(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】高降伏比冷間圧延二相鋼及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20240606BHJP
C22C 38/14 20060101ALI20240606BHJP
C21D 9/46 20060101ALN20240606BHJP
【FI】
C22C38/00 301U
C22C38/14
C21D9/46 F
(21)【出願番号】P 2021528386
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(86)【国際出願番号】 CN2019120247
(87)【国際公開番号】W WO2020103927
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-05-20
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】201811404464.3
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】302022474
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 偉
(72)【発明者】
【氏名】朱 暁 東
(72)【発明者】
【氏名】薛 鵬
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】相澤 啓祐
【審判官】佐藤 陽一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/152163号
【文献】中国特許出願公開第102953001号明細書
【文献】中国特許出願公開第107354376号明細書
【文献】中国特許出願公開第103088261号明細書
【文献】中国特許出願公開第106756547号明細書
【文献】中国特許出願公開第105274432号明細書
【文献】特開2004-211138号公報
【文献】国際公開第2017/168957号
【文献】米国特許出願公開第2013/0136950号明細書
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 8/00- 8/04
C21D 9/46- 9/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学元素の質量百分率が、C:0.05~0.08%、Mn:0.9~1.2%、Si:0.1~0.6%、Nb:0.030~0.060%、Ti:0.030~0.060%、Al:0.015~0.045%であり、残部がFe及び他の不可避不純物であり、
ミクロ組織が、マルテンサイト+フェライト+[Nb
xTi
y(C,N)
z]炭窒化物の複相組織であり、
前記マルテンサイトの相比率が20~30%であり、前記マルテンサイトが長い島状を呈しており、
前記[Nb
xTi
y(C,N)
z]炭窒化物がフェライト結晶粒中に不規則な球形で均一に分布しており、前記[Nb
xTi
y(C,N)
z]炭窒化物の相比率が5~10%であり、
前記[Nb
xTi
y(C,N)
z]炭窒化物のサイズが2μm未満であり、
他の不可避不純物の中で、P、SおよびN元素の質量百分率が、P≦0.015%;S≦0.005%;N≦0.005%のうちの少なくとも1つを満たし、
降伏比が0.8超えであり、
降伏強度が550~660MPa、引張強度が660MPa以上、破断伸び率が15%以上であることを特徴とする高降伏比
冷間圧延二相鋼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼及びその製造方法に関し、特に二相鋼及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業における軽量化と安全性の要求に伴い、市場はより強力な鋼板に対する需要がますます高まっている。二相鋼は、低い降伏強度、高い引張強度、及び高い初期の加工硬化率などの優れた特性を持ち、自動車部品の製造に広く使用されている。実際に使用されている自動車部品(例えば、車の座席)の反発を考慮し、高い降伏比(降伏比が0.8超え)を備える70kg級二相鋼の需要が高まっている。
【0003】
