(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】管集合体、及び、複層管
(51)【国際特許分類】
F16L 9/19 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
F16L9/19 B
(21)【出願番号】P 2020139009
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100203460
【氏名又は名称】加藤 肇
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳二
(72)【発明者】
【氏名】坂崎 義輝
(72)【発明者】
【氏名】溝口 隆一
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-199531(JP,A)
【文献】特開2001-221367(JP,A)
【文献】特開2017-071126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の管が、囲み部材により側面が囲われて束ねられている管集合体であって、
前記複数本の管のうち
の2本の管
は外面どうしが接触可能であり、当該2本の管の相対的な軸方向への摺動抵抗を軽減する摩擦軽減手段
が前記2本の管の少なくとも一方の管に設けられている、管集合体。
【請求項2】
複数本の管が、囲み部材により側面が囲われて束ねられている管集合体であって、
前記複数本の管のうちの
すべてが、
管どうしの相対的な軸方向への摺動抵抗を軽減する摩擦軽減手段を備える、管集合体。
【請求項3】
複数本の管が、囲み部材により側面が囲われて束ねられている管集合体であって、
前記複数本の管のうち
の2本の管
は外面どうしが接触可能であり、当該2本の管の相対的な軸方向への摺動抵抗を軽減する摩擦軽減手段
が前記2本の管のうちの一方のみに設けられている、管集合体。
【請求項4】
前記摩擦軽減手段は、前記摩擦軽減手段が設けられていない管の管外面よりも表面粗さが粗い粗外面である、請求項
3に記載の管集合体。
【請求項5】
前記摩擦軽減手段は、管内面よりも表面粗さが粗い粗外面である、請求項
1~4のいずれか1項に記載の管集合体。
【請求項6】
前記摩擦軽減手段が設けられている管は、管内面を形成している内層と管外面を形成している外層とを有する複層管であり、
前記外層の材料は、前記内層の材料よりも摺動抵抗を軽減可能な面を形成可能である請求項
1~5のいずれか1項に記載の管集合体。
【請求項7】
前記複層管は、前記内層と前記外層とが径方向に積層された2層管である、請求項
6に記載の管集合体。
【請求項8】
前記摩擦軽減手段は、軸方向に連続して設けられている、請求項1~
7のいずれか1項に記載の管集合体。
【請求項9】
複数本の管が、囲み部材により側面が囲われて束ねられている管集合体であって、
前記複数本の管のうちの少なくとも2本の管の間
に介在し、当該2本の管の相対的な軸方向への摺動抵抗を軽減する
介在体を備え、その介在体は前記2本の管の軸方向に延びる帯状である、管集合体。
【請求項10】
前記介在体の前記2本の管の少なくとも一方との接触箇所の摺動抵抗は、前記2本の管が接する場合の摺動抵抗よりも低い、請求項
9に記載の管集合体。
【請求項11】
前記介在体は
、前記2本の管の隣接方向に複数枚が重畳しており、
前記介在体どうしの摺動抵抗は、前記介在体と前記2本の管との摺動抵抗よりも低い、請求項
9に記載の管集合体。
【請求項12】
前記介在体と前記管との接触箇所の少なくとも一方において、
前記介在体は、表面粗さが前記管の表面粗さよりも粗い粗外面を有する、請求項
9又は10に記載の管集合体。
【請求項13】
前記粗外面は、比較対象である面の表面粗さの10倍以上の表面粗さである請求項
