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特許7499289インプリントされた不織布基材を有するイオン交換膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-05
(45)【発行日】2024-06-13
(54)【発明の名称】インプリントされた不織布基材を有するイオン交換膜
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/22 20060101AFI20240606BHJP
   B01J 39/05 20170101ALI20240606BHJP
   B01J 39/07 20170101ALI20240606BHJP
   B01J 39/20 20060101ALI20240606BHJP
   B01J 41/05 20170101ALI20240606BHJP
   B01J 41/07 20170101ALI20240606BHJP
   B01J 41/14 20060101ALI20240606BHJP
   B01J 47/12 20170101ALI20240606BHJP
   C08G 59/24 20060101ALI20240606BHJP
   C08F 220/34 20060101ALI20240606BHJP
   C08F 220/20 20060101ALI20240606BHJP
   C08F 212/14 20060101ALI20240606BHJP
【FI】
C08J5/22 CET
C08J5/22 CEY
B01J39/05
B01J39/07
B01J39/20
B01J41/05
B01J41/07
B01J41/14
B01J47/12
C08G59/24
C08F220/34
C08F220/20
C08F212/14
【請求項の数】 25
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022069275
(22)【出願日】2022-04-20
(62)【分割の表示】P 2019551667の分割
【原出願日】2017-03-20
(65)【公開番号】P2022122861
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】517430716
【氏名又は名称】ビーエル テクノロジーズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨンホン・ジャオ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エイチ・バーバー
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/128631(WO,A1)
【文献】特開平02-293551(JP,A)
【文献】特開2013-150985(JP,A)
【文献】特表2013-528478(JP,A)
【文献】特開2015-180495(JP,A)
【文献】特開2014-201612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02、5/12-5/22
B01D 53/22、61/00-71/82
B01J 39/05、39/07、39/20、
41/05、41/07、41/14、47/12
C08G 59/00-59/72
C08F 6/00-246/00、301/00
C02F 1/44-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰イオン性又は陽イオン性のモノマー及びクロスリンカーを含む反応溶液を、インプリントされた不織布層を含む支持基材に飽和又は含浸させる工程であって、前記インプリントされた不織布層が、1cm当たり少なくとも16個の表面密度で規則的に間隔を空けている複数のインプリント変形を含該インプリント変形が、前記インプリントされた不織布層の厚さの30~75%の平均高さ若しくは平均深さを有する、飽和又は含浸させる工程
記モノマー及びクロスリンカーを重合させてイオン交換材料を形成する工程
備える、方法。
【請求項2】
前記モノマー及びクロスリンカーが、UVにより開始されるラジカル重合条件下で重合される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重合が、前記モノマー及びクロスリンカーを加熱して前記イオン交換材料を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記インプリントされた不織布層が、1cm当たり少なくとも30個のインプリント変形を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記インプリントされた不織布層が、1cm当たり少なくとも50個のインプリント変形を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記インプリントされた不織布層が、1cm当たり少なくとも100個のインプリント変形を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記不織布層が、1cm当たり200個以下のインプリント変形を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記支持基材が、補強層を欠いている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記インプリント変形が、前記インプリントされた不織布層の表面積の10%~90%を構成する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