(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】スクラップボックス及びレーザ加工機
(51)【国際特許分類】
B23K 26/08 20140101AFI20240606BHJP
B23K 26/10 20060101ALI20240606BHJP
B23K 26/16 20060101ALI20240606BHJP
B23K 26/142 20140101ALI20240606BHJP
【FI】
B23K26/10
B23K26/16
B23K26/142
(21)【出願番号】P 2020196712
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】岩田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 泰広
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-1057(JP,A)
【文献】特開2014-147938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板部,開口部を有する天壁,第1端部の出入口,前記第1端部の反対側の第2端部の奥壁,第1側壁,及び前記第1側壁に対向する第2側壁を含む角筒状のベース部と、
前記開口部に連通し、レーザ加工で生じ上方から落下する落下物をベース部に向け通過させる枠状の誘導部と、
前記ベース部の内部において前記底板部との間に第1空間を形成するように収められ、前記誘導部からの前記落下物を収容する集塵トレイと、
エアを前記第1空間の前記出入口の側から前記奥壁に向け噴出する第1エア噴出部と、
エアを前記第1空間の前記奥壁の側から前記出入口に向け噴出する第2エア噴出部と、
を備えたスクラップボックス。
【請求項2】
前記集塵トレイは、
前記奥壁の側の集塵位置と、前記集塵位置よりも前記出入口の側の排出位置との間を移動可能であって、少なくとも前記排出位置において前記奥壁との間に通気路を形成する請求項1記載のスクラップボックス。
【請求項3】
前記第1エア噴出部は、エアを噴出する第1ノズルと、前記第1ノズルから噴出したエアを前記底板部に沿って前記奥壁に向かう第1気流にする第1フードとを有し、
前記第2エア噴出部は、エアを噴出する第2ノズルと、前記第2ノズルから噴出したエアを前記底板部に沿って前記出入口に向かう第2気流にする第2フードとを有する、
請求項1又は請求項2記載のスクラップボックス。
【請求項4】
ワークを支持するテーブルと、
前記テーブルの上方を第1の方向に往復移動し下方にレーザビームを射出するレーザ加工ヘッドと、
スクラップ回収装置と、
を備え、
前記テーブルは、前記レーザ加工ヘッドから射出された前記レーザビームの照射経路に対応したテーブル開口部を有し、
前記スクラップ回収装置は、
請求項2記載のスクラップボックスであって、前記第1エア噴出部は、エアを噴出する第1ノズルと、前記第1ノズルから噴出したエアを前記底板部に沿って前記奥壁に向かう第1気流にする第1フードとを有し、前記第2エア噴出部は、エアを噴出する第2ノズルと、前記第2ノズルから噴出したエアを前記底板部に沿って前記出入口に向かう第2気流にする第2フードとを有するスクラップボックスと、
前記第1気流及び前記第2気流を、前記通気路及び前記スクラップボックスに連通したダクトを介して吸引する吸引装置と、
を備え、
前記スクラップ回収装置における前記誘導部は、前記テーブル開口部に対応した筒状に形成されているレーザ加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクラップボックス及びレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、ワークテーブルのレーザ加工位置の下方に設置されレーザ加工で生じて落下したスクラップ及び粉塵等を収める集塵トレイと、集塵トレイを収容したスクラップボックスとを備えたレーザ加工機が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載された集塵ボックスは、集塵位置とスクラップボックスに設けられた出入口との間を移動可能であり、作業者は、集塵トレイを出入口に移動して収めたスクラップ等を排出する。
特許文献1に記載されたスクラップボックスは、底部に複数の中敷き部材が並設されている。作業者は、この中敷き部材を順送りに取り出すことで、集塵トレイに回収されず中敷き部材上に蓄積した粉塵等を取り出して排出できる。
【0004】
特許文献2には、スクラップボックス内に浮遊する粉塵等を、空気と共に吸引して回収する集塵装置を備えたレーザ加工機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-255928号公報
