(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】連続鋳造設備の鋳片案内装置
(51)【国際特許分類】
B22D 11/128 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
B22D11/128 310A
B22D11/128 340L
B22D11/128 340F
B22D11/128 Z
B22D11/128 340J
(21)【出願番号】P 2021113285
(22)【出願日】2021-07-08
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】川口 浩志
(72)【発明者】
【氏名】前田 剛
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-021111(JP,U)
【文献】特開2020-121330(JP,A)
【文献】特開2012-086261(JP,A)
【文献】特開2003-112240(JP,A)
【文献】実開平06-009740(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/128
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳片の厚み方向に前記鋳片を挟むように対向配置された一対のフレームと、
前記一対のフレーム同士を接続する接続部材と、
前記フレームに形成された開口と、
前記開口に収納され、前記鋳片の引き抜き方向に積層されて、前記厚み方向に互いに摺動自在な複数の支持フレームと、
前記複数の支持フレームの各々に設けられた複数の軸受けと、
前記複数の支持フレーム毎に設けられ、前記複数の軸受けを介して前記支持フレームに支持された駆動ロールと、
前記駆動ロールを回転させるモータと、
前記鋳片に向かって前記複数の支持フレームの各々を押圧する押圧手段と、
を有し、
前記駆動ロールは、
前記鋳片に当接される駆動ロール本体と、
前記駆動ロール本体と前記モータとを接続し、前記駆動ロール本体よりも、前記駆動ロールの軸方向外側に突出する駆動軸と、
を有することを特徴とする連続鋳造設備の鋳片案内装置。
【請求項2】
接続部材は、前記引き抜き方向における前記フレームの両端部にそれぞれ設けられ、
前記開口は、前記引き抜き方向における領域であって前記接続部材同士の間の前記領域に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造設備の鋳片案内装置。
【請求項3】
前記軸受けは、前記支持フレームに着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の連続鋳造設備の鋳片案内装置。
【請求項4】
前記複数の軸受けは、前記駆動ロール本体の中央部を支持する中間軸受けを含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の連続鋳造設備の鋳片案内装置。
【請求項5】
前記支持フレームの前記引き抜き方向における両側面にそれぞれ設けられた突出部を有し、
前記突出部は、前記引き抜き方向に前記突出部と隣り合う部材に当接するように配置され、
前記鋳片の幅方向における前記突出部の位置は、前記支持フレームに対する前記中間軸受けの取付位置の前記幅方向における位置と略同等の位置であることを特徴とする請求項4に記載の連続鋳造設備の鋳片案内装置。
【請求項6】
前記フレームに形成され、前記開口である第1開口よりも前記引き抜き方向の外側に配置された第2開口と、
前記第2開口の前記引き抜き方向に対向する両面同士を繋ぐように設けられた連接部材と、
を有し、
前記鋳片の幅方向における前記連接部材の位置は、前記支持フレームに対する前記中間軸受けの取付位置の前記幅方向における位置と略同等の位置であることを特徴とする請求項4又は5に記載の連続鋳造設備の鋳片案内装置。
【請求項7】
前記押圧手段は、前記複数の支持フレームに個別に設けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の連続鋳造設備の鋳片案内装置。
【請求項8】
