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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】高い破壊靭性を有するガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/087 20060101AFI20240606BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20240606BHJP
   C03C 3/093 20060101ALI20240606BHJP
   C03C 3/095 20060101ALI20240606BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
C03C3/087
C03C3/091
C03C3/093
C03C3/095
C03C21/00 101
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020552262
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 US2019024659
(87)【国際公開番号】W WO2019191480
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】62/649,958
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】2020914
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】グオ,シアオジュー
(72)【発明者】
【氏名】レッツィ,ピーター ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,ジエン
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05102833(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0197869(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0376186(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0305786(US,A1)
【文献】特開平11-302033(JP,A)
【文献】特表2007-527354(JP,A)
【文献】特開平08-151228(JP,A)
【文献】特開平01-234344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 - 23/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス物品であって、
前記ガラス物品は:
50モル%~69モル%のSiO
12.5モル%~25モル%のAl
0.5モル%~8モル%のB
0モル%超~4モル%のCaO;
0モル%超~17.5モル%のMgO;
0.5モル%~8モル%のNaO;
0モル%~2.5モル%のLa;及び
8モル%超~18モル%のLi
を含み、
(LiO+NaO+MgO)/Alは0.9~1.3未満であり、
Al+MgO+LiO+ZrO+La+Yは30モル%超かつ50モル%未満である、ガラス物品。
【請求項2】
0モル%~2モル%のTiO
0モル%~2.5モル%のZrO
0モル%~1モル%のSrO;及び
0モル%~2モル%のY
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のガラス物品。
【請求項3】
(LiO+NaO+MgO)/Alは0.9~1.0である、請求項1又は2に記載のガラス物品。
【請求項4】
前記ガラス物品は、Pを実質的に含まない、請求項1~3のいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項5】
前記ガラス物品は:
少なくとも0.75である、シェブロンショートバー法で測定されたK1C値;及び
少なくとも0.8である、ダブルトーション法で測定されたK1C
のうちの少なくとも一方を特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項6】
ガラス物品であって、
前記ガラス物品は:
50モル%~69モル%のSiO
12.5モル%~25モル%のAl
0.5モル%~8モル%のB
0モル%超~4モル%のCaO;
0モル%超~17.5モル%のMgO;
0.5モル%~8モル%のNaO;
0モル%~2.5モル%のLa;及び
8モル%超~18モル%のLi
を含む、前記ガラス物品の中心における組成物を含み、
(LiO+NaO+MgO)/Alは0.9~1.3未満であり;
Al+MgO+LiO+ZrO+La+Yは30モル%超かつ50モル%未満であり、
また前記ガラス物品は、前記ガラス物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力領域を備える、ガラス物品。
【請求項7】
前記ガラス物品は、少なくとも400MPaの圧縮応力を備える、請求項6に記載のガラス物品。
【請求項8】
前記圧縮深さは、前記ガラス物品の厚さの少なくとも20%である、請求項6又は7に記載のガラス物品。
【請求項9】
前記ガラス物品は、85MPa未満の最大中心張力を備える、請求項6~8のいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のガラス物品であって、
前記ガラス物品は:
少なくとも0.75である、シェブロンショートバー法で測定されたK1C値;及び
少なくとも0.8である、ダブルトーション法で測定されたK1C
のうちの少なくとも一方を特徴とする、ガラス物品。
【請求項11】
Al+MgO+LiO+ZrO+La+Y31モル%超かつ42モル%未満である、請求項10に記載のガラス物品。
【請求項12】
消費者向け電子製品であって、
前記消費者向け電子製品は:
前面、背面及び側面を有するハウジング;
少なくとも部分的に前記ハウジング内に設けられた電子部品であって、前記電子部品は、少なくとも1つのコントローラ、メモリ及びディスプレイを含み、前記ディスプレイは、前記ハウジングの前記前面に又は前記前面に隣接して設けられる、電子部品;並びに
前記ディスプレイを覆うように配置されたカバーガラス
を備え、
前記ハウジングの一部分又は前記カバーガラスの一部分のうちの少なくとも一方は、請求項1~11のうちのいずれか1項に記載のガラス物品を含む、消費者向け電子製品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年5月11日出願のオランダ特許出願第2020914号に対する優先権の利益を主張するものであり、上記特許出願は、2018年3月29日出願の米国仮特許出願第62/649,958号に対する優先権の利益を主張するものであり、これらの文献それぞれの内容は依拠され、参照によりその全体が本出願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本明細書は一般に、電子デバイス用のカバーガラスとしての使用に好適なガラス組成物に関する。より具体的には、本明細書は、電子デバイス用のカバーガラスへと成形できるリチウム含有アルミノシリケートガラスを対象とする。
【背景技術】
【0003】
スマートフォン、タブレット、ポータブルメディアプレイヤー、パーソナルコンピュータ及びカメラといったポータブルデバイスの可搬性により、これらのデバイスは、地面等の硬質表面への偶発的な落下を特に受けやすくなる。これらのデバイスは典型的にはカバーガラスを組み込んでおり、これは、硬質表面との衝突時に損傷し得る。これらのデバイスの多くにおいて、カバーガラスはディスプレイカバーとして機能し、またタッチ機能を組み込むことができ、これにより、カバーガラスが損傷すると、上記デバイスの使用にマイナスの影響がある。
【0004】
関連するポータブルデバイスが硬質表面上に落下した場合のカバーガラスの破損モードは、主に2つ存在する。これらのモードのうちの一方は曲げ破損であり、これはデバイスが、硬質表面との衝突に由来する動的荷重を受けた場合に、ガラスの屈曲によって引き起こされる。もう一方のモードは鋭利接触破損であり、これはガラス表面への損傷の導入によって引き起こされる。ガラスが、アスファルト、グラナイト等といった硬質粗面と衝突すると、ガラス表面に鋭利な押込みが発生し得る。これらの押込みがガラス表面の破損部位となり、そこから割れが成長して伝播し得る。
【0005】
ガラス表面に圧縮応力を誘発することを伴うイオン交換技法により、ガラスの曲げ破損に対する耐性を高めることができる。しかしながら、イオン交換済みガラスは依然として、鋭利接触に由来するガラス内の局所的押込みによって引き起こされる高い応力の集中により、動的な鋭利接触を受けやすい。
【0006】
ガラスメーカー及びハンドヘルドデバイス製造元は、鋭利接触破損に対するハンドヘルドデバイスの耐性を改善するために、継続的に努力してきた。解決策は、カバーガラス上のコーティングから、デバイスが硬質表面上に落下した場合にカバーガラスが硬質表面に直接衝突するのを防止するベゼルにまで及ぶ。しかしながら、審美的及び機能的要件の制約から、カバーガラスが硬質表面に衝突するのを完全に防止するのは極めて困難である。
【0007】
ポータブルデバイスを可能な限り薄くすることも望まれている。従って、強度に加えて、ポータブルデバイスのカバーガラスとして使用されることになるガラスを可能な限り薄くすることも望まれている。よって、カバーガラスの強度を向上させることに加えて、上記ガラスが、薄型ガラスシート等の薄型ガラス物品を作製できるプロセスによって成形できるような機械的特徴を有することも望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、イオン交換等によって強化でき、かつ薄型ガラス物品として成形できる機械的特性を有するガラスに対して、需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ある実施形態によると、ガラス物品が提供される。上記ガラス物品は:50モル%~69モル%のSiO;12.5モル%~25モル%のAl;0モル%~8モル%のB;0モル%超~4モル%のCaO;0モル%超~17.5モル%のMgO;0.5モル%~8モル%のNaO;0モル%~2.5モル%のLa;及び8モル%超~18モル%のLiOを含む。このガラス物品は、0.9~1.3未満の(LiO+NaO+MgO)/Al;及び23モル%超かつ50モル%未満のAl+MgO+LiO+ZrO+La+Yを特徴とする。
【0010】
ある実施形態によると、ガラス物品が提供される。上記ガラス物品の中心における組成物は:50モル%~69モル%のSiO;12.5モル%~25モル%のAl;0モル%~8モル%のB;0モル%超~4モル%のCaO;0モル%超~17.5モル%のMgO;0.5モル%~8モル%のNaO;0モル%~2.5モル%のLa;及び8モル%超~18モル%のLiOを含み、ここで、(LiO+NaO+MgO)/Alは0.9~1.3未満であり、Al+MgO+LiO+ZrO+La+Yは23モル%超かつ50モル%未満である。上記ガラス物品は、上記ガラス物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力領域を備える。
【0011】
ある実施形態によると、ガラス物品が提供される。このガラス物品は:SiO;Al;及びLiOを含む。上記ガラス物品は:少なくとも0.75である、シェブロンショートバー法(chevron short bar method)で測定されたK1C値;及び少なくとも0.8である、ダブルトーション法(double torsion method)で測定されたK1C値のうちの少なくとも1つを特徴とする。
【0012】
態様(1)として、ガラス物品が提供される。上記ガラス物品は:50モル%~69モル%のSiO;12.5モル%~25モル%のAl;0モル%~8モル%のB;0モル%超~4モル%のCaO;0モル%超~17.5モル%のMgO;0.5モル%~8モル%のNaO;0モル%~2.5モル%のLa;及び8モル%超~18モル%のLiOを含み、(LiO+NaO+MgO)/Alは0.9~1.3未満であり、Al+MgO+LiO+ZrO+La+Yは23モル%超かつ50モル%未満である。
【0013】
態様(2)として、上記ガラス物品が8モル%超~16モル%のLiOを含む、態様(1)に記載のガラス物品が提供される。
【0014】
