通じて電力供給ブロック30に提供している。
【0060】
したがって、第3の実施の形態のDC/DCコンバータにおいては、検出信号の時系列データに基づいて制御が必要になるタイミングで適切な制御信号を生成することができる。このため、予期せぬ変動に対しても電力供給ブロック30の出力電圧を目標値に迅速に収束させることができ、ひいては変動に伴って生じ得るオーバーシュート、リンギングやノイズ、損失を低減することができる。
【0061】
また、第3の実施の形態のDC/DCコンバータにおいては、スイッチング素子となるトランジスタ31をオン/オフに相当する飽和/遮断領域だけではなく、飽和領域と遮断領域の間の活性領域においても動作させるように制御している。したがって、トランジスタ31のドレイン電流が低減されて電力供給ブロック30の消費電力が低減し、ひいてはDC/DCコンバータの電力変換効率を向上させることができる。
【0062】
(第4の実施の形態)
図7は、第4の実施の形態のDC/DCコンバータの概略的な構成を示す図である。このDC/DCコンバータは、非同期整流型の絶縁型降圧DC/DCコンバータを構成している。
【0063】
第4の実施の形態のDC/DCコンバータは、第3の実施の形態のDC/DCコンバータと同様の構成を有する制御ブロック20及び電力供給ブロック30を有する点において第3の実施の形態のDC/DCコンバータと共通するが、制御ブロック20と電力供給ブロック30との間がガルバニック絶縁されている点において相違している。簡単のため、第3の実施の形態のDC/DCコンバータと共通する構成要素については、第3の実施の形態と同一の参照番号を付すことにする。
【0064】
電力供給ブロック30から制御ブロック20に提供される検出信号のラインには、電力供給ブロック30の出力ラインと制御ブロック20のA/Dコンバータ24との間に第1ガルバニック絶縁デバイス51が設けられている。また、制御ブロック20から電力供給ブロック30に供給される制御信号のラインには、制御ブロック20のD/Aコンバータ25と電力供給ブロック30のドライバ32との間に第2ガルバニック絶縁デバイス52が設けられている。第1ガルバニック絶縁デバイス51及び第2ガルバニック絶縁デバイス52は、ガルバニック絶縁ロジックICによって構成してもよい。
【0065】
制御ブロック20は、モデル作成、モデル切替及びニューラルネットワークの機能を有する論理ブロック21と、モデルを保存する不揮発性メモリ23とを有している。論理ブロック21及び不揮発性メモリ23は、第3の実施の形態と同様に
図5に示したような構成を有し、第3の実施の形態と同様に動作する。また、制御ブロック20は、電力供給ブロック30から第1ガルバニック絶縁デバイス51を介して提供されたアナログ信号による検出信号をデジタルデータに変換して論理ブロック21に提供するA/Dコンバータ24と、論理ブロック21から出力されたデジタルデータによる制御信号をアナログ信号に変換して第2ガルバニック絶縁デバイス52を介して電力供給ブロック30に供給するD/Aコンバータ25とを有している。さらに、制御ブロック20は、この制御ブロック20に電源を供給するシステム電源用DC/DCコンバータ26を有している。
【0066】
制御ブロック20は、論理ブロック21に不揮発性メモリ23、A/Dコンバータ24、D/Aコンバータ25なども加えて半導体集積回路によるデバイスとして構成してもよいし、論理ブロック21、不揮発性メモリ23、A/Dコンバータ24、D/Aコンバータ25、システム電源用DC/DCコンバータ26を個別のデバイスで構成してもよい。
【0067】
電力供給ブロック30において、電源ラインからグランドラインの間に、第1インダクタ35、スイッチング素子となるトランジスタ31及びダイオード33が直列に設けられている。第1インダクタ35とトランジスタ31のソースとを接続するノードとグランドラインとの間には、第1キャパシタ36が設けられている。第1インダクタ35及び第1キャパシタ36によって、ローパスフィルタが構成されている。
【0068】
トランジスタ31のドレインとダイオード33のカソードを接続するノードは、第2インダクタ37を介して図示しない出力端子に接続され、このノードから出力端子に向けて出力電流が供給される。第2インダクタ37と出力端子とを接続するノードとグランドラインとの間には、第2キャパシタ38が設けられている。第2インダクタ37及び第2キャパシタ38によって、ローパスフィルタが構成されている。
【0069】
電力供給ブロック30において、スイッチング素子となるトランジスタ31のゲートには、D/Aコンバータ25、第2ガルバニック絶縁デバイス52及びドライバ32を介して制御ブロック20からの制御信号が供給され、ドレイン電流が制御される。ドレイン電流は電源ラインから供給されて出力端子に向かって流れ、出力電流を形成する。第2インダクタ37のフライバック電圧により発生した電流は、ダイオード33を通じて還流される。