4、5、12のいずれか1項に記載の管集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体等が通過可能な内部空間を有する管を複数備える管集合体、及び、流体等が通過可能な内部空間を有する複層管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体等が通過可能な内部空間を有する管を複数纏めて管集合体とし、その管集合体を囲み部材内に配設している。このように管集合体を配設するうえで、配設箇所の形状等に応じて管集合体を屈曲又は湾曲させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の管集合体を配設する際に、配設箇所の形状等に応じて管集合体を屈曲又は湾曲させる必要がある。この場合には、管集合体の屈曲箇所又は湾曲箇所において管集合体を構成している管どうしが摺動するため、その際の摺動抵抗により屈曲又は湾曲に必要な応力が増加する場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、屈曲又は湾曲させる場合に必要な応力を低減可能な管集合体、及び、その管集合体を構成する複層管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の構成は、管集合体であって、複数本の管が、囲み部材により側面が囲われて束ねられている管集合体であって、複数本の管のうちの少なくとも2本の管において、当該2本の管の相対的な軸方向への摺動抵抗を軽減する摩擦軽減手段を備える。
【0007】
第1の構成では、摩擦軽減手段を備えているため、曲げる際に必要な応力を低減することができる。
【0008】
第2の構成は、第1の構成に加えて、複数本の管は、相互に離間しないように、囲み部材により囲まれている。
【0009】
また、第3の構成は、第1又は第2の構成に加えて、囲み部材は、長尺筒状であり、複数本の管は当該囲み部材内に配置されている。
【0010】
第2の構成及び第3の構成では、管を曲げる際の管どうしの離間も抑制することが可能となる。
【0011】
第4の構成は、第1~第3のいずれかの構成に加えて、2本の管は、外面どうしが接触可能であり、摩擦軽減手段は、当該2本の管のうち、少なくとも一方の管に設けられている。
【0012】
第4の構成では、摩擦軽減手段を管に設けているため、別途摩擦軽減手段を用意する必要がなく、構成全体を簡略化することができる。
【0013】
第5の構成は、第1~第4のいずれかの構成に加えて、摩擦軽減手段は、複数本の管のすべてに設けられている。
【0014】
3本以上の管により管集合体を構成する場合、一部の管に摩擦軽減手段が設けられていなければ、摩擦軽減手段が設けられていない管どうしが当接しないように配置を考慮したり、摩擦軽減手段が設けられていない管どうしの摺動が生じないように曲げる必要があったりする。この点、第5の構成では、特に3本以上の管により管集合体を構成する場合に配置を考慮する必要がないため、管集合体の製造工程を簡素化することができる。
【0015】
第6の構成は、第1~第4のいずれかの構成に加えて、2本の管は、外面どうしが接触可能であり、摩擦軽減手段は、当該2本の管のうち、1本のみに設けられている。
【0016】
第6の構成では、一方の管については摩擦軽減手段を備えない公知の管を採用することが可能となる。
【0017】
第7の構成は、第6の構成に加えて、摩擦軽減手段は、摩擦軽減手段が設けられていない管の管外面よりも表面粗さが粗い粗外面である。
【0018】
第7の構成では、管の外面の構造により摩擦軽減手段を構成することが可能となる。
【0019】
第8の構成は、第4~第7のいずれかの構成に加えて、摩擦軽減手段は、管内面よりも表面粗さが粗い粗外面である。
【0020】
第8の構成では、管の内部を通過する物体に対する抵抗を抑制しつつ、粗外面により管どうしの摩擦を軽減することができる。
【0021】
第9の構成は、第4~第8のいずれかの構成に加えて、摩擦軽減手段が設けられている管は、管内面を形成している内層と管外面を形成している外層とを有する複層管であり、外層の材料は、内層の材料よりも摺動抵抗を軽減可能な面を形成可能である。
【0022】
第9の構成では、最内層の材料として、管内部を通過する物体に対する抵抗の抑制に適した材料を採用することができ、且つ、最外層の材料として、摩擦軽減手段の形成に適した材料を採用することができる。
【0023】
第10の構成は、第9の構成に加えて、複層管は、内層と外層とが径方向に積層された2層管である。
【0024】
第10の構成では、第9の構成と同様に、最内層の材料として、管内部を通過する流体等に対する抵抗の抑制に適した材料を採用することができ、且つ、最外層の材料として、摩擦軽減手段の形成に適した材料を採用することができる。加えて、内層と外層の2層により管を構成しているため、製造コストを抑制することができる。