前記複数の支持フレームと前記押圧手段との間に配置され、前記押圧手段からの押圧力を前記複数の支持フレームの各々に分配する分配手段を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の連続鋳造設備の鋳片案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造設備において鋳片を案内する、連続鋳造設備の鋳片案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、鋳片を挟むように固定側フレームと移動側フレームとが対向配置され、これらの対向面に設けられた複数の鋳片案内ロールで、鋳片が案内される。複数の鋳片案内ロールには、固定側ロールと移動側ロールとが含まれる。また、複数の鋳片案内ロールには、駆動ロールが含まれる。固定側ロールは、固定側フレームおよび移動側フレームの各々の対向面にロールチョックで支持される。移動側ロールは、移動側フレームに設けられた固定側ロールに対して進退可能なロールチョックに装着されて、加圧ユニットにより支持される。駆動ロールは、モータにより回転される。加圧ユニットが固定側フレームに向かってロールチョックを押圧することで、駆動ロールが鋳片に押し付けられる。
【0003】
また、特許文献2には、上フレームの4隅部分に挿通されたコラムにより、下フレームに対して上フレームが昇降される構成のロールセグメント装置が開示されている。上フレームの昇降により、上フレームに設けられた上ロール群と、下フレームに設けられた下ロール群との間隔が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平4-64451号公報
【文献】特開2000-312955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、駆動ロールの軸方向の中間部にロールチョックがないため、駆動ロールの両端部で駆動ロールを支持せざるを得ない。そのため、駆動ロールに大きな曲げ応力が生じる。よって、幅の広いスラブを製造する場合など、駆動ロールへの負荷が大きいケースには本技術を適用できない。駆動ロールに生じる曲げ応力を緩和するために、駆動ロールを大径化すると、ロールピッチを小さくすることができない。ロールピッチが大きくなると、鋳片のバルジング量が大きくなり、鋳片の品質を損なう。
【0006】
これに対して、特許文献2では、上ロールおよび下ロールの各々が、両端部だけでなく中央部においても軸受けで支持されているので、駆動ロールに生じる曲げ応力を低減させることができる。しかしながら、特許文献2では、上フレームの4隅部分にコラムが挿通されているため、駆動ロールの駆動軸がコラムに干渉しないようにする必要がある。
【0007】
特許文献2では、上フレームに矩形の空間を隣接させて複数設けて、それぞれの空間に駆動ロールの支持フレームを収納し、それぞれの支持フレームにシリンダを設けることで、駆動ロールを隣接させて複数設けることは可能である。しかし、隣接する駆動ロールの間隔が大きくならざるを得ず、駆動ロールの駆動軸がコラムに干渉するので、設置可能な駆動ロールの本数が制約される。そのため、鋳片を保持する能力や鋳片を引き抜く能力が不十分である。
【0008】
本発明の目的は、鋳片を保持する能力、および、鋳片を引き抜く能力を高めることが可能な、連続鋳造設備の鋳片案内装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、鋳片の厚み方向に前記鋳片を挟むように対向配置された一対のフレームと、前記一対のフレーム同士を接続する接続部材と、前記フレームに形成された開口と、前記開口に収納され、前記鋳片の引き抜き方向に積層されて、前記厚み方向に互いに摺動自在な複数の支持フレームと、前記複数の支持フレームの各々に設けられた複数の軸受けと、前記複数の支持フレーム毎に設けられ、前記複数の軸受けを介して前記支持フレームに支持された駆動ロールと、前記駆動ロールを回転させるモータと、前記鋳片に向かって前記複数の支持フレームの各々を押圧する押圧手段と、を有し、前記駆動ロールは、前記鋳片に当接される駆動ロール本体と、前記駆動ロール本体と前記モータとを接続し、前記駆動ロール本体よりも、前記駆動ロールの軸方向外側に突出する駆動軸と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、フレームに形成された開口に、鋳片の引き抜き方向に積層された複数の支持フレームが、鋳片の厚み方向に互いに摺動自在に収納されている。これにより、鋳片の引き抜き方向の狭い範囲に複数の駆動ロールを配置することができる。そして、鋳片に向かって複数の支持フレームの各々を押圧することで、複数の駆動ロールの駆動ロール本体の各々を鋳片に押し付けることができる。複数の駆動ロールで鋳片を案内することで、鋳片を保持する能力、および、鋳片を引き抜く能力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図11】
