(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】便器装置
(51)【国際特許分類】
E03D 11/02 20060101AFI20240606BHJP
E03D 5/10 20060101ALI20240606BHJP
E03D 9/08 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
E03D5/10
E03D9/08 Z
(21)【出願番号】P 2020151380
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 佑司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 康宏
(72)【発明者】
【氏名】村田 謙豪
(72)【発明者】
【氏名】冨田 勝紀
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-20345(JP,A)
【文献】特開平8-199655(JP,A)
【文献】特開2002-294807(JP,A)
【文献】実開平3-46584(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 11/02-11/11
E03D 5/10
E03D 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面から凹んで形成され左右方向に延びる左右方向延在凹部を有する便器と、
前記便器の後部の上部に配置される機能部と、
前記機能部に設けられ、前記便器の左右方向に広がった
前記左右方向延在凹部の範囲において、前記便器
の前記左右方向延在凹部と前記機能部との間の隙間に洗浄水を吐水する吐水部と、を備え
、
前記吐水部は、下方に洗浄水を吐水する第1吐水部と、前方に洗浄水を吐水する第2吐水部と、を有する便器装置。
【請求項2】
前記
第1吐水部は、複数の吐水口を有する、請求項1に記載の便器装置。
【請求項3】
前記
第1吐水部は、前記便器の上面に向けて前記洗浄水を吐水する、請求項1又は2に記載の便器装置。
【請求項4】
前記
第1吐水部は、前記便器の便鉢を洗浄する場合の便鉢洗浄水の流速よりも遅い流速で前記洗浄水を前記隙間に吐水する、請求項1~3のいずれかに記載の便器装置。
【請求項5】
前記左右方向延在凹部は、前記便器の上面において、底面、側壁及び後壁を有し、
前記左右方向延在凹部と前記機能部とにより囲まれた隙間空間が形成され、
前記
第1吐水部は、前記隙間空間に前記洗浄水を充満させて前記便器と前記機能部との間の隙間を洗浄する、請求項1~4のいずれかに記載の便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器と、便器の後部の上面に配置される便器洗浄装置と、を備える便器装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の便器装置は、便器の後部の上面に凹部を設け、便器洗浄装置と便器上面との間の隙間を洗浄可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の便器装置では、便器洗浄装置の吐水箇所が部分的であるため、便器の上部において左右方向の広範囲に洗浄することができない。
【0005】
本開示は、便器と機能部との間の隙間を洗浄する場合に、便器の上部において左右方向の広範囲に洗浄することができる便器装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、便器と、前記便器の後部の上部に配置される機能部と、前記便器の左右方向に広がった所定の範囲において、前記便器と前記機能部との間の隙間に洗浄水を吐水する吐水部と、を備える便器装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】機能部を便器から取り外した状態を示す斜視図である。
【
図3】機能部の底面を上下方向Zの下方から見た斜視図である。
【
図7】便器装置が昇降装置により上昇位置に位置した状態を示す図である。
【
図8】機能部の水回路を含んで構成された制御ブロック図である。
【
図11】機能部を便器装置の前側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
便器装置1の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の説明において、便座(図示省略)に着座した使用者から見た場合の前後の向きを前後方向Yとする。便座に着座した使用者から見た場合の左右の向きを左右方向Xとする。便器2が設置される床面に対する鉛直方向に沿う上下の向きを上下方向Zとする。
図5、
図6及び
図12~
図16に示す断面は、
図4及び
図9に示すA-A線~G-G線それぞれにおいて、前後方向Y及び上下方向Zに沿って切断した断面を、左右方向Xに見た断面である。
【0009】
図1~
図4に示すように、本実施形態に係る便器装置1は、便器2と、便座(図示省略)と、便蓋3と、機能部4と、を備える。便器2は、上方に向けて開口して形成される。便器2は、例えば陶器製又は樹脂製である。便座(図示省略)及び便蓋3は、便器2の上方において、便器2に対して回転可能に取り付けられる。
【0010】
便器2は、
図2に示すように、便鉢21と、上面部22と、便鉢凹部23と、外周壁部24と、を有する。便鉢21は、便器2の前側に配置される。便鉢21は、上部に開口211を有する。外周壁部24は、便鉢21の外面や配管等の外側を囲む。
【0011】
上面部22は、便鉢21の開口211の上端よりも上方の位置において、便鉢21の開口211の外側の周囲を囲んで形成される上面周囲部分22aと、上面周囲部分22aから便鉢21の後部側に延びる後部部分22bと、を有して構成される。
【0012】
上面部22の上面221は、
図2に示すように、便器2の前側において便鉢21の外側に形成される前側U字状上面222と、便器2の後側に形成され配管等が配置される後部開口223aが形成された後側上面223と、後述する便鉢凹部23の底面235と、を有する。本実施形態においては、便器2の上面221には、前側U字状上面222及び後側上面233が含まれ、後述する便鉢凹部23の底面235も含まれる。前側U字状上面222には、閉じた状態の便座(図示省略)が当接する。後側上面223は、平面状に形成される。後側上面223には、機能部4が配置される。