【文献】特開2020-001057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたレーザ加工機は、中敷き部材とスクラップボックスの底部との間に入り込んだ粉塵等を容易に排出できない。そのため、底部に多量の粉塵が堆積して中敷き部材及び集塵トレイの移動に支障が生じる場合があり、改善の余地がある。
特許文献2に記載された集塵装置は、集塵トレイよりも上方側の空気を吸引するため、スクラップボックスの底部に堆積した粉を吸引して排出できないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、スクラップボックスの底部に堆積した粉塵を容易に排出できるスクラップボックス及びレーザ加工機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成を有する。
1) 底板部,開口部を有する天壁,第1端部の出入口,前記第1端部の反対側の第2端部の奥壁,第1側壁,及び前記第1側壁に対向する第2側壁を含む角筒状のベース部と、
前記開口部に連通し、レーザ加工で生じ上方から落下する落下物をベース部に向け通過させる枠状の誘導部と、
前記ベース部の内部において前記底板部との間に第1空間を形成するように収められ、前記誘導部からの前記落下物を収容する集塵トレイと、
エアを前記第1空間の前記出入口の側から前記奥壁に向け噴出する第1エア噴出部と、
エアを前記第1空間の前記奥壁の側から前記出入口に向け噴出する第2エア噴出部と、
を備えたスクラップボックスである。
2) 前記集塵トレイは、
前記奥壁の側の集塵位置と、前記集塵位置よりも前記出入口の側の排出位置との間を移動可能であって、少なくとも前記排出位置において前記奥壁との間に通気路を形成する1)に記載のスクラップボックス。である
3) 前記第1エア噴出部は、エアを噴出する第1ノズルと、前記第1ノズルから噴出したエアを前記底板部に沿って前記奥壁に向かう第1気流にする第1フードとを有し、
前記第2エア噴出部は、エアを噴出する第2ノズルと、前記第2ノズルから噴出したエアを前記底板部に沿って前記出入口に向かう第2気流にする第2フードとを有する、
1)又は2)に記載のスクラップボックスである。
4) ワークを支持するテーブルと、
前記テーブルの上方を第1の方向に往復移動し下方にレーザビームを射出するレーザ加工ヘッドと、
スクラップ回収装置と、
を備え、
前記テーブルは、前記レーザ加工ヘッドから射出された前記レーザビームの照射経路に対応したテーブル開口部を有し、
前記スクラップ回収装置は、
2)に記載のスクラップボックスであって、前記第1エア噴出部は、エアを噴出する第1ノズルと、前記第1ノズルから噴出したエアを前記底板部に沿って前記奥壁に向かう第1気流にする第1フードとを有し、前記第2エア噴出部は、エアを噴出する第2ノズルと、前記第2ノズルから噴出したエアを前記底板部に沿って前記出入口に向かう第2気流にする第2フードとを有するスクラップボックスと、
前記第1気流及び前記第2気流を、前記通気路及び前記スクラップボックスに連通したダクトを介して吸引する吸引装置と、
を備え、
前記スクラップ回収装置における前記誘導部は、前記テーブル開口部に対応した筒状に形成されているレーザ加工機である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スクラップボックスの底部に堆積した粉塵を容易に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係るレーザ加工機の実施例であるレーザ加工機91の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、レーザ加工機91を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、レーザ加工機91が備えるスクラップボックス1を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、集塵トレイ13が排出位置にあるスクラップボックス1を示す
図3におけるS4-S4位置の断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に対し、集塵トレイ13が加工位置にあるスクラップボックス1を示す図である。
【
図6】
図6は、スクラップボックス1が備える第1エア噴出部6を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、スクラップボックス1が備える第2エア噴出部7を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、第1エア噴出部6及び第2エア噴出部7それぞれから噴出した気流AR6及び気流AR7を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例)
