(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】複数のせん断型パネルダンパーを使用した制震装置
(51)【国際特許分類】
E01D 19/04 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
E01D19/04 101
(21)【出願番号】P 2020140380
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000231855
【氏名又は名称】日本鋳造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【氏名又は名称】小林 義孝
(72)【発明者】
【氏名】党 紀
(72)【発明者】
【氏名】石山 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】染谷 優太
(72)【発明者】
【氏名】山崎 信宏
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-173130(JP,A)
【文献】特開2020-056166(JP,A)
【文献】特開2008-179950(JP,A)
【文献】特開2012-225411(JP,A)
【文献】特開2014-034853(JP,A)
【文献】特開2001-227194(JP,A)
【文献】特開2014-058790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定厚みを有する第1連結パネル部と、前記第1連結パネル部の反対側に位置して所定厚みを有する第2連結パネル部と、所定厚みを有して前記第1及び第2連結パネル部の間に延びるダンパーパネル部とを有するせん断型パネルダンパーを含み、主構造物と前記主構造物を支持する支持構造物との間に配置され、前記主構造物と前記支持構造物との間に作用した作用力によって該主構造物と該支持構造物との間に相対変位が生じたときに前記ダンパーパネル部が塑性変形して前記相対変位を減衰させる制震装置において、
前記制震装置が、前記第1連結パネル部どうしが対向するとともに前記第2連結パネル部どうしが対向した状態で前記厚み方向へ並ぶ複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパーを備え、
前記第1番~第n番せん断型パネルダンパーは、前記第1番せん断型パネルダンパーから前記第n番せん断型パネルダンパーに向かって数えたときに、奇数番号のせん断型パネルダンパーと該奇数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する偶数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部どうしと互いに対向する第2連結パネル部どうしとのうちのいずれか一方が連結されているとともに、偶数番号のせん断型パネルダンパーと該偶数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する奇数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部どうしと互いに対向する第2連結パネル部どうしとのうちのいずれか他方が連結されており、
前記制震装置は、前記第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの前記主構造物に対向するせん断型パネルダンパーの前記第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部が該主構造物に直接又は間接的に連結され、前記第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの前記支持構造物に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部が該支持構造物に直接又は間接的に連結されることを特徴とする複数のせん断型パネルダンパーを使用した制震装置。
【請求項2】
前記制震装置が、前記第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの前記主構造物及び前記支持構造物のいずれか一方に対向するせん断型パネルダンパーの前記第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部に連結されるとともに、前記主構造物及び前記支持構造物のいずれか一方に連結される第1ガイドプレートと、前記第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの前記主構造物及び前記支持構造物のいずれか他方に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部に連結されるとともに、前記主構造物及び前記支持構造物のいずれか他方に連結される第2ガイドプレートとを含み、前記制震装置では、前記第1番~第n番せん断型パネルダンパーの所定の方向への移動が前記第1及び第2ガイドプレートによって阻止される請求項1に記載の複数のせん断型パネルダンパーを使用した制震装置。
【請求項3】
前記制震装置が、前記第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの前記主構造物及び前記支持構造物のいずれか一方に対向するせん断型パネルダンパーの前記第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部に連結されるとともに、前記主構造物及び前記支持構造物のいずれか一方に連結される第1アングル材と、前記第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの前記主構造物及び前記支持構造物のいずれか他方に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部に連結されるとともに、前記主構造物及び前記支持構造物のいずれか他方に連結される第2アングル材とを含む請求項1に記載の複数のせん断型パネルダンパーを使用した制震装置。
【請求項4】
前記主構造物が、橋梁の橋桁であり、前記支持構造物が、前記橋桁を支える橋台であり、前記制震装置が、熱膨張又は熱収縮によって前記橋桁に寸法変化が生じたときに、前記熱膨張又は前記熱収縮による寸法変化分を吸収する寸法変化吸収装置を含み、前記制震装置では、前記熱膨張又は前記熱収縮による前記橋桁のゆっくりとした遅い寸法変化分を前記寸法変化吸収装置が吸収し、前記熱膨張又は前記熱収縮による寸法変位以外の速い相対変位が前記橋桁と前記橋台との間に生じたときに前記第1番~第n番せん断型パネルダンパーのダンパーパネル部が塑性変形して前記相対変位を減衰させる請求項1ないし請求項3いずれかに記載の複数のせん断型パネルダンパーを使用した制震装置。
【請求項5】
所定厚みを有する第1連結パネル部と、前記第1連結パネル部の反対側に位置して所定厚みを有する第2連結パネル部と、所定厚みを有して前記第1及び第2連結パネル部の間に延びるダンパーパネル部とを有するせん断型パネルダンパーを含み、所定の建造物の上部構造材と前記建造物の下部構造材との間に配置され、前記上部構造材と前記下部構造材との間に作用した作用力によって該上部構造材と該下部構造材との間に相対変位が生じたときに前記ダンパーパネル部が塑性変形して前記相対変位を減衰させる制震装置において、
前記制震装置が、前記第1連結パネル部どうしが対向するとともに前記第2連結パネル部どうしが対向した状態で前記厚み方向へ並ぶ複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパーを備え、
前記第1番~第n番せん断型パネルダンパーは、前記第1番せん断型パネルダンパーから前記第n番せん断型パネルダンパーに向かって数えたときに、奇数番号のせん断型パネルダンパーと該奇数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する偶数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部どうしと互いに対向する第2連結パネル部どうしとのうちのいずれか一方が連結されているとともに、偶数番号のせん断型パネルダンパーと該偶数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する奇数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部どうしと互いに対向する第2連結パネル部どうしとのうちのいずれか他方が連結されており、
前記制震装置は、前記第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの前記上部構造材に対向するせん断型パネルダンパーの前記第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部が該上部構造材に直接又は間接的に連結され、前記第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの前記下部構造材に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部が該下部構造材に直接又は間接的に連結されることを特徴とする複数のせん断型パネルダンパーを使用した制震装置。
【請求項6】
前記建造物の上部構造材が、天井梁と、前記天井梁に連結されて該天井梁から下方へ延びる第1間柱とから形成され、前記建造物の下部構造材が、床梁と、前記床梁に連結されて該床梁から上方へ延びる第2間柱とから形成され、前記第1連結パネル部及び前記第2連結パネル部のいずれか一方が、前記第1間柱の下端部に連結され、前記第1連結パネル部及び前記第2連結パネル部のいずれか他方が、前記第2間柱の上端部に連結され、前記ダンパーパネル部が、上下方向へ離間する前記第1間柱の下端部と前記第2間柱の上端部との間のスペースに位置している請求項5に記載の複数のせん断型パネルダンパーを使用した制震装置。
【請求項7】
所定厚みを有する第1連結パネル部と、前記第1連結パネル部の反対側に位置して所定厚みを有する第2連結パネル部と、所定厚みを有して前記第1及び第2連結パネル部の間に延びるダンパーパネル部とを有するせん断型パネルダンパーを含む制震装置において、
前記制震装置が、前記第1連結パネル部どうしが対向するとともに前記第2連結パネル部どうしが対向した状態で前記厚み方向へ並ぶ複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパーを備え、前記第1番~第n番せん断型パネルダンパーが、所定の建造物の所定の梁を分断して形成された設置空間に配置され、
前記第1番~第n番せん断型パネルダンパーは、前記第1番せん断型パネルダンパーから前記第n番せん断型パネルダンパーに向かって数えたときに、奇数番号のせん断型パネルダンパーと該奇数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する偶数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部どうしと互いに対向する第2連結パネル部どうしとのうちのいずれか一方が連結されているとともに、偶数番号のせん断型パネルダンパーと該偶数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する奇数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部どうしと互いに対向する第2連結パネル部どうしとのうちのいずれか他方が連結されており、
前記制震装置は、前記第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの前記設置空間を挟んだ一方の梁に対向するせん断型パネルダンパーの前記第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部が前記一方の梁に直接又は間接的に連結され、前記第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの前記設置空間を挟んだ他方の梁に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部が前記他方の梁に直接又は間接的に連結され、
前記制震装置では、前記設置空間を挟んだ一方の梁と他方の梁との間に作用した作用力によって該一方の梁と該他方の梁との間に相対変位が生じたときに前記ダンパーパネル部が塑性変形して前記相対変位を減衰させることを特徴とする複数のせん断型パネルダンパーを使用した制震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主構造物と支持構造物との間に作用した作用力によって主構造物と支持構造物との間に相対変位が生じたときにその相対変位を減衰させる制震装置に関するとともに、上部構造材と下部構造材との間に作用した作用力によって上部構造材と下部構造材との間に相対変位が生じたときにその相対変位を減衰させる制震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震エネルギーを吸収する低降状点鋼材製のせん断型パネルダンパーを設置し、地震による建造物の変形を低減する制震装置が使用されている。低降状点鋼材から作られたせん断型パネルダンパーを使用した制震装置には、地震発生時に建造物に作用する作用力(地震エネルギーによって建造物に作用する水平荷重及び鉛直荷重)を効率的に吸収し、地震による建造物の変形や損傷を最小限にすることが求められる。
【0003】
制震装置の一例は、建造物の天井梁に連結されて天井梁から下方へ延びる第1間柱と、建造物の床梁に連結されて床梁から上方へ延びる第2間柱と、上下方向へ離間する第1間柱と第2間柱との間に設置されたせん断型パネルダンパーとから形成されている。せん断型パネルダンパーは、第1間柱の下端部に固定された第1固定パネルと、第2間柱の上端部に固定された第2固定パネルと、第1および第2固定パネルの間に位置して地震の際に塑性変形するダンパーパネルとから形成されている。そのような制震装置を設置した建造物が特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示の建造物は、パネル形状のパネルダンパーを利用して地震時に建物の架構に入力される振動エネルギーを吸収することで建物の揺れを抑える制震ダンパーを備えている。建造物に設置された制震ダンパーは、構造計算上長期軸力を算定する柱の中間部における上部柱の下端プレートと下部柱の上端プレートとの間に柱に掛かる軸力を支持する軸力支持機構とパネルダンパーとが設置され、パネルダンパーと軸力支持機構との一方が水平方向に左右一対となり、他方がその対となった一方の間に配置されている。パネルダンパーは、低降伏点鋼からなる平板の中央部に鉛直断面の外形線が円孤を描くように中央に行くに従って厚さが薄くなる凹レンズ状の窪みが形成された凹レンズ型の形状に成形され、軸力支持機構は、上部柱の下端プレートに下向きに伸びて取り付けられた第1のプレートと、下部柱の上端プレートに上向きに伸びて取り付けられた第2のプレートとを有し、それら第2のプレートと第1のプレートが水平方向に摺動自在に止め付けられることで柱に掛かる軸力を支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に開示の建造物では、1つのせん断型パネルダンパーが建造物に作用する作用力(地震エネルギーによって建造物に作用する水平荷重及び鉛直荷重)を受け持ち、建造物に作用力が作用したときに、1つのせん断型パネルダンパーのダンパーパネルが塑性変形して地震エネルギーを吸収し、建造物に生じる相対変位を減衰させるが、1つのせん断型パネルダンパーでは吸収することができないほどの大きな作用力が建造物に作用した場合、地震エネルギーの吸収が不十分となり、建造物に生じる相対変位を十分に減衰させることができず、建造物を地震から保護することができない。
【0007】
本発明の目的は、1つのせん断型パネルダンパーでは吸収することができないほどの大きな作用力(地震エネルギーによって主構造物と支持構造物との間に作用する水平荷重及び鉛直荷重)が主構造物と支持構造物との間に作用し、主構造物と支持構造物との間に相対変位が生じたとしても、その相対変位を十分に減衰させることができ、地震発生時に地震エネルギーを十分に吸収して地震による主構造物や支持構造物の変形や損傷を最小限にすることができる制震装置を提供することにある。本発明の他の目的は、1つのせん断型パネルダンパーでは吸収することができないほどの大きな作用力(地震エネルギーによって建造物の上部構造材と下部構造材との間に作用する水平荷重及び鉛直荷重)が建造物に作用し、上部構造材と下部構造材との間に相対変位が生じたとしても、その相対変位を十分に減衰させることができ、地震発生時に地震エネルギーを十分に吸収して地震による建造物の変形や損傷を最小限にすることができる制震装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明の第1の前提は、所定厚みを有する第1連結パネル部と、第1連結パネル部の反対側に位置して所定厚みを有する第2連結パネル部と、所定厚みを有して第1及び第2連結パネル部の間に延びるダンパーパネル部とを有するせん断型パネルダンパーを含み、主構造物と主構造物を支持する支持構造物との間に配置され、主構造物と支持構造物との間に作用した作用力によって主構造物と支持構造物との間に相対変位が生じたときにダンパーパネル部が塑性変形して相対変位を減衰させる制震装置である。
【0009】
前記第1の前提における本発明の特徴は、制震装置が、第1連結パネル部どうしが対向するとともに第2連結パネル部どうしが対向した状態で厚み方向へ並ぶ複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパーを備え、第1番~第n番せん断型パネルダンパーは、第1番せん断型パネルダンパーから第n番せん断型パネルダンパーに向かって数えたときに、奇数番号のせん断型パネルダンパーと奇数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する偶数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部どうしと互いに対向する第2連結パネル部どうしとのうちのいずれか一方が連結されているとともに、偶数番号のせん断型パネルダンパーと偶数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する奇数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部どうしと互いに対向する第2連結パネル部どうしとのうちのいずれか他方が連結されており、制震装置は、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの主構造物に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部が主構造物に直接又は間接的に連結され、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの支持構造物に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部が支持構造物に直接又は間接的に連結されることにある。
【0010】
本発明の一例としては、制震装置が、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの主構造物及び支持構造物のいずれか一方に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部に連結されるとともに、主構造物及び支持構造物のいずれか一方に連結される第1ガイドプレートと、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの主構造物及び支持構造物のいずれか他方に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部に連結されるとともに、主構造物及び支持構造物のいずれか他方に連結される第2ガイドプレートとを含み、制震装置では、第1番~第n番せん断型パネルダンパーの所定の方向への移動が第1及び第2ガイドプレートによって阻止される。
【0011】
本発明の他の一例としては、制震装置が、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの主構造物及び支持構造物のいずれか一方に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部に連結されるとともに、主構造物及び支持構造物のいずれか一方に連結される第1アングル材と、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの主構造物及び支持構造物のいずれか他方に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部に連結されるとともに、主構造物及び支持構造物のいずれか他方に連結される第2アングル材とを含む。
【0012】
