(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】半導体金属酸化物材料を含む化学線硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 2/46 20060101AFI20240606BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240606BHJP
C09D 4/00 20060101ALI20240606BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20240606BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240606BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240606BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240606BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240606BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20240606BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20240606BHJP
C09D 157/00 20060101ALI20240606BHJP
C09J 4/00 20060101ALI20240606BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240606BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240606BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240606BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240606BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20240606BHJP
C09J 157/00 20060101ALI20240606BHJP
C09J 167/06 20060101ALI20240606BHJP
C09J 175/14 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
C08F2/46
C08F2/44 A
C09D4/00
C09D4/02
C09D5/00 D
C09D5/00 Z
C09D7/61
C09D7/63
C09D7/65
C09D11/101
C09D133/04
C09D157/00
C09J4/00
C09J4/02
C09J11/04
C09J11/06
C09J11/08
C09J133/04
C09J157/00
C09J167/06
C09J175/14
(21)【出願番号】P 2020561889
(86)(22)【出願日】2019-01-09
(86)【国際出願番号】 US2019012849
(87)【国際公開番号】W WO2019216961
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2020-11-11
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-15
(32)【優先日】2018-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596024024
【氏名又は名称】サン・ケミカル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブルッコレリ,アルド,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】パリス,ジュアニータ,エム.
(72)【発明者】
【氏名】デュランド,リチャード,アール.,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ベスト,テリー
【合議体】
【審判長】▲吉▼澤 英一
【審判官】近野 光知
【審判官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-75281(JP,A)
【文献】特開2006-219855(JP,A)
【文献】特開平4-1204(JP,A)
【文献】米国特許第4257915(US,A)
【文献】米国特許第3147119(US,A)
【文献】特開平10-186426(JP,A)
【文献】特開平8-283453(JP,A)
【文献】特開昭52-34714(JP,A)
【文献】特開2003-96119(JP,A)
【文献】米国特許第3041172(US,A)
【文献】米国特許第3346383(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和モノマー、エチレン性不飽和プレポリマー、およびそれらの組み合わせから選択される重合性構成成分と、
1つ以上の染料又は顔料と、
(a)下記式(I)で定義される1つ以上の半導体金属酸化物
と、(b)カーボンブラック、リソールルビン、アルミノケイ酸塩粘土、フミン酸、フミン酸ポリマーおよびそれらの組み合わせから選択される成分とを含む、
複合光触媒材料と、
M
xO
yH
z(I)
(式中、Mが、Ti、Zn、Mg、Ce、Bi、およびFeから選択される金属であり、
Oが、酸素であり、
Hが、ハロゲンであり、
xが、1~3の整数であり、
yが、1~3の整数であり、
zが、0~3の整数である。)
を含む、化学線への曝露によって硬化可能な組成物であって、
前記半導体金属酸化物が、反応開始照射線量の化学線に曝露されたとき、前記半導体金属酸化物が失われることなく、前記重合性構成成分中に、フリーラジカル重合反応経路を生成し、
前記組成物が、印刷インク、コーティング、接着剤、またはプライマー組成物であり、
前記半導体金属酸化物が、前記重合性構成成分と直接相互作
用する、組成物。
【請求項2】
前記式(I)で定義される半導体金属酸化物の組み合わせが存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記成分(b)が、カーボンブラック、アルミノケイ酸塩粘土、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項
1に記載の組成物。
【請求項4】
前記
複合光触媒材料が、
半導性TiO
2およびカーボンブラックを含む複合材、
半導性TiO
2、半導性BiOCl、半導性Bi
2O
3、半導性MgO、半導性ZnOおよびカーボンブラックを含む複合材、ならびに
半導性TiO
2、半導性ZnO、およびアルミノケイ酸塩粘土を含む複合材
から選択された複合材である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記重合性構成成分が、単官能性エチレン性不飽和モノマー、および多官能性エチレン性不飽和モノマーから選択されるエチレン性不飽和モノマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記重合性構成成分が、10重量%~90重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記重合性構成成分が、エチレン性不飽和プレポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記重合性構成成分が、エチレン性不飽和モノマーおよびエチレン性不飽和プレポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記重合性構成成分が、エポキシアクリレート、
アクリル基を有する油、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニル/アクリルオリゴマー、ポリエン/チオール系、およびそれらの組み合わせから選択されるエチレン性不飽和プレポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
蛍光染料、アゾ染料、アントラキノン染料、キサンテン染料、アジン染料およびこれらの組み合わせから選択される1つ以上の染料、
及び/又は
Pigment Yellow No.12、13、14、17、74、83、114、126、127、174および188、Pigment Red No.2、22、23、48:1、48:2、52、52:1、53、57:1、112、122、166、170、184、202、266および269、Pigment Orange No.5、16、34および36、Pigment Blue No.15、15:3および15:4、Pigment Violet No.3、23および27、Pigment Green No.7、Pigment Black No.7、Pigment White No.6および7、酸化鉄、二酸化チタン、酸化クロム、フェロシアン化第二鉄アンモニウムおよび黒色酸化第二鉄、FD&C Red No.40、FD&C Yellow No.5、FD&C Yellow No.6およびFD&C Blue No.1、D&C Red No.6、D&C Red No.7、D&C Red No.21、D&C Red No.22、D&C Red No.27、Red No.28、D&C Red No.30、D&C Red No.33、D&C Red No.34、D&C Red No.36、D&C Orange No.5、およびD&C Yellow No.10並びにこれらの組み合わせから選択される1つ以上の顔料
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記顔料を含む、請求項
10に記載の組成物。
【請求項12】
前記光触媒材料が、0.1重量%~25重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
1種以上の光開始剤を含む光開始剤構成成分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記光開始剤構成成分が、2.0重量%~40重量%の量で存在する、請求項
13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1から選択される光開始剤を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、UVランプ、UVレーザー、UV-LED、可視光、太陽光、電子ビーム、およびそれらの組み合わせから選択される光源によって放射される光への曝露によって硬化可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、高電圧水銀電球、中電圧水銀電球、キセノン電球、カーボンアークランプ、メタルハライド電球、UV-LEDランプ、およびUVレーザーから選択される光源によって放射されるUV光への曝露によって硬化可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、10kGy~40kGyの照射線量での電子ビーム放射線への曝露によって硬化可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の組成物で印刷された基材を含む、印刷物品。
