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特許7499228神経成長因子に対するモノクローナル抗体、並びにそれをコードする遺伝子及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】神経成長因子に対するモノクローナル抗体、並びにそれをコードする遺伝子及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/22 20060101AFI20240606BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240606BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240606BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240606BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240606BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240606BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240606BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240606BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240606BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240606BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240606BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240606BHJP
   A61K 47/50 20170101ALI20240606BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240606BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240606BHJP
   C07K 14/475 20060101ALN20240606BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20240606BHJP
【FI】
C07K16/22 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P43/00 105
A61P25/04
A61K39/395 N
A61K47/68
A61K47/50
G01N33/53 D
C07K19/00
C07K14/475
C12P21/08
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021506024
(86)(22)【出願日】2019-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 CN2019082107
(87)【国際公開番号】W WO2019201133
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】201810344670.3
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811320006.1
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520404676
【氏名又は名称】アケソ バイオファーマ カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】ワン チョンミン マックスウェル
(72)【発明者】
【氏名】リー パイヨン
(72)【発明者】
【氏名】シア ユイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン ポン
【審査官】井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-507116(JP,A)
【文献】特表2006-525955(JP,A)
【文献】特表2012-525838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
C07K 16/22
C12N 15/63
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C07K 16/46
A61P 43/00
A61P 25/04
A61K 39/395
A61K 47/68
A61K 47/50
G01N 33/53
C07K 14/475
C12P 21/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経成長因子(NGF)に対するモノクローナル抗体又はその抗原結合断片であって、前記モノクローナル抗体が重鎖定常領域及び重鎖可変領域を含む重鎖、並びに、軽鎖定常領域及び軽鎖可変領域を含む軽鎖を含み、ここで重鎖可変領域が3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含むと共に、軽鎖可変領域が3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み;前記HCDR1のアミノ酸配列が配列番号5に記載の配列であり;前記HCDR2のアミノ酸配列が配列番号6に記載の配列であり;前記HCDR3のアミノ酸配列が配列番号7に記載の配列であり;前記LCDR1のアミノ酸配列が配列番号8に記載の配列であり;前記LCDR2のアミノ酸配列が配列番号9に記載の配列であり;前記LCDR3のアミノ酸配列が配列番号10に記載の配列である;モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
前記重鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号2に記載の配列であり;前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号4に記載の配列である、請求項1に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