【0025】
第11の構成は、第4~第10のいずれかの構成に加えて、摩擦軽減手段は、軸方向に連続して設けられている。
【0026】
第11の構成では、管をいずれの箇所で湾曲した場合でも摺動抵抗の軽減効果を得ることができる。
【0027】
第12の構成は、第1~第12のいずれかの構成に加えて、2本の管は、同一の材料により管内面が形成されている。
【0028】
管内面が異なる材料で形成されていれば、管内部に物体を通過させる場合に、通過させる管を選択する必要が生じる場合がある。第12の構成では、管内面が同一の材料により形成されているため、物体をいずれの管の内部を通過させたとしても同等であり、管内部に物体を通過させる場合の手間を軽減することができる。
【0029】
第13の構成は、第1~第3のいずれかの構成に加えて、摩擦軽減手段は、2本の管の間に介在する介在体である。
【0030】
第13の構成では、互いに隣接した場合の摺動抵抗が高い公知の管を利用する場合であっても、介在体により摺動抵抗を低減可能となる。
【0031】
第14の構成は、第13の構成に加えて、介在体は、2本の管の軸方向に連続して設けられている。
【0032】
第14の構成では、第11の構成と同様に、管をいずれの箇所で湾曲した場合でも摺動抵抗の軽減効果を得ることができる。
【0033】
第15の構成は、第13又は第14の構成に加えて、介在体は、2本の管の軸方向に延びる帯状であり、介在体の2本の管の少なくとも一方との接触箇所の摺動抵抗は、2本の管が接する場合の摺動抵抗よりも低い。
【0034】
第15の構成では、第13の構成と同様に、互いに隣接した場合の摺動抵抗が高い公知の管を利用する場合であっても、介在体により摺動抵抗を低減可能となる。
【0035】
第16の構成は、第13又は第14の構成に加えて、介在体は、2本の管の軸方向に延びる帯状であり、且つ、2本の管の隣接方向に複数枚が重畳しており、介在体どうしの摺動抵抗は、介在体と2本の管との摺動抵抗よりも低い。
【0036】
第16の構成では、管と介在体との相対位置のずれを抑制しつつ、2本の管の相対位置の変化を好適に許容することができる。
【0037】
第17の構成は、第13~第15のいずれかの構成に加えて、介在体と管との接触箇所の少なくとも一方において、介在体は、表面粗さが管の表面粗さよりも粗い粗外面を有する。
【0038】
第17の構成では、介在体に粗外面を形成することのみで摺動抵抗を抑制することができるため、管集合体の製造コストを抑制することができる。
【0039】
第18の構成は、第7、8、17のいずれかの構成に加えて、粗外面は、比較対象である面の表面粗さの10倍以上の表面粗さである。
【0040】
第18の構成では、比較対象の面である平滑面の平滑化による機能を維持しつつ、粗外面の効果を得ることができる。
【0041】
第19の構成は、第1~第3の構成に加えて、摩擦軽減手段は、2本の管の少なくとも一方の外面に塗布または付着されている。
【0042】
第19の構成では、互いに隣接した場合の摺動抵抗が高い公知の管を利用する場合であっても、摩擦軽減手段により摺動抵抗を低減可能となる。
【0043】
第20の構成は、異なる合成樹脂材料が径方向に積層され、管の内面を構成している内層と管の外面を構成している外層とを有する複層管であって、外面の表面粗さは、内面の表面粗さよりも10倍以上粗い。
【0044】
第20の構成では、複層管どうし、または複層管と単層管とが当接して摺動する際の摺動抵抗を抑制しつつ、複層管の内部を通過する流体等に対する抵抗の抑制に適した材料を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】第1実施形態に係る管集合体の外観を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る管集合体における、菅の断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る管集合体の粗外面を示す図である。
【
図4】第2実施形態に係る管集合体の断面図である。
【
図5】第3実施形態に係る管集合体の断面図である。
【
図6】第4実施形態に係る管集合体の断面図である。
【
図7】他の実施形態Aに係る管集合体の断面図である。
【
図8】他の実施形態Bに係る管集合体の断面図である。
【
図9】他の実施形態Cに係る管集合体の断面図である。