【請求項20】
前記基材が、プラスチック、セルロース、紙、厚紙、および金属から選択される、請求項
19に記載の印刷物品。
【請求項21】
前記基材が、パッケージ物品、金属パネル、および電子物品から選択される、請求項
19に記載の印刷物品。
【請求項22】
前記半導体金属酸化物が、ZnO、TiO
2、BiOCl、Bi
2O
3、MgOまたはFe
2O
3を含む、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2018年5月10日出願の米国仮特許出願第62/669,533号、および2018年10月4日出願の同第62/740,996号の優先権を主張し、これらは、その全体が参照により、すべての目的で本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、UV光源の放射などの化学線への曝露時にフリーラジカル重合を受ける、化学線硬化性組成物を対象とする。組成物は、組成物の硬化を開始し色を改善する、半導体金属酸化物材料を含む。半導体金属酸化物材料は、化学線硬化性組成物中に存在し得る光開始剤材料のすべてまたは一部の代わりを提供することができる。
【0003】
インク、プライマー、コーティング、および接着剤などの化学線硬化性組成物は、とりわけ、フレキソ、グラビア、デジタルなどの印刷作業で一般的に用いられる。かかる組成物は、エチレン性不飽和モノマーおよびオリゴマーなどの重合性材料、光開始剤、着色剤、阻害剤、ワックスを含む。組成物は、化学線に曝露すると硬化を受ける。硬化は、組成物中に存在するエチレン性不飽和モノマーおよびオリゴマーのフリーラジカル重合を伴う。組成物が反応開始照射線量の化学線に曝露すると、光開始剤が重合反応を開始する。化学線は、例えばUV光などの化学線源によって放射され、高電圧または中電圧の水銀電球、キセノン電球、カーボンアークランプ、金属ハロゲン化物電球、LED光源(すなわち、UV-LEDランプ)、および/または太陽光などの可視光によって提供され得る。また、かかる組成物の硬化を開始するために電子ビーム放射を使用してもよく、その場合、組成物は、光開始剤を含む必要がない。
【0004】
化学線硬化性組成物に光開始剤を含めることから生じる問題のうちの1つは、食品パッケージなどの基材上に組成物を印刷し、次いでそれを硬化させると、光開始剤残留物が経時的に組成物から移動し得ることである。移動可能な残留物は、印刷されたパッケージ内に包装されている商品を汚染し得、商品が食品、医薬品などである場合には、特に問題となる。さらに、移動可能な構成成分は、パッケージの外側の環境を汚染し得る。多くの光開始剤は有毒物質として分類されており、したがって、食品と直接接触するアイテム上に印刷される組成物に含めることはできない。
【0005】
高エネルギー電子ビーム(EビームまたはEB)硬化では、光開始剤の存在は必要ない場合があるが、この硬化方法では、エチレン性不飽和モノマーおよびオリゴマーの全体的かつ完全な硬化を提供することができない。したがって、電子ビーム硬化は、移動可能な物質に関する問題を解決しない。
【0006】
より環境に優しく、再生可能で、環境的に持続可能な化学線硬化性組成物を提供することが、有利かつ有益であろう。
【0007】
対象となり得る参考資料としては、以下が挙げられる:
【0008】
米国特許第3,083,113号、同第4,959,297号、同第5,212,212号、同第6,267,949号、同第8,512,467号、および同第8,623,220号、米国特許出願公開第2005/0153068号、同第2007/0259986号、同第2008/0306201号、同第2010/0074837号、同第2012/0177928号、同第2014/0183141号、および同第2017/0216821号、WO2011/116972、およびEP 2 368 919 A1、
【0009】
以下の非特許文献文書:
【0010】
Azan V,Lecamp L,Lebaudy P,Bunel C.,Simulation of the Photopolymerization Gradient Inside a Pigmented Coating-Influence of TiO2 Concentration on the Gradient;Prog Org Coat 2007:58(1):70-75、
【0011】
Danu S,Darsono,Marsongko,UV-Curing of Titanium Dioxide Pigmented Epoxy Acrylate Coating on Ceramic Tiles;Journal of the Ceramic Society of Japan 2008:116(1356):896-903、
【0012】
J.A.Burunkova,I.Yu.Denisyuk,and S.A.Semina,Self-Organization of ZnO Nanoparticles on UV-Curable Acrylate Nanocomposites;Journal of Nanotechnology,vol.2011,Article ID 951036,6 pages,2011.doi:10.1155/2011/951036、
【0013】
Nakayama,N.&Hayashi,T.,Preparation and Characterization of TiO2-ZrO2 and Thiol-Acrylate Resin Nanocomposites with High Refractive Index via UV-Induced Crosslinking Polymerization; Compos.Part A 38,1996-2004(2007)、
【0014】
Trouillas,P,et al.,(2016),Stabilizing and Modulating Color by Copigmentation:Insights from Theory and Experiment;Chem.Rev.,11;116(9):4937-82。
【0015】
(発明の概要)
本明細書に記載されているのは、化学線への曝露によって硬化可能であるインクおよびコーティングなどの、化学線硬化性組成物である。組成物は、エチレン性不飽和モノマー、エチレン性不飽和プレポリマー、およびそれらの組み合わせから選択される重合性構成成分と、
【0016】
任意選択的に、半導体金属酸化物材料および別の複合材形成材料を含む複合材として存在する、半導体金属酸化物材料と、を含む。
【0017】
一態様では、半導体金属酸化物は、式(I)で定義されるとおりであり、
MxOyHz(I)
式中、Mが、Ti、Zn、Mg、Ce、Bi、およびFeから選択される金属であり、
Oが、酸素であり、
Hが、ハロゲンであり、
xが、1~3の整数であり、
yが、1~3の整数であり、
zが、0~3の整数である。
【0018】
式(I)で定義される金属酸化物の組み合わせを使用してもよい。
【0019】
一態様では、半導体金属酸化物材料は、半導体金属酸化物材料と、顔料、粘土、フミン酸、フミン酸ポリマー、および光または電磁線に応答することが可能な光増白剤および光開始剤などの光活性物質から選択される別の複合材形成材料との複合材として存在する。
【0020】
一態様では、半導体金属酸化物半導体金属酸化物材料は、半導体金属酸化物材料と、カーボンブラック、ハロイサイト粘土、アルミノケイ酸塩粘土、リソールルビン顔料などのマゼンタ顔料、およびそれらの組み合わせから選択される顔料との複合材として存在する。
【0021】
一態様では、半導体金属酸化物材料は、半導体金属酸化物材料と、カーボンブラック、アルミノケイ酸塩粘土、およびそれらの組み合わせから選択される別の複合材形成材料との複合材として存在する。
【0022】
一態様では、重合性構成成分は、エチレン性不飽和モノマーおよびエチレン性不飽和プレポリマーのうちの1種以上から選択されるエチレン性不飽和材料を含む。
【0023】
一態様では、重合性構成成分のエチレン性不飽和プレポリマーは、エポキシアクリレート、アクリレート油、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニル/アクリルオリゴマー、ポリエン/チオール系、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0024】
一態様では、化学線硬化性組成物は、1種以上の光開始剤をさらに含む。
【0025】
一態様では、化学線硬化性組成物は、本明細書に記載の半導体金属酸化物材料を含まない化学線硬化性組成物に含まれる量よりも少ない量の光開始剤を含む。
【0026】
一態様では、化学線硬化性組成物は、本明細書に記載の半導体金属酸化物材料を含まない化学線硬化性組成物と比較すると、改善された色を呈する。
【0027】
一態様では、化学線硬化性組成物は、例えば、太陽光などの可視光、およびUV光などの化学線源への曝露によって硬化可能である。硬化用のUV光は、高電圧水銀電球、中電圧水銀電球、キセノン電球、カーボンアークランプ、メタルハライド電球、およびUV-LED光源のうちの1つ以上によって提供され得る。
【0028】
一態様では、化学線硬化性組成物は、例えば、リソグラフィー、フレキソグラフィー、グラビア、スクリーン、スプレー、ロッド、スプレー、カーテンコーター、およびデジタルなどのプロセスによる適用に好適なインクおよびコーティングである。
【0029】
本出願で使用される場合、「半導体金属酸化物」は、重合性のエチレン性不飽和構成成分の存在下で、反応開始照射線量の化学線に曝露すると、重合性のエチレン性不飽和構成成分中にフリーラジカル重合反応経路を作り出し、経路の生成は金属酸化物のみに起因し得る、光重合プロセス中に半導体金属酸化物は失われない、材料である。この活性は、金属酸化物複合材が消費されず、不可逆的な化学変化を受けずに、追加のラジカル反応を補助するために利用可能であるという点で、触媒的である。
【0030】
半導体金属酸化物による、かつ半導体金属酸化物のみに起因し得る重合性のエチレン性不飽和構成成分におけるフリーラジカル重合反応の開始は、反応開始照射線量の化学線に曝露した反応系で発生する熱流対時間の示差走査熱量測定(DSC)プロットによって実証することができ、反応系が、エチレン性不飽和材料および半導体金属酸化物材料を含み、それにより系が光開始剤を含まず(すなわち、光開始剤を含まず)、DSCプロットが、系内で起こる、または起こったフリーラジカル重合反応を示す発熱(すなわち、熱流)を示す。
【0031】
光DSCは、TA PCA(Photocalorimeter Accessory)アクセサリ(012-64000 Hgランプ付き)を装備するTA DSC Q2000を使用して、取得される。使用されるパンは、参照パンとして1つのむき出しのパンを備えたT Zeroアルミニウムパン、および10~15mgの非光反応性または光反応性系のいずれかを含有する試料パンである。試料パンおよび参照パンに0.5秒~2秒間光を照射するので、60秒間隔のうちの残りは、合計10回の照射サイクル工程に十分な時間である。ランプ強度は、1%~5%(2.0W~10W)および25℃(等温)の温度に設定することができる。PCAアクセサリは、320~500nmのスペクトル出力を有する200W Hgの高蒸気圧ランプを収容する。BGAの光活性を評価するために、ベースラインモノマー系と比較した、サイクルあたりの系のエンタルピー(J/g)を考慮した。この場合、モノマーはベースラインとして機能し、モノマーは光反応性系としてBGAとブレンドされている。
【0032】
DSCプロットの例は、
