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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】抵抗率勾配を有する絶縁体
(51)【国際特許分類】
   H01B 17/26 20060101AFI20240606BHJP
   H01B 19/00 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H01B17/26 D
H01B17/26 A
H01B19/00 301
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020572889
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2019067757
(87)【国際公開番号】W WO2020007871
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-06-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】18181158.9
(32)【優先日】2018-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イョルトスタム,オロフ
(72)【発明者】
【氏名】ロファス,ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】ヒルボリ,ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】ラベッソン,ニルス
(72)【発明者】
【氏名】スバンバリ,マグヌス
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】富澤 哲生
【審判官】野崎 大進
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-514626(JP,A)
【文献】特開2016-140195(JP,A)
【文献】特開2005-176542(JP,A)
【文献】特開平9-320368(JP,A)
【文献】カナダ国特許出願公開第02046682(CA,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0199418(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 17/26
H01B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合絶縁体(1)であって、
・ 絶縁性の長尺コア(2)と、
・ 前記長尺コア(2)を取囲む第1の抵抗率の材料の保護層(3)とを備え、前記保護層(3)はシェッド形状を有する外面(4)を含み、前記複合絶縁体はさらに、
・ 前記長尺コア(2)と前記保護層(3)との間に配置されて前記保護層(3)を前記長尺コア(2)に接着させる接着プライマー層(5)を備え、前記接着プライマー層(5)はカップリング剤(6)および第2の抵抗率の材料の粒子(7)を含む第1の接着プライマー層(5)を含み、前記第2の抵抗率は前記第1の抵抗率よりも低く、前記接着プライマー層(5)は前記第2の抵抗率の材料の粒子(7)を含まない第2の接着プライマー層(5)をさらに備える、複合絶縁体。
【請求項2】
第2の抵抗率の材料の粒子(7)を含む前記接着プライマー層(5)の表面抵抗率は10~1014Ω/スクエアであり、好ましくは1010~1012Ω/スクエアである、請求項1に記載の複合絶縁体(1)。
【請求項3】
前記第2の抵抗率の材料の粒子は、Cr
酸化鉄(Fe 、Fe 、TiO、ZnO、ZnOマイクロバリスタ、SiC、CuO、カーボンブラック、酸化グラフェン/グラファイト、および熱的に還元された酸化グラフェン/グラファイト、のうちのいずれかのまたは組合せの粒子を含む、請求項1または2に記載の複合絶縁体(1)。
【請求項4】
前記カップリング剤(6)は、オルガノシランを含むシラン、チタン酸塩、オルトケイ酸エステルまたは金属オルトエステル、のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の複合絶縁体(1)。
【請求項5】
前記接着プライマー層(5)中の前記第2の抵抗率の材料の粒子(7)の割合は、浸透粒子ネットワークを形成するのに十分に高く、<40体積%である、請求項1から4のいずれか1項に記載の複合絶縁体(1)。
【請求項6】
前記接着プライマー層(5)の厚みは0.01~500マイクロメートルであり、好ましくは0.1~100マイクロメートルである、請求項1から5のいずれか1項に記載の複合絶縁体(1)。
【請求項7】
前記保護層(3)は前記第1の抵抗率のポリマー基材を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の複合絶縁体(1)。
【請求項8】
前記保護層(3)はシリコーンゴムを含む、請求項7に記載の複合絶縁体(1)。
【請求項9】
前記長尺コア(2)はガラス繊維強化複合管を含む、請求項1からのいずれか1項に記載の複合絶縁体(1)。
【請求項10】
複合絶縁体(1)を製造する方法であって、前記方法は、
・ 溶媒と、カップリング剤(6)と、第1の抵抗率の材料の粒子(7)とを含む第1の溶液を調製すること(S1)と、