本発明の他の一例としては、主構造物が橋梁の橋桁であり、支持構造物が橋桁を支える橋台であり、制震装置が熱膨張又は熱収縮によって橋桁に寸法変化が生じたときに、熱膨張又は熱収縮による寸法変化分を吸収する寸法変化吸収装置を含み、制震装置では、熱膨張又は熱収縮による橋桁のゆっくりとした遅い寸法変化分を寸法変化吸収装置が吸収し、熱膨張又は熱収縮による寸法変位以外の速い相対変位が橋桁と橋台との間に生じたときに第1番~第n番せん断型パネルダンパーのダンパーパネル部が塑性変形して相対変位を減衰させる。
【0013】
前記課題を解決するための本発明の第2の前提は、所定厚みを有する第1連結パネル部と、第1連結パネル部の反対側に位置して所定厚みを有する第2連結パネル部と、所定厚みを有して第1及び第2連結パネル部の間に延びるダンパーパネル部とを有するせん断型パネルダンパーを含み、所定の建造物の上部構造材と建造物の下部構造材との間に配置され、上部構造材と下部構造材との間に作用した作用力によって上部構造材と下部構造材との間に相対変位が生じたときにダンパーパネル部が塑性変形して相対変位を減衰させる制震装置である。
【0014】
前記第2の前提における本発明の特徴は、制震装置が、第1連結パネル部どうしが対向するとともに第2連結パネル部どうしが対向した状態で厚み方向へ並ぶ複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパーを備え、第1番~第n番せん断型パネルダンパーは、第1番せん断型パネルダンパーから第n番せん断型パネルダンパーに向かって数えたときに、奇数番号のせん断型パネルダンパーと奇数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する偶数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部どうしと互いに対向する第2連結パネル部どうしとのうちのいずれか一方が連結されているとともに、偶数番号のせん断型パネルダンパーと偶数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する奇数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部どうしと互いに対向する第2連結パネル部どうしとのうちのいずれか他方が連結されており、制震装置は、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの上部構造材に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部が上部構造材に直接又は間接的に連結され、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの下部構造材に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部が下部構造材に直接又は間接的に連結されることにある。
【0015】
本発明の一例としては、建造物の上部構造材が、天井梁と、天井梁に連結されて天井梁から下方へ延びる第1間柱とから形成され、建造物の下部構造材が、床梁と、床梁に連結されて床梁から上方へ延びる第2間柱とから形成され、第1連結パネル部及び第2連結パネル部のいずれか一方が、第1間柱の下端部に連結され、第1連結パネル部及び第2連結パネル部のいずれか他方が、第2間柱の上端部に連結され、ダンパーパネル部が、上下方向へ離間する第1間柱の下端部と第2間柱の上端部との間のスペースに位置している。
【0016】
前記課題を解決するための本発明の第3の前提は、所定厚みを有する第1連結パネル部と、第1連結パネル部の反対側に位置して所定厚みを有する第2連結パネル部と、所定厚みを有して第1及び第2連結パネル部の間に延びるダンパーパネル部とを有するせん断型パネルダンパーを含む制震装置である。
【0017】
前記第3の前提における本発明の特徴は、制震装置が、第1連結パネル部どうしが対向するとともに第2連結パネル部どうしが対向した状態で厚み方向へ並ぶ複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパーを備え、第1番~第n番せん断型パネルダンパーが、所定の建造物の所定の梁を分断して形成された設置空間に配置され、第1番~第n番せん断型パネルダンパーは、第1番せん断型パネルダンパーから第n番せん断型パネルダンパーに向かって数えたときに、奇数番号のせん断型パネルダンパーと奇数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する偶数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部どうしと互いに対向する第2連結パネル部どうしとのうちのいずれか一方が連結されているとともに、偶数番号のせん断型パネルダンパーと偶数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する奇数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部どうしと互いに対向する第2連結パネル部どうしとのうちのいずれか他方が連結されており、制震装置は、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの設置空間を挟んだ一方の梁に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部が一方の梁に直接又は間接的に連結され、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの設置空間を挟んだ他方の梁に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部が他方の梁に直接又は間接的に連結され、制震装置では、設置空間を挟んだ一方の梁と他方の梁との間に作用した作用力によって一方の梁と他方の梁との間に相対変位が生じたときにダンパーパネル部が塑性変形して相対変位を減衰させることにある。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る複数のせん断型パネルダンパーを使用した制震装置によれば、それが厚み方向へ並ぶ複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパーを備え、それらせん断型パネルダンパーを第1番せん断型パネルダンパーから第n番せん断型パネルダンパーに向かって数えたときに、奇数番号のせん断型パネルダンパーと奇数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する偶数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部どうしと互いに対向する第2連結パネル部どうしとのうちのいずれか一方が連結されているとともに、偶数番号のせん断型パネルダンパーと偶数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する奇数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部どうしと互いに対向する第2連結パネル部どうしとのうちのいずれか他方が連結されており、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの主構造物に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部が主構造物に直接又は間接的に連結され、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの支持構造物に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部が支持構造物に直接又は間接的に連結され、主構造物と支持構造物との間に作用した作用力(地震エネルギーによって主構造物と支持構造物との間に作用する水平荷重及び鉛直荷重)によって主構造物と支持構造物との間に生じた相対変位を第1番~第n番せん断型パネルダンパーが受け持つから、1つのせん断型パネルダンパーでは吸収することができないほどの大きな相対変位が主構造物と支持構造物との間に生じたとしても、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちのいずれかのせん断型パネルダンパー(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部又は全てのせん断型パネルダンパーのダンパーパネル部が塑性変形してその相対変位を減衰させることができ、主構造物と支持構造物との間に生じた相対変位(地震エネルギー)を十分かつ確実に減衰させることができるとともに、地震発生時に地震エネルギーを十分かつ確実に吸収して地震による主構造物や支持構造物の変形や損傷を最小限にすることができる。
【0019】
第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの主構造物及び支持構造物のいずれか一方に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部に連結されるとともに主構造物及び支持構造物のいずれか一方に連結される第1ガイドプレートと、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの主構造物及び支持構造物のいずれか他方に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部に連結されるとともに主構造物及び支持構造物のいずれか他方に連結される第2ガイドプレートとを含み、第1番~第n番せん断型パネルダンパーの所定の方向への移動が第1及び第2ガイドプレートによって阻止される制震装置は、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部を第1ガイドプレートに連結しつつ第1ガイドプレートを主構造物及び支持構造物のいずれか一方に連結し、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部を第2ガイドプレートに連結しつつ第2ガイドプレートを主構造物及び支持構造物のいずれか他方に連結することで、制震装置を主構造物と支持構造物との間に設置することができるから、第1及び第2ガイドプレートを利用することで制震装置を短い工期で廉価に施工することができ、地震後はダンパーパネル部が塑性変形したせん断型パネルダンパーを交換するだけでよく、地震後に制震装置をあらたに施工する必要はなく、手間と費用とを節約することができる。制震装置は、主構造物と支持構造物との間に作用する作用力(地震エネルギーによって主構造物と支持構造物との間に作用する水平荷重及び鉛直荷重)が第1及び第2ガイドプレートを介して第1番~第n番せん断型パネルダンパーに伝達されるから、主構造物と支持構造物との間に作用した作用力によって生じた相対変位を主構造物や支持構造物からそれらせん断型パネルダンパーに確実に伝達させることができる。制震装置は、第1番~第n番せん断型パネルダンパーの所定の方向への移動が第1及び第2ガイドプレートによって阻止されるから、一定の方向への相対変位に対してのみに第1番~第n番せん断型パネルダンパーの相対変位力に対する減衰力を発揮させることができる。制震装置は、1つのせん断型パネルダンパーでは吸収することができないほどの大きな相対変位が主構造物と支持構造物との間に生じたとしても、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちのいずれかのせん断型パネルダンパー(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部又は全てのせん断型パネルダンパーのダンパーパネル部が塑性変形してその相対変位を減衰させることができ、主構造物と支持構造物との間に生じた相対変位(地震エネルギー)を十分かつ確実に減衰させることができるとともに、地震発生時に地震エネルギーを十分かつ確実に吸収して地震による主構造物や支持構造物の変形や損傷を最小限にすることができる。
【0020】
第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの主構造物及び支持構造物のいずれか一方に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部に連結されるとともに主構造物及び支持構造物のいずれか一方に連結される第1アングル材と、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの主構造物及び支持構造物のいずれか他方に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部に連結されるとともに主構造物及び支持構造物のいずれか他方に連結される第2アングル材とを含む制震装置は、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部を第1アングル材に連結しつつ第1アングル材を主構造物及び支持構造物のいずれか一方に連結し、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部を第2アングル材に連結しつつ第2アングル材を主構造物及び支持構造物のいずれか他方に連結することで、制震装置を主構造物と支持構造物との間に設置することができるから、第1及び第2アングル材を利用することで制震装置を短い工期で廉価に施工することができ、地震後はダンパーパネル部が塑性変形したせん断型パネルダンパーを交換するだけでよく、地震後に制震装置をあらたに施工する必要はなく、手間と費用とを節約することができる。制震装置は、主構造物と支持構造物との間に作用する作用力(地震エネルギーによって主構造物と支持構造物との間に作用する水平荷重及び鉛直荷重)が第1及び第2アングル材を介して第1番~第n番せん断型パネルダンパーに伝達されるから、主構造物と支持構造物との間に作用した作用力によって生じた相対変位を主構造物や支持構造物からそれらせん断型パネルダンパーに確実に伝達させることができる。制震装置は、1つのせん断型パネルダンパーでは吸収することができないほどの大きな相対変位が主構造物と支持構造物との間に生じたとしても、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちのいずれかのせん断型パネルダンパー(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部又は全てのせん断型パネルダンパーのダンパーパネル部が塑性変形してその相対変位を減衰させることができ、主構造物と支持構造物との間に生じた相対変位(地震エネルギー)を十分かつ確実に減衰させることができるとともに、地震発生時に地震エネルギーを十分かつ確実に吸収して地震による主構造物や支持構造物の変形や損傷を最小限にすることができる。
【0021】
主構造物が橋梁の橋桁であり、支持構造物が橋桁を支える橋台であり、熱膨張又は熱収縮によって橋桁に寸法変化が生じたときに、熱膨張又は熱収縮による寸法変化分を吸収する寸法変化吸収装置を含み、熱膨張又は熱収縮による橋桁のゆっくりとした遅い寸法変化分を寸法変化吸収装置が吸収し、熱膨張又は熱収縮による寸法変位以外の速い相対変位が橋桁と橋台との間に生じたときに第1番~第n番せん断型パネルダンパーのダンパーパネル部が塑性変形して相対変位を減衰させる制震装置は、熱膨張又は熱収縮によって橋梁の橋桁に寸法変化が生じ、その寸法変化によって第1番~第n番せん断型パネルダンパーのダンパーパネル部が塑性変形した場合、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちのダンパーパネル部が塑性変形したせん断型パネルダンパーを橋桁と橋台との間に生じた相対変位の減衰に利用することができなくなるが、熱膨張又は熱収縮による橋桁のゆっくりとした遅い寸法変化分を寸法変化吸収装置が吸収し、橋桁の寸法変化によって第1番~第n番せん断型パネルダンパーのダンパーパネル部が塑性変形することはないから、それらせん断型パネルダンパーの相対変位減衰機能が損なわれることはなく、第1番~第n番せん断型パネルダンパーの全てを橋桁と橋台との間に生じた相対変位の減衰に利用することができる。制震装置は、熱膨張又は熱収縮による寸法変位以外の速い相対変位が橋桁と橋台との間に生じたときに第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちのいずれかのせん断型パネルダンパー(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部又は全てのせん断型パネルダンパーのダンパーパネル部が塑性変形してその相対変位を減衰させることができ、1つのせん断型パネルダンパーでは吸収することができないほどの大きな相対変位が橋桁と橋台との間に生じたとしても、その相対変位(地震エネルギー)を十分かつ確実に減衰させることができ、地震発生時に地震エネルギーを十分かつ確実に吸収して地震による橋桁や橋台の変形や損傷を最小限にすることができる。
【0022】
本発明に係る制震装置によれば、それが厚み方向へ並ぶ複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパーを備え、それらせん断型パネルダンパーを第1番せん断型パネルダンパーから第n番せん断型パネルダンパーに向かって数えたときに、奇数番号のせん断型パネルダンパーと奇数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する偶数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部どうしと互いに対向する第2連結パネル部どうしとのうちのいずれか一方が連結されているとともに、偶数番号のせん断型パネルダンパーと偶数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する奇数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部どうしと互いに対向する第2連結パネル部どうしとのうちのいずれか他方が連結されており、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの上部構造材に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部が上部構造材に直接又は間接的に連結され、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの下部構造材に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部が下部構造材に直接又は間接的に連結され、建造物の上部構造材と下部構造材との間に作用した作用力(地震エネルギーによって建造物の上部構造材と下部構造材との間に作用する水平荷重及び鉛直荷重)によって上部構造材と下部構造材との間に生じた相対変位を第1番~第n番せん断型パネルダンパーが受け持つから、1つのせん断型パネルダンパーでは吸収することができないほどの大きな相対変位が建造物の上部構造材と下部構造材との間に生じたとしても、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちのいずれかのせん断型パネルダンパー(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部又は全てのせん断型パネルダンパーのダンパーパネル部が塑性変形してその相対変位を減衰させることができ、建造物の上部構造材と下部構造材との間に作用した相対変位(地震エネルギー)を十分かつ確実に減衰させることができるとともに、地震発生時に地震エネルギーを十分かつ確実に吸収して地震による建造物の変形や損傷を最小限にすることができる。
【0023】
建造物の上部構造材が天井梁と天井梁に連結されて天井梁から下方へ延びる第1間柱とから形成され、建造物の下部構造材が床梁と床梁に連結されて床梁から上方へ延びる第2間柱とから形成され、第1連結パネル部及び第2連結パネル部のいずれか一方が第1間柱の下端部に連結され、第1連結パネル部及び第2連結パネル部のいずれか他方が第2間柱の上端部に連結され、ダンパーパネル部が上下方向へ離間する第1間柱の下端部と第2間柱の上端部との間のスペースに位置している制震装置は、建造物に作用する作用力(地震エネルギーによって建造物に作用する水平荷重及び鉛直荷重)が建造物から第1および第2間柱に伝達され、その作用力が第1および第2間柱から第1番~第n番せん断型パネルダンパーに伝達されるから、建造物に作用した作用力によって生じた相対変位を建造物からそれらせん断型パネルダンパーに確実に伝達させることができる。制震装置は、1つのせん断型パネルダンパーでは吸収することができないほどの大きな相対変位が建造物に生じたとしても、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちのいずれかのせん断型パネルダンパー(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部又は全てのせん断型パネルダンパーのダンパーパネル部が塑性変形してその相対変位を減衰させることができ、建造物に作用した相対変位(地震エネルギー)を十分かつ確実に減衰させることができるとともに、地震発生時に地震エネルギーを十分かつ確実に吸収して地震による建造物の変形や損傷を最小限にすることができる。
【0024】
