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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】複数のステップエッジの製作
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/01 20230101AFI20240606BHJP
【FI】
H10N60/01 J
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021521296
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 AU2019051139
(87)【国際公開番号】W WO2020077416
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】2018903963
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】590003283
【氏名又は名称】コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェイナ・ラザー
(72)【発明者】
【氏名】ウェンディ・パーチェス
(72)【発明者】
【氏名】エマ・ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】クリス・ルイス
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-125358(JP,A)
【文献】特開平11-103099(JP,A)
【文献】特開平05-235425(JP,A)
【文献】特開平05-299711(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0123674(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/00-69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶基板の表面の中に複数のステップエッジを形成する方法であって、
前記表面の上にレジストの層を形成するステップであって、前記レジストの層が、前記表面の選択されたエリアを露出させるための開口を含み、それにより、前記選択されたエリアの外周の上の前記レジストの層の中に第1の壁及び第2の壁を形成する、ステップと、
前記レジストおよび前記基板をイオンビームに露出させ、それにより、前記レジストおよび前記表面の前記露出されたエリアをエッチングし、それにより前記選択されたエリアの外側に上位レベルを生成し、前記表面の前記選択されたエリアの内側に下位レベルを生成するステップと、
前記レジストおよび前記基板を前記イオンビームに露出させながら、前記表面に対して垂直な軸周りに前記基板を徐々に回転させ、それにより前記第1の壁における第1のステップエッジと、前記第2の壁における第2のステップエッジとを形成するステップと、
前記第1のステップエッジ及び前記第2のステップエッジを複数回横切る経路を形成して、前記経路が前記第1のステップエッジ及び前記第2のステップエッジのうちの1つを横切るたびに2つのジョセフソン接合を含むループを形成するように、超電導材料を前記基板の上に堆積させるステップとを含み、
前記経路は前記下位レベルの上に複数の接続を含み、各接続は、前記第1のステップエッジの上の1以上のジョセフソン接合を、前記第2のステップエッジの上の1以上のジョセフソン接合と接続する、方法。
【請求項2】
少なくとも4つの接合が形成され、前記4つの接合が、前記経路によって直列に接続される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも8つの接合が形成される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の壁及び前記第2の壁が、実質的に平行であり、互いに対向する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のステップエッジ及び前記第2のステップエッジの各々が、前記上位レベルおよび前記下位レベルを画定し、前記ループは、
前記上位レベルから前記下位レベルまで前記第1のステップエッジ及び前記第2のステップエッジのうちの1つを横切る第1の経路部分と、
前記下位レベルから前記上位レベルまで前記第1のステップエッジ及び前記第2のステップエッジのうちの同じ1つを横切る第2の経路部分と、
前記第2の経路部分を前記第1の経路部分に前記下位レベルに到達することなく接続する、前記上位レベルの上の第1の接続と、を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ループが、前記第1の経路部分を前記第2の経路部分に前記上位レベルに到達することなく接続する、前記下位レベルの上の第2の接続を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の接続又は前記第2の接続が、前記第1のステップエッジ及び前記第2のステップエッジのうちの1つに平行である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
材料が、第3の接続を形成して、前記第1のステップエッジ及び前記第2のステップエッジのうちの異なる1つの上に堆積された第2のループに前記ループを直列で接続するように堆積される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記ループの第2の接続と、前記第2のループの第2の接続と、前記第3の接続とが隣接エリアを形成する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
材料が、前記第1のステップエッジ及び前記第2のステップエッジのうちの1つの上に2以上のループを形成するように堆積され、前記2以上のループは直列で接続されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のステップエッジ及び前記第2のステップエッジのそれぞれの上に2以上のループが堆積され、
前記第1のステップエッジの上の各ループは、前記第2のステップエッジの上のループと対向し、かつ、直列に接続され、複数の一連の2つのループを形成し、
