(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】副甲状腺ホルモン(PTH)および副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHRP)アナログに対する中和抗体を検出するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240606BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240606BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20240606BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240606BHJP
C07K 16/26 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/53 B
G01N33/543 501M
G01N33/531 B
G01N33/53 S
G01N33/543 511A
G01N33/543 575
C12Q1/02
C07K16/26
(21)【出願番号】P 2021532150
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(86)【国際出願番号】 IB2020050200
(87)【国際公開番号】W WO2020144653
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2023-01-06
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513073898
【氏名又は名称】ラジウス ヘルス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラー,ハイディ ケイ.
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表平06-506598(JP,A)
【文献】特表2004-536831(JP,A)
【文献】国際公開第2018/197895(WO,A2)
【文献】特表2018-508530(JP,A)
【文献】AXEL HOHENSTEIN; ET AL,DEVELOPMENT AND VALIDATION OF A NOVEL CELL-BASED ASSAY FOR POTENCY DETERMINATION OF HUMAN PARATHYROID HORMONE (PTH),JOURNAL OF PHARMACEUTICAL AND BIOMEDICAL ANALYSIS,NL,2014年06月10日,VOL:98,PAGE(S):345-350,http://dx.doi.org/10.1016/j.jpba.2014.06.004
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C12Q 1/02
C07K 16/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アバロパラチドで治療されている被験体由来の血清試料中のアバロパラチドに対する中和抗体の存在を検出するためのインビトロ方法であって:
少なくとも30分の間、該血清試料と所定量のアバロパラチドをプレインキュベーションする工程、
プレインキュベーションした血清試料と細胞の集団または細胞を接触させる工程、ここで該細胞は、ラット上皮細胞株UMR-106であり、接触させる工程が、該細胞を該血清試料と共にある期間インキュベートすることを含む;
該細胞を溶解して溶解物を形成する工程;
該
溶解物中のサイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)レベルを、電気化学発光検出法を使用する競合的免疫測定により測定する工程;およ
び
中和抗体の存在を検出する工程
、ここで、中和抗体の存在は、中和抗体を含まない陰性対照試料と比較して低減したcAMPレベルによって示される、
を含む、インビトロ方法。
【請求項2】
該細胞を該血清試料とインキュベートすることが、約10
6
細胞/mLの細胞密度の約40マイクロリットルの細胞懸濁液を、該血清試料に添加することを含み、インキュベートすることが室温で行われ、1~2時間実施される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アバロパラチドの所定量が、100~500pg/mLの範囲の血清試料中のアバロパラチドの濃度である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
アバロパラチドの所定量が、600pg/mLの血清試料中の濃度である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
該細胞を溶解する工程が、該細胞を約5分~約30分の間室温で溶解バッファとインキュベートすることを含む、請求項
1記載の方法。
【請求項6】
接触させる工程の前に、該細胞と、細胞透過性cAMP特異的ホスホジエステラーゼ阻害剤とのインキュベーションをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
cAMP特異的ホスホジエステラーゼ阻害剤が4-(3-ブトキシ-4-メトキシベンジル)-2-イミダゾリジノンである、請求項
6記載の方法。
【請求項8】
接触させる工程の前に、4時間~48時間の範囲の時間、該細胞を血清飢餓にすることをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
該時間が、4時間~24時間、4時間~16時間、4時間~12時間および6時間~12時間からなる群より選択される、請求項
8記載の方法。
【請求項10】
該血清試料がヒト被験体由来である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
該血清試料が、骨粗鬆症についてアバロパラチドで治療されている該被験体由来であり、該方法が、潜在的な免疫原性の発生について該被験体由来の血清試料をモニタリングする工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2019年1月11日に出願された米国仮出願第62/791,267号に対する優先権の利益を主張する。この優先権出願の内容は、本明細書における参照により、本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
利益に関わらず、免疫原性は、アバロパラチド(Abaloparatide)などのタンパク質治療薬から生じ得る。アバロパラチドは、PTH1受容体(PTH1R)アゴニストとして作用する副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)(1-34)アナログである。PTH1Rの活性化は、標的細胞におけるサイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)シグナル伝達経路を活性化し、これは骨密度および骨塩量の増加を生じる。TYMLOS(登録商標)(アバロパラチド)注射製品ラベル(4/28/2017)。
【0003】
アバロパラチドを18か月間受けている患者のうち、49%は抗アバロパラチド抗体を生じ、患者の68%はアバロパラチドに対する中和抗体を生じた。交差反応性について試験されたこれらの患者のうち、2.3%および0%は、PTHrPおよび副甲状腺ホルモン(PTH)のそれぞれに対する交差反応性を生じた。PTHrPに対する交差反応性を生じた患者のうち、43%はPTHrPに対する中和抗体を生じた。
【0004】