従来技術では、特許番号がCN105063510A、公開日が2015年11月18日、名称が「高塑性700MPa級冷間圧延耐候性二相鋼及びその製造方法」である中国特許文献は、化学組成の質量百分率が、0.07~0.15%C、0.30~0.80%Si、1.40~1.70%Mn、<0.01%P、<0.01%S、0.40~0.60%Cr、0.20~0.30%Cu、0.15~0.30%Ni、0.02~0.05%Nb、0.02~0.05%Tiであり、残部がFe及び他の不可避不純物である耐候性二相鋼を公開した。当該鋼板の製造方法は、1200℃で保温し、950~1050℃で最終圧延し、780~820℃で焼鈍し、660~720℃で急冷を開始し、急冷速度が40℃/s、急冷の終了温度が320℃であり、最終的に729~747MPa、降伏強度が328~346MPa、伸び率が21~22%である鋼板が得られた。当該鋼板の組成設計では、Cr、Cu、Niなどの合金元素を多く使用するとともに、Siの含有量が比較的多いである。
【0004】
特許番号がCN102766812A、公開日が2012年11月7日、名称が「700MPa級低降伏比熱間圧延二相鋼板及びその製造方法」である中国特許文献は、化学組成の質量百分率が、0.06%~0.09%C、1.0%~1.2%Si、1.10%~1.30%Mn、0.020%~0.050%Al、0.4%~0.6%Crであり、残部がFeである700MPa級低降伏比熱間圧延二相鋼板を公開した。鋼板の製造に使用されるビレットは、加熱炉で加熱され、熱間連続圧延ユニットで圧延された後に、層流冷却プロセスでセグメント冷却され、最終に引張強度が700MPaになる超高強度熱間圧延二相鋼が得られた。
【0005】
以上をまとめると、従来の二相鋼製品は、主に、1.Cu、Ni、Crなどの元素を多く含む冷間圧延焼鈍二相鋼板と、2.低降伏比熱間圧延鋼板との2種類に分かれている。これらの2種類の製品には、多く合金元素が含まれているとともに、降伏強度が低くなる。
【0006】
このため、高降伏比の二相鋼に対する市場の需要に応えるために、合金元素の含有量が少なく、高降伏比を備える二相鋼を得ることが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的の1つは、コストが低く、合金元素の含有量が少なく、強度と降伏比が高く、高降伏比の二相鋼に対する市場の需要に応える高降伏比冷間圧延二相鋼を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、化学元素の質量百分率が、C:0.05~0.08%、Mn:0.9~1.2%、Si:0.1~0.6%、Nb:0.030~0.060%、Ti:0.030~0.060%、Al:0.015~0.045%であり、残部がFe及び他の不可避不純物である高降伏比冷間圧延二相鋼を提供する。
【0009】
本発明の前記技術案において、各化学元素の設計原理は以下の通りである。
C:本発明の高降伏比冷間圧延二相鋼において、炭素は、固溶体強化元素であり、材料が高強度を得るのを保証し、マルテンサイトの強度を高め、マルテンサイトの含有量に影響を与えることができる。炭素の質量百分率が高すぎたり低すぎたりすると、鋼の性能に悪影響を及ぼす。したがって、本発明は、高降伏比冷間圧延二相鋼における炭素元素の質量百分率を、0.05~0.08%に制限する。
【0010】
Mn:マンガンは、オーステナイトの焼入れ性を大幅に向上させ、鋼の強度を効果的に高める元素ですが、溶接には不利である。Mnの質量百分率が0.9%未満であると、鋼の強度が不十分であり、一方、Mnの質量百分率が1.2%を超えると、鋼の強度が高すぎになる。したがって、本発明は、高降伏比冷間圧延二相鋼におけるMnの質量百分率を、0.9~1.2%に制限する。
【0011】
Si:シリコンは、固溶体強化元素であり、材料の強度を高めることができる一方で、炭素のオーステナイトへの偏析を促進し、フェライトを浄化し、鋼において伸び率を向上させる役割を果たす。同時に、Siは、鋼の組織に大きな影響を与える。Siは、表面に蓄積しやすく、除去し難い酸化皮膜(赤錆)を形成する傾向がある。Siの質量百分率が0.1%未満であると、鋼の強度が不十分であり、Siの質量百分率が0.6%を超えると、鋼の表面品質に影響を与えやすくなる。したがって、本発明は、高降伏比冷間圧延二相鋼におけるSiの質量百分率を、0.1~0.6%に制限する。
【0012】