・ 絶縁性の長尺コア(2)の封体部表面の少なくとも一部に前記第1の溶液を塗布すること(S2)によって1つ以上の第1の接着プライマー層(5)を形成することと、
・ 前記封体部表面の残部に前記溶媒および前記カップリング剤(6)を含むが前記第1の抵抗率の材料の粒子(7)を含まない第2の溶液を塗布すること(S4)によって1つ以上の第2の接着プライマー層(5)を形成することと、
・ 前記長尺コア(2)上の前記第1および第2の接着プライマー層(5)の上に第2の抵抗率の材料の保護層(3)を塗布すること(S3)とを備え、前記第2の抵抗率は前記第1の抵抗率よりも高く、前記保護層(3)はシェッド形状を有する外面(4)を含む、方法。
【請求項11】
前記第1の溶液を塗布すること(S2)は、前記長尺コア(2)の前記封体部表面の上に前記第1の溶液を噴霧、浸漬、または塗装することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の溶液を塗布すること(S4)は、前記長尺コア(2)の前記封体部表面の上に前記第2の溶液を噴霧、浸漬、または塗装することを含む、請求項10または11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合絶縁体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
よく使われる種類の絶縁体は、さまざまな種類のシェッド形状を示すシリコーンゴム筐体と組合された、繊維強化エポキシ円筒状またはテーパ状長尺コアで構成された中空コア絶縁体である。絶縁体の両端は、たとえば接地電圧およびDCシステム電圧などの2つの異なる電圧を分離している。DC電圧下では、複合絶縁体の内部および周囲の電界分布は、周囲空気を含むすべての絶縁材料の抵抗率および幾何学的形状に依存する。シェッドは、絶縁体に沿った表面フラッシュオーバー距離を増大させるように設計される。しかしながら、漏れ経路が生じると、絶縁体内の電界の局所的な変化が部分的な放電につながる場合があり、これによって絶縁体内の材料の寿命が低下するか、または絶縁体の表面フラッシュオーバーもしくは破壊に起因して絶縁体の最後の破局的な故障が生じる。
【0003】
高電圧絶縁体は、たとえば、電圧を担持する金具に取付けられたシールド電極を用いて、金具の端部における電界の増大を回避することができる。
【0004】
US 2011/0017488 A1には、絶縁体の材料は、その表面上の電界の不均一な分布によって激しい負荷がかかることが説明されている。その理由の1つは絶縁体の構造形態である。特に金具の領域では、シェッドおよび絶縁体コアの絶縁材料から金属材料への遷移により、マスト、タワーまたはポールクロス部材上の接地電位への遷移、および導体ケーブルの取付け箇所における導体電位への遷移により、電界強度が変化する。それによって生じる局所的な電界の乱れ、特に電界強度ピークを防ぐために、いわゆる幾何学的な電界制御を用いることができる。被加工物、特に通電部の幾何学的形状は、角および縁を丸めることによって滑らかにする。当該文献には複合絶縁体が示されており、当該絶縁体は、コアと、コアを取囲む保護層と、絶縁体の少なくとも一部分においてコアと保護層との間に配置された電界制御層とを含む。電界制御層はある長さの層を有し、電界制御層は絶縁体の電界に影響を及ぼすある割合の粒子をフィラーとして含む。電界に影響を及ぼす粒子の割合は、層の長さにわたって異なる。電界制御層は一般的に、電界制御層を覆う保護層と同じ材料で構成される。
【0005】
DE 10201210137 A1には、ポリマーなどの絶縁材料の局所的な被覆または被覆を、電界を均一化して局所的な電界の乱れを回避する手段として、誘電および/または強誘電材料を挿入した電界制御層として塗布できることが開示されている。当該文献には、抵抗材料または抵抗材料の混合物を、複合絶縁体のコアに、およびストライプなどの電界制御層の異なる幾何学的構造にも直接塗布できるプラズマ被覆技術を用いることが記載されている。
【0006】
電界制御層を有する絶縁体の製造方法には多くのステップが必要であり、それらは時間がかかり、時間および必要な設備の面でコストがかかり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
概要
本発明の目的は、上記の問題を少なくとも部分的に克服し、改良された複合絶縁体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、時間効率および費用効率の高い製造プロセスを用いる、ロバスト性および電界プロファイルにおいて所望の特性を示す複合絶縁体を提供することを目的としている。
【0009】
この目的は、請求項1に規定される装置および請求項13に規定される方法によって達成される。
【0010】
本開示の実施形態によれば、当該実施形態は複合絶縁体を含み、複合絶縁体は、絶縁性の長尺コアと、長尺コアを取囲む保護層とを含み、保護層はシェッド形状を有する外面を含み、複合絶縁体はさらに、長尺コアと保護層との間に配置されて保護層をコアに接着させる接着プライマー層を含み、接着プライマー層はカップリング剤および低抵抗率材料の粒子を含む。つまり、コアと保護層との間に良好な接着性を提供することによって絶縁体にロバスト性を提供する接着プライマー層は、電界制御層でもある。保護層は高抵抗率材料からなる。基部における低い抵抗率/抵抗およびシェッド先端における高い抵抗率を同時に示すとともに、容易に製造できるロバスト構造を提供する複合絶縁体が提供される。つまり、抵抗率は軸方向に低下するが、保護層が空気に当たる場所では高く保たれる。これによって、DCストレス下での電界分布がより均一になり、したがって耐電圧が高くなる。周囲に向かう電界はこうして、漏れ電流を軸方向に設計することによってシステム内の漏れ電流を用いて制御される。