【0013】
便鉢凹部23は、便鉢21の開口211の後部側の周縁に沿って配置され、上面部22の上面221から凹んで形成される。便鉢凹部23は、左右方向延在凹部232(便器凹部)を有する。便鉢凹部23は、底面235と、一対の側壁236と、後壁237と、を有する。
【0014】
左右方向延在凹部232は、便鉢21の後側において左右方向Xに延びる。左右方向延在凹部232は、底面235、一対の側壁236及び後壁237に囲まれて形成される。便鉢凹部23の内周側は、壁などは設けられておらず、便鉢21の開口211側に開放して形成される。側壁236や後壁237は、傾斜していてもよく、ラウンド形状に形成されていてもよい。
【0015】
左右方向延在凹部232には、機能部4の機能部凸部42が配置される。左右方向延在凹部232には、機能部4の機能部凸部42の底面に設けられた隙間洗浄吐水部51及び前側底面洗浄吐水部52が配置される。つまり、左右方向延在凹部232を設けることで、機能部4の機能部凸部42の底面に設けられた隙間洗浄吐水部51及び前側底面洗浄吐水部52を収容するスペースを確保できる。
【0016】
左右方向延在凹部232と機能部4の機能部凸部42とにより囲まれた空間は、
図5に示すように、隙間空間Kを構成する。左右方向延在凹部232は、
図2に示すように、左右方向Xに長く形成される。
【0017】
本実施形態においては、左右方向延在凹部232の左右方向Xの長さは、便器2の左右方向Xの長さよりも短く、且つ、便鉢21の開口211の左右方向Xの長さよりも長い長さで形成される。左右方向延在凹部232の左右方向Xの長さを、便鉢21の開口211の左右方向Xの長さと同程度の長さに形成してもよい。
【0018】
左右方向延在凹部232の底面235は、洗浄水が滞留しないように、僅かに前下がりに傾斜して形成される。これにより、左右方向延在凹部232を流れる洗浄水を、傾斜に沿って前側に流すことで、便鉢21に垂らすことができる。本実施形態では、左右方向延在凹部232の底面235は、傾斜して形成される。これに限定されない。左右方向延在凹部232の底面235は、傾斜していなくてもよく、フラットで水平に平行な平面でもよい。
【0019】
機能部4は、便器2において、後側の大部分が便器2の上面部22の後側上面223に配置された状態で、前側の一部が左右方向延在凹部232の上部及び便鉢21の後方側の上方に配置される。機能部4は、少なくとも、使用者の局部を洗浄する衛生洗浄装置44を含んで構成される。機能部4は、
図2に示すように、衛生洗浄装置44を含んで構成される機能部品と、昇降装置8(
図7参照)(隙間拡大機構部)と、制御部9(
図8参照)と、ベースプレート41と、機能部の外形を覆うカバー部材413と、を備える。
【0020】
ベースプレート41は、
図2に示すように、前ベース411と、後ベース412と、を有する。前ベース411には、機能部4の機能部品の一部が配置される。後ベース412は、便器2の後部の上部において、前ベース411の後側に配置される。後ベース412は、便器2に固定される。後ベース412には、機能部4の機能部品の一部が配置される。機能部4の機能部品の一部が配置された前ベース411は、
図7に示すように、昇降装置8によって、便器2などの掃除等のために上下に昇降される。
【0021】
昇降装置8は、
図7に示すように、機能部4の少なくとも一部を昇降させる。昇降装置8は、前ベース411を、上昇前の定位置(
図1参照)と、定位置から上昇させた上昇位置(
図7参照)との間で昇降させる機構である。昇降装置8は、前ベース411を、後ベース412に対して、昇降させることで、便器2と機能部4との間の隙間を広げることが可能である。これにより、便器2と前ベース411との間の隙間を広く開けて、便器2の上面などの清掃や、機能部4の底面を洗浄した場合に機能部の乾燥などを行うことができる。
【0022】
昇降装置8は、
図7に示すように、可動部材81と、駆動装置82と、を備える。可動部材81は、前ベース411の後部に固定される。駆動装置82のモータ(図示省略)が駆動されることで、例えばラックアンドピニオン機構を介して、可動部材81が昇降される。これによって、昇降装置8は、可動部材81に固定された前ベース411を、定位置(
図1参照)と、上昇位置(
図7参照)と、に昇降させることができる。昇降装置8の駆動は、
図8に示すように、後述する制御部9により制御される。
【0023】
機能部品は、各種機能や他の部材との位置関係などを考慮して、前ベース411や後ベース412やその他の設置位置に設置される。機能部品は、例えば、便座(図示省略)の保温装置や、洗浄タンクを備えた便器洗浄装置や、使用者の局部を洗浄する衛生洗浄装置44(
図3参照)や、底面洗浄部5(隙間洗浄吐水部51、前側底面洗浄吐水部52)や、前面洗浄部6(前側部分洗浄吐水部61、シャッター洗浄部62)や、ホースや、電源ユニットや、制御回路基板や、便座及び便蓋3を電動で開閉させる電動開閉ユニットや、バルブユニットや、各種配管等である。
【0024】
衛生洗浄装置44は、人体洗浄機能を有し、
図3に示すように、進退可能な洗浄ノズル441と、洗浄ノズル441の前方側開口を開閉するシャッター部442と、を有する。洗浄ノズル441は、人体の局部を洗浄する肛門洗浄やビデ洗浄に用いられる。シャッター部442は、機能部4の機能部凸部42の前側において左右方向Xの中央に配置される。
【0025】
底面洗浄部5は、
図3に示すように、隙間洗浄吐水部51(吐水部)と、前側底面洗浄吐水部52(吐水部)と、を有する。前面洗浄部6は、前側部分洗浄吐水部61(吐水部)と、シャッター洗浄部62と、を有する。機能部4は、
図8に示すように、各部分を洗浄するための洗浄水が流通する水回路45を有している。本実施形態においては、洗浄には、除菌水(銀イオン水、次亜塩素酸)、高温水、泡洗浄などによる洗浄も含まれる。
【0026】
水回路45は、