Nb:ニオブは、結晶粒を微細化し、炭窒化物を析出させ、材料の強度を向上させることができる炭窒化物析出元素であるため、本発明では、高降伏比冷間圧延二相鋼におけるNbの質量百分率を、0.030~0.060%に制限する。
【0013】
Ti:チタンは、窒素を固定し、結晶粒を微細化するために使用され、材料の降伏強度の向上に役立つ炭窒化物析出元素である。したがって、本発明は、高降伏比冷間圧延二相鋼におけるTiの質量百分率を、0.030~0.060%に制限する。
【0014】
Al:Alは、鋼中で脱酸および結晶粒微細化に役割を果たすため、本発明は、高降伏比冷間圧延二相鋼におけるAlの質量百分率を、0.015~0.045%に制限する。
【0015】
さらに、本発明の前記高降伏比冷間圧延二相鋼において、そのミクロ組織は、マルテンサイト+フェライト+[NbxTiy(C,N)z]炭窒化物の複相組織である。
【0016】
さらに、本発明の前記高降伏比冷間圧延二相鋼において、前記マルテンサイトの相比率が20~30%であり、前記マルテンサイトが長い島状である(低倍率の金属顕微鏡で観察すると、長い島状を呈し、マルテンサイトの微細構造からは、ラス状または長板状である)。
【0017】
本発明の前記高降伏比冷間圧延二相鋼において、マルテンサイトの相比が20~30%であり、マルテンサイトは、長い島状を呈し、相変態を強化する効果を果たす。マルテンサイトの相比が高すぎたり低すぎたりすると、鋼の強度が高くなったり低くなってしまう。したがって、本発明では、高降伏比冷間圧延二相鋼におけるマルテンサイトの相比率を20~30%に制限する。
【0018】
また、本発明の前記高降伏比冷間圧延二相鋼において、前記[NbxTiy(C,N)z]炭窒化物がフェライト結晶粒中に不規則な球形で均一に分布しており、前記[NbxTiy(C,N)z]炭窒化物の相比率が5~10%である。そのうち、x+y=z。
【0019】
本発明の前記高降伏比冷間圧延二相鋼において、[NbxTiy(C,N)z]炭窒化物がフェライト結晶粒中に不規則な球形で均一に分布しており、分散析出を強化し、降伏比を改善する役割を果たす。
【0020】
[NbxTiy(C,N)z]炭窒化物の相比率が5%未満であると、高降伏比の効果が得られなく、一方、[NbxTiy(C,N)z]炭窒化物の相比率が10%を超えても、鋼の降伏比はあまり変化しなくなる。したがって、本発明は、高降伏比冷間圧延二相鋼における[NbxTiy(C,N)z]炭窒化物の相比率を、5~10%に制限する。
【0021】
さらに、本発明の前記高降伏比冷間圧延二相鋼において、前記[NbxTiy(C,N)z]炭窒化物のサイズは2μm未満である。
【0022】
さらに、本発明の前記高降伏比冷間圧延二相鋼において、他の不可避不純物の中でも、P、SおよびN元素の質量百分率は、P≦0.015%;S≦0.005%;N≦0.005%のうちの少なくとも1つを満たす。
【0023】
本発明の前記高降伏比冷間圧延二相鋼において、他の不可避不純物の中でも、P、SおよびN元素の質量百分率は、P≦0.015%;S≦0.005%;N≦0.005%のうちの少なくとも1つを満たし、その理由は以下の通りである。
【0024】
P:Pは、鋼中の不純物元素であり、Pの質量百分率が低いほど良いが、製造コストとプロセス条件のニーズを考慮して、本発明は、高降伏比冷間圧延二相鋼におけるPの質量百分率を、P≦0.015%に制限する。
【0025】
S:Sは、鋼中の不純物元素であり、Sの質量百分率が低いほど良いが、製造コストとプロセス条件のニーズを考慮して、本発明は、高降伏比冷間圧延二相鋼におけるSの質量百分率を、S≦0.005%に制限する。
【0026】
N:Nは、鋼中の不純物元素であり、高すぎるとビレット表面にひび割れが発生しやすくなるので、Nの質量分率が低いほど良いが、製造コストとプロセス条件のニーズを考慮して、本発明は、高降伏比冷間圧延二相鋼におけるNの質量百分率を、N≦0.005%に制限する。
【0027】
また、本発明の前記高降伏比冷間圧延二相鋼は、降伏比が0.8超である。
さらに、本発明の前記高降伏比冷間圧延二相鋼は、降伏強度が550~660MPa、引張強度が660MPa以上、破断伸び率が15%以上である。
【0028】
相応的に、本発明のもう一つの目的は、上記の高降伏比冷間圧延二相鋼の製造方法を提供することであり、当該製造方法によって得られる高降伏比冷間圧延二相鋼は、より高い強度及び降伏比を有する。
