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特許7499135超音波観測装置、内視鏡補助装置、超音波観測装置の作動方法、及び超音波観測装置の作動プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】超音波観測装置、内視鏡補助装置、超音波観測装置の作動方法、及び超音波観測装置の作動プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/12 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
A61B8/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020161789
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054644
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鯖田 知弘
【審査官】佐藤 賢斗
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-528649(JP,A)
【文献】国際公開第2019/213532(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/106882(WO,A1)
【文献】特表2004-534564(JP,A)
【文献】岩下拓司ほか,EUS-FNAにおける組織採取率向上のコツ,日本消化器内視鏡学会雑誌,日本,日本消化器内視鏡学会,2016年11月20日,Vol. 58, No. 11,pp. 2296-2304,DOI: 10.11280/gee.58.2296
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
A61B 1/00 - 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用する超音波内視鏡に関する第1の内視鏡情報を取得する情報取得部と、
過去の穿刺実績を示す複数の実績情報を記憶する記憶部と、
前記第1の内視鏡情報と、前記複数の実績情報とに基づいて、使用を推奨する穿刺針を選定する穿刺針選定部と、を備え、
前記実績情報は、
過去の穿刺で用いた超音波内視鏡に関する第2の内視鏡情報と、前記過去の穿刺で用いた穿刺針に関する穿刺針情報と、前記過去の穿刺によって採取された検体から診断をすることができたか否かを示す診断可否情報とが関連付けられた情報を少なくとも含む超音波観測装置。
【請求項2】
前記穿刺針選定部によって選定された使用を推奨する穿刺針に関する推奨穿刺針情報を報知部に報知させる報知制御部をさらに備える、請求項1に記載の超音波観測装置。
【請求項3】
前記使用する超音波内視鏡から受信したエコー信号に基づいて、穿刺予定の穿刺対象に関する第1の穿刺対象情報を生成する解析部をさらに備え、
前記実績情報は、
前記第2の内視鏡情報と、前記穿刺針情報と、前記診断可否情報と、前記過去の穿刺の穿刺対象に関する第2の穿刺対象情報とが関連付けられた情報であり、
前記穿刺針選定部は、
前記第1の内視鏡情報と、前記第1の穿刺対象情報と、前記複数の実績情報とに基づいて、使用を推奨する穿刺針を選定する、請求項1に記載の超音波観測装置。
【請求項4】
前記第1の内視鏡情報は、
前記使用する超音波内視鏡における挿入形状に関する第1の形状情報を含み、
前記第2の内視鏡情報は、
前記過去の穿刺で用いた超音波内視鏡における挿入形状に関する第2の形状情報を含む、請求項1に記載の超音波観測装置。
【請求項5】
前記情報取得部は、
前記使用する超音波内視鏡に搭載されたセンサから前記第1の形状情報を取得する、請求項4に記載の超音波観測装置。
【請求項6】
前記第1の穿刺対象情報は、
前記穿刺予定の穿刺対象のサイズ、位置、硬さ、及び性状のいずれかに関する情報であり、
前記第2の穿刺対象情報は、
前記過去の穿刺の穿刺対象のサイズ、位置、硬さ、及び性状のいずれかに関する情報である、請求項3に記載の超音波観測装置。
【請求項7】
前記使用する超音波内視鏡から受信したエコー信号に基づいて、超音波画像を生成する超音波画像生成部と、
前記超音波画像内の位置を指定するユーザ操作を受け付ける入力部と、をさらに備え、
前記解析部は、
前記ユーザ操作によって指定された位置を含む領域を前記穿刺予定の穿刺対象とする、請求項3に記載の超音波観測装置。
【請求項8】
前記複数の実績情報は、