記支持基材に飽和又は含浸させる工程が、(i)前記インプリント変形及び(ii)前記インプリント変形の間の空間の一つ以上を充填することを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記インプリントされた不織布層が、(i)デボス変形を含むデボス加工された不織布層である、又は、(ii)エンボス変形を含むエンボス加工された不織布層である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記インプリントされた不織布層が、デボス変形を含むデボス加工された不織布層であり、該デボス加工された不織布層が、50μm~700μmの厚さを有し、又は、前記インプリントされた不織布層が、エンボス変形を含むエンボス加工された不織布層であり、該エンボス加工された不織布層が、50μm~1000μmの合計の厚さを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記インプリントされた不織布層が、デボス変形を含むデボス加工された不織布層であり、該デボス変形が、前記デボス加工された不織布層の厚さの30~70%の平均深さを有し、又は、前記インプリントされた不織布層が、エンボス変形を含むエンボス加工された不織布層であり、該エンボス変形が、前記エンボス加工された不織布層の合計の厚さの30~70%の平均高さを有する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記インプリントされた不織布層が、デボス変形を含むデボス加工された不織布層であり、該デボス変形が、前記デボス加工された不織布層の単一の表面への凹み又は前記デボス加工された不織布層の反対の表面への凹みを含み、又は、前記インプリントされた不織布層が、エンボス変形を含むエンボス加工された不織布層であり、該エンボス変形が、前記エンボス加工された不織布層の単一の表面からの突出部又は前記エンボス加工された不織布層の反対の表面からの突出部を含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記インプリントされた不織布層が、デボス変形を含むデボス加工された不織布層であり、該デボス変形が、前記デボス加工された不織布層の反対の表面への凹みを含み、かつ、(a)前記デボス加工された不織布層が、前記反対の表面の各側において1cm当たり等しい数の凹みを有し、(b)前記凹みが、前記反対の表面の各側において同じ量の表面積を構成し、(c)前記デボス加工された不織布層の前記反対の表面への前記凹みが、同じ深さであり、(d)前記デボス加工された不織布層の前記反対の表面への前記凹みが、同じサイズであり、(e)前記デボス加工された不織布層の前記反対の表面への前記凹みが、同じ形状であり、又は(f)任意のこれらの組合せである、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記インプリントされた不織布層が、エンボス変形を含むエンボス加工された不織布層であり、該エンボス変形が、前記エンボス加工された不織布層の反対の表面からの突出部を含み、かつ、(a)前記エンボス加工された不織布層が、前記反対の表面の各側において1cm当たり等しい数の突出部を有し、(b)前記突出部が、前記反対の表面の各側において同じ量の表面積を構成し、(c)前記エンボス加工された不織布層の前記反対の表面からの前記突出部が、同じ高さであり、(d)前記エンボス加工された不織布層の前記反対の表面からの前記突出部が、同じサイズであり、(e)前記エンボス加工された不織布層の前記反対の表面からの前記突出部が、同じ形状であり、又は(f)任意のこれらの組合せである、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記支持基材が、10g/m~260g/mの単位重量を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記インプリント変形が、円形、三角形、正方形、長方形、菱形、星形、楕円形又は任意のこれらの組合せである、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記支持基材が、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル又はポリ塩化ビニルの不織生地シートである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記クロスリンカーが、N,N’-メチレンビス(アクリルアミド)、N,N’-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、N,N’-エチレンビス(アクリルアミド)、N,N’-ヘキサメチレンビス(メタクリルアミド)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミド、ピペラジンジアクリルアミド、1,3-ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジ(エチレングリコール)ジアクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート、トリ(エチレングリコール)ジアクリレート、グリセロール1,3-ジグリセロレートジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、又は1,4-ブタンジオールジアクリレートを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記反応溶液が、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基又はこれらの塩を含む陰イオン性モノマーを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記陰イオン性モノマーが、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、3-スルホプロピルアクリル酸カリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、4-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム、アクリル酸、2-エチルアクリル酸、メタクリル酸、2-プロピルアクリル酸、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、エチレングリコールメタクリレートホスフェート、ビニルホスホン酸、又はビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェートを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記反応溶液が、第四級アンモニウム基、イミダゾリウム基又はピリジニウム基を含む陽イオン性モノマーを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記陽イオン性モノマーが、N-トリメチルアミノエチルメタクリレートクロリド(TMAEMC)、[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、1-ビニル-3-エチルイミダゾリウムブロミド、又は4-ビニルピリジニウムトリブロミドを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記反応溶液が、開始剤と、溶媒と、
(a)N-トリメチルアミノエチルメタクリレートクロリド(TMAEMC)及びエチレングリコールジメタクリレート(EGDM)、
(b)ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA)、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(CHDMDGE)、HCl及びN-ビニルカプロラクタム(V-Cap)、
(c)ビニルベンジルクロリド(VBC)、ジビニルベンゼン(DVB)、トリブチルアミン(TBA)及びジブチルアミン(DBA)、
(d)2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)及びEGDM、
(e)リチウムスチレンスルホネート(LiSS)及びジビニルベンゼン(DVB)又は、
(f)(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド(VBTAC)及びDVB
とを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、不織布層を有するイオン交換膜に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の段落は、それらにおいて議論されるもののいずれもが先行技術又は当業者の知識の部分であることを認めるものではない。
【0003】
イオン交換膜は、電気透析(ED)、バイポーラED、逆電気透析(RED)、電気脱イオン化(EDI)及び極性転換式電気透析(EDR)のための電解膜として使用される。これらの精製方法は、印加した電位差の影響下でイオン交換膜を通して1つの溶液から別の溶液へとイオンを輸送する。
【0004】
電気透析のために有用なイオン交換膜としては、イオン交換材料及びイオン交換材料のための支持基材が挙げられる。支持基材として織生地又は不織生地シートを使用して製造されたイオン交換膜では、織生地又は不織生地シート中の空隙はイオン交換材料により充填される。
【発明の概要】
【0005】
序論
以下の序論は、読者を本明細書に案内することを意図するが、いかなる発明を定義することも意図しない。以下又はこの文献の他の部分に記載される装置の構成要素又は方法のステップの組合せ又は部分的組合せにおいて1つ以上の発明が存在し得る。本発明者らは、単に特許請求の範囲においてそのような他の発明を記載していないことにより本明細書に開示されるいずれの発明に対する権利も除外又は放棄するものではない。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
イオン交換膜における不織生地の使用は望ましいが、これは、不織生地における繊維の高度に織り交ざった構造が、織生地を使用して形成された膜と比較して、漏れ、電気抵抗、厚さ又は任意のこれらの組合せを低減させ得るためである。しかしながら、不織生地のみを使用して形成された膜は、多くの場合、織生地を使用して形成された膜と比較した時に望ましくない物理的性質を有する。望ましくない物理的性質は、強度の低減、寸法安定性の低減又は形状安定性の低減であり得る。例えば、単一層の不織布基材を用いて形成された膜は、上昇した温度においてイオン交換ポリマーの硬化時にカールし得る。
【0007】
望ましくない物理的性質の少なくとも1つを改善するために、不織生地を用いて製造されるイオン交換膜は、補強層を含み得る。しかしながら、補強層の追加は、膜の厚さを増加させ、結果として、膜の抵抗もまた増加する。
【0008】
イオン交換膜の厚さを低減させることが望ましいが、これは、より多くの膜が同じデバイス中に搭載され得るので、そのような低減は、全ての他の条件が等しいとして、電解セルスタックからのより高いスループットを結果としてもたらし得るためである。より薄い膜は膜の表面積当たりより少ないイオン交換材料を有するので、イオン交換膜の厚さの低減は、膜の所与の面積について消費される化学物質の低減を結果としてもたらし得る。イオン交換膜の厚さの低減は、それがより薄い膜の抵抗の低減と対応する場合、電解精製処理におけるエネルギー消費の低減を結果としてもたらし得る。