中和抗体などの抗体の検出は、PTHおよび/またはPTHrPアナログで治療された患者における潜在的な免疫原性の発生をモニタリングするためにも使用され得る。しかしながら、現在の検出方法は、感度のレベル、特異性のレベルならびにアッセイの長い持続時間などのいくつかの欠点を被る。PTHおよびPTHrPに対する中和抗体の存在を検出およびモニタリングするために、感度が高くかつ特異的なアッセイが必要である。
【発明の概要】
【0005】
概要
本開示は、PTHまたはPTHrPアナログに対する中和抗体(NAb)の検出のための方法(例えばインビトロ細胞系アッセイ)に関する。
【0006】
第1の局面は、試料中のPTHまたはPTHrPに対する中和抗体の存在を検出するためのインビトロ法を提供し、該方法は:被験体から試料を得る工程;試料と、細胞の集団または細胞および所定量のPTHまたはPTHrPを接触させる工程、ここで該細胞(1つまたは複数)はPTHまたはPTHrPに対する受容体を含む;サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)レベルを測定する工程;ならびに中和抗体を有さない陰性対照試料と比較してcAMPレベルが低減される場合に、中和抗体の存在を検出する工程を含む。いくつかの態様において、接触させる工程は、細胞(1つまたは複数)を血清試料と共にインキュベートすることを含む。ある態様において、該方法はさらに、接触させる工程の前に、血清試料と所定量のPTHまたはPTHrPとのプレインキュベーションをさらに含む。特定の態様において、プレインキュベーションは少なくとも30分の期間である。ある態様において、PTHまたはPTHrPの所定量は少なくとも100、200、300、400または500pg/mLである。特定の態様において、PTHの所定量は約500pg/mLである。別の特定の態様において、PTHrPアナログの所定量は約600pg/mLである。
【0007】
ある態様において、該方法はさらに、接触させる工程の前に、細胞(1つまたは複数)と細胞透過性cAMP特異的ホスホジエステラーゼ阻害剤とのインキュベーションを含む。特定の態様において、cAMP特異的ホスホジエステラーゼ阻害剤は4-(3-ブトキシ-4-メトキシベンジル)-2-イミダゾリジノンである。
【0008】
いくつかの態様において、測定する工程は、競合的免疫測定により行われる。ある態様において、競合的免疫測定は電気化学発光検出法である。ある態様において、細胞(1つまたは複数)は、測定する工程の前に溶解される。ある態様において、cAMPレベルの測定は、Mesoscale Discovery Multi-Array 96ウェルcAMPプレートを使用して行われる。
【0009】
いくつかの態様において、細胞または細胞の集団は、ラット上皮細胞株UMR-106である。ある態様において、該方法はさらに、接触させる工程の前に、ある時間、UMR-106細胞(1つまたは複数)を血清飢餓にすることを含む。ある態様において、該時間は、約4時間~約48時間、約4時間~約24時間、約4時間~約16時間、約4時間~約12時間または約6時間~約12時間の範囲である。
【0010】
いくつかの態様において、試料はヒト試料である。ある態様において、ヒト試料はヒト血清試料である。ある態様において、試料は、PTHrPアナログで治療された被験体由来である。特定の態様において、PTHrPアナログはアバロパラチドである。別の特定の態様において、PTHrPアナログはテリパラチドである。
【0011】
別の局面は、アバロパラチド治療後に中和抗体の存在を検出する方法を提供し、該方法は、アバロパラチドで治療された被験体から血清試料を得る工程;血清試料と細胞または細胞の集団を接触させる工程、ここで該細胞(1つまたは複数)は、PTHまたはPTHrPに対する受容体を含む;サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)レベルを測定する工程;および中和抗体を有さない陰性対照試料と比較してcAMPレベルが低減される場合に、中和抗体の存在を検出する工程を含む。ある態様において、該方法はさらに、血清試料中で中和抗体が検出される場合に、アバロパラチドでの治療を中断する工程を含む。
【0012】
さらに別の局面において、本開示は、得る工程、接触させる工程、測定する工程および検出する工程を行うために必要な構成要素ならびに使用のための指示書を含む、本明細書に記載される方法を行うためのキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面の簡単な説明
【
図1】
図1は、25% PHS中のPTHペプチド希釈の例示的な4パラメーターロジスティック適合(logistic fit)を示すグラフである。
【
図2】
図2は、例示的なPTHrPアナログ用量応答曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
A. 定義
用語「抗体」は、完全抗体、例えば2つの重鎖および2つの軽鎖を含む抗体をいうか、または完全抗体の抗原結合断片をいい、供給源、起源の種、産生方法および特性に関わらず、抗原結合部位(例えばPTHまたはPTHrPアナログアバロパラチドに結合する部位)を含む任意のポリペプチドを包含する。非限定的な例として、用語「抗体」は、ヒト、オランウータン、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジおよびニワトリの抗体を含む。該用語は、限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、一重特異的、多重特異的、非特異的、ヒト化、単鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、変異およびCDR移植抗体を含む。用語「抗体」はまた、限定されないが、種々のプロテアーゼによる消化により産生される抗体断片、化学的切断および/または化学的解離により産生されるものならびに組み換え的に産生されるものを含む。これら断片には、Fab、Fab'、F(ab')Zf Fv、scFv、Fd、dAbおよび抗原結合機能を保持する他の抗体断片がある。抗体またはその断片は、公知の抗体アイソタイプおよびそれらのコンホメーション、例えばIgA、IgG、IgD、IgE、IgMモノマー、IgAダイマー、IgAトリマーまたはIgMペンタマーのいずれかであり得る。
【0015】
用語「中和抗体」は、本明細書で記載される場合、抗体が特異的であるPTHまたはPTHrPアナログに結合し得、その少なくとも1つの生物学的活性に干渉され得る任意の抗体またはその断片をいう。中和抗体は、PTHまたはPTHrPの他の活性を阻害することなく、PTHまたはPTHrPアナログの1つ以上の活性を阻害(すなわち排除または低減)し得る。
【0016】
用語「カットポイント」または「アッセイカットポイント」は、応答(例えばcAMPレベルの低減またはPTHもしくはPTHrPによるcAMPの低減された誘導)のレベルをいい、該レベル以下ではPTHまたはPTHrPアナログに対する中和活性について、試料は陰性であると規定され、該レベルより上では試料は陽性であると規定される。カットポイントは、一定のカットポイントであり得るかまたは細胞系アッセイの変動性の性質を説明する(account for)ために変動性のものであり得る。カットポイントは典型的に、対照試料(例えばPTHまたはPTHrPアナログに対する中和抗体を有さない陰性対照試料)の統計学的尺度(measure)に結び付けられる。例えば、統計学的尺度は、標準偏差、標準残差、平均、メジアン、メジアン絶対偏差(absolute deviation)、適合パラメーター等であり得る。
【0017】
「特異性」は、本明細書に記載されるアッセイにおいて決定される場合、陽性対照のみが減少したcAMP誘導の中和応答を示し、任意の他の非特異的免疫グロブリンがこの応答を示さないことを確立する。「選択度」は、本明細書に記載されるアッセイが、試料中に存在する他の構成要素(障害物質)の存在下で、cAMPレベルまたはcAMP誘導のいずれかの特異的な減少を識別および検出する能力である。選択度は、試料の不均一かつ多様な性質のために試験試料間で変動し得る。
