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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】接合構造体、半導体装置および接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/22 20060101AFI20240606BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20240606BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20240606BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240606BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20240606BHJP
【FI】
B23K26/22
B23K26/21 G
B23K26/21 N
B23K26/082
H01L25/04 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020539409
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2019032966
(87)【国際公開番号】W WO2020045263
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2018161045
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】富士 和則
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-132686(JP,A)
【文献】特開2009-183970(JP,A)
【文献】特開2012-252935(JP,A)
【文献】特開2007-253179(JP,A)
【文献】特開2013-157550(JP,A)
【文献】特開2011-173146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/22
B23K 26/21
B23K 26/082
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属部材と第2金属部材とが第1方向に見て重なっており、前記第1金属部材と前記第2金属部材とが接合された接合構造体であって、
前記第1金属部材と前記第2金属部材とが重なった領域において、前記第1金属部材および前記第2金属部材の一部ずつが融接された溶接部を備えており、
前記溶接部は、
前記第1方向に見て、環状の外周縁と、
前記第1方向に見て、各々が前記溶接部の内方から前記外周縁に向けて延びる複数の線状痕と、
を有しており、
前記複数の線状痕の各々は、前記外周縁に沿う環状方向の一方に向かって膨らむように湾曲しており、
前記複数の線状痕は、前記第1方向に見て円弧状であり、
前記複数の線状痕のうちの一部の線状痕は、前記外周縁の周方向の一方に位置するほど、曲率半径が小さい、
接合構造体。
【請求項2】
前記外周縁は、第1基準点を中心とする円環状であり、
前記複数の線状痕の各々は、前記第1基準点から前記外周縁に向けて延びており、かつ、前記外周縁の周方向の他方に向かって膨らんでいる、
請求項1に記載の接合構造体。
【請求項3】
前記溶接部は、前記第1方向に見て円形状のクレータ部を、さらに有しており、
前記クレータ部の直径は、前記外周縁の半径よりも小さい、
請求項2に記載の接合構造体。
【請求項4】
前記クレータ部は、前記第1方向に見た中心が前記第1基準点と前記外周縁とを結ぶ線分の中央部分に位置する、
請求項3に記載の接合構造体。
【請求項5】
前記溶接部は、前記第1方向に直交する第2方向に見て、前記第2金属部材に重なる底部を含んでいる、
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の接合構造体。
【請求項6】
前記底部は、前記第1方向に直交する断面が円環状である、
請求項5に記載の接合構造体。
【請求項7】
第1金属部材を準備する工程と、
第2金属部材を準備し、第1方向に見て前記第1金属部材に重なるように配置する工程と、
前記第1金属部材と前記第2金属部材とが重なった領域において前記第1金属部材にレーザ光を照射し、前記第1金属部材および前記第2金属部材の一部ずつを融接するレーザ溶接工程と、を含んでおり、
前記レーザ溶接工程では、前記第1方向に見て、前記レーザ光を環状の第1軌道に沿って移動させる第1走査と、前記第1軌道の基準位置を第2軌道に沿って移動させる第2走査を行い、
前記レーザ光の照射によって前記第1金属部材および前記第2金属部材の一部ずつが融接された溶接部は、前記第1方向に見て、環状の外周縁と、前記第1方向に見て、各々が前記溶接部の内方から前記外周縁に向けて延びる複数の線状痕と、を有しており、
前記複数の線状痕の各々は、前記外周縁に沿う環状方向の一方に向かって膨らむように湾曲しており、
前記複数の線状痕は、前記第1方向に見て円弧状であり、
前記複数の線状痕のうちの一部の線状痕は、前記外周縁の周方向の一方に位置するほど、曲率半径が小さい、
接合方法。
【請求項8】
前記レーザ溶接工程では、ガルバノスキャナによって前記レーザ光の照射位置を変更することで、前記レーザ光を移動させる、
請求項7に記載の接合方法。
【請求項9】
前記第1軌道および前記第2軌道はそれぞれ、円形である、
請求項7または請求項8に記載の接合方法。
【請求項10】
前記第1軌道の直径と前記第2軌道の直径とは、略同じである、
請求項9に記載の接合方法。
【請求項11】
前記第2走査においては、前記レーザ光を、前記第2軌道に沿って少なくとも1周させる、
請求項9または請求項10に記載の接合方法。
【請求項12】
前記第2走査において、前記レーザ光を前記第2軌道に沿って移動させる前に、前記レーザ光の照射を前記第2軌道の中心位置から開始して、前記レーザ光を前記第2軌道の中心位置から径方向に直線的に移動させる、
請求項11に記載の接合方法。
【請求項13】
前記レーザ光は、ビーム径が20μmであり、かつ、移動速度が1000~1500mm/sである、
請求項7ないし請求項12のいずれか一項に記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、第1金属部材と第2金属部材とが接合された接合構造体、当該接合構造体を備える半導体装置、および、第1金属部材と第2金属部材との接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置において、大電流化、高効率化に伴い、その内部での低抵抗化が求められている。このような要求に対して、2つの金属部材間を、ボンディングワイヤなどを用いずに、直接接合する手法が開発されている。たとえば、特許文献1には、2つの金属部材(金属端子および金属板)を、超音波接合によって接合する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-221527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波接合においては、一方の金属部材を他方の金属部材に押し付けつつ、超音波振動を加えることで、2つの金属部材を接合する。しかしながら、超音波接合においては、2つの金属部材同士が擦れ合うため、各金属部材が摩耗する場合がある。このような表面損傷は、半導体装置の性能低下の原因となる。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、2つの金属部材間の接合による表面損傷の抑制を図った接合構造体を提供することにある。また、その接合構造体を備える半導体装置、および、2つの金属部材間の接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の側面によって提供される接合構造体は、第1金属部材と第2金属部材とが第1方向に見て重なっており、前記第1金属部材と前記第2金属部材とが接合された接合構造体であって、前記第1金属部材と前記第2金属部材とが重なった領域において、前記第1金属部材および前記第2金属部材の一部ずつが融接された溶接部を備えており、前記溶接部は、前記第1方向に見て、環状の外周縁と、前記第1方向に見て、各々が前記溶接部の内方から前記外周縁に向けて延びる複数の線状痕と、を有しており、前記複数の線状痕の各々は、前記外周縁に沿う環状方向の一方に向かって膨らむように湾曲している。
【0007】
前記接合構造体の好ましい実施の形態においては、前記外周縁は、第1基準点を中心とする円環状であり、前記複数の線状痕の各々は、前記第1基準点から前記外周縁に向けて延びており、かつ、前記外周縁の周方向の一方に向かって膨らんでいる。
【0008】
前記接合構造体の好ましい実施の形態においては、前記溶接部は、前記第1方向に見て円形状のクレータ部を、さらに有しており、前記クレータ部の直径は、前記外周縁の半径よりも小さい。
【0009】
前記接合構造体の好ましい実施の形態においては、前記クレータ部は、前記第1方向に見た中心が前記第1基準点と前記外周縁とを結ぶ線分の中央部分に位置する。
【0010】
前記接合構造体の好ましい実施の形態においては、前記複数の線状痕は、前記第1方向に見て円弧状であり、前記複数の線状痕のうちの一部の線状痕は、前記周方向の他方に位置するほど、曲率半径が小さくなる。
【0011】
前記接合構造体の好ましい実施の形態においては、前記溶接部は、前記第1方向に直交する第2方向に見て、前記第2金属部材に重なる底部を含んでいる。
【0012】
前記接合構造体の好ましい実施の形態においては、前記底部は、前記第1方向に直交する断面が円環状である。
【0013】
本開示の第2の側面によって提供される半導体装置は、前記第1の側面によって提供される接合構造体を備える半導体装置であって、前記第1方向に離間する主面および裏面を有する絶縁基板と、前記主面に配置された第1導電部材と、前記第1導電部材に導通接合された第1スイッチング素子と、第1端子部を含み、かつ、前記第1導電部材に電気的に接続された第1端子と、第2端子部を含み、かつ、前記第1スイッチング素子に電気的に接続された第2端子と、を備えている。
【0014】
前記半導体装置の好ましい実施の形態においては、前記溶接部は、前記第1金属部材としての前記第1端子から、前記第2金属部材としての前記第1導電部材にまたがって形成された第1接合部を含んでいる。
【0015】
前記半導体装置の好ましい実施の形態においては、前記第1端子は、前記第1導電部材よりも薄い。
【0016】