Fab、Fab’、F(ab’) 、F、一本鎖抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、及び二重特異性抗体より選択される、請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
NGFタンパク質と結合し100nM未満のEC50を有する、請求項1~3の何れか一項に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
マウス以外の種に由来する非CDR領域を含む、請求項1~4の何れか一項に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の神経成長因子に対するモノクローナル抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列及び軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子。
【請求項7】
前記重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列が配列番号1に記載の配列であり;前記軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列が配列番号3に記載の配列である、請求項6に記載の核酸分子。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の核酸分子又は請求項8に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項10】
請求項1~5の何れか一項に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片、及びそれに結合した複合体部分を含み、前記複合体部分が検出可能な標識であるモノクローナル抗体複合体。
【請求項11】
前記複合体部分がラジオアイソトープ、発光基質、有色基質、又は酵素である、請求項10に記載のモノクローナル抗体複合体。
【請求項12】
請求項1~5の何れか一項に記載のモノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片及び/又は請求項10若しくは11に記載のモノクローナル抗体複合体を含むキット。
【請求項13】
請求項1~5の何れか一項に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を特異的に認識する第二の抗体をさらに含む請求項12に記載のキット。
【請求項14】
神経成長因子の存在及び/又はレベルを検出するための医薬の調製における請求項1~5の何れか一項に記載のモノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片及び/又は請求項10若しくは11に記載のモノクローナル抗体複合体の使用。
【請求項15】
神経成長因子に特異的に結合する薬物;神経成長因子依存性TF-1細胞の増殖を阻害する医薬の調製における請求項1~5の何れか一項に記載のモノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片及び/又は請求項10若しくは11に記載のモノクローナル抗体複合体の使用。
【請求項16】
神経障害性疼痛、慢性疼痛、及び炎症性疼痛の少なくとも一つを治療又は予防するための医薬の調製における、請求項1~5の何れか一項に記載のモノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片及び/又は請求項10若しくは11に記載のモノクローナル抗体複合体の使用。
【請求項17】
有効成分として請求項1~5の何れか一項に記載のモノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片及び/又は請求項10若しくは11に記載のモノクローナル抗体複合体、及び医薬的に許容可能な担体又は賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項18】
前記モノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片が神経成長因子に特異的に結合し、TF-1細胞の神経成長因子依存性の増殖を阻害する、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
神経障害性疼痛、慢性疼痛、及び炎症性疼痛の少なくとも一つを治療又は予防するための、請求項17又は18に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫学及び分子生物学の技術分野に属する。より詳しくは、本発明は神経成長因子に対するモノクローナル抗体、それをコードする遺伝子、並びに検出キット及び様々な薬物を調製することにおけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
神経成長因子(NGF)は早期に特定された神経成長栄養因子の一つであり、そして生物学的なニューロンの発生、分化及び機能維持に重要な役割を果たす。NGFはトロポミオシン受容体キナーゼA(TrKA)に高親和性を有して結合でき、P75NTR受容体に非特異的に結合できる。より多くの証拠は、成長、ニューロンの発生及び生存を促進することの生物学的な効果を有することを示すのに加え、NGFは持続性疼痛及び慢性疼痛の仲介者であると広く考えられた。例えば、NGFの点滴静注が全身痛反応を引き起こすことがあり、そしてNGFの局所注射は注射部位に痛覚過敏及び異常な痛みを生じさせうる。炎症箇所でNGFの分泌が急増し、そして長時間存続させる。加えて、ある型の癌において、過剰なNGFは神経線維の成長及び浸潤を促進し、そのため癌による疼痛を誘導する。TrKA受容体ノックアウトマウスは痛みの欠失を示すことが報告され、そしてNGFは痛みに密接に関する分子であると考えられる。証拠はNGF阻害剤の使用が神経障害的及び慢性的な炎症性疼痛の動物モデルにおける疼痛反応を緩和しうることを示唆する。NGFに対する中和抗体はマウスの癌疼痛モデルの疼痛を著しく緩和しうる。
【0003】
