(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】超音波マトリクス画像化デバイス
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20240606BHJP
H04R 1/06 20060101ALI20240606BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20240606BHJP
H04R 19/00 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
H04R3/00 330
H04R1/06 330
H04R17/00 332A
H04R19/00 330
(21)【出願番号】P 2021572941
(86)(22)【出願日】2020-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2020066632
(87)【国際公開番号】W WO2020254325
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-03-02
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519242942
【氏名又は名称】モジューレウス
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】シャタン,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ジャンヌ,エドガー
【審査官】中嶋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/127655(WO,A1)
【文献】特開2015-130520(JP,A)
【文献】特表2016-513408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H04R 1/06
H04R 17/00
H04R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像化デバイス(100) であって、
- 行(L
i)及び列(C
j)のアレイに配置されて、第1の電極(E1)及び第2の電極(E2)を夫々有している複数の超音波トランスデューサ(101) であって、同一行の前記超音波トランスデューサの第1の電極が相互に接続されて、同一列の前記超音波トランスデューサの第2の電極が相互に接続されている前記超音波トランスデューサと、
- 行(L
i)毎に設けられている送信回路(TX)、受信回路(RX)、及び第1の構成では前記行の超音波トランスデューサの第1の電極(E1)を前記行の送信回路(TX)に接続して、第2の構成では前記行の超音波トランスデューサの第1の電極(E1)を前記行の受信回路(RX)に接続すべく制御可能なスイッチ(SW)と、
- 列(C
j)毎に設けられている送信回路(TX)、受信回路(RX)、及び第1の構成では前記列の超音波トランスデューサの第2の電極(E2)を前記列の送信回路(TX)に接続して、第2の構成では前記列の超音波トランスデューサの第2の電極(E2)を前記列の受信回路(RX)に接続すべく制御可能なスイッチ(SW)と、
- 制御回路(CTRL)と
を備えており、
前記制御回路は、
第1の送信段階中、行(L
i)及び列(C
j)のスイッチ(SW)を前記第1の構成に制御し、前記行(L
i)の超音波トランスデューサの第1の電極(E1)にDCバイアス信号を与えるべく、前記行の送信回路(TX)を制御して、前記列(C
j)の超音波トランスデューサの第2の電極(E2)に可変励起信号を与えるべく、前記列の送信回路(TX)を制御し、並びに/又は、
第1の受信段階中、行(L
i)及び列(C
j)のスイッチ(SW)を前記第1の構成及び前記第2の構成に夫々制御し、前記行(L
i)の超音波トランスデューサの第1の電極(E1)にDCバイアス信号を与えるべく、前記行の送信回路(TX)を制御して、前記列(C
j)の超音波トランスデューサの第2の電極(E2)から可変応答信号を読み取るべく、前記列の受信回路(RX)を制御する
ように構成されている、デバイス。
【請求項2】
前記制御回路(CTRL)は、
第2の送信段階中、行(L
i)及び列(C
j)のスイッチ(SW)を前記第1の構成に制御し、前記列(C
j)の超音波トランスデューサの第2の電極(E2)にDCバイアス信号を与えるべく、前記列の送信回路(TX)を制御して、前記行(L
i)の超音波トランスデューサの第1の電極(E1)に可変励起信号を与えるべく、前記行の送信回路(TX)を制御し、並びに/又は、
第2の受信段階中、行(L
i)及び列(C
j)のスイッチ(SW)を前記第2の構成及び前記第1の構成に夫々制御し、前記列(C
j)の超音波トランスデューサの第2の電極(E2)にDCバイアス信号を与えるべく、前記列の送信回路(TX)を制御して、前記行(L
i)の超音波トランスデューサの第1の電極(E1)から可変応答信号を読み取るべく、前記行の受信回路(RX)を制御する
ように更に構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
- 各行(L
i)で、前記行のスイッチ(SW)は、第3の構成では、前記行の超音波トランスデューサの第1の電極(E1)を、固定バイアス電位(GND) が与えられるノードに接続すべく、更に制御可能であり、
- 各列(C
j)で、前記列のスイッチ(SW)は、第3の構成では、前記列の超音波トランスデューサの第2の電極(E2)を、固定バイアス電位(GND) が与えられる前記ノードに接続すべく、更に制御可能である、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
- 異なる行(L
i)のスイッチ(SW)は共通の制御端子を有しており、
- 異なる列(C
j)のスイッチ(SW)は共通の制御端子を有している、請求項1~3のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項5】
- 異なる行(L
i)のスイッチ(SW)は異なる制御端子を有しており、
- 異なる列(C