前記複数の一連の2つのループは並列に接続されてブロックを形成する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のステップエッジ及び前記第2のステップエッジに沿って前記ブロックが複数回形成されて複数のブロックを形成し、前記複数のブロックは直列に接続される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記超電導材料が、前記経路が前記第1のステップエッジ及び前記第2のステップエッジのうちの1つを横切るたびに3つ以上のジョセフソン接合を含む配列を形成するように、前記基板の上に堆積される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記基板を徐々に回転させるステップが、前記基板を連続的に回転させるステップを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の壁及び前記第2の壁が、前記露出されたエリアの両側で互いに対向し、前記第1の壁及び前記第2の壁の間の距離が、20μm未満である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ジョセフソン接合の接合パラメータが、製造のばらつきの中で同一である、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記選択されたエリアが、前記第1のステップエッジを形成する第1の壁及び前記第2のステップエッジを形成する第2の壁をそれぞれ有する複数の形状を含み、前記経路が、前記形状それぞれの前記第1のステップエッジ及び前記第2のステップエッジを複数回横切る、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記形状が、長方形であり、前記経路が前記形状のすべての前記第1の壁及び前記第2の壁を一直線に横切るように並んで配列される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
エッチングされたエリアの外周の上の結晶基板の表面の中の第1の壁及び第2の壁と、
前記第1の壁における第1のステップエッジと、前記第2の壁における第2のステップエッジであって、上位レベル及び下位レベルを各々画定する第1のステップエッジ及び第2のステップエッジと、
前記基板の上に堆積された超電導材料の経路であって、前記経路が、前記第1のステップエッジ及び前記第2のステップエッジを複数回横切る、経路とを含み、
前記経路が、
前記第1のステップエッジ及び前記第2のステップエッジのうちの1つを横切るたびに2つのジョセフソン接合を含むループと、
前記下位レベルの複数の接続であって、各接続は、前記第1のステップエッジの上の1以上のジョセフソン接合を、前記第2のステップエッジの上の1以上のジョセフソン接合と接続する、複数の接続と、
を含む、デバイス。
【請求項20】
前記デバイスが、前記経路の中に形成され、直列に接続された少なくとも4つのジョセフソン接合を含む、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記デバイスが、少なくとも8つのジョセフソン接合を含む、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記第1のステップエッジ及び前記第2のステップエッジの間の距離が、20μm未満である、請求項19から21のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2019年10月18日に出願されたPCT/AU2019/051139の国内段階出願であり、2018年10月19日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2018903963号の利益を主張するものであり、その開示内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本開示は、結晶基板の表面の中のステップエッジの製作に関する。たとえば、限定はしないが、本開示は、ジョセフソン接合を製作するための複数のステップエッジの製作に関する。
【背景技術】
【0002】
極めて高感度の磁気探知機は、医学(たとえば、脳磁図)、鉱業(たとえば、鉱体の検出)、および生物学(たとえば、生体内作用の監視)を含む広範な技術分野において需要が多い。人気のあるタイプの高感度磁気探知機は、極めて微細な磁場を測定するために使用される超電導量子干渉素子(SQUID)である。
【0003】
対向するループ経路の中に2つの量子障壁を有する超電導ループが、SQUIDの中心にある。これらの障壁は、ジョセフソン接合とも呼ばれ、磁場に依存する電圧をもたらす超電導電子のトンネリングを可能にする。本開示は、これらのジョセフソン接合の製作に関する。特に、本開示は、ジョセフソン接合の基盤であり得るステップエッジの製作に関する。
【0004】
ジョセフソン接合を製作するための1つの技法は、超電導結晶の方向を使用することである。より詳細には、接合の一方の側に特定の方向に、および接合の他方の側に異なる方向に結晶を成長させることが可能である。両結晶が真ん中で会う(「粒界」)とき、結晶の方向の違いが障壁を形成し、その結果、ジョセフソン接合として働く。
【0005】
異なる方向に結晶を成長させることは、その上に結晶が成長する表面の方向を変えることによって達成され得る。図1は、超電導体基板のプロフィール100を示す。重要なことには、プロフィール100は、傾斜面102から水平面103への急な遷移であるステップエッジ101を含む。通常、102と滑らかな帰還経路104との間に平坦で水平な領域が存在し、帰還経路104は表面103のレベルまで緩やかな傾斜を有し、それは、プロフィール100の比較的滑らかな部分であり、プロフィールの高さがさらなるステップエッジなしに水平面103の高さに戻ることを確実にする。PCT/AU99/00774は、ステップエッジを製作する方法を開示しており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
図2は、図1におけるプロフィール100の上に結晶を成長させた結果を示す。重要なことには、これは粒界201を形成し、そこにおいて、結晶成長の異なる方向は、それらが境界201において会するときに見られ得る。これは、結果として、ジョセフソン接合を構成する障壁をもたらす。同様の構造が、超電導ループ(図示せず)の他方の側に製作され、それにより2つの接合がループの中にある。滑らかな帰還経路204は、帰還経路204の滑らかさならびに比較的低い角度に起因してジョセフソン接合を形成しないことに留意されたい。102が104と会する(または、102が、102と104との間の平坦で水平な部分と会する)ステップの底における角度も滑らかであり、それにより接合が形成されないことにも留意されたい。これは、従来技術における理解によれば、ループのこの部分における第2のジョセフソン接合は、SQUIDを敏感でなくするかまたはさらには使用できなくするので重要である。一般的に、図1および図2のプロフィールは、得られるプロフィールが、ステップエッジ101および滑らかな帰還経路104を有する鋸歯状のプロフィールに類似するように繰り返される。
【0007】
ジョセフソン接合の特性(すなわち、臨界電流)は、図1に示すステップ角度105を変えることによって調整され得ることにさらに留意されたい。さらに、感度は、多数のSQUIDを1つの配列の中で組み合わせることによってさらに増加され得る。しかしながら、配列の中のSQUIDの数の増加に伴って、滑らかな帰還経路104/204が、さらなるSQUIDのために使用することができないかなりの量の空間を使用することが問題となる。さらに、滑らかな帰還経路104/204は、同じく、制御することが困難な結晶内の変化を導き、その結果、結晶は、品質を低下させ、同じく複数のランダムに配向された結晶から成り、容易に損傷される場合がある。