本発明に係る制震装置によれば、それが厚み方向へ並ぶ複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパーを備え、第1番~第n番せん断型パネルダンパーが所定の建造物の所定の梁を分断して形成された設置空間に配置され、それらせん断型パネルダンパーを第1番せん断型パネルダンパーから第n番せん断型パネルダンパーに向かって数えたときに、奇数番号のせん断型パネルダンパーと奇数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する偶数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部どうしと互いに対向する第2連結パネル部どうしとのうちのいずれか一方が連結されているとともに、偶数番号のせん断型パネルダンパーと偶数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する奇数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部どうしと互いに対向する第2連結パネル部どうしとのうちのいずれか他方が連結されており、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの設置空間を挟んだ一方の梁に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部が一方の梁に直接又は間接的に連結され、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの設置空間を挟んだ他方の梁に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部が他方の梁に直接又は間接的に連結され、設置空間を挟んだ一方の梁と他方の梁との間に作用した作用力(地震エネルギーによって建造物の一方の梁と他方の梁との間に作用する水平荷重及び鉛直荷重)によって一方の梁と他方の梁との間に生じた相対変位を第1番~第n番せん断型パネルダンパーが受け持つから、1つのせん断型パネルダンパーでは吸収することができないほどの大きな相対変位が建造物の一方の梁と他方の梁との間に生じたとしても、第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちのいずれかのせん断型パネルダンパー(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部又は全てのせん断型パネルダンパーのダンパーパネル部が塑性変形してその相対変位を減衰させることができ、建造物の一方の梁と他方の梁との間に作用した相対変位(地震エネルギー)を十分かつ確実に減衰させることができるとともに、地震発生時に地震エネルギーを十分かつ確実に吸収して地震による建造物の変形や損傷を最小限にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図4】前面の側から示すせん断型パネルダンパーの斜視図。
【
図5】後面の側から示すせん断型パネルダンパーの斜視図。
【
図6】制震装置に含まれる第1ガイドプレートの斜視図。
【
図7】制震装置に含まれる第2ガイドプレートの斜視図。
【
図12】他の一例として示す制震装置の分解斜視図。
【
図14】制震装置に含まれる第1ガイドプレートの斜視図。
【
図15】制震装置に含まれる第2ガイドプレートの斜視図。
【
図21】制震装置を設置した橋梁の他の一例を示す部分拡大図。
【
図22】制震装置を設置した橋梁の他の一例を示す部分拡大図。
【
図23】制震装置を設置したビル(建造物)の一例を示す図。
【
図25】第1及び第2間柱の間に設置された制震装置の一例を示す正面図。
【
図26】第1及び第2間柱の間に設置された
図24の制震装置の側面図。
【
図27】一例として示す第1及び第2鋼製ブラケットの正面図。
【
図29】天井梁と床梁との間に設置された制震装置の一例を示す正面図。
【
図30】天井梁の間に設置された制震装置の一例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
一例として示す制震装置10Aの分解斜視図である
図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る複数のせん断型パネルダンパーを使用した制震装置の詳細を説明すると、以下のとおりである。尚、
図2は、
図1の制震装置10Aの斜視図であり、
図3は、
図1の制震装置10Aの側面図である。
図4は、前面の側から示すせん断型パネルダンパー11a~11cの斜視図であり、
図5は、後面の側から示すせん断型パネルダンパー11a~11cの斜視図である。
図6は、制震装置10Aに含まれる第1ガイドプレート12aの斜視図であり、
図7は、制震装置10Aに含まれる第2ガイドプレート12bの斜視図である。
図8は、
図2のA-A線矢視断面図であり、
図9は、
図2のB-B線矢視断面図である。
図10は、
図2のC-C線矢視断面図であり、
図11は、
図4のD-D線矢視断面図である。
図1~
図3では、縦方向を矢印X、横方向を矢印Yで示し、厚み方向を矢印Zで示す。
【0027】
制震装置10A(制震装置10Bを含む)は、橋梁34(高架橋を含む)の橋桁35(主構造物)と橋桁35を支える橋台36(支持構造物)(鉛直支承)との間に配置され、橋梁34を地震から保護する。又、制震装置10A(制震装置10Bを含む)は、超高層ビル49や高層ビル49、中層ビル49、低層ビル49、RC造またはSRC造のマンション、RC造の戸建て住宅等の建造物(主構造物)と建造物(ビル49)を支える基礎50(支持構造物)との間に配置され、建造物(ビル49)を地震から保護する。
【0028】
制震装置10Aは、第1番せん断型パネルダンパー11a及び第2番せん断型パネルダンパー11b(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)から形成され、第1ガイドプレート12a及び第2ガイドプレート12bを含んでいる。第1及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11bは、普通鋼材よりも降伏強度が低く、塑性変形機能が高い低降状点鋼材から作られている。尚、降伏点が100~230N/mm2の極軟鉄から第1及び第2せん断型パネルダンパー11a,11bが作られていてもよい。又、第1番せん断型パネルダンパー11a及び第2番せん断型パネルダンパー11b(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)が低降状点鋼材や極軟鉄以外の金属から作られる場合もある。 第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)は、第1連結パネル部13及び第2連結パネル部15と、第1および第2連結パネル部13,15の間に延びるダンパーパネル部14とを有する。第1及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11bでは、第1連結パネル部13とダンパーパネル部14と第2連結パネル部15とが一体に成形され、縦方向へ第1連結パネル部13、ダンパーパネル部14、第2連結パネル部15の順に並んでいる。
【0029】
第1連結パネル部13は、所定の厚みを有し、その平面形状が横方向へ長い四角形に成形されている。第1連結パネル部13は、前面16(一方の面)と後面17(他方の面)とを有する。第1連結パネル部13には、前後面16,17を貫通する複数のボルト孔18が穿孔されている。それらボルト孔18は、横方向へ等間隔離間して並んでいる。第1番せん断型パネルダンパー11aの第1連結パネル部13の前面16(一方の面)には、前面16から後面17(他方の面)に向かって凹む複数のアンカー部材設置穴19(設置凹部)が形成(穿孔)されている。第2番せん断型パネルダンパー11bの第1連結パネル部の後面17(他方の面)には、後面17から前面16(一方の面)に向かって凹む複数のアンカー部材設置穴19が形成(穿孔)されている。それらアンカー部材設置穴19は、横方向へ等間隔離間して並んでいる。
【0030】
第2連結パネル部15は、第1連結パネル部13と同形同大であり、第1連結パネル部13の反対側に位置し、所定の厚みを有してその平面形状が横方向へ長い四角形に成形されている。第2連結パネル部15は、前面16(一方の面)と後面17(他方の面)とを有する。第2連結パネル部15には、前後面16,17を貫通する複数のボルト孔18が形成(穿孔)されている。それらボルト孔18は、横方向へ等間隔離間して並んでいる。第1番せん断型パネルダンパー11aの第2連結パネル15の後面17(他方の面)には、後面17から前面16(一方の面)に向かって凹む複数のアンカー部材設置穴19が形成(穿孔)されている。第2番せん断型パネルダンパー11bの第2連結パネル15の前面16(一方の面)には、前面16から後面17(他方の面)に向かって凹む複数のアンカー部材設置穴19が形成(穿孔)されている。それらアンカー部材設置穴19は、横方向へ等間隔離間して並んでいる。
【0031】
ダンパーパネル部14は、所定の厚みを有し、その平面形状が括れ状(一葉双曲面状)に成形されている。ダンパーパネル部14は、その厚み寸法が第1および第2連結パネル部13,15のそれよりも小さく、その横方向の寸法が第1および第2連結パネル部13,15のそれよりも短い。ダンパーパネル部14は、第1及び第2連結パネル部13,15の間に延びる両側縁20が横方向内方へ向かって円弧を画き、両側縁20が括れている。尚、ダンパーパネル部14の両側縁20が横方向内方へ向かって円弧を画くことなく、両側縁20が括れていなくてもよい。この場合、せん断型パネルダンパー11a~11cの平面形状が縦方向へ長い矩形になる。ダンパーパネル部14は、前面16(一方の面)と後面17(他方の面)とを有する。第1及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14には、所定面積の第1凹曲面域21と所定面積の第2凹曲面域22とが形成されている。尚、ダンパーパネル部14に第1凹曲面域21及び第2凹曲面域22が形成されていなくてもよい。この場合、第1及び第2連結パネル部13,15の前面16とダンパーパネル部14の前面16とが面一になり、第1及び第2連結パネル部13,15の後面17とダンパーパネル部14の後面17とが面一になる。
【0032】
第1凹曲面域21は、ダンパーパネル部14の前面16(一方の面)における中央に形成され、前面16(一方の面)の周縁から中心に向かって所定の曲率半径で前面16から後面17に向かって厚み方向へ凹んでいる。第1凹曲面域21は、鉛直断面の外形線が円孤を画くように前面16(一方の面)の周縁から中心に向かうにつれてその厚み寸法が次第に小さくなる(薄くなる)凹レンズ形状に成形されている。第2凹曲面域22は、ダンパーパネル部14の後面17(他方の面)における中央に形成され、後面17(他方の面)の周縁から中心に向かって所定の曲率半径で後面17から前面16に向かって厚み方向へ凹んでいる。第2凹曲面域22は、鉛直断面の外形線が円孤を画くように後面17(他方の面)の周縁から中心に向かうにつれてその厚み寸法が次第に小さくなる(薄くなる)凹レンズ形状に成形されている。
【0033】
第1及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14に形成された第1凹曲面域21と第2凹曲面域22とは、互いに同形同大であってダンパーパネル部14において厚み方向へ対称(面対称)に並んでいる。第1及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11bでは、ダンパーパネル部14の厚み寸法(板厚)を自由に調節することができ(たとえば、12mm~30mmの範囲)、その減衰力(地震抵抗力)を240kN~1200kNの範囲で任意に設定することができる。
【0034】
第1ガイドプレート12aは、鋼材から作られ、所定厚みの第1連結板23aと、第1連結板23aに直交して第1連結板23aの一方の端部から厚み方向へ延びる所定厚みの第1支持板24aとから形成されている。第1連結板23aと第1支持板24aとは、一体に成形されている。第1連結板23aは、平面形状が四角形に成形され、前面25(一方の面)と後面26(他方の面)とを有する。第1支持板24aは、横方向へ長い矩形に成形され、当接面27と非当接面28とを有する。第1連結板23aには、前後面25,26を貫通する複数のボルト孔29が形成(穿孔)されている。それらボルト孔29は、縦方向と横方向とへ等間隔離間して並んでいる。第1連結板23aの一方の端部における後面26(他方の面)には、後面26から前面25(一方の面)に向かって凹む複数のアンカー部材設置穴30(設置凹部)が形成(穿孔)されている。それらアンカー部材設置穴30は、横方向へ等間隔離間して並んでいる。
【0035】
第2ガイドプレート12bは、鋼材から作られ、第1ガイドプレート12aと同形同大であり、縦方向の寸法(長さ寸法)や横方向の寸法(幅寸法)、前後方向の寸法(厚み寸法)が第1ガイドプレート12aのそれらと同一である。第2ガイドプレート12bは、所定厚みの第2連結板23bと、第2連結板23bに直交して第2連結板23bの他方の端部から厚み方向へ延びる所定厚みの第2支持板24bとから形成されている。第2連結板23bと第2支持板24bとは、一体に成形されている。第2連結板23bは、平面形状が四角形に成形され、前面25(一方の面)と後面26(他方の面)とを有する。第2支持板24bは、横方向へ長い矩形に成形され、当接面27と非当接面28とを有する。第2連結板23bには、前後面26,27を貫通する複数のボルト孔29が形成(穿孔)されている。それらボルト孔29は、縦方向と横方向とへ等間隔離間して並んでいる。第2連結板23bの一方の端部における前面25(一方の面)には、前面25から後面26(他方の面)に向かって凹む複数のアンカー部材設置穴30が形成(穿孔)されている。それらアンカー部材設置穴30は、横方向へ等間隔離間して並んでいる。
【0036】
制震装置10Aでは、第1番せん断型パネルダンパー11a及び第2番せん断型パネルダンパー11b(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)の第1連結パネル部13どうしが対向し、ダンパーパネル部14どうしが対向するとともに、第2連結パネル部15どうしが対向し、更に、第1番せん断型パネルダンパー11aの後面17と第2番せん断型パネルダンパー11bの前面16とが対向した状態で、第1番せん断型パネルダンパー11aと第2番せん断型パネルダンパー11bとが厚み方向へ重なり合っている(並んでいる)。
【0037】
制震装置10Aでは、第1ガイドプレート12aの第1連結板23aの後面26と第1番せん断型パネルダンパー11aの前面16とが対向した状態で、第1ガイドプレート12aの第1連結板23aと第1番せん断型パネルダンパー11aとが厚み方向へ重なり合っている(並んでいる)。第2ガイドプレート12bの第2連結板23bの前面25と第2番せん断型パネルダンパー11bの後面17とが対向した状態で、第2番せん断型パネルダンパー11bと第2ガイドプレート12bの第2連結板23bとが厚み方向へ重なり合っている(並んでいる)。
【0038】
第1ガイドプレート12aの第1連結板23aの先端部には、滑り板33が設置されている。滑り板33には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はエンジニアリングプラスチックが使用されている。第1ガイドプレート12aの第1連結板23aの先端部が第2ガイドプレート12bの第2支持板24bの一方の端部の内側(縦方向内側)に位置し、第1連結板23aの先端部が第2支持板24bの一方の端部に摺動可能に対向(当接)しつつ、第1及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11bの第1連結パネル部13の先端部分が第2ガイドプレート12bの第2支持板24bの当接面27に対向(当接)している。尚、第1ガイドプレート12aの第1連結板23aの先端部と第2ガイドプレート12bの第2支持板24bの一方の端部との摩擦が滑り板33によって減少し、第1連結板23aの先端部が第2支持板24bの一方の端部に対して摺動容易に当接する。
【0039】
第2ガイドプレート12bの第2連結板23bの先端部には、滑り板33が設置されている。第2ガイドプレート12bの第2連結板23bの先端部が第1ガイドプレート12aの第1支持板24aの他方の端部の内側(縦方向内側)に位置し、第2連結板23bの先端部が第1支持板24aの他方の端部に摺動可能に対向(当接)しつつ、第1及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11bの第2連結パネル部15の先端部分が第1ガイドプレート12aの第1支持板24aの当接面27に対向(当接)している。尚、第2ガイドプレート12bの第2連結板23bの先端部と第1ガイドプレート12aの第1支持板24aの一方の端部との摩擦が滑り板33によって減少し、第2連結板23bの先端部が第1支持板24aの一方の端部に対して摺動容易に当接する。
【0040】
第1番せん断型パネルダンパー11aと第2番せん断型パネルダンパー11b(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)とは、それらせん断型パネルダンパー11a,11bを第1番せん断型パネルダンパー11aから第2番せん断型パネルダンパー11b(第n番せん断型パネルダンパー)に向かって数えたときに、第1番せん断型パネルダンパー11a(奇数番号のせん断型パネルダンパー)と第1番せん断型パネルダンパー11a(奇数番号のせん断型パネルダンパー)に隣接する(隣り合う)第2番せん断型パネルダンパー11b(偶数番号のせん断型パネルダンパー)との互いに対向する第2連結パネル部15どうしが連結されている。第1番せん断型パネルダンパー11a及び第2番せん断型パネルダンパー11bの第2連結パネル部15に形成(穿孔)されたアンカー部材設置穴19にアンカー部材31が設置されるとともに、ボルト孔18に固定ボルト32が螺着され、アンカー部材31及び固定ボルト32によってそれらせん断型パネルダンパー11a,11bの第2連結パネル部15どうしが強固に連結(固定)されている。
【0041】
第1番せん断型パネルダンパー11aは、その第1連結パネル部13(第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの橋桁35(主構造物)又は建造物(ビル49)(主構造物)に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部)が第1ガイドプレート12aの第1連結板23aに連結されている。第1番せん断型パネルダンパー11aの第1連結パネル部13及び第1ガイドプレート12aの第1連結板23aに形成(穿孔)されたアンカー部材設置穴19,30にアンカー部材31が設置されるとともに、第2連結パネル部15及び第1連結板23aに形成(穿孔)されたボルト孔18,29に固定ボルト32が螺着され、アンカー部材31及び固定ボルト32によって第1連結パネル部13と第1連結板23aとが強固に連結(固定)されている。
【0042】
第2番せん断型パネルダンパー11bは、その第1連結パネル部13(第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの橋台36(支持構造物)又は基礎50(支持構造物)に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部)が第2ガイドプレート12bの第2連結板23bに連結されている。第2番せん断型パネルダンパー11bの第1連結パネル部13及び第2ガイドプレート12bの第2連結板23bに形成(穿孔)されたアンカー部材設置穴18,30にアンカー部材31が設置されるとともに、第1連結パネル部13及び第1連結板23bに形成(穿孔)されたボルト孔18,29に固定ボルト32が螺着され、アンカー部材31及び固定ボルト32によって第1連結パネル部13と第1連結板23bとが強固に連結(固定)されている。
【0043】
第1番せん断型パネルダンパー11a及び第2番せん断型パネルダンパー11bが縦方向へ移動しようとすると、それらせん断型パネルダンパー11a,11bの第2連結パネル部15の先端部分が第1ガイドプレート12aの第1支持板24aの当接面27に当接し、又は、それらせん断型パネルダンパー11a,11bの第1連結パネル部13の先端部分が第2ガイドプレート12bの第2支持板24bの当接面27に当接する。制震装置10Aでは、第1番せん断型パネルダンパー11a及び第2番せん断型パネルダンパー11bの縦方向への移動(動き)が第1ガイドプレート12aの第1支持板24a及び第2ガイドプレート12bの第2支持板24bによって阻止されている。
【0044】
尚、第1番せん断型パネルダンパー11a及び第2番せん断型パネルダンパー11b(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)を第1番せん断型パネルダンパー11aから第2番せん断型パネルダンパー11b(第n番せん断型パネルダンパー)に向かって数えたときに、第1番せん断型パネルダンパー11a(奇数番号のせん断型パネルダンパー)と第1番せん断型パネルダンパー11a(奇数番号のせん断型パネルダンパー)に隣接する(隣り合う)第2番せん断型パネルダンパー11b(偶数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する)との第1連結パネル部13どうしが連結されていてもよい。
