(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】ブラケット
(51)【国際特許分類】
E21F 13/10 20060101AFI20240606BHJP
B65G 15/08 20060101ALN20240606BHJP
B65G 21/00 20060101ALN20240606BHJP
【FI】
E21F13/10
B65G15/08 Z
B65G21/00 A
(21)【出願番号】P 2020148316
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秦 健二
(72)【発明者】
【氏名】白▲崎▼ 耕平
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-267538(JP,A)
【文献】特開2020-016016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 1/00-17/18
E21D 1/00- 9/14
E02F 5/00- 7/14
B65G 15/08
B65G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ずい道側壁面に沿ってずい道の延長方向に配置される長尺物を支持するために、ずい道側壁面に設けられたブラケットであって、
ずい道側壁面に固定されるとともに、ずい道側壁面から側方に張り出され、長尺物を支持する張り出し長さを調整可能に構成された張出部材と、ずい道側壁面またはずい道底面に固定されるとともに、張出部材に対して回動可能に固定され、部材の長さを調整可能に構成された支持部材とを備え
、
張出部材の側部に設けられるとともに張り出し方向に長い長穴状の軸支穴に対して、支持部材がずい道の延長方向に沿う軸周りに回動可能に固定されることを特徴とするブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ずい道掘削のズリ搬出に使用される連続ベルトコンベヤなどを支持するために用いられるブラケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ずい道掘削のズリ搬出に使用する連続ベルトコンベヤが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
図3および
図4に示すように、従来の連続ベルトコンベヤ1は、ずい道2の掘削壁面3に沿ってずい道2の延長方向Xに配設される。より具体的には、連続ベルトコンベヤ1は、ずい道2の延長方向Xに所定の間隔で掘削壁面3にアンカーボルト4で固定されたブラケット5上に配設される。ブラケット5は、水平材6と斜材7からなる。ブラケット5には、L型鋼などの鋼材を所定の寸法に工場加工したものを用いることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ブラケット5の寸法が固定されていると、掘削壁面3の凹みが大きい区間では連続ベルトコンベヤ1をブラケット5上に配設できないおそれがある。また、ブラケット5は片持ち構造であるため、掘削壁面3の地山強度や吹付コンクリート強度が小さい場合には、アンカーボルト4が掘削壁面3から抜けてしまい、ブラケット5が脱落するおそれがある。このため、掘削壁面3に凹みが生じても連続ベルトコンベヤ1などの長尺物を確実に支持できるとともに、地山強度や吹付コンクリート強度が小さい場合に、アンカーボルト4に作用する引抜応力を低減させることのできる構造が求められていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ずい道掘削壁面に凹みが生じても長尺物を確実に支持できるとともに、地山強度や吹付コンクリート強度が小さい場合に、アンカーボルトに作用する引抜応力を低減させることができるブラケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るブラケットは、ずい道側壁面に沿ってずい道の延長方向に配置される長尺物を支持するために、ずい道側壁面に設けられたブラケットであって、ずい道側壁面に固定されるとともに、ずい道側壁面から側方に張り出され、長尺物を支持する張り出し長さを調整可能に構成された張出部材と、ずい道側壁面またはずい道底面に固定されるとともに、張出部材に対して回動可能に固定され、部材の長さを調整可能に構成された支持部材とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る他のブラケットは、上述した発明において、張出部材の側部に設けられるとともに張り出し方向に長い長穴状の軸支穴に対して、支持部材がずい道の延長方向に沿う軸周りに回動可能に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るブラケットによれば、ずい道側壁面に沿ってずい道の延長方向に配置される長尺物を支持するために、ずい道側壁面に設けられたブラケットであって、ずい道側壁面に固定されるとともに、ずい道側壁面から側方に張り出され、長尺物を支持する張り出し長さを調整可能に構成された張出部材と、ずい道側壁面またはずい道底面に固定されるとともに、張出部材に対して回動可能に固定され、部材の長さを調整可能に構成された支持部材とを備えるので、ずい道側壁面に凹みが生じている区間における張出部材の張り出し長さを長くすることで連続ベルトコンベヤなどの長尺物を確実に支持することができるという効果を奏する。また、ずい道側壁面の地山強度や吹付コンクリート強度が小さい場合に支持部材で張出部材を支持することで、張出部材をずい道側壁面に固定するアンカーボルトに作用する引抜応力を低減させることができるという効果を奏する。