【0008】
図3は、ステップエッジ301(破線)、傾斜面302(暗い影のエリア)、水平面303、および滑らかな帰還経路304(明るい影のエリア)を含むジョセフソン接合を、平面図に再び示す。実線の輪郭305は、結晶成長のエリアを描く。ステップエッジ301に直交して、さらなる面積を使用する側壁も存在することを見ることができる。結晶は、脆弱なジョセフソン接合の形成を防止するために、側壁306から除去される。ステップエッジ角度は、特定の角度で基板に向けられるイオンビームによって画定される。それゆえ、示されるデバイスがチップ上で何回も再現される場合、同じチップ上のすべてのステップエッジが、同じ配向を有し、デバイス設計に対して利用可能なオプションが制限される。さらに、ステップエッジの形態は、イオンビームからの距離によって変化し、それにより、その形態は、基板の上部と底部との間で異なり得る。これは、デバイス効率(配列)および信頼性を低減する接合デバイスパラメータ変動性の一因となる。接合の均一性-超電導接合パラメータは、チップにわたって30%以上変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】PCT/AU99/00774
【文献】WO200016414-A1
【文献】AU9958424-A
【文献】GB2357917-A
【文献】DE19983559-T
【文献】GB2357917-B
【文献】US6514774-B1
【文献】DE19983559-B4
【非特許文献】
【0010】
【文献】C. H. Wuら、「High quality step-edge substrates for high-Tc superconducting devices」、Review of Scientific Instruments、vol. 77、no. 3、2006年
【文献】E. E. Mitchellら、「2D SQIF arrays using 20 000 YBCO high R n Josephson junctions」、Superconductor Science and Technology、vol. 29、no. 6、p. 06LT01、2016年
【文献】E. E. MitchellおよびC. P. Foley、「YBCO step-edge junctions with high I c R n」、Superconductor Science and Technology、vol. 23、no. 6、p. 065007、2010年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これは、既存の方法を改善して上記で説明した問題に対処する必要があることを示す。
【課題を解決するための手段】
【0012】
結晶基板の表面の中に複数のステップエッジを形成する方法は、
表面の上にレジストの層を形成するステップであって、レジストの層は、表面の選択されたエリアを露出させるための開口を含み、それにより選択されたエリアの外周の上のレジストの層の中に2つの壁を形成する、ステップと、
レジストおよび基板をイオンビームに露出させ、それにより、レジストおよび表面の露出されたエリアをエッチングするステップと、
レジストおよび基板をイオンビームに露出させながら、表面に対して垂直な軸周りに基板を徐々に回転させ、それにより、それぞれの2つの壁において2つのステップエッジを形成するステップと、
2つのステップエッジを複数回横切る経路を形成して、経路が2つのステップエッジのうちの1つを横切るたびにジョセフソン接合を形成するように、超電導材料を基板の上に蛇行形状に堆積させるステップとを含む。
【0013】
少なくとも4つの接合が形成され、4つの接合は、経路によって直列に接続され得る。
【0014】
少なくとも8つの接合が、形成され得る。
【0015】
2つの壁は、実質的に平行であり、互いに対向する。
【0016】
複数のステップエッジの各々は、上位レベルと下位レベルとを画定し、超電導材料は、2つのステップエッジのうちの1つを上位レベルから下位レベルまで横断する第1の経路部分と、2つのステップエッジのうちの同じ1つを下位レベルから上位レベルまで横断する第2の経路部分と、上位レベルに到達することなく第1の経路部分を第2の経路部分に接続する下位レベルの上の第1の接続とを形成するように堆積され得る。
【0017】
第1の接続は、2つのステップエッジのうちの1つに平行であり得る。
【0018】
第1の経路部分、第2の経路部分および第1の接続は、第1のループを形成し、材料は、第2の接続を形成して、2つのステップエッジのうちの異なる1つの上に堆積された第2のループに第1のループを接続するように堆積され得る。
【0019】
超電導材料は、経路が2つのステップエッジのうちの1つを横切るたびに2つのジョセフソン接合を含むループを形成するように、基板の上に堆積され得る。
【0020】
超電導材料は、経路が2つのステップエッジのうちの1つを横切るたびに3つ以上のジョセフソン接合を含む配列を形成するように、基板の上に堆積され得る。
【0021】
基板を徐々に回転させることは、基板を連続的に回転させることを含み得る。基板を連続的に回転させることは、一定の回転速度で基板を回転させることを含み得る。回転速度は、レジストおよび基板をイオンビームに露出させる間、1回転より大きくてよい。回転速度は、毎分1回転より速くてよい。回転速度は、毎分10回転より速くてよい。
【0022】
2つの壁は、露出されたエリアの両側で互いに対向し、2つの対抗する壁の間の距離は、20μm未満であり得る。ジョセフソン接合の接合パラメータは、製造のばらつき内で同一であり得る。
【0023】
選択されたエリアは、2つのそれぞれのステップエッジを形成する2つの壁を各形状が有する複数の形状を含んでよく、経路は、各形状の2つのステップエッジを複数回横切る。形状は、長方形であってよく、経路が、形状のすべての2つの壁を一直線に横切るように並んで配列され得る。
【0024】
デバイスは、
エッチングされたエリアの外周の上の結晶基板の表面の中の2つの壁と、
2つの壁の各々におけるステップエッジと、
基板の上に堆積された超電導材料の蛇行経路であって、経路は、2つのステップエッジを複数回横切る、蛇行経路と
経路が2つのステップエッジのうちの1つを横切るたびに、経路の中に形成されるジョセフソン接合とを含む。
【0025】
デバイスは、経路の中に形成され、直列に接続された少なくとも4つのジョセフソン接合を含み得る。デバイスは、少なくとも8つのジョセフソン接合を含み得る。
【0026】
2つのステップエッジの間の距離は、20μm未満であり得る。
【0027】
方法およびデバイスのうちの一方の随意の特徴は、方法およびデバイスのうちの他方の随意の特徴でもある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】従来技術による超電導基板のプロフィールを示す図である。
図2】従来技術による、図1におけるプロフィールの上に結晶を成長させた結果を示す図である。
図3】同じステップエッジにわたって平行なこれらの接合のうちの2つが、従来技術による超電導量子干渉素子(SQUID)を形成する、従来技術によるジョセフソン接合の平面図である。
図4】結晶基板の表面の中に複数のステップエッジを形成する方法を示す図である。
