(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】遠心ファン
(51)【国際特許分類】
F04D 29/42 20060101AFI20240606BHJP
H02K 21/22 20060101ALI20240606BHJP
H02K 3/52 20060101ALI20240606BHJP
F04D 29/60 20060101ALN20240606BHJP
【FI】
F04D29/42 M
H02K21/22 M
H02K3/52 E
F04D29/60 H
(21)【出願番号】P 2020150518
(22)【出願日】2020-09-08
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】諸橋 晴臣
(72)【発明者】
【氏名】奈良 精久
(72)【発明者】
【氏名】大野 裕茉
(72)【発明者】
【氏名】津崎 淳
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/142334(WO,A1)
【文献】特開2018-200048(JP,A)
【文献】特開2016-023598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0156616(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0153750(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16、
17/00-19/02、
21/00-25/16、
29/00-35/00
H02K 21/00-21/48
H02K 3/30- 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ケーシングと第2ケーシングとの間にステータコアおよび回路基板を収め、
前記ステータコアの軸方向一端側に第1インシュレータを設け、前記ステータコアの軸方向他端側に第2インシュレータを設け、前記第1及び第2インシュレータを介して前記ステータコアの突極にコイルを巻回し、前記第2インシュレータの軸方向他端側に回路基板を配置し、
前記ステータコアと前記回路基板を前記第2ケーシングの凹部に収容した遠心ファンであって、
前記コイルの端末は、前記第2インシュレータに設けられたガイド部に案内されて、前記回路基板に形成されたランド部上に引き出されて半田接合されて
おり、
前記第2インシュレータは、前記回路基板と当接する外周リブを備え、前記外周リブの前記回路基板側を向く軸方向端面は、前記ガイド部としての溝を備えている遠心ファン。
【請求項2】
前記外周リブは、前記第2インシュレータを前記
第2ケーシングに固定するための樹脂ピンを備えた請求項
1に記載の遠心ファン。
【請求項3】
前記溝は、前記外周リブの内周側から側面に向かって湾曲して延在した略弧状の形状であって、前記回路基板に形成された前記ランド部は、前記ステータコアの隣接する前記突極の中間に対応する位置に配置された請求項
1に記載の遠心ファン。
【請求項4】
前記溝は、前記外周リブの内周側から外周側に向かって延在した略直線状の形状であって、前記回路基板に形成された前記ランド部は、前記外周リブの径方向外側の位置に配置された請求項
1に記載の遠心ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠心ファンに係り、特に、コイルの端末の回路基板への半田接合の作業を簡略化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の遠心ファンとして、例えば、特許文献1に開示された遠心ファンが知られている。この遠心ファンでは、
図15および
図16に示すように、下ケーシング240を成形する際、同時にコネクタハウジング261が樹脂の一体成形にて形成されている。コネクタハウジング261の内側にはコネクタピン262が装着され、コネクタピン262は下ケーシング240の凹部241に配置した回路基板232の配線パターンと半田で接合されている。
【0003】
この遠心ファンでは、
図16に示すように、下側インシュレータ292の下面に形成した樹脂ピン294を回路基板232に形成した貫通孔234に挿通すると共に、コイル293の端末を回路基板232に形成した貫通孔233に挿通する。そして、貫通孔233から突出したコイル293の端末を半田接合して半田接合部237が形成され、下側インシュレータ292の下面に回路基板232が装着されたステータ組立体を得る。
