(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤およびその利用
(51)【国際特許分類】
D21J 1/18 20060101AFI20240606BHJP
D21H 17/53 20060101ALI20240606BHJP
D21H 17/67 20060101ALI20240606BHJP
C04B 16/02 20060101ALI20240606BHJP
E04C 2/06 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
D21J1/18
D21H17/53
D21H17/67
C04B16/02 Z
E04C2/06
(21)【出願番号】P 2021097621
(22)【出願日】2021-06-10
【審査請求日】2023-03-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 オンラインのプレゼンテーションの実施による公開、実施日:令和3年2月25日、実施先:ケイミュー株式会社 奈良テクノセンター(奈良県大和郡山市筒井町800) 〔刊行物等〕サンプルの発送による公開、発送日:令和3年3月17日、発送先:ケイミュー株式会社 奈良テクノセンター(奈良県大和郡山市筒井町800) 〔刊行物等〕オンラインのプレゼンテーションの実施による公開、実施日:令和3年4月14日、実施先:ケイミュー株式会社 北九州工場(福岡県北九州市若松区響町1丁目1-2)
(73)【特許権者】
【識別番号】000234166
【氏名又は名称】伯東株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179578
【氏名又は名称】野村 和弘
(72)【発明者】
【氏名】野口 尊生
(72)【発明者】
【氏名】田邊 玲太
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-070292(JP,A)
【文献】国際公開第2007/074924(WO,A1)
【文献】特開2018-159162(JP,A)
【文献】特開2006-152470(JP,A)
【文献】特開2004-115935(JP,A)
【文献】特開2010-065351(JP,A)
【文献】特開平11-269799(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0096283(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B2/00-32/02
40/00-40/06
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
E04C2/00-2/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントとパルプとを含有する建材ボードにおける繊維混入板に用いられる
抄造製造用の嵩高剤であって、
化合物の窒素にアルキレンオキサイド鎖が付加している重合体
(エステルを除く)を含み、
前記アルキレンオキサイド鎖は、エチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位とを有し、
前記化合物は、アミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するジアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルイミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するアルキレンジアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するジアルキレントリアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するトリアルキレンテトラミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するテトラアルキレンペンタミンと、からなる群から選ばれることを特徴とする、
建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤。
【請求項2】
請求項1に記載の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤において、
前記化合物は、アミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するジアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルイミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するアルキレンジアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するジアルキレントリアミンと、からなる群から選ばれることを特徴とする、
建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤において、
前記化合物は、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するアルキレンジアミンであることを特徴とする、
建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤において、
前記重合体は、前記アルキレンオキサイド鎖を4つ有することを特徴とする、
建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤において、
前記アルキレンオキサイド鎖は、前記エチレンオキサイド単位を1以上40以下有することを特徴とする、
建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤において、
前記アルキレンオキサイド鎖は、前記プロピレンオキサイド単位を1以上40以下有することを特徴とする、
建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤において、
