(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】ニッケルおよび銅から作製される選択的二金属性水素化触媒を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/755 20060101AFI20240606BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20240606BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240606BHJP
B01J 37/16 20060101ALI20240606BHJP
B01J 37/20 20060101ALI20240606BHJP
C07C 5/03 20060101ALI20240606BHJP
C07C 5/05 20060101ALI20240606BHJP
C07C 11/10 20060101ALI20240606BHJP
C07C 15/073 20060101ALI20240606BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240606BHJP
【FI】
B01J23/755 Z
B01J23/755 M
B01J37/02 101D
B01J37/08
B01J37/16
B01J37/20
C07C5/03
C07C5/05
C07C11/10
C07C15/073
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020557331
(86)(22)【出願日】2019-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2019058580
(87)【国際公開番号】W WO2019201617
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-04
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ブアレグ マリカ
(72)【発明者】
【氏名】コワノー アンヌ-アガタ
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-516765(JP,A)
【文献】特開2011-036857(JP,A)
【文献】特表2017-533085(JP,A)
【文献】特開昭51-137688(JP,A)
【文献】米国特許第05948942(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0264882(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07B 31/00 - 63/04
C07C 1/00 - 409/44
C08C 19/00 - 19/44
C08F 6/00 - 246/00
C08F 301/00
C08G 81/00 - 85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセチレン化合物、ジオレフィン化合物、およびアルケニル芳香族化合物のアルケン(オレフィン)結合部位またはアルキン結合部位の選択的水素化のための触媒を調製する方法であって、該触媒は、第1のニッケル金属元素と第2の銅金属元素とをベースとする二金属性活性相と、担体とを含み、第1のニッケル金属元素は、触媒の全重量に対してニッケル元素1~30重量%の割合にあり、第2の銅金属元素は、触媒の全重量に対して銅元素0.5~15重量%の割合にあり、銅/ニッケルのモル比は、1未満であり、担体は、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナから選ばれる少なくとも1種の耐火性酸化物を含み、前記方法は、以下の工程:
a) 少なくとも1種のニッケル前駆体を含有している少なくとも1種の溶液と接触しているように担体を置く工程;
b) 少なくとも1種の銅前駆体を含有している少なくとも1種の溶液と接触しているように担体を置く工程;
c) 工程a)およびb)、またはb)およびa)の終わりにおける触媒前駆体を250℃未満の温度で乾燥させる少なくとも1回の工程;
d) 工程c)の終わりに得られた触媒前駆体を、
アセチレン化合物、ジオレフィン化合物、およびアルケニル芳香族化合物のアルケン(オレフィン)結合部位またはアルキン結合部位の選択的水素化のための反応器に供給し、かつ、200℃未満の温度で5分以上かつ2時間未満の期間にわたって還元ガスと接触しているように前記前駆体を置くことによって還元工程を行う工程
を含み、工程a)およびb)を別個にあらゆる順序で行う
方法。
【請求項2】
工程b)を行った後に工程a)を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d)を行う際の温度は、130~190℃である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
10分~110分にわたって工程d)を行う、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
還元処理工程d)の後に硫黄含有化合物によるパッシベーションの工程e)も含んでいる、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
触媒前駆体を乾燥させる工程を、工程a)と工程b)の間に、250℃未満の温度で行う、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
銅の含有率は、触媒の全重量に対する銅元素の重量で0.5~12重量%である、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
銅前駆体は、酢酸銅、銅アセチルアセトナート、硝酸銅、硫酸銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅またはフッ化銅から選ばれる、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
銅前駆体は、硝酸銅である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程d)の還元ガスは、二元素水素である、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
水素の流量は、L/時/グラム(触媒前駆体)で表されて、001~100L/時/グラム(触媒前駆体)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程c)において得られた乾燥済み触媒前駆体の熱処理の工程を、工程d)の前に、250~1000℃の温度で行う、請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
担体は、アルミナである、請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
アセチレン化合物、ジオレフィン化合物、およびアルケニル芳香族化合物のアルケン(オレフィン)結合部位またはアルキン結合部位を触媒の存在中で選択的に水素化するための方法であって、
アセチレン化合物、ジオレフィン化合物、およびアルケニル芳香族化合物のアルケン(オレフィン)結合部位またはアルキン結合部位は、分子当たり少なくとも2個の炭素原子を含有し、300℃以下の最終沸点を有している炭化水素供給原料中に存在しているものであり、該方法が行われる際の温度は、0~300℃であり、その際の圧力は、0.1~10MPaであり、該方法が液相で行われる場合にその際の水素/(水素化されるべき
アセチレン化合物、ジオレフィン化合物、およびアルケニル芳香族化合物のアルケン(オレフィン)結合部位またはアルキン結合部位)のモル比は、0.1~10であり、その際の毎時空間速度は、0.1~200h
-1であり、または、該方法が、気相で行われる場合には、その際の水素/(水素化されるべき