図8に示すように、リム洗浄及びジェット洗浄により便鉢21の内部の洗浄を行う便鉢洗浄を行うための便鉢洗浄流路L1と、機能部4の底面洗浄及び前側洗浄を行うための機能部洗浄流路L2と、を有する。水回路45は、底面洗浄部5(隙間洗浄吐水部51、前側底面洗浄吐水部52)、前面洗浄部6(前側部分洗浄吐水部61、シャッター洗浄部62)、リム吐水口21a、ジェット吐水口21b、給水バルブ451,452及び開閉バルブ453a、453b、453c、453dを含んで構成され、各洗浄動作を実行する洗浄部を構成する。
【0027】
便鉢洗浄流路L1は、給水バルブ451を介して便鉢21に向けて洗浄水を供給する便鉢洗浄水供給流路L11と、便鉢洗浄水供給流路L11の下流側の端部から分岐してリム吐水口21aまでのリム洗浄流路L12と、便鉢洗浄水供給流路L11の下流側の端部から分岐してジェット吐水口21bまでのジェット洗浄流路L13と、を有する。
【0028】
機能部洗浄流路L2は、給水バルブ452を介して機能部4に向けて洗浄水を供給する機能部洗浄水流路L21と、機能部洗浄水流路L21の下流側の端部から分岐する底面洗浄流路L22及び前側洗浄流路L23と、底面洗浄流路L22の下流側端部から分岐して隙間洗浄吐水部51までの隙間洗浄流路L221と、底面洗浄流路L22の下流側の端部から分岐して前側底面洗浄吐水部52までの底面前側洗浄流路L222と、前側洗浄流路L23の下流側の端部から分岐して前側部分洗浄吐水部61までの前側部分洗浄流路L231と、前側洗浄流路L23の下流側の端部から分岐してシャッター洗浄部62までのシャッター洗浄流路L232と、を有する。
【0029】
隙間洗浄流路L221、底面前側洗浄流路L222、前側部分洗浄流路L231及びシャッター洗浄流路L232の途中には、各流路を開閉する開閉バルブ453a、453b、453c、453dが配置される。水回路45の回路構成は本実施形態には限定されない。水回路45は、1つの回路で構成してもよいし、複数の回路に切替弁などを設けて構成してもよい。
【0030】
給水バルブ451,452や開閉バルブ453a、453b、453c、453dの開閉動作は、後述する制御部9により制御される。これにより、隙間洗浄吐水部51、前側底面洗浄吐水部52、前側部分洗浄吐水部61及びシャッター洗浄部62は、それぞれ、洗浄水を独立して吐水できる。
【0031】
機能部4は、
図3~
図6に示すように、機能部凸部42を有する。機能部凸部42は、機能部4の前側において、機能部4の下方に突出して形成される。機能部凸部42は、便器2における左右方向延在凹部232以外の上面221に機能部4が設置された場合に、便器2の左右方向延在凹部232に配置される。
【0032】
機能部凸部42は、前側中央傾斜部分421と、前側において左右方向Xに離間して配置される一対の前側サイド傾斜部分422,422(前側部分)と、前側中央傾斜部分421及び一対の前側サイド傾斜部分422,422の後側に形成される平面状傾斜底面423(底面、平面状底面)と、平面状傾斜底面423の後側に形成される後側傾斜面425と、を有する。
【0033】
機能部凸部42の前側において、左右方向Xの中央には、上部側にシャッター部442が配置され、下部側に前側中央傾斜部分421が配置される。シャッター部442は、
図5に示すように、前方から後方に向かうに従って下り傾斜の平面状に形成される。
【0034】
一対の前側サイド傾斜部分422,422は、
図3に示すように、機能部凸部42の前側の中央に配置されるシャッター部442及び前側中央傾斜部分421を挟んで左右方向Xの両方の外側に配置される。前側サイド傾斜部分422は、前側部分洗浄吐水部61により洗浄される。
【0035】
一対の前側サイド傾斜部分422,422は、
図6に示すように、それぞれ、前方側から後方側に向かうに従って下り傾斜の平面状の下り傾斜面422aを有する。前側サイド傾斜部分422の下り傾斜面422aにより、前側部分洗浄吐水部61により吐水される洗浄水を、前側サイド傾斜部分422の下り傾斜面422aに沿って便鉢21の外縁に誘導できるため、洗浄水を、便鉢21の内面に向けて便鉢21に落とすことができる。より好ましくは、便鉢21の内面に沿って便鉢21に落とす。
【0036】
平面状傾斜底面423は、
図5及び
図6に示すように、前側中央傾斜部分421及び一対の前側サイド傾斜部分422,422の後側の端部から、後側に上り傾斜で延びる直線状の傾斜面である。
【0037】
平面状傾斜底面423は、前側底面洗浄吐水部52から吐水された洗浄水を便器2の便鉢21へ誘導する前下がりの下り傾斜面423aを有する。そのため、
図5に示すように、便器2の左右方向Xの中央側において、前側底面洗浄吐水部52により平面状傾斜底面423を洗浄した後の汚れた洗浄水を、傾斜面に沿わせて、便鉢21に落ちるように誘導できる。これにより、汚れた洗浄水が、便器2の上部に残留することを抑制できる。
【0038】
平面状傾斜底面423は、
図3に示すように、便器2の左右方向Xに連続する平面形状に形成される。平面状傾斜底面423には、前側底面洗浄吐水部52(後述)の複数の吐水口521が左右方向Xに並んで配置される。前側底面洗浄吐水部52の複数の吐水口521からは、平面状傾斜底面423に沿って、前方側に向けて洗浄水が吐水される。本実施形態では、平面状傾斜底面423は、平面形状で且つ傾斜して形成される。これに限定されない。平面状傾斜底面423は、平面形状でなくてもよいし、傾斜していなくてもよい。
【0039】
図9及び
図10に示すように、平面状傾斜底面423における前側底面洗浄吐水部52の複数の吐水口521が配置される部分の前方には、それぞれ、扇状凹部424が形成される。扇状凹部424の詳細については後述する。
【0040】
後側傾斜面425は、
図5及び
図6に示すように、平面状傾斜底面423の後側の端部から、平面状傾斜底面423の傾斜角度よりも大きい傾斜角度で、前方側から後方側に向かうに従って上る上り傾斜で傾斜して延びる。後側傾斜面425及び平面状傾斜底面423は、前側底面洗浄吐水部52から吐水された洗浄水を便器2の便鉢21へ誘導する前下がりの下り傾斜面である。後側傾斜面425には、
図9に示すように、隙間洗浄吐水部51の複数の吐水口511が左右方向Xに並んで配置される。
【0041】
機能部凸部42には、前後方向Yに沿って切断した断面において、
図5及び
図6に示すように、最も下端に、凸部下端部426が形成される。凸部下端部426は、機能部凸部42の左右方向Xの中央に配置される中央側下端部427(
