(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】地震時諸現象統合評価モデル生成方法、地震時諸現象統合評価モデル生成装置、地震時諸現象統合評価方法、及び、地震時諸現象統合評価装置
(51)【国際特許分類】
G01V 1/28 20060101AFI20240606BHJP
G06Q 50/26 20240101ALI20240606BHJP
【FI】
G01V1/28
G06Q50/26
(21)【出願番号】P 2020166955
(22)【出願日】2020-10-01
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】石井 透
(72)【発明者】
【氏名】小穴 温子
(72)【発明者】
【氏名】和田 健介
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-170739(JP,A)
【文献】特開2005-315872(JP,A)
【文献】特開2019-046469(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0270034(US,A1)
【文献】国際公開第2018/008708(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-99/00
G06Q 50/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを用いて機械学習により地震時諸現象統合評価モデルを生成する地震時諸現象統合評価モデル生成方法であって、
実地震による地震時諸現象が観測されたときの、地震動諸特性パラメータ、地殻変動諸特性パラメータ及び津波諸特性パラメータを含む実地震諸特性パラメータと地震動指標、地殻変動指標及び津波指標を含む指標観測結果とを関連付けて記憶する第1のデータベースから、前記実地震諸特性パラメータを特徴量とし、前記指標観測結果を目的変数として、前記特徴量及び前記目的変数で構成される第1の学習用データを複数取得する第1の取得工程と、
仮想地震による地震時諸現象がシミュレーションにより算出されたときの、前記地震動諸特性パラメータ、前記地殻変動諸特性パラメータ及び前記津波諸特性パラメータを含む仮想地震諸特性パラメータと前記地震動指標、前記地殻変動指標及び前記津波指標を含む指標算出結果とを関連付けて記憶する第2のデータベースから、前記仮想地震諸特性パラメータを特徴量とし、前記指標観測結果を目的変数として、当該特徴量及び当該目的変数で構成される第2の学習用データを複数取得する第2の取得工程と、
前記第1の取得工程にて取得された複数の前記第1の学習用データと、前記第2の取得工程にて取得された複数の前記第2の学習用データとに基づいて、前記特徴量及び前記目的変数の相関関係を前記機械学習により学習することにより、前記機械学習の学習済みモデルとして前記地震時諸現象統合評価モデルを生成する生成工程と、を含む、
地震時諸現象統合評価モデル生成方法。
【請求項2】
前記生成工程は、
前記第1の学習用データ及び前記第2の学習用データを、前記地震時諸現象統合評価モデルを構成する地震動評価モデル、地殻変動評価モデル及び津波評価モデルにそれぞれ適用することにより、
地震動に係る前記特徴量及び前記目的変数の相関関係を学習して前記地震動評価モデルを生成し、
地殻変動に係る前記特徴量及び前記目的変数の相関関係を学習して前記地殻変動評価モデルを生成し、
津波に係る前記特徴量及び前記目的変数の相関関係を学習して前記
津波評価モデルを生成する、
請求項1に記載の地震時諸現象統合評価モデル生成方法。
【請求項3】
前記実地震諸特性パラメータ及び前記仮想地震諸特性パラメータは、
所定の対象点における前記地震動諸特性パラメータ、前記地殻変動諸特性パラメータ及び前記津波諸特性パラメータを示す数値データであり、
前記指標観測結果及び前記指標算出結果は、
前記対象点における前記地震動指標、前記地殻変動指標及び前記津波指標を示す数値データである、
請求項1又は請求項2に記載の地震時諸現象統合評価モデル生成方法。
【請求項4】
前記実地震諸特性パラメータ及び前記仮想地震諸特性パラメータは、
所定の対象領域における前記地震動指標、前記地殻変動指標及び前記津波指標が得られたときの所定の対象点における前記地震動諸特性パラメータ、前記地殻変動諸特性パラメータ及び前記津波諸特性パラメータを示す数値データであり、
前記指標観測結果及び前記指標算出結果は、
前記対象領域における前記地震動指標、前記地殻変動指標及び前記津波指標の分布図を示す画像データである、
請求項1又は請求項2に記載の地震時諸現象統合評価モデル生成方法。
【請求項5】
前記実地震諸特性パラメータ及び前記仮想地震諸特性パラメータは、
所定の対象領域における前記地震動指標、前記地殻変動指標及び前記津波指標が得られたときの所定の対象点における前記地震動諸特性パラメータ、前記地殻変動諸特性パラメータ及び前記津波諸特性パラメータを示す数値データと、前記対象領域における前記地震動諸特性パラメータ、前記地殻変動諸特性パラメータ及び前記津波諸特性パラメータの分布図を示す画像データであり、
前記指標観測結果及び前記指標算出結果は、
前記対象領域における前記地震動指標、前記地殻変動指標及び前記津波指標の分布図を示す画像データである、
請求項1又は請求項2に記載の地震時諸現象統合評価モデル生成方法。
【請求項6】
前記実地震諸特性パラメータ及び前記仮想地震諸特性パラメータは、
所定の対象領域における前記地震動指標、前記地殻変動指標及び前記津波指標が得られたときの所定の対象点における前記地震動諸特性パラメータ、前記地殻変動諸特性パラメータ及び前記津波諸特性パラメータを示す数値データが埋め込まれた画像データであって、前記対象領域における前記地震動諸特性パラメータ、前記地殻変動諸特性パラメータ及び前記津波諸特性パラメータの分布図を示す画像データであり、
前記指標観測結果及び前記指標算出結果は、
前記対象領域における前記地震動指標、前記地殻変動指標及び前記津波指標の分布図を示す画像データである、
請求項1又は請求項2に記載の地震時諸現象統合評価モデル生成方法。
【請求項7】
コンピュータを用いて、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の地震時諸現象統合評価モデル生成方法により生成された前記地震時諸現象統合評価モデルに基づいて、地震動、地殻変動及び津波を含む地震時諸現象の諸指標を評価する地震時諸現象統合評価方法であって、
予測対象の、地震動諸特性パラメータ、地殻変動諸特性パラメータ及び津波諸特性パラメータを含む地震諸特性パラメータを受け付ける受付工程と、
前記受付工程にて受け付けられた前記予測対象の前記地震諸特性パラメータを前記特徴量として前記地震時諸現象統合評価モデルに入力することにより当該地震時諸現象統合評価モデルから出力される前記目的変数に基づいて、前記予測対象の前記地震諸特性パラメータに対応する、地震動指標、地殻変動指標及び津波指標を含む地震時諸現象指標を予測する予測工程と、を含む、
地震時諸現象統合評価方法。
【請求項8】
コンピュータであって、
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の地震時諸現象統合評価モデル生成方法に含まれる各工程を実行する制御部を備える、
地震時諸現象統合評価モデル生成装置。
【請求項9】
コンピュータであって、
請求項7に記載の地震時諸現象統合評価方法に含まれる各工程を実行する制御部を備える、
地震時諸現象統合評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震時諸現象統合評価モデル生成方法、地震時諸現象統合評価モデル生成装置、地震時諸現象統合評価方法、及び、地震時諸現象統合評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震(震源断層のすべり破壊現象)が発生すると、周辺地域に地震動・地殻変動・津波等の様々な自然現象が発生する。過去に発生した地震とそれによってもたらされた地震動・地殻変動・津波等の自然現象に関する諸データ・情報はもちろんのこと、それらの諸データ・情報に基づいて自然現象の諸指標を評価する技術(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)、及び、理論や経験を背景に開発されたシミュレーション手法を用いて将来発生すると考えられる自然現象の諸指標を予測する技術(例えば、特許文献2参照)は、その有用性ゆえ、自然現象の特徴分析・解釈から建築物・構造物の挙動予測・構造設計等、更には地震防災等に至るまで、社会で広く活用されている技術である。
【0003】