図4のA-A断面図であり、1つの支持フレームで2つの駆動ロールをそれぞれ支持した場合の構成を示す図である。
【
図12】
図4のA-A断面図であり、2つの駆動ロールの鋳片の厚み方向への進出量が別々の状態を示す図である。
【
図13】変形例における
図4のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
(従来の鋳片案内装置の構成)
まず、従来の連続鋳造設備の鋳片案内装置(鋳片案内装置)について説明する。鋳片案内装置は、連続鋳造設備において鋳片を案内するものである。従来の鋳片案内装置51の上面図である
図1、および、従来の鋳片案内装置51の側面図である
図2に示すように、鋳片案内装置51は、一対のフレーム2と、接続部材3と、を有している。
【0014】
一対のフレーム2は、鋳片30の厚み方向(図中左右方向)に鋳片30を挟むように対向配置されている。一対のフレーム2のうち、図中右側のフレーム2が固定フレーム2aであり、図中左側のフレーム2が移動フレーム2bである。移動フレーム2bは、間隔調整シリンダ10により、固定フレーム2aに対して鋳片30の厚み方向に進退される。
【0015】
接続部材3は、一対のフレーム2同士を接続している。
図1に示すように、接続部材3は、鋳片30の幅方向(図中上下方向)におけるフレーム2の両端部にそれぞれ設けられている。また、
図2に示すように、接続部材3は、鋳片30の引き抜き方向(図中上下方向)におけるフレーム2の両端部にそれぞれ設けられている。間隔調整シリンダ10は、接続部材3毎に設けられている。
【0016】
図1のE-E断面図である
図3に示すように、鋳片案内装置51は、開口54と、支持フレーム5と、を有している。開口54は、一対のフレーム2の両方に2つずつ形成されている。開口54の各々には、支持フレーム5が1つずつ収納されている。
【0017】
図3に示すように、鋳片案内装置51は、フリーロール6と、駆動ロール7と、軸受け12と、軸受け13と、を有している。フリーロール6、駆動ロール7、軸受け12、および、軸受け13は、一対のフレーム2の各々に設けられている。
【0018】
フリーロール6および駆動ロール7は、鋳片30を案内する鋳片案内ロールである。フリーロール6は、モータで回転されない非駆動ロールである。一方、駆動ロール7は、モータで回転される。
図3に示す従来例では、鋳片30の引き抜き方向の上流側(図中上側)から下流側(図中下側)に向かって、2つのフリーロール6、1つの駆動ロール7、1つのフリーロール6、1つの駆動ロール7、1つのフリーロール6の順番で、フリーロール6と駆動ロール7とが配置されている。なお、フリーロール6の数はこれに限定されない。
【0019】
軸受け12は、フレーム2に複数設けられている。フリーロール6の各々は、複数の軸受け12を介してフレーム2に支持されている。
【0020】
軸受け13は、支持フレーム5の各々に複数設けられている。駆動ロール7は、支持フレーム5毎に設けられ、複数の軸受け13を介して支持フレーム5に支持されている。
【0021】
図3に示すように、鋳片案内装置51は、油圧シリンダ59を有している。一対のフレーム2の各々において、油圧シリンダ59は、2つの支持フレーム5に個別に設けられている。
図1に示すように、1つの支持フレーム5に対して、2個で1組の油圧シリンダ59が設けられている。これら油圧シリンダ59は、鋳片30の幅方向における支持フレーム5の両端部にそれぞれ設けられている。
【0022】
図3に示すように、一対のフレーム2の各々において、2組の油圧シリンダ59は、取付部材65にそれぞれ設けられている。取付部材65は、2つの開口54を跨いで両端部がフレーム2に接続されている。油圧シリンダ59のシリンダロッドは、支持フレーム5に接続されている。各組の油圧シリンダ59は、鋳片30に向かって支持フレーム5を押圧する。
【0023】
このように、従来の鋳片案内装置51においては、
図3に示すように、駆動ロール7を複数設ける場合、フレーム2に複数の開口54を形成して、支持フレーム5を個別に開口54に収納する。ところが、
