(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】構造化充填物
(51)【国際特許分類】
B01J 19/32 20060101AFI20240606BHJP
【FI】
B01J19/32
(21)【出願番号】P 2021510469
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(86)【国際出願番号】 AU2019050963
(87)【国際公開番号】W WO2020047613
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-26
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】500534843
【氏名又は名称】カーティン ユニバーシティ
【住所又は居所原語表記】KENT STREET, BENTLEY WESTERN AUSTRALIA 6102 AUSTRALIA
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バテリア、テジャス ジャグディッシュ
(72)【発明者】
【氏名】スン、ピャオ
(72)【発明者】
【氏名】ウティカール、ランジート パンドゥラングラオ
(72)【発明者】
【氏名】パリーク、ヴィシュヌ クマール
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンズ、ジェフェリー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】テイド、モージズ オルダヨ
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-067819(JP,A)
【文献】特開平04-045846(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0116871(US,A1)
【文献】実開昭51-157562(JP,U)
【文献】特開平10-043582(JP,A)
【文献】特表2008-520420(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0230613(US,A1)
【文献】カナダ国特許出願公開第02225293(CA,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0121811(US,A1)
【文献】中国実用新案第201725186(CN,U)
【文献】米国特許第05363909(US,A)
【文献】国際公開第2019/001775(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0076815(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の軸線を有する本体と、
前記本体の軸線の周囲を回転し、且つ前記本体の少なくとも一部に沿って連続的に延在する複数の湾曲した流体流路と、
を備え、
前記本体は複数のシートを備え、各シートは螺旋構造を有すると共に、前記本体の軸線の周囲を回転し、且つ前記本体の少なくとも一部に沿って延在する連続した
螺旋面を形成し、
前記複数の流体流路は、前記複数のシートによって画定され、
前記各流体流路は、一定の半径で前記軸線の周りを回転し、
前記複数のシートは
前記長手方向の軸線に垂直な方向に互いに平行に配置される、
流体の処理に使用される構造体。
【請求項2】
前記各流体流路は、前記軸線の周りを複数回回転する、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記各流体流路は、幅および深さを有し、前記幅は、前記深さよりも大きい、請求項1または2に記載の構造体。
【請求項4】
前記各流体流路は、前記複数のシート内の複数の波形によって形成されるか、またはそれを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項5】
前記各流体流路は、前記複数のシートの表面から離れて延在する1つまたは複数の壁を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項6】
前記本体は、互いに隔離された複数の流体流路を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項7】
前記流体流路は、同軸に配置される、請求項6に記載の構造体。
【請求項8】
前記流体流路が互いに直線的に配置される、請求項6または7に記載の構造体。
【請求項9】
壁が、相互に隔離された流体流路を区切る、請求項6~8のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項10】
前記流体流路が異なる配向を有する、請求項6~9のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項11】
前記各流体流路は、前記流体流路の表面積を増加させる1つ以上の突出部を備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項12】
前記各流体流路は、1つ以上の開口部を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項13】
前記本体は、内部容積を画定し、前記各流体流路は、前記内部容積内に配置される、請求項1~12のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項14】
複数の物体を含み、前記物体が1つまたは複数の多角形の形状であり、前記多角形が互いに平面充填することができる、請求項1~13のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項15】
前記構造体の直径が100mm以下である、請求項1~14のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項16】
前記軸線は、前記本体の重心に位置する、請求項1~15のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項17】
前記構造体は、充填床内で使用するための充填物構造体である、請求項1~16のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項18】
前記構造体は、モジュラー構造体ユニットを形成し、複数のモジュラー構造体ユニットは、互いに組み合わされて、構造体アセンブリを形成することができる、請求項1~17のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項19】
請求項18に記載のモジュラー構造体ユニットを複数備える構造体アセンブリ。
【請求項20】
前記構造体アセンブリの直径が、前記複数のモジュラー構造体ユニットのうちの1つの直径の少なくとも2倍である、請求項19に記載の構造体アセンブリ。
【請求項21】
前記
構造体アセンブリの最大直径が500mm以下である、請求項19または20に記載の構造体アセンブリ。
【請求項22】
流体入口および流体出口を有する中空の本体と、その間に画定される流体流路と、前記流体流路内に位置する請求項1~18のいずれか一項に記載の構造体と、を有する流体を処理するためのシステム。
【請求項23】
請求項1~18のいずれか一項に記載の構造体を備える充填床。
【請求項24】
請求項1~18のいずれか一項に記載の構造体に前記流体を通す工程を有する、流体を処理する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化学工業および加工工業用の充填床に使用される構造化充填物に関する。
【背景技術】
【0002】
