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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】ケーソン下部構造およびその構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 23/00 20060101AFI20240606BHJP
   E02D 15/06 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
E02D23/00 C
E02D15/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021132956
(22)【出願日】2021-08-17
(65)【公開番号】P2023027690
(43)【公開日】2023-03-02
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 一弥
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 智
(72)【発明者】
【氏名】小松 祥子
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-57267(JP,A)
【文献】特公昭49-44483(JP,B1)
【文献】特開2006-274565(JP,A)
【文献】特開2018-131746(JP,A)
【文献】登録実用新案第371701(JP,Z2)
【文献】実開昭57-184156(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第3418452(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 19/00-25/00
E02D 15/00-15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーソン下部に形成される作業室の天井スラブと、前記天井スラブを上下に貫通するシャフト連通孔を閉塞するボトムドアとを備えるケーソン下部構造であって、
前記ボトムドアは、複数に分割可能に形成されたドア本体部と、前記ドア本体部に形成された貫通孔の周囲に上方に向けて立設された筒状の人孔部と、前記人孔部の上開口部を閉塞する蓋部とを備える
ことを特徴とするケーソン下部構造。
【請求項2】
前記ドア本体部は、前記天井スラブの下面に密着するように固定される
ことを特徴とする請求項1に記載のケーソン下部構造。
【請求項3】
前記シャフト連通孔の内周面に沿って設けられたリング状の取付治具をさらに備え、
前記ドア本体部は、前記シャフト連通孔の内側で前記取付治具の上に載置した状態で固定される
ことを特徴とする請求項1に記載のケーソン下部構造。
【請求項4】
前記蓋部に、開閉弁が設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のケーソン下部構造。
【請求項5】
ケーソン下部の作業室の天井スラブにボトムドアを取り付けるケーソン下部構造の構築方法であって、
複数に分割されたドア本体部をケーソン下部の作業室側から前記作業室の天井スラブに固定し、前記天井スラブを上下に貫通するシャフト連通孔を塞ぐ固定工程と、
前記作業室内の作業員が前記ドア本体部に設けられた人孔部を通じて前記天井スラブの上側に退出する退出工程と、
前記人孔部の上開口部を蓋部で閉塞する蓋部設置工程と、を備えた
ことを特徴とするケーソン下部構造の構築方法。
【請求項6】
前記蓋部に開閉弁を設け、
前記開閉弁から空気を排出しながら前記人孔部内に中埋めコンクリートを打設し、前記開閉弁から前記中埋めコンクリートが出たら打設を停止し前記開閉弁を閉じるコンクリート打設工程をさらに備えた
ことを特徴とする請求項5に記載のケーソン下部構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーソン下部構造およびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューマチックケーソンの下部には作業室が形成されている。作業室の天井スラブ(ケーソンの底版)には、作業室への出入口が設けられており、この出入口にはボトムドアが設けられている。ボトムドアとしては、種々のものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1のボトムドアは、上面に操作チェーン用挿通孔が形成されたブラケットを備えている。上方から操作チェーンを挿通孔に挿通して、ボトムドアを作業室の天井スラブに圧接するまで吊り上げて、天井スラブの貫通孔の下側周縁部に密着させるようになっている。