j)のスイッチ(SW)は異なる制御端子を有している、請求項1~4のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項6】
前記超音波トランスデューサ(101) は、CMUTトランスデューサ又はPMUTトランスデューサである、請求項1~5のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項7】
前記スイッチ(SW)は、前記超音波トランスデューサ(101) のアレイと共にモノリシックに一体化されている、請求項1~6のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項8】
各スイッチ(SW)は、静電的に制御される第1のMEMS断続器(K1)及び第2のMEMS断続器(K2)を有している、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
- 行(L
i)毎に、前記行のスイッチ(SW)の第1のMEMS断続器(K1)及び第2のMEMS断続器(K2)は、前記行(L
i)の2つの端部に夫々配置されており、
- 列(C
j)毎に、前記列のスイッチ(SW)の第1のMEMS断続器(K1)及び第2のMEMS断続器(K2)は、前記列(C
j)の2つの端部に夫々配置されている、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
- 行(L
i)毎に、前記行のスイッチ(SW)の第1のMEMS断続器(K1)及び第2のMEMS断続器(K2)は、前記行(L
i)の同一の端部の側に配置されており、
- 列(C
j)毎に、前記列のスイッチ(SW)の第1のMEMS断続器(K1)及び第2のMEMS断続器(K2)は、前記列(C
j)の同一の端部の側に配置されている、請求項8に記載のデバイス。
【請求項11】
各スイッチ(SW)は、静電的に制御される第3のMEMS断続器を更に有しており、
- 行(L
i)毎に、前記行のスイッチ(SW)の第3のMEMS断続器は、前記行の第1のMEMS断続器(K1)と同一の前記行(L
i)の端部の側、又は前記行の前記第1のMEMS断続器(K1)と反対の前記行(L
i)の端部の側に配置されており、
- 列(C
j)毎に、前記列のスイッチ(SW)の第3のMEMS断続器は、前記列の第1のMEMS断続器(K1)と同一の前記列(C
j)の端部の側、又は前記列の前記第1のMEMS断続器(K1)と反対の前記列(C
j)の端部の側に配置されている、請求項8~10のいずれか1つに記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波画像化の分野に関し、より具体的には、超音波トランスデューサのアレイと、これらの超音波トランスデューサを制御するための電子回路とを備えたデバイスの提供を目的とする。
【背景技術】
【0002】
超音波画像化デバイスは従来、複数の超音波トランスデューサ、及び超音波トランスデューサに接続されている電子制御回路を備えている。動作中、トランスデューサの集合体が、所望の画像化対象の身体の前方に配置されている。電子デバイスは、トランスデューサによって超音波を分析対象の身体に向かって放射すべく、電気励起信号をトランスデューサに与えるように構成されている。トランスデューサによって放射された超音波は、分析対象の身体(身体の内部構造及び/又は表面構造)で反射した後、トランスデューサに戻り、トランスデューサが超音波を電気信号に変換し戻す。電気応答信号を電子制御回路によって読み取り、電気応答信号から研究対象の身体に関する情報を導き出すために記憶して分析してもよい。
【0003】
超音波トランスデューサは、二次元画像取得デバイスの場合には線形アレイに配置されてもよく、三次元画像取得デバイスの場合にはアレイに配置されてもよい。二次元画像取得デバイスの場合、取得した画像は、一方では線形アレイに配置されたトランスデューサの整列軸芯によって、他方ではトランスデューサの放射方向によって定められた面での研究対象の身体の断面を表す。三次元画像取得デバイスの場合、取得した画像は、アレイに配置されたトランスデューサの2つの整列方向とトランスデューサの放射方向とによって定められた体積を表す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
三次元画像取得デバイスの内、アレイに配置された各トランスデューサが個別にアドレス指定可能なフル実装と称されるデバイスは、アレイに配置されたトランスデューサが行及び列でアドレス指定可能な行-列アドレス指定、つまりRCA と称されるデバイスと区別され得る。
【0005】
フル実装デバイスは、送信モード及び受信モードでの超音波ビームの成形でより高い適応性を提供する。しかしながら、アレイを制御するための電子システムは複雑であり、M行及びN列のアレイの場合、必要な送信/受信チャネルの数はM×Nである。更に、各トランスデューサの超音波への露出表面積がより小さいため、信号対雑音比は一般に比較的低い。
【0006】
RCA タイプのデバイスでは、様々な超音波ビームを成形するためのアルゴリズムが使用される。ビームを成形する可能性は、フル実装デバイスに対して低下する場合がある。しかしながら、アレイを制御するための電子システムはかなり簡略化され、M行及びN列のアレイの場合、必要な送信/受信チャネルの数はM+Nに減少する。更に、送信段階及び受信段階中にトランスデューサを行又は列に相互に接続するため、信号対雑音比が向上する。
【0007】
本明細書では、行-列アドレス指定(RCA) 三次元画像取得デバイスをより具体的に検討している。
【0008】
実施形態の目的は、既知のデバイスの欠点の全て又は一部を克服する三次元超音波画像取得デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このために、実施形態は、超音波画像化デバイスであって、
- 行及び列のアレイに配置されて、第1の電極及び第2の電極を夫々有している複数の超音波トランスデューサであって、同一行の前記超音波トランスデューサの第1の電極が相互に接続されて、同一列の前記超音波トランスデューサの第2の電極が相互に接続されている前記超音波トランスデューサと、
- 行毎に設けられている送信回路、受信回路、及び第1の構成では前記行の超音波トランスデューサの第1の電極を前記行の送信回路に接続して、第2の構成では前記行の超音波トランスデューサの第1の電極を前記行の受信回路に接続すべく制御可能なスイッチと、