【0009】
不織生地層に取り付けられた補強層を有するイオン交換膜はまた、塩溶液中にある時に不規則に膨張して、膜の起伏を結果としてもたらし得る。不規則な膨張は、塩溶液中にある時の2つの層の膨張又は収縮の差異に起因する。
【0010】
したがって、不織生地の単一層から形成されるイオン交換膜、又は不織生地及び補強層から形成されるイオン交換膜と関連付けられる1つ以上の短所に対処する又はそれを改善する不織布層を有するイオン交換膜の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一部の例では、本開示は、イオン交換材料を含浸した支持基材を有するイオン交換膜を提供する。支持基材は、インプリントされた不織布層を含み、インプリンティングは、1cm当たり少なくとも16個の表面密度で複数の変形を含む。インプリンティングは、デボス加工、エンボス加工又はこれらの組合せであり得る。
【0012】
一部の例では、本開示は、イオン交換膜を製造する方法を提供する。方法は、陰イオン性又は陽イオン性モノマー及びクロスリンカーを含む溶液を支持基材に飽和又は含浸させること、並びに上昇した温度においてモノマー及びクロスリンカーを重合させることを含む。支持基材は、インプリントされた不織布層を含み、インプリンティングは、1cm当たり少なくとも16個の表面密度で複数の変形を含む。インプリンティングは、デボス加工、エンボス加工又はこれらの組合せであり得る。
【0013】
これより添付の図面を参照して、単に例により、本開示の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】生地の表面への凹みを有する例示的なデボス加工された不織布層を示す図である。
図2】生地の表面への凹み及び生地の反対の表面における相互的な凹みを有する例示的なデボス加工された不織布層を示す図である。
図3】生地の表面からの突出部及び生地の反対の表面における対応する凹みを有する例示的なエンボス加工された不織布層を示す図である。
図4】生地の両方の表面からの突出部を有する例示的なエンボス加工された不織布層を示す図である。
図5】本開示による方法を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一般に、本開示は、イオン交換材料を含浸した支持基材を含むイオン交換膜を提供する。支持基材は、インプリントされた不織布層を含み、インプリンティングは、1cm当たり少なくとも16個の表面密度で複数の変形を含む。インプリンティングは、デボス加工、エンボス加工又はこれらの組合せであり得る。一部の例では、インプリントされた不織生地は、支持基材から補強層を排除することを可能とする物理的性質を有し得る。一部の例では、インプリントされた不織生地は、インプリントされた不織生地の単一層のみを支持基材が含むことを可能とする物理的性質を有し得る。
【0016】
そのようなインプリントされた不織布層を用いて形成されたイオン交換膜は、それ以外には同一であるがインプリンティングを欠いた膜と比較して、上昇した温度における膜硬化の間の向上した寸法安定性又は形状安定性を有し得る。例えば、本開示によるイオン交換膜は、変形しない不織布層を有するそれ以外は同一のイオン交換膜よりも、滑らかであり、平らであり及び/又は少ないしわを有し得る。理論により縛られることを望まないが、本開示の著者らは、特に、不織布層がイオン交換成分を含浸し又はイオン交換成分で飽和し及び上昇した温度において硬化した時に、不織布層における変形が不織布層の長い繊維における歪みの発生を阻害し又は終了させると考えている。
【0017】
本開示の文脈において、「デボス加工」は、材料にデザインをインプリントし、及び材料の表面にデザインの凹んだインプリントを残すことを指す。凹んだインプリントはまた、「デボス加工された」インプリントと称される。デボス加工ステップに供された生地の層は、「デボス加工された生地」と称されることがある。「エンボス加工」という表現は、材料にデザインをインプリントし、及び材料にデザインの浮き上がったインプリントを残すことを指す。浮き上がったインプリントはまた、「エンボス加工された」インプリントと称される。エンボス加工ステップに供された生地の層は、「エンボス加工された生地」と称されることがある。
【0018】
インプリントされた不織布層は、1cm当たり少なくとも30個、少なくとも50個又は少なくとも100個の変形を有し得る。インプリントされた不織布層は、1cm当たり200個以下の変形を有し得る。本開示は、1cm当たり16~200個の変形を有する全てのインプリントされた不織布層を想定し、及び1cm当たり16~200個の変形により包含される全ての可能な範囲を想定することが理解されるべきである。
【0019】
不織布層における変形は、インプリントされた不織布層の表面積の約10%~約90%を構成し得る。これは、上から不織布層を眺めること、変形の可視的な総面積を測定すること、及び総表面積で割ることにより算出され得る。例えば、それぞれ2×2mm四方の16個の変形を有する1平方センチメートルの不織生地において、変形は表面積の64%を構成する。
【0020】
一部の例では、インプリントされた不織布層における変形は、デボス加工された生地の断面を示す図1に示されるように、生地の表面における凹みであり得る。生地(10)は、生地の表面(14)における凹み(12)である変形を含む。この例示的な生地において、デボス加工された不織布層の厚さを(T)として示し、凹み(12)の深さを(D)として示している。例示的な凹みの表面積は、少なくとも部分的に寸法Wに基づいて算出され得る。例えば、凹み(12)が正方形である場合、変形の面積はWである。
【0021】