【0004】
そして、ステータ組立体の主要構成要素であるステータコア251を軸受ホルダー245に嵌着し、樹脂ピン294を下ケーシング240に形成した貫通孔253に挿通させ、下ケーシング240の貫通孔253から突出した樹脂ピン294の先端を塑性変形させ、ピン溶着部294aを形成することによって、回路基板232を下ケーシング240に固定する。下ケーシング240には、半田接合部237に対応する位置に逃げ部241aが形成されており、半田接合部237はこの逃げ部241aの中に収容される。また、特許文献1には、下ケーシング240に、逃げ部241aに替えて貫通孔254を形成した例が示されている(
図17参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、下側インシュレータ292の下面に回路基板232が装着されたステータ組立体を得るために、ステータコア251と共に回路基板232を反転させて貫通孔233から突出したコイル293の端末を半田で接続するとい作業を必要とする。加えて、ステータ組立体を下ケーシング240に装着する際は、下ケーシング240を反転させて、貫通孔253から突出した樹脂ピン294の先端を赤外線カシメ、熱カシメ、等々で塑性変形させて、ピン溶着部294aを形成して、回路基板232を下ケーシング240に装着するという作業を必要とする。このように、特許文献1では、部品を反転させて作業する工程が2回必要となり、作業効率が低いという問題がある。
【0007】
一方、
図17に示す特許文献1の例では、回路基板232に形成した貫通孔233,234と、下ケーシング240に形成した貫通孔254,253にコイル293の端末と樹脂ピン294をそれぞれ挿通し、下ケーシング140を反転させて、下ケーシング140の背面から突出した樹脂ピン194の先端を塑性変形させて、ピン溶着部194aを形成するとともに、コイル193の端末は下ケーシング140に形成した貫通孔154の内側で回路基板132に半田接合している。
【0008】
このため、
図17に示す例では、下ケーシング240を反転させて作業する工程を1回行えばよいが、コイル293の端末は、下ケーシング240に形成した貫通孔254の内側で半田接合する作業が必要となる。このように、貫通孔254の内側で半田接合の作業を行うため、貫通孔254の直径を大きくする必要があるが、貫通孔254の直径を大きくすると、下ケーシング240の剛性、及び固有振動数の低下を招き、その結果、遠心ファンの振動、騒音の発生要因となる虞がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、下ケーシングの剛性を低下させることなく、反転作業の工程を削減して、作業効率を向上することができる遠心ファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1ケーシングと第2ケーシングとの間にステータコアおよび回路基板を収め、前記ステータコアの軸方向一端側に第1インシュレータを設け、前記ステータコアの軸方向他端側に第2インシュレータを設け、前記第1及び第2インシュレータを介して前記ステータコアの突極にコイルを巻回し、前記第2インシュレータの軸方向他端側に回路基板を配置し、前記ステータコアと前記回路基板を前記第2ケーシングの凹部に収容した遠心ファンであって、前記コイルの端末は、前記第2インシュレータに設けられたガイド部に案内されて、前記回路基板に形成されたランド部上に引き出されて半田接合されており、前記第2インシュレータは、前記回路基板と当接する外周リブを備え、前記外周リブの前記回路基板側を向く軸方向端面は、前記ガイド部としての溝を備えている遠心ファンである。
【0011】
上記構成の遠心ファンにあっては、第2インシュレータの軸方向他端側に回路基板が設けられたステータ組立体を得るに際して、コイルの端末は、第2インシュレータに設けられたガイド部に案内されて、回路基板に形成されたランド部上に引き出されて半田接合されているから、半田接合のためにステータコアと共に回路基板を反転させる必要がない。したがって、反転作業の工程が削減されることは勿論のこと、半田接合を第2ケーシングの剛性を低下させる貫通孔の中ではなく回路基板の表面で行うことができる。
【0012】
また、本発明においては、溝の開口部が回路基板によって塞がれるので、コイルの端部が溝内に保持され、コイルに外力が加わってもコイルの端末が動き難く半田接合は破損され難い。
【0013】
