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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】粘性密度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 9/00 20060101AFI20240606BHJP
   G01N 11/00 20060101ALI20240606BHJP
   G01N 11/04 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
G01N9/00 Z
G01N11/00 C
G01N11/04 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021080926
(22)【出願日】2021-05-12
(65)【公開番号】P2022174895
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】池上 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 裕泰
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-150090(JP,A)
【文献】特開平09-133626(JP,A)
【文献】登録実用新案第3063317(JP,U)
【文献】特開昭53-019060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 9/00
G01N 11/04
G01N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に流入口が形成されているとともに下部に排出口が形成された中空の貯留体と、
前記貯留体の高さ方向に沿って並設されて、前記貯留体内に貯留された懸濁流体材料の圧力を測定する複数の圧力計と、
前記貯留体内の前記懸濁流体材料の液面高さを測定する距離計と、を備えていることを特徴とする、粘性密度測定装置。
【請求項2】
貯泥槽から前記流入口に至る流入管と、
前記排出口から前記貯泥槽に至る排出管と、
前記流入口に設けられた流入弁と、
前記排出口に設けられた排出弁と、をさらに備えていることを特徴とする、請求項1に記載の粘性密度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁流体材料の粘性密度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設分野においては、セメントミルク、グラウト、泥水、ベントナイト溶液、流動化処理土等の懸濁流体材料を地盤改良材、埋め戻し材、空洞等の充填材等として用いる場合がある(例えば、特許文献1参照)。また、トンネル掘削時や縦孔の削孔時において、地山の安定を図ることを目的として、懸濁流体材料を注入する場合がある(例えば、特許文献2参照)。施工時に必要な流動性や施工後の強度など、懸濁流体材料の使用目的に応じた性能品質を確保するにあたり、懸濁流体材料の密度や粘性が所定の範囲になるように管理する必要がある。例えば、セメントミルクや流動化処理土等は、粘性を適切な水準に収めることで、運搬、注入または打設、養生までの過程における材料分離抵抗性を確保し、また、密度を適切な水準に収めることで、硬化後の必要な強度を確保する。また、トンネル工事や掘削工事などで使用するベントナイト溶液等は、掘削面で接する地山に対して、浸透、浸潤しない程度の粘性と、地下水の密度より高い密度に調整することにより、周辺地山への流出や地下水の流入を防止する。
懸濁流体材料の粘性・密度は、通常、現場で採取した試料を試験室に持ち込んで測定する必要があるため、粘性・密度を算出するまでに手間と時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-027134号公報
【文献】特開2015-086535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、懸濁流体材料の粘性および密度を製造現場において簡易に特定することを可能とした粘性密度測定装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の粘性密度測定装置は、上部に流入口が形成されているとともに下部に排出口が形成された中空の貯留体と、前記貯留体の高さ方向に沿って並設されて前記貯留体内に貯留された懸濁流体材料の圧力を測定する複数の圧力計と、前記貯留体内の前記懸濁流体材料の液面高さを測定する距離計とを備えている。
