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  • 特許-オレフィン重合活性化剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】オレフィン重合活性化剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/64 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
C08F4/64
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020552345
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 US2019024034
(87)【国際公開番号】W WO2019191068
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】62/650,412
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】キートン、リチャード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フアクジャ、ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、デイビット アール.
(72)【発明者】
【氏名】クロシン、イエジ.
(72)【発明者】
【氏名】パーソン、デヴィッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】セネカル、トッド ディ.
(72)【発明者】
【氏名】ムコーパデャイ、スクリット
(72)【発明者】
【氏名】ウッドファード、ウィリアム エイチ.エイチ.
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05895771(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0209713(US,A1)
【文献】特表2009-537656(JP,A)
【文献】特表2016-524024(JP,A)
【文献】Organometallics,2000年,19,1625-1627
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F4/64-4/246
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンを重合するプロセスであって、触媒系の存在下で、エチレンと(C-C40)アルファ-オレフィンコモノマーとを接触させて、エチレン系ポリマーを生成することを含み、前記触媒系が、プロ触媒と、イオン性金属活性化剤錯体とを含み、前記イオン性金属活性化剤錯体が、アニオンおよび対カチオンを含み、前記アニオンが、式(I)に従った構造を有し、
【化1】
式中、
Mが、アルミニウム、ホウ素、またはガリウムであり、
nが3または4であり、
各Rが独立して、式(II)を有するラジカル、および式(III)を有するラジカルからなる群から選択され、
【化2】
各Yが独立して、炭素またはケイ素であり、
各R11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、およびR25が独立して、ハロゲン置換(C -C 40 )アルキル、ハロゲン置換(C -C 40 )アリール、-O-、-H、または-Fから選択され、Rが、式(III)に従ったラジカルであるとき、R21、R22、R23、R24、またはR25のうちの少なくとも1つが、ハロゲン置換(C-C40)アルキル、ハロゲン置換(C-C40)アリール、または-Fであるが、
ただし、
各Rが式(II)に従ったラジカルであり、Yが炭素であるとき、R11、R12、もしくはR13のうちの少なくとも1つが、ハロゲン置換(C-C40)アルキル、ハロゲン置換(C-C40)アリール、もしくは-Fであるか、あるいは
Mがアルミニウムであり、nが4であり、各Rが式(II)に従ったラジカルであり、各Yが炭素であるとき、
各Rのうちの各R11、R12、およびR13が、ハロゲン置換(C-C40)アルキル、ハロゲン置換(C-C40)アリール、もしくは-Fであるか、または
11、R12、またはR13の少なくとも1つが-Hであって、かつ、各RのうちのR11、R12、およびR13のハロゲン原子の総数が、少なくとも6であることを条件とし、
各Xが、(C -C 20 )アルキル、ハロゲン置換(C -C 40 )アリール、トリフラート、または-S(O) から独立して選択された単座配位子であり、
各Rが独立して、(C-C30)ヒドロカルビル、または-Hであり、
ここで、
nが4であるとき、1つだけのRが式(III)を有するラジカルであり;
前記対カチオンが、各Rが(C-C20)アルキルまたは(C-C20)アリールから選択されるN(H)R C(C;またはRが(C-C20)アルキルであるC(C;そして、
前記プロ触媒が、第IV属金属(CASに従った第IVB族、またはIUPAC命名規則に従った第4族)-配位子錯体からなる群から選択される、プロセス。
【請求項2】
前記プロ触媒が、ビス(フェニルフェノキシ)金属-配位子錯体である、請求項1に記載の重合プロセス。
【請求項3】
nが4であり、各Rが独立して、-C(H)(CF、-C、または-C(CFである、請求項1または請求項2に記載の重合プロセス。
【請求項4】
nが3であり、Xが、-OH、トリフラート(-OTf)、メチル、またはハロゲンから選択される、請求項1または請求項2に記載の重合プロセス。
【請求項5】
nが4であり、4つの基Rのうちの3つが、-C(CFであり、4つの基Rのうちの1つが、-Cである、請求項1または請求項2に記載の重合プロセス。
【請求項6】
前記対カチオンが、正の1(+1)の形式電荷を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項7】
前記対カチオンが、N(H)R であり、式中、各Rが、(C-C20)アルキル、または(C-C20)アリールから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項8】
前記対カチオンが、N(H)R であり、式中、少なくとも2つのRが、(C10-C20)アルキルから選択される、請求項6に記載の重合プロセス。
【請求項9】
前記対カチオンが、C(Cである、請求項1~6のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項10】
前記対カチオンが、C(Cであり、式中、Rが、(C-C20)アルキルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項11】
2つの基Rが、共有結合しており、前記アニオンが、式(IV)に従った構造を有し、
【化3】
式中、
MおよびXが、式(I)で定義されたとおりであり、
nが1、または2であり、
Lが、共有結合している前記2つの基Rを表し、
各Lが独立して、(C-C40)アルキレン、(C-C40)ヘテロアルキレン、または-(Si(R-O)-Si(R-から選択され、zが、0、1、2、または3であり、Rが独立して、(C-C30)ヒドロカルビルまたは-Hであり、
nが1のとき、Xが、ハロゲン、ハロゲン化-(C-C20)アルキル、またはトリフラートから独立して選択された単座配位子である、請求項1に記載の重合プロセス。
【請求項12】
高沸点完全飽和炭化水素溶液中に、200マイクロモルの濃度のイオン性金属活性化剤錯体および20ミリモルの水を有する、高沸点完全飽和炭化水素溶液中の前記イオン性金属活性化剤錯体が、炭化水素導電率試験によって測定すると、0.1以下の誘電正接パーセントを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月30日出願の米国仮特許出願第62/650,412号に対する優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、一般に、オレフィン重合触媒系およびプロセス、より具体的には、第4族金属-配位子錯体と、核活性化剤または助触媒とを含むオレフィン重合触媒系に関する。
【背景技術】
【0003】
α-オレフィン重合反応における触媒組成物の一部として、活性化剤は、α-オレフィンポリマーの生成およびα-オレフィンポリマーを含む最終ポリマー組成物にとって有益な特徴を有し得る。α-オレフィンポリマーの生成を増加させる活性化剤の特徴としては、プロ触媒の迅速な活性化、高い触媒効率、高温能力、一貫したポリマー組成、および選択的な失活が挙げられるが、これらに限定されない。
【0004】
エチレン系ポリマーおよびプロピレン系ポリマーなどのオレフィン系ポリマーは、様々な触媒系を介して生成される。そのような触媒系の選択は、オレフィン系ポリマーの特徴および特性に寄与する重要な要素であり得る。ポリエチレン系ポリマーを生成するための触媒系としては、クロム系触媒系、チーグラーナッタ触媒系、または分子(メタロセンまたは非メタロセンのいずれかの)触媒系を挙げることができる。
【0005】
重合のための触媒活性種を生成するために、触媒系の一部としての分子重合プロ触媒を活性化し、この活性化は、任意の多数の手段によって達成することができる。そのような1つの方法は、ブレンステッド酸である活性化剤または助触媒を用いる。分子重合プロ触媒、特に第IV族金属錯体を含むそのようなプロ触媒を活性化するために、一般的には、弱く配位するアニオンを含有するブレンステッド酸塩が利用されている。完全にイオン化しているブレンステッド酸塩は、プロトンを移動させて、そのような第IV族金属錯体のカチオン誘導体を形成することが可能である。
【0006】
ブレンステッド酸塩などの活性化剤では、カチオン成分としては、例えば、アンモニウム、スルホニウム、もしくはホスホニウムなどの水素イオンを移動させることが可能なカチオン、または例えばフェロセニウム、銀(I)、もしくは鉛(II)カチオンなどの酸化カチオン、または例えばカルボニウムもしくはシリリウムなどの高ルイス酸性カチオンを挙げることができる。
【0007】
しかしながら、活性化剤または助触媒のカチオンがプロ触媒を活性化すると、活性化剤がポリマー組成物中に残留する場合がある。結果として、カチオンおよびアニオンが、ポリマー組成に影響を与える場合がある。すべてのイオンが等しく拡散するわけではないため、異なるイオンがポリマー組成に異なる影響を与える。具体的には、イオンのサイズおよびイオンの電荷、イオンと周囲の媒体との相互作用、ならびにイオンと利用可能な対イオンとの解離エネルギーは、溶媒、ゲル、またはポリマー材料などの周囲の媒体を通じて拡散するイオンの能力に影響を与えるであろう。
【0008】
従来のオレフィン重合活性化剤としては、弱配位性または非配位性アニオンが挙げられる。アニオンの配位が弱いことによって、カチオン触媒の触媒効率の増加がもたらされることが示されている。しかしながら、非配位性アニオンの非求核特徴も拡散を増加させるため、生成されたポリマー中に残留する活性化剤アニオンは、ポリマーの電気抵抗を低下させ、それにより電気損失を増加させ、それにより生成されたポリマーの適用性が減少するであろう。
【発明の概要】
【0009】
ポリマー系における活性化剤の望ましい特徴としては、α-オレフィンポリマーの生成を増加させる能力、プロ触媒活性化の速度を増加させる能力、触媒の全体的な効率を増加させて、触媒系を高温で作動可能にする能力、触媒系が一貫したポリマー組成を提供可能にする能力、および活性化剤の選択的な失活を可能にする能力が挙げられる。非配位性アニオンテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(B(C)に由来する活性化剤は、これらの望ましい特徴のうちの多くを獲得する。それにもかかわらず、典型的な重合反応条件下では、B(Cアニオンは分解されず、最終ポリマー中に損なわれずに残留し得る。最終ポリマー中に活性化剤が損なわれずに存在することは、最終ポリマーの電気的特性に有害であり得る。
【0010】
メチルアルモキサン(MAO)または修飾メチルアルモキサン(MMAO)などの部分的に加水分解された金属トリアルキルに基づく活性化剤は、例えば、B(Cアニオンよりも容易に分解されるが、最終ポリマーにおける貧弱な高温触媒効率およびより広い組成ドリフトを被る。
【0011】
金属-配位子触媒を効率的に活性化し、容易に分解され、高温で良好に機能する活性化剤が、現在も必要とされている。本開示の触媒系としては、第IV族金属-配位子錯体と活性化剤または助触媒との、そのような必要性に対処する組み合わせが挙げられる。具体的には、ポリオレフィン樹脂の生成において、活性化剤が、第IV族金属-配位子錯体と容易に反応し、第IV族金属-配位子錯体を活性化させると、ポリオレフィン樹脂は、有用なポリマー組成および電気的特性を呈する。本開示の触媒系に含まれる活性化剤は、α-オレフィンポリマーの生成を増加させる能力、プロ触媒活性化の速度を増加させる能力、触媒の全体的な効率を増加させて、触媒系を高温で作動可能にする能力、触媒系が一貫したポリマー組成を提供可能にする能力、および活性化剤の選択的な失活を可能にする能力などの特徴を呈する。
【0012】
1つ以上の実施形態によれば、オレフィンを重合するプロセスは、第IV族金属-配位子錯体と、イオン性金属活性化剤錯体とを含む触媒系の存在下で、エチレンと(C-C40)α-オレフィンコモノマーとを接触させることを含む。イオン性金属活性化剤錯体は、アニオンおよび対カチオンを含み、アニオンは、式(I)に従った構造を有する。