特許文献2のボトムドアには、マンホールと下方に突出する開閉蓋が設けられており、作業員はボトムドアを作業室側から固定した後に、開いた開閉蓋からマンホールを通って退出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-317059号公報
【文献】特開2008-57267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のボトムドアでは、ボトムドア本体を操作チェーンで吊り上げて貫通孔の下側周縁部に押し付けているので、気密性が低いという問題があった。また、特許文献2のボトムドアでは、マンホールの開閉蓋がボトムドア本体から下方に突出しているので、ボトムドアの閉鎖後に作業室へ中埋めコンクリートを打設する際に、開閉蓋の周囲にエアだまりができる虞がある。
このような観点から、本発明は、天井スラブとドア本体部との間に気密性を確保できるとともに、中詰めコンクリートを密実に形成できるケーソン下部構造おびその構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するための本発明は、ケーソン下部に形成される作業室の天井スラブと、前記天井スラブを上下に貫通するシャフト連通孔を閉塞するボトムドアとを備えるケーソン下部構造である。前記ボトムドアは、複数に分割可能に形成されたドア本体部と、前記ドア本体部に形成された貫通孔の周囲に上方に向けて立設された筒状の人孔部と、前記人孔部の上開口部を閉塞する蓋部とを備えることを特徴とする。
本発明のケーソン下部構造によれば、ドア本体部を作業室側からボルト等により強固に固定した後に、作業員が人孔部から天井スラブに退出して、天井スラブの上側から蓋部を強固に固定することができる。これによって、天井スラブとドア本体部との間の気密性を確保することができる。さらに、人孔部は、ドア本体部より上方に突出しているので、中埋めコンクリートを打設する際に、作業室内の空気が人孔部に集まり、天井スラブの上方に逃がすことができる。よって、コンクリート内にエアだまりができず、中詰めコンクリートを密実に形成することができる。
【0006】
本発明のケーソン下部構造においては、前記ドア本体部は、前記天井スラブの下面に密着するように固定されるものが好ましい。このような構成によれば、ドア本体部を天井スラブの下面にボルト止め等で強固に固定することで天井スラブとドア本体部との間の気密性を確保することができる。
本発明のケーソン下部構造においては、前記シャフト連通孔の内周面に沿って設けられたリング状の取付治具をさらに備え、前記ドア本体部は、前記シャフト連通孔の内側で前記取付治具の上に載置した状態で固定されるものが好ましい。このような構成によれば、ドア本体部を取付治具にボルト止め等で強固に固定することで天井スラブとドア本体部との間の気密性を確保することができる。
本発明のケーソン下部構造においては、前記蓋部に、開閉弁が設けられているものが好ましい。このような構成によれば、中埋めコンクリートを打設する際に、蓋部の開閉弁を開けることで、効率的に作業室内の空気を天井スラブの上方に逃がすことができる。また、中埋めコンクリートの打設後に開閉弁から注入材を注入すれば、人孔部内の空気を確実に天井スラブの上方に逃がすことができる。
【0007】
前記課題を解決するための第二の本発明は、ケーソン下部の作業室の天井スラブにボトムドアを取り付けるケーソン下部構造の構築方法である。かかるケーソン下部構造の構築方法は、複数に分割されたドア本体部をケーソン下部の作業室側から前記作業室の天井スラブに固定し、前記天井スラブを上下に貫通するシャフト連通孔を塞ぐ固定工程と、前記作業室内の作業員が前記ドア本体部に設けられた人孔部を通じて前記天井スラブの上側に退出する退出工程と、前記人孔部の上開口部を蓋部で閉塞する蓋部設置工程と、を備えたことを特徴とする。
本発明のケーソン下部構造の構築方法によれば、固定工程でドア本体部を作業室側からボルト等により強固に固定した後に、退出工程で作業員が人孔部から天井スラブに退出して、蓋部設置工程で天井スラブの上側から蓋部を強固に固定することができる。これによって、天井スラブとドア本体部との間の気密性を確保することができる。さらに、中埋めコンクリートを打設する際に、作業室内の空気がドア本体部より上方に突出した人孔部に集まり、天井スラブの上方に逃がすことができる。よって、コンクリート内にエアだまりができず、中詰めコンクリートを密実に形成することができる。