態様(3)として、上記ガラス物品が0モル%~2モル%のTiOを含む、態様(1)又は(2)に記載のガラス物品が提供される。
【0015】
態様(4)として、上記ガラス物品が0モル%~2.5モル%のZrOを含む、態様(1)~(3)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0016】
態様(5)として、上記ガラス物品が0モル%~1モル%のSrOを含む、態様(1)~(4)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0017】
態様(6)として、上記ガラス物品が0モル%~2モル%のYを含む、態様(1)~(5)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0018】
態様(7)として、上記ガラス物品がKOを更に含む、態様(1)~(6)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0019】
態様(8)として、(LiO+NaO+MgO)/Alが0.9~1.0である、態様(1)~(7)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0020】
態様(9)として、Al+MgO+LiO+ZrO+La+Yが25モル%~46モル%である、態様(1)~(8)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0021】
態様(10)として、上記ガラス物品が0.5モル%超~17.5モル%のMgOを含む、態様(1)~(9)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0022】
態様(11)として、上記ガラス物品が0モル%超~12モル%のMgOを含む、態様(1)~(10)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0023】
態様(12)として、上記ガラス物品が14モル%~24モル%のAlを含む、態様(1)~(11)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0024】
態様(13)として、上記ガラス物品がPを実質的に含まない、態様(1)~(12)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0025】
態様(14)として、上記ガラス物品が0.5モル%~8モル%のBを含む、態様(1)~(13)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0026】
態様(15)として、上記ガラスがフュージョン成形可能である、態様(1)~(14)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0027】
態様(16)として、上記ガラス物品が:少なくとも0.75である、シェブロンショートバー法で測定されたK1C値;及び少なくとも0.8である、ダブルトーション法で測定されたK1C値のうちの少なくとも一方を特徴とする、態様(1)~(15)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0028】
態様(17)として、5.631+0.148・Al+0.142・B-0.062・CaO-0.188・KO+0.030・MgO-0.099・NaO-0.043・LiO-0.188・P+0.020・ZnO-0.062・SrO+0.200・ZrO≧6.5であり、ここで各成分の上記値はモル%を単位とする、態様(1)~(16)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0029】
態様(18)として、ガラス物品が提供される。上記ガラス物品は:50モル%~69モル%のSiO;12.5モル%~25モル%のAl;0モル%~8モル%のB;0モル%超~4モル%のCaO;0モル%超~17.5モル%のMgO;0.5モル%~8モル%のNaO;0モル%~2.5モル%のLa;及び8モル%超~18モル%のLiOを含む、上記ガラス物品の中心における組成物を含み、ここで(LiO+NaO+MgO)/Alは0.9~1.3未満であり;Al+MgO+LiO+ZrO+La+Yは23モル%超かつ50モル%未満であり、また上記ガラス物品は、上記ガラス物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力領域を備える。
【0030】
態様(19)として、上記ガラス物品が少なくとも400MPaの圧縮応力を備える、態様(18)に記載のガラス物品が提供される。
【0031】
態様(20)として、上記圧縮深さが、上記ガラス物品の厚さの少なくとも20%である、態様(18)又は(19)に記載のガラス物品が提供される。
【0032】
態様(21)として、上記ガラス物品が85MPa未満の最大中心張力を備える、態様(18)~(20)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0033】
態様(22)として、ガラス物品が提供される。上記ガラス物品は:SiO;Al;及びLiOを含み、このガラス物品は:少なくとも0.75である、シェブロンショートバー法で測定されたK1C値;及び少なくとも0.8である、ダブルトーション法で測定されたK1C値のうちの少なくとも一方を特徴とする。
【0034】
態様(23)として、MgOを更に含む、態様(22)に記載のガラス物品が提供される。
【0035】
態様(24)として、CaOを更に含む、態様(22)又は(23)に記載のガラス物品が提供される。
【0036】
態様(25)として、TiOを更に含む、態様(22)~(24)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0037】
態様(26)として、ZrOを更に含む、態様(22)~(25)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0038】
態様(27)として、SrOを更に含む、態様(22)~(26)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0039】
態様(28)として、Yを更に含む、態様(22)~(27)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0040】
態様(29)として、KOを更に含む、態様(22)~(28)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0041】
態様(30)として、NaOを更に含む、態様(22)~(29)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0042】
態様(31)として、(LiO+NaO+MgO)/Alが0.9~1.3未満である、態様(22)~(30)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0043】
態様(32)として、Al+MgO+LiO+ZrO+La+Yが23モル%超かつ50モル%未満である、態様(22)~(31)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0044】
態様(33)として、Bを更に含む、態様(22)~(32)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0045】
態様(34)として、上記ガラスがフュージョン成形可能である、態様(22)~(33)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0046】
態様(35)として、5.631+0.148・Al+0.142・B-0.062・CaO-0.188・KO+0.030・MgO-0.099・NaO-0.043・LiO-0.188・P+0.020・ZnO-0.062・SrO+0.200・ZrO≧6.5であり、ここで各成分の上記値はモル%を単位とする、態様(22)~(33)のいずれか1つに記載のガラス物品が提供される。
【0047】
態様(36)として、消費者向け電子製品が提供される。上記消費者向け電子製品は:前面、背面及び側面を有するハウジング;少なくとも部分的に上記ハウジング内に設けられた電子部品であって、上記電子部品は、少なくとも1つのコントローラ、メモリ及びディスプレイを含み、上記ディスプレイは、上記ハウジングの上記前面に又は上記前面に隣接して設けられる、電子部品;並びに上記ディスプレイを覆うように配置されたカバーガラスを備え、上記ハウジングの一部分又は上記カバーガラスの一部分のうちの少なくとも一方は、上述の態様(1)~(35)のうちのいずれの1つに記載のガラス物品を含む。
【0048】
追加の特徴及び利点を、以下の「発明を実施するための形態」に記載するが、その一部は、「発明を実施するための形態」から、又は以下の「発明を実施するための形態」、特許請求の範囲及び添付の図面を含む本出願に記載の実施形態を実践することによって、当業者には容易に明らかになるだろう。
【0049】
上述の「発明の概要」及び以下の「発明を実施するための形態」の両方は、様々な実施形態を説明するものであり、請求対象の主題の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は、これらの様々な実施形態の更なる理解を提供するために含まれており、また本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する。これらの図面は、本明細書に記載の上記様々な実施形態を図示し、本記載と併せて、請求対象の主題の原理及び動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本明細書中で開示及び説明される実施形態による、表面上に圧縮応力層を有するガラスの概略断面図
図2A】本明細書で開示されるガラス物品のうちのいずれを組み込んだ例示的な電子デバイスの平面図
図2B図2Bの例示的な電子デバイスの斜視図
図3】ある実施形態によるガラス物品に関するイオン交換時間の関数としての圧縮応力及び圧縮深さのプロット
図4】ある実施形態によるガラス物品に関するイオン交換時間の関数としての中心張力及び重量増加のプロット
図5】実施形態によるイオン交換済みガラス物品の表面の下方の深さの関数としての応力のプロット
図6】実施形態によるイオン交換済みガラス物品の表面の下方の深さの関数としての応力のプロット
図7図6の一部分の詳細図
【発明を実施するための形態】
【0051】
これより、様々な実施形態によるアルカリアルミノシリケートガラスについて詳細に説明する。アルカリアルミノシリケートガラスは良好なイオン交換性を有し、またアルカリアルミノシリケートガラスにおいて高い強度及び高い靭性特性を達成するために、化学強化プロセスが使用されてきた。ナトリウムアルミノシリケートガラスは、高いガラス成形性及び品質を有する、イオン交換性が高いガラスである。リチウムアルミノシリケートガラスは、高いガラス品質を有する、イオン交換性が高いガラスである。シリケートガラスネットワーク中へのAlの置換により、イオン交換中の1価カチオンの相互拡散性が上昇する。溶融塩浴(例えばKNO又はNaNO)中での化学強化により、高い強度、高い靭性、及び高い押込み割れ耐性を有するガラスを達成できる。化学強化によって達成される応力プロファイルは、ガラス物品の落下性能、強度、靭性、及び他の属性を向上させる様々な形状を有してよい。
【0052】
従って、良好な物理的特性、化学的耐久性及びイオン交換性を有するアルカリアルミノシリケートガラスは、カバーガラスとして注目を集めてきた。特に比較的高い破壊靭性及び迅速なイオン交換性を有する、リチウム含有アルミノシリケートガラスが、本明細書中で提供される。異なる複数のイオン交換プロセスを通して、比較的高い中心張力(CT)、圧縮深さ(DOC)及び高い圧縮応力(CS)を達成できる。しかしながら、アルカリアルミノシリケートガラスにリチウムを添加すると、ガラスの融点、軟化点、又は液相粘度が低下し得る。
【0053】
例えばガラスシート等のガラス物品を形成するためのドロー加工プロセスが望ましい。というのは、これらのドロー加工プロセスにより、欠陥が少ない薄型のガラス物品を形成できるためである。これまで、例えばフュージョンドロー加工又はスロットドロー加工といったドロー加工プロセスでの形成のためには、ガラス組成物が1000kP超、1100kP超、又は1200kP超等の比較的高い液相粘度を有することが求められていると考えられていた。しかしながら、ドロー加工プロセスの進歩により、ドロー加工プロセスにおいて、液相粘度が比較的低いガラスの使用を可能とすることができる。
