IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クァンタムディーエックス グループ リミテッドの特許一覧

特許7499247改良されたマイクロ流体デバイス、システム及び方法
<>
  • 特許-改良されたマイクロ流体デバイス、システム及び方法 図1A
  • 特許-改良されたマイクロ流体デバイス、システム及び方法 図1B
  • 特許-改良されたマイクロ流体デバイス、システム及び方法 図2
  • 特許-改良されたマイクロ流体デバイス、システム及び方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】改良されたマイクロ流体デバイス、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240606BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240606BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240606BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12Q1/686 Z
C12N15/09 Z
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021531009
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 GB2019053367
(87)【国際公開番号】W WO2020109801
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】1819419.1
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517079180
【氏名又は名称】クァンタムディーエックス グループ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUMDX GROUP LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100221899
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】ホジャット マダディ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス マイケル ウィルシェア
(72)【発明者】
【氏名】ロビン ペイジ
【審査官】藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/119382(WO,A1)
【文献】特表2009-529883(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0039303(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0129872(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00- 3/00
C12M 1/00- 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)セクションを有するマイクロ流体チャネルであって、前記PCRセクションは、前記PCRセクションにおいてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が起こるのに必要な温度変化を可能にするように構成される、マイクロ流体チャネルと、
PCRセクションを有する前記流体チャネルの少なくとも一部を含む、デバイスの流体的に分離可能な部分と、
前記流体的に分離可能な部分を外部環境から流体的に分離するように作動可能な少なくとも1つの閉鎖手段と、
前記分離可能な部分が分離されるときに、前記分離可能な部分における圧力を増加させる複数の圧力増加手段と、を備え、
前記複数の圧力増加手段は、複数の容積型ポンプであり、前記複数の容積型ポンプは、前記分離可能な部分における前記圧力を増加させるために分離可能な部分に第1の圧力をかける第1の位置に同時に又は共に作動可能であり、前記容積型ポンプのそれぞれは、チャネル内の液体サンプルを移動させるために第2の位置に作動可能である、マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
圧力増加手段が、前記PCRセクション内の熱サイクルによるサンプル増幅の前に、圧力を増加させるように適合されている、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
分離可能な部分が、前記デバイス上に存在する流体チャネル全体である、請求項1又は2に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記デバイスが、前記流体的に分離可能な部分を流体的に分離するように作動可能な少なくとも1つの気密弁又は密封手段を備える、請求項1~のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
圧力増加手段が、前記流体的に分離可能な部分における圧力を増加させるとともに、前記流体的に分離可能な部分内の流体を移動させるように構成される容積型ポンプである、請求項1~のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
圧力増加手段が、前記分離可能な部分に第1の圧力をかける第1の位置と、前記分離可能な部分に第2の圧力をかける第2の位置とに作動可能である、請求項1~のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