また、外周リブの軸方向端面に回路基板を第2ケーシングに固定するための樹脂ピンを備える構成が好適である。このような態様によれば、第2インシュレータが外周リブによって回路基板上で支持されると共にその位置で第2ケーシングに固定されるので、第2インシュレータが安定して支持される。
【0014】
溝は、外周リブの内周側から側面に向かって湾曲して延在した略弧状の形状であって、回路基板に形成されたランド部は、ステータコアの隣接する突極の中間に対応する位置に配置される構成が好適である。このような態様によれば、ランド部の軸方向一端側が開放されているので、半田接合の作業を容易に行うことができる。
【0015】
あるいは、上記態様において、溝は、外周リブの内周側から外周側に向かって延在した略直線状の形状とし、回路基板に形成されたランド部は、外周リブの径方向外側の位置に配置させることもできる。このような態様では、コイルの端部が溝からランド部に至るまで直線状であるので、コイルに与えられる応力が小さく、ランド部での半田接合の破損が生じ難いという利点がある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、下ケーシングの剛性を低下させることなく、反転作業の工程を削減して、作業効率を向上することができる遠心ファンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の遠心ファンを示す平面図である。
【
図4】第1実施形態の遠心ファンの下ケーシングを示す平面図である。
【
図5】第1実施形態の遠心ファンの下ケーシングを示す裏面図である。
【
図6】第1実施形態の遠心ファンの下ケーシングに回路基板とステータを取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図7】第1実施形態の遠心ファンの下ケーシングに回路基板とステータを取り付けた状態を示す平面図である。
【
図8】第1実施形態の遠心ファンの下側インシュレータを示す斜視図である。
【
図9】
図8の矢印Bで示す部分を拡大した斜視図である。
【
図10】
図3の矢印Cで示す部分を拡大した斜視図である。
【
図11】第2実施形態の遠心ファンの下ケーシングに回路基板とステータを取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図12】第2実施形態の遠心ファンの下ケーシングに回路基板とステータを取り付けた状態を示す平面図である。
【
図13】第2実施形態の遠心ファンの下側インシュレータを示す斜視図である。
【
図15】特許文献1に開示された従来の遠心ファンを示す断面図である。
【
図16】従来の遠心ファンを示す他の断面図である。
【
図17】従来の他の遠心ファンを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.第1実施形態
[1]遠心ファンの全体構造
図1は、本発明の第1実施形態の遠心ファン100の平面図、
図2は回転軸であるシャフト125の中心を含む断面図である。遠心ファン100は、略円板状をなす上ケーシング(第1ケーシング)110および下ケーシング(第2ケーシング)130から構成されたケーシング150を備えている。なお、実施形態の説明において、構成要素に付する「上」および「下」の記載は、
図2等における方向を示すものであり、実機での遠心ファン100の姿勢を特定するものではない。
【0019】
上ケーシング110は樹脂で構成され、その中央には吸込口111が形成されている。また、上ケーシング110の外周には、その4カ所に径方向外側へ向かって突出する略三角形状をなすフランジ112が形成されている。
図1に示すように、上ケーシング110の上面には、その外周側に複数の放射状リブ113とそれら放射状リブ113を連結する1つの同心状リブ114が形成され、その内周側にも複数の放射状リブ115とそれら放射状リブ115を連結する1つの同心状リブ116が形成されている。
【0020】
フランジ112には、
図2において下方へ向かって延びる支柱140が一体成形されている。なお、フランジ112の下面に座刳り穴を形成し、そこに支柱140を嵌合させて接着等の手段で取り付けることもできる。上ケーシング110と下ケーシング130は、支柱140によって互いに結合されている。
【0021】
この実施形態では、フランジ112および支柱140に貫通孔112aが形成され、支柱140の下端面が下ケーシング130の底面に当接し、下ケーシング130に形成した貫通孔130a(