【0009】
また、本発明に係る他のブラケットによれば、張出部材の側部に設けられるとともに張り出し方向に長い長穴状の軸支穴に対して、支持部材がずい道の延長方向に沿う軸周りに回動可能に固定されるので、張出部材に対する支持部材の固定位置を、張出部材の張り出し長さや支持部材を固定するずい道側壁面などに応じて適宜調整することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明に係るブラケットの実施の形態を示す横断面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係るブラケットの実施の形態を示す要部拡大図である。
【
図3】
図3は、従来の連続ベルトコンベヤ用ブラケットの設置状況を示す写真図である。
【
図4】
図4は、従来の連続ベルトコンベヤ用ブラケットを示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係るブラケットの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るブラケット10は、ずい道12の側壁面14に沿ってずい道12の延長方向(紙面に垂直な方向)に配置される連続ベルトコンベヤ16(長尺物)を支持するためのものであり、側壁面14に近接する所定の高さ位置に、ずい道12の延長方向に沿って所定の間隔で設けられる。このブラケット10は、張出部材18と、支持部材20とを備える。ずい道12の断面形状は、上部が半円で下部が矩形の幌型(D字形状)のものを想定しているが、本発明のずい道の断面形状はこれに限るものではない。
【0013】
連続ベルトコンベヤ16は、張出部材18の先端側の上面に載置される。この連続ベルトコンベヤ16は、無端状のゴムベルト22と、ずい道12の延長方向に連結された複数の支持フレーム24とを備えている。支持フレーム24の上面には、複数のキャリアローラ26とリターンローラ28がずい道12の延長方向に間隔を空けて並設されている。キャリアローラ26は、中央に配置された水平なローラ26Aと、その側方に配置されるとともに水平なローラ26Aから離れるに従ってローラ面が高くなるように傾斜したローラ26Bとを備えており、ゴムベルト22を中央が凹む形状に保持する。キャリアローラ26はベルト搬送路となるベルト往路を支持し、リターンローラ28はベルト復路を支持する。連続ベルトコンベヤ16は、ゴムベルト22の中央の凹んだ部分で掘削したズリを搬送可能である。
【0014】
張出部材18は、側壁面14から水平側方に張り出された部材である。張出部材18の固定端には、上向きにプレート30が取り付けられている。このプレート30には貫通孔が設けられており、プレート30は貫通孔を挿通するアンカーボルト32によって側壁面14に固定される。
【0015】
この張出部材18は、張り出し長さを調整可能に構成されている。具体的には、
図2に示すように、張出部材18は、L型鋼からなる外側部材34と内側部材36を張り出し方向に嵌合して構成されている。図の例では、外側部材34の右端側から内側部材36の左端側が入り込んでいる。外側部材34の右端側と内側部材36の左端側には、それぞれ複数のボルト孔38が長手方向に間隔をあけて設けられており、外側部材34と内側部材36は対応するボルト孔38に通された少なくとも2本のボルトで固定可能である。ボルトを挿通するボルト孔38の位置を調整することで、張出部材18は張り出し方向に伸縮可能である。
【0016】
また、張出部材18の先端側の側部には、
図2に示すように、張り出し方向に長い2つの長穴40(軸支穴)が張り出し方向に間隔をあけて設けられる。いずれか一方の長穴40には、支持部材20の端部がずい道12の延長方向に沿う軸周りに回動可能に固定される。長穴40を設けることで、張出部材18に対する支持部材20の固定位置を、張出部材18の張り出し長さや支持部材20を固定する側壁面14などに応じて適宜調整することができる。長穴40は2つに限るものではなく、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0017】
支持部材20は、
図1に示すように、一端が側壁面14またはずい道底面42に固定され、他端が張出部材18のいずれか一方の長穴40に対して回動可能に固定される部材である。支持部材20の一端には、プレート44を備える固定部46が設けられている。プレート44には貫通孔が設けられており、プレート44は貫通孔を挿通するアンカーボルト48によって側壁面14またはずい道底面42に固定可能である。支持部材20の他端側の側部にはボルト孔50が設けられている。支持部材20は、このボルト孔50と張出部材18の長穴40に通された連結ボルト52によって張出部材18に対して回動可能に固定される。
【0018】
この支持部材20は、部材の長さを調整可能に構成されている。具体的には、