図5参照)と、中央側下端部427の左右方向Xの外側に配置される一対のサイド側下端部428(
図6参照)と、を有する。
【0042】
中央側下端部427は、
図3に示すように、機能部凸部42の左右方向Xの中央において、前側中央傾斜部分421と平面状傾斜底面423とが接続された最も下端の部分である。一対のサイド側下端部428は、機能部凸部42の左右方向Xのシャッター部442を挟んだ左右方向Xの両方の外側において、一対の前側サイド傾斜部分422と平面状傾斜底面423とが接続された最も下端の部分である。
【0043】
隙間洗浄吐水部51は、
図4に示すように、機能部4の機能部凸部42の後側傾斜面425(底面部)に設けられる。隙間洗浄吐水部51は、
図6に示すように、下方に洗浄水を吐水することで、便器2の上面221に向けて洗浄水を吐水する。隙間洗浄吐水部51は、左右方向延在凹部232内に洗浄水を吐水する。これにより、隙間洗浄吐水部51は、機能部4と便器2の左右方向延在凹部232の底面235との間の隙間Sに洗浄水を吐水する。
【0044】
隙間洗浄吐水部51は、便器2の左右方向延在凹部232の底面235と機能部凸部42との間の隙間Sに洗浄水を吐水して隙間Sを洗浄する。左右方向延在凹部232の底面235と機能部凸部42との間の隙間Sは、便器2における左右方向延在凹部232以外の上面221に機能部4が設置されることで形成される。
【0045】
隙間洗浄吐水部51は、複数の吐水口511を有する。複数の吐水口511は、機能部凸部42の後側傾斜面425に、左右方向Xに並んで配置される。複数の吐水口511は、それぞれ、洗浄水を真下に向けて吐水する。本実施形態では、吐水口511を、真下に向けて洗浄水を吐水するように構成した。これに限定されない。吐水口511を、斜め下方に向けて洗浄水を吐水するように構成することもできる。特に、吐水口511を斜め下方の後方側に向けて洗浄水を吐水するように構成することで、便器2の左右方向延在凹部232の底面235の洗浄範囲を広げやすい。
【0046】
本実施形態においては、複数の吐水口511は、
図9に示すように、例えば、便器2の左右方向Xに6つ並んで配置される。6つの吐水口511は、便器2の左右方向Xの中央に対して3つずつ左右対称に配置されている。左右の一方側及び他方側において、3つの吐水口511は、便器2の左右方向Xの外側から中央側に向けて順に、第1吐水口511a、第2吐水口511b及び第3吐水口511cである。吐水口511の数は限定されない。
【0047】
複数の吐水口511には、左右方向Xに延びる洗浄水供給路512(
図6参照)を介して、洗浄水が供給される。隙間洗浄吐水部51は、複数の吐水口511が左右方向Xに並んで配置されることで、便器2の左右方向Xに広がった所定の範囲において、便器2と機能部4との間の隙間Sに洗浄水を吐水できる。本実施形態においては、便器2の左右方向Xに広がった所定の範囲は、
図2に示すように、例えば、便器2の左右方向Xにおいて、左右方向延在凹部232における左右に離れて配置された側壁236と側壁236との間の範囲である。これにより、便器2と機能部4との間の隙間Sの左右方向Xの広範囲において洗浄できる。
【0048】
本実施形態においては、便器2と機能部4との間の隙間Sを洗浄することには、便器2と機能部4との間の隙間Sにおいて、上方側に配置される機能部4の機能部凸部42の平面状傾斜底面423を洗浄することと、下方側に配置される便器2の左右方向延在凹部232の底面235を洗浄することのうち、少なくともいずれかが含まれる。
【0049】
第1吐水口511aが配置された左右方向Xの位置においては、
図6に示すように、前後方向Yに沿って切断した断面において、便器2の左右方向延在凹部232の底面235は、機能部凸部42の前側の端部よりも前側まで延びている。そのため、第1吐水口511aが配置された左右方向Xの位置においては、機能部4の機能部凸部42が下方に露出しておらず、前側底面洗浄吐水部52を洗うことができると共に、洗浄水の飛沫が外部に飛び散ることを抑制できる。
【0050】
第2吐水口511bが配置された左右方向Xの位置においては、
図12に示すように、前後方向Yに沿って切断した断面において、便器2の左右方向延在凹部232の底面235は、中央側下端部427までは延びておらず、中央側下端部427の後側に形成される平面状傾斜底面423の前後方向Yの途中まで延びている。そのため、第2吐水口511bが配置された左右方向Xの位置においては、機能部4の機能部凸部42の前側の下方の一部が露出している。機能部4の機能部凸部42が露出していない部分には、前側底面洗浄吐水部52が配置されるため、前側底面洗浄吐水部52を洗うことができると共に、洗浄水の飛沫が外部に飛び散ることを抑制できる。
【0051】
第3吐水口511cが配置された左右方向Xの位置においては、
図13に示すように、前後方向Yに沿って切断した断面において、便器2の左右方向延在凹部232の底面235は、中央側下端部427までは延びておらず、中央側下端部427の後側に形成される平面状傾斜底面423の前後方向Yの途中まで延びている。そのため、第3吐水口511cが配置された左右方向Xの位置においては、機能部4の機能部凸部42の前側の下方の一部が露出している。機能部4の機能部凸部42が露出した部分には、前側底面洗浄吐水部52の一部が露出して配置される。
【0052】
隙間洗浄吐水部51は、
図6、
図12及び
図13に示すように、側壁236(
図2参照)の上端よりも下方に配置される。詳細には、隙間洗浄吐水部51の吐水口511は、左右方向延在凹部232の底面235よりも上方側且つ便器2の上端よりも下方側に位置する。隙間洗浄吐水部51の吐水口511から吐水された洗浄水が外に飛び出しにくく、隙間洗浄吐水部51の吐水口511に汚物や汚水が入りにくい。
【0053】
隙間洗浄吐水部51は、便器2の便鉢21を洗浄する場合の洗浄水(便鉢洗浄水)(リム洗浄、ジェット洗浄)の流速よりも遅い流速で、洗浄水を隙間Sに吐水する。隙間洗浄吐水部51は、左右方向延在凹部232と機能部4とにより囲まれた隙間空間Kにゆっくりな流速で洗浄水を充満させて、便器2と機能部4との間の隙間Sを洗浄する。隙間洗浄吐水部51から吐水される洗浄水の流速は、隙間空間Kに洗浄水を充満できる流速であればよい。
【0054】
前側底面洗浄吐水部52は、機能部4の平面状傾斜底面423に沿って前方側に向けて洗浄水を吐水する。前側底面洗浄吐水部52は、