図4および
図5参照)に締結材140aを挿通し、締結材140aを支柱140の貫通孔112aにねじ込むことで上ケーシング110および下ケーシング130は支柱140を介して結合されている。なお、支柱140の下面にボスを形成し、ボスを下ケーシング130の貫通孔130aに挿通し、貫通孔130aから突出したボスの先端を熱かしめや赤外線かしめにて塑性変形させて結合してもよい。
【0022】
ケーシング150の側面における支柱140を除いた部分は、上ケーシング110と下ケーシング130の間の隙間となっており、この隙間の部分が噴出口111aとなっている。そして、上ケーシング110と下ケーシング130の間には、樹脂製のインペラ120が回転可能な状態で収納されている。
【0023】
インペラ120は、カップ状をなすハブ121と、ハブ121の上面の外周付近から径方向に対して傾斜した外側へ延びる複数の羽根122と、羽根122の下端に配置した円板状の主板123と、羽根122の上端に配置した円環状のシュラウド124とから構成されている。羽根122は全て同じ形状で周方向に均等に配置されている。ハブ121と、羽根122と、主板123と、シュラウド124は樹脂の射出成形にて一体に形成されている。羽根122は、
図1において時計回りの方向へ回転して径方向外側へ空気を噴出する。
【0024】
インペラ120のハブ121の下面側に形成された円筒状の部分の内周面には、環状のヨーク127とロータマグネットとなる環状のマグネット128が配置されている。環状のマグネット128の内側(軸中心側)には、所定の隙間を介してステータコア161が配置されている。ステータコア161は、電磁鋼板等の薄板状の軟磁性材料を積層したもので、
図3に示すように、環状のコアバック161aから複数の突極161bを径方向外側へ突出させて構成されている。
【0025】
ステータコア161には、上下に半割構造とされた樹脂製のインシュレータ300が装着され、ステータコア161の各突極161bには、インシュレータ300を介してコイル163が巻かれている。なお、インシュレータ300の構成については後に詳細に説明する。
【0026】
図4~
図7に示すように、下ケーシング130は、樹脂で構成された皿状の構造であり、凹部134を有している。凹部134には、その一側が一段高くなった段部134aが設けられている。凹部134には、凹部134と相似形の回路基板135が収納されている。回路基板135は、コイル163への駆動電流を供給する駆動回路を備えている。回路基板135は、中央に下ケーシング130の突起部132が貫通する開口135bを備え(
図3参照)、その上面に配線パターン、電子部品、制御回路、コネクタピン挿入孔、などと共に、後に詳述するランド部が形成されている。
【0027】
図3に示すように、下ケーシング130の中央部には、上方へ向けて突出する環状の突起部132が形成されている。突起部132には、金属製(例えば、真鍮)で筒形状をなす軸受ホルダー170がインサート成形によって固定されている。軸受ホルダー170の外周には、前述したステータコア161が嵌合している。軸受ホルダー170の外周面には、径方向に突出する段部170aが設けられており、この段部170aにステータコア161の内周部が載置されている。
【0028】
ステータコア161、インシュレータ300およびコイル163により、ステータ160が構成されている。また、シャフト125、環状のヨーク127とマグネット128により、ロータ129が構成されている。このようにして、ステータ160とロータ129により、アウターロータ型のブラシレスDCモータが構成されている。
【0029】
図3に示すように、軸受ホルダー170の内側には、一対の玉軸受181,182が上下方向に離間して配置され、シャフト125は玉軸受181,182にて回転可能に支持されている。シャフト125は、インペラ120のハブ121とインサート成形により一体成形されている。このため、ロータ129と共にインペラ120が回転する。
【0030】
図4に示すように、下ケーシング130の底面には、複数の放射状リブ136と放射状リブ136を連結する複数の同心状リブ137が形成されている。放射状リブ136の外周側の端部には、凹部134の側壁に接合した三角形状リブ136aが形成されている(
図4および
図6参照)。また、
図5に示すように、下ケーシング130の裏面には、複数の三角形状リブ139が形成されている。
【0031】
また、