【化1】
【0013】
対カチオンは、+1の形式電荷を有する任意のカチオンである。式(I)では、各Mは独立して、アルミニウム、ホウ素、またはガリウムであり、nは、2、3、または4である。各Rは独立して、式(II)を有するラジカル、および式(III)を有するラジカルからなる群から選択される。
【化2】
【0014】
式(II)および(III)では、各Yは独立して、炭素またはケイ素であり、例えば、R11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、およびR25は、各々独立して、(C-C40)アルキル、(C-C40)アリール、H、-OR、-O-、またはハロゲンから選択され、Rが、式(II)に従ったラジカルであるとき、R11、R12、またはR13のうちの少なくとも1つが、フッ素置換(C-C40)アルキル、ハロゲン置換(C-C40)アリール、または-Fであり、Rが、式(III)に従ったラジカルであるとき、R21、R22、R23、R24、およびR25のうちの少なくとも1つが、ハロゲン置換(C-C40)アルキル、ハロゲン置換(C-C40)アリール、または-Fである。さらに、Mがアルミニウムであり、nが4であり、各Rが式(II)に従ったラジカルであり、Yが炭素であるとき、各Rのうちの各R11、R12、およびR13は、ハロゲン置換(C-C40)アルキル、ハロゲン置換(C-C40)アリール、または-Fであり、各RのうちのR11、R12、およびR13のフッ素原子の総数は、6超である。いくつかの実施形態では、対カチオンは、第三級カルボカチオン、アルキル置換アンモニウムイオン、アニリニウム、またはフェロセニウムから選択することができる。
【0015】
式(I)では、各Xは、ハロゲン、ハロゲン置換(C-C20)アルキル、(C-C20)アルキル、ハロゲン置換(C-C40)アリール、(C-C40)アリール、-S(O)CF、または-S(O)から独立して選択された単座配位子である。任意選択的に、式(I)の2つのR基は、共有結合している。各Rは独立して、(C-C30)ヒドロカルビル、または-Hである。1つ以上の実施形態では、イオン性金属活性化剤錯体は、炭化水素導電率試験によって測定すると、高沸点完全飽和炭化水素溶液中に200マイクロモルのイオン性金属活性化剤錯体および20ミリモルの水の濃度で、0.1以下の誘電正接を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、触媒系中の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数対触媒系中の1つ以上のイオン性金属活性化剤錯体の総モル数の比は、1:10,000~100:1である。
【0017】
1つ以上の実施形態では、特に2つのR基が共有結合しているとき、助触媒は、式(IV)に従った構造を有する。
【化3】
【0018】
式(IV)では、MおよびXは、式(I)で定義されたとおりである。下付き文字nは、1または2である。2つの共有結合している基Rを表す各Lは独立して、(C-C40)アルキレン、または(C-C40)ヘテロアルキレンから選択される。nが1のとき、Xは、ハロゲン、ハロゲン化-(C-C20)アルキル、(C-C20)アルキル、-S(O)、または-S(O)CF(トリフラート)から独立して選択された単座配位子であり、Rが、(C-C20)アルキルである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の例示的な実施形態である、2つの比較活性化剤および2つの活性化剤(活性化剤1および活性化剤8)の、温度と相関する分子量の熱勾配相互作用クロマトグラフィー(TGIC)スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
そこで、触媒系の具体的な実施形態を説明する。本開示の触媒系は、異なる形態で実施されてもよく、本開示に記載される特定の実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0021】
一般的な略語を、以下に列記する。
【0022】
R、Y、M、L、およびn;上記で定義したとおり、Me:メチル、Et:エチル、Ph:フェニル、Bn:ベンジル、i-Pr:イソ-プロピル、t-Bu:tert-ブチル、t-Oct:tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)、Tf:トリフルオロメタンスルホネート、OTf:トリフラート、(BuO)Al:Al(OC(CF、THF:テトラヒドロフラン、EtO:ジエチルエーテル、CHCl:ジクロロメタン、CV:カラム容量(カラムクロマトグラフィーで使用)、EtOAc:酢酸エチル、C:重水素化ベンゼンまたはベンゼン-d6、CDCl:重水素化クロロホルム、NaSO:硫酸ナトリウム、MgSO:硫酸マグネシウム、HCl:塩化水素、n-BuLi:ブチルリチウム、t-BuLi:tert-ブチルリチウム、N,N’-DMEDA:N,N’-ジメチルエチレンジアミン、KPO:三塩基性リン酸カリウム、Pd(AmPhos)Cl:ビス(ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)ジクロロパラジウム(II)、Pd(dppf)Cl:[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]二塩化パラジウム(II)、KCO:炭酸カリウム、CsCO:炭酸セシウム、i-PrOBPin:2-イソプロポキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン、N:窒素ガス、PhMe:トルエン、PPR:並列重合反応器、MAO:メチルアルミノキサン、MMAO:修飾メチルアルミノキサン、GC:ガスクロマトグラフィー、LC:液体クロマトグラフィー、NMR:核磁気共鳴、MS:質量分析、mmol:ミリモル、mL:ミリリットル、M:モル、minまたはmins:分、hまたはhrs:時間、d:日、R:滞留画分、TLC:薄層クロマトグラフィー、rpm:1分あたりの回転数。
【0023】
「独立して選択される」という用語は、R、R、R、R、およびRなどのR基が、同一であっても異なっていてもよいこと(例えば、R、R、R、R、およびRがすべて、置換アルキルであってもよいか、またはRおよびRが、置換アルキルであってもよく、Rが、アリールであってもよい、など)を示すために本明細書で使用される。R基に関連する化学名は、化学名の化学構造に対応するものとして当該技術分野で認識されている化学構造を伝えることを意図している。したがって、化学名は、当業者に既知の構造的定義を補足および例示すことを意図しており、排除することを意図していない。
【0024】
「プロ触媒」という用語は、活性化剤と組み合わせたときに触媒活性を有する化合物を指す。「活性化剤」という用語は、プロ触媒を触媒的に活性な触媒に転換するようにプロ触媒と化学的に反応する化合物を指す。本明細書で使用されるとき、「助触媒」および「活性化剤」という用語は交換可能な用語である。
【0025】
ある特定の炭素原子含有化学基を記載するために使用される場合、「(C-C)」の形態を有する括弧付きの表現は、化学基の非置換形態がxおよびyを含めてx個の炭素原子からy個の炭素原子までを有することを意味する。例えば、(C-C50)アルキルは、その非置換形態では1~50個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態および一般構造において、ある特定の化学基は、Rなどの1つ以上の置換基によって置換されてもよい。括弧付きの「(C-C)」を使用して定義されるR置換化学基は、任意の基Rの同一性に従ってy個を超える炭素原子を含有することができる。例えば、「Rがフェニル(-C)である正確に1つの基Rによって置換された(C-C50)アルキル」は、7~56個の炭素原子を含有し得る。したがって、一般に、括弧付きの「(C-C)」を使用して定義される化学基が1つ以上の炭素原子含有置換基Rによって置換されるとき、化学基の炭素原子の最小および最大合計数は、xとyとの両方に、すべての炭素原子含有置換基R由来の炭素原子の合計数を加えることによって、決定される。
【0026】
「置換」という用語は、対応する非置換化合物の炭素原子もしくはヘテロ原子または官能基に結合した少なくとも1個の水素原子(-H)が、置換基(例えばR)によって置き換えられることを意味する。「-H」という用語は、別の原子に共有結合している水素または水素ラジカルを意味する。「水素」および「-H」は、交換可能であり、明記されていない限りは、同一の意味を有する。
【0027】
「ハロゲン置換」という用語は、対応する非置換化合物の炭素原子もしくはヘテロ原子または官能基に結合した少なくとも1個の水素原子(-H)が、ハロゲンによって置き換えられることを意味する。「ハロゲン置換」および「ハロゲン化」という用語は、交換可能である。「過ハロゲン化」という用語は、対応する非置換化合物の炭素原子もしくはヘテロ原子または官能基に結合したすべての水素原子(-H)が、ハロゲンによって置き換えられることを意味する。「ハロゲン置換」という用語は、対応する非置換化合物の炭素原子もしくはヘテロ原子または官能基に結合した少なくとも1個の水素原子(-H)が、フッ素原子によって置き換えられることを意味する。
【0028】
本開示では、「ハロゲン原子」または「ハロゲン」という用語は、フッ素原子(F)または塩素原子(Cl)のラジカルを意味する。「ハロゲン化物」という用語は、ハロゲン原子のアニオン形態、例えば、フッ化物()または塩化物(Cl)を意味する。
【0029】
「(C-C50)ヒドロカルビル」という用語は、1~50個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルを意味し、「(C-C50)ヒドロカルビレン」という用語は、1~50個の炭素原子を有する炭化水素ジラジカルを意味し、そこで、各炭化水素ラジカルおよび各炭化水素ジラジカルは、芳香族または非芳香族、飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖、環式(3個以上の炭素を有し、単環式および多環式、縮合および非縮合の多環式、ならびに二環式を含む)または非環式であり、1つ以上のRによって置換されているか、または置換されていない。
【0030】
本開示において、(C-C50)ヒドロカルビルは、非置換またはは置換(C-C50)アルキル、(C-C50)シクロアルキル、(C-C20)シクロアルキル-(C-C20)アルキレン、(C-C40)アリール、または(C-C20)アリール-(C-C20)アルキレン(ベンジル(-CH-C)など)であり得る。
【0031】
「(C-C50)アルキル」および「(C-C18)アルキル」という用語は、非置換または1つ以上のRによって置換されている、それぞれ、1~50個の炭素原子を有する飽和直鎖または分岐炭化水素ラジカルおよび1~18個の炭素原子を有する飽和直鎖または分岐炭化水素ラジカルを意味する。非置換(C-C50)アルキルの例は、非置換(C-C20)アルキル、非置換(C-C10)アルキル、非置換(C-C)アルキル、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、1-ペンチル、1-ヘキシル、1-ヘプチル、1-ノニル、および1-デシルである。置換(C-C40)アルキルの例は、置換(C-C20)アルキル、置換(C-C10)アルキル、トリフルオロメチル、および[C45]アルキルである。「[C45]アルキル」という用語は、置換基を含むラジカル中に最大45個の炭素原子が存在することを意味し、例えば、それぞれ、(C-C)アルキルである1つのRによって置換されている(C27-C40)アルキルである。より広義には、「[C]アルキル」という用語は、置換基を含めて、ラジカル中に最大z個の炭素原子が存在することを意味し、zは正の整数である。各(C-C)アルキルは、メチル、トリフルオロメチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、または1,1-ジメチルエチルであることができる。
【0032】
「(C-C50)アリール」という用語は、6~40個の炭素原子の非置換または(1つ以上のRによって)置換された単環式、二環式、または三環式芳香族炭化水素ラジカルを意味し、炭素原子のうちの少なくとも6~14個は芳香環炭素原子である。単環式芳香族炭化水素ラジカルは、1つの芳香環を含み、二環式芳香族炭化水素ラジカルは2つの環を有し、三環式芳香族炭化水素ラジカルは3つの環を有する。二環式または三環式芳香族炭化水素ラジカルが存在するとき、そのラジカルの環のうちの少なくとも1つは芳香族である。芳香族ラジカルの他の1つまたは複数の環は独立して、縮合または非縮合の芳香族または非芳香族であり得る。非置換(C-C50)アリールの例としては、非置換(C-C20)アリール、非置換(C-C18)アリール、2-(C-C)アルキル-フェニル、フェニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、インダセニル、ヘキサヒドロインダセニル、インデニル、ジヒドロインデニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、およびフェナントレンが挙げられる。置換(C-C40)アリールの例としては、置換(C-C20)アリール、置換(C-C18)アリール、2,4-ビス([C20]アルキル)-フェニル、ポリフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、フルオレン-9-オン-1-イル、およびビフェニルが挙げられる。