構造化充填物(または充填物構造体)など、流体の処理に使用される構造体は、化学工業および加工工業用の充填床に使用される充填物の一形態である。充填床の目的は、気体/液体界面を増加させ、吸収カラムにおける物質移動を増加させることである。構造化充填物を通過する流体の物質移動は、流体の濃度勾配、構造化充填物の表面積、および物質移動定数に関係する。濃度勾配は構造化充填物の使用に依存してある点まで調整でき、物質移動定数は比較的一定のままである。構造化充填物の性能を変更する1つの方法は、充填物の表面積を変更することである。しかし、表面積を調整することができる限界を決定する性能要件がある。例えば、高い表面積は、一般に、物質移動には好ましいが、表面積が高すぎる構造化充填物は、液体によって閉塞される流体チャネルによる汚損の影響を受けやすい場合がある。さらに、圧力降下などの問題を最小化するために、特定の充填アーキテクチャが必要であるが、これらのアーキテクチャは、一般に、物質移動などの妥協をもたらす。したがって、構造化充填物の全体的な性能は一般に妥協点である。
【0003】
構造化充填物は、一般に、ガスなどの流体が充填物を通過するときに流れ方向に急激な変化(例えば90°)を加えなければならず、液体が急峻な経路(例えば、法線面に対して30°60°)をたどらなければならない一連の波形シートで構成される。この設計は、1960年代に出現して以来、大きく変わっていない。しかしながら、現在の構造化充填物の設計は、圧力低下の点で理想的ではなく、また物質移動の持続牲の点でも理想的ではない。
【0004】
本明細書において何らかの先行技術を参照する場合には、そのような引例は、オーストラリア又は他の国における当該技術における技術常識の一部を構成するものではないことを理解されたい。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、流体の処置において使用される構造体を提供し、軸線を有する本体を備え、本体は、複数のシートを有し、前記複数のシートにおける隣接するシートは、シートが本体の一方の端部から本体の他方の端部に向かって延在するときに、軸線の周囲を回転する湾曲流体流路を画定する。少なくとも1つのチャネルは、1つまたは複数のシートの少なくとも一部に沿って延在してもよい。
【0006】
本開示は、また、流体の処置に使用される構造体であって軸線を有する本体を備えるものを提供し、前記本体は複数のシートを備え、各シートは、各シートが、前記本体の第1の端部から本体の第2の端部に向かって軸線の少なくとも一部に沿って延在するときに、軸線の周りを回転する連続表面を形成し、複数のシートは、隣接するシート間に連続した流路が形成されるように、互いに相対的に配置される。少なくとも1つのチャネルは、複数のシートのうちの1つまたは複数のシートの少なくとも一部に沿って延在してもよい。各シートの平面は、軸線に対して横方向に角度を持たせることができる。連続流路は、流路および/または流路を流れる流体が連続的に同じ方向に回転するように一定であってもよい。
【0007】
また、本開示は、流体の処理に使用される構造体を提供し、前記構造体は、軸線を有する本体と、前記本体の前記軸線の周囲を回転しかつ少なくとも一部に沿って延在する少なくとも1つの湾曲した流体流路と、を含む。
【0008】
前記構造体は、充填床内で使用するための充填物構造体であってもよい。
【0009】
本体の軸線の周りを回転し、少なくとも一部に沿って延在する流体流路を形成する湾曲した流路を提供することは、例えば、その流れ方向を90°変えなければならない流体の発生を減らすのに役立つことがある。湾曲は、例えば、流路を流れる流体が、軸線の周りを時計回りまたは反時計回りに回転するように一定であってもよい。これの利点は、流体が体内を流れるときに、体全体の圧力降下が低減され得ることであり得る。
【0010】
湾曲した流路は、一定の半径で軸線の周りを回転してもよい。例えば、曲線は、軸線を中心として半径方向に対称であってもよい。このようにして、流体流路を流れる流体が、方向の90°変化などの急激な方向の変化を受けない場合に、均一な湾曲流路が形成され得る。例えば、軸線の周りを回転する曲線は、螺旋の場合のように、ほぼ一定であり得る。少なくとも1つの流路は、軸線に対して半径方向の流体の流れを最小限に抑えることができる。これは、流体が本体のエッジに向かって移動して溜まること、例えば本体が円筒であって流体が円筒の側壁に溜まることを防止し得る。本体の縁に向かって移動して溜まることは、流体の表面積を減少させ、これは、流体間の物質移動および熱交換の減少をもたらし得る。
【0011】
流体流路は、連続的であってよく、例えば、途切れることのない流路であってもよい。少なくとも1つの流路は、軸線の周りを複数回回転してもよい。少なくとも1つの流路は、1回転の一部のみ、例えば360°未満で軸線の周りを回転してもよい。少なくとも1つの流路の幅は、流路の深さよりも大きくてもよい。深さよりも大きな幅を有することは、少なくとも1つの流路を通過する流体の表面積を増加させるのに役立つ可能性がある。より大きな表面積は、1つ以上の流体間の物質移動および/または熱交換を増加させるのに役立ち得る。
【0012】
少なくとも1つの流路は、本体の長さに沿って連続的に延在してもよい。例えば、少なくとも1つの流路は、本体の第1の端部から第2の端部まで延在してもよい。少なくとも1つの流路の端部は、流体の入口および/または出口として使用されてもよい。
【0013】
本体は、1つまたは複数のシートを備えてよい。少なくとも1つの流路は、1つまたは複数のシートのうちの少なくとも1つによって画定されるか、または構成されてもよい。あるいは、またはそれに加えて、前記少なくとも1つの流路は、前記1つまたは複数のシートの表面から離れて延在する壁によって形成されてもよい。各シートは螺旋構造を有していてもよい。各シートは螺旋構造を有していてもよい。各シートは螺旋構造を有していてもよい。前記少なくとも1つの流路は螺旋状の流路を有していてもよい。
【0014】
いくつかの実施態様において、本体は、互いに隔離された複数の流路を有する。相互に隔離された流路は、同軸に配置されてもよく、その代わりに、またはそれに加えて、互いに直線的に配置されてもよい。いくつかの実施態様において、本体は、第1の流路を有する第1の領域と、第2の流路を有する第2の領域とを有する。第2の領域は、第1の領域と同軸に配置されてもよい。第2の領域は、第1の領域に対して直線状に配置されてもよい。壁は、相互に隔離された流路(例えば、第2の領域からの第1の領域)を少なくとも部分的に区切ることができる。相互に隔離された流路は、異なる配向を有し得る。例えば、第1の流路は、軸線に対して第1の配向を有し、第2の流路は、軸線に対して第2の配向を有することができる。第1の配向は、第2の配向とは異なっていてもよい。例えば、第1の配向は、時計回り方向に軸線の周りを回転し、第2の配向は、反時計回り方向に軸線の周りを回転し得、またはその逆も可能である。
【0015】
いくつかの実施態様において、構造体は、複数の流路を含む。1つの実施態様において、軸線に垂直な断面で見ると、少なくとも1つの流路における2つ以上の流路は、前記2つ以上の流路が、本体の対向する側面の間の軸線を横切って延びるように、互いに相対的に配置される。例えば、軸線に垂直な断面で見た場合、前記複数の流路の少なくとも一部は、互いに平行に配置された複数の平面上に位置決めされてもよい。あるいは、または、軸線に垂直な断面で見た場合に加えて、いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの流路の2つ以上の流路は、2つ以上の流路が、共通点から半径方向外側に延びるように、互いに相対的に配置される。例えば、軸線に垂直な断面で見た場合、複数の流路の少なくとも一部は、共通点から半径方向外側に延びる複数の平面上に位置決めされてもよい。複数の共通点があってもよい。共通点は、本体の軸線に沿って配置されてもよい。共通点は、本体の軸線に対して半径方向にオフセットされてもよい。平面は、仮想的であってもよいし、複数のシートによって画定されてもよい。
【0016】
いくつかの実施態様において、前記少なくとも1つの流路に、流路の表面積を増大させる1つ以上の突出部を設けてもよい。前記1つ以上の突起部は、流路に沿って及び/又は遠ざかるディボット、バンプ、リッジ、谷、壁、フランジ及び構造体を含んでよい。前記少なくとも1つの流路は、1つまたは複数の開口部を備えてよい。複数の流路が使用される場合、開口は、隣接する流体流路が流体連通状態にあることを可能にし得る。
【0017】