- 列毎に設けられている送信回路、受信回路、及び第1の構成では前記列の超音波トランスデューサの第2の電極を前記列の送信回路に接続して、第2の構成では前記列の超音波トランスデューサの第2の電極を前記列の受信回路に接続すべく制御可能なスイッチと、
- 制御回路と
を備えており、
前記制御回路は、
第1の送信段階中、行及び列のスイッチを前記第1の構成に制御し、前記行の超音波トランスデューサの第1の電極にDCバイアス信号を与えるべく、前記行の送信回路を制御して、前記列の超音波トランスデューサの第2の電極に可変励起信号を与えるべく、前記列の送信回路を制御し、並びに/又は、
第1の受信段階中、行及び列のスイッチを前記第1の構成及び前記第2の構成に夫々制御し、前記行の超音波トランスデューサの第1の電極にDCバイアス信号を与えるべく、前記行の送信回路を制御して、前記列の超音波トランスデューサの第2の電極から可変応答信号を読み取るべく、前記列の受信回路を制御する
ように構成されている、デバイスを提供する。
【0010】
実施形態によれば、前記制御回路は、
第2の送信段階中、行及び列のスイッチを前記第1の構成に制御し、前記列の超音波トランスデューサの第2の電極にDCバイアス信号を与えるべく、前記列の送信回路を制御して、前記行の超音波トランスデューサの第1の電極に可変励起信号を与えるべく、前記行の送信回路を制御し、並びに/又は、
第2の受信段階中、行及び列のスイッチを前記第2の構成及び前記第1の構成に夫々制御し、前記列の超音波トランスデューサの第2の電極にDCバイアス信号を与えるべく、前記列の送信回路を制御して、前記行の超音波トランスデューサの第1の電極から可変応答信号を読み取るべく、前記行の受信回路を制御する
ように更に構成されている。
【0011】
実施形態によれば、
- 各行で、前記行のスイッチは、第3の構成では、前記行の超音波トランスデューサの第1の電極を、固定バイアス電位が与えられるノードに接続すべく、更に制御可能であり、
- 各列で、前記列のスイッチは、第3の構成では、前記列の超音波トランスデューサの第2の電極を、固定バイアス電位が与えられる前記ノードに接続すべく、更に制御可能である。
【0012】
実施形態によれば、
- 異なる行のスイッチは共通の制御端子を有しており、
- 異なる列のスイッチは共通の制御端子を有している。
【0013】
実施形態によれば、
- 異なる行のスイッチは異なる制御端子を有しており、
- 異なる列のスイッチは異なる制御端子を有している。
【0014】
実施形態によれば、前記超音波トランスデューサは、CMUTトランスデューサ又はPMUTトランスデューサである。
【0015】
実施形態によれば、前記スイッチは、前記超音波トランスデューサのアレイと共にモノリシックに一体化されている。
【0016】
実施形態によれば、各スイッチは、静電的に制御される第1のMEMS断続器及び第2のMEMS断続器を有している。
【0017】
実施形態によれば、
- 行毎に、前記行のスイッチの第1のMEMS断続器及び第2のMEMS断続器は、前記行の2つの端部に夫々配置されており、
- 列毎に、前記列のスイッチの第1のMEMS断続器及び第2のMEMS断続器は、前記列の2つの端部に夫々配置されている。
【0018】
実施形態によれば、
- 行毎に、前記行のスイッチの第1のMEMS断続器及び第2のMEMS断続器は、前記行の同一の端部の側に配置されており、
- 列毎に、前記列のスイッチの第1のMEMS断続器及び第2のMEMS断続器は、前記列の同一の端部の側に配置されている。
【0019】
実施形態によれば、各スイッチは、静電的に制御される第3のMEMS断続器を更に有しており、
- 行毎に、前記行のスイッチの第3のMEMS断続器は、前記行の第1のMEMS断続器と同一の前記行の端部の側、又は前記行の前記第1のMEMS断続器と反対の前記行の端部の側に配置されており、
- 列毎に、前記列のスイッチの第3のMEMS断続器は、前記列の第1のMEMS断続器と同一の前記列の端部の側、又は前記列の前記第1のMEMS断続器と反対の前記列の端部の側に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
前述及び他の特徴及び利点は、添付図面を参照して本発明を限定するものではない実例として与えられる以下の特定の実施形態に詳細に記載されている。
【0021】
【
図1】実施形態に係るアレイ画像化デバイスの例を示す電気回路図である。
【
図2】
図1のアレイ画像化デバイスを制御する方法の例を示すタイミング図である。
【
図3】
図1のアレイ画像化デバイスのスイッチの実施形態の例を示す図である。
【
図4】
図1のアレイ画像化デバイスの実施形態の第1の例を概略的且つ部分的に示す図である。
【
図5】
図1のアレイ画像化デバイスの実施形態の第2の例を概略的且つ部分的に示す図である。
【
図6】
図1のアレイ画像化デバイスの実施形態の第3の例を概略的且つ部分的に示す図である。
【
図7】
図4のアレイ画像化デバイスを示す部分的な断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
同様の特徴が、様々な図面で同様の参照符号によって示されている。特に、様々な実施形態で共通の構造的特徴及び/又は機能的特徴は同一の参照符号を有する場合があり、同一の構造特性、寸法特性及び材料特性を有する場合がある。
【0023】
明瞭化のために、本明細書に記載されている実施形態の理解に有用なステップ及び要素のみが示されて詳細に記載されている。特に、記載された画像化デバイスの様々な可能な用途は詳述されておらず、記載された実施形態は超音波画像化デバイスの通常の用途と適合する。更に、制御回路によって超音波トランスデューサに与えられる電気励起信号の特性(周波数、形状、振幅など)は詳述されておらず、記載された実施形態は、対象とする用途、特に分析対象の身体の性質及び所望の取得情報のタイプに応じて選択されてもよい、超音波画像化システムで現在使用されている励起信号と適合する。同様に、分析対象の身体に関する有用な情報を取り出すために、超音波トランスデューサによって与えられて制御回路によって読まれる電気信号に対する様々な処理は詳述されておらず、記載された実施形態は、超音波画像化システムに現在使用されている処理と適合する。更に、超音波トランスデューサ及び記載された画像化デバイスを制御するための回路の形成は詳述されておらず、これらの要素の詳細な形成は、本明細書の指示に基づく当業者の技能の範囲内である。