【0033】
「(C-C50)シクロアルキル」という用語は、非置換であるかまたは1つ以上のRによって置換されている、3~50個の炭素原子を有する飽和環式炭化水素ラジカルを意味する。他のシクロアルキル基(例えば(C-C)シクロアルキル)は、x~y個の炭素原子を有し、非置換であるか、または1つ以上のRによって置換されているかのいずれかであると同様な様式で定義される。非置換(C-C40)シクロアルキルの例は、非置換(C-C20)シクロアルキル、非置換(C-C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、およびシクロデシルである。置換(C-C40)シクロアルキルの例は、置換(C-C20)シクロアルキル、置換(C-C10)シクロアルキル、および1-フルオロシクロヘキシルである。
【0034】
(C-C50)ヒドロカルビレンの例としては、非置換または置換(C-C50)アリーレン、(C-C50)シクロアルキレン、および(C-C50)アルキレン(例えば、(C-C20)アルキレン)が挙げられる。ジラジカルは、同じ炭素原子上(例えば-CH-)もしくは隣接する炭素原子(すなわち1,2-ジラジカル)上にあってもよく、または1個、2個、もしくは3個以上の介在炭素原子によって離間されている(例えば1,3-ジラジカル、1,4-ジラジカルなど)。いくつかのジラジカルとしては、1,2-、1,3-、1,4-、またはα,ω-ジラジカルが挙げられる。α,ω-ジラジカルは、ラジカル炭素間に最大の炭素骨格間隔を有するジラジカルである。(C-C20)アルキレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、エタン-1,2-ジイル(すなわち、-CHCH-)、プロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CHCHCH-)、2-メチルプロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CHCH(CH)CH-)が挙げられる。(C-C50)アリーレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、フェニル-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、またはナフタレン-3,7-ジイルが挙げられる。
【0035】
「(C-C50)アルキレン」という用語は、非置換または1つ以上のRによって置換されている1~50個の炭素原子を有する飽和直鎖または分岐鎖のジラジカル(すなわち、ラジカルが環原子上にない)を意味する。非置換(C-C50)アルキレンの例は、非置換(C-C20)アルキレンであり、非置換-CHCH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-CHHCH、および-(CH(H)CHを含み、「C」は、水素原子が、第二級もしくは第三級アルキルラジカルを形成するために除去される炭素原子を表す。置換(C-C50)アルキレンの例は、置換(C-C20)アルキレン、-CF-、-C(O)-、および-(CH14C(CH(CH-(すなわち、6,6-ジメチル置換ノルマル-1,20-エイコシレン)である。前述のように、2つのRが一緒になって(C-C18)アルキレンを形成することができるため、置換(C-C50)アルキレンの例としてはまた、1,2-ビス(メチレン)シクロペンタン、1,2-ビス(メチレン)シクロヘキサン、2,3-ビス(メチレン)-7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、および2,3-ビス(メチレン)ビシクロ[2.2.2]オクタンが挙げられる。
【0036】
「(C-C50)シクロアルキレン」という用語は、3~50個の炭素原子を有する、非置換または1つ以上のRによって置換されている、環式ジラジカル(すなわち、ラジカルが環原子上にある)を意味する。
【0037】
「ヘテロ原子」という用語は、水素または炭素以外の原子を指す。1個または2個以上のヘテロ原子を含有する基の例としては、O、S、S(O)、S(O)、Si(R、P(R)、N(R)、-N=C(R、-Ge(R-、または-Si(R)-が挙げられ、各Rおよび各Rは、非置換(C-C18)ヒドロカルビルまたは-Hであり、各Rは非置換(C-C18)ヒドロカルビルである。「ヘテロ炭化水素」という用語は、炭化水素の1個以上の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられている分子または分子骨格を指す。「(C-C50)ヘテロヒドロカルビル」という用語は、1~50個の炭素原子を有するヘテロ炭化水素ラジカルを意味し、「(C-C50)ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、1~50個の炭素原子を有するヘテロ炭化水素ジラジカルを意味する。(C-C50)ヘテロヒドロカルビルまたは(C-C50)ヘテロヒドロカルビレンのヘテロ炭化水素ジラジカルは、1個以上のヘテロ原子を有する。ヘテロヒドロカルビルのラジカルは、炭素原子上またはヘテロ原子上に存在することができる。ヘテロヒドロカルビレンの2つの基は、単一の炭素原子上または単一のヘテロ原子上に存在することができる。加えて、ジラジカルの2つのラジカルのうちの1つは炭素原子上に存在することができ、他方のラジカルは異なる炭素原子上に存在することができ、2つのラジカルのうちの1つは炭素原子上に存在することができ、他方はヘテロ原子上に存在することができるか、または2つのラジカルのうちの1つはヘテロ原子上に存在することができ、他方のラジカルは異なるヘテロ原子上に存在することができる。各(C-C50)ヘテロヒドロカルビルおよび(C-C50)ヘテロヒドロカルビレンは、非置換または(1つ以上のRによって)置換、芳香族または非芳香族、飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖、環式(単環式および多環式、縮合多環式および非縮合多環式を含む)または非環式であってもよい。
【0038】
(C-C50)ヘテロヒドロカルビルは、非置換または置換されてもよい。(C-C50)ヘテロヒドロカルビルの非限定的な例としては、(C-C50)ヘテロアルキル、(C-C50)ヒドロカルビル-O-、(C-C50)ヒドロカルビル-S-、(C-C50)ヒドロカルビル-S(O)-、(C-C50)ヒドロカルビル-S(O)-、(C-C50)ヒドロカルビル-Si(R-、(C-C50)ヒドロカルビル-N(R)-、(C-C50)ヒドロカルビル-P(R)-、(C-C50)ヘテロシクロアルキル、(C-C19)ヘテロシクロアルキル-(C-C20)アルキレン、(C-C20)シクロアルキル-(C-C19)ヘテロアルキレン、(C-C19)ヘテロシクロアルキル-(C-C20)ヘテロアルキレン、(C-C50)ヘテロアリール、(C-C19)ヘテロアリール-(C-C20)アルキレン、(C-C20)アリール-(C-C19)ヘテロアルキレン、または(C-C19)ヘテロアリール-(C-C20)ヘテロアルキレンが挙げられる。
【0039】
「(C-C50)ヘテロアリール」という用語は、合計4~50個の炭素原子および1~10個のヘテロ原子の、非置換または(1つ以上のRによって)置換された単環式、二環式、または三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルを意味する。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、1つのヘテロ芳香環を含み、二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、2つの環を有し、三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、3つの環を有する。二環式または三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルが存在する場合、ラジカルにおける環のうちの少なくとも1つは、ヘテロ芳香族である。ヘテロ芳香族ラジカルの他の1つまたは複数の環は独立して、縮合または非縮合および芳香族または非芳香族であることができる。他のヘテロアリール基(例えば、一般に(C-C)ヘテロアリール、(C-C12)ヘテロアリールなど)は、x~y個の炭素原子(4~12個の炭素原子など)を有し、かつ非置換または1つもしくは2つ以上のRによって置換されているものと同様な様式で定義される。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、5員環または6員環である。
【0040】
5員環単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、5マイナスh個の炭素原子を有し、hは、ヘテロ原子の数であり、1、2、3、または4つであり得、各ヘテロ原子は、O、S、N、またはPであり得る。5員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、ピロール-1-イル、ピロール-2-イル、フラン-3-イル、チオフェン-2-イル、ピラゾール-1-イル、イソキサゾール-2-イル、イソチアゾール-5-イル、イミダゾール-2-イル、オキサゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、テトラゾール-1-イル、テトラゾール-2-イル、およびテトラゾール-5-イルが挙げられる。
【0041】
6員環単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、6マイナスh個の炭素原子を有し、hは、ヘテロ原子の数であり、1または2であり得、ヘテロ原子は、NまたはPであり得る。6員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、ピリジン-2-イル、ピリミジン-2-イル、およびピラジン-2-イルが挙げられる。
【0042】
二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6-または6,6-環系であり得る。縮合5,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、インドール-1-イル、およびベンズイミダゾール-1-イルが挙げられる。縮合6,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、キノリン-2-イル、およびイソキノリン-1-イルが挙げられる。三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは縮合5,6,5-、5,6,6-、6,5,6-、または6,6,6-環系であり得る。縮合5,6,5-環系の例としては、1,7-ジヒドロピロロ[3,2-f]インドール-1-イルが挙げられる。縮合5,6,6-環系の例としては、1H-ベンゾ[f]インドール-1-イルが挙げられる。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,6,6-環系の例としては、アクリジン-9-イルである。
【0043】
(C-C50)ヘテロアルキルという用語は、1~50個の炭素原子および1個以上のヘテロ原子を含有する飽和直鎖または分岐鎖ラジカルを意味する。「(C-C50)ヘテロアルキレン」という用語は、1~50個の炭素原子および1個または2個以上のヘテロ原子を含有する飽和直鎖または分岐鎖ジラジカルを意味する。ヘテロアルキルまたはヘテロアルキレンのヘテロ原子としては、Si(R、Ge(R、Si(R、Ge(R、P(R、P(R)、N(R、N(R)、N、O、OR、S、SR、S(O)、およびS(O)が挙げられ得、ヘテロアルキルおよびヘテロアルキレンの各々は、非置換または1つ以上のRによって置換されている
【0044】
非置換(C-C40)ヘテロシクロアルキルの例としては、非置換(C-C20)ヘテロシクロアルキル、非置換(C-C10)ヘテロシクロアルキル、アジリジン-1-イル、オキセタン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、ピロリジン-1-イル、テトラヒドロチオフェン-S,S-ジオキシド-2-イル、モルホリン-4-イル、1,4-ジオキサン-2-イル、ヘキサヒドロアゼピン-4-イル、3-オキサ-シクロオクチル、5-チオ-シクロノニル、および2-アザ-シクロデシルが挙げられる。
【0045】
「飽和」という用語は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、ならびに(ヘテロ原子含有基において)炭素-窒素、炭素-リン、および炭素-ケイ素二重結合を欠くことを意味する。飽和化学基が1つ以上の置換基Rによって置換されている場合、1つ以上の二重結合および/または三重結合は、任意に、置換基R中に存在していてもよい。「不飽和」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合もしくは炭素-炭素三重結合、または(ヘテロ原子含有基における)1つ以上の炭素-窒素二重結合、炭素-リン二重結合、もしくは炭素-ケイ素二重結合を含有し、置換基R(存在する場合)、または芳香環もしくはヘテロ芳香環(存在する場合)に存在し得る二重結合を含まないことを意味する。