図1として本明細書に提供され、光開始剤が存在しない、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート中の半導体TiO
2金属酸化物とカーボンブラック(BGA1)との複合材の、向上した硬化活性を実証する。この活性は、金属酸化物複合材が消費されず、不可逆的な化学変化を受けずに、追加のラジカル反応を補助するために利用可能であるという点で、触媒的である。
【0033】
上の定義は、半導体金属酸化物材料および1種以上の光開始剤を含む、本明細書に記載の本発明の化学線硬化性組成物を除外するものではない。かかる組成物では、光開始剤は、化学線被曝時に硬化を開始する。
【0034】
任意選択的に光開始剤、および半導体金属酸化物を含む化学線硬化性組成物は、光開始剤のみを含有する組成物よりも完全かつ徹底的な硬化を受けることが見出された。また、光開始剤および半導体金属酸化物を含む組成物は、硬化後に改善された色特性を呈する。かかる特性としては、改善された顕色、密度、および光沢が挙げられ、これらの改善は測定可能である。硬化および色の改善は、以下の実施例で実証される。
【0035】
最もよく理解されているように、理論に拘束されることを望むものではないが、上の定義で述べた反応経路の生成は、有機光開始剤がフリーラジカル光重合を開始する様式でのフリーラジカル重合の開始ではない。
【0036】
本明細書に記載の化学線硬化性組成物は、電子ビーム装置(Eビーム)からのエネルギーによって硬化させることができることをさらに理解されたい。かかる場合、光開始剤構成成分は、組成物中に存在しなくてもよい。以下の実施例に示されるように、半導体金属酸化物を含むインクおよびコーティングは、それらが半導体金属酸化物を含むと、改善された硬化を呈する。
【0037】
記載の化学線硬化性インクおよびコーティング組成物は、硬化を開始するために光開始剤のみに依存する組成物よりも、環境に優しい。インクおよびコーティング組成物に含有される半導体金属酸化物材料は、グリーンテクノロジーの原理(例えば、光触媒作用および放射向上)に従って動作する。半導体金属酸化物材料(金属酸化物半導体材料と見なされる)は、再生可能かつ持続可能である。化学線硬化性組成物中に半導体金属酸化物材料(およびその複合材)を含めることにより、従来の光開始剤の量および濃度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】光開始剤を含まず、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)モノマー複合材を含有する反応系における、半導体TiO
2金属酸化物とカーボンブラック(BGA1)との複合材の光触媒活性を実証する、光DSCスペクトルである。UVエネルギーに曝露すると、HDDAで重合反応が開始される。反応系に光開始剤が存在しないので、光触媒活性は複合材に起因する。
図1はまた、HDDAのみを含有する系には、光触媒活性がないことを示している。曝露条件:0.5秒の曝露時間および2%の光強度で放射されるUVエネルギー。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書で使用される場合、「エトキシル化」という用語は、鎖延長剤としてエチレンオキシドを含む鎖延長化合物を指す。
【0040】
「プロポキシル化」は、鎖延長剤としてプロピレンオキシドを含む鎖延長化合物を指す。
【0041】
「アルコキシル化」は、鎖延長剤としてエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドを含む鎖延長化合物を指す。
【0042】
「プレポリマー」は、さらなる重合が可能なオリゴマーまたは他のマクロ分子である。
【0043】
化学線放射線硬化性インクおよびコーティングは、非共有結合的な自己組織化相互作用が可能であり、従来の分子光開始剤およびそれらの残留物よりも硬化組成物から移動する可能性が低い固体種である半導体金属酸化物材料を含む。さらに、超分子複合体は、多様な疎水性または親水性種とともに、半導体金属酸化物材料自体の間で形成される。
【0044】
半導体金属酸化物材料は、励起状態の電子正孔対に影響を与える量子閉じ込め特性を呈する励起状態の電子正孔対(励起子)を形成する。この特性は半導体ごとに変動し、半導体金属酸化物に実施される処理によって影響を受けることは周知である。励起子は、静電クーロン力によって互いに引き付けられる電子と正孔の束縛状態である。励起子は、半導体金属酸化物材料による放射線吸収時に形成される。これは、絶縁体、半導体金属酸化物材料、および一部の液体に存在する電気的に中性の準粒子である。励起子は、正味の電荷を輸送せずにエネルギーを輸送することができる凝縮物質の素励起と見なされる。励起子は、本明細書で使用される半導体金属酸化物材料(およびその複合材)などの半導体材料によって光子が吸収されるときに形成される。光子は、電子を半導体の価電子帯から伝導帯に励起させる。次に、これにより、正に帯電した電子正孔(電子が移動した場所についての抽象的概念)が残される。次いで、正孔を取り巻く多数の電子および励起した電子からの反発クーロン力によって、伝導帯の電子は、この局所的な正孔に効果的に引き付けられる。この引き付けは、安定したエネルギーバランスを提供する。その結果、励起子は、結合していない電子と正孔よりもわずかに少ないエネルギーを有する。束縛状態の波動関数は、水素原子の波動関数に似た異種原子状態である「水素様」と呼ばれる(正孔の静止質量がゼロである場合を除く)。結合エネルギーは、水素原子よりもはるかに小さく、粒子サイズは、はるかに大きい。これは、半導体内の他の電子によるクーロン力の遮蔽(すなわち、その誘電率)、および励起した電子と正孔の有効質量が小さいことの両方が原因である。電子と正孔との再結合、すなわち励起子の減衰は、電子と正孔の波動関数の重なりによる共鳴安定化によって制限され、励起子の長い寿命を生じる。
【0045】
光発生された電子と正孔(還元/酸化中心)の寿命が増加する。化学線硬化性組成物の場合、半導体金属酸化物ラジカル種と、光触媒表面に近いモノマーアクリレートの電荷との間の交換が存在する可能性がある。これらの光誘起事象は、光化学硬化反応を開始する。界面電子移動、すなわち、光活性化半導体に吸着された電子の基材へのまたは基材からの移動の発生は光触媒プロセスで起こり、その効率は、所与の酸化還元反応の光触媒として機能する半導体の能力に影響を与える。ひいては、電子移動反応の効率は、吸着されたアクリレートモノマー部分の酸化還元電位に対する半導体の伝導帯および価電子帯端の位置と相関する。
【0046】
有利かつ有益に、記載の化学線硬化性組成物は、光重合を開始するために使用される従来の光開始剤よりも環境に優しく、再生可能であり、環境的に持続可能である。化学線硬化性組成物は、より低濃度の比較的有毒な従来の光開始剤を含み、部分的に反応したモノマー/オリゴマーおよび光開始剤が周囲の環境および材料に移動する可能性を下げる。
【0047】
本明細書に記載の半導体金属酸化物材料およびその複合材は、記載の化学線硬化性組成物に含まれるエチレン性不飽和材料において光触媒硬化を開始する。さらに、半導体金属酸化物材料に含めることにより、組成物の色の向上が生じることが見出された。したがって、さらに色向上剤として作用する。半導体金属酸化物材料を含めることにより、半導体金属酸化物材料およびその複合材を含まない組成物に含まれる光開始剤材料の量と比較すると、より少量の光開始剤材料を組成物に含めることができる。その結果、有毒な副産物を含み得る潜在的に移動可能な構成成分の量が低減される。形成される複合体は、安定的であり環境に優しく、多様なUV吸収活性および機能性を備えた多くの異なる洗練された超分子複合材に向けた、分子構造の簡単な修飾(ナノテクノロジー)を提供する。複合材は、天然カーボンブラック部分と酸化天然フミン酸ポリマーとの複合体を含む。
【0048】
半導体金属酸化物材料は、硬化中に触媒として作用し、反応物として作用しないので、化学線への曝露時に硬化事象の開始剤としての性能が劣化しない、半導体材料である。
【0049】
さらに、政府の規制は、化学線硬化性組成物に光開始剤を含めることに対して、より環境に優しくより安全な代替物を見つけるための努力を間接的に開始した。記載の化学線で硬化可能なインクおよびコーティング組成物は、化学線で硬化可能な組成物中の光開始剤の量を排除または下げることができるので、光開始剤に代わる、環境に優しくより安全な代替物を提供する。
【0050】
半導体金属酸化物材料の上記の色改善特性は、従来の光開始剤が呈することのない、新しい予想外の特性である。
【0051】
半導体金属酸化物材料および複合材は、経時的に劣化せず(典型的な光開始剤は比較的不安定であり、温度および酸素の変動する条件下では貯蔵寿命が短い)、UV光エネルギーへの曝露時に有毒な副産物を形成するとは思われないことを含む理由から、従来の光開始剤よりも優れている。
【0052】
加えて、本明細書に記載の化学線硬化性組成物に含まれる半導体金属酸化物材料の複合材は、組成物の硬化および色の改善を補助する他の構成成分を容易に組み込むことができる。複合材の1つの利点は、非共有結合的な相互作用を介して、アクリレートモノマーなどの反応性エチレン性不飽和材料を半導体金属酸化物の反応表面に引き付け、結合することができることである。これは、半導体金属酸化物とカーボンブラックとの複合材で起こり得る。1つのかかる複合材は、BGA1であり、これは、半導体TiO2金属酸化物とカーボンブラックとの複合材であり、以下の実施例で説明する。
【0053】
従来の光開始剤とは異なり、本化学線硬化性組成物に使用される半導体金属酸化物材料のUV吸収帯は、UVスペクトルの所望の波長に対して調節することができ、それにより、硬化エネルギーに曝露したときの組成物の硬化活性を改善することができる。加えて、半導体金属酸化物材料系の複合材の表面での光誘起による酸化/還元の同時の二重作用の理由から、複合材は、抗菌/防臭用途(微生物の酸化/還元)、硬化中の複数のフリーラジカル発生、太陽光発電用途、および/または水の浄化で使用することができる。
【0054】
半導体金属酸化物材料およびその複合材は、環境的に持続可能な材料であり、別の目的のために使用済み材料から再利用して無期限に再使用することもできる。半導体金属酸化物材料およびその複合材は、硬化メカニズムのための二重(還元および酸化)のフリーラジカル発生を提供し、複合材は、分子足場とともに設計することができる。例えば、カーボンブラック、粘土、および他の添加剤などの支持分子構造は、半導体金属酸化物材料、ならびにモノマー、オリゴマー、およびプレポリマーなどのエチレン性不飽和材料と相互作用して、より効率的に硬化反応することができる。加えて、複合材は顔料と相互作用して、色特性、同様に硬化反応を促進することもできる。顔料で修飾された複合材は、配合物に単独で添加され、硬化および発色を改善することができる。さらに、顔料で修飾された複合材は、可視光に曝露すると、色の改善を達成することができる。あるいは、半導体金属酸化物材料およびその複合材は、支持分子足場を必要とせずに、半導体金属酸化物、モノマー、および顔料と直接相互作用して、硬化および色を直接向上することができる。
【0055】
一態様では、記載の半導体金属酸化物材料およびその複合材は、式(I)で以下のように定義される半導体金属酸化物を含む:
MxOyHz(I)
式中、Mが、Ti、Zn、Mg、Ce、Bi、およびFeから選択される金属であり、
Oが、酸素であり、
Hが、ハロゲンであり、
xが、1~3の整数であり、
yが、1~3の整数であり、
zが、0~3の整数である。
式(I)で定義される金属酸化物の組み合わせを使用してもよい。
【0056】