前記半導体装置の好ましい実施の形態においては、前記主面に配置され、前記第1導電部材と離間する第2導電部材と、前記第2導電部材に導通接合された第2スイッチング素子と、第3端子部を含み、かつ、前記第2導電部材に電気的に接続された第3端子と、を備えており、前記第1導電部材は、前記第2スイッチング素子に電気的に接続されている。
【0017】
前記半導体装置の好ましい実施の形態においては、前記溶接部は、前記第1金属部材としての前記第3端子から、前記第2金属部材としての前記第2導電部材にまたがって形成された第2接合部を含んでいる。
【0018】
前記半導体装置の好ましい実施の形態においては、前記第3端子は、前記第2導電部材よりも薄い。
【0019】
前記半導体装置の好ましい実施の形態においては、前記第1方向において、前記第2端子部と前記第3端子部との間に挟まれた絶縁部材をさらに備えており、前記絶縁部材の一部は、前記第1方向に見て、前記第2端子部および前記第3端子部に重なる。
【0020】
前記半導体装置の好ましい実施の形態においては、第1供給端子と、第2供給端子と、絶縁体と、を備えるバスバーをさらに備えており、前記第2供給端子は、前記第1方向において前記第1供給端子に対して離間しており、かつ、前記第1方向に見て前記第1供給端子に少なくとも一部が重なり、前記絶縁体は、前記第1方向において前記第1供給端子と前記第2供給端子との間に挟まれており、前記第1供給端子が、前記第2端子部に導通接合され、前記第2供給端子が、前記第3端子に導通接合されている。
【0021】
前記半導体装置の好ましい実施の形態においては、前記第1供給端子および前記第2供給端子に対して並列に接続されたコンデンサを、さらに備える。
【0022】
前記半導体装置の好ましい実施の形態においては、前記溶接部は、前記第1金属部材としての前記第1供給端子から、前記第2金属部材としての前記第2端子部にまたがって形成された第3接合部を含んでいる。
【0023】
前記半導体装置の好ましい実施の形態においては、前記第1供給端子は、前記第1方向に見て前記第2端子部と重なる領域において、凹形である先端部を含んでいる。
【0024】
前記半導体装置の好ましい実施の形態においては、前記先端部は、基部と、前記基部から延びた2つの延出部とを含んでおり、前記第3接合部は、前記2つの延出部の各々と、前記基部とにそれぞれ設けられている。
【0025】
本開示の第3の側面によって提供される接合方法は、第1金属部材を準備する工程と、第2金属部材を準備し、第1方向に見て前記第1金属部材に重なるように配置する工程と、前記第1金属部材と前記第2金属部材とが重なった領域において前記第1金属部材にレーザ光を照射し、前記第1金属部材および前記第2金属部材の一部ずつを融接するレーザ溶接工程と、を含んでおり、前記レーザ溶接工程では、前記第1方向に見て、前記レーザ光を環状の第1軌道に沿って移動させる第1走査と、前記第1軌道の基準位置を第2軌道に沿って移動させる第2走査を行う。
【0026】
前記接合方法の好ましい実施の形態においては、前記レーザ溶接工程では、ガルバノスキャナによって前記レーザ光の照射位置を変更することで、前記レーザ光を移動させる。
【0027】
前記接合方法の好ましい実施の形態においては、前記第1軌道および前記第2軌道はそれぞれ、円形である。
【0028】
前記接合方法の好ましい実施の形態においては、前記第1軌道の直径と前記第2軌道の直径とは、略同じである。
【0029】
前記接合方法の好ましい実施の形態においては、前記第2走査においては、前記レーザ光を、前記第2軌道に沿って少なくとも1周させる。
【0030】
前記接合方法の好ましい実施の形態においては、前記第2走査において、前記レーザ光を前記第2軌道に沿って移動させる前に、前記レーザ光の照射を前記第2軌道の中心位置から開始して、前記レーザ光を前記第2軌道の中心位置から径方向に直線的に移動させる。
【0031】
前記接合方法の好ましい実施の形態においては、前記レーザ光は、ビーム径が20μmであり、かつ、移動速度が1000~1500mm/sである。
【発明の効果】
【0032】
本開示の接合構造体および本開示の接合方法によれば、2つの金属部材における表面損傷の抑制を図ることができる。また、本開示の半導体装置によれば、2つの金属部材における表面損傷の抑制を図ることで、性能低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第1実施形態にかかる接合構造体を示す平面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図であって、接合構造体の断面構造を示す模式図である。
図3】第1実施形態にかかる接合方法に用いるレーザ溶接装置を示す模式図である。
図4】第1実施形態にかかる接合方法の、第1走査の軌道(第1軌道)および第2走査の軌道(第2軌道)を示す図である。
図5】レーザ溶接をした際のレーザ光の移動軌跡を示す図である。
図6】第1実施形態にかかる半導体装置を示す斜視図である。
図7図6に示す斜視図において、封止樹脂を省略した図である。
図8】第1実施形態にかかる半導体装置を示す平面図である。
図9図8に示す平面図において、封止樹脂を想像線で示した図である。
図10図9の一部を拡大した部分拡大図である。
図11】第1実施形態にかかる半導体装置を示す正面図である。
図12】第1実施形態にかかる半導体装置を示す底面図である。
図13】第1実施形態にかかる半導体装置を示す左側面図である。
図14】第1実施形態にかかる半導体装置を示す右側面図である。
図15図9のXV-XV線に沿う断面図である。
図16図9のXVI-XVI線に沿う断面図である。
図17図16の一部を拡大した要部拡大断面図である。
図18】変形例にかかる接合構造体を示す平面図である。
図19】変形例にかかる接合方法の、第2走査の軌道(第2軌道および第3軌道)を示す図である。
図20】変形例にかかる接合構造体の断面構造を示す模式図である。
図21】第2実施形態にかかる半導体装置を示す斜視図である。
図22】第2実施形態にかかる半導体装置を示す平面図である。
図23】第2実施形態にかかる半導体装置を示す底面図である。
図24図22のXXIV-XXIV線に沿う断面図である。
図25】第2実施形態の変形例にかかる半導体装置を示す断面図である。
図26】第2実施形態の変形例にかかる半導体装置を示す断面図である。
図27】第3実施形態の半導体装置を示す斜視図である。
図28】変形例にかかる溶接部を説明するための断面模式図である。
図29】変形例にかかる溶接部を説明するための断面模式図である。
図30】変形例にかかる溶接部を説明するための断面模式図である。
図31】変形例にかかる溶接部を説明するための断面模式図である。
図32】変形例にかかる溶接部を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示の接合構造体、半導体装置および接合方法の好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。
【0035】
まず、本開示の第1実施形態にかかる接合構造体について、図1および図2を参照して、説明する。第1実施形態の接合構造体A1は、第1金属部材91と第2金属部材92と溶接部93とを含んでいる。図1は、接合構造体A1を示す平面図である。図2は、図1のII-II線に沿う断面図であって、接合構造体A1の断面構造を示す模式図である。説明の便宜上、図2の上下方向を厚さ方向と定義する。つまり、図1に示す平面図は、厚さ方向の上方から下方に向かって見たときの接合構造体A1を示している。
【0036】
第1金属部材91および第2金属部材92は、たとえば金属板である。当該金属板の構成材料は、たとえばCu(銅)あるいはCu合金である。第1金属部材91は、第2金属部材92よりも薄い。第1金属部材91は、その厚みがたとえば0.8mmであり、第2金属部材92は、その厚みがたとえば3.0mmである。なお、第1金属部材91および第2金属部材92の各厚みは、これに限定されない。第1金属部材91と第2金属部材92とは、図1に示すように、平面視において部分的に重なっている。また、第1金属部材91と第2金属部材92とは、溶接部93を除いて、図2に示すように厚さ方向に接して配置されている。第1金属部材91は、第2金属部材92の上(図2の上方)に配置されている。
【0037】
溶接部93は、図2に示すように、第1金属部材91の一部と第2金属部材92の一部とが融接された部分である。溶接部93によって、第1金属部材91と第2金属部材92とが接合されている。溶接部93は、図1に示すように、第1金属部材91と第2金属部材92とが平面視において重なった領域に形成されている。溶接部93は、レーザ溶接によって第1金属部材91と第2金属部材92とを融接することで、形成される。具体的には、溶接部93は、第1金属部材91と第2金属部材92とが、レーザ照射による発熱により溶融し、その後、溶融した部分が凝固することで、形成されている。溶接部93は、第1金属部材91および第2金属部材92のそれぞれと、一体的に形成されている。溶接部93以外の部分において、第1金属部材91と第2金属部材92との界面は、接合されているのではなく、当接している状態である。溶接部93は、第1金属部材91および第2金属部材92の各材質が合金化された部位、第1金属部材91の材質のみで構成された部位、および、第2金属部材92の材質のみで構成された部位を含んでいる。たとえば、レーザ溶接を行う前に、第1金属部材91と第2金属部材92とが接していた部分の付近においては、第1金属部材91および第2金属部材92の各材質が合金化された部位になりやすい。また、溶接部93の上方(図2の上方)部分は、第1金属部材91の材質のみで構成された部位になりやすい。
【0038】
溶接部93は、図1に示すように平面視において、外周縁931、複数の線状痕932およびクレータ部933を有している。これらは、第1金属部材91と第2金属部材92とをレーザ溶接した際の、溶接痕である。
【0039】
外周縁931は、平面視における、溶接部93と第1金属部材91との境界である。外周縁931は、平面視において、基準点P1を中心とする円環状である。外周縁931は、その直径がたとえば1.6mmであるが、これに限定されない。図1に示す例示においては、外周縁931は、真円環状であるが、これに限定されず、レーザ溶接によるゆがみやジグザグが生じていてもよい。
【0040】
複数の線状痕932は、平面視において、溶接部93に形成された筋状の溶接痕である。各線状痕932は、図1に示すように、平面視において円弧状である。具体的には、各線状痕932は、平面視において、外周縁931の中心を基準点P1として、当該基準点P1から外周縁931に向かって延びており、かつ、外周縁931に沿う環状方向の一方に向かって膨らむように湾曲している。本実施形態においては、外周縁931が平面視円環状であるので、上記環状方向はその周方向である。図1に示す例示では、各線状痕932は、外周縁931の周方向の反時計回り方向に膨らむように湾曲している。