【
図10】他の実施形態Dに係る管集合体の断面図である。
【
図11】他の実施形態Eに係る管集合体の断面図である。
【
図12】他の実施形態Fに係る管集合体の断面図である。
【
図13】他の実施形態Gに係る管集合体の断面図である。
【
図14】他の実施形態Hに係る管集合体の断面図である。
【
図15】他の実施形態Iに係る管集合体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
<第1実施形態>
本実施形態に係る管集合体10について、
図1~
図3を参照して説明する。本実施形態に係る管集合体10は、2本の長尺円筒状の管20と、その管20の周囲を囲んで束ねる囲み部材30とにより構成されている。囲み部材30は、アルミニウムで形成された薄膜上のテープであり、2本の管20の外周に巻き回されている。この囲み部材30により、管20どうしの離間(軸心の離間)が抑制されている。囲み部材30と管20とは接着されておらず、管20は囲み部材30内で、他方の管20及び囲み部材30に対して軸方向へ向けて相対的に摺動可能となっている。
【0047】
管20は、内面を構成している内層21と、外面を構成している外層22とにより構成される2層構造である。内層21は、全周に亘って径方向に略均一な厚みを有しており、その材料は、非架橋ポリエチレン樹脂(PE-RT)である。外層22も、全周に亘って径方向に略均一な厚みを有しており、その材料は、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)である。内層21の厚みは1.5mmであり、外層22の厚みは50μmである。この管20は、非架橋ポリエチレン樹脂と高密度ポリエチレン樹脂とを円筒状に共押し出しする共押出成形により、形成される。
【0048】
管20の外表面には、全面に細かな凹凸が形成されており、その凹凸により粗外面23が構成されている。この粗外面23の凹凸は、共押出成形において押し出して硬化させる過程で、材料の特性により形成される。
【0049】
粗外面23について、
図3を参照して説明する。粗外面23は、連続する凹凸により形成されており、円錐状、角錐状等、種々の公知の凹凸形状である。本実施形態では、この凹凸の凸部の頂点から凹部の底までの高さDの平均値を、表面粗さとして定義する。本実施形態における表面粗さは、1.5μmである。
【0050】
一方、管20の内面には、粗外面23よりも滑らかな面である平滑面が形成されている。この平滑面にも、僅かな凹凸は存在するものの、その凹凸の表面粗さは0.03~0.05μmである。平滑面の凹凸は、共押出成形において押し出して硬化させる過程で、材料の特性により形成される。すなわち、粗外面23の表面粗さは平滑面の表面粗さの30~50倍程度となっている。
【0051】
以上説明した管20どうしが囲み部材30により束ねられて管集合体10を構成している場合、管集合体10を曲げる際には、外表面どうしの摺動抵抗が大きいほど曲げに必要な応力がより必要となり、外表面どうしの摺動抵抗が小さいほど曲げに必要な応力は少なくて済む。管20は外表面に粗外面23を有しているため、管20どうしの接触面積は粗外面23を有さない場合よりも小さくなり、それゆえに、摺動抵抗は小さくなる。これにより、管集合体10を曲げる際に必要な応力が低減される。
【0052】
図1における上下方向に向けて管集合体10を湾曲させる場合には、管20どうしの摺動は限定的である。一方、
図1における左右方向へ管集合体10を湾曲させる場合には、管20どうしが摺動するため、摺動抵抗が大きいほどより大きな応力が必要となる。この点、外表面の粗外面23により摺動抵抗が抑制され、必要な応力を好適に低減することができる。なお、粗外面23により摺動抵抗を抑制可能であるため、粗外面23及び/又はその粗外面23を形成している外層22を、摩擦軽減手段と称することができる。また、摩擦軽減手段が管20に設けられているため、管20と摩擦軽減手段の相対位置は変化しないということもできる。
【0053】
なお、以上説明した粗外面23の表面粗さ及び平滑面の表面粗さの数値は、あくまで一例であって、種々の変更が可能である。疎外面23の表面粗さは、平滑面の表面粗さよりも大きい値であれば一定の効果を得ることができるが、平滑面の平滑化による効果を同時に得るならば、粗外面23は、平滑面の10倍以上の表面粗さを有していることが好ましい。すなわち、平滑面の表面粗さが0.05μm程度であれば、疎外面23の表面粗さはその10倍以上の0.5μm以上であることが好ましい。一方、表面粗さが数十μmとなれば、他方の管20と凹凸が噛み合い、摺動抵抗が増加する可能性がある。また、内層21及び外層22の厚みについても、種々の変更が可能である。