前記本体は、内部容積を画定することができる。前記少なくとも1つの流路は、内部容積内に配置されてもよい。本体の周囲は、隣接する本体を互いに平面充填することを可能にする多角形によって規定されてもよい。このような多角形を用いる場合、その構造はモジュラーユニットであってもよい。モジュラーユニットを一緒に積み重ねて、例えば、充填床で使用するためのアセンブリを形成することができる。
【0018】
構造体の直径は、100mm以下であってもよい。軸線は、本体の重心に位置してもよい。構造体は、充填床内で使用するための充填物構造体であってもよい。構造体は、モジュラー構造体ユニットを形成することができる。複数のモジュラー構造体ユニットは、他のモジュラー構造体ユニットと組み合わされて、構造体アセンブリを形成してもよい。
【0019】
本開示は、また、上述のような複数のモジュラー構造体ユニットを備える構造体アセンブリを提供する。構造体アセンブリの直径は、複数のモジュラー構造体ユニットのモジュラーユニットの直径の少なくとも2倍であってもよい。構造体アセンブリの最大直径は、500mm以下であってもよい。構造体アセンブリは、他の構造体アセンブリと組み合わされて、充填床を形成してもよい。
【0020】
構造体の実施形態は、反応器、および/または物質伝達装置および/または熱伝達装置として使用されてもよい。
【0021】
また、本開示は、流体入口および流体出口を有する中空本体と、その間に画定される流体流路と、流体流路内に配置される上述のような構造とを含む、流体を処理するためのシステムを提供する。
【0022】
また、本開示は、上述の構造を含む充填床を提供する。
【0023】
また、本開示は、流体を処理する方法を提供し、上述のように、流体を、構造体を通過させることを含む。
【0024】
また、開示は、上述の方法を使用して処理される流体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
ここで、実施形態を付随する図のみを参照して説明するが、これらの図面には限定されない。
【
図2】
図2は、充填物構造体の別の実施形態を示す。
【
図3】
図3は、充填物構造体の別の実施形態を示す。
【
図4】
図4は、モジュラー充填物構造体ユニットを有する充填物構造体の一実施形態を示す。
【
図5】
図5は、充填物構造体の別の実施形態を示す。
【
図7】
図7は、充填物構造体の別の実施形態を示す。
【
図8】
図8は、従来技術の充填物構造体の断面に亘る流体分布を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態の断面に亘る流体分布を示す。
【
図10】
図10は、実施形態の充填物構造体と従来技術の構造体との性能を試験するために使用されるシステムの一実施形態を示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態と従来技術の構造体との間の比較実験および理論的圧力低下結果を示す。
【
図12】
図12は、種々のセグメント長(mm)を有する本発明の充填物構造体の実施例と、従来技術の充填物構造体についての比較圧力降下結果を示す。
【
図13】
図13は、種々の単位長さ当たり回転数を有する本発明の充填物構造体の様々の実施形態および従来技術の充填物構造体に関する圧力降下の比較結果を示す。
【
図14】
図14は、本発明の充填物構造体の実施形態と従来技術の充填物構造体との性能を試験するために使用される試験システムの一実施形態を示す図である。
【
図15】
図15においてaは、5mmのセグメント長を有する異なる直径(mmで表される)の構造体の一実施形態について、単位体積あたりの得られる表面積に対するαの効果を示し、bは、8mmのセグメント長を有する異なる直径(mmで表される)の構造体の一実施形態について、単位体積あたりの得られる表面積に対するαの効果を示し、cは、12mmのセグメント長を有する異なる直径(mmで表される)の構造体の一実施形態について、単位体積あたりの得られる表面積に対するαの効果を示す。
【
図16a】
図16aは、種々のセグメント長(mmで表される)を有する直径50mmの構造体の一実施形態について、回転数と単位体積当たりの表面積との間の関係を示す。
【
図16b】
図16bは、種々のセグメント長(mmで表される)を有する直径100mmの構造体の一実施形態について、回転数と単位体積当たりの表面積との間の関係を示す。
【
図16c】
図16cは、種々のセグメント長(mmで表される)を有する直径200mmの構造体の一実施形態について、回転数と単位体積当たりの表面積との間の関係を示す。
【
図17】
図17は、異なる直径(mm)を有する構造体について、セグメント長(mm)の変化に対する単位体積当たりの表面積から導かれる非直線性定数を示す。
【
図24】
図24は、直径100mmを有する充填物構造体の一実施形態の直径を横切る流体質量流束ヒートマップを示す。
【
図25】
図25は、直径200mmを有する充填物構造体の一実施形態の直径を横切る流体質量流束ヒートマップを示す。
【
図26】
図26は、直径200mmを有するが、より小さなモジュラーユニットおよび比較の従来技術の構造から作製される、充填物構造体アセンブリの実施形態と比較して、直径200mmを有する充填物構造体の実施形態の圧力降下関係を示す。
【
図27】
図27は、異なる長さを有する充填物構造体の実施形態および比較従来技術の構造に対する圧力降下の関係を示す。
【
図28】
図28は、本開示の充填物構造体の異なる実施形態の濡れ性を示す。
【
図29】
図29は、従来技術の充填物構造体と比較した本開示の実施形態の充填物構造体のHETPプロットを示す。
【
図30】
図30は、種々のギャップサイズを有する本開示の構造体の実施形態について圧力降下関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1および
図1a~
図1cは、充填物構造体10の実施形態を示す。充填物構造体10は、ガスまたは液体のような流体の処理に使用される充填床に使用される。充填物構造体10は、円筒12の形態の細長い本体を有する。円筒12は、第1の端部14と第2の端部16とを有し、内部容積を規定する。円筒12の軸線18は、第1の端部14と第2の端部16との間に延在する。
図1に示す充填物構造体10の長さは、充填物構造体10の特徴をより容易に理解できるように短く示されている。充填物構造体10の長さは、
図1に示されるものに限定されず、軸線18に沿って延在する充填物構造体10の長さは、使用要件に応じて変化し得る。また、充填物構造体10は、チャネル(または溝)20の形態の複数の流路を有する。チャネルは、溝とも呼ぶことができる。
【0027】
チャネル20は、複数のシート22に形成された波形によって与えられる。しかしながら、他の実施形態では、各チャネルは、シート22で分離される構造として提供される。複数枚のシート22は、互いにほぼ平行に配置されている。チャネル20は、
図1aに最もよく見られるように、幅Wおよび深さDを有する。また、チャネル20は、セグメント長Sを有しており、隣接するセグメントは、頂点20aで出会う。セグメント長は、チャネル20の幅Wおよび深さDに関連する。一般的に、幅Wは、チャンネル20内に存在する流体の表面積が最大の表面積を有するように、深さDよりも大きい。このようにして、チャネル20内の任意の流体を薄膜として存在させることができる。薄膜は、異なる流体間の物質移動および熱交換プロセスを最大化するのに役立つので、有利である。
【0028】
各シートは、第1の側面22a及び第2の側面22bを有する。第1の組の頂点20aが第1の側部22aに形成され、第2の組の頂点20bが第2の側部22bに形成される。隣接するシート間にギャップGが形成される(
図1b)。
図1において、シート22は、第1の組の頂点20aが隣接するシート22の第2の組の頂点20bに面して整列されるように、互いに相対的に配置されている。この配置は、隣接するシートが幅Wの半分だけオフセットされている、平行な側壁のない六角形の外観を与える。しかしながらいくつかの実施形態において、シート22は、第1の組の頂点20aが全て第1の組の仮想線に沿って位置合わせされ、第2の組の頂点20bが全て第1の組の仮想線に平行な第2の組の仮想線に沿って位置合わせされるように配置される。
【0029】
図1cの円筒12の外壁は、明瞭にするために省略されている。円筒12の外壁は、全ての実施形態において必要とされるわけではない。