更新可能に構成されている、請求項1に記載の超音波観測装置。
【請求項9】
前記穿刺針選定部は、
前記複数の実績情報のうち、前記第1の内視鏡情報と前記第1の穿刺対象情報とにそれぞれ対応する前記第2の内視鏡情報と前記第2の穿刺対象情報とを含む実績情報を抽出するとともに、当該抽出した実績情報に含まれる前記診断可否情報に基づいて、診断をすることができた割合を示す診断率を算出する、請求項3に記載の超音波観測装置。
【請求項10】
使用する内視鏡に関する第1の内視鏡情報を取得する情報取得部と、
過去の穿刺実績を示す複数の実績情報を記憶する記憶部と、
前記第1の内視鏡情報と、前記複数の実績情報とに基づいて、使用を推奨する穿刺針を選定する穿刺針選定部と、を備え、
前記実績情報は、
過去の穿刺で用いた内視鏡に関する第2の内視鏡情報と、前記過去の穿刺で用いた穿刺針に関する穿刺針情報と、前記過去の穿刺によって採取された検体から診断をすることができたか否かを示す診断可否情報とが関連付けられた情報を少なくとも含む内視鏡補助装置。
【請求項11】
使用する超音波内視鏡に関する第1の内視鏡情報を取得する情報取得ステップと、
前記第1の内視鏡情報と、過去の穿刺実績を示す複数の実績情報とに基づいて、使用を推奨する穿刺針を選定する穿刺針選定ステップと、を備え、
前記実績情報は、
過去の穿刺で用いた超音波内視鏡に関する第2の内視鏡情報と、前記過去の穿刺で用いた穿刺針に関する穿刺針情報と、前記過去の穿刺によって採取された検体から診断をすることができたか否かを示す診断可否情報とが関連付けられた情報を少なくとも含む超音波観測装置の作動方法。
【請求項12】
請求項11に記載の超音波観測装置の作動方法をコンピュータに実行させる超音波観測装置の作動プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波観測装置、内視鏡補助装置、超音波観測装置の作動方法、及び超音波観測装置の作動プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体内に挿入される超音波内視鏡と、当該超音波内視鏡から出力されたエコー信号に基づいて超音波画像を生成する超音波観測装置とを備えた超音波内視鏡システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の超音波内視鏡システムでは、超音波画像上において、超音波内視鏡の先端から突出した穿刺針の像の進行角度を算出し、当該進行角度に応じたガイド情報を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-346477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、超音波内視鏡内への穿刺針の挿通性、穿刺針の穿刺性、穿刺針を穿刺することによって採取される検体の量、及び超音波画像上での穿刺針の見え方等は、穿刺針によって異なるものである。すなわち、使用する超音波内視鏡の形状、穿刺対象の硬さ、性状、及びサイズ等、診断目的(組織診、細胞診)等によって使用に適した穿刺針が異なるものである。
特許文献1に記載の超音波内視鏡システムでは、使用に適した穿刺針を選定することができない。すなわち、当該使用に適した穿刺針は、ユーザ自身が経験によって選定している。
そこで、ユーザの経験に頼らずに使用に適した穿刺針を選定することができ、利便性を向上させることができる技術が要望されている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、利便性を向上させることができる超音波観測装置、内視鏡補助装置、超音波観測装置の作動方法、及び超音波観測装置の作動プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る超音波観測装置は、使用する超音波内視鏡に関する第1の内視鏡情報を取得する情報取得部と、過去の穿刺実績を示す複数の実績情報を記憶する記憶部と、前記第1の内視鏡情報と、前記複数の実績情報とに基づいて、使用を推奨する穿刺針を選定する穿刺針選定部と、を備え、前記実績情報は、過去の穿刺で用いた超音波内視鏡に関する第2の内視鏡情報と、前記過去の穿刺で用いた穿刺針に関する穿刺針情報と、前記過去の穿刺によって採取された検体から診断をすることができたか否かを示す診断可否情報とが関連付けられた情報を少なくとも含む。
【0007】