図2に示すように、図中上から5つ目の鋳片案内ロールである駆動ロール7の駆動軸が、図中下側の接続部材3に干渉する。よって、この構成では、上から5つ目の鋳片案内ロールを駆動ロール7にすることができない。上から1つ目、2つ目、6つ目の鋳片案内ロールについても同様である。
【0024】
そこで、上から3つ目と4つ目の鋳片案内ロールを駆動ロール7にすることが考えられる。しかし、構造上、支持フレーム5を隣接させて配置することができない。フレーム2における開口54同士の間の部分が薄くなり、フレーム2の強度を保てなくなるからである。よって、図中上側の接続部材3と図中下側の接続部材3との間には、左右一対の駆動ロール7、または、左右どちらかの駆動ロール7しか配置できない。
【0025】
(鋳片案内装置の構成)
次に、本実施形態による連続鋳造設備の鋳片案内装置(鋳片案内装置)について説明する。鋳片案内装置1の上面図である
図4、および、鋳片案内装置1の側面図である
図5に示すように、鋳片案内装置1は、従来の鋳片案内装置51と同様に、一対のフレーム2と、接続部材3と、を有している。
【0026】
図4のA-A断面図である
図6に示すように、鋳片案内装置1は、第1開口(開口)4と、支持フレーム5と、を有している。本実施形態において、第1開口4は、一対のフレーム2の両方に1つずつ形成されている。なお、第1開口4は、固定フレーム2aのみに形成されていてもよいし、移動フレーム2bのみに形成されていてもよい。また、フレーム2に形成される第1開口4の数は2以上であってもよい。
【0027】
図5のB-B断面図である
図7に示すように、第1開口4は、鋳片30の引き抜き方向(図中上下方向)における領域であって、接続部材3同士の間の領域に配置されている。
【0028】
図6に示すように、第1開口4には、複数の支持フレーム5が収納されている。複数の支持フレーム5は、鋳片30の引き抜き方向に積層されている。本実施形態では、固定フレーム2aに形成された第1開口4と、移動フレーム2bに形成された第1開口4とに、それぞれ2つの支持フレーム5が収納されている。固定フレーム2aに形成された第1開口4に収納された2つの支持フレーム5は、鋳片30の引き抜き方向(図中上下方向)に積層されている。同様に、移動フレーム2bに形成された第1開口4に収納された2つの支持フレーム5は、鋳片30の引き抜き方向に積層されている。なお、1つの第1開口4に、3つ以上の支持フレーム5が収納されていてもよい。
【0029】
図7に示すように、鋳片30の幅方向(図中左右方向)において、2つの支持フレーム5の両端部同士は、ウェアプレート(図示せず)を介して当接している。ウェアプレートは、耐摩耗材料からなり、支持フレーム5同士の接触による支持フレーム5の摩耗を防止するものである。これにより、第1開口4内で積層された2つの支持フレーム5は、鋳片30の厚み方向(紙面に直交する方向)に互いに摺動自在になっている。
【0030】
また、鋳片30の幅方向における支持フレーム5の両端部と、第1開口4の内面とは、鋳片30の引き抜き方向に、ウェアプレートを介して当接している。これにより、第1開口4内に配置された支持フレーム5は、第1開口4に対して、鋳片30の厚み方向(紙面に直交する方向)に摺動自在になっている。
【0031】
鋳片30の引き抜き方向において、第1開口4に収納された2つの支持フレーム5の間には、ノズル用開口11が形成されている。また、第1開口4に収納された図中上側の支持フレーム5とフレーム2との間、および、第1開口4に収納された図中下側の支持フレーム5とフレーム2との間にも、ノズル用開口11がそれぞれ形成されている。これらノズル用開口11には、図示しないノズルに接続された配管が通されている。ノズルは、鋳片30とフレーム2との間に配置され、隣接する鋳片案内ロールの間から、鋳片30に向かって冷却水を噴霧する。
【0032】
なお、
図5のB-B断面図である
図8に示すように、第1開口4は、2つの支持フレーム5の各々の両端部を別々に保持するような形状にされていてもよい。この場合、2つの支持フレーム5の両端部同士は当接していない。
【0033】
図6に示すように、鋳片案内装置1は、従来の鋳片案内装置51と同様に、フリーロール6と、駆動ロール7と、軸受け12と、軸受け13と、を有している。本実施形態においては、鋳片30の引き抜き方向の上流側から下流側に向かって、2つのフリーロール6、2つの駆動ロール7、2つのフリーロール6の順番で、フリーロール6と駆動ロール7とが配置されている。つまり、上から3つ目と4つ目の鋳片案内ロールが駆動ロール7である。なお、フリーロール6の数はこれに限定されない。