また、本発明の粘性密度測定装置を利用した粘性密度測定方法は、貯留体に懸濁流体材料を貯留する材料貯留工程と、前記貯留体の下部から前記懸濁流体材料を排出するとともに前記懸濁流体材料の流下速度を測定する材料排出工程と、前記懸濁流体材料の粘性および密度を算出する粘性密度算出工程とを備えている。前記貯留体には複数の圧力計が異なる高さ位置に配設されており、前記粘性密度算出工程では複数の圧力計により測定された圧力分布および前記流下速度を利用して前記懸濁流体材料の粘性および密度を算出する。
かかる粘性密度測定方法によれば、複数の圧力計により測定された圧力分布を利用して密度を算出するとともに、材料の流下速度により粘性程度を把握できる。粘性密度測定装置は、比較的簡易な装置であるため、例えば懸濁流体材料の製造タンクの近傍などに設置することができる。そのため、性状を現地で確認しながら懸濁流体材料を製造できる。
【0006】
前記粘性密度測定装置は、前記貯留体内の前記懸濁流体材料の液面高さを測定する距離計を備えているので、流量計などを使用せずとも、距離計により前記貯留体から前記懸濁流体材料を排出する際の前記懸濁流体材料の液面高さの時間変化を測定できるので、前記粘性密度測定方法を容易に実施できるようになる。
また、粘性密度測定装置は、貯泥槽から前記流入口に至る流入管と、前記排出口から前記貯泥槽に至る排出管と、前記流入口に設けられた流入弁と、前記排出口に設けられた排出弁とをさらに備えているのが望ましい。かかる粘性密度測定装置によれば、流入管を介して供給された懸濁流体材料の粘性および密度を測定した後、流出管を介して製造タンクに戻すことができる。このとき、流入弁と排出弁とを操作することで、懸濁流体材料の供給、排出を行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明の粘性密度測定装置によれば、懸濁流体材料の粘性および密度を製造現場において簡易に特定することを可能とし、この結果を用いることで懸濁流体材料の品質の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る粘性密度測定装置の使用状況を示す概略図である。
図2】粘性密度測定装置の構成を示す概略図である。
図3】粘性密度測定方法の手順を示すフローチャートである。
図4】材料貯留工程の概要を示す側面図である。
図5図4に続く材料貯留工程の概要を示す側面図である。
図6】貯留体内の圧力分布を示す概略図である。
図7】材料排出工程の概要を示す斜視図である。
図8】室内試験およびプラントでの測定結果に基づいて作成された流下速度とフロー値の関係の一例を示すグラフである。
図9】粘性と密度の測定結果の表示方法の一例を示すグラフである。
図10】他の形態に係る粘性密度測定装置の使用状況を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、懸濁流体材料Wの使用目的に見合った性能・品質(例えば流動性や硬化後の強度等)を確保することを目的として、懸濁流体材料Wの密度および粘性を測定するための粘性密度測定装置1と、これを利用した粘性密度測定方法について説明する。ここで、懸濁流体材料Wとは、地盤改良等に用いる流動性を有した材料であり、例えば、泥水、グラウト、モルタル、流動化処理土等が該当する。図1に本実施形態の粘性密度測定装置1の使用状況を示す。
本実施形態の粘性密度測定装置1は、図1に示すように、懸濁流体材料Wを製造するための製造タンク(貯泥槽)Tの近傍に設けられている。製造タンクTは、金属製の箱型容器からなる。製造タンクTの上面は、貯留物(懸濁流体材料W)を攪拌するための攪拌手段(例えば、バックホウのバケット)や材料等の投入が可能となるように開口している。本実施形態の製造タンクTは、直方体状を呈している。
【0010】
図2に粘性密度測定装置1を示す。粘性密度測定装置1は、貯留体2、圧力計3と、距離計4と、流入管5と、流入弁6と、排出管7と、排出弁8とを備えている。
貯留体2は、中空部材からなる。貯留体2の本体部(上部)は、横断面形状が一様な円筒状であり、貯留体2の下部21は、逆円錐台状に縮径されていて、下部21の下端中央には排出口22が形成されている。また、本実施形態の貯留体2の上面23は開口しており、貯留体2の上部側面(上端から所定高さ低い位置)には、流入口24が形成されている。貯留体2は、中心軸が鉛直(略鉛直も含む)になるように設置する。
【0011】