他の例では、インプリントされた不織布層における変形は、図2に示されるように、生地の反対の表面における相互的な凹みを有する生地の表面における凹みであり得る。生地(20)は、生地の表面(24)における凹み(22)である変形を含む。凹み(22)は、生地の反対の表面(28)において相互的な凹み(26)を有する。この例示的な生地において、デボス加工された不織布層の厚さを(T)として示し、凹み(22)の深さを(D)として示し、反対の凹み(26)の深さを(D’)として示している。例示的な凹みの表面積は、少なくとも部分的に寸法Wに基づいて算出され得る。図2に示されるように、深さ「D」は深さ「D’」と同一でない。すなわち、反対の表面における相互的な凹みの深さは同一である必要はない。本開示によるデボス加工された不織布層は、図には示していないが、凹みは反対の表面において相互的な凹みを有しないが、生地の反対の表面における凹みを含み得る。
【0022】
イオン交換膜における支持体としての図1又は図2に示されるような生地の使用は、イオン交換ポリマーが、(a)デボス加工された凹みにあること及び(b)不織生地の繊維の空隙に含浸していることの両方を結果としてもたらす。
【0023】
デボス加工された不織布層は、約50μm~約700μmの厚さであり得る。約100μm~約300μmの厚さを有するデボス加工された不織布層の使用は、電気抵抗、機械的強度及び形状安定性の間の有益なバランスを提供し得る。変形は、不織布層の表面のデボス加工されていない部分から測定される、デボス加工された不織布層の厚さの5~99%である平均合計深さを有し得る。特定の例では、平均合計深さは、デボス加工された不織布層の厚さの40~60%であり得る。図1に示されるデボス加工の状況において、これは、深さ「D」が厚さ「T」の5%~99%であることに対応する。図2に示されるデボス加工の状況において、これは、深さ「D」+深さ「D’」の合計が厚さ「T」の5%~99%であることに対応する。
【0024】
例えば、デボス加工された不織布層は、50μmの厚さを有してもよく、及び不織布層の1つの表面にのみ凹みを有してもよく、凹みは25μmの平均深さを有し、これはデボス加工された不織布層の厚さの50%に対応する。別の例では、デボス加工された不織布層は、不織布層の両方の表面に凹みを有してもよく、凹みは、1つの表面から50μm及び反対の表面から25μmの平均深さを有する。デボス加工された不織布層が100μmの厚さである場合、凹みは、層の合計の厚さの75%である。
【0025】
さらに他の例では、インプリントされた不織布層における変形は、図3に示されるように、エンボス加工された生地の反対の表面において対応する凹みを有する、生地の1つの表面のみからの突出部であり得る。生地(30)は、生地の表面(36)からの突出部(34)である変形(32)を含む。突出部(34)は、生地の反対の表面(40)において対応する凹み(38)を有する。この例示的な生地において、エンボス加工された不織布層の合計の厚さを(T)として示し、突出部の高さを(H)として示している。例示的な突出部の表面積は、少なくとも部分的に寸法Wに基づいて算出され得る。
【0026】
両方の表面上に突出部を有する例示的なインプリントされた不織布層を図4に示す。生地(50)は、生地の両方の表面上の突出部(54)である変形(52)を含む。突出部(54)は、反対の表面において対応する凹み(56)を有する。
【0027】
イオン交換膜における支持体として図3又は図4に示されるような生地を使用することにより、(a)エンボス加工された突出部の反対の凹みにおけるイオン交換ポリマー及び(b)不織生地の繊維の空隙中に含浸したイオン交換ポリマーが結果としてもたらされる。一部の例では、密接な間隔のエンボス変形を有する生地など、イオン交換ポリマーはまた、突出部の間の空間中に存在し得る。イオン交換ポリマーが突出部の間の空間中に存在することは、対応するイオン交換膜がより滑らかな表面を有することになるので有益である。エンボス加工された突出部の反対の凹みにおいてのみ及び繊維の空隙中に含浸したイオン交換ポリマーを有するイオン交換膜は、突出部がもろく、またいかなる周囲のイオン交換ポリマーによっても保護されないので、より容易に損傷し得る。
【0028】
エンボス加工された不織布層は、変形の高さを含めて、約50μm~約1000μmの厚さであり得る。約100μm~約300μmの合計の厚さを有するエンボス加工された不織布層の使用は、電気抵抗、機械的強度及び形状安定性の間の有益なバランスを提供し得る。変形は、不織布層の表面の非エンボス加工部分から測定される、エンボス加工された不織布層の合計の厚さの5~99%である平均高さを有し得る。
【0029】
特定の例では、エンボス加工された突出部の平均高さは、エンボス加工された不織布層の合計の厚さの40~60%であり得る。例えば、エンボス加工された不織布層は、(突出部の高さを考慮に入れずに)50μmの厚さであってよく、また(例えば、図3に示されるように)層の1つの表面上にのみ突出部を有してよく、突出部は50μmの平均高さを有する。合計の厚さは突出部の高さを考慮することにより決定されるので、そのようなエンボス加工された不織布層の合計の厚さは100μmである。そのような不織布層では、突出部は、層の厚さの50%である。別の例では、エンボス加工された不織布層は、(例えば、図4に示されるように)層の両方の表面上に突出部を有してよく、突出部は、1つの表面上で50μm及び反対の表面上で25μmの平均高さを有する。突出部の高さを考慮に入れずに、エンボス加工された不織布層が50μmの厚さである場合、合計高さは両方の表面上の突出部の高さを考慮に入れるので、エンボス加工された不織布層の合計の厚さは125μmである。そのような層では、突出部は、層の合計の厚さの60%である。
【0030】