過去に発生した自然現象の観測データに基づいて自然現象の諸指標を評価する技術に関しては、ごく限られた一部の専門家によって自らの判断を伴いつつ選定された諸データ・情報が専門的な手法によって分析され、諸指標が評価されてきた。多くの場合、評価結果の活用目的に即して適切なデータ・情報のみが選ばれた(抜き出された)上で評価されるため、地震動・地殻変動・津波はいずれも同じ地震によってもたらされた現象であるにも関わらず、各々の自然現象を最も良く説明するような震源断層モデルの特徴が異なることも多い。例えば、地殻変動や津波を最も良く説明するモデル(いわゆる地殻変動モデル・津波モデルなど)は地震動を最も良く説明するモデル(いわゆる強震動モデルなど)よりも長周期・長波長側の現象説明性に重きが置かれていることになる。
【0004】
一方、シミュレーション手法を用いて将来の自然現象を予測する技術に関しては、近年のデータ・情報の急増とコンピュータの性能の進歩を背景にごく限られた一部の専門家により開発された高度な手法を用いて、将来発生すると考えられる自然現象の諸指標が予測され、特に最近は、それらの結果が広く公開され活用されるようになってきた。過去に観測記録が得られてはいないが将来発生することが懸念される大規模な地震動・地殻変動・津波について、観測がなされていない地点をも含めて面的にも均質にバランス良く予測された結果が発表・提供されており、それらを活用することも可能となってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-39446号公報
【文献】特開2002-117475号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Nobuyuki Morikawa and Hiroyuki Fujiwara,A New Ground Motion Prediction Equation for Japan Applicable up to M9 Mega-Earthquake,Journal of Disaster Research,Vol.8,No.5,2013,p.878-888
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
大規模な地震とそれによってもたらされる大規模な地震動・地殻変動・津波は稀(低頻度)な事象であることや、観測点の位置は限られていることなどから、評価・予測の拠り所となる諸データ・情報は必ずしも均質にバランス良く得られているわけではなく、真に社会が欲する評価・予測には必ずしも十分とは言えない。
【0008】
近年、コンピュータの性能の進歩やセンサネットワークの拡大に伴い、様々な技術分野に機械学習が適用され、機械学習技術の進歩・普及は著しい。このような機械学習技術は、地震によってもたらされる地震動・地殻変動・津波等の自然現象の諸指標の評価・予測とそこから得られる新たな知見について、上記のように、ごく限られた一部の対象・条件に対するごく限られた一部の専門家の従来技術による検討とその成果だけではなく、各自然現象をもたらす統合的な地震像(モデル)の構築とそれに基づいた一層広い分野の技術者による新たな検討の可能性を開くものであり、社会における説明可能性と活用可能性を大きく広げるものと期待されている。
【0009】
また、シミュレーション手法を用いた予測は、あくまでも限られた想定シナリオに基づく特定の地点群での予測であり、将来発生する様々な地震に対して真に社会が欲する総合的な判断の拠り所としては必ずしも十分とは言えない。さらに、同様の理由から、多くの場合、結果の活用目的に即して適切な条件のみが選ばれた上で予測されるため、地震動・地殻変動・津波はいずれも同じ地震によってもたらされた現象であるにも関わらず、各々の自然現象を最も良く説明するような震源断層モデルの特徴が異なることも多く、地震動・地殻変動・津波等の自然現象を統合的に評価・予測する手法の実現には至っていない。
【0010】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであって、地震によってもたらされる地震時諸現象の諸指標を統合的にかつ高精度で評価・予測することができる、地震時諸現象統合評価モデル生成方法、地震時諸現象統合評価モデル生成装置、地震時諸現象統合評価方法、及び、地震時諸現象統合評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するものであって、本発明の一実施形態に係る地震時諸現象統合評価モデル生成方法は、
コンピュータを用いて機械学習により地震時諸現象統合評価モデルを生成する地震時諸現象統合評価モデル生成方法であって、
実地震による地震時諸現象が観測されたときの、地震動諸特性パラメータ、地殻変動諸特性パラメータ及び津波諸特性パラメータを含む実地震諸特性パラメータと地震動指標、地殻変動指標及び津波指標を含む指標観測結果とを関連付けて記憶する第1のデータベースから、前記実地震諸特性パラメータを特徴量とし、前記指標観測結果を目的変数として、前記特徴量及び前記目的変数で構成される第1の学習用データを複数取得する第1の取得工程と、
仮想地震による地震時諸現象がシミュレーションにより算出されたときの、前記地震動諸特性パラメータ、前記地殻変動諸特性パラメータ及び前記津波諸特性パラメータを含む仮想地震諸特性パラメータと前記地震動指標、前記地殻変動指標及び前記津波指標を含む指標算出結果とを関連付けて記憶する第2のデータベースから、前記仮想地震諸特性パラメータを特徴量とし、前記指標観測結果を目的変数として、当該特徴量及び当該目的変数で構成される第2の学習用データを複数取得する第2の取得工程と、
前記第1の取得工程にて取得された複数の前記第1の学習用データと、前記第2の取得工程にて取得された複数の前記第2の学習用データとに基づいて、前記特徴量及び前記目的変数の相関関係を前記機械学習により学習することにより、前記機械学習の学習済みモデルとして前記地震時諸現象統合評価モデルを生成する生成工程と、を含む。
【0012】
また、本発明の一実施形態に係る地震時諸現象統合評価モデル生成装置は、
コンピュータであって、上記地震時諸現象統合評価モデル生成方法に含まれる各工程を実行する制御部を備える。
【0013】
また、本発明の一実施形態に係る地震時諸現象統合評価方法は、
コンピュータを用いて、上記地震時諸現象統合評価モデル生成方法により生成された前記地震時諸現象統合評価モデルに基づいて、地震動、地殻変動及び津波を含む地震時諸現象の諸指標を評価する地震時諸現象統合評価方法であって、
予測対象の、地震動諸特性パラメータ、地殻変動諸特性パラメータ及び津波諸特性パラメータを含む地震諸特性パラメータを受け付ける受付工程と、
前記受付工程にて受け付けられた前記予測対象の前記地震諸特性パラメータを前記特徴量として前記地震時諸現象統合評価モデルに入力することにより当該地震時諸現象統合評価モデルから出力される前記目的変数に基づいて、前記予測対象の前記地震諸特性パラメータに対応する、地震動指標、地殻変動指標及び津波指標を含む地震時諸現象指標を予測する予測工程と、を含む。
【0014】
また、本発明の一実施形態に係る地震時諸現象統合評価装置は、
コンピュータであって、上記地震時諸現象統合評価方法に含まれる各工程を実行する制御部を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態に係る地震時諸現象統合評価モデル生成方法、及び、地震時諸現象統合評価モデル生成装置によれば、実地震による地震時諸現象が観測されたときの第1の学習用データと、仮想地震による地震時諸現象が算出されたときの第2の学習用データとに基づいて、特徴量及び目的変数の相関関係を機械学習により学習することにより、機械学習の学習済みモデルとして地震時諸現象統合評価モデルが生成される。したがって、データ量の増加とコンピュータの情報処理能力の向上を最大限に生かしつつ、将来発生すると考えられる地震による地震時諸現象の諸指標を高精度で評価・予測することが可能な地震時諸現象統合評価モデルを提供することができる。
【0016】
また、本発明の一実施形態に係る地震時諸現象統合評価方法、及び、地震時諸現象統合評価装置によれば、地震時諸現象統合評価モデル生成装置及び地震時諸現象統合評価モデル生成方法により生成された地震時諸現象統合評価モデルを利用することにより、個々の専門家の経験に依存することなく、将来発生すると考えられる地震による地震時諸現象の諸指標を高精度で評価・予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る地震時諸現象統合評価システム1の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る地震時諸現象統合評価システム1の一例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る地震時諸現象統合評価モデル生成装置3及び地震時諸現象統合評価モデル生成方法の一例を示す機能説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る第1及び第2のデータベース10A、10Bの一例を示すデータ構成図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る観測データ11A及びシミュレーションデータ11Bの一例を示すデータ構成図である。