【0011】
いくつかの態様によれば、複合絶縁体は高電圧直流(HVDC)用途用であり、低抵抗率材料の粒子は接着プライマー層全体に分布している。DCストレス下では、このような低抵抗層は、プライマー層の軸方向に沿って適切に制御された漏れ電流を引起こす。漏れ電流は、絶縁体の軸方向に沿って制御された電界分布を提供する。制御された電界分布は、最大の電気的ストレスの低下に寄与し得る。最大の電気的ストレスを低下させることによって、装置の信頼性が高まる。
【0012】
いくつかの態様によれば、低抵抗率材料の粒子は接着プライマー層全体に均一に分布している。これによって、接着プライマー層をコア全体にわたって同じように塗布することができるので、製造プロセスが単純化される。たとえば、接着プライマー層は、長尺コア全体を塗装、浸漬、または噴霧し、次いで溶媒を蒸発させることによって、1つの溶液で塗布することができる。均一な粒子分布によって、不均一な分布と比較して、絶縁体の軸方向に沿ってより均一な電界分布が提供される。
【0013】
いくつかの態様によれば、接着プライマー層の少なくとも一部は低抵抗率材料の粒子を含み、接着プライマー層の少なくとも一部は低抵抗率材料の粒子を含まない。金具が配置され得る絶縁体の端部では、絶縁材料から金属材料への遷移、接地電位からの遷移、または導体電位への遷移が存在し得る。この領域では、絶縁体内の電界強度が特に影響を受ける。低抵抗率材料の粒子を注入した接着プライマー層をこの領域に用いると、電界が安定して放電が減少する。
【0014】
いくつかの態様によれば、低抵抗率材料の粒子を含む接着プライマー層の表面抵抗率は10~1014Ω/スクエアであり、好ましくは1010~1012Ω/スクエアである。全抵抗率は、いくつかの態様によれば、10~1015Ωであり、好ましくは1011~1013Ωである。
【0015】
いくつかの態様によれば、低抵抗率材料の粒子は、FeまたはFeなどのCr酸化鉄、TiO、ZnO、ZnOマイクロバリスタ、SiC、CuO、カーボンブラック、酸化グラフェン/グラファイト、および熱的に還元された酸化グラフェン/グラファイト、のうちのいずれかのまたは組合せの粒子を含む。具体的な組合せは、最終的な接着層の所望の抵抗率に基づくことになる。
【0016】
いくつかの態様によれば、接着プライマー層中の低抵抗率材料の粒子の割合は、浸透粒子ネットワークを形成するのに十分に高く、<40体積%である。なお、この値は乾燥した接着プライマー層についての値であり、接着プライマー層の塗布直後のまだ乾燥していないときの値ではない。
【0017】
いくつかの態様によれば、接着プライマー層の厚みは0.01~500マイクロメートルであり、好ましくは0.1~100マイクロメートルである。なお、これも乾燥した接着プライマー層についての値であり、すなわち乾燥膜厚である。接着プライマー層の厚みと低抵抗率材料の粒子の割合との間には関係がある。絶縁体の所望の電界プロファイルに達するために、粒子の割合が高い薄層が、粒子の割合が低い厚層と同一の電界プロファイルを与える場合がある。薄層は材料節約のために望ましい場合があるが、接着特性が保護層を堅固に接着するほど十分に良好でないようにするために、このような高い割合の低抵抗率材料の粒子が必要となる場合がある。したがって、いくつかの態様によれば、絶縁体を設計する際、低抵抗率材料の粒子の割合および接着プライマー層の厚みは一緒に決定される。
【0018】
いくつかの態様によれば、カップリング剤は、シラン、チタン酸塩、オルトケイ酸エステルまたは金属オルトエステル、のうちの少なくとも1つを含む。これらは、たとえば、共有結合の生成による無機繊維とポリマーマトリックスとの間の良好なカップリング剤である。つまり、シランは、繊維を被覆してポリマーマトリックスへのより良好な接着を作り出すことができる。
【0019】
いくつかの態様によれば、保護層は高抵抗率ポリマー基材を含む。保護層は、絶縁体中で導通しないように高抵抗率材料を含む。ポリマー基材は特性に応じて選択される。絶縁体の内部には、非反応性の安定した絶縁材料が望ましい。
【0020】
いくつかの態様によれば、保護層はシリコーンゴムを含む。シリコーンゴムは極端な温度に対する耐性が良好であり、通常は-55~300℃で動作する。シリコーンゴムはまた、高電圧において高い引裂強度および高い絶縁耐力を示す。シリコーンゴムはまた疎水性であり、これは、絶縁体がたとえば雨に濡れる可能性がある環境で用いられる場合に有用である。
【0021】
いくつかの態様によれば、長尺コアはガラス繊維強化複合管を含む。ガラス繊維強化複合管は、軽量で、ロバストで、安価な絶縁性の長尺コアである。
【0022】
本開示の実施形態によれば、当該実施形態は、複合絶縁体を製造する方法を含む。本方法は、溶媒と、カップリング剤と、低抵抗率材料の粒子とを含む第1の溶液を調製することと、絶縁性の長尺コアの封体部表面の少なくとも一部に第1の溶液を塗布することによって1つ以上の第1の接着プライマー層を形成することと、長尺コア上の第1の接着プライマー層の上に保護層を塗布することとを含み、保護層はシェッド形状を有する外面を含む。この方法は、多くの複雑なステップを伴わずに、上述の複合絶縁体を製造する効率的な方法を提供する。結果として得られる複合絶縁体の利点は上述した。