不織布層の密度が変化しない場合、不織布層の厚さ(いかなるエンボス加工された突出部の高さも考慮に入れない)が増加するにつれて不織布層の単位重量は増加する。しかしながら、2つの異なる不織布層は異なる密度を有してよく、その場合、単位重量量は同じ厚さについて異なってよい。不織布層の単位重量は、約10g/m~約260g/mであり得る。
【0031】
デボス変形は、(図1に示されるように)不織布層の単一の表面への凹み、又は(図2に示されるように)不織布層の反対の表面への凹みを含み得る。不織布層の反対の表面への凹みを有する不織布層では、(a)デボス加工された不織布層は反対の表面の各側において1cm当たり実質的に等しい数の凹みを有してよく、(b)凹みは反対の表面の各側において実質的に同じ量の表面積を構成してよく、(c)デボス加工された不織布層の反対の表面への凹みは実質的に同じ深さであってよく、(d)デボス加工された不織布層の反対の表面への凹みは実質的に同じサイズであってよく、(e)デボス加工された不織布の反対の表面への凹みは実質的に同じ形状であってよく又は(f)任意のこれらの組合せである。
【0032】
エンボス変形は、(図3に示されるように)エンボス加工された不織布層の単一の表面からの突出部、又は(図4に示されるように)エンボス加工された不織布層の反対の表面からの突出部を含み得る。不織布層の反対の表面上に突出部を有する不織布層では、(a)エンボス加工された不織布層は反対の表面の各側において1cm当たり実質的に等しい数の突出部を有してよく、(b)変形は反対の表面の各側において実質的に同じ量の表面積を構成してよく、(c)エンボス加工された不織布層の反対の表面上の突出部は実質的に同じ高さであってよく、(d)エンボス加工された不織布層の反対の表面上の突出部は実質的に同じサイズであってよく、(e)エンボス加工された不織布の反対の表面上の突出部は実質的に同じ形状であってよく又は(f)任意のこれらの組合せである。
【0033】
図2及び図4に示されるように)両側上に変形を有する不織布層を用いて製造されたイオン交換膜は、(図1及び図3に示されるように)片側のみ変形を有する不織布層を用いて製造された膜と比較して、膜硬化の間の向上した形状安定性、例えば、カール形成の低減による形状安定性を有し得る。形状安定性は、(a)変形の深さ又は高さが不織布層の両側において実質的に同じである場合、(b)変形の総表面積が不織布層の両側において実質的に同じである場合又は(c)両方の場合にさらに向上し得る。理論により縛られることを望まないが、本開示の著者らは、不織布層の2つの側が類似すればするほど、膜が膜硬化の間にカール形成する可能性がより低くなると考える。
【0034】
本開示の文脈において、2つのセットの変形は、値が2つの値の平均の10%以内である場合に、実質的に同じ深さ、実質的に同じ高さ、実質的にサイズ又は実質的に同じ表面積を覆うと考えられるべきである。例えば、2つのセットの凹みは、不織布層の1つの区画中(例えば、基材の片側上)の凹みが110μmの平均深さを有し及び不織布層の別の区画中(例えば、基材の反対側上)の凹みが90μmの平均深さを有する場合、実質的に同じ深さであると考えられるべきである。この例では、90μm及び110μmの深さは100μmの平均の±10%以内に入る。別の例では、基材の反対側への2つのセットの凹みは、片側上の凹みが45%の面積を覆い及び他の側上の凹みが55%の面積を覆う場合に、実質的に同じ表面積を覆うと考えられるべきである。この例では、45%及び55%の値の両方は、50%の平均の±10%以内である。
【0035】
不織布層における変形は、円形、三角形、正方形、長方形、菱形、星形、楕円形又は任意のこれらの組合せの形状を有し得る。変形は不織布層にわたって均一に分布していることが望ましい。「均一に分布している」は、不織布層のあらゆる所与の平方センチメートル中の変形の数が、層全体にわたる1平方センチメートル当たりの変形の平均数の±10%以内であるべきことを意味すると理解されるべきである。例えば、不織布層が1cm当たり100個の変形を有する場合、変形が「均一に分布している」と考えられるためには、あらゆる平方センチメートルは90~110個の変形を有しなければならない。均一に分布した変形の一部の例では、変形は、例えば、行及び列において、又は対角線の配列において、規則的に間隔を空けている。
【0036】
不織布層は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアクリロニトリル又はポリ塩化ビニルの不織生地シートであり得る。ポリエステルは酸に安定であり、EDR用の膜、例えば、(a)N-トリメチルアミノエチルメタクリレートクロリド(TMAEMC)及びエチレングリコールジメタクリレート(EGDM)、(b)ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA)、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(CHDMDGE)、HCl及びN-ビニルカプロラクタム(V-Cap)、(c)ビニルベンジルクロリド(VBC)、ジビニルベンゼン(DVB)、トリブチルアミン(TBA)及びジブチルアミン(DBA)又は(d)2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)及びEGDMを含む重合から形成されるポリマーを含む膜を製造するために使用され得る。ポリプロピレンは塩基に安定であり、ED用の膜、例えば、(a)リチウムスチレンスルホネート(LiSS)及びジビニルベンゼン(DVB)、(b)(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド(VBTAC)及びDVB又は(c)ビニルベンジルクロリド(VBC)、ジビニルベンゼン(DVB)、トリブチルアミン(TBA)及びジブチルアミン(DBA)を含む重合から形成されるポリマーを含む膜を製造するために使用され得る。