前記プロピレンオキサイド単位の個数は、前記エチレンオキサイド単位の個数よりも多いことを特徴とする、
建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤。
【請求項8】
建材ボードにおける
抄造製造の繊維混入板であって、
セメントと、
パルプと、
化合物の窒素にアルキレンオキサイド鎖が付加している重合体
(エステルを除く)と、を含み、
前記アルキレンオキサイド鎖は、エチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位とを有し、
前記化合物は、アミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するジアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルイミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するアルキレンジアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するジアルキレントリアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するトリアルキレンテトラミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するテトラアルキレンペンタミンと、からなる群から選ばれることを特徴とする、
建材ボードにおける繊維混入板。
【請求項9】
請求項8に記載の建材ボードにおける繊維混入板において、
固形分換算において、前記パルプ1kgに対して、前記重合体を3,000mg以上18,000mg以下含むことを特徴とする、
建材ボードにおける繊維混入
板。
【請求項10】
建材ボードにおける繊維混入板の製造方法であって、
セメントと、パルプと、化合物の窒素にアルキレンオキサイド鎖が付加している重合体
(エステルを除く)と、を混合する混合工程
と、
前記混合工程によって得られたセメント混合スラリーを、抄造する抄造工程と、を含み、
前記アルキレンオキサイド鎖は、エチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位とを有し、
前記化合物は、アミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するジアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルイミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するアルキレンジアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するジアルキレントリアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するトリアルキレンテトラミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するテトラアルキレンペンタミンと、からなる群から選ばれることを特徴とする、
建材ボードにおける繊維混入板の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の建材ボードにおける繊維混入板の製造方法において、
前記混合工程では、固形分換算において、前記パルプ1kgに対して、前記重合体を3,000mg以上18,000mg以下添加することを特徴とする、
建材ボードにおける繊維混入板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建材ボードとしての繊維混入板において、材料価格の高騰、環境保護の必要性および資源の有効利用等の観点から、嵩高さに重要なパルプの使用量を減らしつつも、建材ボードにおける繊維混入板の厚みを維持することが望まれている。
【0003】
製紙の分野で用いられるパルプ嵩高剤としては、例えば、ポリアミンのアルキレンオキシド付加物の末端ヒドロキシル基の一部又は全部がアシル化された化合物を含有する紙用嵩高剤(特許文献1)、脂肪酸のアルキレンオキシド付加物を含有する紙用嵩高剤(特許文献2)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-152470号公報
【文献】特開平11-200284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~2に記載の紙用嵩高剤は、酸性~中性のスラリーに添加される。このため、スラリーの液性が強アルカリ性である建材ボードにおける繊維混入板においては、十分な嵩高効果が得られないことを本願発明者らは見出した。このため、建材ボードにおける繊維混入板の嵩高性を向上させる技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することができる。
本発明の一形態によれば、セメントとパルプとを含有する建材ボードにおける繊維混入板に用いられる抄造製造用の嵩高剤が提供される。この嵩高剤は、化合物の窒素にアルキレンオキサイド鎖が付加している重合体(エステルを除く)を含み、前記アルキレンオキサイド鎖は、エチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位とを有し、前記化合物は、アミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するジアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルイミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するアルキレンジアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するジアルキレントリアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するトリアルキレンテトラミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するテトラアルキレンペンタミンと、からなる群から選ばれることを特徴とする。