抗体医薬、特にモノクローナル抗体は、様々な疾病の治療に良好な効果をもたらした。安全で、効果的な抗NGFモノクローナル抗体を調製することは、慢性的疼痛及び癌疼痛治療において、中毒性のある又は消化管内に副作用を生じるアヘン剤、非ステロイド剤等とは異なる新たなクラスの鎮痛剤を提供しうる。現在、Pfizer Pharmaceuticals Co.,Ltd.,によって開発されているタネズマブは、前臨床及び臨床研究において良好な鎮痛効果を示している。しかしながら、未だに高い活性を有する他の抗NGF抗体が不足している。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は先行技術における神経成長因子に対する抗体の低活性及び種差の欠点を克服することであり、そして高活性及び種差を除去することを有する神経成長因子に対するモノクローナル抗体、並びにそれをコードする遺伝子及びその使用、並びに検出キット及び様々な薬物を調製することにおけるその使用を提供する。
【0005】
上記の本発明の目的を成し遂げるために、本発明では、重鎖及び軽鎖を含み、その重鎖が重鎖の定常領域及び可変領域を含み、そしてその軽鎖が軽鎖の定常領域及び可変領域を含むヒト神経成長因子に特異的に結合しうるモノクローナル抗体を提供する。
【0006】
前記軽鎖及び前記重鎖の可変領域は抗原の結合を決定する;各鎖のその可変領域は、3つの超可変領域を含み、相補性決定領域(CDRs)(前記重鎖(H)のそのCDRsはHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、前記軽鎖(L)のそのCDRsはLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み;これらはKabat et.al.,により名付けられた。Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition(1991),Volume 1-3,NIH Publication 91-3242,Bethesda Md参照)と称される。
【0007】
本発明における、その重鎖可変領域は3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、並びにその軽鎖可変領域は3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み;
ここでその相補性決定領域HCDR1のアミノ酸配列はSEQ ID NO:5に記述され;
その相補性決定領域HCDR2のアミノ酸配列はSEQ ID NO:6に記述され;
その相補性決定領域HCDR3のアミノ酸配列はSEQ ID NO:7に記述され;
その相補性決定領域LCDR1のアミノ酸配列はSEQ ID NO:8に記述され;
その相補性決定領域LCDR2のアミノ酸配列はSEQ ID NO:9に記述され;及びその相補性決定領域LCDR3のアミノ酸配列はSEQ ID NO:10に記述される。
【0008】
本発明では6つのCDR領域のアミノ酸配列が構築され、特定の修飾を行い抗体可変領域の抗原結合活性が改善された。CDR領域のその変化を適応させるために、フレームワーク領域もまた改変された。しかしながら、これらのフレームワーク領域のその改変は、未だにヒト生殖細胞系列に適合することを保証することが必要である。また、フレームワークの改変は、これらの変化が抗原へのそのCDR領域の結合に影響しない変化であることを保証することを分析されるだろう。
【0009】
当業者に知られる技術的な手段を通じて、例えば、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のウェブサイトを通じて、モノクローナル抗体のその重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の相補性決定領域(CDRs)が分析され、それぞれSEQ ID Nos:5~7、SEQ ID Nos:8~10上に記述されている。本発明において、このモノクローナル抗体はH26L17として称される。
【0010】
本発明の神経成長因子に対するモノクローナル抗体の好ましい技術スキームとして、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID No;2に記述され;前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:4に記述される。
【0011】
本発明の神経成長因子に対するモノクローナル抗体のさらに好ましい技術スキームとして、その重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列がSEQ ID NO:1に記述され;その軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列がSEQ ID NO:3に記述される。
【0012】
本発明の神経成長因子に対するモノクローナル抗体の一の態様において、その神経成長因子に対するモノクローナル抗体はFab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域断片、一本鎖抗体(例えば、scFv)、ヒト化抗体、キメラ抗体、及び二重特異性抗体より選択される。
【0013】
本発明の神経成長因子に対するモノクローナル抗体の一の態様において、神経成長因子に対するモノクローナル抗体はNGFタンパク質に100nM未満(例えば、約10nM未満、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM、又はそれ未満)のEC50を有して結合する。ここで、EC50はサンドイッチELISA法により測定されうる。
【0014】
本発明の神経成長因子に対するモノクローナル抗体の一の態様において、神経成長因子に対するモノクローナル抗体は非CDR領域を含み、そしてその非CDR領域はマウス以外の種類、例えばヒト抗体由来である。
【0015】
また、本発明の上記の目的を成し遂げるために、本発明は神経成長因子に対し上記のモノクローナル抗体をコードする遺伝子を提供する。
【0016】
また、本発明の上記の目的を成し遂げるために、本発明は重鎖可変領域のヌクレオチド配列及び/又は軽鎖可変領域のヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。
【0017】
また、本発明の上記の目的を成し遂げるために、本発明は重鎖可変領域のヌクレオチド配列及び/若しくは軽鎖可変領域のヌクレオチド配列を含む宿主細胞;又は、重鎖可変領域のヌクレオチド配列及び/若しくは軽鎖可変領域のヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。
【0018】
また、本発明の上記の目的を成し遂げるために、本発明は神経成長因子に対するモノクローナル抗体を調製する方法を提供し、この方法は適当な条件下で本発明の宿主細胞を増殖すること、及び細胞培養から神経成長因子に対するモノクローナル抗体を分離することを含む。
【0019】
