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  • 特許-シールド部材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】シールド部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/14 20060101AFI20240606BHJP
   H02K 11/01 20160101ALI20240606BHJP
   H02K 11/215 20160101ALI20240606BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H02K15/14 Z
H02K11/01
H02K11/215
G01D5/245 110W
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020156865
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022050760
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 豊
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-009708(JP,A)
【文献】実開昭48-103806(JP,U)
【文献】特開2004-180384(JP,A)
【文献】特開平10-239459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/14
H02K 11/01
H02K 11/215
G01D 5/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転軸の軸線方向の一方側の端部にマグネットホルダを介して保持されるマグネットと、前記マグネットに軸線方向の一方側から対向するセンサ基板に配置される磁気センサと、を囲むシールド部材の製造方法であって、
冷間圧延鋼板を前記シールド部材の形状にプレス加工したプレス加工品を製造する工程と、
前記プレス加工品に、以下の条件1-4を満たす熱処理条件で磁気焼鈍加工を少なくとも2回実施する工程と、を行うことを特徴とするシールド部材の製造方法。
条件1 : 加熱上昇時間60分
条件2 : 焼鈍時間40分以上
条件3 : 焼鈍温度850 ℃ ±10 ℃
条件4 : 炉冷時間120分
【請求項2】
前記磁気焼鈍加工の後に、前記シールド部材の表面に腐食防止層を形成する処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のシールド部材の製造方法
【請求項3】
前記腐食防止層は、リン含有率10%以上の高リン無電解ニッケルメッキ層であることを特徴とする請求項2に記載のシールド部材の製造方法
【請求項4】
前記腐食防止層は、亜鉛メッキ層であることを特徴とする請求項2に記載のシールド部材の製造方法
【請求項5】
前記腐食防止層は、電着塗装であることを特徴とする請求項2に記載のシールド部材の製造方法
【請求項6】
前記シールド部材は、前記マグネットおよび前記センサ基板の前記軸線方向の一方側を覆う底部と、前記底部の外周縁から前記軸線方向の他方側へ延びて前記マグネットおよび前記センサ基板の外周側を囲む側壁部と、を備えることを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載のシールド部材の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダおよびモータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータケースにステータおよびロータを収容したモータにおいて、モータケースの軸線方向の端部にエンコーダケースを固定し、エンコーダケースの内部にロータの回転を検出するエンコーダを収容したエンコーダ付きモータが用いられている。特許文献1には、この種のモータが開示される。
【0003】