【0018】
用語「被験体」は動物をいう。いくつかの態様において、動物は哺乳動物であり、限定されないが、ヒト、ウシまたは齧歯動物を含む。他の態様において、哺乳動物はヒトである。
【0019】
B. PTHおよびPTHrPアナログに対する中和抗体の測定のためのアッセイ
本開示は、PTHおよび/またはPTHrPアナログに対する中和抗体の測定のための特異的かつ選択的なアッセイの開発に基づく。中和抗体は、種々の細胞系システムを使用して検出され得る。これらの細胞系アッセイにおいて、中和抗体は、標的細胞中で治療剤が生物学的プロセス(例えばPTHによるcAMPの誘導)を調節する能力を阻害する。中和抗体は、生物学的機能的読み取り、例えばバイオマーカーのレベルまたは誘導活性の測定を含む細胞系システムを使用して検出され得る。
【0020】
一局面において、試料中のPTHまたはPTHrPに対する中和抗体の存在を検出するためのインビトロ法が提供される。該方法は:(i.)被験体から試料を得る工程;(ii.)試料と細胞の集団および所定量のPTHまたはPTHrPを接触させる工程、ここで該細胞は、PTHまたはPTHrPアナログに対する受容体、例えばPTH1Rを含む;(iii.)サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)レベルを測定する工程;ならびに(iv.)中和抗体を有さない陰性対照試料と比較してcAMPレベルが低減される場合に、中和抗体の存在を決定する工程を含む。
【0021】
いくつかの態様において、本開示の試料は、PTHまたはPTHrPアナログ、例えばアバロパラチドに対する中和抗体を含み得る任意の体液であり得る。例としては、限定されないが、血液、血清、リンパ液、血漿、滑液、脳脊髄液、涙液、生検または組織試料、細胞懸濁液、唾液、口腔液、粘液、羊水、初乳、乳腺分泌物、尿、汗および組織培養培地が挙げられる。
【0022】
いくつかの態様において、本開示は、競合的免疫測定によりcAMPレベルを測定することによる、中和抗体の検出のための方法を提供する。いくつかの態様において、競合的免疫測定は電気化学発光検出法である。
【0023】
例えば、PTHまたはPTHrPアナログに対する中和抗体(NAb)の検出のための閉経後の女性における細胞系アッセイを検証するための競合的免疫測定は、以下のように行われ得る。潜在的に中和抗体を含んでも含まなくてもよいヒト血清試料は、最初に所定量のPTHまたはPTHrPアナログと少なくとも30分間プレインキュベートされる。血清飢餓されたラット上皮細胞UMR 106細胞を、トリプシン処理により採取し、133.5uMの細胞透過性cAMP特異的ホスホジエステラーゼ阻害剤4-(3-ブトキシ-4-メトキシベンジル)-2-イミダゾリジノンを含むアッセイ培体中に106細胞/mLで再懸濁する。約40マイクロリットルの細胞懸濁液を、すでに約20マイクロリットルの試料および/または対照を有するcAMPアッセイプレートに添加する。細胞懸濁液中の細胞は溶解されてもされなくてもよい。細胞が溶解される場合、細胞は、依然として培養プレートに接着されながら溶解され得る。一般的に公知の溶解バッファの存在下、好ましくは室温で約5分~約30分の時間、好ましくは約10分間インキュベートされている溶解バッファを使用して溶解を行う。
【0024】
いくつかの態様において、本開示の試料は、試料中に存在する中和活性の正確な量を得るために複数回の希釈でアッセイされ得る。他の態様において、本開示の試料は、試料中に存在する中和活性の正確な定量を得るために希釈せずにアッセイされ得る。いくつかの態様において、本開示の試料は、試料の非特異的バックグラウンド構成要素による干渉を回避するためにも希釈され得る。例えば、血清中に高濃度で見られるタンパク質は、いくつかの状況において、アッセイの構成要素と非特異的に相互作用し得、アッセイの感度を低減し得る。試料希釈は、非特異的結合を低減または排除し得、それによりアッセイの信号-対-雑音比を増加し得る。
【0025】
いくつかの態様において、本開示の試料は、例えば1:1、1:2、1:5、1:10、1:15、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:80、1:100、1:32、1:640、1:500、1:1000、1:1280、1:2560または1:5000などの希釈係数でアッセイされ得る。他の態様において、本開示の試料は、希釈された試料のさらなる連続希釈でアッセイされ得る。
【0026】
振盪しながら室温で最低30分後、MSD溶解バッファ中1:200希釈したTAG cAMP検出試薬(Mesoscale Delivery, MSD Multi-Array 96ウェルcAMPキット)を、アッセイプレートに添加する。試薬を、キットに提供されるままで使用して、製造業者の指示書に従って調製した。プレートを、振盪しながら室温でさらに1~2時間インキュベートする。次いで、100マイクロリットルの2X MSD読み取りバッファTをプレートに添加して、プレートをすぐに、MSD 6000またはS6000 Sector Imager上で読み取る。
【0027】
薬物スパイクアッセイは、中和抗体(NAb)を含んでも含まなくてもよいヒト血清の存在下、ラット上皮細胞株UMR-106の処理、次いで所定量のPTHまたはPTHrPアナログが細胞性サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)を誘導する能力を競合的免疫測定により測定することを含んだ。ある態様において、血清試料は、接触させる工程の前に、所定量のPTHまたはPTHrPアナログとプレインキュベートされる。理論に拘束されないが、試料中に存在する任意のPTHまたはPTHrPアナログ中和抗体は、PTHまたはPTHrPアナログと相互作用して中和し、プレインキュベーション工程の間にPTHまたはPTHrPアナログを中和する。したがって、プレインキュベートした血清とPTHまたはPTHrPアナログの混合物を細胞の集団とインキュベートする場合、中和されたPTHまたはPTHrPアナログは、PTH1R受容体を誘導せず、そのためにcAMPのレベルの低減を生じる。
【0028】
いくつかの態様において、PTHまたはPTHrPアナログの所定量または所定濃度は少なくとも100、200、300、400または500pg/mLである。いくつかの態様において、PTHの所定量は約500pg/mLである。いくつかの態様において、PTHrPアナログの所定量は約600pg/mLである。いくつかの態様において、試料は、PTHまたはPTHrPアナログの500pg/mLの終濃度の存在下で評価された。他の態様において、試料は、PTHまたはPTHrPアナログの少なくとも100pg/mL、少なくとも200pg/mL、少なくとも300pg/mL、少なくとも400pg/mL、少なくとも500pg/mLまたは少なくとも600pg/mLの終濃度の存在下で評価された。いくつかの態様において、試料は、PTHの500pg/mLの終濃度の存在下で評価された。いくつかの態様において、試料は、PTHrPアナログの600pg/mLの終濃度の存在下で評価された。
【0029】
図1および2は、単一定量ランからの曲線適合を示し、観察されるPTHおよびPTHrP用量応答のそれぞれを表す。点線は、曲線適合から内挿された25%のプールされたヒト血清の存在下での、PTHおよびPTHrP応答のそれぞれのEC20およびEC30を示す。
図1および2に表されるように、用量応答曲線およびPTHまたはPTHrPの中和により誘導されたcAMP誘導は確固とした終点を表す。
【0030】
cAMPレベルは、当該技術分野で公知の任意の方法を使用して測定され得る。例えば、cAMPは、PTH1Rレベルまたは活性を検出するためにELISAアッセイを使用して測定され得る。いくつかの態様において、cAMPレベルの測定は、Mesoscale Discovery Multi-Array 96ウェルcAMPプレートを使用して行われる。
【0031】