本発明のケーソン下部構造の構築方法においては、前記蓋部に開閉弁を設け、前記開閉弁から空気を排出しながら前記作業室内に中埋めコンクリートを打設し、前記開閉弁から前記中埋めコンクリートが出たら打設を停止し前記開閉弁を閉じるコンクリート打設工程をさらに備えたことが好ましい。このような方法によれば、中埋めコンクリートを打設する際に、開閉弁から効率的に作業室内の空気を天井スラブの上方に逃がすことができる。さらに、中埋めコンクリートが人孔部の上部まで打設されたことを目視で確認できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のケーソン下部構造おびその構築方法によれば、天井スラブとドア本体部との間に気密性を確保できるとともに、中詰めコンクリートを密実に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一の実施形態に係るケーソン下部構造を備えたニューマチックケーソンを示した断面図である。
図2】本発明の第一の実施形態に係るケーソン下部構造のボトムドアを示した分解平面図である。
図3】(a)は本発明の第一の実施形態に係るケーソン下部構造の構築方法の固定工程を説明するための断面図、(b)は蓋部設置工程を説明するための断面図である。
図4】本発明の第一の実施形態に係るケーソン下部構造の構築方法のコンクリート打設工程を説明するための断面図である。
図5】本発明の第一の実施形態に係るケーソン下部構造を備えたニューマチックケーソンを含むコンクリート構造体を示した断面図である。
図6】本発明の第二の実施形態に係るケーソン下部構造のボトムドアの設置状態を示した要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第一の実施形態に係るケーソン下部構造およびその構築方法について、添付した図面を参照しながら説明する。図1は、ケーソン下部構造を備えたニューマチックケーソンを示した断面図、図2は、ケーソン下部構造のボトムドアを示した分解平面図である。
図1に示すように、ニューマチックケーソン(以下「ケーソン」という)1の下部には、作業室2が形成されている。作業室2に地下水圧に見合う圧縮空気を送り込むことにより、地下水を排除し、作業室2の天井スラブ3に走行可能に設けられた天井走行式ショベル(図示せず)で掘削しながら、ケーソン1を沈下させる。天井スラブ3の上部には、マテリアルシャフト4とマンシャフト5が設けられている。マテリアルシャフト4は、作業室2の掘削土砂を搬出するための気密管路であって、地上まで延出している。マテリアルシャフト4の下端部は、天井スラブ3に形成されたマテリアルシャフト用連通孔6に繋がっている。マテリアルシャフト4の上部にはマテリアルロック7が設けられており、その上方から吊り下げられるバケット4aによって掘削土砂を搬出する。マンシャフト5は、作業室2に作業員が出入りするための気密管路であって、地上まで延出している。マンシャフト5の下端部は、天井スラブ3に形成されたマンシャフト用連通孔8に繋がっている。マンシャフト5の内部には、エレベータまたはらせん階段が設けられており、作業員が昇降可能となっている。マンシャフト5の上部には、気密状態で開閉可能なマンロック9が設けられている。
【0011】
本実施形態に係るケーソン下部構造は、ケーソン1の下部に形成される作業室2の天井スラブ3と、天井スラブ3を上下に貫通するシャフト連通孔(本実施形態ではマンシャフト用連通孔8)を閉塞するボトムドア10とを備えている。
図2および図3に示すように、ボトムドア10は、ドア本体部11と人孔部12と蓋部13とを備えている。ドア本体部11は、円盤形状を呈しており、複数に分割可能に形成されている。ドア本体部11は、半円形状に分割(半割り)された第一分割体14aと第二分割体14bとを備えている。第一分割体14aと第二分割体14bとは、それぞれに固定された取付部材15を介してボルト止めされている。取付部材15は、断面L字のアングル材からなり、立上り板部同士が当接した状態で接合されている。ドア本体部11は、断面円形のマンシャフト用連通孔8の内周径よりも大きい外周径を備えている。ドア本体部11の周縁部には、ボルト挿通孔16が所定ピッチで複数形成されている。ボルト挿通孔16は、マンシャフト用連通孔8の内周径よりも外側部分に配置されている。ボルト挿通孔16には、ボトムドア10を天井スラブ3に固定するためのボルトが挿通される。