圧力増加手段がベローポンプである、請求項1~のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
圧力増加手段が、外部圧力源又はアクチュエータに関連付けられる、請求項1~のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
前記分離可能な部分における圧力増加手段が、大気圧よりも高い圧力を誘発する、請求項1~のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
前記分離可能な部分における圧力増加手段が、1.1bar以上の圧力を誘発する、請求項1~8のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
前記分離可能な部分における圧力増加手段が、1.6bar以上の圧力を誘発する、請求項1~8のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイスと、前記マイクロ流体デバイスを受け入れることができるホスト機器と、を備える診断システム。
【請求項13】
前記ホスト機器が、前記ホスト機器から前記流体デバイス上の圧力増加手段に圧力を伝達可能なインターフェースを備える、請求項12に記載の診断システム。
【請求項14】
前記ホスト機器が、前記ホスト機器と前記マイクロ流体デバイスとの間の相互作用を制御するマイクロプロセッサを備える、請求項12又は13に記載の診断システム。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のデバイス又はシステムを提供するステップと、
少なくともPCRセクションを含む前記デバイスの少なくとも一部を流体的に分離するステップと、
分離部分内の圧力を増加させるステップと、
前記分離部分内の前記圧力増加後、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅ステップを実施して、サンプル内の核酸を増幅するステップと、を含
前記圧力を増加させるステップは、前記複数の容積型ポンプを、前記分離可能な部分における前記圧力を増加させるために分離可能な部分に第1の圧力をかける第1の位置に同時に又は共に作動させ、その後、1つ又は複数の前記容積型ポンプを、チャネル内の液体サンプルを移動させるために第2の位置に作動させるものである、サンプルからの核酸増幅方法。
【請求項16】
少なくとも前記PCRセクションを含む前記デバイスの少なくとも一部を流体的に分離するステップの前に、前記サンプルを前記デバイスに挿入する、請求項15に記載の核酸増幅方法。
【請求項17】
1つ以上の流体密弁を閉じて、前記デバイス全体を流体的に分離するか、又は前記PCRセクションを含むマイクロ流体チャネルの一部のみを流体的に分離する、請求項15又は16に記載の核酸増幅方法。
【請求項18】
圧力増加ステップが、複数の容積型ポンプを圧縮するステップを含む、請求項1517のいずれか一項に記載の核酸増幅方法。
【請求項19】
圧力増加ステップが、複数の容積型ポンプを同時に又は共に圧縮して、分離可能な部分における前記圧力を増加させるステップを含む、請求項1518のいずれか一項に記載の核酸増幅方法。
【請求項20】
圧力増加ステップが、複数の容積型ポンプを第1の位置まで圧縮するステップを含み、前記容積型ポンプを少なくとも第2の位置までさらに圧縮し得る、請求項1519のいずれか一項に記載の核酸増幅方法。
【請求項21】
圧力増加ステップが、前記分離部分における前記圧力を少なくとも1.6barまで増加させる、請求項1520のいずれか一項に記載の核酸増幅方法。
【請求項22】
圧力増加ステップが、前記分離部分における絶対圧力を1.2barから2barの間まで増加させる、請求項1520のいずれか一項に記載の核酸増幅方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅を含むカセット上での処理を可能にする、診断用カセットなどのマイクロ流体デバイス、並びにそれを使用するシステム及び方法に関し、マイクロ流体カセットは、デバイスの増幅/PCRセクションにおける当該サンプル中の核酸増幅前に加圧される。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な化学的及び生化学的な分析及び合成をデバイス上で行うことができる、カセットなどのマイクロ流体デバイスを開発及び製造する努力が続けられている。この目標は、これまで実験室ベースだった活動を、ポイントオブケア(POC)で適時にかつ効率的な方法で行うことができるデバイスを提供することである。このようなマイクロ流体デバイスは、自動化システムでの使用に適合することができ、それによって、コスト削減及びオペレータのミスの減少などのさらなる利点が得られる。
【0003】
多くの場合、このようなマイクロ流体デバイスは、核酸の増幅を含む分子技術を実施できることが望ましい。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるDNAの増幅では、反応混合物がカセット上に存在するマイクロ流体チャネルを通って進む間に、加熱及び冷却に繰り返し(サーモサイクリング)供される必要がある。これは、カセット上に存在する1つ以上の静的チャンバにおいて反応混合物を保持することを含み得る。したがって、カセット内の反応混合物の温度をPCRサイクル中に変化させなければならず、実際にはPCR実験中に何度も変化させなければならない。これは典型的には、サンプルから核酸の適切な増幅を得るために、比較的高いサイクル数を必要とする。カセット内の温度を変化させることには技術的な課題がある。例えば、DNAの変性は典型的には90℃を超えて、しばしば98℃に近い温度で起こる。次いで、変性DNAへのプライマーのアニーリングが典型的には約45℃~70℃で行われるので、温度を下げる必要がある。最後に、アニーリングされたプライマーをポリメラーゼで伸長するステップが典型的には約70℃~75℃で行われるので、再び温度を上げる必要がある。これを可能にする様々な機構が説明されており、加熱帯を採用するシステムが利用されているか、又はマイクロ流体チャネル内の温度を急速に変化させる手段が採用されている。このようなデバイス及びシステムが知られている。