【0024】
特に指定されていない場合、共に接続された2つの要素を参照するとき、これは、導体以外のいかなる中間要素も無しの直接接続を表し、共に連結された2つの要素を参照するとき、これは、これら2つの要素が接続され得るか、又は一若しくは複数の他の要素を介して連結され得ることを表す。
【0025】
以下の記載では、「前」、「後ろ」、「最上部」、「底部」、「左」、「右」などの絶対位置、若しくは「上方」、「下方」、「上側」、「下側」などの相対位置を限定する文言、又は「水平方向」、「垂直方向」などの方向を限定する文言を参照するとき、特に指定されていない場合、この文言は図面の向きを指し、実際、記載されたデバイスは異なって方向付けられてもよいと理解される。
【0026】
特に指定されていない場合、「約」、「略」、「実質的に」及び「程度」という表現は、該当する値の10%の範囲内、好ましくは5%の範囲内を表す。
【0027】
図1は、実施形態に係るアレイ画像化デバイス100 の例を示す電気回路図である。
【0028】
デバイス100 は、M行Li及びN列Ciのアレイに配置された複数の超音波トランスデューサを備えており、M及びNは2以上の整数であり、iは1~Mの範囲の整数であり、jは1~Nの範囲の整数である。
【0029】
各トランスデューサ101 は2つの電極E1, E2を有している。適切な励起電圧が電極E1と電極E2との間に印加されると、トランスデューサは超音波を放射する。トランスデューサが所与の波長領域内の超音波を受信すると、トランスデューサは、受信した超音波を表す電圧をトランスデューサの電極E1及び電極E2間に印加する。
【0030】
この例では、トランスデューサ101 は、CMUTタイプのトランスデューサ(容量性膜型超音波トランスデューサ)である。
【0031】
トランスデューサのアレイの各行Liでは、行内のトランスデューサ101 の夫々の電極E1が互いに接続されている。しかしながら、異なる行内のトランスデューサ101 の電極E1は互いに接続されていない。更に、トランスデューサのアレイの各列Cjでは、列内のトランスデューサ101 の夫々の電極E2が互いに接続されている。しかしながら、異なる列内のトランスデューサ101 の電極E2は互いに接続されていない。
【0032】
トランスデューサのアレイの行Li毎に、デバイス100 は、送信回路TX、受信回路RX及びスイッチSWを備えており、スイッチSWは、第1の構成(1) では行のトランスデューサの電極E1を行の送信回路TXの出力端子に接続して、第2の構成(2) では行のトランスデューサの電極E1を行の受信回路RXの入力端子に接続すべく制御可能である。
【0033】
更に、トランスデューサのアレイの列Cj毎に、デバイス100 は、送信回路TX、受信回路RX及びスイッチSWを備えており、スイッチSWは、第1の構成(1) では列のトランスデューサの電極E2を列の送信回路TXの出力端子に接続して、第2の構成(2) では列のトランスデューサの電極E2を列の受信回路RXの入力端子に接続すべく制御可能である。
【0034】
行Li毎に、行のスイッチSWは、第3の構成(3) では行のトランスデューサの電極E1を、固定バイアス電位GND が与えられるノード、例えば接地に接続すべく更に制御可能であってもよい。更に、列Ci毎に、列のスイッチSWは、第3の構成(3) では行のトランスデューサの電極E2をノードGND に接続すべく更に制御可能であってもよい。
【0035】
デバイス100 は、スイッチSW及び送信回路TXを制御して、受信回路RXから送信される信号を読み取るべく適合された制御回路CTRLを更に備えている。制御回路CTRLは、送信回路TX、受信回路RX及びスイッチSWと共に、トランスデューサ101 のアレイを制御するための回路を形成している。
【0036】
各送信回路TXは、送信回路TXの出力端子に連結、例えば接続されている出力端子、及び制御回路CTRLの出力端子に連結、例えば接続されている制御入力端子を有するパルス発生器を更に有している。各受信回路RXは、受信回路RXの入力端子に連結、例えば接続されている入力端子、及び制御回路CTRLの入力端子に連結、例えば接続されている出力端子を有する増幅器、好ましくは低雑音増幅器を有してもよい。
【0037】
超音波を送信及び/又は受信するために、CMUTタイプのトランスデューサに一般にバイアスをかける必要がある。このために、DCバイアス電圧が電極E1と電極E2との間に印加される一方、可変(つまり、非連続)励起電圧が電極E1及び電極E2の一方に印加されるか、又は可変応答電圧が電極E1及び電極E2の一方から読み取られる。
【0038】
既知の超音波画像化デバイスでは、バイアス電圧が、送信回路及び受信回路とは別の特定のバイアス回路によって印加され、デカップリングコンデンサが、バイアス回路を送信回路及び受信回路から隔てるために設けられている。しかしながら、バイアス回路及びデカップリングコンデンサを設けることにより、複雑さ、及びデバイスを制御するための回路のコストが増大する。更に、デカップリングコンデンサを設けることにより、デバイスの様々なトランスデューサ間に寄生結合が生じる場合がある。特に、デカップリングコンデンサを設けることにより、行及び列の動的スイッチングの可能性が大幅に制限され、ひいては、超音波の伝播軸に直交する2つの面を効率的にスキャンするアレイの能力が大幅に制限される。このため、実際には対象とする体積の再構築で不均一性が生じる。
【0039】
実施形態の態様によれば、
図1のデバイス100 では、超音波トランスデューサのバイアスが、制御回路の送信回路TXによって直接保証される。このため、トランスデューサ101 にバイアスをかけるための特定の回路と、バイアス回路を送信回路TX及び受信回路RXから隔てるためのデカップリングコンデンサとを除くことが可能になる。
【0040】
デバイス100 のトランスデューサ101 により超音波を送信する段階中、制御回路CTRLは、トランスデューサ101 の電極E1及び電極E2を、トランスデューサが属する行Liの送信回路TX及びトランスデューサ101 が属する列Cjの送信回路TXに夫々接続すべく、トランスデューサ101 の電極E1及び電極E2に接続されたスイッチSWを第1の構成(1) に制御する。その後、制御回路CTRLは、DCバイアス電圧をトランスデューサの電極E1に印加すべく、トランスデューサが属する行Liの送信回路TXを制御し、可変励起電圧、例えばAC電圧をトランスデューサの電極E2に印加すべく、トランスデューサが属する列Cjの送信回路TXを同時的に制御する。