【0034】
駆動ロール7には、鋳片30の引き抜き方向に負荷が作用する。しかし、支持フレーム5が第1開口4に保持されているため、この負荷はフレーム2で受け止められる。
【0035】
図5のC-C断面図である
図9に示すように、鋳片案内装置1は、モータ8を有している。また、駆動ロール7は、駆動ロール本体7aと、駆動軸7bとを有している。駆動ロール本体7aは、鋳片30に当接される。駆動軸7bは、駆動ロール本体7aよりも、駆動ロール7の軸方向外側に突出している。駆動軸7bは、駆動ロール本体7aとモータ8とを接続している。具体的には、駆動軸7bは、ユニバーサルスピンドル(伝達軸)14を介して、モータ8の出力軸8aに接続されている。モータ8は駆動ロール7を回転させる。なお、モータ8は、実際には、
図9に図示する位置よりもフレーム2から離れた位置に配置されている。
【0036】
図5のD-D断面図である
図10に示すように、2つの駆動ロール7の駆動軸7bの各々、および、2つのユニバーサルスピンドル14の各々は、接続部材3に干渉しない。これは、
図7に示すように、2つの支持フレーム5を収納する第1開口4が、鋳片30の引き抜き方向における領域であって、接続部材3同士の間の領域に配置されているからである。このような位置に第1開口4を配置することで、接続部材3に干渉しないように複数の駆動ロール7を配置することができる。
【0037】
図9および
図10に示すように、駆動ロール7を支持する軸受け13は、支持フレーム5における鋳片30の幅方向の両端部と中央部とにそれぞれ設けられている。駆動ロール7の駆動ロール本体7aの中央部は、他の部分よりも小径の小径部となっており、この小径部が中間軸受け13aで支持されている。
【0038】
なお、駆動ロール本体7aは、駆動ロール7の軸方向に複数の分割ロールに分割されていてもよい。この場合、分割ロール同士の間に回転力を伝達する機構(キーとスプラインなど)が必要となる。
【0039】
ここで、駆動ロール7を支持する軸受け13は、支持フレーム5に着脱可能に取り付けられている。軸受け13は、鋳片30に接近して配置されるので、損耗が激しい。そこで、軸受け13を、支持フレーム5に対して着脱可能にすることで、損耗した軸受け13を交換することができる。
【0040】
図10に示すように、フリーロール6を支持する軸受け12もまた、フレーム2における鋳片30の幅方向の両端部と中央部とにそれぞれ設けられている。フリーロール6の中央部は、他の部分よりも小径の小径部となっており、この小径部が中間軸受け12aで支持されている。
【0041】
なお、フリーロール6は、フリーロール6の軸方向に複数の分割ロールに分割されていてもよい。また、フリーロール6を支持する軸受け12も、フレーム2に着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0042】
ここで、
図10に示すように、鋳片30の幅方向の中央において、中間軸受け12aと中間軸受け13aとは、鋳片30の引き抜き方向に一直線に並ばないように、ジグザグに配置されている。中間軸受け12aと中間軸受け13aとが鋳片30の引き抜き方向に一直線に並んでいる場合、鋳片30の幅方向において、鋳片30のうち、中間軸受け12aおよび中間軸受け13aと同じ位置に位置する部分が、鋳片案内ロールに全く支持されないまま鋳片案内装置1を通過する。その結果、この部分にバルジング(鋳片30内部の液相の未凝固部の静圧によって鋳片が膨らむ現象)が生じて、鋳片30の品質が損なわれる。そこで、中間軸受け12aと中間軸受け13aとを鋳片30の引き抜き方向にジグザグに配置することで、これを避けることができる。
【0043】
図6に示すように、鋳片案内装置1は、油圧シリンダ(押圧手段)9を有している。本実施形態において、油圧シリンダ9は、一対のフレーム2の各々において、2つの支持フレーム5に個別に設けられている。
図9に示すように、1つの支持フレーム5に対して、2個で1組の油圧シリンダ9が設けられている。これら油圧シリンダ9は、鋳片30の幅方向における支持フレーム5の両端部にそれぞれ設けられている。
【0044】