また、本発明に係る内視鏡補助装置は、使用する内視鏡に関する第1の内視鏡情報を取得する情報取得部と、過去の穿刺実績を示す複数の実績情報を記憶する記憶部と、前記第1の内視鏡情報と、前記複数の実績情報とに基づいて、使用を推奨する穿刺針を選定する穿刺針選定部と、を備え、前記実績情報は、過去の穿刺で用いた内視鏡に関する第2の内視鏡情報と、前記過去の穿刺で用いた穿刺針に関する穿刺針情報と、前記過去の穿刺によって採取された検体から診断をすることができたか否かを示す診断可否情報とが関連付けられた情報を少なくとも含む。
【0008】
また、本発明に係る超音波観測装置の作動方法は、使用する超音波内視鏡に関する第1の内視鏡情報を取得する情報取得ステップと、前記第1の内視鏡情報と、過去の穿刺実績を示す複数の実績情報とに基づいて、使用を推奨する穿刺針を選定する穿刺針選定ステップと、を備え、前記実績情報は、過去の穿刺で用いた超音波内視鏡に関する第2の内視鏡情報と、前記過去の穿刺で用いた穿刺針に関する穿刺針情報と、前記過去の穿刺によって採取された検体から診断をすることができたか否かを示す診断可否情報とが関連付けられた情報を少なくとも含む。
【0009】
また、本発明に係る超音波観測装置の作動プログラムは、上述した超音波観測装置の作動プログラムをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る超音波観測装置、超音波観測装置の作動方法、超音波観測装置の作動プログラムによれば、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態に係る超音波内視鏡システムを示す図である。
図2図2は、超音波観測装置の動作を示すフローチャートである。
図3図3は、ステップS4における解析処理の一例を示す図である。
図4A図4Aは、ステップS5における挿入形状推定処理の一例を示す図である。
図4B図4Bは、ステップS5における挿入形状推定処理の一例を示す図である。
図4C図4Cは、ステップS5における挿入形状推定処理の一例を示す図である。
図4D図4Dは、ステップS5における挿入形状推定処理の一例を示す図である。
図4E図4Eは、ステップS5における挿入形状推定処理の一例を示す図である。
図4F図4Fは、ステップS5における挿入形状推定処理の一例を示す図である。
図5図5は、複数の実績情報の一例を示す図である。
図6図6は、ステップS7における表示態様の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0013】
〔超音波内視鏡システムの概略構成〕
図1は、実施の形態に係る超音波内視鏡システム1を示す図である。
超音波内視鏡システム1は、超音波内視鏡を用いて人等の被検体内の超音波診断及び処置を行うシステムである。この超音波内視鏡システム1は、図1に示すように、超音波内視鏡2と、超音波観測装置3と、表示装置4とを備える。
超音波内視鏡2は、一部を被検体内に挿入可能とし、被検体内の体壁に向けて超音波パルス(音響パルス)を送信するとともに被検体で反射された超音波エコーを受信することによってエコー信号を出力する機能を有する。
なお、超音波内視鏡2の詳細な構成については、後述する「超音波内視鏡の構成」において説明する。
【0014】
超音波観測装置3は、超音波内視鏡2に対してパルス信号を送信するとともに超音波内視鏡2からエコー信号を受信する。そして、超音波観測装置3は、当該エコー信号に対して所定の処理を施すことによって超音波画像を生成する。
なお、超音波観測装置3の詳細な構成については、後述する「超音波観測装置の構成」において説明する。
表示装置4は、液晶または有機EL(Electro Luminescence)等を用いて構成され、超音波観測装置3によって生成された超音波画像等を表示する。
【0015】
〔超音波内視鏡の構成〕
次に、超音波内視鏡2の構成について図1を参照しつつ説明する。
超音波内視鏡2は、図1に示すように、挿入部21と、第1の記憶部22とを備える。
挿入部21は、被検体内に挿入される長尺形状を有し、少なくとも一部が湾曲可能に構成されている。この挿入部21は、図1に示すように、超音波プローブ211と、センサ212とを備える。
【0016】
超音波プローブ211は、挿入部21の先端部分に設けられている。この超音波プローブ211は、超音波観測装置3から受信したパルス信号を超音波パルス(音響パルス)に変換して被検体内の体壁に向けて送信するとともに、当該体壁で反射された超音波エコーを電圧変化で表現する電気的なエコー信号に変換して出力する。なお、超音波プローブ211としては、コンベックス型の超音波プローブ(図3参照)によって構成してもよく、あるいは、ラジアル型の超音波プローブによって構成しても構わない。
【0017】