【0004】
温度の急速なサイクルに関連する1つの課題は、特に高温でサンプル流体から出てくる気泡がPCR効率を低下させ、またサンプルの正確な位置決めを予測しにくくすることである。
【0005】
従来技術に関連する問題の一部を未然に回避又は軽減することは有益であろう。
【0006】
「シャトル流」又は「シャトルPCR」という用語は、PCR混合物の小さなプラグを温度帯間で往復させて熱サイクルを行う技術を指す。このようにして、温度変化が空間的に起こる。
【0007】
本明細書を通して、「マイクロ流体」とは、少なくとも1つの寸法が1mm未満であり、及び/又はマイクロリットル以下の流体部分を取り扱うことができるものをいう。
【0008】
本明細書を通して、「カセット」又は「チップ」とは、流体が流れることができるチャネル又はチャンバを内部に有する1つ以上の基板を含む、組立ユニットをいう。このようなカセットは、サンプルの混合、濾過、PCR増幅、同定及び/又は可視化のような活動が起こり得る異なる領域又は帯を含んでもよく、そして搭載試薬を含んでもよい。カセットは、典型的には、診断試験又はこのような試験の一部を自動化できる追加機能を組み込んだポイントオブケア(POC)機器などの診断機器によって受け入れられるように設計される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、マイクロ流体デバイスが提供される。マイクロ流体デバイスは、
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)セクションを有する流体チャネルであって、当該PCRセクションは、PCRセクションにおいてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が起こるのに必要な温度変化を可能にするように構成される、流体チャネルと、
PCRセクションを有する流体チャネルの少なくとも一部を含む、デバイス(又は流体チャネルの一部)の流体的に分離可能な部分と、
流体的に分離可能な部分を外部環境から流体的に分離するように作動可能な少なくとも1つの閉鎖手段と、
分離可能な部分が分離されるときに、当該分離可能な部分における圧力を増加させる少なくとも1つの手段と、を備える。
【0010】
チャネルのPCRセクションは、PCRセクションを通過するサンプルの熱サイクルが起こることを可能にするように構成されるチャネルの一部である。チャネルのPCRセクションは、PCRセクションを通って進む液体サンプルが、DNAの変性、DNAのアニーリング及びDNAの増幅を可能にする温度まで周期的に加熱及び冷却されることを可能にするように具体的に適合される。チャネルのPCRセクションは、チャネル又はデバイスの壁内の一体型熱源によって、又はより典型的には、チャネルのPCRセクションに熱が伝達されることを可能にするように、マイクロ流体デバイス(マイクロ流体カセットなど)に熱を加える外部熱源に近づけることによって、加熱可能である。
【0011】
重要なことに、少なくとも1つの圧力増加手段は、PCRセクション内の熱サイクルによるサンプルの増幅の前に、チャネルのPCRセクション内の圧力を増加させるように適合されている。
【0012】
マイクロ流体デバイスは、液体サンプルを受け入れるのに適している。好ましくは、マイクロ流体デバイスは、ポイントオブケア(POC)診断機器に挿入するマイクロ流体カセットである。
【0013】
流体チャネルは、当該液体サンプルを輸送するためのものであり、互いに流体連通する入口端部と少なくとも1つの第2の端部とを有する。
【0014】
好ましくは、流体チャネルはマイクロ流体チャネルである。
【0015】
最も好ましくは、チャネルの周囲は流体密である。
【0016】
本明細書を通して、「流体密」という用語は、水などの液体及び/又はガス、特に空気が、(所定の限界内で)加圧された場合であっても、通過することを防止するシールを意味する。例えばスライドファスナーの内部と外部の間の圧力差が約2barになるまで、シールは無傷のままである。
【0017】
任意に、マイクロチャネルの少なくとも一部は、蛇行構成を有する。
【0018】
有利には、蛇行構成により、比較的小さな設置面積で液体流を長くすることができ、これは表面対体積比を増加させて効率的に熱伝達させることを意味する。
【0019】
いくつかの実施形態では、蛇行構成は、流体が複数の異なる温度帯、例えば異なる熱板上を進んでから、湾曲して工程を繰り返すことを可能にするのに有用であり得る。他の実施形態では、蛇行構成は、温度帯間で流体を往復させる方法(すなわち、シャトル流(シャトルPCR))と共に利用することができる。
【0020】
分離可能な部分は、デバイス上に存在する流体チャネル全体であってもよい。一実施形態では、カセット上に存在するマイクロ流体チャネルの実質的にすべてが分離可能な部分である。この実施形態では、サンプルがカセットに挿入される、すなわちマイクロ流体チャネルの開始部に挿入されると、チャネルが密封され、圧力が増加することを意味する。
【0021】