【0041】
クレータ部933は、たとえば平面視円形状である。平面視において、クレータ部933の半径は、外周縁931の半径よりも小さい。平面視におけるクレータ部933の中央位置P2は、外周縁931の中心位置(基準点P1に相当)と外周縁931とを結ぶ線分の中央部分に位置する。図1においては、この線分の中央を結んだ線を補助線L1で示している。クレータ部933は、図2に示すように、その外周が上方に突き出ている。
【0042】
溶接部93は、図2に示すように断面構造において、上部934、胴部935および底部936を有している。
【0043】
上部934は、図2に示すように、溶接部93のうち、厚さ方向の上方側に位置する部分である。上部934は、第1金属部材91よりも上方に突き出ている。
【0044】
胴部935は、溶接部93のうち、上部934および底部936に挟まれた部分である。胴部935は、図2に示すように、厚さ方向に直交する方向に見て、第1金属部材91に重なる。
【0045】
底部936は、溶接部93のうち、厚さ方向の下方側に位置する部分である。底部936は、図2に示すように、厚さ方向に直交する方向に見て、第2金属部材92に重なる。底部936は、たとえば厚さ方向に直交する平面における断面が円環状である。
【0046】
次に、本開示の第1実施形態にかかる接合構造体A1の形成方法について、すなわち、第1金属部材91と第2金属部材92との接合方法について、図3図5を参照して、説明する。
【0047】
まず、第1金属部材91と第2金属部材92とをそれぞれ準備する。たとえば、第1金属部材91として、厚さ0.8mmの金属板を準備し、第2金属部材92として、厚さ3.0mmの金属板を準備する。そして、第1金属部材91の少なくとも一部と第2金属部材92の少なくとも一部とを厚さ方向に重ねて配置する(図3参照)。このとき、第1金属部材91と第2金属部材92とを接合したい部分を、厚さ方向に見て重なるように配置する。そして、第1金属部材91と第2金属部材92とを図示しないクランパなどによって仮止めする。
【0048】
次いで、平面視において、第1金属部材91と第2金属部材92とが重なる領域に、レーザ光を照射して、第1金属部材91と第2金属部材92とをレーザ溶接する。本実施形態においては、図3に示すように、第1金属部材91の表面(図3の上面)からレーザ光を照射して、第1金属部材91と第2金属部材92とをレーザ溶接する場合を説明する。このレーザ溶接する工程(レーザ溶接工程)においては、たとえば、YAGレーザを用いており、次に示すレーザ溶接装置LD(図3参照)により行う。レーザ溶接装置LDは、仮止めされた第1金属部材91と第2金属部材92とをレーザ溶接するためのものである。
【0049】
図3は、レーザ溶接装置LDの一例を示している。レーザ溶接装置LDは、図3に示すように、レーザ発振器81、光ファイバ82およびレーザヘッド83を備えている。レーザ発振器81は、レーザ光を発振するものである。光ファイバ82は、レーザ発振器81から発振されたレーザ光を伝送するものである。レーザヘッド83は、光ファイバ82から出射されたレーザ光を第1金属部材91に導くものである。
【0050】
レーザヘッド83は、コリメートレンズ831、ミラー832、ガルバノスキャナ833および集光レンズ834を備えている。コリメートレンズ831は、光ファイバ82から出射されたレーザ光をコリメートする(平行光にする)レンズである。ミラー832は、コリメートレンズ831によって平行にされたレーザ光を第1金属部材91に向けて反射するものである。ガルバノスキャナ833は、第1金属部材91におけるレーザ光の照射位置を変更するためのものである。ガルバノスキャナ833は、たとえば、直交する2方向に首ふり運動が可能な図示しない一対の可動ミラーを含む周知のスキャナが用いられる。集光レンズ834は、ガルバノスキャナ833から導かれたレーザ光を第1金属部材91に集光する。本実施形態においては、第1金属部材91に照射するレーザ光のビーム径がたとえば20μm程度であり、かつ、レーザ光の移動速度がたとえば1000~1500mm/s程度となるように、レーザ溶接装置LDを制御している。また、照射するレーザ光のピークパワーをたとえば700~900W程度とする。上記した各種数値は、一例であって、これに限定されない。
【0051】
図4および図5は、レーザ溶接装置LDによって、照射するレーザ光の軌道を説明するための図である。レーザ溶接装置LDは、上記するように、ガルバノスキャナ833によって、レーザ光の照射位置が変更される。
【0052】
レーザ溶接装置LDは、平面視において、環状の第1軌道T1に沿ってレーザ光を移動させる第1走査と、第1軌道T1の基準位置を第2軌道T2に沿って移動させる第2走査とを行う。
【0053】
第1走査においては、図4に示すように、基準位置P3を中心とする半径R3の円を描くようにレーザ光を照射する。これにより、第1走査におけるレーザ光の軌道は、図4に示すように、基準位置P3を中心とする半径R3の円形の第1軌道T1となる。第1軌道T1に沿ったレーザ光の移動速度は、上記した1000~1500mm/sとする。
【0054】
第2走査においては、図4に示すように、第1走査における基準位置P3を、基準位置P4を中心とする半径R4の円を描くように、移動させる。よって、基準位置P3の軌道は、基準位置P4を中心とする半径R4の円形の第2軌道T2となる。このとき、第1軌道T1の半径R3と第2軌道T2の半径R4とは、略同じにする。第2軌道T2に沿った基準位置P3の移動速度は、およそ5mm/sとする。なお、当該移動速度は、これに限定されない。第2走査においては、基準位置P3を第2軌道T2に沿って、少なくとも1周させる。本実施形態においては、図4に示すように、第2軌道T2に沿って、1周させた後、引き続き1/4周させる。このとき、第2軌道T2に沿って1周させている期間は、レーザ光のパワーを大きくしておき(たとえばピークパワーで照射しておき)、残りの1/4周の期間は、1/4周した時点で0wとなるように、パワーを徐々に低下させる。
【0055】
本実施形態の接合方法においては、レーザ光を第1軌道T1に沿って第1走査しつつ、第1軌道T1の基準位置P3を第2軌道T2に沿って第2走査している。これにより、レーザ溶接工程において、照射されるレーザ光の軌跡は、図5に示すような軌跡となる。この軌跡において、外周の直径はおよそ1.6mmである。本実施形態の接合方法においては、第1走査の移動速度は、およそ1000~1500mm/sであり、第2走査の移動速度は、およそ5mm/sである。よって、レーザ光がたどる軌跡は、図5に示すように、第1走査によって描かれる複数の第1軌道T1が一部ずつ重なり合っている。
【0056】
以上のように、レーザ光を照射することで、レーザ光が照射された部分が発熱し、まず第1金属部材91が溶融する。そして、当該第1金属部材91が溶融するとともに、レーザ光による発熱が拡散して、第2金属部材92が溶融する。その結果、第1金属部材91の一部と第2金属部材92の一部とが溶融した溶融浴が生じる。その後、レーザ光の照射位置を移動させることで、レーザ光による熱源が移動し、発生した溶融浴が冷めて凝固する。そして、溶融浴が凝固することで、第1金属部材91と第2金属部材92とが融接されて、溶接部93が形成される。このとき、第2軌道T2に沿った移動により、順次に溶融および凝固するため、形成された溶接部93には、円弧状の複数の線状痕932が形成される。また、レーザ光の照射を停止させた時点で生じている溶融浴は、その周囲から凝固するので、形成された溶接部93には、円形状のクレータ部933が形成される。このようにして、レーザ溶接によって、第1金属部材91と第2金属部材92とにまたがる溶接部93が形成され、当該溶接部93によって、第1金属部材91と第2金属部材92とが接合される。
【0057】
次に、本開示の第1実施形態にかかる半導体装置について、図6図17を参照して、説明する。第1実施形態の半導体装置B1は、その一部において、上記したレーザ溶接によって、2つの金属部材間が接合されている。よって、第1実施形態の半導体装置B1は、上記溶接部93を有しており、上記した接合構造体A1を備えている。半導体装置B1は、絶縁基板10、複数の導電部材11、複数のスイッチング素子20、2つの入力端子31,32、出力端子33、一対のゲート端子34A,34B、一対の検出端子35A,35B、複数のダミー端子36、一対の側方端子37A,37B、一対の絶縁層41A,41B、一対のゲート層42A,42B、一対の検出層43A,43B、複数の土台部44、複数の線状接続部材51、複数の板状接続部材52、封止樹脂60および複数の溶接部93を備えている。複数のスイッチング素子20は、複数のスイッチング素子20Aおよび複数のスイッチング素子20Bを含む。
【0058】
図6は、半導体装置B1を示す斜視図である。図7は、図6に示す斜視図において、封止樹脂60を省略した図である。図8は、半導体装置B1を示す平面図である。図9は、図8に示す平面図において、封止樹脂60を想像線(二点鎖線)で示した図である。図10は、図9に示す平面図の一部を拡大した部分拡大図である。図11は、半導体装置B1を示す正面図である。図12は、半導体装置B1を示す底面図である。図13は、半導体装置B1を示す側面図(左側面図)である。図14は、半導体装置B1を示す側面図(右側面図)である。図15は、図9のXV-XV線に沿う断面図である。図16は、図9のXVI-XVI線に沿う断面図である。図17は、図16の一部を拡大した要部拡大断面図であって、スイッチング素子20の断面構造を示している。
【0059】
説明の便宜上、図6図17において、互いに直交する3つの方向を、x方向、y方向、z方向と定義する。z方向は、半導体装置B1の厚さ方向であって、上記接合構造体A1の厚さ方向に対応する。x方向は、半導体装置B1の平面図(図8および図9参照)における左右方向である。y方向は、半導体装置B1の平面図(図8および図9参照)における上下方向である。必要に応じて、x方向の一方をx1方向、x方向の他方をx2方向とする。同様に、y方向の一方をy1方向、y方向の他方をy2方向とし、z方向の一方をz1方向、z方向の他方をz2方向とする。
【0060】
絶縁基板10は、図7図9図15および図16に示すように、複数の導電部材11が配置されている。絶縁基板10は、複数の導電部材11および複数のスイッチング素子20の支持部材をなす。絶縁基板10は、電気絶縁性を有する。絶縁基板10の構成材料は、たとえば熱伝導性に優れたセラミックスである。このようなセラミックスとしては、たとえばAlN(窒化アルミニウム)が挙げられる。本実施形態においては、絶縁基板10は、平面視矩形状である。絶縁基板10は、図15および図16に示すように、主面101および裏面102を有する。