アセチレン化合物、ジオレフィン化合物、およびアルケニル芳香族化合物のアルケン(オレフィン)結合部位またはアルキン結合部位)のモル比は、0.5~1000であり、その際の毎時空間速度は、100~40000h
-1であり、該触媒は、請求項1~13のいずれか1つにより得られたものである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担持型金属性触媒であって、ニッケルおよび銅を含んでおり、特に、不飽和炭化水素を水素化することを目的とするものを調製するための方法に関する。
【0002】
本発明は、不飽和炭化水素の水素化、より詳細にはオレフィン性フラクションの選択的水素化のための反応におけるこれらの触媒の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
ポリ不飽和化合物の選択的水素化のための触媒は、一般的には、元素周期律表の第VIII族からの金属、例えば、ニッケルをベースとしている。金属は、ナノスケールの金属性の粒子の形態にあり、耐火性酸化物であってよい担体上に沈着させられている。第VIII族からの金属の含有率、第2の金属元素の場合による存在、金属性粒子のサイズおよび担体中の活性相の分配、さらには担体の性質および細孔の分配は、触媒に性能に関する影響を有するかもしれないパラメータである。
【0004】
水素化反応の速度は、複数の基準によって左右され、例えば、触媒の表面の方への反応剤の拡散(外的拡散制限)、担体の孔隙中の活性サイトの方への反応剤の拡散(内的拡散制限)および活性相の固有の特性、例えば、金属性粒子のサイズおよび担体内の活性相の分配である。
【0005】
ニッケルベースの触媒の促進は、しばしば、選択的水素化における性能レベルを改善するために提案された。例えば、C4-C10ジオレフィンの選択的水素化のためにニッケルおよび銀をベースとする触媒を使用することが特許文献1から知られている。さらに、主として存在しているニッケルを、第IB族の金属、特に、金(特許文献2)またはスズ(特許文献3)により促進することが知られている。文献(特許文献4)には、選択的水素化方法の実施のための触媒であって、担体と、当該担体上に沈着させられた活性金属相とを含み、当該活性金属相は、銅と、少なくとも1種のニッケルまたはコバルトの金属とを、Cu:(Niおよび/またはCo)のモル比:1超で含む、触媒が開示されている。
【0006】
さらに、このような触媒の利用および水素化方法におけるその使用に先行して、還元ガスの存在中の還元処理の工程が行われて、少なくとも部分的に金属形態にある活性相を含んでいる触媒が得られる。この処理により、触媒を活性にすることおよび金属性の粒子を形成することが可能となる。この処理は、現場内(in situ)または現場外(ex situ)で、すなわち、触媒が水素化反応器に装填された後または前に行われてよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第5208405号明細書
【文献】仏国特許出願公開第2949077号明細書(特開2011-36857号公報)
【文献】仏国特許出願公開第2949078号明細書(特開2011-36858号公報)
【文献】仏国特許出願公開第3011844号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の主題)
水素化触媒の分野におけるそれの研究を継続して、本出願人は、今や、ポリ不飽和炭化水素フラクションの選択的水素化において特に活性であり、かつ、特に選択的である触媒を調製することが、連続的におよび非同時的に、ニッケル前駆体および銅前駆体から選ばれる2種の特定の金属性前駆体を、特定のCu:Ni比で細孔性担体上に接触するように置くことよって、および、これらの接触工程の後に、還元ガスの存在中、200℃未満の温度で、触媒反応器内で現場内還元工程を行うことによって可能であることを発見した。あらゆる理論によって結び付けられることを望まないが、触媒の調製の間に、銅の存在は、金属性前駆体(ニッケルおよび銅)の添加の順序に拘わらず、担体上のニッケルの還元力を大きく改善し、このことにより、還元ガスの存在中、従来技術において一般的に用いられる温度より低い温度でかつ従来技術において一般的に用いられる時間より短い反応時間で金属元素を還元する工程を行うことが可能になることが出願人によって留意された。従来技術におけるのより厳格性の乏しい操作条件の使用により、ポリ不飽和フラクションの選択的水素化を行うことが望まれる反応器内で還元工程を直接的に行うことが可能となる。さらに、触媒中の銅の存在により、触媒が硫黄を含んでいる炭化水素フラクション、特に、水蒸気分解および/または接触分解のC3炭化水素フラクションと接触して置かれる場合に、触媒の良好な活性およびより長い耐用期間を維持することが可能となる。実際に、ニッケルと比較して、触媒中に存在する銅は、供給原料中に含まれる硫黄含有化合物をより容易に捕捉し、これにより、新しい触媒上に存在するニッケルの最も猛毒性の活性サイトを不可逆的に毒することが回避される。最後に、本発明による調製方法は、担体上に金属性前駆体を含浸させる2回の相異なる工程を行うことによって、本発明の絡みで望まれないニッケルおよび銅をベースとするアロイの形成を回避することを特に可能にする。実際に、ニッケル-銅のアロイにより、ニッケルのみのものより乏しい活性および/または選択性がもたらされるだろう。
【0009】
本発明の主題は、ポリ不飽和炭化水素フラクションの選択的水素化のための触媒を調製するための方法であって、当該触媒は、第1のニッケル金属元素と、第2の銅金属元素とをベースとする二金属性活性相と、担体とを含んでおり、第1のニッケル金属元素は、触媒の全重量に対するニッケル元素の重量で1~30重量%の割合にあり、第2の銅金属元素は、触媒の全重量に対する銅元素の重量で0.5~15重量%の割合にあり、銅とニッケルとの間のモル比は、1未満であり、担体は、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナから選ばれる少なくとも1種の耐火性酸化物を含んでおり、前記方法は、以下の工程:
a) 少なくとも1種のニッケル前駆体を含有している少なくとも1種の溶液と接触しているように担体を置く工程;
b) 少なくとも1種の銅前駆体を含有している少なくとも1種の溶液と接触しているように担体を置く工程;
c) 工程a)およびb)、またはb)およびa)の終わりにある触媒前駆体を、250℃未満の温度で乾燥させる少なくとも1回の工程;
d) 工程c)の終わりに得られた触媒前駆体を、ポリ不飽和炭化水素フラクションの選択的水素化のための反応器に供給し、かつ、200℃未満の温度で5分以上かつ2時間未満の期間にわたって還元ガスと接触しているように前記前駆体を置くことによって還元工程を行う工程
を含み、
工程a)およびb)を、別々にあらゆる順序で行う
方法である。
【0010】
好ましくは、工程b)が行われた後に、工程a)が行われる。
【0011】
有利には、工程d)が行われる際の温度は、130~190℃である。
【0012】
有利には、工程d)は、10分~110分にわたって行われる。
【0013】
有利には、本発明による方法は、還元処理工程d)の後に硫黄含有化合物によるパッシベーションの工程e)も含む。
【0014】
有利には、250℃未満の温度で触媒前駆体を乾燥させる工程は、工程a)と工程b)との間に行われる。
【0015】
好ましくは、銅の含有率は、触媒の全重量に対する銅元素の重量で0.5~12重量%である。
【0016】
有利には、銅前駆体は、酢酸銅、銅アセチルアセトナート、硝酸銅、硫酸銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅またはフッ化銅から選ばれる。
【0017】
より好ましくは、銅前駆体は、硝酸銅である。
【0018】
有利には、工程d)の還元ガスは、二原子水素(dihydrogen)である。
【0019】
好ましくは、水素の流量は、L/時/触媒前駆体グラムで表されて、0.01~100L/時/グラム(触媒前駆体)である。
【0020】