【0045】
この場合、第1番せん断型パネルダンパー11aの第2連結パネル部15(第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの橋桁35(主構造物)又は建造物(ビル49)(主構造物)に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部)が第1ガイドプレート12aの第1連結板23aに連結され、第2番せん断型パネルダンパー11bの第2連結パネル部15(第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの橋台36(支持構造物)又は基礎50(支持構造物)に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部)が第2ガイドプレート12bの第2連結板23bに連結される。
【0046】
制震装置10Aでは、橋桁35(主構造物)と橋台36(支持構造物)との間に作用した作用力(地震エネルギーによって橋桁35(主構造物)と橋台36(支持構造物)との間に作用する水平荷重及び鉛直荷重)によって橋桁35と橋台36との間に大きな相対変位が生じ、又は、建造物(ビル49)(主構造物)と基礎50(支持構造物)との間に作用した作用力(地震エネルギーによってビル49(主構造物)と基礎50(支持構造物)との間に作用する水平荷重及び鉛直荷重)によってビル49と基礎50との間に大きな相対変位が生じた場合、第1番せん断型パネルダンパー11a及び第2番せん断型パネルダンパー11b(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a,11b(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a,11bのダンパーパネル部14が塑性変形し、その相対変位が減衰する。制震装置10Aは、2つのせん断型パネルダンパー11a,11bを備えているから、1つのせん断型パネルダンパーを備える場合と比較し、相対変位に対する減衰機能が2倍になる。
【0047】
図12は、他の一例として示す制震装置10Bの分解斜視図であり、
図13は、
図12の制震装置10Bの側面図である。
図14は、制震装置10Bに含まれる第1ガイドプレート12aの斜視図であり、
図15は、制震装置10Bに含まれる第2ガイドプレート12bの斜視図である。
図16は、
図12の制震装置10Bの断面を示す
図8と同様の矢視断面図であり、
図17は、
図12の制震装置10Bの断面を示す
図9と同様の矢視断面図である。
図18は、
図12の制震装置10Bの断面を示す
図10と同様の矢視断面図である。
図12,13では、縦方向を矢印X、横方向を矢印Yで示し、厚み方向を矢印Zで示す。
【0048】
図12の制震装置10Bが
図1のそれと異なるところは、制震装置10Bが第1番せん断型パネルダンパー11a~第3番せん断型パネルダンパー11c(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)を有する点にあり、その他の構成は
図1の制震装置10Aのそれらと同一であるから、
図1の制震装置10Aの説明を援用するとともに、
図1の制震装置10Aと同一の符号を付すことで、この制震装置10Bにおけるその他の構成の詳細な説明は省略する。
【0049】
制震装置10Bは、第1番せん断型パネルダンパー11a~第3番せん断型パネルダンパー11c(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)から形成され、第1ガイドプレート12a及び第2ガイドプレート12bを含んでいる。第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cは、制震装置10Aのせん断型パネルダンパー11a,11bと同様に、低降状点鋼材又は極軟鉄から作られている。尚、第1番せん断型パネルダンパー11a~第3番せん断型パネルダンパー11c(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)が低降状点鋼材や極軟鉄以外の金属から作られる場合もある。第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)は、第1連結パネル部13及び第2連結パネル部15と、第1および第2連結パネル部13,15の間に延びていて所定面積の第1凹曲面域21及び所定面積の第2凹曲面域22が形成されダンパーパネル部14とを有する。
【0050】
第1連結パネル部13やダンパーパネル部14、第2連結パネル部15、ダンパーパネル部14の第1及び第2凹曲面域21,22は、制震装置10Aの第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11bのそれらと同一である。尚、ダンパーパネル部14に第1凹曲面域21及び第2凹曲面域22が形成されていなくてもよい。この場合、第1及び第2連結パネル部13,15の前面16とダンパーパネル部14の前面16とが面一になり、第1及び第2連結パネル部13,15の後面17とダンパーパネル部14の後面17とが面一になる。又、ダンパーパネル部14の両側縁20が横方向内方へ向かって円弧を画くことなく、両側縁20が括れていなくてもよい。この場合、せん断型パネルダンパー11a~11cの平面形状が縦方向へ長い矩形になる。第3番せん断型パネルダンパー11cの第1連結パネル部13の後面17(他方の面)には、後面17から前面16(一方の面)に向かって凹む複数のアンカー部材設置穴19が形成(穿孔)されている。第3番せん断型パネルダンパー11cの第2連結パネル部15の前面16(一方の面)には、前面16から後面17(他方の面)に向かって凹む複数のアンカー部材設置穴19が形成(穿孔)されている。それらアンカー部材設置穴19は、横方向へ等間隔離間して並んでいる。
【0051】
第1ガイドプレート12aは、制震装置10Aのそれと同様に、鋼材から作られ、所定厚みの第1連結板23aと、第1連結板23aに直交して第1連結板23aの一方の端部から厚み方向へ延びる所定厚みの第1支持板24aとから形成されている。第1連結板23aは、制震装置10Aの第1ガイドプレート12aのそれと同一である。第1支持板24aの厚み方向への延出寸法は、制震装置10Aの第1ガイドプレート12aの第1支持板24aのそれよりも大きい(長い)。第1連結板23aの他方の端部における後面17(他方の面)には、後面17から前面16(一方の面)に向かって凹む複数のアンカー部材設置穴19が形成(穿孔)されている。それらアンカー部材設置穴19は、横方向へ等間隔離間して並んでいる。
【0052】
第2ガイドプレート12bは、制震装置10Aのそれと同様に、鋼材から作られ、第1ガイドプレート12aと同形同大であり、縦方向の寸法(長さ寸法)や横方向の寸法(幅寸法)、前後方向の寸法(厚み寸法)が第1ガイドプレート12aのそれらと同一である。第2ガイドプレート12bは、所定厚みの第2連結板23bと、第2連結板23bに直交して第2連結板23bの他方の端部から厚み方向へ延びる所定厚みの第2支持板24bとから形成されている。第2連結板23bは、制震装置10Aの第2ガイドプレート12bのそれと同一である。第2支持板24bの厚み方向への延出寸法は、制震装置10Aの第2ガイドプレート12bの第2支持板24bのそれよりも大きい(長い)。第2連結板23bの他方の端部における前面16(一方の面)には、前面16から後面17(他方の面)に向かって凹む複数のアンカー部材設置穴19が形成(穿孔)されている。それらアンカー部材設置穴19は、横方向へ等間隔離間して並んでいる。
【0053】
制震装置10Bでは、第1番せん断型パネルダンパー11a~第3番せん断型パネルダンパー11c(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)の第1連結パネル部13どうしが対向し、ダンパーパネル部14どうしが対向するとともに、第2連結パネル部15どうしが対向し、更に、第1番せん断型パネルダンパー11aの後面17と第2番せん断型パネルダンパー11bの前面16とが対向するとともに、第2番せん断型パネルダンパー11bの後面17と第3番せん断型パネルダンパー11cの前面16とが対向した状態で、第1番せん断型パネルダンパー11aと第2番せん断型パネルダンパー11bと第3番せん断型パネルダンパー11cとが厚み方向へ重なり合っている(並んでいる)。
【0054】
制震装置10Bでは、第1ガイドプレート12aの第1連結板23aの後面26と第1番せん断型パネルダンパー11aの前面16とが対向した状態で、第1ガイドプレート12aの第1連結板23aと第1番せん断型パネルダンパー11aとが厚み方向へ重なり合っている(並んでいる)。第2ガイドプレート12bの第2連結板23bの前面25と第3番せん断型パネルダンパー11cの後面17とが対向した状態で、第3番せん断型パネルダンパー11cと第2ガイドプレート12bの第2連結板23bとが厚み方向へ重なり合っている(並んでいる)。
【0055】
第1ガイドプレート12aの第1連結板23aの先端部が第2ガイドプレート12bの第2支持板24bの一方の端部の内側(縦方向内側)に位置し、第1連結板23aの先端部が第2支持板24bの一方の端部に摺動可能に対向しつつ、第1~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cの第1連結パネル部13の先端部分が第2ガイドプレート12bの第2支持板24bの当接面27に対向(当接)している。第1ガイドプレート12aの第1連結板23aの先端部と第2ガイドプレート12bの第2支持板24bの一方の端部との摩擦が滑り板33によって減少し、第1連結板23aの先端部が第2支持板24bの一方の端部に対して摺動容易に当接する。
【0056】
第2ガイドプレート12bの第2連結板23bの先端部が第1ガイドプレート12aの第1支持板24aの他方の端部の内側(縦方向内側)に位置し、第2支持板23bの先端部が第1支持板24aの他方の端部に摺動可能に対向しつつ、第1~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cの第2連結パネル部15の先端部分が第2ガイドプレート12bの第2支持板24bの当接面27に対向(当接)している。第2ガイドプレート12bの第2連結板23bの先端部と第1ガイドプレート12aの第1支持板24aの一方の端部との摩擦が滑り板33によって減少し、第2連結板23bの先端部が第1支持板24aの一方の端部に対して摺動容易に当接する。
【0057】
第1番せん断型パネルダンパー11a~第3番せん断型パネルダンパー11c(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)は、それらせん断型パネルダンパー11a~11cを第1番せん断型パネルダンパー11aから第3番せん断型パネルダンパー11c(第n番せん断型パネルダンパー)に向かって数えたときに、第1番せん断型パネルダンパー11a(奇数番号のせん断型パネルダンパー)と第1番せん断型パネルダンパー11a(奇数番号のせん断型パネルダンパー)に隣接する(隣り合う)第2番せん断型パネルダンパー11b(偶数番号のせん断型パネルダンパー)との互いに対向する第1連結パネル部13どうしが連結され、第2番せん断型パネルダンパー11b(偶数番号のせん断型パネルダンパー)と第2番せん断型パネルダンパー11b(偶数番号のせん断型パネルダンパー)に隣接する(隣り合う)第3番せん断型パネルダンパー11c(奇数番号のせん断型パネルダンパー)との互いに対向する第2連結パネル部15どうしが連結されている。
【0058】
第1番せん断型パネルダンパー11a及び第2番せん断型パネルダンパー11bの第1連結パネル部13に形成(穿孔)されたアンカー部材設置穴19にアンカー部材31が設置されるとともに、ボルト孔18に固定ボルト32が螺着され、アンカー部材31及び固定ボルト32によってそれらせん断型パネルダンパー11a,11bの第1連結パネル部13どうしが強固に連結(固定)されている。第2番せん断型パネルダンパー11b及び第3番せん断型パネルダンパー11cの第2連結パネル部15に形成(穿孔)されたアンカー部材設置穴19にアンカー部材31が設置されるとともに、ボルト孔18に固定ボルト32が螺着され、アンカー部材31及び固定ボルト32によってそれらせん断型パネルダンパー11b,11cの第2連結パネル部15どうしが強固に連結(固定)されている。
【0059】
第1番せん断型パネルダンパー11aは、その第2連結パネル部15(第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの橋桁35(主構造物)又は建造物(ビル49)(主構造物)に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部)が第1ガイドプレート12aの第1連結板23aに連結されている。第1番せん断型パネルダンパー11aの第2連結パネル部15及び第1ガイドプレート12aの第1連結板23aに形成(穿孔)されたアンカー部材設置穴19にアンカー部材31が設置されるとともに、第2連結パネル部15及び第1連結板23aに形成(穿孔)されたボルト孔18に固定ボルト32が螺着され、アンカー部材31及び固定ボルト32によって第2連結パネル部15と第1連結板23aとが強固に連結(固定)されている。
【0060】
第3番せん断型パネルダンパー11cは、その第1連結パネル部13(第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの橋台36(支持構造物)又は基礎50(支持構造物)に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部)が第2ガイドプレート12bの第2連結板23bに連結されている。第3番せん断型パネルダンパー11cの第1連結パネル部13及び第2ガイドプレート12bの第2連結板23bに形成(穿孔)されたアンカー部材設置穴19にアンカー部材31が設置されるとともに、第1連結パネル部13及び第2連結板23bに形成(穿孔)されたボルト孔18に固定ボルト32が螺着され、アンカー部材31及び固定ボルト32によって第1連結パネル部13と第2連結板23bとが強固に連結(固定)されている。
【0061】
第1番せん断型パネルダンパー11a~第3番せん断型パネルダンパー11cが縦方向へ移動しようとすると、それらせん断型パネルダンパー11a~11cの第2連結パネル部15の先端部分が第1ガイドプレート12aの第1支持板24aの当接面27に当接し、又は、それらせん断型パネルダンパー11a~11cの第1連結パネル部13の先端部分が第2ガイドプレート12bの第2支持板24bの当接面27に当接する。制震装置10Aでは、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cの縦方向への移動(動き)が第1ガイドプレート12aの第1支持板24a及び第2ガイドプレート12bの第2支持板24bによって阻止されている。
【0062】
尚、第1番せん断型パネルダンパー11a~第3番せん断型パネルダンパー11c(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)を第1番せん断型パネルダンパー11aから第3番せん断型パネルダンパー11c(第n番せん断型パネルダンパー)に向かって数えたときに、第1番せん断型パネルダンパー11a(奇数番号のせん断型パネルダンパー)と第1番せん断型パネルダンパー11a(奇数番号のせん断型パネルダンパー)に隣接する(隣り合う)第2番せん断型パネルダンパー11b(偶数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する)との第2連結パネル部15どうしが連結されていてもよく、第2番せん断型パネルダンパー11b(偶数番号のせん断型パネルダンパー)と第2番せん断型パネルダンパー11b(偶数番号のせん断型パネルダンパー)に隣接する(隣り合う)第3番せん断型パネルダンパー11c(奇数番号のせん断型パネルダンパー)との互いに対向する第1連結パネル部13どうしが連結されていてもよい。
【0063】
この場合、第1番せん断型パネルダンパー11aの第1連結パネル部13(第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの橋桁35(主構造物)又は建造物(ビル49)(主構造物)に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部)が第1ガイドプレート12aの第1連結板23aに連結され、第3番せん断型パネルダンパー11cの第2連結パネル部15(第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの橋台36(支持構造物)又は基礎50(支持構造物)に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部)が第2ガイドプレート12bの第2連結板23bに連結される。
【0064】
制震装置10Bでは、橋桁35(主構造物)と橋台36(支持構造物)との間に作用した作用力(地震エネルギーによって橋桁35(主構造物)と橋台36(支持構造物)との間に作用する水平荷重及び鉛直荷重)によって橋桁35と橋台36との間に大きな相対変位が生じ、又は、建造物(ビル49)(主構造物)と基礎50(支持構造物)との間に作用した作用力(地震エネルギーによってビル49(主構造物)と基礎50(支持構造物)との間に作用する水平荷重及び鉛直荷重)によってビル49と基礎50との間に大きな相対変位が生じた場合、第1番せん断型パネルダンパー11aや第2番せん断型パネルダンパー11b、第3番せん断型パネルダンパー11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14が塑性変形し、その相対変位が減衰する。制震装置10Bは、3つのせん断型パネルダンパー11a~11cを備えているから、1つのせん断型パネルダンパーを備える場合と比較し、相対変位に対する減衰機能が3倍になる。
【0065】
制震装置10A及び制震装置10B(後記する制震装置10C~10Dを含む)は、橋桁34(主構造物)と橋台35(支持構造物)との間に作用した作用力(水平荷重及び鉛直荷重)によって生じる相対変位や建造物(ビル49)(主構造物)と基礎50(支持構造物)との間に作用した作用力(水平荷重及び鉛直荷重)によって生じる相対変位(水平荷重及び鉛直荷重)が第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)や第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14に伝達された際に、互いに同形同大であってダンパーパネル部14において厚み方向へ対称(面対称)に並ぶ第1凹曲面域21と第2凹曲面域22とを有するダンパーパネル部14の全体が相対変位や軸力によって均等に塑性変形し、更に、ダンパーパネル部14が橋桁35と橋台36との間に位置し又は建造物(ビル49)と基礎50との間に位置するから、相対変位の伝達時におけるダンパーパネル部14の塑性変形を妨げる障害がなく、ダンパーパネル部14全体が他物に邪魔されることなく自由に塑性変形し、それらせん断型パネルダンパー11a~11cによって橋桁35と橋台36との間に生じた相対変位(地震エネルギー)や建造物(ビル49)と基礎50との間に生じた相対変位(地震エネルギー)を十分かつ確実に減衰させることができる。
【0066】
制震装置10A及び制震装置10B(制震装置10C~10Dを含む)は、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)や第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14の第1及び第2連結パネル部13,15の間に延びる両側縁20がダンパーパネル部14の中心に向かって弧を画くように括れているから、橋桁35(主構造物)と橋台36(支持構造物)との間に作用した作用力(水平荷重及び鉛直荷重)によって生じる相対変位や建造物(ビル49)(主構造物)と基礎50(支持構造物)との間に作用した作用力(水平荷重及び鉛直荷重)によって生じる相対変位(水平荷重及び鉛直荷重)が第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)や第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14の両側縁20の所定の箇所に集中して作用することはなく、相対変位がダンパーパネル部14の括れた両側縁20に均等に伝わるとともにダンパーパネル部14の両側縁20から第1凹曲面域21及び第2凹曲面域22に均等に伝わり、第1凹曲面域21と第2凹曲面域22とが確実に塑性変形するから、それらせん断型パネルダンパー11a~11cによって橋桁35と橋台36との間に生じた相対変位(地震エネルギー)や建造物(ビル49)と基礎50との間に生じた相対変位(地震エネルギー)を十分かつ確実に減衰させることができる。
【0067】
