(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】充填レベルをチャンバ内で制御するための方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
C12M 1/42 20060101AFI20240606BHJP
G01F 23/24 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
C12M1/42
G01F23/24 N
(21)【出願番号】P 2021573400
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2020064799
(87)【国際公開番号】W WO2020249401
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-02-08
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503147734
【氏名又は名称】ロンザ ケルン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ハームズマイヤー, スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】グライスナー, ティモ
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-051182(JP,A)
【文献】特開2007-045117(JP,A)
【文献】特表2003-502048(JP,A)
【文献】特表2017-514474(JP,A)
【文献】特表2014-527614(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0244593(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の懸濁液の充填レベルを、電界を前記懸濁液に印加するためのデバイスの少なくとも1つのチャンバ内で制御するための方法であって、前記デバイスは、少なくとも第1の電極及び第2の電極と、前記チャンバの一方の端部に配置された少なくとも1つの入口ポートと、前記チャンバの反対側の端部に配置された少なくとも1つの出口ポートと、を具備し、前記第1の電極は、前記入口ポートで前記チャンバ内に配置され、前記第2の電極は、前記出口ポートで前記チャンバ内に配置され、前記チャンバは、少なくとも1つの接地電極をさらに具備し、前記方法は、
a)前記懸濁液が、前記入口ポートを通過して、前記チャンバ内に供給される、充填処置を開始すること、
b)複数の時点で、前記充填処置の間、前記第2の電極と前記接地電極との間の前記チャンバ内の電気抵抗を測定すること、及び
c)前記充填処置を終了することを含む終了ルーチンを開始することであって、前記終了ルーチンが、前記第2の電極と前記接地電極との間の少なくとも1つの電気抵抗の変化により、開始され
、
前記充填処置は、終了条件が満たされると終了され、前記終了条件は、
-前記電気抵抗の変化の第1の勾配が、第1の所定のしきい値を超過すること、及び
-前記電気抵抗の変化の第2の勾配が、第2の所定のしきい値に到達し、前記第2のしきい値が、前記第1のしきい値により表された前記勾配よりも低い勾配を表すこと、
を含む、開始すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記終了ルーチンは、前記電気抵抗が所定値に達した場合、開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記終了条件は、前記
電気抵抗の変化の第3の勾配が、前記第2の勾配後に決定され、前記第2のしきい値に等しい又はそれ以下にとどまることをさらに含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記終了ルーチンは、前記終了条件が満たされると判断された後に、延期された終了を含み、前記充填処置は、少なくとも1つの事前設定されたパラメータに基づいて、最終終了前に継続される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記事前設定されたパラメータは、蠕動ポンプにより実行される複数のステップを含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップの数は、式N_target=(N_p+N_sts)/2+Pにより計算され、N_targetは、前記充填処置を完了させるのに必要なステップの計算された数、N_pは、前回の充填処置中に実行されたステップの数、N_stsは、現在の標準検出目標ステップの数、Pは、ステップの経験的に決定された数である、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップの数は、式N_target=((N_now+S-R)+N_p)/2+P-Nにより計算され、N_targetは、前記充填処置を完了させるのに必要なステップの計算された数、N_nowは、ステップの現在の数、Sは、ステップの事前設定された数、Rは、電圧パルスのエネルギーと相関するステップの事前設定された数、N_pは
、前回の充填処置中に実行されたステップの数、Pは、ステップの経験的に決定された数、Nは、20を乗じた充填処置の数である、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