【0030】
チャネル20は、第1の端部14から第2の端部16に延び、同時に軸線18の周りを回転して均一な円形流体流路を作る。したがって、チャネル20は、連続した曲面(曲線)流路が形成されるように連続した曲面を形成している。
図1のチャネル20(波形を介して)を形成するシート22は、円筒12の長さに沿って、すなわち第1の端部14から第2の端部16まで延在する螺旋面のような曲面として形成される。したがって、各チャネルは、螺旋状の経路において第1の端部14から第2の端部16まで延びている。螺旋状の流路を設けることは、流体の流れのあらゆる急激な変化を最小限に抑えるのに役立つ可能性がある。例えば、流体は、軸線18を中心とする時計回りまたは反時計回りのような一定の回転方向に充填物構造体10を通って流れるが、これら2つの回転方向の間では変化しない。流体の流れの急激な変化を最小限に抑えることは、圧力低下の発生を減らすのに役立つ。別のやり方をすれば、円筒12を通る曲がりくねった流体流路は、従来技術の充填物構造体で一般に使用されているように、最小限に抑えられる。別のやり方をすれば、円筒12を通る曲がりくねった流体流路は、従来技術の充填物構造体で一般に使用されているように、最小限に抑えられる。
【0031】
各チャネルは、隣接するチャネルからの別個の隔離された流体流路を有するため、チャネル内の任意の流体流(例えば、液体)は、チャネルと同じ経路をたどる傾向がある。この利点は、液体が軸線に対して半径方向に移動しない傾向があることである。例えば、円筒12の側壁での流体の蓄積、または軸線18に向かって半径方向内側への流体の移動は、最小化または排除され得る。流体は円筒12の特定の位置で溜まったり、蓄積したりしない傾向があるので、チャネル20はまた、高い表面積を維持するのに役立つ。また、チャネル20は、流体が円筒12を通過するときに、チャネル20内の流体の表面積をほぼ一定に保つのに役立つ。しかしながら、当業者は、円筒12を通る流体の通過中の物質移動(例えば、蒸発)による液体への変化が、流体の表面積を変化させ得ることを理解するであろう。
【0032】
チャネル20は、全ての実施形態において円筒の全体に沿って延在する必要はない。いくつかの実施態様において、チャネル20は、円筒の一部に沿って延びるに過ぎない。例えば、シート22内の構造によってチャネル20が形成される場合、シート22の一部は、実質的に平面であり、軸線に垂直な断面で見たときに波形などはない。
【0033】
図1の実施形態では、複数のシート22が使用される。隣接するシート22の間に導管24が形成される。シート22は螺旋構造を有するので、導管24も螺旋経路を採用する。導管24の特定の螺旋状経路は、シート22の特定の螺旋状構造に依存する。シートには螺旋構造が使用されるので、平坦なシートをシート22と単純に交換することはできない。別のやり方をすれば、シート22の螺旋構造は、平坦または一般的な平面構造から形成されない。例えば、シート22は、平板が可鍛性である形態、例えば加熱後に平板を恒久的にねじって螺旋構造を有するシートを形成することによって形成することができる。いくつかの実施態様では、シート22を製造するために付加製造法を使用する。隣接するシート間の間隔は、充填物構造体10の意図された用途によって決定される。
【0034】
図1の実施形態では、シート22は、第1の端部14から第2の端部16まで連続的に延びている。これは、導管24も第1の端部14から第2の端部16まで連続していることを意味する。このため、チャネル20は一次チャネルとみなすことができ、導管24は補助チャネルとみなすことができ、またはその逆である。チャネル20は液体チャネルとして作用することができ、導管24はガスチャネルとして作用することができる。いくつかの実施形態では、チャネル20は、第1の端部14から第2の端部16まで連続的に延在する必要はない。
【0035】
充填物構造体の表面積は、物質移動に必要な界面積を容易にする特性である。本開示の充填物構造体の実施態様について、表面積は、各プレートの表面積(m2)を、カラム直径および長さによって定義されるカラムの体積(m3)で割った単位体積あたりの表面積を分析することによって比較することができる。表面積(単位体積あたり)は以下の関数である。
・R:シートのカラムの長さ回りの回転数
・D:カラムの直径(m)
・L:カラムの長さ(m)
・チャネル(20)のセグメント長(m)
【0036】
追加のパラメータtan(α) は、R、D、L の間の簡潔な関係によって与えられる。
【0037】
【0038】
ここで、αは、軸線に垂直な仮想平面(例えば18)とプレート(22)の平面(すなわち、チャンネル20の方向)との間で構造の周囲で形成される角度である。例えば、αが減少するにつれて(すなわち、プレート22が軸線18に対してより垂直になるにつれて)、単位長さあたりの各プレート22の回転数は増加する。
【0039】
本開示の実施形態の構造は、種々のセグメント長(S)、隣接するシート間の異なるギャップ(G)、および単位長さあたりの異なる回転数を有するので、本開示の異なる構造間を区別するために、以下の命名用語が使用される。
【0040】
【0041】
ここで、Xはセグメント長(S)(mm)、Yは単位長さ当たりの回転数、Zはセグメント長に対するギャップ(G)である。例えば、5mm-1R-1Gは、5mmのセグメント長(S)、単位長さ当たり1回転、および5mmのギャップ(G)(すなわち、G=S)を有する構造である。
【0042】
データは、カラム長Lが一定である多数のCADモデルから収集した。
図15(a~c)は、異なるセグメント長さを有する種々の直径(mm)について、得られる表面上のαの影響が単位体積あたりであることを示す。
図15(a~c)に見られるように、所与のカラム直径およびセグメント長さについて、αが増加するにつれて(これは、列長に沿った次第に直線的な経路を表す)、充填物の単位体積あたりの表面積は、一定の値に近づく。単位体積あたりの表面積とαを関係づける曲線は、異なるセグメント長に対してほぼ一致する。これは、所与のセグメント長さに対して、単位体積当たりの表面積に対するカラム直径の影響が一般に無視できることを意味する。したがって、充填物をより大きな直径に「スケールアウト」する場合、達成可能な単位体積当たりの表面積は、より小さな直径の場合と同じになる。
図16(a~c)は、異なる直径(mm単位の直径)における、異なるセグメント長さ(S)に対する、αと単位体積当たりの表面積との関係を示す。カラムの表面積(固定カラム長さの場合)は、(i)回転数を増加させる、または(ii)セグメント長さ(S)を減少させるという2つの主な方法で増加させることができる。表面積(単位体積あたり)は、
図16(a)~(c)で定義される放物線方程式にしたがって、回転数とともに増加する。
【0043】
図17は、すべてのデータ点について単位体積あたりの表面積から導出された非直線性定数を示している。
図16は、表面積と回転数との関係の非線形成分に対するセグメント長さ(S;単位mm)の影響を強調している。そのように、表面積はセグメント長さの減少と共に指数関数的に成長し、より大きなカラム直径に対して次第に顕著になる。また、セグメント長さが減少するにつれて、単位体積当たりの表面積に関して、より密な充填を有するという利点が制限されることに留意されたい。言い換えれば、典型的な長さである10mmを超えるセグメント長さSのいかなる減少も、単位体積当たりの表面積の顕著な改善をもたらさないであろう。この現象は、平らで波形のないシートにデザインがますます似ているために発生する。
【0044】
図18は、シートの厚さを変えて得られた空隙値を示す。市販の充填物の典型的なシート厚は0.1~0.5mmである。実験データとCFDデータは、試作品の製造可能性の制限により、厚さ0.7mmに対して得られた。しかしながら、付加製造法以外の技術によって製造される充填物においては、この制限は期待されない。このように、空隙率に及ぼす板の厚さの影響を理解することが重要である。
図18から、空隙はベッドの厚さに正比例し、典型的には約0.90を超え,0.99まで高くすることができることが分かる。
【0045】