制震装置10A及び制震装置10B(制震装置10C~10Dを含む)は、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)や第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)が優れた塑性変形機能を有する低降状点鋼材又は極軟鉄から作られているとともに、第1及び第2凹曲面域21,22が凹レンズ形状に成形されているから、相対変位や軸力がダンパーパネル部14に伝わり、相対変位が次第に大きくなると、厚み寸法が小さい第1及び第2凹曲面域21,22の中心から塑性変形が始まり、その塑性変形が第1及び第2凹曲面域21,22の中心から第1及び第2凹曲面域21,22の周縁に向かって次第に拡大する。従って、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)や第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14を均等に塑性変形させることができ、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11bや第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cによって橋桁35と橋台36との間に生じた相対変位(地震エネルギー)や建造物(ビル49)と基礎50との間に生じた相対変位(地震エネルギー)を十分かつ確実に減衰させることができる。
【0068】
図19は、制震装置10Aを設置した橋梁34の一例を示す図であり、
図20は、
図19の部分拡大図である。
図19では、第1及び第2ガイドプレート12a,12bを二点鎖線で示している。
図19では、橋梁34(構造物)に3個の制震装置10Aが設置されているが、制震装置10Aの設置数や大きさ(制震装置10Aのサイズ)に特に限定はなく、橋梁34の大きさや橋梁34に求められる耐震性能等の各種条件によって制震装置10Aの設置数や大きさが選択される。尚、
図19の橋梁34に
図12の制震装置10Bが設置されていてもよい。
【0069】
制震装置10Aは、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11bの縦方向が橋梁34の橋軸方向(延出方向)と交差するように、橋梁34の橋桁35(主構造物)と橋梁34の可動橋脚の橋台36(支持構造物)との間に配置され、第2ガイドプレート12bが橋梁34の橋桁35(主構造物)に設置され、第1ガイドプレート12aが橋梁34の可動橋脚の橋台36(支持構造物)に設置される(制震装置10Bを同様)。制震装置10Aの第2ガイドプレート12bは、その第2連結板23bが橋桁35から延びるH型鋼37(設置箇所)のフランジ38に固定ボルト32及びナット(図示せず)によって強固に連結(固定)されている。制震装置10Aの第1ガイドプレート12aは、その第1連結板23aが橋台36に固定されたブラケット39(設置箇所)の取付プレート40に固定ボルト32及びナット(図示せず)によって強固に連結(固定)されている。
【0070】
地震が発生し、地震の揺れが橋梁34に伝わると、橋桁35(主構造物)と橋台36(支持構造物)との間に相対変位が生じ、橋台36(ブラケット39)に設置された第1ガイドプレート12a(第1連結板23a及び第1支持板24a)が橋梁23の橋軸方向(延出方向)へ振動する(揺れ動く)とともに、橋桁35(H型鋼37)に設置された第2ガイドプレート12b(第2連結板23b及び第2支持板24b)が橋梁34の橋軸方向(延出方向)へ振動する(揺れ動く)。橋桁35と橋台36との間に相対変位が生じると、その相対変位が第1及び第2ガイドプレート12a,12bから第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11bのダンパーパネル部14に均等に伝達されるとともに、それらせん断型パネルダンパー11a,11bが橋梁34の橋軸方向(延出方向)へ振動し(揺れ動き)、第1番せん断型パネルダンパー11aと第2番せん断型パネルダンパー11bとが第1連結パネル部13を支点にして展開と収束とを繰り返す(制震装置10Bでは、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cが第1番せん断型パネルダンパー11aの第2連結パネル部15及び第3番せん断型パネルダンパー11cの第1連結パネル部13を支点にして展開と収束とを繰り返す)。
【0071】
橋桁35(主構造物)と橋台36(支持構造物)との間の相対変位の変位量(大きさ)がダンパーパネル部14の降伏点よりも大きくなると、第1番せん断型パネルダンパー11a及び第2番せん断型パネルダンパー11b(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のうちの一方のダンパーパネル部14又はそれらせん断型パネルダンパー11a,11bの双方のダンパーパネル部14がその中心からフィレット(両側縁20)の位置にかけて全体が均一に塑性変形する。第1番せん断型パネルダンパー11a及び第2番せん断型パネルダンパー11b(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a,11b(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a,11bのダンパーパネル部14が塑性変形することで、それらせん断型パネルダンパー11a,11bのダンパーパネル部14が地震による相対変位(地震エネルギー)を吸収し、せん断型パネルダンパー11a,11bによって地震エネルギーが減衰する(制震装置10Bも同様)。
【0072】
図19の制震装置10A(制震装置10Bを含む)は、それが厚み方向へ並ぶ複数の第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)(又は、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c)を備え、それらせん断型パネルダンパー11a,11bを第1番せん断型パネルダンパー11aから第2番せん断型パネルダンパー11b(第n番せん断型パネルダンパー)に向かって数えたときに、奇数番号のせん断型パネルダンパー(第1番せん断型パネルダンパー11a)と奇数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する偶数番号のせん断型パネルダンパー(第2番せん断型パネルダンパー11b)との互いに対向する第2連結パネル部15どうし(互いに対向する第1連結パネル部13どうしと互いに対向する第2連結パネル部15どうしとのうちのいずれか一方)が連結されており(又は、奇数番号のせん断型パネルダンパーと奇数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する偶数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部13どうしと互いに対向する第2連結パネル部15どうしとのうちのいずれか一方が連結されているとともに、偶数番号のせん断型パネルダンパーと偶数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する奇数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部13どうしと互いに対向する第2連結パネル部15どうしとのうちのいずれか他方が連結されており)、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(又は、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c)のうちの橋桁35(主構造物)に対向するせん断型パネルダンパー11bの第1及び第2連結パネル部13,15のうちのそれらせん断型パネルダンパー11a,11bどうしの連結に使用されない連結パネル部13が橋桁35に直接又は間接的に連結され、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(又は、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c)のうちの橋台36(支持構造物)に対向するせん断型パネルダンパー11aの第1及び第2連結パネル部13,15のうちのそれらせん断型パネルダンパー11a,11bどうしの連結に使用されない連結パネル部13が橋台36に直接又は間接的に連結され、橋桁35と橋台36との間に作用した作用力(地震エネルギーによって橋桁35と橋台36との間に作用する水平荷重及び鉛直荷重)によって橋桁35と橋台36との間に生じる相対変位を第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(又は、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c)が受け持つから、1つのせん断型パネルダンパーでは吸収することができないほどの大きな相対変位(例えば、レベル2以上の地震による相対変位)が橋桁35と橋台36との間に生じたとしても、それらせん断型パネルダンパー11a,11bのうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a,11b(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a,11bのダンパーパネル部14が塑性変形してその相対変位を減衰させることができ、橋桁35と橋台36との間に生じた相対変位(地震エネルギー)を十分かつ確実に減衰させることができるとともに、地震発生時に地震エネルギーを十分かつ確実に吸収して地震による橋桁35や橋台36の変形や損傷を最小限にすることができる。
【0073】
制震装置10A(制震装置10Bを含む)は、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)(又は、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c)のうちの橋桁35(主構造物)に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部13,15のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部を第2ガイドプレート12bの第2連結板23bに連結しつつ第2ガイドプレート12bの第2連結板23bを橋桁35(主構造物)に連結し、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(又は、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c)のうちの橋台36(支持構造物)に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部13,15のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部を第1ガイドプレート12aの第1連結板23aに連結しつつ第1ガイドプレート12aの第1連結板23aを橋台36(支持構造物)に連結することで、制震装置10A(又は、制震装置10B)を橋桁35と橋台36との間に設置することができるから、第1及び第2ガイドプレート12a,12bを利用することで制震装置10A(又は、制震装置10B)を短い工期で廉価に施工することができ、地震後はダンパーパネル部14が塑性変形したせん断型パネルダンパーを交換するだけでよく、地震後に制震装置10A(又は、制震装置10B)をあらたに施工する必要はなく、手間と費用とを節約することができる。
【0074】
制震装置10A(制震装置10Bを含む)は、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー10A(又は、制震装置10B)(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)(又は、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c)の縦方向(所定の方向)への移動が第1及び第2ガイドプレート12a,12bの第1及び第2支持板24a,24bによって阻止されるから、横方向(一定の方向)への相対変位に対してのみに第1番及び第2番せん断型パネルダンパー10A(又は、制震装置10B)(又は、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c)の相対変位に対する減衰力を発揮させることができる。
【0075】
図19の制震装置10A(制震装置10Bを含む)は、大きな地震(例えば、レベル2以上の地震)が発生し、橋梁34の橋桁35(主構造物)と橋台36(支持構造物)との間に作用した作用力(地震エネルギーによって橋桁35と橋台36との間に作用する水平荷重及び鉛直荷重)によって橋桁35と橋台36との間に大きな相対変位が生じたときに、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)(又は、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c)のうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a,11b(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a,11bのダンパーパネル部14が塑性変形してその相対変位を減衰させることができるから、橋梁34の落下や崩壊という大事故を防ぐことができ、大きな地震の発生後における橋梁34の継続使用を可能にすることができる。
【0076】
図19の制震装置10A(制震装置10Bを含む)は、大きな地震の発生後に橋梁34の通行が長期間にわたって制限されることはなく、緊急車両や支援物資の輸送車両等の通行を可能にすることができ、震災地域の救助活動や震災地域の円滑な復興を可能にすることができる。制震装置10A(制震装置10Bを含む)は、ダンパーパネル部14が塑性変形した第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(又は、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c)を直ちに交換することで橋梁34における次の相対変位に速やかに備えることができる。
【0077】
図21は、制震装置10Aを設置した橋梁34の他の一例を示す部分拡大図である。尚、
図21の橋梁34に
図12の制震装置10Bが設置されていてもよい。制震装置10Aは、熱膨張又は熱収縮によって橋桁35(主構造物)に寸法変化が生じたときに、熱膨張又は熱収縮による寸法変化分を吸収する粘性系シリンダー型ダンパー41(寸法変化吸収装置)を含んでいる。
【0078】
制震装置10Aは、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11bの縦方向が橋梁34の橋軸方向(延出方向)と交差するように、粘性系シリンダー型ダンパー41と橋梁34の可動橋脚の橋台36(支持構造物)との間に配置され、第1連結パネル部13が粘性系シリンダー型ダンパー41に連結され、
【0079】
第2連結パネル部15が橋梁34の可動橋脚の橋台36(支持構造物)に連結される(制震装置10Bも同様)。尚、橋梁34に粘性系シリンダー型ダンパー41以外の寸法変化吸収装置が設置されてもよい。
【0080】
粘性系シリンダー型ダンパー41は、ピストンヘッドを備えたピストンロッドとピストンロッドを進退可能に収容するシリンダーとから形成されている。シリンダーの内部には、粘性体(シリコンオイル)が密閉状態で封入されている。シリンダーの内部においてピストンロッドが進退(移動)するときに、移動速度に応じて抵抗力(減衰力)が発生し、エネルギーを吸収する。粘性系シリンダー型ダンパー41は、その一端部42がクレビス43を介して橋桁35(主構造物)に連結され、その他端部44がクレビス43を介して制震装置10Aの第1連結パネル部13に連結される。粘性系シリンダー型ダンパー41(寸法変化吸収装置)は、熱膨張又は熱収縮によって橋桁35に寸法変化が生じたときに、熱膨張又は熱収縮による橋桁35の寸法変化分を吸収する。粘性系シリンダー型ダンパー41は、熱膨張又は熱収縮による橋桁35のゆっくりとした遅い寸法変化分を吸収する。
【0081】
橋梁34の周囲環境の温度が低下して橋梁34の温度が低くなり、温度(温度低下)による自由熱収縮によって橋桁35(主構造物)に寸法変化が生じ、橋桁35の橋軸方向(長手方向)の寸法が小さくなる(橋桁35が橋軸方向へ収縮する)。又、橋梁34の周囲環境の温度が増加して橋梁34の温度が高くなり、温度(温度上昇)による自由熱膨張によって橋桁35(主構造物)に寸法変化が生じ、橋桁35の橋軸方向(長手方向)の寸法が大きくなる(橋桁35が橋軸方向へ膨張する)。
【0082】
制震装置10Aは、熱膨張又は熱収縮による橋桁35のゆっくりとした遅い寸法変化分を粘性系シリンダー型ダンパー41(寸法変化吸収装置)が吸収することで、熱膨張又は熱収縮による橋桁35の寸法変化によって第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11bが振動することはなく(揺れ動くことはなく)、橋桁35の寸法変化によって第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11bのダンパーパネル部14が塑性変形することはない(制震装置10Bを同様)。
【0083】
制震装置10Aでは、地震が発生し、橋桁35(主構造物)と橋台36(支持構造物)との間に相対変位(寸法変位以外の速い相対変位)が生じると、粘性系シリンダー型ダンパー41(寸法変化吸収装置)がロック(停止)し、その相対変位が第1及び第2ガイドプレート12a,12bから第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11bのダンパーパネル部14に均等に伝達され、それらせん断型パネルダンパー11a,11bが橋梁34の橋軸方向(延出方向)へ振動し(揺れ動き)、第1番せん断型パネルダンパー11aと第2番せん断型パネルダンパー11bとが第1連結パネル部13を支点にして展開と収束とを繰り返す(制震装置10Bでは、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cが第1番せん断型パネルダンパー11aの第2連結パネル部15及び第3番せん断型パネルダンパー11cの第1連結パネル部13を支点にして展開と収束とを繰り返す)。
【0084】
制震装置10Aでは、橋桁35(主構造物)と橋台36(支持構造物)との間の相対変位の変位量(大きさ)がダンパーパネル部14の降伏点よりも大きくなると、第1番せん断型パネルダンパー11a及び第2番せん断型パネルダンパー11b(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)の一方のダンパーパネル部14又はそれらせん断型パネルダンパー11a,11bの双方のダンパーパネル部14がその中心からフィレット(両側縁20)の位置にかけて全体が均一に塑性変形し、それらせん断型パネルダンパー11a,11bのダンパーパネル14が地震による相対変位(地震エネルギー)を吸収し、せん断型パネルダンパー11a,11bによって地震エネルギーが減衰する(制震装置10Bも同様)。
【0085】
図21の制震装置10A(制震装置10Bを含む)は、熱膨張又は熱収縮によって橋梁34の橋桁35(主構造物)に寸法変化が生じ、その寸法変化によって第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)(又は、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c)のダンパーパネル部14が塑性変形した場合、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(又は、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c)のうちのダンパーパネル部14が塑性変形したせん断型パネルダンパーを橋桁35と橋台36との間に生じた相対変位の減衰に利用することができなくなるが、熱膨張又は熱収縮による橋桁のゆっくりとした遅い寸法変化分を粘性系シリンダー型ダンパー41(寸法変化吸収装置)が吸収し、橋桁35の寸法変化によって第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(又は、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14が塑性変形することはないから、それらせん断型パネルダンパー11a,11b(又は、せん断型パネルダンパー11a~11c)の相対変位減衰機能が損なわれることはなく、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(又は、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c)の全てを橋桁35と橋台36との間に生じた相対変位の減衰に利用することができる。
【0086】