本発明の方法は、PTHまたはPTHrPアナログ中和抗体が、PTHまたはPTHrPアナログを有意に中和するのに十分な量で血清試料中に存在するかどうかを決定し得る。ある態様において、アッセイカットポイントを計算して、試料中にPTHまたはPTHrPアナログ中和抗体がいつ存在するかを決定し得る。該方法はさらに、プールされたヒト血清の陰性対照に基づいてアッセイカットポイントを決定すること、アッセイカットポイントと中和抗体の存在を相関すること、および細胞の集団中のcAMP低減の量とアッセイカットポイントを比較することを含み得る。例えば、試料中のcAMP低減の測定された量がアッセイカットポイントよりも低い場合、血清試料は感知できる量の中和抗体を含まず、試料中のcAMP低減の検出された量がアッセイカットポイントよりも高い場合、血清試料は感知できる量の中和抗体を含む。
【0032】
いくつかの態様において、陽性および陰性対照試料により誘導される応答は、アッセイが適切に機能していることを確実にするために決定される。陰性対照は典型的に、PTHおよび/またはPTHrPアナログに暴露されていない被験体由来のプールされたヒト血清試料である。いくつかの例において、陰性対照試料は、治療されていない被験体由来のプールされた血清試料であり得る。
【0033】
いくつかの態様において、陽性対照は、PTHおよび/またはPTHrPアナログで治療された被験体由来の血清試料を含む。他の態様において、対照は、サロゲート(surrogate)中和抗体(SPC)でスパイクされた被験体由来の血清試料を含む。いくつかの態様において、血清試料はプールされる。いくつかの態様において、血清試料は、閉経後の女性由来の個々の疾患状態血清試料からプールされる。他の態様において、血清は、閉経後の女性由来の個々の疾患状態血清試料から得られるヒト血清である。さらなる陽性対照は、高陽性対照(HPC)、中度陽性対照(MPC)、低陽性対照1(LPC1)および低陽性対照2(PC2)のそれぞれについて、SPCの異なる希釈度、例えば1:120、1:240、1:500および1:800のSPC希釈度を有する、プールされたヒト血清の凍結された試料を含み得る。
【0034】
いくつかの態様において、本開示の細胞または細胞の集団は、PTH1Rを発現し、cAMPシグナル伝達の誘導を可能にし、PTH1RおよびcAMPシグナル伝達経路の活性化を生じる任意の細胞であり得る。いくつかの態様において、本開示のアッセイは、1細胞または細胞の集団を使用し得る。いくつかの態様において、細胞または細胞の集団はラット上皮細胞株UMR-106である。
【0035】
細胞は、本開示のアッセイに使用する場合、通常の細胞成長について適切な任意の密度で成長される。適切な密度を達成するために使用される細胞の数は、アッセイに使用されるプレートのサイズおよび表面積により部分的に決定される。細胞は任意の密度でアッセイに使用され得る。いくつかの態様において、細胞は、以下の細胞密度:少なくとも10%コンフルエント、少なくとも25%コンフルエント、少なくとも50%コンフルエント、少なくとも80%コンフルエント、少なくとも90oコンフルエントまたは少なくとも99%コンフルエントでアッセイに使用され得る。
【0036】
ある態様において、該方法は、接触させる工程の間に細胞と試料を接触させる前に、ある期間、UMR-106細胞(1つまたは複数)を血清飢餓にすることを含む。細胞は、約4時間~約48時間、約4時間~約24時間、約4時間~約16時間、約4時間~約12時間または約6時間~約12時間の範囲の期間、血清飢餓にされ得る。
【0037】
いくつかの態様において、試料はヒト試料である。いくつかの態様において、試料はヒト血清試料である。
【0038】
いくつかの態様において、試料はPTHrPアナログで治療された被験体由来のものである。いくつかの態様において、PTHrPアナログはアバロパラチドである。他の態様において、PTHrPアナログはテリパラチドである。
【0039】
中和抗体などの抗体の検出は、PTHまたはPTHrPアナログで治療された患者における潜在的な免疫原性の発生をモニタリングするためにも使用され得る。例えば、骨粗鬆症についてPTHrPアナログで治療された患者における中和抗体は、有害反応の効果の検出および最小化、薬物用量および治療の効力の最適化に重要であり得る。ある局面において、アバロパラチド治療後に中和抗体の存在を検出するための方法が本明細書に記載される。該方法は、アバロパラチドで治療された被験体から試料(例えばプールされたまたは個々のヒト血清試料)を得る工程、試料と、細胞または細胞の集団を接触させる工程、ここで該細胞はPTHまたはPTHrPに対する受容体を含む、サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)レベルを測定する工程、および中和抗体を有さない陰性対照試料と比較してcAMPレベルが低減される場合に、中和抗体の存在を検出する工程を含む。
【0040】
本明細書に記載されるアッセイは、有害な免疫原性事象が潜在的な抗PTHまたは抗PTHrPアナログ抗体の産生に基づく可能性があるかどうかを迅速に確かめ得る実際の臨床試験に対して都合がよく、信頼性のある代替物を提供する。いくつかの態様において、本開示の方法は、アバロパラチド治療後の有害な免疫原性事象の開始を診断するために使用され得る。該方法のいくつかの態様において、アバロパラチドでの治療は、血清試料中に中和抗体が検出された場合に中断される。他の態様において、血清試料が中和抗体を含まない場合、該方法はさらに、アバロパラチドを用いた被験体の治療を継続することを含む。該方法のさらに別の態様において、アバロパラチドの用量は、血清試料中に中和抗体が検出される場合に変動する(減少または増加する)。
【0041】
いくつかの態様において、試料は、異なる一次中和抗体アッセイにおいても陽性を示し得、その際に中和抗体の存在のための確認アッセイとしてのアッセイに供されている。いくつかの他の態様において、試料は、ELISAアッセイなどの免疫測定により予めスクリーニングされる。さらに他の態様において、試料は、例えばレポーター遺伝子の下方制御などの細胞系アッセイにより予めスクリーニングされる。レポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ遺伝子であり得る。ルシフェラーゼ遺伝子は、PTH1Rをコードする遺伝子のプロモーターに連結され得る。
【0042】
いくつかの態様において、抗PTHまたは抗PTHrPアナログの抗体濃度は、例えば酵素標識イムノソルベントアッセイ(ELISA)、受容体結合アッセイ、放射性免疫沈降、バイオセンサー系アッセイ、免疫蛍光検査、ウエスタンブロット、免疫拡散および免疫電気泳動などの複合体抗原-抗体の検出に基づく免疫診断法のいずれか1つまたはそれらの組合せにより決定される。特定の態様において、抗PTHまたは抗PTHrPアナログの抗体濃度は、標準として、抗PTHまたは抗PTHrPアナログのポリクローナルまたはモノクローナル抗体を使用してELISAにより決定される。
【0043】
C. キット
本明細書に記載される試薬はキット形式で提供され得る。キットは、例えば本明細書に記載されるアッセイを行うために必要な構成要素のいくつかまたは全てを含み得る。例えば、キットは、対照組成物(例えばPTHまたはPTHrPアナログに対する中和抗体を有さない対照ヒト血清試料)、試験細胞(例えば固相支持体に固定されるおよび/または凍結されるUMR-106細胞)、バッファ、標識試薬(例えばヤギ抗マウスIgGビオチン、ストレプトアビジン-HRPコンジュゲート、アロフィコシアニン、B-フィコエリトリン、R-フィコエリトリン、ペルオキシダーゼおよび/または他の検出可能な標識などの標識された抗体)、アッセイを行うための指示書および任意の他の必要または有用な構成要素を含み得る。キットの構成要素は、凍結、凍結乾燥またはTBSもしくはPBSなどの薬学的に許容され得るバッファ中などの任意の適切な形態で提供され得る。キットはまた、任意の適切な形態の1つ以上の試験細胞(例えば微生物)を含む固相支持体を含み得る。キットはまた、他の試薬および/または例えば競合的阻害アッセイ、MSD cAMPアッセイ、フローサイトメトリー分析、ELISA、イムノブロッティング(例えばウエスタンブロット)、インサイチュ検出、免疫細胞化学、免疫組織化学および/またはデータの視覚化などのアッセイを行うための指示書を含み得る。キットはまた、容器(例えばチューブ)、および/または対照試料および/または試薬を含むように予め形式を定められた実験試料のためのさらなる空間を有するスライド(例えばチューブ、スライドおよび/またはスライド上の空間)などの構成要素を含み得る。キットはまた、個体から得られた試料を処理および/または貯蔵するための装置ならびに被験体由来の試料を得るための装置(すなわち針、ランセットおよび回収チューブまたは容器)の1つまたは両方を含み得る。当業者に理解されるように、他の態様も提供される。