圧力計3は、貯留体2の内部に設けられている。圧力計3は、貯留体2内に貯留された懸濁流体材料Wの圧力を測定する。本実施形態では、複数の圧力計3,3,…が貯留体2の一般部(下部21より上の断面積が一定の部分)25の高さ方向に沿って所定の間隔をあけて並設されている。圧力計3の数および圧力計3同士の間隔は、限定されるものではなく、適宜決定すればよい。圧力計3の高さ位置は、貯留体2の下端(排出口22)からの距離が既知である。すなわち、各圧力計3は、貯留体2に貯留された懸濁流体材料Wの最下点からの高さが既知な状態で鉛直方向に並べられている。本実施形態の圧力計3は、有線または無線により図示しないデータ処理手段(例えば、パーソナルコンピュータ等)9に接続されており、圧力計3の測定データは、データ処理手段9に送信される。
【0012】
距離計4は、貯留体2の上方に設けられていて、貯留体2の上面23(開口部)から、貯留体2内の懸濁流体材料Wの液面高さを測定する。距離計4は、貯留体2の上端から予め設定された距離の位置に固定されている。距離計4は、貯留体2に固定してもよいし、他の部材(例えば、製造タンクTや別途設けた支持部材等)に固定してもよい。本実施形態の距離計4は、非接触式の距離計の一種であるレーザー距離計であって、懸濁流体材料Wの液面(上面)に対してレーザー光を照射して反射したレーザー光を受信するまでの時間により懸濁流体材料Wまでの距離を算出する。本実施形態の距離計4は、有線または無線により図示しないデータ処理手段(例えば、パーソナルコンピュータ等)9に接続されており、距離計4の測定データは、データ処理手段9に送信される。距離計4は、製造タンクTの側面に固定してもよいし、別途設けられた支持部材により支持してもよい。
【0013】
流入管5は、図1に示すように、製造タンクTから貯留体2に至る管路である。流入管5は、図2に示すように、流入弁6を介して流入口24に接続されている。流入管5は、製造タンクT内の懸濁流体材料Wを貯留体2に輸送する。図1に示すように、流入管5は、製造タンクT内の懸濁流体材料Wが貯留体2に流下するように、製造タンクTの上部の懸濁流体材料Wの液面よりも低い位置に設けられている。
流入弁6は、図2に示すように流入口24に設けられていて、貯留体2と流入管5との連通・非連通を制御する(流入口24を開閉する)。流入弁6を開くと、流入管5を介して輸送された懸濁流体材料Wが貯留体2内に供給される。一方、流入弁6を閉じると、貯留体2への懸濁流体材料Wの供給が停止される。
【0014】
排出管7は、図2に示すように、貯留体2から排出された懸濁流体材料Wを輸送する管路である。排出管7は、排出弁8を介して排出口22に接続されている。本実施形態では、図1に示すように、貯留体2の下に仮受けタンクT2が設けられており、貯留体2から排出された懸濁流体材料Wは、排出管7を介して仮受けタンクT2に流下する。
排出弁8は、図2に示すように、排出口22に設けられていて、貯留体2と排出管7との連通・非連通を制御する(排出口22を開閉する)。排出弁8を開くと、貯留体2内の懸濁流体材料Wが貯留体2の排出口22から排出されて、排出管7を介して製造タンクTに輸送される。
本実施形態では、仮受けタンクT2から製造タンクTに至る返送管71が配管されている。返送管71は、仮受けタンクT2内に設けられたポンプ72を介して貯留体2から排出されて仮受けタンクT2に貯留された懸濁流体材料Wを製造タンクTに圧送する。
本実施形態の流入弁6および排出弁8は、制御手段91からの制御信号により開閉する。
【0015】
次に、粘性密度測定装置1を利用した粘性密度測定方法を説明する。図3に粘性密度測定方法の手順を示す。粘性密度測定方法は、準備工程S1と、材料貯留工程S2と、圧力測定工程S3と、材料排出工程S4と、粘性密度算出工程S5と、調整工程S6を備えている。
準備工程S1では、まず、粘性密度測定装置1を所定の位置に設置する。粘性密度測定装置1は、製造タンクTの近傍に、中心軸が鉛直になるように設置する。また、流入管5の一端を製造タンクTに接続し、流入管5の他端を貯留体2の流入口24に流入弁6を介して接続して、貯留体2へ懸濁流体材料Wを流入する経路を確保する。また、排出管7の一端を製造タンクTに接続するとともに、排出管7の他端を貯留体2の排出口22に排出弁8を介して接続して、懸濁流体材料Wの排出経路を確保する。
【0016】
材料貯留工程S2では、貯留体2に懸濁流体材料Wを貯留する。図4および図5に材料貯留工程を示す。図4に示すように、材料貯留工程S2では、排出弁8を閉じた状態で、流入弁6を開くことで、貯留体2内に懸濁流体材料Wを供給する。貯留体2内において、懸濁流体材料Wの液面が所定の高さに到達したら、図5に示すように、流入弁6を閉めて、懸濁流体材料Wの供給を停止する。本実施形態では、懸濁流体材料Wの液面が、最も高い位置に配設された圧力計3と貯留体2の上面23との間の位置になるまで懸濁流体材料Wを供給する。貯留体2への懸濁流体材料Wの供給は、製造タンクT内での懸濁流体材料Wの製造が進行し、懸濁流体材料Wの濃度が製造タンクT内で均一になるよう攪拌したタイミングで行う。本実施形態では、流入弁6および排出弁8の開閉の制御を、制御手段91により自動的に行う。すなわち、粘性密度測定装置1を起動すると、制御手段91から排出弁8を閉じる信号および流入弁6を開く信号が送信されるとともに、距離計4による測定を開始する信号が送信される。距離計4により貯留体2内の懸濁流体材料Wの液面が所定の高さに達したことが確認されたら、制御手段91から流入弁6を閉める信号が送信される。