【0061】
主面101と裏面102とは、z方向において、離間し、かつ、互いに反対側を向く。主面101は、z方向のうち複数の導電部材11が配置される側、すなわち、z2方向を向く。主面101は、複数の導電部材11および複数のスイッチング素子20とともに、封止樹脂60に覆われている。裏面102は、z1方向を向く。裏面102は、図12図15および図16に示すように、封止樹脂60から露出している。裏面102には、たとえば図示しないヒートシンクなどが接続される。絶縁基板10の構成は、上記した例示に限定されず、たとえば複数の導電部材11ごとに個別に設けてもよい。
【0062】
複数の導電部材11の各々は、金属板である。当該金属板の構成材料は、たとえばCuまたはCu合金である。複数の導電部材11は、2つの入力端子31,32および出力端子33とともに、複数のスイッチング素子20との導通経路を構成している。複数の導電部材11は、絶縁基板10の主面101に配置され、互いに離間している。各導電部材11は、たとえばAg(銀)ペーストのような接合材により主面101に接合されている。導電部材11のz方向寸法は、たとえば3.0mmであるが、これに限定されない。複数の導電部材11は、Agめっきで覆われていてもよい。
【0063】
複数の導電部材11は、2つの導電部材11A,11Bを含んでいる。導電部材11Aは、図7および図9に示すように、導電部材11Bよりもx2方向に位置する。導電部材11Aは、複数のスイッチング素子20Aが搭載される。導電部材11Bは、複数のスイッチング素子20Bが搭載される。2つの導電部材11A,11Bはそれぞれ、たとえば、平面視矩形状である。各導電部材11A,11Bにおいて、z2方向を向く面の一部に溝が形成されていてもよい。たとえば、導電部材11Aに、平面視において複数のスイッチング素子20Aと絶縁層41A(後述)との間にy方向に延びる溝が形成されていてもよい。同様に、導電部材11Bに、平面視において複数のスイッチング素子20Bと絶縁層41B(後述)との間にy方向に延びる溝が形成されていてもよい。
【0064】
各導電部材11A,11Bは、その表面(z2方向を向く面)の一部に粗面領域を含んでいる。なお、図9および図10においては、この粗面領域をハッチングにより示している。粗面領域は、導電部材11の表面のうちの他の部分と比較して、粗面である。粗面領域は、半導体装置B1の製造過程において、導電部材11の表面にレーザ光を照射することで形成される。具体的には、導電部材11の表面にレーザ光を照射して、当該レーザ光を照射した部分を溶融させた後、当該溶融した部分が凝固することで、粗面となる。なお、レーザ光を照射した部分の一部が、昇華することもある。この粗面領域においては、アンカー効果によって封止樹脂60との接合強度を高めることができる。各導電部材11A,11Bに、粗面領域が含まれていなくてもよい。
【0065】
複数の導電部材11の構成は、上記した例示に限定されず、半導体装置B1に要求される性能に応じて適宜変更されうる。たとえば、複数のスイッチング素子20の個数および配置などに基づき、各導電部材11の形状、大きさおよび配置などが、変更されうる。
【0066】
複数のスイッチング素子20の各々は、SiC(炭化ケイ素)を主とする半導体材料を用いて構成されたMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。なお、複数のスイッチング素子20は、MOSFETに限定されず、MISFET(Metal-Insulator-Semiconductor FET)を含む電界効果トランジスタや、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のようなバイポーラトランジスタ、LSIなどのICチップであってもよい。各スイッチング素子20は、いずれも同一素子であり、かつ、nチャネル型のMOSFETである場合を示す。各スイッチング素子20は、たとえば平面視矩形状であるが、これに限定されない。
【0067】
複数のスイッチング素子20の各々は、図17に示すように、素子主面201および素子裏面202を有する。図17においては、スイッチング素子20Aが示されている。素子主面201および素子裏面202は、z方向において離間し、かつ、互いに反対側を向く。各素子主面201は、絶縁基板10の主面101と同じ方向を向く。各素子裏面202は、絶縁基板10の主面101に対向している。
【0068】
複数のスイッチング素子20の各々は、図17に示すように、主面電極21、裏面電極22および絶縁膜23を有する。
【0069】
主面電極21は、素子主面201に設けられている。主面電極21は、図10に示すように、第1電極211および第2電極212を含む。第1電極211は、たとえばソース電極であって、ソース電流が流れる。第2電極212は、たとえばゲート電極であって、各スイッチング素子20を駆動させるためのゲート電圧が印加される。第1電極211は、第2電極212よりも大きい。図10に示す例示では、第1電極211は、1つの領域で構成されているが、これに限定されず、複数の領域に分割されていてもよい。
【0070】
裏面電極22は、素子裏面202に設けられている。裏面電極22は、たとえば、素子裏面202の全体にわたって形成されている。裏面電極22は、たとえばドレイン電極であって、ドレイン電流が流れる。
【0071】
絶縁膜23は、素子主面201に設けられている。絶縁膜23は、電気絶縁性を有する。絶縁膜23は、平面視において主面電極21を囲んでいる。絶縁膜23は、たとえばSiO2(二酸化ケイ素)層、SiN4(窒化ケイ素)層、ポリベンゾオキサゾール層が、素子主面201からこの順番で積層されたものである。なお、絶縁膜23においては、ポリベンゾオキサゾール層に代えてポリイミド層でもよい。
【0072】
複数のスイッチング素子20は、上記するように、複数のスイッチング素子20Aおよび複数のスイッチング素子20Bを含んでいる。半導体装置B1は、図7および図9に示すように、4つのスイッチング素子20Aおよび4つのスイッチング素子20Bを含んでいる。複数のスイッチング素子20の数は、本構成に限定されず、半導体装置B1に要求される性能に応じて適宜変更されうる。たとえば、半導体装置B1がハーフブリッジ型のスイッチング回路である場合、複数のスイッチング素子20Aは、半導体装置B1の上アーム回路を構成し、複数のスイッチング素子20Bは、半導体装置B1の下アーム回路を構成する。
【0073】
複数のスイッチング素子20Aの各々は、図9に示すように、導電部材11Aに搭載されている。複数のスイッチング素子20Aは、y方向に離間して並んでいる。各スイッチング素子20Aは、図17に示すように、導電性接合層29を介して、導電部材11Aに導通接合されている。導電性接合層29の構成材料は、たとえばSn(スズ)を主成分とする鉛フリーはんだとするが、これに限定されず、Agペーストであってもよい。各スイッチング素子20Aは、素子裏面202が導電部材11Aの上面(z2方向を向く面)に対向している。各スイッチング素子20Aの裏面電極22は、導電性接合層29を介して、導電部材11Aに導通している。
【0074】
複数のスイッチング素子20Bの各々は、図9に示すように、導電部材11Bに搭載されている。複数のスイッチング素子20Bは、y方向に離間して並んでいる。各スイッチング素子20Bは、導電性接合層29を介して、導電部材11Bに導通接合されている。各スイッチング素子20Bは、素子裏面202が導電部材11Bの上面(z2方向を向く面)に対向している。各スイッチング素子20Bの裏面電極22は、導電性接合層29を介して、導電部材11Bに導通している。
【0075】
2つの入力端子31,32はそれぞれ、金属板である。当該金属板の構成材料は、たとえばCuまたはCu合金である。2つの入力端子31,32はそれぞれ、z方向寸法がたとえば0.8mmであるが、これに限定されない。2つの入力端子31,32はそれぞれ、図11に示すように、半導体装置B1においてx2方向寄りに位置する。2つの入力端子31,32の間には、たとえば電源電圧が印加される。入力端子31は、正極(P端子)であり、入力端子32は、負極(N端子)である。入力端子32は、z方向において、入力端子31および導電部材11Aの双方に対して離間して配置されている。
【0076】
入力端子31は、図9および図15に示すように、パッド部311および端子部312を有する。
【0077】
パッド部311は、入力端子31のうち、封止樹脂60に覆われた部分である。パッド部311のx1方向側の端部は、櫛歯状となっており、複数の櫛歯部311aを含んでいる。複数の櫛歯部311aの各々は、一部の溶接部93(具体的には後述する入力端子接合部93B)を介して、導電部材11Aの表面に接合されており、かつ、当該溶接部93を介して、入力端子31と導電部材11Aとが導通する。櫛歯部311aと導電部材11Aとの接合は、レーザ溶接により行われる。
【0078】
端子部312は、入力端子31のうち、封止樹脂60から露出した部分である。端子部312は、図9および図15に示すように、平面視において、封止樹脂60からx2方向に延びている。
【0079】
入力端子32は、図9および図15に示すように、パッド部321および端子部322を有する。
【0080】
パッド部321は、入力端子32のうち、封止樹脂60に覆われた部分である。パッド部321は、連結部321aおよび複数の延出部321bを含んでいる。連結部321aは、y方向に延びる帯状である。連結部321aは、端子部322に繋がっている。複数の延出部321bは、連結部321aからx1方向に向けて延びる帯状である。複数の延出部321bは、平面視において、y方向に並んでおり、かつ、互いに離間している。各延出部321bは、z1方向を向く面が各土台部44に接しており、当該各土台部44を介して、導電部材11Aに支持されている。
【0081】
パッド部321は、その表面の一部に粗面領域を含んでいる。図9においては、この粗面領域をハッチングにより示している。粗面領域は、パッド部321の表面のうちの他の部分と比較して、粗面である。粗面領域は、半導体装置B1の製造過程において、入力端子32の表面にレーザ光を照射することで形成される。この粗面領域においては、アンカー効果によって封止樹脂60との接合強度を高めることができる。パッド部321に、粗面領域が含まれていなくてもよい。
【0082】
端子部322は、入力端子32のうち、封止樹脂60から露出した部分である。端子部322は、図9および図15に示すように、平面視において、封止樹脂60からx2方向に延びている。端子部322は、平面視矩形状である。端子部322は、図9および図15に示すように、平面視において、入力端子31の端子部312に重なっている。端子部322は、端子部312に対して、z2方向に離間している。図9および図15に示す例示では、端子部322の形状は、端子部312の形状と同一である。