【実施例】
【0044】
実施例
実施例1. 抗PTHアッセイ検証および較正
PTHペプチドに対する中和抗体(NAb)の検出のために閉経後の女性における細胞系アッセイを検証するための試験に取り掛かった。アッセイは、中和抗体(NAb)を含んでも含まなくてもよいヒト血清の存在下でのラット上皮細胞株UMR-106の処理、次いでPTHが細胞性サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)を誘導する能力の競合的免疫測定による測定を含んだ。cAMPの検出は、競合的電気化学発光アッセイを使用して行い、ここでPTHに対する中和抗体は、PTHによるcAMPの低下した誘導および増加したアッセイ信号を生じた。
【0045】
材料
PTHアッセイ検証に使用した試薬を以下の表1および表2に示す。
【表1】
【表2】
【0046】
対照を作製するために、閉経後の女性由来の個々の疾患状態血清試料(プラセボ対照);および閉経後の女性由来の個々の疾患状態血清試料(プラセボ対照)からプールされたプールされたヒト血清(PHS)は、臨床試験から入手した。
【0047】
凍結対照は:
・凍結陰性対照(NC)=プールされたヒト血清(PHS)
・凍結4X高陽性対照(4X HPC)=1:175希釈のサロゲート抗体陽性試料(SPC)でスパイクされたヒト血清プール
・凍結4X中度陽性対照(4X MPC)=1:250希釈のSPCでスパイクされたヒト血清プール
・凍結4X低陽性対照1(4X LPC1)=1:300希釈のSPCでスパイクされたヒト血清プール
・凍結4X低陽性対照2(4X LPC2)=1:400希釈のSPCでスパイクされたヒト血清プール
を含んだ。それぞれの凍結対照は、高陽性対照(HPC)、中度陽性対照(MPC)、低陽性対照1(LPC1)および低陽性対照2(PC2)のそれぞれについて1:700、1:1000、1:1200および1:1600の最終アッセイSPC希釈のために1:4希釈される。
【0048】
方法
UMR-106細胞を、使用の準備ができるまで、75~150cm2組織培養フラスコ中の成長培地(10%ウシ胎仔血清、1% Pen-Strep(10k単位ペニシリン-10kug/mLストレプトマイシン)および1% L-グルタミンを含むUMR-GM, Dulbecco's 改変イーグル培地(DMEM))中に維持する。細胞は、培養維持を予定通りにする(routing)ために成長が≧70%コンフルエントに達する場合、1:4~1:20の比で分離する。アッセイを開始する前に、細胞を、106細胞/5cm2(例、T-75について5e6細胞)の密度で継代培養フラスコ(25cm2~150cm2)中で平板培養する。翌日、フラスコを、アッセイ培地(1%ウシ血清アルブミンを含むUMR-Am、フェノールレッド非含有DMEM)を用いて飢餓にする。翌日、検証試料および抗体対照を、PTHペプチドと共に最低30分間プレインキュベートする。検証試料および対照を、血清の最終アッセイ濃度が1:4のアッセイ最小希釈倍率(minimum required dilution)と等しくなるように調整する。20マイクロリットルの試料および/または対照を、MSD cAMPアッセイプレートに配置する。飢餓UMR-106細胞をトリプシン処理により採取し、133.5uMの細胞透過性cAMP特異的ホスホジエステラーゼ阻害剤4-(3-ブトキシ-4-メトキシベンジル)-2-イミダゾリジノン(RO 20-1724, MW 278.35, R&D Systems/Tocris カタログ0415)を含むアッセイ培地中106細胞/mLで再懸濁する。40マイクロリットルの細胞懸濁液をcAMPアッセイプレートに添加する。振盪しながら室温で最低30分後、MSD溶解バッファ中1:200に希釈したTAG cAMP検出試薬(Mesoscale Delivery, MSD Multi-Array 96ウェルcAMPキット)をアッセイプレートに添加する。プレートを、振盪しながら室温でさらに1~2時間インキュベートする。次いで100マイクロリットルの2X MSD読み取りバッファTをプレートに添加して、プレートを、MSD 6000またはS6000 Sector Imagerですぐに読み取る。
【0049】
結果
PTH薬物濃度
Meso Scale Discovery (MSD) Sector 6000電気化学発光リーダーで、アッセイプレートから相対光単位(RLU)を読み取った。データをMSDデータベースからエクスポートして、さらなる分析を可能にした。アウトライアーの除去を含むアッセイカットポイントを確立するための計算を、JMP(登録商標)ソフトウェアv12.01 (SAS, Cary, NC)で行った。アウトライアー決定は段階的に進行した。段階的アウトライアー識別の間に、JMPホイスカーおよびボックスプロットの標準的な構成を使用して、アウトライアーを示した。具体的に、ホイスカーの外側の反復(replicate)(四分位数間領域の反復(interquartile range of the replicate)(IQR)±1.5倍のIQR)をアウトライアーであると決定した。
【0050】
スポンサーにより提供された64個の個々の疾患状態プラセボ対照血清試料を使用して、アッセイカットポイントを確立した。シングレットとして32のグループにおいて、合計6回のラン内で3回、試料をランさせた。5日にわたる3回の分析により6回のランを行い、192のデータ点を作成した。陰性対照(NC)の8個の複製の最小をそれぞれのプレートに含めた。全てのデータ点は、上に特定されるように標準化した。
【0051】
以下の等式:
【数1】
(式中、%CVはパーセント変動係数であり、RLUは相対光単位である)
を適用した。
【0052】
500pg/mLの薬物最終アッセイ濃度は、ヒト血清におけるアッセイの開発および性格付けの間に確立し、6ng/mLの12X濃度でアッセイにスパイクすることにより得た。
図1は、単一性格付けランからの曲線適合を示し、性格付けの間に行われたさらなるランを表す。点線は、曲線適合から内挿される場合の25%プールされたヒト血清の存在下のPTH応答のEC20およびEC30を示す。内挿された概数の濃度は、EC30およびEC20についてそれぞれ436および728pg/mLであった。
【0053】
統計学的方法
全ての統計学的分析は、JMP Statistical Discoveryソフトウェア(バージョン12.01; SAS Institute, Inc., Cary, NC, USA))を使用して完了した。分析に使用した統計学的方法は、Shankar et al., 2008により推奨された手順と一致する。
【0054】
スパイクされない試料についての試験設計は、合計6回のランについて3回のランにわたり測定された2つのグループの試料であった。該設計は、グループのための平均効果の評価を可能にした。該設計または、グループおよびランの数において入れ子になった(nested)試料に起因し得るランダム分散の推定を可能にした。
【0055】
