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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/243 20240101AFI20240606BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240606BHJP
   G05D 1/648 20240101ALI20240606BHJP
【FI】
G05D1/243
G05D1/43
G05D1/648
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021202571
(22)【出願日】2021-12-14
(65)【公開番号】P2023087981
(43)【公開日】2023-06-26
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】氷室 福
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-106919(JP,A)
【文献】特開2021-071909(JP,A)
【文献】特開2019-117574(JP,A)
【文献】特表2021-522618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
G05D 1/243
G05D 1/648
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行する複数のロボットを所定の領域で稼働するための制御装置であって、
前記領域の環境に関する情報や前記ロボットの情報を集約する情報集約部と、
ユーザーから入力される利用予約情報を基に、利用可能な前記ロボットの情報と利用タイミングの情報を設定する予約処理部と、
前記情報集約部に集約された前記領域の環境に関する情報や前記ロボットの情報と、前記予約処理部で設定された情報を踏まえ、前記領域の環境に要求される前記ロボット動作を分析し、この分析結果に基づいて、前記領域の環境に適した所定のロボット動作を実現するためのタスクに関するスケジュールを作成するタスク作成部と、
前記領域の環境に関する情報や前記ロボットの情報を参照しながら、前記タスク作成部で作成した前記スケジュールに沿って前記ロボットに前記タスクを実行させるタスク実行部と、を備え
前記タスク作成部は、前記情報集約部に集約された前記領域の環境に関する情報に含まれる通行止め情報、混雑情報、進入可否情報、および、前記ロボットの情報から、前記領域の環境に適した所定のロボット動作を実現するのに必要な経由地点および走行タイミングを判定し、判定した結果に基づいて、前記スケジュールを作成す
ことを特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットを施設内など所定の領域で稼働させるのに好適な制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建物施設では、掃除・警備や案内・搬送・デリバリー等の用途で様々な自律走行型ロボットを運用してサービスを提供している。一般的には、サービス利用者(ユーザー)はロボット稼働システムを用いてサービス利用をする(例えば、特許文献1を参照)。ロボット稼働システムよりユーザーからの予約・操作情報を受けた後、ロボットは、自ら、搭載センサーで本体周辺環境をセンシングしながら、状況を判断、経路計画をして目的地まで自律走行する等の行動をする。センシング情報は限定的であるため、あらゆる施設環境下でロボットが自律的に行動できるとは限らない。
【0003】
施設内でロボットを運用する際には、ロボットメーカー(ロボット提供事業者)がそれぞれの決められた施設環境(移動可能経路、立入禁止場所などの環境をいい、以下、この環境を単に「静的環境」ということがある。)を配慮して予めにロボットの走行可能経路を設定したり、走行範囲を制限したり、速度状態などを調整したりするなどの対応をしている(例えば、特許文献2を参照)。こうすることで、通常の施設環境下においてロボットは円滑に行動できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-113917号公報
【文献】特開2019-3602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、通常とは異なる特定の事象や非常時等で想定されていない施設環境(一時的な移動経路制限、一時的な立入制限や緩和などの環境をいい、以下、この環境を単に「動的環境」ということがある。)がある場合、ロボットは搭載センサーだけで自律的に状況を把握し切れず、行動できないケースがある。このような問題を解決するための一時的な対応としては、メーカーがロボットを再設定する等の対応が挙げられるが、手間が掛かるという問題がある。また、他の対応としては、上記の従来の特許文献2のように、ロボット側に施設環境情報の自動収集機能や高度な経路探索、走行制御機能などを持たせる方法がある。しかし、このような機能を搭載するロボットは、容易に入手できず、入手できたとしても高価であるとした問題がある。このようなことから、結果的に、ロボットの行動できないリスク下でロボットを運用するか、またはロボットの運用を中止せざるを得ない場合があった。