隣接するシート22間のギャップGは変化させることができる。ギャップGを小さくすると充填物構造体10の表面積が大きくなり、ギャップGを大きくすると充填物構造体10の表面積が小さくなる。いくつかの実施態様において、ギャップGは、光路長Sを基準とする。例えば、G=S、G<S、G>S、G=0.5Sである。いくつかの実施態様において、隣接するシートは、接続壁によって接続される。連結壁を使用する場合、隣接する頂点が接合され、その間に空隙が設けられないので、空隙Gはゼロに等しい。
【0046】
使用時、充填物構造体10は、一般に垂直に配向され、すなわち、軸線18は、垂直に延在され、液体が、複数のチャネル20に沿って流れて第2の端部16のような基部において出るように、頂部から加えられ、同時に、ガスが、充填物構造体10の基部から注入され、上方に通過して、充填物構造体10の頂部、例えば、第1の端部14において出るため、2つの流体は、向流配列を有する。しかしながら、他の実施形態では、2つ以上の流体が、充填物構造体10を同じ方向に流れてもよく、他の実施形態では、例えば蒸留中に、1つの流体のみが充填物構造体10を通過する。
【0047】
いくつかの実施形態では、チャネルは、シート(図示せず)の表面から延在する壁を備える。このようにして、壁は、チャネルの側面を区切る。いくつかの実施態様において、壁は、チャネル20を形成する波形のピークから延びる。このような構成は、チャネル20に沿って流れる流体(例えば、液体)の表面積を増加させるのに役立ち得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、チャネル20および/またはシート22には、チャネル20および/またはシート22の表面積を増加させる突起が設けられる。突出部は、チャネル20又はシート22の平面に対して外向き及び/又は内向きに延びるディンプルの形をとることができる。いくつかの実施形態では、チャネル20は、その表面から離れて延びる壁を有する。壁は、流体の流れ方向に対して、平行、横断方向、または両方の組み合わせであってよい。壁は、流体間の混合および物質移動を容易にするために、局所化されたレベルで乱流流体の流れを促進することができるが、充填物構造体を通る全体的な流体の流れを変化させることはない。また、壁は、チャネル20またはシート22上に存在する流体膜を横方向に広げるのを助ける。また、壁は、チャネル20またはシート22上に存在する流体膜を横方向に広げるのを助ける。フィルムを広げることは、流体の凝集または貯留を減らすのに役立つ。壁は、平面であっても湾曲していてもよい。このような配置の例を
図6a~eに示す。流体の流れ方向は、
図6a~eの矢印30として描かれ、一般に、チャネル22の方向である。
【0049】
図6aでは、壁は、流体の流れ30に沿った方向に概ね延びる正弦波のような振動曲線32の形成を有している。
図6bでは、壁は、互いに分離し、隣接するセグメント34の端部が間隔を置いて配置され、それらの間に間隙35を形成する交差パターンで配置された短い平面セグメント34である。各セグメント34は、流路30に対して約45°に配置されている。
図6cの壁は、Vセグメント36によって形成される。Vセグメント36の2つの端部の間に延びる仮想線は、流れ方向30にほぼ平行に配置される。補助流路37は、隣接するVセグメント36の間に形成される。
図6dにおいて、壁は、互いに離間された細長い平面セグメント38によって形成される。セグメント38は、流れ方向30に対して横方向(例えば、ほぼ垂直方向)に配置され、その結果、隣接するセグメント38の端部の間に曲がりくねった流路39が形成される。
図6eは、
図6dの実施形態と同様の細長い平面セグメント要素を使用するが、
図6eのセグメント40は、局所化された流路40を形成する、流れ方向30とほぼ平行に配置される。いくつかの実施態様において、チャネル20は、複数の例えば波形チャネルから形成される。このようにして、チャネル20は、フラクタル構造から作製することができる。
【0050】
図6a~eに示されるフランジ構成は、チャネル20内を流れる液体の表面積を最大にするのに役立ち、軸線18に対して半径方向に液体が移動するのを防止するのにも役立つことができる。しかしながら、
図6a~eのフランジ構成は、単に、例示的であり、他の構成を使用して、チャネル20を通って流れる流体の表面積を最大化することができる。表面ディンプルのような突出部等を使用して、チャネル20の表面アーキテクチャを制御することができる。種々のアーキテクチャを使用して、表面の疎水性を調整することができる。したがって、充填物構造体10の意図された用途に応じて、特定の表面アーキテクチャが、異なる流体の流動および混合特性を最大化するために、いくつかの実施形態で使用される。すなわち、アーキテクチャは、流体との固有の相互作用を強化する。しかし、壁は、すべての実施形態において必要とされるわけではない。
【0051】
いくつかの実施態様において、チャネル20及び/又はシート22には、開口が設けられる。開口は、隣接する導管が互いに流体連通するのを助ける。また、開口は、もしそれが無ければチャンネル20の使用される上面に沿ってのみ流動するであろう流体が、前記開孔を通ってチャンネルの下部表面に沿って流動することを可能にする。別のやり方をすれば、開口部は、使用される上面上ではなく、シート22のいずれかの側面(例えば、側面22aおよび22b)に沿って流体が流れるのを助けることができる。
図28に最もよく示されるように、開口がシート22上に設けられる場合、単位長さ当たり5mm、1回転、および開口直径4mmのセグメントサイズSを有する充填物構造体について、充填物構造体の濡れ性が増大する。開口を含めることは、充填物構造体の表面積を増加させるために、接続壁のような追加の特徴を追加しなくても、利用可能な濡れ可能な表面積を増加させるのに役立つ。全ての実施形態において開口は必要である訳ではないことが理解されるべきである。
【0052】
図1のシート22の波形形成は、隣接する壁が除去されたハニカム構造体に似ている。隣接する壁がなくても、チャネル22に沿って流れる流体(すなわち、液体)は、ほとんどチャネル22内に残る。ハニカム構造体体の隣接する壁を除去する利点は、充填物構造体10を形成するために必要な材料が少なくて済むことであり、これは、構造体の重量及び製造コストの低減をもたらす。しかしながら、隣接する壁を排除することは、隣接する壁を有する構造と比較して、充填物構造体10の性能に大きな影響を及ぼさない。隣接する壁を排除することは、チャネルおよび/またはシートが表面修飾剤(例えば、疎水性/親水性の基板、触媒など)で被覆される実施形態においても、表面積がより少ないため、より少ない修飾剤しか必要とされないことを意味する。充填物10の重量及び製造コストを考慮する必要があるため、チャネル、シート等の表面積を無限に増加させることはできない。
【0053】
シート22は螺旋構造を有するので、軸線18に近い領域は、側壁により近い領域と比較して、縦軸線に対してより急激に角度が付けられる。これは、使用時には、円筒12を流れる液体が、円筒12の壁付近と比較して、中心付近でより速く下方に移動することになるので、シリンダを通過する流体の滞留時間は、円筒12の直径を横切って均一ではない。しかしながら、軸線18近傍の充填物構造体10の抵抗を増加させて、軸線18近傍の流体の流れを遅くすることができ、その結果、円筒12の直径にわたってより均一な滞留時間が形成される。例えば、
図6a~eに示されるような突起および壁を使用して、流体がその軸線18の近くで円筒12を下降する速度を遅くすることができる。
【0054】
図2は、充填物構造体100の別の実施形態を示す。充填物構造体100は、第1の端部112と第2の端部114との間に延在する軸線104を有する略細長い本体102を有する。リング110は、シート108のための支持を提供するために使用されるが、さもなければ、本体102は開口している、すなわち、内部容積自体を規定していない。リング110は、全ての実施形態において必要とされる訳ではない。あるいは、シート108を支持するためにブレースのような他の構造体を設けてもよい。いくつかの実施態様において、充填物構造体100は、中空の管状本体として提供され、シートは管状本体に収容される。
図1の実施形態と同様に、充填物構造体100は、チャネル106の形態の複数のチャネルを有する。チャネル106は、複数のシート108に形成された波形によって提供される。チャネル106は、第1の端部112から第2の端部114に延在し、同時に、軸線104の周囲を回転して、均一な円形流体流路を生成する。シート108は螺旋構造を有し、チャネル106は螺旋流路を画定する。