また、本発明は、神経成長因子に対するモノクローナル抗体、それに結合した複合体部分を含むモノクローナル抗体複合体を提供し、ここでその複合体部分は検出可能な標識である。好ましくは、その複合体部分はラジオアイソトープ、発光基質、有色基質又は酵素である。
【0020】
また、本発明は神経成長因子に対するモノクローナル抗体及び/又はモノクローナル抗体複合体を含む、キットを提供する。
【0021】
本発明のキットの好ましい技術スキームとして、キットはさらに神経成長因子に対するモノクローナル抗体を特異的に認識する第二の抗体を含み;加えて、第二の抗体はさらに検出可能な標識、例えばラジオアイソトープ、発光基質、有色基質、又は酵素を含む。
【0022】
また、本発明は神経成長因子の存在及び/又はレベルを検出できるキット内の神経成長因子に対するモノクローナル抗体及び/又はモノクローナル抗体複合体の使用を提供する。そのキットを用いて試料中のNGFの存在又はレベルを検出する。
【0023】
また、本発明は、神経成長因子に対するモノクローナル抗体及び/又はモノクローナル抗体複合体を提供し;任意に、さらに医薬的に許容可能な担体及び/又は賦形剤を含む。
【0024】
上記の薬物は神経成長因子に特異的に結合し、そして神経成長因子に媒介される生物学的効果、例えばTF-1細胞の増殖を阻害する;
並びに/又は
神経障害性疼痛、慢性疼痛、及び炎症性疼痛を治療又は予防するために用いることができ。
【0025】
本発明は、in vivo試験を通じて、本発明の神経増殖因子に対するモノクローナル抗体が、Lenti-IL-1β―NIH/3T3マウスの膝関節炎疼痛モデルにおいて、患肢の歩行方法の変化及び動物の体重減少の状態を改善できることを発見した。
【0026】
本発明において、特に断りのない限り、本明細書で用いられる科学的及び技術的用語は、一般的に当業者に理解される意味を有する。加えて、本発明に用いられる細胞培養、分子遺伝学、核酸化学及び免疫学の実験操作は対応の分野に広く用いられる通例の操作である。一方、本発明をより理解するために、関連用語の定義及び説明を以下に提供する。
【0027】
本発明に用いられるように、「抗体」という用語は一般的にポリペプチド鎖(一つの「軽」(L)鎖及び一つの「重」(H)鎖を有する各ペア)の2つのペアからなる免疫グロブリン分子を意味する。抗体の軽鎖はκ及びλ軽鎖として分類される。重鎖はμ、σ、γ、α又はεとして分類される。そして抗体のアイソタイプは、IgM,IgD,IgG,IgA及びIgEとしてそれぞれ定義される。軽鎖及び重鎖において、可変領域及び定常領域は約12以上のアミノ酸の「J」領域によって関連しており、そしてまた、重鎖は約3以上のアミノ酸の「D」領域を含む。各重鎖は重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH)からなる。その重鎖定常領域は3つのドメイン(CH1、CH2、CH3)からなる。各軽鎖は軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)からなる。軽鎖定常領域は一つのドメインCLからなる。抗体の定常領域は宿主の組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介でき、免疫機構の多様な細胞(例えばエフェクター細胞)及び古典的補体系の第一成分(C1q)の結合を含む。そのVH及びVL領域はさらに高度可変領域(相補性決定領域(CDRs)と称される)に細分化でき、その間にフレームワーク領域(FRs)と称される保存された領域が分布する。3つのCDRs及び4つのFRsからなる各VH及びVLはアミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序で配置する:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。各重/軽鎖ペアの可変領域(VH及びVL)は、それぞれ、抗体結合部位を形成する。各領域又はドメインへのアミノ酸の帰属は、Kabat Sequence of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health, Bethesda, Md.(1987 and 1991))、又はChothia & Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901-917; Chothia et al.(1989) Nature 342:878-883の定義に従う。「抗体」という用語は抗体を産生する任意の特定の方法に限られない。例えば、抗体は、特に、リコンビナント抗体、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を含む。抗体は異なる抗体のアイソタイプ、例えばIgG抗体(例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2,IgD,IgE又はIgMでありうる。
【0028】
本発明に用いられるように、抗体の「抗原結合断片」という用語は、「抗原結合部分」としても知られ、全長抗体の断片を含むポリペプチドを意味し、全長抗体が結合するのと同じ抗原に特異的に結合する能力及び/又は抗原に対する特異的な結合について全長抗体と競合する能力を維持する。一般的に、Fundamental Immunology, Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd edition,Raven Press, N.Y.(1989)を参照し,その全体があらゆる目的において参照により本明細書に取り込まれる)。
【0029】
抗体の抗原結合断片はリコンビナントDNA技術又はインタクトの抗体の酵素学的な又は化学的な開裂によって産生されうる。ある場合において、抗原結合断片はFab、Fab’、F(ab’)2、Fd、Fv、dAb、相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(例えば、scFv)、キメラ抗体、二重特異性抗体及び少なくともポリペプチドへの特異的な抗原結合能を十分に授ける抗体の部分を含むポリペプチドを含む。
【0030】
本発明に用いられるように、「Fd断片」という用語はVH及びCH1ドメインからなる抗体断片を意味し;「Fv断片」という用語は抗体の単一のアームのVL及びVHドメインからなる抗体断片を意味し;「dAb断片」という用語はVHドメインからなる抗体断片を意味し(Ward et al.,Nature 341:544-546(1989));「Fab断片」という用語はVL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる抗体断片を意味し;そして「F(ab’)2断片」という用語はヒンジ領域のジスルフィド架橋によって連結する2つのFab断片を含む抗体断片を意味する。