有利には、カセットなどのデバイス内の他のマイクロ流体チャネル、並びにPCRセクションにおいて正圧を使用すること(すなわち、有意なさらなる活動の前に、マイクロ流体チャネル内に正圧を誘発すること)は、流体(液体)-プラグの破断、すなわち、サンプル流体プラグを単一の流体プラグとして維持するのではなく、サンプル流体プラグが破断することを最小限に抑えるのを助ける(サンプルプラグは、カセットを通って移動するときに追加の試薬を組み込んでもよい)。正圧が作用してメニスカスを「緊密」に保ち、次いで、主プラグの上流側/下流側の点で合体することができる壁に沿って流体が「クリープ」するのを防止し、介在する空気/ガス気泡を有する2つのプラグを生成する(これは、サンプルプラグがより高温に曝されるために、脱ガスによって生成されない介在する空気/ガス気泡がPCR領域で発生する可能性があるので、PCRセクションにおいて特に問題となる)。
【0022】
好ましくは、少なくとも1つの閉鎖手段は、流体的に分離可能な部分を流体的に分離するように作動可能な少なくとも1つの気密弁又は密封手段である。
【0023】
好ましくは、圧力増加手段は、容積型ポンプである。
【0024】
好ましくは、圧力増加手段は、分離可能な部分に第1の圧力をかける第1の位置と、分離可能な部分に第2の圧力をかける第2の位置と、に作動され得る。
【0025】
好ましくは、圧力増加手段はベローポンプである。
【0026】
ベローポンプは、内部空洞を有する実質的に半球状の圧縮性材料である。ベローポンプは、マイクロ流体チャネルへの入口に関連している。ベローポンプの外面に圧力がかかるとき、材料が圧縮されて内部空洞の体積が減少し、内部空洞内の任意の流体が押される。
【0027】
ベローポンプは弾性的に付勢され、膨張位置に戻る。
【0028】
任意に、圧力増加手段は、シリンジポンプに関連付けられる弁である。
【0029】
任意に、圧力増加手段は、空気圧アプリケータである。
【0030】
任意に、圧力増加手段は、外部圧力源に関連付けられる。
【0031】
任意に、圧力増加手段は、カセット上の蠕動ポンプである。
【0032】
外部圧力源、例えば機械式、空気圧式又は油圧式の圧力源は、外部のホスト機器によって適用することができる。
【0033】
好ましくは、複数の圧力増加手段がある。
【0034】
好ましくは、複数の圧力増加手段は、複数の容積型ポンプを含み、各ポンプは、デバイスの流体的に分離可能な部分に流体的に接続される。好ましい実施形態では、これらは2つのベローポンプである。
【0035】
有利には、例えば2つ以上の容積型ポンプなどの複数の圧力増加手段を使用することにより、増幅帯を含むマイクロチャネルの一部の圧力を漏れなく増加させることができる。
【0036】
最も好ましくは、複数の圧力増加手段は同時に又は共に作動可能であり、分離可能な部分における圧力を増加させる。
【0037】
有利には、例えば2つ以上の容積型ポンプなどの複数の圧力増加手段を使用して、増幅帯を含むマイクロチャネルの一部の圧力を同時に増加させることによって、増幅帯を含むマイクロチャネルの一部の圧力を増加させることができ、次いで圧力増加手段をさらに使用して、システムにさらなる圧力負荷をかけることなくマイクロチャネル内の液体サンプルを移動させることができる。
【0038】
好ましくは、圧力増加手段は、第1の圧縮位置及び第2の圧縮位置まで作動可能である。
【0039】
より好ましくは、第2の圧縮位置は、第1の位置よりもさらに圧縮される(したがって、第2の圧縮位置内の体積がより少ない)。
【0040】
好ましくは、圧力増加手段は、分離可能な部分における圧力を増加させるように適合される。
【0041】
PCRセクションは加熱可能である。
【0042】
外部熱源は、外部機器によって適用することができる。
【0043】
好ましくは、分離可能な部分の圧力増加手段は、大気圧よりも高い圧力を誘発する。
【0044】
好ましくは、分離可能な部分の圧力増加手段は、1.6bar以上の圧力を誘発する。
【0045】
任意に、分離可能な部分の圧力増加手段は、1.2bar以上の圧力を誘発する。
【0046】
有利には、圧力を増加させると分離可能な部分内の流体の沸点を低下させる。これは、高度を含む様々な場所でシステムを使用できる点で有利であり得る。
【0047】
好ましくは、マイクロ流体デバイスは搭載試薬を含み、少なくとも1つの診断分析(assay)を行う。
【0048】
本発明の別の態様によれば、第1の態様のマイクロ流体デバイスと、当該マイクロ流体デバイスを受け入れ可能なホスト機器と、を備える診断システムが提供される。
【0049】
任意に、ホスト機器は、当該ホスト機器から当該流体デバイス上の圧力増加手段に圧力を伝達可能なインターフェースを備える。
【0050】
任意に、ホスト機器は、当該ホスト機器から当該流体デバイス上の圧力増加手段に空気圧を伝達可能な空気圧インターフェースを備える。
【0051】
任意に、ホスト機器は、当該ホスト機器から当該流体デバイス上の圧力増加手段に機械的圧力を伝達可能な機械的インターフェースを備える。
【0052】
好ましくは、ホスト機器は、カセットが分離されるとき、かつPCRセクション内で熱サイクルによってサンプルが増幅される前に、カセットの分離可能な部分における増加した圧力を作動させるように適合される。
【0053】
好ましくは、ホスト機器は、マイクロプロセッサを備える。
【0054】
マイクロプロセッサは、マイクロ流体デバイスに対するホスト機器間の相互作用を制御する。
【0055】
任意に、ホスト機器は、デバイスのPCRセクションの少なくとも一部を加熱する、又は熱を加える手段を含む。
【0056】
好ましくは、加熱手段は、少なくとも1つの温度帯を提供するように構成される1つ以上の温度制御要素である。
【0057】
本発明のさらなる態様によれば、サンプルからの核酸増幅方法が提供され、本方法は、
上記態様のデバイス又はシステムを提供するステップと、
少なくとも1つの閉鎖手段を作動させ、デバイスの少なくとも一部、より詳細には少なくともPCRセクションを含むマイクロ流体チャネルの一部を流体的に分離するステップと、