ボルトの先端部は、天井スラブ3の底面に埋設されたメネジ部に螺合される。ドア本体部11は、周縁部がマンシャフト用連通孔8の周縁部に当接するように天井スラブ3の下側から押し当てられ、ボルトによって天井スラブ3の下面に密着するように固定される。ドア本体部11の上面には、複数の吊ピース17が放射状に立設されている。吊ピース17には、ボトムドア10を吊り下げるためのワイヤーのフックが係止される。吊ピース17は、マンシャフト用連通孔8の内周径よりも内側部分に配置されている。第一分割体14には、マンホール18が形成されている。マンホール18は、作業員が通過する孔である。マンホール18は、マンシャフト用連通孔8の内周径よりも内側部分で、隣り合う吊ピース17,17の間に配置されている。
【0012】
人孔部12は、作業員が通過する孔部であって、ドア本体部11から上方に向けて立設されている。人孔部12は、作業員が昇降可能な広さを備えた筒形状(本実施形態では円筒形状)を呈しており、マンホール18を囲うように気密状態で固定されている。人孔部12内には、上方から梯子が挿通されている。作業者は梯子を使って作業室2内からボトムドア10の上方に上る。人孔部12の上端部には、蓋部13を固定するための鍔部21が形成されている。鍔部21には、ボルト孔22が複数形成されている。ボルト孔22は、鍔部21の周方向に沿って所定間隔で複数形成されている。ボルト孔22には、鍔部21に蓋部13を固定するためのボルトが挿通される。
【0013】
蓋部13は、人孔部の上開口部を気密状態で閉塞する部位である。蓋部13は、円盤形状を呈しており、鍔部21の外径と同等の外径を備えている。蓋部13には、ボルト挿通孔23が所定ピッチで複数形成されている。ボルト挿通孔23は、人孔部12の内周径よりも外側部分で、鍔部21のボルト孔22に相当する位置に配置されている。ボルト挿通孔23には、蓋部13を人孔部12に固定するためのボルトが挿通される。ボルトの先端部は、鍔部21のボルト孔22を挿通し、鍔部21から突出する。ボルトの突出した部分には、ナットが装着される。つまり、蓋部13は、周縁部が鍔部21に当接するように人孔部12の上側から押し当てられ、ボルトとナットによって鍔部21に密着するように固定される。
蓋部13には、開閉弁24が2つ設けられている。開閉弁24は、排気弁と注入弁の役目を果たすものであって、弁体25と配管部26とを備えている。配管部26の一端は、蓋部13に形成された貫通孔(図示せず)に接続され、配管部26の他端は、弁体25に接続されている。弁体25は開閉弁24を開閉可能にする本体部であって、ブラケットを介して蓋部13の上面に固定されている。二つの開閉弁24は、人孔部12を蓋部13で閉塞した状態で中埋めコンクリート50を打設するときには排気弁となり、作業室2および人孔部12内の空気を上方に排出する。また、中埋めコンクリートの打設完了後に人孔部12内に残置された空洞に注入材を注入するときは、一方の開閉弁24が注入材を入口となる注入弁となり、他方の開閉弁24が排気弁となる。
【0014】
次に本実施形態に係るケーソン下部構造の構築方法を、図3乃至図5を参照しながら説明する。図3の(a)は、ケーソン下部構造の構築方法の固定工程を説明するための断面図、(b)は蓋部設置工程を説明するための断面図、図4は、ケーソン下部構造の構築方法のコンクリート打設工程を説明するための断面図、図5は、ケーソン下部構造を備えたニューマチックケーソンを含むコンクリート構造体を示した断面図である。本実施形態のケーソン下部構造の構築方法では、ケーソン1の下部の作業室2の天井スラブ3にボトムドア10を取り付けた状態で作業室2内に中埋めコンクリートを打設する。ケーソン下部構造の構築方法は、固定工程と、退出工程と、コンクリート打設工程と、蓋部設置工程とを備えている。
【0015】
固定工程は、図3の(a)に示すように、ドア本体部11をケーソン1の下部の作業室2側から天井スラブ3に固定する工程である。固定工程は、マテリアルシャフト用連通孔6をボトムドア40で塞いだ(図1参照)後に、作業室2内のシャフト用連通孔のうち、最後に塞がれるマンシャフト用連通孔8にて行う。ボトムドア40は、分割した状態でマテリアルシャフト用連通孔6から投入された後に作業室2内で組み立てられ、人力等で持ち上げられて、天井スラブ3のマテリアルシャフト用連通孔6の周縁部に下側からボルト止めされる。
固定工程で用いるドア本体部11は、第一分割体14aと第二分割体14bとに分割した状態でマテリアルシャフト用連通孔6から作業室2内へ投入し、作業室2内で第一分割体14aと第二分割体14bとを接合して組み立てる。このドア本体部11を用いてマンシャフト用連通孔8を塞ぐ。