図9に示すように、機能部4に設けられた複数の吐水口521を有する。前側底面洗浄吐水部52は、洗浄水を吐水口521から吐水する。複数の吐水口521には、左右方向Xに延びる洗浄水供給路522(
図14参照)を介して、洗浄水が供給される。
【0055】
本実施形態においては、複数の吐水口521は、
図9に示すように、例えば、便器2の左右方向Xに6つ並んで配置される。6つの吐水口521は、便器2の左右方向Xの中央に対して3つずつ左右対称に配置されている。左右の一方側及び他方側において、3つの吐水口521は、便器2の左右方向Xの外側から中央側に向けて順に、第1吐水口521a、第2吐水口521b及び第3吐水口521cである。吐水口521の数は限定されない。
【0056】
第1吐水口521aが配置された左右方向Xの位置においては、
図14に示すように、前後方向Yに沿って切断した断面において、便器2の左右方向延在凹部232の底面235は、機能部凸部42の前側の端部よりも前側まで延びている。そのため、第1吐水口521aが配置された左右方向Xの位置においては、第1吐水口521aは、便器2の左右方向延在凹部232の底面235に対向して配置される。これにより、機能部4の機能部凸部42が下方に露出しておらず、隙間洗浄吐水部51の複数の吐水口511から吐水された洗浄水により、左右方向延在凹部232と機能部4とにより囲まれた隙間空間Kに洗浄水を充填して、第1吐水口521aを洗うことができると共に、洗浄水の飛沫が外部に飛び散ることを抑制できる。
【0057】
第2吐水口521bが配置された左右方向Xの位置においては、
図15に示すように、前後方向Yに沿って切断した断面において、便器2の左右方向延在凹部232の底面235は、中央側下端部427よりも前側に形成される前側サイド傾斜部分422の前後方向Yの途中まで延びている。そのため、第2吐水口521bが配置された左右方向Xの位置においては、第2吐水口521bは、便器2の左右方向延在凹部232の底面235に対向して配置される。第2吐水口521bは、機能部4の機能部凸部42が露出していない部分に配置される。左右方向延在凹部232と機能部4とにより囲まれた隙間空間Kには、隙間洗浄吐水部51の複数の吐水口511から吐水された洗浄水により、洗浄水が充填される。よって、第2吐水口521bを洗うことができると共に、洗浄水の飛沫が外部に飛び散ることを抑制できる。
【0058】
第3吐水口521cが配置された左右方向Xの位置においては、
図16に示すように、前後方向Yに沿って切断した断面において、便器2の左右方向延在凹部232の底面235は、中央側下端部427までは延びておらず、第3吐水口521cの下方の位置まで延びている。そのため、第3吐水口511cが配置された左右方向Xの位置においては、第3吐水口521cは、便器2の左右方向延在凹部232の底面235と便鉢21との境目の部分に対向して配置される。第3吐水口521cは、一部が露出して配置される。
【0059】
本実施形態においては、便器2の左右方向Xの中央側において、隙間洗浄吐水部51の第3吐水口511cが配置された左右方向Xの位置(
図13参照)や、前側底面洗浄吐水部52の第3吐水口521cが配置された左右方向Xの位置(
図16参照)においては、便器2の左右方向延在凹部232の底面235の左右方向Xの位置を、機能部凸部42の中央側下端部427よりも後側に配置した。しかし、これに限定されない。便器2の左右方向延在凹部232の底面235の位置を機能部凸部42の中央側下端部427まで延ばしたり、機能部凸部42の位置を変更することで、機能部凸部42の下方の露出部分を少なくして、洗浄水の飛沫が外部に飛び散ることを抑制できる。便器2の左右方向延在凹部232の底面235の位置を機能部凸部42の中央側下端部427まで延ばしたり、機能部凸部42の位置を変更することで、左右方向延在凹部232と機能部4とにより囲まれた隙間空間Kに洗浄水を充填した場合に、洗浄水により、吐水口521を洗うことができる。仮に機能部凸部42の底面を水平面で構成した場合には、便器2の左右方向延在凹部232の底面235の位置を機能部凸部42の水平面の前端部まで延ばしたり、機能部凸部42の位置を変更することで、機能部凸部42の下方の露出部分を少なくしたり、隙間空間Kに洗浄水を充填して洗浄水により吐水口521を洗うことができる。
【0060】
前側底面洗浄吐水部52は、
図9に示すように、複数の吐水口521が左右方向Xに並んで配置されることで、便器2の左右方向Xに広がった範囲に洗浄水を吐水できる。前側底面洗浄吐水部52は、便器2の後方から前方に向けて洗浄水を吐水する。前側底面洗浄吐水部52は、機能部4の平面状傾斜底面423のうち便器2の便鉢21側の露出部分を洗浄するように洗浄水を吐水する。
【0061】
前側底面洗浄吐水部52は、
図14~
図16に示すように、左右方向Xに延びる洗浄水供給路522と、洗浄水供給路522に対して下方に直交して延びる導入管523と、導入管523の下部に接続される絞り管524と、絞り管524の下部の開口に対向して下方に傾斜して配置される円板525と、を有する。吐水口521は、絞り管524の下部の開口と円板525との間に、前方側の半周の範囲で開口したスリット状に形成される。
【0062】
図10及び
図14に示すように、洗浄水供給路522により導入管523に導入された洗浄水が、絞り管524により絞られた状態で、円板525の内面に衝突されて、スリット状の吐水口521は、前側に勢いよく、放射状に洗浄水を吐水する。これにより、機能部凸部42と便器2の左右方向延在凹部232との間の隙間Sよりも機能部凸部42の前側の露出部分を、吐水口521から勢いよく吐水された洗浄水で洗浄できる。
【0063】
複数の吐水口521は、便器2の左右方向Xの中央に対して左右対称の位置に配置されている。複数の吐水口521は、半周のスリット状の部分が、
図9に示すように、狙った方向以外に飛び散らないように、便器2の左右方向Xの中央側の前方側を向くように、便器2の前後方向Yに対して、それぞれ傾斜角度を異ならせた状態で傾斜して配置される。これにより、複数の吐水口521は、洗浄水を便器2の左右方向Xに広がった範囲に洗浄水できると共に、便器2の左右方向Xの外側に飛び散ることを抑制できる。
【0064】
図9及び