【
図6】勾配ブースティング木の概要を示す概要図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る地震時諸現象統合評価装置4及び地震時諸現象統合評価方法の一例を示す機能説明図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る地震時諸現象統合評価モデル生成装置3及び地震時諸現象統合評価モデル生成方法の一例を示す機能説明図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る第1及び第2のデータベース10A、10Bの一例を示すデータ構成図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る地震時諸現象統合評価装置4及び地震時諸現象統合評価方法の一例を示す機能説明図である。
【
図11】本発明の第3の実施形態に係る地震時諸現象統合評価モデル生成装置3及び地震時諸現象統合評価モデル生成方法の一例を示す機能説明図である。
【
図12】本発明の第3の実施形態に係る第1及び第2のデータベース10A、10Bの一例を示すデータ構成図である。
【
図13】本発明の第3の実施形態に係る地震時諸現象統合評価装置4及び地震時諸現象統合評価方法の一例を示す機能説明図である。
【
図14】本発明の第4の実施形態に係る地震時諸現象統合評価モデル生成装置3及び地震時諸現象統合評価モデル生成方法の一例を示す機能説明図である。
【
図15】本発明の第4の実施形態に係る第1及び第2のデータベース10A、10Bの一例を示すデータ構成図である。
【
図16】本発明の第4の実施形態に係る地震時諸現象統合評価装置4及び地震時諸現象統合評価方法の一例を示す機能説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る地震時諸現象統合評価システム1の一例を示す概略構成図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る地震時諸現象統合評価システム1の一例を示すブロック図である。
【0020】
地震時諸現象統合評価システム1は、実地震による地震時諸現象が観測されたときの観測データを外部に提供する観測データ提供装置2Aと、仮想地震による地震時諸現象がシミュレーションにより算出されたときのシミュレーションデータを外部に提供するシミュレーションデータ提供装置2Bと、各地の地形データを外部に提供する地形データ提供装置2Cと、各地の気象データを外部に提供する気象データ提供装置2Dとを備える。
【0021】
また、地震時諸現象統合評価システム1は、観測データが蓄積された第1のデータベース10Aとシミュレーションデータが蓄積された第2のデータベース10Bとを用いて機械学習に基づく地震時諸現象統合評価モデル13を生成する地震時諸現象統合評価モデル生成装置3と、地震時諸現象統合評価モデル生成装置3により生成された地震時諸現象統合評価モデル13に基づいて地震時諸現象の諸指標を評価・予測する地震時諸現象統合評価装置4と、各装置間を接続するネットワーク5とを備える。
【0022】
地震時諸現象は、地震によってもたらされる地震動、地殻変動及び津波等の自然現象である。地震時諸現象統合評価モデル生成装置3により地震時諸現象統合評価装置4に提供された地震時諸現象統合評価モデル13は、例えば、自然現象の特徴分析・解釈から建築物・構造物の挙動予測・構造設計等、更には地震防災等に至るまで、社会で幅広く活用することが可能である。
【0023】
観測データ提供装置2Aは、実地震が発生したときに、当該実地震による地震時諸現象が複数の観測点に設置された各種の観測計(例えば、地震計、GNSS受信機、潮位計等)で観測されたときの観測記録と、地震の震源や規模等の解析結果を示す解析情報と、観測点の位置を示す観測点位置等の付加情報とを含む観測データを外部に提供する。観測記録は、例えば、国立研究開発法人防災科学技術研究所(以下、「防災科研」という)の強震観測網K-NETにより提供されるデータが使用される。また、解析情報は、例えば、防災科研の広帯域震観測網F-NETや気象庁により提供されるデータが使用される。
【0024】
なお、観測データ提供装置2Aは、実地震が発生したときに、当該実地震に関する観測データをリアルタイムに提供してもよいし、地震時諸現象統合評価モデル生成装置3からデータの要求を受けたときに、その要求に関する観測データ(過去に発生した実地震のうち所定の条件に合致する複数の実地震に関する観測データでもよい)を提供してもよい。
【0025】
シミュレーションデータ提供装置2Bは、仮想地震が発生したと想定したときに、当該仮想地震による地震時諸現象を所定のシミュレーション手法に従って解析するものであり、そのときのシミュレーション条件とシミュレーション結果とを含むシミュレーションデータを外部に提供する。その際、シミュレーション手法は、任意の手法が採用可能であり、複数の手法が採用されてもよい。
【0026】
なお、シミュレーションデータ提供装置2Bは、自装置にてシミュレーションを実行することでシミュレーションデータを提供するものでもよいし、他の装置でシミュレーションが実行されたときのシミュレーションデータを提供するものでもよい。また、シミュレーションデータ提供装置2Bは、シミュレーションを実行する際に必要となる各種のデータを他のデータ提供装置2A、2C、2Dから取得してもよい。
【0027】
さらに、シミュレーションデータ提供装置2Bは、新たなシミュレーションを実行したときに、当該シミュレーションに関するシミュレーションデータを地震時諸現象統合評価モデル生成装置3に随時提供してもよいし、地震時諸現象統合評価モデル生成装置3からデータの要求を受けたときに、その要求に関するシミュレーションデータ(地震時諸現象統合評価モデル生成装置3からシミュレーション条件を受けた場合には、そのシミュレーション条件に基づいてシミュレーションを実行したときのシミュレーション結果を含むシミュレーションデータでもよい)を地震時諸現象統合評価モデル生成装置3に提供してもよい。
【0028】
地形データ提供装置2Cは、例えば、地下構造データ、陸上地形データ、海底地形データ等を含む地形データを外部に提供する。地下構造データは、例えば、防災科研の地震ハザードステーションJ-SHISにより提供されるデータが使用され、地震基盤面深さ、工学的基盤面深さ、層厚、密度、地震波伝播速度、Q値、減衰定数等を含む。陸上地形データ、及び、海底地形データは、例えば、国土地理院により提供されるデータが使用され、例えば、標高、水涯線、地形分類等を含む。
【0029】
気象データ提供装置2Dは、例えば、天候、気温、風速、降水量、潮汐、潮位等を含む気象データを外部に提供する。気象データは、例えば、気象庁や気象データ配信事業者により提供されるデータが使用される。なお、気象データは、現在の気象データだけでなく、過去の気象データでもよいし、統計的な気象データでもよい。
【0030】
ネットワーク5は、無線通信又は有線通信により各種のデータや信号を通信するものであり、任意の通信規格が用いられる。
【0031】
(地震時諸現象統合評価モデル生成装置3の構成と各部による工程について)
地震時諸現象統合評価モデル生成装置3は、観測データ提供装置2Aにより提供された観測データを収集して第1のデータベース10Aに登録・更新するとともに、シミュレーションデータ提供装置2Bにより提供されたシミュレーションデータを収集して第2のデータベース10Bに登録・更新する。そして、地震時諸現象統合評価モデル生成装置3は、その更新した第1及び第2のデータベース10A、10Bを用いて、例えば、勾配ブースティング木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、敵対的生成ネットワーク(GAN)等の機械学習アルゴリズムを実行することにより、機械学習の学習済みモデルとして、地震時諸現象統合評価モデル13を生成する。
【0032】
地震時諸現象統合評価モデル生成装置3は、汎用又は専用のコンピュータで構成されており、
図2に示すように、HDD、メモリ等により構成される記憶部30と、CPU、GPU等のプロセッサにより構成される制御部31と、ネットワーク5との通信インターフェースである通信部32と、キーボード、マウス等により構成される入力部33と、ディスプレイ、タッチパネル等により構成される表示部34とを備える。