好ましくは、工程c)において得られた乾燥済み触媒前駆体の加熱処理の工程は、工程d)の前に、250~1000℃の温度で行われる。
【0021】
有利には、担体は、アルミナである。
【0022】
本発明による別の主題は、ポリ不飽和化合物を、触媒の存在中で選択的に水素化するための方法に関し、当該ポリ不飽和化合物は、分子当たり少なくとも2個の炭素原子を含有し、例えば、ジオレフィン化合物および/またはアセチレン化合物および/またはアルケニル芳香族化合物であり、300℃以下の最終の沸点を有している炭化水素供給原料中に存在しているものであり、当該方法が行われる際の温度は、0~300℃であり、その際の圧力は、0.1~10MPaであり、この方法が液相で行われる場合にはその際の水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、0.1~10であり、その際の毎時空間速度は、0.1~200h-1であり、または、この方法が気相で行われる場合には水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は0.5~1000であり、その際の毎時空間速度は、100~40000h-1であり、当該触媒は、本発明による調製方法により得られたものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(発明の詳細な説明)
(1.定義)
以下、化学元素の族は、CAS分類に従って与えられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics,出版元CRC Press,編集主任D.R. Lide,第81版,2000-2001)。例えば、CAS分類による第VIII族は、新IUPAC分類による第8族、第9族および第10族の金属に対応する。
【0024】
触媒中に含有される金属Mの還元度(degree of reduction:DR)は、前記触媒を還元する工程の後に還元された前記金属Mの百分率であるとして定義される。還元度(DR)が対応するのは、触媒上に存在する還元された金属の量(M1)と、理論的に還元可能な金属の量(M2)との間の比であり、蛍光X線によって測定され、すなわち、DR(%)=(M1/M2)×100である。本発明の絡みにおいて、ニッケル(Ni)の還元度は、X線回折(X-ray diffraction:XRD)分析によって測定された。酸化物触媒上の還元可能な金属の量を測定するための方法の記載は、本明細書中において後に説明される(実施例のセクションを参照のこと)。
【0025】
「本発明による触媒または触媒の調製のために用いられる担体の比表面積」の表現は、雑誌“The Journal of the American Chemical Society”, 60, 309(1938)に記載されたBrunauer-Emmett-Teller法から作成された規格ASTM D 3663-78による窒素吸着によって決定されるBET比表面積を意味するように意図される。
【0026】
用語「マクロ細孔(macropores)」は、細孔であって、その開口が50nm超であるものを意味するように意図される。
【0027】
用語「メソ細孔(mesopores)」は、細孔であって、その開口が両限界値を含めて2nm~50nmであるものを意味するように意図される。
【0028】
用語「ミクロ細孔(micropores)」は、細孔であって、その開口が2nm未満であるものを意味するように意図される。
【0029】
本発明による触媒または触媒の調製のために用いられる担体の用語「全細孔容積(total pore volume)」は、規格ASTM D4284-83に従う4000bar(400MPa)の最高圧力での水銀ポロシメータによる圧入によって、484dyne/cmの表面張力および140°の接触角を用いて測定される容積を意味するように意図される。濡れ角は、Jean Charpin およびBernard Rasneurによって記述された研究“Techniques de l'ingenieur, traite analyse et caracterisation”[Techniques of the Engineer, Analysis Treatise and Characterization:エンジニアの技術、分析論文および特徴付け]、pages 1050-1055の推奨に従うことによって140°に等しいとみなされた。
【0030】
より良好な正確性を得るために、全細孔容積の値は、サンプルについて測定される水銀ポロシメータによる圧入によって測定される全細孔容積の値から、30psi(約0.2MPa)に相当する圧力について同一のサンプルについて測定される水銀ポロシメータによる圧入によって測定される全細孔容積の値を引いたものに対応する。
【0031】
マクロ細孔およびメソ細孔の容積は、4000bar(400MPa)の最高圧力での規格ASTM D4284-83に従う水銀の圧入によるポロシメトリによって、484dyne/cmの表面張力および140°の接触角を用いて測定される。水銀が全ての粒間空隙を満たす値は、0.2MPaに設定され、これより上で、水銀は、サンプルの細孔中に貫通するとみなされる。
【0032】
本発明による触媒または触媒の調製のために用いられる担体のマクロ細孔容積は、0.2MPa~30MPaの圧力で導入された水銀の累積容積であるとして定義され、これは、50nmより大きい見かけの径を有する細孔中に存在する容積に対応する。
【0033】
本発明による触媒または触媒の調製のために用いられる担体のメソ細孔容積は、30MPa~400MPaの圧力で導入された水銀の累積容積であるとして定義され、これは、2~50nmの見かけの径を有する細孔中に存在する容積に対応する。
【0034】
ミクロ細孔容積は、窒素ポロシメトリによって測定される。ミクロ細孔性の定量分析は、「t」法(Lippens-De Boerの方法, 1965)を用いて行われ、これは、F. Rouquerol、J. RouquerolおよびK. Singによって記述された出版物“Adsorption by powders and porous solids. Principles, methodology and applications”, Academic Press, 1999に記載されたような出発吸着等温線の変換に対応する。
【0035】
メソ細孔中位径も、メソ細孔容積を構成する合計細孔から、この径未満のサイズを有する全ての細孔が、水銀ポロシメータによる圧入によって決定される全メソ細孔容積の50%を構成するような径として定義される。
【0036】
マクロ細孔中位径も、マクロ細孔容積を構成する合計細孔から、この径未満のサイズを有する全ての細孔が、水銀ポロシメータによる圧入によって決定される全マクロ細孔容積の50%を構成するような径であるとして定義される。
【0037】
(2.説明)
(触媒の調製方法)
ニッケルおよび銅をベースとする二金属性の活性相と、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナから選ばれる少なくとも1種の耐火性酸化物を含んでいる担体とを含んでいる触媒を調製するための方法は、少なくとも以下の工程:
a) 少なくとも1種のニッケル前駆体を含有している少なくとも1種の溶液と接触しているように担体を置く工程;
b) 少なくとも1種の銅前駆体を含有している少なくとも1種の溶液と接触しているように担体を置く工程;
c) 工程a)およびb)、またはb)およびa)の終わりの触媒前駆体を、250℃未満の温度で乾燥させる少なくとも1回の工程;
d) 工程c)の終わりに得られた触媒前駆体を、ポリ不飽和炭化水素フラクションの選択的水素化または芳香族性またはポリ芳香族性の化合物の水素化のための反応器に供給し、かつ、5分以上かつ2時間未満の期間にわたって200℃未満の温度で還元ガスと接触しているように前記前駆体を置くことによって還元工程を行う工程
を含み、
工程a)およびb)を別々に任意の順序で行う。
【0038】
触媒を調製するための方法の工程は、以下に詳細に説明される。
【0039】
(工程a):ニッケル前駆体を接触させる工程)
