(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】熱可塑性材料の靴底を含む靴及びそのような靴の製造における使用方法
(51)【国際特許分類】
A43B 13/16 20060101AFI20240606BHJP
A43B 13/12 20060101ALI20240606BHJP
A43D 25/20 20060101ALI20240606BHJP
B29C 65/40 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
A43B13/16
A43B13/12 A
A43D25/20
B29C65/40
(21)【出願番号】P 2021506274
(86)(22)【出願日】2019-09-03
(86)【国際出願番号】 EP2019073475
(87)【国際公開番号】W WO2020048989
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-09-01
(32)【優先日】2018-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521400615
【氏名又は名称】コベストロ (ネザーランズ) ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ペイプギャエージ, アルウィン
(72)【発明者】
【氏名】ステパニャン, ロマン
(72)【発明者】
【氏名】ウディング, ジャン ヘンダーリクス
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-192723(JP,A)
【文献】国際公開第2018/134166(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/00-13/42、23/00-23/30
A43D 25/20
B29C 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1物体を第2物体の表面に接着させることによって前記第2物体に機械的に結合された前記第1物体を含むワークピースの組立方法であって、前記第2物体が、溶融温度T
Mを有する熱可塑性材料からなり、前記方法が、
- ホットメルト接着剤を、それが軟化するように温度T
HMに加熱する工程;
- 前記熱可塑性材料がT
Mよりも下の表面温度T
SUBを得るように前記第2物体を加熱する工程;
- 前記加熱されたホットメルト接着剤を、前記加熱された第2物体の表面に塗布する工程;
- 前記第1物体を前記第2物体に適用して前記ワークピースを形成する工程;
- 前記ホットメルト接着剤が硬化するように前記ワークピースを冷却する工程
を含み;
- ここで、(T
HM+T
SUB)/2が(T
M-10℃)以上であるように温度が選択される
方法。
【請求項2】
(T
HM+T
SUB)/2が、-10、-9、-8、-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0、+1、+2、+3、+4、+5、+6、+7、+8、+9、+10、+11、+12、+13、+14、+15、+16、+17、+19又は+20℃からなる群から選択される度数だけT
Mとは異なるように温度が選択されることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱可塑性材料がT
Mに最大でもX℃満たない温度T
SUBを得るように前記第2物体が加熱され、ここでXは、100、90、80、70、60、55、50、45、40、35及び30からなる群から選択されることを特徴とする、請求項
1又は
2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[本発明の一般分野]
本発明は、靴及びそれの製造に関する。より具体的には、本発明は、熱可塑性材料の靴底を持った靴及びそのような靴の製造に使用することができるワークピースの製造方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
現代の靴は、同じ基本部分を含む。全ての靴は、地面と接触した、靴の底部である靴底を有する。最も近代的な靴は、天然ゴム、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)又はエチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)でできている靴底を有するけれども、靴底は、様々な材料でできている可能性がある。靴底は、単一層での簡単な、単一の材料である可能性があるが、ほとんどの場合、それらは多数の構造又は層及び材料を持っており、より複雑である。様々な層が使用される場合、靴底は、インソール(中敷きとしても知られる)、ミッドソール、及びアウトソール(すなわち、地面と直接接触した層)からなり得る。ミッドソールは、アウトソールとインソールとの間の層であり、典型的には衝撃吸収のためにそこにある。
【0003】