【0017】
圧力測定工程S3では、圧力計3により、貯留体2内の懸濁流体材料Wの圧力を測定する。図6に圧力測定工程S3を示す。高さ方向に列状に配設された複数の圧力計3,3,…により圧力を同時に測定することで、図6に示すように、貯留体2内の深度方向に対する圧力分布を特定する。圧力計3による測定は、流入弁6が閉じられた段階で、制御手段91により測定開始の信号が送信されることにより開始する。圧力計3の測定結果は、データ処理手段9に送信される。
【0018】
材料排出工程S4では、貯留体2から懸濁流体材料Wを排出する。図7に材料排出工程S4を示す。図7に示すように、懸濁流体材料Wは、排出弁8を開くことで、貯留体2の下部21に形成された排出口22から排出する。圧力計3による貯留体2内の懸濁流体材料Wの圧力の測定が終了したら、排出弁8を開く信号が制御手段91から送信されて、貯留体2から懸濁流体材料Wの排出が開始される。自然流下により排出口22から排出された懸濁流体材料Wは、排出管7を介して仮受けタンクT2に輸送される(図1参照)。このとき、距離計4を利用して、懸濁流体材料Wの液面の高さの時間変化を測定する。液面の時間変化と、貯留体2の内空形状により流下速度を算出できる。距離計4の測定データは、データ処理手段9に経過時間とともに送信される。なお、仮受けタンクT2内に排出された懸濁流体材料Wは、適宜、返送管71を介して製造タンクTへポンプ圧送する。
【0019】
粘性密度算出工程S5では、懸濁流体材料Wの粘性および密度を算出する。粘性および密度は、複数の圧力計3,3,…により測定された圧力分布および流下速度を利用して算出または推定する。圧力分布および流下速度の算出は、圧力計3および距離計4からのデータをデータ処理手段9が受信した段階で開始する。
懸濁流体材料Wの密度を算出する場合には、まず、上下に配設された圧力計3の測定値の圧力差を高低差で除することにより懸濁流体材料Wの単位体積重量を算出し、これを重力加速度(9.81)で除することで密度を算出する。懸濁流体材料Wの密度の算出は、各圧力計3同士の間を層と仮定して、各層毎に行う。
【0020】
懸濁流体材料Wの粘性を算出する場合には、まず、液面高さの時間変化に基づいて懸濁流体材料Wの流下速度を算出する。本実施形態の貯留体2は、本体部分(下部21以外の部分)の内空面積が一定のため、液面高さの変化量を時間で除することにより、流下速度(単位時間あたりの液面高さの変化量)を算出する。本実施形態では、室内試験や過去のデータなどに基づいて、懸濁流体材料Wの流下速度とフロー値との関係が予め求められているものとする(図8参照)。図8は、室内試験およびプラントでの測定結果に基づいて作成された流下速度とフロー値の関係の一例を示すグラフである。流下速度の測定値を図8のグラフ(近似式)に当てはめることで、懸濁流体材料Wの流下速度に対応するフロー値が得られる。なお、流下速度は、貯留体2の内面と懸濁流体材料Wとの間に発生する摩擦力の影響を受けるため、液面高さの測定は、摩擦力の影響が一定となるよう内空断面が一定の区間(本実施形態では円筒部分)において実施することが好ましい。
【0021】
調整工程S6では、懸濁流体材料Wの密度および粘性(フロー値)の測定結果(算出結果)により、懸濁流体材料Wが所定の品質を有しているかを判断するとともに、必要に応じて懸濁流体材料Wの密度および粘性の調整を行う。図9に測定結果の表示方法の一例を示す。調整工程S6では、懸濁流体材料Wの密度および粘性の目標値(図9において点線により囲われた範囲)を予め設定しておき、製造された懸濁流体材料Wの密度および粘性が目標値に収まっているか否かを判定する。本実施形態では、図9に示すように、密度と粘性の関係をプロットし、密度および粘性が目標値に収まるように、水分の増加あるいは土砂や固化材等の増加を行う。すなわち、測定密度(粘性密度算出工程S5において算出された密度)が目標密度に対して過大な場合は、その乖離を縮小するために製造タンクTへの加水を行う。また、測定粘性(粘性密度算出工程S5において算出されたフロー値)が目標値に対して過小な場合は、製造タンクTへの土砂材や固化材等を追加投入する。本実施形態では、製造タンクTへの加水または土砂材や固化材等の追加投入を、自動的に行うものとする。すなわち、データ処理手段9には、予め懸濁流体材料Wの密度の目標値および粘性の目標値が保存されていて、測定結果と目標値との比較をデータ処理手段9が自動的に行い、比較結果に基づいて制御手段91に信号を送信する。