【0054】
また、本実施形態に係る管集合体10、及び、複層管20は、摺動抵抗を抑制するという効果に加えて以下の効果を奏する。
【0055】
・囲み部材30により、管20どうしの離間を抑制しつつ、管20を曲げることが可能である。
【0056】
・摩擦軽減手段としての粗外面23を管20自体に設けているため、別途摩擦軽減手段を用意する必要がなく、構成全体を簡略化することができる。
【0057】
・管20の内面を平滑面としているため、管20の内部を流体などが通過する場合の抵抗を抑制しつつ、粗外面23により管20どうしの摩擦を軽減することができる。
【0058】
・内層21の材料として、管20内部を通過する流体等物体に対する抵抗の抑制に適した材料を採用することができ、且つ、外層22の材料として、粗外面23の形成に適した材料を採用することができる。また、2層管であるため、3層以上の層を有する管よりも製造コストを抑制することができる。
【0059】
・2本の管20を同一のものとしているため、物体をいずれの管20の内部を通過させたとしても同等であり、管20内部に物体を通過させる場合の区別の手間などを軽減することができる。
【0060】
・粗外面23の表面粗さを平滑面の表面粗さの30倍程度としているため、平滑面の平滑化による機能を維持しつつ、粗外面23の効果を得ることができる。
【0061】
<第2実施形態>
本実施形態では、管集合体100の構成が第1実施形態と異なっている。本実施形態に係る管集合体100について、
図4を参照して説明する。
【0062】
管集合体100は、2本の管20,40を備えており、これら2本の管20、40は、第1実施形態と同様に、囲み部材30により束ねられている。この2本の管20,40のうち、一方の管20は第1実施形態で示した管20と同等の2層構造の管であるため、複層管20と称し、具体的な説明を省略する。
【0063】
他方の管40は、1種類の材料で全体が形成されている管であるため、単層管40と称する。単層管40の材料は、複層管20の内層21と同じ非架橋ポリエチレン樹脂(PE-RT)であり、押出成形により形成されている。この単層管40の内面及び外面には、単層管20の内面と同様に、押出成形の過程での材料の特性により、平滑面が形成されている。
【0064】
以上のように構成されている複層管20と単層管40とが当接して摺動する場合、単層管40どうしが当接する場合よりも当接面積が小さくなり、摺動抵抗も小さくなる。したがって、第1実施形態と同様に、管集合体100を湾曲させる際に管20,40が摺動したとしてもより小さな応力で湾曲させることができる。
【0065】
また、本実施形態では、単層管40の外面には粗外面が形成されていなくてもよいため、その単層管40には公知の管を採用することが可能となる。
【0066】
なお、本実施形態に係る複層管20の粗外面23の表面粗さについては、第1実施形態に準ずるが、単層管40の外面の平滑面と噛み合うことがないため、表面粗さの上限値をより大きくすることができる。
【0067】
上記構成により、本実施形態に係る管集合体100は、第1実施形態に係る管集合体10が奏するに加えて、以下の効果を奏する。
【0068】
・複層管20と単層管40は外面の構造は異なっているものの、内面の構造は同一のものであるため、物体をいずれの管20の内部を通過させたとしても同等であり、第1実施形態と同様に、管20内部に物体を通過させる場合の区別の手間などを軽減することができる。
【0069】
<第3実施形態>
本実施形態に係る管集合体200について、
図5を参照して説明する。本実施形態に係る管集合体200は、第2実施形態で示した単層管40を2本備えて構成されており、この2本の単層管40は囲み部材30により束ねられている。単層管40の間には、管40の延在方向へ延びる長尺板状の介在体50が、単層管40と摺動可能に配置されている。
【0070】