本化学線硬化性組成物に含まれ得る半導体金属酸化物材料およびその複合材は、なかでも、光活性ナノ複合材アナターゼ-TiO2、ZnO、および他の光触媒バンドギャップ半導体である。これらの材料は、硬化を生じかつ/または向上し、硬化した組成物の色を向上する。さらに、半導体金属酸化物材料およびその複合材は、硬化効率を減少させることなく、黒の顔料を含有する組成物の光学密度を増加し、「漆黒度」を改善することが実証されている。さらに、より少量の光開始剤を含有するものを含む、多様な化学線硬化性組成物では、硬化が効果的に生じる。半導体金属酸化物材料およびその複合材は、従来の光開始剤よりも有毒性が低く、より安定である。それらは、従来の光開始剤よりも長い期間貯蔵することができ、より良好な保存寿命を有することができ、より耐熱性かつ耐光性であり得る。さらに、半導体金属酸化物材料およびその複合材は、単独で、およびカーボンブラックなどのある特定の添加剤との複合材として相乗的に作用することが示されている。
【0057】
半導体金属酸化物材料およびその複合材は、典型的な光開始剤パッケージと比較すると、UV光曝露後でさえもより安定であり(すなわち劣化せず)、移動する可能性が低い。半導体金属酸化物材料およびその複合材は、それらの光触媒特性が、光誘起による酸化/還元の二重のフリーラジカル硬化経路を含むという点でさらに有利である。半導体金属酸化物材料などのバンドギャップ添加剤が持つ有利な特性は、硬化を補助するときに一緒に作用する酸化/還元の二重のフリーラジカル促進経路である。半導体金属酸化物材料などの光触媒は、UV線への曝露時に、価電子帯から伝導帯への電子励起を受ける。これにより、フリーラジカル硬化反応を推進する還元剤である自由電子と酸化力のある正孔との同時発生が生じる。その過程で、光触媒は、電子励起エネルギーを失い、原子価結合電子を獲得し、次いで別のUV励起事象の準備が整う。したがって、光触媒はUV光で劣化せず、硬化反応を複数回発生させることができる。加えて、水または酸素の存在は、金属酸化物光開始剤の硬化活性を阻害しないであろう。
【0058】
半導体金属酸化物材料の安定性および超分子適応性により、多様なUV吸収性または放射線向上活性を備える多様な複合材に組み合わせることができる。特に、半導体金属酸化物はまた、超分子複合体、および顔料との複合材を形成し、色および硬化を向上することができる。
【0059】
半導体金属酸化物材料は、放射線向上剤としても作用することができる半導体である。すなわち、電子ビームによって放射されるなどの高エネルギーの亜原子粒子にこれらの半導体材料が曝露すると、バンドギャップ/伝導帯への電子の還元およびオージェ電子効果は、電子放射増幅を誘起し、それによって半導体金属酸化物の放射線向上剤としての機能を生じる。電子ビームに曝露した半導体金属酸化物材料は、フリーラジカル硬化反応を増加させる、さらなる電子を放射する。
【0060】
本明細書に記載の本発明は、半導体として機能する半導体金属酸化物材料およびその複合材を利用し、これらは、従来の光開始剤パッケージを上回るいくつかの利点を与える。従来の光開始剤とは異なり、半導体金属酸化物材料は、熱による悪影響を受けない。半導体金属酸化物材料は、単独で、または化学線硬化性組成物内の複合材として利用することができる。すべての場合において、材料は、モノマーフリーラジカルを作り出す還元/酸化の二重経路を提供し、光化学硬化を補助し、酸素の阻害相互作用による影響を受けない。加えて、半導体金属酸化物材料の化学構造は、半導体金属酸化物の光活性表面の近くに反応性モノマー/オリゴマー種を吸着することができるカーボンブラックなどの複合材料を用いて、非共有結合的な超分子足場を設計および作り出す機会を提供し、それによって反応効率を向上する。
【0061】
いくつかの他の利点:
【0062】
半導体金属酸化物材料およびその複合材は、再生可能かつ持続可能であり、環境に優しく、使用しても光劣化しない。
【0063】
半導体金属酸化物材料およびその複合材は、好ましくは、移動する可能性が低く、食品パッケージに好適な固体状態の複合材である。
【0064】
半導体金属酸化物材料およびその複合材は、化学線硬化性組成物に含まれる従来のより有毒な光開始剤の全量またはその一部の代替物として使用することができ、したがって光開始剤の量を下げることができる。
【0065】
半導体金属酸化物材料およびその複合材は、光開始剤と相乗的に作用し、光開始剤と組み合わせて、UV硬化効果を向上することができる。
【0066】
半導体金属酸化物材料の波長吸収性は、多様な複合添加剤を使用して変更することができる。
【0067】
半導体金属酸化物材料およびその複合材は、多様な化学線硬化性組成物と適合性がある。そして、
【0068】
半導体金属酸化物材料およびその複合材を含む化学線で硬化可能な組成物は、改善された耐薬品性、硬化、色密度および光沢を提供する。
【0069】
本実施形態の半導体金属酸化物材料組成物の複合材は、半導体金属酸化物材料と、例えば、限定されないが、ハロイサイトおよびアルミノケイ酸塩などの粘土、H2O、カーボンブラック、アクリレートモノマー、フミン酸、フミン酸ポリマー、UV硬化/色を向上する染料および顔料、ならびに蛍光増白剤および光開始剤などの光または電磁線に応答することが可能な光活性物質を含む添加剤と、を含む。
【0070】
出願人は、Huntsmanから入手可能な商品名Altiris550として入手可能なTiO2顔料が、UV光への曝露によって硬化するであろうインクまたはコーティング組成物などの化学線硬化性組成物中の硬化助剤として使用するための有効な半導体金属酸化物材料であることを見出した。この半導体金属酸化物材料を含めることにより、エネルギー硬化性インク配合物に含まれるであろう従来の光開始剤の量を低減することが可能になる。さらに、この半導体金属酸化物材料を含むインクおよびコーティング組成物の特性は、それを含まないインクおよびコーティング組成物に匹敵するか、またはそれと比較して改善されている。
【0071】
他の利点としては、本化学線硬化性組成物中のかかるAltirisの550などの半導性TiO2金属酸化物を含むことからの流れがある。なかでも、光開始剤の量の低減を含むことによる移動可能な構成成分の量の低減、食品および他の敏感なアイテム(例えば、市販薬および処方薬)用の印刷パッケージに特に関連する利点、疎水性および親水性組成物における適合性、ネスレおよびスイスの条例、同様に他の政府機関の規制スキームの順守、ならびに、事実上すべての印刷方法、例えばフレキソ、リソ、グラビア、LEDフレキソ、インクジェットによって適用されるインクおよびコーティング、およびスクリーンインク製品に好適に含めることができる、ということである。
【0072】
すべての金属酸化物が半導性および/または光触媒材料であるとは限らないことを理解されたい。多くの金属酸化物は半導体として機能せず、したがってエチレン性不飽和材料の存在下で化学線に曝露しても、フリーラジカル重合反応を開始しないであろう。例えば、エチレン性不飽和材料(例えば、1,6-HDDA)および非半導性金属酸化物材料またはその複合材(例えば、半導性TiO2が非半導性TiO2で置き換えられている、本明細書で後述されるBGA1)を含むかかる系のDSCは、フリーラジカル重合が生じているであろうことを示す反応の発熱を示さず、この特定のTiO2が半導性金属酸化物材料ではないことを実証している。
【0073】
以下の表1は、半導性および/または光触媒効果を呈する例示的な金属酸化物材料、半導体金属酸化物材料の複合材を作製するために使用することができる添加剤、ならびに半導体金属酸化物材料と添加剤との例示的な複合材を特定している。表1に提供される情報は例示的なものであり、決して限定するものではない。
【0074】
数値的な制限によって制限されることを望むものではないが、本明細書で定義および記載される半導性金属酸化物の半導性特性を示さない、インク組成物の顔料として使用されるTiO2材料は、250nm以上の粒子サイズを有することが一般に知られている。一方で、1nm~200nm、または1nm~175nm、または1nm~150nm、または1nm~120nmの粒子サイズを有するTiO2材料は、半導性であることが見出されている。これらの数値範囲が必ずしも普遍的に適用されるとは限らず、例えば、本明細書に記載のAltiris550 TiO2半導性金属酸化物は、粒子サイズに関するこのコメントに準拠するとは思われないことに留意されたい。
【0075】
半導体金属酸化物材料の複合材は、本明細書に記載の化学線硬化性組成物に含めるのに、特に非常に好適であり得る。上に示したように、複合材に含まれる添加剤は、半導体金属酸化物材料のバンドギャップを調整および調節することができ、それにより、最大の光触媒活性および組成物を硬化させるために使用される光の波長を提供する。なかでも、それらの材料としては、顔料、粘土、フミン酸、フミン酸ポリマー、蛍光増白剤および光開始剤などの光または電磁線に応答することが可能である光活性物質である。
【0076】
一態様では、半導体金属酸化物材料は、半導体金属酸化物材料と、カーボンブラック、ハロイサイト粘土、およびアルミノケイ酸塩粘土、リソールルビン顔料などのマゼンタ顔料、およびそれらの組み合わせから選択される顔料との複合材として存在する。
【0077】
一態様では、半導体金属酸化物材料は、半導体金属酸化物材料と、カーボンブラック、アルミノケイ酸塩粘土、およびそれらの組み合わせから選択される別の複合材形成材料との複合材として存在する。
【0078】
示されるように、本発明の1つの利点は、半導体金属酸化物材料およびその複合材を含めることによって、光開始剤の量を下げることができることである。例えば、半導体金属酸化物材料およびその複合材は、組成物の総重量に基づいて、1対1(w/w/)を基準に、化学線硬化性組成物に典型的に含まれる光開始剤の全部または一部を置き換えることができることが見出されている。
【0079】
一態様では、半導体金属酸化物材料(および/またはその複合材)は、組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~25重量%、好ましくは0.5重量%~20重量%、より好ましくは1.0重量%~10重量%の量で存在する。
【0080】
複合材は、DACスピードミキサーおよび/またはソニケーターなどの超音波プロセッサーで、構成成分を十分な期間の間混合することによって形成することができる。
【0081】
重合性成分
一態様では、重合性構成成分は、組成物の総重量に基づいて、10重量%~90重量%、好ましくは60重量%~90重量%、より好ましくは70重量%~90重量%の量で化学線硬化性組成物中に存在する。
【0082】
単官能性および多官能性エチレン性不飽和材料の多くの異なる種を、本化学線硬化性組成物に使用することができる。それらの単なる例示的かつ非排他的な列挙としては、以下が挙げられる。
【0083】
単官能性エチレン性不飽和モノマー
好適な単官能性エチレン性不飽和モノマーの例としては、限定されないが、以下が挙げられる:
【0084】