図1は、本発明の実施の形態に係るレーザ加工機の実施例であるレーザ加工機91の概略構成を示す斜視図である。説明の便宜のため、上下左右前後の各方向を
図1の矢印で示された方向に規定する。
図2は、レーザ加工機91のブロック図である。
【0012】
図1に示されるように、レーザ加工機91は、加工機本体81,制御装置82,及びスクラップ回収装置83を備えている。
加工機本体81は、ベース811,テーブル812,ヘッドキャリッジ813,レーザ加工ヘッド814,及びワークキャリッジ815を備えている。
【0013】
ベース811は直方体状を呈する。
テーブル812は、板金よりなるワークを支持する不図示のブラシ群又はスキッド群を有し、ベース811の上部に水平姿勢で設置されている。
ヘッドキャリッジ813は、ベース811の左右縁部それぞれから上方に延びる一対の支柱813aと、左右の支柱813aをテーブル812の上方で連結するビーム813bを有して門型に形成されている。
レーザ加工ヘッド814は、ビーム813bによって上下方向及び左右方向に移動可能に支持されており、下部先端のノズル814aから下方にレーザビームを射出する。
ワークキャリッジ815は、不図示のクランパを、前後方向に移動可能に支持する。クランパは、テーブル812上に載置されたワークを把持する。
【0014】
レーザ加工機91は、上述の構成により、ワークをクランパで把持して前後方向に移動し、レーザ加工ヘッド814を左右方向に移動しながらレーザビームを下方に射出して、ワークに対しレーザ加工を行う。
制御装置82は、入力部821,出力部822,及び中央処理装置を含む制御部823を有する。制御部823は、クランパ及びレーザ加工ヘッド814の駆動部(不図示)、並びに、レーザ発振器(不図示)の動作を制御する。
【0015】
図1において、テーブル812は、レーザ加工ヘッド814から射出されたレーザビームの左右方向の照射経路に対応した直下の位置に、左右方向に延びる細長いテーブル開口部816を有する。
テーブル開口部816は、レーザ加工で生じた落下物であるスクラップ及び粉塵などを、テーブル812の下方に落下させるための孔である。
【0016】
スクラップ回収装置83は、スクラップボックス1,ダクト2,及び吸引装置3を有する。
スクラップボックス1は、テーブル812のテーブル開口部816の下方に配置され、テーブル開口部816を通して落下したスクラップ及び粉塵などを収容する。
スクラップボックス1の側面には、吸引口16が設けられており、ダクト2の一方の端部である第1端部が接続されている。ダクト2の他方の端部である第2端部は、吸引装置3に接続されている。
吸引装置3は、吸引ポンプを備え、ダクト2を通してスクラップボックス1の内部の空気を吸引し、吸引した空気に含まれている粉塵等を分離し収容する。
図2に示されるように、吸引装置3の動作は、制御部823によって制御される。
【0017】
次に、
図3~
図5を参照してスクラップボックス1を詳細に説明する。
図3は、スクラップボックス1を左前斜め上方から見た斜視図であり、
図4は、
図3におけるS4-S4位置での断面図である。
図4は、スクラップボックス1に備えられた集塵トレイ13が排出位置にある状態を示す。
図5は、
図4における集塵トレイ13が集塵位置にある状態を示す。
【0018】
図3~
図5に示されるように、スクラップボックス1は、ベース部11,誘導部12,及び集塵トレイ13を有する。
ベース部11は、底板部113,開口部115を有する天壁114,奥壁116,前壁である第1側壁118(
図3参照),及び第1側壁118に対向する後壁である第2側壁119(
図4及び
図5参照)を有して左右に細長い角筒状に形成されている。ベース部11の第1端部であり奥壁116の反対側となる左端は、出入口117とされている。ベース部11の左右の長さは、レーザ加工機91のベース811の左右長とほぼ同じである。
【0019】
図4及び
図5に示されるように、ベース部11の底板部113の上面の左部には、箱状のシリンダボックス5が取り付けられている。
シリンダボックス5の内部において、エアシリンダ51が底板部113に取り付けられている。エアシリンダ51は、エアの作用で2つのポジション間を往復直動するロッド52を有し、ロッド52は、
図4の矢印DR2に示されるように、シリンダボックス5の左方側に突出した位置の2つのポジション間を移動する。
シリンダボックス5の上面には、複数のボールキャスタ53が上向きに取り付けられている。
シリンダボックス5の右部には、第1エア噴出部6が備えられている。
底板部113の下面には、スクラップボックス1をベース811内の底部811aに設置するための複数の脚111が取り付けられている。
【0020】
ベース部11の左側面には、開閉蓋14がヒンジ15により取り付けられている。開閉蓋14は、後述する集塵トレイ13が