この介在体50の材料は、例えば、第1実施形態における複層管20の外層22の材料と同様に高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)であり、その両面には、表面粗さが1.5μm程度の粗外面が形成されている。この粗外面は、第1実施形態に係る複層管20の粗外面23と同様に、高密度ポリエチレン樹脂を金型に流し込んで硬化させる過程で、材料の特性により形成される。なお、この介在体50の粗外面の表面粗さの数値範囲については、第1実施形態に準ずるものとすればよい。
【0071】
以上のように構成されている管集合体を湾曲させる場合、単層管40は介在体50の粗外面に当接しているため、第2実施形態において単層管40が複層管20の粗外面23に当接する場合と同様に、摺動抵抗が軽減される。この摺動抵抗の軽減は、2本の単層管40の軸方向への相対的な移動の際の抵抗が軽減されることを意味している。したがって、管集合体200を曲げる際に必要な応力を、第1実施形態及び第2実施形態と同様に軽減することができる。
【0072】
上記構成により、本実施形態に係る管集合体200は、第1実施形態及び第2実施形態に準ずる効果の一部に加えて、以下の効果を奏する。
【0073】
・互いに隣接した場合の摺動抵抗が高い公知の単層管40を利用する場合であっても、介在体50により摺動抵抗を低減可能となる。
【0074】
・介在体50に粗外面を形成することのみで摺動抵抗を抑制することができるため、管集合体200の製造コストを抑制することができる。
【0075】
<第4実施形態>
本実施形態に係る管集合体300について、
図6を参照して説明する。本実施形態に係る管集合体300は、単層管40の延在方向へ延びる長尺板状の介在体60が2枚配置されており、この介在体60の構造が第3実施形態と異なっている。
【0076】
介在体60は2つの異なる材料により形成された層が積層された2層構造であり、第1層61は、非架橋ポリエチレン樹脂(PE-RT)により形成されており、第2層62は、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)により形成されている。第1層61の表面は表面粗さが0.03~0.05μm程度の平滑面であり、第2層62の表面は表面粗さが1.5μm程度の粗外面である。この介在体60は、第1層61側が単層管40に当接し、第2層62側どうしが対向して当接している。すなわち、介在体60の平滑面が単層管40の外面の平滑面と当接し、介在体60の粗外面どうしが当接している。
【0077】
以上のように構成されているため、管集合体300を湾曲させる場合、単層管40と介在体60との相対位置のずれは、摺動抵抗によりを抑制される。一方、介在体60どうしの摺動抵抗は軽減されているため、2本の単層管40の相対位置の変化の際に必要な応力を軽減することができる。また、第1実施形態及び第2実施形態に準ずる効果も奏することができる。
【0078】
<他の実施形態>
・他の実施形態Aに係る管集合体10aを、
図7を用いて説明する。他の実施形態Aに係る管集合体10aは、3つの複層管20により構成されており、各複層管20の中心軸が正三角形の頂点を構成するように、配置されている。これら複層管20どうしの摺動抵抗は第1実施形態と同様に抑制されるため、湾曲に必要な応力を低減することができる。
【0079】
・他の実施形態Bに係る管集合体10bを、
図8を用いて説明する。他の実施形態Bに係る管集合体10c、1本の複層管20と、2本の単層管40とにより構成されており、3本の管20,40の中心軸が正三角形の頂点を構成するように、配置されている。これら複層管20と単層管40との摺動抵抗は、第2実施形態と同様に抑制される。したがって、特に単層管40どうしが摺動しない方向へ曲げる場合に、湾曲に必要な応力を低減することができる。
【0080】
・他の実施形態Cに係る管集合体10cを、
図9を用いて説明する。他の実施形態Cに係る管集合体10cは、2本の複層管20と、1本の単層管40とにより構成されており、3本の管20,40の中心軸が正三角形の頂点を構成するように、配置されている。これら複層管20と単層管40との摺動抵抗は、第2実施形態と同様に抑制される。したがって、いずれの方向に曲げる場合においても、湾曲に必要な応力を低減することができる。
【0081】
・他の実施形態Dに係る管集合体10dを、
図10を用いて説明する。他の実施形態Dに係る管集合体10dは、2本の複層管20と、1本の単層管40とにより構成されており、1本の単層管40の両側に複層管20が位置するように、3本が並列に配置されている。複層管20と単層管40との摺動抵抗は第2実施形態と同様に抑制されため、湾曲に必要な応力を低減することができる。