【0023】
いくつかの態様によれば、第1の溶液を塗布することは、長尺コアの封体部表面の上に第1の溶液を噴霧、浸漬、または塗装することを含む。噴霧、浸漬、または塗装は、複雑なまたは高価な設備を必要としない第1の接着プライマー層を塗布する効率的な方法である。
【0024】
いくつかの態様によれば、第1の溶液は封体部表面の1つ以上の部分に塗布される。本方法は、封体部表面の残部に溶媒およびカップリング剤を含むが低抵抗率材料の粒子を含まない第2の溶液を塗布することによって1つ以上の第2の接着プライマー層を形成することを含み、保護層は第1および第2の接着プライマー層の上に塗布される。したがって、封体部表面全体にわたって接着プライマー層が存在しており、接着プライマー層の少なくとも一部は低抵抗率材料の粒子を含み、接着プライマー層の少なくとも一部は低抵抗率材料の粒子を含まない。なお、「封体部表面全体」という用語は、保護層が配置されることになる部分を意味し、端部における一部を除外する場合がある。端部は、たとえば製造後に切取られてもよいし、設置時に絶縁体を締結するために用いられてもよく、その後は接着プライマー層が不要である。
【0025】
いくつかの態様によれば、第2の溶液を塗布することは、長尺コアの封体部表面の上に第2の溶液を噴霧、浸漬、または塗装することを含む。したがって、長尺コアの表面全体にわたって接着プライマー層が存在しており、一部が低抵抗率材料の粒子を有しており、一部が有していない場合、これらの異なる部分をたとえば噴霧または塗装によって別々に塗布することができる。
【0026】
次に、本発明のさまざまな実施形態の説明によって、かつ添付の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】シェッド形状を有する複合絶縁体の斜視図である。
図2】接着プライマー層を有する複合絶縁体の断面図である。
図3a】長尺コアの形状を示す図である。
図3b】長尺コアの形状を示す図である。
図3c】長尺コアの形状を示す図である。
図4】方法のブロック図である。
図5】長尺コアに保護層を塗布する押出成形法を示す図である。
図6】カップリング剤および低抵抗率材料の粒子を含む接着プライマー層の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
添付の図面を参照して本開示の態様を以下でより完全に説明する。しかしながら、本明細書に開示される装置および方法は多くの異なる形態で実現可能であり、本明細書に記載される態様に限定されると解釈されるべきではない。図中の同様の番号は全体を通して同様の要素を指す。
【0029】
本明細書に使用する専門用語は本開示の特定の態様を説明するためのものに過ぎず、本発明を限定することを意図していない。本明細書に使用する単数形「a」、「an」および「the」は、文脈に明確に指示がない限り、複数形も含むことが意図されている。
【0030】
特に定義しない限り、本明細書に使用する用語はすべて、本開示が属する技術の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0031】
図1は、シェッド形状を有する複合絶縁体1の斜視図を示す。図2は、本開示のいくつかの態様に係る複合絶縁体1の断面を示す。
【0032】
図2は、絶縁性の長尺コア2と、長尺コア2を取囲む保護層3とを含む複合絶縁体1を示す。保護層3は、シェッド形状を有する外面4を含む。シェッド形状は図1および図2に示されている。シェッド形状は、一連の同心円板形状、または連続的に接続されることによって長尺コア2に沿って螺旋を形成する同心円板形状のいずれか一方を含む。シェッド、すなわち円板形状は、互いに異なる半径または同一の半径を有することができる。シェッドに必要なサイズおよび形状は、その使用に依存し、したがってシステム設計者が選択する。長尺コア2の直径および長さも、複合絶縁体1の使用時にシステム設計者が決める。
【0033】
長尺コア2と保護層3との間に、保護層3をコアに接着させる接着プライマー層5が配置されており、接着プライマー層5はカップリング剤6および低抵抗率材料の粒子7を含む。カップリング剤6および粒子7を有する接着プライマー層5の一部の拡大図については、図6を参照されたい。つまり、コアと保護層3との間に良好な接着性を提供することによって絶縁体にロバスト性を提供する接着プライマー層5は、電界制御層でもある。保護層3は高抵抗率材料からなる。基部における低い抵抗率/抵抗およびシェッド先端における高い抵抗率を同時に示すとともに、容易に製造できるロバスト構造を提供する複合絶縁体1が提供される。つまり、抵抗率は軸方向に低下するが、保護層3が空気に当たる場所では高く保たれる。これによって、DCストレス下での電界分布がより均一になり、したがって耐電圧が高くなる。周囲に向かう電界はこうして、漏れ電流を軸方向に設計することによってシステム内の漏れ電流を用いて制御される。接着プライマー層5の内部に低抵抗粒子を添加すると、カップリング剤6の実効抵抗率が低下する。抵抗率が低下すると、プライマー層の軸方向において漏れ電流が増大する。プライマー内の漏れ電流は、周囲媒体内の漏れ電流よりもかなり大きい場合は、オームの法則に従って軸方向の電界分布を決定する。
【0034】