【0031】
ある場合において、その抗体の抗原結合断片は一本鎖抗体(例えばscFv)であり、VL及びVHドメインが対になり、一本鎖ポリペプチド鎖を産生することを可能にするリンカーを介して一価の分子を形成する(例えば、Bird et al.,Science 242:423-426(1988)及び Huston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883(1988)参照)。当該scFv分子は一般的な構造を有する:NH2-VL-リンカー-VH-COOH又はNH2-VH-リンカー-VL-COOH。適当な先行技術のリンカーは繰り返しGGGGSアミノ酸配列又はその変異体からなる。例えば、アミノ酸配列(GGGGS)4を有するリンカーが用いられうるが、またその変異体も用いられうる(Holliger et al.(1993),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448)。本発明において用いられうる他のリンカーはAlfthan et al.(1995),Protein Eng.8:725-731,Choi et al.(2001),Eur.J.Immunol.31:94-106,Hu et al.(1996),Cancer Res.56:3055-3061,Kipriyanov et al.(1999),J.Mol.Biol.293:41-56 及びRoovers et al.(2001),Cancer Immunolにより記載される。
【0032】
ある場合において、抗体の抗原結合断片は二重特異性抗体であって、VH及びVLドメインが一本鎖ポリペプチド鎖に発現している二価の抗体である。しかしながら、2つのドメインが一本の鎖上で対形成するには使用するリンカーは短すぎるため、これらのドメインは別の鎖上でその相補鎖との対形成が余儀なくされ、それによって2つの抗原結合部位が構築される(例えばHolliger P.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993),及びPoljak R.J.et al.,Structure 2:1121-1123(1994)参照)。
【0033】
抗体の抗原結合断片は当業者に既知の従来の技術を用いることによって与えられた抗体から得られうる(例えばリコンビナントDNA技術又は酵素学的若しくは化学的切断)、そしてその抗体の抗原結合断片はインタクトの抗体に対して同様な方法において特異性を評価される。
【0034】
本発明において、本明細書中に特に断りのない限り、「抗体」という用語を意味する場合、インタクトの抗体だけでなく抗体の抗原結合断片も含む。
【0035】
本発明に用いられるように、「McAb」及び「モノクローナル抗体」という用語は、高い相同性の抗体の群由来の抗体又は抗体の断片を意味し、すなわち、同時に起こりうる天然の変異を除いた、同一の抗体分子の群由来である。前記モノクローナル抗体は抗原の単一のエピトープに高い特異性を有する。そのポリクローナル抗体は、モノクローナル抗体に比べ、一般的に抗原の異なるエピトープを認識する少なくとも二以上の異なる抗体を一般的に含む。モノクローナル抗体は、一般的にkohler et al.(Nature,256:495,1975)により最初に報告されたハイブリドーマ技術により得られうるが、しかしまたリコンビナントDNA技術により得られうる(例えば、U.S.P4,816,567参照)。
【0036】
本発明に用いられるように、「ヒト化抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン(レセプター抗体)のCDR領域の全て又は一部が非ヒト抗体(ドナー抗体)のCDR領域により置き換えられた場合の、抗体又は抗体断片を意味し、ここでそのドナー抗体は、期待された特異性、親和性又は反応性を有する非ヒト抗体(例えば、マウス、ラット又はウサギ)でありうる。加えて、レセプター抗体のフレームワーク領域(FRs)におけるいくつかのアミノ酸残基は、対応する非ヒト抗体のアミノ酸残基により又は他の抗体のアミノ酸残基により置き換えられうり、さらに抗体の性能を改善又は最適化しうる。ヒト化抗体のより詳細については、例えば、Jone et al.,Nature,321:522-525;Reichmann et al.,Nature,332:323-329(1988);Presta,Curr.Op Struct.Biol.,2:593-596(1992);及びClark,Immunol.Today21:397-402(2000)を参照。
【0037】
本発明に用いられるように、「エピトープ」という用語は、免疫グロブリン又は抗体が特異的に結合する抗原の部位を意味する。また、「エピトープ」は当業者に「抗原決定基」として称される。前記エピトープ又は抗原決定基は一般的に、分子の化学的に活性化した表面基、例えばアミノ酸又は炭水化物又は糖の側鎖からなり、そして通常特定の三次元構造的な特徴及び特定の電荷的な特徴を有する。例えば、前記エピトープは、一般的に特有の空間的な構造における少なくとも3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14、又は15の連続的な又は非連続的なアミノ酸を含み、それらは「線形」又は「コンフォメーション的」でありうる。例えば、Epitope Mapping protocols in Methods in Molecular Biology,Vol.66,G.E.Morris,Ed.(1996)参照。線形のエピトープにおいて、タンパク質と相互作用する分子(例えば抗体)との全ての相互作用部位はタンパク質の一次アミノ酸配列に沿って線形に存在する。コンフォメーション的なエピトープにおいて、相互作用部位はお互いに離れたタンパク質のアミノ酸残基に渡って存在する。
【0038】
本発明に用いられるように、「単離された」という用語は「天然の状態から人工的な手法により得た」ことを意味する。ある「単離された」基質又は構成物が天然に現れれば、その天然の環境において変化したせいでありうり、又は天然の環境から単離されたか、又は両方でありうる。例えば、ある単離されないポリヌクレオチド又はポリペプチドはある生きた動物において天然に存在し、そしてその天然の状態から高い精製度により単離された同様のポリヌクレオチド又はポリペプチドは、単離されたポリヌクレオチド又はポリペプチドと称される。「単離された」という用語は、基質の活性に影響を与えない人工的な又は合成的な基質又は他の不純物の存在を除かない。
【0039】