図5】基板ホルダによって回転され、イオンビームにさらされる基板を示す図である。
図6】4つのステップエッジが、回転する基板ホルダの使用によって長方形の周りにパターン化され、この場合、ジョセフソン接合は、エッチングされた長方形領域の反対側にパターン化されており、この長方形パターンの4つすべてのエッジをジョセフソン接合形成のために利用することができる、例示的なデバイスを示す図である。
図7】MgO基板のステップエッジの断面プロフィールを示す図である。
図8】Фがどのように決定されるかを示すAFM断面スキャンを示す図である。
図9】約20μm離れた対向するステップエッジからの2つの原子間力顕微鏡(AFM)断面であって、両ステップエッジが、軸方向に拘束されないステップエッジを形成するために複数のステップエッジ製作の開示された方法で形成され、AFMシステムの限界に起因して、2つの画像が断面形態を示すためにともに縫合された、2つのAFMを示す図である。
図10図8と同じロケーションにおいて開示された方法を使用して形成されたMgOのパターン化領域の対向する両面の上のステップエッジの3D AFMスキャン(12x12μm)を示す図である。
図11図5の回転する基板ホルダを使用して作成されたステップエッジジョセフソン接合(倍率x500)の配列を示す図である。
図12図11における配列に対して測定された電流対電圧応答を示す図である。
図13図11における配列に対する磁場に対して測定された応答を示す図である。
図14】溝構成の中に2つの対向するステップを有する例示的な配列デバイスを示す図である。
図15a図14において3Dで示される対向するステップエッジの上の2つのループの例示的な構成を2Dで示す図である。
図15b図14において3Dで示される対向するステップエッジの上の2つのループの例示的な構成を2Dで示す図である。
図15c図14において3Dで示される対向するステップエッジの上の2つのループの例示的な構成を2Dで示す図である。
図16】蛇行する超電導経路と、2つの対向するステップのうちの一方の上の経路の交差ごとにおけるジョセフソン接合とを有する例示的なデバイスを示す図である。
図17】蛇行する超電導経路と、2つの対向するステップのうちの一方の上の経路の交差ごとにおける2つのジョセフソン接合を含むSQUIDループとを有する例示的なデバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は、チップの上の接合の位置決めおよび配向に対して新しい自由度を広げ、したがって、デバイス設計に対する新しい可能性を導入するステップエッジを製作するための方法を提供する。開示する方法は、現在の最先端を超える4つの重要な利点を提供し得る。
(1) 接合形成は、軸方向に拘束されず、もはやイオンビームに面するレジストエッジに制限されず、接合は、レジストエッジが存在するいかなる場所にも形成され得る。これは、新しいデバイス設計に対する可能性を導入する。
(2) 滑らかな帰還経路が除外され、図1および図2における鋸歯状プロフィールを、たとえば2つの対向するステップエッジを有する溝プロフィールに変更し、より小さい面積の中に製作され得るステップエッジの数を増加させ、製造コストを低減する。
(3) 接合の密度が著しく増加され得、そのことは、いくつかのデバイス性能に対して重要である。
(4) ステップエッチ速度が、ステップエッジ形成の間に基板にわたってより均一である。イオン源へのサンプルの近接性に起因するステップエッジ形態の変化は、基板ホルダの回転によって半減され得る。
【0030】
本明細書で開示する方法は、SQUID、磁場勾配計(gradiometer)、高周波ミキサ、および超電導量子干渉フィルタ(SQIF)など、すべてのステップエッジジョセフソン接合デバイスにおいて使用され得る。SQIFデバイスの場合、より多くの接合がより小さい面積の中に製作され得、そのことが、デバイス性能を高める。これは、地盤探査(geo-exploration)、非破壊評価、健康科学(生体磁気および医学)、RF感知および検出、ならびに衛星通信を含む通信などの磁気測定を伴うアプリケーションを有する。
【0031】
図4は、結晶基板の表面の中に複数のステップエッジを形成する方法400を示す。方法は、表面の上にレジストの層を形成するステップ401を含む。レジストの層は、表面の選択されたエリアを露出させるための開口を含む。たとえば、この層は、MgO基板または別の好適な基板の表面の上へのフォトレジストの層の堆積、および知られているフォトリソグラフィ技法を使用して表面の選択されたエリアを露出させるためにレジストのエリアを除去することによって形成されることができる。これは、選択されたエリアに対して開いているマスクを準備すること、フォトレジストの上にマスクを置くこと、マスクに光を向けること、およびマスクを除去することを伴う。いくつかの例では、マスクの中の開口は、長方形の形状を有する。次いで、光にさらされたフォトレジストのエリアが、除去され得る。このようにして、2つの対向する平行な壁が、外周の上のレジストの層の中に、本明細書では「溝」と呼ばれる長方形のくぼみの側壁として形成される。その結果、2つの壁は、互いに対向する。ネガレジストもまた、同じ効果を挙げるために使用され得る(レジストが露出されたエリアが残る一方で、露出されないエリアが除去される)。ステップエッジ形成中にステップをパターニングするためのフォトレジストに対するハードマスク、たとえばスパッタリングもしくは電子ビーム堆積によって堆積された金属、またはスパッタリングによって堆積されたセラミック材料もしくは合金などの代替材料を使用することが同様に可能であることに留意されたい。この材料は、パターンを作るためにポジティブまたはネガティブのフォトレジストを使用して堆積され得る。たとえば、それは、リフトオフプロセスを使用して堆積され得る。
【0032】
いくつかの例では、壁は、基板の上に正方形または長方形(すなわち、溝)を画定し、隣接部の間で90度だけそれらの方向が異なる溝の外周の上に4つの壁が存在することに留意されたい。しかしながら、他の例では、くぼみの形状は、六角形のまたは他の正多角形または非正多角形を含めて、より複雑であり得る。またさらなる例では、壁は、直線的/平面的ではなく曲線的であり、円形のくぼみを画定してもよい。この意味において、複数の壁の部分が、エリアの外周に沿って互いに連続的に流入し、壁に沿った第1の点において、方向は、第2の点における方向と異なる。この場合、画定され得る無限数の壁の部分があり得る。壁は、壁に沿って変化する表面方向を有してよく、壁に沿ったすべての点が同じ方向を有するとは限らない。言い換えれば、壁は、単一の平面でなくてもよく(複数の平面を含んでよく)、長方形の溝の例では、対向する壁の各々が単一の平面であることに留意されたい。壁は、露出およびエッチングのために選択されたエリアの外周の上にあることに留意されたい。
【0033】
方法400の次のステップは、レジストおよび基板をイオンビームに露出させるステップ402である。これは、レジストおよび表面の露出されたエリアをエッチングする。レジストおよび基板をイオンビームに露出させながら、基板は、表面に対して垂直な軸周りに徐々に回転され403、それにより、2つの対向する壁の各々においてステップエッジを形成する。