前記担体上のニッケルの沈着は、工程a)の実施により、乾式または過剰での含浸によって、さらには、沈着-沈殿によって、当業者に周知である方法に従って行われ得る。
【0040】
前記工程a)は、優先的には、担体の含浸によって行われ、この含浸は、例えば、少なくとも1種の溶液と接触しているように前記担体を置くことからなり、この溶液は、水性または有機性(例えば、メタノールまたはエタノールまたはフェノールまたはアセトンまたはトルエンまたはジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide:DMSO)であるか、あるいは、水と少なくとも1種の溶媒との混合物からなり、この溶液は、少なくとも1種のニッケル前駆体を、少なくとも一部において溶解している状態において含有しており、あるいは、この含浸は、少なくとも1種のニッケル前駆体の少なくとも1種のコロイド溶液と接触しているように前記担体を置くことからなり、このニッケル前駆体は、酸化された形態(ニッケルの酸化物、オキシ(水酸化物)または水酸化物のナノ粒子)にあるか、または、還元された形態(還元された状態にあるニッケルの金属ナノ粒子)にある。好ましくは、溶液は水性である。この溶液のpHは、酸または塩基の場合による添加によって改変され得るだろう。別の好ましい代替の形態によると、水溶液は、アンモニア水またはアンモニウムNH4
+イオンを含有してもよい。
【0041】
好ましくは、前記工程a)は、乾式含浸によって行われ、この乾式含浸は、少なくとも1種のニッケル前駆体を含有している溶液と接触しているように触媒担体を置くことからなり、この含浸において、溶液の容積は、含浸させられるべき担体の細孔容積の0.25~1.5倍である。
【0042】
ニッケル前駆体が水溶液中に導入される場合、ニッケル前駆体は、有利には、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、塩化物、水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩またはギ酸塩の形態、ポリ酸または酸-アルコールおよびその塩によって形成される錯体の形態、アセチルアセトナートにより形成される錯体の形態、テトラミンまたはヘキサミンの錯体の形態、あるいは、水溶液に可溶な任意の他の無機誘導体の形態で用いられ、前記担体と接触しているように置かれる。
【0043】
好ましくは、硝酸ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、塩化ニッケルまたはヒドロキシ炭酸ニッケルがニッケル前駆体として有利に用いられる。大いに好ましくは、ニッケル前駆体は、硝酸ニッケル、炭酸ニッケルまたは水酸化ニッケルである。
【0044】
溶液に導入されるニッケル前駆体(1種または複数種)の量は、全ニッケル含有率が、触媒の全重量に対する前記元素の重量で1~30重量%、好ましくは5~22重量%、好ましくは7~18重量%になるように選ばれる。
【0045】
(工程b):銅前駆体を接触させる工程)
前記担体上の銅の沈着は、工程b)の実施により、乾式かまたは過剰での含浸によって、さらには、沈着-沈殿によって、当業者に周知の方法に従って行われ得る。
【0046】
前記工程b)は、優先的には、担体の含浸によって行われ、この含浸は、例えば、少なくとも1種の溶液と接触しているように前記担体を置くことからなり、この溶液は、水性または有機性(例えば、メタノールまたはエタノールまたはフェノールまたはアセトンまたはトルエンまたはジメチルスルホキシド(DMSO))であるか、あるいは、水と少なくとも1種の有機溶媒との混合物からなり、少なくとも1種の銅前駆体を、少なくとも一部において溶解した状態で含有しているか、あるいは、この含浸は、少なくとも1種の銅前駆体の少なくとも1種のコロイド溶液と接触しているように前記担体を置くことからなり、この銅前駆体は、酸化された形態(銅の酸化物、オキシ(水酸化物)または水酸化物のナノ粒子)または還元された形態(還元された状態にある銅の金属ナノ粒子)にある。好ましくは、溶液は水性である。この溶液pHは、酸または塩基の場合による添加によって改変され得るだろう。
【0047】
好ましくは、前記工程b)は、乾式含浸によって行われ、この含浸は、少なくとも1種の銅前駆体を含有している溶液と接触しているように触媒担体を置くことからなり、ここで、溶液の容積は、含浸させられるべき担体の細孔容積の0.25~1.5倍である。
【0048】
銅前駆体が水溶液中に導入される場合、無機または有機の形態の銅前駆体が有利に用いられる。無機の形態では、銅前駆体は、酢酸銅、銅アセチルアセトナート、硝酸銅、硫酸銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅またはフッ化銅から選ばれ得る。大いに好ましくは、銅前駆体塩は、硝酸銅である。
【0049】
溶液に導入される銅前駆体(1種または複数種)の量は、銅の全含有率が、触媒の全重量に対する銅元素の重量で0.5~15重量%、好ましくは0.5~12重量%、好ましくは0.75~10重量%、一層より好ましくは1~9重量%になるように選ばれる。
【0050】
工程a)およびb)は、別々にあらゆる順序で行われる。ニッケル前駆体の含浸が銅前駆体の含浸と同時に行われないのは、ニッケル-銅をベースとするアロイを形成しないようにするためである。このアロイが本発明の絡みで望みではないのは、これによって、ニッケルのみのものより乏しい活性および/または選択性がもたらされるであろうからである。
【0051】
好ましくは、工程b)が行われた後に工程a)が行われる。すなわち、銅前駆体を担体に含浸させる最初の工程が行われ、次いで、ニッケル前駆体を担体に含浸させる第2の工程が行われる(前含浸)。本出願人は、担体上の銅前駆体の(ニッケル前駆体の含浸に対する)前含浸により、(ニッケル前駆体の含浸に対する)銅前駆体の後含浸(すなわち、ニッケル前駆体を担体に含浸させる第1の工程が行われ、次いで、銅前駆体を担体に含浸させる第2の工程が行われる)と比較してニッケルの還元力に関してより良好な結果を得ることが可能になることを発見した。これは、同一の触媒還元操作条件(温度、時間、還元ガス)についての場合である。
【0052】
場合によっては、2回の連続する含浸工程の間に、触媒前駆体を乾燥させる工程が、250℃未満、好ましくは15~240℃、より優先的には30~220℃、一層より優先的には50~200℃、一層より優先的には70~180℃の温度で、典型的には10分~24時間の期間にわたって行われる。
【0053】
(工程c):含浸済みの担体を乾燥させる工程)
含浸済みの担体を乾燥させる工程c)は、250℃未満、好ましくは15~180℃、より優先的には30~160℃、一層より優先的には50~150℃、一層より優先的には70~140℃の温度で、典型的には10分~24時間の期間にわたって行われる。より長い時間の期間は除外されないが、何等かの改善を必ずしも与えるわけではない。
【0054】
乾燥工程は、当業者に知られているあらゆる技術によって行われ得る。それは、有利には、不活性雰囲気下または酸素含有雰囲気下または不活性ガスと酸素との混合物下に行われる。それは、有利には、大気圧または減圧下で行われる。好ましくは、この工程は、大気圧でかつ空気または窒素の存在中で行われる。
【0055】
(乾燥済み触媒の熱処理の工程(場合による工程))
乾燥済みの触媒前駆体は、追加の熱処理工程d)を、250~1000℃、好ましくは250~750℃の温度で、典型的には15分~10時間の期間にわたって、不活性雰囲気下または酸素含有雰囲気下に、場合によっては、水の存在中で経ることができる。より長い処理時間は除外されないが、何等かの改善を必ずしも与えるわけではない。
【0056】
用語「熱処理(heat treatment)」は、いずれか水の非存在中または存在中の温度の処理を意味するように意図される。水の存在中の場合、水蒸気との接触が大気圧でまたは自生圧力下に行われ得る。水の非存在中または存在中の複数の結合されたサイクルが行われ得る。このまたはこれらの処理の後に、触媒前駆体は、ニッケルを酸化物の形態で含み、すなわち、NiOの形態にある。
【0057】