本発明に用いられるように、「E.coli発現系」という用語はE.Coli(菌株)及びベクターからなる発現系を意味し、ここでそのE.Coli(菌株)は商業的に利用可能な株より由来するが、例えばGI698、ER2566、BL21(DE3)、B834(DE3)、及びBLR(DE3)に限定されない。
【0040】
本発明に用いられる、「ベクター」という用語は、ポリヌクレオチドがその中に挿入されうる核酸のビヒクルを意味する。前記ベクターがその挿入されたポリヌクレオチドによりコードされたタンパク質の発現を可能にする場合、そのベクターは発現ベクターと称される。そのベクターは形質転換、形質導入、又は形質移入により宿主細胞に導入されうり、ベクターにより運搬される遺伝的な基質因子は宿主細胞内において発現されうる。ベクターは当業者において十分知られているが、これらに限定されるものではないが、例えば、:プラスミド;ファージミド;コスミド;人工染色体、例えば酵母人工染色体(YAC)、バクテリア人工染色体(BAC)又はP1-由来人工染色体(PAC);ラムダファージ又はM13ファージのようなファージ、及び動物のウイルス等を含む。ベクターとして用いられうる動物のウイルスは、これらに限定されるものではないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、及びパルボウイルス(例えばSV40)を含む。ベクターは、発現を制御する因子の変種、これらに限定されるものではないが、例えばプロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択的な因子、及びレポーター遺伝子を含みうる。加えて、さらにそのベクターは複製開始点を含みうる。
【0041】
本発明に用いられるように、「宿主細胞」という用語はベクターを導入するために用いられうる細胞を意味し、これらに限定されるものではないが、E.Coli若しくはbacillus subtilisのような真核細胞、酵母細胞若しくはアスペルギルスのような真菌細胞、S2ショウジョウバエ細胞若しくはSf9のような昆虫細胞、又は動物細胞若しくはヒト細胞、例えば線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞を含む。
【0042】
本発明に用いられるように、「特異的に結合する」という用語は、2つの分子間のランダムでない結合反応、例えば抗体とその標的の抗原との間の反応を意味する。いくつかの態様において、抗原(又は抗原に対して特異的である抗体)と特異的に結合する抗体は、約10-5M未満、例えば約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M又はそれ未満の親和性(KD)により抗体が抗原と結合することを意味する。
【0043】
本発明に用いられるように、「KD」という用語は特異的な抗原抗体反応についての解離平衡定数を意味し、抗体と抗原との間の結合親和性を表すために用いられる。解離平衡定数が小さくなれば、抗体と抗原との結合はより強固となり、そして抗体と抗原との間の親和性がより高くなる。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いたBIACORE装置において特定されるように、一般的に、抗体は抗原(例えばL1タンパク質)に約10-5M未満、例えば10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、又はそれ未満の解離平衡定数により結合する。
【0044】
本発明に用いられるように、「モノクローナル抗体」及び「McAb」という用語は同じ意味を有し、言い換え可能でありうり:「ポリクローナル抗体」及び「PcAb」という用語は同じ意味を有し、言い換え可能でありうり、;「ポリペプチド」及び「タンパク質」は同じ意味を有し、言い換え可能でありうる。そして本発明において、アミノ酸は一般的に当該分野で既知であるように一文字又は三文字表記により示される。例えば、アラニンはA又はAlaにより示されうる。
【0045】
本発明に用いられるように、「有効量」という用語は、所望される効果を得るため又は少なくとも部分的に得るための十分量を意味する。例えば、予防有効量は疾病の発症の予防、停止、又は遅延するための十分量を意味し;治療有効量は、疾病に苦しむ患者における治療のための又は少なくとも部分的に疾病及びその合併症を停止する十分量を意味する。そのような有効量を決定することは当業者の能力の範囲内である。例えば、治療の使用のための有効量は、治療される疾病の重篤性、患者の免疫機構の全体の状態、年齢、体重及び性別のような患者の一般的な状態、薬物投与方法、及びその他の同時に投与される治療等に依存する。
【0046】
先行技術と比較して、本発明は以下の利点を有する:本発明の神経成長因子に対するモノクローナル抗体は神経成長因子に特異的に結合しうり、高い活性等の利点を有し、そして神経成長因子の存在及び/又はレベルを検出するために、並びに神経増殖因子と拮抗させるための薬物を調製するために、並びに神経疼痛、慢性疼痛、及び炎症性疼痛を治療する又は予防するための薬物を調製するために用いられうり、それゆえ良好な投与予後及びマーケットバリューを有する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は本発明の神経成長因子に対するH26L17モノクローナル抗体のSDS-PAGE分析結果を示す。左から右の四つのレーンの試料とその対応のロード量は:1μgの非還元性タンパク質電気泳動用ローディングバッファーにおける抗体;1μgの還元性タンパク質電気泳動用ローディングバッファー;5μLのタンパク質分子量マーカー(マーカー);1μgのウシ血清アルブミン(BSA)である。
【0048】
図2図2はH26L17及びタネズマブのヒトβ-NGF抗原への結合活性の分析結果を示す。
【0049】
図3図3はCCK-8法によるTF-1細胞増殖のH26L17及びタネズマブの阻害について結果の標準曲線を示す。
【0050】
図4図4は本発明の神経成長因子に対するモノクローナル抗体H26L17によってNGF誘導したTF-1細胞増殖の阻害の72時間後の細胞量を示す。
【0051】
図5図5はCCK-8法によるH26L17及びタネズマブによるTF-1細胞増殖の阻害を測定することにおける各群のOD値を示す。
【0052】
図6図6はNGF誘導したTF-1細胞増殖を阻害するH26L17のフィッティングカーブを示す。x軸として抗体濃度(nM)のログを、y軸としてOD450nm値をとり、用量効果カーブフィッティングが実施され、異なる抗体のEC50と比較した。
【0053】
図7図7はLenti-IL-1β―NIH/3T3マウスの膝関節炎疼痛モデルにおいて、患肢の歩行方法のH26L17の効果を示す。
【0054】