【0022】
本実施形態の粘性密度測定装置1およびこれを利用した粘性密度測定方法によれば、複数の圧力計3,3,…により測定された圧力分布を利用して密度を算出するとともに、材料の流下速度により粘性(フロー値)を把握できる。そのため、製造タンクT内の懸濁流体材料Wの性状をリアルタイムで把握し、材料の品質向上を図ることできる。
また、粘性密度測定装置1は、比較的簡易な装置であり、製造タンクTの近傍に設置することができるため、性状を現地にてリアルタイムに確認しながら懸濁流体材料Wを製造できる。
粘性密度測定装置1は、自動的に懸濁流体材料Wの性状の測定を行うことを可能としているため、測定者の手間を削減できる。
また、距離計4を利用して貯留体2内の懸濁流体材料Wの液面高さを測定することで、、流量計などを使用せずとも、懸濁流体材料Wの流下速度を測定できる。
【0023】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、貯留体2が円筒状の部分を有する場合について説明したが、貯留体2の形状は限定されるものではなく、例えば、角筒状であってもよいし、円錐台状であってもよい。
前記実施形態では、貯留体2を鉛直に設けるものとしたが、貯留体2は傾斜していてもよい。
【0024】
前記実施形態では、貯留体2の内部に圧力計3を設けるものとしたが、圧力計3の設置箇所は限定されるものではない。例えば、圧力計3の感知部のみを貯留体2の内部に面して設けておき、圧力計3の本体部分は貯留体2の外側に設けられていてもよい。
前記実施形態では、複数の圧力計3が所定の間隔で上下に列状に配設されている場合について説明したが、各圧力計3の高さ位置が既知であれば圧力計3の配置および設置方法は限定されるものではない。
圧力計3の数は複数であれば限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
【0025】
前記実施形態では、距離計4としてレーザー距離計を使用したが、距離計4はレーザー距離計に限定されるものではなく、例えば、超音波距離計を使用してもよい。
また、距離計4は、必要に応じて設ければよい。例えば、複数の圧力計3による測定結果に基づいて、流下速度を算出してもよい。すなわち、上下に配設された圧力計3の圧力が0になった時点で、懸濁流体材料Wの液面が当該圧力計3を通過したと認定することで、懸濁流体材料Wの時間毎の液面の位置を把握し、これに基づいて流下速度を算出できる。
【0026】
前記実施形態では、流入管5を介して貯留体2に懸濁流体材料Wを供給し、排出管7を介して測定後の懸濁流体材料Wを製造タンクTに戻すものとしたが、流入管5および排出管7は必要に応じて設置すればよい。すなわち、貯留体2への懸濁流体材料Wの供給は手作業により行ってもよい。また、貯留体2内の懸濁流体材料Wは、別の容器に排出した後、手作業により製造タンクTに戻してもよい。
前記実施形態では、流入弁6および排出弁8を自動制御するものとしたが、流入弁6および排出弁8は、手作業により開閉してもよい。
【0027】
前記実施形態では、製造タンクT内において濃度が均一に攪拌された懸濁流体材料Wに対して測定を行うものとしたが、測定のタイミング(材料を貯留体2に供給するタイミング)は限定されるものではなく、例えば、均一に攪拌する前(製造タンクT内に材料を投入した直後や製造タンクT内での材料攪拌作業中)に行ってもよい。
前記実施形態では、圧力計同士の間を層として、各層毎に密度を算出する場合について説明したが、密度の算出方法は限定されるものではなく、例えば、複数の圧力計の測定値から近似曲線を求めて、この近似曲線の傾きから密度を算出してもよい。
【0028】
前記実施形態では、貯留体2を製造タンクTの側面に接続して、製造タンクT内の懸濁流体材料Wを自然流下により貯留体2に流し込むものとしたが、貯留体2と製造タンクTとの位置関係は限定されるものではない。例えば、図10に示すように、貯留体2を製造タンクTよりも高い位置に配設し、貯留体2から製造タンクTに至る排出管7を介して、貯留体2から排出した懸濁流体材料Wを製造タンクTに流下させる構成としてもよい。このとき、製造タンクTから貯留体2への懸濁流体材料Wの供給は、製造タンクT内に設けられたポンプ51により、流入管5を介して圧送すればよい。なお、このポンプ51は、流入弁6の開閉動作と連動して駆動するのが望ましい。
【符号の説明】
【0029】
1 粘性密度測定装置
2 貯留体
3 圧力計
4 距離計
5 流入管
6 流入弁
7 排出管
8 排出弁
T 製造タンク
W 懸濁流体材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10