本発明の一形態によれば、建材ボードにおける抄造製造の繊維混入板が提供される。この繊維混入板は、セメントと、パルプと、化合物の窒素にアルキレンオキサイド鎖が付加している重合体(エステルを除く)と、を含み、前記アルキレンオキサイド鎖は、エチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位とを有し、前記化合物は、アミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するジアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルイミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するアルキレンジアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するジアルキレントリアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するトリアルキレンテトラミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するテトラアルキレンペンタミンと、からなる群から選ばれることを特徴とする。
本発明の一形態によれば、建材ボードにおける繊維混入板の製造方法が提供される。この製造方法は、セメントと、パルプと、化合物の窒素にアルキレンオキサイド鎖が付加している重合体(エステルを除く)と、を混合する混合工程と、
前記混合工程によって得られたセメント混合スラリーを、抄造する抄造工程と、を含み、
前記アルキレンオキサイド鎖は、エチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位とを有し、
前記化合物は、アミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するジアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルイミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するアルキレンジアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するジアルキレントリアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するトリアルキレンテトラミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するテトラアルキレンペンタミンと、からなる群から選ばれることを特徴とする。
その他、本発明は、以下の形態として実現することができる。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤が提供される。この建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤は、セメントとパルプとを含有する建材ボードにおける繊維混入板に用いられる嵩高剤であって、化合物の窒素にアルキレンオキサイド鎖が付加している重合体を含み、前記アルキレンオキサイド鎖は、エチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位とを有し、前記化合物は、アミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するジアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルイミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するアルキレンジアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するジアルキレントリアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するトリアルキレンテトラミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するテトラアルキレンペンタミンと、からなる群から選ばれることを特徴とする。この形態の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤によれば、建材ボードにおける繊維混入板の嵩高性を向上させることができる。
【0008】
(2)上記形態の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤において、前記化合物は、アミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するジアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルイミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するアルキレンジアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するジアルキレントリアミンと、からなる群から選ばれてもよい。この形態の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤によれば、建材ボードにおける繊維混入板の嵩高性をより向上させることができる。
【0009】
(3)上記形態の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤において、前記化合物は、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するアルキレンジアミンであってもよい。この形態の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤によれば、建材ボードにおける繊維混入板の嵩高性をより向上させることができる。
【0010】
(4)上記形態の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤において、前記重合体は、前記アルキレンオキサイド鎖を4つ有してもよい。この形態の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤によれば、建材ボードにおける繊維混入板の嵩高性をより向上させることができる。