【0082】
・他の実施形態Eに係る管集合体10eを、
図11を用いて説明する。他の実施形態Eに係る管集合体10eは、1本の複層管20と、2本の単層管40とにより構成されており、1本の複層管20の両側に単層管40が位置するように、3本が並列に配置されている。両側の単層管40は複層管20のみに接しているため、摺動抵抗は第2実施形態と同様に抑制される。したがって、湾曲に必要な応力を低減することができる。
【0083】
・他の実施形態Fに係る管集合体10fを、
図12を用いて説明する。他の実施形態Fに係る管集合体10fは、4本の複層管20により構成されており、4本の複層管20の中心軸が正方形の頂点を構成するように配置されている。これら複層管20どうしの摺動抵抗は第1実施形態と同様に抑制されるため、湾曲に必要な応力を低減することができる。
【0084】
・他の実施形態Gに係る管集合体10gを、
図13を用いて説明する。他の実施形態Gに係る管集合体10gは、2本の複層管20と、2本の単層管40とにより構成されており、複層管20どうしが隣接し、且つ、単層管40どうしが隣接して、4本の管20,40の中心軸が正方形の頂点を構成するように配置されている。複層管20と単層管40との摺動抵抗は、第2実施形態と同様に抑制される。したがって、特に単層管40どうしが摺動しない方向へ曲げる場合に、湾曲に必要な応力を低減することができる。
【0085】
・他の実施形態Hに係る管集合体10hを、
図14を用いて説明する。他の実施形態Hに係る管集合体10hは、2本の複層管20と、2本の単層管40とにより構成されており、1本の複層管20が2本の単層管40と隣接し、且つ、1本の単層管40が2本の複層管20と隣接して、4本の管20,40の中心軸が正方形の頂点を構成するように配置されている。複層管20と単層管40との摺動抵抗は、第2実施形態と同様に抑制される。したがって、いずれの方向に曲げる場合においても、湾曲に必要な応力を低減することができる。
【0086】
・他の実施形態Iに係る管集合体10iを、
図15を用いて説明する。他の実施形態Iに係る管集合体10iは、3本の複層管20と、1本の単層管40とにより構成されており、4本の管20,40の中心軸が正方形の頂点を構成するように配置されている。複層管20と単層管40との摺動抵抗は、第2実施形態と同様に抑制される。したがって、いずれの方向に曲げる場合においても、湾曲に必要な応力を低減することができる。
【0087】
<変形例>
・第1実施形態及び第2実施形態における複層管20において、粗外面を外表面全体に設けず、他方の管20,40と当接する箇所にのみ、帯状に設けるものとしてもよい。また、長手方向の全体に亘って設けず、長手方向の一部にのみ設けるものとしてもよい。管集合体10,100において、必ずしも長手方向の全体に亘って曲げる必要があるわけではなく、少なくとも、曲げる必要がある箇所に粗外面が形成されていれば、曲げる際に必要な応力を低減することができる。
【0088】
・実施形態では、複層管20の外層22に粗外面23を形成し、内層21に平滑面を形成するものとしたが、少なくとも、外層22に摩擦軽減手段として機能する粗外面が形成されていれば、一定の効果を奏することができる。また、内層21と外層22の2層構造としたが、3層以上の多層構造としてもよい。
【0089】
・実施形態において、硬質ポリエチレン樹脂を硬化させる際の特性により細かな凹凸からなる粗外面を形成するものとしているが、金型に微細な凹凸を設け、その凹凸を樹脂に転写することにより粗外面を形成するものとしてもよい。
【0090】
・実施形態では、表面粗さについて凹凸の高さの平均値を採用したが、凸部の間隔を表面粗さと定義してもよい。この場合においても、表面粗さが粗いほど凸部の間隔が広くなり、当接面積を軽減することができる。
【0091】
・実施形態では、粗外面について、微細な連続する凹凸としたが、軸方向又は周方向に延びる線状の突起や線状の溝であってもよい。この場合、直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。一方の管の粗外面を軸方向に延びるものとし、他方の管の粗外面を周方向に延びるものとすれば、互いに噛み合うこともないため、表面粗さの上限値をより大きくすることができる。