【0033】
記憶部30には、観測データ提供装置2Aにより提供された観測データが登録・更新される第1のデータベース10Aと、シミュレーションデータ提供装置2Bにより提供されたシミュレーションデータが登録・更新される第2のデータベース10Bと、学習済みモデルである地震時諸現象統合評価モデル13と、地震時諸現象統合評価モデル生成装置3の動作を制御して地震時諸現象統合評価モデル生成方法を実現する地震時諸現象統合評価モデル生成プログラム300とが記憶されている。なお、第1及び第2のデータベース10A、10Bは、記憶部30に代えて、外部記憶装置に記憶されていてもよく、その場合には、地震時諸現象統合評価モデル生成装置3は、ネットワーク5を介して当該外部記憶装置と通信し、第1及び第2のデータベース10A、10Bにアクセスするようにすればよい。
【0034】
制御部31は、地震時諸現象統合評価モデル生成プログラム300を実行することにより、第1のDB管理部310A、第2のDB管理部310B、第1の取得部311A、第2の取得部311B、及び、生成部312として機能する。なお、各部の機能の詳細は後述する。
【0035】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る地震時諸現象統合評価モデル生成装置3及び地震時諸現象統合評価モデル生成方法の一例を示す機能説明図である。
【0036】
(第1及び第2のDB管理部310A、310Bによる第1及び第2のデータベース管理工程について)
【0037】
第1のDB管理部310Aは、観測データ提供装置2Aにより提供された観測データに基づいて、実地震による地震時諸現象が観測されたときの実地震諸特性パラメータと指標観測結果とを関連付けて、第1のデータベース10Aに登録する。そのため、第1のデータベース10Aには、複数の実地震と当該複数の実地震による地震時諸現象が観測された少なくとも1つの観測点との各組み合わせについて、当該地震時諸現象が観測されたときの実地震諸特性パラメータ及び指標観測結果が関連付けられた状態の観測データ11Aが複数登録されて記憶されている。
【0038】
第2のDB管理部310Bは、シミュレーションデータ提供装置2Bにより提供されたシミュレーションデータに基づいて、仮想地震による地震時諸現象がシミュレーションにより算出されたときの仮想地震諸特性パラメータと指標観測結果とを関連付けて、第2のデータベース10Bに登録する。そのため、第2のデータベース10Bには、複数の仮想地震と当該複数の仮想地震による地震時諸現象がシミュレーションにより算出された少なくとも1つの仮想の観測点との各組み合わせについて、当該地震時諸現象がシミュレーションにより算出されたときの仮想地震諸特性パラメータ及び指標観測結果が関連付けられた状態のシミュレーションデータ11Bが複数登録されて記憶されている。
【0039】
なお、第1及び第2のDB管理部310A、310Bは、地形データ提供装置2Cにより提供された地形データや気象データ提供装置2Dにより提供された気象データを、観測データ11A及びシミュレーションデータ11Bの一部として第1及び第2のデータベース10A、10Bに登録してもよい。
【0040】
(第1及び第2のデータベース10A、10Bについて)
図4は、本発明の第1の実施形態に係る第1及び第2のデータベース10A、10Bの一例を示すデータ構成図である。
図5は、本発明の第1の実施形態に係る観測データ11A及びシミュレーションデータ11Bの一例を示すデータ構成図である。
【0041】
第1のデータベース10Aには、実地震による地震時諸現象が観測されたときの実地震諸特性パラメータと指標観測結果とが関連付けられた観測データ11Aが複数登録されて記憶されている。また、第2のデータベース10Aには、仮想地震による地震時諸現象がシミュレーションにより算出されたときの仮想地震諸特性パラメータと指標観測結果とが関連付けられたシミュレーションデータ11Bが複数登録されて記憶されている。
【0042】
観測データ11Aを構成する実地震諸特性パラメータは、地震諸特性パラメータとして、地震動諸特性パラメータ、地殻変動諸特性パラメータ及び津波諸特性パラメータを含む。また、シミュレーションデータ11Bを構成する仮想地震諸特性パラメータについても、観測データ11Aと同様に、地震諸特性パラメータとして、地震動諸特性パラメータ、地殻変動諸特性パラメータ及び津波諸特性パラメータを含む。本実施形態では、地震諸特性パラメータは、所定の対象点における地震諸特性パラメータを示す数値データである。
【0043】
地震動諸特性パラメータは、地震動の諸特性を記述する各種のパラメータであり、地震動の諸特性は、例えば、地震動の震源特性、伝播特性、サイト特性を含み、方位特性をさらに含む。
【0044】
震源特性は、例えば、マグニチュード(モーメントマグニチュードMw、気象庁マグニチュード等)、震央位置(緯度lat_eq、経度lon_eq)、震源深さH、地震種別Type(内陸地殻内地震・プレート境界地震・スラブ内地震)、断層タイプMech(正断層・逆断層・横ずれ断層)、震源メカニズム解(走向Strike1、傾斜角dip1、すべり角rake1)、震源メカニズム解の共役解(走向Strike2、傾斜角dip2、すべり角rake2)、及び、震源断層モデル(断層原点、走向、傾斜角、すべり角、すべり量分布)等の少なくとも1つである。本実施形態に係る震源特性は、モーメントマグニチュードMw、震央位置(緯度lat_eq、経度lon_eq)、震源深さH、地震種別Type、断層タイプMech、震源メカニズム解(Strike1、dip1、rake1)、及び、震源メカニズム解の共役解(Strike2、dip2、rake2)である。
【0045】
伝播特性は、例えば、震源距離X、断層最短距離、及び、震央距離の少なくとも1つである。本実施形態に係る伝播特性は、震源距離Xであり、対象点の位置を示す対象点位置と、震央位置との間の距離として算定される。
【0046】
サイト特性は、例えば、対象点位置(緯度lat_site、経度lon_site)、地震基盤面深さ、工学的基盤面深さ、層厚、密度、地震波伝播速度、Q値、及び、減衰定数の少なくとも1つである。本実施形態に係るサイト特性は、対象点位置(緯度lat_site、経度lon_site)、最上層のS波速度VS1、表層10m平均S波速度AVS10、表層30m平均S波速度AVS30、微地形区分JCODE、S波速度700m/s層上面深さD7、S波速度1400m/s層上面深さD17、S波速度2100m/s層上面深さD24、及び、地震基盤面深さD28(=S波速度2700m/s層上面深さ)である。なお、表層30m平均S波速度AVS30が、対象点の地下構造データから求められない場合には、防災科研の地震ハザードステーションJ-SHISの250mメッシュの表層30m平均S波速度AVS30で代用し、表層10m平均S波速度AVS10が、対象点の地下構造データから求められない場合には、表層30m平均S波速度AVS30で代用するものとした。また、地震基盤面深さD28は、防災科研の地震ハザードステーションJ-SHISで公開されている対象点位置が含まれるメッシュの深部地盤モデルの第28層の下面深さ(同モデルで地震基盤に相当するP波速度5000m/s・S波速度2700m/sの第29層の上面深さに等しい)とした。
【0047】
方位特性は、例えば、対象点を基準として震央が位置する方位を示す震央方位Λである。そのため、震央方位Λは、対象点位置を基準として震央位置が存在する方位として算定される。その際、震央方位Λは、真北を0°として時計回りに定めるとともに、真北を境に不連続量となるため、本実施形態に係る方位特性は、震央方位Λを表すsinΛとcosΛのペアを用いる。
【0048】
地殻変動諸特性パラメータは、地殻変動の諸特性を記述する各種のパラメータであり、例えば、基準点位置(緯度、経度、標高)、対象点位置(緯度lat_site、経度lon_site、標高EL)、及び、地形分類TCの少なくとも1つである。なお、対象点位置の緯度lat_site、経度lon_siteは、地震動諸特性パラメータの対象点位置と共通である。
【0049】
津波諸特性パラメータは、津波の諸特性を記述する各種のパラメータであり、例えば、対象点が洋上もしくは海岸の場合、対象点位置(緯度lat_base、経度lon_base)、水深WD、及び、潮位TLの少なくとも1つであり、対象地点が陸上の場合、対象点位置(緯度lat_base、経度lon_base、標高EL)、周辺の海岸や河川の位置とそこでの堤防高さの少なくとも1つである。なお、対象点位置の緯度lat_site、経度lon_siteは、地震動諸特性パラメータの対象点位置と共通である。また、標高ELは、地殻変動諸特性パラメータの標高と共通である。
【0050】