【0011】
(5)上記形態の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤において、前記アルキレンオキサイド鎖は、前記エチレンオキサイド単位を1以上40以下有してもよい。この形態の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤によれば、建材ボードにおける繊維混入板の嵩高性をより向上させることができる。
【0012】
(6)上記形態の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤において、前記アルキレンオキサイド鎖は、前記プロピレンオキサイド単位を1以上40以下有してもよい。この形態の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤によれば、建材ボードにおける繊維混入板の嵩高性をより向上させることができる。
【0013】
(7)上記形態の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤において、前記プロピレンオキサイド単位の個数は、前記エチレンオキサイド単位の個数よりも多くてもよい。この形態の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤によれば、建材ボードにおける繊維混入板の嵩高性をより向上させつつ、取り扱い性を向上させることができる。
【0014】
(8)本発明の他の形態によれば、建材ボードにおける繊維混入板が提供される。この建材ボードにおける繊維混入板は、セメントと、パルプと、化合物の窒素にアルキレンオキサイド鎖が付加している重合体と、を含み、前記アルキレンオキサイド鎖は、エチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位とを有し、前記化合物は、アミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するジアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルイミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するアルキレンジアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するジアルキレントリアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するトリアルキレンテトラミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するテトラアルキレンペンタミン、からなる群から選ばれることを特徴とする。この形態の建材ボードにおける繊維混入板によれば、嵩高性に優れる。
【0015】
(9)上記形態の建材ボードにおける繊維混入板において、固形分換算において、前記パルプ1kgに対して、前記重合体を3,000mg以上18,000mg以下含んでもよい。この形態の建材ボードにおける繊維混入板によれば、取り扱い性を向上させつつ、嵩高性に優れる。
【0016】
(10)本発明の他の形態によれば、建材ボードにおける繊維混入板の製造方法が提供される。この建材ボードにおける繊維混入板の製造方法は、セメントと、パルプと、化合物の窒素にアルキレンオキサイド鎖が付加している重合体と、を混合する混合工程を含み、前記アルキレンオキサイド鎖は、エチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位とを有し、前記化合物は、アミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するジアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルイミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するアルキレンジアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するジアルキレントリアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するトリアルキレンテトラミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するテトラアルキレンペンタミンと、からなる群から選ばれることを特徴とする。この形態の建材ボードにおける繊維混入板の製造方法によれば、嵩高性に優れる建材ボードにおける繊維混入板を製造することができる。
【0017】
(11)上記形態の建材ボードにおける繊維混入板の製造方法において、前記混合工程では、固形分換算において、前記パルプ1kgに対して、前記重合体を3,000mg以上18,000mg以下添加してもよい。建材ボードにおける繊維混入板の製造方法によれば、取り扱い性を向上させつつ、嵩高性に優れる建材ボードにおける繊維混入板を製造することができる。
【0018】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤の製造方法、建材ボードにおける繊維混入板を用いた建造物等の態様で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤
本発明の一実施形態である嵩高剤は、セメントとパルプとを含有する建材ボードにおける繊維混入板に用いられる。本実施形態の嵩高剤は、化合物の窒素にアルキレンオキサイド鎖が付加している重合体を含む。以下の説明では、この化合物を「窒素含有化合物」とも呼ぶ。上記アルキレンオキサイド鎖は、エチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位とを有する。そして、窒素含有化合物は、アミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するジアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルイミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するアルキレンジアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するジアルキレントリアミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するトリアルキレンテトラミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するテトラアルキレンペンタミンと、からなる群から選ばれることを特徴とする。