水が存在している場合、水の含有率は、好ましくは乾燥空気の重量(キログラム)当たり150~900グラム、一層より好ましくは乾燥空気の重量(キログラム)当たり250~650グラムである。
【0058】
(工程d):還元ガスによる還元工程)
触媒反応器における触媒の使用および水素化方法の実施に先行して、還元処理工程d)が還元ガスの存在中で行われ、これにより、少なくとも部分的に金属の形態にあるニッケルを含んでいる触媒が得られる。この工程は、現場内(in situ)で、すなわち、ポリ不飽和化合物の選択的水素化のための反応器への触媒の装填の後に行われる。この処理により、前記触媒を活性にすることおよび金属粒子、特に、0価の状態にあるニッケルの金属粒子を形成することが可能となる。触媒還元処理の現場内の実施により、酸素所有化合物またはCO2による触媒のパッシベーションのさらなる工程をなしで済ますことが可能となる。このさらなる工程は、還元処理を現場外(ex situ)で、すなわち、選択的水素化のために用いられる反応器の外側で行うことによって触媒が調製される時に必須のケースである。実際に、還元処理が現場外で行われる場合、(水素化反応器への輸送および充填の操作の間に)空気の存在中で触媒の金属相を保護するためにパッシベーションの工程を行い、次いで、触媒を還元する新工程を行うことが必要である。
【0059】
還元ガスは、好ましくは水素である。水素は、高純度でまたは混合物(例えば、水素/窒素、水素/アルゴンまたは水素/メタンの混合物)として用いられ得る。水素が混合物として用いられる場合、全ての割合が想定され得る。
【0060】
本発明による調製方法の本質面によると、前記還元処理が行われる際の温度は、200℃未満、好ましくは130~190℃、より優先的には145~175℃である。還元処理の継続期間は、5分以上かつ2時間未満、好ましくは10分~110分の期間にわたって行われる。従来技術におけるのより乏しい厳格性の操作条件の使用により、ポリ不飽和フラクションの選択的水素化を行うことが望まれる反応器内で還元工程を直接的に行うことが可能となる。さらに、触媒中の銅の存在により、硫黄を含んでいる炭化水素供給原料、特に、水蒸気分解および/または接触分解のC3炭化水素フラクションと接触しているように触媒が置かれた場合に触媒の良好な活性および触媒の良好な耐用期間を維持することが可能となる。実際に、ニッケルと比べて、触媒中に存在する銅は、供給原料中に含まれる硫黄含有化合物をより容易に捕捉し、これにより、新しい触媒上に現れるニッケルの最も猛毒のある活性サイトを不可逆的に被毒することが回避される。
【0061】
所望の還元温度までの昇温は、一般的には遅く、例えば、0.1~10℃/分、好ましくは0.3~7℃/分で設定される。
【0062】
水素の流量は、L/時/触媒前駆体グラムで表されて、0.01~100L/時/触媒前駆体グラム、好ましくは0.05~10L/時/触媒前駆体グラム、一層より好ましくは0.1~5L/時/触媒前駆体グラムである。
【0063】
(工程e)パッシベーションの工程(場合による工程))
本発明による方法に従って調製された触媒は、場合によっては、硫黄含有化合物によるパッシベーションの工程を経ることができ、この工程により、触媒の選択性を改善することおよび新触媒の起動の間の熱暴走を回避することが可能となる。パッシベーションは、一般的に、硫黄含有化合物によって、新しい触媒上に存在するニッケルの最も劇毒性の活性サイトを不可逆的に毒すること、それ故に、その選択性の利益となるように触媒の活性を弱めることからなる。パッシベーションの工程は、当業者に知られている方法を用いて行われる。
【0064】
硫黄含有化合物によるパッシベーションの工程は、一般的には、20~350℃、好ましくは40~200℃の温度で、10~240分にわたって行われる。硫黄含有化合物は、例えば、以下の化合物から選ばれる:チオフェン、チオファン、アルキルモノスルフィド、例えば、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィドおよびプロピルメチルスルフィド、さらには、式HO-R1-S-S-R2-OHの有機ジスルフィド、例えば、式HO-C2H4-S-S-C2H4-OHのジチオジエタノール(DEODSとして知られている場合もある)。硫黄の含有率は、触媒の全重量に対する前記元素の重量で一般的には0.1重量%~2重量%である。
【0065】
(触媒)
本発明による調製方法によって得られ得る触媒は、ニッケルおよび銅をベースとする活性相と、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナから選ばれる耐火性酸化物を含有している担体とを含む。
【0066】
溶液に導入される銅前駆体(1種または複数種)の量は、銅の全含有率が、触媒の全重量に対する銅元素の重量で0.5~15重量%、好ましくは0.5~12重量%、好ましくは0.75~10重量%、一層より好ましくは1~9重量%になるように選ばれる。銅の存在は、金属前駆体(ニッケルおよび銅)の添加の順序に拘わらず、担体上のニッケルの還元力を大きく改善し、これにより、還元ガスの存在中、従来技術において一般的に用いられているものより低い温度およびより短い反応時間で金属元素を還元する工程を行うことが可能となる。
【0067】
溶液に導入されるニッケル前駆体(1種または複数種)の量は、ニッケルの全含有率が、触媒の全重量に対する前記元素の重量で1~30重量%、好ましくは5~22重量%、好ましくは7~18重量%になるように選ばれる。
【0068】
銅とニッケルとの間のモル比は、1未満でなければならず、好ましくは0.8未満、より優先的には0.7未満、一層より優先的には0.6未満、好ましくは0.5未満、一層より好ましくは0.4未満である。
【0069】
細孔質担体は、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナからなる群から選ばれる。一層より好ましくは、担体はアルミナである。アルミナは、全ての考えられる結晶学的形態:アルファ、デルタ、シータ、カイ、ロー、エータ、カッパ、ガンマ等で存在してよく、単独または混合物として利用される。好ましくは、担体は、アルファ、デルタ、シータおよびガンマのアルミナから選ばれる。
【0070】
細孔質担体の比表面積は、一般的には5m2/g超、好ましくは30~400m2/g、好ましくは50~350m2/gである。
【0071】
担体の全細孔容積は、一般的には0.1~1.5cm3/g、好ましくは0.35~1.2cm3/g、一層より優先的には0.4~1.0cm3/g、一層より優先的には0.45~0.9cm3/gである。
【0072】
前記触媒は、一般的には、当業者に知られている全ての形態、例えば、ビーズ(一般的には、1~8mmの径を有している)の形態、押出物の形態、ブロックの形態または中空円柱状の形態で提供される。好ましくは、それは押出物からなり、その径は、一般的には0.5~10mm、好ましくは0.8~3.2mm、大いに好ましくは1.0~2.5mmであり、その平均長は、0.5~20mmである。押出物の用語「平均直径(mean diameter)」は、これらの押出物の断面で外接される円の平均直径を意味するように意図される。触媒は、有利には、円筒状、多葉状、三葉状または四葉状の押出物の形態で提供され得る。好ましくは、その形状は、三葉状または四葉状であるだろう。葉の形状は、従来技術から知られている全ての方法に従って調節され得るだろう。
【0073】
触媒の比表面積は、一般的には5m2/g超、好ましくは30~400m2/g、好ましくは50~350m2/gである。
【0074】
触媒の全細孔容積は、一般的には0.1~1.5cm3/g、好ましくは0.35~1.2cm3/g、一層より優先的には0.4~1.0cm3/g、一層より優先的には0.45~0.9cm3/gである。
【0075】
触媒が有しているマクロ細孔容積は、有利には0.6mL/g以下、好ましくは0.5mL/g以下、より優先的には0.4mL/g以下、一層より優先的には0.3mL/g以下である。
【0076】
触媒のメソ細孔容積は、一般的には最低0.10mL/g、好ましくは最低0.20mL/g、好ましくは0.25mL/g~0.80mL/g、より好ましくは0.30~0.65mL/gである。
【0077】