【0046】
本開示の実施形態は、オレフィンを重合するためのプロセスを含み、プロセスは、エチレン、1つ以上の(C-C40)アルファ-オレフィンコモノマー、触媒、およびイオン性金属活性化剤錯体を一緒に接触させることを含む。イオン性金属活性化剤錯体は、アニオンおよび対カチオンを含む。アニオンは、式(I)に従った構造を有する。
【化4】
【0047】
式(I)では、各Xは、ハロゲン、ハロゲン置換(C-C20)アルキル、(C-C20)アルキル、ハロゲン置換(C-C40)アリール、(C-C40)アリール、または-S(O)から独立して選択された単座配位子である。
【0048】
式(I)では、各Mは独立して、アルミニウム、ホウ素、またはガリウムであり、下付き文字nは、2、3、または4である。各Rは独立して、式(II)を有するラジカル、および式(III)を有するラジカルからなる群から選択される。
【化5】
【0049】
式(II)では、各Yは独立して、炭素またはケイ素であり、各R11、R12、R13は独立して、(C-C40)アルキル、(C-C40)アリール、-H、-NR 、-OR、-SR、またはハロゲンから選択される。式(I)のいくつかの実施形態では、各Rが式(II)に従ったラジカルであり、Yが炭素であるとき、R11、R12、またはR13のうちの少なくとも1つは、ハロゲン置換(C-C40)アルキル、ハロゲン置換(C-C40)アリール、または-Fである。式(I)の他の実施形態では、Mがアルミニウムであり、nが4であり、各Rが式(II)に従ったラジカルであり、各Yが炭素であるとき、(1)各Rのうちの各R11、R12、およびR13は、ハロゲン置換(C-C40)アルキル、ハロゲン置換(C-C40)アリール、もしくは-Fであるか、または(2)各RのうちのR11、R12、およびR13のフッ素原子の総数は、少なくとも6である。
【0050】
式(III)では、各R21、R22、R23、R24、およびR25は独立して、(C-C40)アルキル、(C-C40)アリール、-H、-NR 、-OR、-SR、またはハロゲンから選択される。Rが式(III)に従ったラジカルであるとき、R21、R22、R23、R24、またはR25のうちの少なくとも1つは、ハロゲン置換(C-C40)アルキル、ハロゲン置換(C-C40)アリール、または-Fである。
【0051】
式(I)のアニオンの1つ以上の実施形態では、下付き文字nは4であり、各R基は独立して、-C(H)(CF、-C、または-C(CFである。他の実施形態では、下付き文字nは4であり、4つのR基のうちの3つは、-C(CFであり、4つのR基のうちの1つは、-Cである。いくつかの実施形態では、nは3であり、Xは-OH、トリフラート(-OTf)、メチル、またはハロゲンから選択される。
【0052】
触媒系の1つ以上の実施形態では、式(I)のアニオンの2つのX基は共有結合しており、アニオンは式(IV)に従った構造を有する。
【化6】
【0053】
式(IV)では、MおよびXは、式(I)で定義されたとおりであり、下付き文字nは、1または2である。Lは、共有結合している2つの基Rを表し、各Lは独立して、(C-C40)アルキレン、(C-C40)ヘテロアルキレン、または-(Si(R-O)-Si(R-(式中、下付き文字zが、0、1、2、または3である)から選択され、Rは独立して、(C-C30)ヒドロカルビル、または-Hである。式(IV)では、nは1であり、Xは、ハロゲン化-(C-C20)アルキルから独立して選択された単座配位子である。
【0054】
式(IV)のアニオンを含む触媒系の1つ以上の実施形態では、Lは、ハロゲン化ビフェニルジラジカルイオン、またはハロゲン化ナフタレンジイルである。ハロゲン化ビフェニルジラジカルイオンは、各々のフェニル環上に単一のラジカルを有し得る。ハロゲン化ナフタレンジイル上のジラジカルは、ナフタレンの4個以上の炭素原子によって分離されていてもよい。
【0055】
1つ以上の実施形態では、イオン性金属活性化剤錯体は、式(I)または(IV)に従ったアニオン、および+1の形式電荷を有する対カチオンを含む。金属イオン錯体のいくつかの実施形態では、対カチオンは、プロトン化トリ[(C-C40)ヒドロカルビル]アンモニウムカチオンから選択される。いくつかの実施形態では、対カチオンは、アンモニウムカチオン上に1つまたは2つの(C14-C20)アルキル基を含有する、プロトン化トリアルキルアンモニウムカチオンである。1つ以上の実施形態では、対カチオンは、N(CH)HR であり、式中、Rが、(C16-C18)アルキルである。他の実施形態では、対カチオンは、N(H)R であり、式中、各Rが、(C-C20)アルキル、または(C-C20)アリールから選択される。1つ以上の実施形態では、対カチオンは、N(H)R であり、式中、少なくとも2つのRが、(C10-C20)アルキルから選択される。1つ以上の実施形態では、対カチオンは、N(H)R であり、式中、Rが、(C16-C18)アルキルである。いくつかの実施形態では、対カチオンは、メチルジ(オクタデシル)アンモニウムカチオン、メチル(オクタデシル)(ヘキサデシル)アンモニウムカチオン、メチルジ(ヘキサデシル)アンモニウムカチオン、またはメチルジ(テトラデシル)アンモニウムカチオンから選択される。メチルジ(オクタデシル)アンモニウムカチオン、メチル(オクタデシル)(ヘキサデシル)アンモニウムカチオン、メチルジ(ヘキサデシル)アンモニウムカチオン、またはメチルジ(テトラデシル)アンモニウムカチオンは、本明細書ではまとめてアーメーニウム(armeenium)カチオンと称される。アーメーニウムカチオンを有するイオン性化合物は、Akzo-NobelからArmeen(商標)の商品名で入手可能な例えばArmeen(商標)M2HTである、メチルジ(オクタデシル)アミン、メチル(オクタデシル)(ヘキサデシル)アミン、メチルジ(ヘキサデシル)アミン、またはメチルジ(テトラデシル)アミンを、(例えば、エーテル中の無水HClで)プロトン化することによって容易に形成される。他の実施形態では、対カチオンは、トリチルフェニルメチルカルボカチオン(C(C)であり、トリチルとも称される。1つ以上の実施形態では、対カチオンは、C(Cなどのトリス-置換-トリフェニルメチルカルボカチオンであり、式中、各Rが独立して、(C-C30)アルキルから選択される。他の実施形態では、対カチオンは、アニリニウム、フェロセニウム、またはアルミノセニウムから選択される。アニリニウムカチオンは、[HN(R)(Rなどのプロトン化窒素カチオンであり、式中、Rが、(C-C20)アルキル、またはHであり、Rが、(C-C20)アリールから選択され、各アルキルまたはアリールは、-OR、例えばCNMe、または[HN(C)]でさらに置換されていてもよい。アルミノセニウムは、R Al(H)(THF) 、またはRAl(H)(THF) などのプロトン化アルミニウムカチオンであり、式中、Rが、(C-C30)アルキルから選択される。
【0056】
1つ以上の実施形態では、高沸点完全飽和炭化水素中に、200マイクロモルの濃度の金属活性化剤錯体および18ミリモルの水を含有する、高沸点完全飽和炭化水素溶液中のイオン性金属活性化剤錯体は、炭化水素導電率試験によって測定すると、0.1以下の誘電正接を有する。いくつかの実施形態では、同じ様式で測定された金属活性化剤錯体の誘電正接は、0.05以下、0.03以下、または0.025以下の誘電正接を有する。高沸点完全飽和炭化水素溶液(「炭化水素溶液」)は、高沸点完全飽和炭化水素溶媒、水、およびイオン性金属活性化剤錯体を含む。高沸点完全飽和炭化水素溶媒としては、約150℃~約190℃の沸点を有する溶媒を上げることができる。そのような高沸点完全飽和炭化水素溶媒の例としては、例えば、スクアラン、ドデカン、エイコサン、またはトリアコンタンが挙げられる。
【0057】
本開示に従った重合プロセスによって生成されたポリオレフィンエラストマー、特に式(I)に従ったイオン性金属活性化剤錯体によって生成されたポリオレフィンエラストマーの電気的特性は、炭化水素導電率(HC)試験によって、他のポリオレフィンエラストマーの電気的特性と比較して評価することができる。HC試験は、メチルジ((C14-C20)アルキル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの比較活性化剤によって生成されるポリオレフィンエラストマーと、本開示のイオン性金属活性化剤イオン錯体によって生成されるポリオレフィンエラストマーとの間の電気的特性の違いを模擬実験する。HC試験では、活性化剤を高沸点完全飽和炭化水素溶媒中に室温で溶解させる。(室温は、およそ22.0±2.5℃である。)
【0058】
HC試験では、炭化水素試料の誘電正接(60Hz)および導電率を測定する。Novocontrol Technologiesの広帯域誘電分光計(Alpha-A)を使用する標準的な方法を使用して、炭化水素試料の各々を測定する。すべての試料調製ステップおよび測定は、穏やかな加熱以外、室温で実施した。
【0059】
HC試験用の炭化水素試料を調製するために、およそ10mLの炭化水素溶媒に一定量の活性化剤を添加して、溶液中およそ200μMの活性化剤の濃度を有する試料を作り出す。含水炭化水素試料では、脱イオン水を添加して、およそ20mMの濃度を得、一定量の活性化剤を添加して、200μMの活性化剤炭化水素溶液を得る。すべての試料を250℃まで穏やかに加熱して、水および残留する低沸点の溶媒を除去する。誘電正接および導電率を測定する。
【0060】
触媒系中の1つ以上の第IV族金属-配位子錯体の総モル数対触媒系中の1つ以上のイオン性金属活性化剤錯体の総モル数の比は、1:10,000~100:1である。
【0061】
例示的な実施形態では、触媒系は、アニオンおよび対カチオンを含むイオン性金属活性化剤錯体を含み得、アニオンは式(I)に従う。例示的な実施形態は、本開示に記載の対カチオンと錯体を形成したアニオン構造を含み、次の構造を有する。
【化7】
【0062】
ポリマーの電気的特性
ポリマー材料などの媒体の電気絶縁効率は、媒体の電気抵抗および媒体の電気損失を考慮して評価することができる。電気損失は、電場の存在下で、絶縁媒体が電気的に絶縁する効率を低下させる。抵抗は、電力または電気損失に逆相関するため、絶縁媒体の抵抗は、交流(AC)システムと直流(DC)システムとの両方で可能な限り高くする必要がある。
【0063】
ポリマー材料などの絶縁媒体に封入された光起電デバイスなどのDCシステムでは、電気損失は、封入されたデバイスから封入剤を通って外部環境への漏れ電流として現れる。この電流(I)は、絶縁媒体の電圧(V)に相関し、等式I=V×R-1に従って、絶縁媒体の抵抗(R)に逆相関する。したがって、抵抗が高いほど、電流および漏れ電流は少なくなる。
【0064】
ケーブル絶縁体などの絶縁媒体を含むACシステムでは、電気損失は、電場の存在下での絶縁媒体によるエネルギーの吸収として現れる。電力(P)で測定するこの損失は、等式P=V×ω×C×ε′×tanδによって決定され、式中、ωが角周波数であり、ε’が、比誘電率であり、Cが、キャパシタンスであり、tanδが、誘電正接であり、tanδ=(C×R×ω)-1であり、等式P=V2×ε′×R-1を生じる。抵抗は電力損失に逆相関するため、抵抗が高いほど電力損失は低くなる。
【0065】
媒体の電気抵抗は、一般に、外部電場によって引き起こされるイオン拡散の結果として減少する。イオン拡散が電気的応答よりも優勢であるシステムでは、抵抗は、等式R=6×π×ε′×ε×η×r×C-1×q-2×N-1に従ってイオン拡散に相関し、式中、εが、真空誘電率(8.854×10-12F・m-1)であり、ηが、媒体の動粘度であり、rがイオンの流体力学的半径であり、qが、イオンの電荷であり、Nが、イオンの濃度である。抵抗の増加はエネルギー損失を減少させ、イオン濃度の減少は抵抗を増加させるため、媒体を通じて拡散するイオンの濃度の低減は、エネルギー損失を減少させる。
【0066】
所与の媒体を通じて拡散するイオンの能力は、イオンのサイズ、イオンの電荷、イオンと周囲の媒体との相互作用、および利用可能な対イオンとのイオンの解離エネルギーによって影響を受ける。すべてのイオンが所与の媒体を通じて等しく拡散するわけではないため、媒体がポリマーであると、イオンの拡散率は、一般にポリマーの絶縁能力に影響を与える。理論によって束縛されることを意図するわけではないが、式(I)のイオン性金属活性化剤錯体のアニオンが、生成されたポリマーを通じて拡散する能力が低いため、本開示の触媒系から生成されたポリマーは、電気損失の減少などの望ましい電気的特性を有すると考えられる。
【0067】
触媒系成分
触媒系としては、プロ触媒を挙げることができる。プロ触媒は、式(I)のアニオンおよび対カチオンを有する金属活性化剤に錯体を接触させるか、または金属活性化剤と錯体を組み合わせることによって、触媒的に活性になることができる。プロ触媒は、チタン(Ti)金属-配位子錯体、ジルコニウム(Zr)金属-配位子錯体、またはハフニウム(Hf)金属-配位子錯体などの、第IV属金属(CASに従った第IVB族、またはIUPAC命名規則に従った第4族)-配位子錯体から選択することができる。プロ触媒の非限定的な例としては、触媒、プロ触媒、またはエチレン系ポリマーを重合するための触媒活性化合物が挙げられ、US8372927、WO2010/022228、WO2011/102989、US6953764、US6900321、WO2017/173080、US7650930、US6777509、WO99/41294、US6869904、またはWO2007/136496のうちの1つ以上に開示されており、これらの文書はすべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0068】