したがって、高機能で高価なロボットにのみならず、低機能で安価なロボットなど、様々なロボットを動的環境下で運用することができる制御装置が望まれている。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、所定の領域の環境が一時的に変わる場合でも確実に、様々なロボットを運用することができる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る制御装置は、自律走行するロボットを所定の領域で稼働するための制御装置であって、前記領域の環境に関する情報および前記ロボットの情報に基づいて、前記領域において前記ロボットが実行するタスクと、前記タスクを実行するスケジュールを生成し、生成した前記スケジュールに沿って前記ロボットに前記タスクを実行させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他の制御装置は、上述した発明において、前記ロボットの利用を予約するためにユーザーにより操作される予約操作部と、前記領域の環境に関する情報および前記ロボットの情報を集約する情報集約部と、前記情報集約部に集約された前記施設内の環境に関する情報と、前記ロボットの情報と、に基づいて、前記領域の環境に適した、前記予約操作部に入力された利用予約情報に対応したロボット動作を実現するための前記タスクと、前記タスクを実行する前記スケジュールと、を生成し、前記スケジュールにしたがって前記タスクを前記ロボットに実行させるタスク処理部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他の制御装置は、上述した発明において、前記タスク処理部は、前記予約操作部に入力された利用予約情報に基づいて、利用する前記ロボットを設定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の制御装置は、上述した発明において、前記タスク処理部は、前記利用予約情報に基づいて、所定の予約処理を行う予約処理部と、前記情報集約部を参照して、前記領域の環境に要求される前記ロボット動作を分析し、この分析結果に基づいて、前記領域の環境に適した所定のロボット動作を実現するための前記タスクに関する前記スケジュールを作成するタスク作成部と、前記情報集約部に集約された前記領域の環境に関する情報と、前記ロボットの情報と、を参照しながら、前記スケジュールに沿って前記ロボットに前記タスクを実行させるタスク実行部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る制御装置によれば、自律走行するロボットを所定の領域で稼働するための制御装置であって、前記領域の環境に関する情報および前記ロボットの情報に基づいて、前記領域において前記ロボットが実行するタスクと、前記タスクを実行するスケジュールを生成し、生成した前記スケジュールに沿って前記ロボットに前記タスクを実行させるので、領域の環境が一時的に変わる場合でも確実に、様々なロボットを運用することができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係る他の制御装置によれば、前記ロボットの利用を予約するためにユーザーにより操作される予約操作部と、前記領域の環境に関する情報および前記ロボットの情報を集約する情報集約部と、前記情報集約部に集約された前記施設内の環境に関する情報と、前記ロボットの情報と、に基づいて、前記領域の環境に適した、前記予約操作部に入力された利用予約情報に対応したロボット動作を実現するための前記タスクと、前記タスクを実行する前記スケジュールと、を生成し、前記スケジュールにしたがって前記タスクを前記ロボットに実行させるタスク処理部と、を備えるので、ユーザーは、施設環境を考慮してロボットを効率的に利用することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る他の制御装置によれば、前記タスク処理部は、前記予約操作部に入力された利用予約情報に基づいて、利用する前記ロボットを設定するので、利用予約情報に応じたロボットを利用することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他の制御装置によれば、前記タスク処理部は、前記利用予約情報に基づいて、所定の予約処理を行う予約処理部と、前記情報集約部を参照して、前記領域の環境に要求される前記ロボット動作を分析し、この分析結果に基づいて、前記領域の環境に適した所定のロボット動作を実現するための前記タスクに関する前記スケジュールを作成するタスク作成部と、前記情報集約部に集約された前記領域の環境に関する情報と、前記ロボットの情報と、を参照しながら、前記スケジュールに沿って前記ロボットに前記タスクを実行させるタスク実行部と、を有するので、例えば領域の環境に関する情報やロボットの情報に応じてタスクの中止、再開を行うようにすることで、ロボットの最適な稼働を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明に係る制御装置の実施の形態を示す構成図である。
図2図2は、本実施の形態に適用するロボット稼働システムの構成図である。