制震装置10A(制震装置10Bを含む)は、熱膨張又は熱収縮による寸法変位以外の大きな地震(例えば、レベル2以上の地震)による速い相対変位(例えば、レベル2以上の地震による相対変位)が橋桁35(主構造物)と橋台36(支持構造物)との間に生じたときに、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)(又は、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c)のうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a,11b(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a,11bのダンパーパネル部14が塑性変形してその相対変位を減衰させることができ、1つのせん断型パネルダンパーでは吸収することができないほどの大きな相対変位が橋桁35と橋台36との間に生じたとしても、その相対変位(地震エネルギー)を十分かつ確実に減衰させることができ、地震発生時に地震エネルギーを十分かつ確実に吸収して地震による橋桁35や橋台36の変形や損傷を最小限にすることができる。
【0087】
図22は、制震装置10Cを設置した橋梁34の他の一例を示す部分拡大図である。制震装置10Cは、第1番せん断型パネルダンパー11a~第3番せん断型パネルダンパー11c(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)から形成され、第1アングル材45及び第2アングル材46を含んでいる。第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11bや第2番及び第3番せん断型パネルダンパー11b,11cの連結は、
図12の制震装置10Bのそれらと同一である。尚、
図22の橋梁34における制震装置10Cの設置箇所の近傍に一端部が制震装置10Cに連結された
図21に示す粘性系シリンダー型ダンパー41(寸法変化吸収装置)が設置されていてもよい。
【0088】
第1アングル材45は、鋼材から作られ、一体に成形された垂直プレート47及び水平プレート48を有する。第1アングル材45の垂直プレート47及び水平プレート48には、横方向へ並ぶ複数のボルト孔29が形成(穿孔)されている。第2アングル材46は、第1アングル材45と同形同大であり、鋼材から作られ、一体に成形された垂直プレート47及び水平プレート48を有する。第2アングル材46の垂直プレート47及び水平プレート48には、横方向へ並ぶ複数のボルト孔29が形成(穿孔)されている。
【0089】
図22に示す制震装置10Cでは、第1番せん断型パネルダンパー11aの第2連結パネル部15(第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの橋桁(主構造物)又は建造物(主構造物)に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部)が第1アングル材45の垂直プレート47に連結されている。第1番せん断型パネルダンパー11aの第2連結パネル部15及び第1アングル材45の垂直プレート47に形成(穿孔)されたボルト孔29に固定ボルト32が螺着され、固定ボルト32によって第2連結パネル部15と垂直プレート47とが強固に連結(固定)されている。第1アングル材45の垂直プレート47は、第1番せん断型パネルダンパー11aの第2連結パネル部15から第1連結パネル部13に達し、一方の面(外面)がそれらパネル部13,15の前面16に対向(当接)している。第1アングル材45は、その垂直プレート47が第1番せん断型パネルダンパー11aの厚み方向外方への移動を阻止している。
【0090】
第3番せん断型パネルダンパー11cの第1連結パネル部13(第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの橋台(支持構造物)又は基礎(支持構造物)に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部)が第2アングル材46の垂直プレート47に連結されている。第3番せん断型パネルダンパー11cの第1連結パネル部13及び第2アングル材46の垂直プレート47に形成(穿孔)されたボルト孔29に固定ボルト32が螺着され、固定ボルト32によって第1連結パネル部13と垂直プレート47とが強固に連結(固定)されている。第2アングル材46の垂直プレート47は、第3番せん断型パネルダンパー11cの第1連結パネル部13から第2連結パネル部15に達し、一方の面(外面)がそれらパネル部13,15の後面17に対向(当接)している。第2アングル材46は、その垂直プレート47が第3番せん断型パネルダンパー11cの厚み方向外方への移動を阻止している。
【0091】
制震装置10Cは、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cの縦方向が橋梁34の橋軸方向(延出方向)と交差するように、橋梁34の橋桁35(主構造物)と橋梁34の可動橋脚の橋台36(支持構造物)との間に配置され、第2アングル材46の水平プレート48が橋梁34の橋桁35(主構造物)に設置され、第1アングル材45の水平プレート48が橋梁34の可動橋脚の橋台36(支持構造物)に設置される。制震装置10Cの第2アングル材46は、その水平プレート48が橋桁35から延びるH型鋼37(設置箇所)のフランジ38に固定ボルト32及びナット(図示せず)によって強固に連結(固定)されている。制震装置10Cの第1アングル材45は、その水平プレート48が橋台36に固定されたブラケット39(設置箇所)の取付プレート40に固定ボルト32及びナット(図示せず)によって強固に連結(固定)されている。
【0092】
地震が発生し、地震の揺れが橋梁34に伝わると、橋桁35(主構造物)と橋台36(支持構造物)との間に相対変位が生じ、橋台35(ブラケット39)に設置された第1アングル材45が振動する(揺れ動く)とともに、橋桁35(H型鋼37)に設置された第2アングル材46が振動する(揺れ動く)。橋桁35と橋台36との間に相対変位が生じると、その相対変位が第1及び第2アングル材45,46から第1番~第3番せん断型パネルダンパーの11a~11cダンパーパネル部14に均等に伝達され、それらせん断型パネルダンパー11a~11cが橋梁34の橋軸方向(延出方向)及び橋軸方向と交差する方向へ振動し(揺れ動き)、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cが第1番せん断型パネルダンパー11aの第2連結パネル部15及び第3番せん断型パネルダンパー11cの第1連結パネル部13を支点にして展開と収束とを繰り返す。
【0093】
橋桁35(主構造物)と橋台36(支持構造物)との間の相対変位の変位量(大きさ)がダンパーパネル部14の降伏点よりも大きくなると、第1番せん断型パネルダンパー11aや第2番せん断型パネルダンパー11b、第3番せん断型パネルダンパー11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a~11c(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14がその中心からフィレット(両側縁20)の位置にかけて全体が均一に塑性変形する。第1番せん断型パネルダンパー11aや第2番せん断型パネルダンパー11b、第3番せん断型パネルダンパー11cのうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14が塑性変形することで、それらせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル14が地震による相対変位(地震エネルギー)を吸収し、せん断型パネルダンパー11a~11cによって地震エネルギーが減衰する。
【0094】
図22の制震装置10Cは、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のうちのそれらせん断型パネルダンパー11a~11cどうしの連結に使用されない連結パネル部(第1番せん断型パネルダンパー11aの第2連結パネル部15)を第1アングル材45に連結しつつ第1アングル材45を橋桁35(主構造物)(橋桁35(主構造物)と橋台36(支持構造物)とのいずれか一方)に連結し、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のそれらせん断型パネルダンパー11a~11cどうしの連結に使用されない連結パネル部(第3番せん断型パネルダンパー11cの第1連結パネル部13)を第2アングル材46に連結しつつ第2アングル材46を橋台36(支持構造物)(橋桁35(主構造物)と橋台36(支持構造物)とのいずれか他方)に連結することで、制震装置10Cを橋桁35と橋台36との間に設置することができるから、第1及び第2アングル材45,46を利用することで制震装置10Cを短い工期で廉価に施工することができ、地震後はダンパーパネル部14が塑性変形したせん断型パネルダンパー11a~11cを交換するだけでよく、地震後に制震装置をあらたに施工する必要はなく、手間と費用とを節約することができる。
【0095】
図22の制震装置10Cは、橋桁35(主構造物)と橋台36(支持構造物)との間に作用した作用力(地震エネルギーによって橋桁35と橋台36との間に作用する水平荷重及び鉛直荷重)によって橋桁35と橋台36との間に生じた相対変位が第1及び第2アングル材45,46を介して第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)に伝達されるから、相対変位を橋桁35や橋台36からそれらせん断型パネルダンパー11a~11cに確実に伝達させることができる。制震装置10Cは、1つのせん断型パネルダンパーでは吸収することができないほどの大きな相対変位(例えば、レベル2以上の地震による相対変位)が橋桁35(主構造物)と橋台36(支持構造物)との間に生じたとしても、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a~11c(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14が塑性変形してその相対変位を減衰させることができ、橋桁35と橋台36との間に生じた相対変位(地震エネルギー)を十分かつ確実に減衰させることができるとともに、地震発生時に地震エネルギーを十分かつ確実に吸収して地震による橋桁35や橋台36の変形や損傷を最小限にすることができる。
【0096】
図22の制震装置10Cは、大きな地震(例えば、レベル2以上の地震)が発生し、橋梁34の橋桁35(主構造物)と橋台36(支持構造物)との間に作用した作用力(地震エネルギーによって橋桁35と橋台36との間に作用する水平荷重及び鉛直荷重)によって橋桁35と橋台36との間に大きな相対変位が生じたときに、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cのうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a~11c(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14が塑性変形してその相対変位を減衰させることができるから、橋梁34の落下や崩壊という大事故を防ぐことができ、大きな地震の発生後における橋梁34の継続使用を可能にすることができる。
【0097】
図22の制震装置10Cは、大きな地震の発生後に橋梁34の通行が長期間にわたって制限されることはなく、緊急車両や支援物資の輸送車両等の通行を可能にすることができ、震災地域の救助活動や震災地域の円滑な復興を可能にすることができる。制震装置10Cは、ダンパーパネル部14が塑性変形した第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cを直ちに交換することで橋梁34における次の相対変位に速やかに備えることができる。制震装置10Cは、第1アングル材45の垂直プレート47が第1番せん断型パネルダンパー11aの厚み方向外方への移動を阻止し、第2アングル材46の垂直プレート47が第3番せん断型パネルダンパー11cの厚み方向外方への移動を阻止するから、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cがそれらの厚み方向へ動くことはなく、それらせん断型パネルダンパー11a~11cが厚み方向へ動くことによるそれらせん断型パネルダンパー11a~11cの連結解除を防ぐことができ、それらせん断型パネルダンパー11a~11cを利用して地震エネルギーを確実に減衰することができる。
【0098】
図23は、制震装置10Bを設置したビル49(建造物)の一例を示す図であり、
図24は、
図23の部分拡大図である。
図24では、第1及び第2ガイドプレート12a,12bを二点鎖線で示している。
図22では、ビル49(構造物)に3個の制震装置10Bが設置されているが、制震装置10Bの設置数や大きさ(制震装置10Bのサイズ)に特に限定はなく、ビル49の大きさや耐震性能等の各種条件によって制震装置10Bの設置数や大きさが選択される。尚、
図23のビル49に
図1の制震装置10Aや
図22の制震装置10Cが設置されていてもよい。
【0099】
制震装置10Bは、ビル49(主構造物)の底スラブのコンクリート構造物(設置箇所)とビル49を支える基礎50(支持構造物)のコンクリート構造物(設置箇所)との間に配置され、第2ガイドプレート12bがビル49(主構造物)の底スラブのコンクリート構造物に設置され、第1ガイドプレート12aが基礎50(支持構造物)のコンクリート構造物に設置される(制震装置10Aを同様)。制震装置10Bの第2ガイドプレート12bは、その第2連結板23bがビル49の底スラブのコンクリート構造物(設置箇所)に固定ボルト及びナットによって強固に連結(固定)されている。制震装置10Bの第1ガイドプレート12aは、その第1連結板23aが基礎50(支持構造物)のコンクリート構造物(設置箇所)に固定ボルト及びナットによって強固に連結(固定)されている。尚、
図22に示すように、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cが第1アングル材45a及び第2アングル材45bによってビル49(主構造物)と基礎50(支持構造物)と連結されていてもよい。
【0100】
地震が発生し、地震の揺れが基礎50に伝わると、ビル49(主構造物)と基礎50(支持構造物)との間に作用力(水平荷重及び鉛直荷重)が作用し、基礎50のコンクリート構造物に設置された第1ガイドプレート12a(第1連結板23a及び第1支持板24a)が所定の方向へ振動する(揺れ動く)とともに、ビル49の底スラブのコンクリート構造物に設置された第2ガイドプレート12b(第2連結板23b及び第2支持板24b)が所定の方向へ振動する(揺れ動く)。ビル49と基礎50とに作用力が作用すると、その作用力が第1及び第2ガイドプレート12a,12bから第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14に均等に伝達され、それらせん断型パネルダンパー11a~11cが所定の方向へ振動し(揺れ動き)、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cが第1番せん断型パネルダンパー11aの第2連結パネル部15及び第3番せん断型パネルダンパー11cの第1連結パネル部13を支点にして展開と収束とを繰り返す(制震装置10Aでは、第1番せん断型パネルダンパー11aと第2番せん断型パネルダンパー11bとが第2連結パネル部15を支点にして展開と収束とを繰り返す)。
【0101】
ビル49(主構造物)と基礎50(支持構造物)との間に作用する作用力によってビル49と基礎50との間に生じた相対変位がダンパーパネル部14の降伏点よりも大きくなると、第1番せん断型パネルダンパー11aや第2番せん断型パネルダンパー11b、第3番せん断型パネルダンパー11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a~11c(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14がその中心からフィレット(両側縁20)の位置にかけて全体が均一に塑性変形する。第1番せん断型パネルダンパー11aや第2番せん断型パネルダンパー11b、第3番せん断型パネルダンパー11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a~11c(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14が塑性変形することで、それらせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル14が地震による作用力(地震エネルギー)を吸収し、せん断型パネルダンパー11a~11cによって地震エネルギーによる相対変位が減衰する(制震装置10Aも同様)。
【0102】
図23の制震装置10B(制震装置10Aを含む)は、それが厚み方向へ並ぶ複数の第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)(又は、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b)を備え、それらせん断型パネルダンパー11a~11cを第1番せん断型パネルダンパー11aから第3番せん断型パネルダンパー11c(第n番せん断型パネルダンパー)に向かって数えたときに、奇数番号のせん断型パネルダンパー(第1番せん断型パネルダンパー11a)と奇数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する偶数番号のせん断型パネルダンパー(第2番せん断型パネルダンパー11b)との互いに対向する第1連結パネル部13どうしが連結されているとともに、偶数番号のせん断型パネルダンパー(第2番せん断型パネルダンパー11b)と偶数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する奇数番号のせん断型パネルダンパー(第3番せん断型パネルダンパー11c)との互いに対向する第2連結パネル部15どうしが連結されており(又は、奇数番号のせん断型パネルダンパーと奇数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する偶数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部どうしと互いに対向する第2連結パネル部どうしとのうちのいずれか一方が連結されているとともに、偶数番号のせん断型パネルダンパーと偶数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する奇数番号のせん断型パネルダンパーとの互いに対向する第1連結パネル部どうしと互いに対向する第2連結パネル部どうしとのうちのいずれか他方が連結されており)、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(又は、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b)のうちのビル49(主構造物)に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部(第3番せん断型パネルダンパー11cの第1連結パネル部13)がビル49の底スラブのコンクリート構造物に直接又は間接的に連結され、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(又は、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b)のうちの基礎50(支持構造物)に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部(第1番せん断型パネルダンパー11cの第2連結パネル部15)が基礎50のコンクリート構造物に直接又は間接的に連結され、ビル49(上部構造材)と基礎50(下部構造材)との間に作用した作用力(水平荷重及び鉛直荷重)によってビル49と基礎50との間に生じた相対変位を第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(又は、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b)が受け持つから、1つのせん断型パネルダンパーでは吸収することができないほどの大きな相対変位(例えば、レベル2以上の地震による作用力)がビル49と基礎50との間に生じたとしても、それらせん断型パネルダンパー11a~11cのうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a~11c(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14が塑性変形してその相対変位を減衰させることができ、ビル49と基礎50との間に生じた相対変位(地震エネルギー)を十分かつ確実に減衰させることができるとともに、地震発生時に地震エネルギーを十分かつ確実に吸収して地震によるビル49や基礎50の変形や損傷を最小限にすることができる。
【0103】