アクリル酸イソブチル、アクリル酸シクロヘキシル、イソオクチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソノニルアクリレート、オクチル/デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2-プロピルヘプチルアクリレート、アクリル酸トリデシル、ヘキサデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4-tブチルシクロヘキシルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサンアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンチルアクリレート、ジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、アクリル酸ベンジル、フェノキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、アルコキシル化ノニルフェノールアクリレート、クミルフェノキシエチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、2(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、カプロラクトンアクリレート、エトキシル化メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールブチルエーテルアクリレート、アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアクリレート、エトキシル化エチルヘキシルアクリレート、アルコキシル化フェノールアクリレート、エトキシル化フェノールアクリレート、エトキシル化ノニルフェノールアクリレート、プロポキシル化ノニルフェノールアクリレート、ポリエチレングリコールo-フェニルフェニルエーテルアクリレート、エトキシル化p-クミルフェノールアクリレート、エトキシル化ノニルフェノールアクリレート、アルコキシル化ラウリルアクリレート、エトキシル化トリスチリルフェノールアクリレート、N-(アクリロイルオキシエチル)ヘキサヒドロフタルイミド、N-ブチル1,2(アクリロイルオキシ)カルバミン酸エチル、アクリロイルオキシエチルコハク酸水素、オクトキシポリエチレングリコールアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、2-イソシアナートエチルアクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリル酸2-カルボキシエチル、4-ヒドロキシブチルアクリレート、およびそれらの組み合わせ。当業者は、メタクリレート化合物がそれらの同等のアクリレート対応物よりも低い反応性を有することを理解するが、上記のメタクリレート対応化合物(例えば、イソブチルメタクリレートからイソブチルアクリレートまで)も含まれ得る。
【0085】
好適な多官能性エチレン性不飽和モノマーの例としては、限定されないが、以下が挙げられる:1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、2-メチル-1,3-プロパンジイルエトキシアクリレート、2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、エトキシル化2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、3メチル1,5-ペンタンジオールジアクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、エトキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、プロポキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10デカンジオールジアクリレート、エトキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロポキシル化エチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリ(テトラメチレングリコール)ジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、エトキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ポリブタジエンジアクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,4-ブタンジイルビス[オキシ(2-ヒドロキシ-3,1-プロパンジイル)]ジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシル化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシル化エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールFジアクリレート、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、エトキシル化グリセロールトリアクリレート、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン修飾トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、e-カプロラクトン修飾トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、メラミンアクリレートオリゴマー、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシル化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、およびそれらの組み合わせ。当業者は、メタクリレート化合物がそれらの同等のアクリレート対応物よりも低い反応性を有することを理解するが、上記のメタクリレート対応化合物(例えば、イソブチルメタクリレートからイソブチルアクリレートまで)も含まれ得る。
【0086】
これらの配合物中に部分的に使用することが可能な他の官能性モノマー種および部類としては、N-ビニルカプロラクタムなどの環状ラクタム、N-ビニルオキサゾリジノンおよびN-ビニルピロリドン、ならびにアクリロイルモルホリンなどの第2級または第3級アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-t.ブチルアクリルアミド、N-ヘキシルアクリルアミド、N-シクロヘキシルアクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド、N-t.オクチルアクリルアミド、N-ドデシルアクリルアミド、N-ベンジルアクリルアミド、N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N-イソブトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-プロピルアクリルアミド、N,N-ジブチルアクリルアミド、N,N-ジヘキシルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノヘキシルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノヘキシルアクリルアミド、およびN,N’-メチレンビスアクリルアミドが挙げられる。
【0087】
上のうちのいずれかの組み合わせを、本組成物に使用することができる。
【0088】
エチレン性不飽和オリゴマー/プレポリマー
オリゴマーからなる少なくとも1種のプレポリマーは、好ましくは、エポキシアクリレート、アクリル化油、ウレタンアクリレート(脂肪族および芳香族)、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニル/アクリルオリゴマー、ポリエン/チオール系、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0089】
光重合開始剤
本組成物は、1種以上の光開始剤を含み得る。一態様では、光開始剤構成成分は、組成物の総重量に基づいて、2.0重量%~40重量%、好ましくは5.0重量%~25重量%、より好ましくは5.0重量%~20重量%の量で化学線硬化性組成物中に存在する。さらなる態様では、この量は、記載の半導体金属酸化物材料およびその複合材を含まない化学線硬化性組成物中に提供される光開始剤の量よりも少ない。
【0090】
半導体金属酸化物材料およびその複合材は、光開始剤と一緒に作用して、迅速かつ徹底的な硬化を提供することが見出されている。好適な光開始剤としては、限定されないが、以下が挙げられる:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンなどのα-ヒドロキシケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-4’-tert-ブチル-プロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチル-プロピオフェノン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシプロポキシ)-2-メチル-プロピオフェノン、オリゴ2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチル-ビニル)フェニル]プロパノン、ビス[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)フェニル]メタン、2-ヒドロキシ-1-[1-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)フェニル]-1,3,3-トリメチルインダン-5-イル]-2-メチルプロパン-1-オン、ならびに2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)フェノキシ]フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシドなどのアシルホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、ならびにビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-[4-メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オンなどのα-アミノケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、ならびに2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2-4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、および1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどのチオキサントン、4-フェニルベンゾフェノン、および4-メチルベンゾフェノンなどのベンゾフェノンなどのベンゾフェノン、メチル-2-ベンゾイルベンゾエート、4-ベンゾイル-4-メチルジフェニルスルフィド、4-ヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾフェノン-2-カルボキシ(テトラエトキシ)アクリレート、4-ヒドロキシベンゾフェノンラウレート、および1-[-4-[ベンゾイルフェニルスルホ]フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン-1-オン、フェニルグリオキシル酸メチルエステルなどのフェニルグリオキシレート、オキシ-フェニル-酢酸2-[ヒドロキシル-エトキシ]-エチルエステル、またはオキシ-フェニル-酢酸2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシムなどのオキシムエステル、[1-(4-フェニルスルファニルベンゾイル)ヘプチリデンアミノ]ベンゾエート、または[1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]-エチリデンアミノ]アセテート、他の好適な光開始剤の例としてはジエトキシアセトフェノン、アセトフェノン、ベンジル、ベンジルジメチルケタル、チタン-ビス(