1つ以上の実施形態では、第IV族金属-配位子プロ触媒錯体としては、ビス(フェニルフェノキシ)第IV族金属-配位子錯体、または拘束された形状の第IV族金属-配位子錯体が挙げられる。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、第IV族金属-配位子プロ触媒錯体は、式(X)に従ったビス(フェニルフェノキシ)構造を含み得る。
【化8】
【0070】
式(X)では、Mは、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムから選択された金属であり、金属が、+2、+3、または+4の形式的酸化状態にある。(X)の下付き文字nは、0、1、または2である。下付き文字nが1のとき、Xは、単座配位子または二座配位子であり、下付き文字nが2のとき、各Xは、単座配位子である。Lは、(C-C40)ヒドロカルビレン、(C-C40)ヘテロヒドロカルビレン、-Si(R-、-Si(ROSi(R-、-Si(RC(R-、-Si(RSi(R-、-Si(RC(RSi(R-、-C(RSi(RC(R-、-N(R)C(R-、-N(R)N(R)-、-C(RN(R)C(R-、-Ge(R-、-P(R)-、-N(R)-、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)-、-N=C(R)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)N(R)-、および-N(R)C(O)-からなる群から選択された、ジラジカルである。各Zは独立して、-O-、-S-、-N(R)-、または-P(R)-から選択され、R-R、R-R-8、R-R12、およびR13-R15は独立して、-H、(C-C40)ヒドロカルビル、(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、-N=C(R、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、およびハロゲンからなる群から選択される。RおよびR16は、式(XI)を有するラジカル、式(XII)を有するラジカル、および式(XIII)を有するラジカルから選択される。
【化9】
【0071】
式(XI)、(XII)、および(XIII)では、R31-R35、R41-R48、およびR51-R59の各々は独立して、-H、(C-C40)ヒドロカルビル、(C-C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、またはハロゲンから選択される。
【0072】
1つ以上の実施形態では、各Xは、任意の他の配位子Xから独立して、ハロゲン、非置換(C-C20)ヒドロカルビル、非置換(C-C20)ヒドロカルビルC(O)O-、またはRN-である単座配位子であり得、式中、RおよびRの各々が独立して、非置換(C-C20)ヒドロカルビルである。
【0073】
式(X)に従った例示的なビス(フェニルフェノキシ)金属-配位子錯体としては、例えば、
【0074】
(2’,2”-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(5’-クロロ-3-(3,6-ジ-tert-オクチル-9H-カルバゾール-9-イル)-3’-メチル-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-ハフニウム;
【0075】
(2’,2”-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-3’-クロロ-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-ハフニウム;
【0076】
(2’,2”-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(3’-クロロ-3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-5’-フルオロ-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-ハフニウム;
【0077】
(2’,2”-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-3’-メチル-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-ハフニウム;
【0078】
(2’,2”-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(5’-シアノ-3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-3’-メチル-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-ハフニウム;
【0079】
(2’,2”-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(5’-ジメチルアミノ-3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-3’-メチル-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-ハフニウム;
【0080】
(2’,2”-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(3’,5’-ジメチル-3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-ハフニウム;
【0081】
(2’,2”-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(5’-クロロ-3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-3’-エチル-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-ハフニウム;
【0082】
(2’,2”-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-3’-メチル-5’-tert-ブチル-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-ハフニウム;
【0083】
(2’,2”-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-5’-フルオロ-3’-メチル-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-ハフニウム;
【0084】
(2’,2”-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(3-(9H-カルバゾール-9-イル)-5’-クロロ-3’-メチル-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-ハフニウム;
【0085】
(2’,2”-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-3’-メチル-5’-トリフルオロメチル-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-ハフニウム;
【0086】
(2’,2”-(2,2-ジメチル-2-シラプロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(3’,5’-ジクロロ-3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-ハフニウム;
【0087】
(2’2”-(2,2-ジメチル-2-シラプロパン-1-ジイルビス(オキシ))ビス(5’-クロロ-3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9-カルバゾール-9-イル)-3’-メチル-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-ハフニウム;
【0088】
(2’,2”-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(3’-ブロモ-5’-クロロ-3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-ハフニウム;
【0089】
(2’,2”-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))-(5’-クロロ-3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-3’-フルオロ-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)-(3”,5”-ジクロロ-3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-ハフニウム;
【0090】
(2’,2”-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-5’-フルオロ-3’-トリフルオロメチル-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-ハフニウム;
【0091】
(2’,2”-(ブタン-1,4-ジイルビス(オキシ))ビス(5’-クロロ-3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-3’-メチル-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-ハフニウム;
【0092】
(2’,2”-(エタン-1,2-ジイルビス(オキシ))ビス(5’-クロロ-3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-3’-メチル-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-ハフニウム;
【0093】
(2’,2”-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(5’-クロロ-3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-3’-メチル-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-ジルコニウム;
【0094】
(2’,2”-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-3’,5’-ジクロロ-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-チタン;および
【0095】
(2’,2”-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(5’-クロロ-3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-3’-メチル-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)ジメチル-チタンが挙げられる。
【0096】
本開示の触媒系において、金属活性化剤と組み合わせて使用することができる他のビス(フェニルフェノキシ)金属-配位子錯体は、当業者には明らかであろう。
【0097】
いくつかの実施形態によれば、第IV族金属-配位子錯体は、式(XIV)に従ったシクロペンタジエニルプロ触媒を含み得る。
【0098】
LpMXX’X”、または(XIV)の二量体。
【0099】
式(XIV)では、Lpは、最大50個の非水素原子を含有する、Mに結合しているアニオン性の非局在化したπ結合基である。式(XIV)のいくつかの実施形態では、2つのLp基が、一緒に結合して架橋構造を形成してもよく、さらに任意選択的に1つのLpが、Xに結合してもよい。
【0100】
式(XIV)では、Mは、+2、+3、または+4の形式的酸化状態にある、元素周期表の第4族金属である。Xは、Mを含むメタロサイクルをLpと一緒に形成する、任意選択的な最大50個の非水素原子の二価の置換基である。X’は、最大20個の非水素原子を有する、任意選択的な中性配位子であり、各X”は独立して、最大40個の非水素原子を有する一価のアニオン部分である。任意選択的に、2つのX”基が一緒に共有結合して、両方の原子価がMに結合している2価のジアニオン部分を形成してもよいか、または任意選択的に、2つのX”基が一緒に共有結合して、Mが+2の酸化状態にあるMにπ結合している中性の、共役もしくは非共役ジエンを形成してもよい。他の実施形態では、1つ以上のX”基および1つ以上のX’基は、一緒に結合してもよく、それにより、Mに共有結合し、かつルイス塩基官能基によってMに配位している部分を形成する。Lpの下付き文字iは、0、1、または2であり、X’の下付き文字nは、0、1、2、または3であり、Xの下付き文字mは、0または1であり、X”の下付き文字pは、0、1、2、または3である。i+m+pの合計は、Mの式の形式的酸化状態に等しい。