センサ212は、挿入部21の挿入形状の推定に用いられるセンサである。本実施の形態では、センサ212は、挿入部21の長手方向に沿う複数の位置にそれぞれ設けられ、磁気を発生する磁気コイルによって構成されている。
【0018】
なお、挿入部21には、以下に示す通路PA(図3参照)、基端側開口(図示略)、及び針突出口OP(図3参照)が設けられている。
当該通路PAは、挿入部21内に設けられ、当該挿入部21の長手方向に沿って延在する。そして、当該通路PAには、穿刺針PN(図3参照)が挿通される。
当該基端側開口は、通路PAに連通した開口であり、挿入部21の基端側に設けられた操作部(図示略)が有する挿入口と接続する。そして、穿刺針PNは、挿入部21外部から、当該挿入口及び当該基端側開口を介して、当該通路PAに挿通される。
当該針突出口OPは、挿入部21の先端部分に設けられ、通路PAに挿通された穿刺針PNを外部に突出させるための開口である。
【0019】
第1の記憶部22は、超音波内視鏡2を一意に識別するためのスコープID(Identifier)を記憶する。この第1の記憶部22は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、あるいは、SSD(Solid State Drive)等を用いて構成されている。
【0020】
〔超音波観測装置の構成〕
次に、超音波観測装置3の構成について図1を参照しつつ説明する。
超音波観測装置3は、図1に示すように、送信部31と、第1の受信部32と、信号処理部33と、超音波画像生成部34と、第2の受信部35と、入力部36と、第2の記憶部37と、制御部38とを備える。
送信部31は、制御部38による制御の下、超音波内視鏡2(超音波プローブ211)に対してパルス信号を送信する。
第1の受信部32は、制御部38による制御の下、超音波内視鏡2(超音波プローブ211)からエコー信号を受信し、A/D変換することによってデジタルの高周波信号のデータ(以下、RFデータと記載)を生成する。また、第1の受信部32は、超音波内視鏡2(第1の記憶部22)からスコープIDを受信する。なお、超音波内視鏡2の識別は、当該スコープIDを利用して識別する構成に限らず、例えば、RFIDを利用して識別する構成を採用しても構わない。
【0021】
信号処理部33は、制御部38による制御の下、第1の受信部32が生成したRFデータを基にデジタルの超音波画像用受信データを生成する。具体的に、信号処理部33は、複数のRFデータの位相を調整して加算するデジタルビームフォーミング(DBF)処理、包絡線検波処理、及び対数変換処理等の公知の処理を施し、デジタルの超音波画像用受信データを生成する。ここで、当該超音波画像用受信データは、超音波パルスの反射の強さを示すエコー信号の振幅または強度が超音波パルスの送受信方向(深度方向)に沿って並んだ複数のラインデータ(音線データ)からなる。そして、信号処理部33は、生成した1フレーム分の超音波画像用受信データを超音波画像生成部34に対して出力する。
【0022】
超音波画像生成部34は、制御部38による制御の下、信号処理部33にて生成された超音波画像用受信データに基づいて、超音波画像を生成する。この超音波画像生成部34は、超音波画像用受信データを表示装置4の表示方式に従ったデータに変換するデジタルスキャンコンバータ(DSC)を有し、さらに、ゲイン処理、コントラスト処理等の公知の信号処理を行うことによって超音波画像を生成する。当該超音波画像は、色空間としてRGB表色系を採用した場合の変数であるR(赤)、G(緑)、B(青)の値を一致させたグレースケール画像である所謂、Bモード画像である。
【0023】
第2の受信部35は、挿入部21の挿入形状の推定において、センサ212とともに用いられる受信部であり、制御部38による制御の下、当該センサ212から発せられる磁気を受信する。
そして、上述した第1,第2の受信部32,35は、本発明に係る情報取得部に相当する。また、第1の受信部32が受信したスコープIDは、本発明に係る第1の内視鏡情報に相当する。さらに、第2の受信部35が受信した磁気は、本発明に係る第1の内視鏡情報(第1の形状情報)に相当する。
【0024】
入力部36は、キーボード、ボタン、マウス、トラックボール、タッチパネル、タッチパッド等のユーザインターフェースを用いて構成され、各種のユーザ操作を受け付ける。