【0083】
出力端子33は、金属板である。当該金属板の構成材料は、たとえばCuまたはCu合金である。出力端子33は、図11に示すように、半導体装置B1においてx1方向寄りに位置する。出力端子33から複数のスイッチング素子20により電力変換された交流電力(電圧)が出力される。
【0084】
出力端子33は、図9および図15に示すように、パッド部331および端子部332を含んでいる。
【0085】
パッド部331は、出力端子33のうち、封止樹脂60に覆われた部分である。パッド部331のx2方向側の部分は、櫛歯状となっており、複数の櫛歯部331aを含んでいる。複数の櫛歯部331aの各々は、一部の溶接部93(具体的には後述する出力端子接合部93A)を介して、導電部材11Bの表面に接合されており、かつ、当該溶接部93を介して、出力端子33と導電部材11Bとが導通する。櫛歯部331aと導電部材11Bとの接合は、レーザ溶接により行われる。
【0086】
パッド部331は、その表面の一部に粗面領域を含んでいる。図9においては、この粗面領域をハッチングにより示している。粗面領域は、パッド部331の表面のうちの他の部分と比較して、粗面である。粗面領域は、半導体装置B1の製造過程において、出力端子33の表面にレーザ光を照射することで形成される。この粗面領域においては、アンカー効果によって封止樹脂60との接合強度を高めることができる。パッド部331に、粗面領域が含まれていなくてもよい。
【0087】
端子部332は、出力端子33のうち、封止樹脂60から露出した部分である。端子部332は、図9および図15に示すように、封止樹脂60からx1方向の延び出ている。
【0088】
一対のゲート端子34A,34Bは、図8図10および図12に示すように、y方向において、各導電部材11A,11Bの隣に位置する。ゲート端子34Aには、複数のスイッチング素子20Aを駆動させるためのゲート電圧が印加される。ゲート端子34Bには、複数のスイッチング素子20Bを駆動させるためのゲート電圧が印加される。
【0089】
一対のゲート端子34A,34Bはそれぞれ、図9および図10に示すように、パッド部341および端子部342を有する。各ゲート端子34A,34Bにおいて、パッド部341は、封止樹脂60に覆われている。これにより、各ゲート端子34A,34Bは、封止樹脂60に支持されている。各パッド部341の表面には、たとえばAgめっきが施されていてもよい。各端子部342は、各パッド部341につながり、かつ、封止樹脂60から露出している。各端子部342は、x方向に見て、L字状をなしている。
【0090】
一対の検出端子35A,35Bは、図8図10および図12に示すように、x方向において一対のゲート端子34A,34Bの隣に位置する。検出端子35Aから、複数のスイッチング素子20Aの各主面電極21(第1電極211)に印加される電圧(ソース電流に対応した電圧)が検出される。検出端子35Bから、複数のスイッチング素子20Bの各主面電極21(第1電極211)に印加される電圧(ソース電流に対応した電圧)が検出される。
【0091】
一対の検出端子35A,35Bはそれぞれ、図9および図10に示すように、パッド部351および端子部352を有する。各検出端子35A,35Bにおいて、パッド部351は、封止樹脂60に覆われている。これにより、各検出端子35A,35Bは、封止樹脂60に支持されている。各パッド部351の表面には、たとえばAgめっきが施されていてもよい。各端子部352は、各パッド部351につながり、かつ、封止樹脂60から露出している。各端子部352は、x方向に見て、L字状をなしている。
【0092】
複数のダミー端子36は、図8図10および図12に示すように、x方向において一対の検出端子35A,35Bに対して一対のゲート端子34A,34Bの反対側に位置する。本実施形態においては、6つのダミー端子36がある。このうち3つのダミー端子36は、x方向の一方側(x2方向)に位置する。残り3つのダミー端子36は、x方向の他方側(x1方向)に位置する。複数のダミー端子36の数は、本構成に限定されない。また、複数のダミー端子36を備えない構成としてもよい。
【0093】
複数のダミー端子36はそれぞれ、図9および図10に示すように、パッド部361および端子部362を有する。各ダミー端子36において、パッド部361は、封止樹脂60に覆われている。これにより、各ダミー端子36は、封止樹脂60に支持されている。各パッド部361の表面には、たとえばAgめっきが施されていてもよい。各端子部362は、各パッド部361につながり、かつ、封止樹脂60から露出している。各端子部362は、x方向に見て、L字状をなしている。図6図14に示す例示においては、各端子部362の形状は、一対のゲート端子34A,34Bの各端子部342の形状、および、一対の検出端子35A,35Bの各端子部352の形状と同一である。
【0094】
一対の側方端子37A,37Bは、図7図9および図16に示すように、平面視において、封止樹脂60のy1方向側の端縁部分であり、かつ、封止樹脂60のx方向の各端縁部分に配置されている。一対の側方端子37A,37Bはそれぞれ、図9および図16に示すように、パッド部371および端面372を有する。
【0095】
各側方端子37A,37Bにおいて、パッド部371は、封止樹脂60に覆われている。各パッド部371は、図9に示すように一部が平面視において屈曲している。また、各パッド部371は、図16に示すように他の一部がz方向に屈曲している。側方端子37Aのパッド部371は、一部の溶接部93(具体的に後述する側方端子接合部93D)を介して、導電部材11Aに接合され、側方端子37Bのパッド部371は、一部の溶接部93(具体的に後述する側方端子接合部93C)を介して、導電部材11Bに接合されている。これにより、側方端子37Aは、導電部材11Aに支持され、側方端子37Bは、導電部材11Bに支持されている。
【0096】
各パッド部371は、その表面の一部に粗面領域を含んでいる。図9においては、この粗面領域をハッチングにより示している。粗面領域は、各パッド部371の表面のうちの他の部分と比較して、粗面である。粗面領域は、半導体装置B1の製造過程において、一対の側方端子37A,37Bの表面にレーザ光を照射することで形成される。この粗面領域においては、アンカー効果によって封止樹脂60との接合強度を高めることができる。各側方端子37A,37Bに、粗面領域が含まれていなくてもよい。
【0097】
各側方端子37A,37Bにおいて、端面372は、封止樹脂60から露出している。側方端子37Aの端面372は、x2方向を向いており、たとえば樹脂側面631と略面一である。なお、面一でなくてもよい。側方端子37Bの端面372は、x1方向を向いており、たとえば樹脂側面632と略面一である。なお、面一でなくてもよい。各側方端子37A,37Bは、平面視において、そのすべてが封止樹脂60に重なる。
【0098】
各側方端子37A,37Bの構成は、上記した例示に限定されない。たとえば、平面視において、樹脂側面631,632からそれぞれ突き出るまで延び出ていてもよい。また、半導体装置B1が各側方端子37A,37Bを備えていなくてもよい。
【0099】
一対のゲート端子34A,34B、一対の検出端子35A,35Bおよび複数のダミー端子36は、図8図10に示すように、平面視において、x方向に沿って配列されている。半導体装置B1において、一対のゲート端子34A,34B、一対の検出端子35A,35B、複数のダミー端子36および一対の側方端子37A,37Bは、いずれも同一のリードフレームから形成される。
【0100】
絶縁部材39は、電気絶縁性を有しており、その構成材料は、たとえば絶縁紙などである。絶縁部材39の一部は、平板であって、図15に示すように、z方向において入力端子31の端子部312と、入力端子32の端子部322とに挟まれている。平面視において、入力端子31は、その全部が絶縁部材39に重なっている。また、平面視において、入力端子32は、パッド部321の一部と端子部322の全部とが絶縁部材39に重なっている。絶縁部材39により、2つの入力端子31,32が互いに絶縁されている。絶縁部材39の一部(x1方向側の部分)は、封止樹脂60に覆われている。
【0101】
絶縁部材39は、図15に示すように、介在部391および延出部392を有する。介在部391は、z方向において、入力端子31の端子部312と、入力端子32の端子部322との間に介在する。介在部391は、その全部が端子部312と端子部322とに挟まれている。延出部392は、介在部391から端子部312および端子部322よりもさらに、x2方向に向けて延びている。
【0102】
一対の絶縁層41A,41Bは、電気絶縁性を有しており、その構成材料は、たとえばガラスエポキシ樹脂である。一対の絶縁層41A,41Bはそれぞれ、図9に示すように、y方向の延びる帯状である。絶縁層41Aは、図9図10図15および図16に示すように、導電部材11Aの上面(z2方向を向く面)に接合されている。絶縁層41Aは、複数のスイッチング素子20Aよりもx2方向に位置する。絶縁層41Bは、図9図10図15および図16に示すように、導電部材11Bの(z2方向を向く面)に接合されている。絶縁層41Bは、複数のスイッチング素子20Bよりもx1方向に位置する。
【0103】
一対のゲート層42A,42Bは、導電性を有しており、その構成材料は、たとえばCuである。一対のゲート層42A,42Bはそれぞれ、図9に示すように、y方向に延びる帯状である。ゲート層42Aは、図9図10図15および図16に示すように、絶縁層41A上に配置されている。ゲート層42Aは、線状接続部材51(具体的には後述するゲートワイヤ511)を介して、各スイッチング素子20Aの第2電極212(ゲート電極)に導通する。ゲート層42Bは、図9図10図15および図16に示すように、絶縁層41B上に配置されている。ゲート層42Bは、線状接続部材51(具体的には後述するゲートワイヤ511)を介して、各スイッチング素子20Bの第2電極212(ゲート電極)に導通する。
【0104】
一対の検出層43A,43Bは、導電性を有しており、その構成材料は、たとえばCuである。一対の検出層43A,43Bはそれぞれ、図9に示すように、y方向に延びる帯状である。検出層43Aは、図9図10図15および図16に示すように、ゲート層42Aとともに絶縁層41A上に配置されている。検出層43Aは、絶縁層41A上において、ゲート層42Aの隣に位置し、ゲート層42Aに離間している。検出層43Aは、たとえば、ゲート層42Aよりも複数のスイッチング素子20Aが配置されている側(x2方向)に位置するが、反対側に位置していてもよい。検出層43Aは、線状接続部材51(具体的には後述する検出ワイヤ512)を介して、各スイッチング素子20Aの第1電極211(ソース電極)に導通する。検出層43Bは、図9図10図15および図16に示すように、ゲート層42Bとともに絶縁層41B上に配置されている。検出層43Bは、絶縁層41B上において、ゲート層42Bの隣に位置し、ゲート層42Bに離間している。検出層43Bは、たとえば、ゲート層42Bよりも複数のスイッチング素子20Bが配置されている側(x1方向)に位置するが、反対側に位置していてもよい。検出層43Bは、線状接続部材51(具体的には後述する検出ワイヤ512)を介して、各スイッチング素子20Bの第1電極211(ソース電極)に導通する。