図3及び
図4に示される排出位置において開き、集塵トレイ13が
図5に示される集塵位置において閉じるようになっている。開閉蓋14の開閉動作は、集塵トレイ13の移動に連動して行われる。
【0021】
ベース部11の右側面となる奥壁116の一部は、固定ねじなどの固定具によって着脱可能に取り付けられたパネル112によって塞がれている。パネル112には、第2エア噴出部7が備えられている。
【0022】
ベース部11の上面における、テーブル開口部816に対応した部分は開放されており、筒状の誘導部12が連結されている。
誘導部12は、水平方向の断面形状が矩形の枠状となる、筒状の枠壁部121を有する。枠壁部121は、前後方向の幅がベース部11と概ね同じに形成されている。枠壁部121の内側は誘導開口部122であって、その空間Vaは、ベース部11の内部の第1空間である空間Vbに連通している。
枠壁部121の前側の前枠壁121a又は後側の後枠壁121bには、左右方向に長い吸引口16が形成され、圧力差によって自動開閉するシャッタ161が取り付けられている。
【0023】
集塵トレイ13は、ベース部11の内部に、左右方向の長さが適合して収められたトレイである。集塵トレイ13は、底板13aと、底板13aの前縁,右縁,及び後縁から立ち上げられた側壁13bとを有する。
底板13aの下面の中央部及び右部にはキャスタ131が取り付けられ、左部には、下方へ延びるプレート132が取り付けられている。
【0024】
集塵トレイ13は、シリンダボックス5に取り付けられたボールキャスタ53による支持と、キャスタ131によるベース部11の底板部113への接地とによって、
図4に示された排出位置と、
図5に示された集塵位置との間を左右方向(第1の方向)に往復移動可能となっている。
詳しくは、集塵トレイ13のプレート132は、エアシリンダ51のロッド52と連結されている。これにより、エアシリンダ51の動作によるロッド52の移動に伴って集塵トレイ13は排出位置と集塵位置との間を移動する。エアシリンダ51の動作は、
図2に示されるように制御部823によって制御される。
【0025】
集塵トレイ13は、
図5に示される集塵位置にあるときにテーブル812のテーブル開口部816に対応してその下方に位置している。レーザ加工機91は、集塵トレイ13が集塵位置にあるときにレーザ加工を実行する。
レーザ加工で生じたスクラップ及び粉塵は、テーブル812のテーブル開口部816を通って下方に落下し、下方に配置されている集塵トレイ13に収容される。
【0026】
集塵トレイ13に、スクラップ及び粉塵が所定量収容されたら、排出のため、集塵トレイ13を排出位置に移動させる。集塵トレイ13が排出位置に向かい移動すると、スクラップボックス1の開閉蓋は自動的に開く。集塵トレイ13は、排出位置において、加工機本体81のベース811から左端が突出する。
これにより、作業者は、スクラップ及び粉塵を集塵トレイ13から排出し、集塵トレイ13内を清掃できる。
集塵トレイ13の排出位置への移動は、
図2に示されるように、例えば作業者によって入力部821から入力される排出動作の実行指示を受け、制御部823の制御によって行われる。
【0027】
次に、
図6及び
図7を参照して第1エア噴出部6及び第2エア噴出部7について説明する。
図6は、第1エア噴出部6を示す斜視図であり、
図7は、第2エア噴出部7を示す斜視図である。
【0028】
図6に示されるように、第1エア噴出部6は、第1ノズル616と第1フード61とを有する。
第1ノズル616は、シリンダボックス5の右壁5aに前後方向に離隔して複数取り付けられている。この例では、二つの第1ノズル616が同じ高さ位置に取り付けられている。
第1ノズル616には、エア供給部833からエアホース617を介してエアが供給される。エアホース617の途中には電磁開閉弁である第1ノズル開閉部831が配置され複数の第1ノズル616へのエアの供給有無が制御される。
【0029】
第1フード61は、固定部611,傾斜部612,基部613,スカート部614,及び左右一対の側部615を有し、金属の薄板から折り曲げ加工などによって形成されている。
【0030】
固定部611は、最上部の前後に長い短冊状部位であって、複数の固定具N1によってシリンダボックス5の右壁5aに取り付けられている。
傾斜部612は、固定部611の下端に接続し、右方に向かうに従って下方に傾斜した平板状部位である。
基部613は、傾斜部612の右端に接続し、下方に向かって延在する平板状部位である。
スカート部614は、基部613の下端に接続し、右方に向かうに従って下方に傾斜した平板状部位である。
側部615は、傾斜部612又は基部613の前後それぞれの縁部から折り曲げられて形成され、右壁5a,傾斜部612,及び基部613で囲まれた空間V6の前後端を塞いでいる。これにより、空間V6は、実質的に下方側のみに開放された空間になっている。