第2の記憶部37は、本発明に係る記憶部に相当する。この第2の記憶部37は、RAM、ROM、HDD、あるいは、SSD等を用いて構成されている。そして、第2の記憶部37は、制御部38が実行するプログラム(本発明に係る超音波観測装置の作動プログラムを含む)、当該制御部38の処理に必要な情報、及び当該制御部38が処理した情報等を記憶する。ここで、制御部38の処理に必要な情報としては、過去の穿刺実績を示す複数の実績情報を例示することができる。当該実績情報は、過去の穿刺で用いた超音波内視鏡のスコープID(本発明に係る第2の内視鏡情報に相当)と、当該過去の穿刺で用いた穿刺針に関する穿刺針情報と、当該過去の穿刺の穿刺対象に関する第2の穿刺対象情報と、当該過去の穿刺によって採取された検体から診断をすることができたか否かを示す診断可否情報とが関連付けられた情報である。
なお、複数の実績情報の詳細については、後述する「超音波観測装置の動作」において説明する。
【0025】
制御部38は、CPU(Central Processing Unit)及びFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を用いて構成され、第2の記憶部37に記憶されたプログラムにしたがって、超音波観測装置3を含む超音波内視鏡システム1の動作を制御する。この制御部38は、図1に示すように、解析部381と、挿入形状推定部382と、穿刺針選定部383と、報知制御部384とを備える。
なお、解析部381、挿入形状推定部382、穿刺針選定部383、及び報知制御部384の機能については、後述する「超音波観測装置の動作」において説明する。
【0026】
〔超音波観測装置の動作〕
次に、上述した超音波観測装置3の動作(本発明に係る超音波観測装置の作動方法に相当)について説明する。
図2は、超音波観測装置3の動作を示すフローチャートである。図3は、ステップS4における解析処理の一例を示す図である。具体的に、図3において、矩形状の画像は、超音波画像F1を示している。なお、図3では、説明の便宜上、挿入部21の先端部分についても図示している。図4Aないし図4Fは、ステップS5における挿入形状推定処理の一例を示す図である。図5は、複数の実績情報の一例を示す図である。図6は、ステップS7における表示態様の一例を示す図である。
先ず、制御部38は、第1,第2の受信部32,35の動作を制御し、各種の情報を受信する(ステップS1:情報取得ステップ)。ここで、当該各種の情報は、超音波内視鏡2から出力されたエコー信号、第1の記憶部22に記憶されたスコープID、及びセンサ212から発せられる磁気である。
【0027】
ステップS1の後、制御部38は、第1の受信部32、信号処理部33、及び超音波画像生成部34の動作を制御し、当該ステップS1において受信したエコー信号に基づいて、例えば、図3に示す超音波画像F1を生成する(ステップS2)。これによって、表示装置4には、当該超音波画像F1が表示される。
【0028】
ステップS2の後、制御部38は、入力部36に対して特定のユーザ操作があったか否かを判断する(ステップS3)。ここで、当該特定のユーザ操作は、超音波画像F1内の位置を指定する第1のユーザ操作、及び穿刺目的(組織診または細胞診)を入力する第2のユーザ操作である。図3では、当該第1のユーザ操作によって、超音波画像F1内の位置P1が指定された場合を例示している。
【0029】
特定のユーザ操作がないと判断した場合(ステップS3:No)には、制御部38は、ステップS2に戻る。
一方、特定のユーザ操作があったと判断した場合(ステップS3:Yes)には、制御部38(解析部381)は、以下に示すように解析処理を実行する(ステップS4)。
解析部381は、図3に示すように、超音波画像F1に基づいて、ステップS3における第1のユーザ操作によって指定された位置P1に関する位置情報を生成する。ここで、当該位置情報は、針吐出口OPから位置P1までの角度θ[°]、及び針突出口OPから位置P1までの距離D[cm]である。また、解析部381は、超音波画像F1内において、位置P1を含み、当該位置P1の輝度と略同一の輝度となる各位置によって構成される領域を穿刺対象TAとして抽出する。なお、図3では、穿刺対象TAを破線で囲まれた中にドットを付した領域として表現している。さらに、解析部381は、当該抽出した穿刺対象TAの面積[cm]に関する面積情報を生成する。また、解析部381は、例えばシアウェーブエラストグラフィー技術を利用することによって、位置P1の硬さ[kPa]に関する硬さ情報を生成する。
【0030】
本実施の形態では、解析部381は、角度θ、距離D、穿刺対象TAの面積、及び位置P1の硬さの値を特定のルールに従って近似値に丸めることによって位置情報、面積情報、及び硬さ情報をそれぞれ生成している。例えば、角度θが58.4°であった場合には60°に丸めた値とし、距離Dが2.84cmであった場合には3cmに丸めた値とし、硬さが4.7kPaであった場合には5kPaに丸めた値としている。