初期の送達処置は、前記充填処置が開始される前に開始され、前記送達処置は、細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の前記懸濁液を、前記入口ポートの上流の混合点で基質又はプローブと混合すること、及び抵抗降下が前記第1の電極で検出されるまで、混合液又は前記懸濁液を、前記入口ポートを通過して前記チャンバ内に供給することを含み、前記電気抵抗が、複数の時点で前記初期の送達処置中に、前記第1の電極と接地電極との間の前記チャンバ内で測定される、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抵抗降下は、5~15オームの範
囲の前記電気抵抗の減少を含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記初期の送達処置は、前記抵抗降下が検出される場合、前記懸濁液を前記チャンバ内に前記供給することを停止すること、及びその後、前記充填処置が開始される前に、前記懸濁液が前記基質又はプローブと混合される、前記混合点に再度前記懸濁液を後退させること、をさらに含む、請求項
8又は
9に記載の方法。
【請求項11】
前記初期の送達処置は、第1の充填処置が開始される前に、一度だけ実行される、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記充填処置の終了後、少なくとも1つの電圧パルスを、少なくとも1つの電極を介して供給することで、前記チャンバ内の前記懸濁液に前記電界が印加される及び/又は前記チャンバに前記懸濁液を充填し、次に、少なくとも1つの電圧パルスを供給することは、所定のサイクル数に対して繰り返される、請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのチャンバ内の細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の懸濁液に電界を印加するためのデバイス(1)であって、少なくとも第1の電極(20)及び第2の電極(21)と、前記チャンバ(6)の一方の端部(12)に配置された少なくとも1つの入口ポート(10、11)と、前記チャンバ(6)の反対側の端部(9)に配置された少なくとも1つの出口ポート(7、8)と、を具備し、前記第1の電極(20)は、前記入口ポート(10、11)での前記チャンバ(6)内に配置され、前記第2の電極(21)は、前記出口ポート(7、8)での前記チャンバ(6)内に配置され、前記チャンバ(6)は、少なくとも1つの接地電極(5)をさらに具備し、少なくとも前記第2の電極(21)は、前記第2の電極(21)と前記接地電極(5)との間の前記チャンバ(6)内の電気抵抗を測定するための第1のセンサ電極であることを特徴とする、デバイス(1)。
【請求項14】
前記第1の電極(20)は、前記第1の電極(20)と前記接地電極(5)との間の前記チャンバ(6)内の電気抵抗を測定するための第2のセンサ電極である、請求項
13に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の懸濁液の充填レベルを、電界を該懸濁液に印加するためのデバイスの少なくとも1つのチャンバ内で制御するための方法に関する。本発明は、さらに、少なくとも1つのチャンバ内の細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の懸濁液に電界を印加するためのデバイスであって、少なくとも第1の電極及び第2の電極と、チャンバの一方の端部に配置された少なくとも1つの入口ポートと、チャンバの反対側の端部に配置された少なくとも1つの出口ポートと、を具備し、第1の電極は、入口ポートでチャンバ内に配置され、第2の電極は、出口ポートでチャンバ内に配置され、チャンバは、少なくとも1つの接地電極をさらに具備する、デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
DNA、RNA又はタンパク質等の生物活性分子を、生細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞に導入することは、これらの分子の生物学的機能を検証する役割を果たし得、さらに、遺伝子治療等において、これらの分子を治療で首尾よく使用する必須の前提条件となる。外部分子を細胞内に導入する好ましい方法は、電気穿孔と称され、化学的方法と異なり、標的細胞の構造及び機能の所望でない変化を制限する。電気穿孔において、外部分子は、短い電流フロー、すなわち、細胞膜を外部分子に対して一時的に透過可能にする放電キャパシタのパルスにより、水溶液、好ましくは、細胞又は細胞培養液に特に適した緩衝液から細胞内に導入される。細胞膜に形成される一時的な「孔」により、生物活性分子は、これらの分子が既に自身の機能を果たしているか、又は検査対象の任意の治療作用を行使する場合がある細胞質にまずは到達可能であって、その後、特定の条件下で、例えば、遺伝子治療の用途において必要とされるように、細胞核にも到達可能である。強力な電界、すなわち、高電流密度を有する短いパルスの短い印加に起因して、細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞はまた、融合され得る。このいわゆる電気融合において、細胞は、例えば、最初に、不均一な交番電界により、膜と密に接触する。電界パルスのその後の印加によって、膜部間に相互作用が生じて、最終的には融合が生じる。電気穿孔に用いられるデバイスに相当するデバイスを、電気融合にも使用することができる。
【0003】