【数1】
5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス-[2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル]などのチタノセン(titanocene)ラジカル開始剤、9-フルオレノン、カンファーキノン、2-エチルアントラキノンなど。
【0091】
高分子光開始剤および増感剤も好適であり、例えば、高分子アミノ安息香酸塩(RAHNからのGENOPOL AB-1もしくはAB-2、IGMからのOmnipol ASA、またはLambsonからのSpeedcure 7040)、高分子ベンゾフェノン誘導体(RAHNからのGENOPOL BP-1もしくはBP-2、IGMからのOmnipol BP、Omnipol BP2702、もしくはOmnipol 682、またはLambsonからのSpeedcure 7005)、高分子チオキサントン誘導体(RAHNからのGENOPOL TX-1もしくはTX-2、IGMからのOmnipol TX、またはLambsonからのSpeedcure 7010)、高分子アミノアルキルフェノン(IGMからのOmnipol 910など)、高分子ベンゾイルギ酸エステル(IGMからのOmnipol 2712など)、および高分子増感剤(IGMからのOmnipol SZ)が含まれる。
【0092】
Irgacure(登録商標)TPOは、(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド)である。Irgacure(登録商標)TPO-Lは、(2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート)である。Omnirad(登録商標)907は、(2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン)である。Irgacure(登録商標)TPOおよびIrgacure(登録商標)TPO-Lは、それぞれLucirin(登録商標)TPOおよびLucirin(登録商標)TPO-Lとして以前知られていた。Omnirad(登録商標)907は、Irgacure(登録商標)907として以前知られていた。
【0093】
1種以上の光開始剤の組み合わせを組成物に含めてもよい。
【0094】
さらに、ある特定の開始剤は、有毒であることが知られている。(他の半導体金属酸化物材料の中でも)上記の半導性TiO2金属酸化物材料は、胎児にリスクをもたらすことが知られているIrgacure(登録商標)369(2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1)などの光開始剤の潜在的な代替品である。本出願の好ましい態様では、化学線硬化性組成物は、Irgacure(登録商標)369を含まない。
【0095】
他の構成成分
化学線硬化性組成物は、1つ以上の機能を実施し、かつ/または組成物に1つ以上の属性を提供する他の構成成分を含んでもよい。それらには、以下がある。
【0096】
アミン相乗剤
アミン相乗剤もまた、配合物に含まれ得る。好適な例としては、限定されないが、以下が挙げられる:2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエートなどの芳香族アミン、N-フェニルグリシン、安息香酸、4-(ジメチルアミノ)-、1,1’[(メチルイミノ)ジ-2,1-エタンジイル]エステル、ならびに4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸と、エチル、アミル、2-ブトキシエチル、および特に好ましくは2-エチルヘキシルエステルとの単純なアルキルエステル、N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エステルの他の位置異性体も好適である。
【0097】
他の含まれ得るものは、例えば、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、およびトリイソプロパノールアミンなどの脂肪族アミン、アミノアクリレートおよびアミン修飾ポリエーテルアクリレートである、ALLNEXから入手可能なEbecryl80、Ebecryl81、Ebecryl83、Ebecryl85、Ebecryl880、EbecrylLEO10551、EbecrylLEO10552、EbecrylLEO10553、Ebecryl7100、EbecrylP115、およびEbecrylP116、すべてSartomerから入手可能なCN501、CN550、CN UVA421、CN3705、CN3715、CN3755、CN381、およびCN386、RAHNからのGenomer5142、Genomer5161、Genomer5271、およびGenomer5275、すべてIGMから入手可能なPhotomer4771、Photomer4967、Photomer5006、Photomer4775、Photomer5662、Photomer5850、Photomer5930、およびPhotomer4250、すべてBASFから入手可能なLaromerLR8996、LaromerLR8869、LaromerLR8889、LaromerLR8997、LaromerPO83F、LaromerPO84F、LaromerPO94F、LaromerPO9067、LaromerPO9103、LaromerPO9106、およびLaromerPO77F、DSM-AGIからのAgisyn701、Agisyn702、Agisyn703、NeoRad P-81、およびNeoRad P-85である。上のうちのいずれかの組み合わせが含まれ得る。
【0098】
着色剤
好適な着色剤としては、限定されないが、有機または無機顔料および染料が挙げられる。染料は、蛍光染料、アゾ染料、アントラキノン染料、キサンテン染料、アジン染料、それらの組み合わせなどを含むが、これらに限定されない。有機顔料は、例えば、Pigment Yellow No.12、13、14、17、74、83、114、126、127、174、188、Pigment Red No.2、22、23、48:1、48:2、52、52:1、53、57:1、112、122、166、170、184、202、266、269、Pigment Orange No.5、16、34、36、Pigment Blue No.15、15:3、15:4、Pigment Violet No.3、23、27、および/またはPigment Green No.7などの1つの顔料または顔料の組み合わせであってよい。無機顔料は、以下の非限定的な顔料の1つであり得る:酸化鉄、二酸化チタン、酸化クロム、フェロシアン化第二鉄アンモニウム、黒色酸化第二鉄、Pigment Black No.7ならびに/またはPigment White No.6および7。所望の色を達成する組み合わせと同様に、他の有機および無機の顔料および染料も、採用され得る。
【0099】
本発明で使用される着色剤は、任意のFD&CまたはD&C顔料であってよい。好ましいFD&C顔料には、FD&C Red No.40、FD&C Yellow No.5、FD&C Yellow No.6およびFD&C Blue No.1が含まれる。好ましいD&C顔料には、D&C Red No.6、D&C Red No.7、D&C Red No.21、D&C Red No.22、D&C Red No.27、Red No.28、D&C Red No.30、D&C Red No.33、D&C Red No.34、D&C Red No.36、D&C Orange No.5、およびD&C Yellow No.10が含まれる。
【0100】
蛍光増白剤
化学線で硬化可能な組成物はまた、蛍光増白剤を含んでもよい。蛍光増白剤は、UV範囲で吸収し、吸収されたUV光の大部分を400~500nmの波長を有する青色の蛍光として再放射する無色または青白い有機化合物であることが知られている。発光検出器はUV光を放射し、生じる蛍光を検出することができる。好適な蛍光増白剤の例としては、ジスチリルベンゼン、ジスチリルビフェニル、ジビニルスチルベン、トリアジニルアミノスチルベン、スチルベニル-2H-トリアゾール、スチルベニル-2H-ナフト[1,2-d]トリアゾール、およびビス(1,2,3-トリアゾリル)スチルベンなどのスチルベン誘導体が挙げられ、これらの各々は、さらに置換されていてもよい。さらなる例としては、ベンゾオキサゾール、スチルベニルベンゾオキサゾール、ビスベンゾオキサゾール、ベンズイミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、またはクマリン誘導体が挙げられる。蛍光増白剤は、例えば、Blankophor(登録商標)、Tinopal(登録商標)、またはUltraphor(登録商標)の名称で市販されている。異なる蛍光増白剤の混合物も使用することができる。使用される蛍光増白剤の量は、通常、組成物の総重量に基づいて、1.0重量%~25重量%である。
【0101】
ワックス
化学線で硬化可能な組成物はまた、限定されないが、アミドワックス、エルカミドワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、TEFLON(登録商標)、カルナウバワックスなどのワックスを含んでもよい。ワックスは、上記ワックスの組み合わせであってよい。ワックスは、アミドワックスとエルカミドワックスとのブレンドであることが好ましい。ワックスは、存在する場合、0重量%~4.0重量%の量である。ワックスは、0.1重量%~約2.0重量%の量で存在することが好ましい。
【0102】
他の添加剤
化学線で硬化可能な組成物のほとんどと同じように、添加剤を組み込んで様々な特性を向上することができる。かかる添加剤の部分的な列挙としては、限定されないが、接着促進剤、シリコーン、光安定剤、脱気添加剤、アンモニア、流動促進剤、消泡剤、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、分散剤、可塑剤、レオロジー添加剤、ワックス、シリコーンなどが挙げられる。
【0103】
硬化
本発明の化学線硬化性組成物は、例えば日光などの可視光、ならびに高電圧水銀電球、中電圧水銀電球、キセノン電球、カーボンアークランプ、金属ハロゲン化物電球、およびUV-LED光源によって提供され得るUV光などの化学線光源によって放射される光への曝露によって、硬化させることができる。組成物はまた、電子ビーム(EB)放射線への曝露によって硬化させてもよい。
【0104】
組成物に適用される化学線照射の波長は、好ましくは約200~500nm、より好ましくは約250~390nmの範囲内である。UVエネルギーは、好ましくは約30~3,000mJ/cm2の範囲内、より好ましくは約50~500mJ/cm2の範囲内である。加えて、放射線硬化性組成物の吸収スペクトルに従って、電球または他の光源を適切に選択してもよい。さらに、本発明の化学線で硬化可能な組成物は、不活性条件下で、または積層構造として硬化させることができる。
【0105】