【0016】
マンシャフト用連通孔8は、内周面が鋼管31にて構成されており、鋼管31の下端部外側には、取付ブラケット32を介して固定プレート33が外側に張り出して取り付けられている。取付ブラケット32は、鋼管31の外周面から外側に突出し、所定間隔で放射状に複数設けられている。固定プレート33は、鋼管31を囲う環状に形成されており、ドア本体部11を天井スラブ3に固定するためのボルトの先端部が螺合するメネジ部(図示省略)を備えている。
ドア本体部11を天井スラブ3のマンシャフト用連通孔8の周縁部に固定するに際しては、ドア本体部11を天井スラブ3の上側から吊り上げて、ドア本体部11の周縁部を、天井スラブ3のマンシャフト用連通孔8の外周縁部に当接させる。そして、作業員が作業室2内側からボルト止めする。このとき、ドア本体部11の周縁部の上面に環状のシール部材34を接着しておく。これによって、固定プレート33とドア本体部11との間にシール部材34が挟持される。このようにドア本体部11の周縁部をマンシャフト用連通孔8の周縁部にボルト止めすることで、天井スラブ3とドア本体部11との気密性を確保できる。さらにシール部材34を介設することで、気密性をより一層大きくできる。また、ボルト止めは、作業室2内から行えるので、作業を行い易い。
【0017】
退出工程は、作業室2内の作業員がドア本体部11に設けられた人孔部12を通じて天井スラブ3の上側に退出する工程である。退出工程では、人孔部12の上から例えば梯子を設置して、この梯子を利用して作業員が作業室2からドア本体部11の上にあがって退出する。全ての作業員の退出が完了した後に、梯子を撤去する。
【0018】
コンクリート打設工程は、図4および図5に示すように、作業室2内に中埋めコンクリート50を打設する工程である。コンクリート打設工程では、開閉弁24から空気を排出しながら作業室2内に中埋めコンクリート50を打設する。人孔部12から作業室2内を目視しながら中埋めコンクリート50を打設し、中埋めコンクリート50の天端が天井スラブ3の近くに達した時点で蓋部設置工程を行う。
【0019】
蓋部設置工程は、図3の(b)に示すように、人孔部12の上開口部を蓋部13で閉塞する工程である。蓋部設置工程では、蓋部13を人孔部12の鍔部21上に設置し、ドア本体部11上にいる作業員がボルト止めする。このとき、蓋部13の2つの開閉弁24,24は開いた状態にしておく。
そして、中埋めコンクリート50の打設を継続する。このとき、開閉弁24から作業室2および人孔部12内の空気が排気される。そして、開閉弁24から中埋めコンクリート50のモルタルやセメントミルクが噴出した時点で両方の開閉弁24,24を閉じる。中埋めコンクリート50の打設を停止したら、養生を行い、作業室2内の圧力を大気圧に下げて断気を行う。
断気後に、図5に示すように、マテリアルシャフト4およびマンシャフト5を撤去した後に、2つの開閉弁24,24を開き、一方の開閉弁24から注入材を注入する。他方の開閉弁24から注入材が噴出した時点で、注入材の注入を停止し、開閉弁24,24を閉じる。蓋部13の設置後に開閉弁24を開いて中埋めコンクリート50の打設を行うことで、人孔部12内の空気を効率的に排気することができる。さらに、中詰めコンクリートの打設後に一方の開閉弁24から注入材を注入することで、人孔部12内に残置された空洞を確実に除去することができる。
その後、マテリアルシャフト用連通孔6およびマンシャフト用連通孔8にコンクリート51を打設、養生し、ケーソン1の底版が完成する。このとき、ボトムドア10,40は埋め殺す。
【0020】
以上説明したように、本実施形態のケーソン下部構造およびその構築方法によれば、ドア本体部11を作業室2側からボルト等により強固に固定した後に、作業員が人孔部12からドア本体部11の上側に退出して、ドア本体部11の上側から蓋部を強固に固定することができる。これによって、天井スラブ3とドア本体部11との間の気密性を確保することができる。
さらに、人孔部12は、ドア本体部11より上方に突出しているので、中埋めコンクリート50を打設する際に、作業室2内の空気が天井スラブ3の下面側に残留することが抑制され、人孔部12に空気が集まり易くなる。したがって、作業室2内の空気を効率的に天井スラブ3のドア本体部11の上方に逃がすことができる。よって、作業室2内にエアだまりができず、中詰めコンクリート50を密実に形成することができる。
【0021】