特許文献1のモータは、ステータおよびロータを収容する筒状ケースの両端に第1軸受ホルダおよび第2軸受ホルダを固定したモータハウジング(モータケース)を備えており、モータハウジングの軸線方向の端部にカバー(エンコーダケース)が固定される。カバーの内側にはエンコーダが構成される。エンコーダは、回転軸の端部に磁石ホルダを介して固定された永久磁石と、永久磁石と対向するセンサ基板に搭載された磁気センサを備える。センサ基板は、樹脂製の基板ホルダを介して第1軸受ホルダに固定される。エンコーダは、カバーの内側に固定されたシールド部材(シールド板)によって囲まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-86557号公報
【文献】特開平11-275795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータに搭載されるエンコーダは、各種ノイズの影響を受けるため、製品の使用環境により出力が変化して角度誤差が発生するおそれがある。例えば、外乱磁界の影響によって角度誤差が発生する。このようなノイズ対策として、特許文献1では、センサ基板および永久磁石を囲む金属製のシールド部材を磁気シールドとして用いる。
【0006】
エンコーダの磁気シールドは、一般的には、電磁軟鉄、パーマロイ、ケイ素鋼、電磁ステンレスといった材料で形成されるが、これらは材料コストが高価である。磁気シールドの磁気特性を良好にするための技術として、従来から、磁気焼鈍加工が行われる。例えば、特許文献2では、ステッピングモータを覆うシールドチューブに対して磁気焼鈍加工を行うことにより、磁気特性を高め、モータから発生するノイズの拡散を低減させる。これにより、低コストな材料で形成した磁気シールドでありながら、高価な材料で形成した磁気シールドに近い磁気遮蔽効果を得ることができる。
【0007】
しかしながら、磁気焼鈍加工は、実施条件や実施回数によっては磁気特性が安定しないという問題がある。特許文献2では、磁気焼鈍加工によってノイズ低減効果が高まることが記載されているが、磁気焼鈍加工の実施条件や実施回数による磁気特性のばらつきについては検証されていない。また、エンコーダの磁気シールドは内部に配置される永久磁石の影響を受けヒステリシスを持つ場合がある。そこで、磁気特性として、保磁力の低減および安定化が求められているが、特許文献2では、保磁力の低減効果については検証されていない。
【0008】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、低コストで磁気特性の良好な磁気シールドを備えたエンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、回転軸を備えたロータと、前記ロータに径方向で対向するステータと、を備えたモータの回転を検出するエンコーダであって、前記回転軸の軸線方向の一方側の端部に固定されるマグネットホルダと、前記マグネットホルダに保持されるマグネットと、前記マグネットに前記軸線方向の一方側から対向する磁気センサと、前記磁気センサが配置されるセンサ基板と、前記マグネットおよび前記磁気センサを囲むシールド部材と、を有し、前記シールド部材は、冷間圧延鋼板により形成され、少なくとも2回の磁気焼鈍加工が行われていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、マグネットおよび磁気センサを囲むシールド部材を備えているので、外乱磁界を遮蔽でき、エンコーダの検出角度に対する外乱磁界の影響を低減できる。また、シールド部材は、冷間圧延鋼板により形成され、少なくとも2回の磁気焼鈍加工が行われている。冷間圧延鋼板は、調達が容易で、低コストであり、加工性も優れている。また、冷間圧延鋼板は、磁気焼鈍加工によって保磁力を低減させ磁気シールドとしての磁気特性を向上させるにあたって、1回の磁気焼鈍加工では磁気特性が安定しないが、2回以上磁気焼鈍加工を繰り返すことにより低い保磁力を安定して得ることができる。従って、本発明のエンコーダは、低コストでありながら磁気特性が良好なシールド部材を備えているので、外乱磁界による検出精度の低下を抑制できる。
【0011】
本発明において、前記シールド部材の表面に腐食防止層が設けられていることが好ましい。例えば、前記腐食防止層は、リン含有率10%以上の高リン無電解ニッケルメッキ層であることが好ましい。このようにすると、腐食防止層は非磁性となり、低リンタイプや中リンタイプの無電解ニッケルメッキ層よりも磁気特性の安定性が高い。従って、磁気特性が良好で、且つ、耐環境性が高く、経年変化に強いシールド部材を備えているので、エンコーダの耐久性を高めることができる。
【0012】