図10に示すように、平面状傾斜底面423における吐水口521の前方には、扇状凹部424が形成される。扇状凹部424は、機能部4の平面状傾斜底面423において、下方から上方に凹む扇状に形成される。
【0065】
扇状凹部424は、拡散傾斜面424aを有する。拡散傾斜面424aは、前側底面洗浄吐水部52の吐水口521から吐水される洗浄水の吐水方向の延長線上に配置される。拡散傾斜面424aは、扇状凹部424の内側から外側に向かうに従って凹み量が小さくなるように傾斜して形成される。言い換えると、拡散傾斜面424aは、洗浄水の吐水方向の進行方向に向かうに従って凹み量が小さくなるように傾斜して形成される。前側底面洗浄吐水部52の吐水口521から吐水された洗浄水を拡散傾斜面424aに衝突させて放射状に拡散させる。
【0066】
前側底面洗浄吐水部52から吐水された洗浄水は、扇状凹部424に衝突する。扇状凹部424には、吐水口521から吐水された洗浄水が衝突される。これにより、吐水口521から吐水された放射状の洗浄水を、更に放射状に拡散できる。本実施形態では、平面状傾斜底面423に扇状凹部424を設けた。これに限定されない。平面状傾斜底面423には、扇状凹部424を設けなくてもよい。平面状傾斜底面423に扇状凹部424を設けない場合には、平面状傾斜底面423のユーザーによる清掃性を向上させることができる。
【0067】
前面洗浄部6は、
図3に示すように、一対の前側部分洗浄吐水部61(吐水部)と、シャッター洗浄部62と、を備える。シャッター洗浄部62は、機能部4の前側の上部において、左右方向Xの中央に配置される。一対の前側部分洗浄吐水部61は、機能部4の前側において、シャッター洗浄部62を挟んだ左右方向Xの両方の外側に配置される。
【0068】
前側部分洗浄吐水部61は、
図10に示すように、機能部4の前側中央傾斜部分421及び一対の前側サイド傾斜部分422,422の下り傾斜面422aに洗浄水を吐水する。前側部分洗浄吐水部61は、複数の吐水口611を有する。複数の吐水口611は、左右方向Xにおいてシャッター部442を挟んだ外側において、左右方向Xに並んで配置される。複数の吐水口611は、前側サイド傾斜部分422の上部において、
図10に示すように、遮蔽板43と前側サイド傾斜部分422との間のスリット状隙間Gの奥側に配置される。
【0069】
前側部分洗浄吐水部61の複数の吐水口611は、
図11に示すように、便器装置1の正面視において、視認できない位置に配置される。複数の吐水口611は、前側が遮蔽板43に覆われているため、便器装置1の正面視においては、視認できない。
【0070】
前側部分洗浄吐水部61の吐水口611は、昇降装置8により機能部4が上昇位置に移動された場合に、機能部4が上昇されることにより、便器2と機能部4との間の隙間Sが広がるため、下側から見ることで、遮蔽板43と前側サイド傾斜部分422との間のスリット状隙間G(
図10参照)から、視認可能な位置に配置される。
【0071】
シャッター洗浄部62は、
図3に示すように、衛生洗浄装置44のシャッター部442が閉じた状態でシャッター部442の表面に洗浄水を吐水して、シャッター部442を洗浄する。シャッター部442は、衛生洗浄装置44の洗浄ノズル441の前方側部分を開閉する。シャッター部442は、機能部4の機能部凸部42の前側において左右方向Xの中央に配置される。シャッター部442は、左右方向Xの中央において左右方向Xに延びて配置される。シャッター部442は、前側から後側に向かうに従って下る下り傾斜の直線状に形成される。
【0072】
シャッター洗浄部62は、複数の吐水口621を有する。複数の吐水口621は、シャッター部442の上方に配置される左右方向Xに延びる板部材443に形成される。複数の吐水口621は、左右方向Xに並んで配置される。吐水口621の数は限定されない。
【0073】
シャッター洗浄部62は、シャッター部442の裏面にも洗浄水を吐水することが可能である。更に、シャッター部442が開いた場合にシャッター部442の上端部を衛生洗浄装置44の内部側に移動させるように構成し、シャッター部442が開いた状態でシャッター部442に吐水口621から洗浄水を吐水する構造とすることで、吐水口621を衛生洗浄装置44の内部側に配置することができる。これにより、衛生洗浄装置44をコンパクトに形成でき、衛生洗浄装置44が配置されるスペースを小さくすることができる。
【0074】
制御部9は、
図8に示すように、便器装置1の各動作を制御する。制御部9は、洗浄に関する制御を実行するように、水回路45を制御する。水回路45は、洗浄動作として、機能部4の平面状傾斜底面423を洗浄する底面洗浄動作と、機能部4の前側サイド傾斜部分422及びシャッター部442を洗浄する前側洗浄動作と、を実行する。制御部9は、例えば洗浄動作の制御に関して、機能部4の平面状傾斜底面423を洗浄する底面洗浄動作と、機能部4の前側サイド傾斜部分422及びシャッター部442を洗浄する前側洗浄動作と、を行うように、開閉バルブ453a,453b,453c,453d(水回路45)を制御する。これにより、機能部4における汚れが生じ易い部分である機能部4の底面側の部分及び前面側の部分を洗浄することができる。
【0075】
水回路45が実行する底面洗浄動作としては、例えば、機能部4の平面状傾斜底面423に沿って洗浄水を吐水して平面状傾斜底面423を洗浄するベース底面洗浄動作(第1底面洗浄動作)と、機能部4と便器2の左右方向延在凹部232の底面235との間の隙間Sを洗浄する隙間洗浄動作(第2底面洗浄動作)と、がある。
【0076】
水回路45は、底面洗浄動作と前側洗浄動作とを異なるタイミングで実行する。制御部9は、底面洗浄動作と前側洗浄動作とを異なるタイミングで実行するように、開閉バルブ453a,453b,453c,454d(水回路45)を制御できる。そのため、底面洗浄動作と前側洗浄動作とを異なるタイミングで実行するため、機能部4の底面側を洗浄する際の洗浄水と前面側を洗浄する際の洗浄水がぶつかり合うことを防止できる。これにより、機能部4の底面側及び前面側において、洗浄できない部分を少なくできる。
【0077】
水回路45は、前側洗浄動作の実行後に、底面洗浄動作を実行する。制御部9は、前側洗浄動作の実行後に、底面洗浄動作を実行するように、開閉バルブ453a,453b,453c,453d(水回路45)を制御できる。これにより、機能部4の前面側を洗浄した汚れを、機能部4の底面側において洗浄できるため、汚れが残りにくい順番で洗浄動作を実行できる。