分離部分内の圧力を増加させるステップと、
分離部分内の圧力増加後、分離部分内でポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅ステップを実施して、サンプル内の核酸を増幅するステップと、を含む。
【0058】
好ましくは、少なくともPCRセクションを含むデバイスの少なくとも一部を流体的に分離するステップの前に、サンプルをデバイスに挿入する。
【0059】
任意に、デバイス全体が流体的に分離される。
【0060】
流体密であり、特に気密である分離可能な部分を有するデバイスを提供することによって、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)熱サイクルが起こる前にカセットを予備加圧することができる。
【0061】
代替的に、マイクロ流体チャネルの一部のみを流体的に分離する。
【0062】
PCR帯を含むマイクロ流体チャネルの一部のみを分離することで、リザーバ等への分岐を含むチャネルの他の分岐を閉じて、PCR反応に有害な物質の進入を防ぎ、又は圧力がかかる体積を少なくすることができる。
【0063】
任意に、1つ以上の流体密弁を使用して、システムを流体的に分離する。
【0064】
弁は、チャネル内にあってもよく、又は入口(又は存在する場合は出口)を形成してもよい。
【0065】
マイクロ流体カセットのようなデバイス又はマイクロ流体カセットの一部を気密にすることで、圧力を増加させることができる。
【0066】
好ましくは、圧力増加ステップは、複数の圧力増加手段を作動させるステップを含む。
【0067】
好ましくは、圧力増加ステップは、複数の容積型ポンプを圧縮するステップを含む。
【0068】
有利には、例えば2つ以上の容積型ポンプなどの複数の圧力増加手段を使用することにより、増幅帯を含むマイクロチャネルの一部の圧力を漏れなく増加させることができる。
【0069】
好ましくは、圧力増加ステップは、複数の容積型ポンプを同時に又は共に圧縮して、分離可能な部分における圧力を増加させるステップを含むことが好ましい。
【0070】
好ましくは、圧力増加ステップは、複数の容積型ポンプを第1の位置まで圧縮するステップを含み、容積型ポンプを少なくとも第2の位置までさらに圧縮し得る。
【0071】
任意に、圧力増加ステップは、分離部分における圧力を1.2bar超、より好ましくは1.4bar超、さらにより好ましくは1.6bar超まで増加させる。
【0072】
任意に、圧力増加ステップは、分離部分における圧力を1.5barから2barの間まで増加させる。
【0073】
好ましくは、圧力増加ステップは、分離部分における圧力を1.6barまで増加させる。
【0074】
本明細書を通して、「マイクロ流体」とは、少なくとも1つの寸法が1mm未満であり、及び/又はマイクロリットル以下の流体部分を取り扱うことができるものをいう。
【0075】
本発明の様々なさらなる構成及び態様は、特許請求の範囲において定義される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1図1aは、本発明の一態様によるマイクロ流体カセットの斜視図であり、外面を示す。図1bは、他方の側面から示す同様のマイクロ流体カセットの分解斜視図であり、様々な内部構成が見える。
図2図2a、2b、2cは、2つのベローポンプを使用してカセットの密封領域を加圧する簡略図であり、第1のベローポンプが圧力をかけ、第2のベローポンプがリザーバとして作用する。
図3図3a、3b、3cは、同時に作動する2つのベローポンプを使用して、カセットの密封領域を加圧する簡略図である。図3Bは加圧ステップを示し、図3Cはカセットの販売可能な部分における圧力を保ったままサンプルを移動させる往復運動モードを示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
以下、本発明の実施形態を添付の図面を参照して単に例として説明するが、添付の図面では、同様の部分には対応する符号が付されている。
【0078】
本発明の第1の態様によれば、図1に概略的に描くように、マイクロチャネル2を有する、より一般的に「デバイス」と呼ばれるマイクロ流体カセット1が提供され、マイクロチャネル2は、必要に応じて流体の連続的な流れ(flow-through)を可能にする。同様に構成されるカセットの内部構造を示す図1bに最も明確に示されるように、マイクロチャネル2は、マイクロ流体カセット1内に所望の長さ及び形状で形成されて、サンプル、典型的には液体形式の生物学的サンプル、及び/又は試薬の通過を可能にする。これらのいくつかは、流体の流れ中に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるサンプルからのDNAの増幅を含む異なる活動が起こることを可能にする流体流路に沿って、及び様々な帯又は領域を通って、カセット上に組み込まれ得る。チャネルのPCRセクション7は、PCRセクション7を通過するサンプルの熱サイクルが起こることを可能にするように構成されるチャネルの一部である。チャネル(及びカセット)のPCRセクション7は、PCRセクション7を通って進む液体サンプルが、DNAの変性、DNAのアニーリング及びDNAの単純化を可能にする温度まで周期的に加熱及び冷却されることを可能にするように具体的に適合される。チャネルのPCRセクション7は、チャネル又はデバイスの壁内の一体型熱源によって、又はより典型的には、チャネルのPCRセクションに熱が伝達されることを可能にするように、マイクロ流体デバイス(マイクロ流体カセットなど)に熱を加える外部熱源に近づけることによって、加熱可能である。
【0079】