図2に示すように、支持部材20は、角型鋼管からなる外側部材54と内側部材56を管軸方向に嵌合して構成されている。図の例では、外側部材54の下端側の内部に内側部材56の上端側が嵌合している。外側部材54の下端側と内側部材56の上端側には、それぞれ複数のボルト孔58が管軸方向に間隔をあけて設けられており、外側部材54と内側部材56は対応するボルト孔58に対して閂状に通された少なくとも2本のボルトで固定可能である。ボルトを挿通するボルト孔58の位置を調整することで、支持部材20は部材の長さ方向に伸縮可能である。
【0019】
上記構成の動作および作用について説明する。
図1に示すように、側壁面14に凹みが生じていない通常の区間(破線の側壁面14)においては、張出部材18を通常の張り出し長さにして使用する。一方、側壁面14に凹みが生じている区間においては、張出部材18を伸張して、張り出し長さを通常よりも長くして使用する。こうすることで、いずれの区間においても連続ベルトコンベヤ16を張出部材18の上に載置可能となり、これを確実に支持することができる。
【0020】
また、支持部材20は、伸張可能かつ回動可能なため、張出部材18の張り出し長さ、側壁面14または底面42の位置に応じて部材の長さや傾斜角度を適宜調整することができる。支持部材20の長さや傾斜角度を調整して張出部材18と側壁面14または底面42の間に適切に架設することによって、張出部材18に作用する荷重の一部を確実に負担することができる。このため、張出部材18を側壁面14に固定するアンカーボルト32に作用する引抜応力を低減させることができる。このことは、側壁面14の地山強度や吹付コンクリート強度が小さい場合に特に有効である。
【0021】
従来のずい道掘削において、箱抜き掘削や鋼製支保工を入れないC1パターンやBパターン等では掘削壁面に凹凸が生じ、ブラケットの設置位置によっては連続ベルトコンベヤを載置できないような事態が生じていたが、本実施の形態のブラケット10を用いれば、そのような事態を未然に回避することができる。したがって、本実施の形態によれば、側壁面14の凹凸に関係なく連続ベルトコンベヤを載置することができる。また、側壁面14の地山または吹付コンクリートの強度が小さい場合は、例えば支持部材20を垂直に立ててずい道底面42に固定することにより、張出部材18を固定するアンカーボルト32の抜けを防止することができる。これにより、安全かつ確実なズリ搬出が可能となる。
【0022】
なお、上記の実施の形態において、張出部材18の伸縮機構がL型鋼を組み合わせて構成される場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、張出部材18を伸縮可能にする構造であればいかなるものでもよい。このようにしても、上記と同様の作用効果を奏することができる。また、支持部材20の伸縮機構が角形鋼管を組み合わせて構成される場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、支持部材20を伸縮可能にする構造であればいかなるものでもよい。このようにしても、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0023】
以上説明したように、本発明に係るブラケットによれば、ずい道側壁面に沿ってずい道の延長方向に配置される長尺物を支持するために、ずい道側壁面に設けられたブラケットであって、ずい道側壁面に固定されるとともに、ずい道側壁面から側方に張り出され、長尺物を支持する張り出し長さを調整可能に構成された張出部材と、ずい道側壁面またはずい道底面に固定されるとともに、張出部材に対して回動可能に固定され、部材の長さを調整可能に構成された支持部材とを備えるので、ずい道側壁面に凹みが生じている区間における張出部材の張り出し長さを長くすることで連続ベルトコンベヤなどの長尺物を確実に支持することができるという効果を奏する。また、ずい道側壁面の地山強度や吹付コンクリート強度が小さい場合に支持部材で張出部材を支持することで、張出部材をずい道側壁面に固定するアンカーボルトに作用する引抜応力を低減させることができる。
【0024】
また、本発明に係る他のブラケットによれば、張出部材の側部に設けられるとともに張り出し方向に長い長穴状の軸支穴に対して、支持部材がずい道の延長方向に沿う軸周りに回動可能に固定されるので、張出部材に対する支持部材の固定位置を、張出部材の張り出し長さや支持部材を固定するずい道側壁面などに応じて適宜調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上のように、本発明に係るブラケットは、ずい道掘削のズリ搬出に使用される連続ベルトコンベヤを支持するのに有用であり、特に、ずい道掘削壁面に凹みが生じている場合や、地山強度や吹付コンクリート強度が小さい場合などにおいて連続ベルトコンベヤを確実に支持するのに適している。
【符号の説明】
【0026】
10 ブラケット
12 ずい道
14 側壁面
16 連続ベルトコンベヤ(長尺物)
18 張出部材
20 支持部材
22 ゴムベルト
24 支持フレーム
26 キャリアローラ
28 リターンローラ
30,44 プレート
32,48 アンカーボルト
34,54 外側部材
36,56 内側部材
38,50,58 ボルト孔
40 長穴(軸支穴)
42 ずい道底面
46 固定部
52 連結ボルト