複合絶縁体1は、いくつかの態様によれば、高電圧直流(HVDC)用途用であり、低抵抗率材料の粒子7は接着プライマー層5全体に分布している。接着プライマー層5全体に粒子が存在しているので、接着プライマー層5の全長に沿ってプライマーの抵抗率が低下する。これにより、好適な電界分布が確保される。複合絶縁体は、たとえばブッシングである。ブッシングは、変圧器または回路遮断器の場合などに、接地された導電性障壁を導電体が安全に通過できるようにする絶縁装置である。いくつかの態様によれば、低抵抗率材料の粒子7は接着プライマー層5全体に均一に分布している。これによって、接着プライマー層5をコア全体にわたって同じように塗布することができるので、製造プロセスが単純化される。たとえば、接着プライマー層5は、長尺コア2全体を塗装または噴霧し、次いで溶媒を蒸発させることによって、1つの溶液で塗布することができる。プライマー中の均一な粒子分布によってプライマーの一定の抵抗率がもたらされ、ひいては、プライマーの厚みが一定であると仮定すると、プライマーの軸方向に沿って均一な電界分布が提供される。
【0035】
いくつかの態様によれば、接着プライマー層5の少なくとも一部は低抵抗率材料の粒子7を含み、接着プライマー層5の少なくとも一部は低抵抗率材料の粒子7を含まない。なお、以下に説明する方法では、接着プライマー層5の粒子を含む部分を第1の接着プライマー層5と呼び、粒子を含まない部分を第2の接着プライマー層5と呼ぶ。これは、粒子を有する部分と有さない部分とを区別するために命名しているに過ぎない。低抵抗率材料の粒子7は、いくつかの態様によれば、長尺コア2の端部に存在している。金具が配置され得る絶縁体の端部では、絶縁材料から金属材料への遷移、接地電位からの遷移、または導体電位への遷移が存在し得る。この領域では、絶縁体内の電界強度が特に影響を受ける。低抵抗率材料の粒子7を注入した接着プライマー層5をこの領域に用いると、電界が安定して放電が減少する。
【0036】
いくつかの態様によれば、低抵抗率材料の粒子7を含む接着プライマー層5の表面抵抗率は10~1014Ω/スクエアであり、好ましくは1010~1012Ω/スクエアである。抵抗率は、漏れ電流によって生じる損失または局所的な加熱が大きすぎるほど低いべきではないが、絶縁体の電界に影響を及ぼすほど十分に低いべきである。いくつかの態様によれば、低抵抗率材料の粒子は、Cr酸化鉄(Fe、Fe)、TiO、ZnO、ZnOマイクロバリスタ、SiC、CuO、カーボンブラック、酸化グラフェン/グラファイト、および熱的に還元された酸化グラフェン/グラファイト、のうちのいずれかのまたは組合せの粒子を含む。接着プライマー層5の抵抗率は、低抵抗率材料を変更すること、および低抵抗率材料の粒子7の量を変更することの双方によって調整することができる。したがって、接着プライマー層5は、異なる低抵抗率材料の粒子7および異なる量の粒子を有するが同一の抵抗率を示すことができる。電界が増加するにつれて低下する電界依存抵抗率を有する材料の利点は、当該材料が高電界を抑制することである。
【0037】
接着プライマー層5中の低抵抗率材料の粒子7の割合は、いくつかの態様によれば、浸透粒子ネットワークを形成するのに十分に高く、<40体積%である。この割合もまた、選択される低抵抗率材料に依存することになる。
【0038】
接着プライマー層5の厚みと低抵抗率材料の粒子7の割合との間には関係がある。絶縁体の所望の電界プロファイルに達するために、粒子の割合が高い薄層が、粒子の割合が低い厚層と同一の電界プロファイルを与える場合がある。薄層は材料節約のために望ましい場合があるが、接着特性が保護層3を堅固に接着するほど十分に良好ではないように、このような高い割合の低抵抗率材料の粒子7が必要となる場合がある。したがって、いくつかの態様によれば、絶縁体を設計する際、低抵抗率材料の粒子7の割合および接着プライマー層5の厚みは一緒に決定される。いくつかの態様によれば、接着プライマー層5の厚みは0.01~500マイクロメートルであり、好ましくは0.1~100マイクロメートルである。
【0039】
多くの異なるカップリング剤6がある。絶縁体に用いるカップリング剤6の要件は、非導電性であること、および良好な接着性を提供することである。いくつかの態様によれば、カップリング剤6は、シラン、チタン酸塩、オルトケイ酸エステルまたは金属オルトエステル、のうちの少なくとも1つを含む。シリコーンゴムをさまざまな基体に結合させるために一般的に使用されるオルガノシランは、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシランまたはポリビニルメトキシシロキサンポリマーである。シランは、たとえば、ガラス繊維および炭素繊維などの繊維を特定のポリマーマトリックスに接着させることによって複合材料を安定化させるためのカップリング剤6として用いられる。
【0040】
保護層3は、絶縁体中で導通しないように高抵抗率材料を含む。保護層3の材料は特性に応じて選択される。保護層3は、いくつかの態様によれば、高抵抗率ポリマー基材を含む。高抵抗率材料の抵抗率は1011~1016Ωmであり、好ましくは5*1012~1015Ωmである。ポリマー基材の抵抗率は、シリカおよびアルミニウム三水和物(ATH)などの無機フィラー粒子の量、分布、および表面処理によって調整することができる。
【0041】