以上説明した位置情報、面積情報、及び硬さ情報は、本発明に係る第1の穿刺対象情報に相当する。
【0031】
ステップS4の後、挿入形状推定部382は、ステップS1において受信した磁気に基づいて、公知の手法によって、挿入部21の挿入形状を推定する挿入形状推定処理を実行する(ステップS5)。そして、挿入形状推定部382は、挿入部21の挿入形状が図4Aに示したパターン1、図4Bに示したパターン2、図4Cに示したパターン3、図4Dに示したパターン4、図4Eに示したパターン5、及び図4Fに示したパターン6のいずれのパターンに相当するかを判断する。
【0032】
ステップS5の後、穿刺針選定部383は、以下に示すように、使用を推奨する穿刺針を選定する(ステップS6:穿刺針選定ステップ)。
先ず、穿刺針選定部383は、穿刺針の選定に用いる現状の条件を把握する。ここで、当該現状の条件は、ステップS1において受信したスコープIDと、ステップS3における第2のユーザ操作によって入力された穿刺目的(組織診または細胞診)と、ステップS4において生成された位置情報(角度θ[°]及び距離D[cm])、面積情報(穿刺対象TAの面積[cm]、及び硬さ情報(位置P1の硬さ[kPa])と、ステップS5において判断された挿入部21の挿入形状のパターンとである。
【0033】
次に、穿刺針選定部383は、第2の記憶部37に記憶された複数の実績情報のうち、上述した現状の条件に合致する実績情報を全て抽出する。以下では、説明の便宜上、当該抽出された実績情報を抽出済実績情報と記載する。
ここで、第2の記憶部37に記憶された複数の実績情報としては、図5に示した実績情報を例示することができる。なお、図5では、過去の穿刺で用いた一つの超音波内視鏡(スコープID)に関連付けられた50000個の実績情報のみを図示している。具体的に、実績情報は、当該一つの超音波内視鏡とともに過去の穿刺で用いた穿刺針に関する穿刺針情報(穿刺針の型番等)と、当該過去の穿刺での穿刺目的(組織診または細胞診)と、当該過去の穿刺の穿刺対象TAに関する第2の穿刺対象情報と、当該過去の穿刺での挿入部21の挿入形状のパターンと、当該過去の穿刺によって採取された検体から診断をすることができたか否かを示す診断可否情報とが関連付けられた情報である。ここで、当該第2の穿刺対象情報は、当該過去の穿刺での穿刺対象TAの位置情報(角度θ[°]及び距離D[cm])、面積情報(穿刺対象TAの面積[cm])、及び硬さ情報(位置P1の硬さ[kPa])である。
【0034】
次に、穿刺針選定部383は、複数の抽出済実績情報を同一となる穿刺針情報毎に整理する。また、穿刺針選定部383は、同一となる穿刺針情報毎に、当該穿刺針情報が関連付けられた複数の抽出済実績情報に含まれる診断可否情報に基づいて、診断をすることができた割合を示す診断率を算出する。例えば、特定の穿刺針情報が関連付けられた全ての抽出済実績情報の数をNとし、当該全ての抽出済実績情報のうち診断をすることができた(診断可否情報:「可」)数をMとした場合、当該特定の穿刺針情報に対応する診断率は、M/Nによって算出される。そして、穿刺針選定部383は、整理した各穿刺針情報のうち、診断率の高い上位3つの穿刺針情報(穿刺針の型番等)を、使用を推奨する穿刺針として選定する。
【0035】
ステップS6の後、報知制御部384は、超音波画像生成部34の動作を制御し、例えば図6に示すように、当該ステップS6において選定された使用を推奨する穿刺針に関する推奨穿刺針情報REを超音波画像F1に重畳させた画像を生成する(ステップS7)。これによって、表示装置4には、当該画像が表示される。すなわち、表示装置4は、本発明に係る報知部に相当する。
【0036】
なお、具体的な図示は省略したが、上述したステップS6において把握された現状の条件(スコープID、穿刺目的、位置情報、面積情報、及び硬さ情報)は、第2の記憶部37に記憶される。そして、当該穿刺目的に応じた診断を行った後、ユーザは、入力部36に対して、使用した穿刺針に関する穿刺針情報(穿刺針の型番等)、及び当該診断をすることができたか否かを示す診断可否情報を入力する。これにより、当該穿刺針情報及び当該診断可否情報が上述した現状の条件に関連付けられて、例えば図5において50001個目の実績情報として第2の記憶部37に記憶される。すなわち、複数の実績情報は、更新可能に構成されている。
【0037】
以上説明した本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