本発明において、前記腐食防止層は、亜鉛メッキ層である構成を採用することができる。あるいは、前記腐食防止層は、電着塗装である構成を採用することができる。これらの腐食防止層は非磁性であるため、磁気特性が良好で、且つ、シールド部材の耐久性を高めることができる。従って、エンコーダの耐久性を高めることができる。
【0013】
本発明において、前記磁気焼鈍加工は、以下の条件1-4を満たす熱処理条件で実施されることが好ましい。このような熱処理条件で2回以上磁気焼鈍加工を行うことにより、安定した保磁力低減効果を得ることができる。
条件1:加熱上昇時間60分
条件2:焼鈍時間40分以上
条件3:焼鈍温度850℃±10℃
条件4:炉冷時間120分
【0014】
本発明において、前記シールド部材は、前記マグネットおよび前記センサ基板の軸線方向の一方側を覆う底部と、前記底部の外周縁から前記軸線方向の他方側へ延びて前記マグネットおよび前記センサ基板の外周側を囲む側壁部と、を備えることが好ましい。このようにすると、ステータによって遮蔽されていない側をシールド部材によって覆うことができるので、外乱磁界を効果的に遮蔽できる。従って、エンコーダの検出角度に対する外乱磁界の影響を低減できる。
【0015】
次に、本発明は、上記のエンコーダを有するモータである。このようにすると、エンコーダの検出角度に対する外乱磁界の影響が少ないエンコーダ付きモータを提供できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エンコーダがマグネットおよび磁気センサを囲むシールド部材を備えているので、外乱磁界を遮蔽でき、エンコーダの検出角度に対する外乱磁界の影響を低減できる。また、シールド部材は、冷間圧延鋼板により形成され、少なくとも2回の磁気焼鈍加工が行われている。冷間圧延鋼板は、調達が容易で、低コストであり、加工性も優れている。また、本発明者らは、磁気焼鈍加工によって保磁力を低減させ磁気シールドとしての磁気特性を向上させるにあたって、1回の磁気焼鈍加工では磁気特性が安定しないが、2回以上磁気焼鈍加工を繰り返すことにより低い保磁力を安定して得ることができることを確認した。従って、本発明のエンコーダは、低コストでありながら磁気特性が良好なシールド部材を備えているので、外乱磁界による検出精度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るエンコーダを備えたモータの断面図である。
図2】シールド部材の斜視図および平面図である。
図3】磁気焼鈍加工による磁気特性の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(全体構成)
以下に、図面を参照して、本発明を適用したモータの実施形態を説明する。図1は本発明に係るエンコーダ10を備えたモータ1の断面図である。モータ1は、回転軸20を備えたロータ2と、ロータ2の外周側に配置されるステータ3と、ステータ3を収容する筒状のモータケース4と、モータケース4の一端に固定される第1軸受けホルダ5と、モータケース4の他端に固定される第2軸受けホルダ6と、ロータ2の回転を検出するエンコーダ10を備える。エンコーダ10は、エンコーダケース7に収容される。
【0019】
ロータ2は、回転軸20と、回転軸20の外周面に固定されるロータマグネット21を備える。回転軸20は磁性材からなる。回転軸20は、第1軸受けホルダ5の中央に形成された凹部に保持される第1軸受22、および、第2軸受けホルダ6の中央に形成された凹部に保持される第2軸受23に回転可能に保持される。本形態では、第1軸受22および第2軸受23はボールベアリングである。
【0020】
回転軸20は、モータ1の径方向の中心において軸線方向Lへ延びている。本明細書において、軸線方向Lの一方側をL1、軸線方向Lの他方側をL2とする。第1軸受けホルダ5は、モータケース4の軸線方向Lの一方側L1の端部に固定され、第2軸受けホルダ6は、モータケース4の軸線方向Lの他方側L2の端部に固定される。回転軸20は、第1軸受けホルダ5から軸線方向Lの他方側L2へ突出する出力軸20Aを備える。従って、本形態では、軸線方向Lの他方側L2は出力側であり、軸線方向Lの一方側L1は反出力側である。
【0021】