様々な弁及び追加チャネル、リザーバ又はチャンバなどの流体的に相互連通する分流部を使用して、その中で行われる診断又は生化学分析の必要性に応じて、混合、洗浄、除去及び他の自動化動作を又は半自動化された様式で行うことができる。この分析は一般に、典型的にはデバイスの1つ以上のチャネル又はチャンバにおいて、サンプル中の分析物の有無を示す検出可能な生成物を形成するのに有効な時間及び温度で、サンプルが1つ以上のステップで1つ以上の試薬と相互作用及び/又は反応することを可能にすることによって実施される。チャネル2は、第1の基板3、典型的には実質的に平面的であり実質的に剛性である基板の第1の表面に形成され、第1の基板3は、この実施形態ではポリプロピレンである。第1の基板3は、第2の基板4が積層されており、第2の基板4は、この実施形態ではポリプロピレンフィルムである。例えばレーザ溶接を用いて第1の基板材料3をフィルム4に接合することによって、実質的に閉じたチャネル2が提供される(必要に応じて入口及び出口を含めることができる)。第1の基板3が上面及び下面を有する平面要素である場合、マイクロチャネル2の大部分は上面又は下面に形成され得ることが理解されよう。しかし、第2の基材、すなわちフィルム4は、使用時にマイクロチャネル2の上壁を形成することが望ましい場合が多い。レーザ溶接の使用により、マイクロチャネルの周りに流体密、より具体的には気密シールが形成され、第1の基材と第2の基材との間で空気が逃げない又は漏れないことを保証する。レーザ溶接以外の方法を使用することができ、典型的には、基板材料自体に基づいて選択されることが理解されよう。シール又は溶接部は、カセットの外部と比較して、カセット内の圧力レベルの増加に耐えるのに十分な強度がある。典型的には、少なくとも2barの内部ゲージ圧力に耐えるのに十分な強度がある。
【0080】
代替的に、この実施形態では第2の基板をフィルム4として有するが、第2の基板は別の材料であってもよく、第1の基板のチャネルと整列することができる溝又はチャネルを第2の基板の表面上に形成し得ることが理解されよう。基板3、基板4を互いに接合することにより、閉じたチャネル2が提供される(ここでも、必要に応じて入口及び出口を含めることができる)。
【0081】
カートリッジは典型的には消耗品であり、すなわち、一度使用したら廃棄され、そして1つ以上の分析を行うのに必要な試薬の全て又は多くを含む。このような試薬は、リザーバなどでカートリッジ上に保持することができる。
【0082】
必要に応じて、第1の基板3及び第2の基板4を接合前に整列させることができる。チャネル2の長さ及び断面形状は、サンプル及び/又は試薬の所望の輸送及び処理を可能にする任意の適切な形状とすることができる。このようなマイクロ流体システム「ラボオンチップ」タイプのシステムは、当技術分野で周知である。
【0083】
カセット1には、サンプルをマイクロ流体チャネルに受け入れる入口5が設けられている。入口5には、挿入可能なキャップ6の形態の気密シールが設けられている。挿入可能なキャップ6は、使用しやすいようにカセットの表面にヒンジ止めされている。キャップ6は、入口の開口部に受け入れられるように寸法決めされ、サンプルが挿入された後、キャップ6が閉じるときに、入口において気密シールを形成するように作用する弾性変形可能なカラーを備える。
【0084】
この実施形態では、マイクロチャネル2の入口5の反対側の端部は、1回使用のカセットであるため永久的に密封されている。しかし、入口に使用されるキャップと類似のキャップを使用して、出口が存在する場合には閉じることができる。代替実施形態では、マイクロチャネル内で入口から離れて配置される弁を使用して、必要に応じて、より小さい体積の気密領域(PCR増幅帯又はPCRセクション7を依然として含む)を生成することができる。例えば、第1の気密弁を増幅帯7の近傍及び上流側に設け、第2の気密弁を増幅帯7の近傍及び上流側に設けることができる。サンプルが2つの弁の間にあると、これらの弁を閉じて、他の実施形態と同様に、2つの弁の間にある増幅帯7を含むマイクロチャネル2における圧力を上げることができる。
【0085】
マイクロチャネル2は連続流路であり、この実施形態では、増幅帯又はPCRセクション7を含む。増幅帯又はPCRセクション7は、異なる温度に加熱可能なチャネルの3つの部分を含み、温度の熱サイクルを可能にする。この実施形態では、PCRセクション7におけるチャネルの一部は、90℃~98℃の温度に加熱される。PCRセクション7におけるチャネルの別の部分は、約45℃~70℃の温度に加熱される。PCRセクション7におけるチャネルのさらなる部分は、約70℃~75℃の温度に加熱される。この実施形態では、外部熱源がカセット1に近接するときにチャネルが加熱され、熱交換がカセットの壁を通してマイクロチャネルの関連部分に起こる。増幅帯又はPCRセクション7のマイクロチャネルは蛇行形状であり、サンプルが蛇行形状の各セクションに沿って進むときに、異なる温度帯を通って進む。この実施形態では、ヒータは、内部にカセットを受け入れる別個のホスト機器内に設けられるが、理論的には、ヒータはカセットの一部を形成することができ、例えばチャネル自体の中に配置される。また、チャネルの関連部分内又はその近くには温度センサが配置されており、チャネルにおける温度を読み取り、必要に応じて制御することができる。この実施形態では、PCRセクション7において蛇行形状のマイクロチャネル2を使用して、チャネルを通って移動するサンプルが、PCR反応が起こるのに必要な異なる温度を循環的に通ることを確実にするが、他のレイアウトを使用して、マイクロ流体カセットにおける異なる温度を通ってサンプルを熱サイクルできることが理解されよう。例えば、蛇行成形の代わりにシャトル流システムを使用することができる。シャトル流の変形例では、サンプルは、(蛇行変形例のように連続的に前進するのとは対照的に)マイクロチャネルの2つ以上のセクション間を往復し、各セクションは、PCR反応が起こるのに必要な温度の1つに保持される。