図6に示すように、一対のフレーム2の各々において、2組の油圧シリンダ9は、取付部材15にそれぞれ設けられている。取付部材15は、第1開口4を跨いで両端部がフレーム2に接続されている。油圧シリンダ9のシリンダロッドは、支持フレーム5に接続されている。各組の油圧シリンダ9は、鋳片30に向かって支持フレーム5を押圧する。これにより、複数の駆動ロール本体7aの各々を鋳片30に押し付けることができる。そして、複数の駆動ロール7で鋳片30を案内することで、鋳片30を保持する能力、および、鋳片30を引き抜く能力を高めることができる。
【0045】
また、上述したように、第1開口4内で積層された複数の支持フレーム5は、鋳片30の厚み方向に互いに摺動自在である。これにより、鋳片30に向かって複数の支持フレーム5の各々を好適に押圧することができるので、複数の駆動ロール本体7aの各々を鋳片30に好適に押し付けることができる。
【0046】
また、
図7に示すように、フレーム2に形成された第1開口4は、鋳片30の引き抜き方向における領域であって接続部材3同士の間の領域に配置されている。接続部材3同士の間に第1開口4が位置しているので、この第1開口4に複数の支持フレーム5を収納しても、複数の駆動ロール7の駆動軸7bの各々が接続部材3に干渉しない。これにより、複数の駆動ロール7を接続部材3に干渉しないように配置することができる。
【0047】
また、
図10に示すように、駆動ロール本体7aの中央部が、中間軸受け13aで支持されている。駆動ロール本体7aの中央部を中間軸受け13aで支持することで、駆動ロール本体7aに生じる曲げ応力を小さくすることができる。その結果、駆動ロール本体7aを小径化し、ロールピッチ(鋳片30の引き抜き方向に隣り合う駆動ロール本体7a同士の回転中心間の距離)を短くすることができる。ロールピッチを短くすることで、鋳片30のバルジング量を低減させることができるので、鋳片30の品質を向上させることができる。
【0048】
ここで、
図4のA-A断面図である
図11に示すように、一対のフレーム2の各々において、第1開口4に1つの支持フレーム55を収納し、この支持フレーム55で、鋳片30の引き抜き方向に並んだ2つの駆動ロール7をそれぞれ支持することが考えられる。しかし、この場合、鋳片30に向かって油圧シリンダ9で支持フレーム55を押圧すると、鋳片30の厚み方向への2つの駆動ロール本体7aの進出量が同じになる。そのため、ロールアライメントの不均一があり、鋳片30の表面が理想的な面ではない場合には、どちらかの駆動ロール本体7aが鋳片30に当接しない可能性がある。この場合、鋳片30を保持する能力、および、鋳片30を引き抜く能力が半減する。
【0049】
そこで、
図4のA-A断面図である
図12に示すように、一対のフレーム2の各々において、第1開口4に2つの支持フレーム5を収納し、各組の油圧シリンダ9で支持フレーム5を個別に押圧する。そうすれば、図示するように、鋳片30の厚み方向への2つの駆動ロール本体7aの進出量が別々になるので、鋳片30の表面が理想的な面ではない場合であっても、どちらの駆動ロール本体7aも鋳片30に当接する。これにより、複数の駆動ロール本体7aの各々を鋳片30に好適に押し付けることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、固定フレーム2aおよび移動フレーム2bの各々に駆動ロール7を2つずつ設け、合計4つの駆動ロール7で鋳片30を案内することで、鋳片30を保持する能力、および、鋳片30を引き抜く能力を高めているが、駆動ロール7を4つ設けるほど、鋳片30を保持する能力、および、鋳片30を引き抜く能力が必要でない場合には、固定フレーム2aおよび移動フレーム2bのどちらか一方のみに複数の駆動ロール7を設けてもよい。
【0051】
図7に示すように、鋳片案内装置1は、突出部16を有している。突出部16は、鋳片30の引き抜き方向における支持フレーム5の両側面にそれぞれ2つずつ設けられている。突出部16は、支持フレーム5と一体であってもよいし、別体であってもよい。突出部16は、鋳片30の引き抜き方向に突出部16と隣り合う部材に当接するように配置されている。つまり、図中上側の支持フレーム5において、上側の側面から突出した2つの突出部16は、ウェアプレートを介してノズル用開口11の内面にそれぞれ当接しており、下側の側面から突出した2つの突出部16は、ウェアプレートを介して、図中下側の支持フレーム5から突出した2つの突出部16にそれぞれ当接している。また、図中下側の支持フレーム5において、上側の側面から突出した2つの突出部16は、ウェアプレートを介して、図中上側の支持フレーム5から突出した突出部16にそれぞれ当接しており、下側の側面から突出した2つの突出部16は、ウェアプレートを介してノズル用開口11の内面に当接している。