線形の混合効果分散分析(ANOVA)モデルを使用して、阻害剤が存在しない疾患状態試料についての報告された計数値における体系的(一定の)およびランダムな分散の供給源を調べた。試料の平均応答をNCプレートの平均で割って、プレートごとの標準化された結果に対して統計学的分析を行った。グループをANOVAモデルにおける一定の効果として画定して、これらの因子のレベルの間の平均応答における体系的な差を評価するために最小二乗平均を0.05の有意さレベルで比較した。試料についてのモデルにおいてランダム効果を画定し、ランおよび残差(residual)内でグループを入れ子にした。次いで試料の最良線形不偏予測量(BLUP)値の分布を試験して、JMPにおけるアウトライアーボックスプロットを使用して試料を生物学的な統計学的アウトライアーとして同定した。ANOVA条件的残差値の分布を評価して、JMPの分布プラットフォーム内のアウトライアーボックスプロット手順を再度使用して「分析的」統計学的アウトライアーを同定した。この基準により同定された試料についての全ての標準化された結果の値を除去して、さらなるアウトライアーが同定されなくなるまで統計学的分析を繰り返した。
【0056】
標準化された値の線形混合効果ANOVAによりアウトライアーとして25個の値を同定した。「分析的」アウトライアーとして7個の値を同定した。「生物学的」統計学的アウトライアーとして6個の試料を同定し、18の結果(6試料x3回のラン=18)を排除した。全ての統計学的アウトライアーをカットポイント評価から排除して、分析のために167個の値を残した。
【0057】
これらのデータの線形混合効果ANOVAにより、試料グループ間に統計学的有意差はないことが明らかになった(p値=0.2082)。試料の間の差は14.6%の総変動性を説明した。該方法における変動性のほとんどは、分析的構成要素に関連した(ランのために47.2%および残差分散のために38.2%)。
【0058】
感度
感度を評価するために、SPC[29.84μg/mL]を1:20希釈で25% PHSにスパイクすることにより、超高陽性対照試料を調製した。次いで1:20希釈物を連続的に2倍希釈し、1:20、1:40、1:80、1:160、1:320、1:640、1:1280および1:2560のSPCの合計8個の希釈物を得;これはストレート(neat)のマトリックス中1492ng/mL~12ng/mLの濃度範囲に対応する。1:4 MRDでかつ500pg/mLのPTHの最終濃度の存在下で試料を評価した。平均の標準化された値に基づいて、一貫して陽性(カットポイントより高い)として検出された抗体希釈曲線の最低濃度として、4つの独立したランから感度を決定した。アッセイ感度データを表3に示す。
【表3】
【0059】
個々のデータ点および4パラメーターロジスティック回帰(4PL)適合応答について4回の独立したランの1つ(ラン#2)において、評価したSPC濃度範囲のみが陰性のスコア(カットポイント未満)を達成した。3つの他のランは、評価される最低SPC濃度(12ng/mL)でも陽性(カットポイントより高い)のままであった。表3に示されるように、それぞれのSPC濃度についてのnormRLUを、ランを通して平均し、アッセイカットポイントと比較して、陰性のスコアは達成されなかった。したがって、4回のランの3つにおいて、全ての4回のランを平均することにより、アッセイの感度は≦12ng/mLである。
【0060】
非特異的免疫グロブリンによる特異性
アッセイにおいて市販のヒトIgGの反応性を評価することにより特異性を評価した。3つのヒトIgG濃度10、1.0および0.1μg/mLを、ストレートのヒト血清プール(PHS)にスパイクして、500pg/mL PTHの終濃度の存在下で評価した。全ての特異性試料は、1.234のアッセイカットポイント未満であり、陰性であるとみなされた。1.0および0.1μg/mLの試料の両方は、陰性対照の30%の許容基準内にあり、IgG 10μg/mLは60%であった(陰性対照の40%未満)が;アッセイにおいて試料が陰性であると試験され、陰性の結果は、試料がアッセイにおいて活性を有さなかったことを定性的に示すので影響はなかった。結果を表4にまとめる。
【表4】
【0061】
薬物耐性(drug tolerance)による特異性
PTH薬物濃度を増加することにより、SPCの存在下で信号の迅速な低下が生じた。一定の濃度のPTHに依存した細胞性応答によりアッセイカットポイントが確立されたので、アッセイは制限された薬物耐性を有することが予想される。この制限を評価するために、HPC、LPC1およびLPC2を、750、1000または2000pg/mLのPTHで処理して、単一ランにおいて500pg/mLの正常PTHで処理した試料と比較した。
【0062】
それぞれの対照についての信号応答は、結果の解釈に対して影響を有さないLPC2 1.5xを除いて、それぞれのレベルの対照についての薬物濃度の増加に伴って低下した。結果を表10に示す。対照は、1000pg/mLまでのPTHの増加濃度の存在下で陽性のままであった。結果を表5に示す。
【表5】
【0063】
選択性
合計10個の個々のプラセボヒト血清試料を用いて選択性を評価した。それぞれの試料は、それぞれ1:175(170.1ng/mL)および1:300(99.5ng/mL)のHPCおよびLPC1希釈レベルでのSPCストックである抗PTHでスパイクされないおよびスパイクされて示され、1:4のMRDでの対照を用いたアッセイにおいて評価した。HPCおよびLPC1のレベルに等しい抗体の濃度でスパイクした場合、試料はNAbについて陽性であった(表11)。1つの試料、試料5も全くスパイクされないであり、1.863の標準化された平均を有した。アッセイ対照として参照対照(NC、HPC、LPC1およびLPC2)をそれぞれのアッセイプレート上でランさせた。
【0064】
実施例2. 抗PTHrPアッセイ検証および較正
PTHrPペプチドに対する中和抗体(NAb)の検出のために、閉経後の女性において細胞系アッセイを検証するために試験を企図した。アッセイは、中和抗体(NAb)を含んでも含まなくてもよいヒト血清の存在下でのラット上皮細胞株UMR-106の処理、次いでPTHrPが細胞性サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)を誘導する能力の競合的免疫測定による測定を含んだ。cAMPの検出は、競合的電気化学発光アッセイを使用して行い、ここでPTHrPに対する中和抗体は、PTHrPによるcAMPの低下した誘導および増加したアッセイ信号を生じた。
【0065】
材料
PTHアッセイ検証に使用した試薬を以下の表6および表7に示す。
【表6】
【表7】
【0066】
対照を作製するために、閉経後の女性由来の個々の疾患状態血清試料(プラセボ対照)からプールされたプールされたヒト血清(PHS);および閉経後の女性由来の個々の疾患状態血清試料(プラセボ対照)。
【0067】
凍結対照は:
・凍結陰性対照(NC)=プールされたヒト血清(PHS)
・凍結4X高陽性対照(4X HPC)=2.30ug/mLのサロゲート抗体陽性対照(SPC)でスパイクされたヒト血清プール
・凍結4X中度陽性対照(4X MPC)=1.15ug/mLのSPCでスパイクされたヒト血清プール
・凍結4X低陽性対照1(4X LPC1)=0.55ug/mLのSPCでスパイクされたヒト血清プール
・凍結4X低陽性対照2(4X LPC2)=0.34ug/mLのSPCでスパイクされたヒト血清プール
を含んだ。それぞれの凍結対照は、高陽性対照(HPC)、中度陽性対照(MPC)、低陽性対照1(LPC1)および低陽性対照2(PC2)のそれぞれについて、1:120、1:240、1:500および1:800の最終アッセイSPC希釈のために1:4希釈される。
【0068】
方法