図4に示すように、下ケーシング130の中心付近には、平面視で円形の凸部138が平面視で放射状リブ136および同心状リブ137と重複しかつ一体的に融合させて形成されている。凸部138には、下ケーシング130の裏面まで貫通する貫通孔138aが形成されている。凸部138には、回路基板135が支持されている。
【0032】
図2に示すように、下ケーシング130の側方には、コネクタハウジング190が下ケーシング130と一体成形にて形成されている。コネクタハウジング190は側面視で矩形状をなし、その側面には開口部191が形成されている。コネクタハウジング190の内部には、下ケーシング130とインサート成形によって一体的に成形された複数のコネクタピン192の一端部が突出している。コネクタピン192はL字状をなし、その他端部は上方へ向けて延び、回路基板135を貫通して突出している。そして、コネクタピン192は、回路基板135に半田付けされ、回路基板135に配線された駆動回路と接続されている。なお、
図2において符号196はコネクタハウジング190を補強するリブである。
【0033】
[2]インシュレータ周辺の構成
インシュレータ300は、上側インシュレータ(第1インシュレータ)310と下側インシュレータ(第2インシュレータ)320とから構成されている。
図8は下側インシュレータ320を上下逆にした斜視図である。下側インシュレータ320は、樹脂からなり、その中央に軸方向に延在する円筒部321を有している。円筒部321には、スリット322が周方向に向けて複数(この例では6カ所)形成されている。このスリット322は隣接する突極161bの間に形成されたスロット161c(
図10参照)の中央と軸中心を結ぶ線上に形成されている。
【0034】
スリット322のそれぞれには、下ケーシング130の突起部132の外周面に形成された三角形状リブ132aが挿入される(
図3および
図10参照)。三角形状リブ132aは、放射状リブ136の根元の部分であり、三角形状リブ132aから径方向外側に延在した部分が放射状のリブ136である。スリット322への三角形状リブ132aの挿入はステータコア151の位置決めも兼ねている。
【0035】
軸に垂直な方向から見て、三角形状リブ132aはスロット161cの中央に位置するため、コイル163(
図3参照、
図10では図示略)との干渉(接触)を回避して三角形状リブ132aの寸法を大きくできる。この結果、下ケーシング130の剛性および下ケーシング130と軸受ホルダー170の一体構造の剛性を高くすることができる。
【0036】
下側インシュレータ320の円筒部321には、径方向外側へ突出する突起部323が周方向に複数形成されている。突起部323の先端には、周方向に延在する円弧部324が形成されている。突起部323および円弧部324の内側は空洞になっており、そこにステータコア161の突極161bが収容される。
【0037】
円弧部324の下面にはコイル163の巻き崩れを防止する矩形状
の外周リブ325が形成されている。外周リブ325は、ステータ160を下ケーシング130に取り付ける際に、回路基板135に載置されてステータ160を支持する支持部となるもので、その中心には樹脂ピン326が形成されている。樹脂ピン326は、
図3に示すように、回路基板135に形成した貫通孔135aと下ケーシング130の凸部138に形成した貫通孔138aに貫通させ、貫通孔138aから突出した先端部を熱カシメ、または赤外線カシメなどの手段で潰すことにより下ケーシング130に取り付けられている。
【0038】
図6および
図7に示すように、回路基板135の上面には、スロット161cの中央に位置してランド部135cが設けられている。ランド部135cは回路基板135の配線パターンと接続させた金属を露出させたもので、そこにはコイル163の端末163aが半田接合されている。そして、コイル163の端末163aは外周リブ325に形成した溝(ガイド部)327によってランド部135cまで案内されている。
【0039】
図9に示すように、外周リブ325の一方の肩部には、外周リブ325の内周面325aから側面325bに向かって湾曲して延在した略円弧状の溝327が形成されている。外周リブ325の下端面325cは回路基板135と接触しているので、溝327はトンネル状となり、そこにコイル163の端末163aが保持されている。
【0040】
[3]組立手順