【0054】
本明細書に記載のガラス組成物の実施形態では、構成成分(例えばSiO、Al、LiO等)の濃度は、特段の記載がない限り酸化物ベースのモルパーセント(モル%)で与えられる。実施形態によるアルカリアルミノシリケートガラス組成物の成分について、以下において個別に議論する。ある成分について様々に記載される範囲のいずれを、他のいずれの成分に関して様々に記載される範囲のいずれと、独立して組み合わせることができることを理解されたい。本明細書中で使用される場合、数値の末尾の0は、その数値の有効数字を表すことを目的としている。例えば数値「1.0」は2桁の有効数字を含み、数値「1.00」は3桁の有効数字を含む。
【0055】
本明細書で開示されるのは、リチウムアルミノシリケートガラス組成物であって、上記組成物を有するガラス物品の効率的な製造を可能とする程度の製造可能性を呈しながらも高い破壊靭性(K1C)を呈する、リチウムアルミノシリケートガラス組成物である。いくつかの実施形態では、上記リチウムアルミノシリケートガラス組成物は:少なくとも0.75である、シェブロンショートバー法で測定されたK1C破壊靭性値;及び少なくとも0.8である、ダブルトーション法で測定されたK1C破壊靭性値のうちの少なくとも一方を特徴とする。いずれの特定の理論によって束縛されることを望むものではないが、本明細書に記載のリチウムアルミノシリケートガラスの高い破壊靭性は、少なくとも部分的には、ガラス組成物が含有する高電場強度成分の濃度によるものである。
【0056】
本明細書で開示されるアルカリアルミノシリケートガラス組成物の実施形態では、SiOは最大の構成要素であり、従ってSiOは、ガラス組成物から形成されるガラスネットワークの主要な構成要素である。純SiOは比較的低いCTEを有し、アルカリ非含有である。しかしながら、純SiOは高い融点を有する。従って、ガラス組成物中のSiOの濃度が高すぎると、SiOの比較的高い濃度によってガラスを溶融させる困難さが上昇し、これがガラスの成形性に悪影響を及ぼすため、ガラス組成物の成形性が低減され得る。実施形態では、ガラス組成物は一般に、50.0モル%以上69.0モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の量のSiOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、51.0モル%以上、例えば52.0モル%以上、53.0モル%以上、54.0モル%以上、55.0モル%以上、56.0モル%以上、57.0モル%以上、58.0モル%以上、59.0モル%以上、60.0モル%以上、61.0モル%以上、62.0モル%以上、63.0モル%以上、64.0モル%以上、65.0モル%以上、66.0モル%以上、67.0モル%以上、又は68.0モル%以上の量のSiOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、68.0モル%以下、例えば67.0モル%以下、66.0モル%以下、65.0モル%以下、64.0モル%以下、63.0モル%以下、62.0モル%以下、61.0モル%以下、60.0モル%以下、59.0モル%以下、58.0モル%以下、57.0モル%以下、56.0モル%以下、55.0モル%以下、54.0モル%以下、53.0モル%以下、52.0モル%以下、又は51.0モル%以下の量のSiOを含む。実施形態では、以上の範囲のうちのいずれを他のいずれの範囲と組み合わせてよいことを理解されたい。しかしながら、他の実施形態では、ガラス組成物は、51.0モル%以上68.0モル%以下、例えば52.0モル%以上67.0モル%以下、53.0モル%以上66.0モル%以下、54.0モル%以上65.0モル%以下、55.0モル%以上64.0モル%以下、56.0モル%以上63.0モル%以下、57.0モル%以上62.0モル%以下、58.0モル%以上61.0モル%以下、60.0モル%以上61.0モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の量のSiOを含む。
【0057】
実施形態のガラス組成物は更に、Alを含んでよい。AlはSiOと同様に、ガラスネットワーク形成剤として作用し得る。Alは、ガラス組成物から形成されたガラス溶融物中での四面体配位によって、ガラス組成物の粘度を上昇させることができ、Alの量が多すぎる場合にはガラス組成物の成形性が低下する。しかしながら、Alの濃度の、ガラス組成物中のSiOの濃度及びアルカリ酸化物の濃度に対するバランスを取ると、Alはガラス溶融物の液相線温度を低下させることができ、それによって液相粘度を増大させて、フュージョン成形プロセス等の特定の成形プロセスに対するガラス組成物の適合性を改善できる。実施形態では、ガラス組成物は一般に、12.5モル%以上25.0モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の濃度のAlを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、13.0モル%以上、例えば13.5モル%以上、14.0モル%以上、14.5モル%以上、15.0モル%以上、15.5モル%以上、16.0モル%以上、16.5モル%以上、17.0モル%以上、17.5モル%以上、18.0モル%以上、18.5モル%以上、19.0モル%以上、19.5モル%以上、20.0モル%以上、20.5モル%以上、21.0モル%以上、21.5モル%以上、22.0モル%以上、22.5モル%以上、23.0モル%以上、23.5モル%以上、24.0モル%以上、又は24.5モル%以上の量のAlを含む。実施形態では、ガラス組成物は、24.5モル%以下、例えば24.0モル%以下、23.5モル%以下、23.0モル%以下、22.5モル%以下、22.0モル%以下、21.5モル%以下、21.0モル%以下、20.5モル%以下、20.0モル%以下、19.5モル%以下、19.0モル%以下、18.5モル%以下、18.0モル%以下、17.5モル%以下、17.0モル%以下、16.5モル%以下、16.0モル%以下、15.5モル%以下、15.0モル%以下、14.5モル%以下、14.0モル%以下、13.5モル%以下、又は13.0モル%以下の量のAlを含む。実施形態では、以上の範囲のうちのいずれを他のいずれの範囲と組み合わせてよいことを理解されたい。しかしながら、他の実施形態では、ガラス組成物は、13.0モル%以上24.5モル%以下、例えば13.5モル%以上24.0モル%以下、14.0モル%以上23.5モル%以下、14.5モル%以上23.0モル%以下、15.0モル%以上22.5モル%以下、15.5モル%以上22.0モル%以下、16.0モル%以上21.5モル%以下、16.5モル%以上21.0モル%以下、17.0モル%以上20.5モル%以下、17.5モル%以上20.0モル%以下、18.0モル%以上19.5モル%以下、又は18.5モル%以上19.0モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の量のAlを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、14.0モル%以上24.0モル%以下の量のAlを含む。
【0058】
SiO及びAlと同様に、Bをネットワーク形成剤としてガラス組成物に添加することによって、ガラス組成物の溶融性及び成形性が低減され得る。よってBは、これらの特性を過剰に低減させない程度に添加してよい。実施形態では、ガラス組成物は、0モル%以上8.0モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の量のBを含んでよい。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、0.5モル%以上、例えば1.0モル%以上、1.5モル%以上、2.0モル%以上、2.5モル%以上、3.0モル%以上、3.5モル%以上、4.0モル%以上、4.5モル%以上、5.0モル%以上、5.5モル%以上、6.0モル%以上、6.5モル%以上、7.0モル%以上、又は7.5モル%以上の量のBを含んでよい。実施形態では、ガラス組成物は、7.5モル%以下、例えば7.0モル%以下、6.5モル%以下、6.0モル%以下、5.5モル%以下、5.0モル%以下、4.5モル%以下、4.0モル%以下、3.5モル%以下、3.0モル%以下、2.5モル%以下、2.0モル%以下、1.5モル%以下、1.0モル%以下、又は0.5モル%以下のBを含んでよい。実施形態では、以上の範囲のうちのいずれを他のいずれの範囲と組み合わせてよいことを理解されたい。しかしながら、また更なる実施形態では、ガラス組成物は、0.5モル%以上7.5モル%以下、例えば1.0モル%以上7.0モル%以下、1.5モル%以上6.5モル%以下、2.0モル%以上6.0モル%以下、2.5モル%以上5.5モル%以下、3.0モル%以上5.0モル%以下、3.5モル%以上4.5モル%以下、又は5.0モル%以上7.0モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の量のBを含む。
【0059】
ガラス組成物中にLiOを含めることにより、イオン交換プロセスをより良好に制御でき、またガラスの軟化点が更に低下するため、ガラスの製造可能性が向上する。実施形態では、ガラス組成物は一般に、8.0モル%超かつ18.0モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の量のLiOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、8.5モル%以上、例えば8.0モル%以上、8.5モル%以上、9.0モル%以上、9.5モル%以上、10.0モル%以上、10.5モル%以上、11.0モル%以上、11.5モル%以上、12.0モル%以上、12.5モル%以上、13.0モル%以上、13.5モル%以上、14.0モル%以上、14.5モル%以上、15.0モル%以上、15.5モル%以上、16.0モル%以上、16.5モル%以上、17.0モル%以上、又は17.5モル%以上の量のLiOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、17.5モル%以下、例えば17.0モル%以下、16.5モル%以下、16.0モル%以下、15.5モル%以下、15.0モル%以下、14.5モル%以下、14.0モル%以下、13.5モル%以下、13.0モル%以下、12.5モル%以下、12.0モル%以下、11.5モル%以下、11.0モル%以下、10.5モル%以下、10.0モル%以下、9.5モル%以下、9.0モル%以下、又は8.5モル%以下の量のLiOを含む。実施形態では、以上の範囲のうちのいずれを他のいずれの範囲と組み合わせてよいことを理解されたい。しかしながら、また更に他の実施形態では、ガラス組成物は、8.5モル%以上17.5モル%以下、例えば9.0モル%以上17.0モル%以下、9.5モル%以上16.5モル%以下、10.0モル%以上16.0モル%以下、10.5モル%以上15.5モル%以下、11.0モル%以上15.0モル%以下、11.5モル%以上14.5モル%以下、12.0モル%以上14.0モル%以下、又は12.5モル%以上13.5モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の量のLiOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、8.0モル%超かつ16.0モル%以下の量のLiOを含む。
【0060】