【0041】
デバイス100 のトランスデューサ101 により超音波を受信する段階中、制御回路CTRLは、トランスデューサ101 の電極E1及び電極E2を、トランスデューサが属する行Liの送信回路TX及びトランスデューサ101 が属する列Cjの受信回路RXに夫々接続すべく、トランスデューサ101 の電極E1及び電極E2に接続されたスイッチSWを第1の構成(1) 及び第2の構成(2) に夫々制御する。その後、制御回路CTRLは、DCバイアス電圧をトランスデューサの電極E1に印加すべく、トランスデューサが属する行Liの送信回路TXを制御し、AC応答電圧をトランスデューサの電極E2から読み取るべく、トランスデューサが属する列Cjの受信回路RXを同時的に制御する。
【0042】
変形例として、DCバイアス電圧が電極E2に印加されてもよく、そのため、可変励起電圧が電極E1に印加されて、可変応答電圧が電極E1から読み取られてもよい。
【0043】
別の変形例では、DCバイアス電圧が、送信段階中に電極E1及び電極E2の一方に印加されてもよく、その後、受信段階中に他方の電極に印加されてもよい。例として、送信段階中、DCバイアス電圧が電極E1に印加されて、可変励起電圧が電極E2に印加され、受信段階中、DCバイアス電圧が電極E2に印加されて、可変応答電圧が電極E1から読み取られる。
【0044】
図2は、制御回路CTRLによって実行され得る、
図1のデバイス100 を制御する方法の例を概略的に示すタイミング図である。この例では、トランスデューサ101 のアレイの行L
i及び列C
jをより具体的に検討する。
図2は、列C
jのスイッチSWを制御するための信号S
Cj、行L
iのスイッチSWを制御するための信号S
Li、行L
iの送信回路TXによって印加される電圧O
LTXi、列C
jの送信回路TXによって印加される電圧O
CTXj 、列C
jの受信回路RXによって印加される電圧O
CRXj 、行L
iの受信回路RXによって印加される電圧O
LRXi、及び行L
iのトランスデューサの電極E1と列C
jのトランスデューサの電極E2との間の電圧V
LCの時間変化を示す。簡略化のために、信号S
Cj及び信号S
Liは
図2に詳細に示されていないことに留意すべきである。より具体的には、信号S
Cj及び信号S
Li毎に、スイッチSWを第1の構成(送信回路TXへの接続)に制御する状態に相当する状態「TX」、及びスイッチSWを第2の構成(受信回路RXへの接続)に制御する状態に相当する状態「RX」のみが示されている。更に、簡略化のために、受信段階中に受信回路RXによって送信される応答信号O
CRXj, O
LRXi は
図2に詳細に示されていない。より具体的には、信号O
CRXj 及び信号O
LRXi毎に、超音波の受信段階中の受信回路RXによる可変信号の送信に対応する状態「ACQ 」が簡単に示されている。
【0045】
時点t0から時点t0の後の時点t1まで、列CjのスイッチSW及び行LiのスイッチSWの両方が第1の構成(TX)に制御されて、行Liのトランスデューサの電極E1を行Liの送信回路TXに接続して、列Cjのトランスデューサの電極E2を列Cjの送信回路TXに接続する。行Liの送信回路TXは、実質的にゼロのDC電圧OLTXiを行Liのトランスデューサの電極E1に印加すべく制御され、列Cjの送信回路TXは、例えば-10ボルト程度の負のDCバイアス電圧OCTXj-VPOLを列Cjのトランスデューサの電極E2に印加すべく制御される。そのため、電圧VLCは+VPOLの正のDC電圧である。受信回路RXを電極E1, E2に接続しない場合、列Cjの受信回路RX及び行Liの受信回路によって夫々印加される電圧OCRXj及び電圧OLRXiは実質的にゼロの値を有する。
【0046】
時点t1から時点t1の後の時点t2まで、制御回路CTRLは、可変励起信号、例えば一連の正及び/又は負の電圧パルスを行Liのトランスデューサ101 の電極E1に与えるべく、行Liの送信回路TXを制御する。図示されている例では、励起信号は、交互に生じる値VPOLの正の方形電圧パルス及び値-VPOLの負の方形電圧パルスに相当する。従って、電圧VLCは、0ボルトと2×VPOLボルトとの間で交互に生じる方形パルス電圧である。
【0047】
時点t1及び時点t2は、行Li及び列Cjに共通のトランスデューサ101 によって超音波を送信する段階の開始及び終了を夫々示す。実際、DCバイアス電圧-VPOLを、デバイスの他の列のトランスデューサ101 の電極E2に更に印加してもよい。この場合、時点t1から時点t2の範囲の送信段階中、行Liの全てのトランスデューサ101 によって超音波が送信される。
【0048】
時点t2から時点t2の後の時点t3まで、列CjのスイッチSWは、第2の構成(RX)に制御されて、列Cjのトランスデューサの電極E2を列の受信回路RXに接続する。行LiのスイッチSWは第1の構成(TX)で維持される。行Liの送信回路TXは、正のDC電圧OLTXi +VPOLを行Liのトランスデューサの電極E1に印加すべく制御される。トランスデューサによる戻り超音波の受信に起因する振動を無視すると(実際、音電気変換から生じる戻り信号の振幅は励起信号の振幅より少なくとも4桁小さく、つまり80dB小さい)、電圧VLCは+VPOLの正のDC電圧である。
【0049】
時点t2及び時点t3は、行Li及び列Cjに共通のトランスデューサ101 によって戻り超音波を受信する段階の開始及び終了を夫々示す。受信段階中、列Cjの受信回路RXによって印加される電圧OCRXjは、行Li及び列Cjに共通のトランスデューサ101 によって受信する超音波を表す。電圧OCRXjは、制御回路CTRLによって読み取られてもよい。実際、受信段階中、DCバイアス電圧VPOLを、デバイスの他の行のトランスデューサ101 の電極E1に更に印加してもよい。この場合、電圧OCRXjは、列Cjの全てのトランスデューサ101 によって受信される戻り超音波を表す。
【0050】
図2は、時点t3後の、デバイス100 による超音波の送信段階及び受信段階の実施の第2の例を更に示す。この第2の例では、DCバイアス電圧が印加される電極及び励起信号が与えられて戻り信号が読み出される電極が、前述した例に対して反転されている。