メソ細孔中位径は、3~25nmであり得、好ましくは6~20nm、特に好ましくは8~18nmである。
【0078】
触媒が呈するマクロ細孔中位径は、有利には50~1,500nm、好ましくは80~1,000nm、一層より好ましくは250~800nmである。
【0079】
好ましくは、触媒は、低いマクロ細孔性を呈する;大いに好ましくは、それは、ミクロ細孔性を何等呈さない。
【0080】
(選択的水素化方法)
本発明の他の主題は、触媒の存在中でポリ不飽和化合物を選択的に水素化するための方法であり、当該ポリ不飽和化合物は、分子当たり少なくとも2個の炭素原子を含有し、例えば、ジオレフィン化合物および/またはアセチレン化合物および/またはスチレン化合物としても知られているアルケニル芳香族化合物であり、300℃以下の最終沸点を有している炭化水素供給原料中に存在しており、当該方法が行われる際の温度は、0~300℃であり、その際の圧力は、0.1~10MPaであり、当該方法が液相で行われる場合には、その際の水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、0.1~10であり、その際の毎時空間速度は、0.1~200h-1であり、または、当該方法が気相で行われる場合には、その際の水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、0.5~1000であり、その際の毎時空間速度は、100~40000h-1であり、触媒は、本明細書中の上記の調製方法によって得られたものである。
【0081】
モノ不飽和有機化合物、例えば、エチレンおよびプロピレンは、ポリマー、プラスチック、付加価値を有している他の化学製品の製造の根源にある。これらの化合物は、天然ガス、ナフサまたはガスオイルであって、水蒸気分解または接触分解の方法によって処理されたものから得られる。これらの方法は、高い温度で行われ、所望のモノ不飽和化合物に加えて、ポリ不飽和有機化合物、例えば、アセチレン、プロパジエンおよびメチルアセチレン(またはプロピン)、1,2-ブタジエンおよび1,3-ブタジエン、ビニルアセチレンおよびエチルアセチレン、および他のポリ不飽和化合物であって、その沸点がC5+フラクション(少なくとも5個の炭素原子を有している炭化水素化合物)に対応するもの、特に、ジオレフィンまたはスチレンまたはインデン化合物を生じさせる。これらのポリ不飽和化合物は、ポリマー化ユニットにおいて高い反応性であり、副反応をもたらす。それ故に、これらのフラクションの経済的な使用をなす前にそれらを取り除くことが必要である。
【0082】
選択的水素化は、これらの炭化水素供給原料から所望でないポリ不飽和化合物を特に取り除くために開発された主要な処理である。それにより、ポリ不飽和化合物を対応するアルケンまたは芳香族化合物に転化させながら、それらの完全な飽和、それ故に、対応するアルカンまたはナフテンの形成を回避することが可能となる。供給原料として用いられる水蒸気分解ガソリンの場合、選択的水素化により、アルケニル芳香族化合物を選択的に水素化して芳香族化合物を与えつつ、芳香族核の水素化を回避することも可能となる。
【0083】
選択的水素化方法において処理される炭化水素供給原料は、300℃以下の最終沸点を有し、分子当たり少なくとも2個の炭素原子を含有し、かつ、少なくとも1種のポリ不飽和化合物を含んでいる。用語「ポリ不飽和化合物(polyunsaturated compounds)」は、少なくとも1つのアセチレン基および/または少なくとも1つのジエン基および/または少なくとも1つのアルケニル芳香族基を含んでいる化合物を意味するように意図される。
【0084】
より詳細には、供給原料は、水蒸気分解C2フラクション、水蒸気分解C2-C3フラクション、水蒸気分解C3フラクション、水蒸気分解C4フラクション、水蒸気分解C5フラクションおよび水蒸気分解ガソリンからなる群から選択される。水蒸気分解ガソリンは、熱分解ガソリンまたはC5+フラクションとしても知られている
水蒸気分解C2フラクションは、本発明による選択性水素化方法の実施のために有利に用いられるものであり、この水蒸気C2フラクションは、例えば、以下の組成を呈する:エチレン40重量%~95重量%、アセチレン0.1重量%~5重量%程度、残部は、本質的にエタンおよびメタンである。所定の水蒸気分解C2フラクションにおいて、C3化合物0.1重量%~1重量%が存在してもよい。
【0085】
水蒸気分解C3フラクションは、本発明による選択的水素化方法の実施のために有利に用いられるものであり、このものは、例えば、以下の平均組成を呈する:プロピレン90重量%程度、プロパジエンおよびメチルアセチレン1重量%~8重量%程度、残部は、本質的にプロパンである。所定のC3フラクションにおいて、C2化合物およびC4化合物0.1重量%~2重量%が存在してもよい。
【0086】
C2-C3フラクションも、有利には、本発明による選択的水素化方法の実施のために用いられ得る。それは、例えば、以下の組成を呈する:アセチレン0.1重量%~5重量%程度、プロパジエンおよびメチルアセチレン0.1重量%~3重量%程度、エチレン30重量%程度、プロピレン5重量%程度、残部は、本質的にメタン、エタンおよびプロパンである。この供給原料は、C4化合物0.1重量%~2重量%を含有してもよい。
【0087】
水蒸気分解C4フラクションは、本発明による選択的水素化方法の実施のために有利に用いられるものであり、このものは、例えば、以下の重量による平均組成を呈する:ブタン1重量%、ブテン46.5重量%、ブタジエン51重量%、ビニルアセチレン1.3重量%、ブチン0.2重量%。所定のC4フラクションにおいて、C3化合物およびC5化合物0.1重量%~2重量%が存在してもよい。
【0088】
水蒸気分解C5フラクションは、本発明による選択的水素化方法の実施のために有利に用いられるものであり、このものは、例えば、以下の組成を呈する:ペンタン21重量%、ペンテン45重量%、ペンタジエン34重量%。
【0089】
水蒸気分解ガソリンまたは熱分解ガソリンは、本発明による選択的水素化方法の実施のために有利に用いられるものであり、このものは、炭化水素フラクションに対応し、その沸点は、一般的には0~300℃、好ましくは10~250℃である。前記水蒸気分解ガソリン中に存在する水素化されるべきポリ不飽和炭化水素は、特に、ジオレフィン化合物(ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン等)、スチレン化合物(スチレン、α-メチルスチレン等)およびインデン化合物(インデン等)である。水蒸気分解ガソリンは、一般的に、C5-C12フラクションを含み、痕跡量のC3、C4、C13、C14およびC15を伴う(例えば、これらのフラクションのそれぞれについて0.1重量%~3重量%)。例えば、熱分解ガソリンから形成される供給原料は、一般的に、以下のような組成を有する:飽和化合物(パラフィンおよびナフテン)5重量%~30重量%、芳香族化合物40重量%~80重量%、モノオレフィン5重量%~20重量%、ジオレフィン5重量%~40重量%、アルケニル芳香族化合物1重量%~20重量%、これらの化合物を合わせて100%が形成される。それは、硫黄0~1000重量ppm、好ましくは硫黄0~500重量ppmも含有する。
【0090】
好ましくは、本発明による選択的水素化方法に従って処理されるポリ不飽和炭化水素供給原料は、水蒸気分解C2フラクションまたは水蒸気分解C2-C3フラクションまたは水蒸気分解ガソリンである。
【0091】
本発明による選択的水素化方法は、モノ不飽和炭化水素を水素化することなく水素化されるべき前記供給原料中に存在する前記ポリ不飽和炭化水素を取り除くことに目標が置かれる。例えば、前記供給原料がC2フラクションである場合、選択的水素化方法は、アセチレンを選択的に水素化することに目標が置かれる。前記供給原料がC3フラクションである場合、選択的水素化方法は、プロパジエンおよびメチルアセチレンを選択的に水素化することに目標が置かれる。C4フラクションの場合、目標は、ブタジエン、ビニルアセチレン(vinylacetylene:VAC)およびブチンを取り除くことにある;C5フラクションの場合、目標は、ペンタジエンを取り除くことにある。前記供給原料が水蒸気分解ガソリンである場合、選択的水素化方法は、処理されるべき前記供給原料中に存在する前記ポリ不飽和炭化水素を選択的に水素化して、ジオレフィン化合物が部分的に水素化されてモノオレフィンを与えるように、かつスチレンおよびインデン化合物が部分的に水素化されて対応する芳香族化合物を与えるようにしながら、芳香族核の水素化を回避するようにすることに目標が置かれる。