また、ドア本体部11は、天井スラブ3の下面に密着するようにボルト止め等で強固に固定されるので、天井スラブ3とドア本体部11との間の気密性を確保することができる。さらに、天井スラブ3側の固定プレート33とドア本体部11との間にシール部材34が介設されているので、気密性がより一層高くなる。
蓋部13に開閉弁24が設けられているので、中埋めコンクリート50を人孔部12内に打設する際、効率的に人孔部12内の空気をドア本体部11の上方に逃がすことができる。さらに、中埋めコンクリート50の打設後に開閉弁24から注入材を注入することで、人孔部12内に残置された空洞を確実に除去することができる。
【0022】
次に、本発明の第二の実施形態に係るケーソン下部構造を、図6を参照しながら説明する。図6は、第二の実施形態に係るケーソン下部構造のボトムドアの設置状態を示した要部断面図である。図6に示すように、第一の実施形態では、ボトムドア10がマンシャフト用連通孔8よりも大径であって、天井スラブ3の下面に当接しているのに対して、本実施形態のボトムドア10aは、マンシャフト用連通孔8の内部に収容可能な大きさであって、マンシャフト用連通孔8の内周面に沿って設けられた取付治具に固定されている。
具体的には、ボトムドア10aは、ドア本体部11aと人孔部12と蓋部13とを備えている。ドア本体部11aは、マンシャフト用連通孔8の内周径より若干小さい外周径を備え、マンシャフト用連通孔8の内部を昇降可能な円盤形状を呈している。ドア本体部11aは、半円形状に分割された第一分割体14cと第二分割体14dとを備えている。マンホール18と人孔部12は、第一分割体14cに形成されている。その他の、人孔部12と蓋部13は、第一の実施形態と同等であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0023】
取付治具は、マンシャフト用連通孔8の内周面を構成する鋼管31の下端部内側に設けられており、取付ブラケット35と固定プレート36とを備えている。取付ブラケット35は、固定プレート36を取り付けるための部材であって、鋼管31の内周面から内側に突出し、所定間隔で放射状に複数設けられている。固定プレート36は、鋼管31の内周面に沿った環状に形成されている。固定プレート36の外周面は、鋼管31の内周面の全周に渡って気密状態になるように溶接されている。固定プレート36の鋼管31への接合は、工場や地上等において予め行っておく。固定プレート36は、ドア本体部11aを天井スラブ3に固定するためのボルトの先端部が挿通するボルト孔(図示省略)を備えている。ドア本体部11aは、固定プレート36の上面に載置される。
ドア本体部11aを天井スラブ3のマンシャフト用連通孔8の周縁部に固定するに際しては、ドア本体部11aを天井スラブ3の上側からマンシャフト用連通孔8内に吊り下げて、ドア本体部11aの周縁部を、マンシャフト用連通孔8の固定プレート36上に載置して、ボルトおよびナットによって、固定プレート36に固定する。このとき、ドア本体部11aの周縁部の下面に環状のシール部材37を接着しておく。これによって、固定プレート36とドア本体部11aとの間にシール部材37が挟持される。
【0024】
第二の実施形態のケーソン下部構造によれば、ドア本体部11aを取付治具の固定プレート36にボルト止め等で強固に固定することで天井スラブ3とドア本体部11aとの間の気密性を確保することができる。
【0025】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、人孔部12は、円筒形状であるが、これに限定されるものではない。例えば、人孔部の形状は、上端側が小径となる円錐台状であってもよいし、楕円筒状或いは多角形筒状であってもよい。
また、前記実施形態では、ドア本体部11は、平板形状となっているが、これに限定されるものではない。ドア本体部11は、マンホール18の部分の高さが高くなるように、傾斜した形成としてもよい。このようにすれば、中埋めコンクリート50の打設時に、作業室2内の空気がマンホール18に向かって人孔部12へ誘導され易く、人孔部12または蓋部13の開閉弁24から効率的に排気することができる。したがって、エアだまりの発生を防止できる。
【符号の説明】
【0026】
1 ケーソン
2 作業室
3 天井スラブ
8 マンシャフト用連通孔(シャフト用連通孔)
10 ボトムドア
11 ドア本体部
12 人孔部
13 蓋部
18 マンホール(貫通孔)
24 開閉弁
32 取付ブラケット(取付治具)
33 固定プレート(取付治具)
50 中埋めコンクリート
図1
図2
図3
図4
図5
図6