図1の実施形態とは異なり、
図2の実施形態におけるシート108は、本体102の軸線104に位置する共通点116から半径方向外側に延在する。しかしながら、共通点116は、全ての実施形態において軸線104にある必要はなく、軸線外相対軸線104に位置決めすることができる。
【0055】
図7は、充填物構造体100のさらなる実施形態を示し、ここで、各チャネル106は、多数の開口118を有する。
【0056】
種々のアーキテクチャを有する充填物構造体を組み合わせることができる。例えば、
図1および
図2の実施形態における充填物構造体のアーキテクチャは、
図3に最もよく示されるように、組み合わせることができる。充填物構造体150において、第1の中心領域158は、充填物構造体150の軸線に対して第1の配向に配向された複数のチャネル156を有する。
図3の実施形態では、チャネル156は、時計回り方向にページ内に回転する。軸線は、本体の細長い方向に沿って延在する共通点154によって規定される。
図3の実施形態は、明瞭化のために薄切りの断面として示されている。
【0057】
第2の領域162、第3の領域168、第4の領域172および第5の領域176は、中心領域158と互いに同軸に配置されている。第2の領域162、第3の領域168、第4の領域172、および第5の領域176は、
図1に記載されたものと同様のプレートから形成され、第2の領域162のチャネル164は、軸線154に対して第2の配向である。第2の配向は、第1の地域160に対する第1の配向のそれとは異なる。
図3の実施形態では、第2の領域162内のチャネル164は、反時計回り方向にページ内に回転する。第3の領域168および第5の領域176は、それぞれ、時計回り方向にページ内に回転するチャネル169および178を有する。第4の領域172は、反時計回り方向にページ内に回転するチャネル173を有する。したがって、隣接する領域のチャネルの配向は、中心領域158から第5の領域176へ半径方向外側に移動することを交互にする。しかしながら、いくつかの実施形態では、各領域のチャネルの向きは同じであるか、ランダムであり得る。
【0058】
種々の領域は、同じまたは異なる配向を有し得るが、各領域のチャネルの特定の特性は、異なる場合がある。例えば、プレートが螺旋(即ちヘリコイド)である場合には、修正されることなく、流体は、より中心領域上のチャネルが、半径方向外側領域のチャネルに対して軸線に対してより平行に配置されることに起因して、半径方向外側領域に対して、より中心領域を通ってより速く流れる傾向がある。これは、例えば150のような円筒構造の直径にわたって均一でない流体滞留時間をもたらす。流体が構造化充填物を流下する液体である場合、不均一滞留時間の問題が最も顕著になる傾向がある。いくつかの実施態様では、中心領域152のチャネル156は、例えば、突起、壁、および/または角度αを調節することによって、例えば、第5の領域176のチャネル178の抵抗に類似した抵抗を有するように修正される。これは、充填物構造体150の直径にわたって、より均一な滞留時間を提供することの助けとなる。
【0059】
壁は、隣接する領域の境界となる。壁160は第156および第2の162領域の境界であり、壁166は第2の領域162および第3の領域168の境界であり、壁170は第3の領域168および第4の領域172の境界であり、壁174は第5の領域176から第4の領域172を区切る。外壁153は本体を包囲して円筒を形成する。いくつかの実施態様において、様々な領域を区切る様々な壁は、各領域が互いに隔離されるように、本体152の全長に沿って延在する。しかしながら、いくつかの実施態様において、種々の壁は、本体152の一部に沿ってのみ延在する。いくつかの実施態様において、種々の壁は、隣接する領域が互いに流体連通するように、開口を有する。いくつかの実施態様において、壁は存在せず、各領域からのプレートは互いに直接接続される。
【0060】
図1乃至
図3の実施形態は、本体が円筒形の形態である。しかしながら、いくつかの実施態様において、本体の周囲は、隣接する本体を互いに平面充填して充填物構造体アセンブリを形成することを可能にする多角形によって規定される。
図4において、充填物構造体アセンブリ200は、多数の平面充填されたモジュラー構造の充填物ユニット204から形成される。充填物構造体アセンブリ200は、円筒状の外壁202を有する。各モジュラーユニット204は、
図1に示す実施形態と同様のチャネル206を有しており、各モジュラーユニット204は、六角壁208を有している。六角形が
図4に描かれているが、他の多角形、例えば正方形、五角形、又は八角形及び正方形のような平面充填された多角形の組み合わせを使用することができる。モジュラーユニットを設けることは、周囲の周囲により多くのモジュラーユニットを追加することによって、充填物構造体の直径を「スケールアウト」できることを意味し、対照的に、
図1の充填物構造体10の直径はスケールアップによって増大される。
【0061】
螺旋状(ヘリコイド状)プレートを有する充填物構造体の「スケールアップ」に関する問題は、長手方向の軸線(すなわち、角度α)に対するプレートの角度が半径方向に変化することであり、これは、使用時に、充填物構造体の直径にわたって均一な滞留時間が存在しない可能性があることを意味する。モジュラーユニットを「スケールアウト」するとは、各モジュラーユニットの直径が均一な滞留時間を有するように選択され得ることを意味し、したがって、モジュラーユニットから作製される得られる充填物構造体アセンブリは、得られる充填物構造体の直径にわたって均一な滞留時間を有する。
【0062】
一実施形態によると、モジュラー充填物構造体ユニットは、
図1に示されるようなプレートおよびチャネルの向きおよび配置を有し、六角形の外壁および100mmまでの直径を有する。モジュラー充填物構造体ユニットが、種々のポリゴンによって画定される外壁を有し、結果として得られる充填物構造体アセンブリが平面充填されたポリゴンの組み合わせを含むように、場合、充填物構造体アセンブリの直径は、最大直径を有するモジュラー充填物構造体ユニットの直径の2倍以上である。例えば、モジュラー充填物構造体ユニットが八角形及び四角形の外壁を含む場合、八角形の外壁を有するモジュラー充填物構造体ユニットは、四角形の外壁を有するモジュラー充填物構造体ユニットよりも大きな直径を有することになるので、充填物構造体アセンブリの直径は、八角形の外壁を有するモジュラー充填物構造体ユニットの直径の2倍以上となる。実施形態において、充填物構造体アセンブリ自体は、他のモジュラー充填物構造体アセンブリと組み合わせることができるモジュラー充填物構造体組立モジュラーを形成する。一実施形態によると、モジュラー充填物構造体アセンブリモジュラーは、直径が500mm以下である。
【0063】
モジュラー充填物構造体ユニットの各々は、単位セルとみなすことができる。したがって、複数の単位セルが組み合わされて、充填物構造体アセンブリを形成する。充填物構造体アセンブリの周縁部等の縁部に位置する単位セルについては、充填物構造体アセンブリの軸線付近の単位セルより小さくしてもよい。例えば、
図4に最もよく示されるように、モジュラー充填物構造体ユニット(例えば、縁部のセル)207は、ユニット207が外壁202の一部を形成するとき、中央モジュラー充填物構造体ユニット(例えば、中央セル)205と比較すると、サイズが小さくなる。別のやり方をすれば、エッジセル207は、中央セル205の部分セルである。縁部セルのサイズおよびアーキテクチャに応じて、縁部セルは、チャネルがこれらの縁部ユニットセルの周囲を回転する軸線の位置に応じて、閉じたチャネルを有し得る。閉じたチャネルの形成を防止するために、一部の実施形態では、エッジセルなどのユニットセルは、部分セルの中心または重心に位置する、チャネルが回転する回転軸線を有する。
【0064】
いくつかの実施態様において、
図5に示されるように、平面充填されていない多数のモジュラー充填物構造体が、充填物構造体250を形成するために使用される。各モジュラーユニット252は、
図4の実施態様のようには隣接するモジュラーユニット252を区切るために壁を使用しないが、略円筒形である。各モジュラーユニットは、シート256に形成された複数のチャネル254から構成される。