図3図3は、本発明に係る制御装置の実施の形態に対応する処理フロー図である。
図4図4は、本発明に係る制御装置の実施例に対応する概略平面図である。
図5図5は、比較例のスケジュールを示す図である。
図6図6は、本発明の実施例のスケジュールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る制御装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る制御装置10は、自律走行するロボットを施設内など所定の領域で稼働させるためのものであり、複数のユーザーP(サービス利用者)と、サービス利用に提供されたロボットRとの間に設けられる。この制御装置10は、施設環境を考慮したロボットの必要とする細かな行動をシステム的に自動的に一連の行動タスクに割り当て、これらのタスクをスケジュールで管理実行することで、施設内(領域)での異なる環境に応じてロボットが行動できるようにするものである。この制御装置10は、予約操作部12、情報集約部14、タスク処理部16、動作指令部18で構成されている。
【0018】
ここで、施設環境とは、移動可能経路や立入禁止場所などの静的環境、または一時的な移動経路制限や一時的な立入制限や緩和、混雑状況などの動的環境である。ロボットの行動とは、走行経路・経由地点計画、走行タイミング判断、走行開始・終了・速度調整・一時停止・再発進などの動作である。また、スケジュール通りにタスクを実行することにより、ロボットの一連の行動を遂行する。
【0019】
なお、本実施の形態においては、ロボットRの駆動制御は、ロボットR自身で実施する。すなわち本実施の形態では、周知のロボットRを利用する。既存のロボットRは、図2に示すように、対象目的地点までの走行(予約配車)、対象場所を示した地図情報の切り替え、走行開始・終了、速度調整、一時停止・再発進等の動作を指令する機能を備えた予約操作部22、ロボットRのリアルタイム状態などの情報を取得し、外部に配信する機能を備えた情報部24などを有している。予約操作部22や情報部24は、ロボットRの機能として、一般的に提供されるものである。予約操作部22からロボット駆動制御部20への動作制御は、ネットワーク通信回線を通じて行われる。ロボット駆動制御部20は、搭載センサーで本体周辺環境をセンシングしながら、自己位置を推定するとともに状況を判断し、施設内の地図情報などに基づいて経路計画をして目的地まで自律走行可能である。
【0020】
制御装置10の予約操作部12は、ロボットRの利用を予約するためにユーザーPにより操作されるものであり、ロボットRの予約操作部22を代替する。ユーザーPは、この予約操作部12を介してロボットRの利用を予約したり、ロボットRを操作したりするなどしてロボット利用サービスを利用することができる。
【0021】
情報集約部14は、施設内の関連イベント・利用ルール・混雑状況・設備情報などの施設環境の情報を収集して整理集約するものである。情報とは、施設内に設置されたセンサー・モニタリングシステムから取得したもの、施設運用のそれぞれ実情に応じて決められた施設利用ルール(施設の動的環境に適する移動経路・経由地点・待機場所・待機時間)などの施設内の環境に関する情報、またロボットRからのロボットR自身の状態の情報も含めたものである。ユーザーPは、情報集約部14を参照することにより、施設全体状況、ロボット状態、施設の実情に適する移動経路・経由地点・移動タイミングを把握可能である。
【0022】
タスク処理部16は、予約処理部16A、タスク作成部16B、タスク実行部16Cを有する。
【0023】
予約処理部16Aは、ユーザーPからの予約操作などの利用予約情報を基に予約処理を行うものであり、例えば、この情報をデータベースに登録したり、利用可能なロボットRをデータベースから選出(設定)したり、利用タイミングを開始したりする。
【0024】
タスク作成部16Bは、情報集約部14および予約処理部16Aを参照して、当該施設環境に要求される対象ロボットRの必要な行動(ロボット動作)を分析し、この分析結果に基づいて、当該施設環境に適した行動を実現するためのタスクに関するスケジュールを作成する。より具体的には、分析結果に基づいて、細分化された移動経路・経由地点への走行動作、走行開始タイミングなどの行動をタスクに割り当てるとともに、各タスクに優先順位をつけてスケジュールを作成し、作成したスケジュールをデータベースに登録する。
【0025】
タスク実行部16Cは、データベースに登録されたスケジュールの通りにタスクを実行させるものである。タスク内の処理では、情報集約部14の施設環境の情報やロボット状態情報などを参照しながら、スケジュールに沿ってロボットRにタスクを実行させる。ロボットRの関連操作タスクは、動作指令部18と、ロボットRの予約操作部22を介して行われる。
【0026】
動作指令部18は、ロボットRの予約操作部22にネットワーク通信回線を通じて接続しており、この予約操作部22を介してロボット駆動制御部20に動作指令(ロボット動作指令)を送ることで、ロボットRを動作させる。動作指令部18から送られる動作指令は、タスク処理部16のタスク実行部16Cにおけるタスクに対応して設定される。
【0027】
(処理フロー例)
次に、本実施の形態の制御装置10の処理フローの一例について説明する。