【0070】
電力供給ブロック30においては、制御ブロック20からの制御信号に従いトランジスタ31が駆動されるためドレイン電流は一般に脈流になるが、第2インダクタ37及び第2キャパシタ38によって構成されたローパスフィルタによって平滑化されて出力端子に送られる。これによって、出力端子からは、電源ラインの電圧よりも降圧された直流電力が供給される。出力電圧は、出力端子に接続する出力ラインから取得され、検出信号として第1ガルバニック絶縁デバイス51を介して制御ブロック20のA/Dコンバータ24に提供される。
【0071】
第4の実施の形態のDC/DCコンバータにおいては、制御ブロック20と電力供給ブロック30とは第1ガルバニック絶縁デバイス51及び第2ガルバニック絶縁デバイス52を介して接続され、互いにガルバニック絶縁されている。ガルバニック絶縁により、電力供給ブロック30で発生したノイズはガルバニック絶縁で阻止されるために制御ブロック20のノイズ耐性が向上し、電力供給ブロック30に障害が生じてもガルバニック絶縁によって遮断されているために制御ブロック20が保護される。
【0072】
第4の実施の形態のDC/DCコンバータにおいては、論理ブロック21は、
図5に示したような構成を有し、第3の実施の形態と同様に動作する。すなわち、ニューラルネットワーク11、モデル生成部12及びモデル切替部14を含む論理ブロック21と、不揮発性メモリ23とを有し、モデル生成部12で第1ガルバニック絶縁デバイス51を介して得られた検出信号による一つの時系列データから様々なモデルを生成し、不揮発性メモリ23に作成したモデルを保存し、モデル切替部14で前記時系列データに基づいて不揮発性メモリ23に保存されたモデルから最適なモデルをリアルタイムで選択し、ニューラルネットワーク11ではモデル切替部14から提供されたモデルを用いて前記時系列データに基づいて電力供給ブロック30の将来の出力電圧を予測した予測値を生成し、この予測値に基づいて予測値が目標値に収束するように適切な制御信号を生成してD/Aコンバータ25を通じて電力供給ブロック30に提供している。
【0073】
したがって、第4の実施の形態のDC/DCコンバータにおいては、検出信号の時系列データに基づいて制御が必要になるタイミングで適切な制御信号を生成することができる。このため、予期せぬ変動に対しても電力供給ブロック30の出力電圧を目標値に迅速に収束させることができ、ひいては変動に伴って生じ得るオーバーシュート、リンギングやノイズ、損失を低減することができる。
【0074】
また、第4の実施の形態のDC/DCコンバータにおいては、スイッチング素子となるトランジスタ31をオン/オフに相当する飽和/遮断領域だけではなく、飽和領域と遮断領域の間の活性領域においても動作させるように制御している。したがって、トランジスタ31のドレイン電流が低減されて電力供給ブロック30の消費電力が低減し、ひいてはDC/DCコンバータの電力変換効率を向上させることができる。
【0075】
(第5の実施の形態)
図8は、第5の実施の形態のDC/DCコンバータの概略的な構成を示す図である。このDC/DCコンバータは、同期整流型の絶縁型降圧DC/DCコンバータを構成している。
【0076】
第5の実施の形態のDC/DCコンバータは、第3の実施の形態のDC/DCコンバータとは、制御ブロック20と電力供給ブロック30とがガルバニック絶縁されている点、電力供給ブロック30においてダイオードに代えて第2トランジスタ39が設けられ、第1トランジスタ34及び第2トランジスタ39がそれぞれハイサイド及びローサイドのスイッチング素子を構成している点が相違しているが、他の構成はほぼ共通である。簡単のため、第3の実施の形態のDC/DCコンバータと共通する構成要素については、第3の実施の形態と同一の参照番号を付すことにする。
【0077】
制御ブロック20の論理ブロック21からは、電力供給ブロック30において第1スイッチング素子となる第1トランジスタ34及び第2スイッチング素子となる第2トランジスタ39を制御するために二組のデジタルデータによる二つの制御信号が生成され、これらの制御信号はそれぞれ第1D/Aコンバータ27及び第2D/Aコンバータ28、第2ガルバニック絶縁デバイス52及び第3ガルバニック絶縁デバイス53、第1ドライバ41及び第2ドライバ42を介して第1トランジスタ34及び第2トランジスタ39のゲートに供給されている。
【0078】