【0037】
イオン交換材料は、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基又はこれらの塩を有する陽イオン交換ポリマーであり得る。例えば、陽イオン交換ポリマーは、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、3-スルホプロピルアクリル酸カリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、4-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、4-ビニルベンゼンスルホン酸リチウム、アクリル酸、2-エチルアクリル酸、メタクリル酸、2-プロピルアクリル酸、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、エチレングリコールメタクリレートホスフェート、ビニルホスホン酸又はビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェートを用いる重合から形成されるポリマーであり得る。
【0038】
あるいは、イオン交換材料は、第四級アンモニウム基、イミダゾリウム基、ピリジニウム基又はこれらの塩を有する陰イオン交換ポリマーであり得る。例えば、陰イオン交換ポリマーは、N-トリメチルアミノエチルメタクリレートクロリド(TMAEMC)、[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、1-ビニル-3-エチルイミダゾリウムブロミド又は4-ビニルピリジニウムトリブロミドを用いる重合から形成されるポリマーであり得る。
【0039】
陽イオン及び陰イオン交換ポリマーはまた、好ましくは、クロスリンカーを含み、その理由は、クロスリンカーは、結果として得られるポリマーの強度及び寸法安定性を増加させるためである。好適なクロスリンカーは、モノマーにより必要とされる重合化学に基づいて選択される。本開示の膜を形成させるために使用され得るクロスリンカーの例としては、N,N’-メチレンビス(アクリルアミド)、N,N’-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、N,N’-エチレンビス(アクリルアミド)、N,N’-ヘキサメチレンビス(メタクリルアミド)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリルアミド、ピペラジンジアクリルアミド、1,3-ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジ(エチレングリコール)ジアクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート、トリ(エチレングリコール)ジアクリレート、グリセロール1,3-ジグリセロレートジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート並びに例示的なポリエステル及びポリプロピレン生地に関して上記したクロスリンカーが挙げられる。
【0040】
イオン交換膜は、乾燥イオン交換材料の少なくとも1.6meq/gのイオン交換能力(IEC)を有するイオン交換材料を含浸し得る。IECは、基材の重量を考慮に入れることなく算出されることが理解されるべきである。
【0041】
本開示によるイオン交換膜は、電解セルスタックにおいて使用され得る。そのような電解セルスタックは、複数のイオン交換膜を含み得る。
【0042】
本開示はまた、イオン交換膜を製造する方法を提供する。方法を図5に示す。方法(110)は、陰イオン性又は陽イオン性モノマー及びクロスリンカーを含む反応溶液(116)を用いて、上記で論じたように、インプリントされた不織布層を有する支持基材(114)を飽和又は含浸させること(112)を含む。インプリンティングは、1cm当たり少なくとも16個の表面密度で複数の変形を含む。インプリンティングは、エンボス加工、デボス加工又はこれらの組合せであり得る。支持基材は、補強層を欠いてもよい。一部の例では、支持基材は、インプリントされた不織生地の単一層のみを含み得る。
【0043】
例えば、上昇した温度において又はUVにより開始されるラジカル重合下で、モノマー及びクロスリンカーを重合させて(118)、イオン交換膜(120)を形成させる。例えば、飽和又は含浸した支持基材を、室温から130℃もの高さまで増加させた温度において加熱することができる。温度のこの増加の効果は、飽和又は含浸した支持基材を、増加させた温度の加熱ゾーンを提供する1つ以上の加熱テーブルを通過させることによりもたらすことができる。加熱テーブルは、約20メートルの長さの加熱ゾーンを画定し得る。
【0044】
陰イオン性又は陽イオン性モノマー及びクロスリンカーをラジカル開始剤と共に溶媒中に溶解させて、反応溶液を形成させることができる。当業者は、好適な溶媒は、試薬を溶解させ、重合条件下で非反応性であり、及び結果として生じる膜から除去され得るものであることを理解するであろう。好適な溶媒の例は、以下の実施例において議論される。ラジカル開始剤は、重合のための所望の条件に応じて熱開始剤又はUV開始剤であり得る。好適な開始剤の例は、以下の実施例において議論される。追加の例示的な開始剤はEP 3 040 365において議論されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0045】