次に、下ケーシング130の凹部134の底面に回路基板135とステータコア161を収容して取り付ける手順について説明する。先ず、回路基板135の開口部135bに、軸受ホルダー170を挿通させ、下ケーシング130の凹部134の底面から突出したコネクタピン192を回路基板135に形成されたコネクタピン挿入孔(図示略)に挿入する。すると、回路基板135に形成した樹脂ピン326を挿通するための貫通孔135aと、下ケーシング130の凹部134の底面に形成した樹脂ピン326を挿通するための貫通孔138aは、軸方向でほぼ重なった位置に配置される(
図3参照)。
【0041】
次に、ステータコア161の下端面に装着された下側インシュレータ320の下面の外周リブ325に形成された樹脂ピン326を、回路基板135に形成された貫通孔135aと、下ケーシング130に形成された貫通孔138aに挿通させ、下側インシュレータ320の円筒部321に形成したスリット322と下ケーシングの突起部132の外周側(放射状リブ136のの根本側)に形成した三角状リブ132aと係合させ(
図10参照)、ステータコア161の環状のコアバック161aを軸受ホルダー170に嵌着する。
【0042】
この時、回路基板135に形成されたランド部135cは、スロット161cの中央部に配置され、外周リブ325の溝327から引き出されたコイル163の端末163aは、回路基板135に形成されたランド部135c上に載置される。ランド部135c上に載置されたコイル163の端末163aは、ステータコア161及び回路基板135を反転させることなく、その上方からランド部135cに半田接合する。さらに、回路基板135のコネクタピン挿入孔に挿通されたコネクタピン192を半田接合する。回路基板135に形成されたランド部135c上に位置したコイル163の端末163aは、ステータコア161を反転させることなく、ランド部135cに半田接合され、そのまま半田の接合状態を外観検査できるので、作業効率を向上させることができる。
【0043】
次に、下ケーシング130を反転させ、下ケーシング130の凹部134の背面から突出した樹脂ピン326の先端を赤外線カシメ、熱カシメ、等々で塑性変形させて回路基板135を下ケーシング130に固定する。以上で下ケーシング130の凹部134の底面に回路基板135とステータコア161を収容して取り付けられる。以下は、遠心ファン100を完成させる手順である。
【0044】
軸受ホルダー170に軸受181,182を装着し、シャフト125がインサート成形されたインペラ120を軸受181,182にて回転可能に支持する。次に、吸込口111を中央に形成した上ケーシング110を取り付ける。上ケーシング110と下ケーシング130は、上ケーシン110グと一体成形に形成された4箇所の支柱140を用いて結合する。具体的には、下ケーシング130に形成した貫通孔130a(
図4および
図5参照)にボルト等の締結材140aを挿通し、支柱140に螺合させて結合する。または、各支柱140の下端面に形成した円筒状の凸部を、下ケーシング130に形成した貫通孔に挿通し、下ケーシングから突出した凸部の先端を、赤外線カシメ、熱カシメ、等々で塑性変形させて結合させてもよい。上ケーシング110と下ケーシング130との間、及び隣接する支柱140との間で形成される開口部が噴出口111aを形成する。以上により遠心ファン100が完成する。
【0045】
[4]実施形態の作用
上記構成の遠心ファン100にあっては、下側インシュレータ320の下側に回路基板135が設けられたステータ組立体を得るに際して、コイル163の端末163aは、外周リブ325に形成された溝327に案内されて、回路基板135に形成されたランド部135c上に引き出されて半田接合されているから、半田接合のためにステータコア161と共に回路基板135を反転させる必要がない。したがって、反転作業の工程が削減されることは勿論のこと、半田接合を下ケーシング130の剛性を低下させる貫通孔の中ではなく回路基板135の表面で行うことができる。したがって、下ケーシング130の剛性を低下させることなく、反転作業の工程を削減して、作業効率を向上することができる。
【0046】
特に、上記第1実施形態では、外周リブ325の下端面325cは回路基板135と接触しているので、溝327はトンネル状となり、そこにコイル163の端末163aが保持されているから、コイル163に外力が加わってもコイル163の端末163aが動き難く、ランド部135cにおける半田接合が破損され難いという利点がある。
【0047】
また、外周リブ325の下端面に下側インシュレータ320を下ケーシング130に固定する樹脂ピン326を備えているので、下側インシュレータ320が外周リブ325によって回路基板上135で支持されると共にその位置で下ケーシング130に固定されるので、下側インシュレータ320が安定して支持される。