【0051】
時点t3から時点t3の後の時点t4まで、列CjのスイッチSW及び行LiのスイッチSWの両方が第1の構成(TX)に制御される。列Cjの送信回路TXは、実質的にゼロのDC電圧OCTXjを列Cjのトランスデューサの電極E2に印加すべく制御され、行Liの送信回路TXは、正のDCバイアス電圧OLTXi +VPOLを行Liのトランスデューサの電極E1に印加すべく制御される。そのため、電圧VLCは+VPOLの正のDC電圧である。
【0052】
時点t4から時点t4の後の時点t5まで、制御回路CTRLは、可変励起信号を列Cjのトランスデューサ101 の電極E2に与えるべく、列Cjの送信回路TXを制御する。
【0053】
時点t4及び時点t5は、行Li及び列Cjに共通のトランスデューサ101 によって超音波を送信する段階の開始及び終了を夫々示す。実際、DCバイアス電圧+VPOLを、デバイスの他の行のトランスデューサ101 の電極E1に更に印加してもよい。この場合、時点t4から時点t5に続く送信段階中、列Cjの全てのトランスデューサ101 によって超音波が送信される。
【0054】
時点t5から時点t5の後の時点t6まで、行LiのスイッチSWは、第2の構成(RX)に制御されて、行Liのトランスデューサの電極E1を行の受信回路RXに接続する。列CjのスイッチSWは第1の構成(TX)で維持される。列Cjの送信回路TXは、負のDC電圧OCTXj-VPOLを列Cjのトランスデューサの電極E2に印加すべく制御される。戻り超音波の受信に起因する振動を無視すると、電圧VLCは+VPOLの正のDC電圧である。
【0055】
時点t5及び時点t6は、行Li及び列Cjに共通のトランスデューサ101 によって戻り超音波を受信する段階の開始及び終了を夫々示す。受信段階中、行Liの受信回路RXによって与えられる電圧OLRXi は、行Li及び列Cjに共通のトランスデューサ101 によって受信する超音波を表す。電圧OLRXiは、制御回路CTRLによって読み取られ得る。実際、受信段階中、DCバイアス電圧-VPOLを、デバイスの他の列のトランスデューサ101 の電極E2に更に印加してもよい。この場合、電圧OLRXiは、列Liの全てのトランスデューサ101 によって受信される戻り超音波を表す。
【0056】
図2の例では、時点t6から、本方法は、時点t0から実行された送信-受信段階と同様の新たな送信-受信段階で続行する。
【0057】
図1の例では、スイッチSWの第3の構成(3) により、トランスデューサ101 のアレイをトランスデューサの線形アレイとして制御して二次元画像を取得することが更にできる。このために、アレイの全ての行L
iのスイッチSWを、例えば第3の構成に制御して、同一のDCバイアス電位GND を全てのトランスデューサの電極E1に与えてもよい。そのため、アレイの各列C
jは、送信モード(列のスイッチSWが第1の構成である)及び受信モード(列のスイッチが第2の構成である)で交互に制御される1つのトランスデューサとして動作する。ノードGND は、必ずしも接地に接続される必要はないが、トランスデューサのバイアスに適合された固定バイアス電位を与えるべく端子に連結されてもよいことに留意すべきである。
【0058】
同様に、アレイの全ての列CjのスイッチSWは第3の構成に制御されてもよい。そのため、アレイの各行は、送信モード及び受信モードで交互に制御される1つのトランスデューサとして動作する。
【0059】
変形例として、スイッチSWの第3の構成(3) をアレイモード(三次元画像の取得)で使用して、送信回路TXによって印加される電圧の高値及び低値によって定められるレベルとは異なるバイアス電圧をトランスデューサに印加してもよい。
【0060】
図1の例では、各スイッチSWは、例えば第1、第2及び第3の断続器を有しており、第1、第2及び第3の断続器は、対応する行の電極E1又は対応する列の電極E2に接続された第1の導電ノードと、対応する行又は列の送信回路TXの出力端子、対応する行又は列の受信回路RXの入力端子、及びノードGND に夫々接続された第2の導電ノードとを夫々有している。
【0061】
変形例として、スイッチSWの第3の構成を省略してもよく、これにより、スイッチの形成が簡略化され得る。
【0062】
スイッチSWの断続器は、トランジスタ、例えばMOS トランジスタによって形成されてもよい。この場合、スイッチは、トランスデューサ101 が内部及び最上部に形成されている基板とは異なる半導体チップに一体化されている。例として、送信回路TX、受信回路RX、制御回路CTRL及びスイッチSWは同一の半導体チップに一体化されている。
【0063】
好ましい実施形態では、スイッチSWの断続器は、MEMS(微小電気機械システム)技術で形成されている。そのため、スイッチSWは、例えばXiao Zhang等著の「A Fast-Switching (1.35-μs) Low-Control-Voltage (2.5-V) MEMS T/R Switch Monolithically Integrated With a Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducer」(Journal of Microelectromechanical Systems PP(99):1-11 January 2018)という題名の論文に記載されているように、超音波トランスデューサのアレイと、好ましくはモノリシックに一体化されている。
【0064】
図3は、このような断続器の実施形態の例を概略的に示す。
図3は、断続器のオフ(遮断)状態及びオン(導電)状態の2つの側面断面図(A), (B)、並びに断続器の平面断面図(C) 及び底面断面図(D) をより具体的に示す。図(A) 及び図(B) は、図(C) 及び図(D) の面P1に沿った断面図であり、図(C) 及び図(D) は、図(A) の面P2に沿った断面図である。
【0065】
図3の断続器は、剛性の支持層305 に形成されたキャビティ303 の上側に懸架された可撓性膜301 を有している。例えば酸化シリコンで形成された支持層305 は、例えばガラスで形成された支持基板307 の上面に配置されている。図示されている例では、キャビティ303 は貫通しており、つまり、キャビティの底部は基板307 の上面によって形成されている。