観測データ11Aを構成する指標観測結果は、地震時諸現象指標として、地震動指標、地殻変動指標及び津波指標を含む。また、シミュレーションデータ11Bを構成する指標算出結果についても、観測データ11Aと同様に、地震時諸現象指標として、地震動指標、地殻変動指標及び津波指標を含む。本実施形態では、地震時諸現象指標は、所定の対象点における地震時諸現象指標を示す数値データである。
【0051】
地震動指標は、地震動の強さや揺れを記述する各種の地震動指標であり、地震動の振幅特性、周期特性、及び、経時特性の少なくとも1つを含む。
【0052】
振幅特性は、地震動の最大加速度PGA、最大速度、及び、最大変位の少なくとも1つである。本実施形態に係る振幅特性は、最大加速度PGAである。
【0053】
周期特性は、地震動観測記録(加速度、速度、及び、変位の時刻歴波形)から得られる応答スペクトル又はフーリエスペクトル等において、少なくとも1つの周期に対する応答値である。応答スペクトルは、例えば、所定の減衰定数(例えば、5%)に対する加速度応答スペクトル、擬似速度応答スペクトルpSv、速度応答スペクトル、及び、変位応答スペクトル等である。フーリエスペクトルは、例えば、加速度フーリエスペクトル、速度フーリエスペクトル、及び、変位フーリエスペクトル等である。本実施形態に係る周期特性は、0.1秒、0.5秒、1秒、3秒、5秒の各周期における減衰定数5%の擬似速度応答スペクトルpSv(0.1s)、pSv(0.5s)、pSv(1s)、pSv(3s)、pSv(5s)の5つである。
【0054】
経時特性は、例えば、地震動観測記録(加速度、速度、及び、変位の時刻歴波形)から得られる応答継続時間スペクトルにおいて、少なくとも1つの周期に対する応答継続時間である。応答継続時間スペクトルは、例えば、所定の減衰定数(例えば、5%)に対する加速度応答継続時間スペクトル、速度応答継続時間スペクトルTSv、及び、変位応答継続時間スペクトル等である。本実施形態に係る経時特性は、0.1秒、0.5秒、1秒、3秒、5秒の各周期における減衰定数5%の速度応答継続時間スペクトルTSv(0.1s)、TSv(0.5s)、TSv(1s)、TSv(3s)、TSv(5s)の5つである。なお、応答継続時間の開始と終了を規定するパラメータは、p1=0.03、p2=0.95である。
【0055】
地殻変動指標は、地殻変動の規模や大きさを記述する各種の地殻変動指標であり、例えば、鉛直変位VD、及び、水平変位ベクトルHDの少なくとも1つである。
【0056】
津波指標は、津波の規模や大きさを記述する各種の津波指標であり、例えば、津波波高TH(海岸における津波高さ)、浸水深IH、痕跡高TM、及び、到達時間ATの少なくとも1つである。
【0057】
なお、指標計測結果や指標算出結果が、1つの対象点ではなく、所定の対象領域に含まれる複数の対象点に対して得られた場合には、各対象点に対応する複数の観測データ11Aや複数のシミュレーションデータ11Bが第1のデータベース10Aや第2のデータベース10Bに登録される。例えば、シミュレーションが、関東地方一都六県(東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城・栃木・群馬)を対象領域とし、当該対象領域に含まれる強震観測網K-NETの観測点138地点を複数の対象点として実行された場合には、シミュレーション結果として、138地点の指標算出結果がそれぞれ得られるため、138個のシミュレーションデータ11Bが第2のデータベース10Bに登録される。
【0058】
(第1及び第2の取得部311A、311Bによる第1及び第2の取得工程について)
第1の取得部311Aは、
図3に示すように、第1のデータベース10Aに登録された複数の観測データ11Aから、実地震諸特性パラメータ(数値データ)を特徴量とし、指標観測結果(数値データ)を目的変数として、特徴量及び目的変数で構成される第1の学習用データ12Aを複数取得する。
【0059】
第2の取得部311Bは、
図3に示すように、第2のデータベース10Bに登録された複数のシミュレーションデータ11Bから、仮想地震諸特性パラメータ(数値データ)を特徴量とし、指標算出結果(数値データ)を目的変数として、特徴量及び目的変数で構成される第2の学習用データ12Bを複数取得する。
【0060】
その際、第2の取得部311Bは、実地震動の地震動諸特性パラメータの分布を、仮想地震動の地震動諸特性パラメータの分布により補間するように、第2のデータベース10Bから第2の学習用データ12Bを複数取得するようにしてもよい。この場合、過去に実地震によりもたらされた地震動として発生したことがなく、第1の学習用データ12Aでは用意することが不可能な地震動諸特性パラメータを補間するように、第2の学習用データ12Bが選択されるので、第1及び第2の学習用データ12A、12Bの分布の偏りを低減することができる。
【0061】
なお、第1及び第2の学習用データ12A、12Bは、教師あり学習における学習データ(トレーニングデータ)、検証データ及びテストデータとして用いられるデータである。また、第1及び第2の学習用データ12A、12Bからなる学習用データの集合は、学習用データセットという。
【0062】
本実施形態では、第1及び第2の学習用データ12A、12Bを構成する特徴量は、
図5に示す複数種類の地震動諸特性パラメータのうち、モーメントマグニチュードMw、震源深さH、震源距離X、震央方位Λ(sinΛとcosΛのペア)、表層30m平均S波速度AVS30、及び、地震基盤面深さ(S波速度2700m/s層上面深さ)D28、標高EL、潮位TLの8種類である。第1及び第2の学習用データ12A、12Bを構成する目的変数は、
図5に示す複数種類の地震動指標のうち、最大加速度PGA、鉛直変位VD、津波波高THの3種類であるものとして説明する。なお、特徴量は、上記8種類の地震動諸特性パラメータに限られず、任意の地震動諸特性パラメータが選定されて組み合わせられてもよいし、
図5に示す地震動諸特性パラメータ以外の他の地震動諸特性パラメータが特徴量としてさらに組み合わせられてもよい。
【0063】
(生成部312による生成工程と、地震時諸現象統合評価モデル13について)
生成部312は、
図3に示すように、第1の取得部311Aにて取得された複数の第1の学習用データ12Aと、第2の取得部311Bにて取得された複数の第2の学習用データ12Bとに基づいて、特徴量及び目的変数の相関関係を機械学習により学習することにより、学習済みモデルとして地震時諸現象統合評価モデル13を生成し、記憶部30に記憶する。
【0064】
生成部312は、例えば、第1の学習用データ12A及び第2の学習用データ12Bを、地震時諸現象統合評価モデル13を構成する地震動評価モデル130、地殻変動評価モデル131及び津波評価モデル132にそれぞれ適用することにより、地震動に係る特徴量及び目的変数の相関関係を学習して地震動評価モデル130を生成し、地殻変動に係る特徴量及び目的変数の相関関係を学習して地殻変動評価モデル131を生成し、津波に係る特徴量及び目的変数の相関関係を学習して津波評価モデル132を生成する。
【0065】
本実施形態では、機械学習における機械学習アルゴリズムとして、勾配ブースティング木(Gradient Boosting Decision Tree)を用いる場合について説明する。
【0066】
図6は、勾配ブースティング木の概要を示す概要図である。勾配ブースティング木は、勾配ブースティングと決定木を組み合わせた学習器である。勾配ブースティングは、複数の弱学習器(低性能な機械学習モデル)を結合していくことにより強学習器(高性能な機械学習モデル)を構築する手法である。決定木は、樹木の分岐構造を利用した条件分岐を行うことにより分類・回帰が可能な機械学習モデルを生成する手法である。これら2つの手法を組み合わせた勾配ブースティング木は、決定木により生成した複数の弱学習器を勾配ブースティングにより結合する手法である。
【0067】
なお、生成部312が、勾配ブースティング木を用いて地震動評価モデル130、地殻変動評価モデル131及び津波評価モデル132をそれぞれ生成する場合には、地震動に係る目的変数毎に地震動評価モデル130を生成し、地殻変動に係る目的変数毎に地殻変動評価モデル131を生成し、地殻変動に係る目的変数毎に津波評価モデル132を生成すればよい。その際、地震動評価モデル130、地殻変動評価モデル131及び津波評価モデル132において、特徴量は、共通の地震諸特性パラメータを採用してもよいし、異なる地震諸特性パラメータを採用してもよい。
【0068】