電力供給ブロック30から制御ブロック20に提供される検出信号のラインには、電力供給ブロック30の出力ラインと制御ブロック20のA/Dコンバータ24との間に第1ガルバニック絶縁デバイス51が設けられている。また、前述のように、制御ブロック20から電力供給ブロック30に供給される二つの制御信号のラインには、それぞれ制御ブロック20の第1D/Aコンバータ27及び第2D/Aコンバータ28と電力供給ブロック30の第1ドライバ41及び第2ドライバ42との間に第2ガルバニック絶縁デバイス52及び第3ガルバニック絶縁デバイス53が設けられている。第1ガルバニック絶縁デバイス51、第2ガルバニック絶縁デバイス52及び第3ガルバニック絶縁IC53は、ガルバニック絶縁ロジックICによって構成してもよい。
【0079】
制御ブロック20は、モデル作成、モデル切替及びニューラルネットワークの機能を有する論理ブロック21と、モデルを保存する論理ブロック21に提供する不揮発性メモリ23とを有している。論理ブロック21及び不揮発性メモリ23は、
図5に示したような構成を有するが、ニューラルネットワーク11が電力供給ブロック30において第1スイッチング素子となる第1トランジスタ34及び第2スイッチング素子となる第2トランジスタ39をそれぞれ制御するために二組のデジタルデータによる二つの制御信号を生成し、これら二組のデジタルデータをアナログ信号に変換するため、A/Dコンバータ24に代わって第1D/Aコンバータ27及び第2D/Aコンバータ28を有する点において相違している。他の構成は第3の実施の形態と同様であり、第3の実施の形態と同様に動作する。
【0080】
制御ブロック20は、電力供給ブロック30から第1ガルバニック絶縁デバイス51を介して提供されたアナログ信号による検出信号をデジタルデータに変換して論理ブロック21に提供するA/Dコンバータ24と、この制御ブロック20に電源を供給するシステム電源用DC/DCコンバータ26をさらに有している。
【0081】
制御ブロック20は、論理ブロック21に不揮発性メモリ23、A/Dコンバータ24、第1D/Aコンバータ27及び第2D/Aコンバータ28なども加えて半導体集積回路によるデバイスとして構成してもよいし、論理ブロック21、不揮発性メモリ23、A/Dコンバータ24、第1D/Aコンバータ27、第2D/Aコンバータ28及びシステム電源用DC/DCコンバータ26を個別のデバイスで構成してもよい。
【0082】
電力供給ブロック30において、電源ラインからグランドラインの間に、第1インダクタ35、ハイサイドのスイッチング素子となる第1トランジスタ34、ローサイドのスイッチング素子となる第2トランジスタ39が直列に設けられている。第1トランジスタ34及び第2トランジスタ39は、PチャネルのMOSFETであってもよい。第1インダクタ35と第1トランジスタ34のソースとを接続するノードとグランドラインとの間には、第1キャパシタ36が設けられている。第1インダクタ35及び第1キャパシタ36によって、ローパスフィルタが構成されている。
【0083】
第1トランジスタ34のドレインと第2トランジスタ39のドレインとを接続するノードは、第2インダクタ37を介して図示しない出力端子に接続され、このノードから出力端子に向けて出力電流が供給される。第2インダクタ37と出力端子とを接続するノードとグランドラインとの間には、第2キャパシタ38が設けられている。第2インダクタ37及び第2キャパシタ38によって、ローパスフィルタが構成されている。
【0084】
電力供給ブロック30において、第1スイッチング素子となる第1トランジスタ34及び第2スイッチング素子となる第2トランジスタ39のゲートには、それぞれ第1D/Aコンバータ27、第2ガルバニック絶縁デバイス52及び第1ドライバ41、第2D/Aコンバータ28、第3ガルバニック絶縁デバイス53及び第2ドライバ42を介して制御ブロック20からの制御信号が供給され、ドレイン電流が制御される。第1トランジスタ34のドレイン電流は電源ラインから供給されて出力端子に向かって流れる。第2トランジスタ39は、第2インダクタ37のフライバック電圧により発生した電流をドレイン電流として還流させる。
【0085】
電力供給ブロック30においては、制御ブロック20からの制御信号に従い第1トランジスタ34及び第2トランジスタ39が駆動されるため、第1トランジスタ34及び第2トランジスタ39のドレイン電流の和は一般に脈流になるが、第2インダクタ37及び第2キャパシタ38によって構成されたローパスフィルタによって平滑化されて出力端子に送られる。これによって、出力端子からは、電源ラインの電圧よりも降圧された直流電力が供給される。出力電圧は、出力端子に接続する出力ラインから取得され、検出信号として第1ガルバニック絶縁デバイス51を介して制御ブロック20のA/Dコンバータ24に提供される。
【0086】