UMR-106細胞は、使用の準備ができるまで、75~150cm2組織培養フラスコ中の成長培地(10%ウシ胎仔血清、1% Pen-Strep (10k単位ペニシリン-10k ug/mLストレプトマイシン)および1% L-グルタミンを含むUMR-GM, Dulbecco's 改変イーグル培地(DMEM))中に維持する。細胞は、培養維持を予定通りにするために成長が≧70%コンフルエントに達する場合、1:4~1:20の比で分離する。アッセイを開始する前に、細胞を、106細胞/5cm2(例、T-75について5e6細胞)の密度で継代培養フラスコ(25cm2~150cm2)中に平板培養する。翌日、フラスコを、アッセイ培地(1%ウシ血清アルブミンを含むUMR-Am、フェノールレッド非含有DMEM)を用いて飢餓にする。翌日、検証試料および抗体対照を、PTHrPと共に最低30分間プレインキュベートする。検証試料および対照を、血清の最終アッセイ濃度が1:4のアッセイ最小希釈倍率と等しくなるように調整する。20マイクロリットルの試料および/または対照を、MSD cAMPアッセイプレートに配置する。飢餓UMR-106細胞をトリプシン処理により採取し、133.5uMの細胞透過性cAMP特異的ホスホジエステラーゼ阻害剤4-(3-ブトキシ-4-メトキシベンジル)-2-イミダゾリジノン(RO 20-1724, MW 278.35, R&D Systems/Tocrisカタログ0415)を含むアッセイ培地中10
6
細胞/mLで再懸濁する。40マイクロリットルの細胞懸濁液をcAMPアッセイプレートに添加する。振盪しながら室温で最低30分後、MSD溶解バッファ中1:200に希釈したTAG cAMP検出試薬(Mesoscale Delivery, MSD Multi-Array 96ウェルcAMPキット)をアッセイプレートに添加する。プレートを、振盪しながら室温でさらに1~2時間インキュベートする。次いで100マイクロリットルの2X MSD読み取りバッファTをプレートに添加して、プレートをMSD 6000またはS6000 Sector Imagerですぐに読み取る。
【0069】
結果
PTHrP薬物濃度
Meso Scale Discovery (MSD) Sector 6000電気化学発光リーダーで、アッセイプレートから相対光単位(RLU)を読み取った。データをMSDデータベースからエクスポートして、さらなる分析を可能にした。アウトライアーの除去を含むアッセイカットポイントを確立するための計算を、JMP(登録商標)ソフトウェアv12.01 (SAS, Cary, NC)で行った。アウトライアー決定は段階的に進行した。段階的アウトライアー識別の間に、JMPホイスカーおよびボックスプロットの標準的な構成を使用して、アウトライアーを示した。具体的に、ホイスカーの外側の反復(四分位数間領域の反復(IQR)±1.5倍のIQR)をアウトライアーであると決定した。
【0070】
ヒト血清におけるアッセイの開発および性格付けの間に、600pg/mLの薬物スパイクアッセイ濃度を確立した。
図2は、単一の性格付けランからの曲線適合を示し、観察されるPTHrP用量応答を表す。点線は、PTHrP応答のEC20およびEC30を示す。内挿された概数化された濃度は、EC30およびEC20についてそれぞれ436および728pg/mLであった。
【0071】
感度
感度を評価するために、SPC[68.98μg/mL]を1:16希釈(4X)でマトリックスにスパイクし、次いで連続的に2倍希釈することにより、超高陽性対照試料を調製し、アッセイにおいて4311、2156、1078、539、270、135、67および34ng/mLのSPCの濃度を得た。1:4のMRDでかつ600pg/mLのPTHrPの存在下で、アッセイ陽性対照を用いて希釈試料を評価した。MRDについての調整後、平均RLU値に基づいて一貫して陽性であると検出された抗体希釈曲線の最低濃度として、感度を決定した。結果を表8に示す。このアッセイについての抗体感度は、1:64の抗体希釈であると決定され、調製された両方の低陽性対照は検出未満である可能性が高い。
【表8】
【0072】
非特異的免疫グロブリンによる特異性
アッセイにおいて市販のヒトIgGの反応性を評価することにより特異性を評価した。3つのヒトIgG濃度10、1.0および0.1μg/mLを、ストレートのヒト血清プール(PHS)にスパイクして、500pg/mL PTHの終濃度の存在下で評価した。全ての特異性試料は、1.234のアッセイカットポイント未満であり、陰性であるとみなされた。1.0および0.1μg/mL試料の両方は、陰性対照の30%の許容基準内にあり、IgG 10μg/mLは60%であった(陰性対照の40%未満)が;アッセイにおいて試料が陰性であると示され、陰性の結果は、試料がアッセイにおいて活性を有さなかったことを定性的に示すので影響はなかった。結果を表4にまとめる。
【0073】
アッセイにおいて市販のヒトIgGの反応性を評価することにより特異性を行った。3つのヒトIgG濃度;10、1.0および0.1μg/mLをヒト血清プール(NC)にスパイクして、600pg/mL PTHrPの存在下で評価した。ヒト血清プール(NC)を600pg/mL PTHrPでスパイクしたが、IgGはこのアッセイのためのベースライン対照として機能しなかった。最高および最低のIgG含有量を有する特異性試料は、5378.7のプレートカットポイント未満であり、陰性であるとみなされた。結果を表9にまとめる。中度IgG含有量試料1.0μg/mLは、16,273.5の典型的でない高い信号を有したが、このランにおける平均HPC信号はほんの7697.8であった。
【表9】
【0074】
薬物耐性による特異性
アッセイ特異性は、PTHrP濃度を増加することにより、SPCの存在下で信号の迅速な低下が生じるものである。一定の濃度のPTHrPに依存する細胞性応答でアッセイカットポイントは確立されるので、アッセイは制限された薬物耐性を有することが予想される。この制限を評価するために、HPC、LPC1およびLPC2を、個々のアッセイプレート上で、900、1200または2400pg/mLのPTHrPにより処理し、600pg/mLの名目上のPTHrPで処理した試料と比較した。
【0075】
予想されるように、それぞれの対照についての信号応答は、薬物濃度の増加に伴って低下した。HPC対照は600pg/mLまでのPTHrPの存在下で陽性のままであった。アッセイ感度のセクション14.5に見られるように、LPC1およびLPC2対照は、600pg/mLの名目上のPTHrPの濃度において陽性と示されなかった。
【0076】
600pg/mLのアッセイ濃度を超えるレベルでの血清試料中のPTHrPの存在は、アッセイが中和抗体を検出する能力に、負に影響し得る。
【0077】
選択性
10個の個々のプラセボヒト血清試料において選択性を評価した。それぞれの試料は、それぞれ1:30および1:125のHPCおよびLPC1希釈レベルでのSPCストックでスパイクされないおよびスパイクされたと示され、1:4のMRDでの対照を用いたアッセイにおいて評価された。HPCのレベルに等しい抗体の濃度でスパイクした場合、NAbについて試料は陽性であった。低陽性対照のレベルと等しい抗体の濃度でスパイクした場合、10個の試料のうち2個のみがNAbについて陽性を示した。抗体スパイクの非存在下で3個の試料はNAbについて陽性を示した。
【0078】
%回収(recovery)の決定のために、それぞれのアッセイプレート上で参照対照(NC、HPCおよびLPC1)をランさせた。%回収は、0、1:30または1:125 SPC希釈でスパイクされた試料のRLU値を、NC、HPCまたはLPC1のそれぞれの標準化された値で割り、パーセンテージで表すことにより計算した。NAbのHPC濃度でスパイクされた全ての試料は、それらのそれぞれの対照のRLU値の30%以内であった。ラン6におけるLPC1対照は、アッセイにおいて陽性を示さなかった。
【0079】
実施例3. 抗PTHおよび抗PTHrP濃度の決定
2つのウサギポリクローナル抗体試薬において抗PTHまたは抗PTHrP IgG濃度を決定した。
【0080】
試薬および材料:
・Greiner bio-one高結合マイクロプレート96ウェル、prod#655061, L/N E16093KS
・抗PTH (Ab)(1-34)(ヒト)-Phoenix Pharmaceuticals, cat#G-055-08, L/N 01553-4.
・抗PTHrP (Ab)(1-34)(ヒト、ラット、マウス)-Phoenix Pharmaceuticals, cat#H056-04, L/N 01736-1.