全ての靴に共通の別の部分は、アッパーシューズである。アッパーシューズは、足へ靴を保持するのに役立つ。サンダル又はフリップ-フロップなどの、最も簡単な場合には、これは、靴底を所定の位置に保持するための少数のストラップでしかない場合がある。ブーツ、トレーニングシューズ及びほとんどのメンズシューズなどの、クローズドシューズは、もっと複雑なアッパーを有するであろう。この部分は、多くの場合、飾られているか又は魅力的に見えるためのある種のスタイルで作られている。アッパーは、それと靴底との間に縫い付けられている皮革、ゴム、又はプラスチックのストリップによって靴底に結合され得るか、又はそれは、接着剤を使用することによって靴底に接着され得る。運動靴の製造において、アッパーシューズは、ほとんどの場合に、水性溶剤(水系PUD、ポリウレタン接着剤などの)か非水性溶剤(ポリクロロプレン若しくはスチレン-イソプレン-スチレン接着剤などの)かのどちらかを使用する、溶剤系接着剤を使用してミッドソール(後者はそのような靴にとって重要なアイテムである)に接着される。溶剤系接着剤は、比較的高価であり、長い加工時間を本質的に必要とするけれども、且つまた、(多くの非水性溶剤によって引き起こされる)環境損傷及び有害な健康影響を防ぐために特別な注意が講じられる必要があり得るという事実にもかかわらず、そのような接着剤は、ホットメルト接着剤よりも好ましい。ホットメルト接着剤は、(ほとんど)溶剤を含まない及び加工中にいかなる発泡傾向もなしに非常に短い加工時間を可能にするという利点を有するが、比較的滑らかな靴底上での接着特性は比較的悪い。これは、アッパーシューズを熱可塑性材料の靴底に接着させる場合に特に真実である。後者のタイプの材料は、EVAと比較される場合にその容易なリサイクル性のために、その完成発泡体が、材料を単に溶融させ、それを再加工することによるリサイクリングを妨げる熱硬化特性を有する、一般的に使用されるEVA(典型的にはミッドソールのために使用される)よりも原則として好ましいであろう。いまだに、アッパーシューズを熱可塑性靴底に接着させる困難さのために、アッパーシューズを接着させるために溶剤系接着剤を使用するときに、EVAが依然として選り抜きのポリマーである。
【0004】
とりわけホットメルト接着剤を使用する場合に、熱可塑性靴底へのアッパーシューズの低品質接着という問題は、数十年前から公知である。
【0005】
英国特許第1247855号明細書(1967年出願、1971年公開)は、アッパーシューズを可塑化ポリ塩化ビニルに接合させるためにホットメルト接着剤を使用するという問題を記載している。この特許において提案された解決策は、N-ブチル-ベンゼンスルホンアミド又はN-エチル-P-トリルスルホンアミドなどの、極性基を有するある量の窒素含有有機化合物を含むポリエステルホットメルト接着剤を使用することである。しかしながら、そのような化合物は、健康ハザードに関係している。N-ブチル-ベンゼンスルホンアミドは神経毒であり、且つ、ラビットにおいてけいれん性脊髄症を誘発することが見出されている。N-エチル-P-トリルスルホンアミドは、有毒であり、且つ、高度に刺激性である。
【0006】
米国特許第3,168,754号明細書(1961年出願、1965年公開)はまた、靴底取付け以外の分野では、1950年代の終わり頃にホットメルト接着剤が非常に有用であることが分かっていたという事実にもかかわらず、アッパーシューズを靴底に接着させるためにホットメルト接着剤を使用するという問題を述べている。この特許は、「公知のホットメルト接着剤プロセスを用いてアウトソールをアッパーに接合させる試みは、一見したところ、接合されるべき表面の不満足な浸透及び/又は湿潤のために、不十分な接合を与えた」と述べている(1列、28~30行)。提案された解決策は、繰り返し加熱及び冷却のプロセスを用いることによるホットメルト接着剤の浸透及び湿潤特性を高めることを狙った。これは、プロセス時間を増加させ、且つ、特に熱可塑性靴底への接着の場合に、十分な接合を依然として提供し得ない。
【0007】
米国特許第3,212,115号明細書(1959年出願、1965年公開)は、靴の製造におけるホットメルト接着剤の使用が幾つかの欠点をもたらし、その最たるものは、実際に接合構造物の処理又は使用に関わる温度での接合の破損であると述べている。提案された解決策は、溶融した、結晶性ホットメルト接着剤の比較的厚い物体を表面上に堆積させる工程と、接着剤をその結晶化温度よりも下の、しかしその二次遷移温度よりも上の温度に過冷却する工程と、過冷却された接着剤の前記物体を前記表面と第2表面との間でプレスして接着剤の物体をねじ曲げる工程であって、このねじ曲げが結晶化を誘発するはずである工程と、堆積された接着剤の分子の配向を達成して接着剤の引張強度及び靱性を増加させる工程とを含む複雑な方法である。
【0008】
英国特許第2048897号明細書(1979年出願、1980年公開)は、接着剤に対する及び熱可塑性材料へのエラストマー靴底材料の受容性が、多くの場合、満足できないことが分かると記述している(1ページ、14~16行)。提案された解決策は、接着を促進するために、塩化イソシアヌルと、例えばp-トルエンスルホンアミドなどのスルホンアミドとの混合物のような、有機ハロゲン供与体を含む攻撃的なプライマーを使用することである。これらのプライマーは有毒で、刺激性であり、且つ、環境にやさしくない。
【0009】
米国特許第6,497,786号明細書(1997年出願、2002年公開)は、無溶剤接着剤を使用することの潜在的利点を記載しているが、特に今日の靴底材料が高温で変形し得るので、接着剤を塗布できるためにそれらを加熱する必要性は欠点であることを示している。この特許は、靴底を低温に保ちながら接着剤を局所的に加熱するためにマイクロ波を使用することを提案している。しかしながら、解決策は、接着剤を具体的に加熱するための非常に複雑なデバイスを必要とする。これは別にして、ホットメルト接着剤を使用する場合の不十分な接着という問題は、対処されてもいないし解決されてもいない。
【0010】
[本発明の目的]
新規な靴と、先行技術の欠点を軽減する、そのような靴を製造するのに使用することができるワークピースの組立方法とを提供することが本発明の目的である。