図3に示すように、まず、ユーザーPはコンピュータ端末上のロボット利用サービスのアプリケーションを用いて、サービス利用や目的地点までのロボット走行などの利用予約情報を入力する(ステップS1)。入力された利用予約情報は、予約操作部22を通じてタスク処理部16に送信される。送信された利用予約情報は、タスク処理部16の予約処理部16Aでデータベースの予約リストに登録されるとともに(ステップS2)、この利用予約情報に基づいて、データベースに登録されているロボットのリストから、利用可能な対象ロボットRを選出するなどの処理を行う(ステップS3)。対象ロボットRを選出できたら(ステップS3でYes)、次の処理に進める。
【0028】
次に、タスク処理部16のタスク作成部16Bは、選出した対象ロボットRについて、情報集約部14の施設情報・ロボット状態などを参照しながら、当該施設環境に適する対象ロボットRの行動を分析し(ステップS4)、経由地点・走行経路や走行タイミングの判定と動作(走行開始・終了、速度調整、一時停止・再発進)などを一連の行動タスクに割り当てて(ステップS5)、一連の行動タスクからなるスケジュールを作成し、作成したスケジュールをデータベースに登録・管理する(ステップS6)。
【0029】
次に、タスク処理部16のタスク実行部16Cは、登録したスケジュールの通りに一連のタスクを開始し(ステップS7)、スケジュールに示された一連のタスクが終了するまで各ステップS8~S10のタスク実行を自動的に繰り返す(ステップS11)。ステップS8の利用タイミング判定タスクでは、予約操作部12を介してユーザーPに利用開始タイミングを決定する。ステップS9の施設状況判定タスクでは、情報集約部14を参照して施設環境の状態を判定する。ステップS10のロボット動作指令タスクでは、動作指令部18を介してロボット駆動制御部20に動作指令を送信する。スケジュールを終了したら(ステップS11でYes)、対象ロボットRの利用を終了し(ステップS12)、ユーザーPの利用を終了する(ステップS13)。
【0030】
上記のように構成した制御装置10によれば、制御装置10の予約操作部12を通じてロボットRを操作したり、情報集約部14を通じてロボット状態の他、施設情報等を確認したりすることができる。つまり、ロボットRの状態は、ロボットRの情報部24を介して情報集約部14に配信される。
【0031】
本実施の形態によれば、ロボットRの予約操作部22は、タスク処理部16のタスク実行により、動作指令部18を介してロボット駆動制御部20を操作する。より具体的には、制御装置10は、施設環境に応じたタスクをタスク処理部16のタスク作成部16Bで作成し、順次、動作指令部18を介してロボット駆動制御部20に動作指令を送信することでロボットRを集中管理する。このように、ユーザーPの利用予約情報、ロボット状態情報の他、施設環境を考慮して、経由地点移動タスク、状況判定タスク、挙動制御タスクなどからなるスケジュールを作成し、動的な経路計画を可能にすることで、施設内をスムーズに走行させることが可能である。ロボットをスケジュールにより稼働管理するため、施設内の環境に関する情報やロボットの情報に応じて、それぞれのタスクを中止したり、再開したりすることが可能である。こうすることで、ロボットの最適な稼働を実現することができる。
【0032】
したがって、本実施の形態によれば、施設内の環境が一時的に変わる場合でも確実にロボットを運用することができる。このため、特定事象・イベントや非常時などで施設利用ルールが変更されても心配なく、ロボットを継続して利用可能である。また、ユーザーは、施設環境を考慮してロボットを効率的に利用することができる。施設管理者は、この制御装置10を導入することで、施設運用の様々な実情に応じて都合のいい経由地点、ロボット走行開始タイミングなどを決定することができる。
【0033】
なお、本発明は上記の実施の形態に限るものではなく、細かな行動とスケジュール実施というフレームワークを適用可能なものであればいかなるロボットでもよく、例えばモビリティや設備などの自走式ロボットでもよい。
【0034】
(実施例)
次に、本発明の実施例について説明する。
図4に示すように、本実施例では、建物内の廊下を移動するロボットに、地点N0から目的地点N1までの配送サービスを行わせるというシナリオを想定している。走行経路は施設利用ルールとして適切であり、ロボットは利用ルールを順守して走行する。なお、比較例として、ロボットが地点N0から目的地点N1まで点線の最短経路に沿って自律走行する場合を設定している。
【0035】
比較例では、施設環境の制限がないので、図5に示すようなスケジュールを生成する。そして、生成したスケジュールの通りタスクを実行することによって、ロボットを目的地点N1まで配送する。この場合、まず、スケジュールを開始してから(ステップT0)、サービス開始受付を実行してユーザーと施設状況のタイミングを確認し(ステップT1)、その後、ロボットを目的地点N1まで走行させた後(ステップT2)、スケジュールを終了する(ステップT3)。
【0036】