【0066】
図3の断続器は、キャビティ303 の底部と接して配置されている2つの別個の金属被膜309, 311を有しており、2つの金属被膜は断続器の2つの主導電端子を形成している。
図3の断続器は、膜301 の下面と接して配置されている連結用金属被膜313 を更に有しており、膜301 が
図3の図(A) に対応する高位置と称される第1の位置にあるとき、金属被膜313 が金属被膜309, 311と接触せず、膜301 が
図3の図(B) に対応する低位置と称される第2の位置にあるとき、金属被膜313 が金属被膜309, 311を互いに接続するように、金属被膜313 は配置されている。従って、膜301 の高位置では、断続器はオフ状態であり、膜301 の低位置では、断続器はオン状態である。
【0067】
断続器は、キャビティ303 の底部と接して配置されて金属被膜309, 311から電気的に絶縁されている第1の制御電極315 と、膜301 の上面と接して配置されて連結用金属被膜313 から電気的に絶縁されている第2の制御電極317 とを有している。
【0068】
制御電極315 と制御電極317 との間に適切な制御電圧を印加すると、膜が静電効果により低位置に配置され、その結果、断続器がオンになる。制御電極315 と制御電極317 との間に電圧を印加しない場合、膜は高位置に戻り、断続器はオフになる。
【0069】
可撓性膜301 はシリコン及び/又は酸化シリコンで形成されてもよい。膜301 は、例えば酸化シリコンで形成された少なくとも1つの絶縁層を有しており、一方では上側の制御電極317 と金属被膜313 との電気絶縁を保証し、他方では上側の制御電極317 と下側の制御電極315 との電気絶縁を保証することが好ましい。例として、可撓性膜301 は、シリコン層、及びシリコン層の下面を覆う、例えば酸化シリコンで形成された絶縁層の積層体(図面に詳細に示されていない)を有している。
【0070】
更に、金属被膜313 を介して金属被膜309 と金属被膜311 との間で送信される信号のいかなる妨害も避けるために、上側の制御電極317 は、金属被膜309, 311, 313 に対向する箇所で遮断されていることが好ましい。
【0071】
図4は、
図1のデバイス100 の超音波トランスデューサ101 のアレイ及びスイッチSWを(
図4には示されていない)同一の支持基板307 上にモノリシック形態で共に一体化した例を概略的に示す平面図である。例として、送信回路TX、受信回路RX及び制御回路CTRL(
図4には示されていない)は、トランスデューサ101 及びスイッチSWを一体化しているモノリシックチップとは異なる一又は複数の半導体チップに一体化されている。
【0072】
この例では、簡略化のために、3×3の超音波トランスデューサ101 のアレイが検討されている。
【0073】
各トランスデューサは、トランスデューサ101 には導電性の金属被膜309, 311及び連結用金属被膜313 が存在しない点を除いて、
図3のスイッチの構造と同様の構造を有している。各トランスデューサ101 では、下側の制御電極315 及び上側の制御電極317 は
図1の電極E2及び電極E1に夫々対応する。
【0074】
図4の例では、トランスデューサのアレイの各行L
iで、電極E1に対応する行内のトランスデューサ101 の上側の制御電極は互いに接続されて、行の実質的に長さ全体に沿って延びている連続的な金属細片401 を形成している。更に、トランスデューサのアレイの各列C
jでは、電極E2に対応する行内のトランスデューサ101 の下側の制御電極は互いに接続されて、列の実質的に長さ全体に沿って延びている連続的な金属細片402 を形成している。この例では、金属細片401 は互いに平行であり、金属細片402 は互いに平行であり、金属細片401 に垂直である。
【0075】
図4の例では、トランスデューサのアレイの行L
i毎に、デバイスは、行の金属細片401 の第1の端部に配置された第1の断続器K1、及び行の金属細片401 の反対側の端部に配置された第2の断続器K2を備えている。断続器K1, K2は、
図3に関連して記載されたタイプのMEMS断続器である。断続器K1, K2の各々は、金属細片401 に接続されている導電性の金属被膜309 を有している。断続器K1の導電性の金属被膜311 は、行の送信回路TXの出力端子に接続されるように構成されている金属パッドTXに接続されている。断続器K2の導電性の金属被膜311 は、行の受信回路RXの入力端子に接続されるように構成されている金属パッドRXに接続されている。
【0076】
図4の例では、デバイスは、トランスデューサのアレイの列C
j毎に、列の金属細片402 の第1の端部に配置された第1の断続器K1、及び列の金属細片402 の反対側の端部に配置された第2の断続器K2を更に備えている。断続器K1, K2の各々は、金属細片402 に接続されている導電性の金属被膜309 を有している。断続器K1の導電性の金属被膜311 は、列の送信回路TXの出力端子に接続されるように構成されている金属パッドTXに接続されている。断続器K2の導電性の金属被膜311 は、列の受信回路RXの入力端子に接続されるように構成されている金属パッドRXに接続されている。
【0077】
行Li毎に、行の断続器K1, K2は行のスイッチSWを形成している。同様に、列Cj毎に、列の断続器K1, K2は列のスイッチSWを形成している。この例では、スイッチSWは、2つの位置を有するスイッチであり、第1の構成(1) 及び第2の構成(2) のみに制御可能である。
【0078】
図4の例では、アレイの異なる行L
iの断続器K1は全て、アレイの同一の縁部、図示されている例では左側縁部の側に配置されており、アレイの異なる行L
iの断続器K2は全て、アレイの対向する縁部、図示されている例では右側縁部の側に配置されている。更に、この例では、アレイの異なる列C
jの断続器K1は全て、アレイの同一の縁部、図示されている例では下側縁部の側に配置されており、アレイの異なる列C
jの断続器K2は全て、アレイの対向する縁部、図示されている例では上側縁部の側に配置されている。
【0079】
図4の例では、
- アレイの異なる行L
iの断続器K1の制御電極315 は全て同一の金属パッドPLK1A に接続されており、アレイの異なる行L