細胞の電気穿孔中に、特定の量の砕片と泡沫は、反応チャンバ内部に生成される。処理済の細胞懸濁液が、例えば、空気に押し込む又は重力によりチャンバを空にすることで、反応チャンバから取り除かれる場合、この砕片と泡沫は、チャンバ内部にとどまり、それにより、別の電気穿孔サイクルのためにこのチャンバ内に充填される新たな細胞懸濁液の充填容量が低減される。すなわち、チャンバの容量が変化し得るため、次の充填に要する容量はほぼ予測不能になる。このような処理がされない可能性がある貴重な材料を備えたチャンバの過剰充填を回避するために、それに応じて、チャンバ内に充填された量を動的に制限することは重要である。しかしながら、過剰充填を回避するため予防的に少ない容量で充填すると、生じる充填は不十分で、気液界面でアーク放電が容易に発生する。アーク放電は、電気的インターフェースやコンポーネントを損傷させる上に、反応チャンバ内部の生体物質を害し得る、熱及び高電流を発生する。また、システムのエンドユーザは、配管張力が不確定な状態で配管を挿入するため、内径が不明である。蠕動ポンプを使用すると、これにより、ポンプ回転毎の処理済容量が再度不確定になる。したがって、良好な再生電気穿孔の特性のためには、充填を正確に実現するものとする。
【0004】
EP3138920B1は、細胞の電気穿孔のための方法と電気穿孔用の使い捨てデバイスを開示する。該デバイスは、細胞懸濁液と、細胞内に移動される化合物を含む流体と、を受けるための流体区画を具備する。該デバイスは、第1の電極及び第2の電極を、対応する接地電極と同様に、さらに具備する。流体は、流体区画に所定の充填レベルまで導入され、充填レベルは、第1の電極及び第2の電極との間の静電容量又は接地電極間の電気抵抗を測定することで、決定される。充填は、例えば、電極間の最大容量に到達されるまで、継続される。電気穿孔後に、処理済細胞懸濁液は、流体区画から除去される。流体区画の充填レベルを制御することで、該デバイスは、半連続モードで操作可能である。さらに、細胞懸濁液をより高容量で処理するためには、充填、電気穿孔及び除去のプロセスは、繰り返し可能である。
【0005】
しかしながら、複数の電気穿孔サイクルの実行が求められれば、関連技術のデバイス及び方法の変わらぬ不具合として、電気穿孔チャンバの正確な充填は、すべてのサイクルに対し保証され得ない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の懸濁液の充填レベルを、電界を該懸濁液に印加するためのデバイスの少なくとも1つのチャンバ内で制御するための方法及びデバイスであって、それにより、複数の電気穿孔サイクルが実行されても、チャンバの過剰充填が回避可能で、チャンバの容量が予測不能な環境ですら、正確な充填が実現可能で、すべてのサイクルに対する再生電気穿孔の特性を確実に良好にする、方法及びデバイスを提供することである。
【0007】
本目的は、細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の懸濁液の充填レベルを、電界を該懸濁液に印加するためのデバイスの少なくとも1つのチャンバ内で制御するための方法により達成され、該デバイスは、少なくとも第1の電極及び第2の電極と、チャンバの一方の端部に配置された少なくとも1つの入口ポートと、チャンバの反対側の端部に配置された少なくとも1つの出口ポートと、を具備し、第1の電極は、入口ポートでチャンバ内に配置され、第2の電極は、出口ポートでチャンバ内に配置され、チャンバは、少なくとも1つの接地(対)電極をさらに具備し、本方法は、
a)懸濁液が、入口ポートを通過して、チャンバ内に供給される、充填処置を開始すること、
b)複数の時点で、充填処置の間、第2の電極と接地電極との間のチャンバ内の電気抵抗を測定すること、及び
c)充填処置を終了することを含む終了ルーチンを開始することであって、終了ルーチンが、第2の電極と接地電極との間の少なくとも1つの電気抵抗の変化により、開始される、開始すること、
を含む。
【0008】
すなわち、本発明によれば、チャンバ内に充填された懸濁液の量は、出口ポートで少なくとも1つの電気抵抗の変化を決定することで、複数の電気穿孔サイクルの過程で動的に制限される。この目的のために、第2の電極と接地電極との間、例えば、出口ポートの隣に配置された電極とその対電極との間の抵抗は、複数の時点で各サイクルの充填処置中に測定される。抵抗の変化が一旦、検出されると、終了ルーチンは、開始され、オプションとして、延期された終了ルーチン後に、充填処置は、最終的に終了される。結果として、チャンバの過剰充填は、チャンバの充填容量が、複数の電気穿孔サイクルの過程で連続的に低減されても、回避可能である。このため、再生電気穿孔の強化された特性が保証可能なように、各電気穿孔サイクル中に、チャンバの充填を確実に正確に行う。貴重で高価な生体物質の浪費が有効に回避可能であることは、本発明に係る方法の別の利点である。
【0009】
本発明の有利な実施形態において、終了ルーチンは、電気抵抗が所定値に達した場合、開始される。砕片、残渣及び気泡が、終了ルーチンのアルゴリズムのトリガをあまりにも早く生じる場合、経験的に決定されたしきい値は、残渣と実際のサンプル効果を区別するために、導入可能である。本実施形態において、終了ルーチンは、所定の抵抗値が到達される及び/又は抵抗がこの値以下に降下した後にのみ、開始される。例えば、抵抗が一旦、特定の限界(所定値)以下に降下すると、デバイスの制御システムは、終了ルーチンを開始させる。
【0010】
本発明のさらなる有利な実施形態において、充填処置は、終了条件が満たされると終了され、該終了条件は、
-抵抗の変化の第1の勾配が、第1の所定のしきい値を超過すること、及び
-抵抗の変化の第2の勾配が、第2の所定のしきい値に到達し、第2のしきい値が、第1のしきい値により表された勾配よりも低い勾配を表すこと
を含む。
【0011】
本実施形態によると、チャンバ内に充填された懸濁液の量は、電気抵抗の変化の範囲を決定することで、動的に制限される。すなわち、抵抗変化の勾配が減少すると、終了ルーチンは、開始され、オプションとして、延期された終了ルーチン後に、充填処置は、最終的に終了される。例えば、抵抗変化の勾配が、特定の事前設定されたしきい値(第1のしきい値)を超過すると一旦判断されると、デバイスの制御システムは、別の特定の事前設定されたしきい値(第2のしきい値)に到達するまで、勾配が再度減少するのを待つ。