また、生成部312が、機械学習における機械学習アルゴリズムとして、例えば、ニューラルネットワークを用いる場合には、上記のように、地震動評価モデル130、地殻変動評価モデル131及び津波評価モデル132をそれぞれ生成するようにしてもよいし、単一の地震時諸現象統合評価モデル13を生成してもよい。単一の地震時諸現象統合評価モデル13を生成する場合には、例えば、入力層の各ニューロンに地震諸特性パラメータ(特徴量)をそれぞれ割り当てて、出力層の各ニューロンに地震時諸現象指標(目的変数)をそれぞれ割り当てるようにすればよい。
【0069】
(地震時諸現象統合評価装置4の構成と各部による工程について)
地震時諸現象統合評価装置4は、地震時諸現象統合評価モデル生成装置3により生成された地震時諸現象統合評価モデル13に基づいて、地震動を評価・予測し、その結果を、例えば、表示媒体や紙媒体等の出力媒体に出力する。
【0070】
地震時諸現象統合評価装置4は、地震時諸現象統合評価モデル生成装置3と同様に、汎用又は専用のコンピュータで構成されており、
図2に示すように、HDD、メモリ等により構成される記憶部40と、CPU、GPU等のプロセッサにより構成される制御部41と、ネットワーク5との通信インターフェースである通信部42と、キーボード、マウス等により構成される入力部43と、ディスプレイ、タッチパネル等により構成される表示部44とを備える。
【0071】
記憶部40には、地震時諸現象統合評価モデル生成装置3により学習済みモデルとして生成された地震時諸現象統合評価モデル13と、地震時諸現象統合評価装置4の動作を制御して地震時諸現象統合評価方法を実現する地震時諸現象統合評価プログラム400が記憶されている。なお、記憶部40には、地形データ提供装置2Cにより提供された地形データや気象データ提供装置2Dにより提供された気象データ等のデータが記憶されていてもよい。
【0072】
制御部41は、地震時諸現象統合評価プログラム400を実行することにより、受付部410、予測部411、及び、出力処理部412として機能する。なお、各部の機能の詳細は後述する。
【0073】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る地震時諸現象統合評価装置4及び地震時諸現象統合評価方法の一例を示す機能説明図である。
【0074】
(受付部410による受付工程について)
受付部410は、予測対象の地震諸特性パラメータを受け付ける。具体的には、受付部410は、例えば、地震時諸現象統合評価装置4のユーザが予測対象として想定している地震(以下、「想定地震」という)のモーメントマグニチュードMw、震央位置、及び、震源深さHについて入力部33を介して受け付けるとともに、当該想定地震による地震時諸現象を予測したい予測点の位置を示す予測点位置と、当該予測点位置における表層30m平均S波速度AVS30、地震基盤面深さD28、標高EL及び潮位TLについても入力部33を介して受け付ける。なお、地形データが記憶部40に記憶されている場合には、受付部410は、当該地形データを参照することで予測点位置の表層30m平均S波速度AVS30、地震基盤面深さD28、標高EL及び潮位TLを取得してもよい。また、予測点位置は、複数でもよく、例えば、所定の格子間隔(例えば、5km間隔)における各格子点等でもよい。
【0075】
そして、受付部410は、想定地震の震央位置と、地震時諸現象の予測点位置とに基づいて、震源距離X及び震央方位Λを算出する。これにより、受付部410は、予測対象の地震諸特性パラメータ(想定地震のモーメントマグニチュードMw、想定地震の震源深さH、想定地震の震源と予測点位置との間の震源距離X、予測点位置を基準として想定地震の震央位置が存在する方位を示す震央方位Λ、予測点位置の表層30m平均S波速度AVS30、予測点位置の地震基盤面深さD28、標高EL及び潮位TL)を受け付ける。
【0076】
(予測部411による予測工程について)
予測部411は、受付部410にて受け付けられた予測対象の地震諸特性パラメータ(数値データ)を特徴量として、地震時諸現象統合評価モデル13(本実施形態では、8種類の地震諸特性パラメータを特徴量とし、3種類の地震動指標を目的変数として、両者の相関関係を学習した学習済みモデル)に入力することにより当該地震時諸現象統合評価モデル13から出力される目的変数(数値データ)に基づいて、予測対象の地震諸特性パラメータに対応する地震時諸現象指標(予測値)を予測する。その際、受付部410が、想定地震を複数受け付けたり、予測点位置を複数受け付けたりすることで、予測対象として複数の地震諸特性パラメータを受け付けた場合には、予測部411は、複数の地震諸特性パラメータの各々を地震時諸現象統合評価モデル13に入力することで、複数の地震諸特性パラメータの各々に対応する地震時諸現象指標(予測値)をそれぞれ予測する。
【0077】
なお、地震時諸現象統合評価モデル13が、地震時諸現象毎に生成された3つの地震動評価モデル130、地殻変動評価モデル131及び津波評価モデル132で構成される場合には、予測部411は、予測対象の地震諸特性パラメータを特徴量として地震動評価モデル130、地殻変動評価モデル131及び津波評価モデル132にそれぞれ入力し、地震動評価モデル130、地殻変動評価モデル131及び津波評価モデル132からそれぞれ出力される目的変数毎に、予測対象の地震諸特性パラメータに対応する地震時諸現象指標(予測値)を予測すればよい。
【0078】
(出力処理部412による出力処理工程について)
出力処理部412は、予測部411にて予測された地震時諸現象指標の予測値を視認可能な出力媒体に出力する。例えば、出力媒体が、表示部44のような表示媒体である場合には、出力処理部412は、表示媒体に表示するための表示データ(出力データ)を生成し、表示媒体に表示出力する。また、出力媒体が、紙媒体である場合には、出力処理部412は、紙媒体に印刷するための印刷データ(出力データ)を生成し、紙媒体に印刷出力する。なお、出力処理部412は、出力データを、例えば、地震時諸現象予測マップ作成システムやハザードマップ作成システム等に通信出力するようにしてもよいし、公共施設、建物、工場等の防災システムに通信出力するようにしてもよい。
【0079】
例えば、出力処理部412は、受付部410にて受け付けられた予測対象の地震諸特性パラメータが、1つの想定地震に対して、例えば、各格子点を予測点位置とするような複数の地震諸特性パラメータであるとき、当該複数の地震諸特性パラメータに基づいて予測部411にて予測された各予測点位置における複数の地震時諸現象指標の予測値を、地図上に重畳するように、例えば、コンター図や、色分けしたメッシュ図として出力媒体に出力する。
【0080】
また、出力処理部412は、受付部410にて受け付けられた予測対象の地震諸特性パラメータが、予測点位置を中心として異なる複数の方位特性を含む複数の地震諸特性パラメータであるとき、当該複数の地震諸特性パラメータに基づいて予測部411にて予測された各方位における複数の地震時諸現象指標の予測値を、出力媒体における基準点からの距離として表すとともに、複数の方位特性を、基準点を中心とする各方位に割り当てることにより、複数の地震時諸現象指標を出力媒体に出力する。
【0081】
さらに、出力処理部412は、受付部410にて受け付けられた予測対象の地震諸特性パラメータが、異なる震源距離を含む複数の地震諸特性パラメータであるとき、当該複数の地震諸特性パラメータに基づいて予測部411にて予測された複数の地震時諸現象指標の予測値を距離減衰特性として表すことにより、複数の地震時諸現象指標を出力媒体に出力する。
【0082】
以上のように、本実施形態に係る地震時諸現象統合評価モデル生成装置3及び地震時諸現象統合評価モデル生成方法によれば、実地震諸特性パラメータ及び指標観測結果をそれぞれ特徴量及び目的変数とする第1の学習用データ12Aと、仮想地震諸特性パラメータ及び指標算出結果をそれぞれ特徴量及び目的変数とする第2の学習用データ12Bとに基づいて地震時諸現象統合評価モデル13を生成する。そのため、地震時諸現象統合評価モデル13には、将来発生すると考えられる様々な地震によってもたらされる地震時諸現象の地震諸特性パラメータ及び地震時諸現象指標の相関関係が学習されて、観測データ及びシミュレーションデータから得られた知見が集約される。したがって、データ量の増加とコンピュータの情報処理能力の向上を最大限に生かしつつ、将来発生すると考えられる地震による地震時諸現象の諸指標を高精度で評価・予測することが可能な地震時諸現象統合評価モデルを提供することができる。
【0083】
また、本実施形態に係る地震時諸現象統合評価装置4及び地震時諸現象統合評価方法によれば、地震時諸現象統合評価モデル生成装置3及び地震時諸現象統合評価モデル生成方法により生成された地震時諸現象統合評価モデル13を利用することにより、個々の専門家の経験に依存することなく、将来発生すると考えられる地震による地震時諸現象の諸指標を高精度で評価・予測することができる。