【0101】
例示的な第IV族金属-配位子錯体としては、シクロペンタジエニルプロ触媒を挙げることができ、これは、本発明の実施において用いることができ、
【0102】
シクロペンタジエニルチタントリメチル;
【0103】
シクロペンタジエニルチタントリエチル;
【0104】
シクロペンタジエニルチタントリイソプロピル;
【0105】
シクロペンタジエニルチタントリフェニル;
【0106】
シクロペンタジエニルチタントリベンジル;
【0107】
シクロペンタジエニルチタン-2,4-ジメチルペンタジエニル;
【0108】
シクロペンタジエニルチタン-2,4-ジメチルペンタジエニル・トリエチルホスフィン;
【0109】
シクロペンタジエニルチタン-2,4-ジメチルペンタジエニル・トリメチルホスフィン;
【0110】
シクロペンタジエニルチタンジメチルメトキシド;
【0111】
シクロペンタジエニルチタンジメチルクロリド;
【0112】
ペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリメチル;
【0113】
インデニルチタントリメチル;
【0114】
インデニルチタントリエチル;
【0115】
インデニルチタントリプロピル;
【0116】
インデニルチタントリフェニル;
【0117】
テトラヒドロインデニルチタントリベンジル;
【0118】
ペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリイソプロピル;
【0119】
ペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリベンジル;
【0120】
ペンタメチルシクロペンタジエニルチタンジメチルメトキシド;
【0121】
ペンタメチルシクロペンタジエニルチタンジメチルクロリド;
【0122】
ビス(η-2,4-ジメチルペンタジエニル)チタン;
【0123】
ビス(η-2,4-ジメチルペンタジエニル)チタン・トリメチルホスフィン;
【0124】
ビス(η-2,4-ジメチルペンタジエニル)チタン・トリエチルホスフィン;
【0125】
オクタヒドロフルオレニルチタントリメチル;
【0126】
テトラヒドロインデニルチタントリメチル;
【0127】
テトラヒドロフルオレニルチタントリメチル;
【0128】
(tert-ブチルアミド)(1,1-ジメチル-2,3,4,9,10-η-1,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロナフタレニル)ジメチルシランチタンジメチル;
【0129】
(tert-ブチルアミド)(1,1,2,3-テトラメチル-2,3,4,9,10-η-1,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロナフタレニル)ジメチルシランチタンジメチル;
【0130】
(tert-ブチルアミド)(テトラメチル-η-シクロペンタジエニル)ジメチルシランチタンジベンジル;
【0131】
(tert-ブチルアミド)(テトラメチル-η-シクロペンタジエニル)ジメチルシランチタンジメチル;
【0132】
(tert-ブチルアミド)(テトラメチル-η-シクロペンタジエニル)-1,2-エタンジイルチタンジメチル;
【0133】
(tert-ブチルアミド)(テトラメチル-η-インデニル)ジメチルシランチタンジメチル;
【0134】
(tert-ブチルアミド)(テトラメチル-η-シクロペンタジエニル)ジメチルシランチタン(III)2-(ジメチルアミノ)ベンジル、
【0135】
(tert-ブチルアミド)(テトラメチル-η-シクロペンタジエニル)ジメチルシランチタン(III)アリル;
【0136】
(tert-ブチルアミド)(テトラメチル-η-シクロペンタジエニル)ジメチルシランチタン(III)2,4-ジメチルペンタジエニル;
【0137】
(tert-ブチルアミド)(テトラメチル-η-シクロペンタジエニル)ジメチルシランチタン(II)1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン;
【0138】
(tert-ブチルアミド)(テトラメチル-η-シクロペンタジエニル)ジメチルシランチタン(II)1,3-ペンタジエン;
【0139】
(tert-ブチルアミド)(2-メチルインデニル)ジメチルシランチタン(II)1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン;
【0140】
(tert-ブチルアミド)(2-メチルインデニル)ジメチルシランチタン(II)2,4-ヘキサジエン;
【0141】
(tert-ブチルアミド)(2-メチルインデニル)ジメチルシランチタン(IV)2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン;
【0142】
(tert-ブチルアミド)(2-メチルインデニル)ジメチルシランチタン(IV)イソプレン;
【0143】
(tert-ブチルアミド)(2-メチルインデニル)ジメチルシランチタン(IV)1,3-ブタジエン;
【0144】
(tert-ブチルアミド)(2,3-ジメチルインデニル)ジメチルシランチタン(IV)2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン;
【0145】
(tert-ブチルアミド)(2,3-ジメチルインデニル)ジメチルシランチタン(IV)イソプレン;
【0146】
(tert-ブチルアミド)(2,3-ジメチルインデニル)ジメチルシランチタン(IV)ジメチル;
【0147】
(tert-ブチルアミド)(2,3-ジメチルインデニル)ジメチルシランチタン(IV)ジベンジル;
【0148】
(tert-ブチルアミド)(2,3-ジメチルインデニル)ジメチルシランチタン(IV)1,3-ブタジエン;
【0149】
(tert-ブチルアミド)(2,3-ジメチルインデニル)ジメチルシランチタン(II)1,3-ペンタジエン;
【0150】
(tert-ブチルアミド)(2,3-ジメチルインデニル)ジメチルシランチタン(II)1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン;
【0151】
(tert-ブチルアミド)(2-メチルインデニル)ジメチルシランチタン(II)1,3-ペンタジエン;
【0152】
(tert-ブチルアミド)(2-メチルインデニル)ジメチルシランチタン(IV)ジメチル;
【0153】
(tert-ブチルアミド)(2-メチルインデニル)ジメチルシランチタン(IV)ジベンジル;
【0154】
(tert-ブチルアミド)(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジメチルシランチタン(II)1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン;
【0155】
(tert-ブチルアミド)(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジメチルシランチタン(II)1,3-ペンタジエン;
【0156】
(tert-ブチルアミド)(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジメチルシランチタン(II)2,4-ヘキサジエン;
【0157】
(tert-ブチルアミド)(テトラメチル-η-シクロペンタジエニル)ジメチル-シランチタン(IV)1,3-ブタジエン;
【0158】
(tert-ブチルアミド)(テトラメチル-η-シクロペンタジエニル)ジメチルシランチタン(IV)2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン;
【0159】
(tert-ブチルアミド)(テトラメチル-η-シクロペンタジエニル)ジメチルシランチタン(IV)イソプレン;
【0160】
(tert-ブチルアミド)(テトラメチル-η-シクロペンタジエニル)ジメチル-シランチタン(II)1,4-ジベンジル-1,3-ブタジエン;
【0161】
(tert-ブチルアミド)(テトラメチル-η-シクロペンタジエニル)ジメチルシランチタン(II)2,4-ヘキサジエン;
【0162】
(tert-ブチルアミド)(テトラメチル-η-シクロペンタジエニル)ジメチル-シランチタン(II)3-メチル-1,3-ペンタジエン;
【0163】
(tert-ブチルアミド)(2,4-ジメチルペンタジエン-3-イル)ジメチルシランチタンジメチル;
【0164】
(tert-ブチルアミド)(6,6-ジメチルシクロヘキサジエニル)ジメチルシランチタンジメチル;
【0165】
(tert-ブチルアミド)(1,1-ジメチル-2,3,4,9,10-η-1,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロナフタレン-4-イル)ジメチルシランチタンジメチル;
【0166】
(tert-ブチルアミド)(1,1,2,3-テトラメチル-2,3,4,9,10-η-1,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロナフタレン-4-イル)ジメチルシランチタンジメチル;
【0167】
(tert-ブチルアミド)(テトラメチル-η-シクロペンタジエニルメチルフェニルシランチタン(IV)ジメチル;
【0168】
(tert-ブチルアミド)(テトラメチル-η-シクロペンタジエニルメチルフェニルシランチタン(II)1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン;
【0169】
1-(tert-ブチルアミド)-2-(テトラメチル-η-シクロペンタジエニル)エタンジイルチタン(IV)ジメチル;
【0170】
1-(tert-ブチルアミド)-2-(テトラメチル-η-シクロペンタジエニル)エタンジイル-チタン(II)1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエンが挙げられる。
【0171】
例示的なシクロペンタジエニルプロ触媒の各々は、シクロペンタジエニルプロ触媒のチタン金属中心の代わりにジルコニウムまたはハフニウムを含んでもよい。
【0172】
他のプロ触媒、具体的には他の第IV族金属-配位子錯体を含有するプロ触媒は、当業者には明らかであろう。
【0173】
本開示の触媒系は、式(I)のアニオンおよび対カチオンを有するイオン性金属活性化剤錯体に加えて、助触媒または活性化剤を含み得る。そのような追加の助触媒としては、例えば、各ヒドロカルビル基に1~10個の炭素を有するトリ(ヒドロカルビル)アルミニウム化合物、オリゴマーもしくはポリマーのアルモキサン化合物、各ヒドロカルビルもしくはヒドロカルビルオキシ基に1~20個の炭素を有するジ(ヒドロカルビル)(ヒドロカルビルオキシ)アルミニウム化合物、または前述の化合物の混合物を挙げることができる。重合混合物から酸素、水、アルデヒドなどの不純物を捕捉する有益な能力として、通常、これらのアルミニウム化合物を用いることが有用である。
【0174】
本開示に記載の活性化剤と併せて使用することができるジ(ヒドロカルビル)(ヒドロカルビルオキシ)アルミニウム化合物は、式T AlOT、またはT Al(OTに対応し、式中、Tが、イソプロピル、イソブチル、またはtert-ブチルなどの第二級もしくは第三級(C-C)アルキルであり、Tが、2,6-ジ(tert-ブチル)-4-メチルフェニル、2,6-ジ(tert-ブチル)-4-メチルフェニル、2,6-ジ(tert-ブチル)-4-メチルトリル、または4-(3’、5’-ジ-tert-ブチルトリル)-2,6-ジ-tert-ブチルフェニルなどのアルキル置換(C-C30)アリールラジカル、またはアリール置換(C-C30)アルキルラジカルである。
【0175】
アルミニウム化合物の追加の例としては、[C]トリアルキルアルミニウム化合物、具体的には、アルキル基がエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、ペンチル、ネオペンチル、またはイソペンチルであるもの、アルキル基に1~6つの炭素、およびアリール基に6~18個の炭素を含有するジアルキル(アリールオキシ)アルミニウム化合物(具体的には、(3,5-ジ(t-ブチル)-4-メチルフェノキシ)ジイソブチルアルミニウム)、メチルアルモキサン、修飾メチルアルモキサン、およびジイソブチルアルモキサンが挙げられる。
【0176】
本開示の実施形態に従った触媒系では、イオン性金属活性化剤錯体対第IV族金属-配位子錯体のモル比は、例えば1:5000~100:1、1:100~100:1、1:10~10:1、1:5~1:1、または1.25:1~1:1などの1:10,000~1000:1であり得る。触媒系は、本開示に記載の1つ以上のイオン性金属活性化剤錯体の組み合わせを含み得る。
【0177】
ポリオレフィン