モータケース4は、アルミ等の非磁性金属からなる。ステータ3は、積層コアからなるステータコア30と、ステータコア30に設けられた複数の突極31のそれぞれにインシュレータ32を介して巻回されたコイル33を備える。ステータコア30は、モータケース4の内側に焼き嵌めあるいは圧入により固定される。ステータ3の一方側L1には、環状の配線基板34が配置される。配線基板34は、インシュレータ32から突出する端子ピン35を介してコイル33に電気的に接続される。
【0022】
モータケース4の側面には、モータケース4に形成された切欠き部40を覆うリード線ホルダ41が固定される。コイル33への給電用のリード線(図示せず)は、リード線ホルダ41の内部へ引き回され、切欠き部40からモータケース4の内側へ引き込まれて配線基板34に接続される。
【0023】
モータ1はACサーボモータであり、ステータ3は3相のコイル33を備える。本形態では、コイル33が配置されるスロット数は12である。また、ロータマグネット21は、外周面にN極とS極が周方向に交互に着磁された8極着磁マグネットである。つまり、本形態のモータ1は、8極12スロットである。なお、モータ1の極数およびスロット数は、上記と異なっていてもよい。
【0024】
エンコーダケース7は、樹脂等の非磁性材からなる。エンコーダケース7は、第2軸受けホルダ6と軸線方向Lに対向する底部71と、底部71の外周縁から第2軸受けホルダ6に向けて他方側L2へ立ち上がる側壁部72を備える。側壁部72の先端と第2軸受けホルダ6との隙間はシール材8によりシールされる。側壁部72には、エンコーダ10に接続されるエンコーダ配線19を外部に引き出すためのエンコーダ配線取り出し部73が設けられている。
【0025】
(エンコーダ)
エンコーダ10は磁気式エンコーダである。エンコーダ10は、マグネットホルダ11を介して回転軸20に固定されるマグネット12と、マグネット12に対して軸線方向Lの一方側L1から対向する磁気センサ13を備える。マグネット12は、磁気センサ13と対向する着磁面にN極とS極が1極ずつ着磁されている。磁気センサ13が配置されるセンサ基板14は、基板ホルダ15を介して第2軸受けホルダ6に固定される。マグネット12およびセンサ基板14は、エンコーダケース7の内側に固定されるカップ状のシールド部材16によって外周側および一方側L1が囲まれている。
【0026】
エンコーダ10は、回転軸20の回転に伴ってマグネット12が回転し、マグネット12の回転による磁界の変化を磁気センサ13が検出する。磁気センサ13は、ホール素子などの感磁素子である。磁気センサ13の出力に基づく検出角度は、センサ基板14上のコネクタ17に接続されたエンコーダ配線19を介して外部に出力される。
【0027】
図2は、シールド部材16の斜視図および平面図である。シールド部材16は、円形の底部161と、底部161の外周縁から他方側L2へ立ち上がる円筒状の側壁部162を備える。底部161には、エンコーダケース7の底部71に設けられた凸部74に嵌合する嵌合穴163が設けられ、嵌合穴163の両側に2か所の位置決め穴164が設けられている。また、側壁部162には、エンコーダ配線19を通すための切欠き部165が設けられている。
【0028】
シールド部材16は、導電性を有する磁性材からなる。本形態では、シールド部材16は冷間圧延鋼板(SPCC)をプレス加工して形成され、磁気焼鈍加工が実施されている。磁気焼鈍加工は、以下の条件1-4を全て満たす熱処理条件で2回実施されている。なお、磁気焼鈍加工の実施回数は、2回よりも多くてもよい。
条件1:加熱上昇時間60分
条件2:焼鈍時間40分以上
条件3:焼鈍温度850℃±10℃
条件4:炉冷時間120分
【0029】
図3は、磁気焼鈍加工による磁気特性の変化を示すグラフである。本発明者らは、電磁軟鉄(純鉄)、パーマロイ、ケイ素鋼、電磁ステンレス鋼などの従来磁気シールドとして使用されてきた素材の磁気特性と、冷間圧延鋼板(SPCC)の磁気特性を比較検討した。その際、1回あるいは2回以上磁気焼鈍加工を行った場合の磁気特性を比較検討した。その結果、図3に示すように、冷間圧延鋼板(SPCC)を使用した場合でも、2回以上磁気焼鈍加工を行えば、磁気焼鈍を1回行っただけの純鉄と同等の磁気特性(保磁力)を
得られることを確認できた。エンコーダ10の磁気シールドとして使用する場合に、保磁力を1.0A/cm程度あるいはそれ以下とすることを目標として材料の選定を行うが、低コストな冷間圧延鋼板(SPCC)でも、磁気焼鈍加工を少なくとも2回行えば、良好な磁気特性を安定して得られ、磁気特性が良好な磁気シールドとして使用できることを確認できた。