図5のモジュラーユニットのプレートおよびチャネル構造は、充填物構造体250の直径にわたる保持時間変動を最小化するのに役立つ。
図5のモジュラー設計は、「スケールアップ」ではなく「スケールアウト」することが、実験室規模から実物大のプラントへの移行における不確実性を最小化するのに役立つことを意味する。
【0065】
図19~23および
図31~32は、異なる充填物構造体アーキテクチャの実施形態を示す。
【0066】
図19aおよび
図19bは、2組のシート604および606を有する充填物構造体600を示す。第1の組のシート604は、第2の組のシート606に対して横方向に配置される。チャネル(例えば、チャネルまたは導管)602は、2組のシートによって形成される。シートセット604および606は、充填物構造体600の端部の間で螺旋状に延在する。第1の組のシート604の隣接するシートは、第2の組のシートによって互いに接続されるので、
図19に示されるアーキテクチャは、0ギャップGを有する。チャネル602は、
図19において正方形であるように示されるが、いくつかの実施形態において、チャネル602は、平行四辺形の配置を有する。
図19のアーキテクチャは、正方形チャネルから成るグリッド状断面を有する。
【0067】
図20aおよび20bは、構造体610の端部間に螺旋状に延在する一連の円形チャネル(例えば、チューブまたは導管)612を有する充填物構造体610を示す。チャネル612の円形断面は、単位体積当たり最も高い表面積を有する密な構造を提供し、波形と比較して比較的滑らかな表面を提供する。
【0068】
図21aおよび
図21bは、波形シート626から形成される充填物構造体620の実施形態を示す。充填物構造体620の軸線において、かつ半径方向に、波形シートの頂点は、接続壁と接合されて、ハニカムチャネル(例えば、導管)622を形成する。ハニカムチャネル622から半径方向外側には、2つの隣接するハニカムチャネルを結合するために接続壁が省略された細長いハニカムチャネル(例えば、導管)624が設けられている。細長いハニカムチャネルから半径方向外側に向かって、
図1に示される配置に類似するチャネル(例えば、開放チャネル)628である。半径方向に延在するチャネルのサイズを大きくすることは、充填物構造体620の流体滞留時間をより一様な断面にするのに役立つ。流体滞留時間は、通常、急峻な流路のために軸線において最低であるが、軸線の近くに連結壁を有することは、抵抗を増加させ、それによって滞留時間を増加させるのに役立つ。
【0069】
図22aおよび
図22bは、充填物構造体630の一実施形態を示す。充填物構造体630は、複数の個々のチャネル区分632を有し、個々のチャネル区分は、それぞれ、螺旋配置で互いに別個に回転する。各チャネル区分632を個別に回転させることによって、充填物構造体を通って流体が移動するための距離は、断面に沿って均一であって、これによって速度分布がより均一になることが促進される。
【0070】
図23aおよび
図23bは、充填物構造体640の一実施形態を示す。充填物構造体640は、充填物構造体640が、第1のセットの個々のチャネル区分642および第2のセットの個々のチャネル区分644を有することを除いて、充填物構造体630と同様である。第1および第2のチャネル区分642および644は、それぞれ、独自の螺旋配置を有し、ここで、第1および第2のチャネル区分642および644の間に二重螺旋配置が形成される。個々のチャネル区分644の第2のセットを含めることは、充填物構造体630と比較して、充填物構造体640の表面積を増加させるのに役立つ。
【0071】
図31は、充填物構造体650の別の実施形態を示す。充填物構造体650は、互いに垂直に配置され、断面が平面である一対の中央プレート(例えば、シート)652を有する。半径方向に隣接する各プレートは、徐々に小さくなる半径によって規定される曲線を有する曲線である。例えば、シート659は、シート659から半径方向外側に配置されるシート658と比較して、より大きな半径によって画定される。半径方向の曲率の変動は、チャンネル(例えば、導管)のサイズが半径方向に増加することを意味する。例えば、充填物構造体650の中心軸線にすぐ隣接するチャネル654位置は、ほぼ正方形であり、充填物構造体650の円周近くに位置決めされたチャネル656と比較して、より小さな断面積を有する。充填物構造体650のアーキテクチャは、シートが最も急峻に角度付けされた軸線の近くの流体流速を遅くする半径方向に流体抵抗が減少することを意味し、充填物構造体650の直径にわたって均一な滞留時間を提供するのに役立つ。一実施形態によると、充填物構造体650のシートは螺旋(ヘリコイド)構造を有する。
【0072】
図32は、充填物構造体660の別の実施形態を示す。充填物構造体660は、断面がフェルマーの螺旋またはアルキメデスの螺旋を採用するシート662を有する。螺旋構造は、半径方向に延びる隣接するシート間に形成されるチャネルのサイズを増大させるのに役立つ。シート662は螺旋配列を有する。したがって、シート662によって画定されるチャネルまたは導管は、充填物構造体660を通る螺旋流路を有する。充填物構造体660は、それぞれが中心点から延在する複数のシート662を有することができる。中心点は、構造体660の中心軸線にあってもよく、または代替的に、中心軸線から半径方向に変位した位置にあってもよい。
【0073】
図1~5、7、19~23および31~32に示される充填物構造体の実施形態では、充填物構造体の長さ、セグメント長さおよび回転数は、これらの図に図示されるものに限定されない。
【0074】
いくつかの実施形態では、熱交換流体を通すための導管が、チャネルおよび/またはシートの少なくとも一部に沿って設けられる。チャネルは、一般に、約0.1mmから約1.0mmの範囲の厚さを有するステンレス鋼のような不活性材料で形成される。
【0075】
いくつかの実施態様において、例えば、充填物構造体内の流体の物質移動および反応のための好ましい条件を促進するために、チャネルおよび/またはシートの表面が改質される。改質は、親水性/疎水性コーティングを提供すること、および1つ以上の触媒を提供することを含み得る。
【0076】
いくつかの実施態様において、充填物構造体、モジュラー充填物構造体ユニット及びモジュラー充填物構造体アセンブリは、プラスチック及び/又は金属から形成される。
【0077】
充填物構造体10、100、150、200、250、600、610、620、630、640、650および/または660の実施形態は、単独で、または2つ以上の構造の組み合わせとして使用されてもよく、反応器および/または物質移動装置および/または熱伝達装置および/または分離装置として使用されてもよく、いくつかの実施形態では、反応性蒸留のためなどに、2つ以上の動作が行われる。2つ以上の構造が使用される場合、異なる構造間に延在する流体流路は、湾曲および/または直線状であってもよい。一実施形態によると、直線状の流路は、構造の実施形態から、例えば、構造の第1および/または第2の端部のいずれかの側から延在してもよい。
【実施例】
【0078】
次に、以下の非限定的な実施例を用いて実施形態を説明する。
【0079】
実験の段取り
実験研究は、室温条件で向流空気‐水系で行った。実験装置のプロセスフロー図を
図10に示す。蒸気と液体の両方を、3Dプリントで作成されたフラクタル分配器を用いて供給した。両システムに導入された液体負荷量とガス負荷量は、それぞれ25~75m
3/m
2・h及び0~0.2pa^0.5の範囲であった。典型的な充填カラムの構成を
図14に示す。実施例に使用した構造化充填物は、別段の記載がない限り、直径54mm、長さ200mm、Tan α=3/2、およびセグメント長さ5mmおよびギャップ5mmの波形シート(すなわち、G=S)を有していた。測定はカラムの中心で行い、試験には2つのエレメントを用いた。
【0080】
ワイヤメッシュセンサ(WMS)500は、隣接する構造化充填物カラム502および504(
図14参照)の間に配置され、カラム502および504は、カラム構造体510を形成する。液体分配器506は、カラム502の頂部に配置され、ガス分配器508は、カラム504の底部に配置された。ガスは、ガス分配器508を通ってカラム構造体510に導入され、その結果、ガスは、カラム構造を通って上方に流れ、液体は、液分配器を通ってカラム構造体510に導入され、その結果、液体は、液体がカラム構造体510を流下する。