【0011】
[発明の要旨]
本発明の目的を達成するために、靴底とアッパーシューズとの間に塗布されるホットメルト接着剤でアッパーシューズに接着させられた熱可塑性材料からなる靴底を含む、新規な靴であって、ホットメルト接着剤が熱可塑性材料と融合している靴が考案されている。
【0012】
本発明者らは、本方法がホットメルト接着剤と熱可塑性材料との融合を提供するときに、非常に滑らかな表面を有する熱可塑性材料の物体に接着させる場合でさえも、標準的なホットメルト接着剤を使用して良好な接着を得ることができることを意外にも発見した。この発見は、熱可塑性材料それ自体が、別の材料、特にホットメルト接着剤への接着をあまり受け入れないが、それが物体の上方領域(すなわち、少なくとも、マイクロメートルレベル以上である、分子スケールを超える厚さ、すなわち、1μm又はより厚い、例えば2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100又はそれ以上のμmの厚さを有する領域)を溶融させる選択肢を提供し、次に、溶融ホットメルト接着剤及び熱可塑性物体の溶融上方領域における分子の融合する、すなわち、混ざる及び一方ではホットメルト接着剤と他方では熱可塑性物体との間のブリッジとして働く新たな材料を形成する選択肢を提供し得る、との認識に基づいている。
【0013】
本発明はまた、靴の製造での使用のためにワークピースの組立方法であって、ホットメルト接着剤を、それが軟化し、塗布することができるように温度THMに加熱する工程、熱可塑性材料がその溶融温度よりも下の温度TSUBを得るように、(THM+TSUB)/2が、熱可塑性材料の前記溶融温度マイナス10℃(TM-10℃)以上であるように熱可塑性物体を加熱する工程を含む方法に関する。これらの特有の温度を適用する場合、利用可能な全熱は、ホットメルト接着剤との接触時に熱可塑性物体の上方領域を溶融させるのに十分であり、例えばアッパーシューズを適用するときに、特に圧力を適用する場合に、2つの溶融物質の融合が可能である(ここで、溶融ホットメルト接着剤は、アッパーシューズを適用する前に靴底にそれ自体塗布されていてもよいか、又はこのアッパーシューズにあらかじめ塗布され、このアッパーシューズだけと接触しながら十分な温度に保たれていてもよい)。熱可塑性物体の薄い上方領域の溶融は、様々な方法で(例えば熱い空気又は液体の対流、放射線等を用いて)成し遂げることができるであろうが、非常に簡単な方法は、ホットメルト接着剤及び物体それら自体の熱容量を用いて熱可塑性物体の上方領域を溶融させるための熱を提供することであることが分かった。
【0014】
いかなる場合にも、ホットメルト接着剤と熱可塑性物体との間の融合を提供することによって、特別な有機分子、プライマーを適用する必要性又は複雑な加熱手順及び設備を用いる必要性なしに、非常に強い機械的結合が得られ得る。
【0015】
[定義]
靴とは、織物又は皮革シーティングなどの、より軽量の材料の付属ヒール及び上方部分(アッパーシューズとも示される)を持った厚い又は堅い靴底を典型的には有する人間の足のための外装である。
【0016】
ホットメルト接着剤とは、ゼロ(1若しくは2重量%未満)の溶剤を持った熱可塑性接着剤である。加熱すると、接着剤は、基材に塗布されるために軟化する。好ましくは、ホットメルト接着剤は、加熱される及び固体から液体へ転換される場合に一次相転移を受ける。
【0017】
熱可塑性材料とは、加熱すると可塑性になり、例えば造形可能になり、冷却すると硬化して所望の形状を保持する、且つ、このプロセスを繰り返し可逆的に受けることができる材料(典型的には合成ポリマー材料)である。熱可塑性材料の溶融温度(TM)は、10℃/分の加熱速度で行われる示差走査熱量測定法(DSC)実験における第2加熱工程中に測定されるASTM D3418に定義されるようなピーク溶融温度である。多数のピークが存在する場合、熱可塑性エラストマーのハードブロックの溶融に対応する第1ピーク(例えば最低温度)が取られるべきである。
【0018】
材料の一次相転移温度とは、材料が密度の不連続変化を受ける温度である。一次転移の例は、溶融(固体から液体への転換)及び蒸発(液体から気体への転換)である。ガラス転移は、密度の不連続変化がないので二次転移である。
【0019】
物体とは、所定の寸法を有する固体の3次元物体である。
【0020】
融合されるとは、溶融することによって又はあたかも溶融することによって、一体化して、特に500~1000倍での走査電子顕微鏡法(SEM)写真において材料間の境界線及び/又ははっきり識別できる境界の不在をもたらす、単一体を形成することを意味する。
【0021】
織物材料とは、ポリマー糸などの繊維性材料から本質的に(50%超、例えば55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%超、又は90%超さえにわたって)なる材料である。
【0022】
熱可塑性材料からなる物体とは、物体の基本構造が熱可塑性材料からなり、この材料が典型的には50%超(重量ベースで)、好ましくは60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は更に100%までの熱可塑性ポリマーを典型的に含有することを意味する。
【0023】
ワークピースとは、最終製品を製造するのに使用される材料のアセンブリである。
【0024】