第5の実施の形態のDC/DCコンバータにおいては、制御ブロック20と電力供給ブロック30とは第1ガルバニック絶縁デバイス51、第2ガルバニック絶縁デバイス52及び第3ガルバニック絶縁デバイス53を介して接続され、互いにガルバニック絶縁されている。ガルバニック絶縁により、電力供給ブロック30で発生したノイズはガルバニック絶縁で阻止されるために制御ブロック20のノイズ耐性が向上し、電力供給ブロック30に障害が生じてもガルバニック絶縁によって遮断されているために制御ブロック20が保護される。
【0087】
第5の実施の形態のDC/DCコンバータにおいては、第3の実施の形態のDC/DCコンバータ及び第4の実施の形態のDC/DCコンバータにおけるダイオード33に代えて第2トランジスタ39を採用し、電源ラインとグランドラインの間にハイサイドの第1トランジスタ34とローサイドの第2トランジスタ39を直列に設けた同期整流型の構造を採用している。第2トランジスタ39は、オン状態における電圧降下をダイオード33に比べて小さく抑えることができ、電力供給ブロック30の消費電力が低減され、ひいてはDC/DCコンバータの電力変換効率を向上させることができる。
【0088】
第5の実施の形態のDC/DCコンバータにおいては、論理ブロック21は、
図5に示したような構成を有し、第3の実施の形態と同様に動作する。すなわち、ニューラルネットワーク11、モデル生成部12及びモデル切替部14を含む論理ブロック21と、不揮発性メモリ23とを有し、モデル生成部12で第1ガルバニック絶縁デバイス51を介して得られた検出信号による一つの時系列データから様々なモデルを生成し、不揮発性メモリ23に作成したモデルを保存し、モデル切替部14で前記時系列データに基づいて不揮発性メモリ23に保存されたモデルから最適なモデルをリアルタイムで選択し、ニューラルネットワーク11ではモデル切替部14から提供されたモデルを用いて前記時系列データに基づいて電力供給ブロック30の将来の出力電圧を予測した予測値を生成し、この予測値に基づいて予測値が目標値に収束するように適切な制御信号を生成して第1D/Aコンバータ27及び第2D/Aコンバータ28を通じて電力供給ブロック30に提供している。
【0089】
したがって、第5の実施の形態のDC/DCコンバータにおいては、検出信号の時系列データに基づいて制御が必要になるタイミングで適切な制御信号を生成することができる。このため、予期せぬ変動に対しても電力供給ブロック30の出力電圧を目標値に迅速に収束させることができ、ひいては変動に伴って生じ得るオーバーシュート、リンギングやノイズ、損失を低減することができる。
【0090】
また、第5の実施の形態のDC/DCコンバータにおいては、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子となる第1トランジスタ34及び第2トランジスタ39をオン/オフに相当する飽和/遮断領域だけではなく、飽和領域と遮断領域の間の活性領域においても動作させるように制御している。したがって、第1トランジスタ34及び第2トランジスタ39のドレイン電流が低減されて電力供給ブロック30の消費電力が低減し、ひいてはDC/DCコンバータの電力変換効率を向上させることができる。
【0091】
(比較例)
図9は、比較例のDC/DCコンバータの概略的な構成を示す図である。このDC/DCコンバータは、PID制御を用いた非同期整流型の降圧DC/DCコンバータを構成している。
【0092】
このDC/DCコンバータは、制御ブロック100と、制御ブロック100から供給された制御信号に基づいて駆動される電力供給ブロック30とを有している。電力供給ブロック30は、第3の実施の形態のDC/DCコンバータの電力供給ブロック30と同様の構成を有するので、簡単のために共通する構成要素には同一の符号を付すことにする。
【0093】
制御ブロック100は、論理ブロック101を有している。論理ブロック101は、PIDモデルに従い電力供給ブロック30を制御するための制御信号を生成するPIDモデル部と、PIDモデル部で生成された制御信号に基づいて電力供給ブロック30を駆動するためのパルス幅変調(PWM)による駆動パルスを発生するパルス発生部とを有している。PIDモデル部では、目標値との偏差、その積分及び微分について、それぞれの係数をパラメータとしてフィードバック制御している。PIDモデル部は、電力供給ブロック30の出力電圧に基づいてPIDモデルを用いて電力供給ブロック30の出力電圧が目標値に追随するように制御信号を生成する。パルス発生部は、PIDモデル部で生成した制御信号をPWM変調して電力供給ブロック30を駆動するための駆動パルスを発生している。
【0094】