市販のEB乾燥機としては、例えば、Energy Science,Inc.(Wilmington,Mass)からのもの、またはAdvanced Electron Beams Inc.(AEB)(Wilmington,Mass)からのものが挙げられる。照射線量としても知られている吸収されるエネルギーは、1kGyが1キログラムあたりの1,000ジュールと等しいキログレイ(kGy)の単位で測定される。典型的には、完全に硬化させるには、電子ビームの照射線量は、10kGy~約40kGyの範囲内であるべきである。乾燥した耐溶剤性インクを得るには、好ましくは<200ppm未満の酸素レベル、20~30kGyの放射線照射線量によって本発明の放射線硬化性組成物を硬化させることで通常十分である。
【0106】
本発明を、その好ましい実施形態を含めて詳細に説明した。しかしながら、当業者は、本開示を考慮すると、本発明の範囲および趣旨内で本発明に対して修正および/または改善を行い得ることを理解されたい。
【実施例】
【0107】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を例示するものであり、いかなる点においてもその範囲を限定することを意図するものではなく、そのように解釈されるべきではない。
【表1】
【0108】
配合物:化学線硬化性インクおよびコーティングインクは、Flack Tek Inc.のDAC400オービタルミキサーを使用して1800rpmで5分間、表1からの構成成分(複数可)を表2に列挙したインクまたはインク構成成分に混合することによって調製した。
【表2】
【0109】
インクの調製:インクは、スピードミキサー(DAC150FVZ)を使用して1分18,000RPMで調製した。必要に応じて、記載のように3ロールミリングを使用した。
【0110】
プルーフィング:オフセットインクおよびドライオフセットインクは、Warren#2、0.3ミルのウェッジプレートを備えた「Little Joe」プルーファー(Little Joe Industries(Hillsborough,NJ))で、または指定のIGTプルーファーを使用してプルーフィングした。フレキソインクは、500ラインの3.0BCMアニロックスローラーを備えたHarper QD Phantomフレキソハンドプルーファーを使用してプルーフィングした。フレキソ実施例13~15は、QDプルーフィングベッドを使用して、800(LPI)ライン/1インチ×1.90(BCM)10億立方ミクロンのHarper Jr.ハンドヘルドプルーファーを使用してプルーフィングした。
【0111】
硬化:UV光への曝露による硬化は、各実施例で説明するとおりである。UV-LED硬化は、GEW UV LEDラボユニットにより100メートル/分で達成した。EB硬化は、Comet EB BEAM EBLab-200により、30ppmの酸素、および50kGyの照射線量、100フィート/分で達成した。
【0112】
硬化の程度/イソプロパノール摩擦試験:硬化の程度は、イソプロパノールに浸した綿の先端を有する棒がインクを破り、下にある基材を露出させるのにかかった摩擦(ストローク)の回数を数えることによって決定した。破るのにかかった摩擦が多いほど、硬化が良好である。IPA摩擦は、IPAに浸した綿の先端を有するPuritan滅菌綿棒(綿棒)を使用して実施し、インクを破って下にある基材を露出させるのにかかった摩擦(ストローク)の回数を数えることによって決定した。摩擦の数が多いほど、IPA摩擦耐性が良好である。
【0113】
接着および硬化:インクの基材への接着(および硬化)は、硬化させたフィルムに1インチのストリップテープ(3Mの600および610テープのいずれか)を手で適用し、次いで表面からすばやく剥がすことによって決定した。インク除去の推定%は、目視による観察で決定したインク除去%である。インク除去%が低いほど、テープの接着が良好であり、硬化が良好である。
【0114】
色の測定:黒は、3つの反射率測定基準(カーボン黒色度[My]、漆黒度[Mc]、および色合い[dM])を使用して測定した。黒色度(My)は、反射率に直接関係する黒色度の程度の尺度である。反射率の値は、典型的には5%未満であり、最良の黒では1%未満であり得る。測定した基準を0%として、機器の最低目盛り基準を設定する。ここでは、黒色度My=100*log(Yn/Y)である。
【0115】
漆黒度(Mc)は、Lippok-Lohmer(Lippok-Lohmer,K.,1986,Farbe und Lack,92 11,1024-1029)によって開発された色に基づく黒の値である。Mc値が増加すると、マストーンの漆黒度が増加する。試料調製は、典型的には、黒の顔料およびバインダーに基づく、黒のマストーンの不透明なドローダウンに基づく。ここでは、漆黒度Mc=100*[log(Xn/X)-log(Zn/Z)+log(Yn/Y)]である。試験試料は、典型的には、方向性45/0機器ジオメトリで測定し、Xn=94.811、Yn=100.000、Zn=107.304は、D65/10条件でのCIE白色点値である。X、Y、Zは、測定される試料のCIE三刺激値である。
【0116】
色合い(dM)は、黒の顔料+バインダーがどれだけ偏りがない(neutral)かを定量化する。Mc=dM+Myとして
【0117】
ここでは、色合いdM=Mc-My
【0118】
dM<0の場合、色合いは赤褐色である。
【0119】
dM値=0は、黒が、完全に他の色が混じっていないかまたは偏りがないかを示唆する。
【0120】
dM>0の場合、黒は青みがかった色合いを呈し、これが多くの場合好ましい。
【0121】
あるいは、CIELAB色空間を実行してもよい。Lab色域は、RGBおよびCMYKの両方の色域が含まれるので、印刷用グラフィックをRGBからCMYKに変換する必要がある場合は、Lab色空間を使用する。また、デバイスに依存しないことから、異なるデバイス間の交換フォーマットとして使用される。空間自体は、3次元の実数空間であり、色の無限に可能な表現を含有する。
【0122】
しかしながら、実際には、空間は、通常、デバイスに依存しないデジタル表現では3次元整数空間にマッピングされ、これらの理由により、L*、a*、およびb*の値は通常、事前に定義された範囲を有する絶対値である。明度L*は、L*=0で最も濃い黒を表し、L*=100で最も輝度の高い白を表す。カラーチャネルa*およびb*は、a*=0およびb*=0での真のニュートラルグレー値を表すであろう。赤/緑の反対色は、a*軸に沿って表され、緑は、負のa*値、赤は正のa*値である。黄色/青の反対色は、b*軸に沿って表され、青は負のb*値(bの相対値の減少は、より青い色合いを意味する)、黄色は正のb*値である。a*軸およびb*軸のスケーリングおよび制限は、Lab色の特定の実施に依存するであろう。SpectroEye、45:0分光濃度計、およびColor iControlプログラムを使用して、色の測定および色の密度の読み取りを行った。
【0123】
光沢:測定は、BYK Gardner micro-TRI光沢計を使用して、60°の反射角度で行った。光沢は、物体の視覚についての様相(すなわち、物体に光沢のある、金属的な、またはマットな外観を生じる属性)である。この角度は、普遍的な測定角度でもある。
【0124】
特に明記しない限り、すべての量は、組成物総重量に基づく重量%である。
【0125】
本発明実施例1
上の表1に記載のBGA1を1%wtでHDDAに添加した。325nm~500nmの波長のUVパルスを、0.5秒間隔で放射した。光DSCスペクトル(TA Instruments、Q2000)が発生し、それは
図1である。示されているように、半導体TiO
2金属酸化物の存在下でHDDAがUVフリーラジカル光化学重合を受けると、固有の熱特性が観察された(上の曲線、
図1)。対照的に、半導体材料が存在しない状態でHDDAがUV光に曝露すると、熱特性は見られない(下の曲線、
図1)。これは、BGA1複合材で重合反応が生じ、結合が作り出され、熱が放出されていることの証拠である。
【0126】
本発明実施例2
シアン1中0.5%のBGA1を、3枚の基材上にLittle Joeでプルーフィングし、100fpm、200W/インチ、および200mJ/cm
2のHg UVランプでUV硬化させた。
【表3】
【0127】
表3は、シアン1インクに0.5%のBGA1を添加すると、BGA1を含有しないインクと比較して、IPA摩擦が増加することによって示されるように、インクの硬化改善がもたらされることを示している。0.5%のBGA1を添加すると、IPA摩擦がほぼ2倍に増加したことがわかる。
【0128】
本発明実施例3
ブラック1中の光開始剤含有量を10%低減し、次いで3%のZn1をブラック1に添加し、これをSBSの上に「Little Joe」でプルーフィングし、100fpm、200W/インチ、および200mJ/cm
2のHg UVランプでUV硬化させた。比較を提供するために、同じ様式でZn1を添加していないブラック1をプルーフィングし、硬化させた。光開始剤の濃度は、ブラック1よりも10%低減させた。表4は、試験結果を含む。
【表4】
【0129】
表4の結果は、合計3回の印刷による各印刷物の3回の測定から計算した平均である。表4に示されるように、3%の半導性ZnO金属酸化物を添加すると、光開始剤が10%低減されている実施例3の本発明のUVブラックリソグラフィーインクの黒色度(My)、漆黒度(Mc)、および光沢の平均が増加した。さらに、本発明実施例3は、比較ブラック1と比較して、よりより徹底的かつ完全に硬化した。
【0130】
上は、半導体金属酸化物材料を含めることにより、硬化したインクの色が向上し、さらに、含めることによって硬化に悪影響が及ばないことを実証している(実際、硬化は優れている)。注目すべきは、ブラック1の光開始剤を低減し、それをZn1に置き換えることにより、色、光沢、およびIPA摩擦の回数が、対応する比較例よりも優れていることである。さらに、3.33部の光開始剤が1部のZn1(1部)に置き換えられ、光開始剤に対する半導体金属酸化物の置き換え量が、1部を交換するのに1部超を超えて交換することができることを示している。
【0131】
化学線硬化性インクに半導体金属酸化物材料を含めることにより、UV光に曝露すると追加のフリーラジカル硬化反応が発生し、硬化を向上すると思われる。通常、黒インクの密度が増加すると、硬化の低減を被る。Zn1は、インクの密度を増加させ、IPA摩擦を増加させ、したがって硬化および色の増加が実証された。
本発明実施例4
【0132】
ブラック1に9.5%の半導性Zn1金属酸化物を添加し、SBSボード上に「Little Joe」でプルーフィングし、UV硬化させた。インターステーション硬化を使用する商業用プレス上でインクが曝露されるであろう光レベルを模倣するために、100fpm、200W/インチ、および200mJ/cm
2のHg UVランプを用いるUV硬化ユニットに、印刷物を1回および2回通過させた。これらの条件下では、インクは、UV硬化ユニットに多数回曝露したことになるであろう。比較を提供するために、同じ様式でZn1を添加していないブラック1をプルーフィングし、硬化させた。
【表5】
【0133】
表5に示されるように、本発明のインクへの9.5%の半導性ZnO金属酸化物の添加により、黒色度、漆黒度、および光沢などの光学特性が増加し、半導性ZnO金属酸化物を含まず全量の光開始剤を含む比較ブラック1と比較して、硬化は大きく向上する。
【0134】
特に、本発明実施例4への半導体金属酸化物の添加により、その顔料充填量が低減された。含有している顔料が低い比率であるにもかかわらず、色特性および光沢の改善が実証されたことは、驚くべき結果である。
【0135】