【0020】
この形態の嵩高剤によれば、上記の重合体を含むことにより、建材ボードにおける繊維混入板の嵩高性を向上させることができる。このような効果が奏するメカニズムついては定かではないが、以下の推定メカニズムが考えられる。つまり、上記の重合体が有する窒素原子に非共有電子対があることから、分子内で分極する結果として、電荷がマイナスチャージされているパルプ繊維と上記の重合体との間で水素結合が生じる。また、上記の重合体がアルキレンオキサイド鎖を含むことにより立体障害が生じる。この結果として、パルプ繊維間の空間が広がるため、嵩高性を向上させる効果を奏すると考えられる。
【0021】
嵩高性をより向上させる観点から、嵩高剤に用いる窒素含有化合物としては、アミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するジアルキルアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルイミンと、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するアルキレンジアミンと、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するジアルキレントリアミンと、からなる群から選ばれることが好ましい。嵩高剤に用いる窒素含有化合物としては、アミンと、アルキレンジアミンと、ジアルキレントリアミンとがより好ましく、アルキレンジアミンがさらに好ましい。
【0022】
本実施形態の重合体は、アルキレンオキサイド鎖が付加している。嵩高性をより向上させる観点から、本実施形態の重合体は、アルキレンオキサイド鎖を2つ以上有することが好ましく、3つ以上有することが好ましく、4つ以上有することがさらに好ましく、4つ有することが特に好ましい。
【0023】
本実施形態のアルキレンオキサイド鎖は、エチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位とを有する。例えば、窒素含有化合物の窒素に付加した鎖がエチレンオキサイド鎖の場合には、このエチレンオキサイド鎖にはプロピレンオキサイド鎖が付加している。また、窒素含有化合物の窒素に付加した鎖がプロピレンオキサイド鎖の場合には、このプロピレンオキサイド鎖にはエチレンオキサイド鎖が付加している。アルキレンオキサイド鎖は、連続する複数のエチレンオキサイド単位と連続する複数のプロピレンオキサイド単位とを有していてもよく、エチレンオキサイド単位とプロピレンオキサイド単位とを交互に有していてもよい。
【0024】
アルキレンオキサイド鎖におけるエチレンオキサイド単位の個数は、特に限定されないが、嵩高性をより向上させる観点から、1以上40以下であることが好ましく、2以上38以下であることがより好ましく、2以上36以下であることがさらに好ましい。
【0025】
アルキレンオキサイド鎖におけるプロピレンオキサイド単位の個数は、特に限定されないが、嵩高性をより向上させる観点から、1以上40以下であることが好ましく、5以上35以下であることがより好ましく、10以上30以下であることがさらに好ましい。
【0026】
エチレンオキサイド単位の個数は、プロピレンオキサイド単位の個数と同じであってもよく、異なっていてもよい。嵩高性をより向上させつつ、取り扱い性を向上させる観点から、プロピレンオキサイド単位の個数は、エチレンオキサイド単位の個数よりも多いことが好ましい。
【0027】
窒素化合物がアミンである場合、重合体は、例えば、以下の化学式(1)で示すことができる。なお、「AO」はアルキレンオキサイド鎖を示し、nは正の整数を示す。
【0028】
【0029】
本明細書において、「炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルアミン」とは、アミノ基を1つ有し、炭素数1以上20以下のアルキル基を有する化合物を示す。窒素化合物が、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルアミンである場合、重合体は、例えば、以下の化学式(2)で示すことができる。なお、R1は炭素数1以上20以下のアルキル基を示す。「AO」はアルキレンオキサイド鎖を示し、nは正の整数を示す。
【0030】
【0031】
本明細書において、「炭素数1以上20以下のアルキル基を有するジアルキルアミン」とは、アミノ基を1つ有し、炭素数1以上20以下のアルキル基を2つ有する化合物を示す。窒素化合物が、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するジアルキルアミンである場合、重合体は、例えば、以下の化学式(3)で示すことができる。なお、R1およびR2は、それぞれ独立して、炭素数1以上20以下のアルキル基を示す。「AO」はアルキレンオキサイド鎖を示し、nは正の整数を示す。
【0032】
【0033】
本明細書において、「炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルイミン」とは、シッフ塩基を1つ有し、炭素数1以上20以下のアルキル基を1つ有する化合物を示す。窒素化合物が、炭素数1以上20以下のアルキル基を有するアルキルイミンである場合、重合体は、例えば、以下の化学式(4)で示すことができる。なお、R1およびR2は、それぞれ独立して、アルキル基を示す。「AO」はアルキレンオキサイド鎖を示し、nは正の整数を示す。
【0034】
【0035】