【0012】
本発明の別の有利な実施形態において、終了条件は、抵抗の変化の第3の勾配が、第2の勾配後に決定され、第2のしきい値に等しい又はそれ以下にとどまることをさらに含む。したがって、充填処置は、第2のしきい値が到達され又は少なくとも2回の連続測定に対して下回る場合のみ終了され、測定変動により生じる不正確さを低減する。
【0013】
本発明のさらなる有利な実施形態において、終了ルーチンは、終了条件が満たされると判断された後に、延期された終了を含み、充填処置は、少なくとも1つの事前設定されたパラメータに基づいて、最終終了前に継続される。この測定により、抵抗と充填レベルの相関関係における経験的に決定された変動は、有効に補正可能である。すなわち、充填処置は、完全な充填量からの差異が充填毎に常に増加し、補正されるまで、継続される。
【0014】
例えば、事前設定されたパラメータは、蠕動ポンプにより実行される複数のステップを含み得る。しかしながら、処理済の液体の量を正確に制御できる任意のポンプ(注射器又は注入ポンプ等)は、本発明に係る方法において、使用可能である。蠕動(ステッピングモータ)ポンプのステップの数は、例えば、式N_target=(N_p+N_sts)/2+Pにより計算可能で、N_targetは、充填処置を完了させるのに必要なステップの計算された数、N_pは、前回の充填処置中に実行されたステップの数、N_stsは、現在の標準検出目標ステップの数、Pは、ステップの経験的に決定された数である。本明細書で使用する語句「現在の標準検出目標ステップ」は、現在の充填サイクル情報からのみ独立して計算されたステップ(ポンプ回転、このため、容量に関する)の目標数を指す。このステップ数と前回のサイクルからのステップ数は、その後、サンプルにより生じる自然変動により、平均をとる/ならされる。
【0015】
完全な充填量からいまだに差異があることが確証されれば、この問題は、蠕動ポンプのさらなるステップ(N)を充填に加えることで、対処可能である。したがって、蠕動ポンプのステップの数は、例えば、式N_target=((N_now+S-R)+N_p)/2+P-Nにより計算可能で、N_targetは、充填処置を完了させるのに必要なステップの計算された数、N_nowは、ステップの現在の数、Sは、ステップの事前設定された(経験的に決定された)数、Rは、電圧パルスのエネルギーと相関するステップの事前設定された数、N_pは、前回の充填処置中に実行されたステップの数、Pは、ステップの経験的に決定された数、Nは、20を乗じた(すべての前回の)充填処置(サイクル)の数である。本明細書で使用する用語「現在の」は、本充填に対してすべての充填基準が満たされ、デバイスの制御システムのみが適切な充填に要する残りのステップを計算/予測せざるを得ない場合、進行中の充填中にある程度まで実行されたポンプステップの実際の数を指す。
【0016】
本発明のさらなる有利な実施形態において、初期の送達処置は、充填処置が開始される前に開始され、該送達処置は、細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の懸濁液を、入口ポートの上流の混合点で基質又はプローブと混合すること、及び抵抗降下が第1の電極で検出されるまで、混合液又は懸濁液を、入口ポートを通過してチャンバ内に供給することであって、電気抵抗が、複数の時点で初期の送達処置中に、第1の電極と接地電極との間のチャンバ内で測定される、供給すること、を含む。すなわち、この「プライミング」プロセスにおいて、第1の電極と接地電極との間、例えば、入口ポートの隣に配置された電極とその対電極との間の抵抗が測定される。空の電気穿孔チャンバの無限の電気抵抗がより低い値に急減すれば、液体(懸濁液/混合液)が入口ポートに最近の電極に到達したことが確実に示される。懸濁液を入口ポートの上流のプローブと混合し、入口ポートで抵抗を測定すると、懸濁液が、チャンバ内に導入される前に、電気穿孔用に完全に調製されて、配管長さや細胞懸濁液の光学特性に依存せず、プライミングプロセス中に容量性方法等のより複雑な測定を回避するのを確実にする。特に、反応チャンバの入口ポートでの電極は、チャンバ内部の液体ベースの電位変化を検出し、液体の第1の部分が反応チャンバに到達する時期を決定するために使用される。
【0017】
本実施形態において、第1の電極で検出された抵抗降下は、5~15オームの範囲、好ましくは、約10オームの電気抵抗の減少を含む場合がある。したがって、入口ポートでの細胞懸濁液の抵抗ベースの液体検出用の抵抗のしきい値は、例えば、プライミング開始時の初期抵抗測定値以下の約10オームであるべきである。第1の電極での測定抵抗値がこれら10オーム降下するとすぐに、懸濁液は、検出されるとみなされるものとする。
【0018】
懸濁液を基質又はプローブと確実に完全に混合するために、初期の送達処置は、抵抗降下が検出される場合、懸濁液をチャンバ内に供給することを停止すること、及びその後、充填処置が開始される前に、懸濁液が基質又はプローブと混合される、混合点に再度懸濁液を後退させること、をさらに含む。この測定により、懸濁液が、電気穿孔用のチャンバに入る前に、基質又はプローブと完全に混合されることが確実になる。
【0019】
初期の送達処置は、該当すれば、第1の充填処置が開始される前に一度だけ実行される。
【0020】
電気穿孔を実行するために、充填処置の終了後、少なくとも1つの電圧パルスを、少なくとも1つの電極を介して供給することで、チャンバ内の懸濁液に電界が印加される。チャンバに懸濁液を充填して、次に、少なくとも1つの電圧パルスを供給することは、所定のサイクル数に対して繰り返される場合がある。したがって、バッチプロセスと対照的に、大容量の懸濁液は、懸濁液のアリコートの電気穿孔を、ある種類の半連続プロセスで連続的に繰り返すことで、処理可能である。