【0034】
徐々の回転は、15~20分の露出の間に毎分20回転の回転速度、または、15~20分の同様の露出時間(露出時間は、角度506(図5)に依存する)に対して毎分60またはさらには120回転の回転速度などの連続回転であり得る。他の回転速度が同様に適用されてよく、レジストのイオンビームへの全露出時間の間に1回転より多い、または毎分1回転より速い、または毎分10回転より速いなど、製造パラメータの範囲に依存し得る。他の例では、徐々の回転は、変化する速度における回転、または、各ステップに10度未満、または5度未満、または1度未満など、小さいステップでの回転であり得る。多くの例では、回転は、複数のフル(X*360°)回転を含むことにさらに留意されたい。しかし、他の例では、回転は、半分(180度)または四半分(45度)など、フル回転より小さい回転を含み得る。
【0035】
回転は、レジストがイオンビームに露出される間に実行されることに留意することが重要である。これは、イオンビームは、チップを回転させるためにオフに切り替えられるのではなく、イオンビームは、エッチングが回転のすべての角度において生じるように回転の間にオンに切り替えられたままであることを意味する。
【0036】
次いで、方法は、超電導材料を基板の上に蛇行形状(meandering shape)に堆積させるステップ404によって継続する。これは、2つの対向するステップエッジを複数回横切る経路を形成する。さらに、このステップは、図6を参照して以下で説明するように、経路が2つの対向するステップエッジのうちの一方を横切るたびにジョセフソン接合を形成する。
【0037】
壁が画定することができる異なる形状に戻ると、第2のステップエッジが第1のステップエッジの帰還経路の中に形成されるように、ステップエッジを形成する壁および対向する壁が存在し得ることに留意されたい。ここで、「帰還経路(return path)」という用語は、基板の下位レベル(lower level)から上位レベル(upper level)に戻る任意の経路を示すために使用されることに留意されたい。図1および図2において、滑らかな帰還経路104/204は、帰還経路が、上位レベルに向けて緩い傾斜を有し、その経路が上位レベルに到達したときにエッジを有さず、それゆえ接合が生成されないという意味において滑らかである。対照的に、本明細書で開示する方法およびシステムを使用することによって、図9および図14に示すように、帰還経路はエッジを含み、接合が形成される。溝などの対称構造では、「帰還経路」は、対向する側壁のどちらの1つの上にもあると見なされ得ることにさらに留意されたい。帰還経路の概念が直接的に適用されない別の例では、2つの壁が互いに直角に設置され、それにより、同じく互いに直角である2つのステップエッジが製作される。この例では、両方の壁が表面の同じ露出されたエリアに隣接し、さらには、表面の露出されたエリアと境界を接する場合がしばしばある。たとえば、露出されたエリアが長方形である場合、長方形と隣接する/を画定する4つの壁があり、ステップエッジが、長方形の4つの辺の各々の上に形成される。
【0038】
図5は、製作の間の、MgOまたは他の好適な基板などの超電導基板501を示す。基板501は、前のフォトリソグラフィステップの結果として壁503(さらなる壁は明確にするために示されていない)を形成する、基板の上に配置されたフォトレジストの層502を有する。基板501は基板ホルダ504の上に搭載され、イオンビーム505は、基板501の平面とイオンビーム505との間の傾斜角度506において壁503に入射する。傾斜角度506は、いくつかの例では、望ましくは20度であるが、10度と80度との間、またはさらには0度と90度との間の任意の角度であってもよい。別の例では、角度は、10度と50度との間である。イオンビーム505が壁503に入射する間に、基板ホルダ504は、回転軸507周りに基板501(およびフォトレジスト502)を徐々に回転させる。これは、方位角508を徐々に変化させる。
【0039】
この基板ホルダ504は、以下の特徴を有し得る。
(1) それは、ステップ角度105(図1参照)を制御するために選択された傾斜角度でイオンビーム505に向けて傾けられ得る。
(2) それは、イオンエッチングの間に制御された速度で回転され得る。
【0040】
イオンエッチングの間の基板ホルダの回転は、パターン化されるチップの上のステップエッジ形成に対する新しい自由度を広げる。たとえば、露出されたMgO表面の典型的な長方形の形状のフォトレジストのステップエッジパターンでパターン化されるMgO基板に対して、ステップエッジは、今やレジストの4つすべての面の上に形成されることになり、そこは、以前は、ステップエッジは1つの面の上にだけ形成され、2つの側壁および1つの滑らかな帰還経路が他の3つの面を構成していた。
【0041】
図6は、図4の方法400に従って製作された4つのステップエッジ601、602、603、604を有する例示的なデバイスを示す。蛇行するYBCO経路605は、同じく、図示のように堆積された。その結果、ジョセフソン接合607は、パターン化された長方形の領域の対向する辺の上に形成される。図6に示す蛇行経路に起因して、超電導材料は、2つの対向するステップエッジを複数回横切る経路を形成する。他の例では、接合は、上部および底部の水平エッジの上にも設置されてよく、エッチング窓の4つすべての辺を利用する。以前は、これは、ステップエッジ形成の最新の技法を使用しても困難であった。
【0042】
本明細書で開示する方法によって、単一のチップの上により高密度のステップエッジを製作することが可能である。なぜならば、滑らかな帰還経路または側壁の存在によって使用される空間は、もはや存在しないからである。これは、単一の基板の上の接合の数をスケールアップすることに役立ち、製造業者とってプロセスをより好ましいものにし得る。
【0043】
いくつかの場合、性能は、1つの配列の中の接合の数に直接つながる。それゆえ、この技法は、デバイスの性能を改善する可能性も有する。このプロセスは、オンチップのステップエッジ接合の均一性も改善し得、したがって、基板にわたる接合の信頼性を改善する。
【0044】
図7は、第1のエッチの後で第2のエッチの前の2つのステップエッジの間の断面の比較を示す。1つは、ステップエッジを生成する元の方法(701、基板ホルダ回転なし)によって準備され、もう1つは、回転する基板ホルダの使用を伴う方法(702)によって準備された。説明として、図7は、明確にするために(図の平面と平行の)面内に示されている図5からのイオンビーム505および角度506も示している。回転しない701場合、イオンビーム505は、面内に留まるが、回転する702場合、イオンビームは、徐々に変化して図の平面の外に回転し、最終的に、対向する壁(図示せず)を照射し、それにより、図示のステップエッジは、必然的に陰に入る。図7は、以下で説明する図9の右側の部分を示すことに留意されたい。ステップの底における表面形態およびステップ角度Ф(図8参照)は、わずかに異なるが、形態におけるこの変化は、デバイスの機能に影響を及ぼさず、ステップ角度は、基板ホルダの角度を調整することによって対処され得る。特に、ステップエッジ702は、表面に垂直な軸周りに基板を徐々に回転させながら、レジストおよび基板をイオンビームに露出させ、それによりステップエッジを形成した結果として、ステップエッジからの距離に沿って変化する高さプロフィールを有する。この例では、プロフィール702は、あまり急峻ではなく、プロフィール701より緩やかに変化する。プロフィール702は、2μmから6.5μmまで延び、それは、対向する側壁が、ステップエッジ702から約5μm以内に設置され得ることを意味することが分かる。回転しないステップエッジ701はより急峻であり、それゆえ空間をあまり占有しないように見えるが、対向するステップエッジは、イオンビーム505の静止構成に起因して形成されず、代わりに、滑らかな帰還経路が約16μmにわたって形成され、その経路は、x軸の限られたスペースによって示されない。