【0052】
図9に示すように、これら突出部16は、鋳片30の幅方向における支持フレーム5の中央部にそれぞれ配置されている。突出部16は、鋳片30の厚み方向に2つずつ設けられている。鋳片30の幅方向における突出部16の位置は、支持フレーム5に対する中間軸受け13aの取付位置(
図10参照)の、鋳片30の幅方向における位置と略同等の位置である。
【0053】
中間軸受け13aには、鋳片30の引き抜き方向の負荷が作用する。その結果、支持フレーム5を中央部から鋳片30の引き抜き方向に変形させる力が支持フレーム5に作用する。しかし、鋳片30の幅方向において、中間軸受け13aの取付位置と略同等の位置に突出部16を位置させることで、鋳片30の引き抜き方向に対して、突出部16を介して支持フレーム5が周囲の部材で拘束される。これにより、鋳片30の引き抜き方向への支持フレーム5の変形を抑えることができる。
【0054】
また、
図7に示すように、鋳片案内装置1は、第2開口17と、連接部材18と、を有している。第2開口17は、第1開口4よりも鋳片30の引き抜き方向の外側に配置されている。本実施形態では、第2開口17は、鋳片30の引き抜き方向において、第1開口4の両側にそれぞれ形成されている。第2開口17には、上述のノズル用開口11と同様に、図示しないノズルに接続された配管が通されている。
【0055】
連接部材18は、第2開口17内に2つ配置されている。連接部材18は、第2開口17の、鋳片30の引き抜き方向に対向する両面同士を繋ぐように設けられている。連接部材18は、フレーム2と一体であってもよいし、別体であってもよい。鋳片30の幅方向における連接部材18の位置は、支持フレーム5に対する中間軸受け13の取付位置の、鋳片30の幅方向における位置と略同等の位置である。鋳片30の引き抜き方向において、突出部16と連接部材18とは、一直線に並んでいる。
【0056】
中間軸受け13aには、鋳片30の引き抜き方向の負荷が作用する。その結果、フレーム2を中央部から鋳片30の引き抜き方向に変形させる力がフレーム2に作用する。しかし、鋳片30の幅方向において、中間軸受け13aの取付位置と略同等の位置に連接部材18を位置させることで、鋳片30の引き抜き方向に対するフレーム2の強度が向上される。これにより、鋳片30の引き抜き方向へのフレーム2の変形を抑えることができる。
【0057】
(変形例)
なお、
図4のA-A断面図である
図13に示すように、一対のフレーム2の各々において、油圧シリンダ9が一組ずつ設けられ、2つの支持フレーム5と油圧シリンダ9との間に分配手段19が配置された構成であってもよい。分配手段19は、三角形状の部材であり、図中上側の支持フレーム5に図中上側の端部がピンで連結されているとともに、図中下側の支持フレーム5に図中下側の端部がピンで連結されている。分配手段19における、図中上側の端部と図中下側の端部との間に位置する中央側端部は、油圧シリンダ9のシリンダロッドにピンで連結されている。分配手段19は、中央側端部のピンを中心に回動自在である。分配手段19は、油圧シリンダ9からの押圧力を2つの支持フレーム5の各々に分配する。このような構成であっても、鋳片30の厚み方向への2つの駆動ロール本体7aの進出量が別々になるので、鋳片30の表面が理想的な面ではない場合であっても、どちらの駆動ロール本体7aも鋳片30に当接する。これにより、複数の駆動ロール本体7aの各々を鋳片30に好適に押し付けることができる。
【0058】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る鋳片案内装置1によると、
図6に示すように、フレーム2に形成された第1開口4に、鋳片30の引き抜き方向に積層された複数の支持フレーム5が、鋳片の厚み方向に互いに摺動自在に収納されている。これにより、鋳片30の引き抜き方向の狭い範囲に複数の駆動ロール7を配置することができる。そして、鋳片30に向かって複数の支持フレーム5の各々を押圧することで、複数の駆動ロール7の駆動ロール本体7aの各々を鋳片30に押し付けることができる。複数の駆動ロール7で鋳片30を案内することで、鋳片30を保持する能力、および、鋳片30を引き抜く能力を高めることができる。