【0092】
選択的水素化方法の技術的な実施は、例えば、ポリ不飽和炭化水素供給原料および水素を少なくとも1基の固定床反応器へ、上昇または下降の流れとして注入することによって行われる。前記反応器は、等温タイプまたは断熱タイプのものであってよい。断熱反応器が好適である。ポリ不飽和炭化水素の供給原料は、有利には、反応器の入口と出口との間に置かれる反応器の種々のポイントへの選択的水素化反応が行われた前記反応器に由来する流出物の1回または複数回の再注入によって希釈され得、これにより、反応器の温度勾配が制限される。本発明による選択的水素化方法の技術的な実施は、有利には、反応蒸留塔中または反応器-交換器中またはスラリータイプの反応器中の少なくとも前記担持型触媒の埋め込みによっても行われ得る。水素の流れは、水素化されるべき供給原料と同時にかつ/または反応器上の1点または複数の異なる点に導入されてよい。
【0093】
水蒸気分解のC2、C2-C3、C3、C4、C5およびC5+のフラクションの選択的水素化は、気相または液相で行われ得るが、好ましくはC3、C4、C5およびC5+のフラクションについては液相で、C2およびC2-C3のフラクションについては気相で行われる。液相反応により、エネルギーコストを低下させかつ触媒のサイクル期間を増大させることが可能となる。
【0094】
一般的に、ポリ不飽和化合物であって、分子当たり少なくとも2個の炭素原子を含有しかつ300℃以下の最終沸点を有する炭化水素供給原料の選択的水素化が行われる際の温度は、0~300℃であり、その際の圧力は、0.1~10MPaであり、液相で行われる方法についてはその際の水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、0.1~10であり、その際の毎時空間速度(hourly space velocity:HSV)(供給原料の容積による流量対触媒の容積の比として定義される)は、0.1~200h-1であり、または、気相で行われる方法についてはその際の水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、0.5~1000であり、その際の毎時空間速度(HSV)は、100~40000h-1である。
【0095】
本発明による一つの実施形態において、供給原料がポリ不飽和化合物を含んでいる水蒸気分解ガソリンであるところで選択的水素化方法が行われる場合に、(水素)/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、一般的には0.5~10、好ましくは0.7~5.0であり、一層より好ましくは1.0~2.0であり、温度は、0~200℃、好ましくは20~200℃、一層より好ましくは30~180℃であり、毎時空間速度(HSV)は、一般的には0.5~100h-1、好ましくは1~50h-1であり、圧力は、一般的には0.3~8.0MPa、好ましくは1.0~7.0MPa、一層より好ましくは1.5~4.0MPaである。
【0096】
より好ましくは、選択的水素化方法は、供給原料がポリ不飽和化合物を含んでいる水蒸気分解ガソリンであるところで行われ、水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、0.7~5.0であり、温度は、20~200℃であり、毎時空間速度(HSV)は、一般的には1~50h-1であり、圧力は、1.0~7.0MPaである。
【0097】
一層より好ましくは、選択的水素化方法は、供給原料がポリ不飽和化合物を含んでいる水蒸気分解ガソリンであるところで行われ、水素/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、1.0~2.0であり、温度は、30~180℃であり、毎時空間速度(HSV)は、一般的には1~50h-1であり、圧力は、1.5~4.0MPaである。
【0098】
水素の流量は、ポリ不飽和化合物の全部を理論的に水素化するのに十分な量を利用可能とするようにかつ反応器出口において水素の過剰を維持するように調節される。
【0099】
本発明による別の実施形態において、選択的水素化方法が、供給原料が水蒸気分解C2フラクションおよび/または水蒸気分解C2-C3フラクションであって、ポリ不飽和化合物を含んでいるものであるところで行われる場合に、(水素)/(水素化されるべきポリ不飽和化合物)のモル比は、一般的に0.5~1000、好ましくは0.7~800であり、温度は、0~300℃、好ましくは15~280℃であり、毎時空間速度(HSV)は、一般的には100~40000h-1、好ましくは500~30000h-1であり、圧力は、一般的には0.1~6.0MPa、好ましくは0.2~5.0MPaである。
【0100】
本発明は、ここで、以下の実施例によって例証されることになるが、これらの実施例は、決して限定的なものではない。
【0101】
(実施例)
下記の実施例において言及される全ての触媒について、担体は、アルミナAであり、比表面積は、80m2/gであり、細孔容積は、0.7mL/gであり、中位細孔径は、12nmである。
【0102】
(実施例1:Ni前駆体の水溶液の調製)
触媒A~Gの調製のために用いられるNi前駆体の水溶液(溶液S)の調製を、硝酸ニッケルNi(NO3)2・6H2O(供給元Strem Chemicals(登録商標))43.5gを、13mLの容積の蒸留水中に溶解させることによって行う。溶液Sが得られ、そのNi濃度は、溶液の容積(リットル)当たりNi350gである。
【0103】
(実施例2:触媒A-Ni15重量%(比較例))
実施例1において調製された溶液Sを、乾燥条件下に、アルミナA10g上に含浸させる。続いて、このようにして得られた固体をオーブン中120℃で終夜乾燥させ、次いで、1L/h/g(触媒)の空気の流れ下に450℃で2時間にわたって焼成する。このようにして調製された焼成済みの触媒は、アルミナ担持型触媒の全重量に対して15重量%ニッケル元素の含有している。
【0104】
(実施例3:前含浸としての触媒B-Ni15重量%+Cu0.1重量%(比較例))
(含浸No.1)
0.1重量%の銅を最終触媒上に終わりに得るように調製された硝酸銅溶液を、乾燥条件下にアルミナA上に含浸させる。こうして得られた固体を、次いで、オーブン中120℃で終夜乾燥させる。
【0105】
(含浸No.2)
実施例1において調製された溶液Sを、乾燥条件下に、第1の含浸の間に事前に調製された触媒前駆体10g上に含浸させる。続いて、このようにして得られた固体を、オーブン中120℃で終夜乾燥させ、次いで、1L/h/g(触媒)の空気の流れ下に450℃で2時間にわたって焼成する。
【0106】
(実施例4:触媒C-前含浸としてのNi15重量%+Cu1重量%(本発明に合致))
この実施例において用いられる実施要項は、上記の実施例3のものと同一であるが、1重量%のCuがアルミナ上に置かれることを可能にする硝酸銅溶液を調製することを例外とする。
【0107】
(実施例5:触媒D-共含浸でのNi15重量%+Cu1重量%(比較例))
最終触媒上に銅元素1重量%を終わりに得るように硝酸銅溶液を調製する。銅溶液および溶液Sを、アルミナに同時に加える(共含浸)。
【0108】
こうして得られた固体を、続いて、オーブン中120℃で12時間にわたって乾燥させ、次いで、1L/h/g(触媒)の空気の流れ下に450℃で2時間にわたって焼成する。
【0109】
(実施例6:触媒F-後含浸としてのNi15重量%+Cu2重量%(本発明に合致する))
(含浸No.1)
実施例1において調製された溶液Sを、乾燥条件下にアルミナA10g上に含浸させる。こうして得られた固体を、続いて、オーブン中120℃で12時間にわたって乾燥させる。
【0110】
(含浸No.2)