前の段落に記載される触媒系は、オレフィン、主にエチレンおよびプロピレンの重合に利用される。いくつかの実施形態では、重合スキーム中に単一種類のオレフィンまたはα-オレフィンのみが存在し、ホモポリマーを生成する。しかしながら、追加のα-オレフィンを重合手順に組み込んでもよい。追加のα-オレフィンコモノマーは、典型的には、20個以下の炭素原子を有する。例えば、α-オレフィンコモノマーは、3~10個の炭素原子、または3~8個の炭素原子を有し得る。例示的なα-オレフィンコモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、および5-ビニル-2-ノルボルネンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、1つ以上のα-オレフィンコモノマーは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンからなる群から、または代替的に1-ヘキセンおよび1-オクテンからなる群から選択され得る。
【0178】
エチレン系ポリマー、例えば、エチレンのホモポリマーおよび/またはエチレンと任意選択的にα-オレフィンなどの1つ以上のコモノマーとのインターポリマー(コポリマーを含む)は、エチレンに由来するモノマー単位を少なくとも50モルパーセント(モル%)含み得る。「少なくとも50モル%から」に包含されるすべての個々の値および部分範囲は、別個の実施形態として本明細書に開示されており、例えば、エチレン系ポリマー、エチレンのホモポリマー、および/またはエチレンと任意選択的にα-オレフィンなどの1つ以上のコモノマーとのインターポリマー(コポリマーを含む)は、エチレンに由来するモノマー単位を少なくとも60モル%、エチレンに由来するモノマー単位を少なくとも70モル%、エチレンに由来するモノマー単位を少なくとも80モル%、またはエチレンに由来するモノマー単位を50~100モル%、またはエチレンに由来する単位を80~100モル%含み得る。
【0179】
いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレン由来の単位を少なくとも90モルパーセント含み得る。少なくとも90モルパーセントからのすべての個々の値および部分範囲は本明細書に含まれ、別個の実施形態として本明細書に開示される。例えば、エチレン系ポリマーは、エチレン由来の単位を少なくとも93モルパーセント、単位を少なくとも96モルパーセント、エチレン由来の単位を少なくとも97モルパーセント、または代替的に、エチレン由来の単位を90~100モルパーセント、エチレン由来の単位を90~99.5モルパーセント、もしくはエチレン由来の単位を97~99.5モルパーセントを含み得る。
【0180】
エチレン系ポリマーのいくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、一定量の(C-C20)α-オレフィンを含み得る。(C-C20)α-オレフィンの量は、50モル%未満である。いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、少なくとも0.5モル%~25モル%の(C-C20)α-オレフィンを含み得、さらなる実施形態では、エチレン系ポリマーは、少なくとも5モル%~10モル%含み得る。いくつかの実施形態では、追加のα-オレフィンは1-オクテンである。
【0181】
本開示の実施形態に従った触媒系と組み合わせた任意の従来の重合プロセスを使用して、エチレン系ポリマーを生成することができる。そのような従来の重合プロセスとしては、例えば、並列、直列、またはそれらの任意の組み合わせのループ反応器、等温反応器、流動床気相反応器、撹拌槽反応器、バッチ式反応器などの1つ以上の従来の反応器を使用する、溶液重合プロセス、気相重合プロセス、スラリー相重合プロセス、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0182】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレンおよび任意選択的に1つ以上のα-オレフィンが、本明細書に記載の触媒系および任意選択的に1つ以上の助触媒の存在下で重合される、二重反応器システム、例えば、二重ループ反応器システムでの溶液重合を介して生成することができる。別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレンおよび任意選択的に1つ以上のα-オレフィンが、本開示の本明細書に記載の触媒系および任意選択的に1つ以上の他の触媒の存在下で重合される、二重反応器システム、例えば、二重ループ反応器システムでの溶液重合を介して生成することができる。本明細書に記載の触媒系は、任意に1つ以上の他の触媒と組み合わせて、第1の反応器または第2の反応器において使用することができる。一実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレンおよび任意選択的に1つ以上のα-オレフィンが、本明細書に記載の触媒系の存在下で重合される、二重反応器システム、例えば、二重ループ反応器システムの両方の反応器での溶液重合を介して生成することができる。
【0183】
別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレンおよび任意選択的に1つ以上のα-オレフィンが、本開示内に記載の触媒系の存在下で重合される、単一反応器システム、例えば、単一ループ反応器システムでの溶液重合を介して生成することができる。
【0184】
ポリマープロセスは、1つ以上の添加剤を組み込むことをさらに含み得る。そのような添加剤としては、帯電防止剤、色増強剤、染料、潤滑剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、加工助剤、紫外線安定剤、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。エチレン系ポリマーは、任意の量の添加剤を含んでもよい。エチレン系ポリマーは、エチレン系ポリマーおよび1つ以上の添加剤の重量に基づいて、約0~約10重量パーセントのそのような添加剤の総量を含み得る。エチレン系ポリマーは、充填剤をさらに含んでもよく、その充填剤としては、有機または無機充填剤を挙げることができるが、これらに限定されない。エチレン系ポリマーは、エチレン系ポリマーとすべての添加剤または充填剤の合計重量に基づいて、例えば炭酸カルシウム、タルク、またはMg(OH)などの約0~約20重量パーセントの充填剤を含んでもよい。エチレン系ポリマーは、1つ以上のポリマーとさらに配合されてブレンドを形成することができる。
【0185】
いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーを生成するための重合プロセスは、触媒系の存在下でエチレンおよび少なくとも1つの追加のα-オレフィンを重合することを含み得、触媒系が、少なくとも1つの金属-配位子錯体と、イオン性金属活性化剤錯体と、任意選択的に捕捉剤とを組み込む。金属-配位子錯体とイオン性金属活性化剤錯体とを組み込むそのような触媒系から得られるポリマーは、ASTM D792(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に従って、例えば、0.850g/cm~0.950g/cm、0.870g/cm~0.920g/cm、0.870g/cm~0.910g/cm、または0.870g/cm~0.900g/cmの密度を有し得る。
【0186】
別の実施形態では、金属-配位子錯体とイオン性金属活性化剤錯体とを含む触媒系から得られるポリマーは、5~15のメルトフロー比(I10/I)を有し、メルトインデックスIが、ASTM D1238(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に従って、190℃および2.16kgの荷重で測定され、メルトインデックスI10が、ASTM D1238に従って、190℃および10kgの荷重で測定される。他の実施形態では、メルトフロー比(I10/I)は5~10であり、他では、メルトフロー比は5~9である。
【0187】
いくつかの実施形態では、金属-配位子錯体とイオン性金属活性化剤錯体とを含む触媒系から得られるポリマーは、1~25の分子量分布(MWD)を有し、MWDが、M/Mとして定義され、Mが、重量平均分子量であり、Mが、数平均分子量である。他の実施形態では、触媒系から生じるポリマーは、1~6のMWDを有する。別の実施形態は、1~3のMWDを含み、他の実施形態は、1.5~2.5のMWDを含む。
【0188】
バッチ式反応器手順
バッチ式反応器の実験は、1ガロンの連続撹拌槽反応器で実施する。Isopar-E炭化水素溶媒、水素、および適切な量のオクテンコモノマーを反応器に充填した後、特定の温度に加熱し、エチレンと共に450psiに加圧する。反応器が圧力下にあるときに、プロ触媒、イオン性金属活性化剤錯体、溶媒、およびトリエチルアルミニウム捕捉剤を含む触媒カクテルを添加することによって、重合を開始する。反応器の温度および圧力を維持しながら、重合を10分間進行させる。反応が完了した後、ポリマーを収集し、真空オーブンで一晩乾燥させた後分析する。
【0189】
ポリオクテンスクリーニング手順
未希釈の1-オクテン(11mL)を、撹拌棒を備えた40mLバイアルに添加する。それ自体が磁気撹拌プレート上に位置するポリウレタン絶縁ブロックに、バイアルを置く。撹拌溶液に活性化剤を添加する。撹拌溶液にプロ触媒の溶液を添加する。バイアルをすぐにセプタムスクリューキャップの蓋でキャップし、プローブの先端が1-オクテン溶液に浸るように温度計プローブをバイアルに挿入する。温度計プローブをデジタルレコーダに接続し、時間および温度を5秒間隔で記録する。バイアル内の溶液を継続的に撹拌し、10分間監視する。
【0190】
連続重合
原材料(エチレン、1-オクテン)およびプロセス溶媒(ExxonMobil Corporationから商標ISOPAR Eで市販されている狭い沸点範囲の高純度イソパラフィン溶媒)を分子ふるいで精製した後、反応環境に導入する。高純度グレードの、さらなる精製が必要ない水素を、加圧シリンダに供給する。反応器モノマー供給(エチレン)ストリームを、機械的圧縮機を介して525psigの反応圧力より高い圧力まで加圧する。機械的容積式ポンプを介して、溶媒およびコモノマー(1ーオクテン)供給物を525psigよりも高い反応圧力まで加圧する。不純物捕捉剤として、AkzoNobelから市販のトリエチルアルミニウムを使用する。個々の触媒成分(プロ触媒/活性化剤/捕捉剤)を、精製溶媒(ISOPAR E)で特定の成分濃度までバッチ式に手動で希釈し、525psigよりも高い反応圧力まで加圧する。活性化剤は、プロ触媒に対して1.2モルで使用する。すべての反応供給流は、マスフローメータで測定し、コンピュータ自動バルブ制御システムで独立して制御する。
【0191】
連続溶液重合は、1ガロンの連続撹拌槽反応器(CSTR)で実行する。溶媒、モノマー、コモノマー、および水素を組み合わせた反応器への供給物を、5℃~30℃に温度制御し、典型的には15℃である。これらの材料のすべてを、溶媒供給物と共に重合反応器に供給する。触媒は、エチレンの特定の変換率に達するように反応器に供給される。活性化剤は、計算した特定のモル比(1.2モル当量)に基づいて、触媒成分に別個に供給する。TEA捕捉剤は、活性化剤と同じラインを共有し、流れは、反応器内のAl濃度、または触媒成分に対する特定のモル比のいずれかに基づく。重合反応器からの流出物(溶媒、モノマー、コモノマー、水素、触媒成分、および溶融ポリマーを含有する)が反応器を出る。流出物が水と接触すると、重合が停止する。また、酸化防止剤などの様々な添加剤を、この時点で添加することができる。次いで、流れを、触媒停止剤および添加剤を均一に分散させるために静的混合器に通す。
【0192】
他のより低沸点の反応成分からポリマーを分離するために、添加剤の添加に続いて、流出物を熱交換器に通して調製中の流れの温度を上昇させる。全体にわたって圧力が大幅に低減された反応器圧力制御バルブに、流れを通す。そこから、流出物は、揮発分除去機器(devolatizer)および真空押出機からなる2段階の分離システムに入り、そこで溶媒、ならびに未反応の水素、モノマー、コモノマー、および水をポリマーから除去する。形成された溶融ポリマーのストランドは押出機を出て、冷水浴に沈められ、そこで固化する。次いで、ストランドチョッパーを通してストランドを供給し、空気乾燥後、ポリマーをペレットに切断する。
【実施例
【0193】
実施例1は、活性化剤1の合成手順であり、実施例2は、活性化剤8の合成手順である。実施例3では、様々な活性化剤を使用してポリマー樹脂を合成した。ポリマー樹脂の特徴を測定し、表1~3に記録した。本開示の1つ以上の特徴は、次の実施例の観点で例示される。
【0194】
実施例1:活性化剤1の合成
【化10】
【0195】
トルエン(100mL)中のノナフルオロ-tert-ブタノール(7.0g、30mmol)、およびAkzo-Nobelから入手可能なジ(水素化タローアルキル)(メチル)アミンであるARMEEN M2HT(3.6g、6.7mmol)の溶液を、-35℃の冷凍庫に置いた。別個のバイアル内の、トルエン(100mL)中のヘキサン(6.7mL、1M、6.7mmol)中のトリメチルアルミニウム溶液も冷凍庫に置いた。トリメチルアルミニウム溶液をノナフルオロ-tert-ブタノール溶液にゆっくりと添加した。約半分添加したところで、2つのバイアルをグローブボックスの冷凍庫に戻し、再び30分間冷却した。すべてのアルミニウムが添加されるまで、添加を継続した。次いで、組み合わせた溶液を、30分かけて室温に温めながら撹拌し、一晩撹拌を継続した。次いで、揮発性物質を真空下で除去し、残りの残留物をさらに精製することなく使用して、7.8gの活性化剤、77%の収率を得た。
【0196】
19F NMR(376MHz、CDCl)δ-75.71.