【0029】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の工程を含む高降伏比冷間圧延二相鋼の製造方法を提供する:
(1)製錬と鋳造;
(2)熱間圧延:ビレットを、1200~1250℃の温度で浸漬するように制御してから圧延し、最終圧延温度を840~930℃に制御してから圧延後に、20~70℃/sの速度で冷却し、その後に巻き取りを行い、巻き取り温度を570~630℃に制御する;
(3)冷間圧延;
(4)焼鈍:焼鈍浸漬温度が750~790℃、焼鈍時間が40~200秒であり、その後に30~80℃/sの速度で冷却し、冷却開始温度が650~730℃、時効温度が200~260℃、過時効時間が100~400秒である。
(5)レベリング。
本発明の前記製造方法において、工程(2)において、圧延負荷の安定性を確保するために、ビレットの加熱温度を1200℃以上に制御するとともに、Ti(C,N)、Nb(C,N)のオーステナイトへの固溶度を考慮し、炭窒化物Ti(C,N)およびNb(C,N)をより高い温度で確実に析出させるために、ビレットの加熱温度の上限を1250℃に制御し、即ち、ビレットを、1200~1250℃の温度で浸漬するように制御し、好ましくは5~6時間浸漬してから圧延する。また、焼鈍後の成形性及び粗大な結晶粒による組織の不均一性を考慮し、最終圧延温度を840~930℃に制御してから圧延後に20~70℃/sの速度で冷却し、好ましくは570~630℃に冷却してから巻き取りを行う。巻き取り温度は、フェライト中の炭窒化物の析出温度と見なすことができ、析出温度は析出物のサイズを制御する主な要因の1つである。析出温度が低いほど、析出核生成の臨界コアのサイズが小さくなり、析出物が細かくなり、また、TiとNbの拡散が遅いため、TiとNbの成長速度も小さくなる。動力学の観点から、TiとNbの拡散活性化エネルギーが高いために、Ti(C,N)、Nb(C,N)の析出過程は長距離拡散の結果であり、完全に析出するには十分な時間がかかる。冷却速度が速いと、第2相粒子の析出過程が抑制され、同時にその固溶量も増加し、Ti(C,N)、Nb(C,N)の析出過程に不利になり、析出量が低減する。そのため、巻取り温度は570~630℃であることが好ましい。
【0030】
さらに、工程(4)では、焼鈍浸漬温度と焼鈍時間がオーステナイト化の程度を決定し、最終的に鋼組織中のマルテンサイトとフェライトの相比率を決定する。焼鈍浸漬温度が高すぎると、マルテンサイトの相比率が高すぎになり、最終に得られる鋼板の強度が高くなる。一方、焼鈍浸漬温度が低すぎると、マルテンサイトの相比率が低すぎになり、最終に得られる鋼板の強度が低くなる。また、焼鈍浸漬時間が短すぎると、オーステナイト化の程度が不十分になり、一方、焼鈍浸漬時間が長すぎると、オーステナイト結晶粒が粗くなってしまう。よって、本発明の前記製造方法において、工程(4)において、焼鈍浸漬温度が750~790℃、焼鈍時間が40~200秒であり、その後に30~80℃/sの速度で冷却し、冷却開始温度が650~730℃、時効温度が200~260℃、過時効時間が100~400秒であるように制御する。
【0031】
さらに、本発明の前記製造方法において、工程(3)において、冷間圧延の圧下率を50~70%に制御し、及び/又は工程(5)において、レベリング圧下率を0.3~1.0%に制御する。
【0032】
本発明の前記製造方法において、工程(3)において、幾つかの実施形態では、鋼の表面の酸化鉄スケールを酸洗いによって除去し、次に冷間圧延を行う。鋼の組織により多く多角形フェライトを生成するために、冷間圧延の圧下率を50~70%に制御する。また、工程(5)において、鋼板の平坦性を確保するために、ある程度の平坦化が必要であり、平坦化量が多すぎると降伏強度が大きすぎるになることを考慮して、本発明の前記製造方法では、工程(5)において、レベリング圧下率を0.3~1.0%に制御する。
【0033】
従来技術と比較して、本発明の高降伏比冷間圧延二相鋼及びその製造方法は、以下の有益な効果を有する:
(1)本発明の高降伏比冷間圧延二相鋼は、合金元素の含有量が少なく(例えば、Cr、Ni、Cuを含まず、Siの含有量も少ない)、低コストであり、かつ本発明の高降伏比冷間圧延二相鋼の表面品質およびリン酸化特性を向上するのに有益であり、自動車製造のニーズを満たすようにできる。
【0034】