結果は、合計3回の印刷による各印刷物の3回の測定から計算した平均である。表5は、半導体金属酸化物材料を含めることにより、黒色度、漆黒度、および光沢を改善しながら、硬化を劇的に増加させることができることを示している。1回のUV曝露後、硬化は1回から5回のIPA摩擦に改善された。2回目のUV曝露後、硬化は3回から11回のIPA摩擦に改善された。実施例4は、半導体金属酸化物材料を含めることにより、顔料と相互作用して色の向上を作り出し、同時に光重合硬化反応を促進させることを実証している。
【0136】
本発明実施例5
5%のBGA2をマゼンタ1に追加した。Little Joeを使用してSBS上にEBリソグラフィーインクをプルーフィングし、30ppmの酸素および50kGyの照射線量のEBによって硬化させた。マゼンタ1をSBS上にプルーフィングし、比較を提供するために硬化させた。
【表6】
【0137】
表6は、BGA2複合材(等量部の半導性TiO2、カーボンブラック、半導性BiOCl、半導性Bi2O3、および半導性MgO)を含めることにより、光開始剤を含まないインクに基づいて、電子ビーム(EB)での硬化および色の両方が向上されることを示している。
【0138】
結果は、合計3回の印刷による各印刷物の3回の測定から計算した平均である。TiO2、カーボンブラック、BiOCl、Bi2O3、MgO、およびZnOを組み合わせることによってBGA2を形成し、インクに含める24時間前に、30ppmのO2、50kGyのEBユニットに複合材を通過させることによってEB前処理した。
【0139】
マゼンタEBリソグラフィーインクに5%のBGA2を添加すると、硬化させたインクはすべて、比較インクと比較して、密度の増加が生じ、マゼンタはより青くなり(b*値が低くなり、より青みがかった色合いになる)、より光沢がある。改善された視覚特性に加えて、IPA摩擦が大幅に増加し(6から44)、これはより深く、より徹底的な硬化を示している。これは、複合材が、顔料と相互作用して色の向上、およびフリーラジカル重合硬化の程度の増加を生じることを実証している。
【0140】
特に、本発明実施例5へのBGA2半導体金属酸化物複合材の添加により、その顔料充填量が低減された。含有している顔料が低い比率であるにもかかわらず、色特性および光沢の改善が実証されたことは、驚くべき結果である。
【0141】
本発明実施例6
2.5%の半導性ZnO(Zn1)をブラック2に添加し、UV硬化性フレキソグラフィーインクを白色の延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)上にプルーフィングし、100fpm、200W/インチ、および200mJ/cm
2ノHg UVランプで硬化させた。ブラック2をOPP上にプルーフィングし、比較を提供するために硬化させた。
【表7】
【0142】
表7は、実施例6では、紫外線(UV)硬化性インクに2.5%のZn1を含めることにより、比較ブラック2と比較してすべて、硬化したインクの色が向上し、黒色度/漆黒度および光沢の視覚的に明らかな増加が生じることを示している。これは、インクに存在する顔料と相互作用し、色を向上する効果を作り出す半導体金属酸化物材料の一例である。
【0143】
特に、本発明実施例6へのZn1の添加により、その顔料充填量が低減された。含有している顔料が低い比率であるにもかかわらず、色特性および光沢の改善が実証されたことは、驚くべき結果である。
【0144】
本発明実施例7:ポリプロピレン(PP)上のブラック3ドライオフセットインク中のBGA3
6%のBGA3(半導性TiO2、半導性ZnO、およびアルミノケイ酸塩粘土ナノチューブ)をブラック3に添加し、3回圧延粉砕した。PPプラスチックカップを平らなシートに切断し、基材を26fpmおよび0.42kWのユニットに2回ユニットに通すことによる、Enerconへの2回の通過を使用して、コロナ処理した。インクを、IGTプルーファーを使用してPP上にプルーフィングし、400ワット/インチ(wpi)、200fpmで硬化させた。ブラック3を同じPP基材上にプルーフィングし、比較を提供するために硬化させた。
【0145】
【0146】
結果は、合計3回の印刷による各印刷物の3回の測定から計算した平均である。表8に示されるように、BGA3を含めることにより、IPAの摩擦が2倍を超え、硬化の大幅な改善を示している。色密度も同様に増加した。これは、半導体金属酸化物と粘土ナノチューブとの複合体が組み合わさって、UVインクの硬化を大幅に改善することができることを示している。
【0147】
本発明実施例8:PP上でのIrgacure369を含まないBGA3対ブラック3ドライオフセットインク
ブラック3から2.4%のIrgacure369を除去し、次いで2.4%のBGA3をインクに添加し、DACミキサーを使用してインクに混合した。PPプラスチックカップを平らなシートに切断し、基材を26fpmおよび0.42kWのユニットに2回ユニットに通すことによる、Enerconへの2回の通過で、コロナ処理した。インクを、IGTを使用してPP上にプルーフィングし、400wpi、200fpmで硬化させた。比較のために、2.4%のIrgacure369を含有するブラック3インクを、同じPP基材上にプルーフィングし、硬化させて比較を提供した。
【表9】
【0148】
結果は、合計3回の印刷による各印刷物の3回の測定から計算した平均である。表9に示されるように、Irgacure369を含まないインクは、優れた硬化および匹敵する密度を呈した。これは、本発明の複合材が、望ましくない光開始剤を有利に排除しながら、UVインクの硬化を大幅に改善することを実証している。Irgacure369は、水生生物に非常に有毒であるので、食品パッケージ用インクには使用することができない。生殖能力を損傷し、胎児に害を及ぼす疑いがあることを示す研究。
【0149】
本発明実施例9:PET上でのIrgacure369を含まないBGA3対フレキソブラック4
UVフレキソブラック4は、5%のIrgacure369を含む。本発明実施例9では、UVフレキソブラック4中の5%のIrgacure369を5%のBGA3に置き換えた。Harperフレキソハンドプルーファーを使用して、700lpi、2.2bcmのアニロックスでコロナ処理したPETフィルム上に実施例9をプルーフィングし、400wpiおよび300fpmのベルト速度で硬化させた。印刷物は、硬化ユニットを複数回通過させ、各印刷ユニットの後にインク/基材をUVランプの下を通過させるプレスで、インクがどのように見えるかを複製したものであった。比較のために、5%のIrgacure369を含有するブラック4を、同じPET基材上にプルーフィングし、硬化させて比較を提供した。
【表10】
【0150】
本発明の実施例9では、ランプによって放射されたUVエネルギーへの複数回の曝露(すなわち、2回のUV通過)により、ブラック4と比較して、除去に必要なIPA摩擦の回数の増加によって示されるように、大幅に改善された硬化を呈する硬化させた印刷物品を形成した。繰り返すが、Irgacure369の排除は、顕著な利点を提供する。
【0151】
本発明実施例10:PET上でのUV LED中のBGA1対シアン2
エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(EOTMPTA)中50%のBGA1分散液を、DACミキサーで混合することによって調製した。この混合物をシアン2インクに5%添加し、DACミキサーで混合した。Harperフレキソハンドプルーファーを使用して、700lpi、2.2bcmのアニロックスでコロナ処理したPETフィルム上にインクをプルーフィングし、100fpmのUV LED硬化ユニットで硬化させた。シアン2を同じPET基材上にプルーフィングし、比較を提供するために硬化させた。
【表11】
【0152】
本発明実施例11:EOTMPTA中5%のBGA1またはBi2のUV硬化
5%のBGA1をEOTMPTAに添加した。可視光パルスは、1.0秒間隔、5%の光強度で10サイクル、400nm~500nmで放射し、光DSC熱放射を測定した(TA Instruments、Q2000)。パンおよびEOTMPTAの熱特性を差し引き、曲線下面積を合計した。mW/gの単位は、結合が形成されるときの反応エンタルピーに関連し、硬化熱としても知られている。5%のBGA1の代わりに5%のBi2(Bi2O3)を用いて、上の手順を繰り返した。結果を表12に提供する。
【表12】
【0153】
各混合物固有の熱特性を可視光下で観察したところ、半導性金属酸化物材料および複合材の存在下で、モノマー間のフリーラジカル光化学重合硬化反応が生じたことを示した。これは、可視光に曝露したBGA1およびBi2の存在下のモノマー中で、反応が開始されることを実証している。反応エンタルピーの値は、光開始剤が存在しない状態で、結合が作り出され熱が放出されていることを示している。これは、半導体金属酸化物が、光開始剤を必要とせずに光重合を開始することが可能であることを示している。
【0154】
実施例12(予測的):接着剤中の半導体金属酸化物
UV硬化性接着剤組成物は、インクおよびコーティングを作製するために使用されるものに匹敵する材料で配合されている。提示された結果に基づいて、半導体金属酸化物材料を既存の光開始剤パッケージに添加して増加させるか、または一部の光開始剤を置き換えると、硬化を維持しながらも、硬化の改善が可能であるはずである。
【表13】
【表14】
【0155】
Ti2およびZn1を、光開始剤化合物中に配合した(表14)。Irgacure369を排除し、光開始剤の全体的な濃度を85%~64%未満低減させた。Sun Chemicalのシアン系(表15、イエロー系(表16)、およびリソールルビン系(表17))、ならびにPPTTAAモノマーとともに、表13および表14の光開始剤化合物を18,000rpmのSpeed Mixer DAC 150FVZで1分混合することにより、UVフレキソインクを作製した。
【表15】
【表16】
【表17】
【0156】
インク実施例のすべての組(15/15A、16/16A、17/17A)についてのひずみ掃引試験では、25℃、4cm、2°のスチールコーンを備えたTA Instruments Rheolystコーンプレートレオメーターを使用して粘度測定を行い、3組のインクの各々の発明実施例と比較例とは、同等(±10%)であることを見出した。800(LPI)ライン/1インチ×1.90(BCM)10億立方ミクロンのHarper Jr.ハンドヘルドプルーファーを使用し、QDプルーフィングベッドを使用して、アクリルコーティングしたPETフィルム上にインクをプルーフィングし、12インチ幅のコンベヤーを備えるAmerican Ultraviolet UVプロセッサー硬化ユニットを300(FPM)フィート/分のベルト速度で使用し、400(WPI)ワット/インチの12インチHg電球(水銀柱圧)ランプを使用して硬化させた。
【表18】
【0157】
表18に示されている結果は、本発明実施例13A、14A、および15AのUVフレキソHg硬化性インク中の半導体金属酸化物材料として、Altiris550(TiO2)および酸化亜鉛を使用することにより、匹敵する以上のIPA耐性結果、優れたテープ接着結果(硬化)、および改善された色密度を呈することを示している。特に、本発明実施例は、有毒なIRGACURE(登録商標)369を含まずにこれらの結果を達成する。さらに、本発明実施例では、光開始剤の総量が低減された。
【0158】
本発明を、その好ましい実施形態を含めて詳細に説明した。しかしながら、当業者は、本開示を考慮すると、本発明の範囲および趣旨内で本発明に対して修正および/または改善を行い得ることを理解されたい。