図23の制震装置10B(制震装置10Aを含む)は、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)(又は、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b)のうちのビル49(主構造物)の底スラブのコンクリート構造物に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部(第3番せん断型パネルダンパー11cの第1連結パネル部13)を第2ガイドプレート12bの第2連結板23bに連結しつつ第2ガイドプレート12bの第2連結板23bをビル49(主構造物)の底スラブのコンクリート構造物に連結し、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(又は、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b)のうちの基礎50(支持構造物)のコンクリート構造物に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部(第1番せん断型パネルダンパー11aの第2連結パネル部15)を第1ガイドプレート12aの第1連結板23aに連結しつつ第1ガイドプレート12aの第1連結板23aを基礎50n(支持構造物)のコンクリート構造物に連結することで、制震装置10B(又は、制震装置10A)をビル49と基礎50との間に設置することができるから、第1及び第2ガイドプレート12a,12bを利用することで制震装置10B(又は、制震装置10A)を短い工期で廉価に施工することができ、地震後はダンパーパネル部14が塑性変形したせん断型パネルダンパー11a~11cを交換するだけでよく、地震後に制震装置をあらたに施工する必要はなく、手間と費用とを節約することができる。
【0104】
図23の制震装置10B(制震装置10Aを含む)は、大きな地震(例えば、レベル2以上の地震)が発生し、ビル49(主構造物)と基礎50(支持構造物)との間に作用した作用力(地震エネルギーによってビル49と基礎50との間に作用する水平荷重及び鉛直荷重)によってビル49と基礎50との間に大きな相対変位が生じたときに、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)(又は、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b)のうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a~11c(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14が塑性変形してその相対変位を減衰させることができるから、ビル49の損壊や崩壊という大事故を防ぐことができ、大きな地震の発生後にビル49の使用が長期間にわたって制限されることはなく、大きな地震の発生後におけるビル49の継続使用を可能にすることができる。
図23の制震装置10B(制震装置10Aを含む)は、ダンパーパネル部14が塑性変形した第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(又は、第1番及び第2番せん断型パネルダンパー11a,11b)を直ちに交換することでビル49における次の相対変位に速やかに備えることができる。
【0105】
図25は、第1及び第2間柱55,57の間に設置された制震装置10Dの一例を示す正面図であり、
図26は、第1及び第2間柱55,57の間に設置された
図25の制震装置10Dの側面図である。
図27は、一例として示す第1及び第2鋼製ブラケット6
1,67の正面図であり、
図28は、第1及び第2鋼製ブラケット6
1,67の上面図である。
図25,26では、上下方向(縦方向)を矢印X、横方向を矢印Yで示し、厚み方向を矢印Zで示す。
【0106】
制震装置10Dは、第1番せん断型パネルダンパー~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)から形成され、超高層ビルや高層ビル、中層ビル、低層ビル、RC造またはSRC造のマンション、RC造の戸建て住宅等の建造物51の上部構造材52と下部構造材53との間に配置され、建造物51を地震から保護する。上部構造材52は、建造物51の天井梁54と、天井梁54に連結されて天井梁54から下方へ延びる第1間柱55とから形成されている。下部構造材53は、建造物51の床梁56と、床梁56に連結されて床梁56から上方へ延びる第2間柱57とから形成されている。
【0107】
制震装置10Dを形成する第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cは、制震装置10Bのせん断型パネルダンパー11a~11cと同様に、低降状点鋼材又は極軟鉄から作られている。第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)は、第1連結パネル部13及び第2連結パネル部15と、第1および第2連結パネル部13,15の間に延びていて所定面積の第1凹曲面域21及び所定面積の第2凹曲面域22が形成されダンパーパネル部14とを有する。第1連結パネル部13やダンパーパネル部14、第2連結パネル部15、ダンパーパネル部14の第1及び第2凹曲面域21,22は、制震装置10Bの第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cのそれらと同一である。
【0108】
第1間柱55及び第2間柱57は、同形同大であり、縦方向の寸法(長さ寸法)や横方向の寸法(幅寸法)、厚み方向の寸法が同一である。第1間柱55と第2間柱57とは上下方向へ離間対向し、第1間柱55と第2間柱57との間にスペース58が形成されている。第1間柱55は、建造物51の天井梁54(大梁又は小梁)に連結されて天井梁54から下方へ延びる第1基礎間柱59と、第1基礎間柱59の下端に連結された第1鋼材60とから形成されている。天井梁54や第1基礎間柱59は、プレストレスト・コンクリート製である。
【0109】
第1鋼材60は、第1基礎間柱59の下端に連結された第1鋼製ブラケット61と、第1鋼製ブラケット61に連結(固定)された第1H形鋼62(第1形鋼)とから形成されている。第1鋼製ブラケット61は、所定厚みを有して横方向へ延びる板状の鋼材である。尚、第1形鋼としてI形鋼やT形鋼、山形鋼、溝形鋼を使用することもできる。
【0110】
第1H形鋼62は、第1鋼製ブラケット61の下面において縦方向下方へ向かって垂下するように設置されている。第1H形鋼62は、第1鋼製ブラケット61の下面の横方向中央に配置され、フランジ63とウェブ64とが第1鋼製ブラケット61の下面に溶接によって固着(溶着)され、フランジ63とウェブ64とが第1鋼製ブラケット61の下面から縦方向下方へ延びている。第1H形鋼62のウェブ64には、横方向へ等間隔離間して並ぶ複数のボルト孔が穿孔されている。
【0111】
第1基礎間柱59を形成するプレストレスト・コンクリートは、プレテンション方式又はポストテンション方式によって施工されている。プレテンション方式による第1基礎間柱59やポストテンション方式による第1基礎間柱59は、既存の施工技術によって新築又は既設(中古)の建造物51に構築される。尚、第1基礎間柱59が鉄筋コンクリートから作られていてもよい。鉄筋コンクリート製の第1基礎間柱59は、既存の施工技術によって新築又は既設の建造物51に構築される。又、第1間柱55(第1基礎間柱59及び第1鋼製ブラケット61)が工場においてあらかじめ製造されたプレキャストコンクリートであってもよい。プレキャストコンクリート製の第1間柱55では、第1基礎間柱59に第1鋼材60の第1鋼製ブラケット61が連結されている。第1間柱55がプレキャストコンクリートである場合、第1間柱55を工場から施工現場に搬送し、天井梁54を構築(新設)した後のその天井梁54の第1間柱55の施工箇所にプレキャストコンクリート(第1間柱55)を配置し、連結ボルトを介して天井梁54とプレキャストコンクリート(第1間柱55)とを連結する。又は、既設の建造物51の既設の天井梁54の第1間柱55の施工箇所にプレキャストコンクリート(第1間柱55)を配置し、連結ボルトを介して既設の天井梁54とプレキャストコンクリート(第1間柱55)とを連結する。
【0112】
第2間柱57は、建造物51の床梁56(大梁又は小梁)に連結されて床梁56から上方へ延びる第2基礎間柱65と、第2基礎間柱65の上端に連結された第2鋼材66とから形成されている。床梁56や第2基礎間柱65は、プレストレスト・コンクリート製である。
【0113】
第2鋼材66は、第2基礎間柱65の上端に連結された第2鋼製ブラケット67と、第2鋼製ブラケット67に固定された第2H形鋼68(第2形鋼)とから形成されている。第2鋼製ブラケット67は、所定厚みを有して横方向へ延びる板状の鋼材である。第2鋼製ブラケット67の両側部には、第2PC鋼材68を挿通する挿通孔が穿孔されている。なお、第2形鋼としてI形鋼やT形鋼、山形鋼、溝形鋼を使用することもできる。
【0114】
第2H形鋼68は、第2鋼製ブラケット67の上面において縦方向上方へ向かって起立するように設置されている。第2H形鋼68は、第2鋼製ブラケット67の上面の横方向中央に配置され、フランジ63とウェブ64とが第2鋼製ブラケット67の上面に溶接によって固着(溶着)されている。第2H形鋼68は、そのフランジ63とウェブ64とが第2鋼製ブラケット67の上面から縦方向上方へ延びている。第2H形鋼68のウェブ64には、横方向へ等間隔離間して並ぶ複数のボルト孔が穿孔されている。
【0115】
第2基礎間柱65を形成するプレストレスト・コンクリートは、プレテンション方式又はポストテンション方式によって施工される。プレテンション方式による第2基礎間柱65やポストテンション方式による第2基礎間柱65は、既存の施工技術によって新築又は既設(中古)の建造物51に構築される。尚、第2基礎間柱65が鉄筋コンクリートから作られていてもよい。鉄筋コンクリート製の第2基礎間柱65は、既存の施工技術によって新築又は既設の建造物51に構築される。又、第2間柱57(第2基礎間柱65及び第2鋼製ブラケット67)が工場においてあらかじめ製造されたプレキャストコンクリートであってもよい。プレキャストコンクリート製の第2間柱57では、第2基礎間柱65に第2鋼材66の第2鋼製ブラケット67が連結されている。第2間柱57がプレキャストコンクリートである場合、第2間柱57を工場から施工現場に搬送し、床梁56を構築(新設)した後のその床梁56の第2間柱57の施工箇所にプレキャストコンクリート(第2間柱57)を配置し、連結ボルトを介して床梁56とプレキャストコンクリート(第2間柱57)とを連結する。又は、既設の建造物51の既設の床梁56の第2間柱57の施工箇所にプレキャストコンクリート(第2間柱57)を配置し、連結ボルトを介して既設の床梁56とプレキャストコンクリート(第2間柱57)とを連結する。
【0116】
制震装置10Dでは、第1番せん断型パネルダンパー~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)の第1連結パネル部13どうしが対向し、ダンパーパネル部14どうしが対向するとともに、第2連結パネル部15どうしが対向した状態で、第1番せん断型パネルダンパー11aと第2番せん断型パネルダンパー11bと第3番せん断型パネルダンパー11cとが厚み方向へ重なり合っている(並んでいる)。
【0117】
制震装置10Dの第1番せん断型パネルダンパー11a~第3番せん断型パネルダンパー11c(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)は、それらせん断型パネルダンパー11a~11cを第1番せん断型パネルダンパー11aから第3番せん断型パネルダンパー11c(第n番せん断型パネルダンパー)に向かって数えたときに、第1番せん断型パネルダンパー11a(奇数番号のせん断型パネルダンパー)と第1番せん断型パネルダンパー11a(奇数番号のせん断型パネルダンパー)に隣接する(隣り合う)第2番せん断型パネルダンパー11b(偶数番号のせん断型パネルダンパー)との互いに対向する第1連結パネル部13どうしが連結され、第2番せん断型パネルダンパー11b(偶数番号のせん断型パネルダンパー)と第2番せん断型パネルダンパー11b(偶数番号のせん断型パネルダンパー)に隣接する(隣り合う)第3番せん断型パネルダンパー11c(奇数番号のせん断型パネルダンパー)との互いに対向する第2連結パネル部15どうしが連結されている。
【0118】
制震装置10Dでは、第1番せん断型パネルダンパー11a及び第2番せん断型パネルダンパー11bの第1連結パネル部13に形成(穿孔)されたアンカー部材設置穴19にアンカー部材31が設置されるとともに、ボルト孔18に固定ボルト32が螺着され、アンカー部材31及び固定ボルト32によってそれらせん断型パネルダンパー11a,11bの第1連結パネル部13どうしが強固に連結(固定)されている。第2番せん断型パネルダンパー11b及び第3番せん断型パネルダンパー11cの第2連結パネル部15に形成(穿孔)されたアンカー部材設置穴19にアンカー部材31が設置されるとともに、ボルト孔18に固定ボルト32が螺着され、アンカー部材31及び固定ボルト32によってそれらせん断型パネルダンパー11b,11cの第2連結パネル部15どうしが強固に連結(固定)されている。
【0119】
第1番せん断型パネルダンパー11aは、その第2連結パネル部15(第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの上部構造材52(第1間柱55)に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部)が第1鋼材60の第1H形鋼62(第1形鋼)のウェブ64(第1間柱55の下端部)に連結されている。第1番せん断型パネルダンパー11aの第2連結パネル部15及び第1H形鋼62(第1形鋼)のウェブ64に形成(穿孔)されたボルト孔に挿通又は螺着された摩擦接合用高力六角ボルト(図示せず)とその摩擦接合用高力六角ボルトに螺着されたナット(図示せず)とによって第2連結パネル部15と第1鋼材60の第1H形鋼62(第1間柱55)とが強固に連結(固定)されている。第1H形鋼62(第1形鋼)のウェブ64は、第1番せん断型パネルダンパー11aの第2連結パネル部15から第1連結パネル部13に達し、一方の面(外面)がそれらパネル部13,15の前面16に対向(当接)している。第1H形鋼62は、そのウェブ64が第1番せん断型パネルダンパー11aの厚み方向外方への移動を阻止している。
【0120】
第3番せん断型パネルダンパー11cは、その第1連結パネル部13(第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの下部構造材53(第2間柱57)に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部)が第2鋼材66の第2H形鋼68(第2形鋼)のウェブ64(第2間柱57の上端部)に連結されている。第3番せん断型パネルダンパー11cの第1連結パネル部13及び第2H形鋼68(第2形鋼)のウェブ64に形成(穿孔)されたボルト孔に挿通又は螺着された摩擦接合用高力六角ボルト(図示せず)とその摩擦接合用高力六角ボルトに螺着されたナット(図示せず)とによって第1連結パネル部13と第2鋼材66の第2形鋼68(第2間柱57)とが強固に連結(固定)されている。第2H形鋼68(第2形鋼)のウェブ64は、第3番せん断型パネルダンパー11cの第1連結パネル部13から第2連結パネル部15に達し、一方の面(外面)がそれらパネル部13,15の後面17に対向(当接)している。第2H形鋼68は、そのウェブ64が第3番せん断型パネルダンパー11cの厚み方向外方への移動を阻止している。
【0121】
第1番せん断型パネルダンパー~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14は、縦方向へ離間する第1間柱55の第1鋼材60の第1H形鋼62(第1形鋼)と第2間柱57の第2鋼材66の第2H形鋼68(第2形鋼)との間のスペース58に位置している。地震が発生し、地震による作用力(水平荷重及び鉛直荷重)が建造物51に作用した場合、その作用力が建造物51からプレストレスト・コンクリート製(又は鉄筋コンクリート製あるいはプレキャストコンクリート製)の第1及び第2間柱55,57に伝達され、作用力が第1及び第2鋼材60,66の第1および第2H形鋼62,68から第1番せん断型パネルダンパー~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cに均等に伝達され、それらせん断型パネルダンパー11a~11cが所定の方向へ振動し(揺れ動き)、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cが第1番せん断型パネルダンパー11aの第2連結パネル部15及び第3番せん断型パネルダンパー11cの第1連結パネル部13を支点にして展開と収束とを繰り返す。
【0122】
図25の制震装置10Dでは、建造物51に作用する作用力によって建造物51に生じた相対変位がダンパーパネル部14の降伏点よりも大きくなると、第1番せん断型パネルダンパー11aや第2番せん断型パネルダンパー11b、第3番せん断型パネルダンパー11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a~11c(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14がその中心からフィレット(両側縁20)の位置にかけて全体が均一に塑性変形する。第1番せん断型パネルダンパー11aや第2番せん断型パネルダンパー11b、第3番せん断型パネルダンパー11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a~11c(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14が塑性変形することで、それらせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル14が地震による作用力を吸収し、せん断型パネルダンパー11a~11cによって相対変位(地震エネルギー)が減衰する。
【0123】
制震装置10Dは、それが厚み方向へ並ぶ複数の第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)を備え、それらせん断型パネルダンパー11a~11cを第1番せん断型パネルダンパー11aから第3番せん断型パネルダンパー11c(第n番せん断型パネルダンパー)に向かって数えたときに、奇数番号のせん断型パネルダンパー(第1番せん断型パネルダンパー11a)と奇数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する偶数番号のせん断型パネルダンパー(第2番せん断型パネルダンパー11b)との互いに対向する第1連結パネル部13どうしが連結されているとともに、偶数番号のせん断型パネルダンパー(第2番せん断型パネルダンパー11b)と偶数番号のせん断型パネルダンパーに隣接する奇数番号のせん断型パネルダンパー(第3番せん断型パネルダンパー11c)との互いに対向する第2連結パネル部15どうしが連結されており、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cのうちのそれらせん断型パネルダンパー11a~11cどうしの連結に使用されない連結パネル部(第2連結パネル部15)が第1鋼材60の第1H形鋼62(第1形鋼)のウェブ64に連結され、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cのうちのそれらせん断型パネルダンパー11a~11cどうしの連結に使用されない連結パネル部(第1連結パネル部13)が第2鋼材66の第2H形鋼68(第2形鋼)のウェブ64に連結され、建造物51に作用する作用力(水平荷重及び鉛直荷重)によって建造物51に生じる相対変位を第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cが受け持つから、1つのせん断型パネルダンパーでは吸収することができないほどの大きな相対変位(例えば、レベル2以上の地震による作用力)が建造物51に生じたとしても、それらせん断型パネルダンパー11a~11cのうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a~11c(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14が塑性変形してその相対変位を確実に減衰させることができる。
【0124】
制震装置10Dは、建造物51に作用する作用力(水平荷重及び鉛直荷重)が第1および第2基礎間柱59,66から第1及び第2鋼材60,66を介して第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)に伝達されるから、造物51に作用した作用力によって生じた相対変位(地震エネルギー)を建造物51からそれらせん断型パネルダンパー11a~11cに確実に伝達させることができる。
【0125】