(2)本発明の高降伏比冷間圧延二相鋼は、強度と降伏比が高く、炭素当量が低く、自動車産業の構造部品および安全部品に広く適用される。
【0035】
(3)本発明の高降伏比冷間圧延二相鋼は、降伏比が0.8超え、降伏強度が550~660MPa、引張強度が660MPa以上、破断伸び率が15%以上である。
【0036】
(4)本発明の高降伏比冷間圧延二相鋼の製造方法も上記の有益な効果を有するが、ここでは省略する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、実施例2の高降伏比冷間圧延二相鋼のミクロ組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、明細書の図面及び具体的な実施例に基づいて本発明の高降伏比冷間圧延二相鋼及びその製造方法についてさらに解釈と説明をするが、当該解釈と説明は、本発明の技術案を不適当に限定するものではない。
【0039】
実施例1~6、比較例1~15
表1-1及び表1-2は、実施例1~6及び比較例1~15の高降伏比冷間圧延二相鋼における各化学元素の質量百分率(wt%)を示す。
【0040】
【0041】
【0042】
実施例1~6および比較例1~15の高降伏比冷間圧延二相鋼の製造方法は以下のとおりである(具体的なプロセスパラメータを表2-1及び表2-2に示す)。
【0043】
(1)製錬と鋳造:製錬と鋳造は、表1-1および表1-2に示されている各化学元素に従って実施された。
【0044】
(2)熱間圧延:ビレットを、1200~1250℃の温度で5~6時間浸漬するように制御してから圧延し、最終圧延温度を840~930℃に制御してから圧延後に、20~70℃/sの速度で570~630℃に冷却し、その後に巻き取りを行い、巻き取り温度を570~630℃に制御した。
【0045】
(3)冷間圧延:冷間圧延の圧下率を50~70%に制御した。
(4)焼鈍:焼鈍浸漬温度が750~790℃、焼鈍時間が40~200秒であり、その後に30~80℃/sの速度で冷却し、冷却開始温度が650~730℃、時効温度が200~260℃、過時効時間が100~400秒であった。
【0046】
(5)レベリング:レベリング圧下率を0.3~1.0%とした。
【0047】
【0048】
【0049】
実施例1~6及び比較例1~15の高降伏比冷間圧延二相鋼の性能を試験し、試験結果を表3に示す。
【0050】
【0051】
表3から、例1~6及び比較例1~15の高降伏比冷間圧延二相鋼は、引張強度が660MPa以上、破断伸び率が15%以上、降伏比が0.8超えであることが分かる。このことから、本発明の高降伏比冷間圧延二相鋼は、高強度、低炭素当量、高降伏比という利点を有することが分かる。
【0052】
図1は、実施例2の高降伏比冷間圧延二相鋼のミクロ組織図である。
図1から分かるように、実施例2の高降伏比冷間圧延二相鋼は、ミクロ組織がマルテンサイト+フェライト+[Nb
xTi
y(C,N)
z]炭窒化物の複相組織であり、そのうち、マルテンサイトは、相比率が20~30%で、相変態を強化する役割を果たし、マルテンサイト組織は長い島状である(低倍率の金属顕微鏡で観察すると、長い島状を呈し、マルテンサイトの微細構造からは、ラス状または長板状である)。同時に、[Nb
xTi
y(C,N)
z]炭窒化物は、フェライト結晶粒中に不規則な球形で均一に分布しており、そのサイズが2μm未満であり、組織において分散析出を強化する役割を果たす。
【0053】
なお、本発明の保護範囲内の従来技術の部分は、本出願の文書で与えられた実施例に限定されず、本発明の技術案に矛盾しないすべての従来技術(以前の特許文献、以前に公開された出版物、以前に公開された使用などを含むがこれに限定されない)は、本発明の保護範囲に含めることができる。
【0054】
また、本出願における各技術特徴の組み合わせ方式は、本出願の特許請求の範囲に記載されている組み合わせ方式、又は具体的に実施例に記載されている組み合わせ方式に限定されなく、本出願に記載の全ての技術特徴は互いに矛盾しない限り、任意の方式で自由に組み合わせたり、結合したりすることができる。
【0055】
注意すべくことは、以上に列挙されている実施例は本発明の具体的な実施例だけである。勿論、本発明は以上の実施例に限定されなく、実施例に基づいて作られた類似した変更又は変形は、当業者が本発明に開示の内容から直接に導出し又は容易に連想できるものであり、本発明の保護範囲に属する。