【0084】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る地震時諸現象統合評価システム1では、地震時諸現象統合評価モデル13の目的変数が、第1の実施形態のような数値データではなく、画像データで表された対象領域における地震時諸現象指標の分布図である点で第1の実施形態と相違する。その他の基本的な構成及び動作は、第1の実施形態と同様のため、以下では両者の相違点を中心に説明する。
【0085】
(地震時諸現象統合評価モデル生成装置3について)
図8は、本発明の第2の実施形態に係る地震時諸現象統合評価モデル生成装置3及び地震時諸現象統合評価モデル生成方法の一例を示す機能説明図である。
図9は、本発明の第2の実施形態に係る第1及び第2のデータベース10A、10Bの一例を示すデータ構成図である。
【0086】
観測データ11Aを構成する実地震諸特性パラメータ及びシミュレーションデータ11Bを構成する仮想地震諸特性パラメータは、所定の対象領域における地震動指標、地殻変動指標及び津波指標が得られたときの所定の対象点における地震動諸特性パラメータ、地殻変動諸特性パラメータ及び津波諸特性パラメータを示す数値データである。また、観測データ11Aを構成する指標観測結果及びシミュレーションデータ11Bを構成する指標算出結果は、所定の対象領域における地震動指標、地殻変動指標及び津波指標の分布図を示す画像データである。
【0087】
第1の取得部311Aは、
図8に示すように、第1のデータベース10Aに登録された複数の観測データ11Aから、実地震諸特性パラメータ(数値データ)を特徴量とし、指標観測結果(画像データ)を目的変数として、特徴量及び目的変数で構成される第1の学習用データ12Aを複数取得する。第2の取得部311Bは、
図8に示すように、第2のデータベース10Bに登録された複数のシミュレーションデータ11Bから、仮想地震諸特性パラメータ(数値データ)を特徴量とし、指標算出結果(画像データ)を目的変数として、特徴量及び目的変数で構成される第2の学習用データ12Bを複数取得する。
【0088】
本実施形態では、
図9に示すように、特徴量は、地震動諸特性パラメータの震源特性を示すモーメントマグニチュードMw、震央位置lat_eq、lon_eq、震源深さHを示す数値データである。目的変数は、対象領域における震度分布図、鉛直変位分布図、津波波高分布図を示す画像データである。なお、目的変数としての分布図を示す画像データは、例えば、
図4に示す目的変数のいずれを表すものでもよく、例えば、最大加速度PGA、擬似速度応答スペクトルpSv、水平変位ベクトル、HD、到達時間AT等でもよいし、他の目的変数を表すものでもよい。また、目的変数としての分布図を示す画像データは、例えば、目的変数が所定の条件(段階的な条件も含む)を満たす地域を表すものでもよく、例えば、津波浸水域分布図のように、浸水深IHが所定値以上であることを満たす地域を表すものでもよい。
【0089】
生成部312は、第1の取得部311Aにて取得された複数の第1の学習用データ12Aと、第2の取得部311Bにて取得された複数の第2の学習用データ12Bとに基づいて、特徴量及び目的変数の相関関係を機械学習(例えば、ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、敵対的生成ネットワーク等)により学習することにより、学習済みモデルとして地震時諸現象統合評価モデル13を生成し、記憶部30に記憶する。
【0090】
(地震時諸現象統合評価装置4について)
図10は、本発明の第2の実施形態に係る地震時諸現象統合評価装置4及び地震時諸現象統合評価方法の一例を示す機能説明図である。
【0091】
受付部410は、予測対象の地震諸特性パラメータとして、震源特性を示す数値データ(モーメントマグニチュードMw、震央位置lat_eq、lon_eq、震源深さH)を受け付ける。予測部411は、受付部410にて受け付けられた予測対象の地震諸特性パラメータ(数値データ)を特徴量として、地震時諸現象統合評価モデル13に入力することにより当該地震時諸現象統合評価モデル13から出力される目的変数(画像データ)に基づいて、予測対象の地震諸特性パラメータに対応する地震時諸現象指標の分布図(震度分布図、鉛直変位分布図、津波波高分布図)を予測する。出力処理部412は、予測部411にて予測された地震時諸現象指標の分布図を視認可能な出力媒体に出力する。
【0092】
以上のように、本実施形態に係る地震時諸現象統合評価モデル生成装置3及び地震時諸現象統合評価モデル生成方法によれば、地震時諸現象特性パラメータ(数値データ)及び地震時諸現象指標(画像データ)を、それぞれ特徴量及び目的変数とする第1及び第2の学習用データ12A、12Bに基づいて地震時諸現象統合評価モデル13を生成する。そのため、地震諸特性パラメータ及び地震動指標算出結果の相関関係が学習されて、地震時諸現象特性パラメータを基に地震時諸現象指標の分布図を評価・予測するための知見が集約される。
【0093】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る地震時諸現象統合評価システム1では、地震時諸現象統合評価モデル13の特徴量が、第2の実施形態のような数値データではなく、数値データと画像データとの組み合わせで表された地震諸特性パラメータである点で第2の実施形態と相違する。その他の基本的な構成及び動作は、第2の実施形態と同様のため、以下では両者の相違点を中心に説明する。
【0094】
(地震時諸現象統合評価モデル生成装置3について)
図11は、本発明の第3の実施形態に係る地震時諸現象統合評価モデル生成装置3及び地震時諸現象統合評価モデル生成方法の一例を示す機能説明図である。
図12は、本発明の第3の実施形態に係る第1及び第2のデータベース10A、10Bの一例を示すデータ構成図である。
【0095】
観測データ11Aを構成する実地震諸特性パラメータ及びシミュレーションデータ11Bを構成する仮想地震諸特性パラメータは、所定の対象領域における地震動指標、地殻変動指標及び津波指標が得られたときの所定の対象点における地震動諸特性パラメータ、地殻変動諸特性パラメータ及び津波諸特性パラメータを示す数値データと、所定の対象領域における地震動諸特性パラメータ、地殻変動諸特性パラメータ及び津波諸特性パラメータの分布図を示す画像データである。観測データ11Aを構成する指標観測結果及びシミュレーションデータ11Bを構成する指標算出結果は、所定の対象領域における地震動指標、地殻変動指標及び津波指標の分布図を示す画像データである。
【0096】
第1の取得部311Aは、
図11に示すように、第1のデータベース10Aに登録された複数の観測データ11Aから、実地震諸特性パラメータ(数値データ及び画像データ)を特徴量とし、指標観測結果(画像データ)を目的変数として、特徴量及び目的変数で構成される第1の学習用データ12Aを複数取得する。第2の取得部311Bは、
図11に示すように、第2のデータベース10Bに登録された複数のシミュレーションデータ11Bから、仮想地震諸特性パラメータ(数値データ及び画像データ)を特徴量とし、指標算出結果(画像データ)を目的変数として、特徴量及び目的変数で構成される第2の学習用データ12Bを複数取得する。
【0097】
本実施形態では、
図12に示すように、特徴量は、震源特性を示すモーメントマグニチュードMw、震央位置lat_eq、lon_eq、震源深さHの数値データと、地震基盤面深さD28の分布図、標高ELの分布図、潮位TLの分布図を示す画像データである。目的変数は、対象領域における震度分布図、鉛直変位分布図、津波波高分布図を示す画像データである。なお、特徴量としての分布図を示す画像データは、例えば、地下構造、陸上地形、海底地形等を表すものが好ましいが、他の地震諸特性パラメータを表すものでもよい。
【0098】
生成部312は、第1の取得部311Aにて取得された複数の第1の学習用データ12Aと、第2の取得部311Bにて取得された複数の第2の学習用データ12Bとに基づいて、特徴量及び目的変数の相関関係を機械学習(例えば、ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、敵対的生成ネットワーク等)により学習することにより、学習済みモデルとして地震時諸現象統合評価モデル13を生成し、記憶部30に記憶する。
【0099】
(地震時諸現象統合評価装置4について)
図13は、本発明の第3の実施形態に係る地震時諸現象統合評価装置4及び地震時諸現象統合評価方法の一例を示す機能説明図である。
【0100】