【0081】
WMS装置が基になっている測定技術は2つある。1998年にPrasserらは導電率測定に基づくWMSシステムを導入した。新しいWMSは、Da Silvaらによって2007年に開発され、誘電率に基づくものである。誘電率に基づくWMSは、誘電率測定が電気伝導率測定より有利であることが存在するので、固定層内の気液流を測定するのに好ましい。これは、オイルのような有機液体が電気伝導性ではないため、抵抗/伝導率に依存する技術を用いて他の相(例:ガス)と区別できないことによるところが大きい(Matusiak,et al.2010)。WMSは流れ断面の瞬間的可視化を可能にし、従って、気液流れの瞬間的変化を調べるのに利点がある。誘電率の値は、100%の蒸気(すなわちεv)および100%の液体(すなわちεl)に対して較正される。二相流が流れる間、測定された誘電率値‘εx’は、ある場所が純粋な蒸気も液体も含まないときに得られる。測定された誘電率値と較正された誘電率値との間の関係を用いて、その特定の場所での位相分率を決定するために数学モデルを適用することができる(Da Silva、Schleicher and Hampel 2007)。従って、WMSは局所誘電率測定に直接基づく位相分率分布の検討を可能にする。これは、誤差を導入する可能性のある再構成アルゴリズムを必要とする放射測定断層撮影技術よりも多くの利点を証明する(Bieberle,et al.2010)。
【0082】
WMSは、代数的再構成技術を必要とする代わりに、高時間分解能、比較的低コスト、良好な空間分解能および直接局所測定を提供する、流体力学の調査に使用される他のデータ取得技術より概念的に単純である(Da Silva、Schleicher及びHampel 2007)。
【0083】
結果
図8は、Mellpak (Sulzer、2018;すなわち、従来の充填物構造体)に類似した54mm充填物構造体内のWMSを使用して観察される典型的な液体分布を示し、
図9は、WMSを使用して、Tan α =3/2を有する5mmセグメント長を有する本開示の実施形態の54mm充填物構造体に対する典型的な液体分布を示す。最も濃い色は水の体積分率1を示し、白は0である。
【0084】
データは、20秒間収集され、時間は、10,000ヘルツのサンプリング速度で平均化された。この試験には、50m3/m2・hの典型的な液体負荷量と0.2 pa^0.5のガス負荷量を使用した。
【0085】
図8は、液体が充填物構造体の側壁の周囲に溜まりやすく集まる、互いに90°に配向された一連のバッフルを有する従来の充填物構造体の液体分布を示す。これと比較して、
図9に示す液体分布は、はるかに均一な液体分布を有する。これは、充填物構造体を通って流れる液体の表面積が、物質移動等を増加させるより高い表面積を有することを意味する。
【0086】
図11は、種々の充填物構造体の実験値とシミュレーション値の両方の比較を示す。既存の商用の充填物構造体(Mellapak 250YおよびMonzpak)を3D印刷レプリカとして提供した。既存の商用の充填物構造体とは対照的に、本開示の充填物構造体の実施形態は、圧力降下を約75%低減することができる。
図12は、従来の充填物構造体(MonzpakおよびMellapak 250Y)と比較して、単位長さあたり0.75回転を有する開示の充填物構造体の実施形態について、セグメント長さが圧力降下に及ぼす影響を実証し、
図13は、従来の充填物構造体(MonzpakおよびMellapak 250Y)と比較して、充填物構造体の実施形態について、単位長さあたりの圧力降下に回転数が及ぼす影響を実証する。構造化充填物の設計の幾何学的形状により、Mellapak 250Yと比較して、より高い気体および液体の接触および分布速度を達成することができ、これは、
図11における構造化充填物の実施形態が、Mellapak 250Yよりも高い効率を有することを意味する。
【0087】
図24および25は、半径方向に延在する流体滞留に及ぼす直径の影響を示す。
図24は、S=5mm、G=Sおよび単位長さあたり1回転、および直径100mmの、
図1の充填物構造体の滞留時間(流体流量換算、m/s)を示し、
図25は、S=5mm、G=Sおよび単位長さあたり1回転、および直径200mmの、
図1の充填物構造体の滞留時間(流体流量換算、m/s)を示す。直径100mmの充填物構造体を通る滞留時間(すなわち流速)は、直径200mmの同じ充填物構造体と比較してより均一である。直径100mmに対する比較的均一な滞留時間のために、いくつかの実施態様において、モジュラー式梱包構造ユニットの直径は、100mm以下である。
【0088】
図26は、全体直径200mmを有し、100mmのモジュラー充填物構造体ユニットから形成される、充填物構造体アセンブリに対する圧力降下は、直径200を有する充填物構造体の場合とほぼ同じであり、既存の充填物構造体の設計をはるかに下回ることを示す。
【0089】
図27は、充填物構造体の長さの増加に対する圧力降下と空気速度の関係を示す。単位長さ200mm、直径54mm、セグメント長さ5mmおよびギャップ5mmの波形シートから異なる長さの充填物構造体を形成した。単位長さ100mmの充填物構造体から、200mm,600mm,1000mm及び1400mmの長さの充填物構造体を形成した。
図27に見られるように、単位長さの充填物構造体から形成される様々な充填物構造体の長さの圧力降下は、ほとんど変わらず、特に200mmを超える長さについては変わらない。比較サンプルは、単位長さ150mmおよび直径54mmを有するM250Y充填物構造体から形成された長さ300mm、600mm、900mmおよび1200mmを有するMalpack M250Yについて提供された。M250Yユニットから形成された構造体は、本開示の充填物構造体アセンブリの実施形態と比較して、著しく高い圧力降下を有していた。
【0090】
図29は、液体流量12LPMでの、種々のFファクター(0.1~0.4 pa^0.5)に対する、測定された高さ等価理論段数(HETP)値をmで示したものである。試験は、
図10に示す実験装置で行い、気相には空気とCO
2の混合気体を、液相には水を用いた。気相中に吸収されたCO
2の量をモニタし、酸‐塩基滴定を行うことにより液相中に吸収されたCO
2の量を決定した。
図29に示す試験に使用した充填物構造体は、直径100mmであり、1ギャップ(すなわち、G=S)およびα=3/2を有するセグメント(S)長さ5mmの波形シートを有していた。同様の比較をMelalpak M250Xについて行った。結果は、Mellapak M250X比較サンプルと比較した時、充填物構造体についてガス側の物質移動速度において、35%までの増加が観察され、選択された流量に対して、全体のHETP値が最大20%減少したことを示した。
【0091】
図30は、Mellapak M250Y充填体との比較で圧力降下とギャップサイズの関係を示すグラフである。充填物構造体は、直径54mm、セグメント長さ5mmの波形シートを有する。ギャップを5mm (1ギャップ)から0.5ギャップ(2.5mm)および0ギャップ(連結壁の挿入によるハニカム構造体)に減少させると、圧力降下が大きくなる。これは、充填物構造体における表面積の増加、ひいては流体滞留時間の増加によって部分的に説明される。1ギャップでは表面積は316m
2/m
3、0.5ギャップでは表面積は445m
2/m
3、0ギャップでは表面積は747m
2/m
3である。しかしながら、M250Yの表面積は
図30で使用される充填物構造体の実施形態よりも著しく低い(231m
2/m
3)にも拘わらず、全ての場合において、圧力降下はMellapak M250Yよりも小さい。
【0092】
以下の請求項および先行する説明において、表現言語または必要な意味合いにより別の必要がある場合を除き、文脈において、「含む」または「含む」などの変形語は、包括的な意味で使用される、すなわち、記述された特徴の存在を指定するが、開示に記載される様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在または追加を妨げるものではない。