滑らかな表面とは、人間によって「粗い」として蝕覚によって認められる突起の規則的な又は不規則的なパターンを持たない、すなわち、100μmよりも上、好ましくは90μm、80μm、70μm、60μm、50μm、40μm、30μm、20μm、10μm、9μm、8μm、7μm、6μm、5μm、4μm、3μm、2μm又は1μm以下さえの平均高さの突起のパターンを持たない表面、及びそのような突起の逆として目視により認められる刻み目又は空洞の規則的な又は不規則的なパターンを持たない、すなわち、100μm超、好ましくは90μm、80μm、70μm、60μm、50μm、40μm、30μm、20μm、10μm、9μm、8μm、7μm、6μm、5μm、4μm、3μm、2μm又は1μm以下さえの平均深さの刻み目のパターンを持たない表面である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】ホットメルト接着剤と様々な基材との間の相互作用を図式的に示す。
【
図2】靴の製造での使用のためのワークピースの構成部分を図式的に示す。
【
図3】運動靴のアッパーシューズのために使用される材料の横断面を図式的に示す。
【
図4】ホットメルト接着剤によってもたらされる機械的結合の強度を測定するための試験セットアップを図式的に示す。
【
図5】実施例1の結合された熱可塑性物体のSEM写真である。
【0026】
[発明の実施形態]
本発明による靴の靴底用に特に好適な熱可塑性材料は、熱可塑性エラストマーである。熱可塑性ゴムと言われることもある、熱可塑性エラストマー(TPE)は、熱可塑性及びゴム弾性特性の両方を持った材料からなるクラスのコポリマー又はポリマーの物理的混合物である。市販TPEを6つの総称クラス(スチレンブロックコポリマー、熱可塑性オレフィン、エラストマーアロイ、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性コポリエステル及び熱可塑性ポリアミド)に分類することができる。
【0027】
ある実施形態において、本発明による靴は、発泡組成物の総量を基準として70~99重量%の量で熱可塑性コポリエステルエラストマーを含む発泡組成物を含む靴底を有する。別の実施形態において、発泡組成物は、発泡組成物の総量を基準として70~99重量%の量で熱可塑性コポリエステルエラストマーと、1~30重量%の量で可塑剤とを含む。そのような組成物は、国際公開第2018134166号パンフレットに開示されている。意外にも、本発明者らは、熱可塑性コポリエステルエラストマーと組み合わせての可塑剤の存在が、少ない亀裂を示す、靴における靴底材料として理想的に好適である低密度発泡体を達成する可能性をもたらすことを見出した。より低い密度の無亀裂発泡体は、軽量が有利である用途において、特に運動靴においてそれが重要な特徴であるので、非常に魅力的である。発泡組成物は、当業者に公知であると本明細書では理解される。好ましくは発泡組成物は、とりわけ運動靴での使用のために、0.1~0.7g/cm3、典型的には0.2~0.3g/cm3の密度を有する。熱可塑性コポリエステルエラストマーは、ポリエステル繰り返し単位から構築されるハードセグメントと、別のタイプのポリマーから選択されるソフトセグメントとを含むコポリマーであると本明細書では理解される。
【0028】
更なる実施形態において、熱可塑性コポリエステルエラストマーは、少なくとも1つの脂肪族ジオール及び少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸若しくはそのエステルに由来するポリエステル繰り返し単位から構築されるハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート、二量体脂肪酸及び二量体脂肪ジオール並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるソフトセグメントとを含む。
【0029】
脂肪族ジオールは、一般に2~10個のC原子、好ましくは2~6個のC原子を含有する。それの例としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及びそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、1,4-ブタンジオールが使用される。好適な芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸及び4,4’-ジフェニルジカルボン酸、並びにそれらの混合物が挙げられる。4,4’-ジフェニルジカルボン酸と2,6-ナフタレンジカルボン酸との混合物又は4,4’-ジフェニルジカルボン酸とテレフタル酸との混合物がまた非常に好適である。4,4’-ジフェニルジカルボン酸及び2,6-ナフタレンジカルボン酸又は4,4’-ジフェニルジカルボン酸及びテレフタル酸の間の混合比は、熱可塑性コポリエステルの溶融温度を最適化するために重量ベースで40:60~60:40の間で好ましくは選択される。
【0030】
ハードセグメントは、エチレンテレフタレート(PET)、プロピレンテレフタレート(PPT)、ブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンビベンゾエート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンビベンゾエート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンビベンゾエート及びポリプロピレンナフタレート並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される繰り返し単位として有する。好ましくは、PBTのハードセグメントを含む熱可塑性コポリエステルエラストマーが、有利な結晶化挙動及び高い融点を示し、良好な加工特性並びに優れた耐熱性及び耐化学薬品性を持った熱可塑性コポリエステルエラストマーをもたらすので、ハードセグメントはブチレンテレフタレート(PBT)である。