【0021】
本目的は、少なくとも1つのチャンバ内の細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の懸濁液に電界を印加するためのデバイスであって、少なくとも第1の電極及び第2の電極と、チャンバの一方の端部に配置された少なくとも1つの入口ポートと、チャンバの反対側の端部に配置された少なくとも1つの出口ポートと、を具備し、第1の電極は、入口ポートでチャンバ内に配置され、第2の電極は、出口ポートでチャンバ内に配置され、チャンバは、少なくとも1つの接地(対)電極をさらに具備する、デバイスによりさらに達成される。本発明によると、少なくとも第2の電極は、第2の電極と接地電極との間のチャンバ内の電気抵抗を測定するための第1のセンサ電極である。出口ポートでの電気抵抗を制御することにより、チャンバの過剰充填は、チャンバの充填容量が、複数の電気穿孔サイクルの過程で連続的に低減されても、回避可能である。このため、再生電気穿孔の強化された特性が保証可能なように、各電気穿孔サイクル中に、チャンバの充填を確実に正確に行う。貴重で高価な生体物質の浪費が有効に回避可能であることは、本発明に係るデバイスの別の利点である。
【0022】
本発明に係るデバイスの有利な実施形態において、第1の電極は、第1の電極と接地(対)電極との間のチャンバ内の電気抵抗を測定するための第2のセンサ電極である。第1の電極での電気抵抗を制御することにより、液体(懸濁液)が入口ポートに最近の電極に到達したことを確実に示すことができる。特に、反応チャンバの入口ポートでの電極は、チャンバ内部の液体ベースの電位変化を検出し、液体の第1の部分が反応チャンバに到達する時期を決定するために使用される。
【0023】
本発明は、図面を参照して、さらに例示的に詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明に係る方法の典型的な懸濁液処理手順を表すフローチャートを示す。
【
図2】
図2は、本発明に係る方法の初期の送達処置(「プライミング」)の典型的な順序を表すフローチャートを示す。
【
図3】
図3は、充填処置と終了ルーチンを含む、本発明に係る方法の典型的な実施形態を表すフローチャートを示す。
【
図4】
図4は、本発明に係るデバイスの出口ポートでの電極により測定される、充填処置の間の電気抵抗の典型的な推移を表す線図を示す。 X軸は、実行される測定の数を示す(間隔:ステッピングモータポンプの約33回のステップ)。 Y軸は、測定された電気抵抗[オーム]を示す。
【
図5】
図5は、本発明に係るデバイスの典型的な実施形態の外側の斜視図を示す。
【
図6】
図6は、
図5に係るデバイスの1つの構成要素の内側の平面図を示す。
【
図7】
図7は、
図5に係るデバイスの別の構成要素の内側の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明に係る、懸濁液の処理プロセス全体の実施形態の概要を示す。最初に、初期の送達処置(「プライミング」)は、チャンバに懸濁液が充填される前に、開始される。初期の送達処置は、懸濁液を、入口ポートの上流の混合点で基質/プローブと混合すること、及び混合液を、入口ポートを通過してチャンバ内に供給することを含む。この送達処置は、第1の充填処置が開始される前に一度だけ実行される。初期の送達処置は、
図2に準拠してさらに詳細に記載される。プライミングがうまく処理されないと、懸濁液の処理プロセスは終了される。プライミングがうまく処理されると、充填処置は開始される。充填処置は、懸濁液/プローブの混合液をチャンバ内に供給し、最適な充填レベルに到達されるまで、充填レベルを制御することを含む。充填処置は、
図3に準拠してさらに詳細に記載される。その後、電気穿孔は、1つ以上の電圧パルスを混合液に印加することで実行される(「パルシング」)。パルシング後に、事前設定されたサイクル数に未到達であれば、チャンバを空にして、混合液の2回目の(次の)アリコートは、電気穿孔用にチャンバ内に充填される。充填及びパルシングのプロセスは、数回、すなわち、事前設定されたサイクル数で繰り返し可能である。事前設定されたサイクル数に到達された、又はチャンバ内の2つの電極間で測定された電気抵抗が、2回の連続測定で範囲外(「エラー2」)であれば、チャンバを空にして、懸濁液の処理プロセスは、最終的に終了される。
【0026】
図2は、初期の送達処置(「プライミング」)の典型的な順序を示す。配管長さや懸濁液の光学特性に依存せず、初期の送達処置中に容量性方法等のより複雑な測定を回避するために、反応チャンバの電極は、懸濁液の第1の部分が反応チャンバに到達する時期を決定するために、チャンバ内部の液体ベースの電位変化を監視するために使用される。この目的のために、初期の送達処置(「プライミング」)は、細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の懸濁液を、第1のリザーバから混合点に、その後、反応チャンバの入口ポートにポンプ輸送する、第1のポンプ(
図2に記載の「上部ポンプ」で、本実施例では蠕動型のステッピングモータポンプである)を起動することにより、開始される。チャンバの第1の電極での電気抵抗の測定(
図2に記載の「最下部の(電極)セグメント」)は、第1のポンプの事前設定されたステップ数が実行された場合に、開始される。例えば、ポンプ輸送は、抵抗測定の開始前に、1,000回のステップで開始する場合がある。開始当初で、これによる、抵抗を移動・作用する少量の液体部分への影響はないものとする(