本明細書において、「炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するアルキレンジアミン」とは、アミノ基を2つ有し、炭素数1以上20以下のアルキレン基を1つ有する化合物を示す。窒素化合物が、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するアルキレンジアミンである場合、重合体は、例えば、以下の化学式(5)で示すことができる。なお、「AO」はアルキレンオキサイド鎖を示し、mおよびnは、それぞれ独立して、正の整数を示す。
【0036】
【0037】
本明細書において、「炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するジアルキレントリアミン」とは、アミノ基を3つ有し、炭素数1以上20以下のアルキレン基を2つ有する化合物を示す。窒素化合物が、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するジアルキレントリアミンである場合、重合体は、例えば、以下の化学式(6)で示すことができる。なお、「AO」はアルキレンオキサイド鎖を示し、m、n、およびpは、それぞれ独立して、正の整数を示す。
【0038】
【0039】
本明細書において、「炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するトリアルキレンテトラミン」とは、アミノ基を4つ有し、炭素数1以上20以下のアルキレン基を3つ有する化合物を示す。窒素化合物が、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するトリアルキレンテトラミンである場合、重合体は、例えば、以下の化学式(7)で示すことができる。なお、「AO」はアルキレンオキサイド鎖を示し、m、n、p、およびqは、それぞれ独立して、正の整数を示す。
【0040】
【0041】
本明細書において、「炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するテトラアルキレンペンタミン」とは、アミノ基を5つ有し、炭素数1以上20以下のアルキレン基を4つ有する化合物を示す。窒素化合物が、炭素数1以上20以下のアルキレン基を有するトリアルキレンテトラミンである場合、重合体は、例えば、以下の化学式(8)で示すことができる。なお、「AO」はアルキレンオキサイド鎖を示し、m、n、p、q、およびrは、それぞれ独立して、正の整数を示す。
【0042】
【0043】
建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤は、重合体が液状であればそのまま使用することもでき、また、取扱い性等の観点から、水等を用いて適宜希釈して調製されていてもよい。
【0044】
建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤は、重合体が溶媒に溶解されたものであってもよく、重合体が分散媒に分散(例えば、懸濁、乳化)されたものであってもよい。かかる溶媒または分散媒としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、グリセリン脂肪酸エステル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2-ブタノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール等のアルコール類、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化バリウム水溶液等のアルカリ水溶液、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ポリエーテルアミン等のアミン類等が挙げられる。
【0045】
本実施形態の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤は、必要に応じて、本発明の効果を妨げない範囲で、任意成分を含んでもよい。かかる任意成分としては、特に限定されないが、例えば、防腐剤、防カビ剤、殺菌剤等が挙げられる。これらの任意成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤における重合体の濃度は、特に限定されないが、取り扱い性を向上させつつ嵩高効果を向上させる観点から、固形分換算において、パルプ1kgに対して、重合体を、2,000mg以上25,000mg以下含むことが好ましく、2,500mg以上20,000mg以下含むことがより好ましく、3,000mg以上18,000mg以下含むことがさらに好ましい。
【0047】
B.建材ボードにおける繊維混入板
本発明の他の形態である建材ボードにおける繊維混入板は、セメントと、パルプと、上記の重合体とを含むことを特徴とする。建材ボードにおける繊維混入板は、特に限定されないが、例えば、窯業サイディングボード、人工スレート、スラグ石膏板、ケイ酸カルシウム板等が挙げられる。本明細書において、窯業サイディングボードは、例えば、家や店舗の外壁材や内壁材として利用される。上記の嵩高剤は、窯業サイディングボードに好適に用いることができる。
【0048】
〔建材ボードにおける繊維混入板の原料〕
本実施形態において用いられるセメントとしては、特に限定されないが、例えば、普通、早強、超早強、低熱および中庸熱等の各種ポルトランドセメント、石灰石粉末等や高炉徐冷スラグ微粉末を混合したフィラーセメント、各種の産業廃棄物を主原料として製造される環境調和型セメント等が挙げられる。セメントは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、セメントには、フライアッシュ、珪酸カルシウム、石膏、炭酸カルシウム、高炉スラグ、シリカ等の無機粉末が混合されていてもよい。
【0049】
本実施形態のパルプは、天然繊維を含んで構成され、建材ボードにおける繊維混入板において補強繊維としての役割を有する。原料のパルプは、木材パルプであってもよく、非木材パルプであってもよい。木材パルプとしては、特に限定されないが、例えば、針葉樹クラフトパルプ(NKP)や広葉樹クラフトパルプ(LKP)等が挙げられる。非木材パルプとしては、特に限定されないが、例えば、ケナフ、バガス、竹、麻、藁等が挙げられる。パルプは、漂白処理された晒パルプであってもよく、漂白処理されていない未晒パルプであってもよい。また、パルプは、木材や非木材から直接作られたバージンパルプであってもよく、既に紙等として製造されたものを回収して原料とした古紙パルプであってもよい。なお、パルプは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