実施形態によると、ガラス組成物は、LiO以外のアルカリ金属酸化物、例えばNaOも含んでよい。NaOはガラス組成物のイオン交換性を支援し、ガラス組成物の成形性を改善することにより、製造可能性を改善する。しかしながら、あまりに多量のNaOをガラス組成物に添加すると、CTEが低くなりすぎる場合があり、また融点が高くなりすぎる場合がある。実施形態では、ガラス組成物は一般に、0.5モル%以上8.0モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の量のNaOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、1.0モル%以上、例えば1.5モル%以上、2.0モル%以上、2.5モル%以上、3.0モル%以上、3.5モル%以上、4.0モル%以上、4.5モル%以上、5.0モル%以上、5.5モル%以上、6.0モル%以上、6.5モル%以上、7.0モル%以上、又は7.5モル%以上の量のNaOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、7.5モル%以下、例えば7.0モル%以下、6.5モル%以下、6.0モル%以下、5.5モル%以下、5.0モル%以下、4.5モル%以下、4.0モル%以下、3.5モル%以下、3.0モル%以下、2.5モル%以下、2.0モル%以下、1.5モル%以下、又は1.0モル%以下の量のNaOを含む。実施形態では、以上の範囲のうちのいずれを他のいずれの範囲と組み合わせてよいことを理解されたい。しかしながら、また更に他の実施形態では、ガラス組成物は、1.0モル%以上7.5モル%以下、例えば1.5モル%以上7.0モル%以下、2.0モル%以上6.5モル%以下、2.5モル%以上6.0モル%以下、3.0モル%以上5.5モル%以下、3.5モル%以上5.0モル%以下、又は4.0モル%以上4.5モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の量のNaOを含む。
【0061】
NaOと同様に、KOもまたイオン交換を促進し、圧縮応力層のDOCを増大させる。しかしながら、KOを添加するとCTEが低くなりすぎる場合があり、また融点が高くなりすぎる場合がある。いくつかの実施形態では、ガラス組成物はKOを含むことができる。実施形態では、ガラス組成物はカリウムを実質的に含まない。本明細書中で使用される場合、「実質的に含まない(substantially free)」は、ある成分が、最終的なガラス中に汚染物質として0.01モル%未満等のごく少量だけ存在し得るものの、バッチ材料の成分としては添加されないことを意味する。他の実施形態では、KOはガラス組成物中に、1モル%未満の量で存在し得る。
【0062】
MgOはガラスの粘度を低下させ、これはガラスの成形性及び製造可能性を向上させる。また、ガラス組成物にMgOを含めることによって、ガラス組成物の歪み点及びヤング率が改善され、またガラスのイオン交換性も改善され得る。しかしながら、あまりに多量のMgOをガラス組成物に添加すると、望ましくないことに、ガラス組成物の密度及びCTEが上昇する。実施形態では、ガラス組成物は一般に、0モル%超かつ17.5モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の濃度のMgOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、0.5モル%以上、例えば1.0モル%以上、1.5モル%以上、2.0モル%以上、2.5モル%以上、3.0モル%以上、3.5モル%以上、4.0モル%以上、4.5モル%以上、5.0モル%以上、5.5モル%以上、6.0モル%以上、6.5モル%以上、7.0モル%以上、7.5モル%以上、8.0モル%以上、8.5モル%以上、9.0モル%以上、9.5モル%以上、10.0モル%以上、10.5モル%以上、11.0モル%以上、11.5モル%以上、12.0モル%以上、12.5モル%以上、13.0モル%以上、13.5モル%以上、14.0モル%以上、14.5モル%以上、15.0モル%以上、15.5モル%以上、16.0モル%以上、16.5モル%以上、又は17.0モル%以上の量のMgOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、17.0モル%以下、例えば16.5モル%以下、16.0モル%以下、15.5モル%以下、15.0モル%以下、14.5モル%以下、14.0モル%以下、13.5モル%以下、13.0モル%以下、12.5モル%以下、12.0モル%以下、11.5モル%以下、11.0モル%以下、10.5モル%以下、10.0モル%以下、9.5モル%以下、9.0モル%以下、8.5モル%以下、8.0モル%以下、7.5モル%以下、7.0モル%以下、6.5モル%以下、6.0モル%以下、5.5モル%以下、5.0モル%以下、4.5モル%以下、4.0モル%以下、3.5モル%以下、3.0モル%以下、2.5モル%以下、2.0モル%以下、1.5モル%以下、1.0モル%以下、又は0.5モル%以下の量のMgOを含む。実施形態では、以上の範囲のうちのいずれを他のいずれの範囲と組み合わせてよいことを理解されたい。しかしながら、他の実施形態では、ガラス組成物は、0.5モル%以上17.0モル%以下、例えば1.0モル%以上16.5モル%以下、1.5モル%以上16.0モル%以下、2.0モル%以上15.5モル%以下、2.5モル%以上15.0モル%以下、3.0モル%以上14.5モル%以下、3.5モル%以上14.0モル%以下、4.0モル%以上13.5モル%以下、4.5モル%以上13.0モル%以下、5.0モル%以上12.5モル%以下、5.5モル%以上12.0モル%以下、6.0モル%以上11.5モル%以下、6.5モル%以上11.0モル%以下、7.0モル%以上10.5モル%以下、7.5モル%以上10.0モル%以下、8.0モル%以上9.5モル%以下、又は8.5モル%以上9.0モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の量のMgOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、0.5モル%超かつ17.5モル%以下、又は0モル%超かつ12.0モル%以下の量のMgOを含む。
【0063】
CaOはガラスの粘度を低下させ、これは成形性、歪み点及びヤング率を向上させ、またイオン交換性を改善し得る。しかしながら、あまりに多量のCaOをガラス組成物に添加すると、ガラス組成物の密度及びCTEが上昇する。実施形態では、ガラス組成物は一般に、0モル%超かつ4.0モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の濃度のCaOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、0.5モル%以上、例えば1.0モル%以上、1.5モル%以上、2.0モル%以上、2.5モル%以上、3.0モル%以上、又は3.5モル%以上の量のCaOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、3.5モル%以下、例えば3.0モル%以下、2.5モル%以下、2.0モル%以下、1.5モル%以下、1.0モル%以下、又は0.5モル%以下の量のCaOを含む。実施形態では、以上の範囲のうちのいずれを他のいずれの範囲と組み合わせてよいことを理解されたい。しかしながら、他の実施形態では、ガラス組成物は、0.5モル%以上3.5モル%以下、例えば1.0モル%以上3.0モル%以下、又は1.5モル%以上2.5モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の量のCaOを含む。
【0064】
Laはガラスの靭性を向上させ、またガラスのヤング率及び硬度を向上させる。しかしながら、あまりに多量のLaをガラス組成物に添加すると、ガラスは失透しやすくなり、ガラスの製造可能性が低下する。実施形態では、ガラス組成物は一般に、0モル%以上2.5モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の濃度のLaを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、0.5モル%以上、例えば1.0モル%以上、1.5モル%以上、又は2.0モル%以上の量のLaを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、2.0モル%以下、例えば1.5モル%以下、1.0モル%以下、又は0.5モル%以下の量のLaを含む。実施形態では、以上の範囲のうちのいずれを他のいずれの範囲と組み合わせてよいことを理解されたい。しかしながら、他の実施形態では、ガラス組成物は、0.5モル%以上2.0モル%以下、例えば1.0モル%以上1.5モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の量のLaを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物はLaを含まないか、又は実質的に含まない。
【0065】
もまたガラスの靭性を向上させ、ガラスのヤング率及び硬度を向上させる。しかしながら、あまりに多量のYをガラス組成物に添加すると、ガラスは失透しやすくなり、ガラスの製造可能性が低下する。実施形態では、ガラス組成物は、0モル%以上2.0モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の濃度のYを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、0.5モル%以上、例えば1.0モル%以上、又は1.5モル%以上の量のYを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、1.5モル%以下、例えば1.0モル%以下、又は0.5モル%以下の量のYを含む。実施形態では、以上の範囲のうちのいずれを他のいずれの範囲と組み合わせてよいことを理解されたい。しかしながら、他の実施形態では、ガラス組成物は、0.5モル%以上1.5モル%以下の量のYを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物はYを含まないか、又は実質的に含まない。
【0066】
TiOもまた、ガラスの靭性の向上に寄与し、同時にガラスを軟化させる。しかしながら、あまりに多量のTiOをガラス組成物に添加すると、ガラスは失透しやすくなり、望ましくない着色を呈する。実施形態では、ガラス組成物は、0モル%以上2.0モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の濃度のTiOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、0.5モル%以上、例えば1.0モル%以上、又は1.5モル%以上の量のTiOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、1.5モル%以下、例えば1.0モル%以下、又は0.5モル%以下の量のTiOを含む。実施形態では、以上の範囲のうちのいずれを他のいずれの範囲と組み合わせてよいことを理解されたい。しかしながら、他の実施形態では、ガラス組成物は、0.5モル%以上1.5モル%以下の量のTiOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物はTiOを含まないか、又は実質的に含まない。
【0067】
ZrOはガラスの靭性に寄与する。しかしながら、あまりに多量のZrOをガラス組成物に添加すると、ガラス中でのZrOの可溶性が低いことを少なくとも部分的な理由として、望ましくないジルコニア包有物がガラス内に形成される場合がある。実施形態では、ガラス組成物は、0モル%以上2.5モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の濃度のZrOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、0.5モル%以上、例えば1.0モル%以上、1.5モル%以上、又は2.0モル%以上の量のZrOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、2.0モル%以下、例えば1.5モル%以下、1.0モル%以下、又は0.5モル%の量のZrOを含む。実施形態では、以上の範囲のうちのいずれを他のいずれの範囲と組み合わせてよいことを理解されたい。しかしながら、他の実施形態では、ガラス組成物は、0.5モル%以上2.0モル%以下、例えば1.0モル%以上1.5モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の量のZrOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物はZrOを含まないか、又は実質的に含まない。
【0068】
SrOは、本明細書で開示されるガラス組成物の液相線温度を低下させる。実施形態では、ガラス組成物は、0モル%以上1.0モル%以下、例えば0.2モル%以上0.8モル%以下、又は0.4モル%以上0.6モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の量のSrOを含んでよい。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、0.2モル%以上、例えば0.4モル%以上、0.6モル%以上、又は0.8モル%以上の量のSrOを含んでよい。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、0.8モル%以下、例えば0.6モル%以下、0.4モル%以下、又は0.2モル%以下の量のSrOを含んでよい。いくつかの実施形態では、ガラス組成物はSrOを含まないか、又は実質的に含まなくてよい。実施形態では、以上の範囲のうちのいずれを他のいずれの範囲と組み合わせてよいことを理解されたい。