制御ブロック100は、PIDモデル部で用いるパラメータ等を格納するコンフィギュレーションROM102と、この制御ブロック100に電源を供給するためのシステム電源用DC/DCコンバータ103とを有している。コンフィギュレーションROM102は、格納したPIDモデルのパラメータを論理ブロック101のPIDモデル部に提供することができる。コンフィギュレーションROM102に格納されたPIDモデルのパラメータは、必要に応じて更新されてもよい。
【0095】
電力供給ブロック30において、電源ラインからグランドラインの間に、第1インダクタ35、スイッチング素子となるトランジスタ31及びダイオード33が直列に設けられている。トランジスタ31はPチャネルのMOSFETであってもよく、ダイオード33はショットキーダイオードであってもよい。第1インダクタ35とトランジスタ31のソースとを接続するノードとグランドラインとの間には、第1キャパシタ36が設けられている。第1インダクタ35及び第1キャパシタ36によって、ローパスフィルタが構成されている。このローパスフィルタは、電源ラインからのノイズ等を遮断している。
【0096】
トランジスタ31のドレインとダイオード33のカソードとを接続するノードは、第2インダクタ37を介して図示しない出力端子に接続され、このノードから出力端子に向けて出力電流が供給される。第2インダクタ37と出力端子とを接続するノードとグランドラインとの間には、第2キャパシタ38が設けられている。第2インダクタ37及び第2キャパシタ38によって、ローパスフィルタが構成されている。
【0097】
電力供給ブロック30において、スイッチング素子となるトランジスタ31のゲートには、ドライバ32を通じて制御ブロック100からの駆動パルスが供給され、ドレイン電流が制御される。ドレイン電流は電源ラインから供給されて出力端子に向かって流れ、出力電流を形成する。第2インダクタ37のフライバック電圧により発生した電流は、ダイオード33を通じて還流される。
【0098】
電力供給ブロック30においては、制御ブロック100からの駆動パルスに従いトランジスタ31が駆動されるためドレイン電流は一般に脈流になるが、第2インダクタ37及び第2キャパシタ38によって構成されたローパスフィルタによって平滑化されて出力端子に送られる。これによって、出力端子からは、電源ラインの電圧よりも降圧された直流電力が供給される。出力電圧は、出力端子に接続する出力ラインから取得され、検出信号として制御ブロック100に提供される。
【0099】
図10は、比較例のDC/DCコンバータにおける波形を示すタイムチャートである。
図10(a)は、電力供給ブロック30の出力端子を通じて流れた負荷電流I
Lの時間変化を示している。一定の期間にわたって、負荷電流I
Lがパルス状に増加したことが見られる。
図10(b)は、制御ブロック20によって生成された制御信号の駆動パルスの時間変化を示している。制御信号は、PWMによる駆動パルスとして構成され、スイッチング素子であるトランジスタのオン/オフを制御している。
【0100】
図10(b)には、トランジスタ31がオンとなるレベルとオフとなるレベルが示されている。これらのオン/オフのレベルを参照すると、トランジスタ31は駆動パルスに従い飽和領域/遮断領域の二準位でオン/オフしていることが見られる。
【0101】
図10(c)には、電力供給ブロック30の出力電圧の時間変化の一例を示している。この例は、PIDモデルにおいて変位に対応するパラメータが小さく、積分及び微分に対応するパラメータが大きい場合である。負荷電流I
Lの立ち上がりで第1オーバーシュートP3、負荷電流I
Lの立ち下がりで第2オーバーシュートP4が見られるが、第1オーバーシュートP3及び第2オーバーシュートP4のいずれについても、電圧の変動は比較的小さく、目標値に収束するまでの時間が長いことが見られる。
【0102】
図10(d)には、電力供給ブロック30の出力電圧の時間変化の他の例を示している。この例は、PIDモデルにおいて変位に対応するパラメータが大きく、積分及び微分に対応するパラメータが小さい場合である。負荷電流I
Lの立ち上がりで第1オーバーシュートP5、負荷電流I
Lの立ち下がりで第2オーバーシュートP6が見られるが、第1オーバーシュートP5及び第2オーバーシュートP6のいずれについても、収束するまでの時間は比較的短いが、電圧の変動は大きいことが見られる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
この発明は、DC/DCコンバータ又はAC/DCコンバータに利用することができる。
【符号の説明】
【0104】
10 制御装置
11 ニューラルネットワーク
12 モデル生成部
13 モデル保存部
14 モデル切替部
15 波形生成部
20 制御ブロック
21 論理ブロック
23 不揮発性メモリ
24 A/Dコンバータ
25 D/Aコンバータ
30 電力供給ブロック
31 トランジスタ
33 ダイオード