【0078】
水回路45は、底面洗浄動作と前側洗浄動作とを異なるタイミングで実行するだけでなく、底面洗浄動作と前側洗浄動作とを同じタイミングで実行することもできる。これにより、底面洗浄動作と前側洗浄動作とを同時に実行できるため、待ち時間が発生せずに、洗浄時間を短縮することができる。
【0079】
水回路45は、底面洗浄動作において、ベース底面洗浄動作の実行後に、隙間洗浄動作を実行する。制御部9は、底面洗浄動作において、ベース底面洗浄動作の実行後に、隙間洗浄動作を実行するように、開閉バルブ453a,453b,453c,453d(水回路45)を制御する。これにより、機能部4の平面状傾斜底面423を洗浄した後に、機能部4と便器2の左右方向延在凹部232の底面235との間の隙間Sを洗浄できるため、汚れが残りにくい順番で洗浄動作を実行できる。
【0080】
制御部9は、
図8に示すように、汚水の水位の上昇を検知する水位検知センサ46の検知信号に基づいて、洗浄動作を制御できる。水位検知センサ46は、例えば、
図8に示すように、機能部4の機能部凸部42の前ベース411の下面に設置されることで、水位が上昇した場合に、便器2の詰まりを検知できる。水位検知センサ46を設置する場所や設置する高さは、これに限定されない。水位検知センサ46を設置する場所は、他の場所でもよい。
【0081】
制御部9は、汚水の水位が上昇して水位検知センサ46により便器2の詰まりが検知された場合には、機能部4と便器2との間の隙間Sの隙間洗浄動作を禁止するように制御する。これにより、機能部4と便器2との間の隙間Sに汚水が入り込んだ場合に、機能部4と便器2との間の隙間Sの隙間洗浄動作を禁止することができる。
【0082】
制御部9は、汚水の水位が上昇して水位検知センサ46により便器2の詰まりが検知された後に、汚水の水位が低下したことが検知された場合に、底面洗浄動作(ベース底面洗浄動作、隙間洗浄動作)を行うように、開閉バルブ453a,453b,453c,453d(水回路45)を制御する。これにより、便器2の詰まりにより汚水の水位が上昇して機能部4の下部が汚水に浸かってしまっても、便器2の詰まりが解消した場合に、底面洗浄動作(ベース底面洗浄動作、隙間洗浄動作)を行うことで、機能部4の平面状傾斜底面423を洗浄することができる。
【0083】
制御部9は、衛生洗浄装置44の局部洗浄動作中において、前側部分洗浄吐水部61による前側洗浄を行うように、開閉バルブ453a,453b,453c,453d(水回路45)を制御する。これにより、衛生洗浄装置44の洗浄ノズル441による洗浄の際の飛沫が機能部凸部42の前側に付着することを防止できる。
【0084】
制御部9は、便器2の便鉢21を洗浄する洗浄動作中において、前側部分洗浄吐水部61による前側洗浄を行うように、開閉バルブ453a,453b,453c,453d(水回路45)を制御する。これにより、便鉢21を洗浄する洗浄水が便鉢21上に流れるため、前側部分洗浄吐水部61による前側洗浄動作の際の飛沫が、便器2の便鉢21に付着することを防止できる。便鉢21を洗浄する洗浄水の洗浄音にかき消されて、前側部分洗浄吐水部61による前側洗浄の際の洗浄音が気にならなくなる。
【0085】
制御部9は、便器2の便鉢21を洗浄する洗浄動作中において、底面洗浄動作における隙間洗浄吐水部51による隙間洗浄動作を行うように、開閉バルブ453a,453b,453c,453d(水回路45)を制御する。これにより、便鉢21を洗浄する洗浄水が便鉢21上に流れるため、隙間洗浄吐水部51による隙間洗浄動作の際の飛沫が、便器2の便鉢21に付着することを防止できる。便鉢21を洗浄する洗浄水の洗浄音にかき消されて、隙間洗浄吐水部51による隙間洗浄動作の際の洗浄音が気にならなくなる。
【0086】
水回路45が実行する前側洗浄動作としては、例えば、機能部4の前側の左右方向Xの中央においてシャッター部442を洗浄するシャッター部洗浄動作と、機能部4の前側の左右方向Xの外側において前側サイド傾斜部分422に沿って洗浄水を吐水して前側サイド傾斜部分422を洗浄する前側サイド部分洗浄動作と、がある。本実施形態においては、前側サイド部分洗浄動作は、機能部4の前側において、シャッター部442以外を洗浄する洗浄動作である。
【0087】
制御部9は、シャッター部洗浄動作と前側サイド部分洗浄動作(シャッター部442以外の洗浄動作)とを異なるタイミングで実行するように、開閉バルブ453a,453b,453c,454d(水回路45)を制御できる。制御部9は、シャッター部洗浄動作と前側サイド部分洗浄動作(シャッター部442以外の洗浄動作)とを同じタイミングで実行するように、開閉バルブ453a,453b,453c,454d(水回路45)を制御できる。
【0088】
制御部9は、昇降装置8を制御する。そのため、便器2と機能部4との間の隙間Sを洗浄した後に、便器2や機能部4の機能部凸部42(底面、隙間洗浄吐水部51、前側底面洗浄吐水部52など)の拭き掃除を行ったり、便器2や機能部4の機能部凸部42を乾燥させたりすることが可能である。
【0089】
制御部9は、昇降装置8により便器2と機能部4との間の隙間Sが拡大された上昇位置(拡大位置)に位置する場合に、便器2と機能部4との間の隙間Sを洗浄する洗浄動作を禁止するように、開閉バルブ453a,453b,453c,453dを制御する。これにより、昇降装置8が上昇位置に位置する場合に、隙間洗浄吐水部51から吐水される洗浄水が、使用者が意図しない位置へ飛び跳ねることを抑制できる。
【0090】
制御部9は、昇降装置8により便器2と機能部4との間の隙間Sが拡大された上昇位置に位置する場合に、便器2と機能部4との間の隙間Sが拡大されていない場合の流速よりも遅い流速で隙間洗浄吐水部51から洗浄水を吐水するように、開閉バルブ453a,453b,453c,453dを制御する。これにより、洗浄水を遅い流速で平面状傾斜底面423に吐水して、平面状傾斜底面423を洗浄水で濡らすことで、濡れた平面状傾斜底面423を清掃できる。
【0091】