【0086】
マイクロチャネルは、(ベロー入口10Aを介して)マイクロチャネル2と流体連通する第1のベローポンプ8Aを含む。第1のベローポンプ8Aは容積型ポンプであり、弾性的に付勢されて膨張形状に戻る半球状の圧縮可能なベローを備えている。半球状ベローの外面に圧力をかけて、内部寸法を変化させることができる。c.本実施形態では、カセットが置かれるホスト機器上に見られる機械的アクチュエータは、マイクロプロセッサの制御下で作用し、ベローポンプを圧縮、部分圧縮、部分減圧又は減圧することによって作動させる。しかし、アクチュエータは理論的にはカセットに組み込むことができる。
【0087】
また、マイクロチャネルは、(ベロー入口10Bを介して)マイクロチャネル2と流体連通する第2のベローポンプ8Bを含む。第2のベローポンプ8Bも容積型ポンプであり、この例でも、弾性的に付勢されて膨張形状に戻る半球状の圧縮可能なベローを備える。第2のベロー8Bは、部分的に圧縮又は減圧することができ、また完全に圧縮又は減圧することができる。
【0088】
また、マイクロチャネル2は、分子分析の実施に必要な様々な他のリザーバ、分岐及びチャンバ(例えば、捕捉及び観察チャンバなど)を含む。存在する場合、ホスト機器は、アクチュエータ、ヒータ及び光学素子などの素子を含むことになる。
【0089】
この例では半球状のベローを有するベローポンプについて説明しているが、当業者であれば、他のベロー形成体を使用することもできるし、又は実際に代替タイプの容積型ポンプを使用できることも理解するだろう。例えば、別のタイプの容積型ポンプはシリンジポンプであり、このポンプでは、シリンジシリンダ内のシリンジのピストンの変位によって、流体がシリンジ出口に吸い込まれ、又はシリンジ出口から押し出される。
【0090】
使用時には、液体サンプル9が入口5に導入され、それがマイクロ流体チャネル2に導かれ、キャップ6が閉じて気密シールを形成する。カセット1はホスト機器(図示せず)に置かれる。第1の実施形態では、図2に基本的な形態で示すように、静止状態では液体サンプル9の両側の空気圧は等しい(図2A参照)。次いで、半球状のベロー8Aは、ホスト機器内に存在するピンが半球状のベロー8Aの外面を押し下げることで作動し、従って、ベローと液体サンプルとの間に空気が充填し得る容積を減少させる。ホスト機器のピン又はアクチュエータにはセンサを設けてベローの表面を検出し、圧力の具体的な制御を確実に達成することができる。カセットが密封(気密)システムになっているため、空気は行き場を失い、同じ量の空気の体積がより小さくなっているので、空気の圧力は増加しなければならない(図2B参照。サンプルの左側で圧力が増加し、圧力がサンプル9を右側に押し込むように作用している)。液体サンプル9の後方の空気圧が液体サンプルの前方の空気圧よりも高いので、液体サンプルは、前後の空気圧が再び均衡するまで前方に押される(図2C参照。両側の圧力が再び等しくなっている)。この実施形態では、第2のベロー8Bは圧力「リザーバ」として作用し、圧力の相対的変化がそれほど大きくないため、サンプルの移動の一部を減衰させる。これは、サンプルが依然として移動できるが、チャネル内の圧力は2bar未満にとどまることができることを意味する(しかし、密封カセットの外側の空気圧と比較すると依然として高い)。この実施形態では、チャネル内の絶対圧力は、サンプルが増幅帯で増幅される前に1.6barまで増加する。
【0091】
注目すべきは、1つのベローだけを使用する場合、圧力は依然としてかかるが、サンプルの移動ははるかに大きくなることである。この過剰な移動と圧力は、1つのベローだけであっても非常に長いチャネルを使用することで回避(すなわち減衰)することができるが、これはカセット上により大きな設置面積を必要とし、典型的には望ましくない。
【0092】
上記の例では、第2のベローをリザーバとして使用できる方法を説明しているが、図3は、ベロー又は隔膜ポンプのような複数の容積型ポンプを利用することでさらなる利点が得られることを示す、本発明の好ましい変形例である。本発明の好ましい使用方法は、少なくとも2つのベローポンプ(又は他の容積型ポンプ)を含み、マイクロチャネル2内の圧力を少なくとも1.6barまで増加させることである。再び、使用時には、液体サンプル9が入口5及びマイクロ流体チャネル2に導入され、キャップ6が閉じて気密シールを形成する。カセット1は、ホスト機器(図示せず)に置かれる。カセットがキャップ6によって閉じられる前に、ベローポンプ8A及びベローポンプ8Bの両方が完全に減圧される。上記の2つの例では、ベロー8Aが押圧されるたびにシステム全体の体積が変化する。これにより分析自体の間にカセット内の圧力を絶えず変化させる必要があり、これはマイクロチャネル内の流体制御をより困難にする。したがって、この好ましい実施形態では、増幅帯又はPCRセクション7を含むマイクロチャネル2の密封部分における圧力を増加させるために、第1のベロー8A及び第2のベロー8Bの両方を同時に作動させて、システムの全体積を等しく保ち、したがってシステムの全体圧力を等しく保つ。ホスト機器は、第1のベロー8A及び第2のベロー8Bの両方の外面に押し力をかけて、第1のベロー8A及び第2のベロー8Bを第1の量だけ圧縮し(ベローをほぼ半分に圧縮し)、カセット内の圧力を約1.6barまで増加させる。これは図3Bに見ることができ、ベローポンプ8Aがベローポンプ8Bに対してサンプルの反対側に配置されている場合、すなわち、ベローがサンプルのいずれかの側(この場合、サンプルが最初に挿入された入口5のいずれかの側)に、実際には好ましくは増幅帯のいずれかの側に設けられる場合、この時点でサンプルは移動しないことがわかる。この段階で、ベローポンプ8A及びベローポンプ8Bを引き続き使用して、分析の必要に応じて液体サンプル9をチャネル内で移動させることができる。