iの断続器K1の制御電極317 は全て同一の金属パッドPLK1B に接続されており、
- アレイの異なる行L
iの断続器K2の制御電極315 は全て同一の金属パッドPLK2A に接続されており、アレイの異なる行L
iの断続器K2の制御電極317 は全て同一の金属パッドPLK2B に接続されており、
- アレイの異なる列C
jの断続器K1の制御電極315 は全て同一の金属パッドPCK1A に接続されており、アレイの異なる列C
jの断続器K1の制御電極317 は全て同一の金属パッドPCK1B に接続されており、
- アレイの異なる列C
jの断続器K2の制御電極315 は全て同一の金属パッドPCK2A に接続されており、アレイの異なる列C
jの断続器K2の制御電極317 は全て同一の金属パッドPCK2B に接続されている。
【0080】
金属パッドPLK1A, PLK1B, PLK2A, PLK2B, PCK1A, PCK1B, PCK2A, PCK2Bは、デバイスの制御回路CTRLに接続されるように構成されている。
【0081】
この例では、異なる行Liの断続器K1は全て、パッドPLK1A とパッドPLK1B との間に適切な制御電圧を印加することによって同時的に制御される。更に、異なる行Liの断続器K2は全て、パッドPLK2A とパッドPLK2B との間に適切な制御電圧を印加することによって同時的に制御される。更に、異なる列Ciの断続器K1は全て、パッドPCK1A とパッドPCK1B との間に適切な制御電圧を印加することによって同時的に制御される。更に、異なる列Cjの断続器K2は全て、パッドPCK2A とパッドPCK2B との間に適切な制御電圧を印加することによって同時的に制御される。これにより、スイッチSWの制御に必要な接続パッドの数を制限して、ひいてはデバイスの全体的な嵩及びコストを制限することができる。
【0082】
【0083】
図5の変形例では、デバイスの断続器K1及び断続器K2毎に2つの特定の金属導電パッドA, Bが設けられており、パッドA 及びパッドB は、断続器の下側の制御電極315 及び上側の制御電極317 に夫々接続されている。これにより、断続器K1と断続器K2とを個々に制御することが可能である。
【0084】
簡略化のために、1つの断続器K1及びこの断続器に接続されている金属細片401 の一部のみが
図5に示されている。
【0085】
図6は、
図4のデバイスの別の代替的な実施形態を示す。
図6の例では、デバイスの行L
i毎に、行の断続器K1及び断続器K2は行L
iの同一の端部の側に配置されている。同様に、デバイスの列C
j毎に、列の断続器K1及び断続器K2は列の同一の端部の側に配置されてもよい。
【0086】
図6の例及び
図5の例では、デバイスの断続器K1及び断続器K2毎に2つの特定の金属導電パッドA, Bが設けられている。変形例として、異なる行の断続器K1, K2の夫々の制御電極、及び異なる列の断続器K1, K2の夫々の制御電極は、デバイスの接続パッドの総数を減らすために、
図4に関連して記載された構成と同様に相互に接続されてもよい。
【0087】
簡略化のために、1つの断続器K1、1つの断続器K2及びこれらの断続器に接続されている金属細片401 の一部のみが
図6に示されている。
【0088】
スイッチSWが3つの断続器を夫々有する場合、3つの断続器は、対応する金属細片401 又は金属細片402 の同一の端部の側に配置されてもよい。変形例として、断続器の内の2つは、対応する金属細片401 又は金属細片402 の同一の端部の側に配置されてもよく、第3のスイッチは、金属細片の反対側の端部の側に配置されてもよい。
図5の例と同様に、断続器毎に2つの特定の金属導電パッドA, Bが設けられてもよい。変形例として、異なる行の断続器を制御するための夫々の電極、及び異なる列の断続器を制御するための夫々の電極は、
図4に関連して記載された構成と同様に相互に接続されてもよい。
【0089】
図7は、
図4のデバイスの実施形態の例を概略的且つ部分的に示す。
図7は、より具体的にはデバイスの金属細片402 の方向の長手断面を示す図(A) 、及びデバイスの金属細片401 の方向の長手断面を示す図(B) を有している。簡略化のために、各図では、2つのトランスデューサ101 及び対応する金属細片401 又は金属細片402 の端部に配置された1つの断続器K1のみが示されている。
【0090】
図7に示されているように、トランスデューサ101 及び断続器は同一の支持基板307 上に形成されている。金属細片402 、断続器の導電電極309, 311、及び断続器の下側の制御電極315 (
図7には示されていない)は、基板307 の上面を覆う同一の第1の金属被膜レベルに形成されている。支持層305 は、第1の金属被膜レベルの上側に形成されている。膜301 は支持層305 の上側に配置されている。金属細片401 及び断続器の上側の制御電極317 は、膜301 の上側に配置された同一の金属被膜レベルに形成されている。各金属細片401 は、膜層301 及び支持層305 を横切る導電ビア701 を介して対応する行のスイッチSWの断続器の導電端子309 に接続されている。(
図7に示されていない)接続パッドRX, TXは、金属細片401 と同一の金属被膜レベルに形成されてもよい。
【0091】
図7に示されている例では、各トランスデューサ101 では、膜301 が上側で懸架されているキャビティ303 は、複数の基本キャビティ、例えば支持層305 の材料で形成された壁によって2つずつ隔てられた3×3の基本キャビティのアレイに分割されていることに注目すべきである。しかしながら、記載された実施形態は、この特定の場合に限定されない。
【0092】
様々な実施形態及び変形例が記載されている。当業者は、これらの様々な実施形態及び変形例のある特徴を組み合わせることができると理解し、他の変形例が当業者に想起される。特に、超音波トランスデューサ101 がCMUTトランスデューサである実施形態の例のみが記載されているが、
図1及び
図2に関連して記載されている実施形態は、超音波の送信及び/又は受信の際にDC電圧でバイアスをかける必要があるあらゆる他のタイプのトランスデューサ、例えばPMUTタイプのトランスデューサ(圧電微細加工超音波トランスデューサ)に適用されてもよい。
【0093】
本特許出願は、参照によって本明細書に組み込まれる仏国特許出願第19/06515 号明細書の優先権を主張している。