受付部410は、予測対象の地震諸特性パラメータとして、震源特性(モーメントマグニチュードMw、震央位置lat_eq、lon_eq、震源深さH)を示す数値データと、対象領域における分布図(地震基盤面深さD28の分布図、標高ELの分布図、潮位TLの分布図)を示す画像データを受け付ける。予測部411は、受付部410にて受け付けられた予測対象の地震諸特性パラメータ(数値データ及び画像データ)を特徴量として、地震時諸現象統合評価モデル13に入力することにより当該地震時諸現象統合評価モデル13から出力される目的変数(画像データ)に基づいて、予測対象の地震諸特性パラメータに対応する地震時諸現象指標の分布図(震度分布図、鉛直変位分布図、津波波高分布図)を予測する。出力処理部412は、予測部411にて予測された地震時諸現象指標の分布図を視認可能な出力媒体に出力する。
【0101】
以上のように、本実施形態に係る地震時諸現象統合評価モデル生成装置3及び地震時諸現象統合評価モデル生成方法によれば、地震時諸現象特性パラメータ(数値データ及び画像データ)及び地震時諸現象指標(画像データ)を、それぞれ特徴量及び目的変数とする第1及び第2の学習用データ12A、12Bに基づいて地震時諸現象統合評価モデル13を生成する。そのため、地震諸特性パラメータ及び地震動指標算出結果の相関関係が学習されて、地震時諸現象特性パラメータの分布図を基に地震時諸現象指標の分布図を評価・予測するための知見が集約される。
【0102】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る地震時諸現象統合評価システム1では、地震時諸現象統合評価モデル13の特徴量が、第3の実施形態のような数値データと画像データとの組み合わせではなく、数値データが埋め込まれた画像データで表された地震諸特性パラメータである点で第3の実施形態と相違する。その他の基本的な構成及び動作は、第3の実施形態と同様のため、以下では両者の相違点を中心に説明する。
【0103】
(地震時諸現象統合評価モデル生成装置3について)
図14は、本発明の第4の実施形態に係る地震時諸現象統合評価モデル生成装置3及び地震時諸現象統合評価モデル生成方法の一例を示す機能説明図である。
図15は、本発明の第4の実施形態に係る第1及び第2のデータベース10A、10Bの一例を示すデータ構成図である。
【0104】
観測データ11Aを構成する実地震諸特性パラメータ及びシミュレーションデータ11Bを構成する仮想地震諸特性パラメータは、所定の対象領域における地震動指標、地殻変動指標及び津波指標が得られたときの所定の対象点における地震動諸特性パラメータ、地殻変動諸特性パラメータ及び津波諸特性パラメータを示す数値データが埋め込まれた画像データであって、所定の対象領域における地震動諸特性パラメータ、地殻変動諸特性パラメータ及び津波諸特性パラメータの分布図を示す画像データである。観測データ11Aを構成する指標観測結果及びシミュレーションデータ11Bを構成する指標算出結果は、所定の対象領域における地震動指標、地殻変動指標及び津波指標の分布図を示す画像データである。
【0105】
第1の取得部311Aは、
図14に示すように、第1のデータベース10Aに登録された複数の観測データ11Aから、実地震諸特性パラメータ(数値データが埋め込まれた画像データ)を特徴量とし、指標観測結果(画像データ)を目的変数として、特徴量及び目的変数で構成される第1の学習用データ12Aを複数取得する。第2の取得部311Bは、
図14に示すように、第2のデータベース10Bに登録された複数のシミュレーションデータ11Bから、仮想地震諸特性パラメータ(数値データが埋め込まれた画像データ)を特徴量とし、指標算出結果(画像データ)を目的変数として、特徴量及び目的変数で構成される第2の学習用データ12Bを複数取得する。
【0106】
本実施形態では、
図15に示すように、特徴量は、震源特性を示す震央位置lat_eq、lon_eqに対してモーメントマグニチュードMw及び震源深さHを示す数値データが記録された、地震基盤面深さD28の分布図、標高ELの分布図、潮位TLの分布図を示す画像データである。目的変数は、対象領域における震度分布図、鉛直変位分布図、津波波高分布図を示す画像データである。
【0107】
生成部312は、第1の取得部311Aにて取得された複数の第1の学習用データ12Aと、第2の取得部311Bにて取得された複数の第2の学習用データ12Bとに基づいて、特徴量及び目的変数の相関関係を機械学習(例えば、ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、敵対的生成ネットワーク等)により学習することにより、学習済みモデルとして地震時諸現象統合評価モデル13を生成し、記憶部30に記憶する。
【0108】
(地震時諸現象統合評価装置4について)
図16は、本発明の第4の実施形態に係る地震時諸現象統合評価装置4及び地震時諸現象統合評価方法の一例を示す機能説明図である。
【0109】
受付部410は、予測対象の地震諸特性パラメータとして、震源特性(モーメントマグニチュードMw、震央位置lat_eq、lon_eq、震源深さH)を示す数値データが埋め込まれた画像データであって、対象領域における分布図(地震基盤面深さD28の分布図、標高ELの分布図、潮位TLの分布図)を示す画像データを受け付ける。予測部411は、受付部410にて受け付けられた予測対象の地震諸特性パラメータ(数値データが埋め込まれた画像データ)を特徴量として、地震時諸現象統合評価モデル13に入力することにより当該地震時諸現象統合評価モデル13から出力される目的変数(画像データ)に基づいて、予測対象の地震諸特性パラメータに対応する地震時諸現象指標の分布図(震度分布図、鉛直変位分布図、津波波高分布図)を予測する。出力処理部412は、予測部411にて予測された地震時諸現象指標の分布図を視認可能な出力媒体に出力する。
【0110】
以上のように、本実施形態に係る地震時諸現象統合評価モデル生成装置3及び地震時諸現象統合評価モデル生成方法によれば、地震動シミュレーションを実行したときの地震諸特性パラメータ(数値データが埋め込まれた画像データ)及び地震動指標算出結果(画像データ)を、それぞれ特徴量及び目的変数とする第1及び第2の学習用データ12A、12Bに基づいて地震時諸現象統合評価モデル13を生成する。そのため、地震諸特性パラメータ及び地震動指標算出結果の相関関係が学習されて、地震時諸現象特性パラメータの分布図を基に地震時諸現象指標の分布図を評価・予測するための知見が集約される。
【0111】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0112】
例えば、上記各実施形態において、地震時諸現象統合評価モデル13の対象となる地域は適宜変更してもよく、例えば、対象となる地域の範囲や形状を任意に変更してもよい。さらに、地震時諸現象統合評価モデル13は、地域を対象とするだけでなく、任意の地点を対象としてもよいし、複数の地点が所定の分類基準に従ってグループ化された地点グループを対象としてもよい。
【0113】
また、上記各実施形態において、特徴量及び目的変数を表す画像データ(
図9、12、15参照)は、説明のために例示したものであり、特徴量及び目的変数をそれぞれ表すものであれば、画像として記録する内容や、画像の解像度、サイズ及びフォーマット等を適宜変更してもよい。
【0114】
また、上記各実施形態では、地震時諸現象統合評価モデル生成プログラム300及び地震時諸現象統合評価プログラム400は、記憶部30、40にそれぞれ記憶されたものとして説明したが、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、DVD、USBメモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されてもよい。また、地震時諸現象統合評価モデル生成プログラム300及び地震時諸現象統合評価プログラム400は、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供されてもよい。
【符号の説明】
【0115】
1…地震時諸現象統合評価システム
2A…観測データ提供装置、2B…シミュレーションデータ提供装置
2C…地形データ提供装置、2D…気象データ提供装置
3…地震時諸現象統合評価モデル生成装置、
4…地震時諸現象統合評価装置、5…ネットワーク、
10A…第1のデータベース、10B…第2のデータベース
11A…観測データ、11B…シミュレーションデータ
12A…第1の学習用データ、12B…第2の学習用データ
13…地震時諸現象統合評価モデル
30…記憶部、31…制御部、32…通信部、33…入力部、34…表示部、
40…記憶部、41…制御部、42…通信部、43…入力部、44…表示部、
130…地震動評価モデル、131…地殻変動評価モデル、132…津波評価モデル、
300…地震時諸現象統合評価モデル生成プログラム、
310A…第1のDB管理部、310B…第2のDB管理部、
311A…第1の取得部、311B…第2の取得部、312…生成部、
400…地震時諸現象統合評価プログラム、
410…受付部、411…予測部、412…出力処理部