図8図8はLenti-IL-1β―NIH/3T3マウスの膝関節炎疼痛モデルにおいて、マウスの体重のH26L17の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の態様は、実施例に参照により以下に詳細に記載される。当業者は以下の実施例が本発明を説明するために用いられるのみであり、本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。特定の技術又は条件の記載のない場合には当該分野の参考文献に記載された特定の技術又は条件に従い(例えば、Guide to Molecular Cloning Experiments, J.Sambrook et al.,著、Huang Peitang et al., 訳、第三版、Science Press参照)、又は製品マニュアルに従い実施した。使用された試薬又は装置は、その製造者が特定されていない場合には、商用利用可能な慣習の製品である。
【0056】
本発明の以下の実施例において、用いたC57BL/6マウスはGuangdong Medical Experimental Animal Centerから購入した。
【0057】
用いられた陽性コントロールのタネズマブ抗体はPfizer社のタネズマブ抗体であった(David L.Shelton. Methods for treating bone cancer by administering a Nerve Growth Factor antagonist antibody.USA,20110243961A1.2011-06-06)。
【実施例
【0058】
実施例1.H26L17重鎖及び軽鎖配列の設計、発現及び精製
【0059】
1.抗体の設計
【0060】
抗ヒトNGF抗体H26L17を作り出すために、本発明者はNGFタンパク質配列及びその三次元結晶構造等に基づく一連の抗体配列を創造的に設計した。大規模なスクリーニング及び分析を通じて、NGFに特異的に結合するH26L17抗体が、最終的に得られた。抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列並びにそれをコードしたDNA配列はSEQ ID NO:1~4に記述された。
【0061】
2.抗体の発現及び精製
【0062】
H26L17の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(SEQ ID NO:1に記述され;その定常領域がIg gamma-1C鎖部である、ACCESSION:P01857)及び軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(SEQ ID NO:3に記述され;その定常領域がIg lambda-2C鎖部である;ACCESSION:P0CG05.1)は独立してpUC57simpleベクター(Genscriptより供給)にクローニングされ、そしてpUC57simple-H26L17H及びpUC57simple-H26L17Lプラスミドをそれぞれ得た。
【0063】
pUC57simple-H26L17H及びpUC57simple-H26L17Lプラスミドを切断(HindIII&EcoRI)し、そして重鎖及び軽鎖のヌクレオチド配列を電気泳動により回収して、独立してpcDNA3.1ベクターにサブクローニングし、そしてそのリコンビナントプラスミドを抽出し、293F細胞に同時導入した。293F細胞に同時導入した後7日間培養し、培養培地を高速遠心し、そして得られた上清を濃縮し、HiTrap MabSelect SuReカラムにロードした。そのタンパク質を溶出剤により一段階で溶出し、標的試料を分離した。その抗体試料をPBS緩衝液内に保存した。
【0064】
前記精製した試料を還元性タンパク質電気泳動用ローディングバッファー及び非還元性タンパク質電気泳動用ローディングバッファーの両方に添加し、続いて煮沸した。H26L17の電気泳動図を図1に示す。還元性バッファーにおける標的タンパク質のサンプルは45kDa及び30kDaであり、そして非還元性バッファーにおける標的タンパク質サンプル(単一の抗体)は150kDaである。
【0065】
本実施例において調製されたH26L17を以下の実施例2から4内で用いた。
【0066】
実施例2.H26L17のヒトβ-NGF抗原への結合活性の分析
【0067】
本試験において、ELISA法をヒトβ-NGFに結合するH26L17のEC50(半有効濃度)を決定し、抗体のヒトβ-NGFへの結合特異性及び親和性を調査した。
【0068】
50μLの0.5μg/mLヒトβ-NGFによりマイクロプレートの各ウエルをコートして、そして4℃で一晩インキュベートした。そのマイクロプレートを一度洗浄して、水気を取り、各ウエルを300μLの(PBSに溶解した)1%BSA溶液によりブロックした。そのマイクロプレートを37℃で2時間インキュベートし、そして3回洗浄した後に水気を取った。抗体を初期濃度として1μg/mLで希釈して、そして1:3の勾配希釈をマイクロプレートで実施し、ブランクのコントロールのウエルを加えて、全7濃度を得た。ウエル当たり100μLの最終液量を有する、二連のウエルを上記の濃度で設定し、そして37℃で30分インキュベートした。マイクロプレートを3回洗浄した後、水気を取り、50μLのホースラディッシュペルオキシダーゼ標識したヤギ抗ヒトIgG(H+L)二次抗体の希釈溶液を各ウエルに添加して、そしてそのマイクロプレートを37℃で30分間インキュベートした。マイクロプレートを4回洗浄した後、水気を取り、50μLのTMB発色溶液を各ウエルに添加し、室温で5分間消光下で発色を進行し、続けて50μLの停止液を各ウエルに添加して発色の進行反応を停止した。反応を停止した後すぐに、マイクロプレートをマイクロプレートリーダーに置き、そして450nmの光の波長を選択して、マイクロプレートの各ウエルのOD値を読み取った。SoftMax Pro 6.2.1 softwareを用いて分析し、データを加工した。表2及び図2より、450nmの読み取り結果ではH26L17が効果的にヒトβ-NGFと結合しうることを示し、そして結合効率は用量依存性であったことが見られうる。横軸として抗体濃度、縦軸として吸光度値をとり、4-パラメータフィッティングカーブをプロットし、0.071nMの結合EC50という結果をもたらし、タネズマブの結合EC50と同等だった。表2のH26L17及びタネズマブのヒトβ-NGFとの結合活性の分析結果を参照。本結果は、0.071nMの結合EC50により、H26L17のヒトβ-NGF抗原への結合が用量依存性であり、タネズマブと同等であったことを示す。
【0069】
表2.H26L17及びタネズマブのヒトβ-NGF抗原の結合活性の分析結果
【表1】
【0070】
実施例3.H26L17の細胞生物活性の分析