【0069】
実施形態では、ガラス組成物は、Pを含まないか、又は実質的に含まなくてよい。ガラス組成物にPを含めると、望ましくないことに、ガラス組成物の溶融性及び成形性が低下する場合があり、これによってガラス組成物の製造可能性が損なわれる。イオン交換による強化を意図したガラス組成物はPを含んでよく、これにより、所望の圧縮応力又は圧縮深さを生成するために必要なイオン交換処理時間を削減すること等によって、イオン交換処理の速度を向上させる。本明細書に記載のガラス組成物にPを含めることは、所望のイオン交換性能を達成するために必須ではない。そのため、Pをガラス組成物から排除することにより、ガラス組成物の製造可能性にマイナスの影響を与えるのと回避しながら、所望のイオン交換パフォーマンスを維持できる。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、0モル%以上5モル%以下の量のPを含んでよい。
【0070】
実施形態では、ガラス組成物は任意に、1つ以上の清澄剤を含んでよい。いくつかの実施形態では、上記清澄剤は例えばSnOを含んでよい。このような実施形態では、SnOはガラス組成物中に、0.2モル%以下、例えば0モル%以上0.1モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の量で存在してよい。他の実施形態では、SnOはガラス組成物中に、0モル%以上0.2モル%以下、又は0.1モル%以上0.2モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の量で存在してよい。いくつかの実施形態では、ガラス組成物はSnOを含まないか、又は実質的に含まなくてよい。
【0071】
実施形態では、ガラス組成物は、ヒ素及びアンチモンのうちの一方又は両方を実質的に含まなくてよい。他の実施形態では、ガラス組成物は、ヒ素及びアンチモンのうちの一方又は両方を含まなくてよい。
【0072】
上述の個々の成分に加えて、本開示の実施形態によるガラス組成物は、該ガラス組成物が含有する高電場強度成分の濃度によって特性決定される場合がある。これらの高電場強度成分は、ガラスの靭性に寄与し、またガラスの硬度を向上させる。本明細書中で使用される場合、用語「高電場強度成分(high field strength component)」は、Al、MgO、LiO、ZrO、La、及びYを含むグループを指す。ガラス中の高電場強度成分の濃度が低すぎると、望ましくないことにガラスの靭性が低下し、所望の破壊靭性を達成できない。更に、ガラス中の高電場強度成分の濃度が高すぎる場合、望ましくないことにガラスの製造可能性が低下する場合がある。実施形態では、ガラス組成物は、23.0モル%超かつ50.0モル%未満、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の濃度のAl+MgO+LiO+ZrO+La+Yを含んでよい。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、23.5モル%以上、例えば24.0モル%以上、25.0モル%以上、26.0モル%以上、27.0モル%以上、28.0モル%以上、29.0モル%以上、30.0モル%以上、31.0モル%以上、32.0モル%以上、33.0モル%以上、34.0モル%以上、35.0モル%以上、36.0モル%以上、37.0モル%以上、38.0モル%以上、39.0モル%以上、40.0モル%以上、41.0モル%以上、42.0モル%以上、43.0モル%以上、44.0モル%以上、45.0モル%以上、46.0モル%以上、47.0モル%以上、48.0モル%以上、又は49.0モル%以上の濃度のAl+MgO+LiO+ZrO+La+Yを含んでよい。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、49.5モル%以下、例えば49.0モル%以下、48.0モル%以下、47.0モル%以下、46.0モル%以下、45.0モル%以下、44.0モル%以下、43.0モル%以下、42.0モル%以下、41.0モル%以下、40.0モル%以下、39.0モル%以下、38.0モル%以下、37.0モル%以下、36.0モル%以下、35.0モル%以下、34.0モル%以下、33.0モル%以下、32.0モル%以下、31.0モル%以下、30.0モル%以下、29.0モル%以下、28.0モル%以下、27.0モル%以下、26.0モル%以下、25.0モル%以下、又は24.0モル%以下の濃度のAl+MgO+LiO+ZrO+La+Yを含んでよい。実施形態では、以上の範囲のうちのいずれを他のいずれの範囲と組み合わせてよいことを理解されたい。しかしながら、他の実施形態では、ガラス組成物は、23.5モル%以上49.5モル%以下、例えば24.0モル%以上49.0モル%以下、25.0モル%以上48.0モル%以下、26.0モル%以上47.0モル%以下、27.0モル%以上46.0モル%以下、28.0モル%以上45.0モル%以下、29.0モル%以上44.0モル%以下、30.0モル%以上43.0モル%以下、31.0モル%以上42.0モル%以下、32.0モル%以上41.0モル%以下、33.0モル%以上40.0モル%以下、34.0モル%以上39.0モル%以下、35.0モル%以上38.0モル%以下、又は36.0モル%以上37.0モル%以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の濃度のAl+MgO+LiO+ZrO+La+Yを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、25.0モル%以上46.0モル%以下の濃度のAl+MgO+LiO+ZrO+La+Yを含む。
【0073】
実施形態では、(LiO+NaO+MgO)/Alの関係は、0.90以上1.30未満であり、ここで各成分の濃度はモル%を単位とする。この関係はガラス組成物の溶融性を維持し、製造可能性の改善を可能とする。この関係において、ガラス組成物のAl濃度を、ガラスの製造可能性を改善する成分に対して平衡させる。Alは、ガラスの靭性に対する最も強力な寄与因子の1つであるが、ガラスの製造可能性を低下させる。LiO+NaO+MgO(これらはそれぞれ、ガラスの製造可能性を改善する)の合計含有量に対して、Alの効果を平衡させることにより、ガラス組成物は、高い破壊靭性及び望ましい製造可能性を提供する。いくつかの実施形態では、比(LiO+NaO+MgO)/Alは0.95以上、例えば1.00以上、1.05以上、1.10以上、1.15以上、1.20以上、又は1.25以上である。いくつかの実施形態では、比(LiO+NaO+MgO)/Alは1.25以下、例えば1.20以下、1.15以下、1.10以下、1.05以下、1.00以下、又は0.95以下である。実施形態では、以上の範囲のうちのいずれを他のいずれの範囲と組み合わせてよいことを理解されたい。しかしながら、他の実施形態では、比(LiO+NaO+MgO)/Alは0.95以上1.25以下、例えば1.00以上1.20以下、又は1.05以上1.15以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内である。いくつかの実施形態では、比(LiO+NaO+MgO)/Alは、0.90超かつ1.00以下である。
【0074】
実施形態では、本明細書に記載のガラスは、以下の式Iの値によっても特性決定できる:
式I=5.631+0.148・Al+0.142・B-0.062・CaO-0.188・KO+0.030・MgO-0.099・NaO-0.043・LiO-0.188・P+0.020・ZnO-0.062・SrO+0.200・ZrO
ここで各成分の量はモル%を単位とする。式Iの値は破壊靭性と正の相関を示す。実施形態では、所望の破壊靭性を呈する本明細書に記載のガラスは、式Iの値が6.5以上、例えば7.0以上、7.5以上、8.0以上、8.5以上、又は9.0以上である。実施形態では、ガラスは、式Iの値が6.5以上9.5以下、例えば7.0以上9.0以下、7.5以上8.5以下、8.0、又はこれらの端点のうちのいずれによって形成されるあらゆる全ての部分範囲内であってよい。
【0075】
ここまでに開示したアルカリアルミノシリケートガラス組成物の物理的特性について、これより議論する。これらの物理的特性は、実施例を参照して以下で更に詳細に議論されるように、アルカリアルミノシリケートガラス組成物の成分量を修正することによって、達成できる。
【0076】
実施形態によるガラス組成物は、高い破壊靭性を有する。いずれの特定の理論によって束縛されることを望むものではないが、高い破壊靭性は、ガラス組成物に、改善された落下性能を付与できる。破壊靭性はK1C値を指し、これは、シェブロンノッチ付きショートバー法又はダブルトーション法で測定される。K1C値の測定に利用されるシェブロンノッチ付きショートバー(chevron notched short bar:CNSB)法は、Y*をBubsey, R.T. et al.,“Closed‐Form Expressions for Crack‐Mouth Displacement and Stress Intensity Factors for Chevron‐Notched Short Bar and Short Rod Specimens Based on Experimental Compliance Measurements,” NASA Technical Memorandum 83796, pp.1‐30(1992年10月)の式5を用いて計算することを除いて、Reddy, K.P.R. et al,“Fracture Toughness Measurement of Glass and Ceramic Materials Using Chevron‐Notched Specimens,”J.Am.Ceram.Soc., 71[6], C‐310‐C‐313(1988年)に開示されている。K1C値の測定に利用されるダブルトーション法及び器具は、Shyam, A. and Lara‐Curzio, E.,“The double‐torsion testing technique for determination of fracture toughness and slow crack growth of materials:a review,”J.Mater.Sci.,41, pp.4093‐4104(2006年)に記載されている。ダブルトーション測定法は一般に、シェブロンノッチ付きショートバー法よりもわずかに高いK1C値を生成する。更に、K1C値を、強化されていないガラス物品で測定する。例えばガラス物品のイオン交換前にK1C値を測定する。
【0077】
いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、少なくとも0.75、例えば少なくとも0.76、少なくとも0.77、少なくとも0.78、少なくとも0.79、少なくとも0.80、少なくとも0.81、少なくとも0.82、少なくとも0.83、少なくとも0.84、少なくとも0.85、少なくとも0.86、少なくとも0.87、少なくとも0.88、少なくとも0.89、少なくとも0.90、少なくとも0.91、少なくとも0.92、少なくとも0.93、少なくとも0.94、少なくとも0.95、又は少なくとも0.96の、CNSB法で測定されたK1C値を呈する。実施形態では、ガラス組成物は、0.75以上1.00以下、例えば0.76以上0.99以下、0.77以上0.98以下、0.78以上0.97以下、0.79以上0.96以下、0.80以上0.95以下、0.81以上0.94以下、0.82以上0.93以下、0.83以上0.92以下、0.84以上0.91以下、0.85以上0.90以下、0.86以上0.89以下、又は0.87以上0.88以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の、CNSB法で測定されたK1C値を呈する。
【0078】
いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、少なくとも0.80、例えば少なくとも0.81、少なくとも0.82、少なくとも0.83、少なくとも0.84、少なくとも0.85、少なくとも0.86、少なくとも0.87、少なくとも0.88、少なくとも0.89、少なくとも0.90、少なくとも0.91、少なくとも0.92、少なくとも0.93、少なくとも0.94、少なくとも0.95、少なくとも0.96、少なくとも0.97、少なくとも0.98、少なくとも0.99、少なくとも1.00、少なくとも1.01、少なくとも1.02、少なくとも1.03、少なくとも1.04、少なくとも1.05、少なくとも1.06、少なくとも1.07、少なくとも1.08、少なくとも1.09、少なくとも1.10、少なくとも1.11、少なくとも1.12、少なくとも1.13、少なくとも1.14、又は少なくとも1.15の、ダブルトーション法で測定されたK1C値を呈する。実施形態では、ガラス組成物は、0.80以上1.20以下、例えば0.81以上1.19以下、0.82以上1.18以下、0.83以上1.17以下、0.84以上1.16以下、0.85以上1.15以下、0.86以上1.14以下、0.87以上1.13以下、0.88以上1.12以下、0.89以上1.11以下、0.90以上1.10以下、0.91以上1.09以下、0.92以上1.08以下、0.93以上1.07以下、0.94以上1.06以下、0.95以上1.05以下、0.96以上1.04以下、0.97以上1.03以下、0.98以上1.02以下、0.99以上1.01以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の、ダブルトーション法で測定されたK1C値を呈する。
【0079】
実施形態では、液相粘度は1000kP以下、例えば800kP以下、600kP以下、400kP以下、200kP以下、100kP以下、又は75kP以下である。他の実施形態では、液相粘度は20kP以上、例えば40kP以上、60kP以上、80kP以上、100kP以上、120kP以上、140kP以上、又は160kP以上である。実施形態では、以上の範囲のうちのいずれを他のいずれの範囲と組み合わせてよいことを理解されたい。しかしながら、また更に他の実施形態では、液相粘度は20kP以上1000kP以下、例えば40kP以上900kP以下、60kP以上800kP以下、又は80kP以上700kP以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内である。液相粘度は以下の方法によって決定される。まず、ガラスの液相線温度を、ASTM C829‐81(2015年)「勾配炉法によるガラスの液相線温度の測定のための標準的技法(Standard Practice for Measurement of Liquidus Temperature of Glass by the Gradient Furnace Method)」に従って測定する。次に上記液相線温度におけるガラスの粘度を、ASTM C965‐96(2012年)「軟化点を超えたガラスの粘度の測定のための標準的技法(Standard Practice for Measuring Viscosity of Glass Above the Softening Point)」に従って測定する。
【0080】
ガラス組成物へのリチウムの添加は、ガラス組成物のヤング率(E)、剛性率(G)、及びポアソン比(ν)にも影響を及ぼす。実施形態では、ガラス組成物のヤング率(E)は、75GPa以上100GPa以下、例えば76GPa以上99GPa以下、77GPa以上98GPa以下、78GPa以上97GPa以下、79GPa以上96GPa以下、80GPa以上95GPa以下、81GPa以上94GPa以下、82GPa以上93GPa以下、83GPa以上92GPa以下、84GPa以上91GPa以下、85GPa以上90GPa以下、86GPa以上89GPa以下、又は87GPa以上88GPa以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内であってよい。本開示中に記載されているヤング率の値は、ASTM E2001‐13「金属部品及び非金属部品の両方において欠陥を検出するための共鳴超音波分光法に関する標準ガイド(Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non‐metallic Parts)」に記載された、一般的なタイプの共鳴超音波分光技法によって測定された値を指す。
【0081】
いくつかの実施形態によると、ガラス組成物は、30GPa以上40GPa以下、例えば31GPa以上39GPa以下、32GPa以上38GPa以下、33GPa以上37GPa以下、又は34GPa以上36GPa以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の剛性率を有してよい。他の実施形態ではガラス組成物は、26GPa以上35GPa以下、27GPa以上35GPa以下、28GPa以上35GPa以下、29GPa以上35GPa以下、30GPa以上35GPa以下、31GPa以上35GPa以下、32GPa以上35GPa以下、33GPa以上35GPa以下、又は34GPa以上35GPa以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の剛性率を有してよい。更に他の実施形態では、ガラス組成物は、25GPa以上34GPa以下、25GPa以上33GPa以下、25GPa以上32GPa以下、25GPa以上31GPa以下、25GPa以上30GPa以下、25GPa以上29GPa以下、25GPa以上28GPa以下、25GPa以上27GPa以下、又は25GPa以上26GPa以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の剛性率(G)を有してよい。本開示中に記載されている剛性率の値は、ASTM E2001‐13「金属部品及び非金属部品の両方において欠陥を検出するための共鳴超音波分光法に関する標準ガイド(Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non‐metallic Parts)」に記載された、一般的なタイプの共鳴超音波分光技法によって測定された値を指す。
【0082】
いくつかの実施形態によると、ガラス組成物は、0.20以上0.26以下、例えば0.21以上0.25以下、0.22以上0.24以下、約0.23、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内のポアソン比(ν)を有してよい。本開示中に記載されているポアソン比の値は、ASTM E2001‐13「金属部品及び非金属部品の両方において欠陥を検出するための共鳴超音波分光法に関する標準ガイド(Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non‐metallic Parts)」に記載された、一般的なタイプの共鳴超音波分光技法によって測定された値を指す。
【0083】
以上の組成物から、実施形態によるガラス物品を、スロット成形、フロート成形、圧延プロセス、フュージョン成形プロセス等といったいずれの好適な方法で成形してよい。
【0084】
ガラス組成物、及び該ガラス組成物から製造された物品は、成形方法によって特性決定できる。例えばガラス物品は、フロート成形可能である(即ちフロートプロセスによって成形される)こと、ダウンドロー可能であること、及び特にフュージョン成形可能であるか又はスロットドロー可能である(即ちフュージョンドロープロセス又はスロットドロープロセスによって成形される)ことを特徴としてよい。
【0085】
本明細書に記載のガラス物品のいくつかの実施形態は、ダウンドロープロセスで成形してよい。ダウンドロープロセスは、比較的美しい状態の表面を有する均一な厚さのガラス物品を生成する。ガラス物品の平均曲げ強度は、表面の傷の量及びサイズによって制御されるため、接触が最小限である美しい状態の表面は、比較的高い初期強度を有する。更に、ダウンドロー加工されたガラス物品は、極めて平坦で平滑な表面を有し、これはその最終的な用途において、コストがかかる研削及び研磨を行うことなく使用できる。
【0086】
ガラス物品のいくつかの実施形態は、フュージョン成形可能(即ちフュージョンドロープロセスを用いて成形可能)なものとして説明できる。フュージョンプロセスは、溶融ガラス原材料を受け入れるためのチャネルを有する、ドロー加工用タンクを使用する。このチャネルは、チャネルの両側に、チャネルの長さに沿って、頂部で開口した堰を有する。チャネルが溶融材料で満たされると、溶融ガラスはこの堰からあふれる。溶融ガラスは重力によって、ドロー加工用タンクの外側表面を、2つの流動ガラスフィルムとして流れ落ちる。ドロー加工用タンクのこれらの外側表面は、下方かつ内向きに延在して、ドロー加工用タンクの下方の縁部において接合する。これら2つの流動ガラスフィルムはこの縁部で接合して融合し、単一の流動ガラス物品を形成する。融合線が形成され、ここで2つの流動ガラスフィルムが1つに融合する。融合線の存在は、フュージョンドロー加工されたガラス物品を同定する1つの方法である。融合線は、ガラスを光学顕微鏡下で観察した場合に、光学的な歪みとして確認できる。フュージョンドロー法は、チャネルを越えて流れる2つのガラスフィルムが1つに融合するため、結果として得られるガラス物品の外側表面が装置のいずれの部分にも接触しないという利点を提供する。従って、フュージョンドロー加工されたガラス物品の表面特性は、このような接触に影響されない。
【0087】
ガラス物品のいくつかの実施形態は、スロットドロープロセスで成形してよい。スロットドロープロセスは、フュージョンドロー法とは異なっている。スロットドロープロセスでは、溶融原材料ガラスをドロー加工用タンクに供給する。ドロー加工用タンクの底部は開放スロットを有し、これは、上記スロットの長さに沿って延在するノズルを備える。溶融ガラスはこのスロット/ノズルを通って流れ、連続したガラス系物品として、アニーリング領域内に向かって下方へと流れる。
【0088】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載のガラス物品は、非晶質微小構造を示してよく、結晶又は微結晶を実質的に含まなくてよい。換言すれば、いくつかの実施形態では、ガラス物品はガラスセラミック材料を除外する。
【0089】
上述のように、実施形態では、アルカリアルミノシリケートガラス組成物をイオン交換等によって強化して、限定するものではないがディスプレイカバー用のガラスといった用途のための、損傷耐性を有するガラスを作製できる。図1を参照すると、ガラスは、ガラスの表面から圧縮深さ(DOC)まで延在する、圧縮応力下の第1の領域(例えば図1の第1の圧縮層120及び第2の圧縮層122)と、ガラスのDOCから中央又は内部領域へと延在する、引張応力又は中心張力(CT)下の第2の領域(例えば図1の中央領域130)とを有する。本明細書中で使用される場合、DOCは、ガラス物品内の応力が圧縮応力から引張応力に変化する深さを指す。DOCでは、応力が正の(圧縮)応力から負の(引張)応力に遷移するため、応力は応力値0を示す。
【0090】
当該技術分野において通常用いられてきた慣例によると、圧縮又は圧縮応力は負(<0)の応力として表され、張力又は引張応力は正(>0)の応力として表される。しかしながら本記載全体を通して、CSは正の値又は絶対値として表される。即ち本明細書中に記載される場合、CS=|CS|である。圧縮応力(CS)はガラスの表面において最大値を有し、CSは、ある関数に従って、表面からの距離dと共に変化する。図1を再び参照すると、第1のセグメント120は、第1の表面110から深さdまで延在し、第2のセグメント122は、第2の表面112から深さdまで延在する。これらのセグメントは合わせて、ガラス100の圧縮又はCSを画定する。(表面CSを含む)圧縮応力は、折原製作所(日本)製FSM‐6000等の市販の機器を用いて、表面応力メータ(FSM)で測定される。表面応力測定は、応力光係数(stress optical coefficient:SOC)の正確な測定に依存し、これはガラスの複屈折に関係する。SOCは、ASTM規格C770‐16「ガラスの応力光係数の測定のための標準試験法(Standard Test Method for Measurement of Glass Stress‐Optical Coefficient)」(その内容全体は参照により本出願に援用される)に記載された手順C(ガラスディスク法)に従って測定される。
【0091】
いくつかの実施形態では、ガラス物品のCSは、400MPa以上800MPa以下、例えば425MPa以上775MPa以下、450MPa以上750MPa以下、475MPa以上725MPa以下、500MPa以上700MPa以下、525MPa以上675MPa以下、550MPa以上650MPa以下、又は575MPa以上625MPa以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内である。