【0031】
脂肪族ポリエステルから選択されるソフトセグメントは、脂肪族ジオール、及び脂肪族ジカルボン酸に由来する繰り返し単位又はラクトンに由来する繰り返し単位を有する。好適な脂肪族ジオールは、鎖中に一般に2~20個のC原子、好ましくは3~15個のC原子を含有し、脂肪族ジカルボン酸は、2~20個のC原子、好ましくは4~15個のC原子を含有する。それらの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、1,4-ブタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、及びそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、1,4-ブタンジオールが使用される。好適な脂肪族ジカルボン酸としては、セバシン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、グルタル酸、2-エチルスベリン酸、シクロペンタンジカルボン酸、デカヒドロ-1,5-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビシクロヘキシルジカルボン酸、デカヒドロ-2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシル)カルボン酸及び2,5-フランジカルボン酸が挙げられる。好ましい酸は、セバシン酸、アジピン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸である。アジピン酸が最も好ましい。好ましくは、ソフトセグメントは、1,4-ブタンジオールとアジピン酸とから得られ得るポリブチレンアジペート(PBA)である。
【0032】
ソフトセグメントは、個別のセグメントとしてか1つのセグメント中に組み合わせられてかのどちらかで、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシド及びポリテトラメチレンオキシド並びにそれらの組み合わせなどの、ポリアルキレンオキシドの単位を含み得る、脂肪族ポリエーテルであり得る。組み合わせは、例えばエチレンオキシド-キャップドポリプロピレンオキシドである。
【0033】
好ましいソフトセグメントは、ポリテトラメチレンオキシド(PTMO)である。ポリエチレンオキシド(PEO)及びポリプロピレンオキシド(PPO)をベースとするなどのソフトセグメントを形成するために、2つのタイプのグリコールが反応させられているブロックコポリマーを含むソフトセグメントもまた使用することができる。後者はまた、PEOがハードセグメントと最も良く反応するので、PEOブロックがソフトセグメントの末端にあるような、PEO-PPO-PEOと言われる。PTMO、PPO及びPEOベースのソフトセグメントは、より低い密度を有する発泡体を可能にする。
【0034】
ソフトセグメントは、脂肪族ポリカーボネートであり得、少なくとも1つのアルキレンカーボネートからの繰り返し単位で構成される。好ましくはアルキレンカーボネート繰り返し単位として、式:
【化1】
(式中、R
1=アルキルであり、X=2~20である)
で表される。
【0035】
好ましくはR1=CH2であり、x=6であり、アルキレンカーボネートは、それ故、これが物品に高い耐熱性をもたらし、且つ、容易に入手可能であるから、ヘキサメチレンカーボネートである。
【0036】
ソフトセグメントは、二量体脂肪酸又は二量体脂肪ジオール及びそれらの組み合わせであり得る。二量体化脂肪酸は、32個から44個以下の炭素原子を含有し得る。好ましくは二量体化脂肪酸は、36個の炭素原子を含有する。上で開示されたような二量体脂肪酸から誘導され得る二量体脂肪ジオールもまた好適である。例えば二量体化脂肪ジオールは、二量体化脂肪酸のカルボン酸基の、又はそれから製造されたエステル基の水素化による二量体化脂肪酸の誘導体として得られ得る。更なる誘導体は、カルボン酸基、又はそれから製造されたエステル基をアミド基、ニトリル基、アミン基又はイソシアネート基へ転化することによって得られ得る。
【0037】
好ましい実施形態において、発泡組成物は、ハード及びソフトセグメントを有する熱可塑性コポリエステルエラストマーであって、ハードセグメントが、PBT又はPET、好ましくはPBTから選択され、ソフトセグメントが、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリテトラメチレンオキシド(PTMO)、PEO-PPO-PEO及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは低い密度を示す物品を提供するPTMOから選択される、エラストマーを含む。更なる好ましい実施形態において、発泡組成物は、PBT及びPTMOからなる熱可塑性コポリエーテル-エステルエラストマーを含む。
【0038】