図4、「初期の抵抗降下」を参照)。第1の電極で測定された抵抗が事前設定されたタイムアウト時間(例:60秒)以内に所定のしきい値以下に降下すれば、第1の(「上部」)ポンプは停止される。例えば、抵抗のしきい値は、プライミング開始時に、初期測定抵抗値以下の約10オームであり得る。第1の電極での測定抵抗値が10オーム降下するとすぐに、懸濁液は、検出されるとみなされるものとする。すなわち、この「プライミング」プロセスにおいて、第1の電極と接地電極との間の入口ポート近くの抵抗を測定する。空の電気穿孔チャンバの無限の電気抵抗が所定のしきい値以下に降下すれば、懸濁液が入口ポートに最近の電極に到達したことが確実に示され得る。
【0027】
第1のポンプが十分な抵抗降下が検出されたことで停止され、別個の基質/プローブの供給なしが選択されれば、初期の送達処置は終了され、充填処置は開始される(
図3を参照)。しかしながら、第1の電極で抵抗降下が検出されなければ、第1の(「上部」)ポンプはこの場合も同様に停止され、ルーチンはエラー表示により終了される。第1のポンプが十分な抵抗降下が検出されたことで停止され、別個の基質/プローブの供給が確立されれば、懸濁液は、第1のポンプの運転方向を逆転することで、混合点に後退される。混合点で、懸濁液は、基質又はプローブと混合される。この目的のために、第2のポンプは、(
図2に記載の「下部ポンプ」で、本実施例では蠕動型でステッピングモータポンプである)基質又はプローブを第2のリザーバから混合点にポンプ輸送するために、起動される。懸濁液を入口ポートの上流のプローブに混合し、混合液がチャンバ内に入る時点で抵抗を測定することで、懸濁液が、チャンバ内に導入される前に、電気穿孔用に完全に調製されることを確実にする。このため、可変の配管長さ及び懸濁液の異なる光学特性による不完全な混合は、回避可能である。好ましくは、少なくとも1つの光学センサは、第2のリザーバを混合点に接続する配管で、混合点の上流に配置され、基質又はプローブを含む液体を検出する。液体が事前設定されたタイムアウト時間内に光学的に検出されなければ、第2の「下部」ポンプは停止され、ルーチンは、エラー表示により終了される。しかし、基質/プローブを含む液体が検出されれば、第2の「下部」ポンプは同様に停止され、混合点を入口ポートに接続する配管は、その後、混合液が入口ポート(
図2に記載の「カートリッジ入口」)に到達するまでに、同時運転する両方のポンプにより、混合液が充填される。初期の送達処置は、その後、終了され、充填処置が開始される(
図3を参照)。
【0028】
図3は、本発明に係る、充填処置と終了ルーチンの典型的な実施形態を示す一方、
図4は、充填処置中の典型的な抵抗特性を示す。本発明によると、反応チャンバの充填は、出口ポート(第2の電極)でのチャンバ内の電気抵抗の特性を監視することで、制御される。充填処置の開始時に、少なくとも1つのポンプ(例:
図2に係る、第1の(「上部」)及び/又は第2の(「下部」)ポンプ)は、特定の容量の懸濁液/混合液をチャンバ内にポンプ輸送する。例えば、蠕動(ステッピングモータ)ポンプを使用すれば、ポンプは、モータステップの所定の数(N_p)に設定される。第1の充填(サイクル)用に、N_pは、デフォルト値に設定され、さらにすべての充填(サイクル)に対して、N_pは、前回の充填の値に基づく所定値に設定される。
【0029】
充填処置全体の間、反応チャンバの出口ポートでの第2の電極の抵抗値は、連続的に測定される。抵抗が一旦、所定値(限界「しきい値T1」)以下に降下すると、終了ルーチンは、開始される。抵抗変化の第1の勾配が、第1の所定のしきい値(T2)を越えるとシステムが判断すれば、該システムは、抵抗変化の第2の勾配が、少なくとも2回の連続測定に対する第2の所定のしきい値(T3)に到達するまで、勾配が再度減少するのを待つ。これらの基準が満たされると、(N_nowステップ中の)ポンプは、ステップ(S)の別の固定量で回転を継続する。容量減少の影響はまた、送信された電圧パルスのエネルギーに影響されるため、これにより、ステップの目標数をR減少させることで、ポンプ補正される。
【0030】
広範囲な実験により、抵抗と充填レベルの相関の変動が、現在の充填(それが、第1の充填サイクルでなければ)に対する目標ポンプステップを、
(前回の充填からのステップ数「N_p」+現在の標準検出目標ステップ)/2+固定値(P)
に設定することで、十分に低減可能であることが示された。
【0031】
これらの実験により、充填毎に常に増加する完全な充填量から差異が生じることがさらに示された。この対処法として、一定値と現在の充填サイクルの積である、さらなるステップ
N:N_target=((N_now+S-R)+N_p)/2+P-N
を、充填に加える。
【0032】
これらの追加的なポンプステップが実行された後に、チャンバの充填は、終了される。さらに、ポンプ用のステップ数は、前回の充填(それが、第1の充填サイクルでなければ)からのステップより大きいことはあり得ない。したがって、ポンプステップ(N_max)の事前設定された最大値に到達されると、チャンバの充填は、終了される。
【0033】
T1は、例えば、500オームに設定可能である。
T2は、例えば、50オーム/400ポンプステップ(システム固有)に設定可能である。
T3は、例えば、20オームに設定可能である。
Sは、例えば、850に設定可能である。
Rは、電圧パルスエネルギーと相関するステップ数に設定される。
Pは、経験的に決定された値(例:200)である。
Nは、例えば、20を乗じた充填サイクル数に設定される。
N_nowは、現在のステップ数である。
N_pは、前回の組み合わされたステップ数(第1のポンプ+第2のポンプ)である。
N_targetは、現在の充填を完了させるための目標ステップ数(第1のポンプ+第2のポンプの組み合わせ)である。
【0034】
図5は、本発明に係る、デバイス1の典型的な実施形態の外側を示し、
図6及び
図7は各々、