【0092】
1つ以上の実施形態では、Na及びKイオンをガラス物品中へと交換し、Naイオンは、Kイオンに比べてガラス物品中の更に深い深さまで拡散する。Kイオンの侵入の深さ(「カリウムDOL」)は、イオン交換プロセスの結果としてのカリウムの侵入の深さを表すため、DOCから区別される。カリウムDOLは典型的には、本明細書に記載の物品に関するDOCより小さい。カリウムDOLは、折原製作所(日本)製の市販のFSM‐6000表面応力メータ等の表面応力メータを用いて測定され、これは、CS測定に関して上述されているように、応力光係数(SOC)の正確な測定に依存している。第1の圧縮層120及び第2の圧縮層122それぞれのカリウムDOLは、5μm以上30μm以下、例えば6μm以上25μm以下、7μm以上20μm以下、8μm以上15μm以下、又は9μm以上10μm以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内である。他の実施形態では、第1の圧縮層120及び第2の圧縮層122それぞれのカリウムDOLは、6μm以上30μm以下、例えば10μm以上30μm以下、15μm以上30μm以下、20μm以上30μm以下、又は25μm以上30μm以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内である。更に他の実施形態では、第1の圧縮層120及び第2の圧縮層122それぞれのカリウムDOLは、5μm以上25μm以下、例えば5μm以上20μm以下、5μm以上15μm以下、又は5μm以上10μm以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内である。
【0093】
両方の主面(図1の110、112)の圧縮応力は、ガラスの中央領域(130)に貯蔵された張力と平衡する。最大中心張力(CT)及びDOC値は、当該技術分野において公知の散乱光偏光器(SCALP)を用いて測定される。屈折近接場(RNF)法又はSCALPを用いて、応力プロファイルを測定してよい。RNF法を利用して応力プロファイルを測定する場合、SCALPによって提供される最大CT値をRNF法において利用する。特に、RNFによって測定される応力プロファイルは、SCALP測定によって提供される最大CT値に対して平衡化及び較正された力である。RNF法は、米国特許第8,854,623号明細書「(ガラス試料のプロファイル特徴を測定するためのシステム及び方法(Systems and methods for measuring a profile characteristic of a glass sample)」に記載されており、この文献はその全体が参照により本出願に援用される。特にRNF法は:ガラス物品を基準ブロックに隣接させて配置するステップ;1Hz~50Hzの速度において直交偏光間で切り替えられる、偏光切り替え光ビームを生成するステップ;偏光切り替え光ビームの出力の量を測定するステップ;及び偏光切り替え基準信号を生成するステップを含み、直交偏光それぞれにおいて測定された出力の量は、互いの50%以内である。上記方法は更に:上記偏光切り替え光ビームを、ガラス試料及び基準ブロックを通して、ガラス試料中の異なる複数の深さまで伝送するステップ;次に、伝送された上記偏光切り替え光ビームを、中継用光学系を用いて、信号光検出器へと中継するステップを含み、上記信号光検出器は、偏光切り替え検出器信号を生成する。上記方法はまた:上記検出器信号を基準信号で除算して、正規化検出器信号を形成するステップ;及びガラス試料のプロファイル特徴を、上記正規化検出器信号から決定するステップを含む。
【0094】
実施形態では、ガラス物品は、60MPa以上、例えば70MPa以上、80MPa以上、90MPa以上、100MPa以上、110MPa以上、120MPa以上、130MPa以上、140MPa以上、又は150MPa、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の最大CTを有してよい。いくつかの実施形態では、ガラス物品は、200MPa以下、例えば190MPa以下、180MPa以下、170MPa以下、160MPa以下、150MPa以下、140MPa以下、130MPa以下、120MPa以下、110MPa以下、100MPa以下、90MPa以下、85MPa以下、又は80MPa以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の最大CTを有してよい。実施形態では、以上の範囲のうちのいずれを他のいずれの範囲と組み合わせてよいことを理解されたい。しかしながら、他の実施形態では、ガラス物品は、60MPa以上200MPa以下、例えば70MPa以上190MPa以下、80MPa以上180MPa以下、90MPa以上170MPa以下、100MPa以上160MPa以下、110MPa以上150MPa以下、又は120MPa以上140MPa以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の最大CTを有してよい。
【0095】
上述のように、DOCは、当該技術分野において公知の散乱光偏光器(SCALP)を用いて測定される。DOCは、本明細書中のいくつかの実施形態では、ガラス物品の厚さ(t)の一部分として提供される。実施形態では、ガラス物品は、0.15t以上0.25t以下、例えば0.18t以上0.22t以下、又は0.19t以上0.21t以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の、圧縮深さ(DOC)を有してよい。他の実施形態では、ガラス物品は、0.16以上0.2t以下、例えば0.17t以上0.25t以下、0.18t以上0.25t以下、0.19t以上0.25t以下、0.20t以上0.25t以下、0.21t以上0.25t以下、0.22t以上0.25t以下、0.23t以上0.25t以下、又は0.24t以上0.25t以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の、DOCを有してよい。更に他の実施形態では、ガラス物品は、0.15t以上0.24t以下、例えば0.15t以上0.23t以下、0.15t以上0.22t以下、0.15t以上0.21t以下、0.15t以上0.20t以下、0.15t以上0.19t以下、0.15t以上0.18t以下、0.15t以上0.17t以下、又は0.15t以上0.16t以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の、DOCを有してよい。いくつかの実施形態では、ガラス物品は少なくとも0.20tのDOCを有してよい。
【0096】
圧縮応力層は、ガラスをイオン交換溶液に曝露することによって、ガラス中に形成できる。複数の実施形態では、イオン交換溶液は溶融硝酸塩であってよい。いくつかの実施形態では、イオン交換溶液は、溶融KNO、溶融NaNO、又はこれらの組み合わせであってよい。特定の実施形態では、イオン交換溶液は、約95%未満の溶融KNO、例えば約90%未満の溶融KNO、約80%未満の溶融KNO、約70%未満の溶融KNO、約60%未満の溶融KNO、又は約50%未満の溶融KNOを含んでよい。特定の実施形態では、イオン交換溶液は、少なくとも約5%の溶融NaNO、例えば少なくとも約10%の溶融NaNO、少なくとも約20%の溶融NaNO、少なくとも約30%の溶融NaNO、又は少なくとも約40%の溶融NaNOを含んでよい。他の実施形態では、イオン交換溶液は、約95%の溶融KNO及び約5%の溶融NaNO、約94%の溶融KNO及び約6%の溶融NaNO、約93%の溶融KNO及び約7%の溶融NaNO、約80%の溶融KNO及び約20%の溶融NaNO、約75%の溶融KNO及び約25%の溶融NaNO、約70%の溶融KNO及び約30%の溶融NaNO、約65%の溶融KNO及び約35%の溶融NaNO、又は約60%の溶融KNO及び約40%の溶融NaNO、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内を含んでよい。複数の実施形態では、例えば亜硝酸ナトリウム若しくはカリウム、リン酸ナトリウム若しくはカリウム、又は硫酸ナトリウム若しくはカリウムといった、他のナトリウム及びカリウム塩を、イオン交換溶液中で使用してよい。いくつかの実施形態では、イオン交換溶液は、LiNO等のリチウム塩を含んでよい。
【0097】
ガラス組成物は:上記ガラス組成物から作製されたガラス物品をイオン交換溶液の浴中に浸漬させること;イオン交換溶液を、上記ガラス組成物から作製されたガラス物品に噴霧すること;又はイオン交換溶液を、上記ガラス組成物から作製されたガラス物品に、他の手段で物理的に塗布することによって、イオン交換溶液に曝露してよい。ガラス組成物への曝露時、イオン交換溶液は、複数の実施形態によると、400℃以上500℃以下、例えば410℃以上490℃以下、420℃以上480℃以下、430℃以上470℃以下、又は440℃以上460℃以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の温度であってよい。複数の実施形態では、ガラス組成物は、4時間以上48時間以下、例えば8時間以上44時間以下、12時間以上40時間以下、16時間以上36時間以下、20時間以上32時間以下、又は24時間以上28時間以下、並びに上述の値の間の全ての範囲及び部分範囲内の持続時間にわたって、イオン交換溶液に曝露してよい。
【0098】
イオン交換プロセスは、例えば米国特許出願公開第2016/0102011号明細書(この文献はその全体が参照により本出願に援用される)で開示されているような、改善された圧縮応力プロファイルを提供する加工条件下の、イオン交換溶液中で実施してよい。いくつかの実施形態では、イオン交換プロセスは、米国特許出願公開第2016/0102014号明細書(この文献はその全体が参照により本出願に援用される)に記載されている応力プロファイルのような放物線状の応力プロファイルをガラス物品中で形成するように選択してよい。
【0099】
イオン交換プロセスの実施後、ガラス物品の表面の組成は、成形後すぐのガラス物品(即ちイオン交換プロセスを受ける前のガラス物品)の組成とは異なり得ることを理解されたい。これは、成形後すぐのガラス中のあるタイプのアルカリ金属イオン、例えばLi又はNa等が、それぞれ更に大きなアルカリ金属イオン、例えばNa又はKで置換されることによって起こる。しかしながら、実施形態では、ガラス物品の深さの中心又は中心付近のガラス組成物は、成形後すぐのガラス物品の組成を依然として有する。
【0100】
本明細書で開示されているガラス物品は、ディスプレイを備えた物品(即ちディスプレイ物品)(例えば携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステム等を含む消費者向け電子機器)、建築用物品、輸送用物品(例えば自動車、鉄道、航空機、船舶等)、家電物品、又はある程度の透明性、耐擦傷性、耐摩擦性若しくはこれらの組み合わせを必要とするいずれの物品といった、別の物品に組み込むことができる。本明細書で開示されているガラス物品のいずれを組み込んだ例示的な物品を、図2A及び2Bに示す。具体的には、図2A及び2Bは:前面204、背面206及び側面208を有するハウジング202;少なくとも部分的に又は全体的に上記ハウジング内にある、少なくともコントローラ、メモリ及びディスプレイ210を上記ハウジングの前面に又は前面に隣接して含む、電子構成部品(図示せず);並びに上記ハウジングの前面に又は前面全体にわたり、上記ディスプレイを覆うように配置されたカバー基板212を含む、消費者向け電子デバイス200を示す。いくつかの実施形態では、カバー基板212は、本明細書で開示されているガラス物品のいずれを含んでよい。
【実施例
【0101】
以下の実施例によって実施形態を更に明らかにする。これらの実施例は、上述の実施形態に対する限定ではないことを理解されたい。
【0102】
以下の表1に列挙された成分を有するガラス組成物を、従来のガラス形成方法で調製した。表1では、全ての成分はモル%を単位とし、ガラス組成物のK1C破壊靭性、ポアソン比(ν)、ヤング率(E)、及び剛性率(G)は、本明細書で開示されている方法に従って測定された。各実施例に関する式Iの値も表1で報告される。
【0103】
【表1-1】
【0104】
【表1-2】
【0105】
【表1-3】
【0106】
【表1-4】
【0107】
【表1-5】
【0108】
【表1-6】
【0109】
【表1-7】
【0110】
【表1-8】
【0111】