保護層3は、いくつかの態様によれば、シリコーンゴムを含む。シリコーンゴムは極端な温度に対する耐性が良好であり、通常は-55~300℃で動作する。シリコーンゴムはまた、高電圧において高い引裂強度および高い絶縁耐力を示す。シリコーンゴムはまた疎水性であり、これは、絶縁体がたとえば雨に濡れる可能性がある環境で用いられる場合に有用である。汚れおよび/または水がシェッド上に集まると、シェッド間に放電が起こる可能性があり、その後シリコーンゴムが腐食する。シリコーンゴムは、たとえば、耐電食性を高める難燃剤(ATH)で充填することができる。
【0042】
コアは、絶縁体にロバスト性、剛性および強度を与える。コアはかなり大きい場合もあり、したがって、取扱うのが容易に重くなってしまう。長尺コア2は、いくつかの態様によれば、中空で絶縁性である。いくつかの態様によれば、長尺コア2はガラス繊維強化複合管を含む。ガラス繊維強化複合管は、軽量で、ロバストで、安価な絶縁性の長尺コア2である。
【0043】
絶縁性の長尺コア2は、いくつかの態様によれば、長尺部に沿って異なる直径を有する。さまざまな例を図3a、図3bおよび図3cに見ることができる。一例では、絶縁性の長尺コア2は、図3bに示されるように、直径の異なる2つの円筒部と、これら2つの部分を接続するそれらの間の円錐部とを含む。いくつかの態様によれば、長尺部に沿って異なる直径を有する絶縁性の長尺コア2は中空であり、たとえば上述のガラス繊維強化複合管を含む。
【0044】
図4は、複合絶縁体1を製造する方法のブロック図を示す。本方法は、溶媒と、カップリング剤6と、低抵抗率材料の粒子7とを含む第1の溶液を調製することと、絶縁性の長尺コア2の封体部表面の少なくとも一部に第1の溶液を塗布することによって1つ以上の第1の接着プライマー層5を形成することと、長尺コア2上の第1の接着プライマー層5の上に保護層3を塗布することとを含み、保護層3はシェッド形状を有する外面4を含む。この方法は、多くのおよび/または複雑なステップを伴わずに、上述の複合絶縁体1を製造する効率的な方法を提供する。結果として得られる複合絶縁体1の利点および代替例は上述した。カップリング剤6および長尺コア2の代替例も、複合絶縁体1について述べた際に上記に述べた。溶媒は接着プライマー層5を容易に塗布できるようにするために用いられ、溶媒は保護層3の塗布前に蒸発する。使用可能な溶媒の例として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水、揮発性環状PDMSオリゴマー、ヘプタンが挙げられる。接着プライマー層5の上記の値は、層が乾燥したときの値である。
【0045】
上述の通り、溶媒は接着プライマー層5を容易に塗布できるようにするために用いられる。いくつかの態様によれば、第1の溶液を塗布することは、長尺コア2の封体部表面の上に第1の溶液を噴霧、浸漬、または塗装することを含む。噴霧、浸漬、または塗装は、複雑なまたは高価な設備を必要としない第1の接着プライマー層5を塗布する効率的で単純な方法である。プライマー層と絶縁性シリコーンゴムとの良好な接着性を得るために、基体上にプライマー層を塗布することが一般的である。カップリング剤と導電性粒子とを同じプライマー中で組合せることによって、1つの処理ステップの間に良好な接着および所望の抵抗率が同時に得られる。
【0046】
これも上記に説明したように、いくつかの使用法では、長尺コア2全体にわたる接着プライマー層5中の低抵抗率材料の粒子7は不要な場合がある。いくつかの態様によれば、第1の溶液は封体部表面の1つ以上の部分に塗布される。したがって、低抵抗率材料の粒子7は、長尺コア2の1つ以上の部分に塗布される接着プライマー層5に存在している。この場合、本方法は、封体部表面の残部に溶媒およびカップリング剤6を含むが低抵抗率材料の粒子7を含まない第2の溶液を塗布することによって1つ以上の第2の接着プライマー層5を形成することを含み、保護層3は第1および第2の接着プライマー層5の上に塗布される。したがって、封体部表面全体にわたって接着プライマー層が存在しており、接着プライマー層5の少なくとも一部、すなわち第1の接着プライマー層5は低抵抗率材料の粒子7を含み、接着プライマー層5の少なくとも一部、すなわち第2の接着プライマー層5は低抵抗率材料の粒子7を含まない。なお、「円筒面全体」および「残部」という用語は、保護層3が配置されることになる部分を意味し、端部における一部を除外する場合がある。端部は、たとえば製造後に切取られてもよいし、設置時に絶縁体を締結するために用いられてもよく、その後は接着プライマー層5が不要である。
【0047】
低抵抗率材料の粒子7を有する接着プライマー層5および有さない接着プライマー層5の両方、すなわち第1および第2の接着プライマー層5が存在する場合、第1および第2の接着プライマー層5は別々に塗布される。両方の層を同じ方法で塗布してもよいため、いくつかの態様によれば、第2の溶液を塗布することは、長尺コア2の封体部表面の上に第2の溶液を噴霧、浸漬、または塗装することを含む。したがって、長尺コア2の表面全体にわたって接着プライマー層5が存在しており、一部が低抵抗率材料の粒子7を有しており、一部が有していない場合、これらの異なる部分をたとえば噴霧または塗装によって別々に塗布することができる。
【0048】