制御部9は、操作部(図示省略)が操作された場合に、便器2と機能部4との間の隙間Sを洗浄する隙間洗浄動作を実行するように制御する。制御部9は、隙間洗浄動作の実行後に、便器2と機能部4との間の隙間が拡大された上昇位置に位置するように昇降装置8を制御する。これにより、機能部4の隙間洗浄動作の実行後に、昇降装置8を便器2と機能部4との間の隙間Sを拡大する上昇位置に移動させることで、隙間洗浄動作時に濡れた便器2と機能部4とを乾かすことができる。
【0092】
制御部9は、所定のタイミングにおいて、便器2と機能部4との間の隙間Sが拡大された上昇位置に位置するように昇降装置8を制御する。所定のタイミングは、例えば、隙間洗浄を行った後において、人がいない夜間のタイミングなどである。例えば、夜間などの人がいないタイミングに、昇降装置8により機能部4を自動で上昇位置に移動させて、便器2と機能部4との間の隙間Sを拡大することで、洗浄動作時に濡れた便器2と機能部4とを乾かすことができる。
【0093】
便器装置1の洗浄動作の制御の一例について説明する。機能部4の機能部凸部42の洗浄を行う場合には、例えば、制御部9は、前側洗浄動作の実行後に、ベース底面洗浄動作を実行し、その後、隙間洗浄動作を実行するように制御する。
【0094】
具体的には、制御部9は、機能部4の前側サイド傾斜部分422及びシャッター部442を洗浄する前側洗浄動作を実行するように、開閉バルブ453a,453b,453c,453dを制御する。これにより、機能部4の前面側に付いた汚れを洗浄水で洗浄できる。
【0095】
次に、制御部9は、前側洗浄動作の実行後に、機能部4の平面状傾斜底面423に沿って洗浄水を吐水して平面状傾斜底面423洗浄するベース底面洗浄動作を実行するように、開閉バルブ453a,453b,453c,453dを制御する。これにより、機能部4の前面側において下方に移動した汚れを、機能部4の平面状傾斜底面423に沿って洗浄水を吐水することで洗浄できる。
【0096】
続けて、制御部9は、ベース底面洗浄動作の実行後に、機能部4と便器2の左右方向延在凹部232の底面235との間の隙間Sを洗浄する隙間洗浄動作を実行するように、開閉バルブ453a,453b,453c,453dを制御する。これにより、機能部4の前面側において下方に移動して平面状傾斜底面423に沿って洗浄水を吐水することで洗浄した汚れを、機能部4と便器2の左右方向延在凹部232の底面235との間の隙間Sを洗浄する隙間洗浄動作により隙間空間Kに洗浄水を充満させて洗浄することができる。
【0097】
そして、制御部9は、リム洗浄及びジェット洗浄により便鉢21の内部の洗浄を行う便鉢洗浄を実行するように制御する。これにより、隙間洗浄動作により便鉢21に落下した汚れた洗浄水を流すことができる。
【0098】
以上の順番で洗浄動作を実行することで、機能部4の下方側に汚れを移動させた後に、機能部4と便器2の左右方向延在凹部232の底面235との間の隙間Sを洗浄して、その後、便鉢21を洗浄することにより、汚れが残りにくい順番で洗浄動作を実行できる。
【0099】
以上説明した本実施形態の便器装置1によれば、以下のような効果を奏する。
【0100】
本実施形態の便器装置1は、便器2と、便器2の後部の上部に配置される機能部4と、便器2の左右方向に広がった所定の範囲において、便器2と機能部4との間の隙間Sに洗浄水を吐水する隙間洗浄吐水部51と、を備える。そのため、便器2の上面221の左右方向の広範囲を洗浄することができる。
【0101】
本実施形態においては、隙間洗浄吐水部51は、複数の吐水口511を有する。そのため、複数の吐水口511を左右方向に並べて配置することで、便器2の上面221の左右方向の広範囲を洗浄することができる。
【0102】
本実施形態においては、隙間洗浄吐水部51は、便器2の上面221に向けて洗浄水を吐水する。そのため、便器2の上面221に向けて洗浄水を直接吐水しながら、機能部4に機能部4と便器2の左右方向延在凹部232の底面235との間の隙間Sを洗浄できる。これにより、便器2の上面221に隙間洗浄吐水部51から吐水された洗浄水が衝突して、便器2の上面221に衝突した洗浄水が周りに広がるため、洗浄範囲を広げることができる。
【0103】
本実施形態においては、隙間洗浄吐水部51は、便器2の便鉢21を洗浄する場合の洗浄水の流速よりも遅い流速で洗浄水を、便器2と機能部4との間の隙間Sに吐水する。洗浄水の流速を遅い流速とすることで、便器2と機能部4との間の隙間Sにおいて広範囲に洗浄水を行き渡らせることができるため、便器2と機能部4との間の隙間Sを良好に洗浄できる。
【0104】
本実施形態においては、便器2の上面221には、底面235、側壁236及び後壁237を有する左右方向延在凹部232が設けられ、左右方向延在凹部232と機能部4とにより囲まれた隙間空間Kが形成され、隙間洗浄吐水部51は、隙間空間Kに洗浄水を充満させて便器2と機能部4との間の隙間Sを洗浄する。これにより、便器2と機能部4との間の隙間Sの広範囲において洗浄水を一層行き渡らせることができるため、便器2と機能部4との間の隙間Sを一層良好に洗浄できる。
【0105】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明した。本開示は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0106】
例えば、前記実施形態においては、昇降装置8により前ベース411を昇降させる構成とした。これに限定されない。昇降装置8を備えていなくてもよい。
【0107】
前記実施形態において、隙間洗浄後の隙間に、除菌水を行き渡らせたり、イオン発生器により発生されたイオンを行き渡らせることで、除菌するようにしてもよい。
【0108】
前記実施形態においては、機能部4の前側サイド傾斜部分422の下り傾斜面422aを、前方から後方に向かうに従って下る傾斜に形成した。しかし、下り傾斜面422aの傾斜方向は、これに限定されない。下り傾斜面422aは、例えば、後方から前方に向かうに従って下る傾斜に形成してもよい。この場合には、前側部分洗浄吐水部61により吐水される洗浄水を、前側サイド傾斜部分422の下り傾斜面422aに沿って前側に誘導できるため、洗浄水は、便鉢21内に落ちやすい。
【符号の説明】
【0109】
1 便器装置、2 便器、4 機能部、21 便鉢、51 隙間洗浄吐水部(吐水部)
221 上面、232 左右方向延在凹部(便器凹部)、235 底面(上面)、236 側壁、237 後壁、511 吐水口、K 隙間空間、S 隙間