【表1-9】
【0112】
【表1-10】
【0113】
【表1-11】
【0114】
【表1-12】
【0115】
【表1-13】
【0116】
【表1-14】
【0117】
厚さ0.8mmのガラス物品を、試料Wの組成物を用いて形成した。ガラス物品を、95重量%のKNO及び5重量%のNaNOを含有する浴中で、浴温度430℃において8時間、10時間、12時間、及び12.5時間イオン交換した。議論のために、これらの強化済みガラス物品をガラス物品Wと呼ぶ。得られる圧縮応力(CS)及びカリウム層深さ(カリウムDOL)を本明細書に記載されているように測定し、図3に示した。中心張力(CT)も、本明細書に記載のSCALPを用いて測定し、またイオン交換による重量増加を計算し、結果を図4に示した。
【0118】
厚さ0.8mmのガラス物品を、試料BIの組成物を用いて形成した。ガラス物品を、95重量%のKNO及び5重量%のNaNOを含有する浴中で、浴温度450℃において16時間イオン交換した。議論のために、この強化済みガラス物品をガラス物品BIと呼ぶ。ガラス物品BIの応力プロファイルを、本明細書に記載されているようにSCALPで測定し、図5に示した。上述のように12.5時間イオン交換したガラス物品Wに関する応力プロファイルも、SCALPで測定し、図5に示した。図5では、圧縮応力は上述の慣例とは対照的に負の値として示される。
【0119】
厚さ0.8mmの比較用のガラス物品を、以下の組成:70.94モル%のSiO、1.86モル%のB、12.83モル%のAl、2.36モル%のNaO、8.22モル%のLiO、2.87モル%のMgO、0.83モル%のZnO、及び0.06モル%のSnOを用いて形成した。ガラス物品を、93.5重量%のKNO及び6.5重量%のNaNOを含有する浴中で、浴温度430℃において4.5時間イオン交換した。議論のために、この強化済みガラス物品を比較用物品1と呼ぶ。比較用物品1の応力プロファイルを、本明細書に記載されているようにSCALPで測定した。比較用物品1、12時間イオン交換したガラス物品W、及び16時間イオン交換したガラス物品BIの、測定された応力プロファイルを、図6及び7に示し、ここで図7は、0μm~200μmの深さの領域の、拡大した詳細を示す。図3~7に示すように、本明細書に記載のガラス組成物をイオン交換することによって、望ましい応力プロファイルを生成できる。
【0120】
本明細書に記載の全ての組成物成分、関係、及び比は、特段の記載がない限りモル%を単位として提供されている。本明細書で開示されている全ての範囲は、ある範囲の開示前又は後に明示的に述べられているかどうかに関わらず、広い範囲として開示されている範囲に包含されるあらゆる全ての範囲及び部分範囲を含む。
【0121】
請求対象の主題の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態に対して様々な修正及び変形を実施できることは、当業者には理解されるだろう。よって本明細書は、本明細書に記載の様々な実施形態に対する上記修正及び変形が、添付の請求項及びその均等物の範囲内である限りにおいて、上記修正及び変形を包含することを意図している。
【0122】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0123】
実施形態1
ガラス物品であって、
上記ガラス物品は:
50モル%~69モル%のSiO
12.5モル%~25モル%のAl
0モル%~8モル%のB
0モル%超~4モル%のCaO;
0モル%超~17.5モル%のMgO;
0.5モル%~8モル%のNaO;
0モル%~2.5モル%のLa;及び
8モル%超~18モル%のLi
を含み、
(LiO+NaO+MgO)/Alは0.9~1.3未満であり、
Al+MgO+LiO+ZrO+La+Yは23モル%超かつ50モル%未満である、ガラス物品。
【0124】
実施形態2
8モル%超~16モル%のLiOを含む、実施形態1に記載のガラス物品。
【0125】
実施形態3
0モル%~2モル%のTiOを含む、実施形態1又は2に記載のガラス物品。
【0126】
実施形態4
0モル%~2.5モル%のZrOを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0127】
実施形態5
0モル%~1モル%のSrOを含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0128】
実施形態6
0モル%~2モル%のYを含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0129】
実施形態7
Oを更に含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0130】
実施形態8
(LiO+NaO+MgO)/Alは0.9~1.0である、実施形態1~7のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0131】
実施形態9
Al+MgO+LiO+ZrO+La+Yは25モル%~46モル%である、実施形態1~8のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0132】
実施形態10
0.5モル%超~17.5モル%のMgOを含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0133】
実施形態11
0モル%超~12モル%のMgOを含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0134】
実施形態12
14モル%~24モル%のAlを含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0135】
実施形態13
上記ガラス物品は、Pを実質的に含まない、実施形態1~12のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0136】
実施形態14
0.5モル%~8モル%のBを含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0137】
実施形態15
上記ガラスはフュージョン成形可能である、実施形態1~14のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0138】
実施形態16
上記ガラス物品は:
少なくとも0.75である、シェブロンショートバー法で測定されたK1C値;及び
少なくとも0.8である、ダブルトーション法で測定されたK1C
のうちの少なくとも一方を特徴とする、実施形態1~15のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0139】
実施形態17
5.631+0.148・Al+0.142・B-0.062・CaO-0.188・KO+0.030・MgO-0.099・NaO-0.043・LiO-0.188・P+0.020・ZnO-0.062・SrO+0.200・ZrO≧6.5であり、ここで各成分の上記値はモル%を単位とする、実施形態1~16のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0140】
実施形態18
ガラス物品であって、
上記ガラス物品は:
50モル%~69モル%のSiO
12.5モル%~25モル%のAl
0モル%~8モル%のB
0モル%超~4モル%のCaO;
0モル%超~17.5モル%のMgO;
0.5モル%~8モル%のNaO;
0モル%~2.5モル%のLa;及び
8モル%超~18モル%のLi
を含む、上記ガラス物品の中心における組成物を含み、
(LiO+NaO+MgO)/Alは0.9~1.3未満であり;
Al+MgO+LiO+ZrO+La+Yは23モル%超かつ50モル%未満であり、
また上記ガラス物品は、上記ガラス物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力領域を備える、ガラス物品。
【0141】
実施形態19
上記ガラス物品は、少なくとも400MPaの圧縮応力を備える、実施形態18に記載のガラス物品。
【0142】
実施形態20
上記圧縮深さは、上記ガラス物品の厚さの少なくとも20%である、実施形態18又は19に記載のガラス物品。
【0143】
実施形態21
上記ガラス物品は、85MPa未満の最大中心張力を備える、実施形態18~20のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0144】
実施形態22
ガラス物品であって、
上記ガラス物品は:
SiO
Al;及び
Li
を含み、
上記ガラス物品は:
少なくとも0.75である、シェブロンショートバー法で測定されたK1C値;及び
少なくとも0.8である、ダブルトーション法で測定されたK1C
のうちの少なくとも一方を特徴とする、ガラス物品。
【0145】
実施形態23
MgOを更に含む、実施形態22に記載のガラス物品。
【0146】
実施形態24
CaOを更に含む、実施形態22又は23に記載のガラス物品。
【0147】
実施形態25
TiOを更に含む、実施形態22~24のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0148】
実施形態26
ZrOを更に含む、実施形態22~25のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0149】
実施形態27
SrOを更に含む、実施形態22~26のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0150】
実施形態28
を更に含む、実施形態22~27のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0151】
実施形態29
Oを更に含む、実施形態22~28のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0152】
実施形態30
NaOを更に含む、実施形態22~29のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0153】
実施形態31
(LiO+NaO+MgO)/Alは0.9~1.3未満である、実施形態22~30のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0154】
実施形態32
Al+MgO+LiO+ZrO+La+Yは23モル%超かつ50モル%未満である、実施形態22~31のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0155】
実施形態33
を更に含む、実施形態22~32のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0156】
実施形態34
上記ガラスはフュージョン成形可能である、実施形態22~33のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0157】
実施形態35
5.631+0.148・Al+0.142・B-0.062・CaO-0.188・KO+0.030・MgO-0.099・NaO-0.043・LiO-0.188・P+0.020・ZnO-0.062・SrO+0.200・ZrO≧6.5であり、ここで各成分の上記値はモル%を単位とする、実施形態22~34のいずれか1つに記載のガラス物品。
【0158】
実施形態36
消費者向け電子製品であって、
上記消費者向け電子製品は:
前面、背面及び側面を有するハウジング;
少なくとも部分的に上記ハウジング内に設けられた電子部品であって、上記電子部品は、少なくとも1つのコントローラ、メモリ及びディスプレイを含み、上記ディスプレイは、上記ハウジングの上記前面に又は上記前面に隣接して設けられる、電子部品;並びに
上記ディスプレイを覆うように配置されたカバーガラス
を備え、
上記ハウジングの一部分又は上記カバーガラスの一部分のうちの少なくとも一方は、実施形態1~35のうちのいずれか1つに記載のガラス物品を含む、消費者向け電子製品。
【符号の説明】
【0159】
100 ガラス
110 第1の表面
112 第2の表面
120 第1の圧縮層、第1のセグメント
122 第2の圧縮層、第2のセグメント
130 中央領域
200 消費者向け電子デバイス
202 ハウジング
204 前面
206 背面
208 側面
210 ディスプレイ
212 カバー基板
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7