【0059】
また、
図7に示すように、フレーム2に形成された第1開口4は、鋳片30の引き抜き方向における領域であって接続部材3同士の間の領域に配置されている。接続部材3同士の間に第1開口4が位置しているので、この第1開口4に複数の支持フレーム5を収納しても、複数の駆動ロール7の駆動軸7bの各々が接続部材3に干渉しない。これにより、複数の駆動ロール7を接続部材3に干渉しないように配置することができる。
【0060】
また、
図9に示すように、軸受け13は、支持フレーム5に着脱可能に取り付けられている。軸受け13は、鋳片30に接近して配置されるので、損耗が激しい。そこで、軸受け13を、支持フレーム5に対して着脱可能にすることで、損耗した軸受け13を交換することができる。
【0061】
また、
図9、
図10に示すように、駆動ロール本体7aの中央部が、中間軸受け13aで支持されている。駆動ロール本体7aの中央部を中間軸受け13aで支持することで、駆動ロール本体7aに生じる曲げ応力を小さくすることができる。その結果、駆動ロール本体7aを小径化し、ロールピッチ(鋳片30の引き抜き方向に隣り合う駆動ロール本体7a同士の回転中心間の距離)を短くすることができる。ロールピッチを短くすることで、鋳片30のバルジング量を低減させることができるので、鋳片30の品質を向上させることができる。
【0062】
また、
図7に示すように、支持フレーム5の、鋳片30の引き抜き方向における両側面にそれぞれ設けられた突出部16は、鋳片30の引き抜き方向に突出部16と隣り合う部材に当接するように配置されている。鋳片30の幅方向における突出部16の位置は、支持フレーム5に対する中間軸受け13aの取付位置の鋳片30の幅方向における位置と略同等の位置である。このような位置に突出部16を位置させることで、鋳片30の引き抜き方向に対して、突出部16を介して支持フレーム5が周囲の部材で拘束される。これにより、鋳片30の引き抜き方向への支持フレーム5の変形を抑えることができる。
【0063】
また、
図7に示すように、第2開口17の、鋳片30の引き抜き方向に対向する両面同士を繋ぐように、連接部材18が設けられている。鋳片30の幅方向における連接部材18の位置は、支持フレーム5に対する中間軸受け13aの取付位置の鋳片30の幅方向における位置と略同等の位置である。このような位置に連接部材18を位置させることで、鋳片30の引き抜き方向に対するフレーム2の強度が向上される。これにより、鋳片30の引き抜き方向へのフレーム2の変形を抑えることができる。
【0064】
また、
図12に示すように、油圧シリンダ9が、複数の支持フレーム5に個別に設けられている。ロールアライメントの不均一があり、鋳片30の表面が理想的な面ではない場合には、いずれかの駆動ロール本体7aが鋳片30に当接しない可能性がある。そこで、油圧シリンダ9で複数の支持フレーム5を個別に押圧することで、鋳片30の厚み方向への複数の駆動ロール本体7aの進出量が別々になる。これにより、複数の駆動ロール本体7aの各々を鋳片30に好適に押し付けることができる。
【0065】
なお、
図13の変形例のように、分配手段19によって、油圧シリンダ9からの押圧力が複数の支持フレーム5の各々に分配されてもよい。ロールアライメントの不均一があり、鋳片30の表面が理想的な面ではない場合には、いずれかの駆動ロール本体7aが鋳片30に当接しない可能性がある。そこで、油圧シリンダ9からの押圧力を複数の支持フレーム5の各々に分配することで、鋳片30の厚み方向への複数の駆動ロール本体7aの進出量が別々になる。これにより、複数の駆動ロール本体7aの各々を鋳片30に好適に押し付けることができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0067】
1 鋳片案内装置
2 フレーム
3 接続部材
4 第1開口(開口)
5 支持フレーム
6 フリーロール
7 駆動ロール
7a 駆動ロール本体
7b 駆動軸
8 モータ
9 油圧シリンダ(押圧手段)
10 間隔調整シリンダ
11 ノズル用開口
12,13 軸受け
12a,13a 中間軸受け
14 ユニバーサルスピンドル
15 取付部材
16 突出部
17 第2開口
18 連接部材
19 分配手段
30 鋳片
51 従来の鋳片案内装置
54 開口
55 支持フレーム
59 油圧シリンダ
65 取付部材