たとえば、成形、または押出成形法を用いるなど、保護層3のさまざまな塗布方法がある。図5は押出成形法の例を示す。いくつかの態様によれば、保護層3を塗布することは、長尺ノズル8を通して長尺コア2の周りに螺旋状に保護層3を押出成形することによって、シェッド形状を有する外面4を有する連続層を形成することを含む。今日の螺旋押出成形法では、シリコーンが押出成形機に連続的に供給され、そこで材料が可塑化されてノズルから押出される。異なるシェッド幾何学的形状を生成するために、異なる形状のノズルを容易に交換することができる。本開示の一態様によれば、押出成形された形状は次に、良好な接着を確保するために、かつ望ましい電界プロファイルを設計するために接着プライマー層5で予め被覆されている回転する複合コア、つまり複合管に押付けられる。押出成形機を管に沿って動かすことによって、螺旋シェッド形状が得られる。押出成形後、完成した絶縁体を熱風オーブンに移して、シリコーンを架橋してゴムにする。
【0049】
いくつかの態様によれば、複合絶縁体1は、上部および下部金属端部金具、すなわちフランジを含む。金具はたとえばアルミニウム製である。抵抗率の低い粒子を含む層は、いくつかの態様によれば、絶縁体の下部および上部の両方で金属フランジに電気的に接触している。そのような接続を提供する可能性は、絶縁体をフランジに接続するために低抵抗接着剤または低抵抗テープを用いて、接着剤またはテープが低抵抗率層とフランジとの間の隙間を埋めるようにすることである。接着剤は、抵抗率の低いエポキシであってもよい。エポキシ系接着剤の抵抗率をさらに低下させる可能性は、たとえば上述の接着プライマー層に用いたのと同じ種類の粒子などの低抵抗粒子で充填することである。接着剤は、銀粒子などの金属粒子で充填されてもよい。
【0050】
上記の複合絶縁体1の例として、シリコーンゴムの優れた接着性を確保するために保護層3の押出成形の前に接着プライマーで被覆されているガラス繊維強化複合管が挙げられる。薄い低抵抗率接着プライマー層5を得るために、わずかに導電性を有するフィラーをプライマーに添加する。次いで、この層の上に高抵抗率シリコーンを押出成形する。高抵抗率シリコーンの代替案は、射出成形または鋳造を用いて内部構造の上に高抵抗率シリコーンを添加することである。
【0051】
以下、複合絶縁体1の第2の実施形態を開示する。第2の実施形態は、低抵抗率材料の粒子7が接着プライマー層5ではなく保護層3の基部に存在していることを除いて、適用可能な場合、上述の複合絶縁体1および製造方法とすべての特徴を共有している。つまり、以下の実施形態では、低抵抗率材料の粒子7に影響を及ぼす電界は、接着プライマー層5中に混合されているのではなく、保護層3の基部において保護層3の高抵抗率基材と混合されている。
【0052】
態様1。第2の複合絶縁体であって、
・ 絶縁性の長尺コア2と、
・ 上記長尺コア2を取囲む保護層3とを備え、上記保護層3はシェッド形状を有する外面4を含み、上記シェッド形状はシェッド先端を含み、上記保護層3は高抵抗率基材を含み、上記第2の複合絶縁体はさらに、
・ 上記長尺コア2と上記保護層3との間に配置されて上記保護層3を上記長尺コア2に接着させる接着プライマー層5を備え、
上記保護層3は第1の部分を含み、上記第1の部分は上記接着プライマー層5に最も近い部分であり、第2の部分よりも抵抗率が低く、上記第2の部分は上記シェッド先端に向かって閉じている、第2の複合絶縁体。
【0053】
態様2。上記第1の部分は低抵抗率材料の粒子7を含み、上記第2の部分は上記低抵抗率材料の粒子を含まない、態様1に記載の第2の複合絶縁体。
【0054】
態様3。上記保護層3は、上記接着プライマー層5に当接する上記部分から上記シェッド先端までの全厚を有し、上記低抵抗率材料の粒子7を含む上記第1の部分は上記全厚の少なくとも1%を含み、低抵抗率材料の粒子7を含まない上記第2の部分は上記全厚の少なくとも1%を含む、態様1または2に記載の第2の複合絶縁体。
【0055】
態様4。上記第2の複合絶縁体は高電圧直流(HVDC)用途用のブッシングであり、上記低抵抗率材料の粒子7は上記第1の部分に均一に分布している、態様1~3のいずれかに記載の第2の複合絶縁体。
【0056】
態様5。上記第1の部分は、上記保護層3の全体または上記保護層3の少なくとも一部を軸方向に貫通する、態様1~3のいずれかに記載の第2の複合絶縁体。
【0057】
態様6。低抵抗率材料の粒子7を含む上記保護層3の上記第1の部分の表面抵抗率は1010~1013Ωmであり、好ましくは1011~5・1012Ωmである、態様1~5のいずれかに記載の第2の複合絶縁体。上記表面は、上記保護層の上記第2の部分に向かう上記第1の部分の表面である。
【0058】
態様7。低抵抗率材料の粒子7を含まない上記保護層3の上記第2の部分の抵抗率は上記第1の部分の抵抗率よりも低い、態様1~6のいずれかに記載の第2の複合絶縁体。
【0059】
態様8。上記低抵抗率材料の粒子は、Cr酸化鉄、TiO、ZnO、ZnOマイクロバリスタ、SiC、CuO、カーボンブラック、酸化グラフェン/グラファイト、および熱的に還元された酸化グラフェン/グラファイト、のうちのいずれかのまたは組合せの粒子を含む、態様1から7のいずれかに記載の第2の複合絶縁体。
【0060】
態様9。上記保護層3の上記第1の部分における低抵抗率材料の粒子7の割合は、浸透粒子ネットワークを形成するのに十分に高く、<40体積%である、態様1から8のいずれかに記載の第2の複合絶縁体。
【0061】
態様10。上記接着プライマー層5の全厚は0.01~500マイクロメートルであり、好ましくは0.1~100マイクロメートルである、態様1~9のいずれかに記載の第2の複合絶縁体。
【0062】