可塑剤は、本質的に当業者に公知の物質であり、例えば、エラストマーそれ自体と比べて組成物の硬度を下げる及び/又は破断点歪みを増加させる。可塑剤は、発泡組成物の総量を基準として1~30重量%、好ましくは5~25重量%、更により好ましくは8~20重量%の量で存在する。可塑剤としては、例えば、フタレートエステル、二塩基酸エステル、メリテート及びそれのエステル、シクロヘキサノエートエステル、シトレートエステル、ホスフェートエステル、変性植物油エステル、ベンゾエートエステル、及び石油、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、可塑剤は、トリフェニルホスフェート(TPP)、tert-ブチルフェニルジフェニルホスフェート(モノ-t-but-TPP)、ジ-tert-ブチルフェニルフェニルホスフェート(ビス-t-but-TPP)、トリス(p-tert-ブチルフェニル)ホスフェート(トリ-t-but-TPP)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ジクロロプロピルホスフェート、ビスフェノールAビス-(ジフェニルホスフェート)(BDP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート(TBP)、トリ-2-エチルヘキシルホスフェート、トリメチルホスフェート、エポキシ化大豆油(ESO)、エポキシ化ヤシ油(EPO)、エポキシ化アマニ油(ELO)、アルガン油及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0039】
或いはまた、本発明による靴は、靴底とアッパーシューズとの間に塗布されているホットメルト接着剤でアッパーシューズに接着された熱可塑性材料の靴底を含み、ここで、ホットメルト接着剤は熱可塑性材料と融合しており、及びここで、靴底は熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含む。有益には、靴底は、靴底組成物の総量を基準として70~100重量%の量でTPUを含む。有利には、靴底は、国際公開第94/20568号パンフレット又は米国特許出願公開第2010/0222442号明細書に開示されているなどの、膨張した、すなわち、発泡したTPUを含み得る。熱可塑性ポリウレタン及びそれらの製造方法は周知である。TPUは、(1)短鎖ジオール(いわゆる鎖延長剤)とのジイソシアネート及び(2)長鎖ジオールとのジイソシアネートの反応によって形成される交互の順番のハード及びソフトセグメント又はドメインからなるブロックコポリマーである。反応化合物の比率、構造及び/又は分子量を変えることによって、多種多様の異なるTPUを製造することができる。好ましくは、ポリエステル-ベースのTPU、例えばアジピン酸エステルから誘導されるものが、靴底のために使用される。
【0040】
別の実施形態において、アッパーシューズは、靴底と隣接する織物材料の層を含む。織物材料は、おそらく、構成糸によって提供される不規則な表面のために、いかなる特別な手段も必要とされることなく、ホットメルト接着剤によって靴底に結合されるのに理想的に好適であるように思われる。織物材料は、ポリエステルポリマーから製造された糸などの、ポリマー糸を含み得る。これは、靴底がまたポリエステル材料から製造されている場合に特に有利であり、アッパーシューズと靴底とのアセンブリの容易なリサイクリングを可能にする。インソール、ミッドソール及びアウトソールは、全て、本発明との関連で靴底と考えられる。
【0041】
ある実施形態において、ホットメルト接着剤は、主構成成分として(すなわち、接着剤組成物の少なくとも50重量%の量で)(コ)ポリウレタン、(コ)ポリカーボネート、(コ)ポリエステル、(コ)ポリアミド、(コ)ポリ(エステル-アミド)、それらの混合物及び/又はそれのコポリマーからなる群から選択されるポリマーを含む。好ましくはホットメルト接着剤は、(コ)ポリエステルを主構成成分として含む。(コ)ポリエステルは、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、二量体脂肪酸ジオール、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジ-ペンタエリスリトール及び/又はそれらの混合物から選択されるアルコールと一緒に、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、スベリン酸、ピメリン酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、二量体脂肪酸、セバシン酸、アゼライン酸、スルホイソフタル酸又はその金属塩、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、フランジカルボン酸、トリメリット酸無水物及び/又はそれのジアルキルエスエル、それらの混合物から選択される酸から構築され得る。二量体脂肪酸、二量体脂肪ジオール及び/又は二量体脂肪ジアミン(例えば、Crodaから入手可能な)もまた、ポリマーを得るための潜在的な構築ブロックとして使用され得る。
【0042】
好ましくは、(コ)ポリエステルは、テレフタル酸、2,5-フランジカルボン酸、アジピン酸、フマル酸、二量体脂肪酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、及び/又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの酸を、エチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、二量体脂肪酸ジオール及び/又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのアルコールと反応させることから得られる及び/又は得ることができる。
【0043】