【0030】
シールド部材16は、表面に腐食防止層を備える。腐食防止層を形成する処理は、磁気焼鈍加工を行った後に行われる。腐食防止層は、一般的な亜鉛メッキ層でもよいが、好ましくは、無電解ニッケルメッキ層とする。より好ましくは、高リンタイプ(例えば、リン含有率10%以上)の無電解ニッケルメッキ層とする。もしくは、電着塗装を選択しても良い。
【0031】
(本形態の主な効果)
以上のように、本形態のモータ1は、回転軸20を備えたロータ2と、ロータ2に径方向で対向するステータ3と、ロータ2の回転を検出するエンコーダ10を備える。本形態のエンコーダ10は、回転軸20の軸線方向Lの一方側L1の端部に固定されるマグネットホルダ11と、マグネットホルダ11に保持されるマグネット12と、マグネット12に軸線方向Lの一方側L1から対向する磁気センサ13、および、磁気センサ13が配置されるセンサ基板14と、マグネット12および磁気センサ13を囲むシールド部材16と、を有する。シールド部材16は冷間圧延鋼板(SPCC)により形成され、少なくとも2回の磁気焼鈍加工が行われている。
【0032】
本形態では、マグネット12および磁気センサ13を囲むシールド部材16を備えているので、シールド部材16によって外乱磁界を遮蔽できる。また、シールド部材16は、冷間圧延鋼板(SPCC)により形成され、少なくとも2回の磁気焼鈍加工が行われている。冷間圧延鋼板(SPCC)は、調達が容易で、低コストであり、加工性も優れている。また、冷間圧延鋼板(SPCC)は、1回の磁気焼鈍加工では低い保磁力を安定して得ることはできず、磁気特性が不安定であるが、2回以上磁気焼鈍加工を繰り返した場合は、低い保磁力を安定して得ることができる。従って、本形態のエンコーダ10は、低コストで磁気特性の良好なシールド部材16を備えており、外乱磁界による検出精度の低下を抑制できる。
【0033】
本形態において、冷間圧延鋼板(SPCC)に対する磁気焼鈍加工は、以下の条件1-4を満たす熱処理条件で実施される。本発明者らは、このような熱処理条件で2回以上磁気焼鈍加工を行うことにより、安定した保磁力低減効果を得ることができることを検証した。
条件1:加熱上昇時間60分
条件2:焼鈍時間40分以上
条件3:焼鈍温度850℃±10℃
条件4:炉冷時間120分
【0034】
シールド部材16は、表面に腐食防止層が設けられている。例えば、本形態では、腐食防止層は、リン含有率10%以上の高リン無電解ニッケルメッキ層である。高リンタイプの無電解ニッケルメッキ層は、非磁性であり、低リンタイプや中リンタイプの無電解ニッケルメッキ層よりも磁気特性の安定性が高い。従って、磁気特性が良好で、且つ、耐環境性が高く、経年変化に強いシールド部材16として使用できるので、エンコーダ10の耐久性が高い。
【0035】
なお、腐食防止層は、亜鉛メッキ層もしくは電着塗装である構成を採用することができる。これらの腐食防止層を用いた場合でも、シールド部材16の耐久性を高めることがで
きる。
【0036】
本形態のシールド部材16は、マグネット12およびセンサ基板14の軸線方向Lの一方側L1を覆う底部161と、底部161の外周縁から軸線方向Lの他方側L2へ延びてマグネット12およびセンサ基板14の外周側を囲む側壁部162を備える。このような形状にすることで、ステータ3および第2軸受けホルダ6によって遮蔽される側(軸線方向Lの他方側L2)以外の方向をシールド部材16によって覆うことができ、外乱磁界を効果的に遮蔽できる。従って、エンコーダ10の検出角度に対する外乱磁界の影響を低減できる。
【符号の説明】
【0037】
1…モータ、2…ロータ、3…ステータ、4…モータケース、5…第1軸受けホルダ、6…第2軸受けホルダ、7…エンコーダケース、8…シール材、10…エンコーダ、11…マグネットホルダ、12…マグネット、13…磁気センサ、14…センサ基板、15…基板ホルダ、16…シールド部材、17…コネクタ、19…エンコーダ配線、20…回転軸、20A…出力軸、21…ロータマグネット、22…第1軸受、23…第2軸受、30…ステータコア、31…突極、32…インシュレータ、33…コイル、34…配線基板、35…端子ピン、40…切欠き部、41…リード線ホルダ、71…底部、72…側壁部、73…エンコーダ配線取り出し部、74…凸部、161…底部、162…側壁部、163…嵌合穴、164…位置決め穴、165…切欠き部、L…軸線方向、L1…軸線方向の一方側、L2…軸線方向の他方側
図1
図2
図3