本実施形態の建材ボードにおける繊維混入板は、必要に応じて、本発明の効果を妨げない範囲で、任意成分を含んでもよい。かかる任意成分としては、特に限定されないが、例えば、消泡剤、炭化水素、防腐剤、防カビ剤、殺菌剤、防錆剤、皮張り防止剤等が挙げられる。これらの任意成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
〔建材ボードにおける繊維混入板の製造方法〕
本実施形態の建材ボードにおける繊維混入板の製造方法は、特に限定されず、流し込み、押し出し、抄造等の各種製造方法を適用することができる。本実施形態の建材ボードにおける繊維混入板の製造方法では、パルプと、セメントと、上記の重合体と、を混合する混合工程を含む。混合工程では、水に上記の原料を加えたスラリーを、混合撹拌する。混合工程におけるパルプと重合体との配合比率は特に限定されないが、取り扱い性を向上させつつ、嵩高性を向上させる観点から、混合工程では、固形分換算において、パルプ1kgに対して、重合体を3,000mg以上18,000mg以下添加することが好ましい。
【0052】
パルプスラリーやセメント混合スラリーに対する重合体の混合方法は、重合体がスラリー中に分散される方法であれば特に制限されない。例えば、送液ポンプを用いて連続的に混合する方法や、一定期間毎に規定のバッチ量を混合する方法等が挙げられる。また、重合体の混合場所としては、例えば、パルパーや、建材ボードにおける繊維混入板成形時に排出される濾水の戻りライン、原料希釈水等であってもよい。また、必要に応じて、複数の箇所において、重合体が添加されてもよい。
【0053】
パルプスラリーやセメント混合スラリーの濃度は、特に限定されないが、例えば、パルプスラリーやセメント混合スラリーは、固形分が1質量%以上60質量%以下であることが好ましい。
【0054】
抄造製造により建材ボードにおける繊維混入板を製造する場合は、混合工程によって得られたセメント混合スラリーを、抄造する抄造工程をさらに含む。抄造工程では、セメント混合スラリーを、紙のように抄き取って板状の成形板を作製する。より具体的には、例えば、セメント混合スラリーを網上に流し出した後、ろ過し脱水したセメントケーキを生成する。生成したセメントケーキをプレスして成型し、乾燥・硬化させて建材ボードにおける繊維混入板を作製する。
【0055】
また、押出製造により建材ボードにおける繊維混入板を製造する場合は、セメントと、パルプと、重合体等とを混合した後、押出形成により成型する。その後、乾燥・硬化させて建材ボードにおける繊維混入板を作製する。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「%」との記載は、特に限定のない限り質量%を意味する。
【0057】
〔重合体A〕
エチレンジアミン60.11gを撹拌装置及び温度制御装置付きのオートクレーブに仕込み、窒素置換を行った後に150℃に昇温した。系の内圧を0.3MPaに調整した後、プロピレンオキサイド2788gを添加した。その後、150℃で1時間保った後、80℃まで冷却した。その後、系の内圧を常圧にした後、水酸化カリウム2gを添加し、その後、130℃に昇温してから、窒素バブリングしながら0.05MPa以下へ減圧し、この状態において3時間脱水反応を行った。脱水反応終了後、系内の温度を150℃とし、系の内圧を0.3MPaに調整した後、エチレンオキサイド352gを添加した。その後、150℃で2時間保つことにより、重合体Aを得た。重合体Aは、以下の化学式(9)で示すことができる。
【0058】
【0059】
〔重合体B〕
エチレンオキサイドの添加量を6343gとした以外は、重合体Aと同様の製造方法にて、重合体Bを得た。重合体Bは、以下の化学式(10)で示すことができる。
【0060】
【0061】
〔重合体C〕
プロピレンオキサイドの添加量を6737gとし、エチレンオキサイドの添加量を529gとした以外は、重合体Aと同様の製造方法にて、重合体Cを得た。重合体Cは、以下の化学式(11)で示すことができる。
【0062】
【0063】
〔重合体D〕
エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの添加する順番を入れ替えた以外は、重合体Aと同様の製造方法にて、重合体Dを得た。重合体Dは、以下の化学式(12)で示すことができる。
【0064】
【0065】
〔重合体E〕
エチレンジアミンの代わりに1,8-オクタンジアミン144.3gを用いた以外は、重合体Aと同様の製造方法にて、重合体Eを得た。重合体Eは、以下の化学式(13)で示すことができる。
【0066】
【0067】
〔重合体F〕
エチレンジアミンの代わりにジエチレントリアミン103.2gを用い、プロピレンオキサイドの添加量を3485gとし、エチレンオキサイドの添加量を441gとした以外は、重合体Aと同様の製造方法にて、重合体Fを得た。重合体Fは、以下の化学式(14)で示すことができる。
【0068】
【0069】
〔重合体G〕
エチレンジアミンの代わりにアンモニア17.0gを用い、プロピレンオキサイドの添加量を696.9gとし、エチレンオキサイドの添加量を88.1gとした以外は、重合体Aと同様の製造方法にて、重合体Gを得た。重合体Gは、以下の化学式(15)で示すことができる。
【0070】
【0071】
〔重合体H〕
アンモニアの代わりにN-オクチルブチルアミン185.3gを用いた以外は、重合体Gと同様の製造方法にて、重合体Hを得た。重合体Hは、以下の化学式(16)で示すことができる。
【0072】
【0073】
〔重合体I〕
アンモニアの代わりにエチルアミン45.1gを用い、プロピレンオキサイドの添加量を1394gとし、エチレンオキサイドの添加量を176.2gとした以外は、重合体Gと同様の製造方法にて、重合体Iを得た。重合体Iは、以下の化学式(17)で示すことができる。
【0074】
【0075】
〔重合体J〕
アンモニアの代わりに5-トリデカンイミン198.4gを用いた以外は、重合体Gと同様の製造方法にて、重合体Jを得た。重合体Jは、以下の化学式(18)で示すことができる。
【0076】
【0077】
〔化合物1(比較例)〕