本発明組成物での使用のためのポリエステルを製造するためのエステル化重合プロセスは、当技術分野において周知であり、詳細に本明細書で説明する必要がない。それらは普通は、チタン系又はスズ系触媒などの触媒を任意選択的に使用して及び縮合反応から形成されるいかなる水(又はアルコール)も除去するという条件付きでメルトの状態で実施されると言えば十分であろう。好ましくはポリエステル樹脂がカルボン酸官能性を含む場合、それらは、ポリ酸又は無水物から誘導される。
【0044】
その上別の実施形態において、アッパーシューズ、ホットメルト接着剤及び靴底は、ポリエステル材料から製造される。
【0045】
本発明による靴の再び別の実施形態において、ホットメルト接着剤は、半結晶性であり(すなわち、それは、平衡条件下で凝固するときに、少なくとも部分的に結晶に変わり)、好ましくは1~80J/g、より好ましくは5~60J/g、更により好ましくは10~40J/gの溶融エンタルピーを有する。溶融エンタルピーの測定は、メトラー(Mettler)STARe示差走査熱量計を用いてASTM標準D3418(“Standard Test Method for Transition Temperatures and Enthalpies of Fusion and Crystallization of Polymers by Differential Scanning Calorimetry”)に基づく。実際の測定のためには、およそ10mgの接着剤試料が試料カップに入れられる。この試料が150℃で15分間オーブン中に保たれる。この後、試料が50℃に冷却され、次いで5℃/分のスピードで250℃に加熱される。試料が250℃で1分間保たれ、その直後に5℃/分のスピードで25℃に冷却される。得られたDSCデータから試料ポリマーの溶融エンタルピーが得られる。
【0046】
本明細書で上に示されたように、本発明はまた、本発明による靴を製造するために使用することができるワークピースの組立方法であって、ワークピースが、第1物体を第2物体の表面に接着させることによって第2物体(すなわち、靴底)に機械的に結合された第1物体(すなわち、アッパーシューズ)を含み、第2物体が、溶融温度TMを有する熱可塑性材料からなり、本方法が、
- ホットメルト接着剤を、それが軟化するように温度THMに加熱する工程;
- 熱可塑性材料がTMよりも下の温度TSUBを得るように第2物体を加熱する工程;
- 加熱されたホットメルト接着剤を、加熱された第2物体の表面に塗布する工程;
- 第1物体を第2物体に適用してワークピースを形成する工程;
- ホットメルト接着剤が硬化するようにワークピースを冷却する工程
を含み;
- ここで、(THM+TSUB)/2が(TM-10℃)以上であるように温度が選択される
方法において具象化される。
【0047】
本発明による靴の上記の具体的な実施形態のいずれの技術的特徴もまた、この方法と組み合わせることができる。
【0048】
ワークピースの組立方法の別の実施形態において、第2物体は、全体として加熱される。そのような加熱は、例えば、全体第2物体をオーブン若しくはマイクロ波中で、又は加熱された金型中で温めることによって達成することができる。そのような加熱は、したがって、外部放射線又は対流、すなわち、第2物体の外側のみの加熱によって達成することができる、上方領域の部分加熱とは異なる。
【0049】
特に、この方法では、温度は、(THM+TSUB)/2が、-10、-9、-8、-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0、+1、+2、+3、+4、+5、+6、+7、+8、+9、+10、+11、+12、+13、+14、+15、+16、+17、+18、+19又は+20℃からなる群から選択される度数だけTMとは異なるように選択される。より高い数は、溶融する熱可塑性物体の上方領域のより大きい部分をもたらす。しかしながら有利には、この部分は接合強度は増加させないであろうが、熱可塑性物体の形状及び機械的特性に悪影響を及ぼし得るので、厚くなりすぎるべきではない。それ故に、20℃の好ましい上限。
【0050】
その上更なる実施形態において、第2物体は、熱可塑性材料がTMに最大でもX℃満たない温度TSUBを得るように加熱され。ここでXは、100、90、80、70、60、55、50、45、40、35及び30からなる群から選択される。熱可塑性物体は、その溶融温度に余りにも近い温度に好ましくは加熱されないことが分かった。
【0051】
本発明は、以下の非限定的な実施例を用いて更に説明される。
【0052】
[実施例]
実施例1は、ホットメルト接着剤を使用する2つの熱可塑性物体の結合を記載する。
【0053】
[
図1]
図1は、ホットメルト接着剤4と様々な基材(200、200’及び200”)との間相互作用を図式的に示す。
図1Aにおいて、その硬化形態での(したがって、液体形態での塗布及びその凝固温度よりも下へのその後の冷却後の)ホットメルト接着剤の層4と、物体200の滑らかでない表面との間の相互作用が描かれている。物体の表面は、硬化ホットメルト接着剤のための固着点として役立つ様々な突起(201)及び刻み目(202)を有する。これは、ホットメルト接着剤4と物体200との間の良好な機械的結合をもたらす。
【0054】
図1Bにおいて、物体200’が、ホットメルト接着剤4のための固着点の不在につながる、滑らかな表面を有する状況が描かれている。これは、ホットメルト接着剤4の層と物体200’との間の機械的結合が、たとえあったとしても、非常に弱いことを意味する。層は、層のどちらかにわずかな引張力を用いることによって容易に分離することができる。
【0055】