図5に係る、デバイス1の構成要素の内側を示す。デバイス1は、基板部材2、30を具備し、各基板部材2、30は、互いに取り付けられる2つの構成要素(基板部材2及び30)から組み立てられるデバイス1の構成要素を表す。基板部材2、30は各々、外側で、導管を湾曲した反応チャンバ6のポート7、8、10、11に接続するためのコネクタ31が設けられている。処理対象の懸濁液/プローブ用の1つ以上のリザーバと処理済の懸濁液用の1つ以上の容器は、好適な導管を介して、コネクタ31に接続可能である。懸濁液は、リザーバ/容器とコネクタ31との間のサスペンション回路に接続され得る、真空ポンプ又は蠕動ポンプ等のポンプ素子により、チャンバ6に供給及びそこから放出可能である。デバイス1を共通の導管及びポンプシステムに適合させるために、コネクタ31は、ルアースリップ又はルアーロックコネクタとすることができる。
【0035】
基板部材30は、チャンバ6内の電極4、5に電気接続を提供するための多数の導電領域32をさらに具備する。導電領域32は、導電性高分子、特に、導電性材料がドープされた高分子又は生来の導電性高分子を含む場合がある。導電領域32は、電極4、5と少なくとも1つの電気接点33との間に電気接続を提供するように設計される。本実施形態において、導電領域32は、少なくとも部分的に導電性材料で充填される、基板部材30内の孔である。導電領域32は、基板部材の層上の銅トラック等の少なくとも1つの導電性経路(図示せず)を介して、少なくとも1つの電気接点33に電気的に結合される。電気接点33は、少なくとも1つの電気接点により接触され、直接又は間接的な電気接続を電源及び/又は電圧パルス発生器に提供可能である。
【0036】
基板部材2、30は各々、4つの電極4、5が設けられる湾曲した凹部3を具備する。デバイス1の好ましい実施形態によると、チャンバ6は、少なくとも2つのセグメントを具備する場合があり、各セグメントは、少なくとも2つの電極を具備し、接地(対)電極は、少なくとも2つのセグメントの共通電極である。すなわち、電極の3つは、セグメント電極4である一方、1つの電極は、対電極5である。基板部材2は、互いに取り付けられる2つの構成要素から組み立てられるデバイス1の1つの構成要素を表し、これらの構成要素の少なくとも内側は、反転して設計される。すなわち、基板部材2と基板部材30は、基板部材2、30の凹部3が、細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の懸濁液を保持するためのチャンバ6を形成するように、互いに取り付けられるミラー反転した内側を有する。このチャンバ6において、例えば、核酸又はタンパク質等の生物活性分子を細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞に伝達するために、細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞に電界を印加可能である。この目的のために、基板部材2の電極4、5と基板部材30の対応する電極4、5は、電極対を確立し、基板部材2のセグメント電極4と基板部材30の対向して配列された対電極5は、3つの電極対を確立する一方、基板部材2の対電極5と基板部材30の3つの対向して配列されたセグメント電極4はまた、3つの電極対を確立する。この構成において、チャンバ6が、6つのセグメントを具備するように、基板部材2の対電極5と基板部材30の対電極5は各々、3つのセグメントの共通電極で、各セグメントは、1つのセグメント電極4と1つの共通対電極5の領域が設けられている。
【0037】
2つのポート7、8は、チャンバ6の一方の端部9に配置され、2つのポート10、11は、チャンバ6の反対側の端部12に配置される。「下部」端部12で、ポート10、11の1つのポートは、チャンバ6に供給するための入口ポートとして使用可能で、ポート10、11の他のポートは、チャンバ6から放出するための出口ポートとして又はチャンバ6を空にするための追加の出口ポートとして、いずれかで使用可能である。反対側の端部9で、ポート7、8の1つのポートは、チャンバ6から放出するための出口ポートとして使用可能で、ポート7、8の他のポートは、チャンバ6から放出するため、又は例えば、チャンバ6から漏出させるためのいずれかで、追加の出口ポートとして使用可能である。したがって、この典型的な実施形態において、各端部9、12は、チャンバ6が懸濁液で充填可能及び/又は懸濁液がチャンバ6外に除去可能である、2つのポート7、8、10、11が設けられる。流れ方向により、チャンバの一方の端部は、少なくとも1つの入口ポートを具備する一方、チャンバの反対側の端部は、少なくとも1つの出口ポートを具備する。例えば、ポート10、11の少なくとも1つが入口ポートとして使用され、ポート7、8の少なくとも1つが出口ポートとして使用されれば、端部12での入口ポート10、11の隣の電極4は、定義上、第1の電極20(第2のセンサ電極)であり、端部9での出口ポート7、8の隣の電極4は、定義上、第2の電極21(第1のセンサ電極)である。したがって、この典型的な実施形態において、充填処置を制御するための電気抵抗は、基板部材30の第2の電極21と基板部材2の接地電極5との間で測定される。初期の送達処置を制御するための電気抵抗の測定値は、基板部材2の第1の電極20と基板部材30の接地電極5との間で測定される。しかしながら、他の任意の電極構成及び/又はチャンバ設計は、上記記載の本発明に係る方法を達成するために好適である限り、実現可能である。
[発明の項目]
[項目1]
細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の懸濁液の充填レベルを、電界を前記懸濁液に印加するためのデバイスの少なくとも1つのチャンバ内で制御するための方法であって、前記デバイスは、少なくとも第1の電極及び第2の電極と、前記チャンバの一方の端部に配置された少なくとも1つの入口ポートと、前記チャンバの反対側の端部に配置された少なくとも1つの出口ポートと、を具備し、前記第1の電極は、前記入口ポートで前記チャンバ内に配置され、前記第2の電極は、前記出口ポートで前記チャンバ内に配置され、前記チャンバは、少なくとも1つの接地電極をさらに具備し、前記方法は、