いま、最短経路上のゾーンAにおいて、設備工事のための通行止めという事象が生じたものとする。この場合、第一の対応として、施設環境の一時的な利用ルールとしてロボットがゾーンAを通らない経路を設定し、遠回りさせる対応が必要である。また、第二の対応として、遠回りする経路上のゾーンBが時間帯によって混雑になり、ロボットが通過できないことがあるため、当該ゾーンBの混雑状態を判定して走行タイミングや経路変更を図る対応が必要である。さらに、第三の対応として、目的地点N1が到着直前に他の行事で占有される可能性を考慮して、別途の隣接目的地点N2に変更する対応が必要である。
【0037】
従来の対応では、第一の対応について、ゾーンAを通過しないように走行範囲に制限をかけ、ロボット自体が遠回りに経路を探索する対応を行っていた。また、第二の対応については、ゾーンBの混雑状況を判定して経路を変更するなどの対応を行っていた。第三の対応については、目的地点の進入可否状態を判定して目的地を変更する機能などを追加する対応を行っていた。このように、従来は、施設環境の一時的な変更にもかかわらず、ロボット側に多くの対応が必要となっていた。
【0038】
これに対し、本実施例では、ゾーンAでの通行止め情報はもちろんのこと、ゾーンBの混雑情報、地点N1の進入可否情報は情報集約部14に集約される。これらの情報から、必要な経由地点や、走行タイミングを判定し、動作指令や走行指令などのロボットの行動タスクを作成する。作成した本実施例のスケジュールを図6に示す。
【0039】
図6に示すように、本実施例は、ステップU0~U7のタスクからなる。本実施例では、比較例に対して経由地点M1、M2への移動指令のタスク(ステップU2、U3)が追加される。また、ゾーンBの混雑状況を判定するタスク(ステップU4)と、その結果に基づいて目的地点N1または隣接地点N2へ移動するタスク(ステップU5)、または経由地点M3への移動指令のタスク(ステップU61)と、その後、目的地点N1または隣接地点N2へ移動するタスク(ステップU62)が追加される。ステップU0は比較例のステップT0に対応し、ステップU1は比較例のステップT1に対応し、ステップU7は比較例のステップT3に対応する。なお、ステップU5、U62のタスクでは、タスク内で情報集約部14にて施設状況を参照して目的地点N1の進入可否状態を判定し、その結果に基づいて隣接地点N2へ目的地を変更し、変更した隣接地点N2へ移動するなどの移動指令を行う。
【0040】
このようなスケジュールの通り、タスクを実行することによって、ロボットを目的地点まで配送することを実現する。このようにすれば、従来のシステムのように、ロボット利用を中止したり、ロボット側に新たな機能を追加したりすることを避けることができる。
【0041】
以上説明したように、本発明に係る制御装置によれば、自律走行するロボットを所定の領域で稼働するための制御装置であって、前記領域の環境に関する情報および前記ロボットの情報に基づいて、前記領域において前記ロボットが実行するタスクと、前記タスクを実行するスケジュールを生成し、生成した前記スケジュールに沿って前記ロボットに前記タスクを実行させるので、領域の環境が一時的に変わる場合でも確実に、様々なロボットを運用することができる。
【0042】
また、本発明に係る他の制御装置によれば、前記ロボットの利用を予約するためにユーザーにより操作される予約操作部と、前記領域の環境に関する情報および前記ロボットの情報を集約する情報集約部と、前記情報集約部に集約された前記施設内の環境に関する情報と、前記ロボットの情報と、に基づいて、前記領域の環境に適した、前記予約操作部に入力された利用予約情報に対応したロボット動作を実現するための前記タスクと、前記タスクを実行する前記スケジュールと、を生成し、前記スケジュールにしたがって前記タスクを前記ロボットに実行させるタスク処理部と、を備えるので、ユーザーは、施設環境を考慮してロボットを効率的に利用することができる。
【0043】
また、本発明に係る他の制御装置によれば、前記タスク処理部は、前記予約操作部に入力された利用予約情報に基づいて、利用する前記ロボットを設定するので、利用予約情報に応じたロボットを利用することができる。
【0044】
また、本発明に係る他の制御装置によれば、前記タスク処理部は、前記利用予約情報に基づいて、所定の予約処理を行う予約処理部と、前記情報集約部を参照して、前記領域の環境に要求される前記ロボット動作を分析し、この分析結果に基づいて、前記領域の環境に適した所定のロボット動作を実現するための前記タスクに関する前記スケジュールを作成するタスク作成部と、前記情報集約部に集約された前記領域の環境に関する情報と、前記ロボットの情報と、を参照しながら、前記スケジュールに沿って前記ロボットに前記タスクを実行させるタスク実行部と、を有するので、例えば領域の環境に関する情報やロボットの情報に応じてタスクの中止、再開を行うようにすることで、ロボットの最適な稼働を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明に係る制御装置は、建物内などの施設環境で自律走行するロボットを稼働するのに有用であり、特に施設環境が一時的に変わる場合でも確実にロボットを運用するのに適している。
【符号の説明】
【0046】
10 制御装置
12,22 予約操作部
14 情報集約部
16 タスク処理部
16A 予約処理部
16B タスク作成部
16C タスク実行部
18 動作指令部
20 ロボット駆動制御部
24 情報部
P ユーザー
R ロボット
図1
図2
図3
図4
図5
図6