図1Cにおいて、物体200”が熱可塑性材料でできており、且つ、物体200”の上方領域がその溶融温度よりも上に加熱されることを確実にするために、ホットメルト接着剤がその塗布の直前に十分加熱される状況が描かれている。このように、溶融したホットメルト接着剤及び溶融した物体200”の分子は、混合し、一体化して(融合して)1つの新たな中間材料204を形成し得、その材料は、究極的に、(溶融した材料全てが凝固した後)ホットメルト接着剤4の層と物体200”との間のメカニカルブリッジとして役立ち得る。個別に識別可能な層として
図1Cの略図において示されているけれども、実際には層4及び200”は、1つの純粋な材料から、徐々に変化する中間組成の混合材料の別の材料へと徐々に変化する。
【0056】
[
図2]
図2は、(ワークピースそれ自体以外を必要としない)靴の製造での使用のためのワークピース1の構成部分を横断面で図式的に示す。この図において、部分2は、この場合に、発泡組成物の総量に対して85重量%の量でのコポリエーテル-エステルエラストマー(コポリエーテル-エステルエラストマーの量に対して55重量%のPTMO及び45重量%のPBT)と、15重量%の可塑剤としてのエポキシ化大豆油とを含み、0.24g/cm
3の密度を有する及び160℃のT
Mを有する発泡体をもたらす発泡組成物からなる、靴の(ミッド)ソールである。アッパーシューズ3は、織物ベース層とポリウレタンのトップコートとからなる(
図3を参照されたい)。部分30は、ホットメルト接着剤を使用してアッパーシューズ3を靴底2に接着させるために使用されているアッパーシューズ3のセグメントである(実施例1を参照されたい)。点線においてアウトソール20が描かれている。
【0057】
[
図3]
図3は、運動靴のアッパーシューズ3のために使用される材料の横断面を図式的に示す。アッパーシューズ3は、織物ベース層31とポリウレタンのトップコート(32)とからなる。織物層31は、
図2に示されるように靴底と結合するために使用されるであろう層である。
【0058】
[
図4]
図4は、(標準化方法ASTM D3936に従って)ホットメルト接着剤によってもたらされる機械的結合の強度を測定するための試験セットアップを図式的に示す。このセットアップにおいて、幅Lを有する2つの物体2及び3が、ホットメルト接着剤4の層で機械的に結合されている。これらの層が、分離力Fを及ぼす、末端の1つで分離される。適切な靴を製造するために、F/Lは、1インチ当たり30ニュートンよりも大きい(1cm当たり11.8ニュートンよりも大きい)必要がある。
【0059】
[実施例1]
実施例1は、ホットメルト接着剤を使用する熱可塑性物体の結合を記載する。ホットメルト接着剤が第1物体を熱可塑性物体に接着させるために使用できるかどうかを評価するために、2つの熱可塑性物体、この場合には
図2に関連して記載されたような発泡熱可塑性物体を選んだ。これらの物体の溶融温度T
Mは、(この特許出願において記載されるようなASTM D3418-03で測定される)160℃である。第1試みにおいて、約110℃の一次転移温度(固体から液体)を示す、27±3J/gの溶融エンタルピー(その測定は、メトラーSTARe示差走査熱量計を用いるASTM標準D3418に基づく)を有するポリエステルホットメルト接着剤を使用した。ホットメルトを180℃の、したがってその溶融温度よりも十分に上の温度に、及びこのホットメルトを使用して強い結合を得るために一般的であるレベルで加熱した。ホットメルト接着剤を塗布する前に80℃~100℃の範囲の、(T
HM+T
SUB)/2が130℃から140℃まで、すなわち、T
Mよりも30°~20°下で変わることを意味する、様々な温度に熱可塑性物体を予熱した。接着剤の塗布の直後に、両物体を押し付けた。これらの場合のどれにおいても、良好な機械的結合を得ることができなかった。F/Lは、各ワークピースについて5N/インチ未満の値であった。これは、ホットメルト接着剤を使用して熱可塑性材料を十分に結合することができないという常識を裏付けた。
【0060】
第2の試みにおいて、ホットメルト接着剤を210℃(すなわち、ポリエステルホットメルト接着剤が分解する(分解し始める)であろう温度、すなわち、約250℃よりも依然として十分に下)に、及び熱可塑性物体を、(T
HM+T
SUB)/2が165から170℃まで、すなわち、T
Mよりも5°~10°上で変わることを意味する、120~130℃の範囲の温度に加熱した。物体の片側か両面かのどちらかに溶融接着剤を提供した。第1実験において使用されたタイプ(「タイプ1」)のポリエステル接着剤に加えて、別のタイプ(「タイプ2」)をも使用した。全ての他の変数を第1実験におけるのと同じものに保ち、このように、2つの熱可塑性物体間の非常に良好な機械的結合を得ることができた。データを下の表1に示す。
図5に、650倍の拡大で、タイプ2接着剤を使った実施例について熱可塑性物体間の境界を識別できないことを実証する、走査電子顕微鏡法(SEM)写真を示す。
図5においてアッパーシューズ3は、
図2に図式的に描かれているのと同じようにミッドソール2に結合されている。
【0061】
これは、単に(THM+TSUB)/2が(TM-10℃)以上であるように温度を選ぶことによって、特定の有機結合分子、プライマー又は複雑な加熱-冷却サイクルを当てにすることなく、(非常に)高い機械的強度を持った結合の提供を、様々なホットメルト接着剤について得ることができることを明らかにする。
【0062】
【0063】
上記の実験をまた、TPUを含む発泡組成物からなる熱可塑性物体を使用して行った。同様な結果が得られ、したがって高い機械的強度の結合が提供された。