a)前記懸濁液が、前記入口ポートを通過して、前記チャンバ内に供給される、充填処置を開始すること、
b)複数の時点で、前記充填処置の間、前記第2の電極と前記接地電極との間の前記チャンバ内の電気抵抗を測定すること、及び
c)前記充填処置を終了することを含む終了ルーチンを開始することであって、前記終了ルーチンが、前記第2の電極と前記接地電極との間の少なくとも1つの電気抵抗の変化により、開始される、開始すること、
を含む、方法。
[項目2]
前記終了ルーチンは、前記電気抵抗が所定値に達した場合、開始される、項目1に記載の方法。
[項目3]
前記充填処置は、終了条件が満たされると終了され、前記終了条件は、
-前記抵抗の変化の第1の勾配が、第1の所定のしきい値を超過すること、及び
-前記抵抗の変化の第2の勾配が、第2の所定のしきい値に到達し、前記第2のしきい値が、前記第1のしきい値により表された前記勾配よりも低い勾配を表すこと、
を含む、項目1又は2に記載の方法。
[項目4]
前記終了条件は、前記抵抗の変化の第3の勾配が、前記第2の勾配後に決定され、前記第2のしきい値に等しい又はそれ以下にとどまることをさらに含む、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
[項目5]
前記終了ルーチンは、前記終了条件が満たされると判断された後に、延期された終了を含み、前記充填処置は、少なくとも1つの事前設定されたパラメータに基づいて、最終終了前に継続される、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
[項目6]
前記事前設定されたパラメータは、蠕動ポンプにより実行される複数のステップを含む、項目5に記載の方法。
[項目7]
前記ステップの数は、式N_target=(N_p+N_sts)/2+Pにより計算され、N_targetは、前記充填処置を完了させるのに必要なステップの計算された数、N_pは、前回の充填処置中に実行されたステップの数、N_stsは、現在の標準検出目標ステップの数、Pは、ステップの経験的に決定された数である、項目6に記載の方法。
[項目8]
前記ステップの数は、式N_target=((N_now+S-R)+N_p)/2+P-Nにより計算され、N_targetは、前記充填処置を完了させるのに必要なステップの計算された数、N_nowは、ステップの現在の数、Sは、ステップの事前設定された数、Rは、電圧パルスのエネルギーと相関するステップの事前設定された数、N_pは、前記前回の充填処置中に実行されたステップの数、Pは、ステップの経験的に決定された数、Nは、20を乗じた充填処置の数である、項目6に記載の方法。
[項目9]
初期の送達処置は、前記充填処置が開始される前に開始され、前記送達処置は、細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の前記懸濁液を、前記入口ポートの上流の混合点で基質又はプローブと混合すること、及び抵抗降下が前記第1の電極で検出されるまで、混合液又は前記懸濁液を、前記入口ポートを通過して前記チャンバ内に供給することを含み、前記電気抵抗が、複数の時点で前記初期の送達処置中に、前記第1の電極と接地電極との間の前記チャンバ内で測定される、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
[項目10]
前記抵抗降下は、5~15オームの範囲、好ましくは、約10オームの前記電気抵抗の減少を含む、項目9に記載の方法。
[項目11]
前記初期の送達処置は、前記抵抗降下が検出される場合、前記懸濁液を前記チャンバ内に前記供給することを停止すること、及びその後、前記充填処置が開始される前に、前記懸濁液が前記基質又はプローブと混合される、前記混合点に再度前記懸濁液を後退させること、をさらに含む、項目9又は10に記載の方法。
[項目12]
前記初期の送達処置は、第1の充填処置が開始される前に、一度だけ実行される、項目9~11のいずれか一項に記載の方法。
[項目13]
前記充填処置の終了後、少なくとも1つの電圧パルスを、少なくとも1つの電極を介して供給することで、前記チャンバ内の前記懸濁液に前記電界が印加される及び/又は前記チャンバに前記懸濁液を充填し、次に、少なくとも1つの電圧パルスを供給することは、所定のサイクル数に対して繰り返される、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
[項目14]
少なくとも1つのチャンバ内の細胞、細胞誘導体、細胞小器官、細胞内顆粒及び/又は小胞の懸濁液に電界を印加するためのデバイス(1)であって、少なくとも第1の電極(20)及び第2の電極(21)と、前記チャンバ(6)の一方の端部(12)に配置された少なくとも1つの入口ポート(10、11)と、前記チャンバ(6)の反対側の端部(9)に配置された少なくとも1つの出口ポート(7、8)と、を具備し、前記第1の電極(20)は、前記入口ポート(10、11)での前記チャンバ(6)内に配置され、前記第2の電極(21)は、前記出口ポート(7、8)での前記チャンバ(6)内に配置され、前記チャンバ(6)は、少なくとも1つの接地電極(5)をさらに具備し、少なくとも前記第2の電極(21)は、前記第2の電極(21)と前記接地電極(5)との間の前記チャンバ(6)内の電気抵抗を測定するための第1のセンサ電極であることを特徴とする、デバイス(1)。
[項目15]
前記第1の電極(20)は、前記第1の電極(20)と前記接地電極(5)との間の前記チャンバ(6)内の電気抵抗を測定するための第2のセンサ電極である、項目14に記載のデバイス。