【0048】
さらに、溝327は、外周リブ325の内周面325aから側面325bに向かって湾曲して延在した略円弧状の形状であり、回路基板135に形成されたランド部135cは、ステータコア161のスロット161cの位置に配置されているから、ランド部135cの上方が開放されているので、半田接合の作業を容易に行うことができる。
【0049】
2.第2実施形態
図11~
図14を参照して本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態は、溝の形状が上記第1実施形態のものと異なっている以外の構成は第1実施形態の構成と同じであるので、第1実施形態のものと同等の構成要素には同符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図11および
図12に示すように、回路基板135の上面には、外周リブ325の径方向外側に位置してランド部135cが設けられている。ランド部135cは回路基板135の配線パターンと接続させた金属を露出させたもので、そこにはコイル163の端末163aが半田接合されている。そして、コイル163の端末163aは外周リブ325に形成した溝327によってランド部135cまで案内されている。
【0051】
図14に示すように、外周リブ325の一方の肩部には、外周リブ325の内周面325aから外周面325dに向かって直線状に延在した溝(ガイド部)328が形成されている。外周リブ325の下端面325cは回路基板135と接触しているので、溝328はトンネル状となり、そこにコイル163の端末163aが保持されている。
【0052】
上記構成の第2実施形態においても前記第1実施形態と同等の作用、効果を得ることができる。特に、上記第2実施形態では、コイル163の端末163aが溝328からランド部135cに至るまで直線状であるので、コイル163に与えられる応力が小さく、ランド部135cでの半田接合の破損が生じ難いという利点がある。
【0053】
3.変更例
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく種々の変更が可能である。たとえば、溝327,328は、外周リブ325に設けるものに限らず、下側インシュレータ320の突起部323に溝を設けることができる。あるいは、溝に替えて突起部323にピンを立設し、コイル163の端末163aをピンに掛けてランド部135cまで案内することができる。その場合に、ピンの外周面にコイル163が嵌る溝を形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、家電機器、OA機器、産業機器の冷却、換気、空調や、車両用の空調、送風などに広く用いられている送風機としての遠心ファンの技術分野で利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
100…遠心ファン、110…上ケーシング(第1ケーシング)、111…吸込口、111a…噴出口、112…フランジ、112a…貫通孔、113…放射状リブ、114…同心状リブ、115…放射状リブ、116…同心状リブ、120…インペラ、121…ハブ、122…羽根、123…主板、124…シュラウド、125…シャフト、128…マグネット、129…ロータ、130…下ケーシング(第2ケーシング)、130a…貫通孔、132…突起部、132a…三角形状リブ、134…凹部、134a…段部、135…回路基板、135a…貫通孔、135b…開口部、135c…ランド部、136…放射状リブ、136a…三角形状リブ、137…同心状リブ、138…凸部、138a…貫通孔、139…三角形状リブ、140…支柱、140a…締結材、150…ケーシング、160…ステータ、161…ステータコア、161a…コアバック、161b…突極、161c…スロット、163…コイル、163a…端末、170…軸受ホルダー、170a…段部、181…玉軸受、182…玉軸受、190…コネクタハウジング、191…開口部、192…コネクタピン、196…リブ、300…インシュレータ、310…上側インシュレータ(第1インシュレータ)、320…下側インシュレータ(第2インシュレータ)、321…円筒部、322…スリット、323…突起部、324…円弧部、325…外周リブ、325a…内周面、325b…側面、325c…下端面、326…樹脂ピン、327…溝(ガイド部)、325d…外周面、328…溝(ガイド部)。