様々な弁を含み、必要に応じて弁を開閉するように作動させることによって、これにより、マイクロチャネルの様々な領域にわたってサンプルを非常に効果的に移動させることができ、異なる動作及び反応を実施することができる。液体サンプル9を右に移動させるために、ベローポンプ8Aを第2の量だけさらに圧縮し、ベローBを再膨張させることができる(ベローの弾性材料により、ベローは元の半球形状に戻ることができる)。2つの弁を共に若しくは同時に作動若しくは圧縮するこの機構を使用するか、又は2つの容積型ポンプを同時に使用して、液体サンプル9が増幅される前に(これは異なる温度への加熱及び冷却を必要とする)、増幅帯7を含むマイクロチャネルの一部の圧力を増加させることは、内部の圧力が常に1.6barのままであることを意味する。また液体サンプル9も、同じ容積型ポンプを使用して、マイクロチャネル内の圧力が増加してレーザ接合、弁又はキャップなどの接合が漏れる危険を伴わずに、液体サンプル9を移動させることができる。
【0093】
増幅帯で熱サイクルが起こる前に増幅帯を含むマイクロチャネルの一部の圧力を1.6barまで増加させて、気泡形成を抑えるだけでなく、システムが高高度であっても作動することを確実にし、一方でカセットに存在する弁、キャップ又はシールのいずれも損傷しない又は限界を超えないという利益を得ることが好ましい。しかし、圧力を1.5barから2barの間まで増加させることもでき、依然として有意な有益な効果が見られる。いくつかの実施形態では、圧力上昇が1.1bar又は1.2bar以上であっても、典型的には増幅前に圧力増加が生じないであろう標準システムと比較したときに、システムがより高高度で作動し、気泡形成がある程度減少するという利益を依然として可能にするだろう。
【0094】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示されるすべての構成、及び/又はこのように開示される任意の方法若しくはプロセスのすべてのステップは、このような構成及び/又はステップの少なくとも一部が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示される各構成は、明示的に別段の記載がない限り、同じ、同等の又は類似の目的を果たす代替的構成に置き換えることができる。したがって、明示的に別段の記載がない限り、開示される各構成は、同等又は類似の構成の一般的な一連の一例にすぎない。本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示される構成の任意の新規な1つ若しくは任意の新規な組み合わせ、又はこのように開示される任意の方法若しくはプロセスのステップの任意の新規な1つ若しくは任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0095】
本明細書における実質的に任意の複数形及び/又は単数形の用語の使用に関しては、当業者は、文脈及び/又は用途に適切であるように、複数形から単数形へ、及び/又は単数形から複数形へと翻訳することができる。明確にするために、様々な単数形/複数形の置換を本明細書に明確に定めてもよい。
【0096】
一般に、本明細書、特に添付の特許請求の範囲で使用される用語は、一般に「オープンな」用語として意図されていることが当業者には理解されるだろう(例えば、「含んでいる(including)」という用語は「含んでいるがこれに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する(having)」という用語は「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」という用語は「含むがこれに限定されない」と解釈されるべきである)。さらに、導入された請求項の記載の具体的な数字が意図される場合、このような意図は請求項に明示的に記載され、このような記載がない場合にはこのような意図が存在しないということが当業者には理解されるだろう。例えば理解の助けとして、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項の記載を導入する導入句「少なくとも1つ(at least one)」及び「1つ以上(one or more)」の使用を含むことができる。しかし、このような句の使用は、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の記載の導入により、このように導入された請求項の記載を含むいかなる特定の請求項を、1つのこのような記載のみを含む実施形態に限定することを示すものと解釈されるべきではない。これは、たとえ同じ請求項が「1つ以上」又は「少なくとも1つ」の導入句及び「a」又は「an」などの不定冠詞を含む場合であっても然りであり(例えば、「a」及び/又は「an」は「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである)、請求項の記載の導入に使用される定冠詞の使用にも同様のことが当てはまる。加えて、たとえ導入された請求項の記載の具体的な数字が明示的に記載される場合であっても、当業者であれば、このような記載が少なくともその記載された数字を意味すると解釈されるべきであると認めるであろう(例えば、他の修飾語句がなく「2つの記載」とだけある記載は、少なくとも2つの記載又は2つ以上の記載を意味する)。
【0097】
本開示の様々な実施形態が説明の目的で本明細書に記載されており、本開示の範囲から逸脱することなく様々な変更が行われ得ることが認識されるだろう。したがって、本明細書に開示される様々な実施形態は限定することを意図するものではなく、真の範囲は以下の特許請求の範囲によって示される。
図1A
図1B
図2
図3