【0045】
図9は、同じフォトリソグラフィ窓の中に互いにほんの20μm隔てて形成された2つの対向するステップエッジの断面を示す。これは、他の例示的な設計では、16μmまで、またはそれ未満に低減され得る。これは、通常、最大6μmの広さの滑らかな帰還経路に依存し、ステップエッジの間の距離が少なくとも32μmである、以前の技術とは対照的である。その結果、本明細書で開示する方法は、増加した密度のステップエッジを有する配列の製造を可能にする。20μmの距離は、理論的限界ではなく、製造技術に応じて、16μm未満、またはさらには5μm未満など、20μm未満の距離が可能であることに留意されたい。図10は、図9に示すものと同じスキャンされたエリアの3次元AFM画像を示す。
【0046】
実施例
16,700個のステップエッジのジョセフソン接合の配列が、回転する基板ホルダ504を使用して準備された。この配列は、SQIF設計の原理を利用し、それにより、磁場の小さい変化に応答して大きい電圧を得るために、変化するサイズの1000個以上のSQUIDループが、配列の中で直列および並列に製作される。個々のSQUIDループからの電圧応答は、ゼロ磁場付近にアンチピークを形成するための建設的干渉と、非ゼロ磁場におけるSQUIDループ電圧応答の相殺的干渉とを介して合計する。配列設計は、新しいタイプの接合に対して最適化されなかったが、デバイスは、コンセプトの証明として準備された。図11は、矢印で強調されるステップエッジを有する配列の画像を示し、そこにおいて、帰還経路がないことが分かる。
【0047】
このデバイスからの観察結果は、以下のとおりである。
【0048】
デバイスは、図12に示すように、ジョセフソン接合配列に対して予期されたI-V応答を与えた。
【0049】
デバイスは、同じく、図13に示すように、磁場に対して予期されたSQIF電圧応答を与えた。
【0050】
これらの結果は、基板ホルダを回転することによって形成されたステップエッジが、予期されたとおりに動作し、
【0051】
C. H. Wuら、「High quality step-edge substrates for high-Tc superconducting devices」、Review of Scientific Instruments、vol. 77、no. 3、2006年、および
【0052】
E. E. Mitchellら、「2D SQIF arrays using 20 000 YBCO high R n Josephson junctions」、Superconductor Science and Technology、vol. 29、no. 6、p. 06LT01、2016年、
【0053】
C. Foley、「Formation of step edge in surface of crystalline substrate, involves selecting angles between incident axis of ion beam and surface of substrate, and between incident axis of beam and resist side walls」、特許WO200016414-A1、AU9958424-A、GB2357917-A、DE19983559-T、GB2357917-B、US6514774-B1、DE19983559-B4、Available: <Go to ISI>://DIIDW:2000271657、
【0054】
E. E. MitchellおよびC. P. Foley、「YBCO step-edge junctions with high I c R n」、Superconductor Science and Technology、vol. 23、no. 6、p. 065007、2010年、
に記載される最先端の技法によって作製されたものの特性と同様の特性を有する。
【0055】
提案されるプロセスは、既存のプロセスを超える以下の利点を有する。
(1) 接合形成は、軸方向に拘束されず、もはや(レジストの中の開口の中の)イオンビームから最も遠いレジストエッジにおける接合形成に制限されず、接合は、レジストエッジが存在するいかなる場所にも形成され得る。これは、新しいデバイス設計に対する可能性を導入する。
(2) 滑らかな帰還経路が除外され、オンチップの面積(real-estate)が増加し、増加した密度の単位面積当たりの接合が可能になり、製造コストが低減される。
(3) 接合の密度が増加され、そのことは、いくつかのデバイス性能に対して重要である。
(4) ステップエッジ形態は、基板エリアにわたってより均一であり、より良好な接合の均一性につながる。
【0056】
提案される方法は、臨界電流および標準抵抗などの重要な接合パラメータにわたって同等の制御によって、および高品質接合によって、広範囲のステップエッジ角度(10~80°または10~50°)が選択されることも可能にする。ステップエッジ角度は、以下で説明する対向するステップエッジなど、すべてのステップエッジに対して同一であり得ることにさらに留意されたい。これは、同じく、重要な接合パラメータが同一であることを意味する。この文脈における「同一」は、設計が、これらのパラメータを同一として設定するが、当然ながら、それらのパラメータは、大幅であり得る製造のばらつきの影響を受ける。たとえば、ステップ角度が、約+/-1度または+/-2度だけ変化し、膜品質などのさらなる変動が、約20%または10%または5%の臨界電流の変動につながる場合がある。同一の接合パラメータは、たとえば、多数のループを有するSQIFなど、幅広い用途において有利である。
【0057】
図14は、上位レベル1405から下位レベル1404を区切る2つの対向するステップ1402および1403を有する基板1401を有する例示的なデバイス1400を示す。図14図5と比較すると、図5では、フォトレジスト503は、依然として存在し、基板501は、複数のステップエッジを製造するためのイオンビーム505にまだ露出されていないことに留意されたい。図14は、それらのステップの後のデバイスを示し、それは、フォトレジストが除去されて、ステップ1402および1403が生成されたことを意味する。下位レベル1404は、フォトレジストが、イオンビーム505から基板を遮蔽していなかった場所であり、上述の「露出されるエリア」に相当する。図9のプロフィールは、図14の破線1406に沿って取られていることにさらに留意されたい。
【0058】