【0105】
複数の土台部44の各々は、電気絶縁性を有しており、その構成材料は、たとえばセラミックである。各土台部44は、図7および図15に示すように、導電部材11Aの表面に接合されている。各土台部44は、たとえば、平面視矩形状である。複数の土台部44は、y方向に並んでおり、互いに離間している。各土台部44のz方向寸法は、入力端子31のz方向寸法と絶縁部材39のz方向寸法との合計と略同じである。各土台部44には、入力端子32のパッド部321の各延出部321bが接合されている。各土台部44は、入力端子32を支持している。
【0106】
複数の線状接続部材51は、いわゆるボンディングワイヤである。複数の線状接続部材51の各々は、導電性を有しており、その構成材料は、たとえばAl(アルミニウム)、Au(金)、Cuのいずれかである。複数の線状接続部材51は、図9および図10に示すように、複数のゲートワイヤ511、複数の検出ワイヤ512、一対の第1接続ワイヤ513および一対の第2接続ワイヤ514を含んでいる。
【0107】
複数のゲートワイヤ511の各々は、図9および図10に示すように、その一端がスイッチング素子20の第2電極212(ゲート電極)に接合され、その他端が一対のゲート層42A,42Bのいずれかに接合されている。複数のゲートワイヤ511には、スイッチング素子20Aの第2電極212とゲート層42Aとを導通させるものと、スイッチング素子20Bの第2電極212とゲート層42Bとを導通させるものとがある。
【0108】
複数の検出ワイヤ512の各々は、図9および図10に示すように、その一端がスイッチング素子20の第1電極211(ソース電極)に接合され、その他端が一対の検出層43A,43Bのいずれかに接合されている。複数の検出ワイヤ512には、スイッチング素子20Aの第1電極211と検出層43Aとを導通させるものと、スイッチング素子20Bの第1電極211と検出層43Bとを導通させるものとがある。
【0109】
一対の第1接続ワイヤ513は、図9および図10に示すように、その一方がゲート層42Aとゲート端子34Aとを接続し、その他方がゲート層42Bとゲート端子34Bとを接続する。一方の第1接続ワイヤ513は、一端がゲート層42Aに接合され、他端がゲート端子34Aのパッド部341に接合されており、これらを導通している。他方の第1接続ワイヤ513は、一端がゲート層42Bに接合され、他端がゲート端子34Bのパッド部341に接合されており、これらを導通している。
【0110】
一対の第2接続ワイヤ514は、図9および図10に示すように、その一方が検出層43Aと検出端子35Aとを接続し、その他方が検出層43Bと検出端子35Bとを接続する。一方の第2接続ワイヤ514は、一端が検出層43Aに接合され、他端が検出端子35Aのパッド部351に接合されており、これらを導通している。他方の第2接続ワイヤ514は、一端が検出層43Bに接合され、他端が検出端子35Bのパッド部351に接合されており、これらを導通している。
【0111】
複数の板状接続部材52の各々は、導電性を有しており、その構成材料は、たとえばAl、Au、Cuのいずれかである。各板状接続部材52は、板状の金属板が折り曲げられて形成されうる。複数の板状接続部材52は、図7図9および図10に示すように、複数の第1リード521および複数の第2リード522を含んでいる。複数の板状接続部材52の代わりに、上記線状接続部材51と同等のボンディングワイヤを用いてもよい。
【0112】
複数の第1リード521の各々は、図7図9および図10に示すように、スイッチング素子20Aと導電部材11Bとを接続する。各第1リード521は、一端がスイッチング素子20Aの第1電極211(ソース電極)に接合され、他端が導電部材11Bの表面に接合されている。
【0113】
複数の第2リード522の各々は、図7図9および図10に示すように、各スイッチング素子20Bと入力端子32とを接続する。各第2リード522は、一端が各スイッチング素子20Bの第1電極211(ソース電極)に接合され、他端が入力端子32のパッド部321の各延出部321bに接合されている。各第2リード522は、たとえばAgペーストやはんだによって接合されている。各第2リード522は、z方向に屈曲している。
【0114】
封止樹脂60は、図15および図16に示すように、絶縁基板10(ただし、裏面102を除く)、複数の導電部材11、複数のスイッチング素子20、複数の線状接続部材51および複数の板状接続部材52を覆っている。封止樹脂60の構成材料は、たとえばエポキシ樹脂である。封止樹脂60は、図6図8図9および図11図14に示すように、樹脂主面61、樹脂裏面62および複数の樹脂側面63を有している。
【0115】
樹脂主面61および樹脂裏面62は、z方向において、離間し、かつ、互いに反対側を向く。樹脂主面61は、z2方向を向き、樹脂裏面62は、z1方向を向く。樹脂裏面62は、図12に示すように、平面視において、絶縁基板10の裏面102を囲む枠状である。複数の樹脂側面63の各々は、樹脂主面61および樹脂裏面62の双方に繋がり、かつ、これらに挟まれている。複数の樹脂側面63には、x方向において離間する一対の樹脂側面631,632と、y方向において離間する一対の樹脂側面633,634がある。樹脂側面631は、x2方向を向き、樹脂側面632は、x1方向を向く。樹脂側面633は、y2方向を向き、樹脂側面634は、y1方向を向く。
【0116】
封止樹脂60は、図6図11および図12に示すように、各々が樹脂裏面62からz方向に窪んだ複数の凹部65を含んでいる。複数の凹部65の各々は、y方向に延びており、平面視において、樹脂裏面62のy1方向の端縁からy2方向の端縁まで繋がっている。複数の凹部65は、平面視において、x方向に絶縁基板10の裏面102を挟んで、それぞれ3つずつ形成されている。封止樹脂60に複数の凹部65が形成されていなくてもよい。
【0117】
複数の溶接部93の各々は、2つの金属部材を接合する部分であって、上記した接合構造体A1の各溶接部93と同じ構造(図1および図2参照)である。複数の溶接部93は、複数の出力端子接合部93A、複数の入力端子接合部93B、2つの側方端子接合部93C,93Dを含んでいる。
【0118】
複数の出力端子接合部93Aは、図9および図15に示すように、平面視において重なった出力端子33の一部と導電部材11Bの一部がレーザ溶接によって融接されたものである。複数の出力端子接合部93Aは、平面視において、出力端子33のパッド部331における各櫛歯部331aにそれぞれ1つずつ形成されている。各出力端子接合部93Aによって、第1金属部材91としての出力端子33と、第2金属部材92としての導電部材11Bとが接合されており、これらは接合構造体A1をなしている。
【0119】
複数の入力端子接合部93Bは、図9および図15に示すように、平面視において重なった入力端子31の一部と導電部材11Aの一部とがレーザ溶接によって融接されたものである。複数の入力端子接合部93Bは、平面視において、入力端子31のパッド部311における各櫛歯部311aにそれぞれ1つずつ形成されている。各入力端子接合部93Bによって、第1金属部材91としての入力端子31と、第2金属部材92としての導電部材11Aとが接合されており、これらは接合構造体A1をなしている。
【0120】
側方端子接合部93Cは、図9および図16に示すように、平面視において重なった側方端子37Aの一部と導電部材11Aの一部とがレーザ溶接によって融接されたものである。側方端子接合部93Cは、平面視において、側方端子37Aのパッド部371に形成されている。側方端子接合部93Cによって、第1金属部材91としての側方端子37Aと、第2金属部材92としての導電部材11Aとが接合されており、これらは接合構造体A1をなしている。
【0121】
側方端子接合部93Dは、図9および図16に示すように、平面視において重なった側方端子37Bの一部と導電部材11Bの一部とがレーザ溶接によって融接されたものである。側方端子接合部93Dは、平面視において、側方端子37Bのパッド部371に形成されている。側方端子接合部93Dによって、第1金属部材91としての側方端子37Bと、第2金属部材92としての導電部材11Bとが接合されており、これらは接合構造体A1をなしている。
【0122】
次に、第1実施形態にかかる接合構造体A1、接合方法および半導体装置B1の作用効果について説明する。
【0123】
接合構造体A1は、溶接部93を備えている。溶接部93は、第1金属部材91と第2金属部材92とが重なった領域において、第1金属部材91の一部および第2金属部材92の一部ずつが融接されたものである。溶接部93は、たとえばレーザ溶接によって形成されたものであり、第1金属部材91と第2金属部材92とを接合している。したがって、第1金属部材91と第2金属部材92とが擦れ合うことがない。これにより、第1金属部材91と第2金属部材92とにおける表面損傷を抑制することができる。
【0124】
本実施形態の接合方法では、レーザ光を第1軌道T1に沿って第1走査するとともに、第1軌道T1の基準位置P3を第2軌道T2に沿って第2走査している。レーザ溶接において、レーザ光の照射速度を速くしたり、および、レーザ光のビーム径を小さくしたりすることで、スパッタの発生を抑制することが知られている。しかしながら、レーザ光の照射速度の高速化やレーザ光のビーム径の縮小は、レーザ光によって生じる熱が第1金属部材91から第2金属部材92まで伝熱されない問題を引き起こす可能性がある。その結果、第2金属部材92が溶融せず、溶接部93が第1金属部材91および第2金属部材92にまたがって形成されない場合がある。これは、第1金属部材91と第2金属部材92とが接合されていないことを意味する。そこで、上記した第1走査および第2走査を行うことで、レーザ光の軌跡をたとえば図5に示すような軌跡にしている。これにより、レーザ光の照射速度を高速にし、かつレーザ光のビーム径を縮小しても、レーザ光による発熱を、第1金属部材91から第2金属部材92まで、十分に伝達させることができる。以上のことから、本実施形態の接合方法は、レーザ溶接時のスパッタの発生を抑制し、かつ、第1金属部材91と第2金属部材92とを接合することできる。
【0125】