【0092】
・実施形態で示した材料は一例であって、種々の変更が可能である。硬質ポリエチレン樹脂の代わりに、硬化時の材料の特性により粗外面を形成可能な他の材料を選択してもよいし、非架橋ポリエチレン樹脂の代わりに、硬化時の材料の特性により平滑面を形成可能な他の材料を選択してもよい。また、金型にもうけた微細な凹凸を転写することで粗外面を形成する手段を採用するならば、硬化時の特性で粗外面を形成可能な材料以外の材料を採用することができるし、単層管において、内面を平滑面とし、且つ、外面を粗外面とすることもできる。さらに、管の外層や介在体の表面をヤスリ等で削って荒らすことで疎外面を形成してもよい。この場合でも、単層管において内面を平滑面とし、且つ、外面を粗外面とすることができる。
【0093】
・実施形態では、囲み部材30をアルミニウムで形成された薄膜上のテープとしたが、樹脂などの他の材料で形成するものしてもよい。また、長尺状の管を囲み部材とし、その間の内部に単層管40や複層管20を配置するものとしてもよい。この場合には、内部の管20,40を離間可能としてもよい。管集合体を湾曲させる場合には、内部で管20,40どうしが当接して摺動する場合があるため、離間可能であっても一定の効果を得ることができる。さらに、囲み部材としての管の内部に単層管40を配置する場合には、囲み部材としての管の内面を粗外面として摺動抵抗を抑制するものとしてもよい。
【0094】
・管として外面に粗外面が形成されていない単層管40を用いる場合、囲み部材30の内面に粗外面を形成し、囲み部材30と単層管40との摺動抵抗を軽減するものとしてもよい。
【0095】
・第3実施形態において、介在体50の両面に粗外面を形成するものとしたが、一方のみに形成されていてもよい。この場合には、粗外面が形成されていない側の管40との摺動抵抗は粗外面が形成されている側よりも大きいものの、粗外面が形成されている側における摺動抵抗は相対的に小さく、粗外面が形成されている側において管40が摺動するため、管集合体200を小さい応力で湾曲させることができる。
【0096】
・第3実施形態において、介在体50は、管40の延在方向の全体に亘って設けられていなくてもよい。介在体50は管40のスペーサとしても機能しているため、介在体50が設けられていない箇所では管40は接触せず、摺動抵抗は生じないため、より小さい応力で管集合体200を湾曲させることができる。第4実施形態においても同様である。
【0097】
・他の実施形態において、3本又は4本の管20,40により管集合体を構成する例を示したが、5本以上の管20,40により管集合体を構成してもよい。この場合においても、少なくとも1本の複層管20を備えていれば、その複層管20と単層管40との摺動抵抗を低減させることができる。この場合における管20,40の配置は、管集合体を用いる場所に応じて種々の変更が可能である。
【0098】
・他の実施形態において、4本の管20,40を中心軸が正方形の頂点を構成するように配置する例を示したが、4本の管20,40を並列に配置するなど、様々な配置様態を採用することができる。
【0099】
・他の実施形態で示した例において、複層管20の代わりに単層管40を配置し、単層管40の間に第3実施形態又は第4実施形態で示した介在体50,60を設けるものとしてもよい。また、複層管20と単層管40を混在させつつ、単層管40が当接する配置である場合に、介在体50,60を配置してもよい。
【0100】
・第3、4実施形態に係る介在体50,60に準ずる部材を、単層管40の外周面の軸方向に亘って螺旋状に巻き付けることで、複層管20と同様に摺動抵抗を抑制可能な管として扱うことができる。この場合、巻き付けられた単層管40に当接する面も粗外面としてもよいが、平滑面とすれば、介在体に準ずる部材とその部材が巻き付けられている単層管40との相対位置の変化を抑制しつつ、別の単層管との摺動抵抗を抑制することができる。
【0101】
・管どうしの摺動抵抗を抑制する摩擦軽減手段として、液体を塗布したり、粉体を付着させたりする手段を採用することもできる。
【符号の説明】
【0102】
管集合体…10,100,200,300,10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h,10i、複層管…20,内層…21、外層…22、粗外面…23、囲み部材…30,単層管…40,介在体…50,60