デバイス1400は、図2に示すように基板1401の上に堆積されているが滑らかな帰還経路204を持たない、YBCOなどの超電導材料で作られる第1のループ1407および第2のループ1408をさらに含む。図2の粒界201(すなわち、ジョセフソン接合)を形成する図1のステップエッジ101と同様に、第1のループ1407は、第1のステップ1402の上方のステップエッジの上に2つのジョセフソン接合1409および1410を形成する。ステップ1402の底においてさらなる接合はない(1411および1412において示される)ことに留意されたい。なぜならば、底は図2および図9に示すように丸められており、それは、図14の破線で示される。
【0059】
図14を再び図2と比較すると、滑らかな帰還経路204の代わりに、第2のループ1408がその上に形成される帰還経路の上に、第2のステップ1403がある。この意味で、図1および図2の鋸歯状のプロフィールの代わりに、ここでは、2つの対向する側壁1402および1403のエッジが互いに面する溝プロフィールがある。この例では、上位レベル1405と側壁1402との間のエッジは、上位レベル1405と側壁1403との間のエッジと平行である。同じことが、下位レベル1404について言えるが、これは、それらのエッジのまるめに起因して、画定することはより困難である。図14に示す溝構造の結果として、滑らかな帰還経路204によって図2に存在しないが、今や第2のループ1408において使用され2つのさらなる接合1413および1414が存在する。溝構造に起因して、さらなる接合1413および1414は、互いに同一線上にあり、同様に互いに同一線上にあるステップエッジ1409および1410と平行であることに留意されたい。再び、第2のステップ1403の底においてさらなる接合は存在しない。ループ1407および1408の各々は、今や、磁場を検出するためのSQUIDとして働き、それらはともに、単一のループより高い感度を有する。
【0060】
重要なことには、2つのループ1407および1408は、互いに接続されてもよく、されなくてもよい。接続されないとき、それらは2つの別々のSQUIDを形成し、接続されるとき、それらは1つのSQUID配列を形成する。すべての場合において、下位レベル1404の中で、それらは、接続1417および1418をそれぞれ有し、それは、それぞれのステップ1402および1403と平行である(しかし、必ずしも平行である必要はない)。この意味において、ループ1407を形成する堆積された材料によって取られる経路は、ステップ1402を下方に進んで上位レベル1405から下位レベル1404までの第1の経路部分を形成し、同じステップ1402を反対方向に上方に戻って、中間にある別のステップを横切ることなく、かつ中間にある上位レベル1405に到達することなく下位レベル1404から上位レベル1405までの第2の経路部分を形成し、ループを形成する。その結果、以前、単一のループのステップおよび滑らかな帰還経路によって占められていたエリアの中に、今や2つのループ1407および1408が存在する。重要なことには、下位エリア1404は、滑らかな帰還経路のために、2つのステップ1402および1403に対する経路より大きく、それは、密度の増加は、前の密度の2倍よりかなり大きいことを意味する。なぜならば、2つのループは、今や、単一のループのために前に必要であった面積より小さい面積の中に収まるからである。言い換えれば、図14は、今や溝の形状を画定する一方で、図2は、2つの隣接するステップエッジの間に鋸歯状の形状を画定する。
【0061】
図15a、図15bおよび図15cは、ループ1407および1408が、どのようにして接続され得るかを示す。これは、SQIF配列に対して重要かつ必須であり得る。破線はステップエッジであり、実線はYBCOエリアを画定する。図15aは、接続されないことを示し、図15bおよび図15cは、ループが接続され得る異なる方法を示す。特に、図15cでは、この場合は長方形などの隣接エリアが存在し、ループは、このエリアから(たとえば、正方形または長方形に)切り抜くことによって形成される。
【0062】
さらなる例では、デバイスは、溝(trench)(トラフ(trough)とも呼ばれる)が壁の間にあり、壁の表面が互いに面するという意味で、結晶基板の表面の中に2つの対向する壁を含む。溝は、開口がレジストの中にある場所に形成され、露出されたエリアをエッチングして溝を形成するために、後で溝を形成するエリアがイオンビームに露出される。溝は、この場合は長方形であり、壁は、溝の両側にある。次いで、超電導材料が、基板の上に蛇行形状に堆積される。これは、超電導材料が、溝を左右に複数回横切る経路を形成する。言い換えれば、経路は、1つの方向に溝を横切り、反対方向に戻り、最初の方向に再び横切って、反対方向に戻り、以下同様である。180度ターンまたはUターンであるターン点は、経路が90度だけ方向を急に変えるという意味で、2つの90度ターンまたは直角コーナーによって形成され得る。代替的に、コーナーは、丸められてよく、または四半円または連続した湾曲を含む他の形状を有してよい。
【0063】
望ましくは、基板の中の溝の壁の角度(すなわち、険しさ)は、(製造のばらつきの中で)同一であり、それは、長方形の両辺の上の臨界電流など、同一の接合パラメータをもたらす。
【0064】
ステップエッジを複数回横切ることによって、そのたびに、ジョセフソン接合が、(同一の接合パラメータを有する)ステップエッジにおける粒界によって形成される。これは、経路が、一回だけ溝を横切って戻る場合、少なくとも4つのジョセフソン接合が経路の中に存在することを意味する。これらは、第1のステップエッジを超えて溝の中に下降する第1の接合と、第2のステップエッジを超えて溝を出て上昇する第2の接合と、向きを変えた後に第2のステップエッジを超えて溝の中に再び下降する第3の接合と、最後に、第1のステップエッジを超えて溝を出て上昇する第4の接合とを含む。この場合、超電導材料の経路は、接合の間の接続を提供するので、直列に接続された4つの接合がある。以下で説明するように、各交差において追加の並列の接合があり得る。
【0065】
いくつかの例では、接合の総数は、少なくとも8である。これは、各交差において並列の2つの接合があるときの場合であり、2つの接合は、ともにそれぞれのSQUIDループを形成する。それゆえ、第1のステップエッジを超えて溝の中に下降する第1のループと、第2のステップエッジを超えて溝を出て上昇する第2のループと、向きを変えた後に第2のステップエッジを超えて溝の中に再び下降する第3のループと、最後に、第1のステップエッジを超えて溝を出て上昇する第4のループとを含む、少なくとも4つのSQUIDループがある。この場合、超電導材料の経路は、接合の間の接続を提供するので、4つのループが、直列に接続される。
【0066】
単一の蛇行が、反対方向に2回、溝を通って(往復して)進み、ビルディングブロックまたは単に「ブロック」と呼ばれることがあることに留意されたい。ブロックは、多数の接合またはループを生成するために、溝に沿って何回も繰り返され得る。各ブロックは、経路が溝を通って進む2つの「腕」を含み、各腕は、2つのステップエッジの(上下の)交差を含む。その結果、各ブロックは、4つの交差を含む。2つの腕は、並列に接続されても直列に接続されてもよい。ブロックの各交差は、単一の接合またはループを形成する2つの接合を含んでよく、それにより、各ブロックは、4つの接合か、または合計8つの接合を有する4つのループのいずれかを含む。ループと接合との組合せ、および並列と直列とに接続された腕もまた可能である。