【0031】
第1ノズル616は、右方に向かってベース部11の底板部113と概ね平行にエアを噴出する。
第1フード61は、複数の第1ノズル616のすべてを覆い、第1ノズル616から噴出したエアが傾斜部612に当たるように右壁5aに取り付けられている。
図4に示されるように、第1フード61のスカート部614の先端部位と、ベース部11の底板部113との間には、上下方向の距離H6の隙間SC6が形成されている。
【0032】
図7に示されるように、第2エア噴出部7は、第2ノズル716と第2フード71とを有する。
第2ノズル716は、パネル112において前後方向に離隔して複数取り付けられている。この例では、三つの第2ノズル716が同じ高さ位置に取り付けられている。
第2ノズル716には、エア供給部833からエアホース717を介してエアが供給される。エアホース717の途中には電磁開閉弁である第2ノズル開閉部832が配置され複数の第2ノズル716へのエアの供給有無が制御される。
【0033】
第2フード71は、固定部711,傾斜部712,基部713,スカート部714,及び左右一対の側部715を有し、金属の薄板から折り曲げ加工などによって形成されている。
【0034】
固定部711は、最上部の前後に長い短冊状部位であって、複数の固定具N2によってパネル112に取り付けられている。
傾斜部712は、固定部711の下端に接続し、左方に向かうに従って下方に傾斜した平板状部位である。
基部713は、傾斜部712の左端に接続し、下方に向かって延在する平板状部位である。
スカート部714は、基部713の下端に接続し、左方に向かうに従って下方に傾斜した平板状部位である。
側部715は、傾斜部712又は基部713の前後それぞれの縁部から折り曲げられて形成され、パネル112,傾斜部712,及び基部713で囲まれた空間V7の前後端を塞いでいる。これにより、空間V7は、実質的に下方側のみに開放された空間になっている。
【0035】
パネル112がベース部11に取り付けられた状態で、第2ノズル716は、左方に向かってベース部11の底板部113と概ね平行にエアを噴出する。
第2フード71は、複数の第2ノズル716のすべてを覆い、第2ノズル716から噴出したエアが、傾斜部712に当たるようにパネル112に取り付けられている。
図4に示されるように、第2フード71のスカート部714の先端部位と、ベース部11の底板部113との間には、上下方向の距離H7の隙間SC7が形成されている。
【0036】
図2に示されるように、第1ノズル開閉部831,第2ノズル開閉部832,及びエア供給部833の動作は、制御部823によって制御される。
エア供給部833が利用するエアの供給源は、例えば、工場などの作業場に敷設されたエア配管を流れるパージエアである。
【0037】
図8は、レーザ加工機91における第1エア噴出部6及び第2エア噴出部7それぞれから噴出した気流AR6及び気流AR7を、
図4に基づいて示す図である。
制御部823は、作業者によって入力部821からスクラップ及び粉塵の排出指令が入力されると、レーザ加工中の場合はその加工終了後、レーザ加工が停止している場合は直ちに排出動作を実行する。
【0038】
制御部823は、エアシリンダ51を動作させて、集塵トレイ13を、
図5に示される加工位置から
図4に示される排出位置に移動する。これにより、集塵トレイ13の側壁13bのうちのもっとも右側の奥となるトレイ奥壁13b1と、誘導部12の枠壁部121のうちの右側の後枠壁121bとの間に、空間Vcが形成される。空間Vcは、集塵トレイ13と底板部113との間の空間Vbと、誘導部12の内部の空間Vaとを連通する通気路Raとなる。
【0039】
次に、制御部823は、吸引装置3を動作させ、ダクト2を介して吸引口16から誘導部12の内部の空間Vaの空気を吸引する。シャッタ161は、ダクト2側が負圧となることで自動的に開く。
制御部823は、さらにエア供給部833を動作させ、まず第1ノズル開閉部831を開いて第1ノズル616からエアを噴出させる。
第1ノズル616から噴出したエアは、第1フード61の傾斜部612及びスカート部614の傾斜によって下方に寄せられ、底板部113に沿って右方に流れる第1気流の気流AR6となる。そのため、レーザ加工によって生じて底板部113上に堆積した粉塵などの粉状物Dは、気流AR6によって吹き上げられて浮遊し気流AR6と共に右方に移動する。
【0040】
次いで、制御部823は、第2ノズル開閉部832を開いて、第2ノズル716からエアを噴出させる。
第2ノズル716から噴出した気流AR7は、第2フード71の傾斜部712及びスカート部714の傾斜によって下方に寄せられ、底板部113に沿って左方に流れる第2気流の気流AR7となる。