本実施形態の接合方法では、第1軌道T1の半径R3と第2軌道T2の半径R4とを略同じである。たとえば、第1軌道T1の半径R3と第2軌道T2の半径R4とが異なると、レーザ光の軌跡(図5参照)において、平面視中央部分(第2軌道T2の基準位置P4付近)を通らなくなる。そのため、第1軌道T1の半径R3と第2軌道T2の半径R4とを略同じにすることで、図5に示すように、レーザ光の軌跡を平面視中央部分を通る軌跡にすることができる。
【0126】
半導体装置B1は、複数の溶接部93を備えている。すなわち、溶接部93が形成された金属部材間を、レーザ溶接によって接合している。したがって、当該金属部材間の擦れ合いが生じない。上記した超音波接合においては、接合する2つの金属部材間を擦り合わせるため、金属部材の摩耗により粉塵が発生する可能性がある。この粉塵が、半導体装置B1の製造過程に生じると、半導体装置B1の動作不良の原因となる。したがって、2つの金属部材間をレーザ溶接によって接合することで、半導体装置B1の動作不良を抑制することができる。また、レーザ溶接の場合、溶接時の発生する熱の拡散は局所的になる傾向がある。たとえば、出力端子33のパッド部331と導電部材11Bとをレーザ溶接により接合した際、このレーザ溶接によって発生した熱は、導電部材11B上に形成された導電性接合層29まで拡散しない。よって、導電性接合層29などへの熱の拡散が抑制される。したがって、半導体装置B1の製造過程において、導電性接合層29などが意図せず溶融することを抑制できるので、複数のスイッチング素子20の接合不良を抑制することができる。
【0127】
半導体装置B1は、複数の溶接部93が、上記接合方法によって形成されている。この接合方法は、上記するように、スパッタの発生を抑制させることができる。半導体装置B1の製造過程において、スパッタが発生すると、半導体装置B1の動作不良の原因となる可能性がある。よって、上記接合方法によって、複数の溶接部93を形成することで、半導体装置B1の動作不良を抑制することができる。
【0128】
半導体装置B1は、z方向において入力端子31の端子部312と入力端子32の端子部322との間に、絶縁部材39を備えている。これにより、端子部312と端子部322とを容易にラミネート配線とすることができる。
【0129】
第1実施形態にかかる接合構造体A1においては、図1に示すように、複数の線状痕932の各曲率半径がすべて場合を示したが、これに限定されない。たとえば、各線状痕932の曲率半径が同じでなくてもよい。図18は、このような変形例の一例を示している。図18に示す例においては、複数の線状痕932の一部において、外周縁931の周方向の所定の方向(図18の時計回り)に位置するほど、徐々に曲率半径が小さくなっている。複数の線状痕932の最小の曲率半径は、たとえば、クレータ部933の曲率半径と略同じである。なお、上記所定の方向は、第2軌道T2の移動方向と一致する。たとえば、第1金属部材91および第2金属部材92の融解しやすさ、レーザ光による発熱の拡散度合いなどにより、このような溶接痕が形成されうる。
【0130】
第1実施形態にかかる接合方法においては、第2走査において、第2軌道T2が平面視円形である場合を示したが、第2軌道T2は、これに限定されない。たとえば、基準位置P3を直線移動させてもよいし、曲線移動させてもよいし、平面視楕円形に移動させてもよいし、多角形状に移動させてもよい。ただし、この場合であっても、第1走査は、基準位置P3を基準に環状に移動させる。基準位置P3を楕円形に移動させる場合、本開示の環状方向は、楕円形の軌跡を描く方向となる。また、第2軌道T2は、ある1つの形状に沿って移動させるだけはなく、複数の形状に沿って移動させるようにしてもよい。図19は、たとえば、直線移動と、円形移動とを合わせた場合の一例を示している。図19に示す例においては、第1軌道T1の基準位置P3を、第2軌道T2の中心位置(基準位置P4に相当)から第2軌道T2に向かって、第2軌道T2の径方向に直線的に移動させる(第3軌道T3参照)。その後に、上記した例示と同様に第2軌道T2に沿って、基準位置P3を移動させている。照射するレーザ光は、基準位置P3を第3軌道T3に沿って移動させている間と、基準位置P3を第2軌道T2に沿って1周移動させている間とで、そのピークパワーを、同じになるように制御してもよいし、異なるように制御してもよい。このように複数の軌道を複合させて第2走査を行った場合、溶接部93は、図20に示すような構造となる。図20に示す溶接部93は、底部936の形状が、第1実施形態にかかる溶接部93の形状と異なっている。具体的には、底部936は、厚さ方向に直交する平面による断面が、円環状ではなく、円形となっている。このような図20に示す溶接部93の場合、接合強度が高くなるとともに、導通経路の拡大化による低抵抗化にも寄与する。
【0131】
次に、第2実施形態にかかる半導体装置について、図21図24を参照して、説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じあるいは類似の要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0132】
第2実施形態の半導体装置B2は、半導体装置B1と比較して、次の点で主に異なる。それは、バスバーC1をさらに備えている点と、複数の溶接部93が複数の供給端子接合部93Eおよび複数の供給端子接合部93Fをさらに含んでいる点とである。半導体装置B2は、半導体装置B1と、複数の供給端子接合部93Eおよび複数の供給端子接合部93Fを介して半導体装置B1に接続されたバスバーC1とを備えたものである。図21は、半導体装置B2を示す斜視図である。図22は、半導体装置B2を示す平面図である。図23は、半導体装置B2を示す底面図である。図24は、図22のXXIV-XXIV線に沿う断面図である。
【0133】
バスバーC1は、図21図24に示すように、2つの供給端子71,72、絶縁体73およびモールド樹脂74を備える。
【0134】
2つの供給端子71,72はそれぞれ、金属板である。当該金属板の構成材料は、たとえばCuまたはCu合金である。各供給端子71,72は、図21図24に示すように、x方向に延びる帯状である。供給端子72は、供給端子71に対してz方向の絶縁基板10の主面101が向く側に離間して配置されている。平面視において、供給端子72は、供給端子71に重なっている。図22図24に示す例示においては、供給端子71の形状と供給端子72の形状とは、同一である。各供給端子71,72のz方向寸法はそれぞれ、たとえば0.8mmであるが、これに限定されない。
【0135】
供給端子71は、図24に示すように、レーザ溶接によって入力端子31に接合されており、当該入力端子31に導通している。供給端子71は、モールド樹脂74から露出した先端部において、基部711と複数の延出部712を含んでいる。複数の延出部712は、基部711からx1方向に延びている。各延出部712は、平面視矩形状である。本実施形態においては、2つの延出部712を含んでいる。2つの延出部712は、y方向において隙間をあけて配置されている。これにより、供給端子71の上記先端部は、凹形である。なお、供給端子71の形状は、上記したものに限定されず、たとえば、モールド樹脂74から露出した部分が平面視矩形状であってもよい。
【0136】
供給端子72は、図24に示すように、レーザ溶接によって入力端子32に接合されており、当該入力端子32に導通している。供給端子72は、モールド樹脂74から露出した先端部において、基部721と複数の延出部722を含んでいる。複数の延出部722は、基部721からx1方向に延びている。各延出部722は、平面視矩形状である。本実施形態においては、2つの延出部722がある。2つの延出部722は、y方向において隙間をあけて配置されている。これにより、供給端子72の先端部は、凹形である。なお、供給端子72の形状は、上記したものに限定されず、たとえば、モールド樹脂74から露出した部分が平面視矩形状であってもよい。
【0137】
絶縁体73は、図24に示すように、z方向において、2つの供給端子71,72に挟まれている。絶縁体73は、電気絶縁性を有しており、その構成材料の一例としては、ガラスエポキシ樹脂などの合成樹脂である。供給端子71は、z2方向を向く面が絶縁体73に接している。供給端子72は、z1方向を向く面が絶縁体73に接している。供給端子71および供給端子72は、平面視において、互いに重なり、かつ、絶縁体73により互いに電気絶縁されたラミネート配線をなしている。
【0138】
モールド樹脂74は、図24に示すように、各供給端子71,72および絶縁体73の各々の一部ずつを覆っている。モールド樹脂74の構成材料は、エポキシ樹脂など、電気絶縁性を有する合成樹脂である。モールド樹脂74のx方向の両側から、各供給端子71,72および絶縁体73の各々の一部ずつが突出している。なお、バスバーC1は、モールド樹脂74を備えていなくてもよい。
【0139】
複数の供給端子接合部93Eは、図23および図24に示すように、平面視において重なった供給端子71の一部と入力端子31の一部とがレーザ溶接によって融接されたものである。各供給端子接合部93Eによって、第1金属部材91としての供給端子71と、第2金属部材92としての入力端子31とが接合されており、これらは接合構造体A1をなしている。図23に示す例示において、3つの供給端子接合部93Eがあるが、供給端子接合部93Eの数は、特に限定されない。各供給端子接合部93Eを備える接合構造体A1においては、第2金属部材92が、上記第1実施形態にかかる各接合構造体A1と比較して薄い。
【0140】
図23に示すように、複数の供給端子接合部93Eのうち、供給端子71の延出部712に形成されたものは、供給端子71の基部711に形成されたものよりも、平面視における半径(上記外周縁931の半径に相当)が大きい。これは、延出部712の幅(y方向寸法)が、基部711の幅(y方向寸法)よりも狭いために生じる。詳細には、延出部712の幅が基部711の幅よりも狭いため、レーザ溶接時に発生した熱が放熱されにくい。その結果、発生する溶融浴が大きくなるために、延出部712に形成される供給端子接合部93Eの径が大きくなる。このような傾向を考慮して、レーザ溶接の各種条件(たとえばレーザ光のピークパワー)を調整することで、各供給端子接合部93Eの平面視の半径をすべて略同じにしてもよい。
【0141】
複数の供給端子接合部93Fは、図21図22および図24に示すように、平面視において重なった供給端子72の一部と入力端子32の一部とがレーザ溶接によって融接されたものである。各供給端子接合部93Fによって、第1金属部材91としての供給端子72と、第2金属部材92としての入力端子32とが接合されており、これらは接合構造体A1をなしている。本実施形態においては、3つの供給端子接合部93Fがある。図22に示す例示において、供給端子接合部93Fの数は、特に限定されない。各供給端子接合部93Fを備える接合構造体A1においては、第2金属部材92が、上記第1実施形態にかかる各接合構造体A1と比較して薄い。