本実施の形態に係る超音波観測装置3は、使用する超音波内視鏡2に関する第1の内視鏡情報と、過去の穿刺実績を示す複数の実績情報とに基づいて、使用を推奨する穿刺針を選定する。そして、超音波観測装置3は、当該使用を推奨する穿刺針に関する推奨穿刺針情報REを表示装置4に表示させる。
したがって、ユーザの経験に頼らずに使用に適した穿刺針を選定することができ、利便性を向上させることができる。
【0038】
特に、第1の内視鏡情報は、挿入部21の挿入形状に関する第1の形状情報を含む。同様に、実績情報を構成する第2の内視鏡情報は、過去の穿刺で用いた挿入部21の挿入形状に関する第2の形状情報を含む。
このため、使用に適した穿刺針を精度良く選定することができる。
【0039】
また、実績情報は、過去の穿刺の穿刺対象に関する第2の穿刺対象情報を含む。そして、超音波観測装置3は、穿刺予定の穿刺対象に関する第1の穿刺対象情報も加味し、使用を推奨する穿刺針を選定する。
このため、使用に適した穿刺針をより一層、精度良く選定することができる。
【0040】
(その他の実施形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。
上述した実施の形態において、実績情報として、過去の穿刺を行ったユーザに関するユーザ情報(例えばユーザ名等)を含めても構わない。このように構成した場合には、特定のユーザ(ユーザ情報)の穿刺実績のみから、使用を推奨する穿刺針を選定することが可能となる。
上述した実施の形態において、制御部38が行う少なくとも一部の処理(解析部381の処理や穿刺針選定部383の処理)にAI(Artificial Intelligence:人工知能)を利用しても構わない。
【0041】
上述した実施の形態では、解析部381は、角度θ、距離D、穿刺対象TAの面積、及び位置P1の硬さの値を特定のルールに従って近似値に丸めていたが、これに限らず、当該近似値に丸めずに、角度θ、距離D、穿刺対象TAの面積、及び位置P1の硬さの値をそのまま用いても構わない。この際、穿刺針選定部383は、第2の記憶部37に記憶された複数の実績情報のうち、解析部381によって生成された角度θ、距離D、穿刺対象TAの面積、及び位置P1の硬さの値と同一または近接した角度θ、距離D、穿刺対象TAの面積、及び位置P1の硬さを含む実績情報を抽出済実績情報として抽出する。
【0042】
上述した実施の形態では、超音波内視鏡システム1は、使用を推奨する穿刺針に関する推奨穿刺針情報を表示装置4に表示させていたが、これに限らず、スピーカ等から音声によって推奨穿刺針情報を報知する構成を採用しても構わない。
上述した実施の形態において、第1,第2の穿刺対象情報として、超音波内視鏡2から受信したエコー信号の周波数特徴量[dB]を含めても構わない。
【0043】
上述した実施の形態では、診断率の高い上位3つの穿刺針情報を、使用を推奨する穿刺針として選定していたが、これに限らず、最上位の1つのみ、上位2つのみ、あるいは、上位4つ以上の穿刺針情報を、使用を推奨する穿刺針として選定しても構わない。
上述した実施の形態において、推奨穿刺針情報REに基づく穿刺針以外の穿刺針が使用された場合に、警告を示す警告情報を報知する構成を採用しても構わない。例えば、穿刺針の先端等に当該穿刺針に関する穿刺針情報を記憶したRFタグを設けておき、当該RFタグに記憶された穿刺針情報を挿入部21の挿入口近傍に配置した検出器によって検出すれば、推奨穿刺針情報REに基づく穿刺針以外の穿刺針が使用されたか否かを判断することができる。
上述した実施の形態において説明した超音波観測装置3の動作は、図2の制御フローに限らず、矛盾のない範囲で順序を変更しても構わない。
上述した実施の形態では、本発明に係る情報取得部、記憶部、及び穿刺針選定部を超音波観測装置に搭載していたが、これに限らず、超音波観測装置に対する外付けの装置(内視鏡補助装置)として構成しても構わない。
【符号の説明】
【0044】
1 超音波内視鏡システム
2 超音波内視鏡
3 超音波観測装置
4 表示装置
21 挿入部
22 第1の記憶部
31 送信部
32 第1の受信部
33 信号処理部
34 超音波画像生成部
35 第2の受信部
36 入力部
37 第2の記憶部
38 制御部
211 超音波プローブ
212 センサ
381 解析部
382 挿入形状推定部
383 穿刺針選定部
384 報知制御部
F1 超音波画像
OP 突出口
P1 位置
PA 通路
PN 穿刺針
RE 推奨穿刺針情報
TA 穿刺対象
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5
図6