気流AR7は、予め左方から流れてきている気流AR6と衝突する。気流AR6と気流AR7とが衝突して乱流が生じることで、気流AR6によって運ばれてきた粉状物Dは浮遊状態を維持し、衝突位置の近傍の底板部113に堆積した粉状物Dは巻き上げられて浮遊する。
【0041】
衝突した気流AR6及び気流AR7は、吸引装置3の動作で負圧となっている空間Vaと連通している通気路Raへ向かう第3気流の気流AR67となって上昇する。気流AR6によって運ばれてきた粉状物Dなどは、気流AR67と共に上昇し、通気路Raを通過して空間Vaへ入り、吸引口16から吸引装置3に吸引され、その後外部に排出される。
【0042】
気流AR67と共に空間Vaへ入った粉状物Dのうち、一部の粉状物Daは、吸引口16から吸引されずに落下する場合があり得るが、粉状物Daの大部分は集塵トレイ13に収められる。
気流AR6の圧力と気流AR7の圧力は、通気路Raの下方位置でほぼ同じになることが望ましく、そのために第1ノズル616から噴出するエアの圧力を、第2ノズル716から噴出するエアの圧力よりも高くするとよい。
【0043】
このように、レーザ加工機91は、スクラップボックス1の底板部113に粉塵などの粉状物Dが堆積しても、その粉状物Dを、第1エア噴出部6から噴出した気流AR6で吹き上げて浮遊させ、集塵トレイ13を排出位置に移動させて形成した通気路Raに向け運ぶ。そして、粉状物Dを含む気流AR6を、第2エア噴出部7から噴出した気流AR7と衝突させることで生成した上昇気流の気流AR67によってスクラップボックス1の上部の空間Vaに運ぶ。そして、空間Vaに運んだ粉状物Dを、吸引口16から外部に強制的に吸引して排出する。
このように、レーザ加工機91は、スクラップボックス1の底板部113に粉状物Dが堆積しても容易に排出できる。
【0044】
また、気流AR67で空間Vaに運ばれた粉状物Dは、淀みの発生或いは質量が大きいなどの理由で仮に吸引口16から排出されなかったとしても、その大部分は、集塵トレイ13に落下して集められ排出される。
このように、レーザ加工機91は、スクラップボックス1の底板部113に堆積した粉状物Dを、より確実に排出できる。
なお、スクラップボックス1は、集塵トレイ13が
図5に示される加工位置にあるときに、すでに集塵トレイ13のトレイ奥壁13b1とベース部11の奥壁116とが離隔して空間Vcが形成されるものであってもよい。この場合、レーザ加工機91は、集塵トレイ13を
図4に示される排出位置に移動させることなく排出動作を実行して、スクラップボックス1の底板部113に堆積した粉状物Dをスクラップボックス13に集めることができる。
【0045】
本発明の実施例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよい。
【0046】
第1ノズル616及び第2ノズル716の設置数は、上述の数に限定されるものではない。
第1ノズル616及び第2ノズル716から噴出するエアの圧力,流量,並びに,噴出時間及び噴出タイミングは、それぞれ一定でなくてよい。気流AR6及び気流AR7の圧力、流量、などを時間変化させることで、粉状物Dを空間Vb内に滞留させずにより良好に通気路Raに向け誘導できる。
【符号の説明】
【0047】
1 スクラップボックス
11 ベース部
111 脚、 112 パネル、 113 底板部、 114 天壁
115 開口部、 116 奥壁、 117 出入口
118 第1側壁(前壁)、 119 第2側壁(後壁)
12 誘導部
121 枠壁部、 121a 前枠壁、 121b 後枠壁
122 誘導開口部
13 集塵トレイ
13a 底板、 13b 側壁、 13b1 トレイ奥壁
131 キャスタ、 132 プレート
14 開閉蓋、 15 ヒンジ
16 吸引口、 161 シャッタ
2 ダクト
3 吸引装置
5 シリンダボックス、 5a 右壁
51 エアシリンダ、 52 ロッド、 53 ボールキャスタ
6 第1エア噴出部
61 第1フード
611 固定部、 612 傾斜部、 613 基部
614 スカート部、 615 側部、 616 第1ノズル
617 エアホース
7 第2エア噴出部
71 第2フード
711 固定部、 712 傾斜部、 713 基部
714 スカート部、 715 側部、 716 第2ノズル
717 エアホース
81 加工機本体
811 ベース、 811a 底部、 812 テーブル
813 ヘッドキャリッジ、 813a 支柱、 813b ビーム
814 レーザ加工ヘッド、 814a ノズル
815 ワークキャリッジ、 816 テーブル開口部
82 制御装置
821 入力部、 822 出力部、 823 制御部
83 スクラップ回収装置
831 第1ノズル開閉部、 832 第2ノズル開閉部
833 エア供給部
91 レーザ加工機
AR6,AR7,AR67 気流
D,Da 粉状物、 H6,H7 距離、 N1,N2 固定具
Ra 通気路、 SC6,SC7 隙間
Va,Vb,Vc,V6,V7 空間