【0071】
1.NGF誘導TF-1細胞増殖を阻害することにおけるH26L17の薬理学的な活性の分析
【0072】
NGF依存性TF-1細胞増殖を阻害することにおけるH26L17の効果を分析するために、異なる濃度の抗体、NGF及びTF-1細胞を共培養し、その細胞増殖を培養72時間後に測定した。その特定の工程を以下に示す:
【0073】
TF-1細胞を遠心分離により収集し、カウントし、そして40,000細胞数を96ウエルプレートの各ウエルに播種した。投与のために、コントロール群を3つのNGF濃度0.2、2、及び20ng/mLにより設定し、そして抗体群を20ng/mLのNGFにより設定し、;その抗体濃度を5つの濃度:0.016nM、0.08nM、0.4nM、2nM、及び10nMにより設定した。細胞へNGF/抗体プレミックスを投与する前に抗体及びNGFを37℃で30分間前培養した。また、本試験において、アイソタイプのコントロール群を含む。処理後、(24時間ごとに一度ピペッティング及びホモジナイズし、)細胞を72時間培養した後、細胞培養をCCK-8テストキットの説明書に従い測定した(100μLの液体を分析のために得た)。細胞増殖の標準曲線を図3に示す。細胞インキュベーションの72時間後の細胞増殖の分析結果を図4に示す。図4に見られるように、H26L17は用量依存的な様式においてTF-1の細胞増殖のNGFの刺激効果を阻害する。特に、抗体濃度が0.08nM未満の場合に、前記H26L17抗体は、TF-1細胞増殖のNGFの効果を阻害することにおいて陽性コントロール抗体のタネズマブよりも有意に良い。
【0074】
2.NGF誘導したTF-1細胞増殖を阻害することにおけるH26L17の試験において、NGFを中和するH26L17のEC50
【0075】
NGF誘導したTF-1細胞増殖を阻害することにおけるH26L17の医薬的な活性を分析するため及びNGFを中和するH26L17のEC50を測定するために、異なる濃度の抗体、NGF及びTF-1細胞を共培養し、細胞増殖を培養72時間後に測定した。特定の工程又は方法を以下に簡潔に記載した:
【0076】
TF-1細胞を遠心分離により収集し、96ウエルプレートに1ウエルあたり40,000細胞数で播種した。投与のために、コントロール群を0.06nM、0.3nM、及び1.5nMの3つのNGF濃度に設定した。NGF/抗体プレミックス群におけるNGFの終濃度は1.5nMであり、そして抗体の濃度をそれぞれ、0.0468nM、0.07nM、0.105nM、0.158nM、0.237nM、0.356nM、0.533nM、及び0.8nMで設定した。NGF/抗体プレミックスの細胞への投与前に、その抗体及びNGFを37℃で30分間前培養した。本試験において、1.5nMの濃度を有するアイソタイプの抗体コントロール群を含む。処理後、(24時間ごとに一度ピペッティング及びホモジナイズし、)細胞を72時間培養した後、細胞増殖をCCK-8テストキットの説明書に従い測定した(100μLの液体を分析のために得た)。
【0077】
CCK-8試験において測定した各群のOD値を図5に示した。x軸として抗体濃度(nM)のログを、y軸としてOD450値をとり、用量効果カーブフィッティングを実施し、異なる抗体のEC50と比較し、そしてそのフィッティングカーブを図6に示す。H26L17は用量依存的な様式においてNGF誘導TF-1細胞増殖を阻害しうり、NGFに対して中和活性を示し、そしてその活性は、同じ標的について市販される薬物のタネズマブの活性よりごくわずかに良い。前記二つのNGFへの中和EC50はそれぞれ0.16nMと0.21nMであり、そしてそのH26L17抗体はTF-1細胞増殖のNGFの効果を阻害することにおいて陽性コントロールのタネズマブ抗体よりも有意に良い。
【0078】
実施例4.H26L17は、Lenti-IL-1β―NIH/3T3マウスの膝関節炎疼痛モデルにおいて、患肢の歩行方法及び体重減少の状態を改善できる。
【0079】
関節炎を患う患者は疼痛により跛行及び他の行動変化を経験すると考えられ、そして悪寒による食物摂取の減少により生じる体重減少は疼痛によって誘導される。抗NGF抗体の膝関節痛反応の減少を測定するために、Lenti-IL-1β―NIH/3T3によって誘導されるマウスの膝関節痛モデルを確立し、そして薬物効果をマウスの行動改善によって評価した。本モデルにおいて、Lenti-IL-1β―NIH/3T3細胞をマウスの関節腔内にIL-1βを過剰発現し、注射部位で順番に関節炎及び疼痛を引き起こした。本試験において、1群あたり10動物数で、通常群(生理食塩水、S.C.)、モデル群(抗HEL、20mg/kg,S.C.)、タネズマブ群(タネズマブ、20mg/kg,S.C.)及びH26L17抗体低用量群(H26L17,0.2mg/kg、S.C.)、中間用量群(H26L17,2mg/kg、S.C.)、及び高用量群(H26L17,20mg/kg,S.C.)と称し、60C57BL/6マウスを体重に従い6群に分割した。分類日を0日目(D0)として記録した。分類後、マウスの体重を測定し、そして対応の薬物を分類後D0、D3及びD6にそれぞれ皮下注射した。分類日の投与後に、NIH/3T3細胞懸濁液(50,000細胞数/マウス)を用いて通常群の10C57BL/6マウスの膝関節腔内に接種し、そして残りの群中の他の50C57BL/6マウスの膝関節腔内にLenti-IL-1β―NIH/3T3細胞を接種した。続けて、分類日の投与後D3、D5及びD11にマウスの行動スコア化を実施した。
【0080】
マウスの膝関節痛反応の抗NGF抗体の効果の結果を図7に示す。陽性コントロールのタネズマブ(20mg/kg,S.C.)と比較して、H26L17抗体高用量群(20mg/kg,S.C.)では有意に疼痛反応を減少し;陽性コントロールのタネズマブ(20mg/kg,S.C.)と比較して、H26L17抗体低用量群(0.2mg/kg,S.C.)及びH26L17中間用量群(2mg/kg,S.C.)ではマウスにおいて疼痛を減少することにおける等価な効果を有する。マウス膝関節痛モデルにおけるマウスの体重減少を軽減する抗NGF抗体の結果を図8に示す。H26L17抗体の中間及び高用量群ではマウス膝関節痛モデルにおけるマウスの体重減少を軽減することにおいて、陽性コントロールのタネズマブ抗体と等価の効果を有し、アイソタイプ抗体の抗HELよりも有意に効果を有する。
【0081】
本発明の好ましい態様は、上記に詳細を記載するが、本発明はその態様に制限されない。当業者は本発明の精神に違反することなく、様々な同等の修飾又は置換を構成できる。これらの同等の修飾又は置換は本適用の請求の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
0007499228000001.app