・PTH(1-34)(ヒト)ペプチド-Phoenix Pharmaceuticals cat#055-03, L/N 430926
・PTHrP(1-34)(ヒト、ラット、マウス)ペプチド-Phoenix Pharmaceuticals cat#05604, L/N 432088
・ウサギIgGビオチン-Rockland, cat#011-0602, L/N 36734
・ロバ抗ウサギIgG (H+L) HRP, prod#711-035-152, L/N 125015
・洗浄バッファ:1X PBS+0.05% tween 20 (Fisher, L/N 160170) Covance内部(in-house)バッファL/N 170320-1, Exp:17 Sep 2017
・アッセイ希釈物:1X PBS+3% BSA (USB/Affymetrix, prod. 10857, L/N 4295530, Exp 08/2021) Covance内部バッファL/N 170317-3, Exp: 17 Sep 2017
・標準:ウサギIgG全分子ビオチン(bioton)コンジュゲート、Rockland, prod#011-0602, L/N 36734, Exp: Mar 2018
・検出抗体:ロバ抗ウサギIgG (H+L)ペルオキシダーゼコンジュゲート、Jackson ImmunoResearch-cat#711-035-152, lot#129517, Exp: 11 Jan 2018
・ABTSペルオキシダーゼ基質(1成分)-KPL, prod#50-66-01, lot#150405, Exp: 11/2017
【0081】
方法
ELISAプレート(Greiner bio-one高結合マイクロプレート96ウェル、prod#655061, L/N E16093KS)を、アッセイコーティングバッファ(PBS)中100uL/ウェルの体積でPTHまたはPTHrPペプチド溶液(1ug/mL)のいずれかによりコーティングした。それぞれのプレートの3つの列を、標準曲線について100uL/ウェルの体積で、種々の濃度のビオチン標識ウサギIgGでコーティングした。プレートを2~8℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄バッファ(1X PBS+0.05% Tween 20)で洗浄した後、200uLのブロッキングバッファ(1XPBS+3% BSA、USB/Affymetrix Prod 10857製)をそれぞれのウェルに添加して、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄バッファ(1X PBS+0.05% Tween 20)で洗浄し、抗PTHまたは抗PTHrP抗体試料を、2倍連続希釈液を使用して、1ウェル当たり50uLの体積でそれらの指定されたウェルに添加した。希釈液を、IgG標準曲線の作成に使用した3つの列に添加した。プレートを35~37℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄バッファ(1X PBS+0.05% Tween 20)で洗浄し、二次抗体(ロバ抗ウサギIgG (H&L)、ペルオキシダーゼコンジュゲート-Jackson ImmunoResearch, #711035152, ロット125015)をELISAプレート全体に添加した。プレートを室温で約1時間インキュベートして、次いで洗浄バッファ(1X PBS+0.05% Tween 20)で洗浄した。HRP基質ABTS(2,2'-アジノビス[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸]-ジアンモニウム塩-KPL#506601, ロット150405)を1ウェル当たり100μLで添加して、室温で約30分間インキュベートすることによりプレート上に保持された酵素活性を測定した。プレートを415nmで読み取り、参照は570nmで読み取った。IgG濃度は、未知のものの吸光度と標準曲線を比較することにより誘導された。
【0082】
要約した方法
プレートコーティング(100uL/ウェル):
・PTHペプチド(1-34)(ヒト)、1mg/mLをコーティングバッファ中1ug/mLに希釈した
・PTHrPペプチド(1-34)(ヒト、ラット、マウス)、1mg/mLをコーティングバッファ中1ug/mLに希釈した
・ウサギIgG全分子ビオチン(bioton)コンジュゲート、1mg/mLを、コーティングバッファ中1、.333、.111、.037、.012、.004および.001ug/mLに希釈した(列10~12のみ)。
・2~8Cで一晩インキュベート。
・洗浄3X、BioTek EL406を使用して洗浄バッファ(1X PBS+0.05% tween 20)中350uL/ウェル
ブロッキング(200uL/ウェル):
・1X PBS+3% BSA
・室温で1時間インキュベート
・洗浄3X、BioTek EL406を使用して洗浄バッファ(1X PBS+0.05% tween 20)中350uL/ウェル
試料配置-プレート1-(50ul/ウェル):
・列1~3-PTH(1-34)(ヒト)精製Ab、1:1,000希釈、次いで連続して2倍希釈
・列10~12-アッセイ希釈液ブランク
試料配置-プレート2-(50ul/ウェル):
・列1~3-PTHrP(1-34)(ヒト)抗体、1:1,000希釈、次いで連続して2倍希釈
・列10~12-アッセイ希釈液ブランク
・35~39Cで1時間インキュベート。
・洗浄6X、BioTek EL406を使用して洗浄バッファ(1X PBS+0.05% tween 20)中350uL/ウェル
二次Ab(100uL/ウェル):
・ロバ抗ウサギIgG(H+L)ペルオキシダーゼコンジュゲート、アッセイ希釈液中1:5,000希釈
・室温で1時間インキュベート。
・洗浄6X、BioTek EL406を使用して洗浄バッファ(1X PBS+0.05% tween 20)中350uL/ウェル
基質(100uL/ウェル):
・ABTSペルオキシダーゼ基質(1成分)
・室温で30分間インキュベート。
・BioTek Power Wave HTプレートリーダー、S/N 259240を使用して、プレートを415nm、570nmで読み取り
データ分析
・定量化は、未知/既知x既知の濃度x未知の希釈のベールの法則の式から誘導される
・標準曲線(既知)の参照点は、曲線の中央に最も近い点である(ピークo.d.-ブランク/2)。未知の参照点は、その吸光度が標準の参照点に最も近いデータ点である。
【0083】
結論
ウサギIgGを使用して標準曲線を得た。2つのウサギポリクローナル試薬中のPTHまたはPTHrPの濃度を決定するためにELISAをランさせた。Gen5ソフトウェアを使用して、標準曲線の線形部分に対応するそれぞれのアッセイからデータ点を選択した。結果を表10にまとめる。
【表10】
本発明の態様として以下のものが挙げられる。
項1
試料中のPTHまたはPTHrPに対する中和抗体の存在を検出するためのインビトロ法であって:
被験体から試料を得る工程;
該試料と、細胞の集団または細胞を接触させる工程、ここで該細胞(1つまたは複数)は、PTHまたはPTHrPに対する受容体を含む;
サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)レベルを測定する工程;および
中和抗体を有さない陰性対照試料と比較してcAMPレベルが低減される場合に、中和抗体の存在を検出する工程
を含む、方法。
項2
cAMPレベルを測定する工程が競合的免疫測定により実施される、項1記載の方法。
項3
競合的免疫測定が電気化学発光検出法である、項2記載の方法。
項4
接触させる工程が、細胞(1つまたは複数)を血清試料と共にインキュベートすることを含む、項1~3いずれか記載の方法。
項5
接触させる工程の前に、血清試料と所定量のPTHまたはPTHrPアナログとのプレインキュベーションをさらに含む、項1~4いずれか記載の方法。
項6
プレインキュベーションが少なくとも30分の期間である、項5記載の方法。
項7
測定する工程の前に、細胞(1つまたは複数)が溶解される、項1~6いずれか記載の方法。
項8
接触させる工程の前に、細胞(1つまたは複数)と、細胞透過性cAMP特異的ホスホジエステラーゼ阻害剤とのインキュベーションをさらに含む、項1~7いずれか記載の方法。
項9
cAMP特異的ホスホジエステラーゼ阻害剤が4-(3-ブトキシ-4-メトキシベンジル)-2-イミダゾリジノンである、項8記載の方法。
項10
cAMPレベルを測定する工程が、Mesoscale Discovery Multi-Array 96ウェルcAMPプレートを使用して実施される、項1~9いずれか記載の方法。
項11
PTHまたはPTHrPアナログの所定量が、少なくとも100、200、300、400または500pg/mLである、項1記載の方法。
項12
PTHの所定量が約500pg/mLである、項1記載の方法。
項13
PTHrPアナログの所定量が約600pg/mLである、項1記載の方法。
項14
細胞(1つまたは複数)がラット上皮細胞株UMR-106である、項1記載の方法。
項15
接触させる工程の前に、ある時間、UMR-106細胞(1つまたは複数)を血清飢餓にすることをさらに含む、項14記載の方法。
項16
該時間が、約4時間~約48時間、約4時間~約24時間、約4時間~約16時間、約4時間~約12時間または約6時間~約12時間の範囲である、項15記載の方法。
項17
試料がヒト試料である、項1~16いずれか記載の方法。
項18
ヒト試料がヒト血清試料である、項17記載の方法。
項19
試料が、PTHrPアナログで治療された被験体由来である、項18記載の方法。
項20
PTHrPアナログがアバロパラチドである、項19記載の方法。
項21
PTHrPアナログがテリパラチドである、項19記載の方法。
項22
アバロパラチド治療後に中和抗体の存在を検出する方法であって:
アバロパラチドで治療された被験体から血清試料を得る工程;
血清試料と細胞または細胞の集団を接触させる工程、ここで該細胞(1つまたは複数)は、PTHまたはPTHrPに対する受容体を含む;
サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)レベルを測定する工程;および
中和抗体を有さない陰性対照試料と比較してcAMPレベルが低減される場合に、中和抗体の存在を検出する工程
を含む、方法。
項23
血清試料中に中和抗体が検出される場合に治療を中断する工程をさらに含む、項22記載の方法。
項24
得る工程、接触させる工程、測定する工程および検出する工程を行うために必要な構成要素、ならびに使用のための指示書を含む、項1~22いずれか記載の方法を行うためのキット。