【0142】
図22に示すように、複数の供給端子接合部93Fのうち、供給端子72の延出部722に形成されたものは、供給端子72の基部721に形成されたものよりも、平面視における半径(上記外周縁931の半径に相当)が大きい。これは、延出部722の幅(y方向寸法)が、基部721(y方向寸法)の幅よりも狭いために生じる。詳細には、延出部722の幅が基部721の幅よりも狭いために、レーザ溶接時に発生した熱が放熱されにくい。その結果、発生する溶融浴が大きくなったために、延出部722に形成される供給端子接合部93Fの径が大きくなる。このような傾向を考慮して、レーザ溶接の各種条件(たとえばレーザ光のピークパワー)を調整することで、各供給端子接合部93Fの平面視の半径を略同じにしてもよい。
【0143】
半導体装置B2においては、供給端子71が正極であり、供給端子72が負極である。2つの供給端子71,供給端子72は、たとえば、図24に示すように、x2方向側において、直流電源DCに接続させる。これにより、バスバーC1を介して、2つの入力端子31,32との間に直流電源DCの電源電圧が印加される。
【0144】
次に、第2実施形態にかかる半導体装置B2の作用効果を説明する。
【0145】
半導体装置B2は、複数の溶接部93を備えている。すなわち、上記第1実施形態と同様に、溶接部93が形成された金属部材間を、レーザ溶接によって接合している。したがって、2つの金属部材が擦れ合うことがないため、粉塵の発生を抑制することができる。これにより、半導体装置B2の動作不良を抑制することができる。また、当該溶接部93は、上記接合方法によって形成されたものであるので、スパッタの発生を抑制することができる。これにより、半導体装置B2の動作不良を抑制することができる。
【0146】
半導体装置B2は、入力端子31および入力端子32を備えている。入力端子31は、端子部312を有する。入力端子32は、端子部322を有する。また、半導体装置B2は、バスバーC1を備えている。バスバーC1は、2つの供給端子71,72を備えている。入力端子32の端子部322は、z方向において入力端子31の端子部312に対して離間しており、かつ、平面視において入力端子31の端子部312に重なっている。供給端子72は、z方向において供給端子71に対して離間しており、かつ、平面視において供給端子71に重なっている。供給端子71と入力端子31の端子部312とは、複数の供給端子接合部93Eによって接合され、供給端子72と入力端子32の端子部322とは、複数の供給端子接合部93Fによって接合されている。これにより、端子部312および供給端子71と、端子部322および供給端子72とによって、連続したラミネート配線がなされている。よって、直流電源DCから半導体装置B2に供給される電力は、ラミネート配線を介する。そのため、半導体装置B2の内部で発生したインダクタンスを当該ラミネート配線によって、より安定した状態で低減することができる。したがって、半導体装置B2によれば、内部インダクタンスをより安定した状態で低減させることができる。
【0147】
半導体装置B2では、バスバーC1が、z方向において、2つの供給端子71,72との間に挟まれた絶縁体73を備えている。これにより、供給端子71と供給端子72とを、容易にラミネート配線とすることができる。
【0148】
半導体装置B2では、供給端子71と入力端子31とが、3つの供給端子接合部93Eによって接合されている。これらの3つの供給端子接合部93Eはそれぞれが、上記した接合方法によるレーザ溶接によって形成されている。供給端子接合部93Eの数を増やすことで、供給端子71と入力端子31との接合強度をさらに高めることも可能であるが、レーザ溶接の回数が増えるため、製造工程の手間が増加し、かつ、レーザ溶接によって発生する熱によって供給端子71に熱ひずみが生じる可能性がある。したがって、製造工程の手間の低減および熱ひずみによる影響を低減させるためには、3つの供給端子接合部93Eによって、供給端子71と入力端子31とを接合することが好ましい。なお、3つの供給端子接合部93Fによって供給端子72と入力端子32とが接合されているのも、このような理由による。
【0149】
半導体装置B2では、バスバーC1が供給端子71を備えている。供給端子71は、基部711と、各々が基部711から延び出た複数の延出部712とを含んでいる。供給端子71は、図23に示すように、入力端子31に接合する部分が2つに分かれている。これにより、上記するように、3つの供給端子接合部93Eによって接合する場合において、熱ひずみの影響をさらに低減させることができる。供給端子72は、図22に示すように、入力端子32に接合する部分が2つに分かれているのも、このような理由による。
【0150】
第2実施形態においては、図24に示すように、2つの供給端子71,72の間に直流電源DCを接続した場合を示したが、これに限定されない。たとえば、図25に示すように、さらにコンデンサCを接続してもよい。コンデンサCは、直流電源DCに対して並列に接続されている。コンデンサCは、セラミックコンデンサやフィルムコンデンサなどである。コンデンサCの静電容量は、半導体装置B2の周波数特性に応じて設定される。半導体装置B2の複数のスイッチング素子20の駆動により、2つの入力端子31,32には、インダクタンスの発生要因となる逆起電力が生じる。コンデンサCは、当該逆起電力を電荷として蓄える機能を果たす。したがって、図25に示す態様においては、半導体装置B2のインダクタンスをより効果的に低減することができる。なお、コンデンサCに蓄えられた電荷は、半導体装置B1に供給される直流電力の一部に活用される。あるいは、図26に示すように、さらにコンデンサCと抵抗器Rとの直列回路を接続してもよい。当該直列回路は、いわゆるRCスナバ回路であり、直流電源DCに並列に接続されている。抵抗器Rは、2つの入力端子31,32に生じた逆起電力の電圧を降下させることができる。したがって、図26に示す態様においては、上記した、半導体装置B2のインダクタンスの低減とともに、コンデンサCの過剰充電を防止することができる。
【0151】
図27は、第3実施形態にかかる半導体装置を示している。第3実施形態の半導体装置B3は、半導体装置B1と比較して、封止樹脂60の形状が異なっている。それ以外については、半導体装置B1と同じである。図27は、半導体装置B3を示す斜視図である。
【0152】
本実施形態の封止樹脂60は、平面視において、y方向の各端縁部分が、x方向に延び出ている。封止樹脂60のうち、x2方向に延び出た部分によって、2つの入力端子31,32および絶縁部材39の各々の一部が覆われている。また、封止樹脂60のうち、x1方向に延び出た部分によって、出力端子33の一部が覆われている。
【0153】
半導体装置B3は、半導体装置B1と比較して、封止樹脂60が、大きく、2つの入力端子31,32、出力端子33および絶縁部材39の一部ずつをさらに覆っている。これにより、半導体装置B3は、半導体装置B1よりも、2つの入力端子31,32、出力端子33および絶縁部材39を、劣化や折れ曲がりなどから、保護することができる。
【0154】
半導体装置B3においても、第2実施形態に示したバスバーC1が接続されていてもよい。
【0155】
上記した接合構造体A1においては、第1金属部材91および第2金属部材92の表面がCuである場合を示したが、これに限定されない。たとえば、第1金属部材91および第2金属部材92のいずれか一方あるいはその両方の表面が金属めっきで覆われていてもよい。当該金属めっきとしては、たとえば、SnやNi(ニッケル)などがある。以下に、第1金属部材91あるいは第2金属部材92のいずれか一方が金属めっきで覆われている場合について、説明する。なお、Cuの融点は1085℃であり、Snの融点は232℃であり、Niの融点は1453℃である。
【0156】
図28図32は、変形例における接合構造体(溶接部93)を説明するための図である。これらの図に示す各溶接部93は、上記第1走査のみを行う(上記第2走査を行わない)ことで形成されている。図28図32は、各接合構造体を示す断面模式図である。
【0157】
図28は、第1金属部材91の表面も第2金属部材92の表面もめっきされていない場合の一例である。図28は、接合構造体A1に対応しており、変形例にかかる例示(図29図32)との比較のために示している。図29は、第1金属部材91が金属めっきで覆われておらず、第2金属部材92がSnめっきで覆われている場合の一例である。図30は、第1金属部材91が金属めっきで覆われておらず、第2金属部材92がNiめっきで覆われている場合の一例である。図31は、第1金属部材91がSnめっきで覆われており、第2金属部材92が金属めっきで覆われていない場合の一例である。図32は、第1金属部材91がNiめっきで覆われており、第2金属部材92が金属めっきで覆われていない場合の一例である。
【0158】
図29および図31に示すように、第1金属部材91あるいは第2金属部材92がSnめっきで覆われている場合、第1金属部材91と第2金属部材92との界面付近において、溶接部93が側方に膨らんでいることが分かる。これは、Snの融点がCuの融点よりも低いため、レーザ光による発熱によって、Cuよりも先にSnが溶融するからである。また、溶接部93の組成の一部にCuSn合金が含まれている。
【0159】
一方、図30および図32に示すように、第1金属部材91あるいは第2金属部材92がNiめっきで覆われている場合、図29および図31に示すような第1金属部材91と第2金属部材92との界面付近における溶接部93の膨らみは生じていない。また、溶接部93の組成に、CuNi合金は含まれておらず、CuとNiとがそれぞれ共存している。
【0160】
以上に示した、第1金属部材91および第2金属部材92のいずれか一方あるいは両方に金属めっきされている場合(図29図32参照)であっても、金属めっきされていない場合(図28参照)と比べて、第1金属部材91と第2金属部材92との接合強度は、略同等である。また、各溶接部93における導電性も、略同等である。つまり、本開示の接合構造体において、第1金属部材91および第2金属部材92に、適宜金属めっきが施されていてもよい。
【0161】
本開示にかかる接合構造体、半導体装置および接合方法は、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の接合構造体および半導体装置の各部の具体的な構成、および、本開示の接合方法の各工程の具体的な処理は、種々に設計変更自在である。
図1
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