【0197】
実施例2:活性化剤8の合成
【化11】
【0198】
ノナフルオロ-tert-ブタノール(5.0g、21mmol)を小さなバイアル内で秤量し、フルオロベンゼン(25mL)に溶解させた。また、フルオロベンゼン(25mL)に溶解させたAlMe(0.51g、7.1mmol)を、別個のバイアル内で秤量した。両方のバイアルを冷凍庫(-35℃)に30分間置いた。AlMeの溶液をノナフルオロ-tert-ブタノールの溶液にゆっくりと添加し、次いで冷凍庫に3時間置いた。この間、フルオロベンゼン(25mL)中のペンタフルオロフェノール(1.3g、7.1mmol)の溶液、およびフルオロベンゼン(25mL)中のARMEEN M2HT(3.8g、7.1mmol)の溶液を調製した。ペンタフルオロフェノール溶液を冷却した反応混合物にゆっくりと添加した。次いで3分後、ARMEEN M2HT溶液を添加した。反応物を室温に温め、次いで72時間撹拌した。得られた淡黄色の溶液を真空下に置いて揮発性物質を除去して、生成物(8.6g、84%)を得た。
【0199】
実施例3-重合結果
前述の手順に従って、バッチ式反応器内で重合を実行した。各々式(I)に従ったアニオン構造およびビス(フェニルフェノキシ)第IV属金属-配位子錯体を有する活性化剤1、5~9での、助触媒効率および得られたポリマーの特徴を評価した。
【0200】
金属活性化剤1~7の各々をプロ触媒Aと混合して、触媒系を形成した。比較活性化剤C1(本明細書では「比較C1」)をプロ触媒Aと混合して、比較触媒系を形成した。比較C1は、対カチオンとしてNH(Me)(C1837を有した。
【化12】
【0201】
本発明の活性化剤1~7および比較活性化剤C1(本明細書では「比較C1」)の効率、ならびに本発明の活性化剤1~7および比較C1から得られたポリマーのポリマー特徴を決定した。結果を、表1および2に要約する。比較C1は、産業用途で使用実績のあるものである。
【表1】
【0202】
表1の結果は、活性化剤3、5、および7が、プロ触媒Aの活性化およびポリオクテンホモポリマーの生成が可能であることを示している。表1の「最高温度」は、反応器内の摂氏温度での最高断熱温度であった。断熱温度の増加は、生成されるポリマーの量の増加を示したであろう。
【0203】
表2のデータは、140℃の重合温度で得、表3のデータは、190℃で得た。
【表2】
表2および表3のバッチ式反応器条件:1.47kgのIsopar(商標)E、100グラムのオクテン、410psiのエチレン、活性化剤:プロ触媒の比は、およそ1.2であり、およそ50のMMAO-3A:プロ触媒のモル比で、MMAO-3Aを不純物捕捉剤として使用した。
【表3】
電気試験条件
【表4】
【0204】
本開示に記載の炭化水素導電率試験は、生成されたポリマー樹脂を水で洗浄して触媒および助触媒残留物を除去するときの、重合後プロセスを模倣実験する。表8に要約されている結果は、活性化剤1が、比較C1中に存在するB(Cアニオンよりも低い誘電正接を有することを示しており、したがって、活性化剤1から生成されたポリマーは、それらの電気的特性に関して、比較C1から生成されたポリマーよりも優れていることを示している。
【0205】
表4に要約されている結果に基づいて、水が本発明の活性化剤と相互作用して、電気的特性における活性化剤の寄与を低減すると考えられる。そのような考えに束縛されることを望むわけではないが、水が活性化剤と化学的に反応して、電荷輸送に有意に寄与しない分解生成物を形成し、それにより、本発明の活性化剤によって生成されるポリマーが低い導電率を呈することを引き起こすと考えられる。しかしながら、比較C1は、HC試験の条件下では水と反応しないと考えられる。比較C1はイオン種-アニオンおよびカチオン-からなるため、水の添加前後の両方で、イオン電荷の輸送に寄与する。
【0206】
前述のように、HC試験の炭化水素溶液は、水を除去するために加熱される。そのような考えに束縛されることを望むわけではないが、水、酸化防止剤、および/または水除去プロセスの熱が、本発明の活性化剤を分解し、電荷輸送に有意に寄与しない分解生成物の形成を生じると考えられる。比較C1は、重合条件下で有意に分解せず、イオン種として比較C1は、エラストマーにおけるイオン電荷輸送に寄与すると予想される。本発明の活性化剤は、電荷輸送に有意に寄与しない分解生成物の形成を生じるため、本発明の活性化剤は、絶縁ポリマーを生成することが可能である。
【0207】
図中の本発明の活性化剤から生成された樹脂のTGICスペクトルは、活性化剤1および8が、比較C1中に存在するB(Cによって達成されるものと同様の、狭い単峰性の組成分布を有するポリマー樹脂を生成することを実証した。これは、幅広い二峰性の組成分布を示し、粘着性のペレットをもたらす比較C2とは対照的である。加えて、表4に要約されている結果は、活性化剤1が、比較C1中に存在するB(Cアニオンよりも良好な誘電正接を有することを示している。
【0208】
TGICによる高コモノマー含有量(HCC)方法
市販の結晶化溶出分別装置(CEF)(Polymer Char、Spain)を使用して、高温熱勾配相互作用クロマトグラフィー(TGIC)測定を行った(Congら、Macromolecules、2011、44(8)、3062~3072)。HYPERCARBカラム(100X4.6mm、部品#35005~104646、Thermo Scientific)を分離に使用した。27ミクロンのガラスビーズ(カタログ#GL01918/20~27μm、MO-SCI Specialty Products,LLC(Rolla,MO,USA))を充填した「8cm×0.48cm(内径3/16インチ)」のステンレス鋼カラムを、IR検出器の前、CEF機器のトップオーブンに設置した。実験パラメータは次の通りである:トップオーブン/輸送ライン/針温度150℃、溶解温度160℃、溶解撹拌設定2、試料充填容量0.400mL、ポンプ安定化時間15秒、洗浄カラムのポンプ流量0.500mL/分、カラム充填のポンプ流量0.300mL/分、安定化温度150℃、安定化時間(カラム充填前)3.0分、安定化時間(カラム充填後)1.0分、SF(可溶性画分)時間3.0分、150℃~30℃の冷却速度3.00℃/分、冷却プロセス中の流量0.01mL/分、30℃~160℃の加熱速度2.00℃/分、等温時間160℃で10分間、溶出流量0.500mL/分、および注入ループサイズ140マイクロリットル。
【0209】
PolymerCharオートサンプラーによって160℃で60分間、ODCB中4.0mg/mlの濃度で、試料を調製した。使用前に、シリカゲル40(粒径0.2~0.5mm、カタログ番号10181-3、EMD)を、160℃の真空オーブン中で約2時間乾燥させた。一定量の2,5-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(1.6グラム、BHT、カタログ番号B1378-500G、Sigma-Aldrich)、およびシリカゲル(5.0グラム)を、2リットルのオルト-ジクロロベンゼン(ODCB、99%無水グレード、Sigma-Aldrich)に添加して、ODCB溶液を作り出した。使用前に、ODCB溶液を乾燥窒素(N)で1時間パージした。
【0210】
TGICデータは、PolymerChar(Spain)の「GPC One」ソフトウェアプラットフォームで処理した。7mLのODCBを充填した10mLバイアル内で、約4~6mgのエイコサン、14.0mgのアイソタクチックホモポリマーポリプロピレンiPP(3.6~4.0の多分散性、および150,000~190,000等量のポリエチレンとして報告する分子量(Mw)、および3.6~4.0の多分散性(Mw/Mn))、および14.0mgのホモポリマーポリエチレンHDPE(コモノマー含有量ゼロ、115,000~125,000等量のポリエチレンとして報告するMw、および2.5~2.8の多分散性)の混合物を用いて、温度較正を実施した。溶解時間は、160℃で2時間であった。
【0211】
較正プロセス(エイコサン溶出物およびHDPE溶出物では30℃~150℃)は、次のステップを含んだ:(1)加熱速度に従った溶出中の等温ステップの各々の溶出温度を外挿した(図1に示されている)。(2)遅延容量を計算し、エイコサンピーク(y軸)が30.0℃の溶出温度と一致するように、IR測定チャネルクロマトグラム(y軸)に対応して温度(x軸)をシフトさせた。遅延容量は、温度差(30℃-エイコサンピークの実際の溶出温度)を、方法の加熱速度で除算し、次いで溶出流量を乗算することから計算する。(3)これと同じ遅延容量調節を用いて、記録した各溶出温度を調節した。(4)HDPE標準物質が150.0℃の溶出ピーク温度を有しながら、エイコサンの溶出ピーク温度を30.0℃に維持するように、加熱速度を線形に合わせた。最後に、(5)ポリプロピレンのピーク温度が119.3~120.2℃であることを観察し、これが較正方法の検証である。
【0212】
TGICのポリマー試料についてのデータ処理
ポリマー試料と同じ実験条件下で、溶媒ブランク(純粋溶媒注入)を実施した。ポリマー試料のデータ処理は、較正の加熱速度から計算した、各検出器チャネルの溶媒ブランクの減算、較正プロセスで説明されている温度外挿、較正プロセスから決定した遅延容量を用いた温度の補正、および溶出温度軸の30℃~160℃の範囲への調節を含む。
【0213】
クロマトグラムをPolymerChar「GPC One」ソフトウェアと統合した。ピークが、高溶出温度で平らなベースライン(ブランク減算クロマトグラムではおおよそゼロの値)に、および可溶性画分(SF)の高温側の検出器シグナルの最小または平らな領域に落ちるとき、可視的差異から直線のベースラインを引いた。
【0214】
ピークが平らなベースライン領域(ブランク減算クロマトグラムではおおよそゼロの値)に落ちるときの、可視的差異に基づいて、温度積分上限値を確立した。ベースラインと、可溶画分を含むクロマトグラムとの交点に基づいて、温度積分下限値を確立した。
【0215】
「高コモノマー含有量(HCC)」は、65.0℃以下の温度で溶出する材料の重量パーセントとして定義する。HCCは、65.0℃以下の温度でIR測定チャネルを積分し、この値をIR測定チャネルの総積分で除算することによって計算した。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
オレフィンを重合するプロセスであって、触媒系の存在下で、エチレンと(C-C40)アルファ-オレフィンコモノマーとを接触させて、エチレン系ポリマーを生成することを含み、前記触媒系が、プロ触媒と、イオン性金属活性化剤錯体とを含み、前記イオン性金属活性化剤錯体が、アニオンおよび対カチオンを含み、前記アニオンが、式(I)に従った構造を有し、
【化1】
式中、
Mが、アルミニウム、ホウ素、またはガリウムであり、
nが2、3、または4であり、
各Rが独立して、式(II)を有するラジカル、および式(III)を有するラジカルからなる群から選択され、
【化2】
各Yが独立して、炭素またはケイ素であり、
各R11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、およびR25が独立して、(C-C40)アルキル、(C-C40)アリール、-OR、-O-、-SR、-H、または-Fから選択され、Rが、式(III)に従ったラジカルであるとき、R21、R22、R23、R24、またはR25のうちの少なくとも1つが、ハロゲン置換(C-C40)アルキル、ハロゲン置換(C-C40)アリール、または-Fであるが、
ただし、
各Rが式(II)に従ったラジカルであり、Yが炭素であるとき、R11、R12、もしくはR13のうちの少なくとも1つが、ハロゲン置換(C-C40)アルキル、ハロゲン置換(C-C40)アリール、もしくは-Fであるか、あるいは
Mがアルミニウムであり、nが4であり、各Rが式(II)に従ったラジカルであり、各Yが炭素であるとき、
各Rのうちの各R11、R12、およびR13が、ハロゲン置換(C-C40)アルキル、ハロゲン置換(C-C40)アリール、もしくは-Fであるか、または
各RのうちのR11、R12、およびR13のハロゲン原子の総数が、少なくとも6であることを条件とし、
各Xが、ハロゲン置換(C-C20)アルキル、(C-C20)アルキル、ハロゲン置換(C-C40)アリール、(C-C40)アリール、トリフラート、または-S(O)から独立して選択された単座配位子であり、
任意選択的に、式(I)の2つの基Rが、共有結合しており、
各Rが独立して、(C-C30)ヒドロカルビル、または-Hである、プロセス。
項2.
前記プロ触媒が、ビス(フェニルフェノキシ)金属-配位子錯体である、項1に記載の重合プロセス。
項3.
nが4であり、各Rが独立して、-C(H)(CF、-C、または-C(CFである、項1または項2に記載の重合プロセス。
項4.
nが3であり、Xが、-OH、トリフラート(-OTf)、メチル、またはハロゲンから選択される、項1または項2に記載の重合プロセス。
項5.
nが4であり、4つの基Rのうちの3つが、-C(CFであり、4つの基Rのうちの1つが、-Cである、項1または項2に記載の重合プロセス。
項6.
前記対カチオンが、正の1(+1)の形式的変化を有する、項1~5のいずれか一項に記載の重合プロセス。
項7.
前記対カチオンが、N(H)R であり、式中、各Rが、(C-C20)アルキル、または(C-C20)アリールから選択される、項1~6のいずれか一項に記載の重合プロセス。
項8.
前記対カチオンが、N(H)R であり、式中、少なくとも2つのRが、(C10-C20)アルキルから選択される、項6に記載の重合プロセス。
項9.
前記対カチオンが、C(Cである、項1~6のいずれか一項に記載の重合プロセス。
項10.
前記対カチオンが、C(Cであり、式中、Rが、(C-C20)アルキルである、項1~6のいずれか一項に記載の重合プロセス。
項11.
2つの基Rが、共有結合しており、前記アニオンが、式(IV)に従った構造を有し、
【化3】
式中、
MおよびXが、式(I)で定義されたとおりであり、
nが1、または2であり、
Lが、共有結合している前記2つの基Rを表し、
各Lが独立して、(C-C40)アルキレン、(C-C40)ヘテロアルキレン、またはまたは-(Si(R-O)-Si(R-から選択され、zが、0、1、2、または3であり、Rが独立して、(C-C30)ヒドロカルビルまたは-Hであり、
nが1のとき、Xが、ハロゲン、ハロゲン化-(C-C20)アルキル、またはトリフラートから独立して選択された単座配位子である、項1に記載の重合プロセス。
項12.
高沸点完全飽和炭化水素溶液中に、200マイクロモルの濃度のイオン性金属活性化剤錯体および20ミリモルの水を有する、高沸点完全飽和炭化水素溶液中の前記イオン性金属活性化剤錯体が、炭化水素導電率試験によって測定すると、0.1以下の誘電正接パーセントを有する、項1~11のいずれか一項に記載の重合プロセス。
図1