態様11。上記保護層3は高抵抗率ポリマー基材を含む、態様1~10のいずれかに記載の第2の複合絶縁体。
【0063】
態様12。上記保護層3はシリコーンゴムを含む、態様11に記載の第2複合絶縁体。
態様13。上記長尺コア2はガラス繊維強化複合管を含む、態様1~12のいずれかに記載の第2の複合絶縁体。
【0064】
態様14。第2の複合絶縁体を製造するであって、上記方法は、
・ 溶媒とカップリング剤6とを含む溶液を調製することと、
・ 絶縁性の長尺コア2の封体部表面の少なくとも一部に上記溶液を塗布することによって1つ以上の接着プライマー層5を形成することと、
・ 押出成形法によって上記長尺コア2上の上記接着プライマー層5の上に保護層3を塗布することとを備え、上記保護層3は、高抵抗率基材と、シェッド形状を有する外面4とを含み、上記保護層3は、低抵抗率材料の粒子7を含む、上記接着プライマー層5に最も近い部分である第1の部分と、低抵抗率材料の粒子7を含まない、上記シェッド先端に向かって閉じている部分である第2の部分とを含み、
上記押出成形法は、少なくとも1つの長尺ノズルを用いて、低抵抗率材料の粒子7と混合された高抵抗率基材と、低抵抗率材料の粒子7を含まない高抵抗率基材とを共押出成形することを含む、方法。
【0065】
態様15。共押出成形することは、低抵抗率材料の粒子7と混合された高抵抗率基材を、上記接着プライマー層5において押出成形する上記長尺ノズルの側で押出成形することと、低抵抗率材料の粒子7を含まない高抵抗率基材を、上記シェッド先端を押出成形する上記長尺ノズルの側で押出成形することとを含む、態様14に記載の方法。
【0066】
態様16。共押出成形することは、低抵抗率材料の粒子7と混合された高抵抗率基材を、上記接着プライマー層5において押出成形する上記長尺ノズルの側で押出成形する第1の部分と、低抵抗率材料の粒子7を含まない高抵抗率基材を、上記シェッド先端を押出成形する上記長尺ノズルの側で押出成形する第2の部分との、2つの分離部に細分された長尺ノズルを含む、態様14に記載の方法。
【0067】
以下に、複合絶縁体1のさらなる実施形態を開示する。これらの実施形態は、低抵抗率材料の粒子7が接着プライマー層5ではなく、長尺コアとプライマー層との間に配置された低抵抗率層に存在していることを除いて、適用可能な場合、上記に開示した複合絶縁体1および製造方法とすべての特徴を共有している。つまり、以下の実施形態では、本開示の電界に影響を及ぼす部分は、長尺コアとプライマー層との間に配置された低抵抗率層内にある。このアプローチでは、長尺コアの軸方向に沿って好適な電界分布を与える低抵抗層と、保護層に対して良好な接着特性を与えるプライマー層とが提供される。低抵抗層はいくつかの異なる種類の材料から構築することができ、数例を以下に列挙する。
【0068】
・ 絶縁体に、すなわち長尺コアに、厚い「導電層」を塗装する。この例では、上述の低抵抗粒子で充填された(エポキシ、ポリエステルまたはポリウレタン系の)塗料を用いることができる。次いで、抵抗率の低い粒子を含まない接着プライマー層を導電性塗料の上に塗布する。塗料の塗布厚は50~300μmであり、好ましくは100~200μmの厚みである。
【0069】
・ 長尺コアの外面上に、上述の低抵抗率粒子で充填されたポリエステル繊維およびエポキシ/ビニルエステル/ポリエステル樹脂の導電性外側ライナ、または熱硬化性樹脂が含浸された低抵抗粒子で充填されたポリエステルもしくはガラス繊維のベールを使用する。低抵抗率粒子を含まない接着プライマーを導電性外側ライナの上に塗布する。ライナーの厚みは50μm~1000μmであり、好ましくは100~300の厚みである。
【0070】
・ 上部および下部アルミニウム端部金具、すなわちフランジを、低抵抗粒子で充填された導電性接着テープによって接続し、接着プライマーを塗布する前に長尺コアに巻回するかまたはテープ留めする。テープの厚みは5~500μmであり、好ましくは50~100μmの厚みである。たとえば、Fe2O3またはFe3O4などのCr2O3酸化鉄、TiO2、ZnO、ZnOマイクロバリスタ、SiC、CuO、カーボンブラック、酸化グラフェン/グラファイト、および熱的に還元された酸化グラフェン/グラファイトで充填された導電性アクリルテープを用いてもよい。テープは両方の端部金具に接続される。テープは、端部金具同士の間で切れ目なく続くか、またはいくつかのテープがある。テープは、いくつかの態様によれば、巻回された螺旋パターンで、または長尺管を直接横切って数本のストライプとして貼付けられる。テープは、いくつかの態様によれば、長尺管の表面全体を覆うように、またはテープ同士の間に隙間が存在するように貼付けられる。
【0071】
・ 接着プライマーを塗布する前に、炭素繊維または炭素繊維/熱硬化性プリプレグを長尺コアに巻回するかまたはテープ留めする。炭素繊維は低抵抗であり、抵抗率の低い粒子の添加は不要である。炭素繊維の量は、選択された表面抵抗率を与えるように選択される。
【0072】
すべての種類の導電層の表面抵抗率は10~1014Ω/スクエアの範囲であり、好ましくは1010~1012Ω/スクエアの範囲である。なお、上述のテープは長尺コア上に任意のパターンで巻回可能である。
【0073】
参照リスト
1. 複合絶縁体
2. 長尺コア
3. 保護層
4. シェッド形状を有する外面
5. 接着プライマー層
6. カップリング剤
7. 低抵抗率材料の粒子
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6