【0067】
図16は、図4の方法400に従って製作された2つの対向するステップエッジ1603および1604を有する基板1602の上に蛇行するYBCO経路1601が同様に存在するという意味で、図6と同様の例示的なデバイス1600を示す。蛇行は、本開示を通して、経路が、トラフ1605にわたって、一連の規則的な湾曲した曲線、屈曲、ループ、ターン、または巻きを形成することを意味する。言い換えれば、経路は、トラフ1605にわたって進むときに、左右にスイングする。
【0068】
再び、ジョセフソン接合は、基板1602の中のトラフ1605の両側に形成される。図16に示す蛇行経路に起因して、超電導材料は、2つの対向するステップエッジ1603および1604を複数回横切る経路を形成する。ステップエッジの各交差が単一のジョセフソン接合を構成する図6とは対照的に、図16では、経路がステップエッジを横切る交差ごとに、2つのジョセフソン接合が並列に構成される。
【0069】
たとえば、ステップエッジ交差は、1606に示される。この例示的な交差1606は、並列に接続され、ともにSQUIDループを形成する第1の接合1607および第2の接合1608を含む。トラフ1605底における接続1609は、交差1606におけるSQUIDループを、対向するステップエッジ1604におけるさらなるSQUIDループに接続する。
【0070】
同時に、上部層におけるさらなる接続1610は、交差1606におけるSQUIDループを同じステップエッジ1603の上のさらなるSQUIDループに接続する。このパターンは、直列に接続されるいくつかのSQUIDループを生成するために、蛇行またはジグザグの形で継続する。図16は、同じく、直列接続されるSQUIDループに接続するためのパッド1611および1612を示す。
【0071】
上記で説明したように、デバイス1600は、1613に示す基本的ビルディングブロック(basic building block)の複数の実例(instance)またはコピーから構築され得る。この例では、ビルディングブロック1613は、直列の4つのループを含み、デバイス1600は、2.5個のビルディングブロックを含む。
【0072】
本明細書で開示する方法によって、単一のチップの上により高密度のSQUIDループを製作することが可能である。なぜならば、滑らかな帰還経路または側壁の存在によって使用される空間は、もはや存在しないからである。これは、単一の基板の上のSQUIDループの数をスケールアップすることに役立ち、製造業者とってプロセスをより好ましいものにする。図16の例では、比較的小さい面積の中に10個のSQUIDループがあり、提案される方法の拡張可能性を明示している。
【0073】
いくつかの場合、性能は、1つの配列の中のループの数に直接つながる。それゆえ、この技法は、デバイスの性能を改善する可能性も有する。このプロセスは、オンチップのループの均一性も改善し得、したがって、基板にわたる接合の信頼性を改善する。
【0074】
図17は、上部レベルの接続1701が、2つのループを並列に接続し、次いで並列接続されたループを直列に接続するために、図16と比較して修正された、また別の例を示す。見られるように、並列接続されたループは、同じステップエッジの上で互いに隣接している。いくつかの例では、隣接するループは、同じく、トラフの中で底部レベルにおいて接続され得る。多くの異なる組合せが、潜在的に多数の並列接続されたループとともに可能である。再び、ビルディングブロックが、1702において示され、ブロック1702は、ここで、各腕の中に2つの直列接続されたループを有する2つの並列接続された腕を含み、各ブロックは、合計20個のループを有する10個の並列接続された腕など、より多数の並列接続された腕を含んでもよいことに留意されたい。次いで、これらのより大きいブロックは、本明細書で説明したように、蛇行形状に直列接続される。
【0075】
図18は、3つの溝(すなわち、くぼみ)1801、1802および1803を生成するために、フォトレジストの中で露出される複数のエリアがある、また別の例を示す。3つの溝1801、1802および1803は、合計6つ(各溝の両側に2つ)のステップエッジを形成する。超電導材料の蛇行経路1804は、それが戻る前に、溝1801、1802および1803を複数回横切る。経路1804がステップエッジを横切るたびに、ジョセフソン接合が形成される。図18では、接合は矢印で示され、方向は、溝の底から上部層に上方を指している。見られるように、図18の経路1804は、合計36個の接合を形成し、ブロックは12個の接合を含む。したがって、2つ以上の溝を生成するためにフォトレジストの中で露出される複数のエリアが存在し得、蛇行経路を有する各溝は、2つのジョセフソン接合を含み、ブロックは、偶数のジョセフソン接合から成る。
【0076】
本開示の幅広い範囲から逸脱することなく上記で説明した実施形態に対して、数多くの変形形態および/または修正形態が作成され得ることは、当業者には諒解されよう。それゆえ、本実施形態は、あらゆる点で例示と見なされ、制限するものではない。
【符号の説明】
【0077】
100 プロフィール
101 ステップエッジ
102 傾斜面
103 水平面
104 滑らかな帰還経路
105 ステップ角度
201 粒界
204 滑らかな帰還経路
301 ステップエッジ
302 傾斜面
303 水平面
304 滑らかな帰還経路
305 実線の輪郭
306 側壁
501 超電導基板
502 フォトレジスト
503 壁
504 基板ホルダ
505 イオンビーム
506 傾斜角度
507 回転軸
508 方位角
601 ステップエッジ
602 ステップエッジ
603 ステップエッジ
604 ステップエッジ
605 YBCO経路
606 ジョセフソン接合
607 ジョセフソン接合
701 基板ホルダ回転なしのグラフ
702 基板ホルダ回転ありのグラフ
1400 デバイス
1401 基板
1402 ステップ
1403 ステップ
1404 下位レベル
1405 上位レベル
1406 破線
1407 第1のループ
1408 第2のループ
1409 ジョセフソン接合
1410 ジョセフソン接合
1411 ステップの底
1412 ステップの底
1413 接合
1414 接合
1415 ステップの底
1416 ステップの底
1417 接続
1418 接続
1600 デバイス
1601 YBCO経路
1602 基板
1603 ステップエッジ
1604 ステップエッジ
1605 トラフ
1606 交差
1607 第1の接合
1608 第2の接合
1609 接続
1610 接続
1611 パッド
1612 パッド
1613 基本的ビルディングブロック
1700 デバイス
1701 上部レベルの接続
1702 ビルディングブロック
1801 溝
1802 溝
1803 溝
1804 蛇行経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15a
図15b
図15c
図16
図17
図18