制震装置10Dは、地震発生時に建造物51に作用する作用力(水平荷重及び鉛直荷重)によって建造物51に生じた相対変位が建造物51から鉄筋コンクリート製、プレストレスト・コンクリート製、プレキャストコンクリート製のいずれかの第1及び第2基礎間柱59,66と第1及び第2鋼材60,66とに伝達され、その相対変位が第1及び第2鋼材60,66の第1及び第2H形鋼62,68から第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)に円滑かつ均等に伝達されるから、せん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14の塑性変形を利用し、建造物51に生じた相対変位(地震エネルギー)を十分かつ確実に減衰させることができ、地震発生時に地震エネルギーを十分かつ確実に吸収して地震による建造物51の変形や損傷を最小限にすることができる。
【0126】
制震装置10Dは、第1および第2基礎間柱59,66がプレストレスト・コンクリートから形成されている場合、地震による作用力(地震エネルギー)が第1および第2間柱55,57に作用したときに、荷重を受けた第1および第2基礎間柱59,66に引張応力が発生しないように制御されているから、引張応力による第1および第2基礎間柱59,66のひび割れの発生を防ぐことができ、ひび割れの発生による第1および第2間柱55,57の補修の手間やコストを省くことができる。
【0127】
制震装置10Dは、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のそれらせん断型パネルダンパー11a~11cどうしの連結に使用されない連結パネル部(第2連結パネル部15)を第1鋼材60の第1H形鋼62(第1形鋼)のウェブ64に連結し、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cのそれらせん断型パネルダンパー11a~11cどうしの連結に使用されない連結パネル部(第1連結パネル部13)を第2鋼材66の第2H形鋼68(第2形鋼)のウェブ64に連結することで、制震装置10Dを第1間柱55と第2間柱57との間のスペース58に設置することができるから、第1基礎間柱59及び第1鋼材60、第2基礎間柱65及び第2鋼材66を利用することで制震装置10Dを短い工期で廉価に施工することができ、地震後はダンパーパネル部14が塑性変形したせん断型パネルダンパー11a~11cを交換するだけでよく、地震後に制震装置10Dをあらたに施工する必要はなく、手間と費用とを節約することができる。
【0128】
制震装置10Dは、第1H形鋼62(第1形鋼)のウェブ64が第1番せん断型パネルダンパー11aの厚み方向外方への移動を阻止し、第2H形鋼68(第2形鋼)のウェブ64が第3番せん断型パネルダンパー11cの厚み方向外方への移動を阻止するから、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cがそれらの厚み方向へ動くことはなく、それらせん断型パネルダンパー11a~11cが厚み方向へ動くことによるそれらせん断型パネルダンパー11a~11cの連結解除を防ぐことができ、それらせん断型パネルダンパー11a~11cを利用して相対変位(地震エネルギー)を確実に減衰することができる。
【0129】
図29は、天井梁54と床梁56との間に設置された制震装置10Dの一例を示す正面図である。
図29では、上下方向(縦方向)を矢印Xで示し、横方向を矢印Yで示す。
図29に示す制震装置10Dは、超高層ビルや高層ビル、中層ビル、低層ビル、RC造またはSRC造のマンション、RC造の戸建て住宅等の建造物51の天井梁54(上部梁)と床梁56(下部梁)との間に配置され、建造物51を地震から保護する。
図29の制震装置10Dは、
図25の制震装置10Dと同一であり、第1番せん断型パネルダンパー~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)から形成されている。制震装置10Dを形成する第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cやそれらパネルダンパー11a~11cの連結は、
図25の制震装置10Dのそれらと同一である。天井梁54や床梁56は、プレストレスト・コンクリート製である。
【0130】
図29に示す制震装置10Dは、天井梁54(上部構造物)と床梁56(下部構造物)とに連結されている。制震装置10Dの床梁56への連結には、支持部材69及び一対のブレース部材70a,70bが利用されている。天井梁54の制震装置10Dの設置箇所には、第1鋼材60が取り付けられている。第1鋼材60は、天井梁54の下端面に連結された第1鋼製ブラケット61と、第1鋼製ブラケット61に連結(固定)された第1H形鋼62(第1形鋼)とから形成されている。第1鋼製ブラケット61や第1H形鋼62は、
図25の制震装置10Dにおいて説明したそれらと同一である。
【0131】
支持部材69は、床梁56の制震装置10Dの設置箇所から天井梁54に向かって上下方向上方へ直状に延びている。支持部材69の上方には、横方向へ延びる連結台71が形成されている。支持部材69は、第1連結部材72を介して床梁56に取り付けられている。第1連結部材72は、その下端部が所定の固定手段(ボルト及びナット又は溶接等)によって床梁56に連結(固定)されている。支持部材69と第1連結部材72とは、所定の固定手段(ボルト及びナット又は溶接等)によって連結(固定)されている。
【0132】
連結台71には、第2鋼材66が取り付けられている。第2鋼材66は、設置台の上面に連結された第2鋼製ブラケット67と、第2鋼製ブラケット67に連結(固定)された第2H形鋼68(第2形鋼)とから形成されている。第2鋼製ブラケット67や第2H形鋼68は、
図25の制震装置10Dにおいて説明したそれらと同一である。
【0133】
一対のブレース部材70a,70bのうちの一方のブレース部材70aは、床梁56と柱73aとの第1交差部74から支持部材69の連結台71に向かって登り勾配に傾斜している。一方のブレース部材70aは、その上端部が所定の固定手段(ボルト及びナット又は溶接等)によって連結台71に連結(固定)され、その下端部が第2連結部材75(ガセットプレート)を介して第1交差部74に取り付けられている。第2連結部材75は、所定の固定手段(ボルト及びナット又は溶接等)によって第1交差部74に連結(固定)されている。一方のブレース部材70aの下端部と第2連結部材75とは、所定の固定手段(ボルト及びナット又は溶接等)によって連結(固定)されている。
【0134】
一対のブレース部材70a,70bのうちの他方のブレース部材70bは、床梁56と柱73bとの第2交差部76から支持部材69の連結台71に向かって登り勾配に傾斜している。他方のブレース部材70bは、その上端部が所定の固定手段(ボルト及びナット又は溶接等)によって連結台71に連結(固定)され、その下端部が第3連結部材77(ガセットプレート)を介して第2交差部76に取り付けられている。第3連結部材77は、所定の固定手段(ボルト及びナット又は溶接等)によって第2交差部76に連結(固定)されている。他方のブレース部材70bの下端部と第3連結部材77とは、所定の固定手段(ボルト及びナット又は溶接等)によって連結(固定)されている。
【0135】
第1番せん断型パネルダンパー11aは、
図25のそれと同様に、その第2連結パネル部15(第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの天井梁54に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部)が第1鋼材60の第1H形鋼62(第1形鋼)のウェブ64に連結(固定)されている。第1H形鋼62(第1形鋼)のウェブ64は、第1番せん断型パネルダンパー11aの第2連結パネル部15から第1連結パネル部13に達し、一方の面(外面)がそれらパネル部13,15の前面16に対向(当接)している。第1H形鋼62は、そのウェブ64が第1番せん断型パネルダンパー11aの厚み方向外方への移動を阻止している。
【0136】
第3番せん断型パネルダンパー11cは、
図25のそれと同様に、その第1連結パネル部13(第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの床梁56(連結台71)に対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部)が第2鋼材66の第2H形鋼68(第2形鋼)のウェブ64に連結(固定)されている。第2H形鋼68(第2形鋼)のウェブ64は、第3番せん断型パネルダンパー11cの第1連結パネル部13から第2連結パネル部15に達し、一方の面(外面)がそれらパネル部13,15の後面17に対向(当接)している。第2H形鋼68は、そのウェブ64が第3番せん断型パネルダンパー11cの厚み方向外方への移動を阻止している。
【0137】
第1番せん断型パネルダンパー~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14は、縦方向へ離間する天井梁54(第1鋼材60(第1鋼製ブラケット61、第1H形鋼62))と床梁56(第2鋼材66(第2鋼製ブラケット67、第2H形鋼68))との間のスペース58に位置している。地震が発生し、地震による作用力(水平荷重及び鉛直荷重)が建造物51に作用した場合、その作用力が建造物51の天井梁54から第1鋼材60に伝達されるとともに、建造物51の床梁56(支持部材69、一対のブレース部材70a,70b)から第2鋼材66に伝達され、作用力が第1及び第2鋼材60,66の第1及び第2H形鋼62,68から第1番せん断型パネルダンパー~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cに均等に伝達され、それらせん断型パネルダンパー11a~11cが所定の方向へ振動し(揺れ動き)、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cが第1番せん断型パネルダンパー11aの第2連結パネル部15及び第3番せん断型パネルダンパー11cの第1連結パネル部13を支点にして展開と収束とを繰り返す。
【0138】
図29の制震装置10Dでは、
図25のそれと同様に、建造物51に作用する作用力によって建造物51に生じた相対変位がダンパーパネル部14の降伏点よりも大きくなると、第1番せん断型パネルダンパー11aや第2番せん断型パネルダンパー11b、第3番せん断型パネルダンパー11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a~11c(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14がその中心からフィレット(両側縁20)の位置にかけて全体が均一に塑性変形する。せん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14が塑性変形することで、それらせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル14が地震による作用力を吸収し、せん断型パネルダンパー11a~11cによって相対変位(地震エネルギー)が減衰する。
【0139】
図29の使用例の制震装置10Dは、
図25の制震装置10Dと同様の効果を有し、1つのせん断型パネルダンパーでは吸収することができないほどの大きな相対変位(例えば、レベル2以上の地震による作用力)が建造物51に生じたとしても、それらせん断型パネルダンパー11a~11cのうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a~11c(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14が塑性変形してその相対変位を確実に減衰させることができる。
【0140】
図30は、天井梁54の間に設置された制震装置10Dの一例を示す正面図である。
図30では、上下方向(縦方向)を矢印Xで示し、横方向を矢印Yで示す。
図30に示す制震装置10Dは、超高層ビルや高層ビル、中層ビル、低層ビル、RC造またはSRC造のマンション、RC造の戸建て住宅等の建造物51の天井梁54(上部梁)の間に配置され、建造物51を地震から保護する。
図30の制震装置10Dは、
図25の制震装置10Dと同一であり、第1番せん断型パネルダンパー~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(複数の第1番~第n番せん断型パネルダンパー)から形成されている。制震装置10Dを形成する第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cやそれらパネルダンパー11a~11cの連結は、
図25の制震装置10Dのそれらと同一である。天井梁54や床梁56は、プレストレスト・コンクリート製である。
【0141】
図30に示す制震装置10Dは、天井梁54(上部構造物)を分断して形成された設置空間78に配置され、横方向へ離間する天井梁54a,54bに連結されている。尚、制震装置10Dが床梁56(下部構造物)を分断して形成された設置空間に配置され、制震装置10Dが横方向へ離間する床梁56に連結されていてもよい。分断された一方の天井梁54a(一方の梁)の制震装置10Dの設置箇所には、第1鋼材60が取り付けられている。第1鋼材60は、一方の天井梁54aの側端面に連結された第1鋼製ブラケット61と、第1鋼製ブラケット61に連結(固定)された第1H形鋼62(第1形鋼)とから形成されている。第1鋼製ブラケット61や第1H形鋼62は、
図25の制震装置10Dにおいて説明したそれらと同一である。
【0142】
分断された他方の天井梁54b(他方の梁)の制震装置10Dの設置箇所には、第2鋼材66が取り付けられている。第2鋼材66は、他方の天井梁54b側端面に連結された第2鋼製ブラケット67と、第2鋼製ブラケット67に連結(固定)された第2H形鋼68(第2形鋼)とから形成されている。第2鋼製ブラケット67や第2H形鋼68は、
図25の制震装置10Dにおいて説明したそれらと同一である。
【0143】
第1番せん断型パネルダンパー11aは、
図25のそれと同様に、その第2連結パネル部15(第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの一方の天井梁54aに対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部)が第1鋼材60の第1H形鋼62(第1形鋼)のウェブ64に連結(固定)されている。第1H形鋼62(第1形鋼)のウェブ64は、第1番せん断型パネルダンパー11aの第2連結パネル部15から第1連結パネル部13に達し、一方の面(外面)がそれらパネル部13,15の前面16に対向(当接)している。第1H形鋼62は、そのウェブ64が第1番せん断型パネルダンパー11aの厚み方向外方への移動を阻止している。
【0144】
第3番せん断型パネルダンパー11cは、
図25のそれと同様に、その第1連結パネル部13(第1番~第n番せん断型パネルダンパーのうちの他方の天井梁54bに対向するせん断型パネルダンパーの第1及び第2連結パネル部のうちのそれらせん断型パネルダンパーどうしの連結に使用されない連結パネル部)が第2鋼材66の第2H形鋼68(第2形鋼)のウェブ64に連結(固定)されている。第2H形鋼68(第2形鋼)のウェブ64は、第3番せん断型パネルダンパー11cの第1連結パネル部13から第2連結パネル部15に達し、一方の面(外面)がそれらパネル部13,15の後面17に対向(当接)している。第2H形鋼68は、そのウェブ64が第3番せん断型パネルダンパー11cの厚み方向外方への移動を阻止している。
【0145】
第1番せん断型パネルダンパー~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14は、横方向へ離間する一方の天井梁54a(第1鋼材60(第1鋼製ブラケット61、第1H形鋼62))と他方の天井梁54b(第2鋼材66(第2鋼製ブラケット67、第2H形鋼68))との間の設置空間78に位置している。地震が発生し、地震による作用力(水平荷重及び鉛直荷重)が建造物51に作用した場合、その作用力が建造物51の一方の天井梁54aから第1鋼材60に伝達されるとともに、建造物51の他方の天井梁54bら第2鋼材66に伝達され、作用力が第1及び第2鋼材60,66の第1及び第2H形鋼62,68から第1番せん断型パネルダンパー~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cに均等に伝達され、それらせん断型パネルダンパー11a~11cが所定の方向へ振動し(揺れ動き)、第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11cが第1番せん断型パネルダンパー11aの第2連結パネル部15及び第3番せん断型パネルダンパー11cの第1連結パネル部13を支点にして展開と収束とを繰り返す。
【0146】
図30の制震装置10Dでは、
図25のそれと同様に、建造物51に作用する作用力によって建造物51に生じた相対変位がダンパーパネル部14の降伏点よりも大きくなると、第1番せん断型パネルダンパー11aや第2番せん断型パネルダンパー11b、第3番せん断型パネルダンパー11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)のうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a~11c(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14がその中心からフィレット(両側縁20)の位置にかけて全体が均一に塑性変形する。せん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14が塑性変形することで、それらせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル14が地震による作用力を吸収し、せん断型パネルダンパー11a~11cによって相対変位(地震エネルギー)が減衰する。
【0147】
図30の使用例の制震装置10Dは、
図25の制震装置10Dと同様の効果を有し、1つのせん断型パネルダンパーでは吸収することができないほどの大きな相対変位(例えば、レベル2以上の地震による作用力)が建造物51に生じたとしても、それらせん断型パネルダンパー11a~11cのうちのいずれかのせん断型パネルダンパー11a~11c(一部のせん断型パネルダンパー)のダンパーパネル部14又は全てのせん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14が塑性変形してその相対変位を確実に減衰させることができる。
【0148】
尚、
図30に示す制震装置10Dは、地震発生時に建造物51に作用する作用力(水平荷重及び鉛直荷重)によって建造物51に生じた相対変位が建造物51の天井梁54a,54bから第1及び第2鋼材60,66に伝達され、その相対変位が第1及び第2鋼材60,66の第1及び第2H形鋼62,68から第1番~第3番せん断型パネルダンパー11a~11c(第1番~第n番せん断型パネルダンパー)に円滑かつ均等に伝達されるから、せん断型パネルダンパー11a~11cのダンパーパネル部14の塑性変形を利用し、一方の天井梁54a(一方の梁)と他方の天井梁54b(他方の梁)との間に作用した相対変位(地震エネルギー)を十分かつ確実に減衰させることができるとともに、地震発生時に地震エネルギーを十分かつ確実に吸収して地震による建造物51の変形や損傷を最小限にすることができる。
【符号の説明】
【0149】
10A 制震(装置複数のせん断型パネルダンパーを使用した制震装置)
10B 制震装置(装置複数のせん断型パネルダンパーを使用した制震装置)
10C 制震装置(装置複数のせん断型パネルダンパーを使用した制震装置)
10D 制震装置(装置複数のせん断型パネルダンパーを使用した制震装置)
11a 第1せん断型パネルダンパー
11b 第2せん断型パネルダンパー
11c 第3せん断型パネルダンパー
12a 第1ガイドプレート
12b 第2ガイドプレート
13 第1連結パネル部
14 ダンパーパネル部
15 第2連結パネル部
16 前面
17 後面
18 ボルト孔
19 アンカー部材設置穴
20 両側縁
21 第1凹曲面域
22 第2凹曲面域
23a 第1連結板
23b 第2連結板
24a 第1支持板
24b 第2支持板
25 前面
26 後面
27 当接面
28 非当接面
29 ボルト孔
30 アンカー部材設置穴
31 アンカー部材
32 固定ボルト
33 滑り板
34 橋梁
35 橋桁(主構造物)
36 橋台(支持構造物)
37 H型鋼
38 フランジ
39 ブラケット
40 取付フレーム
41 粘性系シリンダー型ダンパー(寸法変化吸収装置)
42 一端部
43 クレビス
44 他端部
45 第1アングル材
46 第2アングル材
47 垂直プレート
48 水平プレート
49 ビル(主構造物)
50 基礎(支持構造物)
51 建造物
52 上部構造材
53 下部構造材
54 天井梁
54a 一方の天井梁
54b 他方の天井梁
55 第1間柱
56 床梁
57 第2間柱
58 スペース
59 第1基礎間柱
60 第1鋼材
61 第1鋼製ブラケット
62 第1H型鋼
63 フランジ
64 ウェブ
65 第2基礎間柱
66 第2鋼材
67 第2鋼製ブラケット
68 第2H形鋼
69 支持部材
70a,b ブレース部材
71 連結台
72 第1連結部材
73a,b 柱
74 第1交差部
75 第2連結部材
76 第2交差部
77 第3連結部材
78 設置空間