化合物1として用いたリグニンスルホン酸ナトリウムは、一般にAE減水剤としてセメントボードに添加される物質である。
【0078】
〔化合物2(比較例)〕
化合物2として用いたラウリルアルコールは、一般に紙用嵩高剤として製紙工程において添加される代表的な物質である。
【0079】
〔化合物3(比較例)〕
化合物3として用いたテトラブトキシシランは、一般に建材ボード製造時に泡を含ませることで嵩高効果が得られることが公知の物質である。
【0080】
〔化合物4(比較例)〕
化合物4として用いたステアリン酸ナトリウムは、一般に紙用嵩高剤として製紙工程において添加される物質である。
【0081】
上述の重合体や化合物を用いて、実施例および比較例の窯業サイディングボードを、以下のように作製した。なお、実施例および比較例におけるパルプスラリーのpHは、それぞれ以下の表に示すとおりであった。
【0082】
〔実施例1〕
古紙パルプを水中に3.7%含むパルプスラリー250gに、このパルプスラリーに対して20,000mg/kgとなるように重合体Aを加えて、5分間撹拌した。その後、水1250g、フライアッシュ(JIS A6201-II種相当品)75g、ポルトランドセメント45gを加えて1分間強撹拌し、セメント混合スラリーを得た。得られたセメント混合スラリーを、No.1濾紙を用いて、直径100mmサイズの濾過器で吸引濾過した。水分量が40%程度になるまで吸引濾過を行ない、濾過残渣のセメントケーキを回収した。回収されたセメントケーキを直径100mmサイズの型枠に入れ、18kgf/cm2の圧力でプレスし、成型した。成型物を50℃飽和水蒸気圧下で12時間程度静置した後、160℃飽和水蒸気圧下で5時間処理して水和反応により硬化させて養生を行なった。その後、120℃で24時間静置して乾燥させることにより、実施例1の窯業サイディングボードを得た。
【0083】
〔実施例2~8〕
以下の表1に記載された添加量となるように重合体Aを添加した以外は、実施例1と同様の製造方法にて、窯業サイディングボードを得た。
【0084】
〔実施例9~17〕
重合体Aに代えて重合体B~Jのいずれか一つを用いた以外は、実施例4と同様の製造方法にて、窯業サイディングボードを得た。
【0085】
〔実施例18〕
古紙パルプに代えてバージンパルプを用いた以外は、実施例4と同様の製造方法にて、窯業サイディングボードを得た。
【0086】
〔比較例1〕
重合体Aを添加しなかった以外は、実施例1と同様の製造方法にて、窯業サイディングボードを得た。
【0087】
〔比較例2~9〕
以下の表2に記載された添加量となるように表2に記載された化合物を添加した以外は、実施例1と同様の製造方法にて、窯業サイディングボードを得た。
【0088】
〔比較例10〕
古紙パルプに代えてバージンパルプを用いたうえで、重合体Aを添加しなかった以外は、実施例1と同様の製造方法にて、窯業サイディングボードを得た。
【0089】
〔比較例11~14〕
古紙パルプに代えてバージンパルプを用いたうえで、以下の表2に記載された添加量となるように表2に記載された化合物を添加した以外は、実施例1と同様な製造方法にて、窯業サイディングボードを得た。
【0090】
実施例および比較例の窯業サイディングボードを用いて、下記の方法に従い、各特性を求めた。
【0091】
<窯業サイディングボードの厚み>
窯業サイディングボードを120℃で24時間乾燥させ、乾燥後の窯業サイディングボードの厚み(ボード厚)を、ノギスを用いて測定した。
【0092】
<窯業サイディングボードの嵩高率>
比較例1を基準とした実施例1~17および比較例2~9の嵩高率と、比較例10を基準とした実施例18および比較例11~14の嵩高率の各々を、上記の方法で測定されたボード厚を用いて算出した。より具体的には、比較例1の窯業サイディングボードの厚みを100%とした場合の、実施例1~17および比較例2~9の窯業サイディングボードの厚みから、嵩高率を算出した。同様に、比較例10を基準とした実施例18および比較例11~14の嵩高率を算出した。
【0093】
以下に、得られた結果を示す。
【0094】
【0095】
【0096】
上述の結果から以下のことが分かった。実施例と比較例との比較から、実施形態の重合体を含有することにより、窯業サイディングボードの嵩高性が向上することが分かった。
【0097】
また、実施例1から実施例8を比較することにより、重合体Aの含有量が多いほど嵩高性に優れることが分かった。また、実施例4,9-17を比較することにより、アルキレンジアミンの窒素にアルキレンオキサイド鎖が付加している重合体A~Eのいずれか1つを含む実施例4,9-12のほうが、それ以外の重合体を含む実施例よりも、嵩高性に優れることが分かった。
【0098】
また、比較例2,3,11において添加されたリグニンスルホン酸ナトリウム(化合物1)は、一般にAE減水剤としてセメントボードに添加される物質である。リグニンスルホン酸ナトリウムのようなAE減水剤として用いられる物質では、窯業サイディングボードの嵩高性を向上させる効果は認められなかった。
【0099】
比較例4,5,12において添加されたラウリルアルコール(化合物2)は、一般に紙用嵩高剤として製紙工程において添加される代表的な物質である。ラウリルアルコールのような製紙用嵩高剤として用いられる物質では、窯業サイディングボードの嵩高性を向上させる効果は認められなかった。
【0100】
比較例6,7,13において添加されたテトラブトキシシラン(化合物3)は、一般に建材ボード製造時に泡を含ませることで嵩高効果が得られることが公知の物質である。しかしながら、テトラブトキシシランでは、窯業サイディングボードの嵩高性を向上させる効果は認められなかった。
【0101】
比較例8,9,14において添加されたステアリン酸ナトリウム(化合物4)は、一般に紙用嵩高剤として製紙工程において添加される物質である。しかしながら、ステアリン酸ナトリウムでは、窯業サイディングボードの嵩高性を向上させる効果は認められなかった。
【0102】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の建材ボードにおける繊維混入板用嵩高剤、建材ボードにおける繊維混入板、建材ボードにおける繊維混入板の製造方法によれば、嵩高性に優れる建材ボードにおける繊維混入板を提供できる。このため、嵩高効果による原料コストの削減等に貢献できる。