最終触媒上に2重量%の銅元素を終わりに得るように硝酸銅溶液を調製し、次いで、乾燥条件下に、第1の含浸から事前に調製された触媒前駆体上に含浸させる。
【0111】
こうして得られた固体を、続いて、オーブン中120℃で12時間にわたって乾燥させ、次いで、1L/h/g(触媒)の空気の流れ下に450℃で2時間にわたって焼成する。
【0112】
(実施例7:触媒E-前含浸としてのNi15重量%+Cu2重量%(本発明に合致する))
この実施例において用いられる実施要項は、上記の実施例3のものと同一であるが、2重量%のCuがアルミナA上に置かれることを可能にするように硝酸銅溶液を調製することを例外とする。
【0113】
(実施例8:触媒G-前含浸としてのNi15重量%+Cu5重量%(本発明に合致する))
この実施例において用いられる実施要項は、上記の実施例3のものと同一であるが、5重量%の銅がアルミナA上に置かれることを可能にするように硝酸銅溶液を調製することを例外とする。
【0114】
(実施例9:特徴付け)
全ての触媒は、含浸の間に目標とする含有率、すなわち、触媒の全重量に対して15%のニッケル元素(蛍光X線によって特徴付けられる)を含有し、この%は、加えられる銅(蛍光X線によって特徴付けられる)である。
【0115】
還元工程の後に得られた金属の形態にあるニッケルの量は、紛体の形態にある触媒のサンプルについてのX線回折(X-ray diffraction:XRD)分析によって決定された。還元工程の間かつXRDによる特徴付けの継続期間を通して、触媒は、決して開放空気に戻されない。回折パターンは、回折計による放射線結晶学分析によって従来の粉末法を用いて銅のKα1放射線(λ=1.5406Å)により得られる。
【0116】
還元度の計算を、分析される触媒の各サンプルのディフラクトグラムの全てについて、52°2θ前後に位置するNi0のラインの面積を計算し、次いで、アルミナに起因する52°のところのライン下の周囲温度に達してすぐに存在するシグナルを減算することによって行った。デルタおよびシータの形態にあるアルミナ、CuO(テノライト)およびNiOを、周囲温度のところで、焼成後の銅およびニッケル含有の全ての触媒上で検出した。
【0117】
下記表1は、水素流れ下の90分にわたる170℃での還元工程の後のXRDによって特徴付けられた全ての触媒A~Gについての還元度(Niの全重量に対する重量%として表される)を対照する。これらの値は、従来の還元工程(すなわち、400℃の温度での15時間にわたる水素流れ下の還元)の後の触媒A(Niのみ)について得られた還元度とも比較された。
【0118】
水素流れ(H2)下の170℃での90分後の触媒G(5%Cu/15%Ni/アルミナ)について、ニッケルの還元力度は、100%であり、Cu°の還元力度も同様である。触媒A(15%Niのみ/アルミナ)について、ニッケル還元力度は、水素下の全く同一の還元処理の後に0%である。銅により、明らかに、還元済みニッケル(Ni°)担体上に存在する酸化ニッケルの全てを還元することが可能となる。
【0119】
さらに、銅およびニッケルの両方を含有している触媒を、硫化水素の流れ下に300℃までの昇温を伴って処理した。XRDスペクトルを記録し、かつ、時間および温度の関数として分析した。NiO相は、Ni3S4およびNiSに硫化され、CuO相は、Cu1.75Sに硫化されたことを分析した。さらに、酸化銅は、最初に硫化された種である。これは、本発明による方法によって調製された触媒は、既知の方法で調製された銅の存在がない触媒と比較して、硫黄含有供給原料、例えば、分解ガソリンに対してより抵抗性になるだろうことを示す。実際に、銅は、硫黄を優先するものとして捕捉し、Ni°は、処理されるべき供給原料の種々の化合物の水素化のために利用可能なままであるだろう。
【0120】
下記の表1は、170℃での90分にわたる水素流れ下の還元後のXRDによって特徴付けられた全ての触媒についての還元力度またはNi°含有率を要約する。また、従来の還元との比較のために、Niのみ/アルミナについての15時間にわたる400℃での水素流れ下の従来の還元後のニッケルの還元力度が加えられた。前含浸として1%の銅が加えられてすぐに、ニッケルの還元力度は50%であるのに対して、触媒NiのみについてのH2下の同一の処理について、ニッケルの還元力度はゼロである。さらに、添加される銅の同一の量およびH2下の同一の処理により、前含浸としての銅の添加(触媒C、50%Ni°)は、後含浸としての銅の添加(触媒E、40%Ni°)よりも効率的であり、これ自体は、共含浸としての銅の添加(触媒D、30%Ni°)よりも効率的である。さらに、2%銅の添加(触媒F、80%Ni°)は、より高い温度(400℃)での処理をより長い継続期間(15時間)にわたって経た触媒Aと同一の還元Ni含有率につながる。最後に、5%銅の添加(触媒G)により、100%Ni°は、H2下の170℃での90分にわたる処理のために到達される。
【0121】
【0122】
(実施例10:触媒試験:スチレンおよびイソプレンを含有している混合物の選択的水素化における性能レベル(AHYD1))
上記の実施例において記載された触媒A~Gを、スチレンおよびイソプレンを含有している混合物の選択的水素化の反応に関して試験した。
【0123】
選択的に水素化されるべき供給原料の組成は、以下の通りである:スチレン(供給元Sigma Aldrich(登録商標)、純度99%)8重量%、イソプレン(供給元Sigma Aldrich(登録商標)、純度99%)8重量%およびn-ヘプタン(溶媒)(供給元VWR(登録商標)、純度99% Chromanorm HPLC)84重量%。この組成は、反応混合物の初期組成に対応する。このモデル分子混合物は、熱分解ガソリンの典型である。
【0124】
選択的水素化反応を、500mLのステンレススチールオートクレーブにおいて行い、このクレーブには、磁気駆動メカニカルスターラが設けられており、100bar(10MPa)の最高圧力および5℃~200℃の温度下に操作することができる。
【0125】
n-ヘプタン(供給元VWR(登録商標)、純度>99% Chromanorm HPLC)214mLおよび3mLの量の触媒を、オートクレーブに加える。オートクレーブを閉じ、パージする。次いで、オートクレーブを35bar(3.5MPa)の水素下に加圧する。触媒を、最初に、170℃で90分にわたって(温度上昇勾配1℃/分)触媒A~Gについて現場内(in situ)還元する。オートクレーブを、次いで、30℃に等しい試験温度とする。時間t=0において、スチレン、イソプレン、n-ヘプタン、ペンタンチオールおよびチオフェンを含有している混合物約30gを、オートクレーブに導入する。反応混合物は、ここで、上記の組成を有しており、1600回転/分で撹拌を開始する。反応器の上流に位置するストレージシリンダを用いてオートクレーブ中で圧力を35bar(3.5MPa)で一定に維持する。
【0126】
触媒Aについて別の試験を行ったが、触媒還元温度は400℃であり、15時間にわたる。
【0127】
反応の進行を、定期的な時間間隔で反応媒体からサンプルを取ることによってモニタリングする:スチレンは、水素化されてエチルベンゼンを与えるが、芳香環の水素化はなく、イソプレンは、水素化されてメチルブテンを与える。反応が必要より長く延期されるならば、メチルブテンは、それらの番において、水素化されて、イソペンタンを与える。水素消費も反応器の上流に位置するストレージシリンダ中の圧力減少によって経時にモニタリングする。触媒活性は、分当たりかつNiのグラム当たりの消費されるH2のモルで表される。
【0128】
触媒A~Gについて測定された触媒活性は、下記の表2に報告される。それらは、従来の還元条件下に(400℃の温度で15時間にわたって水素流れ下に)調製された触媒Aについて測定された触媒活性(AHYD1)に関連付けられる。
【0129】
【0130】
これは、アルミナ上にNiのみの触媒であって、170℃で90分にわたって還元され、完全に不活性であるものと比較して、本発明に合致する触媒C、E、FおよびGの改善された性能レベルを明確に示し、特に、同調製方法の間の触媒前駆体内のニッケル前駆体の添加の前またはその後の銅前駆体の添加の影響力である。