<不織ポリエステル生地>陰イオン交換膜又は陽イオン交換膜のいずれかを製造するために7つの異なる不織ポリエステル生地を使用した。陰イオン交換膜は、ラジカル開始剤ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(V-601、0.22g)の存在下でのN-トリメチルアミノエチルメタクリレートクロリド(16.3g)及びエチレングリコールジメタクリレート(15.5g)の重合により製造した。試薬を18gのジプロピレングリコール(DPG)中に溶解させた。モノマーとクロスリンカーとのこの組合せを「AR204」と称する。
【0046】
陽イオン交換膜は、0.8gのV-601(重合開始剤)及び0.005gのヒドロキノンのモノメチルエーテル(MeHQ)(アクリル及びアクリルアミドモノマーの重合阻害剤)の存在下での21.8gの2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及び26.2gのエチレングリコールジメタクリレートの重合により製造した。試薬を2.7gの水及び29.3gの1-メチル-2-ピロリジノン(pyrollidinone)(NMP)の溶液中に溶解させた。モノマーとクロスリンカーとのこの組合せを「CR67」と称する。
【0047】
いずれもToray製の7つのポリエステル生地は以下の特性を有していた。
【0048】
【表1】
【0049】
ポリエステル生地は、デボス加工されたインプリントを有し、インプリントの深さは、合計の厚さの少なくとも40%であった。デボス加工されたインプリントにおいて生地は透明に近かった。
【0050】
試料3を用いて製造された陽イオン及び陰イオン交換膜は、表面上の剥離なしで、許容できる程度まで滑らか及び許容できる程度まで平らであることが判明した。
【0051】
以下の表は、陽イオン及び陰イオン交換ポリマーの4つの異なるバッチを使用して試料3を用いて製造された陽イオン及び陰イオン交換膜と関連付けられる様々な特性を示す。陽イオン及び陰イオン交換膜をそれぞれ「CR67-PE」及び「AR204-PE」と称する。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
イオン交換能力(IEC)を滴定により測定した。水含有率を[(湿重量-乾燥重量)/(湿重量-バッキングの重量)]×100%により算出した。1ファラデーの電荷を印加した時に膜を通過した水の体積を測定することにより水輸送を決定した。0.5Nに対して1NのNaCl溶液の勾配を使用した時の膜を越える電位を測定することにより透過選択性を得た。NaCl溶液中の膜の抵抗を非接触抵抗測定デバイスを使用して測定した。スパイラルマイクロメーターを使用して膜の厚さを決定した。
【0057】
<不織ポリプロピレン生地>陰イオン交換膜又は陽イオン交換膜のいずれかを製造するために2つの異なる不織ポリプロピレン生地を使用した。生地はToray製であった。陰イオン交換膜を0.9mLのラジカル開始剤tertブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(TPO)の存在下での28.9gの(ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド(VBTAC)及び29.7gのジビニルベンゼン(DVB)の重合により製造した。試薬を38.5のジプロピレングリコール(DPG)中に溶解させた。モノマーとクロスリンカーとのこの組合せを「AR103」と称する。
【0058】
陽イオン交換膜を0.2gのV-601の存在下での17.6gのリチウムスチレンスルホネート(LiSS)及び15.2gのジビニルベンゼンの重合により製造した。試薬を24.0gの1-メチル-2-ピロリジノン(pyrollidinone)(NMP)中に溶解させた。モノマーとクロスリンカーとのこの組合せを「CR61」と称する。
【0059】
共にToray製である2つのポリプロピレン生地は、以下の特性を有する。
【0060】
【表6】
【0061】
ポリプロピレン生地は、デボス加工されたインプリントを有し、インプリントの深さは、合計の厚さの少なくとも40%であった。デボス加工されたインプリントにおいて生地は透明に近かった。
【0062】
以下の表は、陽イオン及び陰イオン交換ポリマーの2つの異なるバッチを使用して2つのポリプロピレン生地を用いて製造された陽イオン及び陰イオン交換膜と関連付けられる様々な特性を示す。陽イオン及び陰イオン交換膜をそれぞれ「CR61-PP」及び「AR103-PP」と称する。
【0063】
【表7】
【0064】
【表8】
【0065】
【表9】
【0066】
【表10】
【0067】
イオン交換能力(IEC)、水含有率、水輸送、透過選択性、抵抗及び厚さを上記で議論したように測定した。
【0068】
以上の記載において、値の範囲のあらゆる議論は、該範囲内及び該範囲に入る全ての可能な範囲内の全ての可能な個々の値を開示するものと理解されるべきである。例えば、「約1~約100」の議論は、約1~約100からのあらゆる個々の値(例えば、2、10.7、50、80.5及び92)及び約1~約100の範囲内に入るあらゆる範囲(例えば、10~20、5~95、75~80.5及び24.3~47.5)からのあらゆる個々の値の開示であると理解されるべきである。
【0069】
以上の記載において、説明の目的から、例の完全な理解を提供するために、数値的詳細が記載される。しかしながら、これらの特定の詳細は必要とされないことは当業者に明らかであろう。したがって、記載したものは、説明される例の応用の単なる例示であり、数値の改良及び変更が上記の教示に照らして可能である。
【0070】
上記の記載は例示的な例を提供するので、改良及び変更が当業者により特定の例に対して為され得ることが理解されるであろう。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に記載される特定の例によって限定されるべきではなく、明細書全体と合致する様式で解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5